JP2014029222A - 空気調和機 - Google Patents

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Abstract

【課題】
冷房運転において、どのような室内機、冷媒配管長で接続された場合でも、各室内機がそれぞれに適正な空調能力となるまでの時間を短くし、利用者の快適性を確保できるようにすることを目的とする。
【解決手段】
空気調和機は、冷凍サイクル及び制御装置を備え、冷房運転が可能である。冷凍サイクルは室外機と複数の室内機を冷媒配管で接続して構成しており、室外機は圧縮機を有し、室内機は室内膨張弁を有している。前記制御装置は、冷房運転時に、室外機に仮に1台の前記室内機が接続されているとし、始動時の圧縮機の始動回転数を基にその冷媒循環量相当となる室内膨張弁の仮の始動開度を算出、その仮の開度を運転する室内機の容量で按分し室内機ごとに開度を算出、その開度を始動開度補正量により補正し室内機ごとの始動開度とする。
【選択図】 図2

Description

本発明は、空気調和機に係り、特に空気調和機の冷房運転の始動において、利用者の快適性向上を図る空気調和機に関する。
空気調和機において、一般に、冷房運転において室内機の膨張弁は圧縮機の起動時に一定の始動開度で駆動し、その後各室内熱交換器の冷媒過熱度が目標値となるように室内膨張弁の開度を制御することで各室内機への必要冷媒循環量を調整し、各室内の空調の快適性を確保している。ここで、冷房運転において室内膨張弁の始動開度は、始動時の圧縮機への過度な液戻り運転や、圧縮機吸入側の低圧圧力の異常低下を抑制し圧縮機信頼性の確保を行うよう設定される。しかし、1台の室外機に対し接続が想定される室内機は多岐にわたり、冷媒配管長さや施工パターンは多種多様となるため、室内熱交換器容積が小さく短配管接続となる冷媒過多状態や室内熱交換器容積が大きく長配管接続となる冷媒過少状態のような厳しい条件で室内膨張弁の始動開度が決定されることとなり、冷媒がある程度適正である接続においては室内膨張弁の始動開度は開き過ぎ、絞り過ぎとなることがある。そのため、始動開度の後に室内膨張弁開度を制御し各室内機への冷媒循環量が適正化していくが、室内機によっては適正開度となるまで時間がかかり室内機の吹出し温度が立ち上がりにくく室内温度が設定温度となるまで時間がかかるという問題が生じる。例えば、冷房運転において、冷媒過多状態を想定し始動時の圧縮機への液戻り運転を抑制するため室内膨張弁の始動開度を絞り気味とし、冷媒過少状態で始動時の圧縮機吸入側の低圧圧力低下が異常とならない始動開度とした場合、冷媒過少状態の接続において、始動後、圧縮機の信頼性は確保できているが、室内熱交換器は過熱気味となり室内機への冷媒循環量が確保されず、室内膨張弁は始動開度から開いてきて冷媒循環量を適正化していくが、室内機の吹出し温度が確保され室内温度が設定温度となるまで時間がかかり利用者の快適性低下が問題となる。そこで、室内機の吹出し温度確保を優先するため室内膨張弁の始動開度をある程度開き気味とし始動開度を決定した場合、冷媒過多状態において液戻り運転に対する室内膨張弁開度の追従遅延によりある程度の液戻り運転を許容することとなり圧縮機寿命低下のような製品信頼性の低下が問題となる。また極端な場合、冷房能力過多となり冷風感のように利用者の快適性低下が問題となる。
そこで、実公平02−003093(特許文献1)に示された空気調和機が案出されている。冷房運転で室内温度が設定温度以下となり圧縮機を停止した後、短時間の停止後の再起動において、室内膨張弁の始動開度を圧縮機停止前の開度とする方法がある。これは、定常時の最適な状態に始動から持っていくことができるため、早い立ち上がりを実現し快適な空調を可能としているものである。しかし、停止前の状態と起動の状態は必ずしも一致するわけではないため、室内温度が設定温度付近での再起動や、一定速圧縮機のように起動時も停止前も常に圧縮機の運転回転数が等しい場合に適用が限られてくる。
実公平02−003093
空気調和機において、室内機は利用者の使用環境により選択できるよう多種あり、同能力の室内機でもその種類により熱交換器の形態も異なるため熱交換器の容積も様々である。そのため1台の室外機に接続される室内機は多種多様である。また、1台の室外機に室内機を複数台接続する場合、各室内機の能力が同じもの、例えば室外機10HPに対し室内機5HP×2台、が必ずしも接続されるわけではなく、各室内機周囲の空調負荷が異なれば異なる能力の室内機、例えば室外機10HPに対し室内機4HP+6HP、が接続され、さらに各室内機で吸込み温度や目標にしている設定温度も異なってくる。さらにまた室外機、室内機の設置場所によりそれぞれを接続する冷媒配管長さは様々であり、また室内機を複数台接続する場合、接続する冷媒配管は室外機から分岐管までの主配管と、分岐管から各室内機までの枝管となるが、室内機や分岐管の設置場所により室内機によって枝管長さが異なり、室内機間に高低差がある場合も含め、各室内機への冷媒の流れやすさに差が生じる場合もある。
本発明の目的は、冷房運転において、どのような室内機、冷媒配管長で接続された場合でも、各室内機がそれぞれに始動から適正な空調能力となるまでの時間を短くし、利用者の快適性を確保できる空気調和機を提供することにある。
前述の目的を達成するために、本発明では、室内吸込み温度を検知する室内吸込み温度センサと、吹出し空気の温度を検知する室内吹出し温度センサと、室内膨張弁と、を有する複数の室内機と、室外温度を検知する室外温度センサと、圧縮機と、室外膨張弁と、を有する室外機と、が冷媒配管により接続され、さらに、前記室内膨張弁の開度を制御する制御手段と、室内温度の目標値を設定する室内温度設定手段と、を備えた空気調和機において、前記制御手段は、冷房運転始動時に、前記圧縮機の始動回転数に対応する空気調和機全体の冷媒循環量となるようなそれぞれの前記室内膨張弁の始動開度の合計を、冷房運転する前記室内機の容量毎に按分することで前記室内機毎の前記室内膨脹弁の開度を算出し、該算出した開度を始動開度補正量により補正した開度を前記室内機毎の前記室内膨脹弁の始動開度として設定する。
係る本発明のより好ましい具体的な構成例は次の通りである。
(1)前記制御手段は、冷房運転開始後に、所定時間が経過したとき、前記複数の室内機ごとに、前記室内吸込み温度センサで検知した室内吸込み温度と前記室内温度設定手段により設定された温度との温度差に基づいて、前記始動開度補正量を補正し、該補正した始動開度補正量を用いて補正した開度を次回始動時の前記室内膨張弁の始動開度として設定すること。
(2)前記制御手段は、冷房運転開始後に、所定時間が経過したとき、前記複数の室内機ごとに、前記室内吸込み温度センサで検知した室内吸込み温度と前記室内吹出し温度センサで検知した室内吹出し温度との温度差に基づいて、前記始動開度補正量を補正し、該補正した始動開度補正量を用いて補正した開度を次回始動時の前記室内膨張弁の始動開度として設定すること。
(3)前記制御手段は、冷房運転始動時に、前記複数の室内機ごとに、前回始動時に前記室内吸込み温度センサで検知した室内吸込み温度と今回始動時に前記室内吸込み温度センサで検知した室内吸込み温度との差に基づいて、前回始動時に決定した前記始動開度補正量を補正し、該補正した始動開度補正量を用いて補正した開度を今回始動時の前記室内膨張弁の始動開度として設定すること。
(4)前記制御手段は、冷房運転始動時に、前記複数の室内機ごとに、前記室内吸込み温度センサで検知した室内吸込み温度と前記室内温度設定手段により設定された設定温度との温度差の、今回始動時の温度差と前回始動時の温度差との差に基づいて前回始動時に決定した前記始動開度補正量を補正し、該補正した始動開度補正量を用いて補正した開度を今回始動時の前記室内膨張弁の始動開度として設定すること。
係る本発明の空気調和機によれば、接続する室内機や冷媒配管長によらず、冷房運転において始動を繰返すことで室内機ごとに始動開度を補正していくため、各室内機に適正な冷媒循環量を確保するまでの時間が短くなり室内吹出し温度を早く立ち上げるため、快適性の向上を図ることができる。
本発明の実施形態の空気調和機の全体構成図である。 本発明の第1実施形態である制御処理の一例を示すフローチャートであり、冷房運転での室内膨張弁の始動開度を決定するための制御処理を示す。 本発明の第2実施形態を適用前後の空気調和機を冷房運転で始動するときの室内膨張弁の開度と、室内吸込み温度とリモコン設定温度の差の時間変化を示す線図である。 本発明の第2実施形態である制御処理の一例を示すフローチャートであり、冷房運転での室内膨張弁の次回の始動開度算出で使用する始動開度補正量を決定するための制御処理を示す。 本発明の第3実施形態を適用前後の空気調和機を冷房運転で始動するときの室内膨張弁の開度と、室内吸込み温度と室内吹出し温度の差の時間変化を示す線図である。 本発明の第3実施形態である制御処理の一例を示すフローチャートであり、冷房運転での室内膨張弁の次回の始動開度算出で使用する始動開度補正量を決定するための制御処理を示す。 本発明の第4実施形態である制御処理の一例を示すフローチャートであり、冷房運転での室内膨張弁の今回の始動開度算出で使用する始動開度補正量を決定するための制御処理を示す。 本発明の第5実施形態である制御処理の一例を示すフローチャートであり、冷房運転での室内膨張弁の今回の始動開度算出で使用する始動開度補正量を決定するための制御処理を示す。
以下、本発明の複数の実施例について図を用いて説明する。各実施例の図における同一符号は同一物または相当物を示す。
本発明の実施例の空気調和機を図1を用いて説明する。
まず、実施例の空気調和機の全体構成、機能等に関して図1を参照しながら説明する。図1は本発明の実施例の空気調和機の全体構成図である。
空気調和機は、室外機1と複数の室内機8(図1は2台目まで)とで構成され、室内機8aが室内13aに、室内機8bが室内13bというように、室内機8は室内13に設置されており、室外機1と室内機8は冷媒配管6および分岐管7で接続されている。また、室内機8aにリモコン12a、室内機8bにリモコン12bというように、室内機8にはリモコン12が接続されており、リモコン12の入力により目的の室内温度(以下、リモコン設定温度という)が設定可能になっている。なお、図1は室内機8a、室内機8bがそれぞれ別の室内に設置、別のリモコンに接続されている場合とし説明したが、室内機8a、室内機8bが同じ室内あるいは同じリモコンに接続されていてもよい。
室内機8は室内温度を検知する室内吸込み温度センサ10と室内機8が吹出す温度を検知する室内吹出し温度センサ11とを有し、冷媒流量を調整可能な室内膨張弁9を具備している。
室外機1は室外温度を検知する室外温度センサ4を有し、運転回転数を変更可能な圧縮機2を具備している。また、室外機1には制御装置5が取り付けられており、圧縮機2の運転回転数、室内膨張弁9の開度の制御指令を出している。室外機1には冷媒配管で室内機8が複数接続して冷凍サイクルを構成して冷房運転が可能な空気調和機となっている。
次に図1のように構成される空気調和機の制御処理について本発明の第1実施例を図2を用いて説明する。
図2は、本実施例の制御装置5の制御処理の一例を説明するフローチャートであり、冷房運転における空気調和機が始動するときの各室内膨張弁の始動開度を決定するための制御処理を示している。以下、フローチャートの処理手順(ステップ番号)について説明する。
各室内機からの冷房運転開始要求を受信すると、図2において、制御装置5は、まず、ステップS21にて、運転開始要求のあった各室内機の容量Qを読込む。そして、ステップS22では、各室内機の始動開度補正量を読込む。続くステップS23では、室外機1に室内機8が複数台接続されている場合であっても室内機8が全体として1台接続されていると仮定し、始動するときの圧縮機始動回転数から空気調和機全体の冷媒循環量が決定するため、その冷媒循環量に見合った仮の室内膨張弁開度Vtを演算する。
続くS24では、Vtを全体の運転開始要求のあった室内機容量合計ΣQに対する各室内機の容量Qの割合で按分することにより各室内機の始動開度V´を算出する。続くステップS25では、室内機ごとに始動開度V´に始動開度補正量を補正し、始動開度Vを算出する。続くステップS26では、室内機ごとに決定した始動開度Vを各室内機に出力する。
このように空気調和機全体としての仮の室内膨張弁開度Vtを室内機ごとに按分し決定した始動開度V´を、始動開度補正量で個々に補正することにより、室内機ごとに始動開度を適正冷媒循環量が確保できる方へ調整可能であり、そのため、例えば冷媒過少状態で全体として決定した仮の室内膨張弁開度Vtが不足していた場合でも、室内機ごとに始動開度を開く方に補正していき、結果として仮の室内膨張弁開度Vtを開くこととなる。
次に、図1のように構成される空気調和機の制御処理について本発明の第2実施例を説明する。
図3は室外機1と3台の室内機8(室内機8aがa号機、室内機8bがb号機、室内機8cがc号機とする)と冷媒配管6と分岐管7とで構成された空気調和機において、冷房運転として空気調和機が始動するときの各室内機における室内膨張弁9の開度と、室内吸込み温度とリモコン設定温度との差ΔTrの時間変化を示す線図であり、本実施例を適用前のもの(実線)と適用後(点線)のものを示している。図4は本実施例の制御装置5の制御処理の一例を説明するフローチャートであり、冷房運転における室内膨張弁9の次回の始動開度算出で使用する始動開度補正量を決定するための制御処理を示している。以下、フローチャートの処理手順(ステップ番号)について説明するが、共通する内容については同一のステップ番号を付し、さらに、ステップ番号が異なっていても、同一の内容については説明を省略する。
空気調和機が始動して冷房運転が開始されると、図4において、制御装置5は、まず、ステップS41にて、制御周期のタイマーがリセットされる。そして、ステップS42では、室内機8から運転停止要求を受信したかどうかを確認し、運転停止要求を受信した場合は停止処理に進み、運転停止要求を受信していない場合はステップS43に進む。ステップS43では、予め設定された所定時間t1が経過したか否かが判断され、所定時間t1が経過していないと判断されると、ステップS42に戻り、所定時間t1が経過したと判断されたると、ステップS44に進む。そして、ステップS44では、前回の始動で決定した始動開度補正量(1回目の始動の場合は0(補正なし))を読込む。続くステップS45では、室内吸込み温度Tiとリモコン設定温度Trとが検知される室内吸込み温度センサ10により室内吸込み温度Tiが検知され、リモコン12により設定されたリモコン設定温度Trが検知される。これにより、ステップS46では、室内吸込み温度Tiとリモコン設定温度との温度差ΔTr(ΔTr=Ti−Tr)が算出され、予め設定された温度差の目標値ΔT1、ΔT2(ここではΔT1<ΔT2)を用いることにより、始動開度補正量の変更量が判断される。ここでは、補正方法を加減算方式として、定数α、β(ここではα>0、β>0)を用いて、始動開度補正量の変更量ΔXを数パターン設定する。具体的には、温度差ΔTrがΔT2を上回り、リモコン設定温度Trに対し、室内吸込み温度Tiの近づきが悪い場合、ステップS001に進み、始動開度補正量の変化量ΔXは+αに設定される。
続くステップS47では、現時点の始動開度補正量に変更量ΔXを補正し、次回の始動で使用する始動開度補正量を設定する。
また、温度差ΔTrがΔT2以下の場合、ΔT1≦ΔTr≦ΔT2であるときはステップS002に進み、始動開度補正量の変化量ΔXは0に設定され、ΔTr<ΔT1であるときはステップS003に進み、始動開度補正量の変化量ΔXは−βに設定される。
次に、このような制御処理を冷房運転の始動時に適用する例について、図3を用いて具体的に説明する。図3において、例えば本実施例適用前が1回目の始動、本実施例適用後が1回目の始動で決定した始動開度補正量を補正した2回目の始動のような場合を考える。室内機a号機のように1回目の始動で室内膨張弁9aの始動開度が小さく、開度が開いていき適正な冷媒循環量が確保されるまでに時間がかかり、所定時間t1において、ΔTrがΔT2を上回りリモコン設定温度Trに対し室内吸込み温度Tiの近づきが悪い場合には、ステップS001に進み、2回目の始動で室内膨張弁9aの始動開度が1回目の室内膨張弁9aの始動開度に対し+αされる。室内膨張弁9aの始動開度が開くことでa号機の冷媒循環量確保が早まり、冷えが悪いことに対し快適性の改善が図れていく。
また、室内機b号機のように所定時間t1において、適正な冷媒循環量を確保し、ΔT1≦ΔTr≦ΔT2である場合には、ステップS002に進み、2回目の始動でも室内膨張弁9bの始動開度を1回目の室内膨張弁9bの始動開度と同じにし、快適性の維持を図る。
さらに、室内機c号機のように1回目の始動で室内膨張弁9cの始動開度が大きく、開度が閉まっていき適正な冷媒循環量となるまでに時間がかかり、所定時間t1において、ΔTrがΔT1を下回りリモコン設定温度Trに対し室内吸込み温度Tiの近づきが早すぎると判断される場合には、ステップS003に進み、2回目の始動で室内膨張弁9cの始動開度が1回目の室内膨張弁9cの始動開度に対し−βされる。室内膨張弁9cの始動開度を閉めることでc号機への冷媒循環量を緩和し、冷えすぎに対し快適性の改善が図れていく。
以上述べたように、本実施例によれば、空気調和機の冷房運転始動時において、利用者が直接設定するリモコン設定温度に対し、利用者の快適性に影響する室内吸込み温度の近づき方の良し悪しを判断した結果に基づき、次回の室内膨張弁9の始動開度を補正するため、各室内機への冷媒循環量が適正化されていき、利用者の快適性を向上させることができる。
なお、本実施例では、始動開度補正量の変化量ΔXの判断を、利用者の快適性を向上させるため、温度差ΔTrに基づいてのみ行っているが、外気温度や圧縮機温度、圧縮機吸入圧力といった判断手段を加えて判断することで、利用者の快適性向上とともに圧縮機2の信頼性を確保することができる。
また、本実施例では、室内膨張弁9の補正方法を加減算方式として説明したが、乗除算方式としても同様の効果を得ることができるのはいうまでもない。
さらにまた、室内機8ごとに空調負荷が異なった場合にそれぞれの空調負荷に見合った適正冷媒循環量に早く到達させるよう、個々の室内膨張弁9の始動開度を補正できるため、室内機8を複数台接続した空気調和機で述べたが、室内機8の種類や冷媒配管長さによる冷媒過多過少で、それに見合った室内膨張弁9の始動開度となっていない場合でも補正は有効であるため、室外機1が1台に対し、室内機8が1台の接続の場合でも、利用者の快適性を向上させることができる。
次に、図1のように構成される空気調和機の制御処理について本発明の第3実施例を説明する。本実施例が第2実施例と異なるのは、冷房運転における室内膨張弁9の次回の始動開度補正量を決定するための変動量ΔXを設定する判断手段のみであるため、他の共通する部分の説明については省略する。
図5は室外機1と3台の室内機8(室内機8aがa号機、室内機8bがb号機、室内機8cがc号機とする)と冷媒配管6と分岐管7とで構成された空気調和機において、冷房運転として空気調和機が始動するときの各室内機における室内膨張弁9の開度と、室内吸込み温度と室内吹出し温度との差ΔToの時間変化を示す線図であり、本実施例を適用前のもの(実線)と適用後(点線)のものを示している。図6は本実施例の制御装置5の制御処理の一例を説明するフローチャートであり、冷房運転における室内膨張弁9の次回の始動開度算出で使用する始動開度補正量を決定するための制御処理を示している。
本実施例では、空気調和機の冷房運転始動後の所定時間での室内吸込み温度と室内吹出し温度との差を判断手段として、室内吸込み温度に対し、利用者の快適性に直接影響する室内吹出し温度の下がり方の良し悪しを判断した結果に基づき、室内膨張弁9の次回の始動開度算出で使用する始動開度補正量を決定するものである。
図6に示すように、ステップS65では、室内吸込み温度センサ10により室内吸込み温度Tiが検知され、室内吹出し温度センサ11により室内吹出し温度Toが検知される。これにより、ステップS66では、室内吸込み温度Tiと室内吹出し温度Toとの温度差ΔTo(ΔTo=Ti−To)が算出され、予め設定された温度差の目標値ΔT1、ΔT2(ここではΔT1<ΔT2)を用いることにより、始動開度補正量の変更量が判断される。ここでは、補正方法を加減算方式として、定数α、β(ここではα>0、β>0)を用いて、始動開度補正量の変更量ΔXを数パターン設定する。具体的には、温度差ΔToがΔT1を下回り、室内吸込み温度Tiに対し、室内吹出し温度Toが十分低下しない場合、ステップS001に進み、始動開度補正量の変化量ΔXは+αに設定される。
本実施例においても、第1実施例と同様、例えば、温度差ΔToがΔT2を上回り、室内温度の冷え方が過剰だと考えられる場合には、ステップS003に進み、始動開度補正量の変化量ΔXは−βに設定することで冷えすぎに対し快適性の改善を図ることができる。
このように、本実施例によれば、空気調和機の冷房運転始動時において、室内吸込み温度に対し、利用者の快適性に直接影響する室内吹出し温度の下がり方の良し悪しを判断した結果に基づき、次回の室内膨張弁9の始動開度を補正するため、各室内機への冷媒循環量が適正化されていき、利用者の快適性を向上させることができる。
なお、本実施例では、始動開度補正量の変化量ΔXの判断を、温度差ΔToに基づいて行っているが、室内空調負荷に対し大きな容量の室内機が設置されてしまった場合において、始動後、室内吹出し温度に追従して室内吸込み温度も低下し、所定時間t1でΔToが小さくなり、次回の始動で室内膨張弁の始動開度が開く方に補正が行われさらに能力過剰となることが想定される。このような場合は稀であるが、こういった場合も考慮すると、リモコン設定温度に対する室内吸込み温度の近づき方を判断手段に加え過剰能力を抑えるようにするため、第2実施例を複合して用いることが好ましい。
次に図1のように構成される空気調和機の制御処理について本発明の第4実施例を説明する。
第2、第3実施例の制御処理を行った始動での温度状態に対し、その始動で決定した始動開度補正量で補正を行う次回の始動での温度状態は異なり、補正が妥当ではない温度状態である場合が考えられる。本実施例では、温度状態が変化した場合の補正を妥当なものにするため、始動時に前回との温度条件を比較し始動開度補正量を見直すものである。
各室内機からの冷房運転開始要求を受信すると、図7において、制御装置5は、まず、ステップS71にて、室内吸込み温度Ti(n)が検知される。そして、ステップS72では、前回の始動で決定した始動開度補正量、つまり今回の始動で使用する始動開度補正量(n)を読込む。続くステップS73では、前回の各室内機からの冷房運転開始要求を受信した際に検知し記憶している室内吸込み温度Ti(n−1)(1回目の始動の場合は今回検知したTi(Ti(n−1)=Ti(n)とする)を読込む。これにより、ステップS74では、今回の室内吸込み温度Ti(n)と前回の室内吸込み温度Ti(n−1)との温度差(=Ti(n)−Ti(n−1))を算出する。今回始動で使用する始動開度補正量(n)は前回始動で室内吸込み温度Ti(n−1)から始動した場合の所定時間での立ち上がり方から決定した補正量であるため、今回始動時の室内吸込み温度Ti(n)に対して始動開度補正量をどうすべきかを予測し、ここでは、補正方法を加減算方式として、定数α、β(ここではα>0、β>0)を用いて、始動開度補正量の見直し変更量ΔXを数パターン設定する。具体的には、前回のTi(n−1)より今回のTi(n)が高い場合、室内空調負荷が大きいため始動開度補正量は開く方向でも問題ないと判断し、ステップS75に進む。ステップS75では、前回の始動で決定した始動開度補正量が0以上の場合は開きすぎを懸念しステップS002に進み、始動開度補正量の見直しは行わず、前回の始動で決定した始動開度補正量が0未満の場合は開いても問題ないと判断しステップS001に進み、始動開度補正量の見直し変化量ΔXは+αに設定される。
続くステップS77では、今回の始動開度補正量に見直し変更量ΔXを補正し、今回の始動で使用する始動開度補正量を設定する。
また、ステップS74にて、Ti(n)=Ti(n−1)であるときはステップS002に進み、始動開度補正量の見直しは行わず、前回のTi(n−1)より今回のTi(n)が低い場合、室内空調負荷が小さいため始動開度の開きすぎはよくないと判断し、ステップS76に進み、前回の始動で決定した始動開度補正量が0以下の場合は開きすぎていないと判断しステップS002に進み、始動開度補正量の見直しは行わず、前回の始動で決定した始動開度補正量が0を上回る場合は開きすぎていると判断しステップS003に進み、始動開度補正量の見直し変化量ΔXは−βに設定される。
このように、前回始動で決定した始動開度補正量と前回始動のTi(n−1)から、今回始動の時点で今回始動のTi(n)に対し始動開度補正量の見直し判断を行うことで妥当性のある始動開度とすることができ、また、予測により補正を行うため、始動開度適正化までの始動回数の低減が可能となる。
なお、第2、第3実施例は室内吸込み温度Tiを判断手段としているため、第2、第3実施例に本実施例の制御を組み込むことで、予測した始動開度補正量での立ち上がりを確認するため冷媒循環量適正化までの始動回数がより低減され、また補正の精度を高めることが可能であるため、本実施例で決定した始動開度補正量を第2実施例のステップS44や第3実施例のステップS64に反映し用いることが好ましい。
次に、図1のように構成される空気調和機の制御処理について本発明の第5実施例を説明する。本実施例が第4実施例と異なるのは、冷房運転における室内膨張弁9の今回の始動開度補正量を見直すための見直し変動量ΔXを設定する判断手段のみであるため、他の共通する部分の説明については省略する。
各室内機からの冷房運転開始要求を受信すると、図8に示すように、ステップS81では、室内吸込み温度Ti(n)とリモコン設定温度Tr(n)とが検知される。これにより、ステップS82では、室内吸込み温度Ti(n)とリモコン設定温度Tr(n)との温度差ΔTr(n)(ΔTr(n)=Ti(n)−Tr(n))が算出される。そして、ステップS84では、前回の各室内機からの冷房運転開始要求を受信した際に検知し記憶している室内吸込み温度Ti(n−1)とリモコン設定温度Tr(n−1)との温度差ΔTr(n−1)(1回目の始動の場合は今回検知したΔTr(ΔTr(n−1)=ΔTr(n)とする)を読込む。これにより、ステップS85では、今回の温度差ΔTr(n)と前回の温度差ΔTr(n−1)との差(=ΔTr(n)−ΔTr(n−1))を算出する。今回始動で使用する始動開度補正量(n)は前回始動でΔTr(n−1)から始動した場合の所定時間での立ち上がり方から決定した補正量であるため、今回始動時のΔTr(n)に対して始動開度補正量をどうすべきかを予測し、ここでは、補正方法を加減算方式として、定数α、β(ここではα>0、β>0)を用いて、始動開度補正量の見直し変更量ΔXを数パターン設定する。具体的には、前回のΔTr(n−1)より今回のΔTr(n)が高い場合、室内吸込み温度Tiに対し、リモコン設定温度Trまでの差が大きくなり冷房能力が必要なため始動開度補正量は開く方向としたいと判断し、ステップS86に進む。ステップS86では、前回の始動で決定した始動開度補正量が0以上の場合は開きすぎを懸念しステップS002に進み、始動開度補正量の見直しは行わず、前回の始動で決定した始動開度補正量が0未満の場合は開いても問題ないと判断しステップS001に進み、始動開度補正量の見直し変化量ΔXは+αに設定される。
続くステップS88では、今回の始動開度補正量に見直し変更量ΔXを補正し、今回の始動で使用する始動開度補正量を設定する。
また、ステップS85にて、ΔTr(n)=ΔTr(n−1)であるときはステップS002に進み、始動開度補正量の見直しは行わず、前回のΔTr(n−1)より今回のΔTr(n)が低い場合、室内吸込み温度Tiに対し、リモコン設定温度Trまでの差が小さくなっており過剰な冷房能力が不要なため始動開度の開きは抑え気味でもよいと判断し、ステップS87に進み、前回の始動で決定した始動開度補正量が0以下の場合は開きすぎていないと判断しステップS002に進み、始動開度補正量の見直しは行わず、前回の始動で決定した始動開度補正量が0を上回る場合は開きすぎていると判断しステップS003に進み、始動開度補正量の見直し変化量ΔXは−βに設定される。
このように、前回始動で決定した始動開度補正量と前回始動のΔTr(n−1)から、今回始動の時点で今回始動のΔTr(n)に対し始動開度補正量の見直し判断を行うことで妥当性のある始動開度とすることができ、また、予測により補正を行うため、始動開度適正化までの始動回数の低減が可能となる。
なお、第2実施例は室内吸込み温度Tiとリモコン設定温度Trとの温度差を判断手段としているため、第2実施例に本実施例の制御を組み込むことで、予測した始動開度補正量での立ち上がりを確認するため冷媒循環量適正化までの始動回数がより低減され、また補正の精度を高めることが可能であるため、本実施例で決定した始動開度補正量を第2実施例のステップS44に反映し用いることが好ましい。また、共通して室内吸込み温度Tiを判断手段としている第4実施例と複合して用いてもよい。
1…室外機、2…圧縮機、4…室外温度センサ、5…制御装置、6…冷媒配管、7…分岐管、8a…室内機(a号機)、8b…室内機(b号機)、9a…室内膨張弁(a号機)、9b…室内膨張弁(b号機)、10a…室内吸込み温度センサ(a号機)、10b…室内吸込み温度センサ(b号機)、11a…室内吹出し温度センサ(a号機)、11b…室内吹出し温度センサ(b号機)、12a…リモコン(a号機)、12b…リモコン(b号機)、13a…室内(a号機)、13b…室内(b号機)。

Claims (5)

  1. 室内吸込み温度を検知する室内吸込み温度センサと、吹出し空気の温度を検知する室内吹出し温度センサと、室内膨張弁と、を有する複数の室内機と、
    室外温度を検知する室外温度センサと、圧縮機と、室外膨張弁と、を有する室外機と、が冷媒配管により接続され、さらに、
    前記室内膨張弁の開度を制御する制御手段と、室内温度の目標値を設定する室内温度設定手段と、を備えた空気調和機において、
    前記制御手段は、冷房運転始動時に、前記圧縮機の始動回転数に対応する空気調和機全体の冷媒循環量となるようなそれぞれの前記室内膨張弁の始動開度の合計を、冷房運転する前記室内機の容量毎に按分することで前記室内機毎の前記室内膨脹弁の開度を算出し、該算出した開度を始動開度補正量により補正した開度を前記室内機毎の前記室内膨脹弁の始動開度として設定することを特徴とする空気調和機。
  2. 請求項1において、
    前記制御手段は、冷房運転開始後に、所定時間が経過したとき、前記複数の室内機ごとに、前記室内吸込み温度センサで検知した室内吸込み温度と前記室内温度設定手段により設定された温度との温度差に基づいて、前記始動開度補正量を補正し、該補正した始動開度補正量を用いて補正した開度を次回始動時の前記室内膨張弁の始動開度として設定することを特徴とする空気調和機。
  3. 請求項1において、
    前記制御手段は、冷房運転開始後に、所定時間が経過したとき、前記複数の室内機ごとに、前記室内吸込み温度センサで検知した室内吸込み温度と前記室内吹出し温度センサで検知した室内吹出し温度との温度差に基づいて、前記始動開度補正量を補正し、該補正した始動開度補正量を用いて補正した開度を次回始動時の前記室内膨張弁の始動開度として設定することを特徴とする空気調和機。
  4. 請求項2又は3において、
    前記制御手段は、冷房運転始動時に、前記複数の室内機ごとに、前回始動時に前記室内吸込み温度センサで検知した室内吸込み温度と今回始動時に前記室内吸込み温度センサで検知した室内吸込み温度との差に基づいて、前回始動時に決定した前記始動開度補正量を補正し、該補正した始動開度補正量を用いて補正した開度を今回始動時の前記室内膨張弁の始動開度として設定することを特徴とする空気調和機。
  5. 請求項2又は3において、
    前記制御手段は、冷房運転始動時に、前記複数の室内機ごとに、前記室内吸込み温度センサで検知した室内吸込み温度と前記室内温度設定手段により設定された設定温度との温度差の、今回始動時の温度差と前回始動時の温度差との差に基づいて前回始動時に決定した前記始動開度補正量を補正し、該補正した始動開度補正量を用いて補正した開度を今回始動時の前記室内膨張弁の始動開度として設定することを特徴とする空気調和機。
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