次に、この発明の一実施形態のヒートポンプ式温水暖房システム1の構成について、図面に基づき詳細に説明する。
2は加熱された循環液を供給するヒートポンプ式熱源機としてのヒートポンプユニットで、ヒートポンプユニット2は、その筐体内に、冷媒を圧縮する回転数可変の圧縮機3、流路切換手段としての四方弁4、冷媒と循環液との熱交換を行う液冷媒熱交換器5、減圧手段としての膨張弁6、送風ファン7の作動により送られる空気(外気)との熱交換を行う空気熱交換器8とを有し、それらを冷媒配管9で環状に接続して冷媒が循環するヒートポンプ回路10を形成している。前記ヒートポンプ回路10を循環する冷媒としては、HFC冷媒や二酸化炭素冷媒等の任意の冷媒を用いることができる。前記液冷媒熱交換器5は、例えば、プレート式熱交換器で構成され、プレート式熱交換器は、複数の伝熱プレートが積層され、冷媒を流通させる冷媒流路と循環液を流通させる液流路とが各伝熱プレートを境にして交互に形成されている。また、11は外気温度を検出する外気温度センサ、12は膨張弁6から空気熱交換器8までの冷媒配管9に設けられ、暖房運転時に低圧側となる空気熱交換器8を通過する冷媒の温度を検出すると共に、除霜動作時に高圧側となる空気熱交換器8の通過した冷媒の温度を検出する冷媒温度センサである。冷媒温度センサ12で検出する冷媒温度は空気熱交換器8を流通する冷媒温度とみなすことができる。
前記冷媒配管9に設けられた四方弁4は、ヒートポンプ回路10における冷媒の流れ方向を切り換える機能を有し、圧縮機3から吐出された冷媒を、液冷媒熱交換器5、膨張弁6、空気熱交換器8の順に流通させ、圧縮機3に戻す流路を形成する状態(暖房運転時の状態)と、圧縮機3から吐出された冷媒を、空気熱交換器8、膨張弁6、液冷媒熱交換器5の順に流通させ、圧縮機3に戻す流路を形成する状態(除霜運転時の状態)とに切換可能なものである。
13はヒートポンプユニット2と配管としての往き管14および戻り管15を介して接続され、ヒートポンプユニット2で加熱された循環液が供給され、供給された循環液を熱源として被空調空間の暖房を行う熱交換端末である。熱交換端末13としては、床暖房パネルや輻射パネルやラジエータ等の輻射式端末を用いることができる。図1では3台の熱交換端末13A、13B、13Cが設けられているが、熱交換端末13は2台でもよいし、3台以上の複数台であってもよい。
ここで、ヒートポンプユニット2の液冷媒熱交換器5から熱交換端末13に向かって延びる前記往き管14の途中には、1つの往きヘッダ16が設けられており、往き管14のうち往きヘッダ16より上流側部分は、1つの共通往き管14aとして構成され、ヒートポンプユニット2の液冷媒熱交換器5にて加熱された循環液(例えば、水や不凍液等であり、以下、加熱された循環液を温水と適宜表現する)が供給される。そして、往き管14のうち往きヘッダ16より下流側部分は熱交換端末13の台数分だけ(図示の例では3本)の個別往き管14bが分岐している。分岐した個別往き管14bには、それぞれ流量制御弁としての熱動弁17(17A、17B、17C)が付設されている。
同様に、熱交換端末13からヒートポンプユニット2の液冷媒熱交換器5に向かって延びる戻り管15の途中には、1つの戻りヘッダ18が設けられており、戻り管15のうち戻りヘッダ18より上流側部分は、熱交換端末13の台数分だけ(図示の例では3本)の個別戻り管15bが分岐している。そして、戻り管15のうち戻りヘッダ18より下流側部分は、1つの共通戻り管15aとして構成され、個別戻り管15bを介して導入された循環液をヒートポンプユニット2の液冷媒熱交換器5へと戻すものである。
前記往きヘッダ16および前記戻りヘッダ18は、図示のようにヒートポンプユニット2の筐体内に設けられていても、ヒートポンプユニット2筺体外に設けられていても、どちらでもよい。
19はヒートポンプユニット2の液冷媒熱交換器5と、熱交換端末13とを、往き管14および戻り管15で接続して形成され循環液が循環する循環回路で、共通戻り管15aには、循環回路19に循環液を循環させる回転数可変の循環ポンプ20と、循環液を貯留し循環回路19の圧力を調整するシスターン21とを備えている。前記戻り管15の前記個別戻り管15bのそれぞれには、前記液冷媒熱交換器5の液流路に流入する循環液の戻り温度を検出する、戻り温度検出手段としての戻り温度センサ22(22A、22B、22C)が設けられている。
23はリビング等の室内壁面に設置されるリモコンで、リモコン23は、表示部24と、操作スイッチとしての熱交換端末13の運転開始・停止を指示するための運転/停止スイッチ25と、熱交換端末13に対しタイマーによる運転を指示するためのタイマースイッチ26と、熱交換端末13の運転態様(通常モード・セーブモード等)の切替を指示する運転切替スイッチ27と、画面表示を1つ前の画面に戻すための戻るスイッチ28と、メニュー/決定スイッチ29と、上下左右方向への十字キー30と、が備えられている。なお、リモコン23には、各種の表示を行うための制御手段としてのCPUや記憶手段としてのメモリ等が内蔵されており、後述する制御部31との間で双方向通信により情報の伝達を行うことができ、リモコン23は熱交換端末13に供給する循環液の温度レベルを設定する設定手段としての機能を有し、本実施形態では、温度レベルとしてレベル1~9を設定することができる。
ここで、リモコン23の表示について図2を用いて説明すると、表示部24は、前記CPUの制御により、複数の設定画面(画面100~101)を切替可能に表示することができる。すなわち、表示部24は、図2(a)に示す例では、ヒートポンプ式温水暖房システム1全体に係わる設定を行うための全体設定画面100を表示している。表示部24に全体設定画面100が表示されている場合、全体設定画面100中央にヒートポンプユニット2(熱源)の運転状態が表される(この例では停止)と共に、メインタブTM内にヒートポンプユニット2の運転状態を表す状態表示がなされる(この例では停止状態である「OFF」が表記される)。
一方、図2(b)に示す例では、表示部24は、熱交換端末13の運転開始・停止設定を含む、熱交換端末13に係わる設定を行うための端末設定画面101を表示している。なお、端末設定画面101は、接続される熱交換端末13の台数に対応した数(本実施形態では3つ)だけ設けることができる。表示部24に端末設定画面101が表示されている場合、端末設定画面101中央に、対応する熱交換端末13の部屋名および運転状態が表され、画面右寄りには、熱交換端末13に供給される温水の温度レベルと、その温度レベルを表すインジケータが表示される。この例では、被空調空間としてA室に対応する熱交換端末13Aの端末設定画面101が表示され、画面中央にA室の温水暖房が停止状態であること、および画面右寄りに温水の温度レベルが5に設定されていることが表示されている。なお、タブTA内には、A室に対応する熱交換端末13Aの運転状態を表す状態表示(「OFF」表記)がなされる。詳細な説明は省略するが、B室に対応する熱交換端末13Bの端末設定画面101、C室に対応する熱交換端末13Cの端末設定画面101に表示される内容は、上記のA室に対応する熱交換端末13Aの端末設定画面101に表示される内容と同様である。
本実施形態では、1つのリモコン23で3台の熱交換端末13A、13B、13Cの運転設定を行えるようにしているが、リモコン23を熱交換端末13毎に設け、1つのリモコン23から対応する1つの熱交換端末13の運転設定を行えるようなものであってもよい。
31は各種のデータやプログラムを記憶する記憶手段と、演算・制御処理を行う制御手段とを備えた制御部であり、制御部31はヒートポンプユニット2内の各種センサの信号やリモコン23からの信号を受け、圧縮機3、四方弁4、膨張弁6、送風ファン7、熱動弁17、循環ポンプ20の駆動を制御するものであり、熱交換端末13に供給される温水の温度がリモコン23で設定された温度レベルになるように、ヒートポンプユニット2(圧縮機3、四方弁4、膨張弁6、送風ファン7)、熱動弁17、循環ポンプ20を制御して暖房運転を行うものである。
前記制御部31は、暖房運転の際、複数の熱交換端末13の中で暖房運転中の熱交換端末13に供給される温水の温度が温度レベルに到達した場合に、複数の熱交換端末13の中で停止中の熱交換端末13の少なくとも1つに対応する熱動弁17を開いて、その停止中の熱交換端末13に対して温水を流して蓄熱する蓄熱運転を行わせる蓄熱制御手段32を有する。蓄熱運転の詳細については後述する。
また、前記制御部31は、ヒートポンプユニット2の空気熱交換器8の除霜運転時に、複数の熱交換端末13の中で暖房運転中の熱交換端末13に対応する熱動弁17を閉じ、複数の熱交換端末13の中で蓄熱運転を行った停止中の熱交換端末13に対応する熱動弁17を開くように制御する除霜制御手段33を有する。除霜運転の詳細については後述する。
次に、ヒートポンプ式温水暖房システム1の暖房運転時の動作について図面を用いて説明する。ここでは、熱交換端末13Aによる暖房運転が行われる場面について説明を行う。
まず、リモコン23の表示部24に端末設定画面101が表示された状態で、ユーザによりリモコン23の運転/停止スイッチ25が操作され、熱交換端末13Aの暖房運転開始指示がなされると、制御部31でその指示信号を受ける。この時、リモコン23の表示部24には、図3(b)に示されているように、運転状態(A室温水暖房運転中)や温度レベル(レベル5)が表示され、タブTA内は「ON」表記となる。全体設定画面100では、図3(a)に示されているように、画面中央にヒートポンプユニット2(熱源)の運転状態(運転中)が表示されると共に、タブTM内は「ON」表記となる。
前記暖房運転の開始指示が出ると、制御部31はヒートポンプ回路10の作動を開始、具体的には制御部31は、四方弁4を暖房時の流路に切り替え、圧縮機3および送風ファン7の駆動を開始させ、さらに、制御部31は、熱交換端末13Aに対応する熱動弁17Aを開弁させ、循環ポンプ20の駆動を開始させることで、暖房運転が開始される。前記暖房運転中、ヒートポンプ回路10では、圧縮機3で圧縮された高温・高圧のガス状の冷媒が圧縮機3から吐出され、冷媒は凝縮器として機能する液冷媒熱交換器5にて、循環回路19を流れる温水と熱交換を行って循環液に熱を放出して加熱しながら気液混合状態で高圧の冷媒に変化する。そして、この状態の冷媒が膨張弁6において減圧されて低圧の冷媒となって蒸発しやすい状態となり、蒸発器として機能する空気熱交換器8において、送風ファン7の駆動により送風される外気と熱交換を行って外気から吸熱して低温・低圧のガス状の冷媒となって、再び圧縮機3へ戻るものである。(図4中の矢印が示す冷媒の流れ参照。)
前記循環回路19では、一定回転数で駆動される循環ポンプ20の駆動により液冷媒熱交換器5に流入した温水は、凝縮器として機能する液冷媒熱交換器5において冷媒と熱交換されて加熱され、加熱された温水は、その後、熱交換端末13Aに供給されて熱交換端末13Aに対応する被空調空間(A室)の暖房が行われ、熱交換端末13Aにて放熱されて温度低下した温水は再び液冷媒熱交換器5へと戻り加熱されるものである。ここでは、熱交換端末13Bおよび熱交換端末13Cによる暖房は停止されているため、熱交換端末13Bに対応する熱動弁17Bと、熱交換端末13Cに対応する熱動弁17Cとは閉弁された状態であり、図4に示すように、液冷媒熱交換器5で加熱された温水は熱交換端末13Aにのみ循環される。(図4中の矢線が示す温水の流れ参照。)
前記暖房運転時において、制御部31は、熱動弁17Aを開弁状態とし、戻り温度センサ22Aの検出値に応じて、圧縮機3の回転数を制御する。すなわち、戻り温度センサ22Aにより検出される温水温度が、リモコン23で設定された温度レベルに基づいて決定される目標温水温度になるように、圧縮機3の回転数を制御している。上記のように、戻り温度センサ22Aにより検出される温水温度がリモコン23で設定された温度レベルに基づいて決定される目標温水温度になるように圧縮機3の回転数を制御することで、熱交換端末13Aに供給される温水温度が温度レベルになるようにしている。ここでは、戻り温度センサ22Aにより検出される温水温度が目標温水温度に到達することが、熱交換端末13Aに供給される温水の温度がリモコン23で設定された温度レベルに到達したこととして判断される。
より詳細に圧縮機3の回転数制御について説明すると、制御部31は、戻り温度センサ22Aにより検出される温水温度と目標温水温度との温度差から負荷の大きさを判断し、その負荷の大きさに応じて、圧縮機3の回転数を増減制御するものであり、前記戻り温度センサ22Aにより検出される温水温度が目標温水温度に達していない場合は、圧縮機3の回転数を増加させる。一方、前記戻り温度センサ22Aにより検出される温水温度が目標温水温度に到達してきたら、戻り温度センサ22Aにより検出される温水温度を目標温水温度に維持するために、圧縮機3の回転数を減少させるものである。
前記暖房運転を継続して行い、戻り温度センサ22Aにより検出される温水温度が目標温水温度に到達した(=熱交換端末13Aに供給される温水の温度がリモコン23で設定された温度レベルに到達した)場合に、前記蓄熱制御手段32は、熱交換端末13の中で現在停止中の熱交換端末13(13B、13C)に対応する熱動弁17(17B、17C)を開いて、その停止中の熱交換端末13(13B、13C)に対して温水を流して、停止中の熱交換端末13(13B、13C)に、空気熱交換器8の除霜に利用するための熱を蓄熱する蓄熱運転を行わせる。本実施形態では、図5に示すように、停止中の全ての熱交換端末13(13B、13C)の熱動弁17(17B、17C)を開弁するものとしているが、複数の熱交換端末13の中で停止中の熱交換端末13の少なくとも1つに対応する熱動弁17を開くものであればよい。
なお、前記蓄熱制御手段32は、上述のように、戻り温度センサ22Aにより検出される温水温度が目標温水温度に到達した場合に、蓄熱運転を行うものとしているが、戻り温度センサ22Aにより検出される温水温度が目標温水温度に到達した場合とは、戻り温度センサ22Aにより検出される温水温度が目標温水温度に到達した時点や、戻り温度センサ22Aにより検出される温水温度が目標温水温度に到達後、所定時間継続して戻り温度センサ22Aにより検出される温水温度が目標温水温度以上を検出している場合を含む。
前記蓄熱運転時において、停止中の熱交換端末13(13B、13C)に供給される温水の温度レベルとしては、通常の暖房運転時に設定可能な温度レベルの下限値(レベル1)よりも低い設定となる蓄熱レベルに設定され、蓄熱制御手段32は、蓄熱運転開始から一定時間が経過したら、停止中の熱交換端末13(13B、13C)に対応する熱動弁17(17B、17C)を閉じて、蓄熱運転を終了させる。なお、蓄熱運転の終了方法としては、上記のような蓄熱運転開始から一定時間が経過後に限定されず、例えば、蓄熱運転時に、停止中の熱交換端末13に循環し、その停止中の熱交換端末13に対応する戻り温度センサ22により検出される温水温度が前記蓄熱レベルに対応する目標温水温度に到達した場合に、その停止中の熱交換端末13に対応する熱動弁17を閉弁して、蓄熱運転を終了させるようにしてもよい。
また、蓄熱運転終了後に所定の時間が経過した後であって、且つ暖房運転中の熱交換端末13に供給される温水の温度が温度レベルに到達した場合に、再度、蓄熱運転を実行するというように、蓄熱運転を周期的に行うようにしてもよい。
前記暖房運転実行中において、外気温度が低い場合、空気熱交換器8は徐々に着霜する。暖房運転中に、空気熱交換器8に霜が付着していると判断した場合、除霜制御手段33は空気熱交換器8の霜を溶かすための除霜運転を実行するものである。
前記除霜運転の形態は、暖房運転時と逆方向に冷媒を循環させる形態であり、具体的に除霜運転は、膨張弁6を暖房運転時よりも所定の開度(例えば全開)まで拡大すると共に、四方弁4を除霜運転時の状態に切り換えて冷媒の流れ方向が暖房運転時の冷媒の流れ方向と逆になるようにし、圧縮機3から吐出された冷媒を、空気熱交換器8に直接供給して空気熱交換器8に発生した霜を溶かす。空気熱交換器8にて霜との熱交換で温度低下した冷媒は、膨張弁6で減圧されることなく膨張弁6を通過し、液冷媒熱交換器5において温水により加熱され、再び圧縮機3に戻るものである。(図6中の矢印が示す冷媒の流れ参照。)なお、循環回路19を循環する温水は、液冷媒熱交換器5での冷媒との熱交換により温度低下することになる。
前記除霜運転の開始は、例えば、外気温度センサ11で検出した外気温度および冷媒温度センサ12で検出した冷媒温度がそれぞれ予め設定された除霜開始温度に達したか否かなどを除霜制御手段33が判断、すなわち、所定の除霜開始条件が成立したか否かを除霜制御手段33が判断して、除霜開始条件が成立したと判断したら除霜運転を開始することができる。
また、前記除霜運転の完了は、冷媒温度センサ12で検出する空気熱交換器8を流通してきた冷媒の温度が、予め設定された除霜終了温度に達したか否かを除霜制御手段33が判断、すなわち所定の除霜終了条件が成立したか否かを除霜制御手段33が判断して、除霜終了条件が成立したと判断したら除霜運転を終了することができる。
前記除霜運転時において、除霜制御手段33は、循環ポンプ20を駆動させながら、暖房運転中の熱交換端末13Aに対応する熱動弁17Aを閉じ、蓄熱運転時に蓄熱した停止中の熱交換端末13Bに対応する熱動弁17B、および蓄熱運転時に蓄熱した停止中の熱交換端末13Cに対応する熱動弁17Cを開く。このようにすることで、除霜運転時に運転中の熱交換端末13Aに対応する熱動弁17Aは閉じられ、熱交換端末13Aには除霜運転のために温度低下した温水が流れることはなく(図6中の矢線が示す温水の流れ参照。)、熱交換端末13Aに対応するA室の室温が低下するのを防止でき、快適性を損なうことがない。一方、除霜運転時に運転停止中の熱交換端末13Bに対応する熱動弁17B、および運転停止中の熱交換端末13Cに対応する熱動弁17Cは開けられ、前記蓄熱運転時に蓄熱した熱交換端末13Bおよび熱交換端末13C内の温水が循環され(図6中の矢線が示す温水の流れ参照。)、液冷媒熱交換器5にてその温水が保有する保有熱が除霜用として冷媒側に汲み上げられるため、冷媒の温度が高く、空気熱交換器8を除霜する除霜運転時間を従来よりも大幅に短縮することができる。なお、前記除霜運転開始時(除霜開始条件成立時)において、全ての熱交換端末13(13A、13B、13C)が暖房運転中の場合、除霜制御手段33は、それらの熱交換端末13(13A、13B、13C)に対応する熱動弁17(17A、17B、17C)を全て開弁しながら、除霜運転を行うものである。
次に、前記暖房運転時の動作について、その制御手順を図7のフローチャートを用いて説明する。ここでは、先に図4~図6で示したように、複数の熱交換端末13の中で、熱交換端末13Aによる暖房運転が行われる場面に基づき説明する。
前記熱交換端末13(熱交換端末13A)による暖房運転が開始され、ステップS1で、制御部31は、熱交換端末13(熱交換端末13A)に供給される温水の温度がリモコン23で設定された温度レベルに到達したか否か(=戻り温度センサ22Aにより検出される温水温度が目標温水温度に到達したか否か)を判定する。温水温度が設定された温度レベルに到達するまでは、ステップS1の判定が満たされず(S1:NO)ループ待機し、温水温度が設定された温度レベルに到達すると、ステップS1の判定が満たされ(S1:YES)、ステップS2に移る。
ステップS2では、蓄熱制御手段32は、複数の熱交換端末13の中で現在停止中の熱交換端末13があるか否かを判定する。停止中の熱交換端末13がない、すなわち全ての熱交換端末13が暖房運転中の場合は、ステップS2の判定が満たされず(S2:NO)、S1の処理に戻る。一方、停止中の熱交換端末13(熱交換端末13B、13C)がある場合は、ステップS2の判定が満たされ(S2:YES)、ステップS3に移る。
ステップS3では、蓄熱制御手段32は蓄熱運転を開始し、具体的には、複数の熱交換端末13の中で現在停止中の熱交換端末13(熱交換端末13B、13C)に対応する熱動弁17(熱動弁17B、17C)を開弁し、停止中の熱交換端末13(熱交換端末13B、13C)にも温水を循環させ、ステップS4に移る。なお、ステップS3のとき、停止中の熱交換端末13(13B、13C)に供給される温水の温度レベルとしては、通常の暖房運転時に設定可能な温度レベルの下限値(レベル1)よりも低い設定となる蓄熱レベルに設定される。
ステップ4では、蓄熱制御手段32は、蓄熱運転を開始してから一定時間(例えば10分)が経過したか否かを判定する。一定時間が経過するまでは、ステップS4の判定が満たされず(S4:NO)ループ待機し、一定時間が経過すると、ステップS4の判定が満たされ(S4:YES)、ステップS5に移る。
ステップS5では、蓄熱制御手段32は、停止中の熱交換端末13(熱交換端末13B、13C)に対応する熱動弁17(熱動弁17B、17C)を閉弁して、停止中の熱交換端末13(熱交換端末13B、13C)への温水循環を停止させて蓄熱運転を終了し、ステップ6へ移る。
ステップS6では、除霜制御手段33は、所定の除霜開始条件が成立したか否かを判定する。所定の除霜開始条件が成立するまでは、ステップS6の判定が満たされず(S6:NO)ループ待機し、所定の除霜開始条件が成立すると、ステップS6の判定が満たされ(S6:YES)、ステップS7に移る。
ステップS7では、除霜制御手段33は、ヒートポンプ回路10を循環する冷媒の循環方向を暖房運転時と逆方向になるように四方弁4を切り替える等、ヒートポンプユニット2を制御するのと同時に、複数の熱交換端末13の中で暖房運転中の熱交換端末13(熱交換端末13A)に対応する熱動弁17(熱動弁17A)を閉弁し、暖房運転中の熱交換端末13(熱交換端末13A)への温水循環を停止させると共に、蓄熱運転により除霜用の熱を蓄熱した停止中の熱交換端末13(熱交換端末13B、13C)に対応する熱動弁17(熱動弁17B、17C)を開弁し、停止中の熱交換端末13(熱交換端末13B、13C)への温水循環を開始させ、ステップS8に移る。なお、このステップS7において、除霜制御手段33は、蓄熱運転時に除霜用の熱を蓄熱した停止中の熱交換端末13(熱交換端末13B、13C)が、除霜運転を開始するタイミングでも停止中であると判断される場合に、蓄熱運転により除霜用の熱を蓄熱した停止中の熱交換端末13(熱交換端末13B、13C)に対応する熱動弁17(熱動弁17B、17C)を開弁するものである。
ステップS8では、除霜制御手段33は、所定の除霜終了条件が成立したか否かを判定する。所定の除霜終了条件が成立するまでは、ステップS8の判定が満たされず(S8:NO)ループ待機し、所定の除霜終了条件が成立すると、ステップS8の判定が満たされ(S8:YES)、ステップS9に移る。
ステップS9では、除霜制御手段33は、複数の熱交換端末13の中で除霜運転を行う前に暖房運転中であった熱交換端末13(熱交換端末13A)に対応する熱動弁17(熱動弁17A)を開弁し、熱交換端末13(熱交換端末13A)への温水循環を再開させると共に、停止中の熱交換端末13(熱交換端末13B、13C)に対応する熱動弁17(熱動弁17B、17C)を閉弁し、停止中の熱交換端末13(熱交換端末13B、13C)への温水循環を停止させて除霜運転を終了させる。さらに、除霜制御手段33は、ヒートポンプ回路10を循環する冷媒の循環方向を暖房運転時の方向になるように四方弁4を切り替える等、ヒートポンプユニット2を制御して暖房運転を再開させる。
以上説明したように、本実施形態のヒートポンプ式温水暖房システム1によれば、暖房運転中に、複数の熱交換端末13の中で運転中の熱交換端末13に供給される温水の温度が温度レベルに到達した場合に、複数の熱交換端末13の中で停止中の熱交換端末13に対応する熱動弁17を開いて、停止中の熱交換端末13に温水を流し蓄熱する蓄熱運転を行うようにし、暖房運転中に除霜運転が行われる場合には、複数の熱交換端末13の中で運転中の熱交換端末13に対応する熱動弁17を閉じると共に、蓄熱運転時に蓄熱しておいた停止中の熱交換端末13に対応する熱動弁17を開くようにしている。
これにより、暖房運転中の熱交換端末13に供給される温水の温度が温度レベルに到達するまでは、暖房運転中の熱交換端末13にのみ温水が循環され、暖房運転中の熱交換端末13に対応する被空調空間をすばやく暖房することができる。さらに、運転中の熱交換端末13に供給される温水の温度が温度レベルに到達した場合、すなわち、運転中の熱交換端末13に対応する被空調空間の負荷が減少し、その被空調空間の室温が安定した状態となった場合、運転中の熱交換端末13に対応する熱動弁17以外の、停止中の熱交換端末13に対応する熱動弁17も開いて温水を流すことで、暖房運転中の熱交換端末13に対応する被空調空間の室温の安定状態(快適性)を維持しながら、停止中の熱交換端末13に除霜用の熱を蓄熱することができる。そして、除霜運転時には、暖房運転中の熱交換端末13に対応する熱動弁17は閉じられるので、運転中の熱交換端末13には除霜運転のために温度低下した温水が流れることはなく、運転中の熱交換端末13に対応する被空調空間の室温の低下を緩やかにすることができ、快適性を損なうことがないものであり、一方で、蓄熱運転時に蓄熱しておいた停止中の熱交換端末13に対応する熱動弁17は開けられ、その熱交換端末13内の温水が循環されるので、液冷媒熱交換器5にてその温水が保有する保有熱が除霜用として冷媒側に汲み上げられ、冷媒の温度を高くすることができ、空気熱交換器8を除霜する際の除霜運転時間を短縮することができる。
また、本実施形態では特に、蓄熱運転時において、複数の熱交換端末13の中で停止中の熱交換端末13に供給される温水の温度レベルを、通常の暖房運転時に設定可能な温度レベルの下限値(レベル1)よりも低い設定となる蓄熱レベルに設定されるので、停止中の熱交換端末13に対応する被空調空間を無駄に暖房することなく、空気熱交換器8の除霜に必要な分の熱量を蓄熱することができる。
また、本実施形態では特に、蓄熱運転時において、蓄熱制御手段32は、蓄熱運転開始から一定時間が経過したら、停止中の熱交換端末13に対応する熱動弁17を閉じて、蓄熱運転を終了させるので、停止中の熱交換端末13に対応する被空調空間を無駄に暖房することなく、空気熱交換器8の除霜に必要な分の熱量を蓄熱することができる。
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更が可能である。
例えば、上記実施形態では、運転中の熱交換端末13に供給される温水の温度が温度レベルに到達した場合に前記蓄熱運転を実施するようにしているが、他の変形例として、蓄熱制御手段32に、外気温度と空気熱交換器8の冷媒温度とに基づいて設定される蓄熱準備条件、すなわち、外気温度と空気熱交換器8の冷媒温度とから、直に除霜運転が開始されると推測される条件(前記除霜開始条件が成立するよりも手前で成立する条件)を予め記憶しておき、図8のフローチャート(後述するステップS100以外の処理は、図7のフローチャートと同じなので説明を省略する。)に示すように、蓄熱制御手段32が、運転中の熱交換端末13に供給される温水の温度が温度レベルに到達した場合(S1:YES)であって、且つ外気温度センサ11の検出する外気温度と冷媒温度センサ12の検出する冷媒温度とにより、前記蓄熱準備条件が成立したと判定した場合(S100:YES)に、前記蓄熱運転を行うようにしてもよく、このようにすることで、除霜運転が開始される直前で蓄熱運転を行うことができ、除霜運転が開始されるまでに停止中の熱交換端末13に蓄熱した熱量が無駄に放熱される時間が少なくなり、蓄熱した多くの熱量を空気熱交換器8の除霜用に使用することができる。
また、上記実施形態では、運転中の熱交換端末13に供給される温水の温度が温度レベルに到達した場合に前記蓄熱運転を実施するようにしているが、さらに他の変形例として、図9のフローチャート(後述するステップS200以外の処理は、図7のフローチャートと同じなので説明を省略する。)に示すように、蓄熱制御手段32が、運転中の熱交換端末13に供給される温水の温度が温度レベルに到達した場合(S1:YES)であって、且つ駆動中の圧縮機3の回転数が上限回転数より低い予め設定された所定回転数(例えば、70rps)以下と判定した場合(S200:YES)に、前記蓄熱運転を行うようにしてもよく、このようにすることで、暖房運転中の熱交換端末13に対応する被空調空間の負荷が大きく、運転中の熱交換端末13に供給する温水温度を設定した温度レベルまで上げることはできたが、その被空調空間を暖房するのに精一杯で圧縮機3の出力にあまり余裕がない状態の場合(圧縮機3の回転数が前記所定回転数より高い場合)は蓄熱運転を行わずに、運転中の熱交換端末13に対応する被空調空間の暖房に専念させて快適性を維持し、圧縮機3の出力に余裕がある状態(圧縮機3の回転数が前記所定回転数以下の場合)は、蓄熱運転を行うことができ、停止中の熱交換端末13に空気熱交換器8の除霜に必要な分の熱量を蓄熱することができる。
また、上記実施形態では、運転中の熱交換端末13に供給される温水の温度が温度レベルに到達した場合に前記蓄熱運転を実施するようにしているが、さらに別の変形例として、蓄熱制御手段32に、外気温度と空気熱交換器8の冷媒温度とに基づいて設定される蓄熱準備条件、すなわち、外気温度と空気熱交換器8の冷媒温度とから、直に除霜運転が開始されると推測される条件(前記除霜開始条件が成立するよりも手前で成立する条件)を予め記憶しておき、図10のフローチャート(後述するステップS300、S400以外の処理は、図7のフローチャートと同じなので説明を省略する。)に示すように、蓄熱制御手段32が、運転中の熱交換端末13に供給される温水の温度が温度レベルに到達した場合(S1:YES)であって、且つ駆動中の圧縮機3の回転数が上限回転数より低い予め設定された所定回転数(例えば、70rps)以下と判定した場合(S300:YES)であって、且つ外気温度センサ11の検出する外気温度と冷媒温度センサ12の検出する冷媒温度とにより、前記蓄熱準備条件が成立したと判定した場合(S400:YES)に前記蓄熱運転を行うようにしてもよく、このようにすることで、運転中の熱交換端末13に対応する被空調空間の快適性が維持できている状態、且つ圧縮機3の出力に余裕がある状態、且つ除霜運転が開始される直前のときに蓄熱運転を行うことができ、運転中の熱交換端末13に対応する被空調空間の快適性を維持しながら、停止中の熱交換端末13に空気熱交換器8の除霜に必要な分の熱量を蓄熱することができ、さらに、除霜運転が開始されるまでに停止中の熱交換端末13に蓄熱した熱量が無駄に放熱される時間が少なくなり、蓄熱した多くの熱量を空気熱交換器8の除霜用に使用することができる。
なお、本実施形態では、複数の熱交換端末13の中で熱交換端末13Aを運転中とし、熱交換端末13B、13Cを停止中として説明してきたが、本発明が適用されるのはこの組み合わせに限定されず、例えば、複数の熱交換端末13の中で熱交換端末13Bを運転中とし、熱交換端末13A、13Cを停止中としたものでもよく、複数の熱交換端末13の中で熱交換端末13A、13Bの2台を運転中とし、熱交換端末13Cの1台のみを停止中としたものであってもよいものである。
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。