本発明は、蓄熱媒体を貯留する蓄冷熱槽を備えた蓄熱式空気調和機に関する。
空調負荷のピーク時における電力需要の軽減並びにオフピーク時における電力利用の拡大を図る手段として、空調負荷のオフピーク時に蓄熱媒体に蓄冷熱し、ピーク時に蓄熱を暖房運転に、冷熱を冷房運転にそれぞれ寄与させる蓄熱式空気調和機が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
特開平3−28672号公報
上述した従来の蓄熱式空気調和機は、蓄熱電力時間帯に蓄冷熱槽への蓄冷熱を実施しているが、蓄冷時に室外機絞り装置の開度が小さい側に絞られて、十分な蓄冷ができず、また、蓄熱電力時間帯は、空気調和機としての機能が果たせなくなり、快適な空間を提供できないことがあった。
また、暖房運転時に室外機に収納された圧縮機を使用する場合、この圧縮機の運転周波数制限がなかったため、蓄熱媒体の蓄熱を使い過ぎて電力ピーク時の負荷に対応できず、快適な空間を提供できなくなることもあった。
さらに、暖房運転における除霜時には、室内機の吹出し温度が極端に低下して快適さが損なわれることもあった。
さらにまた、暖房運転用の蓄熱電力時間帯に、次回の起動時に使用するために蓄熱媒体を高温化する必要があるが、そのためには、室外機に収納した圧縮機を高速回転させなればならず、夜間の騒音及び振動が大きくなるという問題もあった。
本発明は上記の問題点を解決するためになされたもので、その目的は快適さが損なわれる時間及び機会をできるだけ低く抑えることのできる蓄熱式空気調和機を提供することにある。
本発明の他の目的は、夜間の騒音や振動を低く抑えることのできる蓄熱式空気調和機を提供することにある。
請求項1に係る発明は、室外機に収納されている圧縮機、室外熱交換器及び絞り装置と、室内機に収納されている室内熱交換器とが冷媒配管により順次接続されて冷房モードで運転することが可能な冷凍サイクルが形成され、かつ、室外機と室内機との間に蓄冷熱器が設けられ、蓄冷熱器は、室外機と室内機とで冷媒の循環経路を形成する往路と復路とに接続された蓄冷熱槽と、室外機から流出入する冷媒が室内機のみに流れる第1の冷媒循環状態と、蓄冷熱槽のみに流れる第2の冷媒循環状態とに切り換えることが可能な複数の開閉弁又は切換弁とを備えた蓄熱式空気調和機であって、蓄冷熱槽の入口の冷媒温度を検出する蓄冷熱槽入口温度センサと、蓄冷熱槽の出口の冷媒温度を検出する蓄冷熱槽の出口温度センサと、圧縮機の吸込側の冷媒温度を検出する圧縮機吸込温度センサと、蓄冷運転時に第2の冷媒循環状態にするように開閉弁又は切換弁を制御すると共に、検出された蓄冷熱槽の出口の冷媒温度と入口の冷媒温度との差が設定値以下に低下するように絞り装置の開度を制御し、この絞り装置の開度が所定値に低下したとき、検出された圧縮機の吸込側の冷媒温度と蓄冷熱槽の出口の冷媒温度との差が設定値以下に低下するように絞り装置の開度を制御する制御手段と、を備えたものである。
請求項2に係る発明は、室外機に収納されている圧縮機、四方弁、室外ファンを付帯する室外熱交換器及び絞り装置と、室内機に収納されている室内ファンを付帯する室内熱交換器とが冷媒配管により順次接続されて暖房モードと冷房モードとに切り換えて運転することが可能な冷凍サイクルが形成され、かつ、室外機と室内機との間に蓄冷熱器が設けられ、蓄冷熱器は、室外機と室内機とで冷媒の循環経路を形成する往路と復路とに接続された蓄冷熱槽と、室外機から流出入する冷媒が室内機のみに流れる第1の冷媒循環状態と、室内機及び蓄冷熱槽を直列的に流れる第2の冷媒循環状態とに切り換えることが可能な複数の開閉弁又は切換弁と、第2の冷媒循環状態で冷媒流量を調整する冷媒流量調整弁とを備えた蓄熱式空気調和機であって、室外熱交換器の温度を検出する室外熱交換器温度センサと、第2の冷媒循環循環経路の流量を調節する流量調節弁と、暖房運転時に四方弁を暖房側に設定すると共に、第1の冷媒循環状態にするように開閉弁又は切換弁を制御し、検出された室外熱交換器の温度が設定値以下になったとき四方弁を冷房側に切換えると共に、第2の冷媒循環状態にするように開閉弁又は切換弁を制御して除霜運転し、除霜運転中に室外ファンを停止又は低速回転させると共に、室内ファンを低速回転させ、検出された室外熱交換器の温度が設定値以上になったとき、除霜運転を終了して四方弁を暖房側に復帰させると共に、第1の冷媒循環状態にするように開閉弁又は切換弁を制御する制御手段と、を備えたものである。
請求項3に係る発明は、室外機に収納されている圧縮機、室外熱交換器及び絞り装置と、室内機に収納されている室内熱交換器とが冷媒配管により順次接続されて暖房モードで運転することが可能な冷凍サイクルが形成され、かつ、室外機と室内機との間に蓄冷熱器が設けられ、蓄冷熱器は、室外機と室内機とで冷媒の循環経路を形成する往路と復路とに接続された蓄冷熱槽と、室外機から流出入する冷媒が室内機のみに流れる第1の冷媒循環状態と、室内機及び蓄冷熱槽を直列的に流れる第2の冷媒循環状態とに切り換えることが可能な複数の開閉弁又は切換弁とを備えた蓄熱式空気調和機であって、蓄冷熱槽の蓄熱媒体を加熱する加熱ヒータと、蓄冷熱槽の蓄熱媒体の温度を検出する蓄熱媒体温度センサと、所定の電力時間帯に加熱ヒータに通電させ、検出された蓄熱媒体の温度が設定値を超えたとき加熱ヒータの通電を停止し、次回の暖房運転の起動時に第2の冷媒循環状態にするように開閉弁又は切換弁を制御する制御手段と、を備えたものである。
上記のように構成したことにより、快適さが損なわれる時間及び機会をできるだけ低く抑えることのできる蓄熱式空気調和機を提供することができる。
以下、本発明を図面に示す好適な実施例に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明に係る蓄熱式空気調和機の第1実施例の冷凍サイクル系統図である。この蓄熱式空気調和機は室外機20と室内機30との間に蓄冷熱器40を接続した構成になっている。このうち、室外機20は圧縮機1の吸込側と吐出側との間に四方弁4が冷媒配管で接続され(以下、冷媒配管で、を省略する)、四方弁4の一方の流出入口が接栓20aに直接接続され、四方弁4の他方の流出入口には室外熱交換器2の一端が接続され、この室外熱交換器2の他端が、室外機絞り装置3を介して、接栓20bに接続されている。室内機30においては室内熱交換器13の一端が接栓30aに、その他端が接栓30bにそれぞれ接続されている。
蓄冷熱器40は、室外機20の接栓20a,20bにそれぞれ接続される接栓40a,40bと、室内機30の接栓30a,30bにそれぞれ接続される接栓40c,40dとを備え、その内部に蓄冷熱熱交換器6を含んでなる蓄冷熱槽5を備えている。この蓄冷熱器40の内部において、蓄冷熱槽5に第1の開閉弁7が並列に接続されている。そして、接栓40aと接栓40cとが直接接続され、接栓40bは、第2の開閉弁8及び第1の冷媒流量調整弁11を介して、接栓40dに接続されている。そして、蓄冷熱槽5に並列に接続された第1の開閉弁7には第2の冷媒流量調整弁12が直列に接続されている。また、蓄冷熱槽5の一端は、第3の開閉弁9を介して、接栓40a及び接栓40cを接続する管路に接続されている。蓄冷熱槽5の他端は第4の開閉弁10を介して、接栓40b及び第2の開閉弁8を接続する管路に接続されている。第2の開閉弁8及び第1の冷媒流量調整弁11の相互接続点と、第1の開閉弁7及び第2の冷媒流量調整弁12の相互接続点とが接続されている。
上述した室外機絞り装置3、開閉弁7,8,9,10、冷媒流量調整弁11,12等を制御するために、蓄冷熱槽5の一端部に蓄冷熱槽出口温度センサ15が、蓄冷熱槽5の他端部に蓄冷熱槽入口温度センサ14が設けられ、さらに、圧縮機1の吸い込み側に圧縮機吸込温度センサ16が設けられ、室外熱交換器2にはその温度を検出する室外熱交換器温度センサ17が設けられている。
図2は図1に示した冷凍サイクル系統を制御する制御系の構成を示すブロック図であり、図中、図1と同一の符号を付したものはそれぞれ同一の要素を示している。この図2において制御装置50は演算処理部としてのCPU51と、このCPU51の演算処理上のワーキングエリア又は入出力のバッファとして用いられるRAM52と、CPU51の演算処理に必要な制御手順及び固定データを予め書込み、必要に応じてCPU51に提供するROM53と、周辺機器と物理的に接続して情報の認識を可能にする入出力インタフェース54とが共通のバスで接続されている。そして、周辺機器として、前述した室外機絞り装置3、第1の開閉弁7〜第4の開閉弁10、第1の冷媒流量調整弁11及び第2の冷媒流量調整弁12、蓄冷熱槽入口温度センサ14、蓄冷熱槽出口温度センサ15、圧縮機吸込温度センサ16及び室外熱交換器温度センサ17が入出力インタフェース54に接続され、さらに、圧縮機1を能力制御するインバータ装置21、室内ファン31、ルーバ32及び前面パネル33が入出力インタフェース54に接続されている。
上記のように構成された第1実施例の動作について、以下に説明する。夜間の蓄熱電力時間帯にて、蓄冷熱槽5によって蓄熱媒体を製氷する蓄冷運転時には、室内熱交換器13に冷媒が流入しないように第2の開閉弁8を閉じると共に、蓄冷熱槽5の両端部にそれぞれ設けられた第3の開閉弁9及び第4の開閉弁10を開く。また、四方弁4は図示した状態に切り換えられる。従って、圧縮機1を運転することによって、冷媒は圧縮機1→四方弁4→室外熱交換器2→室外機絞り装置3→第4の開閉弁10→蓄冷熱熱交換器6→第3の開閉弁9→四方弁4→圧縮機1の経路で循環する。このとき、室外熱交換器2は凝縮器として機能し、蓄冷熱熱交換器6は蒸発器として機能することから蓄冷熱槽5において蓄冷が行われる。このとき、蓄冷熱槽5の入口温度と出口温度との差が設定値になるように室外機絞り装置3の開度を調節する。このとき蓄冷が進むに従って室外機絞り装置3の開度は絞られてゆくが、所定の開度まで絞り込まれると冷媒が不足する、いわゆる、冷媒不足サイクルとなる。この冷媒不足サイクルを防ぐために、今度は蓄冷熱槽5の出口温度と圧縮機1の吸込側温度との差が所定値になるように室外機絞り装置3の開度を調節する。
図3は上記の制御を実施するCPU51の具体的処理手順を示すフローチャートである。以下、このフローチャートに従って詳しい動作を説明する。この制御は夜間の蓄熱電力時間帯になると開始されるもので、ステップ101でセット運転中すなわち空気調和機が運転中であるか否かが判定され、運転中であればステップ102で室内ファン31を停止させ、ステップ103でルーバ32や前面パネル33を閉じる。これによって、室内機30を運転停止と同様な状態にする。ステップ101で運転中でないと判定された場合には、直接ステップ104以降の処理を実行する。ステップ104では第3の開閉弁9及び第4の開閉弁10を開き、ステップ105で第2の開閉弁8を閉じる。
次に、ステップ106で室外機絞り装置3を初期開度に設定し、ステップ107にて圧縮機1の運転を開始し、その運転周波数を予め定めた値に固定する。ステップ108では、蓄冷熱槽出口温度センサ15及び蓄冷熱槽入口温度センサ14でそれぞれ検出される温度差、すなわち、(蓄冷熱熱交換器出口温度−蓄冷熱熱交換器入口温度)が予め設定した温度以下であるか否かを判定し、設定した温度以下でないときにはステップ109で室外機絞り装置3の開度を固定し、設定した温度以下であればステップ110で室外機絞り装置3の開度を絞る方向に調節する。そして、ステップ111で室外機絞り装置3の開度が低い側に設定した設定開度に到達したか否かを判定し、この設定開度に到達するまでステップ108〜111の処理を繰り返す。設定開度に到達した段階でステップ112以下の処理を実行する。
ステップ112においては、圧縮機吸込温度センサ16及び蓄冷熱槽出口温度センサ15でそれぞれ検出される温度差、すなわち、(圧縮機吸込温度−蓄冷熱槽出口温度)が予め設定した温度以下であるか否かを判定し、設定した温度以下でないときにはステップ113で室外機絞り装置3の開度を開く方向に調節し、設定した温度以下であればステップ114で室外機絞り装置3の開度を固定する。そして、ステップ115で蓄熱時間を設定したタイマの設定時間が経過したか否かを判定し、経過するまでステップ112〜115の処理を繰り返す。このタイマの設定時間を経過したと判定された場合にはステップ116で蓄冷運転モードを終了する。
これによって、冷媒が過剰に循環されたときに発生する液バックを防いで高効率の運転を可能にすると共に、室外機絞り装置3を過絞りにしたときに発生しやすい冷媒不足サイクルを防止することができる。
図1に示した冷凍サイクル系統図及び図2に示した冷凍サイクル系統を制御する制御系を用いて、冷房運転と蓄冷運転を併用する冷房蓄冷併用運転を行うことができる。これを第2実施例として以下に説明する。
この運転モードは、冷房運転をしながら、蓄熱電力時間帯になった場合、第3の開閉弁9を開き、室外機絞り装置3を全開とし、続いて、第1の冷媒流量調整弁11及び第2の冷媒流量調整弁12の開度、並びに圧縮機1の能力を調節するものである。一方、蓄冷運転中に、冷房運転指令を受けた場合には、第2の開閉弁8を開き、第4の開閉弁10を閉じる。そして、室外機絞り装置3を全開とし、第1の冷媒流量調整弁11及び第2の冷媒流量調整弁12の開度、並びに圧縮機1の能力を調節する。
図4は上記の制御を実施するCPU51の具体的処理手順を示すフローチャートである。以下、このフローチャートに従って詳しい動作を説明する。この制御は夜間の蓄熱電力時間帯になると開始されるもので、ステップ121で冷房モード又は除湿モードで運転中か否かを判定し、運転中であればステップ122に進んで冷房蓄冷併用運転を開始し、ステップ123で第3の開閉弁9を開いてステップ130以下の処理を実行する。一方、冷房モード又は除湿モードで運転中でない場合にはステップ124で停止の状態とし、ステップ125で通常の蓄冷運転を開始する。そして、ステップ126で冷房運転指令が与えられたか否かを判定し、与えられた場合にはステップ128で第2の開閉弁8を開き、ステップ129で第4の開閉弁10を閉じてステップ130以下の処理を実行する。ステップ126で冷房運転指令が与えられていないと判定した場合にはステップ127で通常の蓄冷運転を継続してステップ126の処理に戻る。
次に、ステップ130においては、室外機絞り装置3を全開とし、続いて、ステップ131にて圧縮機1を駆動するインバータ装置21の出力周波数を蓄冷用の一定値に固定する。さらに、ステップ132で蓄冷熱槽出口温度センサ15で検出される蓄冷熱熱交換器6の出口温度が設定温度以下か否かを判定し、設定温度以下であればステップ135の処理に進み、設定温度以下でなければステップ133で第1の冷媒流量調整弁11の開度を第2の冷媒流量調整弁12の開度より小さくし、続いて、ステップ134で圧縮機1を駆動するインバータ装置21の出力周波数を予め設定された値だけ上昇させてステップ132の処理に戻る。
次に、ステップ135においては、蓄冷熱熱交換器6の出口温度が設定温度以下である状態を継続しているか否かを判定し、継続していなければステップ134の処理に戻り、継続しておればステップ136にて圧縮機1を駆動するインバータ装置21の出力周波数を固定した状態を継続し、ステップ137にて冷房運転指令が解除されたか否かを判定し、解除されておればステップ125の処理に戻り、解除されていなければステップ138にて冷房蓄冷併用運転を継続する。
通常、蓄熱電力時間帯は、蓄冷運転のみしか実施できないが、家庭用の空気調和機では蓄冷運転時間でも、通常冷房運転を実施する可能性がある。本実施例では2つの冷媒流量調整弁を使用し、冷媒流量を適正に配分すると共に、圧縮機の能力を可変することによって、蓄冷しながら同時に通常冷房にも対応できるという効果も得られる。
図1に示した冷凍サイクル系統図及び図2に示した冷凍サイクル系統を制御する制御系を用いて、蓄熱媒体の冷熱の使い過ぎ、及び入力の低減を図ることができる。これを第3実施例として以下に説明する。
蓄冷熱槽5の冷熱のみを使用して冷房運転を行う放熱冷房時には、蓄冷熱槽5に蓄冷した蓄熱媒体を利用するため、第1の開閉弁7及び第4の開閉弁10を開き(第3の開閉弁9は全閉)、室外機絞り装置3を全開状態とする。室外機絞り装置3を全開状態とすることによって、圧縮機1は冷媒ポンプの機能を担う冷媒ポンプ運転となる。この冷媒ポンプ運転状態は、圧縮機1毎に設定されているインバータ装置21の出力周波数の範囲において、定格周波数以下の範囲でのみ運転する。定格周波数以上で運転する場合には第1の冷媒流量調整弁11によって適宜調整する。
図5はこの制御を実施するCPU51の具体的処理手順を示すフローチャートである。以下、このフローチャートに従って詳しい動作を説明する。放熱運転開始後のステップ141で第1の開閉弁7及び第4の開閉弁10を開き、ステップ142にて室外機絞り装置3を全開の状態にする。続いて、ステップ143で圧縮機1を運転するインバータ装置21の出力周波数が定格周波数以下か否かを判定する。ここで、定格周波数以下と判定された場合にはステップ144にて第1の冷媒流量調整弁11を全開とする。定格周波数以下ではないと判定された場合にはステップ145で第1の冷媒流量調整弁11の開度を調節してステップ143の周波数判定処理に戻る。ステップ144で第1の冷媒流量調整弁11を全開した場合にはステップ146でインバータ装置21の出力周波数が定格周波数以下か否かを判定し、定格周波数以下である状態を継続しておればステップ147の処理に進み、定格周波数以下でないと判定された場合にはステップ145に戻り、再度第1の冷媒流量調整弁11の開度を調節する。ステップ147では蓄冷熱槽出口温度センサ15の検出温度に基づき蓄熱量が残っているか否かを判定し、残っている場合にはステップ143の処理に戻り、残っていなければステップ148にて通常の冷房運転を実行する。
一般に、放熱冷房運転全般にわたって蓄冷熱槽5に蓄冷された蓄熱媒体を利用すると、蓄熱媒体の蓄熱状態を維持することができなくなり、電力ピーク時における空調負荷に対応できなくなる。そこで、上記の制御を行うことによって、起動からインバータ装置21の周波数が一定値以下に下がるまでの間、又は、定格周波数を超えている間は第1の冷媒流量調整弁11の開度を絞って蓄熱媒体の蓄熱の使い過ぎを防ぎ、さらに、消費電力を低減することができる。
通常、蓄熱式空気調和機では圧縮機の他に放熱運転専用の冷媒ポンプを設けているものが殆どであるが、本実施例では圧縮機を冷媒ポンプとして運転することができるため、装置のコストダウンを図ることができる。
第3実施例は圧縮機を冷媒ポンプとして運転しているが、このとき、室外ファンを通常の速度で運転すると冷凍サイクルが不安定になる。図6は圧縮機の吐出温度が室外気温より下回った場合に室外ファンを停止又は低速回転させて冷凍サイクルを安定させる第4実施例を示すフローチャートである。以下、このフローチャートに従って詳しい動作を説明する。
放熱運転開始後のステップ151で第1の開閉弁7及び第4の開閉弁10を開き、ステップ152にて室外機絞り装置3を全開の状態にする。続いて、ステップ153で圧縮機1を運転するインバータ装置21の出力周波数が定格周波数以下か否かを判定する。ここで、定格周波数以下と判定された場合にはステップ154にて第1の冷媒流量調整弁11を全開とする。定格周波数以下ではないと判定された場合にはステップ155で第1の冷媒流量調整弁11の開度を調節してステップ153の周波数判定処理に戻る。次に、ステップ156で、それぞれ図示を省略した圧縮機1の吐出側の温度センサの検出値と外気温センサの検出値とを比較し、吐出側温度より外気温が高い場合にはステップ158で室外ファンを停止又は低速回転させ、再びステップ156の処理に戻り温度差を確認し、吐出温度が外気温以上になったとき、ステップ157の処理に進む。ステップ157ではインバータ装置21の出力周波数が定格周波数以下か否かを判定し、定格周波数以下である状態を継続しておればステップ159の処理に進み、定格周波数以下でないと判定された場合にはステップ155に戻り、再度第1の冷媒流量調整弁11の開度を調節する。ステップ159では蓄冷熱槽出口温度センサ15の検出温度に基づき蓄熱量が残っているか否かを判定し、残っている場合にはステップ153の処理に戻り、残っていなければステップ160にて通常の冷房運転を実行する。
かくして、第4実施例によれば、圧縮機の吐出側の温度が外気温より下回った場合に、室外ファンを停止又は低速回転させることによって冷凍サイクルの運転を安定させることができる。
上述した第4実施例では、圧縮機の吐出側温度が外気温より低くなっている場合に室外ファンを停止又は低速回転させる制御を行っている。この状態で室外機の制御基板の温度が上昇して、基板の信頼性低下を招くことがある。図7は室外機の基板に装着された図示省略の温度センサの検出温度に基づいて、制御基板が過熱することがないように室外ファンを設定回転数にて運転したり、停止又は低速回転させる第5実施例を示した線図である。ここでは、温度センサの検出温度が予め設定した設定温度A以上に上昇した場合、室外ファンを設定された回転数で運転する。そして、温度センサの検出温度が予め設定した設定温度B(<A)以下に降下した場合には室外ファンを停止又は低速回転とする。初期値はこの停止と低速回転のいずれか一方の選択を可能にする。
かくして、第5実施例によれば、室外機の制御基板に装着されている温度センサの検出値を使用して、室外ファンを停止又は低速回転させた場合でも、室外機の制御基板の過熱による信頼性低下を防止することができる。
図8は本発明に係る蓄熱式空気調和機の第6実施例を説明するために、図3に示したフローチャートに対応するCPU51の処理手順を示したフローチャートである。本実施例は蓄冷熱槽5の蓄熱媒体の温度を検出する図示省略の温度センサを設け、この温度センサの検出値に応じて蓄冷熱槽5内に設けた攪拌手段(図示せず)を運転停止させる機能を付加したものである。図8の処理ステップ中、ステップ161〜167は図3中のステップ101〜107の処理と同じであり、また、ステップ169〜171は図3中のステップ108〜110の処理と同じであり、さらに、ステップ175〜180は図3中のステップ111〜116の処理と同じである。ここでは、ステップ167の後に攪拌機能の運転を開始する処理を付加した点、さらにステップ172にて蓄熱媒体の温度が設定値以下に下がったか否かを判定し、下がっていなければステップ173にて攪拌機能を継続し、下がっておればステップ174にて攪拌機能を停止する処理を付加した点が図3に示す第1実施例と異なっている。
一般に、蓄冷熱槽5内に攪拌機を設けて蓄冷熱を効率的に行うようにしているが、例えば、蓄熱媒体が氷った状態で通電すると攪拌機が破損することがある。本実施例は図3に示した処理手順に、上述したステップ168、172〜174の処理を付加することによって、攪拌手段の破損を未然に防止することができる。
蓄熱電力時間帯において室外気温が低いときには蓄冷運転の能力を下げて運転し、逆に室外気温が高いときには蓄冷能力を上げて運転することにより、無駄な蓄冷運転を回避することができる。図9はこのことを考慮してインバータ装置21の出力周波数を決定する例であり、室外気温の変動範囲をA,B,…,n(A>B>…>n)を境としてn+1個に区分けし、そのときの外気温がどのゾーンに属するかによってインバータ装置21の出力周波数をHz1,Hz2,…,Hzn(Hz1>Hz2>…>Hzn)に設定して運転する。なお、制御のハンチングを防止するために外気温が上昇傾向にある場合と下降傾向にある場合とて゛一般にヒステリシスと称される温度差を持たせている。
かくして、第7実施例によれば、外気温が変化した場合でも、外気温が高いことによる蓄冷時間の不要な延長や、外気温度が低い場合の無駄な蓄冷運転をなくして電力消費の抑制と、安定した蓄冷運転ができるという効果も得られる。
図1に示した冷凍サイクル系統図及び図2に示した冷凍サイクル系統を制御する制御系を用いて、暖房運転時に除霜しても温風の吹出しが停止されることのない運転ができる。これを第8実施例としてその動作を以下に説明する。
蓄熱電力時間帯に蓄冷熱槽5に蓄熱されているか、又は蓄熱中であったとする。そして、暖房運転時に除霜運転が必要になった場合、蓄冷熱槽5に蓄えられた蓄熱媒体の熱を除霜に使用することによって、温風の吹出しが停止されることのない連続運転が可能となる。
すなわち、暖房運転時に、室外熱交換器温度センサ17で検出された温度が設定値以下になった場合、第2の開閉弁8を閉じ、第1の開閉弁7及び第4の開閉弁10を開け、室外機絞り装置3を調節する。次に、室内ファン31を低速運転とし、室外ファン(図示せず)を低速運転することによって、室外熱交換器2の除霜が行われ、かつ、蓄冷熱槽5の蓄熱媒体に蓄えられた熱が冷媒に伝えられ、この冷媒が室内熱交換器13に循環せしめられる。このとき、第1の冷媒流量調整弁11は室外熱交換器温度センサ17及び室内熱交換器の温度センサ(図示せず)の各検出値に基づいて制御する。
暖房併用蓄熱運転時に、室外熱交換器温度センサ17で検出された温度が設定値以下になった場合、第2の開閉弁8及び第3の開閉弁9を閉じ、第1の開閉弁7及び第4の開閉弁10を開け、室外機絞り装置3の開度を調節する。この場合、第2の冷媒流量調整弁12は全閉とし、第1の冷媒流量調整弁11は室外熱交換器温度センサ17及び室内熱交換器の温度センサ(図示せず)の各検出値に基づいて制御する。
図10は上記の制御を実施するCPU51の具体的処理手順を示すフローチャートである。以下、このフローチャートに従って詳しい動作を説明する。先ず、暖房運転開始後のステップ181で、室外熱交換器温度センサ17によって検出された室外熱交換器2の温度が、除霜の要否を判定する設定値以下か否かを判定し、設定値以下でないときはステップ182でそのまま暖房運転を継続する処理を行ってステップ181の処理に戻る。ステップ181で設定値以下と判定された場合にはステップ183にて第1の開閉弁7及び第4の開閉弁10を開き、続いて、ステップ184で通常の暖房運転中か否かを判定する。通常の暖房運転中であれば、それまで開いていた第2の開閉弁8をステップ185で閉じてステップ187の処理に進む。通常の暖房運転でなく、暖房併用蓄熱運転をしていたとすれば、それまで開いていた第2の開閉弁8及び第3の開閉弁9をステップ186で閉じてステップ187の処理に進む。
ステップ187においては室外機絞り装置3の開度を調節し、ステップ188で室外ファンを停止又は低速運転とする。続いて、ステップ189で室内ファン31が低速回転中か否かを判定し、低速回転中であればステップ191の処理に進み、低速回転中でなければステップ190で室内ファン31を低速回転状態にしてステップ191の処理に進む。ステップ191では室内熱交換器温度センサ及び室外熱交換器温度センサ17の検出値に基づいて第1の冷媒流量調整弁11の開度を調節する。次に、ステップ192にて室外熱交換器温度センサ17の検出温度が設定値以上か否かを判定し、設定値以上になることを待つ。そして、設定値以上になったとき、ステップ193で除霜運転を終了して通常の暖房運転又は暖房併用運転に戻る。
通常暖房時の除霜運転は、室内機30から温風の吹き出しを停止させるのが一般的であり、蓄熱式空気調和機においても蓄熱を利用して除霜時間の短縮を図っているものが多いが、やはり、温風の吹き出しを停止させていた。
これに対して、本実施例では、暖房運転中に蓄冷熱槽5の蓄熱媒体の熱を利用して除霜を行うため、室内機30からの温風の吹き出しを継続させることが可能となる。
図11は本発明に係る蓄熱式空気調和機の第9実施例の冷凍サイクル系統図であり、図中、第1実施例を示す図1と同一の要素には同一の符号を付してその説明を省略する。この実施例は次回の暖房運転の起動時の速温風吹出しに対応するために、蓄熱電力時間帯に蓄冷熱槽5に加熱ヒータ18を設置して蓄熱冷媒を加熱するようにした点が図1と構成を異にし、これ以外は全て図1と同一に構成されている。この場合、加熱ヒータ18は入出力インタフェース54に接続されることになる。
図12は上記の制御を実施するCPU51の具体的処理手順を示すフローチャートである。以下、このフローチャートに従って詳しい動作を説明する。先ず、暖房運転開始後のステップ201で、蓄熱電力時間帯か否かを判定し、蓄熱電力時間帯でなければステップ202にて通常の暖房運転又は暖房併用蓄熱運転を実行し、蓄熱電力時間帯であればステップ203で蓄冷熱槽5の蓄熱媒体を迅速に過熱する速温設定がなされているか否かを判定し、速温設定がなされていなければステップ204で圧縮機1による蓄熱運転モードを実行し、速温設定がなされておればステップ205で加熱ヒータ18による過熱動作を実行する。そして、ステップ206で蓄冷熱槽5の蓄熱媒体の温度が設定値以上か否かを判定し、設定値以上でなければステップ205による加熱動作とステップ206の判定動作を繰り返す。そして、設定値以上であると判定された場合にはステップ207で加熱ヒータ18による加熱動作を停止する。
通常の暖房運転の起動時には、室内熱交換器が暖まるまで温風を吹き出させないのが一般的であるが、第9実施例によれば、蓄冷熱槽5に加熱ヒータ18を設けることにより、夜間に蓄熱しておいた蓄熱媒体を使用することにより起動後、即時に温風を吹出させることが可能となる。
また、第9実施例によれば加熱ヒータ18を使用できる時間帯を電気代が安価な蓄熱電力時間帯のみに制限することによって、電気代を低く抑えることができる。さらに、蓄熱電力時間帯に圧縮機1を駆動しないため、夜間の騒音を未然に防止することができる。
例えば、冬季のように外気温が低下すると、蓄冷熱槽5の蓄熱冷媒が氷ってしまうことが考えられる。このために、空気調和機の運転停止中又は通常運転中に蓄熱冷媒の温度が設定値以下に降下したとき、加熱ヒータ18を強制通電することによってこのような不具合を解消することができる。
図13はこの動作を実行するためのCPU51の具体的処理手順を示すフローチャートである。以下、このフローチャートに従って詳しい動作を説明する。先ず、運転停止中であるか通常運転中であるかに拘わらず、ステップ211で蓄冷熱槽5の蓄熱冷媒温度が予め設定した設定温度以下か否かを判定し、設定温度以下でなければステップ212で加熱ヒータ18に対して非通電状態を継続する。蓄熱冷媒の温度が設定温度以下であると判定されたときはステップ213で加熱ヒータ18に対して通電を行う。続いて、ステップ214で、ステップ211とはある温度差だけヒステリシスを持たせた設定温度以上か否かを判定し、設定温度以上になるまでステップ213の通電処理とステップ214の判定処理を繰り返す。そして、設定温度以上になったと判定したときは、ステップ215で加熱ヒータ18に対する通電を解除し、ステップ211の処理にもどる。
かくして、第10実施例によれば、外気温の低下により、蓄冷熱槽5の蓄熱媒体が氷結する等、固化してしまうことを防止することができる。
他の実施例
上述した第1乃至第10実施例では、冷媒の循環経路を変更するために第1の開閉弁7乃至第4の開閉弁10を用いたが、これらの開閉弁の少なくとも一部を三方弁等の切換弁を用いることも可能であり、これによって、構成の簡易化やコストダウンを図ることができる。
本発明に係る蓄熱式空気調和機の第1実施例の冷凍サイクル系統図。
第1実施例の冷凍サイクル系統を制御する制御系の構成を示すブロック図。
第1実施例を構成するCPUの具体的処理手順を示すフローチャート。
本発明に係る蓄熱式空気調和機の第2実施例を構成するCPUの具体的処理手順を示すフローチャート。
本発明に係る蓄熱式空気調和機の第3実施例を構成するCPUの具体的処理手順を示すフローチャート。
本発明に係る蓄熱式空気調和機の第4実施例を構成するCPUの具体的処理手順を示すフローチャート。
本発明に係る蓄熱式空気調和機の第5実施例を説明するために、室外機の制御基板の温度検出値と室外ファンの関係を示した線図。
本発明に係る蓄熱式空気調和機の第6実施例を構成するCPUの具体的処理手順を示すフローチャート。
本発明に係る蓄熱式空気調和機の第7実施例を説明するために、室外気温と圧縮機運転周波数との関係を示した図。
第8実施例を構成するCPUの具体的処理手順を示すフローチャート。
本発明に係る蓄熱式空気調和機の第9実施例の冷凍サイクル系統図。
第9実施例を構成するCPUの具体的処理手順を示すフローチャート。
本発明に係る蓄熱式空気調和機の第10実施例を構成するCPUの具体的処理手順を示すフローチャート。
符号の説明
1 圧縮機
2 室外熱交換器
3 室外機絞り装置
4 四方弁
5 蓄冷熱槽
6 蓄冷熱熱交換器
7 第1の開閉弁
8 第2の開閉弁
9 第3の開閉弁
10 第4の開閉弁
11 第1の冷媒流量調整弁
12 第2の冷媒流量調整弁
13 室内熱交換器
14 蓄冷熱槽入口温度センサ
15 蓄冷熱槽出口温度センサ
16 圧縮機吸込温度センサ
17 室外熱交換器温度センサ
18 加熱ヒータ
20 室外機
30 室内機
40 蓄冷熱器