JP2021070768A - 高分子複合材料、重合性単量体組成物及び高分子複合材料の製造方法 - Google Patents

高分子複合材料、重合性単量体組成物及び高分子複合材料の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】セルロース材料を有効活用することができ、優れた柔軟性、強靭性及び硬さを有する高分子複合材料及びその製造方法を提供する。【解決手段】本発明高分子複合材料は、セルロース材料と、ホスト基及びゲスト基を有する重合体とを含み、前記ホスト基は、シクロデキストリン又はシクロデキストリン誘導体から1個の水素原子又は水酸基が除された1価の基であり、前記ゲスト基は、前記ホスト基を串刺し状に貫通することができる1価の基であり、前記重合体は、側鎖に前記ホスト基を有する構造単位と、側鎖にゲスト基を有する構造単位と、前記ホスト基及び前記ゲスト基の両方を有さない第3の構造単位を含み、前記セルロース材料は、セルロース及びセルロース誘導体の少なくとも一方であり、前記セルロース材料は、前記重合体の少なくとも側鎖と水素結合を形成している。【選択図】なし

Description

本発明は、高分子複合材料、重合性単量体組成物及び高分子複合材料の製造方法に関する。
高分子材料は、例えば、フィルム、接着剤、コーティング剤、成形原料、塗料等に広く応用されており、電子部品、自動車部品、包装材等の分野において欠かすことのできない機能性材料である。特に近年では、各種分野において、より高性能かつ高精度の製品提供が求められていることから、高分子材料に対しても更なる高性能及び高機能化が求められており、様々な新しい高分子材料の研究開発が盛んに行われている。
近年では、ホスト−ゲスト相互作用に代表される非共有結合的相互作用を巧みに利用して、様々な機能性を付与した高分子材料の開発も盛んである。例えば、特許文献1及び2等には、ホスト−ゲスト相互作用を利用した高分子材料が開示されている。このようなホスト−ゲスト相互作用を利用した高分子材料は、従来にはない優れた特性、例えば、優れた機械特性を有することから、新規な材料として、各分野から注目されている。
国際公開第2016/163550号 国際公開第2018/159791号
最近では、高分子材料自体に様々な機能性を付与することが求められているところ、例えば、機械的特性をさらに向上させる高分子材料の開発が強く求められている。高分子材料の性能を向上させる技術として、例えば、異種成分(例えば、セルロース材料)との複合化及びハイブリッド化等が考えられる。しかし、従来のホスト−ゲスト相互作用を利用した高分子材料は、その構造特性から異種材料と混ざりにくい性質があったことから、却ってそれぞれ単独の材料よりも性能が低下することがあり、必ずしも設計どおりに機能が発揮されるというわけではなかった。
特に、低炭素化社会及び循環型社会構築に向けたバイオマス資源の有効活用が強く提唱されている昨今、セルロース材料のようなバイオマス資源を活用した高分子複合材料を得ることができれば、環境にも配慮した高機能性材料として、その利用価値は極めて高いものといえる。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、セルロース材料を有効活用することができ、優れた柔軟性、強靭性及び硬さを有する高分子複合材料、及び、これを製造するために用いられる重合性単量体組成物、並びに高分子複合材料の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特定構造を有するホスト−ゲスト重合体と、セルロース材料とを水素結合を利用して複合化することにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、例えば、以下の項に記載の主題を包含する。
項1
セルロース材料と、ホスト基及びゲスト基を有する重合体とを含み、
前記ホスト基は、シクロデキストリン又はシクロデキストリン誘導体から1個の水素原子又は水酸基が除された1価の基であり、
前記ゲスト基は、前記ホスト基を串刺し状に貫通することができる1価の基であり、
前記重合体は、側鎖に前記ホスト基を有する構造単位と、側鎖にゲスト基を有する構造単位と、前記ホスト基及び前記ゲスト基の両方を有さない第3の構造単位を含み、
前記セルロース材料は、セルロース及びセルロース誘導体の少なくとも一方であり、
前記セルロース材料は、前記重合体の少なくとも側鎖と水素結合を形成している、高分子複合材料。
項2
前記セルロース誘導体は、カルボキシ基、水酸基、アミノ基及びアミド基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基Fを有する化合物で変性されたセルロースである、項1に記載の高分子複合材料。
項3
前記重合体の側鎖は、前記官能基Fと水素結合を形成している、項2に記載の高分子複合材料。
項4
前記ゲスト基の末端と、前記官能基Fとが水素結合を形成している、項3に記載の高分子複合材料。
項5
前記第3の構造単位の側鎖と、前記官能基Fとが水素結合を形成している、項3又は4に記載の高分子複合材料。
項6
前記第3の構造単位の側鎖末端及び前記ゲスト基の末端の少なくとも一方は、カルボキシ基、水酸基、アミノ基及びアミド基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有する、項1〜5のいずれか1項に記載の高分子複合材料。
項7
ホスト基を有する重合性単量体及びゲスト基を有する重合性単量体から形成される包接錯体を含む重合性単量体組成物であって、
前記ホスト基は、シクロデキストリン又はシクロデキストリン誘導体から1個の水素原子又は水酸基が除された1価の基であり、
前記包接錯体は、前記ゲスト基が前記ホスト基を串刺し状に貫通してなる、重合性単量体組成物。
項8
項1〜6のいずれか1項に記載の高分子複合材料の製造に用いられる、項7に記載の重合性単量体組成物。
項9
高分子複合材料の製造方法であって、
ホスト基を有する重合性単量体及びゲスト基を有する重合性単量体から形成される包接錯体と、前記ホスト基及び前記ゲスト基の両方を有さない第3の重合性単量体と、セルロース材料とを含む原料の重合反応を行う工程を備え、
前記ホスト基は、シクロデキストリン又はシクロデキストリン誘導体から1個の水素原子又は水酸基が除された1価の基であり、
前記包接錯体は、前記ゲスト基が前記ホスト基を串刺し状に貫通してなり、
前記セルロース材料は、セルロース及びセルロース誘導体の少なくとも一方である、製造方法。
項10
前記セルロース材料は、イオン性液体に溶解又は分散している、請求項9に記載の製造方法。
項11
前記セルロース誘導体は、カルボキシ基、水酸基、アミノ基及びアミド基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基Fを有する化合物で変性されたセルロースである、項10に記載の製造方法。
項12
前記第3の重合性単量体の側鎖末端及び前記ゲスト基の末端の少なくとも一方は、カルボキシ基、水酸基、アミノ基及びアミド基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有する、項9〜11のいずれか1項に記載の製造方法。
項13
項1〜6のいずれか1項に記載の高分子複合材料を含む、自己修復材料。
本発明の高分子複合材料は、セルロース材料を有効活用することができ、優れた柔軟性、強靭性及び硬さを有する。
本発明の重合性単量体組成物は、前記高分子複合材料を製造するための原料として適している。
本発明の高分子複合材料の製造方法は、簡便な方法でセルロース材料と、ホスト基及びゲスト基を有する重合体との高分子複合材料を製造することができる。
製造例1−1において包接錯体を得るための反応スキームである。 実施例1−1において高分子複合材料を得るための反応スキームである。 実施例1−1で得られた高分子複合材料のFT−IRスペクトルである。 実施例1−1で得られた高分子複合材料におけるクエン酸変性セルロースとホスト−ゲストポリマーとの水素結合を示す模式図である。 (a)は、比較例1−1で得られた高分子材料、(b)は実施例1−1で得られた高分子複合材料のSEM像である。 実施例1−1で得られた高分子複合材料及び比較例1−1で得られた高分子複合材料の引張試験の結果である。 実施例1−1で得られた高分子複合材料と、比較例1−2、1−3及び1−4で得られた高分子複合材料の引張試験の結果である。 実施例1−1で得られた高分子複合材料と、実施例1−2で得られた高分子複合材料の引張試験の結果である。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書中において、「含有」及び「含む」なる表現については、「含有」、「含む」、「実質的にからなる」及び「のみからなる」という概念を含む。
1.高分子複合材料
本発明の高分子複合材料は、セルロース材料と、ホスト基及びゲスト基を有する重合体とを含む。本発明の高分子複合材料において、前記ホスト基は、シクロデキストリン又はシクロデキストリン誘導体から1個の水素原子又は水酸基が除された1価の基であり、前記ゲスト基は、前記ホスト基を串刺し状に貫通することができる1価の基である。また、前記重合体は、側鎖に前記ホスト基を有する構造単位と、側鎖にゲスト基を有する構造単位と、前記ホスト基及び前記ゲスト基の両方を有さない第3の構造単位を含む。さらに、前記セルロース材料は、セルロース及びセルロース誘導体の少なくとも一方であり、前記セルロース材料は、前記重合体の少なくとも側鎖と水素結合を形成している。
本発明の高分子複合材料は、上記構成を有することで、セルロース材料を有効に活用された材料であって、特に、優れた柔軟性、強靭性及び硬さを有する。なお、以下では、前述の「ホスト基及びゲスト基を有する重合体」を「重合体A」と表記する。
(重合体A)
重合体Aは、ホスト基及びゲスト基を少なくとも有して形成される。より具体的に、重合体Aは、側鎖に前記ホスト基を有する構造単位と、側鎖にゲスト基を有する構造単位と、前記ホスト基及び前記ゲスト基の両方を有さない第3の構造単位を含む。ホスト基及びゲスト基は、例えば、重合体Aの側鎖に化学結合(特には共有結合)して存在し得る。
<ホスト基>
重合体Aにおいて、ホスト基は、シクロデキストリン又はシクロデキストリン誘導体から1個の水素原子又は水酸基が除された1価の基を示す。
シクロデキストリン誘導体は、シクロデキストリンが有する少なくとも1個の水酸基の水素原子が炭化水素基、アシル基及び−CONHR(Rはメチル基又はエチル基)からなる群より選ばれる少なくとも1種の基で置換された構造を有することが好ましい。つまり、シクロデキストリン誘導体とは、シクロデキストリン分子が他の有機基で置換された構造を有する分子をいう。ただし、シクロデキストリン誘導体は、少なくとも一つの水素原子又は一つの水酸基を有し、好ましくは少なくとも一つの水酸基を有する。なお、本発明においてホスト基は1価の基に限定されるものではなく、例えば、ホスト基は2価の基であってもよい。
なお、本明細書において、前述の「炭化水素基、アシル基及び−CONHR(Rはメチル基又はエチル基)からなる群より選ばれる少なくとも1種の基」を便宜上、「炭化水素基等」と表記することがある。
ここで、念のための注記に過ぎないが、本明細書でのシクロデキストリンなる表記は、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン及びγ−シクロデキストリンからなる群より選ばれる少なくとも1種を意味する。従って、シクロデキストリン誘導体は、α−シクロデキストリン誘導体、β−シクロデキストリン誘導体及びγ−シクロデキストリン誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種である。
ホスト基は、後記するゲスト基の貫通が容易になりやすいという点で、β−シクロデキストリン誘導体又はγ−シクロデキストリン誘導体から1個の水素原子又は水酸基が除された1価の基を含むことが好ましい。ホスト基がβ−シクロデキストリン誘導体又はγ−シクロデキストリン誘導体から1個の水素原子又は水酸基が除された1価の基を含む場合、その含有割合は、ホスト基の全量に対して、90モル%以上であることが好ましく、99モル%以上であることがさらに好ましく、また、100モル%であってもよい。
ホスト基は、シクロデキストリン又はシクロデキストリン誘導体から1個の水素原子又は水酸基が除された1価の基であるが、シクロデキストリン又はシクロデキストリン誘導体において除される水素原子又は水酸基は、シクロデキストリン又はシクロデキストリン誘導体のどの部位であってもよい。
ここで、シクロデキストリン1分子が有する水酸基の全個数をNとした場合、α−シクロデキストリンはN=18、β−シクロデキストリンはN=21、γ−シクロデキストリンはN=24である。
仮に、ホスト基がシクロデキストリン誘導体から1個の「水酸基」が除された1価の基である場合は、シクロデキストリン誘導体は、シクロデキストリン1分子あたり最大N−1個の水酸基の水素原子が炭化水素基等で置換されて形成される。他方、ホスト基がシクロデキストリン誘導体から1個の「水素原子」が除された1価の基である場合は、シクロデキストリン誘導体は、シクロデキストリン1分子あたり最大N個の水酸基の水素原子が炭化水素基等で置換され得る。
前記ホスト基は、シクロデキストリン1分子中に存在する全水酸基数のうちの70%以上の水酸基の水素原子が前記炭化水素基等で置換された構造を有することが好ましい。この場合、後記ゲスト基の貫通が容易になりやすい。前記ホスト基は、シクロデキストリン1分子中に存在する全水酸基数のうちの80%以上の水酸基の水素原子が前記炭化水素基等で置換されていることがより好ましく、全水酸基数のうちの90%以上の水酸基の水素原子が前記炭化水素基等で置換されていることが特に好ましい。
前記ホスト基は、α−シクロデキストリン1分子中に存在する全水酸基のうちの13個以上の水酸基の水素原子が前記炭化水素基等で置換された構造を有することが好ましい。前記ホスト基は、α−シクロデキストリン1分子中に存在する全水酸基のうちの15個以上の水酸基の水素原子が前記炭化水素基等で置換されていることがより好ましく、全水酸基のうちの17個の水酸基の水素原子が前記炭化水素基等で置換されていることが特に好ましい。
前記ホスト基は、β−シクロデキストリン1分子中に存在する全水酸基のうちの15個以上の水酸基の水素原子が前記炭化水素基等で置換された構造を有することが好ましい。前記ホスト基は、β−シクロデキストリン1分子中に存在する全水酸基のうちの17個以上の水酸基の水素原子が前記炭化水素基等で置換されていることがより好ましく、全水酸基のうちの19個以上の水酸基の水素原子が前記炭化水素基等で置換されていることが特に好ましい。
前記ホスト基は、γ−シクロデキストリン1分子中に存在する全水酸基のうちの17個以上の水酸基の水素原子が前記炭化水素基等で置換された構造を有することが好ましい。前記ホスト基は、γ−シクロデキストリン1分子中に存在する全水酸基のうちの19個以上の水酸基の水素原子が前記炭化水素基等で置換されていることがより好ましく、全水酸基のうちの21個以上の水酸基の水素原子が前記炭化水素基等で置換されていることが特に好ましい。
前記ホスト基が2以上の炭化水素基を有する場合は、それらはすべて同一でもよいし、一部が異なっていてもよい。
前記ホスト基は、β−シクロデキストリン誘導体又はγ−シクロデキストリン誘導体から1個の水素原子又は水酸基が除された1価の基であることが好ましい。この場合、ホスト基の開口部の直径が十分に大きいので、後記ゲスト基がホスト基を串刺し状に貫通しやすく、目的の高分子複合材料が得られやすい。中でも、前記ホスト基は、γ−シクロデキストリン誘導体から1個の水素原子又は水酸基が除された1価の基であることがより好ましく、この場合、得られる高分子複合材料は、特に優れた柔軟性、強靭性及び硬さを有することができる。
シクロデキストリン誘導体において、前記炭化水素基の種類は特に限定されない。前記炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、及びアルキニル基を挙げることができる。
前記炭化水素基の炭素数の数は特に限定されず、例えば、炭化水素基の炭素数は1〜4個であることが好ましい。
炭素数が1〜4個である炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基を挙げることができる。炭化水素基がプロピル基及びブチル基である場合は、直鎖状及び分岐鎖状のいずれであってもよい。
炭化水素基は、本発明の効果が阻害されない限りは、置換基を有していてもよい。
シクロデキストリン誘導体において、アシル基は、アセチル基、プロピオニル、ホルミル基等を例示することができる。アシル基は、さらに置換基を有することもできる。ホスト−ゲスト相互作用を形成しやすく、また、優れた柔軟性、強靭性及び硬さを有する高分子複合材料を得やすいという観点から、アシル基は、アセチル基であることが好ましい。
シクロデキストリン誘導体において、−CONHR(Rはメチル基又はエチル基)は、メチルカルバメート基又はエチルカルバメート基である。ホスト−ゲスト相互作用が形成されやすいという観点から、−CONHRは、エチルカルバメート基であることが好ましい。
シクロデキストリン誘導体において、炭化水素基等は、アシル基が好ましく、アセチル基が特に好ましい。
<ゲスト基>
重合体Aにおいて、前記ゲスト基は、前記ホスト基を串刺し状に貫通することができる基であり、通常は、1価の基である。ゲスト基は、前記ホスト基を串刺し状に貫通することができる限りはその種類は限定されない。
ゲスト基としては、例えば、置換基を有していてもよい炭素数6〜30の直鎖又は分岐状の炭化水素基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいヘテロアリール基等が挙げられる。これらの基はいずれも、置換基はただ一つであってもよいし、二以上であってもよい。より具体的なゲスト基としては、
中でも、ゲスト基は、置換基を有していてもよい炭素数8〜18の鎖状アルキル基を少なくとも含むことが好ましい。
ゲスト基が置換基を有する場合、置換基の種類は特に限定されない。後記するように、重合体Aがセルロース材料と水素結合を形成しやすいという点で、ゲスト基は置換基を有していることが好ましく、特に、水素結合を形成することができる官能基であることが好ましい。
この観点から、ゲスト基が有する置換基は、カルボキシ基、水酸基、アミノ基、ウレア基、ウレタン基、イミド基及びアミド基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基であることが好ましく、中でもカルボキシ基、水酸基、アミノ基及びアミド基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基(以下、「官能基G」と表記する)であることがより好ましい。官能基Gは水酸基又はカルボキシ基であることがより好ましく、カルボキシ基であることが特に好ましい。
ゲスト基が置換基を有する場合、斯かる置換基は、ゲスト基のどの部位にも結合していてもよい。置換基が水素結合を形成しやすく、また、ホスト基の貫通がより容易になりやすいという観点から、置換基のゲスト基への結合部位は、ゲスト基の末端側に近い程好ましく、ゲスト基の末端に結合していることが特に好ましい。ここでいうゲスト基の末端とは、ゲスト基の両端のうち、重合体Aの主鎖とは逆側の一端のことをいう。
ゲスト基のさらなる具体例としては、前記官能基Gを有していてもよい炭素数8〜18のアルキル基、官能基Gを有していてもよい1〜2の分岐を有するアルキル基、官能基Gを有していてもよいフルオロアルキル基、官能基Gを有していてもよいジメチルシロキサン鎖誘導体、官能基Gを有していてもよい複素環を含む芳香族およびその誘導体に基づく基、官能基Gを有していてもよい多環性の飽和・不飽和の炭化水素基等が挙げられる。例えば、炭素数8〜18のアルキル基は直鎖、環状、籠状のいずれでもよい。前記官能基Gを有していてもよい炭素数8〜18のアルキル基としては、例えば、前記官能基Gを有していてもよいn−オクチル基、前記官能基Gを有していてもよいn−ノニル基、前記官能基Gを有していてもよいn−デシル基、前記官能基Gを有していてもよいn−ドデシル基、前記官能基Gを有していてもよいラウリル基、前記官能基Gを有していてもよいステアリル基である。製造が容易で、優れた柔軟性、強靭性及び硬さを有する高分子複合材料を得やすいという観点から、ゲスト基は、末端にカルボキシ基又は水酸基を有する炭素数8〜18のアルキル基であることが好ましい。
重合体Aに含まれるゲスト基は1種又は2種以上とすることができ、製造が容易で安定な水素結合を形成しやすいという点において、重合体Aに含まれるゲスト基は1種であることが好ましい。
<重合体Aの構成単位>
重合体Aは、前述のように、側鎖に前記ホスト基を有する構造単位と、側鎖にゲスト基を有する構造単位と、前記ホスト基及び前記ゲスト基の両方を有さない第3の構造単位を含む。以下、側鎖に前記ホスト基を有する構造単位を「構造単位H」、側鎖に前記ゲスト基を有する構造単位を「構造単位G」と表記する。
<構造単位H>
構造単位Hは、側鎖に前記ホスト基を有する限りは特に限定されず、例えば、公知のホスト基含有重合性単量体(例えば、前記特許文献2に記載のホスト基含有重合性単量体)に由来する構造単位を広く適用することができる。
ホスト基含有重合性単量体としては、ホスト基を有し、かつ、重合性を示す官能基を有している限りは、特にその種類は限定されない。重合性を示す官能基の具体例としては、アルケニル基、ビニル基等の他、−OH、−SH、−NH、−COOH、−SOH、−POH、イソシアネート基、エポキシ基(グリシジル基)等が挙げられる。
前記ホスト基含有重合性単量体の具体例としては、ラジカル重合性を有する官能基を有するビニル化合物にホスト基が結合した化合物を挙げることができる。ラジカル重合性を有する官能基は、炭素−炭素二重結合を含む基を挙げることができ、具体的には、アクリロイル基(CH=CH(CO)−)、メタクリロイル基(CH=CCH(CO)−)、その他、スチリル基、ビニル基、アリル基等が挙げられる。これらの炭素−炭素二重結合を含む基は、ラジカル重合性が阻害されない程度であればさらに置換基を有していてもよい。
ホスト基含有重合性単量体の具体例としては、前記ホスト基を有するビニル系の重合性単量体を挙げることができる。例えば、ホスト基含有ビニル系単量体は、下記の一般式(h1)で表される化合物を挙げることができる。
Figure 2021070768
式(h1)中、Raは水素原子またはメチル基を表し、Rは前記ホスト基を表し、Rはヒドロキシル基、チオール基、1個以上の置換基を有していてもよいアルコキシ基、1個以上の置換基を有していてもよいチオアルコキシ基、1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基、1個の置換基を有していてもよいアミノ基、1個の置換基を有していてもよいアミド基、アルデヒド基及びカルボキシル基からなる群より選択される1価の基から1個の水素原子を除去することにより形成される2価の基を表す。
あるいは、ホスト基含有重合性単量体は、下記の一般式(h2)で表される化合物を挙げることができる。
Figure 2021070768
式(h2)中、Ra、R及びRはそれぞれ式(h1)のRa、R及びRと同義である。
さらには、ホスト基含有重合性単量体は、下記の一般式(h3)で表される化合物を挙げることができる。
Figure 2021070768
式(h3)中、Ra、R及びRはそれぞれ式(h1)のRa、R及びRと同義である。nは1〜20、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜5の整数である。Rbは、水素又は炭素数1〜20のアルキル基(好ましくは炭素数1〜10のアルキル基、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基)を示す。
なお、式(h1)、(h2)及び(h3)で表されるホスト基含有重合性単量体におけるホスト基Rは、シクロデキストリン又はその誘導体から1個の水酸基が除された1価の基である場合の例である。
また、ホスト基含有重合性単量体は、式(h1)、式(h2)及び式(h3)で表される化合物のうちの1種単独とすることができ、あるいは2種以上を含むことができる。この場合、式(h1)、式(h2)及び式(h3)のRaは互いに同一又は異なる場合がある。同様に、式(h1)、式(h2)及び式(h3)のR、並びに式(h1)、式(h2)及び式(h3)のRは各々互いに同一又は異なる場合がある。
式(h1)〜(h3)で定義される置換基は、特に限定されない。例えば、置換基としては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数2〜20のアルキニル基、ハロゲン原子、カルボキシル基、カルボニル基、スルホニル基、スルホン基、シアノ基等を挙げることができる。
式(h1)〜(h3)において、Rが1個の置換基を有していてもよいアミノ基から1個の水素原子を除去することにより形成される2価の基であれば、アミノ基の窒素原子がC=C二重結合の炭素原子と結合し得る。
式(h1)〜(h3)において、Rが1個の置換基を有していてもよいアミド基から1個の水素原子を除去することにより形成される2価の基であれば、アミド基の炭素原子がC=C二重結合の炭素原子と結合し得る。
式(h1)〜(h3)において、Rがアルデヒド基から1個の水素原子を除去することにより形成される2価の基であれば、アルデヒド基の炭素原子がC=C二重結合の炭素原子と結合し得る。
式(h1)〜(h3)において、Rがカルボキシル基から1個の水素原子を除去することにより形成される2価の基である場合、カルボキシル基の炭素原子がC=C二重結合の炭素原子と結合し得る。
式(h1)〜(h3)で表されるホスト基含有重合性単量体は、例えば、(メタ)アクリル酸エステル誘導体(すなわち、Rが−COO−)、(メタ)アクリルアミド誘導体(すなわち、Rが−CONH−又は−CONR−であり、Rは前記置換基と同義である)であることが好ましい。前記−CONR−のRとしては、例えば、炭素数1〜20のアルキル基が好ましく、炭素数1〜10のアルキル基がより好ましく、炭素数1〜6のアルキル基が特に好ましい。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは「アクリル」または「メタクリル」を、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート」または「メタクリレート」を、「(メタ)アリル」とは「アリル」または「メタリル」を意味する。
本発明において、ホスト基含有重合性単量体の具体例として、下記式(h1−7)、(h1−8)、及び、(h1−9)で表される化合物を挙げることができる。
Figure 2021070768
式(h1−7)、(h1−8)及び(h1−9)で表される化合物は、式(h1)においてRが−CONH−であって、それぞれ、α−シクロデキストリン誘導体、β−シクロデキストリン誘導体、γ−シクロデキストリン誘導体から一個の水酸基が除されたホスト基を有している。また、いずれも、シクロデキストリン誘導体におけるN−1個の水酸基の水素原子がアセチル基(各式において「Ac」と表示)で置換されている。
前記ホスト基含有重合性単量体の製造方法は特に限定されず、例えば、公知の製造方法を広く採用することができる。例えば、前述の特許文献2に記載のホスト基含有重合性単量体の製造方法(具体的には、ホスト基含有ビニル系単量体の製造方法又はホスト基含有非ビニル系単量体の製造方法)と同様の製造方法を採用することとができる。
<構造単位G>
構造単位Gは、側鎖に前記ゲスト基を有する限りは特に限定されず、例えば、公知のホスト基含有重合性単量体(例えば、前記特許文献2に記載のゲスト基含有重合性単量体)に由来する構造単位を広く適用することができる。
ゲスト基含有重合性単量体としては、ゲスト基を有し、かつ、重合性を示す官能基を有している限りは、特にその種類は限定されない。重合性を示す官能基の具体例としては、アルケニル基、ビニル基等の他、−OH、−SH、−NH、−COOH、−SOH、−POH、イソシアネート基、エポキシ基(グリシジル基)等が挙げられる。
前記ゲスト基含有重合性単量体の具体例としては、ラジカル重合性を有する官能基を有するビニル化合物に前記ゲスト基が結合した化合物を挙げることができる。ラジカル重合性を有する官能基は、炭素−炭素二重結合を含む基を挙げることができ、具体的には、アクリロイル基(CH=CH(CO)−)、メタクリロイル基(CH=CCH(CO)−)、その他、スチリル基、ビニル基、アリル基等が挙げられる。これらの炭素−炭素二重結合を含む基は、ラジカル重合性が阻害されない程度であればさらに置換基を有していてもよい。
ゲスト基含有重合性単量体の具体例としては、前記ゲスト基が結合したビニル系の重合性単量体を挙げることができる。
例えば、ゲスト基含有ビニル系単量体は、下記の一般式(g1)で表される化合物を挙げることができる。
Figure 2021070768
式(g1)中、Raは水素原子またはメチル基を示し、Rは前記ゲスト基を示し、Rは式(h1)のRと同義である。
式(g1)で表される重合性単量体の中でも、(メタ)アクリル酸エステル又はその誘導体(すなわち、Rが−COO−)、(メタ)アクリルアミド又はその誘導体(すなわち、Rが−CONH−又は−CONR−であり、Rは前記置換基と同義である)であることが好ましい。この場合、重合反応が進みやすく、また、得られる高分子複合材料の靭性及び強度もより高くなり得る。
ゲスト基含有ビニル系単量体の具体例としては、12−(メタ)アクリルアミドドデンカン酸、(メタ)アクリル酸(12−アミノドデシル)、(メタ)アクリル酸(12−ヒドロキシドデシル)等を挙げることができる。
ゲスト基含有ビニル系単量体は、公知の方法で製造することができる。また、ゲスト基含有重合性単量体は、市販品を使用することもできる。
<第3の構造単位>
第3の構造単位は、側鎖に前記ホスト基及びゲスト基を有していない限りは特に限定されず、例えば、前記ホスト基含有重合性単量体及び前記ゲスト基含有重合性単量体と共重合可能な各種の重合性単量体(以下、「重合性単量体C」という)に由来する構造単位を広く適用することができる。
重合性単量体Cとしては、公知である各種のビニル系重合性単量体を挙げることができる。ビニル系重合性単量体の具体例としては、下記一般式(a1)で表される化合物を挙げることができる。
Figure 2021070768
式(a1)中、Raは水素原子またはメチル基、Rはハロゲン原子、ヒドロキシル基、チオール基、1個の置換基を有していてもよいアミノ基又はその塩、1個の置換基を有していてもよいカルボキシル基又はその塩、1個以上の置換基を有していてもよいアミド基又はその塩、1個以上の置換基を有していてもよいフェニル基を示す。
式(a1)中、Rが1個の置換基を有するカルボキシル基である場合、カルボキシル基の水素原子が炭素数1〜20の炭化水素基、ヒドロキシアルキル基(例えば、ヒドロキシメチル基、1−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシエチル基)、メトキシポリエチレングリコール(エチレングリコールのユニット数は1〜20、好ましくは1〜10、特に好ましくは、2〜5)、エトキシポリエチレングリコール(エチレングリコールのユニット数は1〜20、好ましくは1〜10、特に好ましくは、2〜5)等で置換されたカルボキシル基(すなわち、エステル)が挙げられる。炭素数1〜20の炭化水素基は、炭素数1〜15であることが好ましく、2〜10であることが好ましい。炭化水素基は、直鎖及び分岐のいずれであってもよい。
式(a1)中、Rが1個以上の置換基を有するアミド基、すなわち、第2級アミド又は第3級アミドである場合、第1級アミドの1個の水素原子又は2個の水素原子が互いに独立に炭素数1〜20の炭化水素基又はヒドロキシアルキル基(例えば、ヒドロキシメチル基、1−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシエチル基)で置換されたアミド基が挙げられる。炭素数1〜20の炭化水素基は、炭素数1〜15であることが好ましく、2〜10であることが好ましい。炭化水素基は、直鎖及び分岐のいずれであってもよい。
重合性単量体Cは、後記するように、重合体Aがセルロース材料と水素結合を形成しやすいという点で、その側鎖に水素結合を形成することができる官能基を有していることが好ましい。この観点から、重合性単量体Cの側鎖には、カルボキシ基、水酸基、アミノ基及びアミド基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基(以下、「官能基C」と表記する)を有していることが好ましく、中でも官能基Cは水酸基又はカルボキシ基であることがより好ましく、水酸基であることが特に好ましい。
重合性単量体Cがその側鎖に水素結合を形成することができる官能基を有する場合、斯かる官能基は、側鎖のどの部位にも結合していてもよい。重合体Aが水素結合を形成しやすいという観点から、前記官能基の重合性単量体C側鎖への結合部位は、末端側に近い程好ましく、末端に結合していることが特に好ましい。ここでいう重合性単量体C側鎖の末端とは、重合体Aの主鎖とは逆側の一端のことをいう。
重合性単量体Cの具体例としては、(メタ)アクリル酸、アリルアミン、無水マレイン酸、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、酢酸ビニル、該酢酸ビニルと加水分解物の混合物、N、N−ジメチルアクリルアミド、アクリロイルモルフォリン等が挙げられる。これらは1種単独で使用でき、又は2種以上を併用できる。
<重合体Aの構造>
重合体Aにおいて、ホスト基及びゲスト基の含有割合は特に制限されない。構造単位H(つまり、ホスト基)の含有割合は、例えば、構造単位H、構造単位G及び第3の構造単位の全量を基準として0.01〜10モル%とすることができる。この場合、得られる高分子複合材料の柔軟性、強靭性及び硬さもより優れる。構造単位Hの含有割合は、例えば、構造単位H、構造単位G及び第3の構造単位の全量を基準として0.05モル%以上であることが好ましく、0.1モル%以上であることがより好ましく、0.2モル%以上であることがさらに好ましく、0.5モル%以上であることが特に好ましい。また、構造単位Hの含有割合は、例えば、構造単位H、構造単位G及び第3の構造単位の全量を基準として8モル%以下であることが好ましく、6モル%以下であることがより好ましく、5モル%以下であることがさらに好ましく、4モル%以下であることが特に好ましい。
重合体Aにおいて、構造単位G(つまり、ゲスト基)の含有割合は、例えば、構造単位H、構造単位G及び第3の構造単位の全量を基準として0.01〜10モル%とすることができる。この場合、得られる高分子複合材料は優れた柔軟性、強靭性及び硬さを有する。構造単位Gの含有割合は、例えば、構造単位H、構造単位G及び第3の構造単位の全量を基準として0.05モル%以上であることが好ましく、0.1モル%以上であることがより好ましく、0.2モル%以上であることがさらに好ましく、0.5モル%以上であることが特に好ましい。また、構造単位Gの含有割合は、例えば、構造単位H、構造単位G及び第3の構造単位の全量を基準として8モル%以下であることが好ましく、6モル%以下であることがより好ましく、5モル%以下であることがさらに好ましく、4モル%以下であることが特に好ましい。
重合体Aは、構造単位H(側鎖に前記ホスト基を有する構造単位)と、構造単位G(側鎖にゲスト基を有する構造単位)と、第3の構造単位(前記ホスト基及び前記ゲスト基の両方を有さない構造単位)を含む限り、本発明の効果が阻害されない程度に他の単量体単位を含むことができる。重合体Aが他の単量体単位を含む場合、その構造単位の含有割合は、重合体Aの全質量に対して5質量%以下、好ましくは1質量%以下、より好ましくは、0.1質量%以下、特に好ましくは0.05質量%以下とすることができる。
重合体Aは、ランダムポリマー、ブロックポリマー、交互共重合体等のいずれの形態であってもよい。通常、重合体Aは、ランダムポリマーになり得る。また、重合体Aは、架橋構造、枝分かれ構造をとることもできるが、重合体Aは、直鎖状構造あるいは非架橋構造を有することが好ましい。
重合体Aの分子量(例えば、重量平均分子量)は特に限定されず、例えば、一般的なラジカル重合で得られる高分子化合物の分子量と同程度の範囲とすることができる。
重合体Aは、上述したように、セルロース材料と水素結合を形成しやすい観点から、前記ゲスト基の末端は、カルボキシ基、水酸基、アミノ基及びアミド基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基(つまり、官能基G)を有することが好ましい。また、重合体Aにおいて、前記第3の構造単位の側鎖は、カルボキシ基、水酸基、アミノ基及びアミド基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基(官能基C)を有することが好ましい。
従って、重合体Aは、セルロース材料と水素結合を形成しやすい観点から、前記第3の構造単位の側鎖末端及び前記ゲスト基の末端の少なくとも一方は、カルボキシ基、水酸基、アミノ基及びアミド基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有することが好ましく、重合体Aは、前記第3の構造単位の側鎖末端及び前記ゲスト基の末端の両方が、カルボキシ基、水酸基、アミノ基及びアミド基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有することがより好ましい。例えば、重合体Aは、前記第3の構造単位の側鎖末端が水酸基、前記ゲスト基の末端がカルボキシ基である構造を有することが挙げられる。
重合体Aは、ホスト基と、このホスト基を貫通することができるゲスト基を有することから、例えば、ある重合体Aのホスト基の環内を、他の重合体Aのゲスト基が串刺し状に貫通し、これにより、重合体Aどうしの架橋構造が形成される。もちろん、重合体Aの種類によっては、同一分子内においてもホスト基の環内をゲスト基が串刺し状に貫通する場合はある。重合体Aがこのような架橋構造を形成することができることで、高分子複合材料は、優れた柔軟性、強靭性及び硬さを有することができる。
なお、重合体Aのホスト基を貫通するゲスト基は、通常は一つであるが、例えば、ホスト基とゲスト基のサイズによっては、二つのゲスト基がホスト基を貫通することもある。
重合体Aの製造方法は特に限定されず、公知の高分子化合物の製造方法を広く採用することができる。また、後記する高分子複合材料の製造方法の項で説明するように、重合体Aは本発明の高分子複合材料を製造する過程で製造することもできる。
(セルロース材料)
本発明の高分子複合材料において、前記セルロース材料は、セルロース及びセルロース誘導体の少なくとも一方を採用することができる。中でも、前記重合体Aとの水素結合が起こりやすい観点から、セルロース材料は、セルロース誘導体であることが好ましい。
前記セルロース誘導体は、例えば、セルロースが他の官能基で修飾された化合物であり、いわゆる変性セルロースと称することもできる。具体的にセルロース誘導体は、セルロースを構成している構造単位における水酸基又は該水酸基の水素原子が、他の官能基で置換された構造を有する。好ましくは、セルロースを構成している構造単位における水酸基が、他の官能基で置換された構造を有する。
前記セルロース誘導体は、カルボキシ基、水酸基、アミノ基及びアミド基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基Fを有する化合物で変性されたセルロースであることが好ましい。つまり、前記セルロース誘導体は、セルロースを構成している構造単位(グルコースユニット)における水酸基が、カルボキシ基、水酸基、アミノ基及びアミド基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基Fで置換された構造を有することが好ましい。この場合、セルロース材料は、前記重合体Aとの水素結合が起こりやすいので、高分子複合材料は、優れた柔軟性、強靭性及び硬さを有することができる。
中でも、前記セルロース誘導体において、前記官能基Fは、カルボキシ基及び水酸基からなる群より選ばれる1種であることが好ましい。
セルロース誘導体は、例えば、セルロースを、前記官能基(例えば、官能基F)を有する化合物で変性させることで得ることができる。ここで、前記官能基を有する化合物を「化合物F」と表記する。
化合物Fとしては、例えば、カルボキシ基を有する化合物、水酸基を有する化合物、アミノ基を有する化合物、アミド基を有する化合物が挙げられ、これらは、例えば、公知の化合物を広く採用することができる。
具体的に、化合物Fとしては、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメシン酸、シュウ酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、マロン酸等を挙げることができる。中でも、セルロース誘導体の製造が容易であり、また、重合体Aとの水素結合も起こりやすいという観点から、化合物Fはクエン酸であることが好ましい。
従って、セルロース誘導体は、クエン酸変性セルロースであることが好ましい。
セルロース誘導体において、前記化合物Fに由来する官能基の導入量は、例えば、0.1〜5mmol/g、好ましくは0.5〜3mmol/g、より好ましくは1〜2mmol/gである。
セルロース誘導体の具体的な製造方法としては、例えば、セルロースと前記化合物Fとを反応する方法を挙げることができる。セルロースと前記化合物Fとの反応方法は特に限定されず、例えば、公知の縮合反応、付加反応等を広く採用することができる。
セルロースと前記化合物Fとの反応は、例えば、触媒の存在下で行うことができる。触媒の種類は特に限定されず、例えば、酸、アルカリ等を挙げることができる。触媒はアルカリであることが好ましく、具体的には、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属の水酸化物、アンモニア、有機アミン等を挙げることができる。
セルロースと前記化合物Fとの反応温度も特に限定されず、反応性等に応じて適宜選択することができる。例えば、セルロースと前記化合物Fとの反応は、20〜200℃、好ましくは50〜150℃とすることができる。反応時間も特に限定されず、反応温度に応じて適切な時間とすることができ、例えば、30分から20時間である。
セルロースと前記化合物Fとの反応は、各種溶媒中で行うことができ、あるいは、無溶媒で行うこともできる。
セルロース材料に含まれるセルロース又はセルロース誘導体の分子量も特に限定されない。例えば、セルロース又はセルロース誘導体の重量平均分子量は5千〜100万、好ましくは1万〜90万、より好ましくは、10万〜80万である。
(高分子複合材料)
本発明の高分子複合材料において、前記セルロース材料は、前記重合体Aの少なくとも側鎖と水素結合を形成している。
より具体的には、セルロース材料が前記セルロース誘導体である場合、前記重合体Aの側鎖は、前記セルロース誘導体が有する官能基Fと水素結合を形成する。ここでいう重合体Aの側鎖は、前記官能基Gを有するゲスト基、及び/又は、前記官能基Cを有する前記第3の構造単位の側鎖である。
一方、セルロース材料が前記セルロースである場合、前記重合体Aの側鎖は、前記セルロースが有する水酸基と水素結合を形成する。ここでいう重合体Aの側鎖も、前記官能基Gを有するゲスト基、及び/又は、前記官能基Cを有する前記第3の構造単位の側鎖である。
本発明の高分子複合材料では、重合体Aが有するゲスト基の末端(つまり、官能基G)と、セルロース誘導体における前記官能基Fとが水素結合を形成していることが好ましい。あるいは、本発明の高分子複合材料では、重合体Aが有する前記第3の構造単位の側鎖(つまり、官能基C)と、セルロース誘導体における前記官能基Fとが水素結合を形成している好ましい。この場合、水素結合がより形成されやすく強固のものとなり、高分子複合材料は、特に優れた柔軟性、強靭性及び硬さを有することができる。特に好ましくは、本発明の高分子複合材料では、重合体Aが有するゲスト基の末端(つまり、官能基G)と、セルロース誘導体における前記官能基Fとが水素結合を形成し、かつ、重合体Aが有する前記第3の構造単位の側鎖(つまり、官能基C)と、セルロース誘導体における前記官能基Fとが水素結合を形成していることである(後記図4参照)。
本発明の高分子複合材料において、セルロース材料と重合体Aとの含有割合は、本発明の効果が阻害されない限り、特に限定されない。例えば、高分子複合材料において、柔軟性、強靭性及び硬さが向上しやすいという観点から、セルロース材料は、セルロース材料及び重合体Aの全質量に対して0.1〜20質量%、好ましくは0.2〜15質量%、より好ましくは0.5〜10質量%である。
本発明の高分子複合材料は、本発明の効果が阻害されない限り、セルロース材料及び重合体A以外の各種添加剤等を含むこともできる。添加剤としては、例えば、光安定剤、酸化防止剤、防腐剤、界面活性剤、無機粒子等の充填剤、難燃剤、顔料、着色剤、防カビ剤、滑剤等が挙げられる。これらの添加剤は1種又は2種以上が高分子材料に含まれていてもよい。
本発明の高分子複合材料は、セルロース材料及び重合体Aを50質量%以上含み、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましく、95質量%以上であることが特に好ましい。
本発明の高分子複合材料は、例えば、粉末状、顆粒状、ペレット状、板状、フィルム状、ブロック状、シート状、繊維状、ペースト状、粘土状、溶液、分散液等の種々の形態を取り得る。
本発明の高分子複合材料は、重合体A中のホストをゲスト基が貫通する構造(ホスト−ゲスト相互作用)を有することで架橋構造が形成されていると共に、重合体Aとセルロース材料とが水素結合を形成している。重合体Aのホスト−ゲスト相互作用によって、高分子複合材料に柔軟性及び強靭性が発揮されまた、セルロース材料が含まれ、かつ、重合体Aと水素結合を形成していることで、高分子複合材料に優れた硬さが付与される。
加えて、本発明の高分子複合材料は、自己修復機能も有し得る。詳述すると、例えば、高分子複合材料が切断されたとしても、切断面どうしを再接着等させることで、切断面間で再度、重合体Aのホスト−ゲスト相互作用及び/又は水素結合が生じて再結合し、高分子複合材料が修復される。
従って、本発明の高分子複合材料は自己修復材料としても適した材料であるといえる。このような自己修復材料は、本発明の高分子複合材料を含むことで、従来困難とされていた硬い材料でありながら自己修復性が付与された材料であるといえる。
本発明の高分子複合材料は、例えば、既存の硬質プラスチック又は軽量プラスチックが使用される用途に広く適用することができ、その他に、家電外装、電子機器外装、生活用品(食器、トレイ類)等の用途に使用できる。
2.高分子複合材料の製造方法
本発明の高分子複合材料の製造方法は、例えば、下記の工程1を備える。
工程1:ホスト基を有する重合性単量体及びゲスト基を有する重合性単量体から形成される包接錯体と、
前記ホスト基及び前記ゲスト基の両方を有さない第3の重合性単量体と、
セルロース材料と
を含む重合性単量体組成物の重合反応を行う工程。
ここで、前記ホスト基は、シクロデキストリン又はシクロデキストリン誘導体から1個の水素原子又は水酸基が除された1価の基であり、前記包接錯体は、前記ゲスト基が前記ホスト基を串刺し状に貫通してなり、前記セルロース材料は、セルロース及びセルロース誘導体の少なくとも一方である。
上記工程1を含む製造方法により、例えば、前述の本発明の高分子複合材料を製造することができる。
工程1における重合反応により、重合体が形成されると共に、重合体とセルロース材料との水素結合が形成され、高分子複合材料が得られる。ここで形成される重合体は、例えば、前述の重合体Aである。
工程1で使用する重合性単量体組成物に含まれる、ホスト基を有する重合性単量体、ゲスト基を有する重合性単量体、前記ホスト基及び前記ゲスト基の両方を有さない第3の重合性単量体は、それぞれ、前述のホスト基含有重合性単量体、ゲスト基含有重合性単量体及び重合性単量体Cと同様である。
従って、工程1で使用する原料に含まれる前記第3の重合性単量体の側鎖末端は、カルボキシ基、水酸基、アミノ基及びアミド基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基Cを有することが好ましく、中でも官能基Cは水酸基又はカルボキシ基であることがより好ましく、水酸基であることが特に好ましい。
また、工程1で使用する原料に含まれるゲスト基を有する重合性単量体は、ゲスト基の末端がカルボキシ基、水酸基、アミノ基及びアミド基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基Gを有することが好ましく、中でも官能基Gは水酸基又はカルボキシ基であることがより好ましく、カルボキシ基であることが特に好ましい。
工程1で使用する重合性単量体組成物は、各種重合性単量体の他、さらに、セルロース及びセルロース誘導体の少なくとも一方であるセルロース材料を含む。ここでのセルロース誘導体は、前述の本発明の高分子複合材料に含まれるセルロース誘導体と同様である。従って、工程1で使用するセルロース材料は、セルロース誘導体であることが好ましく、カルボキシ基、水酸基、アミノ基及びアミド基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基Fを有する化合物(化合物F)変性されたセルロースであることがより好ましい。例えば、クエン酸変性セルロースをセルロース材料として使用できる。
工程1で使用するセルロース又はセルロース誘導体の形態は特に限定されず、例えば、粉末状、繊維状、顆粒状等の種々の形態が上げられる。また、セルロース材料はセルロースナノファイバー等であってもよい。
重合性単量体組成物は、例えば、ホスト基を有する重合性単量体、ゲスト基を有する重合性単量体及び第3の重合性単量体を含む重合性単量体混合物と、前記セルロース材料とを混合することで調製することができる。
重合性単量体混合物において、前記ホスト基含有重合性単量体及び前記ゲスト基含有重合性単量体は包接錯体を形成している。これにより、工程1での重合反応で形成される重合体Aは前記架橋構造を形成しやすくなるので、得られる高分子複合材料は、優れた柔軟性、強靭性及び硬さを有しやすい。前記包接錯体は、前記ホスト基含有重合性単量体におけるホスト基の環内を、前記ゲスト基含有重合性単量体におけるゲスト基が串刺し状に貫通した構造を有する化合物である。
前記包接錯体の形成方法は特に限定されず、公知の方法を広く採用することができる。例えば、前記ホスト基含有重合性単量体と、前記ゲスト基含有重合性単量体と、前記重合性単量体Cとを含む重合性単量体混合物をあらかじめ調製し、この混合物の超音波処理及び/又は加熱処理を行う工程により、前記包接錯体を形成することができる。この包接錯体は、ホスト基とゲスト基とのホスト−ゲスト相互作用が起こることで形成される。このような包接錯体が形成されると、重合性単量体混合物がより均一な溶液となり得る。
前記超音波処理は特に限定されず、例えば、公知の方法で行うことができる。超音波処理時間は、1分〜12時間、好ましくは15分〜1時間である。前記加熱処理の条件も特に限定されない。加熱処理をする場合、例えば30〜100℃である。もちろん加熱をせずとも、例えば、30℃以下の室温(例えば、10〜28℃)であっても前記包接錯体は形成され得る。加熱手段も特に限定されず、例えば、ホットスターラーを用いる方法、恒温槽を用いる方法等が挙げられる。加熱と共に又は加熱に替えて前記超音波処理を施すこともできる。
包接錯体が形成されたか否かについては、例えば、重合性単量体混合物の状態を目視することで判定することができる。具体的に包接錯体が形成されていなければ、重合性単量体混合物は懸濁した状態あるいは静置すると相分離した状態であるが、包接錯体が形成されると、重合性単量体混合物はジェル状又はクリーム状等の粘性を有する状態となり得る。また、包接錯体が形成されると、重合性単量体混合物は透明となることもある。
重合性単量体混合物と、前記セルロース材料とを混合する場合、両者が均一に混ざりやすいという観点から、前記セルロース材料は、溶媒に溶解又は分散して使用することが好ましく、溶解させて使用することがさらに好ましい。セルロース材料を溶解又は分散させる溶媒を「溶媒S」と表記する。
溶媒Sの種類は特に限定されず、種々の溶媒を広く採用することができる。中でも、セルロース材料、特にセルロース誘導体の溶解性に優れるという点で、イオン性液体であることが好ましい。
イオン性液体としては、例えば、含窒素オニウム塩等が挙げられ、その他、含硫黄オニウム塩、含リンオニウム塩等も挙げられる。より具体的には、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムクロライド、メチルエチルイミダゾリウム塩、テトラアルキルアンモニウム塩、Nアルキルピリジニウム塩、テトラアルキルホスホニウム塩等が挙げられる。イオン性液体のカウンターアニオンも特に限定されず、塩化物イオンの他、ブロモイオン、トリフルオロメチルスルホン酸アニオンが挙げられ、その他、テトラフルオロホウ素アニオン、ヘキサフルオロリンアニオンも挙げられる。
セルロース材料と溶媒Sとの使用割合は特に限定されず、例えば、セルロース材料が溶媒Sに溶解する範囲で調節することができる。例えば、セルロース材料の濃度が1〜20質量%、好ましくは3〜15質量%の範囲となるように、セルロース材料と溶媒Sとの使用割合を調節することができる。
セルロース材料と溶媒Sとの混合は、適宜の方法で行うことができ、例えば、公知の混合機等を使用することができる。両者の混合にあたっては、必要に応じて加熱処理をしてもよい。加熱処理の条件は特に限定されず、例えば、イオン性液体を溶媒とするセルロース材料の溶液を調製する場合は、加熱温度は50〜150℃とすることができ、加熱時間は1時間〜5日とすることができる。
工程1で使用する原料は、例えば、前記重合性単量体組成物と、セルロース材料の溶液又は分散液とを混合することで得ることができる。両者の混合方法は特に限定されず、適宜の方法を採用することができる。
前記重合性単量体組成物において、前記ホスト基含有重合性単量体の含有割合は、例えば、前記ホスト基含有重合性単量体、前記ゲスト基含有重合性単量体及び前記重合性単量体Cの全量を基準として0.01〜10モル%とすることができる。この場合、得られる高分子複合材料は優れた柔軟性、強靭性及び硬さを有する。前記ホスト基含有重合性単量体の含有割合は、前記ホスト基含有重合性単量体、前記ゲスト基含有重合性単量体及び前記重合性単量体Cの全量を基準として0.05モル%以上であることが好ましく、0.1モル%以上であることがより好ましく、0.2モル%以上であることがさらに好ましく、0.5モル%以上であることが特に好ましい。また、前記ホスト基含有重合性単量体の含有割合は、前記ホスト基含有重合性単量体、前記ゲスト基含有重合性単量体及び前記重合性単量体Cの全量を基準として8モル%以下であることが好ましく、6モル%以下であることがより好ましく、5モル%以下であることがさらに好ましく、4モル%以下であることが特に好ましい。
前記重合性単量体組成物において、前記ゲスト基含有重合性単量体の含有割合は、例えば、前記ホスト基含有重合性単量体、前記ゲスト基含有重合性単量体及び前記重合性単量体Cの全量を基準として0.01〜10モル%とすることができる。この場合、得られる高分子複合材料は優れた柔軟性、強靭性及び硬さを有する。前記ゲスト基含有重合性単量体の含有割合は、前記ホスト基含有重合性単量体、前記ゲスト基含有重合性単量体及び前記重合性単量体Cの全量を基準として0.05モル%以上であることが好ましく、0.1モル%以上であることがより好ましく、0.2モル%以上であることがさらに好ましく、0.5モル%以上であることが特に好ましい。また、前記ゲスト基含有重合性単量体の含有割合は、前記ホスト基含有重合性単量体、前記ゲスト基含有重合性単量体及び前記重合性単量体Cの全量を基準として8モル%以下であることが好ましく、6モル%以下であることがより好ましく、5モル%以下であることがさらに好ましく、4モル%以下であることが特に好ましい。
前記重合性単量体組成物において、重合性単量体混合物と、セルロース材料との含有割合は、本発明の効果が阻害されない限り特に限定されない。例えば、得られる高分子複合材料の柔軟性、強靭性及び硬さが向上しやすいという観点から、セルロース材料は、セルロース材料及び重合性単量体混合物の全質量に対して0.1〜20質量%、好ましくは0.2〜15質量%、より好ましくは0.5〜10質量%である。
工程1で使用する重合性単量体組成物は、重合開始剤を含むことができる。重合開始剤の種類は特に限定されず、公知の重合開始剤を使用できる。重合開始剤としては、例えば、過硫酸アンモニウム(以下、APSと称することもある)、アゾビスイソブチロニトリル(以下、AIBNと称することもある)、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド(以下、VA−044と称することもある)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、ジ−tert−ブチルペルオキシド、tert−ブチルヒドロペルオキシド、過酸化ベンゾイル、光重合開始剤(イルガキュア(登録商標)シリーズ等)等が挙げられる。ラジカル重合性の重合開始剤の濃度は、例えば、重合性単量体全量に対し、0.1〜5モル%とすることができる。
工程1において、重合反応を行うにあたり、必要に応じて、その他の添加剤を重合性単量体組成物に添加してもよい。その他の添加剤としては、重合促進剤、架橋剤等が例示される。上記重合促進剤としては、例えば、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン等である。重合促進剤の濃度は、例えば、重合性単量体全量に対し、0.5〜5モル%とすることができる。
重合反応は、重合用溶媒を使用してもよい。重合溶溶媒を使用する場合は、溶媒の種類は特に限定されず、その使用量も特に限定されない。重合反応は、溶媒の不存在下で行うこともできる。
重合反応の条件は、単量体の重合反応性、重合開始剤の種類及び半減期温度等に応じて適宜の条件で行うことができ、例えば、公知のラジカル重合法等を広く採用することができる。また、重合様式は、バルク重合、溶液重合、分散重合、懸濁重合、沈殿重合等が挙げられ、特に制限はない。光重合を採用する場合、例えば、波長200〜400nmのUV光を照射することにより重合反応を行うことができる。
重合反応の後、得られた重合物を適宜の方法で洗浄することができる。得られる高分子複合材料の機械物性が向上しやすいという点で、得られた重合物から、溶媒(特にイオン性液体)を除去するための工程を備えることが好ましい。
溶媒を除去する方法は特に限定されず、公知の方法を広く採用することができる。溶媒Sとしてイオン性液体を使用した場合は、重合物を水で洗浄後、乾燥処理を行うことができる。
以上の工程1により、高分子複合材料を得ることができる。高分子複合材料中、イオン性液体の含有割合は、例えば、高分子複合材料に対して、1質量%以下、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下、特に好ましくは0.05質量%以下である。
3.重合性単量体組成物
本発明の重合性単量体組成物は、前記ホスト基を有する重合性単量体及び前記ゲスト基を有する重合性単量体から形成される包接錯体を含む。前記ホスト基は、シクロデキストリン又はシクロデキストリン誘導体から1個の水素原子又は水酸基が除された1価の基であり、前記包接錯体は、前記ゲスト基が前記ホスト基を串刺し状に貫通してなる。
本発明の重合性単量体組成物において、包接錯体は、前述の本発明の高分子複合材料を製造するにあたって使用する包接錯体を意味し、その構成、形成方法及び好ましい態様はすべてを本発明の重合性単量体組成物に含まれる包接錯体を援用することができる。
重合性単量体組成物は、包接錯体のほか、前記第3の重合性単量体、セルロース材料及び溶媒S(例えば、イオン性液体)等を含むことができる。つまり、本発明の重合性単量体は、前述の本発明の高分子複合材料を製造方法において、工程1で使用する重合性単量体組成物と同一の構成とすることもできる。
従って、本発明の重合性単量体組成物は、前記重合体Aを簡便な方法で得ることができるので、前述の本発明の高分子複合材料の製造用の原料として好適に使用することができる。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の態様に限定されるものではない。
(製造例1−1)
ホスト基含有重合性単量体として、下記式(H1)で表される化合物を公知の方法(例えば、前記特許文献2の製造例6と同様の手順)で製造した。これを「PAcγCDAAmMe」と表記した。得られたPAcγCDAAmMeは、ホスト基がγ−シクロデキストリンの一つの水酸基が除された1価の基であって、全水酸基の100%がアセチル基に置換されていることを確認した。
Figure 2021070768
図1に示す反応スキームに従い、ホスト基含有重合性単量体であるPAcγCDAAmMeと、ゲスト基含有重合性単量体である12−(アクリルアミド)ドデカン酸(12-acrylamido dodecanoic acidともいう)とからなる包接錯体を含む重合性単量体混合物を調製した。具体的には、PAcγCDAAmMe(図1中では「PAcCD」と表記)と、12−(アクリルアミド)ドデカン酸(図1中では「Dod」と表記)と、第3の重合性単量体として、ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)とをそれぞれ、モル比が1:1:98となるように混合して混合物を調製した。次いで、この混合物を、25℃にて超音波処理を90分間照射し、これにより、HEA中にPAcγCDAAmMe及び12−(アクリルアミド)ドデカン酸の包接錯体が存在する重合性単量体混合物を調製した。
(製造例1−2)
12−(アクリルアミド)ドデカン酸の代わりにN−ドデシルアクリルアミド(カルボキシ基を含有していない)に変更したこと以外は製造例1−1と同様の方法で、HEA中にPAcγCDAAmMe及びN−ドデシルアクリルアミドの包接錯体が存在する重合性単量体混合物を調製した。
(製造例1−3)
HEAの代わりに、水酸基を有していないエチルアクリレート(EA)に変更したこと以外は製造例1−1と同様の方法で、EA中にPAcγCDAAmMe及び12−(アクリルアミド)ドデカン酸の包接錯体が存在する重合性単量体混合物を調製した。
(製造例1−4)
12−(アクリルアミド)ドデカン酸の代わりにN−ドデシルアクリルアミドに変更し、かつ、HEAの代わりにエチルアクリレート(EA)に変更したこと以外は製造例1−1と同様の方法で、EA中にPAcγCDAAmMe及びN−ドデシルアクリルアミドの包接錯体が存在する重合性単量体混合物を調製した。
(製造例2−1)
ホスト基含有重合性単量体として、下記式(H2)で表される化合物を公知の方法(例えば、前記特許文献2の製造例7と同様の手順)で製造した。これを「PAcβCDAAmMe」と表記した。得られたPAcβCDAAmMeは、ホスト基がβ−シクロデキストリンの一つの水酸基が除された1価の基であって、全水酸基の100%がアセチル基に置換されていることを確認した。
Figure 2021070768
次いで、PAcγCDAAmMeをPAcβCDAAmMeに変更したこと以外は製造例1−1と同様の方法でHEA中にPAcβCDAAmMe及び12−(アクリルアミド)ドデカン酸の包接錯体が存在する重合性単量体混合物を調製した。
(実施例1−1)
図2に示すスキームに従って、高分子複合材料を調製した。まず、セルロース材料として、下記式(C1)で表されるクエン酸変性セルロース(以下、「CNF」と略記)と、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムクロライド(BMImCl)とを混合し、100℃で3日間保持することで、7.5質量%濃度のCNF溶液を調製した。なお、クエン酸変性セルロースナノファイバーは、次の手順で合成した。
セルロース(nacalai tesque製)30gを200mLの脱イオン水に分散し、1M NaOH水溶液を1.4mL加え、5分間撹拌した。そこで、クエン酸90gを加えて完全に溶解したのち、130℃に加熱し、12時間反応させた。反応は開放系で実施し、水の蒸発後に固相で進行させた。反応後、上澄みのpHが7になるまで水で洗浄し、未反応のクエン酸を除去した。続いて、300mLのメタノールとアセトンとで洗浄し、減圧乾燥することでクエン酸変性セルロースを得た。セルロースへのクエン酸の導入はFT−IR測定によって確認し、電気伝導率測定から求められたカルボン酸導入量は1.8mmol/gであった。
Figure 2021070768
次いで、上記CNF溶液と、製造例1−1で調製した重合性単量体混合物とを、CNF溶液中のCNFの含有割合が重合性単量体混合物に対して5質量%となるように混合し、攪拌を続けることで、均一な溶液を得た。溶液に光重合開始剤としてIRGACURE 184(登録商標)を重合性単量体混合物の全量に対して0.2モル%加えて重合性単量体組成物を調製した。この重合性単量体組成物を鋳型に添加し、水銀ランプ(波長365nm)を1時間照射することで重合反応を行った。得られた重合物を水で洗浄し、次いで、70℃で24時間加熱することで、重合物中のイオン液体(BMImCl)を取り除いた。これにより、厚み1mmの高分子複合材料を得た。得られた高分子複合材料を「PAcγCD−Dod−HEA−CNF(x、y、z)」と表記した。
ここで、xは高分子複合材料を製造するにあたって使用したホスト基含有重合性単量体、ゲスト基含有重合性単量体及び第3の重合性単量体の総量に対するホスト基の含有割合(モル%)、yはホスト基含有重合性単量体、ゲスト基含有重合性単量体及び第3の重合性単量体の総量に対するゲスト基の含有割合(モル%)、zは、重合性単量体混合物に対するCNFの含有割合(質量%)である。従って、実施例1−1で得られた高分子複合材料は、PAcγCD−Dod−HEA−CNF(1、1、5)と表記された。
(実施例1−2)
製造例1−1で調製した重合性単量体混合物を、製造例1−2で調製した重合性単量体混合物に変更したこと以外は実施例1−1と同様の方法で高分子複合材料を得た。得られた高分子複合材料を「PAcγCD−DodAA−HEA−CNF(1、1、5)」と表記した。
(実施例1−3)
製造例1−1で調製した重合性単量体混合物を、製造例1−3で調製した重合性単量体混合物に変更したこと以外は実施例1−1と同様の方法で高分子複合材料を得た。得られた高分子複合材料を「PAcγCD−Dod−EA−CNF(1、1、5)」と表記した。この高分子複合材料は、固体状ではなく、均一な液状であった。
(実施例2−1)
製造例1−1で調製した重合性単量体混合物を、製造例2−1で調製した重合性単量体混合物に変更したこと以外は実施例1−1と同様の方法で高分子複合材料を得た。得られた高分子複合材料を「PAcβCD−Dod−HEA−CNF(x、y、z)」と表記した。ここで、x、y、zはホスト基がβ−シクロデキストリン誘導体に由来することを除いては「PAcγCD−Dod−HEA−CNF(x、y、z)」と同義である。従って、実施例2−1で得られた高分子複合材料は、PAcβCD−Dod−HEA−CNF(1、1、5)と表記された。
(比較例1−1)
製造例1−1で調製した重合性単量体混合物の全量に対し、光重合開始剤としてIRGACURE 184(登録商標)を0.2モル%加えて原料を調製し、この原料に水銀ランプ(波長365nm)を1時間照射することで重合反応を行った。これにより、高分子材料を得た。得られた高分子材料を「PAcγCD−Dod−HEA(1、1、0)」と表記した。
(比較例1−2)
実施例1−1で使用した7.5質量%濃度のCNF溶液と、HEAとを、CNF溶液中のCNFがHEAに対して5質量%となるように混合し、攪拌を続けることで、均一な溶液を得た。溶液に光重合開始剤としてIRGACURE 184(登録商標)をHEAの全量に対して0.2モル%加えて原料を調製し、この原料に水銀ランプ(波長365nm)を1時間照射することで重合反応を行った。得られた重合物を水で洗浄し、次いで、70℃で24時間加熱することで、重合物中のイオン液体(BMImCl)を取り除いた。これにより、高分子複合材料を得た。得られた高分子複合材料を「HEA−CNF(0、0、5)」と表記した。
(比較例1−3)
製造例1−1で使用したPAcγCDAAmMeと、HEAとをそれぞれ、モル比が1:99となるように混合して混合物を調製した。次いで、この混合物と、実施例1−1で使用した7.5質量%濃度のCNF溶液とを、CNF溶液中のCNFが前記混合物に対して5質量%となるように混合し、攪拌を続けることで、均一な溶液を得た。溶液に光重合開始剤としてIRGACURE 184(登録商標)を前記混合物の全量に対して0.2モル%加えて原料を調製し、この原料に水銀ランプ(波長365nm)を1時間照射することで重合反応を行った。得られた重合物を水で洗浄し、次いで、70℃で24時間加熱することで、重合物中のイオン液体(BMImCl)を取り除いた。これにより、高分子複合材料を得た。得られた高分子複合材料を「PAcγCD−HEA−CNF(1、0、5)」と表記した。
(比較例1−4)
12−(アクリルアミド)ドデカン酸と、第3の重合性単量体として、HEAとをそれぞれモル比が1:99となるように混合して混合物を調製した。次いで、この混合物と、実施例1−1で使用した7.5質量%濃度のCNF溶液とを、CNF溶液中のCNFが前記混合物に対して5質量%となるように混合し、攪拌を続けることで、均一な溶液を得た。溶液に光重合開始剤としてIRGACURE 184(登録商標)を前記混合物の全量に対して0.2モル%加えて原料を調製し、この原料に水銀ランプ(波長365nm)を1時間照射することで重合反応を行った。得られた重合物を水で洗浄し、次いで、70℃で24時間加熱することで、重合物中のイオン液体(BMImCl)を取り除いた。これにより、高分子複合材料を得た。得られた高分子複合材料を「Dod−HEA−CNF(0、1、5)」と表記した。
(比較例1−5)
製造例1−1で調製した重合性単量体組成物を、製造例1−4で調製した重合性単量体組成物に変更したこと以外は実施例1−1と同様の方法で高分子複合材料を得た。得られた高分子複合材料を「PAcγCD−DodAA−EA−CNF(1、1、5)」と表記した。しかし、この高分子複合材料は、CNFが明らかに相分離をして脆い材料であり、種々の物性を測定することはできなかった。
(比較例2−1)
製造例2−1で調製した重合性単量体組成物の全量に対して光重合開始剤としてIRGACURE 184(登録商標)を0.2モル%加えて原料を調製し、この原料に水銀ランプ(波長365nm)を1時間照射することで重合反応を行った。これにより、高分子材料を得た。得られた高分子材料を「PAcβCD−Dod−HEA(1、1、0)」と表記した。
<水素結合の確認>
実施例1−1で得られた高分子複合材料PAcγCD−Dod−HEA−CNF(1、1、5)のFT−IR測定により、水素結合の状態を確認した。FT−IR測定は、ATR−FTIR「JASCO FT/IR−6100 spectrometer」を使用した。
図3は、実施例1−1で得られた高分子複合材料PAcγCD−Dod−HEA−CNF(1、1、5)のFT−IRスペクトルを示している。また、図3には比較として、比較例1−1(CNF不使用)で得られた高分子材料PAcγCD−Dod−HEA(1、1、0)と共にクエン酸変性セルロースナノファイバー(CNF)と、イオン性液体BMImClのスペクトルも示している。
図3において、実施例1−1で得られた高分子複合材料では、C=O伸縮振動が、比較例1−1で得られた高分子複合材料におけるC=O伸縮振動よりも低波数側へのシフト(1735→1723cm−1)しており、また、3200〜3600cm−1領域のCNFにおけるOH伸縮振動に基づく吸収スペクトルがブロードになっていることが認められた。この結果から、実施例1−1で得られた高分子複合材料は、ホスト基及びゲスト基を有する重合体とCNFとが水素結合を形成していることがわかった。
図4は、実施例1−1で得られた高分子複合材料におけるCNFとホスト−ゲストポリマーとが水素結合を形成していることを示す模式図である。この図4に示すように、CNFのクエン酸由来のカルボキシ基は、ホスト−ゲストポリマーにおけるゲスト基由来のカルボキシ基、及び、ホスト−ゲストポリマーにおける第3の構造単位由来の水酸基と水素結合を形成しているといえる。
<SEM観察>
図5(a)は、比較例1−1で得られた高分子材料PAcγCD−Dod−HEA(1、1、0)、(b)は実施例1−1で得られた高分子複合材料PAcγCD−Dod−HEA−CNF(1、1、5)のSEM像である。この結果から、実施例1−1で得られた高分子複合材料と、比較例1−1で得られた高分子材料とは、表面の状態が大きく異なることがわかった。実施例1−1で得られた高分子複合材料ではCNFが複合化されているため、繊維構造を有しているといえる。
<機械特性の評価>
各実施例及び比較例で得られた高分子複合材料の機械特性を評価するため、高分子複合材料の引張試験を行った。具体的には、「ストローク−試験力曲線」試験(島津製作所社製「AUTOGRAPH」(型番:AGX−plus)により応力−歪曲線を得て、この応力−歪曲線から高分子複合材料の破断点を観測した。また、破断点を終点として、終点までの最大応力を高分子材料の破断応力とした。この引張り試験は、高分子複合材料の下端を固定し上端を引張り速度0.1〜1mm/minで稼動させるアップ方式で実施した。また、その際のストローク、すなわち、高分子複合材料を引っ張った際の最大長さを、引張り前の高分子複合材料の長さで除した値を延伸率(歪率といってもよい)として算出した。さらに、応力−歪曲線の面積から、高分子複合材料の破壊エネルギーを算出した。
図6は、実施例1−1で得られた高分子複合材料PAcγCD−Dod−HEA−CNF(1、1、5)、及び、比較例1−1で得られた高分子複合材料PAcγCD−Dod−HEA(1、1、0)の引張試験の結果を示している。この結果から、CNFと水素結合により複合化された高分子複合材料(実施例1−1)は、CNFを含まない比較例1−1の高分子材料に比べて伸び及び破断応力が大きく、優れた柔軟性と強靭性を兼ね備えていることがわかった。
表1は、実施例1−1で得られた高分子複合材料PAcγCD−Dod−HEA−CNF(1、1、5)、及び、比較例1−1で得られた高分子複合材料PAcγCD−Dod−HEA(1、1)の引張試験から、破壊エネルギー及びヤング率を算出した結果を示している。この結果から、CNFと水素結合により複合化された高分子複合材料(実施例1−1)は、CNFを含まない比較例1−1の高分子材料に比べて、破壊エネルギーが大きいことがわかった。
Figure 2021070768
以上の結果から、実施例1−1で得られた高分子複合材料PAcγCD−Dod−HEA−CNF(1、1、5)は、セルロース材料が水素結合によって複合化されており、優れた柔軟性、強靭性及び硬さを有する材料であることが実証された。
<ホスト−ゲスト相互作用の重要性>
図7には、実施例1−1で得られた高分子複合材料と、比較例1−2、1−3及び1−4で得られた高分子複合材料の引張試験の結果を示している。
この結果、実施例1−1で得られた高分子複合材料は、比較例1−2、1−3及び1−4で得られた高分子複合材料よりも伸び及び破断応力が大きく、優れた柔軟性と強靭性を兼ね備えていることがわかった。比較例1−2、1−3及び1−4で得られた高分子複合材のように、ホスト基及びゲスト基のいずれか一方又は両方を有していない場合は、例えば、CNFと複合化できたとしても、所望の柔軟性と強靭性を有することができないといえる。これに対し、実施例1−1の高分子複合材料のように、ホスト基及びゲスト基を有する重合体を含む場合は、ゲスト基がホスト基を貫通してなり、これにより重合体が架橋構造を形成するので、優れた機械特性が発揮されると考えられる。
<水素結合の重要性>
図8は、実施例1−1で得られた高分子複合材料と、実施例1−2で得られた高分子複合材料の引張試験の結果を示している。いずれも優れた機械特性を有しているものの、実施例1−1で得られた高分子複合材料の方が柔軟性と強靭性に優れていた。実施例1−2では、ゲスト基のカルボキシ基のみがCNFのカルボキシ基と水素結合を形成するのに対し、実施例1−1の高分子複合材料は、ゲスト基にカルボキシ基、第3の構造単位に水酸基を有し、これらの両方がCNFのカルボキシ基と水素結合を形成する。このため、実施例1−1の高分子複合材料は、実施例1−2の高分子複合材料よりもCNFとホスト−ゲストポリマーとの相互作用が強く、結果として、実施例1−1の方が実施例1−2よりも優れた柔軟性と強靭性を有するものと推察される。
<自己修復特性>
実施例1−1及び実施例2−1で得られた高分子複合材料ぞれぞれの中央部を切断して2つに分けた後、両者を常温(25℃)又は70℃で24時間接触させることで、自己修復性を評価した。結果、いずれの高分子材料も、25℃であっても70℃であっても切断片同士が再接着することがわかった。
自己修復率は、実施例1−1の高分子複合材料では、25℃で約35%、70℃で約85%であったのに対し、比較例1−1の高分子複合材料では、25℃で約8%、70℃で約25%であった。また、実施例2−1の高分子複合材料では、25℃で約10%、70℃で約25%であったのに対し、比較例2−1高分子複合材料では、25℃で約3%、70℃で約8%であった。従って、実施例1−1及び2−1で得られた高分子複合材料は、自己修復性を有していることもわかった。
なお、自己修復率は、切断前の高分子複合材料の応力−歪曲線の面積に対する、再接着後の高分子複合材料の応力−歪曲線の面積の割合を意味する。
以上の実施例及び比較例の結果から、実施例で得られた高分子複合材料は、優れた柔軟性、強靭性及び硬さを有することが実証された。また、実施例で得られた高分子複合材料は、硬い材料あるにもかかわらず、自己修復性も有していることも示された。硬い材料でありながら、自己修復性を有することは驚くべきことであり、ホスト−ゲスト相互作用と、水素結合とが効果的に作用していることに基づくものであると推察される。

Claims (13)

  1. セルロース材料と、ホスト基及びゲスト基を有する重合体とを含み、
    前記ホスト基は、シクロデキストリン又はシクロデキストリン誘導体から1個の水素原子又は水酸基が除された1価の基であり、
    前記ゲスト基は、前記ホスト基を串刺し状に貫通することができる1価の基であり、
    前記重合体は、側鎖に前記ホスト基を有する構造単位と、側鎖にゲスト基を有する構造単位と、前記ホスト基及び前記ゲスト基の両方を有さない第3の構造単位を含み、
    前記セルロース材料は、セルロース及びセルロース誘導体の少なくとも一方であり、
    前記セルロース材料は、前記重合体の少なくとも側鎖と水素結合を形成している、高分子複合材料。
  2. 前記セルロース誘導体は、カルボキシ基、水酸基、アミノ基及びアミド基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基Fを有する化合物で変性されたセルロースである、請求項1に記載の高分子複合材料。
  3. 前記重合体の側鎖は、前記官能基Fと水素結合を形成している、請求項2に記載の高分子複合材料。
  4. 前記ゲスト基の末端と、前記官能基Fとが水素結合を形成している、請求項3に記載の高分子複合材料。
  5. 前記第3の構造単位の側鎖と、前記官能基Fとが水素結合を形成している、請求項3又は4に記載の高分子複合材料。
  6. 前記第3の構造単位の側鎖末端及び前記ゲスト基の末端の少なくとも一方は、カルボキシ基、水酸基、アミノ基及びアミド基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の高分子複合材料。
  7. ホスト基を有する重合性単量体及びゲスト基を有する重合性単量体から形成される包接錯体を含む重合性単量体組成物であって、
    前記ホスト基は、シクロデキストリン又はシクロデキストリン誘導体から1個の水素原子又は水酸基が除された1価の基であり、
    前記包接錯体は、前記ゲスト基が前記ホスト基を串刺し状に貫通してなる、重合性単量体組成物。
  8. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の高分子複合材料の製造に用いられる、請求項7に記載の重合性単量体組成物。
  9. 高分子複合材料の製造方法であって、
    ホスト基を有する重合性単量体及びゲスト基を有する重合性単量体から形成される包接錯体と、前記ホスト基及び前記ゲスト基の両方を有さない第3の重合性単量体と、セルロース材料とを含む重合性単量体組成物の重合反応を行う工程を備え、
    前記ホスト基は、シクロデキストリン又はシクロデキストリン誘導体から1個の水素原子又は水酸基が除された1価の基であり、
    前記包接錯体は、前記ゲスト基が前記ホスト基を串刺し状に貫通してなり、
    前記セルロース材料は、セルロース及びセルロース誘導体の少なくとも一方である、製造方法。
  10. 前記重合性単量体組成物は、イオン性液体を含む、請求項9に記載の製造方法。
  11. 前記セルロース誘導体は、カルボキシ基、水酸基、アミノ基及びアミド基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基Fを有する化合物で変性されたセルロースである、請求項10に記載の製造方法。
  12. 前記第3の重合性単量体の側鎖末端及び前記ゲスト基の末端の少なくとも一方は、カルボキシ基、水酸基、アミノ基及びアミド基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有する、請求項9〜11のいずれか1項に記載の製造方法。
  13. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の高分子複合材料を含む、自己修復材料。
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