JP7359375B2 - セルロース分散用ブロック共重合体の製造方法、樹脂組成物の製造方法及び成形体の製造方法 - Google Patents

セルロース分散用ブロック共重合体の製造方法、樹脂組成物の製造方法及び成形体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、セルロース分散用ブロック共重合体の製造方法、樹脂組成物の製造方法及び成形体の製造方法に関する。
セルロース繊維は、鋼鉄の1/5の軽さであるにもかかわらず、鋼鉄の5倍以上の強度を有することから、優れたフィラーとしての機能が注目されている。しかしながら、セルロース繊維は親水性の物質であり、樹脂等への分散が難しいことから、現状では、その利用が促進されていない。
そこで、セルロース繊維をフィラーとして含む樹脂組成物の作製において、分散剤を添加して、セルロース繊維と樹脂との分散性及び相溶性を向上させることが行われている。例えば、特許文献1には、セルロースを分散させるためのセルロース用高分子分散剤が記載されている。前記セルロース用高分子分散剤は、樹脂親和性セグメントAと、セルロース吸着性セグメントBとを有するブロック共重合体構造を有する高分子化合物を特徴とする。特許文献1には、前記セルロース用高分子分散剤を用いることで、セルロース分散性を高め、セルロースと樹脂との界面を安定化させ、機械特性に優れたセルロース分散樹脂組成物が得られることが記載されている。
ここで、特許文献1に記載のセルロース用高分子分散剤は、重金属触媒を用いないリビングラジカル重合法である可逆連鎖移動触媒重合(RTCP)法によって合成される。そして、特許文献1には、前記RTCP法は、有機ヨウ素化合物を開始化合物とし、リン化合物、窒素化合物、酸素化合物、または炭素化合物を触媒とすることが記載されている。
国際公開第2015/152188号
特許文献1に記載のRTCP法によれば、種々の形態の分散剤を合成することができ、セルロース用高分子分散剤として適用することができる。
ところで、セルロース繊維をフィラーとして含む樹脂組成物は、種々の用途に使用することができるが、この際、所望な物性に応じて、セルロース繊維、樹脂、添加剤等の種類、使用量等が異なることがある。使用する材料が異なると、求められる分散剤の性能も異なってくることから、多様な分散剤を設計できるようにすることが望ましい。
そこで、本発明は、より多様なセルロース分散用ブロック共重合体を設計できる方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、上述のRTCP法とは異なるメカニズムでリビングラジカル重合が進行する可逆的錯体形成媒介重合(RCMP)法を用いることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、以下のセルロース分散用ブロック共重合体の製造方法等に係る。項1.
少なくとも第1セグメント及び第2セグメントを有する、セルロース分散用ブロック共重合体の製造方法であって、
前記第1セグメントを、可逆的錯体形成媒介重合(RCMP)法により合成する工程(1)を含み、
前記第1セグメント及び前記第2セグメントは、一方がセルロース親和性セグメントであり、もう一方が樹脂親和性セグメントである、製造方法。
項2.
前記工程(1)の後、
前記第2セグメントを、可逆的錯体形成媒介重合(RCMP)法により合成する工程(2)をさらに含む、上記項1に記載の製造方法。
項3.
前記可逆的錯体形成媒介重合(RCMP)法の少なくとも1つが、ヨウ素含有化合物、及びアミン又はアンモニウム化合物を用いて行われる、上記項1又は2に記載の製造方法。
項4.
前記可逆的錯体形成媒介重合(RCMP)法の少なくとも1つが、溶媒の存在下で行われ、
前記溶媒の使用量が、モノマー及び溶媒の総質量に対して、80質量%以下である、上記項1~3のいずれか1項に記載の製造方法。
項5.
前記第1セグメントが、樹脂親和性セグメントである、上記項1~4のいずれか1項に記載の製造方法。
項6.
前記樹脂親和性セグメントの合成に、モノマーとして親水性基非含有(メタ)アクリレートを用いる、上記項1~5のいずれか1項に記載の製造方法。
項7.
前記樹脂親和性セグメントの合成に、モノマーとして環状アルキル基、環状アルケニル基、及びアリール基からなる群から選択される少なくとも1つの環状構造を含む不飽和モノマーを用いる、上記項1~6のいずれか1項に記載の製造方法。
項8.
前記樹脂親和性セグメントが、少なくとも1つの不飽和基を有する、上記項1~7のいずれか1項に記載の製造方法。
項9.
前記セルロース親和性セグメントの合成に、モノマーとして親水性基含有(メタ)アクリレートを用いる、上記項1~8のいずれか1項に記載の製造方法。
項10.
前記セルロース親和性セグメントが、カチオン性親水性基及びカチオン性親水性基からなる群から選択される少なくとも1つを有する、上記項1~9のいずれか1項に記載の製造方法。
項11.
上記項1~6、及び9のいずれか1項に記載の製造方法により得られたセルロース分散用ブロック共重合体を用いて、樹脂にセルロースを分散させる分散工程を含む、樹脂組成物の製造方法。
項12.
前記セルロースがパルプであり、
前記分散工程が、前記パルプを解繊する工程を含む、
上記項11に記載の製造方法。
項13.
上記項7、8、及び10のいずれか1項に記載の製造方法により得られたセルロース分散用ブロック共重合体を用いて、樹脂にセルロースを分散させる分散工程を含む、樹脂組成物の製造方法。
項14.
前記セルロースがパルプであり、
前記分散工程が、前記パルプを解繊する工程を含む、
上記項13に記載の製造方法。
項15.
前記パルプの解繊が、尿素、尿素の誘導体、糖、糖の誘導体、糖アルコール、有機酸、及び有機酸からなる群から選択される少なくとも1つの成分の存在下で行われる、上記項12又は14に記載の製造方法。
項16.
前記分散工程の前に、前記セルロース分散用ブロック共重合体、並びに水及び/又は有機溶媒を含む、溶液又は分散液を、樹脂及び/又はセルロースに混合する工程を含む、上記項11又は12に記載の製造方法。
項17.
前記分散工程の前に、前記セルロース分散用ブロック共重合体、並びに水及び/又は有機溶媒を含む、溶液又は分散液を、樹脂及び/又はセルロースに混合する工程を含む、上記項13~15のいずれか1項に記載の製造方法。
項18.
前記溶液又は分散液における前記セルロース分散用ブロック共重合体の濃度が、1~15質量%である、上記項16に記載の製造方法。
項19.
前記溶液又は分散液における前記セルロース分散用ブロック共重合体の濃度が、1~15質量%である、上記項17に記載の製造方法。
項20.
前記溶液又は分散液が、水及び有機溶媒を含み、
前記水及び有機溶媒の混合割合(有機溶媒/水)が、1/10~2/1である、上記項16~19のいずれか1項に記載の製造方法。
項21.
上記項11、12、16、又は18に記載の製造方法により得られた樹脂組成物を成形する工程を含む、成形体の製造方法。
項22.
上記項13~15、17、及び19~20のいずれか1項に記載の製造方法により得られた樹脂組成物を成形する工程を含む、成形体の製造方法。
本発明の製造方法によれば、より多様なセルロース分散用ブロック共重合体を設計することができる。そして、得られるセルロース分散用ブロック共重合体は、セルロース分散剤として用いることができる。その結果、セルロースが樹脂中に良好に分散された樹脂組成物、及び該樹脂組成物の成形体を製造することが可能となる。
実施例2で製造された成形体、及び実施例3で製造された成形体の引張-歪曲線(SS曲線)を示す図である。
1.セルロース分散用ブロック共重合体の製造方法
本発明は、セルロース分散用ブロック共重合体の製造方法に関する。
生成物であるセルロース分散用ブロック共重合体は、少なくとも第1セグメント及び第2セグメントを有する。前記第1セグメント及び前記第2セグメントは、一方がセルロース親和性セグメントであり、もう一方が樹脂親和性セグメントである。セルロース分散用ブロック共重合体が、セルロースと親和性の高いセグメント(セルロース親和性セグメント)と、樹脂と親和性の高いセグメント(樹脂親和性セグメント)とを有していることで、セルロースを樹脂中で良好に分散させることができる。よって、該セルロース分散用ブロック共重合体は、セルロース分散剤として使用することができる。
ここで、「ブロック共重合体」とは、性質の異なる2種類以上のモノマー成分において、各モノマー成分が形成するモノマーセグメント同士が共有結合で結合し、性質の異なる2種以上のポリマーセグメントが1本のポリマー鎖に含まれる構造である。
本発明の製造方法により得られるセルロース分散用ブロック共重合体は、少なくとも第1セグメント及び第2セグメントを有する。前記セルロース分散用ブロック共重合体は、第1セグメント及び/又は第2セグメントを2以上有していてもよいし、第1セグメント及び第2セグメント以外の他のセグメント(第3セグメント)を1又は2以上有していてもよい。ここで、「他のセグメント」としては、ランダム共重合構造を有するセグメント、温度により親水性/疎水性が変化する温度応答性を有するセグメント等が挙げられる。
セルロース分散用ブロック共重合体は、ジブロック体であっても、トリブロック体であっても、テトラブロック体であっても、5以上のセグメントを有するブロック共重合体であってもよい。
セルロース親和性セグメントを「A」、樹脂親和性セグメントを「B」、他のセグメントを「C」と表す場合、ジブロック体のセルロース分散用ブロック共重合体は、A-Bの構成を有する。
また、トリブロック体のセルロース分散用ブロック共重合体は、A-B-A、B-A-B、A-B-C、A-C-B、C-A-B等の構成を有する。
さらに、テトラブロック体のセルロース分散用ブロック共重合体は、A-B-A-B、A-B-A-C、A-B-C-A、A-C-B-A、B-A-B-C、B-A-C-B、B-C-A-B、A-C-B-C等の構成を有する。
5以上のセグメントを有するセルロース分散用ブロック共重合体についても、任意の組み合わせの構成(A-B-A-B-A、B-A-B-A-B等)を有する。
これらのうち、セルロース分散用ブロック共重合体は、ジブロック体又はトリブロック体であることが好ましく、A-B(セルロース親和性セグメント-樹脂親和性セグメント)、A-B-A(セルロース親和性セグメント-樹脂親和性セグメント-セルロース親和性セグメント)、又はB-A-B(樹脂親和性セグメント-セルロース親和性セグメント-樹脂親和性セグメント)の構成を有するブロック共重合体がより好ましく、A-B(セルロース親和性セグメント-樹脂親和性セグメント)の構成を有するジブロック体がさらに好ましい。
なお、例えば、A-B-Aのようにセルロース分散用ブロック共重合体が分子中に2以上のA(セルロース親和性セグメント)を有する場合、それぞれのセルロース親和性セグメントは同一の構成を有していてもよいし、異なる構成を有していてもよい。同様に、セルロース分散用ブロック共重合体が分子中に2以上のB(樹脂親和性セグメント)を有する場合、それぞれの樹脂親和性セグメントは同一の構成を有していてもよいし、異なる構成を有していてもよい。また、セルロース分散用ブロック共重合体が分子中に2以上のC(他のセグメント)を有する場合、それぞれの他のセグメントは同一の構成を有していてもよいし、異なる構成を有していてもよい。
セルロース分散用ブロック共重合体を適用するセルロースとしては、分子式(C10で表される炭水化物(多糖類)を含むものであれば特に限定されず、パルプ、リグノセルロース、セルロースナノファイバー(CNF)、セルロースクリスタル、木粉等が挙げられる。
本発明で使用するRCMP法は、リビングラジカル重合法の1種である。ここで、リビングラジカル重合は、ラジカル重合反応において連鎖移動反応及び停止反応が実質的に起こらず、モノマーが反応しつくした後も成長末端が活性を保持する反応である。リビングラジカル重合は、基本的に、成長ラジカルを可逆的に保護基で保護する反応であり、成長ラジカルの脱保護(活性化)、モノマーの付加(成長)、及び保護(不活性化)の繰返しによって、分子鎖を少しずつほぼ均等に成長させ、分子量分布の狭い高分子を得ることができる。
RCMP法は、一般に、保護基としてヨウ素原子(I)を用い、触媒としてアミン又はアンモニウム化合物を用いるリビングラジカル重合法である。活性化反応として、アミン又はアンモニウム化合物が休眠種のヨウ素原子(I)を引き抜き、成長ラジカルとヨウ素ラジカル/アミン又はアンモニウム化合物錯体が生成する。前記錯体は安定ラジカルでないために別のヨウ素ラジカル/アミン又はアンモニウム化合物錯体と結合して安定なヨウ素分子(I)/アミン又はアンモニウム化合物錯体として存在する。不活性化反応として、成長ラジカルは、ヨウ素ラジカル/アミン又はアンモニウム化合物錯体又はヨウ素分子/アミン又はアンモニウム化合物錯体からヨウ素原子を受け取り休眠種に戻る。
このように、RCMP法は、成長ラジカルの脱保護(活性化)、及び保護(不活性化)の際に錯体の形成に基づく配位的な結合が関与することから、RTCP法と比べると、設計できる構造に差異がある。その結果、RTCP法では合成することが難しい共重合体を製造することができる。
本発明の製造方法では、少なくとも、セルロース分散用ブロック共重合体(以下、単に「ブロック共重合体」という場合もある。)を構成する1つの第1セグメントを、可逆的錯体形成媒介重合(RCMP)法により合成すればよい。セルロース分散用ブロック共重合体が第1セグメントを2以上含む場合には、前記第1セグメント以外の第1セグメント、及び第2セグメントは、RCMP法以外のリビングラジカル重合法により合成することができる。
RCMP法以外のリビングラジカル重合法として、従来公知のリビングラジカル重合法、例えば、ニトロキシド媒介(NMP)法、原子移動ラジカル重合(ATRP)法、可逆的付加開裂型連鎖移動重合(RAFT)法、可逆連鎖移動触媒重合(RTCP)法、有機テルル媒介重合(TERP)法等が挙げられる。
本発明の製造方法は、第1セグメントを、可逆的錯体形成媒介重合(RCMP)法により合成する工程(1)を含む。本発明の製造方法は、工程(1)の後、第2セグメントを、可逆的錯体形成媒介重合(RCMP)法により合成する工程(2)をさらに含んでいてもよい。また、本発明の製造方法は、第1セグメント又は第2セグメントをRCMP法以外のリビングラジカル重合法により合成する工程(3)、第3セグメントを合成する工程(4)等を含むこともできる。
なお、工程(1)~(4)はこの順に行う必要はなく、所望とするセルロース分散用ブロック共重合体の構造に応じて適宜行うことができる。また、工程(1)~工程(4)は、繰り返し行うことができる。
一実施形態において、セルロース分散用ブロック共重合体の製造方法は、工程(1)及び工程(2)を含む。この場合、まず第1セグメントがRCMP法により合成され(工程(1))、次いで、第2セグメントがRCMP法により合成される(工程(2))。よって、得られるセルロース分散用ブロック共重合体は、第1セグメント-第2セグメントの構成を有する。この際、前記第1セグメント及び前記第2セグメントは、一方がセルロース親和性セグメントであり、もう一方が樹脂親和性セグメントであることから、第1セグメント(セルロース親和性セグメント)-第2セグメント(樹脂親和性セグメント)、又は第1セグメント(樹脂親和性セグメント)-第2セグメント(セルロース親和性セグメント)の構成を有することとなる。
また、別の一実施形態において、セルロース分散用ブロック共重合体の製造方法は、工程(1)及び工程(3)をこの順に含む。この場合、第1セグメント及び第2セグメントがこの順に合成される。具体例としては、まず第1セグメントがRCMP法により合成され(工程(1))、次いで、第2セグメントが可逆連鎖移動触媒重合(RTCP)法により合成される(工程(3))。よって、得られるセルロース分散用ブロック共重合体は、第1セグメント-第2セグメントの構成を有する。この際、前記第1セグメント及び前記第2セグメントは、一方がセルロース親和性セグメントであり、もう一方が樹脂親和性セグメントであることから、第1セグメント(セルロース親和性セグメント)-第2セグメント(樹脂親和性セグメント)、又は第1セグメント(樹脂親和性セグメント)-第2セグメント(セルロース親和性セグメント)の構成を有することとなる。
その他、目的とするセルロース分散用ブロック共重合体の構造に応じて各工程を適用することができる。
例えば、第1セグメント-第2セグメントからなるジブロック構造を有するセルロース分散用ブロック共重合体を製造する場合、工程(1)-工程(2)、工程(1)-工程(3)、工程(3)-工程(1)等の方法を採用することができる。
また、第1セグメント-第2セグメント-第1セグメントからなるトリブロック構造を有するセルロース分散用ブロック共重合体を製造する場合、工程(1)-工程(2)-工程(1)、工程(1)-工程(2)-工程(3)、工程(1)-工程(3)-工程(3)、工程(3)-工程(3)-工程(1)等の方法を採用することができる。あるいは、二官能性の重合開始剤(ヨウ素含有化合物)を用いて第2ブロックを合成し(工程(2))、2つの第1セグメントをRCMP法により合成する(工程(1))方法により、上記トリブロック構造を有するセルロース分散用ブロック共重合体を製造することも可能である。
さらに、第1セグメント-第2セグメント-第3セグメントからなるトリブロック構造を有するセルロース分散用ブロック共重合体を製造する場合、工程(1)-工程(2)-工程(4)、工程(1)-工程(3)-工程(4)等の方法を採用することができる。
また、第1セグメント-第2セグメント-第1セグメント-第2セグメントからなるテトラブロック構造を有するセルロース分散用ブロック共重合体を製造する場合、工程(1)-工程(2)-工程(1)-工程(2)、工程(1)-工程(2)-工程(1)-工程(3)、工程(1)-工程(2)-工程(3)-工程(2)、工程(1)-工程(3)-工程(1)-工程(2)、工程(3)-工程(3)-工程(1)-工程(2)、工程(1)-工程(2)-工程(3)-工程(3)、工程(1)-工程(3)-工程(3)-工程(2)、工程(1)-工程(3)-工程(1)-工程(3)、工程(1)-工程(3)-工程(3)-工程(3)、工程(3)-工程(3)-工程(1)-工程(3)等の方法を採用することができる。
これらのうち、本発明の好ましい実施形態としては、ヨウ素含有化合物、及びアミン又はアンモニウム化合物を用いた可逆的錯体形成媒介重合(RCMP)法により第1セグメント(樹脂親和性セグメント)を合成する工程(1)、及び
ヨウ素含有化合物、及びアミン又はアンモニウム化合物を用いた可逆的錯体形成媒介重合(RCMP)法により第2セグメント(セルロース親和性セグメント)を合成する工程(2)
により、セルロース分散用ブロック共重合体を製造する方法が挙げられる。
以下、上記の第1セグメント(樹脂親和性セグメント)を合成する工程(1)、及び第2セグメント(セルロース親和性セグメント)を合成する工程(2)、を含むセルロース分散用ブロック共重合体の製造方法について詳細に説明する。
工程(1)
工程(1)は、RCMP法により第1セグメント(樹脂親和性セグメント)を合成する工程である。
工程(1)では、ヨウ素含有化合物、及びアミン又はアンモニウム化合物を用いて、モノマーを重合させることにより樹脂親和性セグメントを得る。
樹脂親和性セグメントの具体的な作製方法としては、重合により樹脂親和性セグメントを形成するモノマー、ヨウ素含有化合物、及びアミン又はアンモニウム化合物を、必要に応じて加熱条件下で撹拌しながら混合する方法が挙げられる。
モノマー
工程(1)で使用するモノマーは、重合によって樹脂親和性セグメントを形成するものである。「樹脂親和性」とは、対象となる樹脂の構造に類似しているか、又は対象となる樹脂に近い疎水性を有することをいう。樹脂親和性セグメントを形成するモノマーとして、親水性基を含有しない(メタ)アクリレート系モノマー(親水性基非含有(メタ)アクリレート系モノマー)、親水性基を含有しない(メタ)アクリルアミド系モノマー(親水性基非含有(メタ)アクリルアミド系モノマー)、親水性基を含有しないスチレン系モノマー(親水性基非含有スチレン系モノマー)等が挙げられる。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタクリレートの両方を含む意味である。
親水性基非含有(メタ)アクリレート系モノマーとして、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸合成ラウリル等が挙げられる。
親水性基非含有(メタ)アクリルアミド系モノマーとして、例えば、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-n-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-シクロプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-メチル-N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-メチル-N-n-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-メチル-N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-アクリロイルピペリジン、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノn-プロピル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン等が挙げられる。
親水性基非含有スチレン系モノマーとして、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、メトキシスチレン(オルト位、メタ位、パラ位、及びこれらの2種以上の混合物)、t-ブトキシスチレン(オルト位、メタ位、パラ位、及びこれらの2種以上の混合物)、クロロメチルスチレン(オルト位、メタ位、パラ位、及びこれらの2種以上の混合物)、クロロスチレン(オルト位、メタ位、パラ位、及びこれらの2種以上の混合物)等が挙げられる。
前記モノマーは、以下で詳述する水酸基等の親水性基を含有しないことに加えて、疎水性基を含有することが好ましい。疎水性基として、アルキル基、アルケニル基、アリール基等が挙げられる。前記アルキル基として、炭素数1~20のアルキル基が好ましい。炭素数1~20のアルキル基として、メチル、エチル等の直鎖状アルキル基、イソプロピル、t-ブチル等の分岐鎖状アルキル基、及びシクロヘキシル、イソボルニル、ジシクロペンタニル等の環状アルキル基が挙げられる。アルケニル基として、エテニル(ビニル)、1-プロペニル、2-プロペニル(アリル)、1-ブテニル等の直鎖状アルケニル基、シクロプロペニル、シクロヘキセニル、ジシクロペンテニル等の環状アルケニル基が挙げられる。アリール基として、フェニル、ベンジル、ナフチル等が挙げられる。また、疎水性基には、環状アルキル基で置換された直鎖状アルキル基、環状アルキル基と直鎖状アルキル基とが酸素原子(O)又は硫黄原子(S)を介して結合したものも含まれる。
疎水性基を有するモノマーとして、環状アルキル基、環状アルケニル基、及びアリール基からなる群から選択される少なくとも1つの環状構造を含む不飽和モノマーが好ましい。ここで、不飽和モノマーとしては、エチレン性不飽和モノマーが挙げられ、(メタ)アクリレート系モノマーが好ましく用いられる。環状アルキル基を有する(メタ)アクリレート系モノマーとして、例えば、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸4-t-ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル等が挙げられる。環状アルケニル基を有する(メタ)アクリレート系モノマーとして、例えば、(メタ)アクリル酸シクロヘキセニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル等が挙げられる。アリール基を有する(メタ)アクリレート系モノマーとして、例えば、(メタ)アクリル酸ベンジル等が挙げられる。
これらのモノマーは、1種単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。
これらの中で、親水性基非含有(メタ)アクリレート系モノマー、及び、環状アルキル基、環状アルケニル基、及びアリール基からなる群から選択される少なくとも1つの環状構造を含む不飽和モノマーが好ましく、親水性基非含有メタクリレート系モノマー、及び環状アルキル基、環状アルケニル基、及びアリール基からなる群から選択される少なくとも1つの環状構造を含むメタクリレート系モノマーがより好ましい。親水性基非含有メタクリレート系モノマーとして、メタクリル酸メチル(methyl methacrylate:MMA)、メタクリル酸エチル(ethyl methacrylate:EMA)、メタクリル酸n-ブチル(butyl methacrylate:BMA)、メタクリル酸n-ヘキシル(hexyl methacrylate:HMA)、メタクリル酸2-エチルヘキシル(2-ethylhexyl methacrylate:EHMA)、メタクリル酸ラウリル(lauryl methacrylate:LMA)、メタクリル酸合成ラウリル(synthetic lauryl methacrylate:SLMA)等が挙げられる。環状アルキル基、環状アルケニル基、及びアリール基からなる群から選択される少なくとも1つの環状構造を含むメタクリレート系モノマーとして、メタクリル酸4-t-ブチルシクロヘキシル(tert-butylcyclohexyl methacrylate:tBCHMA)、メタクリル酸シクロヘキシル(cyclohexyl methacrylate:CHMA)、メタクリル酸イソボルニル(isobornyl methacrylate:IBOMA)、メタクリル酸ジシクロペンタニル(dicyclopentanyl methacrylate:DCPMA)、メタクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル(dicyclopentenyloxyethyl methacrylate:DCPOEMA)、メタクリル酸ベンジル(benzyl methacrylate:BnMA)等が挙げられる。これらの中でも、メタクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル(DCPOEMA)が特に好ましい。
ヨウ素含有化合物
本発明の方法では、ヨウ素含有化合物を低分子休眠種(ドーマント種)として使用する。該ヨウ素含有化合物は、反応中に、成長鎖に保護基(ヨウ素原子)を提供するために使用される。
ヨウ素含有化合物は、熱、光、触媒等の作用によりラジカルを発生し得るものであれば特に限定されない。ヨウ素含有化合物として、例えば、ヨウ化アルキル、ヨウ化置換アルキル等が挙げられる。ここで、アルキルの炭素数は1~6が好ましく、2~4がより好ましい。ヨウ化置換アルキルにおける置換基として、例えば、フェニル、シアノ、エステル等が挙げられる。ヨウ化アルキルの具体例として、ヨウ化メチル、ジヨードメタン、ヨードホルム、トリヨードエタン、ヨウ化t-ブチル等が挙げられる。ヨウ化置換アルキルの具体例として、2-ヨード-1-フェニルエタン、1-ヨード-1-フェニルエタン、2-シアノ-2-ヨードプロパン、2-シアノ-2-ヨードブタン、1-シアノ-1-ヨードシクロヘキサン、2-シアノ-2-ヨードバレロニトリル、2-ヨード-2-フェニル酢酸2-ヒドロキシエチル等が挙げられる。
ヨウ素含有化合物として、市販品のヨウ素含有化合物をそのまま使用してもよいし、従来より公知の方法で合成したヨウ素含有化合物を使用してもよい。
あるいは、その原料を仕込み、ヨウ素含有化合物を重合中にin situ、すなわち反応溶媒中で生成させ、それをヨウ素含有化合物として使用することもできる。例えば、後述するラジカル重合開始剤(例えば、アゾビス(イソブチロニトリル)等)とヨウ素(I)とを原料として仕込み、両者の反応により上記ヨウ素含有化合物を重合中にin situで生成させ、それをドーマント種として使用することができる。また、臭素、塩素等のヨウ素以外のハロゲン原子を有する有機ハロゲン化物ととともに、ヨウ化第4級アンモニウム、ヨウ化ナトリウム等のヨウ化物塩を使用し、反応系中でハロゲン交換反応を起こさせてヨウ素含有化合物を発生させてもよい。
前記ヨウ素含有化合物(ドーマント種)の使用量は、反応系中に成長鎖に十分な量のヨウ素原子を提供できる量であればよい。前記ヨウ素含有化合物の使用量は、目的とする共重合体の分子量により異なる。よって、目的とする共重合体の分子量に合わせて適宜調整することができる。例えば、バルク重合で100量体の共重合体を製造しようとする場合には、前記ヨウ素含有化合物を、10mM程度使用すればよい。なお、ヨウ素を使用して、重合中にヨウ素含有化合物を生成させる場合には、前記ヨウ素含有化合物の半分の量のヨウ素を使用する。
アミン又はアンモニウム化合物
本発明の製造方法において、アミン又はアンモニウム化合物は、ヨウ素含有化合物からヨウ素原子を配位的に引き抜くための触媒として使用される。アミン化合物には、第一級アミン、第二級アミン、及び第三級アミンが含まれる。第一級アミンには、例えば、メチルアミン、エチルアミン等が挙げられる。第二級アミンとして、例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン(EDA)、N,N’-ジメチルエチレンジアミン(DMEDA)、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)等が挙げられる。第三級アミンとして、例えば、トリエチルアミン(TEA)、トリn-ブチルアミン(TBA)、テトラキス(ジメチルアミノ)エチレン(TDAE)、1,4,8,11-テトラメチル-1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン(TDME)等が挙げられる。アンモニウム化合物には、第四級アンモニウム塩が含まれる。第四級アンモニウム塩として、例えば、テトラメチルアンモニウムヨージド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムヨージド、テトラブチルアンモニウムブロマイド等の第四級アンモニウムカチオンのハロゲン化物が挙げられる。
一実施形態において、アミン又はアンモニウム化合物として、アンモニウム化合物が好ましく、第四級アンモニウムカチオンのハロゲン化物がより好ましい。
また、別の一実施形態において、アミン又はアンモニウム化合物として、第二級アミン又は第三級アミンが好ましく、第三級アミンがより好ましい。
前記アミン又はアンモニウム化合物の使用量は、重合反応を進行させることができる量であればよい。前記アミン又はアンモニウム化合物の使用量は、目的とする共重合体の分子量により異なる。よって、目的とする共重合体の分子量に合わせて適宜調整することができる。例えば、バルク重合で100量体の共重合体を製造しようとする場合には、前記アミン又はアンモニウム化合物を、1~500mM程度用いることが好ましく、5~100mM程度用いることがより好ましく、10~50mM程度用いることがさらに好ましい。
溶媒
工程(1)では、必要に応じて、溶媒を使用することができる。溶媒を使用することで、モノマー等を均一に分散させる、重合反応の速度等を調整する等の効果が得られる。このような観点から溶媒を使用することが好ましいが、モノマー等の混合物が反応温度において液体であれば、必ずしも溶媒を使用しなくてもよい。溶媒を使用する場合、従来リビングラジカル重合に用いられる溶媒をそのまま使用することが可能である。
溶媒として、例えばジメチルジグリコール(DMDG)等が挙げられる。
溶媒を用いる場合の使用量は、重合反応が適切に行われる限り特に限定されない。溶媒の使用量は、使用するモノマーの反応性により適宜調整すればよい。例えば、モノマーとして親水性基非含有(メタ)アクリレート系モノマーを使用する場合には、モノマー及び溶媒の総質量に対して、80質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましく、5質量%以上35質量%以下がさらに好ましく、10質量%以上30質量%以下が特に好ましい。溶媒の使用量が80質量%以下であると、得られるセルロース分散用ブロック共重合体の分子量分布(PDI)を小さくすることができる。
ラジカル重合開始剤
RCMP法では、反応速度、収率等を調整する目的で、ラジカル重合開始剤を用いることができる。なお、RTCP法とは異なり、RCMP法ではラジカル重合開始剤の添加は必須ではない。
ラジカル重合開始剤として、ラジカル重合反応に使用される開始剤として公知の開始剤を使用することができる。このような開始剤の具体例としては、例えば、アゾ系のラジカル重合開始剤、過酸化物系のラジカル重合開始剤等が挙げられる。アゾ系のラジカル重合開始剤として、例えば、アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)等が挙げられる。過酸化物系のラジカル重合開始剤として、たとえば、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシベンゾエート(BPB)、ジ(4-tert-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(PERLADOX16)、過酸化二硫酸カリウム等が挙げられる。
ラジカル重合開始剤を使用する場合には、ラジカル重合開始剤の使用量は、1~100mM程度が好ましく、1~50mM程度がより好ましく、1~10mM程度がさらに好ましい。
反応温度は、特に限定されない。反応温度として、10℃以上120℃以下が好ましく、20℃以上120℃以下がより好ましく、30℃以上100℃以下がさらに好ましい。
反応時間は、特に限定されない。反応時間として、15分間以上24時間以下が好ましく、30分間以上12時間以下がより好ましく、1時間以上8時間以下がさらに好ましい。
本発明の反応は、反応容器中に空気が存在する条件下で行うことができる。必要に応じて、窒素、アルゴン等の不活性ガスで空気を置換することができ、不活性ガス下で反応を行うことが好ましい。
工程(1)で得られた生成物(第1セグメントのヨウ化物)は、単離及び精製した後に、工程(2)を行うこともできるし、工程(1)の生成物を単離及び精製せず、第1セグメントの重合の途中又は完結時に、反応系中に工程(2)で使用するモノマーを添加することにより、工程(2)を行うこともできる。第1セグメントの単離及び精製は、ポリマーにおいて通常行われる操作を行うことができる。
樹脂親和性セグメントは、少なくとも1つの不飽和基を有することが好ましい。
工程(2)
工程(2)は、RCMP法により第2セグメント(セルロース親和性セグメント)を合成する工程である。
工程(2)では、第1セグメントのヨウ素含有化合物、並びにアミン又はアンモニウム化合物を用いて、モノマーを重合させることによりセルロース親和性セグメントを得る。
具体的には、工程(1)で第1セグメントを合成した後、得られた第1セグメントの存在下に、第2セグメントの重合を行うことにより、ブロック共重合体を得ることができる。
モノマー
工程(2)で使用するモノマーは、重合によってセルロース親和性セグメントを形成するものである。「セルロース親和性」とは、セルロースの表面に存在する水酸基との水素結合又は双極子-双極子相互作用等によりセルロース表面と多点相互作用を示すことをいう。セルロース親和性セグメントを形成するモノマーとして、親水性基を含有する(メタ)アクリレート系モノマー(親水性基含有(メタ)アクリレート系モノマー)、親水性基を含有する(メタ)アクリルアミド系モノマー(親水性基含有(メタ)アクリルアミド系モノマー)、親水性基を含有するスチレン系モノマー(親水性基含有スチレン系モノマー)等が挙げられる。前記親水性基として、ノニオン性親水性基、カチオン性親水性基、及びアニオン性親水性基が挙げられる。ノニオン性親水性基として、例えば、水酸基、エーテル基、尿素基、イソシアナート基、アルコキシシリル基、ホウ酸基、グリシジル基等が挙げられる。カチオン性親水性基として、例えば、第四級アンモニウム塩基等が挙げられる。アニオン性親水性基として、例えば、カルボキシル基等が挙げられる。
親水性基含有(メタ)アクリレート系モノマーとして、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリプロレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセリル(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコ-ルモノメチルエーテル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート系モノマー(なお、前記「ポリ」及び「(ポリ)」は、いずれもn=2以上を意味する。);(メタ)アクリロイロキシエチルウレア、(メタ)アクリロイロキシエチルエチレンウレア等の尿素基含有(メタ)アクリレート系モノマー; [2-(メタクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウムヨージド(DMAEMA-Me+I-)、[2-(アクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウムヨージド、[2-((メタ)アクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウムクロリド、[2-((メタ)アクリロイルオキシ)エチル]トリエチルアンモニウムヨージド、[2-((メタ)アクリロイルオキシ)エチル]トリn-プロピルアンモニウムヨージド等の第四級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート系モノマー等が挙げられる。
親水性基含有(メタ)アクリルアミド系モノマーとして、例えば、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル)(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
親水性基含有スチレン系モノマーとして、例えば、ヒドロキシスチレン(オルト位、メタ位、パラ位、及びこれらの2種以上の混合物)、ヒドロキシメチルスチレン(オルト位、メタ位、パラ位、及びこれらの2種以上の混合物)、2-ヒドロキシエチルスチレン(オルト位、メタ位、パラ位、及びこれらの2種以上の混合物)等が挙げられる。
これらのモノマーは、1種単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。
これらの中で、親水性基含有(メタ)アクリレート系モノマーが好ましい。そのうち、イオン化されていることでセルロースへの親和性が高まると同時に水溶性も向上するという点で、カチオン性親水性基又はアニオン性親水性基を含有する(メタ)アクリレート系モノマーがより好ましく、第四級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート系モノマーがさらに好ましい。
ヨウ素含有化合物、アミン又はアンモニウム化合物、溶媒、並びにラジカル重合開始剤等は、工程(1)と同様のものを使用することができる。
ヨウ素含有化合物、アミン又はアンモニウム化合物、溶媒、並びにラジカル重合開始剤の使用量は、工程(1)と同様である。
なお、工程(1)の反応終了後に、反応系中にヨウ素、アミン又はアンモニウム化合物、溶媒、ラジカル重合開始剤等が上記範囲で残存している場合には、新たに添加しなくてもよいし、新たに添加して各成分の量を適宜調整してもよい。
反応温度、及び反応時間は、工程(1)と同様の条件で行うことができる。反応温度として、10℃以上120℃以下が好ましく、20℃以上120℃以下がより好ましく、30℃以上100℃以下がさらに好ましい。反応時間として、15分間以上24時間以下が好ましく、30分間以上12時間以下がより好ましく、1時間以上8時間以下がさらに好ましい。
セルロース親和性セグメントは、カチオン性親水性基及びアニオン性親水性基からなる群から選択される少なくとも1つを有することが好ましい。
上記工程(1)及び工程(2)をこの順に行うことで、第1セグメント(樹脂親和性セグメント)と第2セグメント(セルロース親和性セグメント)とからなるブロック共重合体を得ることができる。
上記工程(1)及び工程(2)で使用するモノマーを入れ替えることで、工程(1)でまずセルロース親和性セグメントを合成し、次いで工程(2)で樹脂親和性セグメントを得ることができる。言い換えれば、第1セグメント(セルロース親和性セグメント)と第2セグメント(樹脂親和性セグメント)とからなるブロック共重合体を得ることができる。
また、3以上のセグメントを有するブロック共重合体を製造する場合には、例えば、工程(1)、工程(2)、工程(1)のように、上記工程(1)と工程(2)とを交互に繰り返すことにより製造することができる。
さらに、上述した通り、ブロック共重合体を構成する第1セグメント及び第2セグメントの少なくとも1つを、RCMP法以外のリビングラジカル重合で合成することもできる(工程(3))。
前記工程(3)では、選択するリビングラジカル重合により、工程(1)及び工程(2)のヨウ素含有化合物、アミン又はアンモニウム化合物等とは異なる重合触媒を用いることができる。
例えば、リビングラジカル重合が可逆連鎖移動触媒重合(RTCP)法である場合には、2-ヨード-1-フェニルエタン、1-ヨード-1-フェニルエタン、2-シアノ-2-ヨードプロパン、2-シアノ-2-ヨードブタン、1-シアノ-1-ヨードシクロヘキサン、2-シアノ-2-ヨードバレロニトリル等の有機ヨウ素化合物;ハロゲン化リン、ホスファイト系化合物、ホスフィネート化合物、イミド系化合物、フェノール系化合物、ジフェニルメタン系化合物、シクロペンタジエン系化合物等の触媒等を用いることができる。
また、リビングラジカル重合がニトロキシド媒介(NMP)法である場合には、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル(TEMPO)、2,2,5-トリメチル-1,4-フェニル-3-アザヘキサン-3-ニトロキシド、N-tert-ブチル-O-[1-[4-(クロロメチル)フェニル]エチル]-N-(2-メチル-1-フェニルプロピル)ヒドロキシルアミン、N-tert-ブチル-N-(2-メチル-1-フェニルプロピル)-O-(1-フェニルエチル)ヒドロキシルアミン等のNMP開始剤を用いることができる。
さらに、リビングラジカル重合が原子移動ラジカル重合(ATRP)法である場合には、有機ハロゲン化合物、アミン系銅錯体、イミン系銅錯体等の多座配位子等を用いることができる。
また、リビングラジカル重合法が可逆的付加開裂型連鎖移動重合(RAFT)法である場合には、ジチオエステル、トリチオカーボネート、ジチオカルバメート、キサンテート等のRAFT剤を用いることができる。
これらのうち、工程(3)で適用する重合方法としては、緩和な条件で重合が進行し、重金属や特殊な化合物を用いず、簡便に実施できることから、RTCP法が好ましい。
また、ブロック共重合体は、第1セグメント及び第2セグメントの他、第3セグメントを有していてもよい。第3のセグメントは、特に制限されず、ブロック共重合体中において任意の位置に合成される(工程(4))。
工程(4)において使用可能なモノマーとしては、樹脂親和性セグメントの形成に使用されるモノマー及びセルロース親和性セグメントの形成に使用されるモノマーの混合物、N-イソプロピルアクリルアミド等が挙げられる。
また、工程(4)において使用可能な重合触媒は、重合方法によって異なる。
重合方法がリビングラジカル重合(RCMP法、RTCP法、NMP法、ATRP法、RAFT法等)である場合には、上述に記載のものを用いることができる。
一実施形態において、セルロース分散用ブロック共重合体の製造方法は、工程(1)及び工程(2)を含むことが好ましい。すなわち、第1のセグメント及び第2のセグメントをRCMP法で合成することが好ましい。これにより、従来のRTCP法とは異なる方法でセルロース分散用ブロック共重合体を製造することができる。また、上記方法で得られるセルロース分散用ブロック共重合体を用いた樹脂組成物及び成形体は、RTCP法を含む方法で製造されたセルロース分散用ブロック共重合体を用いた樹脂組成物及び成形体と同等以上の物性を示す。
また、別の一実施形態において、セルロース分散用ブロック共重合体の製造方法は、工程(1)及び工程(3)をこの順に含む製造方法であることが好ましい。すなわち、第1のセグメントをRCMP法で合成し、第2のセグメントをRTCP法で合成することが好ましい。これにより、反応メカニズムの異なるRCMP法及びRTCP法を組み合わせることで、セルロース分散用ブロック共重合体の設計範囲が広くなる。
なお、上述したセルロース分散用ブロック共重合体の製造方法において、第1のセグメントが、樹脂親和性セグメントであることが好ましい。換言すれば、少なくとも樹脂親和性セグメントをRCMP法で合成することが好ましい。
また、上述した可逆的錯体形成媒介重合(RCMP)法の少なくとも1つが、ヨウ素含有化合物、及びアミン又はアンモニウム化合物を用いて行われることが好ましい。
さらに、上述した可逆的錯体形成媒介重合(RCMP)法の少なくとも1つが、溶媒の存在下で行われ、前記溶媒の使用量が、モノマー及び溶媒の総質量に対して、80質量%以下であることが好ましい。前記溶媒の使用量が、モノマー及び溶媒の総質量に対して、60質量%以下がより好ましく、5質量%以上35質量%以下がさらに好ましく、10質量%以上30質量%以下が特に好ましい。溶媒の使用量を調整することで、得られるセルロース分散用ブロック共重合体の分子量分布(PDI)を小さくすることが可能である。
このように得られるセルロース分散用ブロック共重合体は、上述のように種々の構成を有することができる。
ブロック共重合体における第1セグメント(樹脂親和性セグメント)と第2セグメント(セルロース親和性セグメント)との比率は、第1セグメントと第2セグメントとが同程度であることが好ましい。具体的には、第1セグメント:第2セグメントが10:1~1:10程度が好ましく、2:1~1:2程度がより好ましい。
なお、ブロック共重合体中に樹脂親和性セグメント及びセルロース親和性セグメント以外のセグメントを含む場合、樹脂親和性セグメント及びセルロース親和性セグメントの合計量で、50質量%以上含まれることが好ましく、75質量%以上がより好ましく、100質量%がさらに好ましい。
セルロース分散用ブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)は、1000~20万程度が好ましく、1000~10万程度がより好ましい。
また、セルロース分散用ブロック共重合体の数平均分子量(Mn)は1000~10万程度が好ましく、1000~5万程度がより好ましい。
そして、ブロック共重合体の分散度(PDI:Mw/Mn)は、1~2程度が好ましく、1~1.5程度がより好ましく、1~1.3程度がさらに好ましい。
なお、セルロース分散用ブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)の値は、実施例に記載の方法で測定された値を採用するものとする。
上述した製造方法により、ブロック共重合体が得られる。このブロック共重合体は、樹脂親和性セグメントとセルロース親和性セグメントとを有するので、セルロースを樹脂中で良好に分散させることが可能である。よって、上記製造方法により得られたブロック共重合体は、セルロース分散剤として利用することができる。
よって、本発明は、上記ブロック共重合体をセルロース分散剤として用いた、樹脂組成物の製造方法を提供することができる。
2.樹脂組成物の製造方法
上記の方法で製造したセルロース分散用ブロック共重合体を用いることにより、樹脂にセルロースを分散させることができるので、樹脂、セルロース、及び上記で得られたセルロース分散用ブロック共重合体(分散剤)を含む樹脂組成物を製造することができる。
よって、本発明の樹脂組成物の製造方法は、上述した製造方法により得られたセルロース分散用ブロック共重合体を用いて、樹脂にセルロースを分散させる分散工程を含む。
(2-1) 樹脂
樹脂組成物を製造に使用する樹脂として、セルロースの分散性又は相溶性が低い樹脂が用いられる。このような樹脂として、他の原料とともに溶融及び混合して樹脂組成物を得ることができるので、熱可塑性樹脂を使用することが好ましい。
熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、アクリル又はメタクリル樹脂、ABS樹脂等の汎用樹脂;ナイロン樹脂、ポリアミド樹脂(PA)、ポリカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエステル樹脂等の汎用エンジニアリングプラスチック;トリアセチル化セルロース、ジアセチル化セルロース等のセルロース系樹脂等が挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、樹脂組成物とした場合の補強効果を十分に得ることができ、安価であるという点で、ポリオレフィン樹脂が好ましい。ポリオレフィン樹脂として、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリプロピレン樹脂(PP)等が挙げられる。これらの中でも、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、バイオポリエチレン、及びアイソタクチックポリプロピレンが好ましい。また、熱可塑性樹脂は、上記樹脂を2種以上含む共重合体であってもよい。
熱可塑性樹脂は、1種単独で使用してもよく、又は2種以上を混合して使用してもよい。
(2-2) セルロース
セルロースとしては、分子式(C10で表される炭水化物(多糖類)を含むものであれば特に限定されず、リグノセルロース、パルプ、セルロースナノファイバー(CNF)等が挙げられる。
セルロースの原料として用いられる植物繊維は、木材、竹、麻、ジュート、ケナフ、綿、ビート、農産物残廃物、布等の天然植物原料から得られる天然セルロース;パルプ(紙);レーヨン、セロファン等の再生セルロース繊維等が挙げられる。木材としては、例えば、シトカスプルース、スギ、ヒノキ、ユーカリ、アカシア等が挙げられる。紙としては、脱墨古紙、段ボール古紙、雑誌、コピー用紙等が挙げられる。ただし、これらに限定されるものではない。植物繊維は、1種単独でも用いてもよく、これらから選ばれた2種以上を用いてもよい。
リグノセルロースは、植物繊維の主成分であり、主に、セルロース、ヘミセルロース、及びリグニンから構成され、各々が結合した構造であり、植物繊維を形成している。このリグノセルロースを含む植物繊維を機械処理及び/又は化学処理により、ヘミセルロース及びリグニンを除去し、セルロースの純分を高めることで、パルプが得られる。必要に応じて漂白処理も行われ、また、脱リグニン量を調整し、当該パルプ中のリグニン量を調整することができる。
パルプとしては、植物繊維を機械処理及びまたは化学処理によりパルプ化することで得られるケミカルパルプ〔クラフトパルプ(KP)、亜硫酸パルプ(SP)〕、セミケミカルパルプ(SCP)、ケミグランドパルプ(CGP)、ケミメカニカルパルプ(CMP)、砕木パルプ(GP)、リファイナーメカニカルパルプ(RMP)、サーモメカニカルパルプ(TWP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、及びこれらのパルプを主成分とする脱墨古紙パルプ、段ボール古紙パルプ、雑誌古紙パルプが挙げられる。これらのパルプの中でも、繊維の強度が強い針葉樹由来の各種クラフトパルプ〔針葉樹未漂白クラフトパルプ(NUKP)、針葉樹酸素晒し未漂白クラフトパルプ(NOKP)、針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP)〕が好ましい。パルプ中のリグニン含有量は、特に限定されるものではなく、通常0~40質量%程度、好ましくは0~10質量%程度である。リグニン含有量の測定は、Klason法により測定することができる。
CNFは、セルロース繊維を含む材料(例えば、木材パルプ等)を機械的解繊等の処理を施すことで得られる繊維であり、繊維幅4~200nm程度、繊維長5μm程度以上の繊維である。CNFの比表面積としては、70~300m2/g程度が好ましく、70~250m2/g程度がより好ましく、100~200m2/g程度が更に好ましい。CNFの比表面積を上記範囲とすることで、樹脂と組み合わせて組成物とした場合に、樹脂組成物の樹脂中での凝集を防ぎつつ、接触面積を大きくすることで強度が向上させることができる。CNFの繊維径は、平均値が通常4~200nm程度、好ましくは4~150nm程度、特に好ましくは4~100nm程度である。
植物繊維を解繊し、CNFを調製する方法としては、パルプ等のセルロース繊維含有材料を解繊する方法が挙げられる。解繊方法としては、例えば、セルロース繊維含有材料の水懸濁液またはスラリーを、リファイナー、高圧ホモジナイザー、グラインダー、一軸または多軸混練機(好ましくは二軸混練機)、ビーズミル等による機械的な摩砕、ないし叩解することにより解繊する方法が使用できる。必要に応じて、上記の解繊方法を組み合わせて処理してもよい。これらの解繊処理の方法としては、例えば、特開2011-213754号公報、特開2011-195738号公報に記載された解繊方法等を用いることができる。植物繊維の解繊は、解繊助剤の存在下で行われることが好ましい。
(2-3) 解繊助剤
解繊助剤として、セルロース又はヘミセルロースと相互作用する極性の官能基、水素結合性の官能基等を有する物質が挙げられる。セルロース又はヘミセルロースと相互作用する極性の官能基として、例えば、アミド基、ウレア基等が挙げられる。水素結合性の官能基として、例えば水酸基、アミノ基等が挙げられる。解繊助剤として、セルロース又はヘミセルロースと相互作用する極性の官能基、及び水素結合性の官能基を合わせて有する物質が好ましい。
また、解繊助剤は、混練条件で液体である物質であることが望ましい。よって、解繊助剤の融点は混練温度以下であることが好ましく、分解温度は混練温度(加工温度)以上であることが好ましい。
このような解繊助剤として、尿素及び尿素の誘導体;糖、糖の誘導体及び糖アルコール;有機酸及びその塩(有機酸塩)等が挙げられる。
解繊助剤として、尿素(NH2-CO-NH2)、及び尿素の誘導体を使用することができる。
尿素の誘導体として、尿素の縮合生成物を使用することができる。尿素の縮合生成物として、例えば、ビウレット(H2N-CO-NH-CO-NH2)等が挙げられる。
解繊助剤として、ビウレア(H2N-CO-NH-NH-CO-NH2)も使用することができる。なお、ビウレアは、熱水に可溶である。
さらに、尿素の誘導体として、ヒドラジド化合物、NH2-CO-NH-を有する化合物(ウレイド化合物)、-NH-CO-NH-を有する化合物(ウレイレン化合物)、イソウレア(HN=C(OH)-NH2)、HN=C(OH)-NH-を有する化合物(1-イソウレイド化合物)、-N=C(OH)-NH2を有する化合物(3-イソウレイド化合物)、尿素又は上記尿素誘導体に含まれる酸素原子をアミン又は硫黄原子で置き換えた化合物、NH2-CO-NH-NH-を有する化合物(セミカルバジド化合物)、NH=N-CO-NH-NH-を有する化合物(カルバゾノ化合物)等が挙げられる。
ヒドラジド化合物として、例えば、4-アミノベンゾヒドラジド、2-アミノベンゾイルヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、カルボヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、オキサリルジヒドラジド、オキサミン酸ヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド及びコハク酸ジヒドラジド等が挙げられる。
NH2-CO-NH-を有する化合物(ウレイド化合物)又は-NH-CO-NH-を有する化合物(ウレイレン化合物)として、例えば、N,N’-ジメチル尿素(1,3-ジメチル尿素)、N,N’-ジエチル尿素(1,3-ジエチル尿素)、N,N’-ビス(ヒドロキシメチル)尿素、N,N’-ビス(トリメチルシリル)尿素、N,N'-トリメチレン尿素、N-フェニル尿素、N,N'-ジシクロヘキシル尿素、N,N'-フェニル尿素(1,3-ジフェニルウレア)、バルビツル酸、ヒダントイン酸、2-イミダゾリジノン(エチレン尿素)、シアヌル酸等が挙げられる。
尿素の誘導体として、イソウレア(HN=C(OH)-NH2)又はHN=C(OH)-NH-を有する化合物(1-イソウレイド化合物)、-N=C(OH)-NH2を有する化合物(3-イソウレイド化合物)を使用することができる。
尿素又は上記尿素誘導体に含まれる酸素原子をアミン又は硫黄原子で置き換えた化合物として、例えば、チオ尿素(NH2-CS-NH2)、N-メチルチオ尿素、N-エチルチオ尿素、N-アリルチオ尿素、N-フェニルチオ尿素、グアニジン塩酸塩、S-メチルイソチオ尿素 ヘミ硫酸塩、O-メチルイソ尿素ヘミ硫酸塩、N,N’-ジメチルチオ尿素、N,N’-ジエチルチオ尿素、N,N’-ジイソプロピルチオ尿素、N,N’-ジフェニルチオ尿素、2-イミダゾリジンチオン、2-イミノ-4-チオビウレット、2,5-ジチオビウレア等が挙げられる。
NH2-CO-NH-NH-を有する化合物(セミカルバジド化合物)又はNH=N-CO-NH-NH-を有する化合物(カルバゾノ化合物)として、セミカルバジド、カルボノヒドラジド、カルバゾン、カルボジアゾン等が挙げられる。
これらの尿素及び尿素誘導体の中で、尿素、ビウレット、ビウレア、及びヒドラジド(アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド等)が特に好ましい。
解繊助剤として、糖、糖の誘導体、及び糖アルコール等を使用することもできる。
糖として、単糖及び二糖が挙げられる。
単糖として、ケトトリオース(1,3-ジヒドロキシアセトン等)、アルドトリオース(DL-グリセルアルデヒド等)のトリオース;ケトペントース(リブロース、キシルロース等)、アルドペントース(アラビノース(L-(+)-アラビノース)、キシロース(D-(+)-キシロース)等)、デオキシ糖(デオキシリボース)等のペントース;ケトヘキソース(フルクトース(D-(-)-フルクトース)等)、アルドヘキソース(グルコース(D(+)-グルコース)、マンノース(D-(+)-マンノース)等)、デオキシ糖(ラムノース(L-(+)-ラムノース・一水和物)等)等のヘキソースが挙げられる。
二糖として、スクロース(サッカロース)、マルトース(マルトース・一水和物(麦芽糖))、トレハロース(D-(+)-トレハロース・二水和物)、セロビオース(D-(+)-セロビオース)等が挙げられる。
糖の誘導体として、ウロン酸(グルクロン酸(D(+)-グルクロン酸)等)、β-D-グルコースペンタアセタート、α-D(+)-グルコースペンタアセタート、アミノ糖(N-アセチル-D-グルコサミン等)等が挙げられる。
糖アルコールとして、ソルビトール(D-グルシトール)、キシリトール、グリセリン等が挙げられる。
これらの中で、糖、及び糖アルコールが好ましい。
解繊助剤として、有機酸及びその塩(有機酸塩)を使用することもできる。
有機酸又はその塩として、例えば、ギ酸ナトリウム、ギ酸アンモニウム、酢酸ナトリウム、酢酸アンモニウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸三アンモニウム、シュウ酸ナトリウム、シュウ酸アンモニウム等が挙げられる。
植物繊維を解繊する際に解繊助剤を使用する場合、解繊助剤は、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
樹脂組成物を調製する際、解繊助剤を使用する場合には、解繊助剤を添加する時期は問わない。解繊助剤は、パルプの叩解時に添加したり、パルプを含む水中に添加したり、セルロース、樹脂及び分散剤を含む混合物に混ぜたりすることが可能であり、セルロース、樹脂及び分散剤を含む混合物に解繊助剤を添加することが好ましい。
(2-4) 製造方法
上記セルロースの中で、樹脂組成物の機械的強度を向上させる効果が大きいことから、CNFが好ましい。よって、得られる樹脂組成物は、その中にセルロースとしてCNFが分散されているものが好ましい。これより、CNFが分散している樹脂組成物を、直接CNFを使用して製造する方法、及び、CNFの原料であるパルプを使用して製造する方法を提供することができる。
樹脂組成物を製造する1つの方法は、セルロース分散用ブロック共重合体を製造した後、セルロースとしてCNFを使用して、CNF、樹脂(好ましくは熱可塑性樹脂)、及びセルロース分散用ブロック共重合体を混合して、熱可塑性樹脂にCNFを分散させる方法である。
セルロース分散用ブロック共重合体を製造する工程は、上記のとおりである。
CNF、熱可塑性樹脂、及びセルロース分散用ブロック共重合体の混合は、例えば、以下の手順で行うことが好ましい。
(1)上記(2-2)に記載の解繊方法により含水状態のCNFを調製する。
(2)セルロース分散用ブロック共重合体を水及び/又は有機溶媒に溶解又は分散させて、ブロック共重合体の溶液又は分散液を調製する。予め、ブロック共重合体を溶媒に溶解又は分散させておくことにより、セルロース分散剤の効果を十分に発揮させることができる。前記溶液又は分散液におけるセルロース分散用ブロック共重合体の濃度は、1~15質量%であることが好ましい。前記溶媒としては、水、有機溶媒、又は、水と有機溶媒との混合溶媒が挙げられる。有機溶媒として、例えば、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール;テトラヒドロフラン(THF)、アセトニトリル等の非プロトン性溶媒等が挙げられる。前記溶媒として、水と有機溶媒との混合溶媒が好ましく、水とイソプロパノールとの混合溶媒がより好ましい。水及び有機溶媒の混合割合(有機溶媒/水)は、質量比で、1/10~2/1が好ましい。有機溶媒がイソプロパノールである場合には、水とイソプロパノールとの混合割合(イソプロパノール/水)が質量比で1/3~2/1が好ましく、1/3~1/1がさらに好ましい(以下の実験例1参照)。なお、上記(1)と(2)とは、いずれを先に行ってもよい。
(3)含水状態のCNFと、ブロック共重合体の溶液又は分散液とを混合する。
(4)得られた混合液に、さらに熱可塑性樹脂を添加し、撹拌及び混合することにより、樹脂組成物が得られる。
樹脂組成物を製造する別の方法は、セルロース分散用ブロック共重合体を製造した後、セルロースとしてパルプを使用して、前記分散工程が、パルプを解繊する工程を含む方法である。パルプを解繊することによりCNFを調製することができるので、セルロースとしてパルプを使用して、パルプ、熱可塑性樹脂、及びセルロース分散用ブロック共重合体を混合し、分散又は溶融混練している間にパルプが解繊されてCNFが形成され、熱可塑性樹脂にCNFが分散された樹脂組成物を得ることができる。
具体的には、セルロース分散用ブロック共重合体を製造した後、パルプ、熱可塑性樹脂、及びセルロース分散用ブロック共重合体を溶融混練し、それと同時にパルプを解繊してCNFとし、熱可塑性樹脂にCNFを分散した樹脂組成物を得る。
セルロースがパルプであり、分散工程が、前記パルプを解繊する工程を含む、樹脂組成物の製造方法としては、前記分散工程の前に、セルロース分散用ブロック共重合体、並びに水及び/又は有機溶媒を含む、溶液又は分散液を、樹脂及び/又はセルロース(パルプ)に混合する工程を含むことが好ましい。また、パルプは分散液として、セルロース分散用ブロック共重合体溶液又は分散液と混合することが好ましい。
パルプ、熱可塑性樹脂、及びセルロース分散用ブロック共重合体の混合、及びパルプの解繊は、例えば、以下の手順で行うことが好ましい。
(a)パルプを水系溶媒に分散させて、パルプの分散液を調製する。予め、パルプの分散液を作製しておくことにより、樹脂組成物におけるCNFの凝集を抑制することができる。水系溶媒としては、水を含む溶媒、例えば、水;水と、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコールとの混合溶媒;水と、THF、アセトニトリル等の非プロトン性溶媒との混合溶媒等が挙げられ、水が好ましい。
(b)セルロース分散用ブロック共重合体を水及び/又は有機溶媒に溶解又は分散させて、ブロック共重合体の溶液又は分散液を調製する。予め、ブロック共重合体を溶媒に溶解又は分散させておくことにより、セルロース分散剤の効果を十分に発揮させることができる。前記溶液又は分散液におけるセルロース分散用ブロック共重合体の濃度は、1~15質量%であることが好ましい。前記溶媒としては、水、有機溶媒、又は、水と有機溶媒との混合溶媒が挙げられる。有機溶媒として、例えば、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール;テトラヒドロフラン(THF)、アセトニトリル等の非プロトン性溶媒等が挙げられる。前記溶媒として、水と有機溶媒との混合溶媒が好ましく、水とイソプロパノールとの混合溶媒がより好ましい。水及び有機溶媒の混合割合(有機溶媒/水)は、質量比で、1/10~2/1が好ましい。有機溶媒がイソプロパノールである場合には、水とイソプロパノールとの混合割合(イソプロパノール/水)が質量比で1/3~2/1が好ましく、1/3~1/1がさらに好ましい(以下の実験例1参照)。なお、上記(1)と(2)とは、いずれを先に行ってもよい。
(c)パルプの分散液と、ブロック共重合体の溶液又は分散液とを混合する。
(d)得られた混合物に、熱可塑性樹脂を添加し、混合する。
(e)得られた混合物に、必要であれば解繊助剤を添加し、溶融及び混合する。
なお、セルロースとしてパルプを使用する場合には、パルプの解繊を、尿素、尿素の誘導体、糖、糖の誘導体、糖アルコール、有機酸、及び有機酸からなる群から選択される少なくとも1つの成分の存在下で行うことが好ましい。
上記の製造方法における、樹脂(熱可塑性樹脂)、セルロース(CNF又はパルプ)、セルロース分散用ブロック共重合体(分散剤)及び、必要により解繊助剤の配合割合は、セルロースが分散できる程度であればよく、例えば、以下のような量である。
樹脂の配合割合は、樹脂組成物中に、10質量%~99.99質量%程度の割合で含まれることが好ましく、50質量%~99質量%程度がより好ましく、80質量%~95質量%程度が更に好ましい。
セルロースの配合割合は、樹脂組成物中に、0.005質量%~50質量%程度の割合で含まれることが好ましく、0.1質量%~40質量%程度がより好ましく、1質量%~20質量%程度が更に好ましく、5質量%~10質量%程度が特に好ましい。
セルロース分散用ブロック共重合体の配合割合は、樹脂組成物中に、0.005質量%~40質量%程度の割合で含まれることが好ましく、0.1質量%~30質量%程度がより好ましく、0.5質量%~20質量%程度が更に好ましく、1質量%~6質量%程度が特に好ましい。
解繊助剤を使用する場合、その配合割合は、樹脂組成物中に、0.01質量%~20質量%程度の割合で含まれることが好ましく、0.1質量%~10質量%程度がより好ましく、0.1質量%~4質量%程度が更に好ましい。
樹脂、セルロース、及びセルロース分散用ブロック共重合体の配合比(質量比)は、樹脂:セルロース:セルロース分散用ブロック共重合体が、100:0.0625~62.5:0.0625~50が好ましく、100:0.125~50:0.125~37.5がより好ましく、100:1.25~25:0.625~25がさらに好ましく、100:6.25~12.5:1.25~7.5であることが特に好ましい。
セルロース分散用ブロック共重合体、セルロース(CNF又はパルプ)及び熱可塑性樹脂を混合する方法は、混練機(押出機)、ベンチロール、バンバリーミキサー、ニーダー、プラネタリーミキサー等の混練機により混練する方法、攪拌羽により混合する方法、公転又は自転方式の攪拌機により混合する方法等が好ましい。混練機(押出機)を用いる場合、一軸又は多軸混練機を使用することが好ましく、二軸混練機を用いることが好ましい。
混合温度は、用いる熱可塑性樹脂の加工温度、即ち溶融温度以上が好ましい。混合温度を溶融温度以上に設定することにより、解繊助剤の効果によりセルロースがナノファイバー化され(ナノ解繊)、且つ分散性も損なわれない。混合温度は、140~200℃程度が好ましい。
混合時間は、10分間~1時間程度が好ましい。
本発明の樹脂組成物の製造方法は、分散工程が、パルプを解繊することを含むことで、パルプからCNFを調製しながら樹脂組成物を製造することができる。特に、パルプの解繊を解繊助剤の存在下で行うことで、CNFの調製(セルロースの解繊)と、CNFの樹脂中への分散と、CNFと樹脂との複合化とが同時に進み、CNFの樹脂への分散性をより向上させることができる。これにより、CNFが樹脂中で良好に分散され、CNFと樹脂との接合性が一層良好な樹脂組成物を得ることができる。
得られた樹脂組成物は、セルロース繊維がナノレベルの大きさまで解繊されているCNFが良好に分散されており、CNFと樹脂との界面が補強されており、高い力学物性を示す複合樹脂材料といえる。
3.成形体の製造方法
上記製造方法で得られた樹脂組成物は、強度があり、高い力学物性を示す複合樹脂材料なので、これを成形して、成形体を製造することができる。樹脂組成物を用いることで、熱可塑性樹脂中のセルロースの凝集を抑制することができ、強度及び弾性率に優れた成形体を得ることができる。
本発明の成形体の製造方法は、上記製造方法により得られた樹脂組成物を成形する工程を含む。
樹脂組成物からなる成形材料の形状としては、例えば、シート、ペレット、粉末等が挙げられる。
成形材料は、樹脂組成物から、例えば圧縮成形、射出成形、押出成形、中空成形、発泡成形等を用いて得ることができる。
成形材料から成形体(成形品)を作製する際の成形の条件は、樹脂の成形条件を必要に応じて適宜調整して適用することができる。
得られた成形体は、セルロース(CNF)含有樹脂成形物が使用されていた繊維強化プラスチック分野に加え、より高い機械強度(引張強度等)が要求される分野にも使用できる。
成形体を利用可能な分野として、例えば、自動車、電車、船舶、飛行機等の輸送機器の内装材、外装材、構造材等;パソコン、テレビ、電話、時計等の電化製品等の筺体、構造材、内部部品等;携帯電話等の移動通信機器等の筺体、構造材、内部部品等;携帯音楽再生機器、映像再生機器、印刷機器、複写機器、スポーツ用品等の筺体、構造材、内部部品等;建築材;文具等の事務機器等、容器、コンテナー等が挙げられる。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
実施例1(セルロース分散用ブロック共重合体(分散剤)の製造)
工程(1)
ヨウ素0.436g、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート(DCPOEMA)(日立化成株式会社製、商品名「FA-512M」)30g、ジメチルジグリコール(以下、「DMDG」と略す)30g、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(和光純薬株式会社製、商品名「V-65」)0.284g、テトラブチルアンモニウムヨージド(以下、「BuNI」と略す)0.21g、及び2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)(和光純薬株式会社製、商品名「V-70」)0.927gを、この順に秤量し、混合物をスターラーで撹拌した。混合物にアルゴンガスを50mL/minで20分間バブリングした後、アルゴン雰囲気下、60℃で3時間重合を行い、ポリマーブロックAを得た。
工程(2)
次いで、上記反応系に2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート(以下、「DMAEMA」と略す)18g及びDMDG18gを添加し、混合物を60℃で3時間重合し、ポリマーブロックBを得た。
得られた生成物を、約10倍体積の水-メタノール(4:1)で再沈殿することにより精製し、ブロック共重合体を分離した。得られたブロック共重合体をトレー上に薄く広げ、60℃で真空乾燥を行った。その後、トレーをドライアイスで冷却しながら、ブロック共重合体を回収し、ブロック共重合体442質量部に対して脱水アセトンを1000質量部となるように加えて、ブロック共重合体を溶解させた。アルゴン雰囲気下、氷浴中で、ブロック共重合体の溶液に、ヨウ化メチル172質量部を滴下して、ブロック共重合体の末端を四級化し、室温(約25℃)にて一昼夜撹拌した。
反応物を遠心分離(8000rpm×20分間)して上澄みを除去し、再びアセトンを加えて遠心分離を行う操作を2度繰り返した。沈殿物を室温で減圧乾燥し、分散剤を得た(表1のentry 1)。さらに、表1の条件に変えた以外は、上記と同様にして、entry 2-5の分散剤を得た。
得られた分散剤について、転化率、数平均分子量(Mn)、及びPDI(Mw/Mn)を測定した。結果を表1に示す。
なお、表1において、各entryの上段が工程(1)(第1回目のリビングラジカル重合)を意味し、下段が工程(2)(第2回目のリビングラジカル重合)を意味する。
また、[M]0は使用したモノマーの初期モル濃度を表す。[I2]0は、使用したヨウ素の初期モル濃度を表す。[V70]0は使用したラジカル重合開始剤(2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル))の初期モル濃度を表し、[V65]0は使用したラジカル重合開始剤(2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル))のモル濃度を表す。[Bu4NI]0は使用したアミン又はアンモニウム化合物(テトラブチルアンモニウムヨージド)の初期モル濃度を表す。「T」は反応温度であり、「t」は反応時間である。
転化率は、モノマーの重合率である。転化率は、以下のようにして求めた。所定時間後の分散剤溶液をNMR測定に供し、スペクトルを得た。スペクトルにおいて、基準ピークに対するモノマー由来の二重結合プロトン由来のピークの減少から転化率を算出した。
Mnは得られたポリマーの数平均分子量であり、Mwは得られたポリマーの重量平均分子量である。また、PDIは得られたポリマーの分散度であり、Mw/Mnにより算出される。ここで、Mn及びMwはテトラヒドロフラン(THF)を溶出液とするゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて得たPMMA換算分子量である。具体的には、示差屈折計(Shodex RI-74S)、ガードカラム(Shodex GPC KF-G)、及び2本のカラム(Shodex GPC KF-404HQ)を備えた、Shodex GPC-104シリーズの高速液体クロマトグラフィー装置(昭光通商株式会社製)により、40℃でGPC分析を行った。THFを溶出液として用い、流速は0.3mL/minであった。標準物質としてポリメタクリル酸メチル(PMMA)を用いて検量線を得た。
Mn,theoは、
Mn,theo=([M]0/[R-I]0)×(モノマーの分子量)×(重合率)/100で算出される理論値である。なお、[M]0はモノマーの初期濃度(仕込み濃度)を表し、[R-I]0はドーマント種となるヨウ素含有化合物の初期濃度であり、[R-I]0=2[I2]0である。
実験例1(分散剤の溶解性評価)
分散剤(セルロース分散用ブロック共重合体)は、樹脂組成物を製造する際に、溶媒に溶解又は分散させた状態で添加されるため、溶媒への溶解性が高いことが好ましい。
entry1と同様の条件で分散剤を製造した(表2のentry6)。
entry6で製造した分散剤について、水、2-イソプロパノール(IPA)、又はこれらの混合溶媒への溶解性、具体的には粘度評価および濁度評価を行った。
具体的には、まず、entry1と同様に製造した分散剤の濃度が20%であるサンプル(3時間撹拌して調製)、濃度が10%であるサンプル(18時間撹拌して調製)、濃度が2%であるサンプル(20%濃度のサンプルを希釈して調製)を準備した。次いで、3種のサンプルについて、以下の基準に基づいて目視で評価した。得られた結果を下記表3に示す。
(粘度評価)
○・・・水平面に対して90度の角度で傾けて約30秒間置くと液面が水平になる
×・・・水平面に対して90度の角度で傾けて約30秒間置くと液面が水平にならない(濁度評価)
◎・・・透明
○・・・光散乱あり、沈殿なし
×・・・白濁、沈殿あり
表3より、分散剤(セルロース分散用ブロック共重合体)は、水とIPAとの混合溶媒に可溶であり、特にIPA:水の質量比率が1:1(w/w)の混合溶媒に良好に溶解させることができた。IPA:水=1:1(w/w)の混合溶媒に10質量%の分散剤を溶解させたものを、樹脂組成物の製造に使用することが好ましい。
実施例2(樹脂組成物及び成形体の製造)
JIS P8121-2:2012に準拠して測定したフリーネスが100ml以下になるように、ナイアガラビーターで4時間叩解処理した2質量%の針葉樹晒クラフトパルプ水分散液を吸引濾過及び遠心分離により濃縮し、パルプ固形分3g及び水14.5gを含むパルプ分散液を調製した。得られたパルプ分散液17.5gに、水85.5gを添加し、プロペラ機で15分間撹拌し、上記実験例1で製造した分散剤1.8gをIPA:水=1:1(w/w)の混合溶媒に溶解させた溶液、及びポリエチレン(住友精化株式会社製、商品名「フロービーズHE3040」)5.2gを加え、プロペラ機で15分間撹拌した後、105℃で一晩送風乾燥し、パルプ、分散剤及び熱可塑性樹脂を含むプレミックス(パルプ/分散剤/ポリエチレン=3/1.8/5.2(g/g/g))を得た(設計値:パルプ30質量%)。得られたプレミックス(4.33g)に、解繊助剤として尿素をパルプに対して40質量%(0.52g)添加し、且つパルプ濃度が10質量%となるようにポリエチレン(旭化成株式会社製、商品名「サンテックHD-J320」)(8.15g)で希釈した。これを以下の条件で溶融及び混練に供し、射出成型した。
混練条件
混練装置:Xplore Instruments社製のXplore MC15K
混練条件:二軸回転数200rpm、混練時間60min、混練温度140℃
射出成型条件
射出成型機:Xplore Instruments社製のIM12K
成型条件:成型温度150℃
金型温度:50℃
射出圧力:10bar/5s→13bar/32s
得られた成形体(13g)は、パルプ/分散剤/ポリエチレン/尿素=10/6/80/4(wt%/wt%/wt%/wt%)であった。成形体の弾性率、引張強度及び伸びは、Instron社製電気機械式万能材料試験機(3365型)を用いて測定した。ロードセル及びクロスヘッド速度は、それぞれ1kN及び10mm/minであった。引張変形をCCDカメラでモニターした。弾性率(ヤング率)、引張強度、及び破断点伸びの平均値を、誤差を考慮した標準偏差を用いて計算した。なお、試験の前に、試料を室温で一晩真空乾燥させた。
その結果、弾性率が5.16GPaであり、引張強度が59.9MPaであり、伸びが1.7%であった。また、成形体の引張-歪曲線(SS曲線)を図1に示す。
実施例3(樹脂組成物及び成形体の製造)
溶媒の添加量を180gとし、及び反応時間を3.5時間にした以外は、entry1と同様の条件で工程(1)を行った。工程(2)は、アミン又はアンモニウム化合物の代わりにヨウ化物触媒であるN-コハク酸イミド(NIS)を用い、下記表4に記載した条件でRTCP法により重合を行い、分散剤を製造した(表4のentry7)。
得られた分散剤を使用した以外は、実施例2と同様にして樹脂組成物を製造し、さらに成形体を製造した。得られた成形体の弾性率、引張強度及び伸びを実施例2と同様の条件で測定したところ、弾性率が5.20GPa、引張強度が57.7MPa、伸びが1.7%であった。また、成形体の引張-歪曲線(SS曲線)を図1に示す。
実施例2で使用した分散剤は、工程(1)及び工程(2)をいずれもRCMP法で重合された共重合体であり、実施例3で使用した分散剤(工程(1)をRCMP法、工程(2)をRTCP法で重合させたブロック共重合体)よりPDIがさらに小さい。実施例2で得られた成形体、及び実施例3で得られた成形体は、いずれも優れた性能を有するが、実施例2で得られた成形体のほうが、強度の点でより優れている。
本発明の製造方法によれば、従来の可逆連鎖移動触媒重合(RTCP)法とは異なるメカニズムでリビングラジカル重合が進行する可逆的錯体形成媒介重合(RCMP)法を用いることにより、より多様なセルロース分散用ブロック共重合体を製造することができる。このセルロース分散用ブロック共重合体は、セルロースを樹脂中に良好に分散されることができるので、セルロース分散剤として使用することができる。該セルロース分散用ブロック共重合体を用いることにより、セルロースが樹脂中に良好に分散された樹脂組成物、及び該樹脂組成物の成形体を製造することが可能となる。

Claims (11)

  1. 少なくとも第1セグメント及び第2セグメントを有する、ブロック共重合体からなるセルロース分散剤の製造方法であって、
    前記第1セグメントを、可逆的錯体形成媒介重合(RCMP)法により合成する工程(1)を含み、前記工程(1)の後、
    前記第2セグメントを、可逆的錯体形成媒介重合(RCMP)法により合成する工程(2)をさらに含み、
    前記第1セグメント及び前記第2セグメントは、一方がセルロース親和性セグメントであり、もう一方が樹脂親和性セグメントであ
    前記セルロース親和性セグメントの合成において使用されるモノマーが、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリプロレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセリル(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコ-ルモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイロキシエチルウレア、(メタ)アクリロイロキシエチルエチレンウレア、[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウムヨージド、[2-(アクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウムヨージド、[2-((メタ)アクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウムクロリド、[2-((メタ)アクリロイルオキシ)エチル]トリエチルアンモニウムヨージド、及び[2-((メタ)アクリロイルオキシ)エチル]トリn-プロピルアンモニウムヨージドからなる群から選択される1種又は2種以上であり、
    前記樹脂親和性セグメントの合成において使用されるモノマーが、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸n-ヘキシル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸合成ラウリルメタクリル酸4-t-ブチルシクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸ジシクロペンタニル、メタクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、及びメタクリル酸ベンジルからなる群から選択される1種又は2種以上である、
    製造方法。
  2. 前記可逆的錯体形成媒介重合(RCMP)法の少なくとも1つが、ヨウ素含有化合物、及びアミン又はアンモニウム化合物を用いて行われる、請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記可逆的錯体形成媒介重合(RCMP)法の少なくとも1つが、溶媒の存在下で行われ、
    前記溶媒の使用量が、モノマー及び溶媒の総質量に対して、80質量%以下である、請求項1又は2に記載の製造方法。
  4. 前記第1セグメントが、樹脂親和性セグメントである、請求項1~3のいずれか1項に記載の製造方法。
  5. 請求項1~のいずれか1項に記載の製造方法により得られたセルロース分散剤を用いて、樹脂にセルロースを分散させる分散工程を含む、樹脂組成物の製造方法。
  6. 前記セルロースがパルプであり、
    前記分散工程が、前記パルプを解繊する工程を含む、
    請求項に記載の製造方法。
  7. 前記パルプの解繊が、尿素、尿素の誘導体、糖、糖の誘導体、糖アルコール、有機酸、及び有機酸塩からなる群から選択される少なくとも1つの成分の存在下で行われる、請求項に記載の製造方法。
  8. 前記分散工程の前に、前記セルロース分散剤、並びに水及び/又は有機溶媒を含む、溶液又は分散液を、樹脂及び/又はセルロースに混合する工程を含む、請求項又はに記載の製造方法。
  9. 前記溶液又は分散液における前記セルロース分散剤の濃度が、1~15質量%である、請求項に記載の製造方法。
  10. 前記溶液又は分散液が、水及び有機溶媒を含み、
    前記水及び有機溶媒の混合割合(有機溶媒/水)が、1/10~2/1である、請求項8又は9に記載の製造方法。
  11. 請求項5~10に記載の製造方法により得られた樹脂組成物を成形する工程を含む、成形体の製造方法。
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