JP2021070608A - 石英ガラスルツボ及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
そのような部位にガス溜まりが生じると、図示するように単結晶引上工程において反応ガスGが膨張し、当該部位のルツボ壁面が内面側へ押し上げられ変形するという課題があった。また、ガス溜まりにより生じた空間は、冷却プロセスにおいて冷めやすいため、温度差からクラックKが生じやすく、シリコン融液Mが漏出する虞があった。
そのようにコーナー部のR形状にばらつきが生じると、カーボンサセプタ側のコーナー部R形状との差に伴い、ガス溜まりが生じるような大きなクリアランスが多数形成されやすくなる為、全てのクリアランスを前記カーボンシートにより埋めることが困難であった。
しかしながら、これらのクリアランスを埋めるために前記カーボンシートを設けても、引上プロセスの度に前記クリアランスの大きさが一定ではないため、石英ガラスルツボとカーボンサセプタとの密着性(フィット性)が一律な環境を実現することが困難であるという課題があった。
その結果、底部側において、石英ガラスルツボとカーボンサセプタとの間に形成されていたガス溜まりを有するクリアランスは、石英ガラスルツボとカーボンサセプタの密着により無くなり、前記クリアランスに溜まっていた反応ガスをルツボ口元側から排気することができる。
その結果、底部側において、石英ガラスルツボとカーボンサセプタとの間に形成されていたガス溜まりを有するクリアランスは、石英ガラスルツボとカーボンサセプタの密着により無くなり、前記クリアランスに溜まっていた反応ガスをルツボ口元側から排気することができる。
本実施形態において石英ガラスルツボ1は、図1に示すように、不透明外層2(不透明層)と透明内層3(透明層)との2層構造である。
ここで不透明とは、石英ガラス中に多数の気泡(気孔)が内在し、見かけ上、白濁した状態を意味する。また、天然原料石英ガラスとは水晶等の天然質原料を溶融して製造されるシリカガラスを意味し、合成原料石英ガラスとは、例えばシリコンアルコキシドの加水分解により合成された合成原料を溶融して製造されるシリカガラスを意味する。
また、合成原料石英ガラス(または天然原料石英ガラス)からなる透明内層3は、直胴部11における厚さ寸法t4が0.5〜30mmとなされ、コーナー部12における厚さ寸法t5は0.5〜30mmとなされ、底部13における厚さ寸法t6は0.5〜30mmとなされる。
ここで、上記のように不透明外層2は、底部13から口元部1aまで気泡密度に勾配を有するため、ルツボが加熱された際の厚肉化の度合いに差異が生じることになる。
即ち、気泡密度が高いルツボ底部13にあっては、多数の気泡の膨張によって大きく厚肉化し、カーボンサセプタ4との密着性が高くなる。一方、気泡密度が低い直胴部11側にあっては、膨張する気泡が少ないため、加熱によっても大きく厚肉化しない。
具体的には、ルツボ底部13の不透明層2の加熱前の厚さt3が加熱後に例えば5〜7%膨張し、コーナー部12の不透明層2の加熱前の厚さt2が加熱後に例えば3〜5%膨張するように形成されている。
即ち、石英ガラスルツボ1とカーボンサセプタ4との密着性を向上することができるとともに、ガス溜まりが生じるようなクリアランスを無くし、反応ガスをルツボ口元側から排気することができる。
本発明に係る石英ガラスルツボの製造方法は、例えば、図3に示すような石英ガラスルツボ製造装置20を用いて行われる。石英ガラスルツボ製造装置20のルツボ成形用型21は、例えば複数の貫通孔(図示せず)を穿設した金型で構成されている内側部材22と、その外周に通気部23を設けて、内側部材22を保持する保持体24とから構成されている。
また、前記貫通孔は、コーナー部に対応する領域と直胴部に対応する領域のみに設定しても良い。大口径ルツボの場合は、コーナー部に対応する領域の2か所以上の高さ、直胴部に対応する領域の2か所以上の高さに設ける等、より細かく設定してもよい。
図示するように各高さの貫通孔ごとに独立した通気部26A、26B、26Cを設けた場合は、減圧機構28につながる圧力制御バルブ30の開度を調節することにより、各部の圧力が底部>コーナー部>直胴部の関係となるように減圧してもよい。
前記内側部材22に対向する上部にはアーク放電用のアーク電極29と、原料供給ノズル31と、窒素ガスあるいはヘリウムガス、アルゴンガスを噴射し、ルツボの所定部位に前記ガスを吹付けるノズル32とが設けられている。
そして、大気雰囲気で、減圧機構28の作動による通気部23の減圧を行い、ルツボ成形用型21の内側部材22に形成された多数の貫通孔を介して内側部材22内面側を吸引しつつ、内側部材22内に原料供給ノズル31から石英ガラス原料粉末を供給する。
そして、この天然石英ガラス原料粉末に続いて合成シリカ原料粉末がルツボ成形用型21内に供給される。この合成シリカ原料粉末は、吸引力及び遠心力によって天然石英ガラス原料粉末層5に押圧され、一つの層(合成シリカ原料粉末層6)が形成され、全体としてルツボ形状の2層の原料粉末積層体7が形成される。
ここで上記したように内側部材22の口元側から底部側にかけて前記貫通孔の数に差異が設けられているため、口元側ほど吸引力が強く、底部側ほど吸引力が弱くなる。それにより原料粉末積層体7の口元側の気体含有量が少なく、底部に向かって気体含有量が多くなる。
そして、冷却後、前記ルツボ形状体8の上端部を切断することによって、図1に示した石英ガラスルツボ1が得られる。
その結果、底部側において、石英ガラスルツボ1とカーボンサセプタ4との間に形成されていたガス溜まりを有するクリアランスは、石英ガラスルツボ1とカーボンサセプタ4の密着により無くなり、前記クリアランスに溜まっていた反応ガスをルツボ口元側から排気することができる。
例えば、不透明外層2において、直胴部11における気泡密度は低い状態とし、コーナー部12から底部13中央側に向かって気泡密度が高くなる勾配を有するように形成してもよい。
例えば、前記貫通孔を内側部材22の口元側のみに設けて、原料粉末積層体7の口元側の気体含有量を大きく、底部側の気体含有量を小さくするようにしてもよい。
また、より好ましくは、不透明外層2を形成するための天然石英ガラス原料粉末は、底部側は大きい粒径の原料粉末を用い、口元側は小さい粒径の原料粉末を用いるようにすれば、より容易に気体含有量の差異をつけることができる。
[実施例1]
実施例1では、図3に示した石英ガラスルツボ製造装置を用い、上記実施の形態に示した製造方法により石英ガラスルツボの製造を行なった。
製造した石英ガラスルツボの口径は、800mmである。
製造した石英ガラスルツボを切断し、マイクロスコープを用いて不透明外層の底部、コーナー部、直胴部における気泡密度を測定した。
その結果、底部は、130個/mm3、コーナー部は106個/mm3、直胴部は83個/mm3であり、底部から口元部(上端開口)にかけて気泡密度が徐々に小さくなる勾配を有することを確認した。
比較例1では、従来の通り、石英ガラスルツボ製造装置における内側部材に形成する貫通孔を全体に均等に形成した。その他の条件は実施例1と同じである。
製造した石英ガラスルツボを切断し、マイクロスコープを用いて気泡密度を測定した結果、底部は、94個/mm3、コーナー部は102個/mm3、直胴部は99個/mm3であり、底部から口元部にかけて気泡密度は略同じとなった。
実施例2では、実施例1と同じ条件で製造した石英ガラスルツボをカーボンサセプタに保持し、カーボンサセプタを回転させながら炉内において1600℃、0.1Torrで5時間の熱処理を行なった。
この熱処理の前後におけるルツボ底部の厚さの変化率は6.8%、コーナー部の厚さの変化率は5.5%、直胴部の厚さの変化率は4.3%であった。
また、熱処理後にガス溜まりがあるかを石英ガラスルツボ回収片の内外面外観観察及び凹凸変形有無、カーボンシートの局所消耗有無により確認した。
比較例2では、比較例1と同じ条件で製造した石英ガラスルツボを実施例2と同様のカーボンサセプタに保持し、実施例2と同条件で熱処理を行なった。
この熱処理の前後におけるルツボ底部の厚さの変化率は4.9%、コーナー部の厚さの変化率は5.3%、直胴部の厚さの変化率は5.2%であった。
また、熱処理後にガス溜まりがあるかを石英ガラスルツボ回収片の内外面の外観観察及び凹凸変形の有無、カーボンシートの局所消耗の有無により確認した。
尚、図5(a)に実施例2におけるルツボ使用前(加熱前)のルツボ底部の断面画像を示し、図5(b)にルツボ使用後(加熱後)のルツボ底部の断面画像を示す。
また、図6(a)にルツボ使用前(加熱前)のルツボコーナー部の断面画像を示し、図6(b)にルツボ使用後(加熱後)のルツボコーナー部の断面画像を示す。
また、図7(a)にルツボ使用前(加熱前)のルツボ直胴部の断面画像を示し、図7(b)にルツボ使用後(加熱後)のルツボ直胴部の断面画像を示す。
これらの画像に示されるようにルツボ使用後は気泡が膨張し、断面層が白濁しており、特にルツボ底部ほど気泡密度が大きいため、ルツボ口元側よりも白濁していることを確認することができた。また、ルツボ口元側よりも気泡密度の高い底部側が厚肉化されていることを確認した。
2 不透明外層(不透明層)
3 透明内層
4 カーボンサセプタ
11 直胴部
12 コーナー部
13 底部
20 石英ガラスルツボ製造装置
22 内側部材
Claims (5)
- 外層に石英ガラスからなる不透明層を有する石英ガラスルツボであって、
第一の曲率を有する底部と、前記底部の周縁部に形成され、第二の曲率を有するコーナー部と、前記コーナー部から上端開口まで延びる直胴部とを有し、
前記不透明層における気泡密度が、前記上端開口側よりも前記底部側が高くなるよう勾配を有することを特徴とする石英ガラスルツボ。 - 外層に石英ガラスからなる不透明層を有する石英ガラスルツボであって、
第一の曲率を有する底部と、前記底部の周りに形成され、第二の曲率を有するコーナー部と、前記コーナー部から上端開口まで延びる直胴部とを有し、
前記不透明層における気泡密度が、前記コーナー部側よりも前記底部中央側が高くなるよう勾配を有することを特徴とする石英ガラスルツボ。 - 外層に石英ガラスからなる不透明層を有する石英ガラスルツボであって、
第一の曲率を有する底部と、前記底部の周縁部に形成され、第二の曲率を有するコーナー部と、前記コーナー部から上端開口まで延びる直胴部とを有し、
前記不透明層における気泡密度が、前記上端開口側よりも前記コーナー部側が高くなり、前記コーナー部側よりも前記底部側が高くなるよう勾配を有することを特徴とする石英ガラスルツボ。 - 第一の曲率を有する底部と、前記底部の周縁部に形成され、第二の曲率を有するコーナー部と、前記コーナー部から上部開口まで延びる直胴部とを有するルツボ金型からなり前記上部開口側から前記コーナー部側、及び前記コーナー部側から底部側に向けて形成された貫通孔の数に差異が設けられた内側部材と、前記内側部材の外周に配され、通気部を介して前記内側部材を保持する保持体と、から構成されるルツボ成形用型を用い、外層に石英ガラスからなる不透明層を有するルツボを製造する石英ガラスルツボの製造方法であって、
前記通気部を減圧し、前記ルツボ成形型の内側部材に形成された貫通孔を介して前記内側部材の内面側を吸引するステップと、
前記ルツボ成形用型の内側部材を軸周りに回転させるとともに、前記内側部材内にガラス原料粉末を供給するステップと、
軸周りに回転する前記内側部材の内面に、吸引力及び遠心力により前記ガラス原料粉末を押圧し、少なくとも1層からなる原料粉末積層体を形成するステップと、
前記原料粉末積層体の内側を加熱溶融し、内表面をガラス化するステップと、
前記原料粉末積層体の内側を加熱溶融するとともに、前記通気部を減圧し、前記複数の貫通孔を介して前記原料粉末積層体から吸気するステップと、
前記原料粉末積層体の全体をガラス化してルツボ形状体とするステップと、
を含むことを特徴とする石英ガラスルツボの製造方法。 - 前記ルツボ成形用型の内側部材を軸周りに回転させるとともに、前記内側部材内にガラス原料粉末を供給するステップにおいて、
前記内側部材の上部開口側よりもコーナー部側のガラス原料粉末の粒径が大きく、前記コーナー部側よりも底部側のガラス原料粉末の粒径が大きくなるように前記ガラス原料粉末を供給することを特徴とする請求項4に記載された石英ガラスルツボの製造方法。
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