JP2021067327A - 減速機のケース、減速機、及び、産業用ロボット - Google Patents

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Abstract

【課題】ピン溝の加工作業時間を短縮し、かつ、ピン溝の加工精度を高めることができる減速機のケース、減速機、及び、産業用ロボットを提供する。【解決手段】減速機のケース11は、ケース本体11aと、フランジ11bと、を備えている。ケース本体11aは、円筒形状に形成され、内周面に軸方向に沿う複数のピン溝18を有する。フランジ11bは、ケース本体11aの外周面からの距離が所定の高位領域、及び、外周面からの距離が高位領域よりも短い低位領域11b−Lを有する。フランジ11bは、低位領域11b−Lがピン溝18の軸方向領域の80%以上の領域を覆う範囲に配置されている。【選択図】図4

Description

本発明は、減速機のケース、減速機、及び、産業用ロボットに関する。
産業用ロボット等で用いられる回転機器では、モータ等の回転駆動源の回転を減速するために減速機が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
上記の減速機として、筒状のケースと、ケース内に回転可能に保持されたキャリア(出力ブロック)と、キャリアに回転可能に支持されたクランクシャフトと、クランクシャフトの偏心部の回転を受けてケース内で旋回回転する揺動歯車(外歯歯車)と、ケースの内周面に回転可能に保持された複数の内歯ピンと、を備えたものがある。この減速機の場合、クランクシャフトには、回転駆動源の回転が入力される。また、ケースの内周面には、複数の内歯ピンを回転可能に保持するためのピン溝が形成されている。ピン溝は、ケースの軸方向に沿うようにケースの内周面に等間隔に形成されている。揺動歯車の外周面には、複数の内歯ピンと噛み合う外歯が形成されている。外歯の歯数は、内歯ピンの個数よりも一つ分少ない数に設定されている。このため、揺動歯車は、クランクシャフトの回転を受けて旋回回転すると、内歯ピンと噛み合いつつ所定減速比に減速されて旋回方向と逆向きに自転する。揺動歯車の自転成分は、クランクシャフトや別の出力ピンを通してキャリアに伝達される。キャリアは、使用する回転機器に接続され、減速された回転駆動源の動力を回転機器に伝達する。
この種の減速機を、例えば、産業用ロボットのナックル部に用いる場合には、ケースの筒状のケース本体の外周にフランジを突設し、そのフランジをロボットのナックル部に固定する。このとき、ケース本体の一部はナックル部の嵌合穴内に嵌入され、フランジは、その状態でナックル部の締結面にボルト締結される。
特許第4783668号公報
上記の減速機のケースは、円筒状のケース本体の内周面にピン溝が形成される一方で、ケース本体の外周面側に締結用のフランジが突設されている。ケース本体の外周面から突出するフランジは、通常、円周方向に亘って一定高さに形成される。しかし、減速機を産業用ロボットのナックル部に使用する場合等には、ナックル部が回動するときにフランジが他の部材と干渉するのを避けるために、フランジの一部にボルト締結部よりも突出高さの低い低位部を形成することがある。この場合、フランジの周域には、ケース本体からの突出高さの高い高位部と突出高さの低い低位部が形成され、ケース本体の周域には、径方向の肉厚の厚い部分と肉厚の薄い部分が作られることになる。
この種の減速機のケースは、ケースの概略形状を鋳造等によって造形した後に、ケース本体の内周面に切削工具によって複数のピン溝を形成する。このとき、ケース本体の内周面に切削工具を押し当て、ケースの軸方向に沿って切削工具を移動させて切削を行うが、フランジの低位部のある円周上位置でケース本体の内周面に切削を行うと、切削工具の押し付けによってケース本体の周壁の一部が撓み変形することがある。つまり、ケース本体の周壁のうちの、フランジの低位部のある円周上位置では、フランジによる剛性維持効果が充分に得られなくなるため、ピン溝の切削作業時にケース本体の周壁に撓み変形が生じ易くなる。
この状況でケース本体の内周面にピン溝の加工を行うと、ケース本体の周壁の撓みによってピン溝の加工精度が低下してしまう。このため、ケース本体の内周面にピン溝を加工する際には、切削工具の押し付け力を弱めて作業を行うことになるが、その場合には、ピン溝の加工を完了するまでに多くの時間を要することになる。
本発明は、ピン溝の加工作業時間を短縮し、かつ、ピン溝の加工精度を高めることができる減速機のケース、減速機、及び、産業用ロボットを提供する。
本発明の一態様に係る減速機のケースは、内周面に軸方向に沿う複数のピン溝を有する筒状形状のケース本体と、前記ケース本体の外周面からの距離が所定の高位領域、及び、前記外周面からの距離が前記高位領域よりも短い低位領域を有し、前記ピン溝の軸方向領域の80%以上の領域を前記低位領域が覆う範囲に配置されているフランジと、を備えている。
本形態の減速機のケースの場合、フランジの低位領域が、ケース本体のピン溝の軸方向領域の80%以上の領域を覆う範囲に配置されているため、ケース本体の周壁のうちの、ピン溝の形成される部分の剛性が高まる。このため、ケースの主要形状を鋳造等によって造形した後に、ケース本体の内周面に切削工具によってピン溝を形成する際に、ケース本体の周壁が切削工具に押されても撓み変形しにくくなる。特に、フランジの低位領域は、高位領域に比較して肉厚が薄くなり、高位領域に比較して剛性面では不利になるものの、ピン溝の軸方向領域の80%以上の領域を覆う範囲に配置されている。このため、ケース本体の周壁のうちの、ピン溝形成部の軸方向のほぼ全域の剛性を高く維持することができる。したがって、ケース本体の内周面に切削工具によってピン溝を形成する際には、ケース本体の周壁が変形しにくくなる。
本発明の他の態様に係る減速機のケースは、内周面に軸方向に沿う複数のピン溝を有する筒状形状のケース本体と、前記ケース本体の外周面からの距離が所定の高位領域、及び、前記外周面からの距離が前記高位領域よりも短い低位領域を有し、前記ピン溝の軸方向領域の90%以上の領域を前記低位領域が覆う範囲に配置されているフランジと、を備えている。
この態様に係る減速機のケースは、フランジの低位領域が、ピン溝の軸方向領域のの90%以上の領域を覆う範囲に配置されている。このため、ケース本体の内周面に切削工具によってピン溝を形成する際に、ケース本体の周壁がほぼ変形しなくなる。
本発明のさらに他の態様に係る減速機のケースは、内周面に軸方向に沿う複数のピン溝を有する筒状形状のケース本体と、前記ケース本体の外周面からの距離が所定の高位領域、及び、前記外周面からの距離が前記高位領域よりも短い低位領域を有し、前記ピン溝の軸方向領域の100%以上の領域を前記低位領域が覆う範囲に配置されているフランジと、を備えている。
この態様に係る減速機のケースは、フランジの低位領域が、ピン溝の軸方向領域の100%以上の領域を覆う範囲に配置されている。このため、ケース本体の内周面に切削工具によってピン溝を形成する際に、切削工具をケース本体の内周面に強く押し当てても、ケース本体の周壁が変形しなくなる。
前記高位領域は、減速機が取り付けられる取付対象部材にボルト締結される部位に配置され、前記低位領域は、周囲の部材との干渉を避ける部位に配置されるようにしても良い。
この場合、フランジに低位領域を配置することにより、フランジと周囲の部材との干渉を避けることができ、しかも、ケース本体の周壁のうちの低位領域の配置される部位の剛性低下を抑制することができる。
前記高位領域は、前記フランジを軸方向に貫通するボルト挿通孔を有し、前記高位領域と前記低位領域の軸方向の端面は平坦な連続面によって構成されるようにしても良い。
この場合、フランジを軸方向に一定厚みに造形した後に、フランジの外周の一部を切除することにより、フランジに高位領域と低位領域を容易に形成することが可能になる。
本発明の一態様に係る減速機は、前記ケースと、前記ケースに回転可能に保持されるキャリアと、前記キャリアに回転可能に支持され、入力回転を受けて偏心領域が旋回するクランクシャフトと、前記ケースの前記ピン溝に保持される内歯ピンと、前記内歯ピンの個数よりも少ない数の外歯を有し、当該外歯で前記内歯ピンと噛み合いつつ、前記クランクシャフトの前記偏心領域から旋回力を受けて揺動回転する揺動歯車と、を備えている。
本発明の一態様に係る産業用ロボットは、可動自在なアーム部と、前記アーム部の先端に回動自在に連結されたナックル部と、前記ナックル部に取り付けられた前記減速機と、を備え、前記減速機は、前記低位領域が前記ナックル部の回動方向に向くように前記フランジが前記ナックル部に取り付けられている。
上述の減速機のケースは、ケース本体のピン溝の形成される部分の剛性を、ケース本体の外周のフランジによって効率良く高めることができる。したがって、上述の減速機のケースを採用した場合には、ピン溝の加工作業時間を短縮し、かつ、ピン溝の加工精度を高めることができる。
本発明の実施形態の減速機を採用した産業ロボットの側面図。 本発明の実施形態の減速機の部分断面正面図。 図2のIII−III線に沿う断面図。 図2のIV−IV線に沿う断面図。
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、実施形態の減速機10を採用した産業用ロボット1の側面図である。
本実施形態の産業用ロボット1は、回動可能な複数の関節を有する多関節ロボットである。産業用ロボット1は、設置面に設置される基台2に、アーム部3,4,5,6がこの順に回動可能に連結されている。先端側のアーム部6には、ナックル部7が回動可能に連結されている。ナックル部7には、減速機10が取り付けられている。ナックル部7には、図示しない駆動用モータが内蔵され、駆動用モータから減速機10の入力部に回転トルクが入力される。減速機10の出力側には、例えば、物品を把持する把持ヘッド(不図示)等が取り付けられる。
図2は、減速機10を入力側から見た部分断面正面図である。図3は、図2のIII−III線に沿う断面図であり、図4は、図2のIV−IV線に沿う断面図である。なお、図2の断面部分は、図3のII−II線に沿う断面に対応する。
減速機10は、概略形状が筒状形状であるケース11と、ケース11の内周面に回転自在に保持された第1キャリアブロック13A、及び、第2キャリアブロック13Bと、第1キャリアブロック13A、及び、第2キャリアブロック13Bに回転自在に支持された複数(例えば、三つ)のクランクシャフト14と、各クランクシャフト14の二つの偏心領域14bとともに旋回回転する第1揺動歯車15A、及び、第2揺動歯車15Bと、を備えている。
本実施形態では、第1キャリアブロック13Aと第2キャリアブロック13Bが出力回転体であるキャリアを構成している。
第1キャリアブロック13Aは、孔空き円板状の基板部13Aaと、当該基板部13Aaの端面から第2キャリアブロック13Bの方向に向かって延びる複数の支柱部13Abと、を有する。第2キャリアブロック13Bは、孔空き円板状に形成されている。第1キャリアブロック13Aは、支柱部13Abの端面が第2キャリアブロック13Bの端面に突き合わされ、各支柱部13Abが第2キャリアブロック13Bにボルト16によって締結固定されている。なお、図中の符号17は、ボルト16による締結前に第2キャリアブロック13Bを各支柱部13Abに位置決めするための位置決めピンである。
第1キャリアブロック13Aの基板部13Aaと第2キャリアブロック13Bとの間には、軸方向の隙間が確保されている。この隙間には、第1揺動歯車15Aと第2揺動歯車15Bが配置されている。
なお、第1揺動歯車15Aと第2揺動歯車15Bには、第1キャリアブロック13Aの各支柱部13Abが貫通する逃げ孔19が形成されている。逃げ孔19は、各支柱部13Abが第1揺動歯車15Aと第2揺動歯車15Bの旋回動作を妨げないように、支柱部13Abの外面形状よりも充分に大きく形成されている。
ケース11は、円筒状のケース本体11aと、ケース本体11aの外周面から径方向外側に突出するフランジ11bと、を備えている。ケース本体11aとフランジ11bは、鋳造等によって一体に形成されている。
ケース本体11aは、第1キャリアブロック13Aの基板部13Aaの外周面と、第2キャリアブロック13Bの外周面とに跨って配置されている。ケース本体11aの軸方向の両側端縁には、第1キャリアブロック13Aの基板部13Aaと、第2キャリアブロック13Bとが軸受12を介して回転可能に支持されている。また、ケース本体11aの軸方向の中央領域(第1揺動歯車15Aと第2揺動歯車15Bの外周面に対向する領域)の内周面には、第1,第2キャリアブロック13A,13Bの回転中心軸線c1と平行に延びる複数のピン溝18が形成されている。各ピン溝18には、略円柱状の内歯ピン20が回転可能に収容されている。ケース本体11aの内周面に取り付けられた複数の内歯ピン20は、第1揺動歯車15Aと第2揺動歯車15Bの各外周面に対向している。
第1揺動歯車15Aと第2揺動歯車15Bは、ケース本体11aの内径よりも若干小さい外径に形成されている。第1揺動歯車15Aと第2揺動歯車15Bの各外周面には、ケース本体11aの内周面に配置された複数の内歯ピン20に噛み合い状態で接触する外歯15Aa,15Baが形成されている。第1揺動歯車15Aと第2揺動歯車15Bの各外周面に形成された外歯15Aa,15Baの歯数は、内歯ピン20(ピン溝18)の数よりも僅かに少なく(例えば、一つ少なく)設定されている。
複数のクランクシャフト14は、第1キャリアブロック13Aと第2キャリアブロック13Bの回転中心軸線c1を中心とした同一円周上に配置されている。各クランクシャフト14は、軸受21を介して第1キャリアブロック13Aと第2キャリアブロック13Bとに回転自在に支持されている。各クランクシャフト14は、軸方向に離間して一対の軸支持領域14aが配置され、一対の軸支持領域14aの間に二つの偏心領域14bが配置されている。クランクシャフト14の軸方向の一方の端部には、軸支持領域14aに隣接して歯車取付部14cが形成されている。各軸支持領域14aの外周面は、クランクシャフト14の軸方向の端部に向かって先細り状に傾斜したテーパ面によって構成されている。また、各軸支持領域14aは、第1キャリアブロック13A(基板部13Aa)に形成された軸支持孔13Aa−1と、第2キャリアブロック13Bに形成された軸支持孔13Ba−1に挿通され、これらに軸受21を介して回転自在に支持されている。
軸受21は、転動体として円筒ころ21aを持つアンギュラ軸受によって構成されている。第1キャリアブロック13Aと第2キャリアブロック13Bの各軸支持孔13Aa−1,13Ba−1の内周面は、軸方向外側に向かって先細り状に傾斜したテーパ面によって構成されている。軸支持孔13Aa−1,13Ba−1の内周面は、クランクシャフト14の対応する軸支持領域14aの外周面と平行になるように形成されている。本実施形態の場合、クランクシャフト14の軸支持領域14aの外周面(テーパ面)は、軸受21のインナレース面を構成し、軸支持孔13Aa−1,13Ba−1の内周面(テーパ面)は、軸受21のアウタレース面を構成している。
なお、クランクシャフト14は、軸支持領域14aの外周面を含む全域に浸炭焼き入れが施されている。また、第1キャリアブロック13Aと第2キャリアブロック13Bの各軸支持孔13Aa−1,13Ba−1の内周面には、高周波焼き入れが施されている。また、軸受21の複数の円筒ころ21aは、全体が截頭円錐形状を成して配置されるように、保持器27に回転可能に保持されている。
クランクシャフト14の二つの偏心領域14bは、これらの各中心軸線c3,c4が軸支持領域14aの中心軸線c2に対して偏心している。また、二つの偏心領域14bは、軸支持領域14aの中心軸線c2(クランクシャフト14の中心軸線)周りに位相が180°ずれるように偏心している。
また、クランクシャフト14の各偏心領域14bは、第1揺動歯車15Aと第2揺動歯車15Bを夫々貫通している。各偏心領域14bは、第1揺動歯車15Aと第2揺動歯車15Bに夫々形成された支持孔22に偏心部軸受23(円筒ころ軸受)を介して回転自在に係合されている。
本実施形態の減速機10は、複数のクランクシャフト14が外力を受けて一方向に回転すると、クランクシャフト14の各偏心領域14bが所定の半径で同方向に旋回し、それに伴って第1揺動歯車15Aと第2揺動歯車15Bが同じ半径で同方向に旋回(揺動)する。このとき、第1揺動歯車15Aと第2揺動歯車15Bの各外歯15Aa,15Baは、ケース本体11aの内周に保持された複数の内歯ピン20と噛み合うように接触する。
なお、各クランクシャフト14の歯車取付部14cは、第2キャリアブロック13Bの軸支持孔13Ba−1を貫通して第2キャリアブロック13Bの軸方向外側に突出している。第2キャリアブロック13Bから突出した歯車取付部14cには、クランクシャフト歯車28が取り付けられている。各クランクシャフト歯車28は、図示しない入力歯車に噛み合っている。入力歯車は、図示しない駆動用モータの駆動力を受けて回転する。
本実施形態の減速機10では、第1揺動歯車15Aと第2揺動歯車15Bの各外歯15Aa,15Baの歯数が、ケース本体11a側の内歯ピン20の数よりも僅かに少なく設定されているため、第1揺動歯車15Aと第2揺動歯車15Bが一旋回する間に、第1揺動歯車15Aと第2揺動歯車15Bがケース本体11a側の内歯ピン20から回転方向の反力を受け、旋回方向と逆方向に所定のピッチ分だけ自転する。この結果、第1揺動歯車15Aと第2揺動歯車15Bにクランクシャフト14を介して係合された第1,第2キャリアブロック13A,13Bが、第1,第2揺動歯車14A,14Bとともに同方向に同ピッチで回転する。この結果、クランクシャフト14の回転は減速されて第1,第2キャリアブロック13A,13Bの回転として出力される。
なお、本実施形態では、クランクシャフト14の二つの偏心領域14bが軸線回りに180°ずれるように偏心しているため、第1揺動歯車15Aと第2揺動歯車15Bの旋回位相は180°ずれることになる。
ここで、ケース11の外周のフランジ11bは、図2中の上下と左右の各部に相互に平行な平坦面が設けられている。これにより、フランジ11bには、4つの円弧形状部と、周方向で隣接する円弧形状部の端部同士を接続する4つの直接形状部が設けられている。本実施形態の場合、円弧形状部は、ケース本体11aの外周面からの距離が所定の高位領域11b−Hを構成し、直線形状部は、ケース本体11aの外周面からの距離が高位領域11b−Hよりも短い低位領域11b−Lを構成している。
フランジ11bの各高位領域11b−Hには、フランジ11bをケース11の軸方向に沿って貫通する複数のボルト挿通孔29が形成されている。ボルト挿通孔29は、ケース本体11aの円周方向に沿って等間隔に形成されている。各ボルト挿通孔29には、減速機10を産業用ロボット1のナックル部7(図1参照)に締結固定するための図示しないボルトが挿入される。減速機10は、ケース本体11aの一部(図3,図4中のフランジ11bよりも右側領域)がナックル部7の嵌合穴内に嵌入され、その状態でフランジ11bの高位領域11b−Hがボルトによってナックル部7の締結面に締結固定される。
減速機10は、フランジ11bの低位領域11b−Lがナックル部7の回動方向を向くように、フランジ11bがナックル部7に締結固定される。フランジ11bの低位領域11b−Lは、ケース本体11aの外周面からの距離が短いため、ナックル部7がアーム部6に対して回動した際に、フランジ11bが周囲の他の部材と干渉しにくくなる。フランジ11bの低位領域11b−Lは、周囲の部材との干渉を避ける部位に配置されている。このため、ナックル部7の可動角度を充分に確保することができる。
また、フランジ11bは、ケース本体11aの内周側のピン溝18の軸方向領域の全域(100%の領域)をケース本体11aの外周側で覆う範囲に亘って形成されている。本実施形態では、フランジ11bの軸方向の幅(ケース本体11aの軸方向についての幅)は、ピン溝18の軸方向の延出長さと同長さに形成されている。
なお、本実施形態では、フランジ11bが、ピン溝18の軸方向領域の100%の領域を覆う範囲に配置されているが、フランジ11bの配置される範囲は、ピン溝18の軸方向領域の100%以上、120%以下であることが望ましい。
また、本実施形態の場合、フランジ11bの高位領域11b−Hと低位領域11b−Lの軸方向の端面が平坦な連続面によって構成されている。つまり、高位領域11b−Hと低位領域11b−Lで軸方向の厚みに差がないように形成されている。ただし、高位領域11b−Hと低位領域11b−Lで軸方向の厚みに差をつけるようにしても良い。例えば、低位領域11b−Lの軸方向の厚みを高位領域11b−Hの軸方向の厚みよりも厚く設定するようにしても良い。
なお、本実施形態の場合、フランジ11bの低位領域11b−Lの径方向の最小肉厚(ケース本体11aの周壁の肉厚に低位領域11b−Lの突出高さ分の肉厚を加えた肉厚)は、内歯ピン20の直径の1.8倍〜3.5倍の肉厚に設定されている。
つづいて、減速機10のケース11の製造方法の一例について説明する。
ケース11は、ケース本体11aとフランジ11bを含む概略形状を鋳造等によって造形する。フランジ11bの低位領域11b−Lは、ケース本体11aとフランジ11bの造形時に鋳造によって同時に形成しても、鋳造によって一定の突出高さのフランジ11bを造形した後に、切削等によってフランジ11bの一部を切除することにより形成しても良い。また、フランジ11bの高位領域11b−Hには、鋳造後に切削工具等によってボルト挿通孔29を形成する。
この後、ケース本体11aの内周面に切削工具によって複数のピン溝18を形成する。このとき、ケース本体11aの内周面に対し、切削工具をケース11の軸方向に移動させつつピン溝18の切削を行う。ケース本体11aの外周側には、径方向の肉厚の厚いフランジ11bの高位領域11b−Hと、径方向の肉厚の薄いフランジ11bの低位領域11b−Lが配置されている。このため、ケース本体11aの周壁の剛性は、フランジ11bの形成される部位全体でみれば、高位領域11b−Hの配置される部位よりも低位領域11b−Lの配置される部位の方が低くなっている。しかし、フランジ11bは、高位領域11b−Hと低位領域11b−Lのいずれにおいても、ピン溝18の軸方向領域の全域(100%の領域)を覆う範囲に亘って形成されている。このため、切削工具でケース本体11aの内周面にピン溝18を加工する際には、ケース本体11aの内周面に対する切削工具の押し付けにより、ケース本体11aが大きく撓み変形することがない。したがって、ケース本体11aの内周面の周方向の全域に、切削工具によって高精度に、かつ迅速にピン溝18を形成することができる。
以上のように、本実施形態の減速機10のケース11は、ケース本体11aの外周面から突出するフランジ11bが、ケース本体11aのピン溝18の軸方向領域の全域(100%の領域)を覆う範囲に配置されている。このため、ケース本体11aの内周面に切削工具によってピン溝18を形成する際に、切削工具をケース本体11aの内周面に強く押し当てても、ケース本体11aの周壁が撓み変形しない。したがって、本実施形態の減速機10のケース11を採用した場合には、ピン溝の加工作業時間を短縮し、かつ、ピン溝の加工精度を高めることができる。
本実施形態のケース11では、フランジ11bが、ケース本体11aのピン溝18の軸方向領域の全域(100%の領域)を覆う範囲に配置されているが、フランジ11bは、ピン溝18の軸方向領域の90%以上、100%未満の領域を覆う範囲に配置しても良い。この場合、ケース本体11aの内周面に切削工具によってピン溝18を形成する際に、ケース本体11aの周壁が完全ではないがほぼ変形しなくなる。
また、フランジ11bは、ピン溝18の軸方向領域の80%以上、90%未満の領域を覆う範囲に配置しても良い。この場合、ケース本体11aの内周面に切削工具によってピン溝18を形成する際に、ケース本体11aの周壁の変形を加工に支障を来さない範囲に抑制することができる。
また、本実施形態の減速機10のケース11は、フランジ11bの高位領域11b−Hが産業用ロボット1のナックル部7(取付対象部材)にボルト締結される部位に配置され、低位領域11b−Lが、フランジ11bのうちの、ナックル部7の回動時に周囲の部材との干渉し易い部位に配置されている。このため、本実施形態の構成を採用した場合には、ナックル部7の回動時に、フランジ11bと周囲の部材との干渉を避けることができ、しかも、ケース本体11aの周壁のうちの低位領域11b−Lの配置される部位の剛性低下を抑制することができる。
さらに、本実施形態の減速機10のケース11では、フランジ11bの高位領域11b−Hにボルト挿通孔29が形成され、高位領域11b−Hと低位領域11b−Lの軸方向の端面が平坦な連続面によって構成されている。このため、ケース11を製造するに際し、フランジ11bの全体を一定突出高さに、かつ一定の軸方向厚みに造形した後に、フランジ11bの外周の一部を切除することにより、フランジ11bに高位領域11b−Hと低位領域11b−Lを容易に形成することができる。したがって、本構成を採用した場合には、ケース11の製造時間の短縮と、生産コストの低減を図ることができる。
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。
例えば、上記の実施形態では、ケース11のフランジ11bに、相互に平行な低位領域11b−Lの対が二組(低位領域11b−Lは合計4つ)設けられているが、フランジ11bに形成する低位領域11b−Lの数や形成位置は、これに限るものではなく任意である。
1…産業用ロボット
6…アーム部
7…ナックル部(取付対象部材)
10…減速機
11…ケース
11a…ケース本体
11b…フランジ
11b−H…高位領域
11b−L…低位領域
13A…第1キャリアブロック(キャリア)
13B…第2キャリアブロック(キャリア)
14…クランクシャフト
15A…第1揺動歯車(揺動歯車)
15B…第2揺動歯車(揺動歯車)
18…ピン溝
20…内歯ピン
29…ボルト挿通孔

Claims (7)

  1. 内周面に軸方向に沿う複数のピン溝を有する筒状形状のケース本体と、
    前記ケース本体の外周面からの距離が所定の高位領域、及び、前記外周面からの距離が前記高位領域よりも短い低位領域を有し、前記ピン溝の軸方向領域の80%以上の領域を前記低位領域が覆う範囲に配置されているフランジと、
    を備えている減速機のケース。
  2. 内周面に軸方向に沿う複数のピン溝を有する筒状形状のケース本体と、
    前記ケース本体の外周面からの距離が所定の高位領域、及び、前記外周面からの距離が前記高位領域よりも短い低位領域を有し、前記ピン溝の軸方向領域の90%以上の領域を前記低位領域が覆う範囲に配置されているフランジと、
    を備えている減速機のケース。
  3. 内周面に軸方向に沿う複数のピン溝を有する筒状形状のケース本体と、
    前記ケース本体の外周面からの距離が所定の高位領域、及び、前記外周面からの距離が前記高位領域よりも短い低位領域を有し、前記ピン溝の軸方向領域の100%以上の領域を前記低位領域が覆う範囲に配置されているフランジと、
    を備えている減速機のケース。
  4. 前記高位領域は、減速機が取り付けられる取付対象部材にボルト締結される部位に配置され、
    前記低位領域は、周囲の部材との干渉を避ける部位に配置されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の減速機のケース。
  5. 前記高位領域は、前記フランジを軸方向に貫通するボルト挿通孔を有し、
    前記高位領域と前記低位領域の軸方向の端面は平坦な連続面によって構成されている請求項4に記載の減速機のケース。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の前記ケースと、
    前記ケースに回転可能に保持されるキャリアと、
    前記キャリアに回転可能に支持され、入力回転を受けて偏心領域が旋回するクランクシャフトと、
    前記ケースの前記ピン溝に保持される内歯ピンと、
    前記内歯ピンの個数よりも少ない数の外歯を有し、当該外歯で前記内歯ピンと噛み合いつつ、前記クランクシャフトの前記偏心領域から旋回力を受けて揺動回転する揺動歯車と、
    を備えている減速機。
  7. 可動自在なアーム部と、
    前記アーム部の先端に回動自在に連結されたナックル部と、
    前記ナックル部に取り付けられた請求項6に記載の減速機と、を備え、
    前記減速機は、前記低位領域が前記ナックル部の回動方向に向くように前記フランジが前記ナックル部に取り付けられている産業用ロボット。
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