JP2021066022A - インジウム蒸着保持フィルム、金属調多層フィルム、インジウム蒸着保持フィルムの製造方法、金属調多層フィルムの製造方法およびエンブレム - Google Patents

インジウム蒸着保持フィルム、金属調多層フィルム、インジウム蒸着保持フィルムの製造方法、金属調多層フィルムの製造方法およびエンブレム Download PDF

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Abstract

【課題】ミリ波帯の透過性と可視領域における反射性について、より高い性能を満たすことのできる、インジウム蒸着保持フィルム、金属調多層フィルム、インジウム蒸着保持フィルムの製造方法、金属調多層フィルムの製造方法およびエンブレムを提供する。【解決手段】インジウム蒸着保持フィルム70は、インジウム蒸着層20が、保持フィルム層30にインジウムが島状に点在する海島構造を有し、インジウムが蒸着する方向と垂直な方向における、インジウム蒸着層の表面において、島状のインジウムは150×106個/cm2以上存在し、表面において、島状のインジウムの外周の長さの合計が100×106μm/cm2以上であり、インジウム蒸着保持フィルムのミリ波透過減衰量は、−1.0dB以内であり、インジウム蒸着保持フィルムの全光線透過率は、1.3%〜30%である、インジウム蒸着保持フィルム。【選択図】図1

Description

本発明は、インジウム蒸着保持フィルム、金属調多層フィルム、インジウム蒸着保持フィルムの製造方法、金属調多層フィルムの製造方法およびエンブレムに関する。
バイクや自動車等の車の周囲の障害物の検出には、ミリ波レーダ等のセンサが用いられている。ミリ波レーダは、波長が1〜10mmの電波を障害物に照射し、障害物から反射して戻ってくる時間を計測し、障害物との距離を測定する装置である。ミリ波レーダは雨天や霧等の天候による影響を受けにくく、遠方の障害物を検出できるため、多くの自動車メーカーで導入されている。
自動車用のミリ波レーダでは、76〜77GHzの領域のミリ波帯が用いられており、ミリ波レーダの装置本体は、例えば自動車の車体前面の中央部にあるエンブレムの背後に搭載され、ミリ波は装置本体よりエンブレムを透過して障害物へ照射される。
例えば、このようなエンブレムに用いることのできるレーダ装置ビーム経路内用光輝装飾成形品として、特許文献1には、透明樹脂層からなる基体と、該基体裏面に設けられ着色されたプライマー層(アンダーコート層)と、該プライマー層(アンダーコート層)裏面に設けられたインジウム層、インジウム合金層、錫層、及び錫合金層の1層以上からなる金属層とを有するレーダ装置ビーム経路内用光輝装飾成形品が開示されている。
特開2006−264593号公報
エンブレムとしては、装飾性の点から金属光沢を有するものが用いられており、背後にミリ波レーダの装置本体が設置されるエンブレムには、ミリ波帯の透過性に加え、金属光沢が視認できるよう可視領域における反射性が要求される。ミリ波帯の透過性と可視領域における反射性は、相反する性質といえるが、最近ではこれらの性質に対して、自動車メーカー等からより高い性能を有することが、エンブレムの採用条件として求められる場合がある。
例えば、エンブレムの材料として適用可能な金属調の多層フィルムの性能としては、ミリ波帯の透過性の目安としてミリ波透過減衰量が−1.0dBであり、かつ、可視領域における反射性の目安として全光線透過率が1.3%〜30%以下であることが、求められる。
ただし、従来の金属調の多層フィルムでは、ミリ波帯の透過性と可視領域における反射性について、このような高い性能を満たすことはできなかった。
上記問題点に鑑み、本発明は、ミリ波帯の透過性と可視領域における反射性について、より高い性能を満たすことのできる、インジウム蒸着保持フィルム、金属調多層フィルム、インジウム蒸着保持フィルムの製造方法、金属調多層フィルムの製造方法およびエンブレムを提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明のインジウム蒸着保持フィルムは、インジウム蒸着層と、前記インジウム蒸着層を保持する保持フィルム層とを備える、インジウム蒸着保持フィルムであって、前記インジウム蒸着層は、前記保持フィルム層にインジウムが島状に点在する海島構造を有し、前記インジウムが蒸着する方向と垂直な方向における、前記インジウム蒸着層の表面において、前記島状の前記インジウムは150×106個/cm2以上存在し、前記表面において、前記島状の前記インジウムの外周の長さの合計が100×106μm/cm2以上であり、前記インジウム蒸着保持フィルムのミリ波透過減衰量は、−1.0dB以内であり、前記インジウム蒸着保持フィルムの全光線透過率は、1.3%〜30%である。
前記表面において、前記島状の前記インジウムの面積が0.01μm2〜0.4μm2であってもよい。
前記保持フィルム層は、厚みが5μm〜50μmのポリエチレンテレフタレート系樹脂層であってもよい。
また、上記課題を解決するために、本発明の金属調多層フィルムは、順に、ベースフィルム層と、前記ベースフィルム層と積層するインジウム蒸着層と、当該インジウム蒸着層を保持する保持フィルム層とを備える、上記した本発明のインジウム蒸着保持フィルムと、前記保持フィルム層と積層する保護フィルム層と、が積層する金属調多層フィルムであって、前記金属調多層フィルムのミリ波透過減衰量は、−1.0dB以内であり、前記金属調多層フィルムの全光線透過率は、1.3%〜30%である。
前記ベースフィルム層は、厚みが50μm〜1000μmのポリカーボネート系樹脂層であり、前記保護フィルム層は、厚みが50μm〜200μmのポリカーボネート系樹脂層であってもよい。
本発明の金属調多層フィルムは、前記ベースフィルム層と前記インジウム蒸着層を接合する第1ポリウレタン系接着層と、前記保持フィルム層と前記保護フィルム層を接合する第2ポリウレタン系接着層と、を備えてもよい。
また、上記課題を解決するために、本発明のインジウム蒸着保持フィルムの製造方法は、上記した本発明のインジウム蒸着保持フィルムの製造方法であって、1.33×10-3Pa〜1.33×10-2Paの圧力条件下で、温度が−5℃〜5℃のロールに沿った前記保持フィルム層をインジウム蒸気流中に露出させて、前記保持フィルム層に前記インジウム蒸着層を形成する蒸着工程と、前記蒸着工程によって得られた前記インジウム蒸着層と前記保持フィルム層との積層体の全光線透過率を測定する測定工程と、前記測定工程により得られる前記積層体の全光線透過率が1.3%〜30%となるように、前記インジウム蒸着層の形成速度を制御する制御工程と、を含む。
また、上記課題を解決するために、本発明の金属調多層フィルムの製造方法は、上記した本発明のインジウム蒸着保持フィルムの製造方法により得た、前記インジウム蒸着保持フィルムの前記インジウム蒸着層と、前記ベースフィルム層を積層する第1積層工程と、前記インジウム蒸着保持フィルムの前記保持フィルム層と、前記保護フィルム層を積層する第2積層工程と、を含む。
また、上記課題を解決するために、本発明のエンブレムは、本発明の金属調多層フィルムを備える。
本発明によれば、ミリ波帯の透過性と可視領域における反射性について、より高い性能を満たすことのできる、インジウム蒸着保持フィルム、金属調多層フィルム、インジウム蒸着保持フィルムの製造方法、金属調多層フィルムの製造方法およびエンブレムを提供することができる。
本発明の金属調多層フィルム100の一実施形態の側面断面を示す概略図である。 インジウム蒸着層20の側面断面を撮影したSEM画像である。 インジウムが蒸着する方向と平行な方向より、実施例2のインジウム蒸着層20の表面を撮影したSEM画像である。 真空蒸着装置200の概略図である。 エンブレム300の製造工程の一例を示す概略図である。 インジウムが蒸着する方向と平行な方向より、比較例2のインジウム蒸着層の表面を撮影したSEM画像である。
以下、本発明に係るインジウム蒸着保持フィルム、金属調多層フィルム、インジウム蒸着保持フィルムの製造方法、金属調多層フィルムの製造方法およびエンブレムについて、図面を参照しつつ説明する。なお、本発明は以下の例に限定されない。
図1に、本発明の金属調多層フィルムの一実施形態の概略図として、金属調多層フィルム100の側面の断面を示す。金属調多層フィルム100は、順に、ベースフィルム層10と、インジウム蒸着保持フィルム層70と、保護フィルム層40と、が積層する。インジウム蒸着保持フィルム層70は、インジウム蒸着層20と、インジウム蒸着層20を保持する保持フィルム層30とを備える。
[インジウム蒸着保持フィルム層70]
インジウム蒸着保持フィルム層70のミリ波透過減衰量は、−1.0dB以内である。ミリ波透過減衰量が−1.0dB以内であれば、ミリ波帯の透過性に極めて優れる。そのため、例えばミリ波レーダの装置本体が照射する電波がインジウム蒸着保持フィルム層70を透過する際や、この照射された電波が障害物により反射してインジウム蒸着保持フィルム層70を透過する際において、ミリ波の減衰量を低く抑えることができる。その結果として、ミリ波の照射経路上および反射経路上にインジウム蒸着保持フィルム層70が配置される場合であっても、ミリ波レーダの電波の検出感度を高水準に維持することができる。
ミリ波透過減衰量の上限は0dBであることが理想だが、現状では−0.2dB程度が上限である。なお、ミリ波透過減衰量が−1.0dBよりも低いと、ミリ波の照射経路上および反射経路上にインジウム蒸着保持フィルム層を配置した場合において、ミリ波レーダの電波の検出感度を高水準に維持することができないおそれがある。
また、インジウム蒸着保持フィルム層70の全光線透過率は、30%以下である。全光線透過率が30%以下であれば、インジウム蒸着保持フィルム層70の金属光沢を視認でき、装飾性や意匠性を満足することができる。全光線透過率はより低いことが好ましいが、ミリ波帯の透過性能を満足させることが困難となるおそれがあり、現状では全光線透過率の下限は1.3%である。
なお、全光線透過率が30%を超えると、金属光沢の視認性に影響し、装飾性や意匠性を満足しないおそれがある。
〈インジウム蒸着層20〉
インジウム蒸着保持フィルム層70が備えるインジウム蒸着層20は、インジウムを蒸着させることで形成される層であり、装飾部分に用いられるメッキ部分や、金属材料からなる部品等と同等の装飾性や意匠性を付与することが出来るよう、充分な金属光沢をインジウム蒸着保持フィルム層70や金属調多層フィルム100に付与することができる層である。
また、インジウムの蒸着によって層を形成することで、深絞りがあり、かつ、曲率半径の極めて小さい立体成形を行う場合に有利であり、インジウム蒸着保持フィルム層70を備える金属調多層フィルム100を光輝装飾成形品の材料とした場合における、光輝装飾成形品の種々の形状に追従しつつ、光輝装飾成形品に装飾性や意匠性を付与することができる。
(インジウム蒸着層20の厚さ)
インジウム蒸着層20の厚さは、装飾性や意匠性を考慮すると、15nm〜130nmであることが好ましい。インジウム蒸着層20の厚さが15nm未満である場合には、インジウム蒸着保持フィルム層70を備える金属調多層フィルム100に充分な金属光沢を付与できないおそれがあり、装飾性や意匠性を満足しないおそれがある。一方、インジウム蒸着層20の厚さが130nmを超える場合には、装飾性や意匠性への影響は飽和し、さらにインジウム蒸着保持フィルム層70を備える金属調多層フィルム100の製造コストの上昇を引き起こすおそれがあり、また、海島構造とならないことでミリ波が透過できないインジウム蒸着層となるおそれがある。なお、インジウム蒸着保持フィルム層70を備える金属調多層フィルム100と、バックライトとの構成により、インジウム蒸着層20を介して光を透過させることで、装飾性や意匠性を演出する場合がある。このような場合は、インジウム蒸着層20の厚さが15nm〜50nmであれば、装飾性や意匠性等を満足することができる。通常は、インジウム蒸着層20の厚さは50nm程度であり、例えば、インジウム蒸着保持フィルム層70を備える光線透過用の金属調多層フィルム100の場合には、インジウム蒸着層20の厚さは25nm程度に設定することができる。
図2に、インジウム蒸着層20の側面断面を撮影したSEM画像を示す。図2では、下から保持フィルム層30、インジウム蒸着層20、第1ポリウレタン系接着層50の順に積層した側面断面を撮影したものである。インジウム蒸着層20は、蒸発したインジウム粒子が保持フィルム層30の表面に衝突して、平べったく潰れた形状となって保持フィルム層30に付着している。また、符号Aで示す領域は、インジウム粒子と他のインジウム粒子との間の領域(以下、「領域A」とする場合がある)であるが、図2右側の領域Aように、インジウム粒子が付着せずに保持フィルム層30が露出しているか、または図2左側の領域Aのように、隣のインジウム粒子と一体化して凹部を形成している場合がある。
そのため、インジウム蒸着層20の膜厚は一定ではないが、本明細書において、インジウム蒸着層20の厚さは、保持フィルム層30の表面31と平らに潰れたインジウム粒子の表面21との距離Lとする。特に、インジウム蒸着層20は、優れた装飾性や意匠性を付与するための重要な層であり、均一で薄い層であることが好ましい。
(インジウム蒸着層20の海島構造)
インジウム蒸着保持フィルム層70を備える金属調多層フィルム100は、優れた装飾性や意匠性を付与すると共に、波長が3.90〜3.95mmで周波数が76〜77GHzの領域の電波を良好に透過する電波透過性を有することが要求される。特に、インジウム蒸着層20は、インジウム蒸着保持フィルム層70を備える金属調多層フィルム100が優れた装飾性や意匠性を満足するための重要な層であると共に、優れた電波透過性を有するためにも重要な層である。
そのため、インジウム蒸着保持フィルム層70が備えるインジウム蒸着層20は、保持フィルム層30にインジウムが島状に点在する海島構造、すなわち、平らに潰れたインジウム粒子が保持フィルム層30の表面に付着した島部分と、インジウム粒子が付着せずに保持フィルム層30が露出しており、島部分が互いに離れた隙間となっている海部分とを有する海島構造を有することが重要となる。
海島構造について具体的に説明するべく、図3に、インジウムが蒸着する方向と平行な方向より、インジウム蒸着層20の表面を撮影したSEM画像を示す。図3に示すインジウム蒸着層20の表面は、インジウムが蒸着する方向と垂直な方向における表面となる。図3において、周囲の全てが海部分Sで囲まれており、隣接するインジウム粒子とは一体化せずに島状となっている部分が島部分Iであり、複数存在する。
ここで、インジウムが蒸着する方向と垂直な方向における、インジウム蒸着層20の表面において、島状のインジウム(すなわち島部分I)は150×106個/cm2以上存在する。さらに、前記表面において、島状のインジウムの外周の長さ(すなわち島部分Iの周囲であり、島部分Iを囲む海部分Sの長さ)の合計が100×106μm/cm2以上である。
インジウム蒸着層20の表面1cm2当たりの島部分Iの個数、および島部分Iの外周の長さが、上記の条件を満たすことにより、優れた装飾性や意匠性を付与する性質を維持しつつ、特に波長が3.90〜3.95mmで周波数が76〜77GHzの領域の電波の透過性に優れる。その結果として、インジウム蒸着保持フィルム層70を備える金属調多層フィルム100のミリ波透過減衰量を−1.0dB以内に抑え、全光線透過率を1.3%以上の範囲内とすることができる。
上記の条件を満たさない場合には、ミリ波が透過しやすい海部分Sが少なくなったり、島部分Iを囲む海部分Sの長さが短くなったりすることで、ミリ波が減衰して透過性が低くなるおそれがある。また、島部分Iが少ないということは、すなわち隣接するインジウム粒子との一体化が進んでインジウムの連続層が形成されることとなり、この連続層が導電性を有してミリ波を吸収してしまい、ミリ波の透過性が低くなる。一方、上記の条件を満たしていても、全光線透過率が30%を超えると装飾性や意匠性を付与する性質が低下するおそれがある。
インジウム蒸着層20が、上記の条件を満たす海島構造を有することにより、深絞りの立体成形を行っても、白化現象等を防止し、金属光沢を保持することができるため、優れた装飾性や意匠性を付与することができる。さらに、波長が3.90〜3.95mmで周波数が76〜77GHzの領域の電波を良好に透過する電波透過性を有することができる。
また、前記表面において、島状のインジウムの面積が0.01μm2〜0.4μm2であることで、インジウム蒸着層20の表面1cm2当たりの島部分Iの個数、および島部分Iの外周の長さが、上記の条件を満たす。その結果として、優れた装飾性や意匠性を付与する性質を維持しつつ、特に波長が3.90〜3.95mmで周波数が76〜77GHzの領域の電波の透過性に優れ、インジウム蒸着保持フィルム層70を備える金属調多層フィルム100のミリ波透過減衰量を、−1.0dB以内に抑えることができる。
なお、島状のインジウムの面積は、SEMにより観察して算出することができるが、島状のインジウムが非常に小さい場合には、SEMの精度によってはSEMの画像がぼやけてしまうことで、上記面積が特定できない場合がある。そのため、島状のインジウムの面積が0.01μm2〜0.4μm2であることは、必ずしも必要な条件ではない。
〈保持フィルム層30〉
インジウム蒸着保持フィルム層70が備える保持フィルム層30は、その片面にインジウム蒸着層20を保持するフィルムである。保持フィルム層30は、例えば、透明性を有し、融点が230℃〜250℃である変性ポリエチレンテレフタレートのような熱可塑性樹脂を含む。なお、保持フィルム層30の融点は、例えばJIS K 7121に準拠し、示差走査熱量計(DSC)を用いて特定した融解温度を融点とすることができる。
保持フィルム層30の全光線透過率は、インジウム蒸着層20が視認できれば問題ないが、例えば、全光線透過率が85%以上であれば、インジウム蒸着層20が与える装飾性や意匠性を満足することができる。より好ましくは、保持フィルム層30の全光線透過率が、88%以上であることにより、金属材料と同様の装飾性や意匠性を満足することができる。全光線透過率が85%未満の場合には、インジウム蒸着層20の視認性が低下する場合があり、装飾性や意匠性を満足しないおそれがある。また、全光線透過率が100%であっても、透明性に問題は生じない。なお、保持フィルム層30の全光線透過率の上限は、99%程度であることが一般的である。
また、保持フィルム層30のヘイズは、インジウム蒸着層20が視認できれば問題ないが、保持フィルム層30のヘイズの下限は、0.1%であることが一般的である。また、ヘイズが80%より大きい場合には、光が拡散することでインジウム蒸着層20の視認性が低下するおそれがあり、装飾性や意匠性を満足しない場合がある。
上記の全光線透過率やヘイズを制御して、保持フィルム層30の透明性を適宜調整することにより、金属調多層フィルム100についてミリ波透過性を満足しつつ、所望の装飾性や意匠性を付与することができる。
インジウム蒸着保持フィルム層70を備える金属調多層フィルム100を用いて、光輝装飾成形品を加熱して成形する場合において、保持フィルム層30の融点が230℃〜250℃である変性ポリエチレンテレフタレートのような熱可塑性樹脂を用いることにより、金属調多層フィルム100の耐熱性を向上させるとともに、金属調多層フィルム100の成形が可能な可塑性を発現する温度の幅が広くなる。その結果として、金属調多層フィルム100の温度制御がより容易となり、成形性が向上して良好な歩留まりを維持することができる。融点が230℃未満の変性ポリエチレンテレフタレートの場合、金属調多層フィルム100が成形可能な可塑性を発現する温度から白化現象等が生じるまでの温度の幅が非常に狭くなる場合があり、すなわち成形可能な温度範囲が非常に狭くなるおそれがある。なお、保持フィルム層30としての変性ポリエチレンテレフタレートの融点の上限は、250℃であることが一般的である。
保持フィルム層30に用いられる変性ポリエチレンテレフタレートのような熱可塑性樹脂は、結晶性を有してもよい。結晶性を有する熱可塑性樹脂は、薄膜で厚み精度が高く、剛性、滑り性を有していることから、インジウムを蒸着するための保持フィルム層30に適している。結晶性を有しない熱可塑性樹脂は、温度変化に応じて軟化や硬化する。そのため、保持フィルム層30に用いた場合に、加熱によりインジウム蒸着層20のインジウムが移動して白化現象等が生じるおそれがある。
保持フィルム層30は、変性ポリエチレンテレフタレートのような熱可塑性樹脂の場合、加熱により軟化してドローダウンするフィルムであり、前記フィルムがドローダウンから回復した温度と溶融により垂れ下がりを開始する温度との温度差が95℃〜120℃であってもよい。
ドローダウンは、熱成形する際に、フィルムやシートが軟化して垂れ下がる現象である。ドローダウンが発生している状態では、金属調多層フィルムの成形は非常に困難であり、また、この状態で成形すると、金属調多層フィルムの破れや皺が発生する場合がある。
保持フィルム層30として変性ポリエチレンテレフタレートのような熱可塑性樹脂を用いる場合は、ドローダウンした後に例えば軟化点以上に加熱されると、樹脂分子の熱運動が激しくなり、熱収縮を起こしてピンと張った状態になる。この状態となった時の保持フィルム層30の温度をドローダウンから回復した温度とする。そして、ドローダウンから回復した保持フィルム層30はさらに温度が上がることによって、保持フィルム層30の溶融により保持フィルム層30が垂れ下がり始める。この垂れ下がりを開始する温度は、保持フィルム層30の融点よりやや低い温度であり、保持フィルム層30が融点に達すると、穴が開いてフィルム形状を保持することが困難となる場合がある。
保持フィルム層30がドローダウンから回復した温度と、溶融により垂れ下がりを開始する温度との温度差が、95℃〜120℃であることにより、保護フィルム層40やインジウム蒸着層20およびベースフィルム層10等と組み合わせて金属調多層フィルム100とした場合において、光輝装飾成形品の成形が可能な可塑性を発現する温度の幅が広くなる。その結果として、金属調多層フィルム100の温度制御がより容易となり、成形性が向上して良好な歩留まりを維持することができる。すなわち、前記温度差が大きくなれば、金属調多層フィルム100の成形が容易な温度の幅も広くなるため、光輝装飾成形品への加工が容易となる。
前記温度差が95℃未満である場合、インジウム蒸着保持フィルム層70を備える金属調多層フィルム100が成形可能な可塑性を発現する温度から白化現象等が生じるまでの温度の幅が、狭くなる。そのため、成形可能な温度範囲が狭くなるおそれがあり、温度制御や変形加工が難しくなることで、成形が困難となる場合や白化現象等が発生する場合がある。また、前記温度差は120℃より大きくても問題ないが、保持フィルム層30としては、120℃が温度差の上限である。
前記熱可塑性樹脂としては、変性ポリエチレンテレフタレートの他、ポリエステル系樹脂および/またはポリオレフィン系樹脂を用いることができる。ポリオレフィン系樹脂としては、低密度のポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂、環状オレフィン樹脂等を用いることができる。ポリプロピレン樹脂には、ホモポリマー、ブロックコポリマーおよびランダムコポリマー等が挙げられるが、特に限定されない。また、前記熱可塑性樹脂として、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリウレタン樹脂、およびこれらの共重合体、アロイ等を用いることができる。
特に、インジウム蒸着層20との密着性に優れるポリエステル系樹脂を用いることができる。また、ポリエステル系樹脂は、インジウム蒸着層20の金属光沢を十分に付与することができるため、金属材料と同等の装飾性や意匠性を満足することができる。また、ポリエステル系樹脂は、取り扱い性に優れるため、例えば保持フィルム層30を用いて金属調多層フィルム100を製造する場合において、保持フィルム層30と他の層との貼り合わせの際に、しわが発生することを防止できる。また、ポリエステル系樹脂であれば、保持フィルム層30の過剰な伸びによる、インジウム蒸着層20にむらが発生することを防止できる。ポリエステル系樹脂としては、アモルファスポリエチレンテレフタレート(「APET」)樹脂や変性ポリエチレンテレフタレート(MPET)樹脂等の、通常のポリエチレンテレフタレート樹脂等を用いることができる。成形性に着目すると、特に、深絞りの成形物に対応できる点で、変性ポリエチレンテレフタレート(MPET)樹脂を用いることができる。
また、熱可塑性樹脂としてMPET樹脂を用いることにより、インジウム蒸着保持フィルム層70を備える金属調多層フィルム100の金属光沢感が、特に鮮やかで、装飾性や意匠性を十分に満足することができる。また、インジウム蒸着保持フィルム層70を備える金属調多層フィルム100を用いて光輝装飾成形品を製造する場合において、MPET樹脂であれば、光輝装飾成形品において曲率半径の極めて小さな角部であっても、白化現象等の発生を防止することができる。
MPET樹脂は、エチレングリコールとテレフタル酸を基本モノマーとし、さらに変性用モノマーを用いて脱水縮合させてエステル結合を形成することにより、ポリマー化させて得ることができる。変性用モノマーとしては、1,3‐プロパンジオール、1,4‐ブタンジオール、1,4‐シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、イソフタル酸、2,6‐ナフタレンジカルボン酸等が挙げられる。特に、ネオペンチルグリコールを変性用モノマーとして用いることにより、融点が高く、ドローダウンから回復した温度と溶融により垂れ下がりを開始する温度との温度差を大きくすることができると共に、2軸延伸処理をしてもフィルムの結晶化が抑制されるため、成形性に優れる。そのため、保持フィルム層30を金属調多層フィルム100に適用した場合に、金属調多層フィルム100の温度制御がより容易となり、成形性が向上して良好な歩留まりを維持することができる。さらに、優れた金属蒸着性、耐光性、耐薬品性を併せ持つことができ、特に金属調多層フィルム100としての金属光沢感が鮮やかである。また、金属調多層フィルム100を用いて光輝装飾成形品を製造する場合において、光輝装飾成形品において曲率半径の極めて小さな角部であっても、白化現象等の発生を防止することができるとともに、一般のものよりもフィルムの厚さを薄くすることが容易にできる。そのため、生産性が向上し、製造コストが削減できると云う効果をも併せ持つことができ、また、複雑な形状の表面に対しても、容易に金属光沢を付与し、装飾性や意匠性を高めることができる。
変性用モノマーの割合は、ポリエチレンテレフタレートの特性を損なうことなく、変性の効果を付与できるよう、任意の割合とすることができる。たとえば、MPET中の変性用モノマー全体の割合を5モル%〜50モル%とすることで、インジウム蒸着保持フィルム層70を備える金属調多層フィルム100の温度制御がより容易となり、成形性が向上して良好な歩留まりを維持することができる。また、変性モノマー各種の混合比も、ポリエチレンテレフタレートの特性を損なうことなく、変性の効果を付与できるよう、任意の比とすることができる。例えば、ジオール成分として、エチレングリコールとネオペンチルグリコールを質量比で95:5〜50:50の混合比として、カルボン酸成分としてテレフタル酸とイソフタル酸を質量比で95:5〜50:50の混合比として、変性することができる。また、ネオペンチルグリコールのみを変性することができる。なお、ジオール成分とカルボン酸成分の混合割合は、例えば水酸基とカルボキシル基が同数となるように、任意に決定することができる。
保持フィルム層30に用いることのできる熱可塑性樹脂としては、例えばペレット状やフレーク状の形状のものを入手することが可能である。そして、熱可塑性樹脂をカレンダー法、押し出し法またはその他の公知の方法で、2軸延伸処理等を行うことでフィルム化することにより、保持フィルム層30を得ることができる。
保持フィルム層30としては、熱可塑性樹脂に加え、安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、難燃剤、顔料および染料等の添加物を含んでもよい。
保持フィルム層30の厚さは、薄くすることにより1ロールあたりの巻き長さをより長くすることが可能であり、これにより高い生産性と充分な低コスト効果を得ることができる。例えば、保持フィルム層30の厚さを100μm以下とすることができ、より高い生産性と低コスト効果を考慮すれば、40μm以下がより好ましく、25μm以下であることが更に好ましい。保持フィルム層30の厚さの下限は、インジウム蒸着層20の保持や、金属調多層フィルム100を形成するための取り扱いに充分であれば、特に限定されない。例えば、保持フィルム層30の厚さを3μm以上、より好ましくは5μm以上とすることができる。
(ポリエチレンテレフタレート系樹脂層)
特に、エンブレムの材料として用いられるインジウム蒸着保持フィルム層70を備える金属調多層フィルム100の場合には、保持フィルム層30は、厚みが5μm〜50μmのポリエチレンテレフタレート系樹脂層であることが好ましい。
なお、ポリエチレンテレフタレート系樹脂としては、主成分がポリエチレンテレフタレートである樹脂組成物を挙げることができ、例えば上記のAPETやMPETも含まれる。ポリエチレンテレフタレート系樹脂層は、このようなポリエチレンテレフタレート系樹脂により形成された層である。
保持フィルム層30は、その表面にサンドマット加工、エッチング加工および/またはヘアライン加工がされていてもよい。これらの加工により、インジウム蒸着層20の保持効果が向上する場合があり、また、マット調等の所望の意匠を表現することができる。例えば、これらの加工を保持フィルム層30のインジウム蒸着層20を保持する面に処理することにより、所望の意匠を得ることができる。
[金属調多層フィルム100]
金属調多層フィルム100のミリ波透過減衰量は、−1.0dB以内である。ミリ波透過減衰量が−1.0dB以内であれば、ミリ波帯の透過性に極めて優れる。そのため、例えばミリ波レーダの装置本体が照射する電波が金属調多層フィルム100を透過する際や、この照射された電波が障害物により反射して金属調多層フィルム100を透過する際において、ミリ波の減衰量を低く抑えることができる。その結果として、ミリ波の照射経路上および反射経路上に金属調多層フィルム100が配置される場合であっても、ミリ波レーダの電波の検出感度を高水準に維持することができる。
ミリ波透過減衰量の上限は0dBであることが理想だが、現状では−0.2dB程度が上限である。なお、ミリ波透過減衰量が−1.0dBよりも低いと、ミリ波の照射経路上および反射経路上に金属調多層フィルムを配置した場合において、ミリ波レーダの電波の検出感度を高水準に維持することができないおそれがある。
また、金属調多層フィルム100の全光線透過率は、30%以下である。全光線透過率が30%以下であれば、金属調多層フィルム100の金属光沢を視認でき、装飾性や意匠性を満足することができる。全光線透過率はより低いことが好ましいが、ミリ波帯の透過性能を満足させることが困難となるおそれがあり、現状では全光線透過率の下限は1.3%である。
なお、全光線透過率が30%を超えると、金属光沢の視認性に影響し、装飾性や意匠性を満足しないおそれがある。
〈ベースフィルム層10〉
ベースフィルム層10は、金属調多層フィルム100の最下層に配される層であり、エンブレム等の光輝装飾成形品を製造する際の温度に耐えられるものである。また、透明性が要求されない光輝装飾成形品に用いられる場合には、透明性等の色彩、透明度などに関しても通常特に要求されない。ただし、ベースフィルム層の色調が光輝装飾成形品の表面における金属光沢への色調に影響を与えるおそれがある。また、光輝装飾成形品とバックライトとの構成により、金属層を介して光を透過させることで、装飾性や意匠性を演出する場合があり、この場合には、ベースフィルム層も透明性が要求される。
透明性の目安としては、全光線透過率やヘイズが重要となる。全光線透過率が85%以上であれば、インジウム蒸着層20を介して光を透過させることで装飾性や意匠性を演出することが可能となり、88%以上であることがより好ましい。全光線透過率が85%未満の場合には、装飾性や意匠性を満足しないおそれがある。
また、ヘイズは、インジウム蒸着層20が与える装飾性や意匠性を満足することができれば問題なく、ヘイズの下限は、0.1%であることが一般的である。なお、ヘイズが80%より大きい場合には、光が拡散することで、インジウム蒸着層20を介して光を透過させることが不十分となり、装飾性や意匠性を満足できない場合がある。
上記の全光線透過率やヘイズを制御して、ベースフィルム層10の透明性を適宜調整することにより、金属調多層フィルム100についてミリ波透過性を満足しつつ、所望の装飾性や意匠性を付与することができる。
ベースフィルム層10としては、インジウム蒸着層20が与える装飾性や意匠性への影響を考慮し、用途に応じてポリ塩化ビニル系、ポリオレフィン系、ポリスチレン系、ポリアクリル系、ポリウレタン系、ポリアミド系、ポリカーボネート系、アクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレン共重合体系等の樹脂から、光輝装飾成形品に成形する時の温度に対する耐熱性、インサート射出成形における射出成形樹脂等との相溶性等を考慮して、ベースフィルム層10用の材料を適宜選択することができる。
また、ベースフィルム層10の厚さとしては、金属調多層フィルム100として一般的な厚さとすることができ、例えば50μm〜1000μmとすることができる。ベースフィルム層10の厚さが50μm未満の場合には、例えば後述する第1ポリウレタン系接着層50によって、ベースフィルム層10とインジウム蒸着層20を接合する時に、しわ等の瑕疵が発生しやすく、また、光輝装飾成形品の成形加工時に金属調多層フィルム100が破断しやすくなる場合がある。一方、ベースフィルム層10の厚さが1000μmを超えると、光輝装飾成形品の成形性が低下するおそれがある。
(ポリカーボネート系樹脂層)
特に、エンブレムの材料として用いられる金属調多層フィルム100の場合には、ベースフィルム層10は、厚みが50μm〜1000μmであり、射出密着性の高いポリカーボネート系樹脂層であることが好ましい。
なお、ポリカーボネート系樹脂としては、主成分がポリカーボネートである樹脂組成物を挙げることができる。ポリカーボネート系樹脂としては、ビスフェノールとアセトンから合成されるビスフェノールAから、界面重合法、エステル交換法、ピリジン法等によって製造されるもの、ビスフェノールAとジカルボン酸誘導体、例えばテレ(イソ)フタル酸ジクロリド等との共重合体により得られるポリエステルカーボネート、ビスフェノールAの誘導体、例えばテトラメチルビスフェノールA等の重合により得られるものが挙げられる。ポリカーボネート系樹脂層は、このようなポリカーボネート系樹脂により形成された層である。また、ポリカーボネート系樹脂層としては、透明性を有する層や黒色の層を適宜使用することができる。
〈インジウム蒸着保持フィルム70〉
金属調多層フィルム100が備えるインジウム蒸着保持フィルム70については、[インジウム蒸着保持フィルム70]の項目において説明したとおりであり、ここでは説明を省略する。
〈保護フィルム層40〉
保護フィルム層40は、金属調多層フィルム100の最上層に配される層であり、インジウム蒸着層20が視認できるよう透明性を有し、光輝装飾成形品を成形する際の温度に耐えられるものである。
保護フィルム層40の全光線透過率は、インジウム蒸着層20が視認できれば問題ないが、例えば、全光線透過率が85%以上であれば、インジウム蒸着層20が与える装飾性や意匠性を満足することができる。より好ましくは、保護フィルム層40の全光線透過率が、88%以上であることにより、金属材料と同様の装飾性や意匠性を満足することができる。全光線透過率が85%未満の場合には、インジウム蒸着層20の視認性が低下する場合があり、装飾性や意匠性を満足しないおそれがある。また、全光線透過率が100%であっても、透明性に問題は生じない。なお、保護フィルム層40の全光線透過率の上限は、99%程度であることが一般的である。
また、保護フィルム層40のヘイズは、インジウム蒸着層20が視認できれば問題ないが、保護フィルム層40のヘイズの下限は、0.1%であることが一般的である。また、ヘイズが80%より大きい場合には、光が拡散することでインジウム蒸着層20の視認性が低下するおそれがあり、装飾性や意匠性を満足しない場合がある。
上記の全光線透過率やヘイズを制御して、保護フィルム層40の透明性を適宜調整することにより、金属調多層フィルム100についてミリ波透過性を満足しつつ、所望の装飾性や意匠性を付与することができる。
保護フィルム層40は、透明度や色調等を調整するべく、各種の色素や顔料等を含んでもよく、また、染料によって染色されていても良い。さらに、保護フィルム層40には予め所望の印刷がされてあっても良い。この場合、保護フィルム層40が外部と接触する面に印刷することができるが、外部と接触する面とは反対側の面である、例えば後述する第2ポリウレタン系接着層60と接触する面に印刷されることで、印刷の耐久性を向上させることができる。
保護フィルム層40の材料としては、例えば、ポリ塩化ビニル系、ポリオレフィン系、ポリスチレン系、ポリアクリル系、ポリウレタン系、ポリアミド系、ポリカーボネート系、フッ素樹脂系等の樹脂が挙げられる。これらの樹脂から、透明性、成形時の温度に対する耐熱性、経済性等を考慮して、保護フィルム層40の材料を適宜選択することができる。
例えば、光輝装飾成形品の表面として、表現性に優れた成形品が得られること、および、耐擦傷性の点で、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)等のアクリル系の樹脂フィルムを保護フィルム層40として用いることができる。この場合には、光輝装飾成形品を成形するにあたり、優れた成形性が得られる。また、成形後の光輝装飾成形品の表面にハードコート層を設けることが不要となり、低コスト化が可能となる。さらに、絞りの大きい成形物に応用した場合であっても、光輝装飾成形品の全表面において、高い耐擦傷性が得られる。
なお、アクリル系樹脂フィルムを用いた場合の上記の効果に加えて、優れた耐候性をも同時に成形品に賦与したい場合には、フッ素系樹脂とアクリル系樹脂とのアロイフィルムや、フッ素系樹脂層とアクリル系樹脂層とからなる2層フィルム等を用いることで対応することができる。
ただし、このようなアロイフィルムを用いた場合には、接着性に劣る場合があり、高い接着性を得たい場合には、フッ素樹脂成分の多いフッ素系樹脂とアクリル系樹脂とのアロイフィルム層と、フッ素樹脂成分の少ないフッ素系樹脂とアクリル系樹脂とのアロイフィルム層とからなる複合アロイフィルムを用いることができる。そして、この複合アロイフィルムにおいて、フッ素樹脂成分の少ないフッ素系樹脂とアクリル系樹脂とのアロイフィルム層側に第2ポリウレタン系接着層60を設けることにより、アクリル系樹脂の良好な密着性とフッ素系樹脂の優れた耐候性とを併せて得ることができる。また、アクリル系樹脂フィルムを保護フィルム層として用いた場合、高い耐擦傷性が得られる。
また、ポリカーボネート系の樹脂は、透明性、耐熱性、耐衝撃性、成形性に優れ、密着性が高いことから、保護フィルム層40の材料として用いることができる。
保護フィルム層40の厚さは、通常は10μm以上とすることが好ましく、取り扱い性を考慮すると25μm以上であることがより好ましい。一方、成形性、可撓性および経済性を考慮すると、保護フィルム層40の厚さは300μm以下とすることが好ましい。一般的には、75μm〜125μmの厚さの保護フィルム層40を用いることができる。
(ポリカーボネート系樹脂層)
特に、エンブレムの材料として用いられる金属調多層フィルム100の場合には、保護フィルム層40は、厚みが50μm〜200μmであり、射出密着性の高いポリカーボネート系樹脂層であることが好ましい。
なお、ポリカーボネート系樹脂としては、主成分がポリカーボネートである樹脂組成物を挙げることができる。ポリカーボネート系樹脂としては、ビスフェノールとアセトンから合成されるビスフェノールAから、界面重合法、エステル交換法、ピリジン法等によって製造されるもの、ビスフェノールAとジカルボン酸誘導体、例えばテレ(イソ)フタル酸ジクロリド等との共重合体により得られるポリエステルカーボネート、ビスフェノールAの誘導体、例えばテトラメチルビスフェノールA等の重合により得られるものが挙げられる。ポリカーボネート系樹脂層は、このようなポリカーボネート系樹脂により形成された層である。
(ポリウレタン系接着層)
金属調多層フィルム100は、ベースフィルム層10とインジウム蒸着層20を接合する第1ポリウレタン系接着層50と、保持フィルム層30と保護フィルム層40を接合する第2ポリウレタン系接着層60と、を備えてもよい(図1)。
(第1ポリウレタン系接着層50)
第1ポリウレタン系接着層50は、インジウム蒸着層20および/またはベースフィルム層10にポリウレタン系接着剤を塗布することにより形成することができる。ポリウレタン系接着剤は、インジウム蒸着層20およびベースフィルム層10との接着性に優れており、また、透明性や接着性、成形時の温度に耐えられる耐熱性等を満足することができる。透明性の目安としての全光線透過率やヘイズについては、上記したとおりであるため、説明を省略する。ポリウレタン系接着剤の使用に際しては、適宜溶剤を用いて、あるいは、エマルジョンとして、グラビアコーター、ダイコーター、リバースコーター、ナイフコーター、ロールコーター等の公知の手段により、インジウム蒸着層20および/またはベースフィルム層10に適量を塗布し、必要により乾燥して、第1ポリウレタン系接着層50を形成することができる。
また、第1ポリウレタン系接着層50の厚さとしては、金属調多層フィルム100として一般的な厚さとすることができる。例えば、1μm〜20μmの厚さとすることができ、接着性や乾燥時間、コスト等を考慮すると、2μm〜8μmの厚さとすることができる。
(第2ポリウレタン系接着層60)
第2ポリウレタン系接着層60は、保護フィルム層40および/または保持フィルム層30にポリウレタン系接着剤を塗布することにより形成することができる。第2ポリウレタン系接着層60は、着色されていてもよく、第2ポリウレタン系接着層60の透明度や色調等を調整するべく、種々の色素、顔料および/または染料等を含んでもよく、金属粉末、金属箔粉末および/またはマイカ等が含まれてもよい。
ポリウレタン系接着剤は、保護フィルム層40および保持フィルム層30との接着性に優れており、また、インジウム蒸着層20を視認できる透明性や接着性、成形時の温度に耐えられる耐熱性、屋外で使用される用途に耐えられる耐候性等を満足することができる。透明性の目安としての全光線透過率やヘイズについては、上記したとおりであるため、説明を省略する。ポリウレタン系接着剤の使用に際しては、適宜溶剤を用いて、あるいは、エマルジョンとして、グラビアコーター、リバースコーター、ナイフコーター、ロールコーター等の公知の手段により、保護フィルム層40および/または保持フィルム層30に適量を塗布し、必要により乾燥して、第2ポリウレタン系接着層60を形成することができる。
また、第2ポリウレタン系接着層60の厚さとしては、金属調多層フィルム100として一般的な厚さとすることができる。例えば、1μm〜20μmの厚さとすることができ、接着性や透明性、乾燥時間、コスト等を考慮すると、2μm〜8μmの厚さとすることができる。
なお、ポリウレタン系接着剤としては、主剤がポリエステルポリオールまたはポリエーテルポリオールであり、硬化剤がイソシアネートよりなる、二液硬化型溶液タイプ、無溶剤タイプの接着剤や湿硬タイプの接着剤が挙げられる。適宜これらの接着剤を使用し、ポリウレタン系接着層を形成することができる。
(その他の構成)
金属調多層フィルム100は、上記の構成に加え、更なる構成を備えてもよい。例えば、金属調多層フィルム100を用いてエンブレム等の光輝装飾成形品を製造するまでの間、保護フィルム層40やベースフィルム層10の表面を清浄な状態に維持し、汚れが付くのを防止するため、剥離の容易な保護フィルム等を保護フィルム層40やベースフィルム層10の表面に備えることができる。
なお、本発明の金属調多層フィルム100は、エンブレムの材料として有用であるが、これに限定されず、ミリ波帯の透過性と可視領域における反射性について、より高い性能が要求されるフロントグリル、ドアミラー、ヘッドランプリフレクター、リアランプリフレクター、ガーニッシュ、バンパーモール等の光輝装飾成形品の材料として有用である。
[インジウム蒸着保持フィルム70の製造方法]
上記したインジウム蒸着層20は、いわゆる真空蒸着法によって形成され、インジウム蒸着保持フィルム70が製造される。以下、真空蒸着法によるインジウム蒸着保持フィルム70の製造方法について、図4に示す真空蒸着装置200の概略図を参照しつつ、説明する。
(真空蒸着装置200)
真空蒸着装置200は、隔壁210によって隔てられた上室220と下室230を備えている。上室220には、蒸着対象となる保持フィルム30aが繰り出される繰出しロール240と、蒸着された保持フィルム30bが巻き取られる巻取りロール250と、繰出しロール240より送られた保持フィルム30aを冷却して蒸着させ、蒸着された保持フィルム30bを巻取りロール250へ送る冷却ロール260の上部が配されている。下室230には、隔壁210で隔てられた冷却ロール260の下部と、インジウムを入れる蒸発源るつぼ270が配されており、蒸発源るつぼ270よりインジウムが気化して下室230においてインジウムの蒸気流が発生し、この蒸気流が冷却ロール260で冷却された保持フィルムの表面に付着する原理となっている。上室220および下室230は、それぞれ開口部221、231より未図示のポンプによって減圧される。
特に、本発明のインジウム蒸着保持フィルム70の製造方法では、以下の蒸着工程、測定工程および制御工程が必須となる。
〈蒸着工程〉
本工程は、1.33×10-3Pa〜1.33×10-2Paの圧力条件下で、温度が−5℃〜5℃のロールに沿った保持フィルム層をインジウム蒸気流中に露出させて、保持フィルム層にインジウム蒸着層を形成する工程である。真空蒸着装置200では、下室230の室内圧力を1.33×10-3Pa〜1.33×10-2Paの圧力条件下に制御し、冷却ロール260の温度を−5℃〜5℃に制御する。そして、蒸発源るつぼ270よりインジウムを気化させて、下室230内にインジウムの蒸気流を発生させる。この状態で繰出しロール240から保持フィルム30aを冷却ロール260へ送り出し、保持フィルム30aの温度を−5℃〜5℃に冷却し、更に下室230へ侵入させる。下室230へ侵入した保持フィルム30aの表面にインジウムの蒸気流が付着し、インジウムが冷却されてインジウム蒸着層20が形成される。
本工程では、2.0×10-2Pa〜1.33×10-2Paの圧力条件下に制御することで、インジウムの蒸着をより厳密に制御することが可能となり、海島構造を有する、より均一な膜厚のインジウム蒸着層20を得ることができる。
〈測定工程〉
本工程は、蒸着工程によって得られたインジウム蒸着層と保持フィルム層との積層体の全光線透過率を測定する工程である。真空蒸着装置200では、蒸着工程により蒸着された保持フィルム30b(インジウム蒸着層20と保持フィルム層30との積層体)は、冷却ロール260より巻取りロール250へ送られて、巻取りロール250に巻き取られる。例えば、透過率測定器280を冷却ロール260と巻取りロール250の間に配置することで、保持フィルム30bの全光線透過率を測定することができる。
〈制御工程〉
本工程は、測定工程により得られる積層体の全光線透過率が1.3%〜30%となるように、インジウム蒸着層の形成速度を制御する工程である。真空蒸着装置200では、透過率測定器280によって測定された保持フィルム30bの全光線透過率が1.3%〜30%である場合には、下室230の圧力条件、冷却ロール260の温度、および保持フィルム30aを下室230へ送る送り速度、蒸発源るつぼ270内のインジウムの温度等の蒸着条件が維持できるよう、真空蒸着装置200を制御する。一方で、保持フィルム30bの全光線透過率が1.3%〜30%ではない場合には、全光線透過率が1.3%〜30%となるように、上記の蒸着条件を適宜制御する。例えば、全光線透過率が1.3%〜30%の範囲で予め定められた値になるように、主として保持フィルム30aの送り速度を制御し、他の条件は固定することができる。所望の意匠や演出を実現させるインジウム蒸着層の膜厚となるよう、全光線透過率をセンサで常時監視し、このデータをフィードバックして送り速度を制御することができる。
なお、上室220は、1.33×10-2Pa〜1.33×10-1Pa、好ましくは、6.67×10-1Pa〜4.00×10-1Paの圧力条件下に制御することで、インジウムの蒸着をより厳密に制御することが可能となり、海島構造を有する、より均一な膜厚のインジウム蒸着層20を得ることができる。
[金属調多層フィルム100の製造方法]
以下、上記した金属調多層フィルム100の製造方法の一例について、説明する。
(第1積層工程)
本工程は、上記した本発明のインジウム蒸着保持フィルム70の製造方法により得た、インジウム蒸着保持フィルム70のインジウム蒸着層20と、ベースフィルム層10を積層する工程である。例えば、インジウム蒸着層20および/またはベースフィルム層10にポリウレタン系接着剤を塗布することにより、第1ポリウレタン系接着層50を介して、インジウム蒸着層20とベースフィルム層10を積層することができる。また、保持フィルム層30とベースフィルム層10を積層しても良い。
(第2積層工程)
本工程は、インジウム蒸着保持フィルム70の保持フィルム層30と、保護フィルム層40を積層する工程である。例えば、保護フィルム層40および/または保持フィルム層30にポリウレタン系接着剤を塗布することにより、第2ポリウレタン系接着層60を介して、保持フィルム層30と保護フィルム層40を積層することができる。また、インジウム蒸着層20と保護フィルム層40を積層しても良い。
なお、第1積層工程と第2積層工程の順番は、特に限定されず、第1積層工程の後に第2積層工程を実施することや、第2積層工程の後に第1積層工程を実施することができる。また、例えばインジウム蒸着層20と保持フィルム層30にポリウレタン系接着剤を塗布し、ベースフィルム層10と保護フィルム層40を同時に積層するという態様も可能であり、すなわち第1積層工程と第2積層工程を同時に実施することができる。
(その他の工程)
本発明の金属調多層フィルム100の製造方法は、上記の工程の他、更なる工程を含んでもよい。例えば、剥離の容易な保護フィルム等を保護フィルム層40やベースフィルム層10の表面に積層する工程を備えることができる。この工程により、保護フィルム層40やベースフィルム層10の表面を清浄な状態に維持し、汚れが付くのを防止することができる。
[エンブレム]
本発明のエンブレムは、上記の本発明の金属調多層フィルムを備えるエンブレムである。以下、本発明のエンブレムの製造方法の一例について、図5に示すエンブレム300の製造工程の一例を示す概略図を参照しつつ、説明する。
〈エンブレム300の製造方法の一例〉
図5(a)の金属調多層フィルム100の保護フィルム層40の表面に、所定の図形や色の組み合わせとなるように、印刷により模様層310を形成する。印刷方法は特に限定されず、例えば、金属調多層フィルム100が枚葉フィルムの場合にはスクリーン印刷すればよく、金属調多層フィルム100がロール状の場合にはグラビア印刷すればよい。
模様層310を印刷後、金属調多層フィルム100をエンブレム300の形状となるように予備賦形する(図5(b))。次に、エンブレム300の形状に合わせて、余分な周辺部分をトリミングする(図5(c))。そして、金属調多層フィルム100のベースフィルム層10の表面に、射出成型によって黒色のポリカーボネート系樹脂層320を形成する(図5(d))。また、保護フィルム層40および模様層310の表面に、これらの表面の保護および美観の向上のため、射出成型によって無色透明のポリカーボネート系樹脂層330を形成する(図5(e))。更に、ポリカーボネート系樹脂層330の表面にアクリルシリコン系樹脂のクリヤー塗料を塗装し、膜厚5μm〜10μmのトップコート層340を形成し(図5(f))、エンブレム300が製造される。
以下、本発明について、実施例を用いてさらに具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではない。
[インジウム蒸着保持フィルム70の製造]
真空蒸着装置200を使用し、保持フィルム30aにインジウム蒸着層20を蒸着した。まず、保持フィルム30aを繰出しロール240に取り付け、冷却ロール260を介して巻取りロール250につないだ。次に、真空ポンプを用いて、上室220の圧力を1.33×10-2〜1.33×10-1Paに調製し、下室230の圧力を1.33×10-3〜1.33×10-2Paに調製した。そして、高周波誘導加熱用コイルで、下室230の蒸発源るつぼ270中のインジウムを徐々に加熱し、インジウムがその蒸発温度である2100℃〜2200℃に達してから、保持フィルム30aを繰出しロール240から−5℃〜5℃に冷却した冷却ロール260に沿わせながら巻取りロール250に巻きとり、下室230で保持フィルム30aをインジウム蒸気流中に露出させてインジウムを蒸着し、保持フィルム30aの表面にインジウム蒸着層20を形成した。
保持フィルム30aは繰出しロール240から巻取りロール250まで一定の速度で走行させながら、インジウム蒸着層20を形成した。また、蒸着された保持フィルム30bの全光線透過率を、巻取りロール250に巻き取られる前に透過率測定器280で連続して測定し、保持フィルム30bの全光線透過率が、実施例1〜6および比較例1〜3においてそれぞれ所定の値となるように、保持フィルム30aの走行速度を調節した。
保持フィルム30aとしては、厚み25μmのポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルム(帝人フィルムソリューション株式会社製テレフレックスFT−3)を使用した。
[金属調多層フィルム100の形成]
ベースフィルム層10にポリウレタン系接着剤を塗布し、インジウム蒸着保持フィルム70のインジウム蒸着層20とベースフィルム層10を接着した。また、保護フィルム層40にポリウレタン系接着剤を塗布し、インジウム蒸着保持フィルム70の保持フィルム層30と保護フィルム層40を接着した。以上により、金属調多層フィルム100を形成した。
ベースフィルム層10としては、厚み125μmのポリカーボネート系樹脂フィルム(株式会社シャインテクノ製シャインテックPC11U)を使用した。そして、保護フィルム層40としては、厚み125μmのポリカーボネート系樹脂フィルム(株式会社シャインテクノ製シャインテックPC11U)を使用した。また、ポリウレタン系接着剤としては主剤(東洋紡株式会社製 バイロン UR1700)18質量部、硬化剤(旭化成株式会社製 デュラネート TPA−100)12質量部、酢酸エチル11重量部の混合物を使用し、第1ポリウレタン系接着層50および第2ポリウレタン系接着層60の厚みはそれぞれ2.5μmとした。
[海島構造の評価]
走査電子顕微鏡(SEM)を用いて、インジウムが蒸着する方向と垂直な方向におけるインジウム蒸着層20の表面の画像を撮影し、以下の方法により、島部分Iの個数、面積、外周長さの合計を算出した。
(島部分Iの個数)
倍率3万倍としたSEM画像中にある島部分Iの個数を数え、SEM画像の面積で割ることにより、島部分Iの個数(個/cm2)を算出した。
(島部分Iの面積)
倍率5万倍としたSEM画像中にある島部分Iのうち、最大面積の島部分Iと最小面積の島部分Iを目視で選択し、それらの島部分Iの面積を、タマヤ計測システム株式会社製デジタルプラニメーターPLANIX5を使用して測定した。
(島部分Iの外周長さの合計)
株式会社マイゾックス製マップメジャー(キルビメーター)を使用し、倍率3万倍としたSEM画像中にある島部分Iの外周となる海部分Sの総延長距離を測定し、SEM画像の面積で割ることにより、島部分Iの外周長さの合計(μm/cm2)を算出した。なお、海部分Sの総延長距離の測定において、島部分Iが隣り合うことにより、2つ以上の島部分Iが外周として共有する海部分Sについては、1度のみ距離を測定し、重複して測定しなかった。
[インジウム蒸着層20の膜厚の測定]
走査電子顕微鏡(SEM)を用いて、金属調多層フィルム100の側面断面の画像を撮影した。保持フィルム層30の表面31と平らに潰れたインジウム粒子の表面21との距離Lを測定し、最も長い距離Lをインジウム蒸着層20の膜厚とした。
[全光線透過率の測定]
透過率測定器を使用し、金属調多層フィルム100の全光線透過率を測定した。
[ミリ波透過減衰量の測定]
KEYCOM社製RAS(SM5899)を使用して、金属調多層フィルム100における、周波数76.5GHzのミリ波のミリ波透過減衰量を測定した。金属調多層フィルム100は、ミリ波がベースフィルム層10から保護フィルム層40へ透過するように装置へセットされた。測定は、ベースフィルム層10から保護フィルム層40への1方向のみについて250回行い、250回の測定値の平均値をミリ波透過減衰量とした。
[視認性の評価]
金属調多層フィルム100の外観を目視観察した。金属光沢の視認性に問題はなく、装飾性や意匠性を満足する外観であるものを「〇」、金属光沢の視認性に問題があり、装飾性や意匠性を満足しない外観であるものを「×」と評価した。
評価結果について、表1に示す。また、実施例2および比較例2における金属調多層フィルム100のインジウム蒸着層20の表面のSEM画像を、それぞれ図3、6に示す。なお、実施例1は、インジウム蒸着保持フィルムの評価結果であり、実施例2〜6および比較例1〜3は金属調多層フィルムの評価結果である。また、実施例2の金属調多層フィルムは、実施例1のインジウム蒸着保持フィルムを用いて製造したフィルムである。
Figure 2021066022
実施例6および比較例1のインジウム蒸着層のSEM画像は、SEM画像の拡大可能な倍率や解像度の影響で、ぼやけてしまった。ただし、SEM画像がぼやけた状態であっても、SEM画像の観察により島部分Iと海部分Sが存在することは認められ、また、実施例6および比較例1の島部分Iは、実施例1〜5の島部分Iよりも小さく、いずれも0.01μm2未満であることは確認できた。すなわち、表1における実施例6および比較例1のインジウム蒸着層では、島部分Iの個数や面積、外周の長さの合計は、測定不能という結果を示したが、実施例1〜5と比べて、島部分Iの個数は多く、外周の長さの合計も長いことは、目視確認できた。
実施例1の結果より、保持フィルム層にインジウムが島状に点在する海島構造のインジウム蒸着層を有し、島部分Iは150×106個/cm2以上存在し、外周の長さの合計が100×106μm/cm2以上であるインジウム蒸着保持フィルムは、ミリ波透過減衰量が−1.0dB以内であり、全光線透過率は1.3%〜30%であり、視認性も良好であった(表1)。
そして、このような実施例1のインジウム蒸着保持フィルムを用いた実施例2の金属調多層フィルムは、実施例1とほぼ同様のミリ波透過減衰量と全光線透過率を示した(表1)。すなわち、ベースフィルム層、保護フィルム層およびポリウレタン系接着剤は、インジウム蒸着保持フィルムのミリ波透過減衰量と全光線透過率にほとんど影響しなかった。
また、実施例2〜6の結果より、保持フィルム層にインジウムが島状に点在する海島構造のインジウム蒸着層を有し、島部分Iは150×106個/cm2以上存在し、外周の長さの合計が100×106μm/cm2以上であるインジウム蒸着保持フィルムを用いた金属調多層フィルムであれば、ミリ波透過減衰量が−1.0dB以内であり、全光線透過率は1.3%〜30%であり、視認性も良好であった(表1)。
一方、比較例1の金属調多層フィルムは、ミリ波透過減衰量が−1.0dB以内であるものの、全光線透過率が38%と高く、金属光沢の視認性に問題があり、装飾性や意匠性を満足しない外観であった。
そして、比較例2、3の場合には、インジウム蒸着層において、蒸着処理により隣接するインジウム粒子との一体化が進んでインジウムの連続層が形成されたため、島部分Iの数が少なく、また、島部分Iを囲む海部分Sの長さが短くなり、外周の長さの合計も少ない値となった。その結果として、インジウムの連続層がミリ波を吸収してしまい、ミリ波の透過性能が低下することとなった。
また、図3と図6を見比べることにより、実施例1、2のインジウム蒸着層は、インジウムが島状に点在する海島構造を有する一方で、比較例2のインジウム蒸着層は、蒸着処理により隣接するインジウム粒子との一体化が進んでインジウムの連続層が形成され、ミリ波が透過し難い層となったことが確認できた。
[まとめ]
以上より、本発明であれば、ミリ波帯の透過性と可視領域における反射性について、より高い性能を満たすことのできる、インジウム蒸着保持フィルム、金属調多層フィルム、インジウム蒸着保持フィルムの製造方法、金属調多層フィルムの製造方法およびエンブレムを提供することができることは、明らかであり、産業上有用である。
10 ベースフィルム層
20 インジウム蒸着層
21 表面
30 保持フィルム層
30a 保持フィルム
30b 蒸着された保持フィルム
31 表面
40 保護フィルム層
50 第1ポリウレタン系接着層
60 第2ポリウレタン系接着層
70 インジウム蒸着保持フィルム
100 金属調多層フィルム
200 真空蒸着装置
210 隔壁
220 上室
221 開口部
230 下室
231 開口部
240 繰出しロール
250 巻取りロール
260 冷却ロール
270 蒸発源るつぼ
280 透過率測定器
300 エンブレム
310 模様層
320 ポリカーボネート系樹脂層
330 ポリカーボネート系樹脂層
340 トップコート層
A 領域
I 島部分
L 距離
S 海部分

Claims (9)

  1. インジウム蒸着層と、
    前記インジウム蒸着層を保持する保持フィルム層とを備える、インジウム蒸着保持フィルムであって、
    前記インジウム蒸着層は、前記保持フィルム層にインジウムが島状に点在する海島構造を有し、
    前記インジウムが蒸着する方向と垂直な方向における、前記インジウム蒸着層の表面において、前記島状の前記インジウムは150×106個/cm2以上存在し、
    前記表面において、前記島状の前記インジウムの外周の長さの合計が100×106μm/cm2以上であり、
    前記インジウム蒸着保持フィルムのミリ波透過減衰量は、−1.0dB以内であり、
    前記インジウム蒸着保持フィルムの全光線透過率は、1.3%〜30%である、
    インジウム蒸着保持フィルム。
  2. 前記表面において、前記島状の前記インジウムの面積が0.01μm2〜0.4μm2である、請求項1に記載のインジウム蒸着保持フィルム。
  3. 前記保持フィルム層は、厚みが5μm〜50μmのポリエチレンテレフタレート系樹脂層である、請求項1または2に記載のインジウム蒸着保持フィルム。
  4. 順に、
    ベースフィルム層と、
    前記ベースフィルム層と積層するインジウム蒸着層と、当該インジウム蒸着層を保持する保持フィルム層とを備える、請求項1〜3のいずれかに記載のインジウム蒸着保持フィルムと、
    前記保持フィルム層と積層する保護フィルム層と、が積層する金属調多層フィルムであって、
    前記金属調多層フィルムのミリ波透過減衰量は、−1.0dB以内であり、
    前記金属調多層フィルムの全光線透過率は、1.3%〜30%である、
    金属調多層フィルム。
  5. 前記ベースフィルム層は、厚みが50μm〜1000μmのポリカーボネート系樹脂層であり、
    前記保護フィルム層は、厚みが50μm〜200μmのポリカーボネート系樹脂層である、請求項4に記載の金属調多層フィルム。
  6. 前記ベースフィルム層と前記インジウム蒸着層を接合する第1ポリウレタン系接着層と、
    前記保持フィルム層と前記保護フィルム層を接合する第2ポリウレタン系接着層と、を備える請求項4または5に記載の金属調多層フィルム。
  7. 請求項1〜3のいずれかに記載のインジウム蒸着保持フィルムの製造方法であって、
    1.33×10-3Pa〜1.33×10-2Paの圧力条件下で、温度が−5℃〜5℃のロールに沿った前記保持フィルム層をインジウム蒸気流中に露出させて、前記保持フィルム層に前記インジウム蒸着層を形成する蒸着工程と、
    前記蒸着工程によって得られた前記インジウム蒸着層と前記保持フィルム層との積層体の全光線透過率を測定する測定工程と、
    前記測定工程により得られる前記積層体の全光線透過率が1.3%〜30%となるように、前記インジウム蒸着層の形成速度を制御する制御工程と、
    を含む、インジウム蒸着保持フィルムの製造方法。
  8. 請求項7に記載のインジウム蒸着保持フィルムの製造方法により得た、前記インジウム蒸着保持フィルムの前記インジウム蒸着層と、前記ベースフィルム層を積層する第1積層工程と、
    前記インジウム蒸着保持フィルムの前記保持フィルム層と、前記保護フィルム層を積層する第2積層工程と、
    を含む、請求項4〜6のいずれかに記載の金属調多層フィルムの製造方法。
  9. 請求項4〜6のいずれかに記載の金属調多層フィルムを備えるエンブレム。
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