JP5625742B2 - 成型用ポリエステルフィルム - Google Patents

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Description

本発明は、成型用ポリエステルフィルムに関する。特に、鏡面処理でも良好な外観を有し、加飾性に優れた成型用ポリエステルフィルムに関する。
表装部材などの成型体の製造にはいろいろな材料が使用されている。例えば、モールやピラーといった自動車部品などの成型体の外装表面にはメッキや樹脂材料を被覆して用いられる。ところで、自動車の外装部品や内装部品の製造において、表面処理を施した後に塗装やめっきを行う方法が一般的に採用されていたが、最近では、塗装代替やめっき代替として加飾フィルムを成型体表装に施す方法が提案されている(特許文献1)。
このような成形用の樹脂シート材料としては、従来、ポリ塩化ビニルフィルムが用いられてきたが、フィルムの燃焼時の有毒ガスの発生、可塑剤のブリードアウトなど、環境適性の点で問題がある。そこで、環境適性に優れる材料として、ポリエステル、ポリカーボネート、またはアクリル系樹脂よりなる未延伸のシートが、広い分野において使用されてきている。例えば、特許文献2のように、成型性に優れた特性を有する成型用ポリエステルフィルムが提案されている。
特開2007−297569号公報 特開2008−30475号公報
ポリエステルからなるメッキ代替加飾フィルムには加飾層などの各種機能層との密着性を奏するためにフィルム表面に塗布層が設けられる。メッキ代替加飾フィルムは比較的薄手のフィルムが用いられることが多く、フィルムをロール状に巻き取る際にしわやスジが生じやすい。そこで、フィルム表面、特に塗布層に粒子を添加し、表面に凹凸構造を付与することで、生産工程や加工工程に必要な滑り性が付与されている。
一方、金属メッキの代替として、金属蒸着などにより鏡面様の金属光沢処理を施した場合、高級感のある外観を出すためには表面が平滑であることが望ましい。しかしながら、フィルム表面に凹凸を有することで、面感が損なわれる場合があった。特に、比較的薄手のフィルムをロール状に巻き取ったフィルムを用いると、フィルムそのものでは視認できないような微細な凹凸構造であっても、金属光沢処理を施すことで微細な凹凸構造に起因した反射光の散乱により、、鏡面に写される写像に歪みが生じることがあった。
本発明の目的は、前記課題を解決することにある。すなわち、メッキ代替用途として用いた場合に鏡面状の良好な外観を奏する成型用ポリエステルフィルムを提供することにある。
上記の課題を解決することができる、本発明の成型用ポリエステルフィルムは以下の構成からなる。
第1の発明は、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に塗布層を有し、前記塗布層はバインダー樹脂と少なくとも1種類の粒子を含み、該粒子の粒度分布(d75/d25)が1.1〜1.5、平均粒径dが0.04〜1.2μm、該粒子の平均粒径dと塗布層の厚みtとの比(d/t)が以上100以下である成型用ポリエステルフィルムである。
第2の発明は、前記バインダー樹脂がポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂のいずれかである前記成型用ポリエステルフィルムである。
第3の発明は、前記塗布層に前記粒子を0.01〜3質量%含有し、前記フィルムのヘイズが2.0%以下、静摩擦係数が0.9以下、動摩擦係数が0.8以下である前記成型用ポリエステルフィルムである。
第4の発明は、フィルムの厚みが15〜80μm以下である前記成型用ポリエステルフィルムである。
第5の発明は、前記フィルム表面におけるウェーブスキャン装置を用いて測定した波長0.1mm〜0.3mm領域の反射強度(Wa)が4.0以下である前記成型用ポリエステルフィルムである。
ここで、ウェーブスキャン装置を用いた反射強度(Wa)の測定方法は以下である。
得られた約100m長さのフィルムについてフィルムロール状に巻き取り、室温で約12時間静置した後、フィルムを切り出し、塗布層面と反対面に黒色シート(GAボードFSブラック26)を敷き、フィルムの塗布層面をウェーブスキャン(BYK Gardner社製)を用いて測定した。表示される波長0.1−0.3mm領域の反射強度Waの値で評価した。
第6の発明は、前記成型用ポリエステルフィルムの一方の面に金属蒸着層を設けたのち、基材と一体成型すること特徴とするメッキ代替加工方法である。
本発明の成型用ポリエステルフィルムは、特定の粒子構成を有する塗布層が積層されている。よって、面感に優れた鏡面状の加飾層を形成するに適している。そのため、自動車用の内装や外装の加飾材、家電メンブレンスイッチ、携帯電話用基材、建材用部材などの加飾用成型部材において、成型基材と同時一体成型することでメッキ代替処理方法において好適に用いることができる。
フィルムの空気抜け速さを測定する装置の断面を示す説明図である。
(塗布層)
本発明の塗布層はバインダー樹脂と少なくとも1種類の特定の粒子を含むことを特徴とする。これにより、印刷や蒸着などの加飾層と好適な接着性を奏するとともに、金属蒸着した際に鏡面状の好適な面感を奏することができる。
以下、本発明の塗布層の各構成について詳細に述べる。
(バインダー樹脂)
塗布層にはバインダー樹脂を含む。バインダー樹脂としてはポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂またはポリアクリル樹脂の少なくとも1種類を用いることができる。
本発明の塗布層に用いるポリエステル系樹脂とは分岐したグリコール成分を構成成分とする共重合ポリエステル樹脂が好適である。ここで言う分岐したグリコール成分とは例えば2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−イソプロピル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−n−ヘキシル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−n−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−n−ヘキシル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジ−n−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−n−ブチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、及び2,2−ジ−n−ヘキシル−1,3−プロパンジオールなどが挙げられる。
上記の分岐したグリコール成分は全グリコール成分の中に、好ましくは10モル%以上の割合で、さらに好ましくは20モル%以上の割合で含有される。上記化合物以外のグリコール成分としてはエチレングリコールが最も好ましい。少量であれば、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオールまたは1,4シクロヘキサンジメタノールなどを用いても良い。
共重合ポリエステル系樹脂に構成成分として含有される、ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、テレフタル酸ジメチルおよびイソフタル酸、イソフタル酸ジメチルが最も好ましい。少量であれば他のジカルボン酸;ジフェニルカルボン酸及び2,6−ナルタレンジカルボン酸の芳香族ジカルボン酸を加えて共重合させてもよい。
上記ジカルボン酸成分の他に、水分散性を付与させるため、5−スルホイソフタル酸を1〜10モル%の範囲で使用するのが好ましく、例えば、4−スルホナフタレンイソフタル酸−2,7−ジカルボン酸および5−(4−スルホフェノキシ)イソフタル酸及びその塩類等を挙げることができる。
本発明の塗布層に用いるポリウレタン樹脂とは例えばポリエステルポリオール及びポリエーテルエステルポリオールなどが用いることができる。ポリエステルポリオール及びポリエーテルエステルポリオールとしては、主として直鎖状あるいは分岐状の化合物が挙げられる。これらは、コハク酸、アジピン酸、フタル酸及び無水マレイン酸等の多価の飽和あるいは不飽和カルボン酸、あるいは該カルボン酸無水物等と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール及びトリメチロールプロパン等の多価の飽和及び不飽和のアルコール類、比較的低分子量のポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコール等のポリアルキレンエーテルグリコール類、あるいはそれらアルコール類の混合物とを縮合することにより得ることができる。
さらに、ポリエステルポリオールとしては、ラクトン及びヒドロキシ酸から得られるポリエステル類、またポリエーテルエステルポリオールとしては、あらかじめ製造されたポリエステル類にエチレンオキシドあるいはプロピレンオキシド等を付加せしめたポリエーテルエステル類も使用することができる。
アクリル樹脂を構成するモノマ成分として下記のものを例示することができるが、公知の方法によって製造することができ、本発明の効果を阻害しない範囲において特に限定されない。
該アクリル樹脂の重合に供するモノマとしてはアルキルアクリレート、アルキルメタクリレート(アルキル基としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、ラウリル基、ステアリル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基など)を基本骨格とし、更に上記官能基を付与するため以下のような官能基を有するモノマと共重合される。
すなわち官能基としてはカルボキシル基、メチロール基、酸無水物基、スルホン酸基、アミド基またはアルキロール化されたアミド基、アミノ基(置換アミノ基を含む)あるいはアルキロール化されたアミノ基、水酸基、エポキシ基などを例示することができ、これらの塩、エステル化物を共重合しても良い。
カルボキシル基および/またはその塩、あるいは酸無水物基を有する化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、これらのカルボン酸のアルカリ金属塩、アンモニウム塩、あるいは無水物などが挙げられる。
スルホン酸基および/またはその塩を有する化合物としては、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、これらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩などが挙げられる。
アミド基あるいはアルキロール化されたアミド基を有する化合物としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、メチロール化アクリルアミド、メチロール化メタクリルアミド、ウレイドビニルエーテル、β−ウレイドイソブチルビニルエーテル、ウレイドエチルアクリレートなどが挙げられる。
アミノ基あるいはアルキロール化されたアミノ基および/またはその塩を有する化合物としてはジエチルアミノエチルビニルエーテル、2−アミノエチルビニルエーテル、3−アミノプロピルビニルエーテル、2−アミノブチルビニルエーテル、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルビニルエーテル、およびそれらのアミノ基をメチロール化したもの、ハロゲン化アルキル、ジメチル硫酸、サルトンなどにより四級塩化したものなどが挙げられる。
水酸基を有する化合物としては、β−ヒドロキシエチルアクリレート、β−ヒドロキシエチルメタクリレート、β−ヒドロキシプロピルアクリレート、β−ヒドロキシプロピルメタクリレート、β−ヒドロキシビニルエーテル、5−ヒドロキシペンチルビニルエーテル、6−ヒドロキシヘキシルビニルエーテル、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノアクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレートなどが挙げられる。
エポキシ基を有する化合物としてはグリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートなどが挙げられる。
架橋性官能基を有するアクリル樹脂の好ましい具体例としては、メチルメタアクリレート、エチルアクリレート及び/又はブチルアクリレートに架橋性官能基を有するアクリル酸、N−メチロールアクリルアミドを所望の割合に共重合した四元アクリル共重合体などを挙げることができるがこれらに限定されるものではない。
さらに、上記以外に次のような化合物を併用しても良い。すなわちアクリロニトリル、メタクリロニトリル、スチレン類、ブチルビニルエーテル、マレイン酸モノあるいはジアルキルエステル、イタコン酸モノあるいはジアルキルエステル、メチルビニルケトン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニルトリスアルコキシシランなどであり、勿論これらに限定されるものではない。
これらの架橋性官能基を有するモノマおよび他の化合物は基本骨格となるモノマと任意の比率で共重合され、2種以上のモノマを共重合させてもよい。好ましい比率の具体例としては、基本骨格となるモノマに対して架橋性官能基を有するモノマの割合は、通常1〜10質量%程度である。
本発明において用いるアクリル樹脂のガラス転移温度は0℃以上、100℃以下、好ましくは20℃以上、80℃以下とすることが望ましい。ガラス転移温度が低いアクリル樹脂を用いた場合には高温高湿下での密着性が劣る傾向にあり、逆に高過ぎる場合は延伸時に亀裂を生じることがある。
アクリル樹脂のガラス転移温度は用いるモノマによって任意に設定することができ、例えば高いガラス転移温度のポリマーを得るにはメチルメタクリレートの共重合量を増加させ、低いガラス転移点の樹脂を得るには長鎖のアルキルアクリレートの共重合が有効である。また、アクリル樹脂の分子量を45万以上とすることにより、塗布層の強靭性が増すので特に好ましい。
(粒子)
本発明の塗布層には少なくとも粒度分布(d75/d25)が1.1〜1.5、平均粒径が0.04〜1.2μmである粒子を含むことを特徴とする。
フィルムの表面が平滑であると、フィルムをロール状に巻き取った際にフィルム間に巻き込んだ空気が抜け切れず、巻き込んだ空気部に由来するフィルムにシワが生じやすくなる。このような欠点を有するフィルムをメッキ代替としては使用した場合に外観欠点となり、好適な鏡面外観を得ることができない。係る外観欠点は、フィルムの厚みが100μm以下、さらには80μm以下の薄手フィルムのようにフィルムの腰感が低い場合に発生しやすくなる。そこで、本発明の塗布層には平均粒径0.04〜1.2μmの粒子を含有させる。粒子の平均粒径はより好ましくは0.05〜1.0μm、さらに好ましくは0.06〜0.90μmである。平均粒径の下限が上記以上であると、塗布層表面に有効な突起が形成され、空気抜け性の向上により外観欠点のないフィルムを好適に得ることができる。また、粒子の平均粒径が上記上限以下であると、フィルム表面が平滑な面感を得ることができる。粒子の平均粒径は、フィルム塗布層表面の走査型顕微鏡観察像や、フィルム塗布層切片の電子顕微像から計測しることができるし、コールターカウンター法により求めることもできる。なかでも、フィルム塗布層表面の走査型顕微鏡観察像から塗布層表面に露出している粒子の粒子径を計測することで好適に求めることができる。
塗布層の厚みをt(μm)、前記粒子の平均粒径をd(μm)とした場合、これらの比である(d/t)は1〜100、好ましくは2〜50、より好ましくは5〜20である。(d/t)が上記下限以上の場合は塗布層表面に空気抜けに有効な表面突起が形成されやすい。また、(d/t)が上記上限以下の場合は粒子の粉落ち(塗布層からの粒子の脱落)が生じにくく、加工に際して安定な摩擦係数が得られやすい。
上記の関係から、本発明の塗布層の厚みは、具体的に好ましくは0.02〜0.50μm、より好ましくは0.03〜0.10μm、さらに好ましくは0.04〜0.08μmである。
本発明の塗布層は上記構成を有するため、良好な空気抜け性を有する。具体的には、後述の方法により測定される空気抜け指数が350秒以下であることが好ましく、より好ましくは200秒未満であり、さらに好ましくは50秒未満である。空気抜け指数が上記上限以下であるため、本発明のフィルムを製膜工程においてロールに巻き取った場合にも空気抜けが良好であり、フィルムロールとして保管した場合でもシワが生じにくい。一方、空気抜け指数の下限としては30秒以上が好ましく、35秒以上がより好ましい。空気抜け指数が上記下限以上であると、粒子突起の粉落ちがより好適に抑制される。
本発明のフィルムは蒸着加飾面を裏面にした場合での良好な外観性を奏することが望ましい。そのため、塗布層中の前記粒子の含有量は好ましくは0.01〜3質量%、より好ましくは0.05〜2.5質量%、さらに好ましくは0.10〜2.0質量%である。粒子含有量が上記下限以上である場合はフィルムロールとして巻取る際の空気抜け性を良好に保持しうる。また、粒子含有量が上記上限以下の場合は粒子突起の粉落ちがより好適に抑制され、また好適な透明性が得られやすくなる。
塗布層中の粒子濃度が上記範囲であるため、本発明のフィルムは高い透明性を有する。具体的には、本発明のフィルムのヘイズは好ましくは2.0%以下であり、より好ましくは1.5%以下であり、よりさらに好ましくは1.2%以下、さらにより好ましくは1.0%以下、特に好ましくは0.8%以下である。本発明のフィルムは上記のように良好な透明性を有するため、例えば、フィルム裏面に蒸着層を設けて基材と一体成型しても鏡面状の良好な表面外観を得ることができる。なお、フィルムの透明性を上記範囲にするためには、塗布層にのみ粒子を含有し、基材となるポリエステルフィルム中には実質的に粒子を含有しない構成とすることが好ましい。なお、「基材フィルム中には実質的に粒子を含有しない」とは、例えば無機粒子の場合、ケイ光X線分析で無機元素を定量した場合に検出限界以下となる含有量を意味する。これは意識的に粒子を基材フィルムに添加させなくても、外来異物由来のコンタミ成分などが混入する場合があるためである。
フィルム表面に金属光沢を有する蒸着層を設け、非常に高度な鏡面化を施した場合、フィルム状態では視認できなかった微細な表面凹凸形状であっても、反射光による散乱により、鏡面に写される写像に歪みが生じ、外観欠点として視認されるようになってきた。写像の歪みは製膜直後のフィルムを鏡面処理した場合は認められないものの、ロール状に巻き取ったフィルムを用いた場合に顕著に認められた。このような写像の歪みの発生機序について鋭意検討したところ、空気抜け性を付与するために添加した前記粒子の粒子形状の不均一性が要因となることを見出した。すなわち、粒子形状が不均一な場合は、フィルム表面の微細な凹凸に局所的な偏在が生じ、フィルムロールとして多層にフィルムを積層した場合、係る凹凸形状の偏在が集積し、オレンジピールと呼ばれる微細なフィルム表面凹凸構造が生じるということが分かった。こうして形成されるフィルム表面の微細な凹凸構造は、マットなどと表現される凹凸構造よりは微細であり、かつ三次元表面粗さ(SRa)などで表現される表面突起構造よりは大きい構造を有するものであった。つまり、フィルムそのものとしては視認しえないものでありながら、鏡面処理を施した際に視認しうる程度の微細な表面凹凸形状であった。このような粒子による凹凸形状の偏在の集積はフィルムの厚みが100μm以下、さらには80μm以下の薄手フィルムのようにフィルムの腰感が低い場合に発生しやすい傾向が認められた。
上記課題を解決し、良好な鏡面外観を奏するためには、本発明の塗布層に含まれる前記粒子の粒度分布(d75/d25)は1.1〜1.5とすることが重要である。前記粒子の粒度分布(d75/d25)は好ましくは1.4以下、より好ましくは1.3以下である。前記粒子の粒度分布が上記上限以下の場合、フィルム表面凹凸の偏在が少なくなり、薄手のフィルムをロール状にまいたものであっても、オレンジピールが生じにくい。また、前記粒子の粒度分布は1に近似することが好ましいが、工業的生産性の点から1.1が下限である。粒子の粒度分布を上記範囲に制御する手段は特に問わないが、例えばフィルターなどの濾過や粒子落下速度、送風装置、静電装置などを利用して粗大粒子などを取り除いたり、粒子凝集が生じにくい粒子種を選定したり、狭小な粒度分布が得られやすい有機粒子を採用したりすることができる。有機粒子は調整時に添加する界面活性剤の濃度を調整することで好適に粒度分布を制御することができる。特に、乳化重合により得られた架橋有機粒子は狭小な粒度分布が得られやすく好適である。粒度分布はフィルム塗布層表面の走査型顕微鏡観察像や、フィルム塗布層切片の電子顕微像から計測しることができるし、コールターカウンター法により求めることもできる。なかでも、フィルム塗布層表面の走査型顕微鏡観察像から塗布層表面に露出している粒子の粒子径を計測することで好適に求めることができる。
本発明の塗布層は上記構成を有するため、薄手のフィルムをロール状に巻き取った場合であってもオレンジピールが生じにくく、鏡面処理により鮮明な写像を得ることができる。写像歪みは、金属光沢表面の凹凸構造により光の反射が異なることによって、人間の視覚で認められる。写像歪みの要因となるフィルム表面の凹凸構造は光学的に波長の明暗パターンを測定するマイクロウェーブスキャン(Gardner社製)により評価することができる。このウェーブスキャンは、レーザーの点光源がフィルム表面に対する垂線から60°傾いた角度でレーザー光線を照射し、検出器が前記垂線に対して反対の同角度の反射光を測定する。この装置は、レーザーの点光源をフィルム表面の上に移動させてスキャンすることで、反射光の明暗を決められた間隔で一点ずつ測定し、フィルム表面の光学的プロファイルを検出できる。検出された光学プロファイルは、周波数フィルターを通してスペクトル解析して、表面のストラクチャーを解析することができる。この装置の特性スペクトルは次の通りである。du:波長0.1mm以下、Wa:波長0.1〜0.3mm、Wb:波長0.3〜1mm、Wc:波長1〜3mm、Wd:波長3〜10mm、We:波長10〜30mm、SW:波長0.3〜1.2mm、LW:波長1.2〜12mm。これらのなかでも波長0.1〜0.3mm領域の反射強度(Wa)は、本発明の微細な表面凹凸構造に起因したプロファイルとして活用しうることがわかった。
本発明のフィルム表面をウェーブスキャン装置で測定した場合の波長0.1〜0.3mm領域の反射強度(Wa)は好ましくは4.0以下であり、より好ましくは3.5以下、さらに好ましくは3.0以下である。前記反射強度が、上記上限以下である場合は、フィルム表面は平滑でメッキ代替として用いた際に良好な鏡面外観を呈することができる。
本発明において塗布層中に含有させる前記粒子としては、例えば、酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、シリカ、アルミナ、タルク、カオリン、クレーなど或いはこれらの混合物であり、更に、他の一般的無機粒子、例えばリン酸カルシウム、雲母、ヘクトライト、ジルコニア、酸化タングステン、フッ化リチウム、フッ化カルシウムその他と併用、等の無機粒子や、スチレン系、アクリル系、メラミン系、ベンゾグアナミン系、シリコーン系等の有機ポリマー系粒子等が挙げられる。中でも、粒度分布の狭小な粒子が得られやすい、スチレン系、アクリル系等の有機ポリマー系粒子が好ましい。
本発明では、少なくとも1種の粒子が上記要件を満足することが好ましい。また、上記粒子に加えて耐ブロッキング性や耐スクラッチ性などの目的に、平均粒径の異なる複数の無機粒子を組み合わせて使用するのも好ましい態様のひとつである。その際に用いる他の粒子は前記粒子よりも平均粒径が小さいことが望ましく、さらには塗布層の厚みよりも小さいことがより望ましい。このような比較的小さい他の粒子を添加することにより塗布層表面の固さを付与し、耐ブロッキング性を向上させることができる。
このような平均粒径が小さい粒子(以下、この粒子を粒子Bともいい、前述の粒子を粒子Aとして両者を区別することがある)の平均粒径は20〜150nmが好ましく、30〜100nmがより好ましく、40〜80nmがよりさらに好ましい。粒子Bの平均粒径をdB、塗布層の厚みをtとすると、これらの比(dB/t)は1.5〜0.1が好ましく、1.2〜0.3がより好ましい。粒子Bとして、粒子Aよりも小さく、さらに塗布層の厚みと同等である小さい粒子を用いることで、フィルム面感を損なうことなく、耐ブロッキング性を向上させることができる。粒子Bを添加する場合は、塗布層中の固形分濃度として30質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましく、10質量%以下がよりさらに好ましい。粒子Bの添加濃度を上記上限以下とすることでフィルムの透明性を保持することができる。なお、粒子Bの平均粒子径についても、前記粒子Aのようにフィルム塗布層表面の走査型顕微鏡観察像から塗布層表面に露出している粒子の粒子径を計測することで好適に求めることができる。
また、本発明の塗布層は上記構成を有するため、良好な耐ブロッキング性を有する。具体的には、後述の方法により測定される塗布層面の静摩擦係数は好ましくは0.9以下であり、より好ましくは0.8以下、さらに好ましくは0.7以下である。また、動摩擦係数は好ましくは0.8以下であり、より好ましくは0.7以下、さらに好ましくは0.6以下である。静摩擦係数及び/もしくは動摩擦係数が上記上限以下であるため、本発明のフィルムは各種成型加工において好適な取扱い性を有す。
(架橋剤)
耐ブロッキングの点から本発明の塗布層には架橋剤を含むことが好ましい。これにより、塗布層に適度な架橋構造が形成されるため、架橋剤の添加は耐湿熱性の付与に好適である。架橋剤の配合割合は、バインダー樹脂100質量部に対して5〜40質量部であることが好ましく、8〜25質量部であることがさらに好ましい。上記架橋剤の配合割合がバインダー樹脂100質量部に対して5質量部未満では耐ブロッキング性が低下したり、接着性が低下することがあるので好ましくない。逆に、40質量部を超えると成型性に追従するための柔軟性が低下する場合がある。
上記架橋剤としては、アルキル化フェノール類、クレゾール類などのホルムアルデヒドとの縮合物のフェノールホルムアルデヒド樹脂;尿素、メラミン、ベンゾグアナミンなどとホルムアルデヒドとの付加物、この付加物と炭素原子数が1〜6のアルコールからなるアルキルエーテル化合物などのアミノ樹脂;多官能性エポキシ化合物;多官能性イソシアネート化合物;ブロックイソシアネート化合物;多官能性アジリジン化合物;オキサゾリン化合物などを用いる。
フェノールホルムアルデヒド樹脂としては、例えば、アルキル化(メチル、エチル、プロピル、イソプロピルまたはブチル)フェノール、p−tert−アミルフェノール、4,4’−sec−ブチリデンフェノール、p−tert−ブチルフェノール、o−、m−、p−クレゾール、p−シクロヘキシルフェノール、4,4’−イソプロピリデンフェノール、p−ノニルフェノール、p−オクチルフェノール、3−ペンタデシルフェノール、フェノール、フェニル−o−クレゾール、p−フェニルフェノール、キシレノールなどのフェノール類とホルムアルデヒドとの縮合物を挙げることができる。
アミノ樹脂としては、例えば、メトキシ化メチロール尿素、メトキシ化メチロールN,N−エチレン尿素、メトキシ化メチロールジシアンジアミド、メトキシ化メチロールメラミン、メトキシ化メチロールベンゾグアナミン、ブトキシ化メチロールメラミン、ブトキシ化メチロールベンゾグアナミンなどが挙げられるが好ましくはメトキシ化メチロールメラミン、ブトキシ化メチロールメラミン、およびメチロール化ベンゾグアナミンなどを挙げることができる。
多官能性エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルおよびそのオリゴマー、水素化ビスフェノールAのジグリシジルエーテルおよびそのオリゴマー、オルソフタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、p−オキシ安息香酸ジグリシジルエステル、テトラハイドロフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサハイドロフタル酸ジグリシジルエステル、コハク酸ジグリシジルエステル、アジピン酸ジグリシジルエステル、セバシン酸ジグリシジルエステル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルおよびポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル類、トリメリット酸トリグリシジルエステル、トリグリシジルイソシアヌレート、1,4−ジグリシジルオキシベンゼン、ジグリシジルプロピレン尿素、グリセロールトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリグリシジルエーテル、グリセロールアルキレンオキサイド付加物のトリグリシジルエーテルなどを挙げることができる。
多官能性イソシアネート化合物としては、低分子または高分子の芳香族、脂肪族のジイソシアネート、3価以上のポリイソシアネートを用い得る。ポリイソシアネートとしては、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、およびこれらのイソシアネート化合物の3量体がある。さらに、これらのイソシアネート化合物の過剰量と、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ソルビトール、エチレンジアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどの低分子活性水素化合物、またはポリエステルポリオール類、ポリエーテルポリオール類、ポリアミド類などの高分子活性水素化合物とを反応させて得られる末端イソシアネート基含有化合物を挙げることができる。
本発明の塗液中には、本発明の効果を阻害しない範囲において公知の添加剤、例えば酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、有機の易滑剤、顔料、染料、有機または無機の粒子、帯電防止剤、核剤等を添加しても良い。
(基材ポリエステルフィルム)
基材となるポリエステルフィルムは、主としてポリエステル樹脂よりなる。基材フィルムを構成するポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2、6ナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、またはこれらの樹脂の構成成分を主成分とする共重合体が好適であり。特に成型性の点から共重合ポリエステル、あるいは共重合ポリエステルとホモポリエステルからなるポリエステルフィルムが好ましい。
メッキ代替フィルムとして成型基材と一体成型する場合はフィルム厚みは薄い方が好ましい。本発明のフィルムの厚みは好ましくは15〜80μmであり、より好ましくは75μm以下、さらに好ましくは60μm以下、よりさらに好ましくは50μm以下である。また、フィルムとしての強度の点からフィルム厚みの下限は15μm以上、より好ましくは20μm以上、さらに好ましくは25μm以上である。本発明の塗布層は上記態様を有するので、薄手のフィルムであってもメッキ代替用途として好適な外観を呈する。
(共重合ポリエステル)
共重合ポリエステルとしては、(a)芳香族ジカルボン酸成分と、エチレングリコールと、分岐状脂肪族グリコール又は脂環族グリコールを含むグリコール成分から構成される共重合ポリエステル、あるいは(b)テレフタル酸及びイソフタル酸を含む芳香族ジカルボン酸成分と、エチレングリコールを含むグリコール成分から構成される共重合ポリエステルが好適である。また、二軸配向ポリエステルフィルムを構成するポリエステルが、さらにグリコール成分として1,3−プロパンジオール単位または1,4−ブタンジオール単位を含むことが成型性を向上させる点から好ましい。本発明に用いられる共重合ポリエステルは、上記(a)の場合は、全グリコール成分に占めるエチレングリコールの割合が20モル%〜95モル%になるように共重合成分を添加することが好ましい。なお、前記の全グリコール成分に占めるエチレングリコールの割合の下限としては好ましくは30モル%、より好ましくは40モル%であり、上限としては好ましくは90モル%、より好ましくは80モル%、さらに好ましくは70モル%である。また、本発明に用いられる共重合ポリエステルは、上記(b)の場合は、全芳香族ジカルボン酸成分に占めるテレフタル酸の割合が50モル%〜95モル%になるように共重合成分を添加することが好ましい。なお、前記の全芳香族ジカルボン酸成分に占めるテレフタル酸の割合の下限としては好ましくは60モル%、より好ましくは70モル%であり、上限としては好ましくは90モル%である。
フィルム原料としては、共重合ポリエステル単独、1種類以上のホモポリエステルまたは共重合ポリエステルのブレンド、またはホモポリエステルと共重合ポリエステルの組合せのいずれの方法も可能である。これらの中でも、ブレンド法が融点の低下を抑制する点から好適である。
前記の共重合ポリエステルとして、芳香族ジカルボン酸成分と、エチレングリコールと、分岐状脂肪族グリコール又は脂環族グリコールを含むグリコール成分から構成される共重合ポリエステルを用いる場合、芳香族ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸又はそれらのエステル形成性誘導体が好適であり、全ジカルボン酸成分に対するテレフタル酸および/またはナフタレンジカルボン酸成分の量は70モル%以上、好ましくは85モル%以上、特に好ましくは95モル%以上、とりわけ好ましくは100モル%である。
また、分岐状脂肪族グリコールとしては、例えば、ネオペンチルグリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオールなどが例示される。脂環族グリコールとしては、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメチロールなどが例示される。
これらの中でも、ネオペンチルグリコールや1,4−シクロヘキサンジメタノールが特に好ましい。さらに、本発明においては、上記のグリコール成分に加えて1,3−プロパンジオールや1,4−ブタンジオールを共重合成分とすることが、より好ましい実施態様である。これらのグリコールを共重合成分として使用することは、前記の特性を付与するために好適であり、さらに、透明性や耐熱性にも優れ、接着性改質層との接着性を向上させる点からも好ましい。
また、前記の共重合ポリエステルとして、テレフタル酸及びイソフタル酸を含む芳香族ジカルボン酸成分と、エチレングリコールを含むグリコール成分から構成される共重合ポリエステルを用いる場合、エチレングリコールの量は全グリコール成分に対し70モル%以上、好ましくは85モル%以上、特に好ましくは95モル%以上、とりわけ好ましくは100モル%である。エチレングリコール以外のグリコール成分としては、前記の分岐状脂肪族グリコールや脂環族グリコール、またはジエチレングリコールが好適である。
前記共重合ポリエステルを製造する際に用いる触媒としては、例えば、アルカリ土類金属化合物、マンガン化合物、コバルト化合物、アルミニウム化合物、アンチモン化合物、チタン化合物、チタン/ケイ素複合酸化物、ゲルマニウム化合物などが使用できる。これらのなかでも、チタン化合物、アンチモン化合物、ゲルマニウム化合物、アルミニウム化合物が触媒活性の点から好ましい。
前記共重合ポリエステルを製造する際に、熱安定剤としてリン化合物を添加することが好ましい。前記リン化合物としては、例えばリン酸、亜リン酸などが好ましい。
前記共重合ポリエステルは、成型性、接着性、製膜安定性の点から、固有粘度が0.50dl/g以上であることが好ましく、さらに好ましくは0.55dl/g以上、特に好ましくは0.60dl/g以上である。固有粘度が0.50dl/g未満では、成型性が低下する傾向がある。また、メルトラインに異物除去のためのフィルターを設けた場合、溶融樹脂の押出時における吐出安定性の点から、固有粘度の上限を1.0dl/gとすることが好ましい。
(フィルム原料とするポリエステル系樹脂)
本発明では、フィルム原料として、1種類以上のホモポリエステルまたは共重合ポリエステルを用い、これらをブレンドしてフィルムを製膜することによって、共重合ポリエステルのみを用いた場合と同等の柔軟性を維持しながら透明性と高い融点(耐熱性)を実現することができる。また、高融点のホモポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート)のみを用いた場合に対し、高い透明性を維持しながら柔軟性と実用上問題のない融点(耐熱性)を実現することができる。
また、前記共重合ポリエステルと、ポリエチレンテレフタレート以外のホモポリエステル(例えば、ポリテトラメチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート)を少なくとも1種以上ブレンドして、本発明のポリエステル系樹脂フィルムロールの原料として使用することは、成型性の点からもさらに好ましい。
本発明では、共重合ポリエステル単独、若しくは1種類以上のホモポリエステルまたは共重合ポリエステルをブレンドしたポリエステル系樹脂をフィルム原料とする。本発明に用いるポリエステル系樹脂は、共重合成分を5〜50質量%含むことが好ましい。
前記のポリエステル系樹脂の融点は、耐熱性及び成型性の点から、180〜250℃であることが好ましい。使用するポリマーの種類や組成、さらに製膜条件を前記融点の範囲内に制御することにより、成型性と仕上がり性とのバランスが取れ、高品位の成型品を経済的に生産することができる。ここで、融点とは、いわゆる示差走査熱量測定(DSC)の1次昇温時に検出される融解時の吸熱ピーク温度のことである。該融点は、示差走査熱量分析装置(セイコーインスツルメンツ株式会社製、DSC6200)を使用して、昇温速度20℃/分で測定して求めた。融点の下限値は、190℃がよりに好ましく、200℃がさらに好ましく、210℃以上が特に好ましい。融点が180℃未満であると、耐熱性が悪化する傾向がある。そのため、成型時や成型品の使用時に高温にさらされた際に、問題となる場合がある。
前記融点の上限値は、耐熱性の点からは高いほうが良いが、ポリエチレンテレフタレート単位を主体とした場合、融点が250℃を超えるフィルムでは、成型性が悪化する傾向がある。また、透明性も悪化する傾向がある。さらに、高度な成型性や透明性を得るためには、融点の上限を250℃に制御することが好ましい。
本発明のポリエステル系樹脂フィルムは、二軸延伸フィルムであることが重要である。本発明においては、二軸延伸による分子配向により、未延伸シートの欠点である耐溶剤性や寸法安定性が改善される。すなわち、未延伸シートの成型性の良さを維持しつつ、未延伸シートの欠点である耐溶剤性や耐熱性を改善することができる。
また、本発明の好ましい実施態様として、良好な透明性と安定な作業性(特に表面摩擦特性)を得るためには、多層構成を有するフィルムであって表面層にのみ微粒子を含有するポリエステル層を用いることもできる。このような基材フィルムとしては、中心層(b層)の両面に不活性粒子を含有する表面層(a層)が共押出法により積層されてなる多層構成(a/b/a)を有するポリエステルフィルムを用いることが好ましい。表裏の表面層を構成する層は、同種であっても、異種であっても良いが、基材フィルムの平面性を保持する為には、表裏の表面層のポリエステル樹脂は同構成とすることが望ましい。
(製造方法)
本発明の成型用ポリエステルフィルムは、逐次二軸延伸もしくは同時二軸延伸により得られた二軸配向積層ポリエステルが望ましい。以下、最も好んで用いられる逐次二軸延伸方法について説明する。
まず、原料のペレットを十分に真空乾燥する。次に押出機を用いて融点以上の温度で溶融し、ダイスから共押出し法によりポリエステルシートを層状に押出し、回転式冷却ロールに密着固化させて未延伸ポリエステルフィルムを得る。回転式冷却ロールへ密着させる方法として、公知の静電密着法、エアーナイフ法、エアーチャンバー法等を用いることができる。また、必要に応じて、回転式冷却ロールの反対面から空気を吹付けて冷却してもかまわない。未延伸ポリエステルフィルムをロール方式の縦延伸機に導き、80〜125℃に加熱した後、ロールの周速差により縦方向に2.5〜5.0倍延伸して一軸延伸フィルムを得る。縦延伸は一段階で実施しても、多段階に分けて実施してもかまわない。
その後、一軸延伸ポリエステルフィルムをグリップ方式の横延伸機に導き、80〜180℃に加熱した後、横方向に2.5〜5.0倍延伸し、次いで、200〜240℃で熱固定処理した後、必要に応じて縦方向および/または横方向に1〜10%緩和処理し、次いで、フィルムワインダーで巻き取って二軸延伸ポリエステルフィルムを得る。
塗布層の塗布する段階としては、フィルムの延伸前に塗布する方法、縦延伸後に塗
布する方法、配向処理の終了したフィルム表面に塗布する方法などのいずれの方法も可能であるが中でも、基材ポリエステルフィルムの結晶配向が完了する前に塗布し、その後、少なくとも1方向に延伸した後、ポリエステルフィルムの結晶配向を完了させる、インラインコート法が本発明の効果をより顕著に発現させることができるので好ましい方法である
塗布層を設ける方法としては、グラビアコート方式、キスコート方式、ディップ方式、スプレイコート方式、カーテンコート方式、エアナイフコート方式、ブレードコート方式、リバースロールコート方式など通常用いられている方法が適用できる
(成型体)
本発明の成型用ポリエステルフィルムはメッキ代替として好適に用いることができる。本発明の成型用ポリエステルフィルムのいずれかの面に金属調の加飾層を施す。金属調の加飾層は、金属、合金、金属酸化物や、これらに必要に応じてシリコンなどを添加したものを蒸発材料として物理的蒸着により形成することができる。物理的蒸着法は、真空にした容器の中で蒸発材料を何らかの方法で気化させ、気化した蒸発材料を近傍に置いた下地上に堆積させて薄膜を形成する方法である。蒸発材料の気化方法の違いで、蒸発系とスパッタリング系とに分けられる。蒸発系としては、EB蒸着、イオンプレーティング、パルスレーザー蒸着等が挙げられ、スパッタリング系としては、RF(高周波)スパッタリング、マグネトロンスパッタリング、対向ターゲット型マグネトロンスパッタリング、ECRスパッタリング等が挙げられる。
蒸着材料としては、スズ、インジウム、アルミニウム、亜鉛、金、銀、銅、チタン、ニッケル、又はこれらの何れかを元にした合金、の何れか若しくは複数であることが考えられる。具体的にどれを選択するかは、所望の金属光沢の種類に応じて選択されればよい。なかでも、インジウムは伸展性に優れるので、本発明の成型可能なメッキ代替フィルムには好適である。
金属蒸着層の厚みは5nm以上80nm以下であることが好ましい。5nm以上であると好適な金属光沢が得られやすく、80nm以下とすると成型時の割れを好適に抑制しうる。
物理的蒸着以外にもミラーインキなどの塗布もしくは印刷による設けても良い。加飾を施す面は易接着層面であっても、非易接着層面であってもかまわない。加飾を施したフィルムを基材と重ねて一体成型させることでメッキに変わる面感を奏することができる。
基材としては、成型性を有するシート、フィルムを用いることができる。基材の構成材料は特に限定されないが、高分子樹脂が好適に用いられる。高分子樹脂としては、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリメチルメタアクリレート樹脂などのアクリル樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS樹脂)、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、ポリプロピレンなどのオレフィン樹脂、ポリエチレン樹脂、又はフッ素樹脂などが用いることができる。基材と成型用ポリエステルフィルムとは直接積層してもよいが、粘着層やヒートシール層などを介して積層してもよい。
得られた積層体を一体成型する方法は特に限定されないが、真空成型、圧空成型、金型成型などにより一体成型することができる。
得られた成型体は、たとえば、自動車用の内装や外装の加飾材、テレビ、冷蔵庫、洗濯機、ステレオ、携帯機器などの家電製品、化粧用コンパクト鏡などの鏡製品、自動車等の車両、船舶、航空機、建造物、遊具(スキー用ゴーグル等)、アミューズメント装置、その他各種機械装置類などに使用される銘板(表示板及びパネルを含む)として好適である。特に、高温湿熱下での用いられる用途(浴槽、洗面台、台所、サニタリーなどの水回り用品、建材、外装、太陽光パネル等の屋外用品、自動車内装、屋根裏などにさらに好適である。
次に本発明の実施例および比較例を示す。尚、以下、実施例1〜3は、各々参考例1〜3と読み替えることとする。まず本発明に用いる測定・評価方法を以下に示す。
(1)ガラス転移点(Tig)
塗布層のガラス転移点(Tig)の測定は易接着フィルムから塗布層のみを削りとり、試料とした。
測定はJIS K7121に準拠し、示差走査熱量計(セイコーインスツルメンツ株式会社製、DSC6200)を使用して、DSC曲線からガラス転移開始温度(Tig)を求めた。
測定条件
(a)測定温度範囲:0〜200℃
(b)昇温速度:20℃/min
(c)窒素ガスフロー有り
(2)固有粘度
チップサンプル0.1gを精秤し、25mlのフェノール/テトラクロロエタン=6/4(質量比)の混合溶媒に溶解し、オストワルド粘度計を用いて30℃で測定した。なお、測定は3回行い、その平均値を求めた。
(3)ヘイズ
JIS−K7105に準拠し、積分球式光線透過率測定装置(日本電色工業社製)を用いて評価した。
(4)塗布層の厚み
フィルム断面をフィルム面に対し直角にミクロトームで切断し、透過型電子顕微鏡(TEM)でフィルムの断面写真を撮り、その写真上で樹脂成分の厚みを計測する。同様の計測を場所を変えて10回行い、その計測値の平均を樹脂成分の厚み(μm)とした。
(5)外観性1(ウェーブスキャン法)
得られた約100m長さのフィルムについてフィルムロール状に巻き取り、室温で約12時間静置した後、フィルムを切り出し、塗布層面と反対面に黒色シート(GAボードFSブラック26)を敷き、フィルムの塗布層面をウェーブスキャン(BYK Gardner社製)を用いて測定した。表示される波長0.1−0.3mm領域の反射強度Waの値で評価した。波長0.1−0.3mm領域の反射強度Waは表面粗度の振幅の指標であり、フィルム表面のオレンジビールのような微細な凹凸形状による振幅を評価することができる。この値が小さいほど表面の平滑性が高いことを示す。
(6)外観性2(目視評価)
得られた約100m長さのフィルムについてフィルムロール状に巻き取り、室温で約12時間静置した後、フィルムに約100Å厚みの金属(In)蒸着を施し、表面の蛍光灯の像を写し込ませ、蛍光灯の写像状態を目視観察し、次の5段階で評価した。
1 :写像の歪みが全く観察されない
2 : 不鮮明な写像の歪みが若干観察されるものの使用に耐えうる
3 : 不鮮明な写像の歪みの発生がかなり見られるものの使用に耐えうる
4 : はっきりとした写像の歪みが全面に見られ使用に耐えない
(7)粒子Aの粒度分布
粒度分布値粒径は日立製作所製のS3500走査型電子顕微鏡(倍率800倍)による写真法で塗布層表面に露出する粒子を測定し、等価球に換算した。粒度分布は約500個の粒子の粒径を測定し、小粒子側から体積を積算した。総体積に対し、積算割合が25%時の粒径をd25とし、積算割合が75%時の粒径をd75としてその比(d75/d25)の値で粒度分布のシャープさを示した。この値が1に近いほどシャープである。なお、粒子Bが共存する場合は、粒子径が大きい粒子集団を母集団として上記方法により計測した。
(8)粒子の平均粒径
粒子の平均粒径は上記の粒度分布と同様の方法で求め、総体積に対し、積算割合が50%時の粒径d50として表した。なお、粒子Bが共存する場合は、粒子径が大きい粒子集団を母集団と粒子径が小さい母集団に分け、粒子径が大きい粒子の粒子径を粒子A、小さいほうの粒子径を粒子Bとして上記方法により計測した。
(9)摩擦評価(μs・μd)
得られたフィルムから8cm×5cmの面積に切り出し、試料フィルムを作成した。これを大きさ6cm×5cmの底面を有する重さ4.4kgの金属製直方体底面に塗布層面が内側になるように固定した。この時、試料フィルムの5cm幅方向と金属直方体の5cm幅方向を合わせ、試料フィルムの長手方向の一辺を折り曲げ、金属直方体の側面に粘着テープで固定した。
次いで、同じ基材フィルムから20cm×10cmの面積に試料フィルムを切り出し、平らな金属板に易接着面を上にして長手方向端部を粘着テープで固定した。この上に試料フィルムを貼り付けた金属製直方体の測定面を接するように置き、引張りスピード200mm/分、23℃、65RH条件下で静摩擦係数(μs)および動摩擦係数(μd)を測定した。測定には東洋BALDWIN社製、RTM−100を用い、静摩擦係数(μs)および動摩擦係数(μd)はJIS−7125に準拠して算出した。
(10)空気抜け指数
図1に示すように、台盤1の上にフィルム4を反塗布層面を上にして載せる。次いで、フィルム押え2をフィルム4の上から載せ、固定することによって張力を与えながらフィルム4を固定する。次いで、フィルム押え2の上に、フィルム5を塗布層面を下にして載せる。次いでフィルム5の上にフィルム押え8を載せ、更にネジ3を用いてフィルム押え8,2および台盤1を固定する。次に、フィルム押え2に設けられた空洞2aと真空ポンプ6とを、フィルム押え2に設けられた細孔2cおよびパイプ7を介して接続する。そして、真空ポンプ6を駆動すると、フィルム5には、空洞2aに吸い付けられることによって張力が加わる。また、同時にフィルム4とフィルム5の重なり合った面もフィルム押え2に円周状に設けられた細孔2dを介して減圧され、フィルム4とフィルム5はその重なり合った面において、外周部から密着し始める。密着する様子は、重なり合った面の上部から干渉縞を観察することによって容易に知ることができる。そして、フィルム4とフィルム5の重合面の外周部に干渉縞が生じてから重なり合った面の前面に干渉縞が拡がり、その動きが止まるまでの時間(秒)を測定し、この時間(秒)をもって空気抜け指数とする。なお、測定は2枚のフィルムを取り替えて5回繰り返し行い、その平均値を空気抜け指数として算出する。空気抜け指数の値が小さいほど、つまり時間(秒)が短いほどフィルムの巻き特性は良好となる。
下記の基準で巻き性を評価した。
◎:空気抜け指数50秒未満
○:空気抜け指数50秒以上200秒以下
△:空気抜け指数200秒以上350秒以下
×:空気抜け指数350秒以上
(11)成型性
(6)で得られた金属蒸着層を有するフィルムの反蒸着層にポリウレタン樹脂(タケネートA−975、三井化学社)を塗布して接着層を設けた。金属蒸着面を厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート製セパレートフィルムで保護し、反蒸着面側を厚さ100μmのアクリルフィルムと積層し、100〜140℃に加熱した熱板で4秒間接触加熱後、金型温度30〜70℃、保圧時間5秒にてプレス成型を行った。金型の形状はカップ型で、開口部は直径が50mmであり、底面部は直径が40mmで、深さが20mmであり、全てのコーナーは直径0.5mmの湾曲をつけたものを用いた。得られた成型品を下記基準により評価した。
◎:角立ちがよく、シワや写像歪みの外観欠点がなく、金属調の高光沢感を奏する。
○:シワが一部で認められるものの、写像歪みがなく、金属調の高光沢感を奏する。
△:シワやオ写像歪みが一部で認められる。
×:シワもしくは写像歪みが全面に認められるあるいは、成型品に破れが認められる。
実施例1
(共重合ポリエステル樹脂の調製)
常法によりエステル交換反応および重縮合反応を行って、ジカルボン酸成分として(ジカルボン酸成分全体に対して)テレフタル酸46モル%、イソフタル酸46モル%および5−スルホナトイソフタル酸ナトリウム8モル%、グリコール成分として(グリコール成分全体に対して)エチレングリコール50モル%およびネオペンチルグリコール50モル%の組成の水分散性スルホン酸金属塩基含有共重合ポリエステル樹脂(a1)を調製した。
(塗布液Aの調製)
上記で得られた共重合ポリエステル樹脂(a1)、および共重合ポリエステル樹脂100質量部に対してメラミン化合物(DIC社製 ベッカミンM−3 固形分濃度60%)が20質量部になるように混合し、全樹脂固形分濃度が2.8質量%、粒子として平均粒径0.04μmのポリメタクリル酸メチル粒子を全樹脂に対し1.0質量%含有するように、水/イソプルピルアルコールの混合溶媒(=65/35;質量比)で希釈して水系塗布剤とした。
(フィルム原料の製造)
芳香族ジカルボン酸成分としてテレフタル酸単位100モル%、ジオール成分としてエチレングリコール単位40モル%及びネオペンチルグリコール単位60モル%を構成成分とする、固有粘度が0.69dl/gの共重合ポリエステルのチップ(A)と、固有粘度が0.69dl/gポリエチレンテレフタレートのチップ(B)をそれぞれ乾燥させた。さらに、チップ(A)とチップ(B)を25:75の質量比となるように混合した。
(積層フィルムの製造)
次いで、これらのチップ混合物を押出し機によりTダイのスリットから270℃で溶融押出し、表面温度40℃のチルロール上で急冷固化させ、同時に静電印加法を用いてチルロールに密着させながら無定形の未延伸シートを得た。
得られた未延伸シートを加熱ロールと冷却ロールの間で縦方向に90℃で3.3倍に延伸した。
続いて、得られた一軸延伸フィルムに上記に示す水系塗布液Aをロールコート法でフィルムの片面に塗布し、130℃で3秒間乾燥し水分を除去した。
その後、連続的に端部をクリップで把持しながらテンターに導き、100℃の設定で加熱して3.8倍に横延伸し、幅固定しながら230℃で5秒間の熱処理を施し、更に205℃で幅方向に5%緩和させることにより、フィルム厚みが25μmで塗布層の塗布厚みが0.05μmの成型用ポリエステルフィルムを得た。
得られた成型用ポリエステルフィルムの評価結果を表1に示す。
(塗布液Bの調製)
上記で得られた共重合ポリエステル樹脂(a1)、および共重合ポリエステル樹脂100質量部に対してメラミン化合物(DIC社製 ベッカミンM−3 固形分濃度60%)が20質量部になるように混合し、全樹脂固形分濃度が2.8質量%、粒子として平均粒径0.06μmのシリカ粒子を全樹脂に対して1.0質量%含有するように、水/イソプルピルアルコールの混合溶媒(=65/35;質量比)で希釈して水系塗布剤とした。
実施例2
実施例1において、塗布液Aを塗布液Bに代えたこと以外は実施例1と同様にして、フィルム厚みが25μmで塗布層の塗布厚みが0.05μmの成型用ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性と評価結果を表1に示す。
(塗布液Cの調製)
上記で得られた共重合ポリエステル樹脂(a1)、および共重合ポリエステル樹脂100質量部に対してメラミン化合物(DIC社製 ベッカミンM−3 固形分濃度60%)が20質量部になるように混合し、全樹脂固形分濃度が2.8質量%および平均粒径0.13μmのシリカ粒子を全樹脂に対して1.0質量%、平均粒径0.06μmのシリカ粒子を全樹脂に対して7.3質量%含有するように、水/イソプルピルアルコールの混合溶媒(=65/35;質量比)で希釈して水系塗布剤とした。
実施例3
実施例1において塗布液Aを塗布液Cに代えたこと以外は実施例1と同様にして、フィルム厚みが25μmで塗布層の塗布厚みが0.05μmの成型用ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性と評価結果を表1に示す。
(塗布液Dの調製)
上記で得られた共重合ポリエステル樹脂(a1)、および共重合ポリエステル樹脂100質量部に対してメラミン化合物(DIC社製 ベッカミンM−3 固形分濃度60%)が20質量部になるように混合し、全樹脂固形分濃度が2.8質量%および平均粒径0.83μmのスチレン・ジビニルベンゼン架橋粒子を全樹脂に対して0.02質量%、平均粒径0.06μmのシリカ粒子を全樹脂に対して7.3質量%含有するように、水/イソプルピルアルコールの混合溶媒(=65/35;質量比)で希釈して水系塗布剤とした。
実施例4
実施例1において、塗布液Aを塗布液Dに代えたこと以外は実施例1と同様にして、フィルム厚みが25μmで塗布層の塗布厚みが0.05μmの成型用ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性と評価結果を表1に示す。
(塗布液Eの調製)
上記で得られた共重合ポリエステル樹脂(a1)、および共重合ポリエステル樹脂100質量部に対してメラミン化合物(DIC社製 ベッカミンM−3 固形分濃度60%)が20質量部になるように混合し、全樹脂固形分濃度が2.8質量%および平均粒径0.83μmのスチレン・ジビニルベンゼン架橋粒子を全樹脂に対して0.05質量%、平均粒径0.06μmのシリカ粒子を全樹脂に対して7.3質量%含有するように、水/イソプルピルアルコールの混合溶媒(=65/35;質量比)で希釈して水系塗布剤とした。
実施例5
実施例1において、塗布液Aを塗布液Eに代えたこと以外は実施例1と同様にして、フィルム厚みが25μmで塗布層の塗布厚みが0.05μmの成型用ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性と評価結果を表1に示す。
(塗布液Fの調製)
上記で得られた共重合ポリエステル樹脂(a1)、および共重合ポリエステル樹脂100質量部に対してメラミン化合物(DIC社製 ベッカミンM−3 固形分濃度60%)が20質量部になるように混合し、全樹脂固形分濃度が0.56質量%および平均粒径0.83μmのスチレン・ジビニルベンゼン架橋粒子を全樹脂に対して1.0質量%、平均粒径0.06μmのシリカ粒子を全樹脂に対して7.3質量%含有するように、水/イソプルピルアルコールの混合溶媒(=65/35;質量比)で希釈して水系塗布剤とした。
実施例6
実施例1において、塗布液Aを塗布液Fに代えたこと以外は実施例1と同様にして、フィルム厚みが25μmで塗布層の塗布厚みが0.01μmの成型用ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性と評価結果を表1に示す。
(塗布液Gの調製)
上記で得られた共重合ポリエステル樹脂(a1)、および共重合ポリエステル樹脂100質量部に対してメラミン化合物(DIC社製 ベッカミンM−3 固形分濃度60%)が20質量部になるように混合し、全樹脂固形分濃度が1.12質量%および平均粒径0.83μmのスチレン・ジビニルベンゼン架橋粒子を全樹脂に対して1.0質量%、平均粒径0.06μmのシリカ粒子を全樹脂に対して7.3質量%含有するように、水/イソプルピルアルコールの混合溶媒(=65/35;質量比)で希釈して水系塗布剤とした。
実施例7
実施例1において、塗布液Aを塗布液Gに代えたこと以外は実施例1と同様にして、フィルム厚みが25μmで塗布層の塗布厚みが0.02μmの成型用ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性と評価結果を表1に示す。
(塗布液Hの調製)
上記で得られた共重合ポリエステル樹脂(a1)、および共重合ポリエステル樹脂100質量部に対してメラミン化合物(DIC社製 ベッカミンM−3 固形分濃度60%)が20質量部になるように混合し、全樹脂固形分濃度が2.8質量%および平均粒径0.83μmのスチレン・ジビニルベンゼン架橋粒子を全樹脂に対して1.0質量%、平均粒径0.06μmのシリカ粒子を全樹脂に対して7.3質量%含有するように、水/イソプルピルアルコールの混合溶媒(=65/35;質量比)で希釈して水系塗布剤とした。
実施例8
実施例1において、塗布液Aを塗布液Hに代えたこと以外は実施例1と同様にして、フィルム厚みが25μmで塗布層の塗布厚みが0.05mの成型用ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性と評価結果を表1に示す。
(塗布液Iの調製)
上記で得られた共重合ポリエステル樹脂(a1)、および共重合ポリエステル樹脂100質量部に対してメラミン化合物(DIC社製 ベッカミンM−3 固形分濃度60%)が20質量部になるように混合し、全樹脂固形分濃度が5.04質量%および平均粒径0.83μmのスチレン・ジビニルベンゼン架橋粒子を全樹脂に対して1.0質量%、平均粒径0.06μmのシリカ粒子を全樹脂に対して7.3質量%含有するように、水/イソプルピルアルコールの混合溶媒(=65/35;質量比)で希釈して水系塗布剤とした。
実施例9
実施例1において、塗布液Aを塗布液Iに代えたこと以外は実施例1と同様にして、フィルム厚みが25μmで塗布層の塗布厚みが0.09μmの成型用ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性と評価結果を表1に示す。
(塗布液Jの調製)
上記で得られた共重合ポリエステル樹脂(a1)、および共重合ポリエステル樹脂100質量部に対してメラミン化合物(DIC社製 ベッカミンM−3 固形分濃度60%)が20質量部になるように混合し、全樹脂固形分濃度が5.60質量%および平均粒径0.83μmのスチレン・ジビニルベンゼン架橋粒子を全樹脂に対して1.0質量%、平均粒径0.06μmのシリカ粒子を全樹脂に対して7.3質量%含有するように、水/イソプルピルアルコールの混合溶媒(=65/35;質量比)で希釈して水系塗布剤とした。
実施例10
実施例1において、塗布液Aを塗布液Jに代えたこと以外は実施例1と同様にして、フィルム厚みが25μmで塗布層の塗布厚みが0.10μmの成型用ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性と評価結果を表1に示す。
(塗布液Kの調製)
上記で得られた共重合ポリエステル樹脂(a1)、および共重合ポリエステル樹脂100質量部に対してメラミン化合物(DIC社製 ベッカミンM−3 固形分濃度60%)が20質量部になるように混合し、全樹脂固形分濃度が2.8質量%および平均粒径0.83μmのスチレン・ジビニルベンゼン架橋粒子を全樹脂に対して3.0質量%、平均粒径0.06μmのシリカ粒子を全樹脂に対して7.3質量%含有するように、水/イソプルピルアルコールの混合溶媒(=65/35;質量比)で希釈して水系塗布剤とした。
実施例11
実施例1において、塗布液Aを塗布液Kに代えたこと以外は実施例1と同様にして、フィルム厚みが25μmで塗布層の塗布厚みが0.05μmの成型用ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性と評価結果を表1に示す。
(塗布液Lの調製)
上記で得られた共重合ポリエステル樹脂(a1)、および共重合ポリエステル樹脂100質量部に対してメラミン化合物(DIC社製 ベッカミンM−3 固形分濃度60%)が20質量部になるように混合し、全樹脂固形分濃度が2.8質量%および平均粒径0.83μmのスチレン・ジビニルベンゼン架橋粒子を全樹脂に対して5.0質量%、平均粒径0.06μmのシリカ粒子を全樹脂に対して7.3質量%含有するように、水/イソプルピルアルコールの混合溶媒(=65/35;質量比)で希釈して水系塗布剤とした。
実施例12
実施例1において、塗布液Aを塗布液Kに代えたこと以外は実施例1と同様にして、フィルム厚みが25μmで塗布層の塗布厚みが0.05μmの成型用ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性と評価結果を表1に示す。
(塗布液Mの調製)
上記で得られた共重合ポリエステル樹脂(a1)、および共重合ポリエステル樹脂100質量部に対してメラミン化合物(DIC社製 ベッカミンM−3 固形分濃度60%)が20質量部になるように混合し、全樹脂固形分濃度が2.8質量%および平均粒径0.47μmのスチレン・ジビニルベンゼン架橋粒子を全樹脂に対して1.0質量%、平均粒径0.06μmのシリカ粒子を全樹脂に対して7.3質量%含有するように、水/イソプルピルアルコールの混合溶媒(=65/35;質量比)で希釈して水系塗布剤とした。
実施例13
実施例1において、塗布液Aを塗布液Mに代えたこと以外は実施例1と同様にして、フィルム厚みが25μmで塗布層の塗布厚みが0.05μmの成型用ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性と評価結果を表1に示す。
実施例14
実施例1において、塗布液Aを塗布液Mに代えたこと以外は実施例1と同様にして、製膜後のフィルム厚みが75μmで塗布層の塗布厚みが0.05μmの成型用ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性と評価結果を表1に示す。
実施例15
実施例1において、塗布液Aを塗布液Mに代えたこと以外は実施例1と同様にして、製膜後のフィルム厚みが20μmで塗布層の塗布厚みが0.05μmの成型用ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性と評価結果を表1に示す。
(塗布液Nの調製)
上記で得られた共重合ポリエステル樹脂(a1)、および共重合ポリエステル樹脂100質量部に対してメラミン化合物(DIC社製 ベッカミンM−3 固形分濃度60%)が20質量部になるように混合し、全樹脂固形分濃度が2.8質量%および平均粒径1.12μmのシリカ粒子を全樹脂に対して1.7質量%、平均粒径0.06μmのシリカ粒子を全樹脂に対して7.3質量%含有するように、水/イソプルピルアルコールの混合溶媒(=65/35;質量比)で希釈して水系塗布剤とした。
実施例16
実施例1において、塗布液Aを塗布液Nに代えたこと以外は実施例1と同様にして、フィルム厚みが25μmで塗布層の塗布厚みが0.05μmの成型用ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性と評価結果を表1に示す。
(塗布液Oの調製)
上記で得られた共重合ポリエステル樹脂(a1)、および共重合ポリエステル樹脂100質量部に対してメラミン化合物(DIC社製 ベッカミンM−3 固形分濃度60%)が20質量部になるように混合し、全樹脂固形分濃度が2.8質量%および平均粒径1.86μmのベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド架橋粒子を全樹脂に対して1.0質量%、平均粒径0.06μmのシリカ粒子を全樹脂に対して7.3質量%含有するように、水/イソプルピルアルコールの混合溶媒(=65/35;質量比)で希釈して水系塗布剤とした。
比較例1
実施例1において、塗布液Aを塗布液Oに代えたこと以外は実施例1と同様にして、フィルム厚みが25μmで塗布層の塗布厚みが0.05μmの成型用ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性と評価結果を表1に示す。
(塗布液Pの調製)
上記で得られた共重合ポリエステル樹脂(a1)、および共重合ポリエステル樹脂100質量部に対してメラミン化合物(DIC社製 ベッカミンM−3 固形分濃度60%)が20質量部になるように混合し、全樹脂固形分濃度が2.8質量%および平均粒径0.9μmのメラミン・ホルムアルデヒド架橋粒子を全樹脂に対して1.0質量%、平均粒径0.06μmのシリカ粒子を全樹脂に対して7.3質量%含有するように、水/イソプルピルアルコールの混合溶媒(=65/35;質量比)で希釈して水系塗布剤とした。
比較例2
実施例1において、塗布液Aを塗布液Pに代えたこと以外は実施例1と同様にして、フィルム厚みが25μmで塗布層の塗布厚みが0.05μmの成型用ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性と評価結果を表1に示す。
(塗布液Qの調製)
上記で得られた共重合ポリエステル樹脂(a1)、および共重合ポリエステル樹脂100質量部に対してメラミン化合物(DIC社製 ベッカミンM−3 固形分濃度60%)が20質量部になるように混合し、全樹脂固形分濃度が2.8質量%および平均粒径1.58μmのシリカ粒子を全樹脂に対して1.0質量%、平均粒径0.06μmのシリカ粒子を全樹脂に対して7.3質量%含有するように、水/イソプルピルアルコールの混合溶媒(=65/35;質量比)で希釈して水系塗布剤とした。
比較例3
実施例1において、塗布液Aを塗布液Qに代えたこと以外は実施例1と同様にして、フィルム厚みが25μmで塗布層の塗布厚みが0.05μmの成型用ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性と評価結果を表1に示す。
(塗布液Rの調製)
ウレタン樹脂(三井化学社製:商品名 タケラックW511)、およびウレタン樹脂100質量部に対してメラミン化合物(DIC社製 ベッカミンM−3 固形分濃度60%)が20質量部になるように混合し、全樹脂固形分濃度が2.8質量%および平均粒径0.83μmのスチレン・ジビニルベンゼン架橋粒子を全樹脂に対して1.0質量%、平均粒径0.06μmのシリカ粒子を全樹脂に対して7.3質量%含有するように、水/イソプルピルアルコールの混合溶媒(=65/35;質量比)で希釈して水系塗布剤とした。
実施例17
実施例1において、塗布液Aを塗布液Rに代えたこと以外は実施例1と同様にして、フィルム厚みが25μmで易接着層の塗布厚みが0.05μmの成型用ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性と評価結果を表1に示す。
(塗布液Sの調製)
水分散性アクリル樹脂(日本触媒化学社製:商品名 アクリセット270E)、およびアクリル樹脂100質量部に対してメラミン化合物(DIC社製 ベッカミンM−3 固形分濃度60%)が20質量部になるように混合し、全樹脂固形分濃度が2.8質量%および平均粒径0.83μmのスチレン・ジビニルベンゼン架橋粒子を全樹脂に対して1.0質量%、平均粒径0.06μmのシリカ粒子を全樹脂に対して7.3質量%含有するように、水/イソプルピルアルコールの混合溶媒(=65/35;質量比)で希釈して水系塗布剤とした。
実施例18
実施例1において、塗布液Aを塗布液Sに代えたこと以外は実施例1と同様にして、フィルム厚みが25μmで易接着層の塗布厚みが0.05μmの成型用ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性と評価結果を表1に示す。
(塗布液Tの調製)
上記で得られた共重合ポリエステル樹脂(a1)、および共重合ポリエステル樹脂100質量部に対してブロックイソシアネート化合物が20質量部になるように混合し、全樹脂固形分濃度が2.8質量%および平均粒径0.83μmのスチレン・ジビニルベンゼン架橋粒子を全樹脂に対して1.0質量%、平均粒径0.06μmのシリカ粒子を全樹脂に対して7.3質量%含有するように、水/イソプルピルアルコールの混合溶媒(=65/35;質量比)で希釈して水系塗布剤とした。
実施例19
実施例1において、塗布液Aを塗布液Tに代えたこと以外は実施例1と同様にして、フィルム厚みが25μmで易接着層の塗布厚みが0.05μmの成型用ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性と評価結果を表1に示す。
実施例20
フィルム原料として固有粘度0.69dl/gのポリエチレンテレフタレートのチップ(B)のみを用いた以外は実施例4と同様にして、塗布層の塗布厚みが0.05nmの積層ポリエステルフィルムを得た。得られた単層フィルムの特性と評価結果を表1に示す。
本発明の成型用ポリエステルフィルムは、面感に優れた鏡面状の加飾層を形成するに適している。そのため、自動車用の内装や外装の加飾材、家電メンブレンスイッチ、携帯電話用基材、建材用部材などの加飾用成型部材において、成型基材と同時一体成型することでメッキ代替処理方法において好適である。
1.台盤
2, 8.フィルム押さえ
2a.溝孔
2c.孔
2d.細孔
3.ネジ
4, 5.フィルム
6.真空ポンプ
7.パイプ
X.フィルム重なり部

Claims (6)

  1. ポリエステルフィルムの少なくとも片面に塗布層を有し、
    前記塗布層はバインダー樹脂と少なくとも1種類の粒子を含み、
    該粒子の粒度分布(d75/d25)が1.1〜1.5、平均粒径dが0.04〜1.2μm、
    該粒子の平均粒径dと塗布層の厚みtとの比(d/t)が以上100以下である成型用ポリエステルフィルム。
  2. 前記バインダー樹脂がポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂のいずれかである請求項1記載の成型用ポリエステルフィルム。
  3. 前記塗布層に前記粒子を0.01〜3質量%含有し、
    前記フィルムのヘイズが2.0%以下、静摩擦係数が0.9以下、動摩擦係数が0.8以下である請求項1または2に記載の成型用ポリエステルフィルム。
  4. フィルムの厚みが15〜80μm以下である請求項1〜3のいずれかに記載の成型用ポリエステルフィルム。
  5. 前記フィルム表面におけるウェーブスキャン装置を用いて測定した波長0.1mm〜0.3mm領域の反射強度(Wa)が4.0以下である請求項1〜4のいずれかに記載の成型用ポリエステルフィルム。
    ここで、ウェーブスキャン装置を用いた反射強度(Wa)の測定方法は以下である。
    得られた約100m長さのフィルムについてフィルムロール状に巻き取り、室温で約12時間静置した後、フィルムを切り出し、塗布層面と反対面に黒色シート(GAボードFSブラック26)を敷き、フィルムの塗布層面をウェーブスキャン(BYK Gardner社製)を用いて測定した。表示される波長0.1−0.3mm領域の反射強度Waの値で評価した。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の成型用ポリエステルフィルムの一方の面に金属蒸着層を設けたのち、基材と一体成型すること特徴とするメッキ代替加工方法。
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