JP2021063022A - 多環芳香族化合物 - Google Patents

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Abstract

【課題】有機電界発光素子などの有機デバイスのための新規化合物の提供。【解決手段】式(1)で表される多環芳香族化合物又は式(1)で表される構造を複数有する多環芳香族化合物の多量体である、錯体。(A環はヘテロアリール環;B環およびC環はアリール環又はヘテロアリール環;Yは、配位子で配位されている金属もしくは半金属;X1、X2及びX3はN−R(Rはアリール等、A環、B環および/またはC環と結合していてもよい)等;ZはC又はN)【選択図】なし

Description

本発明は、多環芳香族化合物に関する。本発明は特に、窒素と金属または半金属との配位結合を含む錯体である多環芳香族化合物、およびこの錯体を製造するための原料となる多環芳香族化合物に関する。本発明はまた、上記錯体を含む有機デバイス用材料、有機電界発光素子、並びに、表示装置および照明装置に関する。
従来、電界発光する発光素子を用いた表示装置は、省電力化や薄型化が可能なことから、種々研究され、さらに、有機材料から成る有機電界発光素子は、軽量化や大型化が容易なことから活発に検討されてきた。特に、光の三原色の一つである青色などの発光特性を有する有機材料の開発、および正孔、電子などの電荷輸送能(半導体や超電導体となる可能性を有する)を備えた有機材料の開発については、高分子化合物、低分子化合物を問わずこれまで活発に研究されてきた。
有機電界発光素子は、陽極および陰極からなる一対の電極と、当該一対の電極間に配置され、有機化合物を含む一層または複数の層とからなる構造を有する。有機化合物を含む層には、発光層や、正孔、電子などの電荷を輸送または注入する電荷輸送/注入層などがあるが、これらの層に適当な種々の有機材料が開発されている。
その中で、特許文献1、2では、芳香環をホウ素、リン、酸素、窒素、硫黄などのヘテロ元素で連結した多環芳香族化合物が、有機電界発光素子等の材料として有用であることが開示されている。この多環芳香族化合物は、大きなHOMO−LUMOギャップおよび高い三重項励起エネルギー(ET)を有するとともに、熱活性型遅延蛍光を示すため、特に有機電界発光素子の蛍光材料として有用であることが報告されている。
国際公開第2015/102118号 特開2018−43984号公報
上述するように、特許文献1、2に記載の多環芳香族化合物は有機電界発光素子の蛍光材料として有用であるが、有機電界発光素子などの有機デバイスのための材料の選択肢を増やすために、従来とは異なる化合物からなる材料の開発が望まれている。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討し、半金属原子やイリジウムのような金属原子が多環芳香族化合物上の窒素原子に配位結合した新規多環芳香族化合物の製造に成功し、さらに検討を重ねて本発明を完成させた。すなわち、本発明は、以下のような多環芳香族化合物またはその多量体、さらにはこれらのいずれかを含む有機デバイス用材料等を提供する。
[1]下記式(1)で表される多環芳香族化合物または下記式(1)で表される構造を複数有する多環芳香族化合物の多量体である、錯体。
Figure 2021063022
(式(1)中、
A環は少なくとも1つの窒素原子を持つヘテロアリール環であり、B環およびC環はそれぞれ独立して、アリール環またはヘテロアリール環であり、A環、B環およびC環それぞれにおけるアリール環またはヘテロアリール環の少なくとも1つの水素は置換されていてもよく、
Yは、配位子で配位されている周期表第3〜11族の金属、配位子で配位されている周期表第13〜14族の金属もしくは半金属または配位子で配位されている周期表第15〜16族の半金属を示し、
1、X2およびX3は、それぞれ独立して、O、N−Rであり、ただし、前記N−RのRはアルキル、シクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり、前記N−RのRは連結基または単結合により前記A環、B環および/またはC環と結合していてもよく、
Zは炭素原子または窒素原子であり、
式(1)で表される化合物または構造における少なくとも1つの水素はシアノ、ハロゲンまたは重水素で置換されていてもよい。)
[2]下記式(1’)で表される多環芳香族化合物または下記式(1’)で表される構造を複数有する多環芳香族化合物の多量体である、[1]に記載の錯体。
Figure 2021063022
(式(1’)中、Zaはそれぞれ独立して、C−RaまたはNを表すか、または同じ環で隣接する2つのZaはそれぞれそれらの間の結合と一緒になってN−Ra、O、SまたはSeを示し
aはそれぞれ独立して、置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリール、置換もしくは無置換のジアリールアミノ、置換もしくは無置換のジヘテロアリールアミノ、置換もしくは無置換のアリールヘテロアリールアミノ、置換もしくは無置換のジアリールボリル(2つのアリールは単結合もしくは連結基を介して結合していてもよい)、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のシクロアルキル、置換もしくは無置換のアルコキシ、置換もしくは無置換のアリールオキシ、または置換または無置換のシリルであり、同じ環で隣接する2つのZaに置換するRaは互いに結合してアリール環、ヘテロアリール環、またはシクロアルキル環を形成してもよく、形成された環における少なくとも1つの水素は、ジアリールアミノまたはジアリールボリル(2つのアリールは単結合または連結基を介して結合していてもよい)で置換されていてもよく、
Yは、配位子で配位されている周期表第3〜11族の金属、配位子で配位されている周期表第13〜14族の金属もしくは半金属、または配位子で配位されている周期表第15〜16族の半金属を示し、
1、X2およびX3は、それぞれ独立して、O、N−Rであり、ただし、前記N−RのRはアルキル、シクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり、前記N−RのRは連結基または単結合により前記A環、B環および/またはC環と結合していてもよく、
Zは炭素原子または窒素原子であり、
式(1’)で表される化合物または構造における少なくとも1つの水素はシアノ、ハロゲンまたは重水素で置換されていてもよい。)
[3]Raはそれぞれ独立して、水素、炭素数6〜30のアリール、炭素数2〜30のヘテロアリール、ジアリールアミノ(ただし、各アリールは炭素数6〜12のアリール)またはジアリールボリル(ただし、各アリールは炭素数6〜12のアリールであり、2つのアリールは単結合または連結基を介して結合していてもよい)であり、また、同じ環で隣接する2つのZaに置換するRaは互いに結合してa環、b環またはc環と共に炭素数9〜16のアリール環または炭素数6〜15のヘテロアリール環を形成していてもよく、形成された環における少なくとも1つの水素は、ジアリールアミノ(ただし、各アリールは炭素数6〜12のアリール)またはジアリールボリル(ただし、各アリールは炭素数6〜12のアリールであり、2つのアリールは単結合または連結基を介して結合していてもよい)で置換されていてもよい、[2]に記載の錯体。
[4]Yが、M−Rxであり、Mがホウ素またはイリジウムであり、Rxがアリール、ヘテロアリール、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、ハロゲン、シアノ、シクロペンタジエニルまたはスルホナートである[1]〜[3]のいずれかに記載の錯体。
[5]下記いずれかの式で表される[1]に記載の錯体。
Figure 2021063022
(式中、Phはフェニル、OTfはトルフルオロメタンスルホナート、Cp*はペンタメチルシクロペンタジエニルである。)
[6]下記式(11)で表される多環芳香族化合物、または下記式(11)で表される構造を複数有する多環芳香族化合物の多量体を含む、金属または半金属の錯体の製造原料。
Figure 2021063022
(式(1)中、
A環は少なくとも1つの窒素原子を持つヘテロアリール環であり、B環およびC環はそれぞれ独立して、アリール環またはヘテロアリール環であり、A環、B環およびC環それぞれにおけるアリール環またはヘテロアリール環の少なくとも1つの水素は置換されていてもよく、
1、X2およびX3は、それぞれ独立して、O、N−Rであり、ただし、前記N−RのRはアルキル、シクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり、前記N−RのRは連結基または単結合により前記A環、B環および/またはC環と結合していてもよく、
XはC−HまたはNであり、
式(11)で表される化合物または構造における少なくとも1つの水素はシアノ、ハロゲンまたは重水素で置換されていてもよい。)
[7]式(11)で表される多環芳香族化合物、または下記式(11)で表される構造を複数有する多環芳香族化合物の多量体が、下記式(11’)で表される多環芳香族化合物、または下記式(11’)で表される構造を複数有する多環芳香族化合物の多量体である[6]に記載の製造原料。
Figure 2021063022
(式(11’)中、Zaはそれぞれ独立して、C−RaまたはNを表すか、または同じ環で隣接する2つのZaはそれぞれそれらの間の結合と一緒になってN−Ra、O、SまたはSeを示し
aはそれぞれ独立して置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリール、置換もしくは無置換のジアリールアミノ、置換もしくは無置換のジヘテロアリールアミノ、置換もしくは無置換のアリールヘテロアリールアミノ、置換もしくは無置換のジアリールボリル(2つのアリールは単結合または連結基を介して結合していてもよい)、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のシクロアルキル、置換もしくは無置換のアルコキシ、置換もしくは無置換のアリールオキシ、または置換もしくは無置換のシリルであり、同じ環で隣接する2つのZaに置換するRaは互い結合してアリール環、ヘテロアリール環、またはシクロアルキル環を形成してもよく、形成された環における少なくとも1つの水素は、ジアリールアミノまたはジアリールボリル(2つのアリールは単結合または連結基を介して結合していてもよい)で置換されていてもよく、
1、X2およびX3は、それぞれ独立して、O、N−Rであり、ただし、前記N−RのRはアルキル、シクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールであり、前記N−RのRは連結基または単結合により前記A環、B環および/またはC環と結合していてもよく、
XはC−HまたはNであり、
式(11’)で表される化合物または構造における少なくとも1つの水素はシアノ、ハロゲンまたは重水素で置換されていてもよい。)
[8]式(11’)中、
aはそれぞれ独立して、水素、炭素数6〜30のアリール、炭素数2〜30のヘテロアリール、ジアリールアミノ(ただし、各アリールは炭素数6〜12のアリール)またはジアリールボリル(ただし、各アリールは炭素数6〜12のアリールであり、2つのアリールは単結合または連結基を介して結合していてもよい)であり、また、同じ環で隣接する2つのZaに置換するRaは互いに結合してa環、b環またはc環と共に炭素数9〜16のアリール環または炭素数6〜15のヘテロアリール環を形成していてもよく、形成された環における少なくとも1つの水素は、ジアリールアミノ(ただし、各アリールは炭素数6〜12のアリール)またはジアリールボリル(ただし、各アリールは炭素数6〜12のアリールであり、2つのアリールは単結合または連結基を介して結合していてもよい)で置換されていてもよい、
[7]に記載の製造原料。
[9]前記錯体が[1]〜[5]のいずれかに記載の錯体である、[6]〜[8]のいずれかに記載の製造原料。
[10]式(11)で表される多環芳香族化合物または式(11)で表される構造を複数有する多環芳香族化合物の多量体のA環の窒素と、周期表第3〜11族の金属、周期表第13〜14族の金属もしくは半金属、または配位子で配位されている周期表第15〜16族の半金属との間に配位結合を形成することを含む、[6]〜[8]のいずれかに記載の製造原料を用いた錯体の製造方法。
[11]前記錯体が[1]〜[5]のいずれかに記載の錯体である、[10]に記載の製造方法。
[12][1]〜[5]のいずれかに記載の錯体を含有する、有機デバイス用材料。
[13]陽極および陰極からなる一対の電極と、該一対の電極間に配置され、[1]〜[5]のいずれかに記載の錯体を含有する発光層とを有する、有機電界発光素子。
[14]陽極および陰極からなる一対の電極と、該一対の電極間に配置された発光層と、前記陰極および前記発光層の間に配置され[1]〜[5]のいずれかに記載の錯体を含有する電子注入層および/または電子輸送層とを有する、有機電界発光素子。
[15]陽極および陰極からなる一対の電極と、該一対の電極間に配置された発光層と、前記陽極および前記発光層の間に配置され、[1]〜[5]のいずれかに記載の錯体を含有する正孔注入層および/または正孔輸送層とを有する、有機電界発光素子。
[16][13]〜[15]のいずれかに記載の有機電界発光素子を備えた表示装置。
[17][13]〜[15]のいずれかに記載の有機電界発光素子を備えた照明装置。
[18]下記式(11)で表される多環芳香族化合物、または下記式(11)で表される構造を複数有する多環芳香族化合物の多量体。
Figure 2021063022
(式(11)中、
A環は少なくとも1つの窒素原子を持つヘテロアリール環であり、B環およびC環はそれぞれ独立して、アリール環またはヘテロアリール環であり、A環、B環およびC環それぞれにおけるアリール環またはヘテロアリール環の少なくとも1つの水素は置換されていてもよく、
1、X2およびX3は、それぞれ独立して、O、N−Rであり、ただし前記N−RのRはアリールまたはヘテロアリールであり、
XはC−HまたはNであり、
式(11)で表される化合物または構造における少なくとも1つの水素はシアノ、ハロゲンまたは重水素で置換されていてもよい。)
[19]下記式(11’)で表される多環芳香族化合物、または下記式(11’)で表される構造を複数有する多環芳香族化合物の多量体。
Figure 2021063022
(式(11’)中、Zaはそれぞれ独立して、C−RaまたはNを表すか、または同じ環で隣接する2つのZaはそれぞれそれらの間の結合と一緒になってN−Ra,O、SまたはSeを示し
aはそれぞれ独立して、置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリール、置換もしくは無置換のジアリールアミノ、置換もしくは無置換のジヘテロアリールアミノ、置換もしくは無置換のアリールヘテロアリールアミノ、置換もしくは無置換のジアリールボリル(2つのアリールは単結合または連結基を介して結合していてもよい)、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のシクロアルキル、置換もしくは無置換のアルコキシ、置換もしくは無置換のアリールオキシ、または置換もしくは無置換のシリルであり、同じ環で隣接する2つのZaに置換するRaは互い結合してアリール環、ヘテロアリール環またはシクロアルキル環を形成していてもよく、形成された環における少なくとも1つの水素は、ジアリールアミノまたはジアリールボリル(2つのアリールは単結合または連結基を介して結合していてもよい)で置換されていてもよく、
1、X2およびX3は、それぞれ独立して、O、N−Rであり、ただし、前記N−RのRはアルキル、シクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールであり、
XはC−HまたはNであり、
式(11’)で表される化合物または構造における少なくとも1つの水素はシアノ、ハロゲンまたは重水素で置換されていてもよい。)
[20]下記いずれかの式で表される多環芳香族化合物。
Figure 2021063022
本発明により、有機電界発光素子等の有機デバイス用材料として有用な新規多環芳香族化合物が提供される。本発明はまた、この新規化合物の製造に用いることができる材料を提供する。本発明の多環芳香族化合物は有機電界発光素子等の有機デバイスの製造に用いることができる。
有機電界発光素子の一例を示す概略断面図である。
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は「〜」前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。また、本明細書において構造式の説明における「水素」は「水素原子(H)」を意味する。
本明細書において、有機電界発光素子を有機EL素子ということがある。
本明細書において化学構造や置換基を炭素数で表すことがあるが、化学構造に置換基が置換した場合や、置換基にさらに置換基が置換した場合などにおける炭素数は、化学構造や置換基それぞれの炭素数を意味し、化学構造と置換基の合計の炭素数や、置換基と置換基の合計の炭素数を意味するものではない。例えば、「炭素数Xの置換基Aで置換された炭素数Yの置換基B」とは、「炭素数Yの置換基B」に「炭素数Xの置換基A」が置換することを意味し、炭素数Yは置換基Aおよび置換基Bの合計の炭素数ではない。また例えば、「置換基Aで置換された炭素数Yの置換基B」とは、「炭素数Yの置換基B」に「(炭素数限定がない)置換基A」が置換することを意味し、炭素数Yは置換基Aおよび置換基Bの合計の炭素数ではない。
1.多環芳香族化合物およびその多量体(錯体)
特許文献1および2においては、芳香環をホウ素、窒素、リン、酸素、硫黄などのヘテロ元素で連結した多環芳香族化合物が、大きなHOMO−LUMOギャップ(薄膜におけるバンドギャップEg)と高い三重項励起エネルギー(ET)を有することが見出されている。これは、ヘテロ元素を含む6員環は芳香族性が低いため、共役系の拡張に伴うHOMO−LUMOギャップの減少が抑制されること、ヘテロ元素の電子的な摂動により三重項励起状態(T1)のSOMO1およびSOMO2が局在化することが原因となっていると考えられる。また、特許文献1および2に記載のヘテロ元素を含有する多環芳香族化合物は、三重項励起状態(T1)におけるSOMO1およびSOMO2の局在化により、両軌道間の交換相互作用が小さくなるため、三重項励起状態(T1)と一重項励起状態(S1)のエネルギー差が小さく、熱活性型遅延蛍光を示すため、有機EL素子の蛍光材料としても有用である。また、高い三重項励起エネルギー(ET)を有する材料は、燐光有機EL素子や熱活性型遅延蛍光を利用した有機EL素子の電子輸送層や正孔輸送層としても有用である。更に、これらの多環芳香族化合物は、置換基の導入により、HOMOとLUMOのエネルギーを任意に動かすことができるため、イオン化ポテンシャルや電子親和力を周辺材料に応じて最適化することが可能である。
本発明においては、特許文献1および2に記載のヘテロ元素を含有する多環芳香族化合物に類似する構造を有する錯体である下記式(1)で表される多環芳香族化合物、または下記式(1)で表される構造を複数有する多環芳香族化合物の多量体を製造し、同様の性質を有することを見出した。
式(1)で表される構造を複数有する多環芳香族化合物の多量体は、好ましくは、下記式(1’)で表される多環芳香族化合物、または下記式(1’)で表される構造を複数有する多環芳香族化合物の多量体である。
Figure 2021063022
式(1)におけるA環、B環およびC環は、それぞれ独立して、アリール環またはヘテロアリール環であり、これらの環における少なくとも1つの水素は置換基で置換されていてもよい。この置換基は、置換または無置換のアリール、置換または無置換のヘテロアリール、置換または無置換のジアリールアミノ、置換または無置換のジヘテロアリールアミノ、置換または無置換のアリールヘテロアリールアミノ(アリールとヘテロアリールを有するアミノ基)、置換または無置換のアルキル、置換または無置換のシクロアルキル、置換または無置換のアルコキシ、置換または無置換のアリールオキシ、置換または無置換のアリールスルホニル、置換または無置換のジアリールホスフィン、置換または無置換のジアリールホスフィンオキシド、置換または無置換のジアリールホスフィンスルフィド、置換または無置換のシリル、または置換または無置換のジアリールボリルが好ましい。これらの基が置換基を有する場合の置換基としては、アリール、ヘテロアリールまたはアルキルがあげられる。
また、上記アリール環またはヘテロアリール環は、X1、X2、X3およびYを含んで構成される式(1)中央の縮合3環構造(以下、この構造を「D構造」とも言う)と結合を共有する5員環または6員環を有することが好ましい。
ここで、「縮合3環構造(D構造)」とは、式(1)の中央に示した、X1、X2、X3およびYを含んで構成される3つの環が連結した構造を意味する。また、「連結3環構造と結合を共有する6員環」とは、例えば、式(1’)で示すように前記D構造に縮合したa環(6員環)を意味する。また、「(A環である)アリール環またはヘテロアリール環がこの6員環を有する」とは、この6員環だけでA環が形成されるか、または、この6員環を含むようにこの6員環にさらに他の環などが縮合してA環が形成されることを意味する。言い換えれば、ここで言う「6員環を有する(A環である)アリール環またはヘテロアリール環」とは、A環の全部または一部を構成する6員環が、前記D構造に縮合していることを意味する。「B環(b環)」、「C環(c環)」、また「5員環」についても同様の説明が当てはまる。
式(1)および式(1’)におけるZは炭素原子または窒素原子である。また「C環(c環)」は、式(1)および式(1’)で表されるように必ず窒素原子を1つ含む。そのため「C環(c環)」はヘテロアリール環になる。
式(1)におけるA環(またはB環、C環)は、式(1’)におけるa環とその置換基Ra(またはb環とその置換基Ra、c環とその置換基Ra)に対応する。すなわち、式(1’)は、式(1)のA〜C環として「6員環を有するA〜C環」が選択された式に対応する。その意味で、式(1’)の各環を小文字のa〜cで表した。
aはそれぞれ独立してC−RaまたはNを表すか、または同じ環で隣接する2つのZaはそれぞれそれらの間の結合と一緒になってN−Ra,O、SまたはSeを示す。例えばc環において隣接するZa=ZaがN−Raである場合にはc環はピロール環になる。
式(1’)では、a環、b環およびc環の置換基Raのうちの隣接する基同士が結合してa環、b環またはc環と共にアリール環またはヘテロアリール環を形成していてもよく、形成された環における少なくとも1つの水素はアリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、アルコキシまたはアリールオキシで置換されていてもよく、これらにおける少なくとも1つの水素はアリール、ヘテロアリールまたはアルキルで置換されていてもよい。したがって、式(1’)で表される多環芳香族化合物は、a環、b環およびc環における置換基の相互の結合形態によって、下記式(1−1)および式(1−2)に示すように、化合物を構成する環構造が変化する。各式中のA'環、B'環およびC'環は、式(1)におけるそれぞれA環、B環およびC環に対応する。
Figure 2021063022
式(1−1)および式(1−2)中のA'環、B'環およびC'環は、式(1’)で説明すれば、置換基Raのうちの隣接する基同士が結合して、それぞれa環、b環およびc環と共に形成したアリール環、ヘテロアリール環またはシクロアルキル環を示す(a環、b環またはc環に他の環構造が縮合してできた縮合環ともいえる)。なお、式では示してはいないが、a環、b環およびc環の全てがA'環、B'環およびC'環に変化した化合物もある。また、式(1−1)および式(1−2)から分かるように、例えば、a環のRaとb環のRa、b環のRaとc環のRa、c環のRaとa環のRaなどは「隣接する基同士」には該当せず、これらが結合することはない。すなわち、「隣接する基」とは同一環上で隣接する基を意味する。
これらの化合物は、例えばa環(またはb環またはc環)に対してベンゼン環、インダン環(ジメチル置換体などを含む)、インドール環、ピロール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、シクロペンタン環またはシクロヘキサン環が縮合して形成されるA’環(またはB’環またはC’環)を有する化合物であり、形成されてできた縮合環A’(または縮合環B’または縮合環C’)はそれぞれナフタレン環、フルオレン環(ジメチル置換体などを含む)、カルバゾール環、インドール環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、ジヒドロインデン環またはテトラヒドロナフタレン環である。
式(1)におけるX1、X2およびX3は、それぞれ独立して、O、N−R、SまたはSeであり、前記N−RのRは置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキルであり、ここで、X1、X2およびX3のうちの少なくとも1つがN−Rであることが好ましく、少なくとも2つがN−Rであることがより好ましく、3つがN−Rであることがさらに好ましい。また、前記N−RのRは連結基または単結合により前記A環、B環および/またはC環と結合していてもよい。連結基としては、−O−、−S−、−C(−R)2−、>N−R、または、炭素数6〜30のアリーレンが好ましい。なお、前記「−C(−R)2−」のRは水素、アルキルまたはアリールである。また、前記「>N−R」のRはアルキルまたはアルキルで置換されていてもよいアリールである。この説明は式(1’)におけるX1、X2およびX3でも同じである。
ここで、式(1)における「N−RのRは連結基、単結合または縮合により前記A環、B環および/またはC環と結合している」との規定は、式(1’)では「N−RのRは−O−、−S−、−C(−R)2−、>N−R、炭素数6〜12のアリーレン、単結合または縮合により前記a環、b環および/またはc環と結合している」との規定に対応する。
この規定は、下記式(1−3−a)で表される、X2やX1が縮合環B’および縮合環C’に取り込まれた環構造を有する化合物で表現できる。すなわち、例えば式(1’)におけるb環(またはc環)であるベンゼン環に対してX2(またはX1)を取り込むようにして他の環が縮合して形成されるB’環(またはC’環)を有する化合物である。形成されてできた縮合環B’(または縮合環C’)は例えばフェノキサジン環、フェノチアジン環、アクリジン環またはフェノホスファジン環である。
また、上記規定は、下記式(1−3−b)や式(1−3−c)で表される、X1および/またはX2が縮合環A’に取り込まれた環構造を有する化合物でも表現できる。すなわち、例えば式(1’)におけるa環に対してX1(および/またはX2)を取り込むようにして他の環が縮合して形成されるA’環を有する化合物である。この化合物は、例えば後述する具体的化合物として列挙した式(1−1−48)〜式(1−1−79)などで表されるような化合物に対応し、形成されてできた縮合環A’は例えばフェノキサジン環、フェノチアジン環、アクリジン環またはフェノホスファジン環である。
Figure 2021063022
具体的には説明しなかったが、上記規定には、X3のN−RのRが連結基や単結合でB環および/またはC環(b環および/またはc環)と結合した形態も含まれる。例えば式(1’)におけるb環(またはc環)である環に対してX3を取り込むようにして他の環が縮合して形成されるB’環(またはC’環)を有する化合物である。
また、上記規定には、X1、X2またはX3がいずれかの縮合環に取り込まれた形態が複合した形態も含まれる。
式(1)のA環およびB環である「アリール環」としては、例えば、炭素数6〜30のアリール環があげられ、炭素数6〜16のアリール環が好ましく、炭素数6〜12のアリール環がより好ましく、炭素数6〜10のアリール環が特に好ましい。なお、この「アリール環」は、式(1’)で規定された「Zaのうちの隣接する基同士が結合してa環、b環またはc環と共に形成されたアリール環」に対応し、また、a環(またはb環、c環)がすでに炭素数6のベンゼン環で構成されているため、これに5員環が縮合した縮合環の合計炭素数9が下限の炭素数となる。
具体的な「アリール環」としては、単環系であるベンゼン環、二環系であるビフェニル環、縮合二環系であるナフタレン環、三環系であるテルフェニル環(m−テルフェニル、o−テルフェニル、p−テルフェニル)、縮合三環系である、アセナフチレン環、フルオレン環、フェナレン環、フェナントレン環、縮合四環系であるトリフェニレン環、ピレン環、ナフタセン環、ベンゾフルオレン環、縮合五環系であるペリレン環、ペンタセン環などがあげられる。また、フルオレン環やベンゾフルオレン環には、フルオレン環やベンゾフルオレン環がスピロ結合した構造も含まれる。
式(1)のA環、B環およびC環である「ヘテロアリール環」としては、例えば、炭素数2〜30のヘテロアリール環があげられ、炭素数2〜25のヘテロアリール環が好ましく、炭素数2〜20のヘテロアリール環がより好ましく、炭素数2〜15のヘテロアリール環がさらに好ましく、炭素数2〜10のヘテロアリール環が特に好ましい。また、「ヘテロアリール環」としては、例えば環構成原子として炭素以外に酸素、硫黄および窒素から選ばれるヘテロ原子を1〜5個含有する複素環などがあげられる。なお、この「ヘテロアリール環」は、式(1’)で規定された「Raのうちの隣接する基同士が結合してa環、b環またはc環と共に形成されたヘテロアリール環」に対応し、また、a環(またはb環、c環)がすでに炭素数6のベンゼン環で構成されているため、これに5員環が縮合した縮合環の合計炭素数6が下限の炭素数となる。ただし、C環は式(1)または式(1’)で表されるように窒素原子を必ず1つ含んだヘテロアリール環となる。
具体的な「ヘテロアリール環」としては、例えば、ピロール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環(無置換、メチルなどのアルキル置換またはフェニルなどのアリール置換)、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、ピラゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピラジン環、トリアジン環、インドール環、イソインドール環、1H−インダゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、1H−ベンゾトリアゾール環、キノリン環、イソキノリン環、シンノリン環、キナゾリン環、キノキサリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、プリン環、プテリジン環、カルバゾール環、アクリジン環、フェノキサチイン環、フェノキサジン環、フェノチアジン環、フェナジン環、インドリジン環、フラン環、ベンゾフラン環、イソベンゾフラン環、ジベンゾフラン環、ナフトベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ジベンゾチオフェン環、ナフトベンゾチオフェン環、ベンゾホスホール環、ジベンゾホスホール環、ベンゾホスホールオキシド環、ジベンゾホスホールオキシド環、フラザン環、オキサジアゾール環、チアントレン環などがあげられる。
上記「アリール環」または「ヘテロアリール環」における少なくとも1つの水素は、第1の置換基である、置換または無置換の「アリール」、置換または無置換の「ヘテロアリール」、置換または無置換の「ジアリールアミノ」、置換または無置換の「ジヘテロアリールアミノ」、置換または無置換の「アリールヘテロアリールアミノ」、置換または無置換の「ジアリールボリル」、置換または無置換の「アルキル」、置換または無置換の「シクロアルキル」、置換または無置換の「アルコキシ」、置換または無置換の「アリールオキシ」、置換または無置換の「アリールスルホニル」、置換または無置換の「ジアリールホスフィン」、置換または無置換の「ジアリールホスフィンオキシド」、または、置換または無置換の「ジアリールホスフィンスルフィド」で置換されていてもよいが、この第1の置換基としての「アリール」や「ヘテロアリール」、「ジアリールアミノ」のアリール、「ジヘテロアリールアミノ」のヘテロアリール、「アリールヘテロアリールアミノ」のアリールとヘテロアリール、「ジアリールボリル」のアリール「アリールオキシ」のアリール、「アリールスルホニル」のアリール、「ジアリールホスフィン」のアリール、「ジアリールホスフィンオキシド」のアリール、「ジアリールホスフィンスルフィド」のアリール、「ジアリールボラン」のアリールとしては上述した「アリール環」または「ヘテロアリール環」の一価の基があげられる。
具体的な「アリール」としては、単環系であるフェニル、二環系であるビフェニリル、縮合二環系であるナフチル(1−ナフチルまたは2−ナフチル)、三環系であるテルフェニリル(m−テルフェニリル、o−テルフェニリルまたはp−テルフェニリル)、縮合三環系である、アセナフチレニル、フルオレニル、フェナレニル、フェナントレニル、縮合四環系であるトリフェニレニル、ピレニル、ナフタセニル、縮合五環系であるペリレニル、ペンタセニルなどがあげられる。
「ヘテロアリール」(第1置換基)としては、例えば、炭素数2〜30のヘテロアリールがあげられ、炭素数2〜25のヘテロアリールが好ましく、炭素数2〜20のヘテロアリールがより好ましく、炭素数2〜15のヘテロアリールがさらに好ましく、炭素数2〜10のヘテロアリールが特に好ましい。また、「ヘテロアリール」としては、例えば環構成原子として炭素以外に酸素、硫黄および窒素から選ばれるヘテロ原子を1ないし5個含有する複素環などがあげられる。
具体的な「ヘテロアリール」としては、例えば、ピロリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピラゾリル、ピリジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピラジニル、トリアジニル、インドリル、イソインドリル、1H−インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、1H−ベンゾトリアゾリル、キノリニル、イソキノリニル、シンノリニル、キナゾリニル、キノキサリニル、フタラジニル、ナフチリジニル、プリニル、プテリジニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェノキサチイニル、フェノキサジニル、フェノチアジニル、フェナジニル、インドリジニル、フラニル、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、ジベンゾフラニル、ナフトベンゾフラニル、チオフェニル、ベンゾチオフェニル、イソベンゾチオフェニル、ジベンゾチオフェニル、ナフトベンゾチオフェニル、フラザニル、チアントレニルなどがあげられる。
また第1の置換基としての「アルキル」としては、直鎖および分岐鎖のいずれでもよく、例えば、炭素数1〜24の直鎖アルキルまたは炭素数3〜24の分岐鎖アルキルがあげられる。炭素数1〜18のアルキル(炭素数3〜18の分岐鎖アルキル)が好ましく、炭素数1〜12のアルキル(炭素数3〜12の分岐鎖アルキル)がより好ましく、炭素数1〜6のアルキル(炭素数3〜6の分岐鎖アルキル)がさらに好ましく、炭素数1〜4のアルキル(炭素数3〜4の分岐鎖アルキル)が特に好ましい。
具体的なアルキルとしては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、t−ペンチル、n−ヘキシル、1−メチルペンチル、4−メチル−2−ペンチル、3,3−ジメチルブチル、2−エチルブチル、n−ヘプチル、1−メチルヘキシル、n−オクチル、t−オクチル、1−メチルヘプチル、2−エチルヘキシル、2−プロピルペンチル、n−ノニル、2,2−ジメチルヘプチル、2,6−ジメチル−4−ヘプチル、3,5,5−トリメチルヘキシル、n−デシル、n−ウンデシル、1−メチルデシル、n−ドデシル、n−トリデシル、1−ヘキシルヘプチル、n−テトラデシル、n−ペンタデシル、n−ヘキサデシル、n−ヘプタデシル、n−オクタデシル、n−エイコシルなどがあげられる。
また、例えば、1−エチル−1−メチルプロピル、1,1−ジエチルプロピル、1,1−ジメチルブチル、1−エチル−1−メチルブチル、1,1,4−トリメチルペンチル、1,1,2−トリメチルプロピル、1,1−ジメチルオクチル、1,1−ジメチルペンチル、1,1−ジメチルヘプチル、1,1,5−トリメチルヘキシル、1−エチル−1−メチルヘキシル、1−エチル−1,3−ジメチルブチル、1,1,2,2−テトラメチルプロピル、1−ブチル−1−メチルペンチル、1,1−ジエチルブチル、1−エチル−1−メチルペンチル、1,1,3−トリメチルブチル、1−プロピル−1−メチルペンチル、1,1,2−トリメチルプロピル、1−エチル−1,2,2−トリメチルプロピル、1−プロピル−1−メチルブチル、1,1−ジメチルヘキシルなどもあげられる。
また第1の置換基としての「シクロアルキル」としては、例えば、炭素数3〜12のシクロアルキルがあげられる。好ましいシクロアルキルは、炭素数3〜10のシクロアルキルである。より好ましいシクロアルキルは、炭素数3〜8のシクロアルキルである。さらに好ましいシクロアルキルは、炭素数3〜6のシクロアルキルである。
具体的なシクロアルキルとしては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、およびこれらの炭素数1〜5のアルキル(特にメチル)置換体や、ノルボルネニル、ビシクロ[1.0.1]ブチル、ビシクロ[1.1.1]ペンチル、ビシクロ[2.0.1]ペンチル、ビシクロ[1.2.1]ヘキシル、ビシクロ[3.0.1]ヘキシル、ビシクロ[2.1.2]ヘプチル、ビシクロ[2.2.2]オクチル、アダマンチル、ジアマンチル、デカヒドロナフタレニル、デカヒドロアズレニルなどがあげられる。
なお、本発明の化合物にシクロアルキルを導入することによっては、融点や昇華温度の低下が期待できる。このことは、高い純度が要求される有機EL素子などの有機デバイス用の材料の精製法としてほぼ不可欠な昇華精製において、比較的低温で精製することができるため材料の熱分解などが避けられることを意味する。またこれは、有機EL素子などの有機デバイスを作製するのに有力な手段である真空蒸着プロセスについても同様であり、比較的低温でプロセスを実施できるため、材料の熱分解を避けることができ、結果として高性能な有機デバイス用を得ることができる。また、シクロアルキルの導入により有機溶媒への溶解性が向上するため、塗布プロセスを利用した素子作製にも適用することが可能となる。ただし、本発明は特にこれらの原理に限定されるわけではない。
また第1の置換基としての「アルコキシ」としては、例えば、炭素数1〜24の直鎖または炭素数3〜24の分岐鎖のアルコキシがあげられる。炭素数1〜18のアルコキシ(炭素数3〜18の分岐鎖のアルコキシ)が好ましく、炭素数1〜12のアルコキシ(炭素数3〜12の分岐鎖のアルコキシ)がより好ましく、炭素数1〜6のアルコキシ(炭素数3〜6の分岐鎖のアルコキシ)がさらに好ましく、炭素数1〜4のアルコキシ(炭素数3〜4の分岐鎖のアルコキシ)が特に好ましい。
具体的なアルコキシとしては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、s−ブトキシ、t−ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシなどがあげられる。
「ジアリールアミノ」(第1置換基)、「ジヘテロアリールアミノ」(第1置換基)、「アリールヘテロアリールアミノ」(第1置換基)、「アリールオキシ」(第1置換基)、「アリールスルホニル」(第1置換基)、「ジアリールホスフィン」(第1置換基)、「ジアリールホスフィンオキシド」(第1置換基)、および「ジアリールホスフィンスルフィド」(第1置換基)における「アリール」や「ヘテロアリール」の詳細は、上述した「アリール」や「ヘテロアリール」の説明を引用することができる。
また第1の置換基としての「置換シリル」としては、例えば、アルキルおよび/またはシクロアルキルで置換されたシリルである、トリアルキルシリル、トリシクロアルキルシリル、ジアルキルシクロアルキルシリルまたはアルキルジシクロアルキルシリルがあげられる。
「トリアルキルシリル」としては、シリル基における3つの水素がそれぞれ独立してアルキルで置換された基があげられ、このアルキルは上述した第1の置換基における「アルキル」として説明した基を引用することができる。置換するのに好ましいアルキルは、炭素数1〜5のアルキルであり、具体的にはメチル、エチル、プロピル、i−プロピル、ブチル、sec−ブチル、t−ブチル、t−アミルなどがあげられる。
具体的なトリアルキルシリルとしては、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリプロピルシリル、トリi−プロピルシリル、トリブチルシリル、トリsec−ブチルシリル、トリt−ブチルシリル、トリt−アミルシリル、エチルジメチルシリル、プロピルジメチルシリル、i−プロピルジメチルシリル、ブチルジメチルシリル、sec−ブチルジメチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、t−アミルジメチルシリル、メチルジエチルシリル、プロピルジエチルシリル、i−プロピルジエチルシリル、ブチルジエチルシリル、sec−ブチルジエチルシリル、t−ブチルジエチルシリル、t−アミルジエチルシリル、メチルジプロピルシリル、エチルジプロピルシリル、ブチルジプロピルシリル、sec−ブチルジプロピルシリル、t−ブチルジプロピルシリル、t−アミルジプロピルシリル、メチルジi−プロピルシリル、エチルジi−プロピルシリル、ブチルジi−プロピルシリル、sec−ブチルジi−プロピルシリル、t−ブチルジi−プロピルシリル、t−アミルジi−プロピルシリルなどがあげられる。
「トリシクロアルキルシリル」としては、シリル基における3つの水素がそれぞれ独立してシクロアルキルで置換された基があげられ、このシクロアルキルは上述した第1の置換基における「シクロアルキル」として説明した基を引用することができる。置換するのに好ましいシクロアルキルは、炭素数5〜10のシクロアルキルであり、具体的にはシクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、ビシクロ[1.1.1]ペンチル、ビシクロ[2.0.1]ペンチル、ビシクロ[1.2.1]ヘキシル、ビシクロ[3.0.1]ヘキシル、ビシクロ[2.1.2]ヘプチル、ビシクロ[2.2.2]オクチル、アダマンチル、デカヒドロナフタレニル、デカヒドロアズレニルなどがあげられる。
具体的なトリシクロアルキルシリルとしては、トリシクロペンチルシリル、トリシクロヘキシルシリルなどがあげられる。
2つのアルキルと1つのシクロアルキルが置換したジアルキルシクロアルキルシリルと、1つのアルキルと2つのシクロアルキルが置換したアルキルジシクロアルキルシリルの具体例としては、上述した具体的なアルキルおよびシクロアルキルから選択される基が置換したシリルがあげられる。
また第1の置換基の「ジアリールボリル」中の「アリール」としては、上述したアリールの説明を引用できる。また、この2つのアリールは単結合または連結基(例えば>C(−R)2、>O、>Sまたは>N−R)を介して結合していてもよい。ここで、>C(−R)2および>N−RのRは、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルコキシまたはアリールオキシ(以上、第1置換基)であり、当該第1置換基にはさらにアリール、ヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキル(以上、第2置換基)が置換していてもよく、これらの基の具体例としては、上述した第1置換基としてのアリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルコキシまたはアリールオキシの説明を引用できる。
第1置換基の構造の立体障害性、電子供与性および電子吸引性によって、発光波長を調整することができる。好ましくは以下の構造式で表される基であり、より好ましくは、メチル、t−ブチル、t−アミル、t−オクチル、フェニル、o−トリル、p−トリル、2,4−キシリル、2,5−キシリル、2,6−キシリル、2,4,6−メシチル、ジフェニルアミノ、ジ−p−トリルアミノ、ビス(p−(t−ブチル)フェニル)アミノ、カルバゾリル、3,6−ジメチルカルバゾリル、3,6−ジ−t−ブチルカルバゾリルおよびフェノキシであり、さらに好ましくは、メチル、t−ブチル、t−アミル、t−オクチル、フェニル、o−トリル、2,6−キシリル、2,4,6−メシチル、ジフェニルアミノ、ジ−p−トリルアミノ、ビス(p−(t−ブチル)フェニル)アミノ、カルバゾリル、3,6−ジメチルカルバゾリルおよび3,6−ジ−t−ブチルカルバゾリルである。合成の容易さの観点からは、立体障害が大きい方が選択的な合成のために好ましく、具体的には、t−ブチル、t−アミル、t−オクチル、o−トリル、p−トリル、2,4−キシリル、2,5−キシリル、2,6−キシリル、2,4,6−メシチル、ジ−p−トリルアミノ、ビス(p−(t−ブチル)フェニル)アミノ、3,6−ジメチルカルバゾリルおよび3,6−ジ−t−ブチルカルバゾリルが好ましい。
下記構造式において、「Me」はメチル、「tBu」はt−ブチル、「tAm」はt−アミル、「tOct」はt−オクチルを表す。
Figure 2021063022
Figure 2021063022
Figure 2021063022
Figure 2021063022
式(1’)においては、Raのうち、0〜4個が上記いずれかの構造式で表される基であり、残りは水素であることが好ましく、Raのうち、0〜3個が上記いずれかの構造式で表される基であり、残りは水素であることがより好ましい。
第1の置換基である、置換または無置換の「アリール」、置換または無置換の「ヘテロアリール」、置換または無置換の「ジアリールアミノ」、置換または無置換の「ジヘテロアリールアミノ」、置換または無置換の「アリールヘテロアリールアミノ」、置換または無置換の「ジアリールボリル」、置換または無置換の「アルキル」、置換または無置換の「シクロアルキル」、置換または無置換の「アルコキシ」、置換または無置換の「アリールオキシ」、置換または無置換の「アリールスルホニル」、置換または無置換の「ジアリールホスフィン」、置換または無置換の「ジアリールホスフィンオキシド」、置換または無置換の「ジアリールホスフィンスルフィド」は、置換または無置換と説明されているとおり、それらにおける少なくとも1つの水素が第2の置換基で置換されていてもよい。この第2の置換基としては、例えば、アリール、ヘテロアリールまたはアルキルがあげられ、それらの具体例は、上述した「アリール環」または「ヘテロアリール環」の一価の基、また第1の置換基としての「アルキル」の説明を参照することができる。また、第2の置換基としてのアリールやヘテロアリールには、それらにおける少なくとも1つの水素がフェニルなどのアリール(具体例は上述した基)やメチルなどのアルキル(具体例は上述した基)で置換された基も含まれる。その一例としては、第2の置換基がカルバゾリル基の場合には、9位における少なくとも1つの水素がフェニルなどのアリールやメチルなどのアルキルで置換されたカルバゾリル基も第2の置換基としてのヘテロアリールに含まれる。
式(1’)のRaにおけるアリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノのアリール、ジヘテロアリールアミノのヘテロアリール、アリールヘテロアリールアミノのアリールとヘテロアリール、ジアリールボリルのアリール、またはアリールオキシのアリールとしては、式(1)で説明した「アリール環」または「ヘテロアリール環」の一価の基があげられ、いずれの置換基も上述した式(1)の説明における第1の置換基としての同置換基の説明を参照することができる。また、Raにおけるアルキルまたはアルコキシとしては、上述した式(1)の説明における第1の置換基としての「アルキル」や「アルコキシ」の説明を参照することができる。さらに、これらの基への置換基としてのアリール、ヘテロアリールまたはアルキルも同様である。また、Raのうちの隣接する基同士が結合してa環、b環またはc環と共にアリール環またはヘテロアリール環を形成した場合の、これらの環への置換基であるヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、アルコキシまたはアリールオキシ、および、さらなる置換基であるアリール、ヘテロアリールまたはアルキルについても同様である。
式(1)のX1、X2およびX3におけるN−RのRは上述した第2の置換基で置換されていてもよいアリール、ヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキルであり、アリールやヘテロアリールにおける少なくとも1つの水素は例えばアルキルで置換されていてもよい。このアリール、ヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキルの具体例としては上述する基があげられる。特に炭素数6〜10のアリール(例えばフェニル、ナフチルなど)、炭素数2〜15のヘテロアリール(例えばカルバゾリルなど)、炭素数1〜4のアルキル(例えばメチル、エチルなど)が好ましい。この説明は式(1’)におけるX1、X2およびX3でも同じである。
式(1)における連結基である「−C(−R)2−」のRは水素、アルキルまたはアリールであり、「>N−R」のRはアルキルまたはアルキルで置換されていてもよいアリールであるが、このアルキルやアリールの具体例としては上述する基があげられる。特に炭素数1〜6のアルキルや炭素数1〜4のアルキル(例えばメチル、エチルなど)、炭素数1〜6のアルキルや炭素数1〜4のアルキル(例えばメチル、エチルなど)で置換されていてもよい炭素数6〜12のアリール(フェニル、ナフチルなど)が好ましい。この説明は式(1’)における連結基である「−C(−R)2−」や「>N−R」でも同じである。
また、式(1)における連結基である「アリーレン」や「炭素数6〜30のアリーレン」としては上述したアリールと同じ構造の2価の基があげられる。この説明は式(1’)における連結基である「炭素数6〜12のアリーレン」でも同じである。
式(1)および式(1’)におけるYは、配位子で配位されている周期表第3〜11族の金属、配位子で配位されている周期表第13〜14族の金属もしくは半金属、または配位子で配位されている周期表第15〜16族の半金属を示す。周期表第13〜14族の半金属とは、ホウ素(B)、ケイ素(Si)、またはゲルマニウム(Ge)が挙げられる。周期表第15〜16族の半金属としてはヒ素(As)またはテルル(Te)が挙げられる。Yにおける金属または半金属としては、B(ホウ素)またはIr(イリジウム)であることが好ましく、B(ホウ素)であることがより好ましい。
式(1)および式(1’)で表される構造においては、Y中の上記の金属または半金属が、3座配位子に既に配位されていることが示されており、Yにおける配位子は上記の3座配位子に加えて上記の金属もしくは半金属に配位する配位子となる。通常、式(1)で表される構造中の金属または半金属の配位数は、その種類に応じて4〜6である。したがって、Yにおける配位子の配位数は、Y中の上記の金属もしくは半金属に応じて、通常配位1〜3である。例えばB(ホウ素)の場合は4配位であり、Yにおける配位子の配位数は1である。また、Ir(イリジウム)の場合は4配位または6配位であり、Yにおける配位子の配位数はそれぞれ1または3である。
Yにおける配位子が複数であるときは、複数の配位子は同一であっても異なっていてもよい。
Yにおける配位子は単座配位子でも2座配位子などの多座配位子でもよいが、単座配位子が好ましい。Yにおける配位子の例としては、アリール、ヘテロアリール、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、ハロゲン、シアノ、シクロペンタジエニル、スルホナート、ピリジン、シアン化物イオン、ハロゲンイオン、水酸化物イオン、オキソイオン、トリアルキルホスフィン、トリアリールホスフィン、シクロオクタジエン、一酸化炭素、水などがあげられる。Yにおける配位子としては、アリール、ヘテロアリール、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、ハロゲン、シアノ、シクロペンタジエニルまたはスルホナートが好ましい。配位子は上記の好ましい例のみであってもよいが、上記の好ましい例のいずれかに加えて、ピリジン、シアン化物イオン、ハロゲンイオン、水酸化物イオン、オキソイオン、トリアルキルホスフィン、トリアリールホスフィン、シクロオクタジエン、一酸化炭素、または水などが配位していてもよい。
Yにおける配位子は、例えば、式(1)中の多環芳香環が形成する平面に対し軸方向に配位する軸配位子であればよい。
Yにおける配位子は、使用される金属もしくは半金属に応じて、式(1)および式(1’)で表される構造全体として電気的に中性となるように選択されることが好ましい。式(1)および式(1’)で表される構造全体として電気的に中性とならない場合は、ナトリウムイオンまたはカリウムイオンなどの無機イオンと組み合わさって、塩を形成していてもよい。
Yは1つの単座配位子が配位した金属または半金属であることが好ましい。
Yは、M−Rxで表されることがより好ましい。MはB(ホウ素)またはIr(イリジウム)である。Rxは、アリール、ヘテロアリール、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、ハロゲン、シアノ、シクロペンタジエニルおよびスルホナートである。
xとしてのアリール、アルキル、アルコキシおよびアリールオキシの具体例としては上述する基があげられる。特に炭素数6〜12のアリール、炭素数6〜10のアリール(例えばフェニル、ナフチルなど)、炭素数1〜6のアルキル、炭素数1〜4のアルキル(例えばメチル、エチルなど)、炭素数1〜6のアルコキシ、炭素数1〜4のアルコキシ(例えばメトキシ、エトキシなど)、炭素数6〜12のアリールオキシ、炭素数6〜10のアリール(例えばフェニルオキシ、ナフチルオキシなど)が好ましい。また、ハロゲンとしては、F、Cl、BrおよびIがあげられる。
上記「シクロペンタジエニル」としては、シクロペンタジエニルのほか、ペンタメチルシクロペンタジエニルのようなアルキルが置換されたものも含まれるが、「シクロペンタジエニル」としてはシクロペンタジエニル(Cp)またはペンタメチルシクロペンタジエニル(Cp*)が好ましい。
上記「スルホナート」としてはアリールまたはアルキル置換のスルホナートのほか、トリフルオロメチルのようなフッ素置換アルキルで置換されたスルホナートも含む。
具体的なスルホナートとしては、メタンスルホナート(メシラート)、p−トルエンスルホナート(トシラート)、トリフルオロメタンスルホナート(トリフラート)またはノナフルオロブタンスルホナート(ノナフラート)などがあげられる。
なお、前記M−RxのRxがスルホナート場合は、より正確には以下式の左側で示すようにイオン対で存在しており、また前記M−RxのRxがシクロペンタジエニル(ここではペンタメチルシクロペンタジエニル、Cp*を例に挙げて説明する)の場合には以下式の左側で示すのように半サンドイッチ状であるが、本明細書では便宜的にM−Rxという形式で表記する。
Figure 2021063022
本発明の化合物には、式(1)で表される単位構造を複数有する多環芳香族化合物の多量体、好ましくは、式(1’)で表される単位構造を複数有する多環芳香族化合物の多量体も含まれる。多量体は二量体であることが好ましい。二量体は、一つの化合物の中に上記単位構造を2つ有する形態であればよく、例えば、上記単位構造が単結合、炭素数1〜3のアルキレン基、フェニレン基、ナフチレン基などの連結基で2つ結合した形態に加えて、上記単位構造に含まれる任意の環(A環、B環またはC環、a環、b環またはc環)を2つの単位構造で共有するようにして結合した形態であってもよく、また、上記単位構造に含まれる任意の環(A環、B環またはC環、a環、b環またはc環)同士が縮合するようにして結合した形態であってもよい。
このような二量体としては、例えば、下記式(1−4)、式(1−5)または式(1−6)で表される二量体が挙げられる。すなわち、式(1’)で説明すれば、a環であるベンゼン環を共有するようにして、2つの式(1’)で表される単位構造を1つの化合物中に有する二量体である。また、下記式(2−5)で表される二量体は、式(1’)で説明すれば、a環であるベンゼン環とX2を共有するようにして、2つの式(1’)で表される単位構造を1つの化合物中に有する二量体である。すなわち、式(1’)で説明すれば、例えばある単位構造のa環(またはb環、c環)であるベンゼン環とある単位構造のa環(またはb環、c環)であるベンゼン環とが縮合するようにして、2つの式(1’)で表される単位構造を1つの化合物中に有する二量体である。
このような二量体としては、例えば、下記式(1−4)、式(1−5)または式(1−6)で表される二量体が挙げられる。なお、下記式におけるY、X1、X2、X3、ZaおよびZの定義は式(1’)のそれらの定義と同一である。
Figure 2021063022
また、式(1)または式(1’)で表される多環芳香族化合物およびその二量体の化学構造中の水素は、その全てまたは一部がシアノ、ハロゲンまたは重水素であってもよい。例えば、式(1)においては、A環、B環、C環(A〜C環はアリール環またはヘテロアリール環)、A〜C環への置換基、YがM−RxであるときのRx(=アリール、ヘテロアリール、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、ハロゲン、シアノ、シクロペンタジエニルおよびスルホナート)、ならびに、X1、X2およびX3がN−RであるときのR(=アルキル、アリール)における水素がシアノ、ハロゲンや重水素で置換されうるが、これらの中でもアリールやヘテロアリールにおける全てまたは一部のシアノ、水素がハロゲンや重水素で置換された態様が挙げられる。ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素であり、好ましくはフッ素、塩素または臭素、より好ましくは塩素である。
式(1)で表される多環芳香族化合物の具体的な例としては以下の構造式で表される化合物があげられる。なお、以下の構造式中、Meはメチル、tBuはtert−ブチル、Dは重水素、Phはフェニル、TfOはトルフルオロメタンスルホナート(CF3S(O)2O−)、Cpはシクロペンタジエニル、Cp*はペンタメチルシクロペンタジエニルである。
Figure 2021063022
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2.多環芳香族化合物およびその多量体(配位子)
上記錯体は、後述するように下記式(11)で表される多環芳香族化合物、または下記式(11)で表される構造を複数有する多環芳香族化合物の多量体を用いて製造することができる。下記式(11)で表される多環芳香族化合物、または下記式(11)で表される構造を複数有する多環芳香族化合物の多量体は、好ましくは、下記式(11’)で表される多環芳香族化合物、または下記式(11’)で表される構造を複数有する多環芳香族化合物の多量体である。これらの多環芳香族化合物は錯体における配位子として機能できる。特に上記の式(1)または式(1’)で表される多環芳香族化合物およびその多量体において3座配位子として機能できる。
式(11)または式(11’)で表される多環芳香族化合物およびその多量体は、金属含有錯体または半金属含有錯体、特に上記の式(1)または式(1’)で表される多環芳香族化合物またはその多量体である錯体の合成に用いることができる。
Figure 2021063022
式(11)におけるA環、B環およびC環の定義は式(1)および式(1’)における定義と同様であるが、B環はZがZXである点において異なっており、C環は式(1)におけるYへの結合手部位において異なっている。C環は式(1)におけるYへの結合手が水素に結合した構造を有する環であることが好ましい。
また、上記アリール環またはヘテロアリール環は、X1、X2およびX3を含んで構成される式(11)中央の環構造(以下、この構造を「E構造」とも言う)と結合を共有する5員環または6員環を有することが好ましい。
式(11)および式(11’)においてZxはC−HまたはNを表す。式(11)および式(11’)においてZaがC−Hである場合には、それを用いて製造した式(1)および式(1’)化合物ではZは炭素原子となる。
ここで、「E構造と結合を共有する6員環」とは、例えば式(11’)で示すように前記E構造に縮合したa環を意味する。また、「(A環である)アリール環またはヘテロアリール環がこの6員環を有する」とは、この6員環だけでA環が形成されるか、または、この6員環を含むようにこの6員環にさらに他の環などが縮合してA環が形成されることを意味する。言い換えれば、ここで言う「6員環を有する(A環である)アリール環またはヘテロアリール環」とは、A環の全部または一部を構成する6員環が、前記E
構造に縮合していることを意味する。「B環(b環)」、「C環(c環)」、また「5員環」についても同様の説明が当てはまる。
式(11)におけるA環(またはB環、C環)は、式(11’)におけるa環とその置換基Ra(またはb環とその置換基Ra、c環とその置換基Ra)に対応する。すなわち、式(11’)は、式(11)のA〜C環として「6員環を有するA〜C環」が選択された式に対応する。その意味で、式(11’)の各環を小文字のa〜cで表した。
式(11’)では、a環、b環およびc環の置換基Raのうちの隣接する基同士が結合してa環、b環またはc環と共にアリール環またはヘテロアリール環を形成していてもよく、形成された環における少なくとも1つの水素はアリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、アルコキシまたはアリールオキシで置換されていてもよく、これらにおける少なくとも1つの水素はアリール、ヘテロアリールまたはアルキルで置換されていてもよい。したがって、式(1)および式(1’)で表される多環芳香族化合物は、a環、b環およびc環における置換基の相互の結合形態によって、下記式(11−1)および式(11−2)に示すように、化合物を構成する環構造が変化する。各式中のA'環、B'環およびC'環は、式(11)におけるそれぞれA環、B環およびC環に対応する。
Figure 2021063022
式(11−1)および式(11−2)中のA'環、B'環およびC'環は、式(11)で説明すれば、置換基Raのうちの隣接する基同士が結合して、それぞれa環、b環およびc環と共に形成したアリール環またはヘテロアリール環を示す(a環、b環またはc環に他の環構造が縮合してできた縮合環ともいえる)。なお、式では示してはいないが、a環、b環およびc環の全てがA'環、B'環およびC'環に変化した化合物もある。また、式(11−1)および式(11−2)から分かるように、例えば、a環のRaとb環のRa、b環のRaとc環のRa、c環のRaとa環のRaなどは「隣接する基同士」には該当せず、これらが結合することはない。すなわち、「隣接する基」とは同一環上で隣接する基を意味する。
式(11−1)や式(11−2)で表される化合物は、例えば後述する具体的化合物として列挙した(11−1−88)、(11−1−89)または(11−1−90)で表されるような化合物に対応する。これらの化合物は、例えばa環(またはb環またはc環)に対してベンゼン環、インダン環(ジメチル置換体などを含む)、インドール環、ピロール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、シクロペンタン環またはシクロヘキサン環が縮合して形成されるA’環(またはB’環またはC’環)を有する化合物であり、形成されてできた縮合環A’(または縮合環B’または縮合環C’)はそれぞれナフタレン環、フルオレン環(ジメチル置換体などを含む)、カルバゾール環、インドール環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、ジヒドロインデン環またはテトラヒドロナフタレン環である。
式(11)および式(11’)におけるX1、X2およびX3は、式(1)および式(1’)で定義されたものと同義である。
下記式(11−3−a)で表される、X2やX1が縮合環B’および縮合環C’に取り込まれた環構造を有する化合物にも上記定義が適応される。
また、上記定義は、下記式(11−3−b)や式(11−3−c)で表される、X1および/またはX2が縮合環A’に取り込まれた環構造を有する化合物でも適応される
Figure 2021063022
具体的には説明していないが、上記規定には、X3のN−RのRが連結基や単結合でB環および/またはC環(b環および/またはc環)と結合した形態も含まれ、その説明は上記の説明が適応される。例えば後述する具体的化合物として列挙した、式(11−1−48)〜式(11−1−87)などで表されるような化合物に対応する。
また、上記規定には、X1、X2またはX3がいずれかの縮合環に取り込まれた形態が複合した形態も含まれ、その説明は上記の説明が適応される。
式(11)および式(11’)のX1、X2およびX3におけるN−RのRは上述した第2の置換基で置換されていてもよいアリール、ヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキルであり、上記の式(1)および式(1’)における説明が適応される。
式(11)および式(11’)における連結基である「−C(−R)2−」のRは水素、アルキルまたはアリールであり、「>N−R」のRはアルキルまたはアルキルで置換されていてもよいアリールであり、上記の式(1)および式(1’)における説明が適応される。
また、式(11)および式(11’)における連結基である「アリーレン」や「炭素数6〜30のアリーレン」としては上述したアリールと同じ構造の2価の基があげられる。
また、配位子としての本発明の化合物には、式(11)または式(11’)で表される単位構造を複数有する多環芳香族化合物の多量体、好ましくは、式(11’)で表される単位構造を複数有する多環芳香族化合物の多量体も含まれる。多量体は二量体であることが好ましい。二量体は、一つの化合物の中に上記単位構造を2つ有する形態であればよく、例えば、上記単位構造が単結合、炭素数1〜3のアルキレン基、フェニレン基、ナフチレン基などの連結基で2つ結合した形態に加えて、上記単位構造に含まれる任意の環(A環、B環またはC環、a環、b環またはc環)を2つの単位構造で共有するようにして結合した形態であってもよく、また、上記単位構造に含まれる任意の環(A環、B環またはC環、a環、b環またはc環)同士が縮合するようにして結合した形態であってもよい。
このような二量体としては、例えば、下記式(11−4)、式(11−5)または式(11−6)で表される二量体が挙げられる。なお、下記式におけるX1、X2、X3、ZaおよびZの定義は式(11’)のそれらの定義と同一である。
Figure 2021063022
また、式(11)または(11’)で表される多環芳香族化合物およびその多量体の化学構造中の水素は、その全てまたは一部がシアノ、ハロゲンまたは重水素であってもよい。例えば、式(11)においては、A環、B環、C環(A〜C環はアリール環またはヘテロアリール環)、A〜C環への置換基、ならびに、X1、X2およびX3がN−RであるときのR(=アルキル、アリール)における水素がシアノ、ハロゲンや重水素で置換されうるが、これらの中でもアリールやヘテロアリールにおける全てまたは一部のシアノ、水素がハロゲンや重水素で置換された態様が挙げられる。ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素である。
式(11)で表される多環芳香族化合物の具体的な例としては以下の構造式で表される化合物があげられる。なお、以下の構造式中、Meはメチル、tBuはtert−ブチルである。
Figure 2021063022
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Figure 2021063022
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Figure 2021063022
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Figure 2021063022
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3.多環芳香族化合物およびその多量体の製造方法
式(1)、式(1’)で表される多環芳香族化合物およびその多量体は、基本的には、まずA環(a環)とB環(b環)およびC環(c環)とを結合基(X1、X2、X3含む基)で結合させることで中間体となる式(11)、および式(11’)で表される多環芳香族化合物およびその多量体を製造し(第1反応)、その後に、A環(a環)、B環(b環)およびC環(c環)を結合基(Yを含む基)で結合させることで製造することができる(第2反応)。すなわち、式(11)、および式(11’)で表される多環芳香族化合物およびその多量体は式(1)、式(1’)で表される多環芳香族化合物およびその多量体の製造原料となる。
第1反応では、例えばエーテル化反応であれば、求核置換反応、ウルマン反応といった一般的反応が利用でき、アミノ化反応で有ればブッフバルト−ハートウィッグ反応といった一般的反応が利用できる。また、第2反応では、タンデムヘテロフリーデルクラフツ反応(連続的な芳香族求電子置換反応、以下同様)が利用できる。なお、以下のスキームにおいてY、X1、X2、X3、Za、ZaおよびZの定義の定義は式(1)または式(1’)のそれらの定義と同一である。
第2反応は、下記スキーム(1)や(2)に示すように、A環(a環)、B環(b環)およびC環(c環)を結合するYを導入する反応であり、例としてYがB-Br、X1、X2、X3が窒素原子の場合を以下に示す。三塩化ホウ素を加え、タンデムボラフリーデルクラフツ反応させ、目的物を得ることができる。第2反応においては反応を促進させるために三塩化アルミニウム等のルイス酸を加えてもよい。
Figure 2021063022
なお、上記スキーム(1)や(2)は、式(1)や(1’)で表される多環芳香族化合物の製造方法を主に示しているが、その二量体については、複数のA環(a環)、B環(b環)およびC環(c環)を有する中間体を用いることで製造することができる。詳細には下記スキーム(3)〜(4)で説明する。この場合、使用する三塩化ホウ素等の試薬の量を2倍量とすることで目的物を得ることができる。
Figure 2021063022
上述の合成法ではYであるM−RxのMがホウ素原子でRxが臭素原子である場合について説明したが、Rxである臭素原子を他のものに置換することが出来る。すなわち下記スキーム(7)のようにフェニルグリニャール試薬を用いることで、Rxがフェニルであるものを、また下記スキーム(8)のようにトリフルオロメタンスルホン酸銀を用いることでRxがトリフラートであるものをそれぞれ製造することができる。
Figure 2021063022
次に、例としてYがIr-Cp*、X1、X2およびX3が窒素原子である場合を下記スキーム(9)および(10)に示す。n−ブチルリチウム等を作用させ。次いで、ジクロロ(ペンタメチルシクロペンタジエニル)イリジウム(III)ダイマー([Cp*IrCl22を加えることで目的物を得ることができる。ここでは反応を促進させるために酢酸ナトリウム等を加えてもよい。
Figure 2021063022
また、YがIr-Cp*、X1、X2およびX3が窒素原子である場合二量体についても、上記スキーム(9)および(10)のように製造できる(下記スキーム(11)および(12))。
Figure 2021063022
また、式(11’)では、a環、b環およびc環の置換基Raのうちの隣接する基同士が結合してa環、b環またはc環と共にアリール環、ヘテロアリール環またはシクロアルキル環を形成していてもよく、形成された環における少なくとも1つの水素はアルキル、シクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールで置換されていてもよい。したがって、式(11’)で表される多環芳香族化合物の配位化合物は、a環、b環およびc環における置換基の相互の結合形態によって、下記スキーム(13)および(14)に示すように、化合物を構成する環構造が変化する。これらの化合物は下記スキーム(13)および(14)に示す中間体に上記スキーム(1)〜(12)で示した合成法を適用することで合成することができる。
Figure 2021063022
上記式中のA'環、B'環およびC'環は、置換基Raのうちの隣接する基同士が結合して、それぞれa環、b環およびc環と共に形成したアリール環、ヘテロアリール環またはシクロアルキル環を示す(a環、b環またはc環に他の環構造が縮合してできた縮合環ともいえる)。なお、式では示してはいないが、a環、b環およびc環の全てがA'環、B'環およびC'環に変化した化合物もある。
また、式(11’)における「N−RのRは−O−、−S−、−C(−R)2−、>N−R、アリーレン、単結合または縮合により前記a環、b環および/またはc環と結合している」との規定は、下記スキーム(15)の式(1−3−1)で表される、X1やX2が縮合環B'および縮合環C'に取り込まれた環構造を有する化合物や、式(1−3−2)や式(1−3−3)で表される、X1やX2が縮合環A'に取り込まれた環構造を有する化合物で表現することができる。これらの化合物は下記スキーム(15)に示す中間体に上記スキーム(1)〜(14)で示した合成法を適用することで合成することができる。
Figure 2021063022
上記スキーム(1)〜(4)、(7)〜(15)で使用するルイス酸としては、AlCl3、AlBr3、AlF3、BF3・OEt2、BCl3、BBr3、GaCl3、GaBr3、InCl3、InBr3、In(OTf)3、SnCl4、SnBr4、AgOTf、ScCl3、Sc(OTf)3、ZnCl2、ZnBr2、Zn(OTf)2、MgCl2、MgBr2、Mg(OTf)2、LiOTf、NaOTf、KOTf、Me3SiOTf、Cu(OTf)2、CuCl2、YCl3、Y(OTf)3、TiCl4、TiBr4、ZrCl4、ZrBr4、FeCl3、FeBr3、CoCl3、CoBr3などが挙げられる。
上記スキーム(1)〜(4)、(7)〜(15)では、タンデムヘテロフリーデルクラフツ反応の促進のためにブレンステッド塩基またはルイス酸を使用してもよい。ただし、Y1の三フッ化物、Y1の三塩化物、Y1の三臭化物、Y1の三ヨウ化物などのY1のハロゲン化物を用いた場合は、芳香族求電子置換反応の進行とともに、フッ化水素、塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素といった酸が生成するため、酸を捕捉するブレンステッド塩基の使用が効果的である。一方、Y1のアミノ化ハロゲン化物、Y1のアルコキシ化物を用いた場合は、芳香族求電子置換反応の進行とともに、アミン、アルコールが生成するために、多くの場合、ブレンステッド塩基を使用する必要はないが、アミノ基やアルコキシ基の脱離能が低いために、その脱離を促進するルイス酸の使用が効果的である。
また、本発明の多環芳香族化合物やその二量体には、少なくとも一部の水素原子がシアノで置換されている化合物などや、重水素で置換されている化合物などや、フッ素や塩素などのハロゲンで置換されている化合物なども含まれるが、このような化合物などは所望の箇所がシアノ化、重水素化、フッ素化または塩素化された原料を用いることで、上記と同様に合成することができる。
4.有機デバイス
本発明の化合物(上述の多環芳香族化合物およびその多量体)、特に錯体である本発明の化合物は、有機デバイス用材料として用いることができる。有機デバイスとしては、例えば、有機電界発光素子、有機電界効果トランジスタまたは有機薄膜太陽電池などがあげられる。
4−1.有機電界発光素子
<有機電界発光素子の構造>
図1は、有機EL素子の一例を示す概略断面図である。
図1に示された有機EL素子100は、基板101と、基板101上に設けられた陽極102と、陽極102の上に設けられた正孔注入層103と、正孔注入層103の上に設けられた正孔輸送層104と、正孔輸送層104の上に設けられた発光層105と、発光層105の上に設けられた電子輸送層106と、電子輸送層106の上に設けられた電子注入層107と、電子注入層107の上に設けられた陰極108とを有する。
なお、有機EL素子100は、作製順序を逆にして、例えば、基板101と、基板101上に設けられた陰極108と、陰極108の上に設けられた電子注入層107と、電子注入層107の上に設けられた電子輸送層106と、電子輸送層106の上に設けられた発光層105と、発光層105の上に設けられた正孔輸送層104と、正孔輸送層104の上に設けられた正孔注入層103と、正孔注入層103の上に設けられた陽極102とを有する構成としてもよい。
上記各層すべてがなくてはならないわけではなく、最小構成単位を陽極102と発光層105と陰極108とからなる構成として、正孔注入層103、正孔輸送層104、電子輸送層106、電子注入層107は任意に設けられる層である。また、上記各層は、それぞれ単一層からなってもよいし、複数層からなってもよい。
有機EL素子を構成する層の態様としては、上述する「基板/陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極」の構成態様の他に、「基板/陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極」、「基板/陽極/正孔注入層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極」、「基板/陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極」、「基板/陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極」、「基板/陽極/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極」、「基板/陽極/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極」、「基板/陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極」、「基板/陽極/正孔注入層/発光層/電子注入層/陰極」、「基板/陽極/正孔注入層/発光層/電子輸送層/陰極」、「基板/陽極/発光層/電子輸送層/陰極」、「基板/陽極/発光層/電子注入層/陰極」の構成態様であってもよい。
<有機電界発光素子における発光層>
本発明の化合物は、有機電界発光素子における、いずれか1つ以上の有機層を形成する材料として用いられることが好ましく、発光層を形成する材料として用いられることがより好ましい。
発光層105は、電界を与えられた電極間において、陽極102から注入された正孔と、陰極108から注入された電子とを再結合させることにより発光する層である。発光層105を形成する材料としては、正孔と電子との再結合によって励起されて発光する化合物(発光性化合物)であればよく、安定な薄膜形状を形成することができ、かつ、固体状態で強い発光(蛍光)効率を示す化合物であるのが好ましい。
本発明の化合物は、発光層用の材料として用いることができ、ドーパント材料として用いてもよく、ホスト材料とを用いてもよい。
発光層は単一層でも複数層からなってもどちらでもよく、それぞれ発光層用材料(ホスト材料、ドーパント材料)により形成される。ホスト材料とドーパント材料は、それぞれ一種類であっても、複数の組み合わせであっても、いずれでもよい。ドーパント材料はホスト材料の全体に含まれていても、部分的に含まれていても、いずれであってもよい。ドーピング方法としては、ホスト材料との共蒸着法によって形成することができるが、ホスト材料と予め混合してから同時に蒸着してもよい。
ホスト材料の使用量はホスト材料の種類によって異なり、そのホスト材料の特性に合わせて決めればよい。ホスト材料の使用量の目安は、好ましくは発光層用材料全体の50〜99.999質量%であり、より好ましくは80〜99.95質量%であり、さらに好ましくは90〜99.9質量%である。
ドーパント材料の使用量はドーパント材料の種類によって異なり、そのドーパント材料の特性に合わせて決めればよい。ドーパントの使用量の目安は、好ましくは発光層用材料全体の0.001〜50質量%であり、より好ましくは0.05〜20質量%であり、さらに好ましくは0.1〜10質量%である。上記の範囲であれば、例えば、濃度消光現象を防止できるという点で好ましい。
ホスト材料としては、以前から発光体として知られていたアントラセン、ピレン、ジベンゾクリセンまたはフルオレンなどの縮合環誘導体、ビススチリルアントラセン誘導体やジスチリルベンゼン誘導体などのビススチリル誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、フルオレン誘導体、ベンゾフルオレン誘導体、ジベンゾクリセン系化合物などが挙げられる。
また、ホスト材料としては、例えば、下記式(H1)、(H2)および(H3)のいずれかで表される化合物を用いることができる。
Figure 2021063022
式(H1)、(H2)および(H3)中、L1は炭素数6〜24のアリーレン、炭素数2〜24のヘテロアリーレン、炭素数6〜24のヘテロアリーレンアリーレンおよび炭素数6〜24のアリーレンヘテロアリーレンアリーレンであり、炭素数6〜16のアリーレンが好ましく、炭素数6〜12のアリーレンがより好ましく、炭素数6〜10のアリーレンが特に好ましく、具体的には、ベンゼン環、ビフェニル環、テルフェニル環およびフルオレン環などの二価の基が挙げられる。ヘテロアリーレンとしては、炭素数2〜24のヘテロアリーレンが好ましく、炭素数2〜20のヘテロアリーレンがより好ましく、炭素数2〜15のヘテロアリーレンがさらに好ましく、炭素数2〜10のヘテロアリーレンが特に好ましく、具体的には、ピロール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、ピラゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピラジン環、トリアジン環、インドール環、イソインドール環、1H−インダゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、1H−ベンゾトリアゾール環、キノリン環、イソキノリン環、シンノリン環、キナゾリン環、キノキサリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、プリン環、プテリジン環、カルバゾール環、アクリジン環、フェノキサチイン環、フェノキサジン環、フェノチアジン環、フェナジン環、インドリジン環、フラン環、ベンゾフラン環、イソベンゾフラン環、ジベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ジベンゾチオフェン環、フラザン環、オキサジアゾール環およびチアントレン環などの二価の基が挙げられる。
上記各式で表される化合物における少なくとも1つの水素は、炭素数1〜6のアルキル、シアノ、ハロゲンまたは重水素で置換されていてもよい。
好ましい具体例としては、以下に列挙したいずれかの構造式で表される化合物が挙げられる。なお、以下に列挙した構造式においては、少なくとも1つの水素が、ハロゲン、シアノ、炭素数1〜4のアルキル(例えばメチルやt−ブチル)、フェニルまたはナフチルなどで置換されていてもよい。
Figure 2021063022
Figure 2021063022
Figure 2021063022
Figure 2021063022
また、ドーパント材料としては、特に限定されるものではなく、既知の化合物を用いることができ、所望の発光色に応じて様々な材料の中から選択することができる。具体的には、例えば、フェナンスレン、アントラセン、ピレン、テトラセン、ペンタセン、ペリレン、ナフトピレン、ジベンゾピレン、ルブレンおよびクリセンなどの縮合環誘導体、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、ピラゾリン誘導体、スチルベン誘導体、チオフェン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、ビススチリルアントラセン誘導体やジスチリルベンゼン誘導体などのビススチリル誘導体(特開平1−245087号公報)、ビススチリルアリーレン誘導体(特開平2−247278号公報)、ジアザインダセン誘導体、フラン誘導体、ベンゾフラン誘導体、フェニルイソベンゾフラン、ジメシチルイソベンゾフラン、ジ(2−メチルフェニル)イソベンゾフラン、ジ(2−トリフルオロメチルフェニル)イソベンゾフラン、フェニルイソベンゾフランなどのイソベンゾフラン誘導体、ジベンゾフラン誘導体、7−ジアルキルアミノクマリン誘導体、7−ピペリジノクマリン誘導体、7−ヒドロキシクマリン誘導体、7−メトキシクマリン誘導体、7−アセトキシクマリン誘導体、3−ベンゾチアゾリルクマリン誘導体、3−ベンゾイミダゾリルクマリン誘導体、3−ベンゾオキサゾリルクマリン誘導体などのクマリン誘導体、ジシアノメチレンピラン誘導体、ジシアノメチレンチオピラン誘導体、ポリメチン誘導体、シアニン誘導体、オキソベンゾアンスラセン誘導体、キサンテン誘導体、ローダミン誘導体、フルオレセイン誘導体、ピリリウム誘導体、カルボスチリル誘導体、アクリジン誘導体、オキサジン誘導体、フェニレンオキサイド誘導体、キナクリドン誘導体、キナゾリン誘導体、ピロロピリジン誘導体、フロピリジン誘導体、1,2,5−チアジアゾロピレン誘導体、ピロメテン誘導体、ペリノン誘導体、ピロロピロール誘導体、スクアリリウム誘導体、ビオラントロン誘導体、フェナジン誘導体、アクリドン誘導体、デアザフラビン誘導体、フルオレン誘導体およびベンゾフルオレン誘導体などがあげられる。
また、国際公開第2015/102118号等に記載の多環芳香族化合物を用いることも好ましい。
発色光ごとに例示すると、青〜青緑色ドーパント材料としては、ナフタレン、アントラセン、フェナンスレン、ピレン、トリフェニレン、ペリレン、フルオレン、インデン、クリセンなどの芳香族炭化水素化合物やその誘導体、フラン、ピロール、チオフェン、シロール、9−シラフルオレン、9,9'−スピロビシラフルオレン、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、インドール、ジベンゾチオフェン、ジベンゾフラン、イミダゾピリジン、フェナントロリン、ピラジン、ナフチリジン、キノキサリン、ピロロピリジン、チオキサンテンなどの芳香族複素環化合物やその誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、スチルベン誘導体、アルダジン誘導体、クマリン誘導体、イミダゾール、チアゾール、チアジアゾール、カルバゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾールなどのアゾール誘導体およびその金属錯体およびN,N'−ジフェニル−N,N'−ジ(3−メチルフェニル)−4,4'−ジフェニル−1,1'−ジアミンに代表される芳香族アミン誘導体などがあげられる。
また、緑〜黄色ドーパント材料としては、クマリン誘導体、フタルイミド誘導体、ナフタルイミド誘導体、ペリノン誘導体、ピロロピロール誘導体、シクロペンタジエン誘導体、アクリドン誘導体、キナクリドン誘導体およびルブレンなどのナフタセン誘導体などがあげられ、さらに上記青〜青緑色ドーパント材料として例示した化合物に、アリール、ヘテロアリール、アリールビニル、アミノ、シアノなど長波長化を可能とする置換基を導入した化合物も好適な例としてあげられる。
さらに、橙〜赤色ドーパント材料としては、ビス(ジイソプロピルフェニル)ペリレンテトラカルボン酸イミドなどのナフタルイミド誘導体、ペリノン誘導体、アセチルアセトンやベンゾイルアセトンとフェナントロリンなどを配位子とするEu錯体などの希土類錯体、4−(ジシアノメチレン)−2−メチル−6−(p−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピランやその類縁体、マグネシウムフタロシアニン、アルミニウムクロロフタロシアニンなどの金属フタロシアニン誘導体、ローダミン化合物、デアザフラビン誘導体、クマリン誘導体、キナクリドン誘導体、フェノキサジン誘導体、オキサジン誘導体、キナゾリン誘導体、ピロロピリジン誘導体、スクアリリウム誘導体、ビオラントロン誘導体、フェナジン誘導体、フェノキサゾン誘導体およびチアジアゾロピレン誘導体などあげられ、さらに上記青〜青緑色および緑〜黄色ドーパント材料として例示した化合物に、アリール、ヘテロアリール、アリールビニル、アミノ、シアノなど長波長化を可能とする置換基を導入した化合物も好適な例としてあげられる。
その他、ドーパントとしては、化学工業2004年6月号13頁、および、それにあげられた参考文献などに記載された化合物などの中から適宜選択して用いることができる。
<有機電界発光素子における基板>
基板101は、有機EL素子100の支持体であり、通常、石英、ガラス、金属、プラスチックなどが用いられる。基板101は、目的に応じて板状、フィルム状、またはシート状に形成され、例えば、ガラス板、金属板、金属箔、プラスチックフィルム、プラスチックシートなどが用いられる。なかでも、ガラス板、および、ポリエステル、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスルホンなどの透明な合成樹脂製の板が好ましい。ガラス基板であれば、ソーダライムガラスや無アルカリガラスなどが用いられ、また、厚みも機械的強度を保つのに十分な厚みがあればよいので、例えば、0.2mm以上あればよい。厚さの上限値としては、例えば、2mm以下、好ましくは1mm以下である。ガラスの材質については、ガラスからの溶出イオンが少ない方がよいので無アルカリガラスの方が好ましいが、SiO2などのバリアコートを施したソーダライムガラスも市販されているのでこれを使用することができる。また、基板101には、ガスバリア性を高めるために、少なくとも片面に緻密なシリコン酸化膜などのガスバリア膜を設けてもよく、特にガスバリア性が低い合成樹脂製の板、フィルムまたはシートを基板101として用いる場合にはガスバリア膜を設けるのが好ましい。
<有機電界発光素子における陽極>
陽極102は、発光層105へ正孔を注入する役割を果たす。なお、陽極102と発光層105との間に正孔注入層103および/または正孔輸送層104が設けられている場合には、これらを介して発光層105へ正孔を注入することになる。
陽極102を形成する材料としては、無機化合物および有機化合物があげられる。無機化合物としては、例えば、金属(アルミニウム、金、銀、ニッケル、パラジウム、クロムなど)、金属酸化物(インジウムの酸化物、スズの酸化物、インジウム−スズ酸化物(ITO)、インジウム−亜鉛酸化物(IZO)など)、ハロゲン化金属(ヨウ化銅など)、硫化銅、カーボンブラック、ITOガラスやネサガラスなどがあげられる。有機化合物としては、例えば、ポリ(3−メチルチオフェン)などのポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリンなどの導電性ポリマーなどがあげられる。その他、有機EL素子の陽極として用いられている物質の中から適宜選択して用いることができる。
透明電極の抵抗は、発光素子の発光に十分な電流が供給できればよいので限定されないが、発光素子の消費電力の観点からは低抵抗であることが望ましい。例えば、300Ω/□以下のITO基板であれば素子電極として機能するが、現在では10Ω/□程度の基板の供給も可能になっていることから、例えば100〜5Ω/□、好ましくは50〜5Ω/□の低抵抗品を使用することが特に望ましい。ITOの厚みは抵抗値に合わせて任意に選ぶ事ができるが、通常50〜300nmの間で用いられることが多い。
<有機電界発光素子における正孔注入層、正孔輸送層>
正孔注入層103は、陽極102から移動してくる正孔を、効率よく発光層105内または正孔輸送層104内に注入する役割を果たす。正孔輸送層104は、陽極102から注入された正孔または陽極102から正孔注入層103を介して注入された正孔を、効率よく発光層105に輸送する役割を果たす。正孔注入層103および正孔輸送層104は、それぞれ、正孔注入・輸送材料の一種または二種以上を積層、混合するか、正孔注入・輸送材料と高分子結着剤の混合物により形成される。また、正孔注入・輸送材料に塩化鉄(III)のような無機塩を添加して層を形成してもよい。
正孔注入・輸送性物質としては電界を与えられた電極間において正極からの正孔を効率よく注入・輸送することが必要で、正孔注入効率が高く、注入された正孔を効率よく輸送することが望ましい。そのためにはイオン化ポテンシャルが小さく、しかも正孔移動度が大きく、さらに安定性に優れ、トラップとなる不純物が製造時および使用時に発生しにくい物質であることが好ましい。
正孔注入層103および正孔輸送層104を形成する材料としては、光導電材料において、正孔の電荷輸送材料として従来から慣用されている化合物、p型半導体、有機EL素子の正孔注入層および正孔輸送層に使用されている公知の化合物の中から任意の化合物を選択して用いることができる。それらの具体例は、カルバゾール誘導体(N−フェニルカルバゾール、ポリビニルカルバゾールなど)、ビス(N−アリールカルバゾール)またはビス(N−アルキルカルバゾール)などのビスカルバゾール誘導体、トリアリールアミン誘導体(4,4',4"−トリス(N−カルバゾリル)トリフェニルアミン、芳香族第3級アミノを主鎖または側鎖に持つポリマー、1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン、N,N'−ジフェニル−N,N'−ジ(3−メチルフェニル)−4,4'−ジアミノビフェニル、N,N'−ジフェニル−N,N'−ジナフチル−4,4'−ジアミノビフェニル、N,N'−ジフェニル−N,N'−ジ(3−メチルフェニル)−4,4'−ジフェニル−1,1'−ジアミン、N,N'−ジナフチル−N,N'−ジフェニル−4,4'−ジフェニル−1,1'−ジアミン、N4,N4'−ジフェニル−N4,N4'−ビス(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)−[1,1'−ビフェニル]−4,4'−ジアミン、N4,N4,N4',N4'−テトラ[1,1'−ビフェニル]−4−イル)−[1,1'−ビフェニル]−4,4'−ジアミン、4,4',4"−トリス(3−メチルフェニル(フェニル)アミノ)トリフェニルアミンなどのトリフェニルアミン誘導体、スターバーストアミン誘導体など)、スチルベン誘導体、フタロシアニン誘導体(無金属、銅フタロシアニンなど)、ピラゾリン誘導体、ヒドラゾン系化合物、ベンゾフラン誘導体やチオフェン誘導体、オキサジアゾール誘導体、キノキサリン誘導体(例えば、1,4,5,8,9,12−ヘキサアザトリフェニレン−2,3,6,7,10,11−ヘキサカルボニトリルなど)、ポルフィリン誘導体などの複素環化合物、ポリシランなどである。ポリマー系では前記単量体を側鎖に有するポリカーボネートやスチレン誘導体、ポリビニルカルバゾールおよびポリシランなどが好ましいが、発光素子の作製に必要な薄膜を形成し、陽極から正孔が注入できて、さらに正孔を輸送できる化合物であれば特に限定されない。
また、有機半導体の導電性は、そのドーピングにより、強い影響を受けることも知られている。このような有機半導体マトリックス物質は、電子供与性の良好な化合物、または、電子受容性の良好な化合物から構成されている。電子供与物質のドーピングのために、テトラシアノキノンジメタン(TCNQ)または2,3,5,6−テトラフルオロテトラシアノ−1,4−ベンゾキノンジメタン(F4TCNQ)などの強い電子受容体が知られている(例えば、文献「M.Pfeiffer,A.Beyer,T.Fritz,K.Leo,Appl.Phys.Lett.,73(22),3202-3204(1998)」および文献「J.Blochwitz,M.Pheiffer,T.Fritz,K.Leo,Appl.Phys.Lett.,73(6),729-731(1998)」を参照)。これらは、電子供与型ベース物質(正孔輸送物質)における電子移動プロセスによって、いわゆる正孔を生成する。正孔の数および移動度によって、ベース物質の伝導性が、かなり大きく変化する。正孔輸送特性を有するマトリックス物質としては、例えばベンジジン誘導体(TPDなど)またはスターバーストアミン誘導体(TDATAなど)、または、特定の金属フタロシアニン(特に、亜鉛フタロシアニン(ZnPc)など)が知られている(特開2005−167175号公報)。
本発明の化合物は正孔注入層形成用材料または正孔輸送層形成用材料として用いてもよい。
<有機電界発光素子における電子阻止層>
正孔注入・輸送層と発光層との間には発光層からの電子の拡散を防ぐ電子阻止層を設けてもよい。電子阻止層の形成には、上述の式(H1)、(H2)および(H3)のいずれかで表される化合物を用いることができる。本発明の化合物は電子阻止層形成用材料として用いてもよい。
<有機電界発光素子における電子注入層、電子輸送層>
電子注入層107は、陰極108から移動してくる電子を、効率よく発光層105内または電子輸送層106内に注入する役割を果たす。電子輸送層106は、陰極108から注入された電子または陰極108から電子注入層107を介して注入された電子を、効率よく発光層105に輸送する役割を果たす。電子輸送層106および電子注入層107は、それぞれ、電子輸送・注入材料の一種または二種以上を積層、混合するか、電子輸送・注入材料と高分子結着剤の混合物により形成される。
電子注入・輸送層とは、陰極から電子が注入され、さらに電子を輸送することをつかさどる層であり、電子注入効率が高く、注入された電子を効率よく輸送することが望ましい。そのためには電子親和力が大きく、しかも電子移動度が大きく、さらに安定性に優れ、トラップとなる不純物が製造時および使用時に発生しにくい物質であることが好ましい。しかしながら、正孔と電子の輸送バランスを考えた場合に、陽極からの正孔が再結合せずに陰極側へ流れるのを効率よく阻止できる役割を主に果たす場合には、電子輸送能力がそれ程高くなくても、発光効率を向上させる効果は電子輸送能力が高い材料と同等に有する。したがって、本実施形態における電子注入・輸送層は、正孔の移動を効率よく阻止できる層の機能も含まれてもよい。
電子輸送層106または電子注入層107を形成する材料(電子輸送材料)としては、光導電材料において電子伝達化合物として従来から慣用されている化合物、有機EL素子の電子注入層および電子輸送層に使用されている公知の化合物の中から任意に選択して用いることができる。
電子輸送層または電子注入層に用いられる材料としては、炭素、水素、酸素、硫黄、ケイ素およびリンの中から選ばれる一種以上の原子で構成される芳香族環または複素芳香族環からなる化合物、ピロール誘導体およびその縮合環誘導体および電子受容性窒素を有する金属錯体の中から選ばれる少なくとも一種を含有することが好ましい。具体的には、ナフタレン、アントラセンなどの縮合環系芳香族環誘導体、4,4'−ビス(ジフェニルエテニル)ビフェニルに代表されるスチリル系芳香族環誘導体、ペリノン誘導体、クマリン誘導体、ナフタルイミド誘導体、アントラキノンやジフェノキノンなどのキノン誘導体、リンオキサイド誘導体、カルバゾール誘導体およびインドール誘導体などがあげられる。電子受容性窒素を有する金属錯体としては、例えば、ヒドロキシフェニルオキサゾール錯体などのヒドロキシアゾール錯体、アゾメチン錯体、トロポロン金属錯体、フラボノール金属錯体およびベンゾキノリン金属錯体などがあげられる。これらの材料は単独でも用いられるが、異なる材料と混合して使用しても構わない。
また、他の電子伝達化合物の具体例として、ピリジン誘導体、ナフタレン誘導体、フルオランテン誘導体、BO系誘導体、アントラセン誘導体、フェナントロリン誘導体、ペリノン誘導体、クマリン誘導体、ナフタルイミド誘導体、アントラキノン誘導体、ジフェノキノン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、ペリレン誘導体、オキサジアゾール誘導体(1,3−ビス[(4−t−ブチルフェニル)1,3,4−オキサジアゾリル]フェニレンなど)、チオフェン誘導体、トリアゾール誘導体(N−ナフチル−2,5−ジフェニル−1,3,4−トリアゾールなど)、チアジアゾール誘導体、オキシン誘導体の金属錯体、キノリノール系金属錯体、キノキサリン誘導体、キノキサリン誘導体のポリマー、ベンザゾール類化合物、ガリウム錯体、ピラゾール誘導体、パーフルオロ化フェニレン誘導体、トリアジン誘導体、ピラジン誘導体、ベンゾキノリン誘導体(2,2'−ビス(ベンゾ[h]キノリン−2−イル)−9,9'−スピロビフルオレンなど)、イミダゾピリジン誘導体、ボラン誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体(トリス(N−フェニルベンゾイミダゾール−2−イル)ベンゼンなど)、ベンゾオキサゾール誘導体、チアゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、キノリン誘導体、テルピリジンなどのオリゴピリジン誘導体、ビピリジン誘導体、テルピリジン誘導体(1,3−ビス(4'−(2,2':6'2"−テルピリジニル))ベンゼンなど)、ナフチリジン誘導体(ビス(1−ナフチル)−4−(1,8−ナフチリジン−2−イル)フェニルホスフィンオキサイドなど)、アルダジン誘導体、ピリミジン誘導体、カルバゾール誘導体、インドール誘導体、リンオキサイド誘導体、ビススチリル誘導体、シロール誘導体およびアゾリン誘導体などがあげられる。
また、電子受容性窒素を有する金属錯体を用いることもでき、例えば、キノリノール系金属錯体やヒドロキシフェニルオキサゾール錯体などのヒドロキシアゾール錯体、アゾメチン錯体、トロポロン金属錯体、フラボノール金属錯体およびベンゾキノリン金属錯体などがあげられる。
上述した材料は単独でも用いられるが、異なる材料と混合して使用しても構わない。
上述した材料の中でも、ボラン誘導体、ピリジン誘導体、フルオランテン誘導体、BO系誘導体、アントラセン誘導体、ベンゾフルオレン誘導体、ホスフィンオキサイド誘導体、ピリミジン誘導体、カルバゾール誘導体、トリアジン誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、フェナントロリン誘導体、キノリノール系金属錯体、チアゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、シロール誘導体およびアゾリン誘導体が好ましい。
本発明の化合物は電子注入層形成用材料または電子輸送層形成用材料として用いてもよい。
[還元性物質、その他]
電子輸送層または電子注入層には、さらに、電子輸送層または電子注入層を形成する材料を還元できる物質を含んでいてもよい。この還元性物質は、一定の還元性を有する物質であれば、様々な物質が用いられ、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、アルカリ金属の酸化物、アルカリ金属のハロゲン化物、アルカリ土類金属の酸化物、アルカリ土類金属のハロゲン化物、希土類金属の酸化物、希土類金属のハロゲン化物、アルカリ金属の有機錯体、アルカリ土類金属の有機錯体および希土類金属の有機錯体からなる群から選択される少なくとも1つを好適に使用することができる。
好ましい還元性物質としては、Na(仕事関数2.36eV)、K(同2.28eV)、Rb(同2.16eV)またはCs(同1.95eV)などのアルカリ金属や、Ca(同2.9eV)、Sr(同2.0〜2.5eV)またはBa(同2.52eV)などのアルカリ土類金属があげられ、仕事関数が2.9eV以下の物質が特に好ましい。これらのうち、より好ましい還元性物質は、K、RbまたはCsのアルカリ金属であり、さらに好ましくはRbまたはCsであり、最も好ましいのはCsである。これらのアルカリ金属は、特に還元能力が高く、電子輸送層または電子注入層を形成する材料への比較的少量の添加により、有機EL素子における発光輝度の向上や長寿命化が図られる。また、仕事関数が2.9eV以下の還元性物質として、これら2種以上のアルカリ金属の組み合わせも好ましく、特に、Csを含んだ組み合わせ、例えば、CsとNa、CsとK、CsとRb、またはCsとNaとKとの組み合わせが好ましい。Csを含むことにより、還元能力を効率的に発揮することができ、電子輸送層または電子注入層を形成する材料への添加により、有機EL素子における発光輝度の向上や長寿命化が図られる。
<有機電界発光素子における陰極>
陰極108は、電子注入層107および電子輸送層106を介して、発光層105に電子を注入する役割を果たす。
陰極108を形成する材料としては、電子を有機層に効率よく注入できる物質であれば特に限定されないが、陽極102を形成する材料と同様の材料を用いることができる。なかでも、スズ、インジウム、カルシウム、アルミニウム、銀、銅、ニッケル、クロム、金、白金、鉄、亜鉛、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウムおよびマグネシウムなどの金属またはそれらの合金(マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、フッ化リチウム/アルミニウムなどのアルミニウム−リチウム合金など)などが好ましい。電子注入効率をあげて素子特性を向上させるためには、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、カルシウム、マグネシウムまたはこれら低仕事関数金属を含む合金が有効である。しかしながら、これらの低仕事関数金属は一般に大気中で不安定であることが多い。この点を改善するために、例えば、有機層に微量のリチウム、セシウムやマグネシウムをドーピングして、安定性の高い電極を使用する方法が知られている。その他のドーパントとしては、フッ化リチウム、フッ化セシウム、酸化リチウムおよび酸化セシウムのような無機塩も使用することができる。ただし、これらに限定されない。
さらに、電極保護のために白金、金、銀、銅、鉄、スズ、アルミニウムおよびインジウムなどの金属、またはこれら金属を用いた合金、そしてシリカ、チタニアおよび窒化ケイ素などの無機物、ポリビニルアルコール、塩化ビニル、炭化水素系高分子化合物などを積層することが、好ましい例としてあげられる。これらの電極の作製法も、抵抗加熱、電子線ビーム蒸着、スパッタリング、イオンプレーティングおよびコーティングなど、導通を取ることができれば特に制限されない。
<各層で用いてもよい結着剤>
以上の正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層および電子注入層に用いられる材料は単独で各層を形成することができるが、高分子結着剤としてポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリブタジエン、炭化水素樹脂、ケトン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアミド、エチルセルロース、酢酸ビニル樹脂、ABS樹脂、ポリウレタン樹脂などの溶剤可溶性樹脂や、フェノール樹脂、キシレン樹脂、石油樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂などの硬化性樹脂などに分散させて用いることも可能である。
<有機電界発光素子の作製方法>
有機EL素子を構成する各層は、各層を構成すべき材料を蒸着法、抵抗加熱蒸着、電子ビーム蒸着、スパッタリング、分子積層法、印刷法、インクジェット法、スピンコート法またはキャスト法、コーティング法などの方法で薄膜とすることにより、形成することができる。このようにして形成された各層の膜厚については特に限定はなく、材料の性質に応じて適宜設定することができるが、通常2nm〜5000nmの範囲である。膜厚は通常、水晶発振式膜厚測定装置などで測定できる。蒸着法を用いて薄膜化する場合、その蒸着条件は、材料の種類、膜の目的とする結晶構造および会合構造などにより異なる。蒸着条件は一般的に、ボート加熱温度+50〜+400℃、真空度10-6〜10-3Pa、蒸着速度0.01〜50nm/秒、基板温度−150〜+300℃、膜厚2nm〜5μmの範囲で適宜設定することが好ましい。
次に、有機EL素子を作製する方法の一例として、陽極/正孔注入層/正孔輸送層/ホスト材料とドーパント材料からなる発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極からなる有機EL素子の作製法について説明する。適当な基板上に、陽極材料の薄膜を蒸着法などにより形成させて陽極を作製した後、この陽極上に正孔注入層および正孔輸送層の薄膜を形成させる。この上にホスト材料とドーパント材料を共蒸着し薄膜を形成させて発光層とし、この発光層の上に電子輸送層、電子注入層を形成させ、さらに陰極用物質からなる薄膜を蒸着法などにより形成させて陰極とすることにより、目的の有機EL素子が得られる。なお、上述の有機EL素子の作製においては、作製順序を逆にして、陰極、電子注入層、電子輸送層、発光層、正孔輸送層、正孔注入層、陽極の順に作製することも可能である。
このようにして得られた有機EL素子に直流電圧を印加する場合には、陽極を+、陰極を−の極性として印加すればよく、電圧2〜40V程度を印加すると、透明または半透明の電極側(陽極または陰極、および両方)より発光が観測できる。また、この有機EL素子は、パルス電流や交流電流を印加した場合にも発光する。なお、印加する交流の波形は任意でよい。
<有機電界発光素子の応用例>
また、本発明は、有機EL素子を備えた表示装置または有機EL素子を備えた照明装置などにも応用することができる。
有機EL素子を備えた表示装置または照明装置は、本実施形態にかかる有機EL素子と公知の駆動装置とを接続するなど公知の方法によって製造することができ、直流駆動、パルス駆動、交流駆動など公知の駆動方法を適宜用いて駆動することができる。
表示装置としては、例えば、カラーフラットパネルディスプレイなどのパネルディスプレイ、フレキシブルカラー有機電界発光(EL)ディスプレイなどのフレキシブルディスプレイなどがあげられる(例えば、特開平10-335066号公報、特開2003-321546号公報、特開2004-281086号公報など参照)。また、ディスプレイの表示方式としては、例えば、マトリクスおよび/またはセグメント方式などがあげられる。なお、マトリクス表示とセグメント表示は同じパネルの中に共存していてもよい。
マトリクスでは、表示のための画素が格子状やモザイク状など二次元的に配置されており、画素の集合で文字や画像を表示する。画素の形状やサイズは用途によって決まる。例えば、パソコン、モニター、テレビの画像および文字表示には、通常一辺が300μm以下の四角形の画素が用いられ、また、表示パネルのような大型ディスプレイの場合は、一辺がmmオーダーの画素を用いることになる。モノクロ表示の場合は、同じ色の画素を配列すればよいが、カラー表示の場合には、赤、緑、青の画素を並べて表示させる。この場合、典型的にはデルタタイプとストライプタイプがある。そして、このマトリクスの駆動方法としては、線順次駆動方法やアクティブマトリックスのどちらでもよい。線順次駆動の方が構造が簡単であるという利点があるが、動作特性を考慮した場合、アクティブマトリックスの方が優れる場合があるので、これも用途によって使い分けることが必要である。
セグメント方式(タイプ)では、予め決められた情報を表示するようにパターンを形成し、決められた領域を発光させることになる。例えば、デジタル時計や温度計における時刻や温度表示、オーディオ機器や電磁調理器などの動作状態表示および自動車のパネル表示などがあげられる。
照明装置としては、例えば、室内照明などの照明装置、液晶表示装置のバックライトなどがあげられる(例えば、特開2003-257621号公報、特開2003-277741号公報、特開2004-119211号公報など参照)。バックライトは、主に自発光しない表示装置の視認性を向上させる目的に使用され、液晶表示装置、時計、オーディオ装置、自動車パネル、表示板および標識などに使用される。特に、液晶表示装置、中でも薄型化が課題となっているパソコン用途のバックライトとしては、従来方式が蛍光灯や導光板からなっているため薄型化が困難であることを考えると、本実施形態に係る発光素子を用いたバックライトは薄型で軽量が特徴になる。
4−2.その他の有機デバイス
本発明に係る多環芳香族化合物は、上述した有機電界発光素子の他に、有機電界効果トランジスタまたは有機薄膜太陽電池などの作製に用いることができる。
有機電界効果トランジスタは、電圧入力によって発生させた電界により電流を制御するトランジスタのことであり、ソース電極とドレイン電極の他にゲート電極が設けられている。ゲート電極に電圧を印加すると電界が生じ、ソース電極とドレイン電極間を流れる電子(あるいはホール)の流れを任意にせき止めて電流を制御することができるトランジスタである。電界効果トランジスタは、単なるトランジスタ(バイポーラトランジスタ)に比べて小型化が容易であり、集積回路などを構成する素子としてよく用いられている。
有機電界効果トランジスタの構造は、通常、本発明に係る多環芳香族化合物を用いて形成される有機半導体活性層に接してソース電極およびドレイン電極が設けられており、さらに有機半導体活性層に接した絶縁層(誘電体層)を挟んでゲート電極が設けられていればよい。その素子構造としては、例えば以下の構造があげられる。
(1)基板/ゲート電極/絶縁体層/ソース電極・ドレイン電極/有機半導体活性層
(2)基板/ゲート電極/絶縁体層/有機半導体活性層/ソース電極・ドレイン電極
(3)基板/有機半導体活性層/ソース電極・ドレイン電極/絶縁体層/ゲート電極
(4)基板/ソース電極・ドレイン電極/有機半導体活性層/絶縁体層/ゲート電極
このように構成された有機電界効果トランジスタは、アクティブマトリックス駆動方式の液晶ディスプレイや有機エレクトロルミネッセンスディスプレイの画素駆動スイッチング素子などとして適用できる。
有機薄膜太陽電池は、ガラスなどの透明基板上にITOなどの陽極、ホール輸送層、光電変換層、電子輸送層、陰極が積層された構造を有する。光電変換層は陽極側にp型半導体層を有し、陰極側にn型半導体層を有している。本発明に係る多環芳香族化合物は、その物性に応じて、ホール輸送層、p型半導体層、n型半導体層、電子輸送層の材料として用いることが可能である。本発明に係る多環芳香族化合物は、有機薄膜太陽電池においてホール輸送材料や電子輸送材料として機能しうる。有機薄膜太陽電池は、上記の他にホールブロック層、電子ブロック層、電子注入層、ホール注入層、平滑化層などを適宜備えていてもよい。有機薄膜太陽電池には、有機薄膜太陽電池に用いられる既知の材料を適宜選択して組み合わせて用いることができる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
合成例(1): 化合物(11−1−1)の合成
Figure 2021063022
2,N6−ジフェニル−2,6−ピリジンジアミン(1.31g、5.0mmol)、1−ブロモ−3−ヨードベンゼン(1.40mL、11.0mmol)、ターシャリーブトキシナトリウム(1.06g、11.0mmol)、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)(0.114g、0.125mmol)、4,5’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9’−ジメチルキサンテン(0.144g、0.25mmol)を窒素雰囲気下、室温中でo−キシレン(25mL)に加え,120℃で8時間加熱撹拌を行った。反応液を室温まで冷やし、シリカゲルショートパスカラム(溶離液/ジクロロメタン)に通した。溶媒を減圧留去した後、粗生成物を用いてシリカゲルカラム(溶離液/ヘキサン:ジクロロメタン=2:1,1:1,酢酸エチル)を行った。その結果、白色粉末としてN2,N6−ビス(3−ブロモフェニル)−N2,N6−ジフェニル−2,6−ピリジンジアミン(2.01g、収率70%)を得た。
1H NMR (δppm in CDCl3,500 MHz); 6.22 (d, 2H), 7.02-7.068 (m, 4H), 7.10-7.14 (m, 8H), 7.18 (s, 2H), 7.25-7.30 (m, 5H)
13C NMR (δppm in CDCl3,500 MHz); 106.0 (2C), 122.3 (1C), 124.5 (2C), 124.9 (2C), 126.7 (2C), 126.8 (4C), 128.6 (2C), 129.4 (4C), 130.0 (2C), 139.0 (2C), 145.2 (2C), 147.1 (2C), 157.2 (2C)
Figure 2021063022
2,N6−ビス(3−ブロモフェニル)−N2,N6−ジフェニル−2,6−ピリジンジアミン(0.286g、0.50mmol)、アニリン(45.6μL、0.50mmol)、ターシャリーブトキシナトリウム(0.105g、1.1mmol)、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)(11.4mg、12.5μmol)、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(13.9mg、25.0μmol)を窒素雰囲気下、室温中でトルエン(2.5mL)に加え,60℃で6時間加熱撹拌を行った。反応液を室温まで冷やした後、シリカゲルショートパスカラム(溶離液/ジクロロメタン)に通した。溶媒を減圧留去した後、粗生成物を用いてシリカゲルカラム(溶離液/ヘキサン:ジクロロメタン=3:1)を行った。その結果、白色粉末としてN2−(3−ブロモフェニル)−N2,N6−ジフェニル−N6−(3−フェニルアミノフェニル)−2,6−ピリジンジアミン(93.4mg、収率32%)を得た。
1H NMR (δppm in CDCl3,500 MHz); 5.56 (s, 1H), 6.19 (d, 1H), 6.25 (d, 1H), 6.68 (d, 1H), 6.80 (d, 2H), 6.88 (t, 1H), 6.96-6.98 (m, 2H), 7.00 (d, 1H), 7.04 (t, 2H), 7.09-7.14 (m, 7H), 7.19-7.29 (m, 8H)
13C NMR (δppm in CDCl3,500 MHz); 105.7 (1C), 106.0 (1C), 113.5 (1C), 116.0 (1C), 117.6 (2C), 119.1 (1C), 120.8 (1C), 122.2 (1C), 124.2 (1C+1C), 124.7 (1C), 126.3 (2C+1C), 126.6 (2C), 128.3 (1C), 128.9 (2C), 129.2 (2C), 129.3 (2C), 129.7 (1C), 129.9 (1C), 138.7 (1C), 142.8 (1C), 143.7 (1C), 145.5 (1C+1C), 146.6 (1C), 147.4 (1C), 157.1 (1C), 157.5 (1C)
Figure 2021063022
2−(3−ブロモフェニル)−N2,N6−ジフェニル−N6−(3−フェニルアミノフェニル)−2,6−ピリジンジアミン(0.875g、1.5mmol)を窒素雰囲気下、室温中でo−キシレン(50mL)に加えた溶液を、ターシャリーブトキシナトリウム(0.173g、1.8mmol)、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)(34.3mg、37.5μmol)、トリターシャリーブチルホスフォニウムテトラフルオロボレート(21.8mg、75.0μmol)を窒素雰囲気下、室温中でo−キシレン(25mL)に加えた溶液に、還流条件下で、4時間加熱撹拌を行いながら滴下を行った。反応液を室温まで冷やし、シリカゲルショートパスカラム(溶離液/ジクロロメタン、酢酸エチル)に通した。溶媒を減圧留去した後、粗生成物を用いてシリカゲルカラム(溶離液/ヘキサン:トルエン=1:1、ジクロロメタン、ヘキサン:ジクロロメタン=1:1、ジクロロメタン)を行った。その結果、白色粉末として化合物(11−1−1)、2,4,6−トリフェニル−2,4,6−トリアザ−1(2,6)−ピリジナ−3,5(1,3)−ジベンゼナシクロへキサファン0.550g、収率73%)を得た。
1H NMR (δppm in CDCl3,500 MHz); 6.37 (d, 2H), 6.54 (dd, 2H), 6.88 (dd, 2H), 7.02 (t, 2H), 7.09 (t, 1H), 7.18 (t, 2H), 7.24 (t, 1H), 7.33-7.36 (m, 6H), 7.39 (t, 4H), 7.46 (d, 2H), 7.67 (t, 2H)
13C NMR (δppm in CDCl3,500 MHz); 106.0 (2C), 117.8 (2C), 119.4 (2C), 123.2 (1C), 124.1 (2C), 124.4 (2C), 124.9 (4C), 126.4 (2C), 128.0 (2C), 129.3 (2C), 129.5 (4C), 138.4 (1C), 144.3 (2C+2C), 145.1 (1C), 147.7(2C), 156.0 (2C)
合成例(2):
化合物(1−2−1)、3c−ブロモ−4,8,12−トリフェニル−4H,8H,12H−3bλ4,4,8,12−テトラアザ−3cλ4−フェニルボラジベンゾ[cd,mn]ピレンの合成
Figure 2021063022
化合物(11−1−1)、2,4,6−トリフェニル−2,4,6−トリアザ−1(2,6)−ピリジナ−3,5(1,3)−ジベンゼナシクロへキサファン(50.3g、0.10mmol)、三臭化ホウ素(11.4μL、0.12mmol)を窒素雰囲気下、室温中でo−ジクロロベンゼン(1.0mL)に加え、還流条件下で5時間加熱撹拌を行った。反応液を室温まで冷やした後、溶媒を留去し、粗生成物をヘキサンを用いて洗浄することで、黄色粉末として化合物(1−2−1)3c−ブロモ−4,8,12−トリフェニル−4H,8H,12H−3bλ4,4,8,12−テトラアザ−3cλ4−フェニルボラジベンゾ[cd,mn]ピレン(41.2mg、収率70%)を得た。
1H NMR (δppm in CDCl3,500 MHz); 6.05 (d, 2H), 6.17 (d, 2H), 6.45 (d, 2H), 7.41-7.45 (m, 4H), 7.59 (d, 4H), 7.64-7.81 (m, 10H)
13C NMR (δppm in CDCl3,500 MHz); 103.9 (2C), 106.4 (2C), 111.0 (2C), 129.2 (4C), 129.5 (2C), 129.7 (1C), 130.7 (2C), 131.4 (2C), 132.1 (4C), 136.1 (2C), 137.5 (1C), 139.4 (1C), 143.8 (2C), 144.8 (2C), 147.3 (2C), 148.4 (2C); The NMR signal of the carbon α to the boron was not observed.
合成例(3):
化合物(1−1−1)、3c,4,8,12−テトラフェニル−4H,8H,12H−3bλ4,4,8,12−テトラアザ−3cλ4−フェニルボラジベンゾ[cd,mn]ピレンの合成
Figure 2021063022
化合物(11−1−1)、2,4,6−トリフェニル−2,4,6−トリアザ−1(2,6)−ピリジナ−3,5(1,3)−ジベンゼナシクロへキサファン(50.3g、0.10mmol)、三臭化ホウ素(9.48μL、0.10mmol)を窒素雰囲気下、室温中でo−ジクロロベンゼン(1.0mL)に加え,還流条件下で5時間加熱撹拌を行った。反応液を室温まで冷やした後、フェニルグリニャール試薬(0.283mL、0.30mmol)の溶液に室温で加えた。室温で1時間撹拌後、メタノールを加えた後、フロリジルショートパスカラム(溶離液/ジクロロメタン)に通した。溶媒を減圧留去した後、粗生成物を用いてヘキサン、アセトニトリルで洗浄を行うことで白色粉末として化合物(1−1−1)、3c,4,8,12−テトラフェニル−4H,8H,12H−3bλ4,4,8,12−テトラアザ−3cλ4−フェニルボラジベンゾ[cd,mn]ピレン(48.3mg、収率82%)を得た。
1H NMR (δppm in CDCl3,500 MHz); 5.70 (d, 2H), 5.76 (d, 2H), 6.06 (d, 2H), 6.72 (t, 2H), 7.07-7.10 (m, 2H), 7.19 (t, 2H), 7.29-7.32 (m, 6H), 7.41-7.51 (m, 5H), 7.56-7.61 (m, 6H)
13C NMR (δppm in CDCl3,500 MHz); 102.0 (2C), 106.9 (2C), 109.5 (2C),124.9 (1C), 126.0 (2C), 127.3 (2C), 127.6 (1C),128.9 (2C), 130.4 (2C+4C), 130.7 (2C), 130.8 (4C), 131.3 (2C), 139.5 (1C), 140.3 (2C), 142.3 (2C), 142.6 (1C), 145.4 (2C), 151.7 (2C); The NMR signal of the carbon α to the boron was not observed.
合成例(4):
化合物(1−3−1)、4,8,12−トリフェニル−4H,8H,12H−3b,4,8,12−テトラアザ−3c−ボラジベンゾ[cd,mn]ピレン−3c−イウム−トリフルオロメタンスルホナートの合成
Figure 2021063022
化合物(11−2−1)、3c−ブロモ−4,8,12−トリフェニル−4H,8H,12H−3bλ4,4,8,12−テトラアザ−3cλ4−フェニルボラジベンゾ[cd,mn]ピレン(29.6mg、50.0μmol)、トリフルオロメタンスルホン酸銀(12.9mg、50.0μmol)に窒素雰囲気下、室温中でジクロロメタン(1.0mL)を加え,室温で2時間撹拌を行った。溶媒を減圧留去した後、得られた粗生成物をトルエン、ヘキサンで洗浄することで、黄色個体として化合物(1−3−1)、4,8,12−トリフェニル−4H,8H,12H−3b,4,8,12−テトラアザ−3c−ボラジベンゾ[cd,mn]ピレン−3c−イウム−トリフルオロメタンスルホナート(25.8mg、収率78%)を得た。
1H NMR (δppm in CDCl3,500 MHz); 6.04 (d, 2H), 6.13 (d, 2H), 6.44 (d, 2H),7.40-7.44 (m, 4H),7.56 (d, 4H),7.64-7.69 (m, 4H),7.72-7.78 (m, 6H)
13C NMR (δppm in CDCl3,500 MHz); 103.9 (2C), 106.4 (2C), 110.9 (2C),129.2 (4C), 129.5 (2C), 129.7 (1C), 130.7 (2C), 131.4 (2C), 132.1 (4C), 136.1 (2C), 137.6 (2C), 139.4 (1C), 143.9 (2C), 144.9 (1C), 147.2 (2C), 148.5 (2C); The NMR signal of the carbon α to the boron was not observed.
合成例(5):
化合物(1−4−1)、3c−ペンタメチルシクロペンタジエニル−4,8,12−トリフェニル−4H,8H,12H−3bλ4,4,8,12−テトラアザ−3cλ4−ボラジベンゾ[cd,mn]ピレンの合成
Figure 2021063022
化合物(11−1−1)、2,4,6−トリフェニル−2,4,6−トリアザ−1(2,6)−ピリジナ−3,5(1,3)−ジベンゼナシクロへキサファン(0.251g、0.50mmol)及びtert−ブチルベンゼン(2.5mL)に窒素雰囲気下、−45℃でブチルリチウム(0.375mL、0.6mmol)を加えた後、60℃で1時間加熱撹拌を行った。反応液を室温まで冷やした後、溶媒を留去した。その後,ジクロロ(ペンタメチルシクロペンタジエニル)イリジウム(III)ダイマー(0.398mg、0.50mmol)、酢酸ナトリウム(82.1mg、1.0mmol)、テトラヒドロフラン(2.5mL)を加えた後、60℃で8時間加熱撹拌を行った。反応液を室温まで冷やした後、セライトショートパスカラム(溶離液/ジクロロメタン)に通した。溶媒を減圧留去した後、粗生成物をトルエンを用いて再結晶を行なった後、ヘキサン、メタノールで洗浄を行うことで、黄色粉末として化合物(1−4−1)、3c−ペンタメチルシクロペンタジエニル−4,8,12−トリフェニル−4H,8H,12H−3bλ4,4,8,12−テトラアザ−3cλ4−ボラジベンゾ[cd,mn]ピレン(41.4mg、収率10%)を得た。
1H NMR (δppm in CDCl3,500 MHz); 1.53 (s, 15H), 5.89 (d, 2H), 6.03 (d, 2H),6.66 (t, 2H),6.69 (t, 1H),6.96 (t, 1H),7.17 (t, 2H),7.25 (d, 2H),7.37 (t, 2H), 7.41 (d, 4H), 7.53 (t, 4H), 7.55 (d, 2H); HRMS (ESI) m/z [M+Na]+ calcd for C45H39IrN4Na 851.2702; observed 851.2706.
合成例(6):化合物(11−2−1)の合成
Figure 2021063022
3−クロロ−N−フェニルアニリン(2.04g、10.0mmol)、2,6−ジブロモピリジン(3.55g、15.0mmol)、ターシャリーブトキシナトリウム(2.40g、25.0mmol)、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)(0.366g、40.0μmol)、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(0.463g、80.0μmol)に窒素雰囲気下、室温中でトルエン(50mL)を加え、室温で8時間加熱撹拌を行った。反応液を用いて、シリカゲルショートパスカラム(溶離液/トルエン)に通した後、溶媒を減圧留去した。その後、粗生成物を用いてシリカゲルカラム(溶離液/ヘキサン:トルエン=8:1、4:1、トルエン)を行った。その結果、白色個体として6−ブロモ−N−(3−クロロフェニル)−N−フェニルピリジン−2−アミン(2.37g、収率66%)を得た。
1H NMR (δppm in CDCl3,500 MHz); 6.56 (d, 1H), 6.97 (d, 1H), 7.07-7.11 (m, 2H), 7.15 (t, 1H), 7.18 (d, 2H), 7.22 (t, 1H), 7.23 (t, 1H), 7.27 (t, 1H), 7.37 (t, 2H)
13C NMR (δppm in CDCl3,500 MHz); 111.6 (1C), 119.9 (1C), 123.9 (1C),124.7 (1C), 125.8 (1C), 125.9 (1C), 127.0 (2C),129.8 (2C), 130.0 (1C), 134.6 (1C), 139.4 (1C), 139.9 (1C), 144.7 (1C), 146.4 (1C), 158.2 (1C)
Figure 2021063022
6−ブロモ−N−(3−クロロフェニル)−N−フェニルピリジン−2−アミン(1.80g、5.0mmol)、N2,N6−ジフェニル−2,6−ピリジンジアミン(1.57g、6.0mmol)、ターシャリーブトキシナトリウム(1.20g、12.5mmol)、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)(91.6mg、0.100mmol)、4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテン(0.116g、0.200mmol)に窒素雰囲気下、室温中でトルエン(25mL)を加え、80℃で24時間加熱撹拌を行った。反応液を室温まで冷やした後、シリカゲルショートパスカラム(溶離液/ジクロロメタン)に通し,溶媒を減圧留去した。その後、粗生成物を用いて昇華精製を行った。その結果、白色個体としてN2−(3−クロロフェニル)−N2,N6−ジフェニル−N6−(6−(フェニルアミノ)ピリジン−2−イル)ピリジン−2,5−ジアミン(0.864g、収率32%)を得た。
1H NMR (δppm in CDCl3,500 MHz); 5.56 (s, 1H),6.28 (d, 1H), 6.30 (s, 1H), 6.33 (d, 1H),6.47 (d, 1H),6.50 (d, 1H),6.89 (t, 1H),6.95 (d, 1H),6.99 (d, 1H),7.02-7.05 (m, 7H), 7.19-7.28 (m, 7H),7.31 (t, 1H), 7.34 (t, 2H)
13C NMR (δppm in CDCl3,500 MHz); 102.1 (1C), 107.0 (1C), 107.1 (1C), 108.8(1C), 118.9 (2C), 121.5 (1C), 123.5 (1C), 123.8 (1C), 124.9 (1C),125.2 (1C), 125.5 (1C), 126.9 (2C), 128.0 (2C), 128.8 (2C), 129.2 (2C), 129.4 (2C), 129.6 (1C) , 134.1 (1C), 138.5 (1C), 138.7 (1C), 140.7 (1C), 145.0 (1C), 145.3 (1C), 147.0 (1C), 154.2 (1C), 156.4 (1C), 156.7 (1C), 157.1 (1C)
Figure 2021063022
2−(3−クロロフェニル)−N2,N6−ジフェニル−N6−(6−(フェニルアミノ)ピリジン−2−イル)ピリジン−2,5−ジアミン(54.0mg、0.10mmol)、ターシャリーブトキシナトリウム(9.61mg、0.10mmol)、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)(1.83mg、2.00μmol)、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル(2.49mg、4.00μmol)に窒素雰囲気下、室温中でo−キシレン(2.0mL)を加え、60℃で1時間、90℃で1時間、120℃で8時間、140℃で8時間加熱撹拌を行った。反応液を室温まで冷やした後、シリカゲルショートパスカラム(溶離液/ジクロロメタン,酢酸エチル)に通し、溶媒を減圧留去した。その後、粗生成物を用いてゲル浸透クロマトグラフィー(溶離液/ジクロロエタン)を行なった後、溶媒を減圧留去した。その後、シリカゲルカラム(溶離液/ジクロロメタン:ヘキサン=4:1、ジクロロメタン、酢酸エチル)を行った後、ヘキサンを用いて洗浄した。その結果、白色個体として化合物(11−2−1)、2,4,6−トリフェニル−2,4,6−トリアザ−1,3(2,6)−ジピリジナ−5(1,3)−ベンゼナシクロへキサファン(10.1mg、収率20%)を得た。
1H NMR (δppm in CDCl3,500 MHz); 6.03 (d, 2H), 6.52 (d, 2H), 6.74 (dd, 2H), 7.01 (t, 1H), 7.11 (t, 2H),7.24 (t, 2H),7.24-7.38 (m, 9H), 7.44 (d, 2H),7.48 (t, 2H),8.48 (t, 1H)
13C NMR (δppm in CDCl3,500 MHz); 108.4 (2C), 108.8 (2C), 120.3 (2C),123.1 (4C), 123.3 (2C), 127.1 (2C), 128.4 (1C),129.3 (2C), 129.5 (4C), 130.2 (2C), 130.8 (4C), 138.6 (1C), 142.3 (1C), 143.5 (1C), 144.2 (2C), 144.8 (2C)
原料の化合物を適宜変更することにより、上述した合成例に準じた方法で、本発明の他の化合物を合成することができる。
次に、本発明の化合物の基礎物性の評価と本発明の化合物を用いた有機EL素子の作製と評価について記載する。
<基礎物性の評価>
サンプルの準備
評価対象の化合物の吸収特性と発光特性(蛍光と燐光)を評価する場合、評価対象の化合物を溶媒に溶解して溶媒中で評価する場合と薄膜状態で評価する場合がある。さらに、薄膜状態で評価する場合は、評価対象の化合物の有機EL素子における使用の態様に応じて、評価対象の化合物のみを薄膜化し評価する場合と評価対象の化合物を適切なマトリックス材料中に分散して薄膜化して評価する場合がある。マトリックス材料としては、市販のPMMA(ポリメチルメタクリレート)等を用いることができる。PMMAに分散した薄膜サンプルは、例えば、PMMAと評価対象の化合物をトルエン中で溶解させた後、スピンコーティング法により石英製の透明支持基板(10mm×10mm)上に薄膜を形成して作製することができる。また、マトリックス材料がホスト材料である場合の薄膜サンプルの作製方法を以下に記す。石英製の透明支持基板(10mm×10mm×1.0mm)を市販の蒸着装置(昭和真空(株)製)の基板ホルダーに固定し、ホスト材料を入れたモリブデン製蒸着用ボート、ドーパント材料を入れたモリブデン製蒸着用ボートを装着する。次に、真空槽を5×10-4Paまで減圧し、ホスト材料が入った蒸着用ボートとドーパント材料が入った蒸着用ボートを同時に加熱して適切な膜厚になるように蒸着してホスト材料とドーパント材料の混合薄膜を形成する。ホスト材料とドーパント材料の設定重量比に応じて蒸着速度を制御する。
吸収特性と発光特性の評価
サンプルの吸収スペクトルの測定は、紫外可視近赤外分光光度計((株)島津製作所製、UV−2600)を用いて行った。また、サンプルの蛍光スペクトルまたは燐光スペクトルの測定は、分光蛍光光度計(日立ハイテク(株)製、F−7000)を用いて行った。蛍光スペクトルの測定に対しては、室温で適切な励起波長で励起しフォトルミネッセンスを測定した。燐光スペクトルの測定に対しては、付属の冷却ユニットを使用して、前記サンプルを液体窒素に浸した状態(温度77K)で測定した。燐光スペクトルを観測するため、光学チョッパを使用して励起光照射から測定開始までの遅れ時間を調整した。サンプルは適切な励起波長で励起しフォトルミネッセンスを測定した。
遅延蛍光の評価
蛍光寿命測定装置(浜松ホトニクス(株)製、C11367−01)を用いて300Kで蛍光寿命を測定する。適切な励起波長で測定される極大発光波長において蛍光寿命の早い成分と遅い成分を観測する。蛍光を発光する一般的な有機EL材料の室温における蛍光寿命測定では、熱による3重項成分の失活により、燐光に由来する3重項成分が関与する遅い成分が観測されることはほとんどない。評価対象の化合物において遅い成分が観測された場合は、励起寿命の長い3重項エネルギーが熱活性化により1重項エネルギーに移動して遅延蛍光として観測されたことを示すことになる。
<有機EL素子の評価>
本発明の化合物は、適切なバンドギャップ(Eg)、高い三重項励起エネルギー(ET)および小さいΔEST(三重項励起状態(T1)と一重項励起状態(S1)のエネルギー差)を特徴として有しているため、特に発光層および電荷輸送層への適用が期待できる。
有機EL素子の構成
本発明の化合物を用いた有機EL素子の構成として、例えば、以下の構成Aと構成Bがある。
(素子構成A)
各層のリファレンスとなる構成材料の一例を下記表1に示す。本構成における正孔輸送層材料、電子阻止層材料、発光層のホスト材料、発光層のドーパント材料または電子輸送層材料の少なくとも一つを本発明の化合物に代替することによって更なる特性改善が期待できる。なお、各層の膜厚や構成材料は本発明の化合物の基礎物性によって適宜変更することができる。
Figure 2021063022
表1において、「HI」(正孔注入層材料)はN,N'−ジフェニル−N,N'−ジナフチル−4,4'−ジアミノビフェニルであり、「HT」(正孔輸送層材料)は4,4',4"−トリス(N−カルバゾリル)トリフェニルアミンであり、「EB」(電子阻止層材料)は1,3−ビス(N−カルバゾリル)ベンゼンであり、「EM−H」(発光層ホスト材料)は3,3'−ビス(N−カルバゾリル)−1,1'−ビフェニルであり、「Firpic」(発光層ドーパント材料)はビス[2−(4,6−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2](ピコリナト)イリジウム(III)であり、「ET」(電子輸送層材料)はジフェニル[4−(トリフェニルシリル)フェニル]ホスフィンオキシドである。以下に化学構造を示す。
Figure 2021063022
(素子構成B)
各層のリファレンスとなる構成材料の一例を下記表2に示す。本構成における正孔輸送層1の材料、正孔輸送層2の材料、発光層のホスト材料、発光層のドーパント材料または電子輸送層材料の少なくとも一つを本発明の化合物に代替することによって更なる特性改善が期待できる。なお、各層の膜厚や構成材料は本発明の化合物の基礎物性によって適宜変更することができる。
Figure 2021063022
表2において、「HI」(正孔注入層材料)はN4,N4'−ジフェニル−N4,N4'−ビス(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)−[1,1'−ビフェニル]−4,4'−ジアミンであり、「HAT−CN」(正孔注入層材料)は1,4,5,8,9,12−ヘキサアザトリフェニレンヘキサカルボニトリルであり、「HT−1」(正孔輸送層材料)はN−([1,1'−ビフェニル]−4−イル)−9,9−ジメチル−N−(4−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)フェニル)−9H−フルオレン−2−アミンであり、「HT−2」(正孔輸送層材料)はN,N−ビス(4−(ジベンゾ[b,d]フラン−4−イル)フェニル)−[1,1':4',1"−テルフェニル]−4−アミンであり、「EM−H」(発光層ホスト材料)は9−フェニル−10−(4−フェニルナフタレン−1−イル)アントラセンであり、「BD1」(発光層ドーパント材料)は2,12−ジ−t−ブチル−5,9−ビス(4−(t−ブチル)フェニル)−7−メチル−5,9−ジヒドロ−5,9−ジアザ−13b−ボラナフト[3,2、1−de]アントラセンであり、「ET」(電子輸送層材料)は4,4’−((2−フェニルアントラセン−9,10−ジイル)ビス(4,1−フェニレン))ジピリジンである。「Liq」と共に以下に化学構造を示す。
Figure 2021063022
有機EL素子の作製
素子構成Aの作製方法を以下に記述する。
スパッタリングにより100nmの厚さに製膜したITOを50nmまで研磨した、26mm×28mm×0.7mmのガラス基板((株)オプトサイエンス製)を透明支持基板とした。この透明支持基板を市販の蒸着装置(昭和真空(株)製)の基板ホルダーに固定し、HI(正孔注入層材料)、HT(正孔輸送層材料)、EB(電子阻止層材料)、EM−H(ホスト材料)、Firpic(ドーパント材料)、ET(電子輸送層材料)およびLiF(電子注入層材料)をそれぞれ入れたモリブデン製蒸着用ボート、およびアルミニウムを入れたタングステン製蒸着用ボートを装着する。
透明支持基板のITO膜の上に順次、下記各層を形成する。真空槽を5×10-4Paまで減圧し、まず、HIを加熱して膜厚40nmになるように蒸着して正孔注入層を形成する。次に、HTを加熱して膜厚15nmになるように蒸着して正孔輸送層を形成する。次に、EBを加熱して膜厚15nmになるように蒸着して電子阻止層を形成する。次に、EM−HとFirpic(ドーパント材料)を同時に加熱して膜厚30nmになるように蒸着して発光層を形成する。EM−HとFirpicの重量比がおよそ95対5になるように蒸着速度を調節する。次に、ETを加熱して膜厚40nmになるように蒸着して電子輸送層を形成した。各層の蒸着速度は0.01〜1nm/秒とする。
その後、LiFを加熱して膜厚1nmになるように0.01〜0.1nm/秒の蒸着速度で蒸着し、次いで、アルミニウムを加熱して膜厚100nmになるように蒸着して陰極を形成し、有機EL素子を得る。このとき、アルミニウムの蒸着速度は1nm〜10nm/秒になるように調節する。
素子構成Bも素子構成Aと同様に条件を最適化して作製することができる。
評価項目および評価方法
評価項目としては、駆動電圧(V)、発光波長(nm)、CIE色度(x,y)、外部量子効率(%)、発光スペクトルの最大波長(nm)および半値幅(nm)等がある。これらの評価項目は、例えば10cd/m2発光時の値を用いることができる。
発光素子の量子効率には、内部量子効率と外部量子効率とがあるが、内部量子効率は、発光素子の発光層に電子(または正孔)として注入される外部エネルギーが純粋に光子に変換される割合を示している。一方、外部量子効率は、この光子が発光素子の外部にまで放出された量に基づいて算出され、発光層において発生した光子は、その一部が発光素子の内部で吸収されたりあるいは反射され続けたりして、発光素子の外部に放出されないため、外部量子効率は内部量子効率よりも低くなる。
分光放射輝度(発光スペクトル)と外部量子効率の測定方法は次の通りである。アドバンテスト社製電圧/電流発生器R6144を用いて、素子の輝度が10cd/m2になる電圧を印加して素子を発光させる。TOPCON社製分光放射輝度計SR−3ARを用いて、発光面に対して垂直方向から可視光領域の分光放射輝度を測定する。発光面が完全拡散面であると仮定して、測定した各波長成分の分光放射輝度の値を波長エネルギーで割ってπを掛けた数値が各波長におけるフォトン数である。次いで、観測した全波長領域でフォトン数を積算し、素子から放出された全フォトン数とする。印加電流値を素電荷で割った数値を素子へ注入したキャリア数として、素子から放出された全フォトン数を素子へ注入したキャリア数で割った数値が外部量子効率である。また、発光スペクトルの半値幅は、極大発光波長を中心として、その強度が50%になる上下の波長間の幅として求められる。
100 有機電界発光素子
101 基板
102 陽極
103 正孔注入層
104 正孔輸送層
105 発光層
106 電子輸送層
107 電子注入層
108 陰極

Claims (20)

  1. 下記式(1)で表される多環芳香族化合物または下記式(1)で表される構造を複数有する多環芳香族化合物の多量体である、錯体。
    Figure 2021063022
    (式(1)中、
    A環は少なくとも1つの窒素原子を持つヘテロアリール環であり、B環およびC環はそれぞれ独立して、アリール環またはヘテロアリール環であり、A環、B環およびC環それぞれにおけるアリール環またはヘテロアリール環の少なくとも1つの水素は置換されていてもよく、
    Yは、配位子で配位されている周期表第3〜11族の金属、配位子で配位されている周期表第13〜14族の金属もしくは半金属、または配位子で配位されている周期表第15〜16族の半金属を示し、
    1、X2およびX3は、それぞれ独立して、O、N−Rであり、ただし、前記N−RのRはアルキル、シクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり、前記N−RのRは連結基または単結合により前記A環、B環および/またはC環と結合していてもよく、
    Zは炭素原子または窒素原子であり、
    式(1)で表される化合物または構造における少なくとも1つの水素はシアノ、ハロゲンまたは重水素で置換されていてもよい。)
  2. 下記式(1’)で表される多環芳香族化合物または下記式(1’)で表される構造を複数有する多環芳香族化合物の多量体である、請求項1に記載の錯体。
    Figure 2021063022
    (式(1’)中、Zaはそれぞれ独立して、C−RaまたはNを表すか、または同じ環で隣接する2つのZaはそれぞれそれらの間の結合と一緒になってN−Ra、O、SまたはSeを示し
    aはそれぞれ独立して、置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリール、置換もしくは無置換のジアリールアミノ、置換もしくは無置換のジヘテロアリールアミノ、置換もしくは無置換のアリールヘテロアリールアミノ、置換もしくは無置換のジアリールボリル(2つのアリールは単結合もしくは連結基を介して結合していてもよい)、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のシクロアルキル、置換もしくは無置換のアルコキシ、置換もしくは無置換のアリールオキシ、または置換または無置換のシリルであり、同じ環で隣接する2つのZaに置換するRaは互いに結合してアリール環、ヘテロアリール環、またはシクロアルキル環を形成してもよく、形成された環における少なくとも1つの水素は、ジアリールアミノまたはジアリールボリル(2つのアリールは単結合または連結基を介して結合していてもよい)で置換されていてもよく、
    Yは、配位子で配位されている周期表第3〜11族の金属、配位子で配位されている周期表第13〜14族の金属もしくは半金属、または配位子で配位されている周期表第15〜16族の半金属を示し、
    1、X2およびX3は、それぞれ独立して、O、N−Rであり、ただし、前記N−RのRはアルキル、シクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり、前記N−RのRは連結基または単結合により前記A環、B環および/またはC環と結合していてもよく、
    Zは炭素原子または窒素原子であり、
    式(1’)で表される化合物または構造における少なくとも1つの水素はシアノ、ハロゲンまたは重水素で置換されていてもよい。)
  3. aはそれぞれ独立して、水素、炭素数6〜30のアリール、炭素数2〜30のヘテロアリール、ジアリールアミノ(ただし、各アリールは炭素数6〜12のアリール)またはジアリールボリル(ただし、各アリールは炭素数6〜12のアリールであり、2つのアリールは単結合または連結基を介して結合していてもよい)であり、また、同じ環で隣接する2つのZaに置換するRaは互いに結合してa環、b環またはc環と共に炭素数9〜16のアリール環または炭素数6〜15のヘテロアリール環を形成していてもよく、形成された環における少なくとも1つの水素は、ジアリールアミノ(ただし、各アリールは炭素数6〜12のアリール)またはジアリールボリル(ただし、各アリールは炭素数6〜12のアリールであり、2つのアリールは単結合または連結基を介して結合していてもよい)で置換されていてもよい、請求項2に記載の錯体。
  4. Yが、M−Rxであり、Mがホウ素またはイリジウムであり、Rxがアリール、ヘテロアリール、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、ハロゲン、シアノ、シクロペンタジエニルまたはスルホナートである請求項1〜3のいずれか一項に記載の錯体。
  5. 下記いずれかの式で表される請求項1に記載の錯体。
    Figure 2021063022
    (式中、Phはフェニル、OTfはトルフルオロメタンスルホナート、Cp*はペンタメチルシクロペンタジエニルである。)
  6. 下記式(11)で表される多環芳香族化合物、または下記式(11)で表される構造を複数有する多環芳香族化合物の多量体を含む、金属または半金属の錯体の製造原料。
    Figure 2021063022
    (式(1)中、
    A環は少なくとも1つの窒素原子を持つヘテロアリール環であり、B環およびC環はそれぞれ独立して、アリール環またはヘテロアリール環であり、A環、B環およびC環それぞれにおけるアリール環またはヘテロアリール環の少なくとも1つの水素は置換されていてもよく、
    1、X2およびX3は、それぞれ独立して、O、N−Rであり、ただし、前記N−RのRはアルキル、シクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり、前記N−RのRは連結基または単結合により前記A環、B環および/またはC環と結合していてもよく、
    XはC−HまたはNであり、
    式(11)で表される化合物または構造における少なくとも1つの水素はシアノ、ハロゲンまたは重水素で置換されていてもよい。)
  7. 式(11)で表される多環芳香族化合物、または下記式(11)で表される構造を複数有する多環芳香族化合物の多量体が、下記式(11’)で表される多環芳香族化合物、または下記式(11’)で表される構造を複数有する多環芳香族化合物の多量体である請求項6に記載の製造原料。
    Figure 2021063022
    (式(11’)中、Zaはそれぞれ独立して、C−RaまたはNを表すか、または同じ環で隣接する2つのZaはそれぞれそれらの間の結合と一緒になってN−Ra、O、SまたはSeを示し
    aはそれぞれ独立して置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリール、置換もしくは無置換のジアリールアミノ、置換もしくは無置換のジヘテロアリールアミノ、置換もしくは無置換のアリールヘテロアリールアミノ、置換もしくは無置換のジアリールボリル(2つのアリールは単結合または連結基を介して結合していてもよい)、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のシクロアルキル、置換もしくは無置換のアルコキシ、置換もしくは無置換のアリールオキシ、または置換もしくは無置換のシリルであり、同じ環で隣接する2つのZaに置換するRaは互い結合してアリール環、ヘテロアリール環、またはシクロアルキル環を形成してもよく、形成された環における少なくとも1つの水素は、ジアリールアミノまたはジアリールボリル(2つのアリールは単結合または連結基を介して結合していてもよい)で置換されていてもよく、
    1、X2およびX3は、それぞれ独立して、O、N−Rであり、ただし、前記N−RのRはアルキル、シクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールであり、前記N−RのRは連結基または単結合により前記A環、B環および/またはC環と結合していてもよく、
    XはC−HまたはNであり、
    式(11’)で表される化合物または構造における少なくとも1つの水素はシアノ、ハロゲンまたは重水素で置換されていてもよい。)
  8. 前記式(11’)中、
    aはそれぞれ独立して、水素、炭素数6〜30のアリール、炭素数2〜30のヘテロアリール、ジアリールアミノ(ただし、各アリールは炭素数6〜12のアリール)またはジアリールボリル(ただし、各アリールは炭素数6〜12のアリールであり、2つのアリールは単結合または連結基を介して結合していてもよい)であり、また、同じ環で隣接する2つのZaに置換するRaは互いに結合してa環、b環またはc環と共に炭素数9〜16のアリール環または炭素数6〜15のヘテロアリール環を形成していてもよく、形成された環における少なくとも1つの水素は、ジアリールアミノ(ただし、各アリールは炭素数6〜12のアリール)またはジアリールボリル(ただし、各アリールは炭素数6〜12のアリールであり、2つのアリールは単結合または連結基を介して結合していてもよい)で置換されていてもよい、
    請求項7に記載の製造原料。
  9. 前記錯体が請求項1〜5のいずれか一項に記載の錯体である、請求項6〜8のいずれか一項に記載の製造原料。
  10. 式(11)で表される多環芳香族化合物または式(11)で表される構造を複数有する多環芳香族化合物の多量体のA環の窒素と、周期表第3〜11族の金属、周期表第13〜14族の金属もしくは半金属、または配位子で配位されている周期表第15〜16族の半金属との間に配位結合を形成することを含む、請求項6〜8のいずれか一項に記載の製造原料を用いた錯体の製造方法。
  11. 前記錯体が請求項1〜5のいずれか一項に記載の錯体である、請求項10に記載の製造方法。
  12. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の錯体を含有する、有機デバイス用材料。
  13. 陽極および陰極からなる一対の電極と、該一対の電極間に配置され、請求項1〜5のいずれか一項に記載の錯体を含有する発光層とを有する、有機電界発光素子。
  14. 陽極および陰極からなる一対の電極と、該一対の電極間に配置された発光層と、前記陰極および前記発光層の間に配置され請求項1〜5のいずれか一項に記載の錯体を含有する電子注入層および/または電子輸送層とを有する、有機電界発光素子。
  15. 陽極および陰極からなる一対の電極と、該一対の電極間に配置された発光層と、前記陽極および前記発光層の間に配置され、請求項1〜5のいずれか一項に記載の錯体を含有する正孔注入層および/または正孔輸送層とを有する、有機電界発光素子。
  16. 請求項13〜15のいずれか一項に記載の有機電界発光素子を備えた表示装置。
  17. 請求項13〜15のいずれか一項に記載の有機電界発光素子を備えた照明装置。
  18. 下記式(11)で表される多環芳香族化合物、または下記式(11)で表される構造を複数有する多環芳香族化合物の多量体。
    Figure 2021063022
    (式(11)中、
    A環は少なくとも1つの窒素原子を持つヘテロアリール環であり、B環およびC環はそれぞれ独立して、アリール環またはヘテロアリール環であり、A環、B環およびC環それぞれにおけるアリール環またはヘテロアリール環の少なくとも1つの水素は置換されていてもよく、
    1、X2およびX3は、それぞれ独立して、O、N−Rであり、ただし前記N−RのRはアリールまたはヘテロアリールであり、
    XはC−HまたはNであり、
    式(11)で表される化合物または構造における少なくとも1つの水素はシアノ、ハロゲンまたは重水素で置換されていてもよい。)
  19. 下記式(11’)で表される多環芳香族化合物、または下記式(11’)で表される構造を複数有する多環芳香族化合物の多量体。
    Figure 2021063022
    (式(11’)中、Zaはそれぞれ独立して、C−RaまたはNを表すか、または同じ環で隣接する2つのZaはそれぞれそれらの間の結合と一緒になってN−Ra,O、SまたはSeを示し
    aはそれぞれ独立して、置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリール、置換もしくは無置換のジアリールアミノ、置換もしくは無置換のジヘテロアリールアミノ、置換もしくは無置換のアリールヘテロアリールアミノ、置換もしくは無置換のジアリールボリル(2つのアリールは単結合または連結基を介して結合していてもよい)、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のシクロアルキル、置換もしくは無置換のアルコキシ、置換もしくは無置換のアリールオキシ、または置換もしくは無置換のシリルであり、同じ環で隣接する2つのZaに置換するRaは互い結合してアリール環、ヘテロアリール環またはシクロアルキル環を形成していてもよく、形成された環における少なくとも1つの水素は、ジアリールアミノまたはジアリールボリル(2つのアリールは単結合または連結基を介して結合していてもよい)で置換されていてもよく、
    1、X2およびX3は、それぞれ独立して、O、N−Rであり、ただし、前記N−RのRはアルキル、シクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールであり、
    XはC−HまたはNであり、
    式(11’)で表される化合物または構造における少なくとも1つの水素はシアノ、ハロゲンまたは重水素で置換されていてもよい。)
  20. 下記いずれかの式で表される多環芳香族化合物。
    Figure 2021063022
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