JP7018171B2 - アルケニル基を有する多環芳香族化合物およびその多量体 - Google Patents

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本発明は、アルケニル基を有する多環芳香族化合物およびその多量体に関する。このアルケニル基を有する多環芳香族化合物を用いることで、例えば有機電界発光素子、有機電界効果トランジスタおよび有機薄膜太陽電池などの有機デバイスならびに表示装置および照明装置に用いられる多環芳香族化合物およびその多量体を製造する。
従来、電界発光する発光素子を用いた表示装置は、省電力化や薄型化が可能なことから、種々研究され、さらに、有機材料からなる有機電界発光素子は、軽量化や大型化が容易なことから活発に検討されてきた。特に、光の三原色の一つである青色などの発光特性を有する有機材料の開発、および正孔、電子などの電荷輸送能(半導体や超電導体となる可能性を有する)を備えた有機材料の開発については、高分子化合物、低分子化合物を問わずこれまで活発に研究されてきた。
有機EL素子は、陽極および陰極からなる一対の電極と、当該一対の電極間に配置され、有機化合物を含む一層または複数の層とからなる構造を有する。有機化合物を含む層には、発光層や、正孔、電子などの電荷を輸送または注入する電荷輸送/注入層などがあるが、これらの層に適当な種々の有機材料が開発されている。
発光層用材料としては、例えばベンゾフルオレン系化合物などが開発されている(国際公開第2004/061047号公報)。また、正孔輸送材料としては、例えばトリフェニルアミン系化合物などが開発されている(特開2001-172232号公報)。また、電子輸送材料としては、例えばアントラセン系化合物などが開発されている(特開2005-170911号公報)。
また、近年では有機EL素子や有機薄膜太陽電池に使用する材料としてトリフェニルアミン誘導体を改良した材料も報告されている(国際公開第2012/118164号公報)。この材料は既に実用化されていたN,N’-ジフェニル-N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-1,1’-ビフェニル-4,4’-ジアミン(TPD)を参考にして、トリフェニルアミンを構成する芳香族環同士を連結することでその平面性を高めたことを特徴とする材料である。この文献では例えばNO連結系化合物(63頁の化合物1)の電荷輸送特性が評価されているが、NO連結系化合物以外の材料の製造方法については記載されておらず、また、連結する元素が異なれば化合物全体の電子状態が異なるため、NO連結系化合物以外の材料から得られる特性も未だ知られていない。このような化合物の例は他にも見られる(国際公開第2011/107186号公報、国際公開第2015/102118号公報)。例えば、三重項励起子のエネルギー(T1)が大きい共役構造を有する化合物は、より短い波長の燐光を発することができるため、青色の発光層用材料として有益である。また、発光層を挟む電子輸送材料や正孔輸送材料としてもT1が大きい新規共役構造を有する化合物が求められている。
有機EL素子のホスト材料は、一般に、ベンゼンやカルバゾールなどの既存の芳香族環を単結合やリン原子やケイ素原子で複数連結した分子である。これは、比較的共役系の小さな芳香族環を多数連結することで、ホスト材料に必要とされる大きなHOMO-LUMOギャップ(薄膜におけるバンドギャップEg)が担保されるからである。さらに、燐光材料や熱活性型遅延蛍光材料を用いた有機EL素子のホスト材料には、高い三重項励起エネルギー(E)も必要となるが、分子にドナーあるいはアクセプター性の芳香族環や置換基を連結することで、三重項励起状態(T1)のSOMO1およびSOMO2を局在化させ、両軌道間の交換相互作用を小さくすることで、三重項励起エネルギー(E)を向上させることが可能となる。しかし、共役系の小さな芳香族環はレドックス安定性が十分ではなく、既存の芳香族環を連結していった分子をホスト材料として用いた素子は寿命が十分ではない。一方、拡張π共役系を有する多環芳香族化合物は、一般に、レドックス安定性は優れているが、HOMO-LUMOギャップ(薄膜におけるバンドギャップEg)や三重項励起エネルギー(E)が低いため、ホスト材料に不向きと考えられてきた。
国際公開第2004/061047号公報 特開2001-172232号公報 特開2005-170911号公報 国際公開第2012/118164号公報 国際公開第2011/107186号公報 国際公開第2015/102118号公報
上述するように、有機EL素子に用いられる材料としては種々の材料が開発されているが、有機EL素子用材料の選択肢を増やすために、従来とは異なる化合物からなる材料の開発が望まれている。特に、特許文献1~6で報告されたNO連結系化合物以外の材料から得られる有機EL特性やその製造方法は未だ知られていない。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、例えばイソプロペニル基のようなアルケニル基をあらかじめ分子に導入した後、ルイス酸などの酸で環化反応をさせることで、ホウ素原子および酸素原子や窒素原子などのヘテロ原子と、メチレン基とで複数の芳香族環を連結した新規な多環芳香族化合物が製造できることを見出し、本発明を完成させた。また、この多環芳香族化合物は高い蛍光量子収率や優れた安定性などを有することが特徴であり、これを含有する層を一対の電極間に配置して有機EL素子を構成することにより、優れた有機EL素子が得られることが分かった。すなわち本発明は、以下のようなアルケニル基を有する多環芳香族化合物およびその多量体を提供し、このアルケニル基を有する多環芳香族化合物を用いることで有機デバイスなどに有用な多環芳香族化合物を製造することができる。
項1.
下記一般式(1’)で表される多環芳香族化合物または下記一般式(1’)で表される構造を複数有する多環芳香族化合物の多量体。
Figure 0007018171000001
(上記式(1’)中、
A環、B環およびC環は、それぞれ独立して、アリール環またはヘテロアリール環であり、これらの環における少なくとも1つの水素は置換されていてもよく、
YはB(ホウ素)であり、
Xは、O、N-R、SまたはSeであり、前記N-RのRは、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいアルキルまたは置換されていてもよいシクロアルキルであり、また、前記N-RのRは連結基または単結合により前記A環および/またはC環と結合していてもよく、
Raは、「-CH-Cn-12(n-1)+1(nは1以上)」で表される、メチレン基から始まる直鎖または分岐鎖のアルキルであり、
Ra’は、「-Cn-12(n-1)+1(nは1以上)」で表される直鎖または分岐鎖のアルキルであって、nが1の場合は水素を表し、
Raにおけるメチレン基以外の「-Cn-12(n-1)+1」部分の構造と、Ra’である「-Cn-12(n-1)+1」の構造とは同じであり、そして、
式(1’)で表される多環芳香族化合物または構造における少なくとも1つの水素は重水素で置換されていてもよい。)
項2.
A環、B環およびC環は、それぞれ独立して、アリール環またはヘテロアリール環であり、これらの環における少なくとも1つの水素は、置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリール、置換もしくは無置換のジアリールアミノ、置換もしくは無置換のジヘテロアリールアミノ、置換もしくは無置換のアリールヘテロアリールアミノ、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のシクロアルキル、置換もしくは無置換のアルコキシ、置換もしくは無置換のアリールオキシ、置換もしくは無置換のアリールスルホニル、置換もしくは無置換のジアリールホスフィン、置換もしくは無置換のジアリールホスフィンスルフィド、置換もしくは無置換のシリル、置換もしくは無置換のゲルミル、置換もしくは無置換のスルホン酸エステル、置換もしくは無置換のボロン酸エステル、ボロン酸、ハロゲンまたはシアノで置換されていてもよく、
YはB(ホウ素)であり、
Xは、O、N-R、SまたはSeであり、前記N-RのRは、アリール、ヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキルであり、Rにおける少なくとも1つの水素は、置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリール、置換もしくは無置換のジアリールアミノ、置換もしくは無置換のジヘテロアリールアミノ、置換もしくは無置換のアリールヘテロアリールアミノ、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のシクロアルキル、置換もしくは無置換のアルコキシ、置換もしくは無置換のアリールオキシ、置換もしくは無置換のアリールスルホニル、置換もしくは無置換のジアリールホスフィン、置換もしくは無置換のジアリールホスフィンスルフィド、置換もしくは無置換のシリル、置換もしくは無置換のゲルミル、置換もしくは無置換のスルホン酸エステル、置換もしくは無置換のボロン酸エステル、ボロン酸、ハロゲンまたはシアノで置換されていてもよく、また、前記N-RのRは-O-、-S-、-C(-R)-または単結合により前記A環および/またはC環と結合していてもよく、前記-C(-R)-のRは水素またはアルキルであり、
Raは、「-CH-Cn-12(n-1)+1(nは1~6)」で表される、メチレン基から始まる直鎖または分岐鎖のアルキルであり、
Ra’は、「-Cn-12(n-1)+1(nは1~6)」で表される直鎖または分岐鎖のアルキルであって、nが1の場合は水素を表し、
Raにおけるメチレン基以外の「-Cn-12(n-1)+1」部分の構造と、Ra’である「-Cn-12(n-1)+1」の構造とは同じであり、
式(1’)で表される多環芳香族化合物または構造における少なくとも1つの水素は重水素で置換されていてもよく、そして、
多環芳香族化合物の多量体の場合には、式(1’)で表される構造を2または3個有する2または3量体である、
項1に記載する多環芳香族化合物または多環芳香族化合物の多量体。
項3.
下記一般式(2’)で表される多環芳香族化合物または下記一般式(2’)で表される構造を複数有する多環芳香族化合物の多量体。
Figure 0007018171000002
(上記式(2’)中、
、R、R、R、R、R、R、R、R、R10およびR11は、それぞれ独立して、水素、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アリールスルホニル、ジアリールホスフィン、ジアリールホスフィンスルフィド、シリル、ゲルミル、スルホン酸エステル、ボロン酸エステル、ボロン酸、ハロゲンまたはシアノであり、これらにおける少なくとも1つの水素は、アリール、ヘテロアリール、アルキル、ハロゲンまたはシアノで置換されていてもよく、また、R~R11のうちの隣接する基同士は結合してa環、b環またはc環と共にアリール環またはヘテロアリール環を形成していてもよく、形成された環における少なくとも1つの水素は、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、フルオロアルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アリールスルホニル、ジアリールホスフィン、ジアリールホスフィンスルフィド、シリル、ゲルミル、スルホン酸エステル、ボロン酸エステル、ボロン酸、ハロゲンまたはシアノで置換されていてもよく、これらにおける少なくとも1つの水素は、アリール、ヘテロアリール、アルキル、ハロゲンまたはシアノで置換されていてもよく、
YはB(ホウ素)であり、
Xは、O、N-R、SまたはSeであり、前記N-RのRは、アリール、ヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキルであり、Rにおける少なくとも1つの水素は、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アリールスルホニル、ジアリールホスフィン、ジアリールホスフィンスルフィド、シリル、ゲルミル、スルホン酸エステル、ボロン酸エステル、ボロン酸、ハロゲンまたはシアノで置換されていてもよく、これらにおける少なくとも1つの水素は、アリール、ヘテロアリール、アルキル、ハロゲンまたはシアノで置換されていてもよく、
Raは、「-CH-Cn-12(n-1)+1(nは1~6)」で表される、メチレン基から始まる直鎖または分岐鎖のアルキルであり、
Ra’は、「-Cn-12(n-1)+1(nは1~6)」で表される直鎖または分岐鎖のアルキルであって、nが1の場合は水素を表し、
Raにおけるメチレン基以外の「-Cn-12(n-1)+1」部分の構造と、Ra’である「-Cn-12(n-1)+1」の構造とは同じであり、そして、
多環芳香族化合物の多量体の場合には、式(2’)で表される構造を2または3個有する2または3量体である。)
項4.
、R、R、R、R、R、R、R、R、R10およびR11は、それぞれ独立して、水素、炭素数6~30のアリール、炭素数2~30のヘテロアリール、ジアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6~12のアリール)、炭素数1~24のアルキル、ハロゲンまたはシアノであり、また、R~R11のうちの隣接する基同士は結合してa環、b環またはc環と共に炭素数9~16のアリール環または炭素数6~15のヘテロアリール環を形成していてもよく、形成された環における少なくとも1つの水素は、炭素数6~30のアリール、炭素数2~30のヘテロアリール、ジアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6~12のアリール)、炭素数1~24のアルキル、ハロゲンまたはシアノで置換されていてもよく、
YはB(ホウ素)であり、
Xは、O、N-R、SまたはSeであり、前記N-RのRは、炭素数6~30のアリール、炭素数2~30のヘテロアリール、炭素数1~24のアルキルまたは炭素数3~12のシクロアルキルであり、これらにおける少なくとも1つの水素はハロゲンまたはシアノで置換されていてもよく、
Raは、「-CH-Cn-12(n-1)+1(nは1~4)」で表される、メチレン基から始まる直鎖のアルキルであり、
Ra’は、「-Cn-12(n-1)+1(nは1~4)」で表される直鎖のアルキルであって、nが1の場合は水素を表し、そして、
Raにおけるメチレン基以外の「-Cn-12(n-1)+1」部分の構造と、Ra’である「-Cn-12(n-1)+1」の構造とは同じである、
項3に記載する多環芳香族化合物。
項5.
下記いずれかの式で表される多環芳香族化合物。
Figure 0007018171000003
項6.
下記一般式(1’)で表される多環芳香族化合物または下記一般式(1’)で表される構造を複数有する多環芳香族化合物の多量体に、酸を作用させて、下記一般式(1)で表される多環芳香族化合物または下記一般式(1)で表される構造を複数有する多環芳香族化合物の多量体を製造する方法。
Figure 0007018171000004
上記式(1’)および式(1)中、
A環、B環およびC環は、それぞれ独立して、アリール環またはヘテロアリール環であり、これらの環における少なくとも1つの水素は置換されていてもよく、
YはB(ホウ素)であり、
Xは、O、N-R、SまたはSeであり、前記N-RのRは、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいアルキルまたは置換されていてもよいシクロアルキルであり、また、前記N-RのRは連結基または単結合により前記A環および/またはC環と結合していてもよく、
Raは、「-CH-Cn-12(n-1)+1(nは1以上)」で表される、メチレン基から始まる直鎖または分岐鎖のアルキルであり、
Ra’は、「-Cn-12(n-1)+1(nは1以上)」で表される直鎖または分岐鎖のアルキルであって、nが1の場合は水素を表し、
Raにおけるメチレン基以外の「-Cn-12(n-1)+1」部分の構造と、Ra’である「-Cn-12(n-1)+1」の構造とは同じであり、そして、
式(1’)または式(1)で表される多環芳香族化合物または構造における少なくとも1つの水素は重水素で置換されていてもよい。
本発明の好ましい態様によれば、例えば有機EL素子用材料として用いることができる、新規な多環芳香族化合物を製造するのに有用なアルケニル基を有する多環芳香族化合物を提供することができる。この多環芳香族化合物を用いることで、優れた有機EL素子などの有機デバイスを提供することができる。
具体的には、本発明者らは、芳香環をホウ素原子および酸素原子や窒素原子などのヘテロ原子とメチレン基とで連結した多環芳香族化合物が、大きなHOMO-LUMOギャップ(薄膜におけるバンドギャップEg)と高い三重項励起エネルギー(E)を有することを見出した。これは、ヘテロ原子を含む6員環は芳香族性が低いため、共役系の拡張に伴うHOMO-LUMOギャップの減少が抑制されること、ヘテロ原子の電子的な摂動により三重項励起状態(T1)のSOMO1およびSOMO2が局在化することが原因となっていると考えられる。また、本発明に係るヘテロ原子を含有する多環芳香族化合物は、三重項励起状態(T1)におけるSOMO1およびSOMO2の局在化により、両軌道間の交換相互作用が小さくなるため、三重項励起状態(T1)と一重項励起状態(S1)のエネルギー差が小さく、熱活性型遅延蛍光を示すため、有機EL素子の蛍光材料としても有用である。また、高い三重項励起エネルギー(E)を有する材料は、燐光有機EL素子や熱活性型遅延蛍光を利用した有機EL素子の電子輸送層や正孔輸送層としても有用である。更に、これらの多環芳香族化合物は、置換基の導入により、HOMOとLUMOのエネルギーを任意に動かすことができるため、イオン化ポテンシャルや電子親和力を周辺材料に応じて最適化することが可能である。
また、この多環芳香族化合物は高い蛍光量子収率や優れた安定性などを有することが特徴であり、有機デバイス用材料、例えば有機電界発光素子、有機電界効果トランジスタまたは有機薄膜太陽電池のための材料、特に有機電界発光素子用材料として有用である。この多環芳香族化合物は高い蛍光量子収率を有しているため、特に発光材料として有用である。
そして、本発明に係るアルケニル基を有する多環芳香族化合物によれば、上述するような優れた用途を有する多環芳香族化合物を、酸を作用させるといった簡単な方法で製造することができる。
本実施形態に係る有機EL素子を示す概略断面図である。 化合物(1-1)の吸収・蛍光・燐光スペクトルである。
1.一般式(1)または(2)で表される多環芳香族化合物およびその多量体
本発明は、下記一般式(1)で表される多環芳香族化合物または下記一般式(1)で表される構造を複数有する多環芳香族化合物の多量体である。本発明は、好ましくは、下記一般式(2)で表される多環芳香族化合物または下記一般式(2)で表される構造を複数有する多環芳香族化合物の多量体である。
Figure 0007018171000005
<A環、B環およびC環(a環、b環およびc環と置換基R ~R 11 )について>
一般式(1)におけるA環、B環およびC環は、それぞれ独立して、アリール環またはヘテロアリール環であり、これらの環における少なくとも1つの水素は置換基で置換されていてもよい。この置換基は、置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリール、置換もしくは無置換のジアリールアミノ、置換もしくは無置換のジヘテロアリールアミノ、置換もしくは無置換のアリールヘテロアリールアミノ(アリールとヘテロアリールを有するアミノ基)、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のシクロアルキル、置換もしくは無置換のアルコキシ、置換もしくは無置換のアリールオキシ、置換もしくは無置換のアリールスルホニル、置換もしくは無置換のジアリールホスフィン、置換もしくは無置換のジアリールホスフィンスルフィド、置換もしくは無置換のシリル、置換もしくは無置換のゲルミル、置換もしくは無置換のスルホン酸エステル、置換もしくは無置換のボロン酸エステル、ボロン酸、ハロゲンまたはシアノが好ましい。また、これらの基が置換基を有する場合の置換基としては、アリール、ヘテロアリール、アルキル、ハロゲンまたはシアノがあげられる。
また、上記アリール環またはヘテロアリール環は、Y、Xおよび-C(-Ra)-から構成される一般式(1)中央の縮合2環構造(以下、この構造を「D構造」ともいう)と結合を共有する5員環または6員環を有することが好ましい。
ここで、「縮合2環構造(D構造)」とは、一般式(1)の中央に示した、Y、Xおよび-C(-Ra)-を含んで構成される2つの飽和炭化水素環が縮合した構造を意味する。また、「縮合2環構造と結合を共有する6員環」とは、例えば上記一般式(2)で示すように前記D構造に縮合したa環(ベンゼン環(6員環))を意味する。また、「(A環である)アリール環またはヘテロアリール環がこの6員環を有する」とは、この6員環だけでA環が形成されるか、または、この6員環を含むようにこの6員環にさらに他の環などが縮合してA環が形成されることを意味する。言い換えれば、ここで言う「6員環を有する(A環である)アリール環またはヘテロアリール環」とは、A環の全部または一部を構成する6員環が、前記D構造に縮合していることを意味する。「B環(b環)」、「C環(c環)」、また「5員環」についても同様の説明が当てはまる。
一般式(1)におけるA環(またはB環、C環)は、一般式(2)におけるa環とその置換基R~R(またはb環とその置換基R~R、c環とその置換基R~R11)に対応する。すなわち、一般式(2)は、一般式(1)のA~C環として「6員環を有するA~C環」が選択された式に対応する。その意味で、一般式(2)の各環を小文字のa~cで表した。
一般式(2)では、a環、b環およびc環の置換基R~R11のうちの隣接する基同士が結合してa環、b環またはc環と共にアリール環またはヘテロアリール環を形成していてもよく、形成された環における少なくとも1つの水素は、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、フルオロアルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アリールスルホニル、ジアリールホスフィン、ジアリールホスフィンスルフィド、シリル、ゲルミル、スルホン酸エステル、ボロン酸エステル、ボロン酸、ハロゲンまたはシアノで置換されていてもよく、これらにおける少なくとも1つの水素は、アリール、ヘテロアリール、アルキル、ハロゲンまたはシアノで置換されていてもよい。したがって、一般式(2)で表される多環芳香族化合物は、a環、b環およびc環における置換基の相互の結合形態によって、下記式(2-1)および式(2-2)に示すように、化合物を構成する環構造が変化する。各式中のA’環、B’環およびC’環は、一般式(1)におけるそれぞれA環、B環およびC環に対応する。また、各式中のR~R11、Y、XおよびRaの定義は一般式(2)における符号と同じである。
Figure 0007018171000006
上記式(2-1)および式(2-2)中のA’環、B’環およびC’環は、一般式(2)で説明すれば、置換基R~R11のうちの隣接する基同士が結合して、それぞれa環、b環およびc環と共に形成したアリール環またはヘテロアリール環を示す(a環、b環またはc環に他の環構造が縮合してできた縮合環ともいえる)。なお、式では示してはいないが、a環、b環およびc環の全てがA’環、B’環およびC’環に変化した化合物もある。また、上記式(2-1)および式(2-2)から分かるように、例えば、b環のRとc環のR、b環のR11とa環のR、c環のRとa環のRなどは「隣接する基同士」には該当せず、これらが結合することはない。すなわち、「隣接する基」とは同一環上で隣接する基を意味する。
上記式(2-1)や式(2-2)で表される化合物は、例えば後述する具体的化合物として列挙した式(1-12)~式(1-14)または式(1-18)で表されるような化合物に対応する。すなわち、例えばa環(またはb環またはc環)であるベンゼン環に対してベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環など、その他にはインドール環、ピロール環、ベンゾフラン環またはベンゾチオフェン環などが縮合して形成されるA’環(またはB’環またはC’環)を有する化合物であり、形成されてできた縮合環A’(または縮合環B’または縮合環C’)はそれぞれナフタレン環、フェナントレン環、トリフェニレン環、その他にはカルバゾール環、インドール環、ジベンゾフラン環またはジベンゾチオフェン環などである。
<Yについて>
一般式(1)および一般式(2)におけるYはB(ホウ素)である。
<Xについて>
一般式(1)におけるXは、O、N-R、SまたはSeであり、前記N-RのRは、アリール、ヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキルであり、これらにおける少なくとも1つの水素は置換基で置換されていてもよい。この置換基は、置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリール、置換もしくは無置換のジアリールアミノ、置換もしくは無置換のジヘテロアリールアミノ、置換もしくは無置換のアリールヘテロアリールアミノ(アリールとヘテロアリールを有するアミノ基)、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のシクロアルキル、置換もしくは無置換のアルコキシ、置換もしくは無置換のアリールオキシ、置換もしくは無置換のアリールスルホニル、置換もしくは無置換のジアリールホスフィン、置換もしくは無置換のジアリールホスフィンスルフィド、置換もしくは無置換のシリル、置換もしくは無置換のゲルミル、置換もしくは無置換のスルホン酸エステル、置換もしくは無置換のボロン酸エステル、ボロン酸、ハロゲンまたはシアノが好ましい。また、これらの基が置換基を有する場合の置換基としては、アリール、ヘテロアリール、アルキル、ハロゲンまたはシアノがあげられる。
N-RのRは連結基または単結合により前記A環および/またはC環と結合していてもよく、連結基としては、-O-、-S-または-C(-R)-が好ましい。なお、前記「-C(-R)-」のRは水素またはアルキルである。この説明は一般式(2)におけるXでも同じである。ここで、一般式(1)における「N-RのRは連結基または単結合により前記A環および/またはC環と結合している」との規定は、下位の一般式(2)では「N-RのRは-O-、-S-、-C(-R)-または単結合により前記a環および/またはc環と結合している」との規定に対応する。
この規定は、下記式(2-3-1)で表される、Xが縮合環C’に取り込まれた環構造を有する化合物で表現できる。すなわち、例えば一般式(2)におけるc環であるベンゼン環に対してXを取り込むようにして他の環が縮合して形成されるC’環を有する化合物である。この化合物は、例えば後述する具体的化合物として列挙した、式(1-191)で表されるような化合物に対応し、形成されてできた縮合環C’はカルバゾール環であり、その他には例えばフェノキサジン環、フェノチアジン環またはアクリジン環などがあげられる。
また、上記規定は、下記式(2-3-2)で表される、Xが縮合環A’に取り込まれた環構造を有する化合物でも表現できる。すなわち、例えば一般式(2)におけるa環であるベンゼン環に対してXを取り込むようにして他の環が縮合して形成されるA’環を有する化合物である。この化合物は、例えば後述する具体的化合物として列挙した式(1-192)で表されるような化合物に対応し、形成されてできた縮合環A’はカルバゾール環であり、その他には例えばフェノキサジン環、フェノチアジン環またはアクリジン環などがあげられる。なお、下記式(2-3-1)および式(2-3-2)中のR~R11、Y、XおよびRaの定義は一般式(2)における符号と同じである。
Figure 0007018171000007
上述するように、一般式(1)におけるA環、B環およびC環、これに対応する一般式(2)におけるa環と置換基R~R、b環と置換基R~Rおよびc環と置換基R~R11は、環や置換基の種類、さらに置換基同士の結合形態などによって構造が様々に変化し得る。しかしながら、合成の容易さやコストなどの観点からは、A環、B環およびC環(またはこれらに対応する一般式(2)における部分)は同一構造の環であることが好ましく、特にA環およびC環(またはこれらに対応する一般式(2)における部分)は同一構造の環であることが好ましい。
<Raについて>
Raは、「-CH-Cn-12(n-1)+1(nは1以上)」で表される、メチレン基(-CH-)から始まる直鎖または分岐鎖のアルキルである。2つのRaは同一構造であって、一般式(1)における「-C(Ra)-」部分の中の「C(炭素)」は不斉炭素になることはない。nは1以上であって、好ましくはn=1~6であり、より好ましくはn=1~4であり、さらに好ましくはn=1~3であり、特に好ましくはn=1または2であり、最も好ましくはn=1(メチル基)である。Raとしてのアルキルの具体例については、詳細には後述するが、直鎖および分枝鎖のいずれでもよく、直鎖のアルキルが特に好ましい。Raはメチレン基(-CH-)から始まるアルキル基であるため、Raが分岐鎖アルキルの場合には、「-C(Ra)-」部分の中の「C(炭素)」に結合する炭素(すなわち1位の炭素)で分岐することはなく、2位以降の炭素から分岐し得る。例えば、Raとして「-CH-C(-CH」の分岐鎖アルキルはあり得るが、「-CH(-CH)-CH」の分岐鎖アルキルはあり得ない。このRaについての説明は一般式(2)におけるRaでも同じである。
<A環、B環およびC環(a環、b環およびc環と置換基R ~R 11 )の詳細>
一般式(1)のA環、B環およびC環である「アリール環」としては、例えば、炭素数6~30のアリール環があげられ、炭素数6~16のアリール環が好ましく、炭素数6~12のアリール環がより好ましく、炭素数6~10のアリール環が特に好ましい。なお、この「アリール環」は、一般式(2)で規定された「R~R11のうちの隣接する基同士が結合してa環、b環またはc環と共に形成されたアリール環」に対応し、また、a環(またはb環、c環)がすでに炭素数6のベンゼン環で構成されているため、これに5員環が縮合した縮合環の合計炭素数9が下限の炭素数となる。
具体的な「アリール環」としては、単環系であるベンゼン環、二環系であるビフェニル環、縮合二環系であるナフタレン環、三環系であるテルフェニル環(m-テルフェニル、o-テルフェニル、p-テルフェニル)、縮合三環系である、アセナフチレン環、フルオレン環、フェナレン環、フェナントレン環、縮合四環系であるトリフェニレン環、ピレン環、ナフタセン環、縮合五環系であるペリレン環、ペンタセン環などがあげられる。
一般式(1)のA環、B環およびC環である「ヘテロアリール環」としては、例えば、炭素数2~30のヘテロアリール環があげられ、炭素数2~25のヘテロアリール環が好ましく、炭素数2~20のヘテロアリール環がより好ましく、炭素数2~15のヘテロアリール環がさらに好ましく、炭素数2~10のヘテロアリール環が特に好ましい。また、「ヘテロアリール環」としては、例えば環構成原子として炭素以外に酸素、硫黄および窒素から選ばれるヘテロ原子を1ないし5個含有する複素環などがあげられる。なお、この「ヘテロアリール環」は、一般式(2)で規定された「R~R11のうちの隣接する基同士が結合してa環、b環またはc環と共に形成されたヘテロアリール環」に対応し、また、a環(またはb環、c環)がすでに炭素数6のベンゼン環で構成されているため、これに5員環が縮合した縮合環の合計炭素数6が下限の炭素数となる。
具体的な「ヘテロアリール環」としては、例えば、ピロール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、ピラゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピラジン環、トリアジン環、インドール環、イソインドール環、1H-インダゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、1H-ベンゾトリアゾール環、キノリン環、イソキノリン環、シンノリン環、キナゾリン環、キノキサリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、プリン環、プテリジン環、カルバゾール環、アクリジン環、フェノキサチイン環、フェノキサジン環、フェノチアジン環、フェナジン環、インドリジン環、フラン環、ベンゾフラン環、イソベンゾフラン環、ジベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ジベンゾチオフェン環、フラザン環、オキサジアゾール環、チアントレン環などがあげられる。
上記「アリール環」または「ヘテロアリール環」における少なくとも1つの水素は、第1の置換基である、置換もしくは無置換の「アリール」、置換もしくは無置換の「ヘテロアリール」、置換もしくは無置換の「ジアリールアミノ」、置換もしくは無置換の「ジヘテロアリールアミノ」、置換もしくは無置換の「アリールヘテロアリールアミノ」、置換もしくは無置換の「アルキル」、置換もしくは無置換の「シクロアルキル」、置換もしくは無置換の「アルコキシ」、置換もしくは無置換の「アリールオキシ」、置換もしくは無置換の「アリールスルホニル」、置換もしくは無置換の「ジアリールホスフィン」、置換もしくは無置換の「ジアリールホスフィンスルフィド」、置換もしくは無置換の「シリル」、置換もしくは無置換の「ゲルミル」、置換もしくは無置換の「スルホン酸エステル」、置換もしくは無置換の「ボロン酸エステル」、「ボロン酸」、「ハロゲン」または「シアノ」で置換されていてもよいが、この第1の置換基としての「アリール」、「ヘテロアリール」、「ジアリールアミノ」のアリール、「ジヘテロアリールアミノ」のヘテロアリール、「アリールヘテロアリールアミノ」のアリールとヘテロアリール、「アリールオキシ」のアリール、「アリールスルホニル」のアリール、「ジアリールホスフィン」のアリール、また「ジアリールホスフィンスルフィド」のアリールとしては上述した「アリール環」または「ヘテロアリール環」の一価の基があげられる。
また第1の置換基としての「アルキル」としては、直鎖および分枝鎖のいずれでもよく、例えば、炭素数1~24の直鎖アルキルまたは炭素数3~24の分枝鎖アルキルがあげられる。炭素数1~18のアルキル(炭素数3~18の分枝鎖アルキル)が好ましく、炭素数1~12のアルキル(炭素数3~12の分枝鎖アルキル)がより好ましく、炭素数1~6のアルキル(炭素数3~6の分枝鎖アルキル)がさらに好ましく、炭素数1~4のアルキル(炭素数3~4の分枝鎖アルキル)が特に好ましい。
具体的なアルキルとしては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、t-ペンチル、n-ヘキシル、1-メチルペンチル、4-メチル-2-ペンチル、3,3-ジメチルブチル、2-エチルブチル、n-ヘプチル、1-メチルヘキシル、n-オクチル、t-オクチル、1-メチルヘプチル、2-エチルヘキシル、2-プロピルペンチル、n-ノニル、2,2-ジメチルヘプチル、2,6-ジメチル-4-ヘプチル、3,5,5-トリメチルヘキシル、n-デシル、n-ウンデシル、1-メチルデシル、n-ドデシル、n-トリデシル、1-ヘキシルヘプチル、n-テトラデシル、n-ペンタデシル、n-ヘキサデシル、n-ヘプタデシル、n-オクタデシル、n-エイコシルなどがあげられる。
また第1の置換基としての「シクロアルキル」としては、例えば、炭素数3~12のシクロアルキルがあげられる。好ましいシクロアルキルは、炭素数3~10のシクロアルキルである。より好ましいシクロアルキルは、炭素数3~8のシクロアルキルである。さらに好ましいシクロアルキルは、炭素数3~6のシクロアルキルである。
具体的なシクロアルキルとしては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロペンチル、シクロヘプチル、メチルシクロヘキシル、シクロオクチルまたはジメチルシクロヘキシルなどがあげられる。
また第1の置換基としての「アルコキシ」としては、例えば、炭素数1~24の直鎖または炭素数3~24の分枝鎖のアルコキシがあげられる。炭素数1~18のアルコキシ(炭素数3~18の分枝鎖のアルコキシ)が好ましく、炭素数1~12のアルコキシ(炭素数3~12の分枝鎖のアルコキシ)がより好ましく、炭素数1~6のアルコキシ(炭素数3~6の分枝鎖のアルコキシ)がさらに好ましく、炭素数1~4のアルコキシ(炭素数3~4の分枝鎖のアルコキシ)が特に好ましい。
具体的なアルコキシとしては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、s-ブトキシ、t-ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシなどがあげられる。
また第1の置換基としての「シリル」は「-SiH」であり、「ゲルミル」は「-GeH」であり、「スルホン酸エステル(-S(=O)-OR)」におけるRは上述したアルキルであり、「ボロン酸エステル(-B(-OR))」におけるRは上述したアルキルであって、2つのRは結合していてもよい。
また第1の置換基としての「ハロゲン」としては、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素があげられる。
第1の置換基である、置換もしくは無置換の「アリール」、置換もしくは無置換の「ヘテロアリール」、置換もしくは無置換の「ジアリールアミノ」、置換もしくは無置換の「ジヘテロアリールアミノ」、置換もしくは無置換の「アリールヘテロアリールアミノ」、置換もしくは無置換の「アルキル」、置換もしくは無置換の「シクロアルキル」、置換もしくは無置換の「アルコキシ」、置換もしくは無置換の「アリールオキシ」、置換もしくは無置換の「アリールスルホニル」、置換もしくは無置換の「ジアリールホスフィン」、置換もしくは無置換の「ジアリールホスフィンスルフィド」、置換もしくは無置換の「シリル」、置換もしくは無置換の「ゲルミル」、置換もしくは無置換の「スルホン酸エステル」、または、置換もしくは無置換の「ボロン酸エステル」は、置換または無置換と説明されているとおり、それらにおける少なくとも1つの水素が第2の置換基で置換されていてもよい。この第2の置換基としては、例えば、アリール、ヘテロアリール、アルキル、ハロゲンまたはシアノがあげられ、それらの具体例は、上述した「アリール環」または「ヘテロアリール環」の一価の基、また第1の置換基としての「アルキル」や「ハロゲン」の説明を参照することができる。また、第2の置換基としてのアリール、ヘテロアリールおよびアルキルには、それらにおける少なくとも1つの水素がフェニルなどのアリール(具体例は上述した基)、メチルなどのアルキル(具体例は上述した基)、フッ素などのハロゲン(具体例は上述した基)で置換された基も第2の置換基としてのアリール、ヘテロアリールおよびアルキルに含まれる。その一例としては、第2の置換基がカルバゾリル基の場合には、9位における少なくとも1つの水素がフェニルなどのアリールやメチルなどのアルキルで置換されたカルバゾリル基も第2の置換基としてのヘテロアリールに含まれる。
一般式(2)のR~R11における、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノのアリール、ジヘテロアリールアミノのヘテロアリール、アリールヘテロアリールアミノのアリールとヘテロアリール、アリールオキシのアリール、アリールスルホニルのアリール、ジアリールホスフィンのアリール、または、ジアリールホスフィンスルフィドのアリールとしては、一般式(1)で説明した「アリール環」または「ヘテロアリール環」の一価の基があげられる。また、R~R11におけるアルキル、シクロアルキルまたはアルコキシとしては、上述した一般式(1)の説明における第1の置換基としての「アルキル」、「シクロアルキル」または「アルコキシ」の説明を参照することができる。さらに、これらの基への置換基としてのアリール、ヘテロアリール、アルキル、ハロゲンまたはシアノも同様である。また、R~R11のうちの隣接する基同士が結合してa環、b環またはc環と共にアリール環またはヘテロアリール環を形成した場合の、これらの環への置換基であるアリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、フルオロアルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アリールスルホニル、ジアリールホスフィン、ジアリールホスフィンスルフィド、シリル、ゲルミル、スルホン酸エステル、ボロン酸エステル、ボロン酸、ハロゲンまたはシアノ、および、さらなる置換基であるアリール、ヘテロアリール、アルキル、ハロゲンまたはシアノについても同様である。
<XにおけるN-Rの詳細について>
一般式(1)のXにおけるN-RのRは、アリール、ヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキルであり、これらにおける少なくとも1つの水素は、置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリール、置換もしくは無置換のジアリールアミノ、置換もしくは無置換のジヘテロアリールアミノ、置換もしくは無置換のアリールヘテロアリールアミノ(アリールとヘテロアリールを有するアミノ基)、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のシクロアルキル、置換もしくは無置換のアルコキシ、置換もしくは無置換のアリールオキシ、置換もしくは無置換のアリールスルホニル、置換もしくは無置換のジアリールホスフィン、置換もしくは無置換のジアリールホスフィンスルフィド、置換もしくは無置換のシリル、置換もしくは無置換のゲルミル、置換もしくは無置換のスルホン酸エステル、置換もしくは無置換のボロン酸エステル、ボロン酸、ハロゲンまたはシアノで置換されていてもよく、また、これらの基が置換基を有する場合の置換基としては、アリール、ヘテロアリール、アルキル、ハロゲンまたはシアノがあげられるが、これらの全ての説明は、一般式(1)におけるA環、B環およびC環での説明を引用することができる。Rとしてのアリール、ヘテロアリールまたはアルキルとしては、特に炭素数6~10のアリール(例えばフェニル、ナフチルなど)、炭素数2~15のヘテロアリール(例えばカルバゾリルなど)、炭素数1~4のアルキル(例えばメチル、エチルなど)が好ましい。
N-RのRがA環および/またはC環(a環および/またはc環)と結合する際の「-C(-R)-」のRは水素またはアルキルであるが、このアルキルの具体例としては上述する基があげられる。特に炭素数1~4のアルキル(例えばメチル、エチルなど)が好ましい。
これらの説明は一般式(2)におけるXとしてのN-Rでも同じである。
<Raの詳細について>
一般式(1)におけるRaは、「-CH-Cn-12(n-1)+1(nは1以上)」で表される、メチレン基から始まる直鎖または分岐鎖のアルキルであり、この「アルキル」としては一般式(1)におけるA環、B環およびC環での説明(第1の置換基としてのアルキル)を引用することができる。また、このアルキルに結合し得る置換基は、ハロゲンまたはシアノであり、ハロゲンの詳細は上述するとおりである。ただし、一般式(1)中の「-C(Ra)-」部分の「C(炭素)」が不斉炭素になることはなく、Raが分岐鎖アルキルの場合には、「-C(Ra)-」部分の「C(炭素)」に結合する炭素(すなわち1位の炭素)で分岐することはなく、2位以降の炭素から分岐し得ることが条件である。この説明は一般式(2)におけるRaでも同じである。上述した一般式(1)中の「-C(Ra)-」部分の「C(炭素)」が不斉炭素にはならないという条件を満たすために、後述する一般式(1’)におけるRa’は「-Cn-12(n-1)+1(nは1以上)」で表される直鎖または分岐鎖のアルキルとなり、Raにおけるメチレン基以外の「-Cn-12(n-1)+1(nは1以上)」の部分の構造と、Ra’である「-Cn-12(n-1)+1(nは1以上)」との構造は同一である。そして、ここでRaがメチル基であり、かつRa’が水素原子である場合以外は二重結合部分でE/Z異性体が生じうるが、後述する一般式(1’)または(2’)で表される多環芳香族化合物およびその多量体から一般式(1)または(2)で表される多環芳香族化合物およびその多量体を製造する反応においては、一般式(1’)または(2’)で表される多環芳香族化合物の二重結合部分がE体であっても、またZ体であっても同一の多環芳香族化合物およびその多量体を与える。故に本明細書中では、一般式(1’)または(2’)で表される多環芳香族化合物は単一の異性体の構造式のみを記載しているが、当該多環芳香族化合物の二重結合部分の形態としては、E体またはZ体、どちらの異性体であってもよく、かつE体とZ体の任意の比の混合物であっても良い。
<多量体について>
また、一般式(1)または(2)で表される多環芳香族化合物の多量体としては、2~6量体が好ましく、2~3量体がより好ましく、2量体が特に好ましい。多量体は、一つの化合物の中に一般式(1)または(2)で表される単位構造を複数有する形態であればよく、例えば、上記単位構造が単結合、炭素数1~3のアルキレン基、フェニレン基、ナフチレン基などの連結基で複数結合した形態に加えて、上記単位構造に含まれる任意の環(A環、B環またはC環、a環、b環またはc環)を複数の単位構造で共有するようにして結合した形態であってもよく、また、上記単位構造に含まれる任意の環(A環、B環またはC環、a環、b環またはc環)同士が縮合するようにして結合した形態であってもよい。
このような多量体としては、例えば、下記式(2-4-1)、式(2-4-2)、式(2-5-1)~式(2-5-4)または式(2-6)で表される多量体があげられる。下記式(2-4-1)または式(2-4-2)で表される多量体は、一般式(2)で説明すれば、a環であるベンゼン環を共有するようにして、複数の一般式(2)で表される単位構造を一つの化合物中に有する多量体である。また、下記式(2-5-1)~式(2-5-4)で表される多量体は、一般式(2)で説明すれば、c環(またはb環)であるベンゼン環を共有するようにして、複数の一般式(2)で表される単位構造を一つの化合物中に有する多量体である。これらの具体的な例としては、後述する式(1-182)や式(1-183)で表されるような多量体があげられる。また、下記式(2-6)で表される多量体は、一般式(2)で説明すれば、例えばある単位構造のc環(またはa環、b環)であるベンゼン環とある単位構造のc環(またはa環、b環)であるベンゼン環とが縮合するようにして、複数の一般式(2)で表される単位構造を一つの化合物中に有する多量体である。なお、下記式(2-4-1)、式(2-4-2)、式(2-5-1)、式(2-5-2)、式(2-5-3)、式(2-5-4)および式(2-6)中のR~R11、Y、X、Ra、a、bおよびcの定義は一般式(2)における符号と同じである。
Figure 0007018171000008
多量体は、式(2-4-1)または式(2-4-2)で表現される多量化形態と、式(2-5-1)~式(2-5-4)のいずれかまたは式(2-6)で表現される多量化形態とが組み合わさった多量体であってもよく、式(2-5-1)~式(2-5-4)のいずれかで表現される多量化形態と、式(2-6)で表現される多量化形態とが組み合わさった多量体であってもよく、式(2-4-1)または式(2-4-2)で表現される多量化形態と式(2-5-1)~式(2-5-4)のいずれかで表現される多量化形態と式(2-6)で表現される多量化形態とが組み合わさった多量体であってもよい。
<重水素置換について>
また、一般式(1)または(2)で表される多環芳香族化合物およびその多量体の化学構造中の水素は、その全てまたは一部が重水素であってもよい。例えば、式(1)においては、A環、B環、C環(A~C環はアリール環またはヘテロアリール環)、A~C環への置換基、ならびに、XであるN-RにおけるR(=アルキル、アリールなど)における全てまたは一部の水素が重水素で置換された態様があげられる。この説明は一般式(2)においても同じである。
<多環芳香族化合物およびその多量体の具体例について>
一般式(1)または(2)で表される多環芳香族化合物およびその多量体のさらに具体的な例としては、例えば、下記式で表される化合物があげられる。なお、構造式中の「Me」はメチルを、「Et」はエチルを、「Pr」はノルマルプロピルを、「Pr」はイソプロピルを、「Bu」はノルマルブチルを、「Bu」はターシャリーブチルを、「Tf」はトリフルオロメタンスルホニルを、そして「Nf」はノナフルオロブタンスルホニルを表す。
Figure 0007018171000009
Figure 0007018171000010
Figure 0007018171000011
Figure 0007018171000012
Figure 0007018171000013
Figure 0007018171000014
Figure 0007018171000015
Figure 0007018171000016
Figure 0007018171000017
Figure 0007018171000018
Figure 0007018171000019
Figure 0007018171000020
Figure 0007018171000021
Figure 0007018171000022
Figure 0007018171000023
Figure 0007018171000024
Figure 0007018171000025
Figure 0007018171000026
Figure 0007018171000027
また、一般式(1)または(2)で表される多環芳香族化合物およびその多量体は、A環、B環およびC環(a環、b環およびc環)の少なくとも1つにおける、Y(=B(ホウ素))に対するパラ位にフェニルオキシ基、カルバゾリル基またはジフェニルアミノ基を導入することで、T1エネルギーの向上(およそ0.01~0.1eV向上)が期待できる。A環、B環およびC環(a環、b環およびc環)であるベンゼン環上のHOMOがよりホウ素に対するメタ位に局在化し、LUMOがホウ素に対するオルトおよびパラ位に局在化するため、T1エネルギーの向上が特に期待できる。
また、一般式(1)または(2)で表される多環芳香族化合物およびその多量体の具体的な例としては、上述した化合物において、化合物中の1個または複数個の芳香環における少なくとも1つの水素が1個または複数個のアルキルやアリールで置換された化合物があげられ、より好ましくは1~2個の炭素数1~12のアルキルや炭素数6~10のアリールで置換された化合物があげられる。
また、一般式(1)または(2)で表される多環芳香族化合物およびその多量体の具体的な例としては、化合物中の1個または複数個のフェニル基または1個のフェニレン基における少なくとも1つの水素が1個または複数個の炭素数1~4のアルキル、好ましくは炭素数1~3のアルキル(好ましくは1個または複数個のメチル基)で置換された化合物があげられ、より好ましくは、1個のフェニル基のオルト位における水素(2箇所のうち2箇所とも、好ましくはいずれか1箇所)または1個のフェニレン基のオルト位における水素(最大4箇所のうち4箇所とも、好ましくはいずれか1箇所)がメチル基で置換された化合物があげられる。
化合物中の末端のフェニル基やp-フェニレン基のオルト位における少なくとも1つの水素をメチル基などで置換することにより、隣り合う芳香環同士が直交しやすくなって共役が弱まる結果、三重項励起エネルギー(E)を高めることが可能となる。
2.一般式(1’)または(2’)で表される多環芳香族化合物およびその多量体
本発明は、下記一般式(1’)で表される多環芳香族化合物または下記一般式(1’)で表される構造を複数有する化合物の多量体である。本発明は、好ましくは、下記一般式(2’)で表される多環芳香族化合物または下記一般式(2’)で表される構造を複数有する多環芳香族化合物の多量体である。これらの多環芳香族化合物およびその多量体を用いて、上述した一般式(1)または(2)で表される多環芳香族化合物およびその多量体を製造することができる。
Figure 0007018171000028
一般式(1’)におけるA環、B環、C環、Y、XおよびRa、一般式(2’)におけるa環、b環、c環、これらへの置換基R~R11、Y、XおよびRaについては、上述した一般式(1)および一般式(2)における同符号の説明を引用することができる。また、一般式(1’)または(2’)で表される多環芳香族化合物の多量体や重水素置換についても、一般式(1)または(2)で表される多環芳香族化合物における説明を引用することができる。
一般式(1’)で表される多環芳香族化合物(およびその多量体)と、一般式(1)で表される多環芳香族化合物(およびその多量体)との構造上の違いは、一般式(1)で表される多環芳香族化合物ではA環とB環とが「-C(-Ra)-」で連結されているのに対して、一般式(1’)で表される多環芳香族化合物ではA環とB環とが連結されておらず、B環にアルケニル基「-C(-Ra)=CHRa’」が結合している点である。このアルケニル基のシス-トランス異性はE体またはZ体のいずれでもよく、E体とZ体とが任意の比で混合された混合物であってもよい。この説明は一般式(2’)についても同じである。
このアルケニル基「-C(-Ra)=CHRa’」におけるRaは、「-CH-Cn-12(n-1)+1(nは1以上)」で表される、メチレン基から始まる直鎖または分岐鎖のアルキルであり、Ra’は、「-Cn-12(n-1)+1(nは1以上)」で表される直鎖または分岐鎖のアルキルであって、nが1の場合は水素を表し、Raにおけるメチレン基以外の「-Cn-12(n-1)+1」部分の構造と、Ra’である「-Cn-12(n-1)+1」の構造とは同じである。nは1以上であって、好ましくはn=1~6であり、より好ましくはn=1~4であり、さらに好ましくはn=1~3であり、特に好ましくはn=1または2であり、最も好ましくはn=1(Ra=メチル基、Ra’=水素)である。
一般式(1’)または(2’)で表される多環芳香族化合物およびその多量体のさらに具体的な例としては、例えば、下記式で表される化合物があげられる。なお、構造式中の「Me」はメチルを、「Et」はエチルを、「Pr」はノルマルプロピルを、「Pr」はイソプロピルを、「Bu」はノルマルブチルを、「Bu」はターシャリーブチルを、「Tf」はトリフルオロメタンスルホニルを、そして「Nf」はノナフルオロブタンスルホニルを表す。
Figure 0007018171000029
Figure 0007018171000030
Figure 0007018171000031
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Figure 0007018171000042
Figure 0007018171000043
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Figure 0007018171000046
Figure 0007018171000047
3.一般式(1’)または(2’)で表される多環芳香族化合物およびその多量体の製造方法、並びに一般式(1)または(2)で表される多環芳香族化合物およびその多量体の製造方法
一般式(1)または一般式(2)で表される多環芳香族化合物およびその多量体は、基本的には、A環(a環)とC環(c環)とを結合基(Xを含む基)で結合する第1工程、三ヨウ化ホウ素などを用いたタンデムボラフリーデルクラフツ反応(連続的な芳香族求電子置換反応、以下同様)によりYであるホウ素原子を導入する第2工程、B環(b環)部分に相当する例えばイソプロペニル基などのアルケニル基が置換したアリールグリニャール試薬やアリールリチウムなどの有機金属化合物を反応させることにより一般式(1’)または(2’)で表される多環芳香族化合物を製造する第3工程、この化合物に酸を作用させて環化反応させることにより一般式(1)または(2)で表される多環芳香族化合物を製造する第4工程を経て、製造することができる。なお、後述するスキーム(1)~(7)における構造式中の各符号の定義は一般式(1)、式(2)、式(1’)または、式(2’)における符号と同じである。
<第1工程>
A環(a環)とC環(c環)とが結合基(Xを含む基)で結合した化合物を製造するには、例えばXがO(酸素)の場合は、求核置換反応やウルマン反応といった一般的なエーテル化反応が利用でき、XがN-Rの場合は、ブッフバルト-ハートウィッグ反応といった一般的なアミノ化反応が利用できる。XがSやSeの場合も公知の反応を利用することができる。
<第2工程および第3工程>
この工程を下記スキーム(1)および(2)により説明する。以下のとおり、三ヨウ化ホウ素などを用いたタンデムボラフリーデルクラフツ反応の後、「-C(-Ra)=CHRa’」が置換したアリールグリニャール試薬やアリールリチウムなどを反応させ、ホウ素原子上にB環(b環)部分を導入することで、一般式(1’)または(2’)で表される多環芳香族化合物を製造することができる。
Figure 0007018171000048
Figure 0007018171000049
上記スキーム(1)および(2)は、一般式(1’)または(2’)で表される多環芳香族化合物の製造方法を主に示しているが、その多量体については、複数のA環(a環)およびC環(c環)を有する中間体を用いることで製造することができる。詳細は下記スキーム(3)~(5)に示すとおりである。この場合、使用する三ヨウ化ホウ素などの試薬の量を2倍量、3倍量とすることで目的の多量体を製造することができる。
Figure 0007018171000050
Figure 0007018171000051
Figure 0007018171000052
上記スキーム(1)~(5)においては、第2工程であるタンデムボラフリーデルクラフツ反応において三ヨウ化ホウ素を用いる例を示したが、三塩化ホウ素や三臭化ホウ素、または三フッ化ホウ素・ジエチルエーテル錯体のような、その他のハロゲン化ホウ素試薬を用いることもできる。またこれら反応におけるタンデムボラフリーデルクラフツ反応を促進させるために、例えば三塩化アルミニウム、三塩化ガリウムまたは四塩化チタンのようなルイス酸を添加してもよい。
上述の製造法を適宜選択し、使用する原料も適宜選択することで、所望の位置に置換基を有する、一般式(1’)または(2’)で表される多環芳香族化合物およびその多量体を製造することができる。
また上述の製造法で、例えばハロゲン、トリフルオロメタンスルホン酸エステルのようなスルホン酸エステル、ボロン酸またはボロン酸エステルといった反応性置換基を有する化合物を製造した後に、鈴木カップリング、根岸カップリングまたは熊田カップリングのようなクロスカップリング反応、ブッフバルト-ハートウィッグ反応、ウルマン反応、ブチルリチウムなどを用いたハロゲン-金属交換反応やグリニャール反応のようなメタル化に続く求電子反応試薬との反応といった、一般的な反応を用いても、所望の位置に置換基を有する、一般式(1’)または(2’)で表される多環芳香族化合物およびその多量体を製造することができる。
ハロゲンを有する、一般式(1’)または(2’)で表される多環芳香族化合物およびその多量体は、ハロゲンを有する原料を使用することで製造できるほか、一般的に知られている反応を利用して当該多環芳香族化合物およびその多量体をハロゲン化することでも製造できる。
また、トリフルオロメタンスルホン酸エステルのようなスルホン酸エステルを有する、一般式(1’)または(2’)で表される多環芳香族化合物は、スルホン酸エステルを有する原料を使用することで製造できるほか、メトキシ基のようなアルコキシ基を有する原料を用いるなどして製造した化合物に、三臭化ホウ素やピリジン塩酸塩のような一般的に知られている試薬を反応させることでアルコキシ基を水酸基に変換した後に、無水トリフルオロメタンスルホン酸のような無水物やノナフルオロ-1-ブタンスルホニルフルオリドのようなハロゲン化物などを反応させることでも製造できる。
また、一般式(1’)または(2’)で表される多環芳香族化合物には、少なくとも一部の水素原子が重水素で置換されている化合物も含まれるが、このような化合物も所望の箇所が重水素で置換されている原料を用いることで、上記と同様に製造することができる。
<第4工程>
第4工程は、上述するようにして製造した、一般式(1’)または(2’)で表される多環芳香族化合物に酸を作用させて環化反応させることにより、一般式(1)または(2)で表される多環芳香族化合物を製造する工程である。この工程では、下記スキーム(6)および(7)に示すように、酸、特にSc(OTf)のようなルイス酸によるフリーデルクラフツ反応によって、一般式(1)または(2)で表される多環芳香族化合物およびその多量体を製造することができる。
Figure 0007018171000053
Figure 0007018171000054
ここでRaがメチル基であり、かつRa’が水素原子である場合以外は、二重結合部分でE/Z異性体が存在する。しかしながら上記スキーム(6)および(7)では、一般式(1’)または(2’)で表される多環芳香族化合物はE体であっても、またZ体であっても同一の一般式(1)または(2)で表される多環芳香族化合物およびその多量体を与える。故に、本明細書中の一般式(1’)または(2’)で表される多環芳香族化合物の表記においては、単一の異性体の構造式のみを記載しているが、一般式(1’)または(2’)で表される多環芳香族化合物の二重結合部分の形態としては、E体またはZ体、どちらの異性体であってもよく、かつE体とZ体の任意の比の混合物であっても良い。
上記スキーム(6)および(7)で使用するルイス酸としては、一般的に知られているルイス酸が使用できるが、例えばAlCl、AlBr、AlF、BF・OEt、BCl、BBr、GaCl、GaBr、InCl、InBr、In(OTf)、SnCl、SnBr、AgOTf、ScCl、Sc(OTf)、ZnCl、ZnBr、Zn(OTf)、MgCl、MgBr、Mg(OTf)、LiOTf、NaOTf、KOTf、MeSiOTf、Cu(OTf)、CuCl、YCl、Y(OTf)、TiCl、TiBr、ZrCl、ZrBr、FeCl、FeBr、CoClおよびCoBrなどが挙げられる。
上記スキーム(6)および(7)で使用する溶媒としては、一般的な有機溶媒が使用できるが、例えばジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、ベンゼン、トルエン、キシレンの各異性体およびその混合物、トリメチルベンゼンの各異性体およびその混合物、クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン、ベンゾトリフロリド、ジエチルエーテル、メチルターシャリーブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル、ジフェニルエーテル、シクロペンタン、ペンタン、シクロヘキサン、ヘキサン、オクタン、ドデカンおよびデカリンなどが挙げられ、またこれらの任意の比の混合物も用いることができる。
上述の製造法を適宜選択し、使用する原料も適宜選択することで、所望の位置に置換基を有する、一般式(1)または(2)で表される多環芳香族化合物およびその多量体を製造することができる。
また上述の製造法で、例えばハロゲン、トリフルオロメタンスルホン酸エステルのようなスルホン酸エステル、ボロン酸またはボロン酸エステルといった反応性置換基を有する化合物を製造した後に、鈴木カップリング、根岸カップリングまたは熊田カップリングのようなクロスカップリング反応、ブッフバルト-ハートウィッグ反応、ウルマン反応、ブチルリチウムなどを用いたハロゲン-金属交換反応やグリニャール反応のようなメタル化に続く求電子反応試薬との反応といった、一般的な反応を用いても、所望の位置に置換基を有する、一般式(1)または(2)で表される多環芳香族化合物およびその多量体を製造することができる。
ハロゲンを有する、一般式(1)または(2)で表される多環芳香族化合物およびその多量体は、ハロゲンを有する原料を使用することで製造できるほか、一般的に知られている反応を利用して当該多環芳香族化合物およびその多量体をハロゲン化することでも製造できる。
また、トリフルオロメタンスルホン酸エステルのようなスルホン酸エステルを有する、一般式(1)または(2)で表される多環芳香族化合物は、スルホン酸エステルを有する原料を使用することで製造できるほか、メトキシ基のようなアルコキシ基を有する原料を用いるなどして製造した化合物に、三臭化ホウ素やピリジン塩酸塩のような一般的に知られている試薬を反応させることでアルコキシ基を水酸基に変換した後に、無水トリフルオロメタンスルホン酸のような無水物やノナフルオロ-1-ブタンスルホニルフルオリドのようなハロゲン化物などを反応させることでも製造できる。
また、一般式(1)または(2)で表される多環芳香族化合物には、少なくとも一部の水素原子が重水素で置換されている化合物も含まれるが、このような多環芳香族化合物なども所望の箇所が重水素で置換されている原料を用いることで、上記と同様に製造することができる。
一般式(1)または(2)で表される多環芳香族化合物およびその多量体は、有機デバイス用材料として用いることができる。有機デバイスとしては、例えば、有機電界発光素子、有機電界効果トランジスタまたは有機薄膜太陽電池などがあげられる。
4.有機電界発光素子
以下に、本実施形態に係る有機EL素子について図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る有機EL素子を示す概略断面図である。
<有機電界発光素子の構造>
図1に示された有機EL素子100は、基板101と、基板101上に設けられた陽極102と、陽極102の上に設けられた正孔注入層103と、正孔注入層103の上に設けられた正孔輸送層104と、正孔輸送層104の上に設けられた発光層105と、発光層105の上に設けられた電子輸送層106と、電子輸送層106の上に設けられた電子注入層107と、電子注入層107の上に設けられた陰極108とを有する。
なお、有機EL素子100は、作製順序を逆にして、例えば、基板101と、基板101上に設けられた陰極108と、陰極108の上に設けられた電子注入層107と、電子注入層107の上に設けられた電子輸送層106と、電子輸送層106の上に設けられた発光層105と、発光層105の上に設けられた正孔輸送層104と、正孔輸送層104の上に設けられた正孔注入層103と、正孔注入層103の上に設けられた陽極102とを有する構成としてもよい。
上記各層すべてがなくてはならないわけではなく、最小構成単位を陽極102と発光層105と陰極108とからなる構成として、正孔注入層103、正孔輸送層104、電子輸送層106、電子注入層107は任意に設けられる層である。また、上記各層は、それぞれ単一層からなってもよいし、複数層からなってもよい。
有機EL素子を構成する層の態様としては、上述する「基板/陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極」の構成態様の他に、「基板/陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極」、「基板/陽極/正孔注入層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極」、「基板/陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極」、「基板/陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極」、「基板/陽極/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極」、「基板/陽極/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極」、「基板/陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極」、「基板/陽極/正孔注入層/発光層/電子注入層/陰極」、「基板/陽極/正孔注入層/発光層/電子輸送層/陰極」、「基板/陽極/発光層/電子輸送層/陰極」、「基板/陽極/発光層/電子注入層/陰極」の構成態様であってもよい。
<有機電界発光素子における基板>
基板101は、有機EL素子100の支持体であり、通常、石英、ガラス、金属、プラスチックなどが用いられる。基板101は、目的に応じて板状、フィルム状、またはシート状に形成され、例えば、ガラス板、金属板、金属箔、プラスチックフィルム、プラスチックシートなどが用いられる。なかでも、ガラス板、および、ポリエステル、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスルホンなどの透明な合成樹脂製の板が好ましい。ガラス基板であれば、ソーダライムガラスや無アルカリガラスなどが用いられ、また、厚みも機械的強度を保つのに十分な厚みがあればよいので、例えば、0.2mm以上あればよい。厚さの上限値としては、例えば、2mm以下、好ましくは1mm以下である。ガラスの材質については、ガラスからの溶出イオンが少ない方がよいので無アルカリガラスの方が好ましいが、SiOなどのバリアコートを施したソーダライムガラスも市販されているのでこれを使用することができる。また、基板101には、ガスバリア性を高めるために、少なくとも片面に緻密なシリコン酸化膜などのガスバリア膜を設けてもよく、特にガスバリア性が低い合成樹脂製の板、フィルムまたはシートを基板101として用いる場合にはガスバリア膜を設けるのが好ましい。
<有機電界発光素子における陽極>
陽極102は、発光層105へ正孔を注入する役割を果たす。なお、陽極102と発光層105との間に正孔注入層103および/または正孔輸送層104が設けられている場合には、これらを介して発光層105へ正孔を注入することになる。
陽極102を形成する材料としては、無機化合物および有機化合物があげられる。無機化合物としては、例えば、金属(アルミニウム、金、銀、ニッケル、パラジウム、クロムなど)、金属酸化物(インジウムの酸化物、スズの酸化物、インジウム-スズ酸化物(ITO)、インジウム-亜鉛酸化物(IZO)など)、ハロゲン化金属(ヨウ化銅など)、硫化銅、カーボンブラック、ITOガラスやネサガラスなどがあげられる。有機化合物としては、例えば、ポリ(3-メチルチオフェン)などのポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリンなどの導電性ポリマーなどがあげられる。その他、有機EL素子の陽極として用いられている物質の中から適宜選択して用いることができる。
透明電極の抵抗は、発光素子の発光に十分な電流が供給できればよいので限定されないが、発光素子の消費電力の観点からは低抵抗であることが望ましい。例えば、300Ω/□以下のITO基板であれば素子電極として機能するが、現在では10Ω/□程度の基板の供給も可能になっていることから、例えば100~5Ω/□、好ましくは50~5Ω/□の低抵抗品を使用することが特に望ましい。ITOの厚みは抵抗値に合わせて任意に選ぶ事ができるが、通常50~300nmの間で用いられることが多い。
<有機電界発光素子における正孔注入層、正孔輸送層>
正孔注入層103は、陽極102から移動してくる正孔を、効率よく発光層105内または正孔輸送層104内に注入する役割を果たす。正孔輸送層104は、陽極102から注入された正孔または陽極102から正孔注入層103を介して注入された正孔を、効率よく発光層105に輸送する役割を果たす。正孔注入層103および正孔輸送層104は、それぞれ、正孔注入・輸送材料の一種または二種以上を積層、混合するか、正孔注入・輸送材料と高分子結着剤の混合物により形成される。また、正孔注入・輸送材料に塩化鉄(III)のような無機塩を添加して層を形成してもよい。
正孔注入・輸送性物質としては電界を与えられた電極間において正極からの正孔を効率よく注入・輸送することが必要で、正孔注入効率が高く、注入された正孔を効率よく輸送することが望ましい。そのためにはイオン化ポテンシャルが小さく、しかも正孔移動度が大きく、さらに安定性に優れ、トラップとなる不純物が製造時および使用時に発生しにくい物質であることが好ましい。
正孔注入層103および正孔輸送層104を形成する材料としては、本発明に係る多環芳香族化合物およびその多量体を用いることができる。また、その他に、光導電材料において、正孔の電荷輸送材料として従来から慣用されている化合物、p型半導体、有機EL素子の正孔注入層および正孔輸送層に使用されている公知の化合物の中から任意の化合物を選択して用いることができる。それらの具体例は、カルバゾール誘導体(N-フェニルカルバゾール、ポリビニルカルバゾールなど)、ビス(N-アリールカルバゾール)またはビス(N-アルキルカルバゾール)などのビスカルバゾール誘導体、トリアリールアミン誘導体(芳香族第3級アミノを主鎖あるいは側鎖に持つポリマー、1,1-ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)シクロヘキサン、N,N’-ジフェニル-N,N’-ジ(3-メチルフェニル)-4,4’-ジアミノビフェニル、N,N’-ジフェニル-N,N’-ジナフチル-4,4’-ジアミノビフェニル、N,N’-ジフェニル-N,N’-ジ(3-メチルフェニル)-4,4’-ジフェニル-1,1’-ジアミン、N,N’-ジナフチル-N,N’-ジフェニル-4,4’-ジフェニル-1,1’-ジアミン、N,N4’-ジフェニル-N,N4’-ビス(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジアミン、N,N,N4’,N4’-テトラ[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジアミン、4,4’,4”-トリス(3-メチルフェニル(フェニル)アミノ)トリフェニルアミンなどのトリフェニルアミン誘導体、スターバーストアミン誘導体など)、スチルベン誘導体、フタロシアニン誘導体(無金属、銅フタロシアニンなど)、ピラゾリン誘導体、ヒドラゾン系化合物、ベンゾフラン誘導体やチオフェン誘導体、オキサジアゾール誘導体、キノキサリン誘導体(例えば、1,4,5,8,9,12-ヘキサアザトリフェニレン-2,3,6,7,10,11-ヘキサカルボニトリルなど)、ポルフィリン誘導体などの複素環化合物、ポリシランなどである。ポリマー系では前記単量体を側鎖に有するポリカーボネートやスチレン誘導体、ポリビニルカルバゾールおよびポリシランなどが好ましいが、発光素子の作製に必要な薄膜を形成し、陽極から正孔が注入できて、さらに正孔を輸送できる化合物であれば特に限定されない。
また、有機半導体の導電性は、そのドーピングにより、強い影響を受けることも知られている。このような有機半導体マトリックス物質は、電子供与性の良好な化合物、または、電子受容性の良好な化合物から構成されている。電子供与物質のドーピングのために、テトラシアノキノンジメタン(TCNQ)または2,3,5,6-テトラフルオロテトラシアノ-1,4-ベンゾキノンジメタン(F4TCNQ)などの強い電子受容体が知られている(例えば、文献「M.Pfeiffer,A.Beyer,T.Fritz,K.Leo,Appl.Phys.Lett.,73(22),3202-3204(1998)」および文献「J.Blochwitz,M.Pheiffer,T.Fritz,K.Leo,Appl.Phys.Lett.,73(6),729-731(1998)」を参照)。これらは、電子供与型ベース物質(正孔輸送物質)における電子移動プロセスによって、いわゆる正孔を生成する。正孔の数および移動度によって、ベース物質の伝導性が、かなり大きく変化する。正孔輸送特性を有するマトリックス物質としては、例えばベンジジン誘導体(TPDなど)またはスターバーストアミン誘導体(TDATAなど)、あるいは、特定の金属フタロシアニン(特に、亜鉛フタロシアニンZnPcなど)が知られている(特開2005-167175号公報)。
なお、正孔注入・輸送層と発光層との間に発光層からの電子の拡散を防ぐ電子阻止層を設けてもよい。
<有機電界発光素子における発光層>
発光層105は、電界を与えられた電極間において、陽極102から注入された正孔と、陰極108から注入された電子とを再結合させることにより発光する層である。発光層105を形成する材料としては、正孔と電子との再結合によって励起されて発光する化合物(発光性化合物)であればよく、安定な薄膜形状を形成することができ、かつ、固体状態で強い発光(蛍光)効率を示す化合物であるのが好ましい。一般式(1)または(2)で表される多環芳香族化合物およびその多量体は発光層用材料として用いることができる。
発光層は単一層でも複数層からなってもどちらでもよく、それぞれ発光層用材料(ホスト材料、ドーパント材料)により形成される。ホスト材料とドーパント材料は、それぞれ一種類であっても、複数の組み合わせであっても、いずれでもよい。ドーパント材料はホスト材料の全体に含まれていても、部分的に含まれていても、いずれであってもよい。ドーピング方法としては、ホスト材料との共蒸着法によって形成することができるが、ホスト材料と予め混合してから同時に蒸着してもよい。
ホスト材料の使用量はホスト材料の種類によって異なり、そのホスト材料の特性に合わせて決めればよい。ホスト材料の使用量の目安は、好ましくは発光層用材料全体の50~99.999重量%であり、より好ましくは80~99.95重量%であり、さらに好ましくは90~99.9重量%である。
ドーパント材料の使用量はドーパント材料の種類によって異なり、そのドーパント材料の特性に合わせて決めればよい。ドーパントの使用量の目安は、好ましくは発光層用材料全体の0.001~50重量%であり、より好ましくは0.05~20重量%であり、さらに好ましくは0.1~10重量%である。上記の範囲であれば、例えば、濃度消光現象を防止できるという点で好ましい。
ホスト材料としては、以前から発光体として知られていた縮合環誘導体、カルバゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、シロール誘導体、トリアジン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体などのビススチリル誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、フルオレン誘導体、ベンゾフルオレン誘導体などがあげられる。また、特開2015-179809号公報において第1有機化合物として挙げられている化合物もホスト材料として好ましく、より好ましいホスト材料としては例えば以下の化合物である。
Figure 0007018171000055
Figure 0007018171000056
Figure 0007018171000057
<有機電界発光素子における電子注入層、電子輸送層>
電子注入層107は、陰極108から移動してくる電子を、効率よく発光層105内または電子輸送層106内に注入する役割を果たす。電子輸送層106は、陰極108から注入された電子または陰極108から電子注入層107を介して注入された電子を、効率よく発光層105に輸送する役割を果たす。電子輸送層106および電子注入層107は、それぞれ、電子輸送・注入材料の一種または二種以上を積層、混合するか、電子輸送・注入材料と高分子結着剤の混合物により形成される。
電子注入・輸送層とは、陰極から電子が注入され、さらに電子を輸送することを司る層であり、電子注入効率が高く、注入された電子を効率よく輸送することが望ましい。そのためには電子親和力が大きく、しかも電子移動度が大きく、さらに安定性に優れ、トラップとなる不純物が製造時および使用時に発生しにくい物質であることが好ましい。しかしながら、正孔と電子の輸送バランスを考えた場合に、陽極からの正孔が再結合せずに陰極側へ流れるのを効率よく阻止できる役割を主に果たす場合には、電子輸送能力がそれ程高くなくても、発光効率を向上させる効果は電子輸送能力が高い材料と同等に有する。したがって、本実施形態における電子注入・輸送層は、正孔の移動を効率よく阻止できる層の機能も含まれてもよい。
電子輸送層106または電子注入層107を形成する材料(電子輸送材料)としては、一般式(1)または(2)で表される多環芳香族化合物およびその多量体を用いることができる。その他に、光導電材料において電子伝達化合物として従来から慣用されている化合物、有機EL素子の電子注入層および電子輸送層に使用されている公知の化合物の中から任意に選択して用いることができる。
電子輸送層または電子注入層に用いられる材料としては、炭素、水素、酸素、硫黄、ケイ素およびリンの中から選ばれる一種以上の原子で構成される芳香環もしくは複素芳香環からなる化合物、ピロール誘導体およびその縮合環誘導体および電子受容性窒素を有する金属錯体の中から選ばれる少なくとも一種を含有することが好ましい。具体的には、ナフタレン、アントラセンなどの縮合環系芳香環誘導体、4,4’-ビス(ジフェニルエテニル)ビフェニルに代表されるスチリル系芳香環誘導体、ペリノン誘導体、クマリン誘導体、ナフタルイミド誘導体、アントラキノンやジフェノキノンなどのキノン誘導体、リンオキサイド誘導体、カルバゾール誘導体およびインドール誘導体などがあげられる。電子受容性窒素を有する金属錯体としては、例えば、ヒドロキシフェニルオキサゾール錯体などのヒドロキシアゾール錯体、アゾメチン錯体、トロポロン金属錯体、フラボノール金属錯体およびベンゾキノリン金属錯体などがあげられる。これらの材料は単独でも用いられるが、異なる材料と混合して使用しても構わない。
また、他の電子伝達化合物の具体例として、ピリジン誘導体、ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、フェナントロリン誘導体、ペリノン誘導体、クマリン誘導体、ナフタルイミド誘導体、アントラキノン誘導体、ジフェノキノン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、ペリレン誘導体、オキサジアゾール誘導体(1,3-ビス[(4-t-ブチルフェニル)1,3,4-オキサジアゾリル]フェニレンなど)、チオフェン誘導体、トリアゾール誘導体(N-ナフチル-2,5-ジフェニル-1,3,4-トリアゾールなど)、チアジアゾール誘導体、オキシン誘導体の金属錯体、キノリノール系金属錯体、キノキサリン誘導体、キノキサリン誘導体のポリマー、ベンザゾール類化合物、ガリウム錯体、ピラゾール誘導体、パーフルオロ化フェニレン誘導体、トリアジン誘導体、ピラジン誘導体、ベンゾキノリン誘導体(2,2’-ビス(ベンゾ[h]キノリン-2-イル)-9,9’-スピロビフルオレンなど)、イミダゾピリジン誘導体、ボラン誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体(トリス(N-フェニルベンゾイミダゾール-2-イル)ベンゼンなど)、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、キノリン誘導体、テルピリジンなどのオリゴピリジン誘導体、ビピリジン誘導体、テルピリジン誘導体(1,3-ビス(4’-(2,2’:6’2”-テルピリジニル))ベンゼンなど)、ナフチリジン誘導体(ビス(1-ナフチル)-4-(1,8-ナフチリジン-2-イル)フェニルホスフィンオキサイドなど)、アルダジン誘導体、カルバゾール誘導体、インドール誘導体、リンオキサイド誘導体、ビススチリル誘導体などがあげられる。
また、電子受容性窒素を有する金属錯体を用いることもでき、例えば、キノリノール系金属錯体やヒドロキシフェニルオキサゾール錯体などのヒドロキシアゾール錯体、アゾメチン錯体、トロポロン金属錯体、フラボノール金属錯体およびベンゾキノリン金属錯体などがあげられる。
上述した材料は単独でも用いられるが、異なる材料と混合して使用しても構わない。
上述した材料の中でも、ボラン誘導体、ピリジン誘導体、フルオランテン誘導体、BO系誘導体、アントラセン誘導体、ベンゾフルオレン誘導体、ホスフィンオキサイド誘導体、ピリミジン誘導体、カルバゾール誘導体、トリアジン誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、フェナントロリン誘導体、およびキノリノール系金属錯体が好ましい。
<ボラン誘導体>
ボラン誘導体は、例えば下記一般式(ETM-1)で表される化合物であり、詳細には特開2007-27587号公報に開示されている。
Figure 0007018171000058
上記式(ETM-1)中、R11およびR12は、それぞれ独立して、水素、アルキル、置換されていてもよいアリール、置換されているシリル、置換されていてもよい窒素含有複素環、またはシアノの少なくとも一つであり、R13~R16は、それぞれ独立して、置換されていてもよいアルキル、または置換されていてもよいアリールであり、Xは、置換されていてもよいアリーレンであり、Yは、置換されていてもよい炭素数16以下のアリール、置換されているボリル、または置換されていてもよいカルバゾリルであり、そして、nはそれぞれ独立して0~3の整数である。
上記一般式(ETM-1)で表される化合物の中でも、下記一般式(ETM-1-1)で表される化合物や下記一般式(ETM-1-2)で表される化合物が好ましい。
Figure 0007018171000059
式(ETM-1-1)中、R11およびR12は、それぞれ独立して、水素、アルキル、置換されていてもよいアリール、置換されているシリル、置換されていてもよい窒素含有複素環、またはシアノの少なくとも一つであり、R13~R16は、それぞれ独立して、置換されていてもよいアルキル、または置換されていてもよいアリールであり、R21およびR22は、それぞれ独立して、水素、アルキル、置換されていてもよいアリール、置換されているシリル、置換されていてもよい窒素含有複素環、またはシアノの少なくとも一つであり、Xは、置換されていてもよい炭素数20以下のアリーレンであり、nはそれぞれ独立して0~3の整数であり、そして、mはそれぞれ独立して0~4の整数である。
Figure 0007018171000060
式(ETM-1-2)中、R11およびR12は、それぞれ独立して、水素、アルキル、置換されていてもよいアリール、置換されているシリル、置換されていてもよい窒素含有複素環、またはシアノの少なくとも一つであり、R13~R16は、それぞれ独立して、置換されていてもよいアルキル、または置換されていてもよいアリールであり、Xは、置換されていてもよい炭素数20以下のアリーレンであり、そして、nはそれぞれ独立して0~3の整数である。
の具体的な例としては、下記式(X-1)~式(X-9)で表される2価の基があげられる。
Figure 0007018171000061
(各式中、Rは、それぞれ独立してアルキル基又は置換されていてもよいフェニル基である。)
このボラン誘導体の具体例としては、例えば以下の化合物があげられる。
Figure 0007018171000062
このボラン誘導体は公知の原料と公知の合成方法を用いて製造することができる。
<ピリジン誘導体>
ピリジン誘導体は、例えば下記式(ETM-2)で表される化合物であり、好ましくは式(ETM-2-1)または式(ETM-2-2)で表される化合物である。
Figure 0007018171000063
φは、n価のアリール環(好ましくはn価のベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フルオレン環、ベンゾフルオレン環、フェナレン環、フェナントレン環またはトリフェニレン環)であり、nは1~4の整数である。
上記式(ETM-2-1)において、R11~R18は、それぞれ独立して、水素、アルキル(好ましくは炭素数1~24のアルキル)、シクロアルキル(好ましくは炭素数3~12のシクロアルキル)またはアリール(好ましくは炭素数6~30のアリール)である。
上記式(ETM-2-2)において、R11およびR12は、それぞれ独立して、水素、アルキル(好ましくは炭素数1~24のアルキル)、シクロアルキル(好ましくは炭素数3~12のシクロアルキル)またはアリール(好ましくは炭素数6~30のアリール)であり、R11およびR12は結合して環を形成していてもよい。
各式において、「ピリジン系置換基」は、下記式(Py-1)~式(Py-15)のいずれかであり、ピリジン系置換基はそれぞれ独立して炭素数1~4のアルキルで置換されていてもよい。また、ピリジン系置換基はフェニレン基やナフチレン基を介して各式におけるφ、アントラセン環またはフルオレン環に結合していてもよい。
Figure 0007018171000064
ピリジン系置換基は、上記式(Py-1)~式(Py-15)のいずれかであるが、これらの中でも、下記式(Py-21)~式(Py-44)のいずれかであることが好ましい。
Figure 0007018171000065
各ピリジン誘導体における少なくとも1つの水素が重水素で置換されていてもよく、また、上記式(ETM-2-1)および式(ETM-2-2)における2つの「ピリジン系置換基」のうちの一方はアリールで置き換えられていてもよい。
11~R18における「アルキル」としては、直鎖及び分枝鎖のいずれでもよく、例えば、炭素数1~24の直鎖アルキル又は炭素数3~24の分枝鎖アルキルがあげられる。好ましい「アルキル」は、炭素数1~18のアルキル(炭素数3~18の分枝鎖アルキル)である。より好ましい「アルキル」は、炭素数1~12のアルキル(炭素数3~12の分枝鎖アルキル)である。さらに好ましい「アルキル」は、炭素数1~6のアルキル(炭素数3~6の分枝鎖アルキル)である。特に好ましい「アルキル」は、炭素数1~4のアルキル(炭素数3~4の分枝鎖アルキル)である。
具体的な「アルキル」としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、t-ペンチル、n-ヘキシル、1-メチルペンチル、4-メチル-2-ペンチル、3,3-ジメチルブチル、2-エチルブチル、n-ヘプチル、1-メチルヘキシル、n-オクチル、t-オクチル、1-メチルヘプチル、2-エチルヘキシル、2-プロピルペンチル、n-ノニル、2,2-ジメチルヘプチル、2,6-ジメチル-4-ヘプチル、3,5,5-トリメチルヘキシル、n-デシル、n-ウンデシル、1-メチルデシル、n-ドデシル、n-トリデシル、1-ヘキシルヘプチル、n-テトラデシル、n-ペンタデシル、n-ヘキサデシル、n-ヘプタデシル、n-オクタデシル、n-エイコシルなどがあげられる。
ピリジン系置換基に置換する炭素数1~4のアルキルとしては、上記アルキルの説明を引用することができる。
11~R18における「シクロアルキル」としては、例えば、炭素数3~12のシクロアルキルがあげられる。好ましい「シクロアルキル」は、炭素数3~10のシクロアルキルである。より好ましい「シクロアルキル」は、炭素数3~8のシクロアルキルである。さらに好ましい「シクロアルキル」は、炭素数3~6のシクロアルキルである。
具体的な「シクロアルキル」としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロペンチル、シクロヘプチル、メチルシクロヘキシル、シクロオクチル又はジメチルシクロヘキシルなどがあげられる。
11~R18における「アリール」としては、好ましいアリールは炭素数6~30のアリールであり、より好ましいアリールは炭素数6~18のアリールであり、さらに好ましくは炭素数6~14のアリールであり、特に好ましくは炭素数6~12のアリールである。
具体的な「炭素数6~30のアリール」としては、単環系アリールであるフェニル、縮合二環系アリールである(1-,2-)ナフチル、縮合三環系アリールである、アセナフチレン-(1-,3-,4-,5-)イル、フルオレン-(1-,2-,3-,4-,9-)イル、フェナレン-(1-,2-)イル、(1-,2-,3-,4-,9-)フェナントリル、縮合四環系アリールであるトリフェニレン-(1-,2-)イル、ピレン-(1-,2-,4-)イル、ナフタセン-(1-,2-,5-)イル、縮合五環系アリールであるペリレン-(1-,2-,3-)イル、ペンタセン-(1-,2-,5-,6-)イルなどがあげられる。
好ましい「炭素数6~30のアリール」は、フェニル、ナフチル、フェナントリル、クリセニルまたはトリフェニレニルなどがあげられ、さらに好ましくはフェニル、1-ナフチル、2-ナフチルまたはフェナントリルがあげられ、特に好ましくはフェニル、1-ナフチルまたは2-ナフチルがあげられる。
上記式(ETM-2-2)におけるR11およびR12は結合して環を形成していてもよく、この結果、フルオレン骨格の5員環には、シクロブタン、シクロペンタン、シクロペンテン、シクロペンタジエン、シクロヘキサン、フルオレンまたはインデンなどがスピロ結合していてもよい。
このピリジン誘導体の具体例としては、例えば以下の化合物があげられる。
Figure 0007018171000066
このピリジン誘導体は公知の原料と公知の合成方法を用いて製造することができる。
<フルオランテン誘導体>
フルオランテン誘導体は、例えば下記一般式(ETM-3)で表される化合物であり、詳細には国際公開第2010/134352号公報に開示されている。
Figure 0007018171000067
上記式(ETM-3)中、X12~X21は水素、ハロゲン、直鎖、分岐もしくは環状のアルキル、直鎖、分岐もしくは環状のアルコキシ、置換もしくは無置換のアリール、または置換もしくは無置換のヘテロアリールを表す。
このフルオランテン誘導体の具体例としては、例えば以下の化合物があげられる。
Figure 0007018171000068
<BO系誘導体>
BO系誘導体は、例えば下記式(ETM-4)で表される多環芳香族化合物、または下記式(ETM-4)で表される構造を複数有する多環芳香族化合物の多量体である。
Figure 0007018171000069
~R11は、それぞれ独立して、水素、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、アルコキシまたはアリールオキシであり、これらにおける少なくとも1つの水素はアリール、ヘテロアリールまたはアルキルで置換されていてもよい。
また、R~R11のうちの隣接する基同士が結合してa環、b環またはc環と共にアリール環またはヘテロアリール環を形成していてもよく、形成された環における少なくとも1つの水素はアリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、アルコキシまたはアリールオキシで置換されていてもよく、これらにおける少なくとも1つの水素はアリール、ヘテロアリールまたはアルキルで置換されていてもよい。
また、式(ETM-4)で表される化合物または構造における少なくとも1つの水素がハロゲンまたは重水素で置換されていてもよい。
式(ETM-4)における置換基や環形成の形態、また式(ETM-4)の構造が複数合わさってできる多量体の説明については、上記一般式(1)や式(2)で表される多環芳香族化合物やその多量体の説明を引用することができる。
このBO系誘導体の具体例としては、例えば以下の化合物があげられる。
Figure 0007018171000070
このBO系誘導体は公知の原料と公知の合成方法を用いて製造することができる。
<アントラセン誘導体>
アントラセン誘導体の一つは、例えば下記式(ETM-5-1)で表される化合物である。
Figure 0007018171000071
Arは、それぞれ独立して、2価のベンゼンまたはナフタレンであり、R~Rは、それぞれ独立して、水素、炭素数1~6のアルキル、炭素数3から6のシクロアルキルまたは炭素数6~20のアリールである。
Arは、それぞれ独立して、2価のベンゼンまたはナフタレンから適宜選択することができ、2つのArが異なっていても同じであってもよいが、アントラセン誘導体の合成の容易さの観点からは同じであることが好ましい。Arはピリジンと結合して、「Arおよびピリジンからなる部位」を形成しており、この部位は例えば下記式(Py-1)~式(Py-12)のいずれかで表される基としてアントラセンに結合している。
Figure 0007018171000072
これらの基の中でも、上記式(Py-1)~式(Py-9)のいずれかで表される基が好ましく、上記式(Py-1)~式(Py-6)のいずれかで表される基がより好ましい。アントラセンに結合する2つの「Arおよびピリジンからなる部位」は、その構造が同じであっても異なっていてもよいが、アントラセン誘導体の合成の容易さの観点からは同じ構造であることが好ましい。ただし、素子特性の観点からは、2つの「Arおよびピリジンからなる部位」の構造が同じであっても異なっていても好ましい。
~Rにおける炭素数1~6のアルキルについては直鎖および分枝鎖のいずれでもよい。すなわち、炭素数1~6の直鎖アルキルまたは炭素数3~6の分枝鎖アルキルである。より好ましくは、炭素数1~4のアルキル(炭素数3~4の分枝鎖アルキル)である。具体例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、t-ペンチル、n-ヘキシル、1-メチルペンチル、4-メチル-2-ペンチル、3,3-ジメチルブチル、または2-エチルブチルなどがあげられ、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、s-ブチル、またはt-ブチルが好ましく、メチル、エチル、またはt-ブチルがより好ましい。
~Rにおける炭素数3~6のシクロアルキルの具体例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロペンチル、シクロヘプチル、メチルシクロヘキシル、シクロオクチルまたはジメチルシクロヘキシルなどがあげられる。
~Rにおける炭素数6~20のアリールについては、炭素数6~16のアリールが好ましく、炭素数6~12のアリールがより好ましく、炭素数6~10のアリールが特に好ましい。
「炭素数6~20のアリール」の具体例としては、単環系アリールであるフェニル、(o-,m-,p-)トリル、(2,3-,2,4-,2,5-,2,6-,3,4-,3,5-)キシリル、メシチル(2,4,6-トリメチルフェニル)、(o-,m-,p-)クメニル、二環系アリールである(2-,3-,4-)ビフェニリル、縮合二環系アリールである(1-,2-)ナフチル、三環系アリールであるテルフェニリル(m-テルフェニル-2’-イル、m-テルフェニル-4’-イル、m-テルフェニル-5’-イル、o-テルフェニル-3’-イル、o-テルフェニル-4’-イル、p-テルフェニル-2’-イル、m-テルフェニル-2-イル、m-テルフェニル-3-イル、m-テルフェニル-4-イル、o-テルフェニル-2-イル、o-テルフェニル-3-イル、o-テルフェニル-4-イル、p-テルフェニル-2-イル、p-テルフェニル-3-イル、p-テルフェニル-4-イル)、縮合三環系アリールである、アントラセン-(1-,2-,9-)イル、アセナフチレン-(1-,3-,4-,5-)イル、フルオレン-(1-,2-,3-,4-,9-)イル、フェナレン-(1-,2-)イル、(1-,2-,3-,4-,9-)フェナントリル、縮合四環系アリールであるトリフェニレン-(1-,2-)イル、ピレン-(1-,2-,4-)イル、テトラセン-(1-,2-,5-)イル、縮合五環系アリールであるペリレン-(1-,2-,3-)イルなどがあげられる。
好ましい「炭素数6~20のアリール」は、フェニル、ビフェニリル、テルフェニリルまたはナフチルであり、より好ましくは、フェニル、ビフェニリル、1-ナフチル、2-ナフチルまたはm-テルフェニル-5’-イルであり、さらに好ましくは、フェニル、ビフェニリル、1-ナフチルまたは2-ナフチルであり、最も好ましくはフェニルである。
アントラセン誘導体の一つは、例えば下記式(ETM-5-2)で表される化合物である。
Figure 0007018171000073
Arは、それぞれ独立して、単結合、2価のベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フルオレン、またはフェナレンである。
Arは、それぞれ独立して、炭素数6~20のアリールであり、上記式(ETM-5-1)における「炭素数6~20のアリール」と同じ説明を引用することができる。炭素数6~16のアリールが好ましく、炭素数6~12のアリールがより好ましく、炭素数6~10のアリールが特に好ましい。具体例としては、フェニル、ビフェニリル、ナフチル、テルフェニリル、アントラセニル、アセナフチレニル、フルオレニル、フェナレニル、フェナントリル、トリフェニレニル、ピレニル、テトラセニル、ペリレニルなどがあげられる。
~Rは、それぞれ独立して、水素、炭素数1~6のアルキル、炭素数3から6のシクロアルキルまたは炭素数6~20のアリールであり、上記式(ETM-5-1)における説明を引用することができる。
これらのアントラセン誘導体の具体例としては、例えば以下の化合物があげられる。
Figure 0007018171000074
これらのアントラセン誘導体は公知の原料と公知の合成方法を用いて製造することができる。
<ベンゾフルオレン誘導体>
ベンゾフルオレン誘導体は、例えば下記式(ETM-6)で表される化合物である。
Figure 0007018171000075
Arは、それぞれ独立して、炭素数6~20のアリールであり、上記式(ETM-5-1)における「炭素数6~20のアリール」と同じ説明を引用することができる。炭素数6~16のアリールが好ましく、炭素数6~12のアリールがより好ましく、炭素数6~10のアリールが特に好ましい。具体例としては、フェニル、ビフェニリル、ナフチル、テルフェニリル、アントラセニル、アセナフチレニル、フルオレニル、フェナレニル、フェナントリル、トリフェニレニル、ピレニル、テトラセニル、ペリレニルなどがあげられる。
Arは、それぞれ独立して、水素、アルキル(好ましくは炭素数1~24のアルキル)、シクロアルキル(好ましくは炭素数3~12のシクロアルキル)またはアリール(好ましくは炭素数6~30のアリール)であり、2つのArは結合して環を形成していてもよい。
Arにおける「アルキル」としては、直鎖及び分枝鎖のいずれでもよく、例えば、炭素数1~24の直鎖アルキル又は炭素数3~24の分枝鎖アルキルがあげられる。好ましい「アルキル」は、炭素数1~18のアルキル(炭素数3~18の分枝鎖アルキル)である。より好ましい「アルキル」は、炭素数1~12のアルキル(炭素数3~12の分枝鎖アルキル)である。さらに好ましい「アルキル」は、炭素数1~6のアルキル(炭素数3~6の分枝鎖アルキル)である。特に好ましい「アルキル」は、炭素数1~4のアルキル(炭素数3~4の分枝鎖アルキル)である。具体的な「アルキル」としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、t-ペンチル、n-ヘキシル、1-メチルペンチル、4-メチル-2-ペンチル、3,3-ジメチルブチル、2-エチルブチル、n-ヘプチル、1-メチルヘキシルなどがあげられる。
Arにおける「シクロアルキル」としては、例えば、炭素数3~12のシクロアルキルがあげられる。好ましい「シクロアルキル」は、炭素数3~10のシクロアルキルである。より好ましい「シクロアルキル」は、炭素数3~8のシクロアルキルである。さらに好ましい「シクロアルキル」は、炭素数3~6のシクロアルキルである。具体的な「シクロアルキル」としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロペンチル、シクロヘプチル、メチルシクロヘキシル、シクロオクチル又はジメチルシクロヘキシルなどがあげられる。
Arにおける「アリール」としては、好ましいアリールは炭素数6~30のアリールであり、より好ましいアリールは炭素数6~18のアリールであり、さらに好ましくは炭素数6~14のアリールであり、特に好ましくは炭素数6~12のアリールである。
具体的な「炭素数6~30のアリール」としては、フェニル、ナフチル、アセナフチレニル、フルオレニル、フェナレニル、フェナントリル、トリフェニレニル、ピレニル、ナフタセニル、ペリレニル、ペンタセニルなどがあげられる。
2つのArは結合して環を形成していてもよく、この結果、フルオレン骨格の5員環には、シクロブタン、シクロペンタン、シクロペンテン、シクロペンタジエン、シクロヘキサン、フルオレンまたはインデンなどがスピロ結合していてもよい。
このベンゾフルオレン誘導体の具体例としては、例えば以下の化合物があげられる。
Figure 0007018171000076
このベンゾフルオレン誘導体は公知の原料と公知の合成方法を用いて製造することができる。
<ホスフィンオキサイド誘導体>
ホスフィンオキサイド誘導体は、例えば下記式(ETM-7-1)で表される化合物である。詳細は国際公開第2013/079217号公報にも記載されている。
Figure 0007018171000077
は、置換または無置換の、炭素数1~20のアルキル、炭素数6~20のアリールまたは炭素数5~20のヘテロアリールであり、
は、CN、置換または無置換の、炭素数1~20のアルキル、炭素数1~20のヘテロアルキル、炭素数6~20のアリール、炭素数5~20のヘテロアリール、炭素数1~20のアルコキシまたは炭素数6~20のアリールオキシであり、
およびRは、それぞれ独立して、置換または無置換の、炭素数6~20のアリールまたは炭素数5~20のヘテロアリールであり、
は酸素または硫黄であり、
jは0または1であり、kは0または1であり、rは0~4の整数であり、qは1~3の整数である。
ホスフィンオキサイド誘導体は、例えば下記式(ETM-7-2)で表される化合物でもよい。
Figure 0007018171000078
~Rは、同じでも異なっていてもよく、水素、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アリール基、複素環基、ハロゲン、シアノ基、アルデヒド基、カルボニル基、カルボキシル基、アミノ基、ニトロ基、シリル基、および隣接置換基との間に形成される縮合環の中から選ばれる。
Arは、同じでも異なっていてもよく、アリーレン基またはヘテロアリーレン基である。Arは、同じでも異なっていてもよく、アリール基またはヘテロアリール基である。ただし、ArおよびArのうち少なくとも一方は置換基を有しているか、または隣接置換基との間に縮合環を形成している。nは0~3の整数であり、nが0のとき不飽和構造部分は存在せず、nが3のときR1は存在しない。
これらの置換基の内、アルキル基とは、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などの飽和脂肪族炭化水素基を示し、これは無置換でも置換されていてもかまわない。置換されている場合の置換基には特に制限は無く、例えば、アルキル基、アリール基、複素環基などをあげることができ、この点は、以下の記載にも共通する。また、アルキル基の炭素数は特に限定されないが、入手の容易性やコストの点から、通常、1~20の範囲である。
また、シクロアルキル基とは、例えば、シクロプロピル、シクロヘキシル、ノルボルニル、アダマンチルなどの飽和脂環式炭化水素基を示し、これは無置換でも置換されていてもかまわない。アルキル基部分の炭素数は特に限定されないが、通常、3~20の範囲である。
また、アラルキル基とは、例えば、ベンジル基、フェニルエチル基などの脂肪族炭化水素を介した芳香族炭化水素基を示し、脂肪族炭化水素と芳香族炭化水素はいずれも無置換でも置換されていてもかまわない。脂肪族部分の炭素数は特に限定されないが、通常、1~20の範囲である。
また、アルケニル基とは、例えば、ビニル基、アリル基、ブタジエニル基などの二重結合を含む不飽和脂肪族炭化水素基を示し、これは無置換でも置換されていてもかまわない。アルケニル基の炭素数は特に限定されないが、通常、2~20の範囲である。
また、シクロアルケニル基とは、例えば、シクロペンテニル基、シクロペンタジエニル基、シクロヘキセン基などの二重結合を含む不飽和脂環式炭化水素基を示し、これは無置換でも置換されていてもかまわない。
また、アルキニル基とは、例えば、アセチレニル基などの三重結合を含む不飽和脂肪族炭化水素基を示し、これは無置換でも置換されていてもかまわない。アルキニル基の炭素数は特に限定されないが、通常、2~20の範囲である。
また、アルコキシ基とは、例えば、メトキシ基などのエーテル結合を介した脂肪族炭化水素基を示し、脂肪族炭化水素基は無置換でも置換されていてもかまわない。アルコキシ基の炭素数は特に限定されないが、通常、1~20の範囲である。
また、アルキルチオ基とは、アルコキシ基のエーテル結合の酸素原子が硫黄原子に置換された基である。
また、アリールエーテル基とは、例えば、フェノキシ基などのエーテル結合を介した芳香族炭化水素基を示し、芳香族炭化水素基は無置換でも置換されていてもかまわない。アリールエーテル基の炭素数は特に限定されないが、通常、6~40の範囲である。
また、アリールチオエーテル基とは、アリールエーテル基のエーテル結合の酸素原子が硫黄原子に置換された基である。
また、アリール基とは、例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、フェナントリル基、ターフェニル基、ピレニル基などの芳香族炭化水素基を示す。アリール基は、無置換でも置換されていてもかまわない。アリール基の炭素数は特に限定されないが、通常、6~40の範囲である。
また、複素環基とは、例えば、フラニル基、チオフェニル基、オキサゾリル基、ピリジル基、キノリニル基、カルバゾリル基などの炭素以外の原子を有する環状構造基を示し、これは無置換でも置換されていてもかまわない。複素環基の炭素数は特に限定されないが、通常、2~30の範囲である。
ハロゲンとは、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素を示す。
アルデヒド基、カルボニル基、アミノ基には、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、複素環などで置換された基も含むことができる。
また、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、複素環は無置換でも置換されていてもかまわない。
シリル基とは、例えば、トリメチルシリル基などのケイ素化合物基を示し、これは無置換でも置換されていてもかまわない。シリル基の炭素数は特に限定されないが、通常、3~20の範囲である。また、ケイ素数は、通常、1~6である。
隣接置換基との間に形成される縮合環とは、例えば、ArとR、ArとR、ArとR、ArとR、RとR、ArとArなどの間で形成された共役または非共役の縮合環である。ここで、nが1の場合、2つのR同士で共役または非共役の縮合環を形成してもよい。これら縮合環は、環内構造に窒素、酸素、硫黄原子を含んでいてもよいし、さらに別の環と縮合してもよい。
このホスフィンオキサイド誘導体の具体例としては、例えば以下の化合物があげられる。
Figure 0007018171000079
このホスフィンオキサイド誘導体は公知の原料と公知の合成方法を用いて製造することができる。
<ピリミジン誘導体>
ピリミジン誘導体は、例えば下記式(ETM-8)で表される化合物であり、好ましくは下記式(ETM-8-1)で表される化合物である。詳細は国際公開第2011/021689号公報にも記載されている。
Figure 0007018171000080
Arは、それぞれ独立して、置換されていてもよいアリール、または置換されていてもよいヘテロアリールである。nは1~4の整数であり、好ましくは1~3の整数であり、より好ましくは2または3である。
「置換されていてもよいアリール」の「アリール」としては、例えば、炭素数6~30のアリールがあげられ、好ましくは炭素数6~24のアリール、より好ましくは炭素数6~20のアリール、さらに好ましくは炭素数6~12のアリールである。
具体的な「アリール」としては、単環系アリールであるフェニル、二環系アリールである(2-,3-,4-)ビフェニリル、縮合二環系アリールである(1-,2-)ナフチル、三環系アリールであるテルフェニリル(m-テルフェニル-2’-イル、m-テルフェニル-4’-イル、m-テルフェニル-5’-イル、o-テルフェニル-3’-イル、o-テルフェニル-4’-イル、p-テルフェニル-2’-イル、m-テルフェニル-2-イル、m-テルフェニル-3-イル、m-テルフェニル-4-イル、o-テルフェニル-2-イル、o-テルフェニル-3-イル、o-テルフェニル-4-イル、p-テルフェニル-2-イル、p-テルフェニル-3-イル、p-テルフェニル-4-イル)、縮合三環系アリールである、アセナフチレン-(1-,3-,4-,5-)イル、フルオレン-(1-,2-,3-,4-,9-)イル、フェナレン-(1-,2-)イル、(1-,2-,3-,4-,9-)フェナントリル、四環系アリールであるクアテルフェニリル(5’-フェニル-m-テルフェニル-2-イル、5’-フェニル-m-テルフェニル-3-イル、5’-フェニル-m-テルフェニル-4-イル、m-クアテルフェニリル)、縮合四環系アリールであるトリフェニレン-(1-,2-)イル、ピレン-(1-,2-,4-)イル、ナフタセン-(1-,2-,5-)イル、縮合五環系アリールであるペリレン-(1-,2-,3-)イル、ペンタセン-(1-,2-,5-,6-)イルなどがあげられる
「置換されていてもよいヘテロアリール」の「ヘテロアリール」としては、例えば、炭素数2~30のヘテロアリールがあげられ、炭素数2~25のヘテロアリールが好ましく、炭素数2~20のヘテロアリールがより好ましく、炭素数2~15のヘテロアリールがさらに好ましく、炭素数2~10のヘテロアリールが特に好ましい。また、ヘテロアリールとしては、例えば環構成原子として炭素以外に酸素、硫黄および窒素から選ばれるヘテロ原子を1ないし5個含有する複素環などがあげられる。
具体的なヘテロアリールとしては、例えば、フリル、チエニル、ピロリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサジアゾリル、フラザニル、チアジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピラジニル、トリアジニル、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、ベンゾ[b]チエニル、インドリル、イソインドリル、1H-インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、1H-ベンゾトリアゾリル、キノリル、イソキノリル、シンノリル、キナゾリル、キノキサリニル、フタラジニル、ナフチリジニル、プリニル、プテリジニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェノキサジニル、フェノチアジニル、フェナジニル、フェノキサチイニル、チアントレニル、インドリジニルなどがあげられる。
また、上記アリールおよびヘテロアリールは置換されていてもよく、それぞれ例えば上記アリールやヘテロアリールで置換されていてもよい。
このピリミジン誘導体の具体例としては、例えば以下の化合物があげられる。
Figure 0007018171000081
このピリミジン誘導体は公知の原料と公知の合成方法を用いて製造することができる。
<カルバゾール誘導体>
カルバゾール誘導体は、例えば下記式(ETM-9)で表される化合物、またはそれが単結合などで複数結合した多量体である。詳細は米国公開公報2014/0197386号公報に記載されている。
Figure 0007018171000082
Arは、それぞれ独立して、置換されていてもよいアリール、または置換されていてもよいヘテロアリールである。nは独立して0~4の整数であり、好ましくは0~3の整数であり、より好ましくは0または1である。
「置換されていてもよいアリール」の「アリール」としては、例えば、炭素数6~30のアリールがあげられ、好ましくは炭素数6~24のアリール、より好ましくは炭素数6~20のアリール、さらに好ましくは炭素数6~12のアリールである。
具体的な「アリール」としては、単環系アリールであるフェニル、二環系アリールである(2-,3-,4-)ビフェニリル、縮合二環系アリールである(1-,2-)ナフチル、三環系アリールであるテルフェニリル(m-テルフェニル-2’-イル、m-テルフェニル-4’-イル、m-テルフェニル-5’-イル、o-テルフェニル-3’-イル、o-テルフェニル-4’-イル、p-テルフェニル-2’-イル、m-テルフェニル-2-イル、m-テルフェニル-3-イル、m-テルフェニル-4-イル、o-テルフェニル-2-イル、o-テルフェニル-3-イル、o-テルフェニル-4-イル、p-テルフェニル-2-イル、p-テルフェニル-3-イル、p-テルフェニル-4-イル)、縮合三環系アリールである、アセナフチレン-(1-,3-,4-,5-)イル、フルオレン-(1-,2-,3-,4-,9-)イル、フェナレン-(1-,2-)イル、(1-,2-,3-,4-,9-)フェナントリル、四環系アリールであるクアテルフェニリル(5’-フェニル-m-テルフェニル-2-イル、5’-フェニル-m-テルフェニル-3-イル、5’-フェニル-m-テルフェニル-4-イル、m-クアテルフェニリル)、縮合四環系アリールであるトリフェニレン-(1-,2-)イル、ピレン-(1-,2-,4-)イル、ナフタセン-(1-,2-,5-)イル、縮合五環系アリールであるペリレン-(1-,2-,3-)イル、ペンタセン-(1-,2-,5-,6-)イルなどがあげられる
「置換されていてもよいヘテロアリール」の「ヘテロアリール」としては、例えば、炭素数2~30のヘテロアリールがあげられ、炭素数2~25のヘテロアリールが好ましく、炭素数2~20のヘテロアリールがより好ましく、炭素数2~15のヘテロアリールがさらに好ましく、炭素数2~10のヘテロアリールが特に好ましい。また、ヘテロアリールとしては、例えば環構成原子として炭素以外に酸素、硫黄および窒素から選ばれるヘテロ原子を1ないし5個含有する複素環などがあげられる。
具体的なヘテロアリールとしては、例えば、フリル、チエニル、ピロリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサジアゾリル、フラザニル、チアジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピラジニル、トリアジニル、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、ベンゾ[b]チエニル、インドリル、イソインドリル、1H-インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、1H-ベンゾトリアゾリル、キノリル、イソキノリル、シンノリル、キナゾリル、キノキサリニル、フタラジニル、ナフチリジニル、プリニル、プテリジニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェノキサジニル、フェノチアジニル、フェナジニル、フェノキサチイニル、チアントレニル、インドリジニルなどがあげられる。
また、上記アリールおよびヘテロアリールは置換されていてもよく、それぞれ例えば上記アリールやヘテロアリールで置換されていてもよい。
カルバゾール誘導体は、上記式(ETM-9)で表される化合物が単結合などで複数結合した多量体であってもよい。この場合、単結合以外に、アリール環(好ましくは多価のベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フルオレン環、ベンゾフルオレン環、フェナレン環、フェナントレン環またはトリフェニレン環)で結合されていてもよい。
このカルバゾール誘導体の具体例としては、例えば以下の化合物があげられる。
Figure 0007018171000083
このカルバゾール誘導体は公知の原料と公知の合成方法を用いて製造することができる。
<トリアジン誘導体>
トリアジン誘導体は、例えば下記式(ETM-10)で表される化合物であり、好ましくは下記式(ETM-10-1)で表される化合物である。詳細は米国公開公報2011/0156013号公報に記載されている。
Figure 0007018171000084
Arは、それぞれ独立して、置換されていてもよいアリール、または置換されていてもよいヘテロアリールである。nは1~3の整数であり、好ましくは2または3である。
「置換されていてもよいアリール」の「アリール」としては、例えば、炭素数6~30のアリールがあげられ、好ましくは炭素数6~24のアリール、より好ましくは炭素数6~20のアリール、さらに好ましくは炭素数6~12のアリールである。
具体的な「アリール」としては、単環系アリールであるフェニル、二環系アリールである(2-,3-,4-)ビフェニリル、縮合二環系アリールである(1-,2-)ナフチル、三環系アリールであるテルフェニリル(m-テルフェニル-2’-イル、m-テルフェニル-4’-イル、m-テルフェニル-5’-イル、o-テルフェニル-3’-イル、o-テルフェニル-4’-イル、p-テルフェニル-2’-イル、m-テルフェニル-2-イル、m-テルフェニル-3-イル、m-テルフェニル-4-イル、o-テルフェニル-2-イル、o-テルフェニル-3-イル、o-テルフェニル-4-イル、p-テルフェニル-2-イル、p-テルフェニル-3-イル、p-テルフェニル-4-イル)、縮合三環系アリールである、アセナフチレン-(1-,3-,4-,5-)イル、フルオレン-(1-,2-,3-,4-,9-)イル、フェナレン-(1-,2-)イル、(1-,2-,3-,4-,9-)フェナントリル、四環系アリールであるクアテルフェニリル(5’-フェニル-m-テルフェニル-2-イル、5’-フェニル-m-テルフェニル-3-イル、5’-フェニル-m-テルフェニル-4-イル、m-クアテルフェニリル)、縮合四環系アリールであるトリフェニレン-(1-,2-)イル、ピレン-(1-,2-,4-)イル、ナフタセン-(1-,2-,5-)イル、縮合五環系アリールであるペリレン-(1-,2-,3-)イル、ペンタセン-(1-,2-,5-,6-)イルなどがあげられる
「置換されていてもよいヘテロアリール」の「ヘテロアリール」としては、例えば、炭素数2~30のヘテロアリールがあげられ、炭素数2~25のヘテロアリールが好ましく、炭素数2~20のヘテロアリールがより好ましく、炭素数2~15のヘテロアリールがさらに好ましく、炭素数2~10のヘテロアリールが特に好ましい。また、ヘテロアリールとしては、例えば環構成原子として炭素以外に酸素、硫黄および窒素から選ばれるヘテロ原子を1ないし5個含有する複素環などがあげられる。
具体的なヘテロアリールとしては、例えば、フリル、チエニル、ピロリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサジアゾリル、フラザニル、チアジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピラジニル、トリアジニル、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、ベンゾ[b]チエニル、インドリル、イソインドリル、1H-インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、1H-ベンゾトリアゾリル、キノリル、イソキノリル、シンノリル、キナゾリル、キノキサリニル、フタラジニル、ナフチリジニル、プリニル、プテリジニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェノキサジニル、フェノチアジニル、フェナジニル、フェノキサチイニル、チアントレニル、インドリジニルなどがあげられる。
また、上記アリールおよびヘテロアリールは置換されていてもよく、それぞれ例えば上記アリールやヘテロアリールで置換されていてもよい。
このトリアジン誘導体の具体例としては、例えば以下の化合物があげられる。
Figure 0007018171000085
このトリアジン誘導体は公知の原料と公知の合成方法を用いて製造することができる。
<ベンゾイミダゾール誘導体>
ベンゾイミダゾール誘導体は、例えば下記式(ETM-11)で表される化合物である。
Figure 0007018171000086
φは、n価のアリール環(好ましくはn価のベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フルオレン環、ベンゾフルオレン環、フェナレン環、フェナントレン環またはトリフェニレン環)であり、nは1~4の整数であり、「ベンゾイミダゾール系置換基」は、上記式(ETM-2)、式(ETM-2-1)および式(ETM-2-2)における「ピリジン系置換基」の中のピリジル基がベンゾイミダゾール基に置き換わった置換基であり、ベンゾイミダゾール誘導体における少なくとも1つの水素は重水素で置換されていてもよい。
Figure 0007018171000087
上記ベンゾイミダゾール基におけるR11は、水素、炭素数1~24のアルキル、炭素数3~12のシクロアルキルまたは炭素数6~30のアリールであり、上記式(ETM-2-1)および式(ETM-2-2)におけるR11の説明を引用することができる。
φは、さらに、アントラセン環またはフルオレン環であることが好ましく、この場合の構造は上記式(ETM-2-1)または式(ETM-2-2)での説明を引用することができ、各式中のR11~R18は上記式(ETM-2-1)または式(ETM-2-2)での説明を引用することができる。また、上記式(ETM-2-1)または式(ETM-2-2)では2つのピリジン系置換基が結合した形態で説明されているが、これらをベンゾイミダゾール系置換基に置き換えるときには、両方のピリジン系置換基をベンゾイミダゾール系置換基で置き換えてもよいし(すなわちn=2)、いずれか1つのピリジン系置換基をベンゾイミダゾール系置換基で置き換えて他方のピリジン系置換基をR11~R18で置き換えてもよい(すなわちn=1)。さらに、例えば上記式(ETM-2-1)におけるR11~R18の少なくとも1つをベンゾイミダゾール系置換基で置き換えて「ピリジン系置換基」をR11~R18で置き換えてもよい。
このベンゾイミダゾール誘導体の具体例としては、例えば1-フェニル-2-(4-(10-フェニルアントラセン-9-イル)フェニル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール、2-(4-(10-(ナフタレン-2-イル)アントラセン-9-イル)フェニル)-1-フェニル-1H-ベンゾ[d]イミダゾール、2-(3-(10-(ナフタレン-2-イル)アントラセン-9-イル)フェニル)-1-フェニル-1H-ベンゾ[d]イミダゾール、5-(10-(ナフタレン-2-イル)アントラセン-9-イル)-1,2-ジフェニル-1H-ベンゾ[d]イミダゾール、1-(4-(10-(ナフタレン-2-イル)アントラセン-9-イル)フェニル)-2-フェニル-1H-ベンゾ[d]イミダゾール、2-(4-(9,10-ジ(ナフタレン-2-イル)アントラセン-2-イル)フェニル)-1-フェニル-1H-ベンゾ[d]イミダゾール、1-(4-(9,10-ジ(ナフタレン-2-イル)アントラセン-2-イル)フェニル)-2-フェニル-1H-ベンゾ[d]イミダゾール、5-(9,10-ジ(ナフタレン-2-イル)アントラセン-2-イル)-1,2-ジフェニル-1H-ベンゾ[d]イミダゾールなどがあげられる。
Figure 0007018171000088
このベンゾイミダゾール誘導体は公知の原料と公知の合成方法を用いて製造することができる。
<フェナントロリン誘導体>
フェナントロリン誘導体は、例えば下記式(ETM-12)または式(ETM-12-1)で表される化合物である。詳細は国際公開2006/021982号公報に記載されている。
Figure 0007018171000089
φは、n価のアリール環(好ましくはn価のベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フルオレン環、ベンゾフルオレン環、フェナレン環、フェナントレン環またはトリフェニレン環)であり、nは1~4の整数である。
各式のR11~R18は、それぞれ独立して、水素、アルキル(好ましくは炭素数1~24のアルキル)、シクロアルキル(好ましくは炭素数3~12のシクロアルキル)またはアリール(好ましくは炭素数6~30のアリール)である。また、上記式(ETM-12-1)においてはR11~R18のいずれかがアリール環であるφと結合する。
各フェナントロリン誘導体における少なくとも1つの水素が重水素で置換されていてもよい。
11~R18におけるアルキル、シクロアルキルおよびアリールとしては、上記式(ETM-2)におけるR11~R18の説明を引用することができる。また、φは上記した例のほかに、例えば、以下の構造式があげられる。なお、下記構造式中のRは、それぞれ独立して、水素、メチル、エチル、イソプロピル、シクロヘキシル、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、ビフェニリルまたはテルフェニリルである。
Figure 0007018171000090
このフェナントロリン誘導体の具体例としては、例えば4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン、2,9-ジメチル-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン、9,10-ジ(1,10-フェナントロリン-2-イル)アントラセン、2,6-ジ(1,10-フェナントロリン-5-イル)ピリジン、1,3,5-トリ(1,10-フェナントロリン-5-イル)ベンゼン、9,9’-ジフルオル-ビス(1,10-フェナントロリン-5-イル)、バソクプロインや1,3-ビス(2-フェニル-1,10-フェナントロリン-9-イル)ベンゼンなどがあげられる。
Figure 0007018171000091
このフェナントロリン誘導体は公知の原料と公知の合成方法を用いて製造することができる。
<キノリノール系金属錯体>
キノリノール系金属錯体は、例えば下記一般式(ETM-13)で表される化合物である。
Figure 0007018171000092
式中、R~Rは水素または置換基であり、MはLi、Al、Ga、BeまたはZnであり、nは1~3の整数である。
キノリノール系金属錯体の具体例としては、8-キノリノールリチウム、トリス(8-キノリノラート)アルミニウム、トリス(4-メチル-8-キノリノラート)アルミニウム、トリス(5-メチル-8-キノリノラート)アルミニウム、トリス(3,4-ジメチル-8-キノリノラート)アルミニウム、トリス(4,5-ジメチル-8-キノリノラート)アルミニウム、トリス(4,6-ジメチル-8-キノリノラート)アルミニウム、ビス(2-メチル-8-キノリノラート)(フェノラート)アルミニウム、ビス(2-メチル-8-キノリノラート)(2-メチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2-メチル-8-キノリノラート)(3-メチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2-メチル-8-キノリノラート)(4-メチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2-メチル-8-キノリノラート)(2-フェニルフェノラート)アルミニウム、ビス(2-メチル-8-キノリノラート)(3-フェニルフェノラート)アルミニウム、ビス(2-メチル-8-キノリノラート)(4-フェニルフェノラート)アルミニウム、ビス(2-メチル-8-キノリノラート)(2,3-ジメチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2-メチル-8-キノリノラート)(2,6-ジメチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2-メチル-8-キノリノラート)(3,4-ジメチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2-メチル-8-キノリノラート)(3,5-ジメチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2-メチル-8-キノリノラート)(3,5-ジ-t-ブチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2-メチル-8-キノリノラート)(2,6-ジフェニルフェノラート)アルミニウム、ビス(2-メチル-8-キノリノラート)(2,4,6-トリフェニルフェノラート)アルミニウム、ビス(2-メチル-8-キノリノラート)(2,4,6-トリメチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2-メチル-8-キノリノラート)(2,4,5,6-テトラメチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2-メチル-8-キノリノラート)(1-ナフトラート)アルミニウム、ビス(2-メチル-8-キノリノラート)(2-ナフトラート)アルミニウム、ビス(2,4-ジメチル-8-キノリノラート)(2-フェニルフェノラート)アルミニウム、ビス(2,4-ジメチル-8-キノリノラート)(3-フェニルフェノラート)アルミニウム、ビス(2,4-ジメチル-8-キノリノラート)(4-フェニルフェノラート)アルミニウム、ビス(2,4-ジメチル-8-キノリノラート)(3,5-ジメチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2,4-ジメチル-8-キノリノラート)(3,5-ジ-t-ブチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2-メチル-8-キノリノラート)アルミニウム-μ-オキソ-ビス(2-メチル-8-キノリノラート)アルミニウム、ビス(2,4-ジメチル-8-キノリノラート)アルミニウム-μ-オキソ-ビス(2,4-ジメチル-8-キノリノラート)アルミニウム、ビス(2-メチル-4-エチル-8-キノリノラート)アルミニウム-μ-オキソ-ビス(2-メチル-4-エチル-8-キノリノラート)アルミニウム、ビス(2-メチル-4-メトキシ-8-キノリノラート)アルミニウム-μ-オキソ-ビス(2-メチル-4-メトキシ-8-キノリノラート)アルミニウム、ビス(2-メチル-5-シアノ-8-キノリノラート)アルミニウム-μ-オキソ-ビス(2-メチル-5-シアノ-8-キノリノラート)アルミニウム、ビス(2-メチル-5-トリフルオロメチル-8-キノリノラート)アルミニウム-μ-オキソ-ビス(2-メチル-5-トリフルオロメチル-8-キノリノラート)アルミニウム、ビス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリン)ベリリウムなどがあげられる。
このキノリノール系金属錯体は公知の原料と公知の合成方法を用いて製造することができる。
<チアゾール誘導体およびベンゾチアゾール誘導体>
チアゾール誘導体は、例えば下記式(ETM-14-1)で表される化合物である。
Figure 0007018171000093
ベンゾチアゾール誘導体は、例えば下記式(ETM-14-2)で表される化合物である。
Figure 0007018171000094
各式のφは、n価のアリール環(好ましくはn価のベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フルオレン環、ベンゾフルオレン環、フェナレン環、フェナントレン環またはトリフェニレン環)であり、nは1~4の整数であり、「チアゾール系置換基」や「ベンゾチアゾール系置換基」は、上記式(ETM-2)、式(ETM-2-1)および式(ETM-2-2)における「ピリジン系置換基」の中のピリジル基がチアゾール基やベンゾチアゾール基に置き換わった置換基であり、チアゾール誘導体およびベンゾチアゾール誘導体における少なくとも1つの水素が重水素で置換されていてもよい。
Figure 0007018171000095
φは、さらに、アントラセン環またはフルオレン環であることが好ましく、この場合の構造は上記式(ETM-2-1)または式(ETM-2-2)での説明を引用することができ、各式中のR11~R18は上記式(ETM-2-1)または式(ETM-2-2)での説明を引用することができる。また、上記式(ETM-2-1)または式(ETM-2-2)では2つのピリジン系置換基が結合した形態で説明されているが、これらをチアゾール系置換基(またはベンゾチアゾール系置換基)に置き換えるときには、両方のピリジン系置換基をチアゾール系置換基(またはベンゾチアゾール系置換基)で置き換えてもよいし(すなわちn=2)、いずれか1つのピリジン系置換基をチアゾール系置換基(またはベンゾチアゾール系置換基)で置き換えて他方のピリジン系置換基をR11~R18で置き換えてもよい(すなわちn=1)。さらに、例えば上記式(ETM-2-1)におけるR11~R18の少なくとも1つをチアゾール系置換基(またはベンゾチアゾール系置換基)で置き換えて「ピリジン系置換基」をR11~R18で置き換えてもよい。
これらのチアゾール誘導体またはベンゾチアゾール誘導体は公知の原料と公知の合成方法を用いて製造することができる。
電子輸送層または電子注入層には、さらに、電子輸送層または電子注入層を形成する材料を還元できる物質を含んでいてもよい。この還元性物質は、一定の還元性を有する物質であれば、様々な物質が用いられ、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、アルカリ金属の酸化物、アルカリ金属のハロゲン化物、アルカリ土類金属の酸化物、アルカリ土類金属のハロゲン化物、希土類金属の酸化物、希土類金属のハロゲン化物、アルカリ金属の有機錯体、アルカリ土類金属の有機錯体および希土類金属の有機錯体からなる群から選択される少なくとも1つを好適に使用することができる。
好ましい還元性物質としては、Na(仕事関数2.36eV)、K(同2.28eV)、Rb(同2.16eV)またはCs(同1.95eV)などのアルカリ金属や、Ca(同2.9eV)、Sr(同2.0~2.5eV)またはBa(同2.52eV)などのアルカリ土類金属があげられ、仕事関数が2.9eV以下の物質が特に好ましい。これらのうち、より好ましい還元性物質は、K、RbまたはCsのアルカリ金属であり、さらに好ましくはRbまたはCsであり、最も好ましいのはCsである。これらのアルカリ金属は、特に還元能力が高く、電子輸送層または電子注入層を形成する材料への比較的少量の添加により、有機EL素子における発光輝度の向上や長寿命化が図られる。また、仕事関数が2.9eV以下の還元性物質として、これら2種以上のアルカリ金属の組み合わせも好ましく、特に、Csを含んだ組み合わせ、例えば、CsとNa、CsとK、CsとRb、またはCsとNaとKとの組み合わせが好ましい。Csを含むことにより、還元能力を効率的に発揮することができ、電子輸送層または電子注入層を形成する材料への添加により、有機EL素子における発光輝度の向上や長寿命化が図られる。
<有機電界発光素子における陰極>
陰極108は、電子注入層107および電子輸送層106を介して、発光層105に電子を注入する役割を果たす。
陰極108を形成する材料としては、電子を有機層に効率よく注入できる物質であれば特に限定されないが、陽極102を形成する材料と同様の材料を用いることができる。なかでも、スズ、インジウム、カルシウム、アルミニウム、銀、銅、ニッケル、クロム、金、白金、鉄、亜鉛、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウムおよびマグネシウムなどの金属またはそれらの合金(マグネシウム-銀合金、マグネシウム-インジウム合金、フッ化リチウム/アルミニウムなどのアルミニウム-リチウム合金など)などが好ましい。電子注入効率をあげて素子特性を向上させるためには、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、カルシウム、マグネシウムまたはこれら低仕事関数金属を含む合金が有効である。しかしながら、これらの低仕事関数金属は一般に大気中で不安定であることが多い。この点を改善するために、例えば、有機層に微量のリチウム、セシウムやマグネシウムをドーピングして、安定性の高い電極を使用する方法が知られている。その他のドーパントとしては、フッ化リチウム、フッ化セシウム、酸化リチウムおよび酸化セシウムのような無機塩も使用することができる。ただし、これらに限定されない。
さらに、電極保護のために白金、金、銀、銅、鉄、スズ、アルミニウムおよびインジウムなどの金属、またはこれら金属を用いた合金、そしてシリカ、チタニアおよび窒化ケイ素などの無機物、ポリビニルアルコール、塩化ビニル、炭化水素系高分子化合物などを積層することが、好ましい例としてあげられる。これらの電極の作製法も、抵抗加熱蒸着、電子ビーム蒸着、スパッタリング、イオンプレーティングおよびコーティングなど、導通を取ることができれば特に制限されない。
<各層で用いてもよい結着剤>
以上の正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層および電子注入層に用いられる材料は単独で各層を形成することができるが、高分子結着剤としてポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ(N-ビニルカルバゾール)、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリブタジエン、炭化水素樹脂、ケトン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアミド、エチルセルロース、酢酸ビニル樹脂、ABS樹脂、ポリウレタン樹脂などの溶剤可溶性樹脂や、フェノール樹脂、キシレン樹脂、石油樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂などの硬化性樹脂などに分散させて用いることも可能である。
<有機電界発光素子の作製方法>
有機EL素子を構成する各層は、各層を構成すべき材料を蒸着法、抵抗加熱蒸着、電子ビーム蒸着、スパッタリング、分子積層法、印刷法、スピンコート法またはキャスト法、コーティング法などの方法で薄膜とすることにより、形成することができる。このようにして形成された各層の膜厚については特に限定はなく、材料の性質に応じて適宜設定することができるが、通常2nm~5000nmの範囲である。膜厚は通常、水晶発振式膜厚測定装置などで測定できる。蒸着法を用いて薄膜化する場合、その蒸着条件は、材料の種類、膜の目的とする結晶構造および会合構造などにより異なる。蒸着条件は一般的に、ボート加熱温度+50~+400℃、真空度10-6~10-3Pa、蒸着速度0.01~50nm/秒、基板温度-150~+300℃、膜厚2nm~5μmの範囲で適宜設定することが好ましい。
次に、有機EL素子を作製する方法の一例として、陽極/正孔注入層/正孔輸送層/ホスト材料とドーパント材料からなる発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極からなる有機EL素子の作製法について説明する。適当な基板上に、陽極材料の薄膜を蒸着法などにより形成させて陽極を作製した後、この陽極上に正孔注入層および正孔輸送層の薄膜を形成させる。この上にホスト材料とドーパント材料を共蒸着し薄膜を形成させて発光層とし、この発光層の上に電子輸送層、電子注入層を形成させ、さらに陰極用物質からなる薄膜を蒸着法などにより形成させて陰極とすることにより、目的の有機EL素子が得られる。なお、上述の有機EL素子の作製においては、作製順序を逆にして、陰極、電子注入層、電子輸送層、発光層、正孔輸送層、正孔注入層、陽極の順に作製することも可能である。
このようにして得られた有機EL素子に直流電圧を印加する場合には、陽極を+、陰極を-の極性として印加すればよく、電圧2~40V程度を印加すると、透明または半透明の電極側(陽極または陰極、および両方)より発光が観測できる。また、この有機EL素子は、パルス電流や交流電流を印加した場合にも発光する。なお、印加する交流の波形は任意でよい。
<有機電界発光素子の応用例>
また、本発明は、有機EL素子を備えた表示装置または有機EL素子を備えた照明装置などにも応用することができる。有機EL素子を備えた表示装置または照明装置は、本実施形態にかかる有機EL素子と公知の駆動装置とを接続するなど公知の方法によって製造することができ、直流駆動、パルス駆動、交流駆動など公知の駆動方法を適宜用いて駆動することができる。
表示装置としては、例えば、カラーフラットパネルディスプレイなどのパネルディスプレイ、フレキシブルカラー有機電界発光(EL)ディスプレイなどのフレキシブルディスプレイなどがあげられる(例えば、特開平10-335066号公報、特開2003-321546号公報、特開2004-281086号公報など参照)。また、ディスプレイの表示方式としては、例えば、マトリクスおよび/またはセグメント方式などがあげられる。なお、マトリクス表示とセグメント表示は同じパネルの中に共存していてもよい。
マトリクスでは、表示のための画素が格子状やモザイク状など二次元的に配置されており、画素の集合で文字や画像を表示する。画素の形状やサイズは用途によって決まる。例えば、パソコン、モニター、テレビの画像および文字表示には、通常一辺が300μm以下の四角形の画素が用いられ、また、表示パネルのような大型ディスプレイの場合は、一辺がmmオーダーの画素を用いることになる。モノクロ表示の場合は、同じ色の画素を配列すればよいが、カラー表示の場合には、赤、緑、青の画素を並べて表示させる。この場合、典型的にはデルタタイプとストライプタイプがある。そして、このマトリクスの駆動方法としては、線順次駆動方法やアクティブマトリックスのどちらでもよい。線順次駆動の方が構造が簡単であるという利点があるが、動作特性を考慮した場合、アクティブマトリックスの方が優れる場合があるので、これも用途によって使い分けることが必要である。
セグメント方式(タイプ)では、予め決められた情報を表示するようにパターンを形成し、決められた領域を発光させることになる。例えば、デジタル時計や温度計における時刻や温度表示、オーディオ機器や電磁調理器などの動作状態表示および自動車のパネル表示などがあげられる。
照明装置としては、例えば、室内照明などの照明装置、液晶表示装置のバックライトなどがあげられる(例えば、特開2003-257621号公報、特開2003-277741号公報、特開2004-119211号公報など参照)。バックライトは、主に自発光しない表示装置の視認性を向上させる目的に使用され、液晶表示装置、時計、オーディオ装置、自動車パネル、表示板および標識などに使用される。特に、液晶表示装置、中でも薄型化が課題となっているパソコン用途のバックライトとしては、従来方式が蛍光灯や導光板からなっているため薄型化が困難であることを考えると、本実施形態に係る発光素子を用いたバックライトは薄型で軽量が特徴になる。
5.その他の有機デバイス
一般式(1)または(2)で表される多環芳香族化合物およびその多量体は、上述した有機電界発光素子の他に、有機電界効果トランジスタまたは有機薄膜太陽電池などの作製に用いることができる。
有機電界効果トランジスタは、電圧入力によって発生させた電界により電流を制御するトランジスタのことであり、ソース電極とドレイン電極の他にゲート電極が設けられている。ゲート電極に電圧を印加すると電界が生じ、ソース電極とドレイン電極間を流れる電子(あるいはホール)の流れを任意にせき止めて電流を制御することができるトランジスタである。電界効果トランジスタは、単なるトランジスタ(バイポーラトランジスタ)に比べて小型化が容易であり、集積回路などを構成する素子としてよく用いられている。
有機電界効果トランジスタの構造は、通常、一般式(1)または(2)で表される多環芳香族化合物およびその多量体を用いて形成される有機半導体活性層に接してソース電極及びドレイン電極が設けられており、さらに有機半導体活性層に接した絶縁層(誘電体層)を挟んでゲート電極が設けられていればよい。その素子構造としては、例えば以下の構造があげられる。
(1)基板/ゲート電極/絶縁体層/ソース電極・ドレイン電極/有機半導体活性層
(2)基板/ゲート電極/絶縁体層/有機半導体活性層/ソース電極・ドレイン電極
(3)基板/有機半導体活性層/ソース電極・ドレイン電極/絶縁体層/ゲート電極
(4)基板/ソース電極・ドレイン電極/有機半導体活性層/絶縁体層/ゲート電極
このように構成された有機電界効果トランジスタは、アクティブマトリックス駆動方式の液晶ディスプレイや有機エレクトロルミネッセンスディスプレイの画素駆動スイッチング素子などとして適用できる。
有機薄膜太陽電池は、ガラスなどの透明基板上にITOなどの陽極、ホール輸送層、光電変換層、電子輸送層、陰極が積層された構造を有する。光電変換層は陽極側にp型半導体層を有し、陰極側にn型半導体層を有している。一般式(1)または(2)で表される多環芳香族化合物およびその多量体は、その物性に応じて、ホール輸送層、p型半導体層、n型半導体層、電子輸送層の材料として用いることが可能である。一般式(1)または(2)で表される多環芳香族化合物およびその多量体は、有機薄膜太陽電池においてホール輸送材料や電子輸送材料として機能しうる。有機薄膜太陽電池は、上記の他にホールブロック層、電子ブロック層、電子注入層、ホール注入層、平滑化層などを適宜備えていてもよい。有機薄膜太陽電池には、有機薄膜太陽電池に用いられる既知の材料を適宜選択して組み合わせて用いることができる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明していくが、本発明はこれらに限定されない。
<合成例(1):化合物(1-1)の合成>
Figure 0007018171000096
<化合物(1’-1)の合成>
トリ-p-トリルアミン(0.287g、1.00mmol)、三ヨウ化ホウ素(0.783g、2.00mmol)およびo-ジクロロベンゼン(10.0mL)を窒素雰囲気下、150℃で2時間加熱撹拌した。反応液を室温まで冷やし、2-イソプロペニルフェニルマグネシウムブロミド(5.25mL、1.2M、6.30mmol)を加えた。その後、フロリジルショートパスカラム(溶離液:トルエン)を用いてろ過し、溶媒を減圧留去した。得られた粗生成物をヘキサンで洗浄することによって単離精製して、化合物(1’-1)を0.309g、収率75%で得た。
Figure 0007018171000097
NMR測定により得られた化合物の構造を確認した。
H-NMR(CDCl): δ=2.05(s,3H)、2.31(s,6H)、2.54(s,3H)、4.78(s,2H)、6.74(d,2H)7.20-7.28(m,4H)、7.37-7.48(m,5H)、7.56(d,1H)、7.68(s,2H).
13C-NMR(CDCl): δ=20.6(s,2C)、21.3(s,1C)、23.8(s,1C)、116.7(s,2C)、116.9(s,1C)、126.0(d,2C)、126.8(s,1C)、128.2(s,2C)、130.0(d,4C)、131.4(d,4C)、133.0(s,1C)、133.7(s,2C)、136.4(s,2C)、138.6(s,1C)、139.3(s,1C)、145.1(s,1C)、147.0(d,2C).
<化合物(1-1)の合成>
化合物(1’-1)(82.2mg、0.20mmol)、トリフルオロメタンスルホン酸スカンジウム(0.100g、0.20mmol)および1,2-ジクロロエタン(55.0mL)を窒素雰囲気下、95℃で24時間加熱撹拌した。反応液を室温まで冷やした後、フロリジルショートパスカラム(溶離液:トルエン)を用いてろ過し、溶媒を減圧留去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラム(溶離液:ヘキサン/トルエン=6/1(容量比))により単離精製して、化合物(1-1)を32.0mg、収率39%で得た。
Figure 0007018171000098
NMR測定により得られた化合物の構造を確認した。
H-NMR(CDCl): δ=1.98(s,6H)、2.48(s,3H)、2.53(s,3H)、2.76(s,3H)、6.61(d,1H)、6.75(d,1H)、7.14-7.31(m,4H)、7.40-7.47(m,3H)、7.57(dt,1H)、7.81(d,1H)、8.44(d,1H)、8.50(s,1H).
13C-NMR(CDCl): δ=20.9(s,1C)、21.4(s,1C)、24.3(s,1C)、32.6(s,2C)、43.5(s,1C)、114.0(s,1C)、116.6(s,1C)、124.7(s,1C)、125.8(s,1C)、127.0(s,1C)、128.4(s,2C)、130.1(s,2C)、130.5(s,1C)、131.4(s,2C)、133.0(s,1C)、135.2(s,1C)、135.5(s,1C)、137.7(s,1C)、138.4(s,1C)、139.5(s,1C)、144.3(s,1C)、145.4(s,1C)、151.4(s,1C)、159.5(s,1C).
<合成例(2):化合物(1-201)の合成>
Figure 0007018171000099
<化合物(1’-201)の合成>
ジ-p-トリルエーテル(0.398g、2.00mmol)、三ヨウ化ホウ素(1.568g、4.00mmol)および1,2,4-トリクロロベンゼン(20.0mL)を窒素雰囲気下、240℃で24時間加熱撹拌した。反応液を室温まで冷やし、2-イソプロペニルフェニルマグネシウムブロミド(10.0mL、1.2M、12.0mmol)を加えた。その後、フロリジルショートパスカラム(溶離液:トルエン)を用いてろ過し、溶媒を減圧留去した。得られた粗生成物をGPC(溶離液:トルエン)によって単離精製して、化合物(1’-201)を0.201g、収率31%で得た。
Figure 0007018171000100
NMR測定により得られた化合物の構造を確認した。
H-NMR(CDCl): δ=2.08(s,3H)、2.35(s,6H)、4.62(s,1H)、4.74(t,1H)、7.38-7.56(m,10H).
13C-NMR(CDCl): δ=20.8(s,2C)、23.4(s,1C)、117.2(s,2C)、117.6(s,1C)、126.0(s,1C)、126.4(s,1C)、127.5(s,1C)、131.2(s,1C)、132.2(s,1C)、135.3(s,2C)、135.6(s,2C)、146.7(s,2C)、147.0(s,1C)、157.9(s,2C).
<化合物(1-201)の合成>
化合物(1’-201)の1,2-ジクロロエタン溶液(1.08mL、0.280M、0.30mmol)、トリフルオロメタンスルホン酸スカンジウム(0.147g、0.30mmol)および1,2-ジクロロエタン(90.0mL)を窒素雰囲気下、90℃で3時間加熱撹拌した。反応液を室温まで冷やした後、フロリジルショートパスカラム(溶離液:トルエン)を用いてろ過し、溶媒を減圧留去した。得られた粗生成物をGPC(溶離液:トルエン)によって単離精製して、化合物(1-201)を13.0mg、収率13%で得た。
Figure 0007018171000101
NMR測定により得られた化合物の構造を確認した。
H-NMR(CDCl): δ=1.93(s,6H)、2.51(s,3H)、2.78(s,3H)、7.33(d,1H)、7.40-7.46(m,2H)、7.50-7.55(m,2H)、7.62(dt,1H)、7.80(d,1H)、8.40(s, 1H)、8.54(d,1H).
HRMS(DART) calcd for C2322 [(M+H)]:325.1768,found:325.1782
原料の化合物を適宜変更することにより、上述した合成例に準じた方法で、本発明の他の一般式(1’)または(2’)で表される多環芳香族化合物や一般式(1)または(2)で表される多環芳香族化合物を合成することができる。
次に、一般式(1)または(2)で表される多環芳香族化合物の基礎物性の評価と、当該多環芳香族化合物を用いた有機EL素子の作製および評価について記載する。
<基礎物性の評価方法>
(1)サンプルの準備
評価対象の化合物の吸収特性と発光特性(蛍光と燐光)を評価する場合、評価対象の化合物を溶媒に溶解して溶媒中で評価する場合と薄膜状態で評価する場合がある。さらに、薄膜状態で評価する場合は、評価対象の化合物の有機EL素子における使用の態様に応じて、評価対象の化合物のみを薄膜化し評価する場合と評価対象の化合物を適切なマトリックス材料中に分散して薄膜化して評価する場合がある。
マトリックス材料としては、市販のPMMA(ポリメチルメタクリレート)等を用いることができる。PMMAに分散した薄膜サンプルは、例えば、PMMAと評価対象の化合物をトルエン中で溶解させた後、スピンコーティング法により石英製の透明支持基板(10mm×10mm)上に薄膜を形成して作製することができる。
また、マトリックス材料がホスト材料である場合の薄膜サンプルの作製方法を以下に記す。石英製の透明支持基板(10mm×10mm×1.0mm)を市販の蒸着装置(昭和真空(株)製)の基板ホルダーに固定し、ホスト材料を入れたモリブデン製蒸着用ボート、ドーパント材料を入れたモリブデン製蒸着用ボートを装着する。次に、真空槽を5×10-4Paまで減圧し、ホスト材料が入った蒸着用ボートとドーパント材料が入った蒸着用ボートを同時に加熱して適切な膜厚になるように蒸着してホスト材料とドーパント材料の混合薄膜を形成する。ホスト材料とドーパント材料の設定重量比に応じて蒸着速度を制御する。
(2)吸収特性と発光特性の評価
前記サンプルの吸収スペクトルの測定は、紫外可視近赤外分光光度計((株)島津製作所、UV-2600)を用いて行った。また、前記サンプルの蛍光スペクトルまたは燐光スペクトルの測定は、分光蛍光光度計(日立ハイテク(株)製、F-7000)を用いて行った。
蛍光スペクトルの測定に対しては、室温で適切な励起波長で励起しフォトルミネッセンスを測定した。燐光スペクトルの測定に対しては、付属の冷却ユニットを使用して、前記サンプルを液体窒素に浸した状態(温度77K)で測定した。燐光スペクトルを観測するため、光学チョッパを使用して励起光照射から測定開始までの遅れ時間を調整した。サンプルは適切な励起波長で励起しフォトルミネッセンスを測定した。
また、絶対PL量子収率測定装置(浜松ホトニクス(株)製、C9920-02G)を用いて蛍光量子収率を測定した。
(3)遅延蛍光の評価
蛍光寿命測定装置(浜松ホトニクス(株)製、C11367-01)を用いて300Kで蛍光寿命を測定する。適切な励起波長で測定される極大発光波長において蛍光寿命の早い成分と遅い成分を観測する。蛍光を発光する一般的な有機EL材料の室温における蛍光寿命測定では、熱による3重項成分の失活により、燐光に由来する3重項成分が関与する遅い成分が観測されることはほとんどない。評価対象の化合物において遅い成分が観測された場合は、励起寿命の長い3重項エネルギーが熱活性化により1重項エネルギーに移動して遅延蛍光として観測されたことを示すことになる。
(4)エネルギーギャップ(Eg)の算出
エネルギーギャップ(Eg)は、上記方法で得られた吸収スペクトルにおける長波長末端A(nm)から、Eg=1240/Aの式に従って算出される。
(5)E、EおよびΔESTの算出
一重項励起エネルギー(E)は、上記方法で得られた蛍光スペクトルにおける極大発光波長B(nm)から、Es=1240/Bの式に従って算出される。また、三重項励起エネルギー(E)は、上記方法で得られた燐光スペクトルにおける極大発光波長C(nm)から、E=1240/Cの式に従って算出される。
ΔESTはEとEのエネルギー差として、ΔEST=E-Eで定義される。また、ΔESTは、例えば、“Purely organic electroluminescent material realizing 100% conversion from electricity to light”, H. Kaji, H. Suzuki, T. Fukushima, K. Shizu, K. Katsuaki, S. Kubo, T. Komino, H. Oiwa, F. Suzuki, A. Wakamiya, Y. Murata, C. Adachi, Nat. Commun. 2015, 6, 8476.に記載の方法でも算出することができる。
<化合物(1-1)の基礎物性の評価>
化合物(1-1)を1重量%の濃度でPMMAに分散した分散液を用いて薄膜形成基板(石英製)を準備し、吸収スペクトルの測定を行った(図2)。
蛍光スペクトルの測定は、化合物(1-1)を1重量%の濃度でPMMAに分散した分散液を用いて薄膜形成基板(石英製)を準備し、励起波長380nmで励起してフォトルミネッセンスを測定した(図2)。その結果、極大発光波長は445nmであった。これより、Eは2.79eVと算出された。また、同じ基板を準備し、励起波長380nmで励起して蛍光量子収率を測定した結果、97%と高い値であった。
燐光スペクトルの測定は、化合物(1-1)を1重量%の濃度でPMMAに分散した分散液を用いて薄膜形成基板(石英製)を準備し、励起波長380nmで励起してフォトルミネッセンスを測定した(図2)。その結果、極大発光波長は505nmであった。これより、Eは2.46eVと算出された。
<有機EL素子への適用の可能性>
以上のように、化合物(1-1)は、深い青色の蛍光スペクトル、高い蛍光量子収率および適切なエネルギー(Es、E)を有しているため、有機EL素子用材料として、特に発光層用材料としての適用が期待できる。
<有機EL特性の評価項目および評価方法>
有機EL特性の評価項目としては、駆動電圧(V)、発光波長(nm)、CIE色度(x,y)、外部量子効率(%)、発光スペクトルの最大波長(nm)および半値幅(nm)などがある。これらの評価項目は、適切な発光輝度時の値を用いることができる。
発光素子の量子効率には、内部量子効率と外部量子効率とがあるが、内部量子効率は、発光素子の発光層に電子(または正孔)として注入される外部エネルギーが純粋に光子に変換される割合を示している。一方、外部量子効率は、この光子が発光素子の外部にまで放出された量に基づいて算出され、発光層において発生した光子は、その一部が発光素子の内部で吸収されたりあるいは反射され続けたりして、発光素子の外部に放出されないため、外部量子効率は内部量子効率よりも低くなる。
分光放射輝度(発光スペクトル)と外部量子効率の測定方法は次の通りである。アドバンテスト社製電圧/電流発生器R6144を用いて、電圧を印加することにより素子を発光させる。TOPCON社製分光放射輝度計SR-3ARを用いて、発光面に対して垂直方向から可視光領域の分光放射輝度を測定する。発光面が完全拡散面であると仮定して、測定した各波長成分の分光放射輝度の値を波長エネルギーで割ってπを掛けた数値が各波長におけるフォトン数である。次いで、観測した全波長領域でフォトン数を積算し、素子から放出された全フォトン数とする。印加電流値を素電荷で割った数値を素子へ注入したキャリア数として、素子から放出された全フォトン数を素子へ注入したキャリア数で割った数値が外部量子効率である。また、発光スペクトルの半値幅は、極大発光波長を中心として、その強度が50%になる上下の波長間の幅として求められる。
<有機EL素子の作製方法>
実施例および比較例に係る有機EL素子を作製し、電圧を印加して電流密度、輝度、色度および外部量子効率等を測定する。作製する有機EL素子の構成として、例えば、表1の素子構成を選定することができる。なお、一般式(1)または(2)で表される多環芳香族化合物を有機EL素子用材料として用いる場合、これらの素子構成に限定されず、各層の膜厚や構成材料は当該多環芳香族化合物の基礎物性によって適宜変更することができる。
Figure 0007018171000102
表1において、「HI-1」(正孔注入層材料)はN,N4’-ジフェニル-N,N4’-ビス(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジアミンであり、「HAT-CN」(正孔注入層材料)は1,4,5,8,9,12-ヘキサアザトリフェニレンヘキサカルボニトリルであり、「HT-1」(正孔輸送層材料)はN-([1,1’-ビフェニル]-4-イル)-9,9-ジメチル-N-(4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル)-9H-フルオレン-2-アミンであり、「HT-2」(正孔輸送層材料)はN,N-ビス(4-(ジベンゾ[b,d]フラン-4-イル)フェニル)-[1,1’:4’,1”-テルフェニル]-4-アミンであり、「EMH1」(発光層ホスト材料)は9-フェニル-10-(4-フェニルナフタレン-1-イル)アントラセン、「ET-1」(電子輸送層材料1)は4,6,8,10-テトラフェニル[1,4]ベンゾキサボリニノ[2,3,4-kl]フェノキサボリニンであり、「ET-2」(電子輸送層材料2)は3,3’-((2-フェニルアントラセン-9,10-ジイル)ビス(4,1-フェニレン))ビス(4-メチルピリジン)であり、「Liq」と共に以下に化学構造を示す。
Figure 0007018171000103
<化合物(1-1)をドーパントとした素子>
表1の構成を有する有機EL素子を以下の手順で作製することができる。スパッタリングにより150nmの厚さに製膜したITOで、26mm×28mm×0.7mmのガラス基板((株)厚木ミクロ製)を透明支持基板とする。この透明支持基板を市販の蒸着装置(長州産業(株)製)の基板ホルダーに固定し、HI-1(正孔注入層材料)を入れたモリブデン製蒸着用ボート、HAT-CN(正孔注入層材料)を入れたモリブデン製蒸着用ボート、HT-1(正孔輸送層材料)を入れたモリブデン製蒸着用ボート、HT-2(正孔輸送層材料)を入れたモリブデン製蒸着用ボート、EMH1(ホスト材料)を入れたモリブデン製蒸着用ボート、化合物(1-1)(ドーパント材料)を入れたモリブデン製蒸着用ボート、ET-1(電子輸送層材料)を入れたモリブデン製蒸着用ボート、ET-2(電子輸送層材料)を入れたモリブデン製蒸着用ボート、Liqを入れたモリブデン製蒸着用ボート、マグネシウムを入れたSiC製るつぼ、および銀を入れたSiC製るつぼを装着する。
透明支持基板のITO膜の上に順次、下記各層を形成する。真空槽を1×10-4Paまで減圧し、まず、HIが入った蒸着用ボートを加熱して膜厚40nmになるように蒸着して正孔注入層1を形成する。次に、HAT-CNが入った蒸着用ボートを加熱して膜厚5nmになるように蒸着して正孔注入層2を形成する。次に、HTが入った蒸着用ボートを加熱して膜厚15nmになるように蒸着して正孔輸送層1を形成する。次に、HT-2が入った蒸着用ボートを加熱して膜厚10nmになるように蒸着して正孔輸送層2を形成する。次に、EMH1が入った蒸着用ボートと化合物(1-1)が入った蒸着用ボートを同時に加熱して膜厚25nmになるように蒸着して発光層を形成する。EMH1と化合物(1-1)の重量比がおよそ98対2になるように蒸着速度を調節する。次に、ET-1の入った蒸着用ボートを加熱して膜厚5nmになるように蒸着して電子輸送層1を形成する。次に、ET-2が入った蒸着用ボートとLiqが入った蒸着用ボートを同時に加熱して膜厚25nmになるように蒸着して電子輸送層2を形成する。ET-2とLiqの重量比がおよそ50対50になるように蒸着速度を調節する。各層の蒸着速度は0.01~1nm/秒とする。
その後、Liqが入った蒸着用ボートを加熱して膜厚1nmになるように0.01~0.1nm/秒の蒸着速度で蒸着し、次いで、マグネシウムが入ったるつぼと銀が入ったるつぼを同時に加熱して膜厚100nmになるように蒸着して陰極を形成し、有機EL素子を得ることができる。このとき、マグネシウムと銀の原子数比が10対1となるように0.1nm~10nm/秒の間で蒸着速度を調節する。
以上のようにして作製した有機EL素子について、ITO電極を陽極、MgAg電極を陰極として直流電圧を印加し、輝度、色度および外部量子効率などの有機EL特性を測定することができる。
化合物(1-201)についても、化合物(1-1)と同様に基礎物性を評価し、有機EL素子を作製して、有機EL特性を評価することができる。なお、基礎物性に応じて、ドーパント以外にも、ホストや電荷輸送用材料として用いることもできる。
本発明では、新規な多環芳香族化合物およびその製造に有用なアルケニル基を有する多環芳香族化合物を提供することで、有機EL素子用材料の選択肢を増やすことができる。また、新規な多環芳香族化合物を有機電界発光素子などの有機デバイス用材料として用いることで、優れた有機EL素子などの有機デバイス、それを備えた表示装置およびそれを備えた照明装置などを提供することができる。
100 有機電界発光素子
101 基板
102 陽極
103 正孔注入層
104 正孔輸送層
105 発光層
106 電子輸送層
107 電子注入層
108 陰極

Claims (6)

  1. 下記一般式(1’)で表される多環芳香族化合物
    Figure 0007018171000104
    (上記式(1’)中、
    A環、B環およびC環は、それぞれ独立して、アリール環またはヘテロアリール環であり、これらの環における少なくとも1つの水素は置換されていてもよく、
    YはB(ホウ素)であり、
    Xは、O、N-R、SまたはSeであり、前記N-RのRは、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいアルキルまたは置換されていてもよいシクロアルキルであり、また、前記N-RのRは連結基または単結合により前記A環および/またはC環と結合していてもよく、
    Raは、「-CH-Cn-12(n-1)+1(nは1以上)」で表される、メチレン基から始まる直鎖または分岐鎖のアルキルであり、
    Ra’は、「-Cn-12(n-1)+1(nは1以上)」で表される直鎖または分岐鎖のアルキルであって、nが1の場合は水素を表し、
    Raにおけるメチレン基以外の「-Cn-12(n-1)+1」部分の構造と、Ra’である「-Cn-12(n-1)+1」の構造とは同じであり、そして、
    式(1’)で表される多環芳香族化合物における少なくとも1つの水素は重水素で置換されていてもよい。)
  2. A環、B環およびC環は、それぞれ独立して、アリール環またはヘテロアリール環であり、これらの環における少なくとも1つの水素は、置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリール、置換もしくは無置換のジアリールアミノ、置換もしくは無置換のジヘテロアリールアミノ、置換もしくは無置換のアリールヘテロアリールアミノ、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のシクロアルキル、置換もしくは無置換のアルコキシ、置換もしくは無置換のアリールオキシ、置換もしくは無置換のアリールスルホニル、置換もしくは無置換のジアリールホスフィン、置換もしくは無置換のジアリールホスフィンスルフィド、置換もしくは無置換のシリル、置換もしくは無置換のゲルミル、置換もしくは無置換のスルホン酸エステル、置換もしくは無置換のボロン酸エステル、ボロン酸、ハロゲンまたはシアノで置換されていてもよく、
    YはB(ホウ素)であり、
    Xは、O、N-R、SまたはSeであり、前記N-RのRは、アリール、ヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキルであり、Rにおける少なくとも1つの水素は、置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリール、置換もしくは無置換のジアリールアミノ、置換もしくは無置換のジヘテロアリールアミノ、置換もしくは無置換のアリールヘテロアリールアミノ、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のシクロアルキル、置換もしくは無置換のアルコキシ、置換もしくは無置換のアリールオキシ、置換もしくは無置換のアリールスルホニル、置換もしくは無置換のジアリールホスフィン、置換もしくは無置換のジアリールホスフィンスルフィド、置換もしくは無置換のシリル、置換もしくは無置換のゲルミル、置換もしくは無置換のスルホン酸エステル、置換もしくは無置換のボロン酸エステル、ボロン酸、ハロゲンまたはシアノで置換されていてもよく、また、前記N-RのRは-O-、-S-、-C(-R)-または単結合により前記A環および/またはC環と結合していてもよく、前記-C(-R)-のRは水素またはアルキルであり、
    Raは、「-CH-Cn-12(n-1)+1(nは1~6)」で表される、メチレン基から始まる直鎖または分岐鎖のアルキルであり、
    Ra’は、「-Cn-12(n-1)+1(nは1~6)」で表される直鎖または分岐鎖のアルキルであって、nが1の場合は水素を表し、
    Raにおけるメチレン基以外の「-Cn-12(n-1)+1」部分の構造と、Ra’である「-Cn-12(n-1)+1」の構造とは同じであり、そして、
    式(1’)で表される多環芳香族化合物における少なくとも1つの水素は重水素で置換されていてもよい、
    請求項1に記載する多環芳香族化合物
  3. 下記一般式(2’)で表される多環芳香族化合物
    Figure 0007018171000105
    (上記式(2’)中、
    、R、R、R、R、R、R、R、R、R10およびR11は、それぞれ独立して、水素、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アリールスルホニル、ジアリールホスフィン、ジアリールホスフィンスルフィド、シリル、ゲルミル、スルホン酸エステル、ボロン酸エステル、ボロン酸、ハロゲンまたはシアノであり、これらにおける少なくとも1つの水素は、アリール、ヘテロアリール、アルキル、ハロゲンまたはシアノで置換されていてもよく、また、R~R11のうちの隣接する基同士は結合してa環、b環またはc環と共にアリール環またはヘテロアリール環を形成していてもよく、形成された環における少なくとも1つの水素は、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、フルオロアルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アリールスルホニル、ジアリールホスフィン、ジアリールホスフィンスルフィド、シリル、ゲルミル、スルホン酸エステル、ボロン酸エステル、ボロン酸、ハロゲンまたはシアノで置換されていてもよく、これらにおける少なくとも1つの水素は、アリール、ヘテロアリール、アルキル、ハロゲンまたはシアノで置換されていてもよく、
    YはB(ホウ素)であり、
    Xは、O、N-R、SまたはSeであり、前記N-RのRは、アリール、ヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキルであり、Rにおける少なくとも1つの水素は、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アリールスルホニル、ジアリールホスフィン、ジアリールホスフィンスルフィド、シリル、ゲルミル、スルホン酸エステル、ボロン酸エステル、ボロン酸、ハロゲンまたはシアノで置換されていてもよく、これらにおける少なくとも1つの水素は、アリール、ヘテロアリール、アルキル、ハロゲンまたはシアノで置換されていてもよく、
    Raは、「-CH-Cn-12(n-1)+1(nは1~6)」で表される、メチレン基から始まる直鎖または分岐鎖のアルキルであり、
    Ra’は、「-Cn-12(n-1)+1(nは1~6)」で表される直鎖または分岐鎖のアルキルであって、nが1の場合は水素を表し、そして、
    Raにおけるメチレン基以外の「-Cn-12(n-1)+1」部分の構造と、Ra’である「-Cn-12(n-1)+1」の構造とは同じである。
  4. 、R、R、R、R、R、R、R、R、R10およびR11は、それぞれ独立して、水素、炭素数6~30のアリール、炭素数2~30のヘテロアリール、ジアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6~12のアリール)、炭素数1~24のアルキル、ハロゲンまたはシアノであり、また、R~R11のうちの隣接する基同士は結合してa環、b環またはc環と共に炭素数9~16のアリール環または炭素数6~15のヘテロアリール環を形成していてもよく、形成された環における少なくとも1つの水素は、炭素数6~30のアリール、炭素数2~30のヘテロアリール、ジアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6~12のアリール)、炭素数1~24のアルキル、ハロゲンまたはシアノで置換されていてもよく、
    YはB(ホウ素)であり、
    Xは、O、N-R、SまたはSeであり、前記N-RのRは、炭素数6~30のアリール、炭素数2~30のヘテロアリール、炭素数1~24のアルキルまたは炭素数3~12のシクロアルキルであり、これらにおける少なくとも1つの水素はハロゲンまたはシアノで置換されていてもよく、
    Raは、「-CH-Cn-12(n-1)+1(nは1~4)」で表される、メチレン基から始まる直鎖のアルキルであり、
    Ra’は、「-Cn-12(n-1)+1(nは1~4)」で表される直鎖のアルキルであって、nが1の場合は水素を表し、そして、
    Raにおけるメチレン基以外の「-Cn-12(n-1)+1」部分の構造と、Ra’である「-Cn-12(n-1)+1」の構造とは同じである、
    請求項3に記載する多環芳香族化合物。
  5. 下記いずれかの式で表される多環芳香族化合物。
    Figure 0007018171000106
  6. 下記一般式(1’)で表される多環芳香族化合物に、酸を作用させて、下記一般式(1)で表される多環芳香族化合物を製造する方法。
    Figure 0007018171000107
    上記式(1’)および式(1)中、
    A環、B環およびC環は、それぞれ独立して、アリール環またはヘテロアリール環であり、これらの環における少なくとも1つの水素は置換されていてもよく、
    YはB(ホウ素)であり、
    Xは、O、N-R、SまたはSeであり、前記N-RのRは、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいアルキルまたは置換されていてもよいシクロアルキルであり、また、前記N-RのRは連結基または単結合により前記A環および/またはC環と結合していてもよく、
    Raは、「-CH-Cn-12(n-1)+1(nは1以上)」で表される、メチレン基から始まる直鎖または分岐鎖のアルキルであり、
    Ra’は、「-Cn-12(n-1)+1(nは1以上)」で表される直鎖または分岐鎖のアルキルであって、nが1の場合は水素を表し、
    Raにおけるメチレン基以外の「-Cn-12(n-1)+1」部分の構造と、Ra’である「-Cn-12(n-1)+1」の構造とは同じであり、そして、
    式(1’)または式(1)で表される多環芳香族化合物における少なくとも1つの水素は重水素で置換されていてもよい。
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