JP2021172658A - 多環芳香族化合物 - Google Patents

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靖宏 近藤
Yasuhiro Kondo
宏之 今井
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Abstract

【課題】有機電界発光素子などの有機デバイスのための材料として新規化合物を提供する。【解決手段】式(1)で表される多環芳香族化合物;[式(1)中、A環、B環、及びC環はアリール環又はヘテロアリール環;D環は、アリール環、ヘテロアリール環、又はシクロアルカン環であり、これらの環は置換されていてもよく、シクロアルカンで縮合されていてもい;Y1はB等;X1は、単結合、>O、>S等;X2は>C(−R)2(Rはメチル等)等;式(1)で表される化合物における少なくとも1つのHはシアノ、ハロゲンまたは重水素で置換されていてもよい。]【選択図】なし

Description

本発明は、多環芳香族化合物に関する。本発明は特に、窒素とホウ素を含む多環芳香族化合物に関する。本発明はまた、上記多環芳香族化合物を含む有機デバイス用材料、有機電界発光素子、並びに、表示装置および照明装置に関する。
従来、電界発光する発光素子を用いた表示装置は、省電力化や薄型化が可能なことから、種々研究され、さらに、有機材料から成る有機電界発光素子は、軽量化や大型化が容易なことから活発に検討されてきた。特に、光の三原色の1つである青色などの発光特性を有する有機材料の開発、および正孔、電子などの電荷輸送能(半導体や超電導体となる可能性を有する)を備えた有機材料の開発については、高分子化合物、低分子化合物を問わずこれまで活発に研究されてきた。
有機電界発光素子は、陽極および陰極からなる一対の電極と、当該一対の電極間に配置され、有機化合物を含む一層または複数の層とからなる構造を有する。有機化合物を含む層には、発光層や、正孔、電子などの電荷を輸送または注入する電荷輸送/注入層などがあるが、これらの層に適当な種々の有機材料が開発されている。
その中で、特許文献1では、ホウ素を含有する多環芳香族化合物が、有機電界発光素子等の材料として有用であることが開示されている。この多環芳香族化合物を含有する有機電界発光素子は、良好な外部量子効率を有することが報告されている。
中国特許出願公開第106467554号明細書
上述のように、有機EL素子に用いられる材料としては種々の材料が開発されているが、有機EL素子用材料の選択肢を増やすために、従来とは異なる化合物からなる材料の開発が望まれている。
本発明は有機EL素子等の有機デバイス材料として有用な新規化合物を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討し、特許文献1に記載の化合物と類似の構造を有する多環芳香族化合物において、より発光特性に優れる新規多環芳香族化合物の製造に成功した。また、この多環芳香族化合物を含有する層を一対の電極間に配置して有機EL素子を構成することにより、優れた有機EL素子が得られることを見出し、本発明を完成させた。すなわち本発明は、以下のような多環芳香族化合物、さらには以下のような多環芳香族化合物を含む有機デバイス用材料等を提供する。
<1> 下記式(1)で表される多環芳香族化合物;
Figure 2021172658
式(1)中、
A環、B環、およびC環はそれぞれ独立して、アリール環またはヘテロアリール環であり、A環、B環、およびC環それぞれにおけるアリール環またはヘテロアリール環の少なくとも1つの水素は置換されていてもよく、
D環は、アリール環、ヘテロアリール環、またはシクロアルカン環であり、D環におけるアリール環、ヘテロアリール環、またはシクロアルカン環の少なくとも1つの水素は置換されていてもよく、
D環におけるシクロアルカン環のいずれか1つの−CH2−は−S−、−O−または>Si(−CH32で置換されていてもよく、
A環、B環、C環およびD環それぞれにおけるアリール環、ヘテロアリール環、またはシクロアルカン環は少なくとも1つのシクロアルカンで縮合されていてもよく、当該シクロアルカンにおける少なくとも1つの水素は置換されていてもよく、当該シクロアルカンにおける少なくとも1つの−CH2−は−O−で置換されていてもよく、
1はB、P、P=O、P=S、Al、Ga、As、Si−R、Ge−R、またはSn−Rであり、前記Si−R、Ge−R、およびSn−RのRは置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいアルキル、または置換されていてもよいシクロアルキルであり、
1は、単結合、>O、>S、>Se、>N−R、>Si(−R)2、>C(−R)2、または>C=Oであり、前記>N−R、>Si(−R)2、および>C(−R)2のRはそれぞれ独立して水素、アリール、ヘテロアリール、アルキル、またはシクロアルキルであり、>Si(−R)2および>C(−R)2のそれぞれにおける2つのRは互いに結合して環を形成していてもよく、前記>N−R、>Si(−R)2、および>C(−R)2のRは、連結基または単結合を介して、B環および/またはD環と結合していてもよく、
2は>Si(−R)2、>C(−R)2、または>C=Oであり、前記>Si(−R)2および>C(−R)2のRはそれぞれ独立して水素、アリール、ヘテロアリール、アルキル、またはシクロアルキルであり、>Si(−R)2および>C(−R)2のそれぞれにおける2つのRは互いに結合して環を形成していてもよく、前記>Si(−R)2および>C(−R)2のRは連結基または単結合を介して、A環および/またはC環と結合していてもよく、
式(1)で表される化合物における少なくとも1つの水素はシアノ、ハロゲン、または重水素で置換されていてもよい。
<2> Y1がBである<1>に記載の多環芳香族化合物。
<3> X1が>O、>S、>N−R、または>C(−R)2である<1>または<2>に記載の多環芳香族化合物。
<4> X2が>C(−R)2である<1>〜<3>のいずれかに記載の多環芳香族化合物。
<5> X2である>C(−R)2のRがそれぞれ独立してアルキルである<4>に記載の多環芳香族化合物。
<6> A環、B環、C環およびD環からなる群より選択される少なくとも1つにおけるアリール環、ヘテロアリール環、またはシクロアルカン環の少なくとも1つの水素が置換されている<1>〜<5>のいずれかに記載の多環芳香族化合物。
<7> A環、B環、C環およびD環からなる群より選択される少なくとも1つにおけるアリール環、ヘテロアリール環、またはシクロアルカン環の少なくとも1つの水素が下記式(tR)で表される置換基に置換されている<6>に記載の多環芳香族化合物;
Figure 2021172658
式(tR)中、Ra、Rb、およびRcはそれぞれ独立して炭素数1〜24のアルキルであり、前記アルキルにおける任意の−CH2−は−O−で置換されていてもよく、式(tR)で表される基は*においてアリール環、ヘテロアリール環、またはシクロアルカン環の少なくとも1つの水素と置換する。
<8> A環およびB環がそれぞれ独立して、置換されていてもよいベンゼン環、置換されていてもよいピリジン環、置換されていてもよいピリミジン環、置換されていてもよいピリダジン環、または置換されていてもよいトリアジン環であり、
D環が、置換されていてもよいベンゼン環、置換されていてもよいピリジン環、置換されていてもよいピリミジン環、置換されていてもよいピリダジン環、置換されていてもよいトリアジン環、または置換されていてもよいテトラジン環である<1>〜<7>のいずれかに記載の多環芳香族化合物。
<9> A環、B環、およびD環がそれぞれ独立して、置換されていてもよいベンゼン環である<8>に記載の多環芳香族化合物。
<10> C環が下記式(c1)〜式(c18)からなる群より選択される1つの式で表されるアリール環またはヘテロアリール環である<1>〜<9>のいずれかに記載の多環芳香族化合物;
Figure 2021172658
式(c1)〜式(c18)中、
*および#は、Y1およびX2との結合位置を表し、
*および#のいずれにおいてY1およびX2のいずれと結合していてもよく、
Lは、>O、>S、>Se、>N−R、>Si(−R)2、または>C(−R)2であり、前記>N−R、>Si(−R)2、および>C(−R)2のRは、それぞれ独立して、水素、アリール、ヘテロアリール、アルキル、またはシクロアルキルであるか、または、Lは、追加の一つの結合手を有し、以下の部分構造(A40)となっていてもよく;
Figure 2021172658
式(A40)中、Meはメチルであり、X41は単結合、>O、>S、>N−R、>C(−R)2、または>C=Oであり、2つの*の位置で同一の単環に、**の位置で別の単環に結合しており、X41である>N−Rおよび>C(−R)2におけるRは水素、アリール、ヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキルであり、X41である>C(−R)2における2つのRは互いに結合して環を形成していてもよく、
2はそれぞれ独立して、NまたはC−R2であり、前記C−R2のR2はそれぞれ独立して、水素、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、ジアルキルアミノ、ジアリールボリル(2つのアリールは単結合または連結基を介して結合していてもよい)、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、または置換シリルであり、これらにおける少なくとも1つの水素は、アリール、ヘテロアリール、アルキル、またはシクロアルキルで置換されていてもよく、また、
隣接する2つのZ2における2つのR2が結合して式(A10)で表される基となっていてもよい;
Figure 2021172658
式(A10)中、LSは>N−R、>O、>Si(−R)2または>Sであり、前記>N−RのRは、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいアルキルまたは置換されていてもよいシクロアルキルであり、前記>Si(−R)2のRは、水素、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいアルキルまたは置換されていてもよいシクロアルキルであり、また連結基によって互いに結合していてもよく、また、LSである>N−RのRおよびLSである>Si(−R)2のRの少なくとも1つは連結基または単結合によりZ2であるC−R2中のR2と結合していてもよく、
rは1〜4の整数であり、
Sはそれぞれ独立して水素、置換されていてもよいアルキルまたは置換されていてもよいシクロアルキルであり、任意のRSは他の任意のRSと連結基または単結合により互いに結合していてもよく、
式(A10)で表される基は2つの*でアリール環、ヘテロアリール環、またはシクロアルカン環の環上で隣接する2つの原子にそれぞれ結合する。
<11> C環が式(c1)、式(c2)、式(c3)、式(c4)、式(c5)、式(c8)、および式(c9)からなる群より選択される1つの式で表されるアリール環またはヘテロアリール環である<10>に記載の多環芳香族化合物。
<12> 式(1−c1−8)で表される<1>に記載の多環芳香族化合物;
Figure 2021172658
式中、Meはメチル、tBuはt−ブチルである。
<13> 式(1−c2f−64)または式(1−c2f−65)で表される<1>に記載の多環芳香族化合物;
Figure 2021172658
式中、Meはメチル、tBuはt−ブチルである。
<14> 式(1−n−3)で表される<1>に記載の多環芳香族化合物;
Figure 2021172658
式中、Meはメチル、tBuはt−ブチルである。
<15> <1>〜<14>のいずれかに記載の多環芳香族化合物を含有する、有機デバイス用材料。
<16> 陽極および陰極からなる一対の電極と、該一対の電極間に配置された発光層とを含み
前記発光層が<1>〜<14>のいずれかに記載の多環芳香族化合物を含有する、有機電界発光素子。
<17> 前記発光層が、ホストと、ドーパントとしての前記多環芳香族化合物とを含む、<16>に記載の有機電界発光素子。
<18> 前記ホストが、アントラセン系化合物、フルオレン系化合物、またはジベンゾクリセン系化合物である、<17>に記載の有機電界発光素子。
<19> 陽極および陰極からなる一対の電極と、該一対の電極間に配置された発光層と、前記陰極および前記発光層との間に配置された電子注入層および/または電子輸送層とを含み、
前記電子注入層および/または前記電子輸送層が<1>〜<14>のいずれかに記載の多環芳香族化合物を含有する、有機電界発光素子。
<20> 陽極および陰極からなる一対の電極と、該一対の電極間に配置された発光層と、前記陽極および前記発光層の間に配置された正孔注入層および/または正孔輸送層とを含み、
前記正孔注入層および/または正孔輸送層が<1>〜<14>のいずれかに記載の多環芳香族化合物を含有する、有機電界発光素子。
<21> <16>〜<20>のいずれかに記載の有機電界発光素子を備えた表示装置。
<22> <16>〜<20>のいずれかに記載の有機電界発光素子を備えた照明装置。
本発明により、有機電界発光素子等の有機デバイス用材料として有用な新規多環芳香族化合物が提供される。本発明の多環芳香族化合物は有機電界発光素子等の有機デバイスの製造に用いることができる。
有機電界発光素子の一例を示す概略断面図である。 一般的な蛍光ドーパントを用いたTAF素子のホスト、アシスティングドーパントおよびエミッティングドーパントのエネルギー関係を示すエネルギー準位図である。 本発明の一態様の有機電界発光素子における、ホスト、アシスティングドーパントおよびエミッティングドーパントのエネルギー関係の一例を示すエネルギー準位図である。
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は「〜」前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。また、本明細書において構造式の説明における「水素」は「水素原子(H)」を意味する。
本明細書において、有機電界発光素子を有機EL素子ということがある。
本明細書において化学構造や置換基を炭素数で表すことがあるが、化学構造に置換基が置換した場合や、置換基にさらに置換基が置換した場合などにおける炭素数は、化学構造や置換基それぞれの炭素数を意味し、化学構造と置換基の合計の炭素数や、置換基と置換基の合計の炭素数を意味するものではない。例えば、「炭素数Xの置換基Aで置換された炭素数Yの置換基B」とは、「炭素数Yの置換基B」に「炭素数Xの置換基A」が置換することを意味し、炭素数Yは置換基Aおよび置換基Bの合計の炭素数ではない。また例えば、「置換基Aで置換された炭素数Yの置換基B」とは、「炭素数Yの置換基B」に「(炭素数限定がない)置換基A」が置換することを意味し、炭素数Yは置換基Aおよび置換基Bの合計の炭素数ではない。
1.多環芳香族化合物
本発明の多環芳香族化合物は下記式(1)で表される。本発明の多環芳香族化合物は発光量子収率(PLQY)が高く、特に、従来公知の多環芳香族化合物に対し、B環とD環との間に架橋(X1)を有することにより、発光半値幅が狭く、色純度に優れている。
Figure 2021172658
式(1)中、
A環、B環、およびC環はそれぞれ独立して、アリール環またはヘテロアリール環であり、A環、B環、およびC環それぞれにおけるアリール環またはヘテロアリール環の少なくとも1つの水素は置換されていてもよく、
D環は、アリール環、ヘテロアリール環、またはシクロアルカン環であり、D環におけるアリール環、ヘテロアリール環、またはシクロアルカン環の少なくとも1つの水素は置換されていてもよい。
ここで、式(1)で示すように、A環は3価の基として環員原子(環構造を形成している原子)でY1、X2、およびN(窒素)と直接結合している環であり、B環は3価の基として環員原子でY1、X1、およびN(窒素)と直接結合している環であり、C環は2価の基として環員原子でY1およびX2と直接結合している環であり、D環は2価の基として環員原子でX1およびN(窒素)と直接結合している環である。したがって、上記のアリール環、ヘテロアリール環、またはシクロアルカン環の少なくとも1つの水素が置換されているとは、Y1、X1、X2、およびN(窒素)のいずれかと結合している位置以外において少なくとも1つの置換基を有していることを意味する。Y1、X1、X2、およびN(窒素)と直接結合している上記の環員原子は炭素原子であればよい。
また、上記のアリール環、ヘテロアリール環、およびシクロアルカン環はそれぞれ少なくとも1つのシクロアルカンで縮合されていてもよい。
式(1)のA環、B環、C環およびD環における上記の「アリール環」としては、例えば、炭素数6〜30のアリール環があげられ、炭素数6〜16のアリール環が好ましく、炭素数6〜12のアリール環がより好ましく、炭素数6〜10のアリール環が特に好ましい。
具体的な「アリール環」としては、単環系であるベンゼン環、縮合二環系であるナフタレン環、インデン環、縮合三環系である、アントラセン環、アセナフチレン環、フルオレン環、フェナレン環、フェナントレン環、縮合四環系であるトリフェニレン環、ピレン環、ナフタセン環、ベンゾフルオレン環、クリセン環、縮合五環系であるペリレン環、ペンタセン環などがあげられる。また、フルオレン環およびベンゾフルオレン環には、それぞれフルオレン環やベンゾフルオレン環がスピロ結合した構造も含まれる。なお、フルオレン環およびベンゾフルオレン環は、メチレンの2つの水素のうちの2つがそれぞれ後述の第1の置換基としてのメチルに置換して、ジメチルフルオレン環やジメチルベンゾフルオレン環となっていることも好ましい。
式(1)のA環、B環、C環およびD環における上記の「ヘテロアリール環」としては、例えば、炭素数2〜30のヘテロアリール環があげられ、炭素数2〜25のヘテロアリール環が好ましく、炭素数2〜20のヘテロアリール環がより好ましく、炭素数2〜15のヘテロアリール環がさらに好ましく、炭素数2〜10のヘテロアリール環が特に好ましい。また、「ヘテロアリール環」としては、例えば環構成原子として炭素以外に酸素、硫黄および窒素から選ばれるヘテロ原子を1〜5個含有する複素環などがあげられる。
具体的な「ヘテロアリール環」としては、例えば、ピロール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、ピラゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピラジン環、トリアジン環、テトラジン環、インドール環、イソインドール環、1H−インダゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、1H−ベンゾトリアゾール環、キノリン環、イソキノリン環、シンノリン環、キナゾリン環、キノキサリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、プリン環、プテリジン環、カルバゾール環、アクリジン環、9,10−ジヒドロアクリジン環、フェノキサチイン環、フェノキサジン環、フェノチアジン環、フェナジン環、インドリジン環、イミダゾピリジン環(イミダゾ[1,2−a]ピリジン環など)、フラン環、ベンゾフラン環、イソベンゾフラン環、ジベンゾフラン環、ナフトベンゾフラン環、ベンゾフロフラン環、ベンゾフロベンゾフラン環(ベンゾフロ[3,2−b]ベンゾフラン環など)、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ジベンゾチオフェン環、ナフトベンゾチオフェン環、チエノベンゾチオフェン環、ベンソチエノベンゾチオフェン環([1]−ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェン環など)、チエノピリジン環(チエノ[1,2−a]ピリジン環など)、チエノピリミジン環(チエノ[3,2−d]ピリミジン環など)、チエノベンゾフラン環(チエノ[3,2−b]ベンゾフラン環など)、ベンゾホスホール環、ジベンゾホスホール環、ベンゾホスホールオキシド環、ジベンゾホスホールオキシド環、フラザン環、チアントレン環、セレノフェン環、キサンテン環、チオキサンテン環、インデノチオフェン環などがあげられる。キサンテン環およびチオキサンテン環には、それぞれフルオレン環やベンゾフルオレン環がスピロ結合した構造も含まれる。フルオレン環、ベンゾフルオレン環、キサンテン環、チオキサンテン環、インデノチオフェン環および9,10−ジヒドロアクリジン環は、それぞれメチレンの2つの水素のうちの2つがそれぞれ後述の第1の置換基としてのメチルに置換していてもよい。例えば、ジメチルフルオレン環、ジメチルベンゾフルオレン環、ジメチルインデノチオフェン環(ジメチル−4H−インデノ[1,2−b]チオフェン環)、9,10−ジヒドロ−9,9−ジメチルアクリジン環などがあげられる。
式(1)のD環における具体的な「シクロアルカン環」としては、例えば、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環などがあげられる。
A環は、置換されていてもよいベンゼン環、置換されていてもよいピリジン環、置換されていてもよいピリミジン環、置換されていてもよいピリダジン環、または置換されていてもよいトリアジン環(1,2,3−トリアジン環)であることが好ましく、置換されていてもよいベンゼン環であることがより好ましい。
B環は、置換されていてもよいベンゼン環、置換されていてもよいピリジン環、置換されていてもよいピリミジン環、置換されていてもよいピリダジン環、または置換されていてもよいトリアジン環(1,2,3−トリアジン環)であることが好ましく、置換されていてもよいベンゼン環であることがより好ましい。
D環は、置換されていてもよいベンゼン環、置換されていてもよいピリジン環、置換されていてもよいピリミジン環、置換されていてもよいピリダジン環、置換されていてもよいトリアジン環(1,2,3−トリアジン環もしくは1,2,4−トリアジン環)、または置換されていてもよいテトラジン環(1,2,3,4−テトラジン環)であることが好ましく、置換されていてもよいベンゼン環であることがより好ましい。
C環は、下記式(c1)〜式(c16)からなる群より選択される1つの式で表されるアリール環またはヘテロアリール環であることが好ましい。
Figure 2021172658
式(c1)〜式(c18)中、*および#は、Y1およびX2との結合位置を表し、*および#のいずれにおいてY1およびX2のいずれと結合してもよい。すなわち、*の位置の環員原子がY1と直接結合し、かつ#の位置の環員原子がX2と直接結合していてもよく、#の位置の環員原子がY1と直接結合し、かつ*の位置の環員原子がX2と直接結合していてもよい。
式(c1)〜式(c18)中、Lは、>O、>S、>Se、>N−R、>Si(−R)2、または>C(−R)2であり、前記>N−R、>Si(−R)2、および>C(−R)2のRは、それぞれ独立して、水素、アリール、ヘテロアリール、アルキル、またはシクロアルキルである。Lは、>O、>S、>N−Rまたは>C(−R)2であることが好ましく、>O、>S、または>C(−CH32であることがより好ましく、>Oまたは>Sであることがさらに好ましく、>Sであることが最も好ましい。
または、Lは、追加の一つの結合手を有し、以下の部分構造(A40)となっていてもよい。
Figure 2021172658
式(A40)中、Meはメチルであり、X41は単結合、>O、>S、>N−R、>C(−R)2、または>C=Oであり、2つの*の位置で同一の単環に、**の位置で別の単環に結合している。2つの*の位置で結合する環上の原子は互いに隣接する原子(炭素原子が好ましい)であればよい。X41である>N−Rおよび>C(−R)2におけるRは水素、アリール、ヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキルであり、X41である>N−RのRはアリールであることが好ましく、フェニルであることがより好ましい。X41である>C(−R)2のRは独立して水素、アルキルまたはアリールであることが好ましく、アルキルまたはアリールであることがより好ましく、メチルであることがさらに好ましい。C(−R)2の2つのRは互いに結合して環を形成していてもよい。
式(c1)〜式(c18)中、Z2はそれぞれ独立して、NまたはC−R2であり、前記C−R2のR2はそれぞれ独立して、水素、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、ジアルキルアミノ、ジアリールボリル(2つのアリールは単結合または連結基を介して結合していてもよい)、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、または置換シリルであり、これらにおける少なくとも1つの水素は、アリール、ヘテロアリール、アルキル、またはシクロアルキルで置換されていてもよい。式(c1)〜式(c18)のそれぞれにおいて、NであるZ2は0〜2個であることが好ましく、0〜1個であることがより好ましく、0個であることがさらに好ましい。
式(c1)〜式(c18)のそれぞれにおいて、Z2であるC−R2が複数あるとき、0〜2個のR2が水素以外の基であり、かつその他が水素であることが好ましく、0〜1個のR2が水素以外の基であり、かつその他が水素であることが好ましい。
または、隣接する2つのZ2における2つのR2が結合して後述の式(A10)で表される基となっていてもよい。
C環は、式(c1)、式(c2)、式(c3)、式(c4)、式(c5)、式(c8)、および式(c9)からなる群より選択される1つの式で表されるアリール環またはヘテロアリール環であることがより好ましく、式(c1)または式(c2)で表されるアリール環またはヘテロアリール環であることがさらに好ましく、ベンゼン環であることが特に好ましい。
式(1)において、A環、B環、C環およびD環それぞれにおけるアリール環、ヘテロアリール環、またはシクロアルカン環の少なくとも1つの水素は置換されていてもよい。A環、B環、C環およびD環からなる群より選択される少なくとも1つにおけるアリール環、ヘテロアリール環、またはシクロアルカン環の少なくとも1つの水素が置換されていることが好ましい。A環、B環、およびC環それぞれにおけるアリール環またはヘテロアリール環の少なくとも1つの水素が置換されていることがより好ましく、A環、B環およびC環それぞれにおけるアリール環またはヘテロアリール環の1つの水素が置換されていることがさらに好ましい。同時に、D環が少なくとも1つの置換基を有するアリール環または少なくとも1つの置換基を有するヘテロアリール環であることが好ましく、D環が1つの置換基を有するアリール環または1つの置換基を有するヘテロアリール環であることが好ましい。
式(1)において、A環、B環、C環およびD環それぞれにおけるアリール環、ヘテロアリール環、またはシクロアルカン環の少なくとも1つの水素が置換されているときの置換基は、例えば、置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリール、置換もしくは無置換のジアリールアミノ(2つのアリールは単結合または連結基を介して結合していてもよい)、置換もしくは無置換のジヘテロアリールアミノ、置換もしくは無置換のアリールヘテロアリールアミノ、置換もしくは無置換のジアルキルアミノ、置換もしくは無置換のジアリールボリル(2つのアリールは単結合もしくは連結基を介して結合していてもよい)、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のシクロアルキル、置換もしくは無置換のアルコキシ、置換もしくは無置換のアルケニル、置換もしくは無置換のアルキニル、置換もしくは無置換のアリールオキシ、置換シリル、置換または無置換のアリールスルホニル、置換または無置換のジアリールホスフィン、置換または無置換のジアリールホスフィンオキシド、および置換または無置換のジアリールホスフィンスルフィドからなる群より選択される置換基であればよい。また、特に、隣接する炭素原子に結合する2つまたは3つの水素が置換されているときの置換基としては後述する式(A10)で表される基があげられる。
本明細書において、上記置換基における「アリール」、「ヘテロアリール」、「ジアリールアミノ(2つのアリールは単結合または連結基を介して結合していてもよい)」、「ジヘテロアリールアミノ」、「アリールヘテロアリールアミノ」、「ジアルキルアミノ」、「ジアリールボリル(2つのアリールは単結合もしくは連結基を介して結合していてもよい)」、「アルキル」、「シクロアルキル」、「アルコキシ」、「アリールオキシ」を第1の置換基と呼ぶ。また、「置換または無置換」と説明されているとおり、第1の置換基に置換している置換基を第2の置換基と呼ぶ。
上記置換基(第1の置換基および第2の置換基)中にアリール環またはヘテロアリール環が含まれるとき、前記置換基中のアリール環およびヘテロアリール環からなる群より選択される少なくとも1つは、少なくとも1つのシクロアルカンで縮合されていてもよい。
第1の置換基としての「アリール」としては、上述した「アリール環」の一価の基のほか、ビフェニリル、m−テルフェニリル、o−テルフェニリル、p−テルフェニリルなどがあげられる。第1の置換基としての具体的な「アリール」としては、単環系であるフェニル、二環系であるビフェニリル、縮合二環系であるナフチル(1−ナフチルまたは2−ナフチル)、三環系であるテルフェニリル(m−テルフェニリル、o−テルフェニリルまたはp−テルフェニリル)、縮合三環系である、アセナフチレニル、フルオレニル、フェナレニル、フェナントレニル、縮合四環系であるトリフェニレニル、ピレニル、ナフタセニル、クリセニル、縮合五環系であるペリレニル、ペンタセニルなどがあげられる。また、フルオレニルにフルオレン環またはベンゾフルオレン環がスピロ結合した基およびベンゾフルオレニルにフルオレン環またはベンゾフルオレン環がスピロ結合した基もあげられる。
また第1の置換基としての「ヘテロアリール」としては、上述した「ヘテロアリール環」の一価の基があげられる。例えば、炭素数2〜30のヘテロアリールがあげられ、炭素数2〜25のヘテロアリールが好ましく、炭素数2〜20のヘテロアリールがより好ましく、炭素数2〜15のヘテロアリールがさらに好ましく、炭素数2〜10のヘテロアリールが特に好ましい。
具体的な「ヘテロアリール」としては、例えば、ピロリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピラゾリル、ピリジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピラジニル、トリアジニル、インドリル、イソインドリル、1H−インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、1H−ベンゾトリアゾリル、キノリニル、イソキノリニル、シンノリニル、キナゾリニル、キノキサリニル、フタラジニル、ナフチリジニル、プリニル、プテリジニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェノキサチイニル、フェノキサジニル、フェノチアジニル、フェナジニル、インドリジニル、フラニル、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、ジベンゾフラニル、ナフトベンゾフラニル、チオフェニル、ベンゾチオフェニル、イソベンゾチオフェニル、ジベンゾチオフェニル、ナフトベンゾチオフェニル、フラザニル、チアントレニル、キサンテニル、チオキサンテニルなどがあげられる。
第1の置換基としての「アルキル」としては、直鎖および分岐鎖のいずれでもよく、例えば、炭素数1〜24の直鎖アルキルまたは炭素数3〜24の分岐鎖アルキルがあげられる。炭素数1〜18のアルキル(炭素数3〜18の分岐鎖アルキル)が好ましく、炭素数1〜12のアルキル(炭素数3〜12の分岐鎖アルキル)がより好ましく、炭素数1〜6のアルキル(炭素数3〜6の分岐鎖アルキル)がさらに好ましく、炭素数1〜4のアルキル(炭素数3〜4の分岐鎖アルキル)が特に好ましい。
具体的なアルキルとしては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、t−ペンチル、n−ヘキシル、1−メチルペンチル、4−メチル−2−ペンチル、3,3−ジメチルブチル、2−エチルブチル、n−ヘプチル、1−メチルヘキシル、n−オクチル、t−オクチル、1−メチルヘプチル、2−エチルヘキシル、2−プロピルペンチル、n−ノニル、2,2−ジメチルヘプチル、2,6−ジメチル−4−ヘプチル、3,5,5−トリメチルヘキシル、n−デシル、n−ウンデシル、1−メチルデシル、n−ドデシル、n−トリデシル、1−ヘキシルヘプチル、n−テトラデシル、n−ペンタデシル、n−ヘキサデシル、n−ヘプタデシル、n−オクタデシル、n−エイコシルなどがあげられる。
また、例えば、1−エチル−1−メチルプロピル、1,1−ジエチルプロピル、1,1−ジメチルブチル、1−エチル−1−メチルブチル、1,1,4−トリメチルペンチル、1,1,2−トリメチルプロピル、1,1−ジメチルオクチル、1,1−ジメチルペンチル、1,1−ジメチルヘプチル、1,1,5−トリメチルヘキシル、1−エチル−1−メチルヘキシル、1−エチル−1,3−ジメチルブチル、1,1,2,2−テトラメチルプロピル、1−ブチル−1−メチルペンチル、1,1−ジエチルブチル、1−エチル−1−メチルペンチル、1,1,3−トリメチルブチル、1−プロピル−1−メチルペンチル、1,1,2−トリメチルプロピル、1−エチル−1,2,2−トリメチルプロピル、1−プロピル−1−メチルブチル、1,1−ジメチルヘキシルなどもあげられる。
また第1の置換基としての「シクロアルキル」としては、例えば、炭素数3〜12のシクロアルキルがあげられる。好ましいシクロアルキルは、炭素数3〜10のシクロアルキルである。より好ましいシクロアルキルは、炭素数3〜8のシクロアルキルである。さらに好ましいシクロアルキルは、炭素数3〜6のシクロアルキルである。
具体的なシクロアルキルとしては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、およびこれらの炭素数1〜5のアルキル(特にメチル)置換体や、ノルボルニル(ビシクロ[2.2.1]ヘプチル)、ビシクロ[1.1.0]ブチル、ビシクロ[1.1.1]ペンチル、ビシクロ[2.1.0]ペンチル、ビシクロ[2.1.1]ヘキシル、ビシクロ[3.1.0]ヘキシル、ビシクロ[2.2.2]オクチル、アダマンチル、ジアマンチル、デカヒドロナフタレニル、デカヒドロアズレニルなどがあげられる。
なお、本発明の多環芳香族化合物にシクロアルキルを導入することによっては、融点や昇華温度の低下が期待できる。このことは、高い純度が要求される有機EL素子などの有機デバイス用の材料の精製法としてほぼ不可欠な昇華精製において、比較的低温で精製することができるため材料の熱分解などが避けられることを意味する。またこれは、有機EL素子などの有機デバイスを作製するのに有力な手段である真空蒸着プロセスについても同様であり、比較的低温でプロセスを実施できるため、材料の熱分解を避けることができ、結果として高性能な有機デバイス用を得ることができる。また、シクロアルキルの導入により有機溶媒への溶解性が向上するため、塗布プロセスを利用した素子作製にも適用することが可能となる。ただし、本発明は特にこれらの原理に限定されるわけではない。
第1の置換基としての「アルコキシ」としては、例えば、炭素数1〜24の直鎖または炭素数3〜24の分岐鎖のアルコキシがあげられる。炭素数1〜18のアルコキシ(炭素数3〜18の分岐鎖のアルコキシ)が好ましく、炭素数1〜12のアルコキシ(炭素数3〜12の分岐鎖のアルコキシ)がより好ましく、炭素数1〜6のアルコキシ(炭素数3〜6の分岐鎖のアルコキシ)がさらに好ましく、炭素数1〜4のアルコキシ(炭素数3〜4の分岐鎖のアルコキシ)が特に好ましい。
具体的なアルコキシとしては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、s−ブトキシ、t−ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシなどがあげられる。
第1の置換基としての「アルケニル」としては、例えば、ビニル、アリル、ブタジエニルなどの二重結合を含む不飽和脂肪族炭化水素基があげられる。アルケニルの炭素数は特に限定されないが、通常、2〜20の範囲である。
第1の置換基としての「アルキニル」としては、例えば、アセチレニルなどの三重結合を含む不飽和脂肪族炭化水素基があげられる。アルキニルの炭素数は特に限定されないが、通常、2〜20の範囲である。
また第1の置換基としての「ジアリールアミノ」、「ジヘテロアリールアミノ」、「アリールヘテロアリールアミノ」、「ジアリールボリル」、「アリールオキシ」、「アリールスルホニル」、「ジアリールホスフィン」、「ジアリールホスフィンオキシド」、および「ジアリールホスフィンスルフィド」における「アリール」や「ヘテロアリール」の詳細は、上述した「アリール」や「ヘテロアリール」の説明を引用することができる。
第1の置換基の「ジアリールアミノ」中の2つのアリールは単結合または連結基(例えば>C(−R)2、>O、>Sまたは>N−R)を介して結合していてもよい。また、第1の置換基の「ジアリールボリル」中の2つのアリールは単結合または連結基(例えば>C(−R)2、>O、>Sまたは>N−R)を介して結合していてもよい。ここで、>C(−R)2および>N−RのRは、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルコキシまたはアリールオキシ(以上、第1置換基)であり、当該第1置換基にはさらにアリール、ヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキル(以上、第2置換基)が置換していてもよく、これらの基の具体例としては、上述した第1置換基としてのアリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルコキシまたはアリールオキシの説明を引用できる。
第1の置換基としての「ジアルキルアミノ」のアルキルとしては上述した「アルキル」の説明を引用できる。
また「置換シリル」としては、アルキル、シクロアルキル、およびアリールからなる群より選択される3つの置換基で置換されたシリルがあげられる。具体的には、例えば、トリアルキルシリル、トリシクロアルキルシリル、ジアルキルシクロアルキルシリル、アルキルジシクロアルキルシリル、トリアリールシリル、ジアルキルアリールシリル、およびアルキルジアリールシリルがあげられる。
「トリアルキルシリル」としては、無置換シリルにおける3つの水素がそれぞれ独立してアルキルで置換された基があげられ、このアルキルは上述した第1の置換基における「アルキル」として説明した基を引用することができる。置換するのに好ましいアルキルは、炭素数1〜5のアルキルであり、具体的にはメチル、エチル、プロピル、i−プロピル、ブチル、sec−ブチル、t−ブチル、t−アミルなどがあげられる。
具体的なトリアルキルシリルとしては、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリプロピルシリル、トリi−プロピルシリル、トリブチルシリル、トリsec−ブチルシリル、トリt−ブチルシリル、トリt−アミルシリル、エチルジメチルシリル、プロピルジメチルシリル、i−プロピルジメチルシリル、ブチルジメチルシリル、sec−ブチルジメチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、t−アミルジメチルシリル、メチルジエチルシリル、プロピルジエチルシリル、i−プロピルジエチルシリル、ブチルジエチルシリル、sec−ブチルジエチルシリル、t−ブチルジエチルシリル、t−アミルジエチルシリル、メチルジプロピルシリル、エチルジプロピルシリル、ブチルジプロピルシリル、sec−ブチルジプロピルシリル、t−ブチルジプロピルシリル、t−アミルジプロピルシリル、メチルジi−プロピルシリル、エチルジi−プロピルシリル、ブチルジi−プロピルシリル、sec−ブチルジi−プロピルシリル、t−ブチルジi−プロピルシリル、t−アミルジi−プロピルシリルなどがあげられる。
「トリシクロアルキルシリル」としては、無置換シリルにおける3つの水素がそれぞれ独立してシクロアルキルで置換された基があげられ、このシクロアルキルは上述した第1の置換基における「シクロアルキル」として説明した基を引用することができる。置換するのに好ましいシクロアルキルは、炭素数5〜10のシクロアルキルであり、具体的にはシクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、ビシクロ[1.1.1]ペンチル、ビシクロ[2.1.0]ペンチル、ビシクロ[2.1.1]ヘキシル、ビシクロ[3.1.0]ヘキシル、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル、ビシクロ[2.2.2]オクチル、アダマンチル、デカヒドロナフタレニル、デカヒドロアズレニルなどがあげられる。
具体的なトリシクロアルキルシリルとしては、トリシクロペンチルシリル、トリシクロヘキシルシリルなどがあげられる。
2つのアルキルと1つのシクロアルキルが置換したジアルキルシクロアルキルシリルと、1つのアルキルと2つのシクロアルキルが置換したアルキルジシクロアルキルシリルの具体例としては、上述した具体的なアルキルおよびシクロアルキルから選択される基が置換したシリルがあげられる。
2つのアルキルと1つのアリールが置換したジアルキルアリールシリル、1つのアルキルと2つのアリールが置換したアルキルジアリールシリル、および3つのアリールが置換したトリアリールシリルの具体例としては、上述した具体的なアルキルおよびアリールから選択される基が置換したシリルがあげられる。トリアリールシリルの具体例としては、特にトリフェニルシリルがあげられる。
第2の置換基としては、例えば、アリール、ヘテロアリール、アルキル、またはシクロアルキルがあげられる。これらの基の具体例としては、上述した第1置換基としてのアリール、ヘテロアリール、アルキル、またはシクロアルキルの説明を引用できる。
第1の置換基によって、発光波長を調整することができる。
第1の置換基(第2の置換基で置換されているものを含む)は好ましくは以下の構造式で表される基であり、より好ましくは、メチル、ターシャリ−アルキル(tR)(t−ブチル、t−アミル、t−オクチルなど)、フェニル、o−トリル、p−トリル、2,4−キシリル、2,5−キシリル、2,6−キシリル、2,4,6−メシチル、ジフェニルアミノ、ジ−p−トリルアミノ、ビス(p−(t−ブチル)フェニル)アミノ、カルバゾリル、3,6−ジメチルカルバゾリル、3,6−ジ−t−ブチルカルバゾリルおよびフェノキシであり、さらに好ましくは、メチル、t−ブチル、t−アミル、t−オクチル、フェニル、o−トリル、2,6−キシリル、2,4,6−メシチル、ジフェニルアミノ、ジ−p−トリルアミノ、ビス(p−(t−ブチル)フェニル)アミノ、カルバゾリル、3,6−ジメチルカルバゾリルおよび3,6−ジ−t−ブチルカルバゾリルである。合成の容易さの観点からは、立体障害が大きい方が選択的な合成のために好ましく、具体的には、t−ブチル、t−アミル、t−オクチル、o−トリル、p−トリル、2,4−キシリル、2,5−キシリル、2,6−キシリル、2,4,6−メシチル、ジ−p−トリルアミノ、ビス(p−(t−ブチル)フェニル)アミノ、3,6−ジメチルカルバゾリルおよび3,6−ジ−t−ブチルカルバゾリルが好ましい。
下記構造式において、「Me」はメチル、「tBu」はt−ブチル、「tAm」はt−アミル、「tOct」はt−オクチル、*は結合位置を表す。
Figure 2021172658
Figure 2021172658
Figure 2021172658
Figure 2021172658
Figure 2021172658
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Figure 2021172658
Figure 2021172658
Figure 2021172658
Figure 2021172658
Figure 2021172658
Figure 2021172658
上記で一部の例をあげたターシャリ−アルキル(tR)は置換基として特に好ましい。このような嵩高い置換基により分子同士の凝集による失活を防ぎ、発光量子収率(PLQY)が向上するからである。ターシャリ−アルキルは下記式(tR)で表すことができる。
Figure 2021172658
式(tR)中、Ra、Rb、およびRcはそれぞれ独立して炭素数1〜24のアルキルであり、前記アルキルにおける任意の−CH2−は−O−で置換されていてもよく、式(tR)で表される基は*においてアリール環、ヘテロアリール環、またはシクロアルカン環の少なくとも1つの水素と置換する。
a、Rb、およびRcの「炭素数1〜24のアルキル」としては、直鎖および分岐鎖のいずれでもよく、例えば、炭素数1〜24の直鎖アルキルまたは炭素数3〜24の分岐鎖アルキル、炭素数1〜18のアルキル(炭素数3〜18の分岐鎖アルキル)、炭素数1〜12のアルキル(炭素数3〜12の分岐鎖アルキル)、炭素数1〜6のアルキル(炭素数3〜6の分岐鎖アルキル)、炭素数1〜4のアルキル(炭素数3〜4の分岐鎖アルキル)があげられる。
式(tR)におけるRa、Rb、およびRcの炭素数の合計は炭素数3〜20が好ましく、炭素数3〜10が特に好ましい。
a、Rb、およびRcの具体的なアルキルとしては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、t−ペンチル、n−ヘキシル、1−メチルペンチル、4−メチル−2−ペンチル、3,3−ジメチルブチル、2−エチルブチル、n−ヘプチル、1−メチルヘキシル、n−オクチル、t−オクチル、1−メチルヘプチル、2−エチルヘキシル、2−プロピルペンチル、n−ノニル、2,2−ジメチルヘプチル、2,6−ジメチル−4−ヘプチル、3,5,5−トリメチルヘキシル、n−デシル、n−ウンデシル、1−メチルデシル、n−ドデシル、n−トリデシル、1−ヘキシルヘプチル、n−テトラデシル、n−ペンタデシル、n−ヘキサデシル、n−ヘプタデシル、n−オクタデシル、n−エイコシルなどがあげられる。
式(tR)で表される基としては、例えばt−ブチル、t−アミル、1−エチル−1−メチルプロピル、1,1−ジエチルプロピル、1,1−ジメチルブチル、1−エチル−1−メチルブチル、1,1,3,3−テトラメチルブチル、1,1,4−トリメチルペンチル、1,1,2−トリメチルプロピル、1,1−ジメチルオクチル、1,1−ジメチルペンチル、1,1−ジメチルヘプチル、1,1,5−トリメチルヘキシル、1−エチル−1−メチルヘキシル、1−エチル−1,3−ジメチルブチル、1,1,2,2−テトラメチルプロピル、1−ブチル−1−メチルペンチル、1,1−ジエチルブチル、1−エチル−1−メチルペンチル、1,1,3−トリメチルブチル、1−プロピル−1−メチルペンチル、1,1,2−トリメチルプロピル、1−エチル−1,2,2−トリメチルプロピル、1−プロピル−1−メチルブチル、1,1−ジメチルヘキシル基などがあげられる。これらのうち、t−ブチルおよびt−アミルが好ましい。
そのほか、例えば、式(tR)の基で置換されたジアリールアミノ、式(tR)の基で置換されたカルバゾリルまたは式(tR)の基で置換されたベンゾカルバゾリルも好ましい例としてあげられる。「ジアリールアミノ、カルバゾリルおよびベンゾカルバゾリルへの式(tR)の基の置換形態としては、これらの基におけるアリール環またはベンゼン環の一部または全ての水素が式(tR)の基で置換された例があげられる。
また、カルバゾール環、9,10−ジヒドロアクリジン環、9,10−ジヒドロ−9,9−ジメチルアクリジン環などの窒素を含むヘテロアリール環の水素が置換されているときの置換基としては、それぞれの環中の窒素原子とともに上述の部分構造(A40)を形成する置換基も好ましい例としてあげることができる。
上述のように、連続(隣接)する炭素原子に結合する2つまたは3つの水素が置換されているときの置換基としては後述する式(A10)で表される基であってもよい。
Figure 2021172658
式(A10)中、LSは>N−R、>O、>Si(−R)2または>Sであり、前記>N−RのRは、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいアルキルまたは置換されていてもよいシクロアルキルであり、前記>Si(−R)2のRは、水素、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいアルキルまたは置換されていてもよいシクロアルキルであり、また連結基によって互いに結合していてもよく、また、LSである>N−RのRおよびLSである>Si(−R)2のRの少なくとも1つは連結基または単結合により前記A環、B環、C環、D環およびRSからなる群より選択される少なくとも1つと結合していてもよく、
rは1〜4の整数であり、
Sはそれぞれ独立して水素、置換されていてもよいアルキルまたは置換されていてもよいシクロアルキルであり、任意のRSは他の任意のRSと連結基または単結合により互いに結合していてもよく、
式(A10)で表される基は2つの*でアリール環、ヘテロアリール環、またはシクロアルカン環の環上で隣接する2つの原子にそれぞれ結合する。
式(1)で表される化合物中、式(A10)で表される基が含まれる場合、その数は1つまたは2つ含まれていることが好ましい。式(A10)で表される基はA環、B環、C環およびD環のいずれの環中の置換基であってもよいが、C環におけるアリール環、ヘテロアリール環、またはシクロアルカン環の置換基であることが好ましい。
式(A10)で表される基は2つの*で、アリール環、ヘテロアリール環、またはシクロアルカン環の環上で隣接する2つの原子にそれぞれ結合する。式(A10)で表される基は2つの*で、アリール環、ヘテロアリール環またはシクロアルカン環上で隣接する2つの原子にそれぞれ結合することが好ましい。このとき、環上で隣接する2つの原子はいずれも炭素原子であることが好ましい。アリール環、ヘテロアリール環、またはシクロアルカン環に式(A10)で表される基が結合することにより、縮環構造が形成される。この縮環構造を有する式(1)で表される化合物は、化合物がより剛直な構造となる。剛直になると、分子の振動が抑えられてEQEが向上し、分子の安定性が増して素子寿命が長くなることが期待される。
式(A10)中、LSは>N−R、>O、>Si(−R)2または>Sである。式(A10)で表される基におけるLSの種類を選ぶことで本発明の化合物のHOMOおよびLUMOを制御することが可能である。LSがN−R、>Oまたは>SのときはHOMOおよびLUMOが浅くなり、SiのときはHOMOおよびLUMOが深くなる。HOMO、LUMOが浅くなると、これを用いるTTF素子が長寿命、高効率、低駆動電圧になることが期待される。一方HOMO,LUMOが深くなると、ドーパントのホールトラップ性がなくなり、駆動電圧が大幅に低くなることが期待される。
式(A10)中のLSである>N−RのRは、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいアルキルまたは置換されていてもよいシクロアルキルである。式(A10)中のLSである>Si(−R)2のRは、水素、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいアルキルまたは置換されていてもよいシクロアルキルであり、また連結基によって互いに結合していてもよい。また、前記>N−Rおよび前記>Si(−R)2のRの少なくとも1つは連結基または単結合により前記A環、B環、C環、D環およびRSからなる群より選択される少なくとも1つと結合していてもよい。Lは>N−R、>Oまたは>Sであることが好ましく、>N−Rまたは>Oであることがより好ましく、>N−Rであることがさらに好ましい。
Sが>N−RであるときのRはアルキルもしくはシクロアルキルで置換されていてもよいアリール、アルキルもしくはシクロアルキルで置換されていてもよいヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキルであることが好ましく、アルキルもしくはシクロアルキルで置換されていてもよいアリール、またはアルキルもしくはシクロアルキルで置換されていてもよいヘテロアリールであることがより好ましく、アルキルもしくはシクロアルキルで置換されていてもよいアリールであることがさらに好ましく、アルキルもしくはシクロアルキルで置換されていてもよいフェニルであることが特に好ましい。
式(A10)中、rは1〜4の整数であり、2または3であることが好ましく、2であることがより好ましい。
式(A10)中、RSはそれぞれ独立して、水素、置換されていてもよいアルキルまたは置換されていてもよいシクロアルキルであり、任意のRSは他の任意のRSと連結基または単結合により互いに連結していてもよい。
Sは、任意の2個が連結基または単結合により互いに結合していることが好ましい。連結基としては>O、>Sなどがあげられる。互いに結合して形成されている2価の基としては、アルキレンがあげられる。当該アルキレンにおける少なくとも1つの水素はアルキルもしくはシクロアルキルで置換されていてもよく、当該アルキレンにおける少なくとも1つ(好ましくは1つ)の−CH2−は−O−および−S−で置換されていてもよい。互いに結合して形成されている2価の基としては、炭素数2〜5の直鎖アルキレンが好ましく、炭素数3または4の直鎖アルキレンがより好ましく、炭素数4の直鎖アルキレン(−(CH24−)がさらに好ましい。炭素数4の直鎖アルキレン(−(CH24−)は無置換であることが特に好ましい。
隣接する炭素原子にそれぞれ結合する2個のRSが連結基または単結合により互いに結合しているとき、この結合に関与していない残りのRSは、それぞれ独立して、水素または置換されていてもよいアルキルであるか、またはLSである>N−Rまたは>Si(−R)2のRと結合していることが好ましい。
隣接する炭素原子にそれぞれ結合する2個のRSが連結基または単結合により互いに結合しているとき、この結合に関与していない残りのRSとしての、置換されていてもよいアルキルとしては、置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキルであることがより好ましく、無置換の炭素数1〜6のアルキルであることがさらに好ましく、いずれもメチルであることが最も好ましい。
すなわち、式(A10)で表される基の好ましい一例としては、下記式(A10−b)で表される基があげられる。
Figure 2021172658
式中、Meはメチルである。
Sである>N−Rおよび>Si(−R)2のRの少なくとも1つは連結基または単結合により前記A環、B環、C環、D環およびRSからなる群より選択される少なくとも1つと結合していてもよい。LSが>N−Rであるときの例として以下のいずれかの式で表される基があげられ、式(A10−b−1)で表される基が好ましい。
Figure 2021172658
各式中、Meはメチルである。各式中、*で、A環、B環、C環およびD環中のいずれかのアリール環、ヘテロアリール環またはシクロアルカン環の環上で連続(隣接)する2つまたは3つの原子にそれぞれ結合する。
例えば、式(c1)〜式(c18)からなる群より選択される1つの式で表されるC環に式(A10)で表される基が含まれているときは、隣接する2つのZ2が結合して式(A10)で表される基を形成してればよい。特に隣接する炭素原子に結合するR2が結合して式(A10)で表される基となっていればよい。さらに、LSである>N−Rおよび>Si(−R)2のRの少なくとも1つは連結基または単結合により別のZ2と結合していてもよい。
A環、B環、C環およびD環中のアリール環およびヘテロアリール環、ならびに第1および第2の置換基として含まれるアリール環およびヘテロアリール環のうちの少なくとも1つが、少なくとも1つのシクロアルカンで縮合されていてもよい。
「シクロアルカン」としては、炭素数3〜24のシクロアルカン、炭素数3〜20のシクロアルカン、炭素数3〜16のシクロアルカン、炭素数3〜14のシクロアルカン、炭素数5〜10のシクロアルカン、炭素数5〜8のシクロアルカン、炭素数5〜6のシクロアルカン、炭素数5のシクロアルカンなどがあげられる。
具体的なシクロアルカンとしては、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカン、ノルボルナン(ビシクロ[2.2.1]ヘプタン)、ビシクロ[1.1.0]ブタン、ビシクロ[1.1.1]ペンタン、ビシクロ[2.1.0]ペンタン、ビシクロ[2.1.1]ヘキサン、ビシクロ[3.1.0]ヘキサン、ビシクロ[2.2.2]オクタン、アダマンタン、ジアマンタン、デカヒドロナフタレンおよびデカヒドロアズレン、ならびに、これらの炭素数1〜5のアルキル(特にメチル)置換体、ハロゲン(特にフッ素)置換体および重水素置換体などがあげられる。
これらの中でも、例えばシクロアルカンのα位の炭素(芳香族環または複素芳香族環に縮合するシクロアルキルにおいて、縮合部位の炭素に隣接する位置の炭素)における少なくとも1つの水素が置換された構造が好ましく、α位の炭素における2つの水素が置換された構造がより好ましく、2つのα位の炭素における合計4つの水素が置換された構造がさらに好ましい。この置換基としては、炭素数1〜5のアルキル(特にメチル)置換体、ハロゲン(特にフッ素)置換体および重水素置換体などがあげられる。
1つのアリール環またはヘテロアリール環に縮合するシクロアルカンの数は、1〜3個が好ましく、1個または2個がより好ましく、1個がさらに好ましい。一価の基となっている環に縮合している例として、1つのベンゼン環(フェニル)に1個または複数のシクロアルカンが縮合した例を以下に示す。*は結合位置を示す。式(Cy−1−4)および式(Cy−2−4)のように縮合したシクロアルカン同士が縮合してもよい。縮合される環(基)がベンゼン環(フェニル)以外の他の芳香族環または複素芳香族環の場合であっても、縮合するシクロアルカンがシクロペンタンまたはシクロヘキサン以外の他のシクロアルカンの場合であっても、同様である。
Figure 2021172658
シクロアルカンにおける少なくとも1つの−CH2−は−O−で置換されていてもよい。例えば1つのベンゼン環(フェニル)に縮合したシクロアルカンにおける1個または複数の−CH2−が−O−で置換された例を以下に示す。縮合される環(基)がベンゼン環(フェニル)以外の他の芳香族環または複素芳香族環の場合であっても、縮合するシクロアルカンがシクロペンタンまたはシクロヘキサン以外の他のシクロアルカンの場合であっても、同様である。
Figure 2021172658
シクロアルカンにおける少なくとも1つの水素は置換されていてもよく、この置換基としては、例えば、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、ジアルキルアミノ、ジアリールボリル(2つのアリールは単結合または連結基を介して結合していてもよい)、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、置換シリル、重水素、シアノまたはハロゲンがあげられ、これらの詳細は、上述した第1の置換基の説明を引用することができる。これらの置換基の中でも、アルキル(例えば炭素数1〜6のアルキル)、シクロアルキル(例えば炭素数3〜14のシクロアルキル)、ハロゲン(例えばフッ素)および重水素などが好ましい。また、シクロアルキルが置換する場合はスピロ構造を形成する置換形態でもよく、この例を以下に示す。
Figure 2021172658
具体的な例としては、第1の置換基が、シクロアルカンで縮合されたジアリールアミノ(このアリール部分へ縮合)またはシクロアルカンで縮合されたカルバゾリル(このベンゼン環部分へ縮合)である例があげられる。
式(1)中、Y1はB、P、P=O、P=S、Al、Ga、As、Si−R、Ge−RまたはSn−Rであり、前記Si−R、Ge−RおよびSn−RのRは置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいアルキルあるいは置換されていてもよいシクロアルキルである。Y1はB、P、P=O、またはP=Sであることが好ましく、Bであることがより好ましい。
式(1)中、X1は、単結合、>O、>S、>Se、>N−R、>Si(−R)2、>C(−R)2、または>C=Oであり、前記>N−R、>Si(−R)2、および>C(−R)2のRは、それぞれ独立して水素、アリール、ヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキルであり、>Si(−R)2および>C(−R)2のそれぞれにおける2つのRは互いに結合して環を形成していてもよい。X1は単結合、>O、>S、>N−R、>C(−R)2、または>C=Oであることが好ましく、>O、>S、>N−R、>C(−R)2、または>C=Oであることがより好ましく、>Oまたは>Sであることがさらに好ましく、>Sであることが特に好ましい。X1である>N−RのRはアリールであることが好ましく、フェニルであることがより好ましい。X1である>C(−R)2のRは独立して水素、アルキルまたはアリールであることが好ましく、アルキルまたはアリールであることがより好ましい。
1である>N−R、>Si(−R)2、および>C(−R)2のRは、それぞれ、連結基または単結合を介して、B環および/またはD環と結合していてもよい。ここで、連結基としては、−O−、−S−または−C(−R)2−が好ましい。なお、前記「−C(−R)2−」のRは水素またはアルキルである。
1である>N−RのRが、連結基または単結合を介してB環またはD環と結合している構造の一例として、X1は、追加の一つの結合手を有し、以下の部分構造(A20)となっていてもよい。
Figure 2021172658
式(A20)中、Meはメチルであり、X11は単結合、>O、>S、>N−R、>C(−R)2、または>C=Oであり、2つの*の位置でB環およびD環から選択される一方の環に、**の位置でB環およびD環から選択される他方の環に結合している。2つの*の位置で結合する環上の原子は互いに隣接する原子(炭素原子が好ましい)であればよい。X11である>N−Rおよび>C(−R)2におけるRは水素、アリール、ヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキルであり、X11である>N−RのRはアリールであることが好ましく、フェニルであることがより好ましい。X11である>C(−R)2のRは独立して水素、アルキルまたはアリールであることが好ましく、アルキルまたはアリールであることがより好ましく、メチルであることがさらに好ましい。C(−R)2の2つのRは互いに結合して環を形成していてもよい。
式(A20)で表される部分構造は結合解離エネルギー(BDE)の弱いN−C結合を含むが、環を形成するもう一つの結合があることでN−C結合の切断時にも逆反応(再結合反応)が促進されるため、式(A20)で表される部分構造を有する化合物はより安定な構造になる。したがって、式(A20)で表される部分構造を有する化合物を用いて製造される有機EL素子では素子寿命が長くなることが期待される。
2は、>Si(−R)2、>C(−R)2、または>C=Oであり、前記>Si(−R)2、および>C(−R)2のRは独立して水素、アリール、ヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキルであり、2つのRは互いに結合して環を形成していてもよい。X2は>C(−R)2であることが好ましい。X2である>C(−R)2のRはそれぞれ独立して、水素、アルキル、またはアリールであることが好ましく、アルキルまたはアリールであることがより好ましく、アルキルであることがさらに好ましく、いずれもメチルであることが特に好ましい。また>C(−R)2の2つのRは互いに連結して環を形成することも好ましい。例えばX2である>C(−R)2の2つのRがいずれもフェニルであり、それらが、単結合、>CH2、>C(−CH32、>O、>S、>NPh(Phはフェニル)または>C=Oで連結している構造も好ましい。
2である>Si(−R)2および>C(−R)2のRは、それぞれ連結基または単結合を介して、A環および/またはC環と結合していてもよい。ここで、連結基としては、−O−、−S−または−C(−R)2−が好ましい。なお、前記「−C(−R)2−」のRは水素またはアルキルである。例えば、X2は以下の部分構造(A30)であってもよい。
Figure 2021172658
Aはそれぞれ独立して、水素、置換されていてもよいアルキルまたは置換されていてもよいシクロアルキルであり、rは0〜2の整数であり、2つの*の位置でA環およびC環から選択される一方の環に、**の位置でA環およびC環から選択される他方の環に結合している。RAは水素またはメチルであることが好ましい。2つの*の位置で結合する環上の原子は互いに隣接する原子(炭素原子が好ましい)であればよい。
式(A30)で表される部分構造としては、例えば、下記式(A31)で表される構造が好ましい。
Figure 2021172658
式(A31)中、Meはメチルであり、2つの*の位置でA環およびC環から選択される一方の環に、**の位置でA環およびC環から選択される他方の環に結合している。
式(1)で表される多環芳香族化合物中の水素は、その全てまたは一部がシアノ、ハロゲンまたは重水素であってもよい。例えば、構造中に含まれるアリール環、ヘテロアリール環、またはシクロヘキサン環における全てまたは一部の水素が、シアノ、ハロゲン、または重水素で置換された態様、第1の置換基および第2の置換基における全てまたは一部の水素が、シアノ、ハロゲン、または重水素で置換された態様、アリール環およびヘテロアリール環のうちの少なくとも1つが、少なくとも1つのシクロアルカンで縮合されている場合の当該シクロアルカンにおける全てまたは一部の水素が、シアノ、ハロゲン、または重水素で置換された態様(上述)などがあげられる。ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素であり、好ましくはフッ素、塩素または臭素、より好ましくはフッ素である。
式(1)で表される多環芳香族化合物の好ましい例として、下記式(2)で表される多環芳香族化合物をあげることができる。
Figure 2021172658
式(2)中、
1はそれぞれ独立して、NまたはC−R1であり、前記C−R1のR1はそれぞれ独立して、水素、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、ジアルキルアミノ、ジアリールボリル(2つのアリールは単結合または連結基を介して結合していてもよい)、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、または置換シリルであり、これらにおける少なくとも1つの水素は、アリール、ヘテロアリール、アルキル、またはシクロアルキルで置換されていてもよく、また、R1のうちの隣接する基同士が結合してa環、b環またはd環と共に、それぞれ、アリール環またはヘテロアリール環を形成していてもよく、形成された環における少なくとも1つの水素は、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、ジアルキルアミノ、ジアリールボリル(2つのアリールは単結合または連結基を介して結合していてもよい)、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、または置換シリルで置換されていてもよく、これらにおける少なくとも1つの水素は、アリール、ヘテロアリール、アルキル、またはシクロアルキルで置換されていてもよく、ただし、隣接する2つのZ1における2つのR2が結合して式(A10)で表される基となっていてもよい。
1は、単結合、>O、>S、>Se、>N−R、>Si(−R)2、または>C(−R)2であり、前記>N−R、>Si(−R)2、および>C(−R)2のRは独立して水素、アリール、ヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキルであり、2つのRは互いに結合して環を形成していてもよく、前記>N−R、>Si(−R)2、および>C(−R)2のRは、連結基または単結合を介して、B環および/またはD環と結合していてもよく、または、X1は、Z1と結合して部分構造(A20)となっていてもよく、
2は、>Si(−R)2、または>C(−R)2であり、前記>Si(−R)2、および>C(−R)2のRは独立して水素、アリール、ヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキルであり、2つのRは互いに結合して環を形成していてもよく、前記>Si(−R)2および>C(−R)2のRは連結基または単結合を介して、A環および/またはC環と結合していてもよく、
1は、B、P、P=O、P=S、Al、Ga、As、Si−R、Ge−R、またはSn−Rであり、前記Si−R、Ge−RおよびSn−RのRは置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいアルキルあるいは置換されていてもよいシクロアルキルであり、
C環は式(c1)〜式(c18)からなる群より選択される1つの式で表されるアリール環またはヘテロアリール環である。
式(2)におけるa環、b環、d環のそれぞれにおいて、NであるZ1は0〜2個であることが好ましく、0〜1個であることがより好ましく、0個であることがさらに好ましい。
また、式(2)におけるa環、b環、d環のそれぞれにおいて、Z1であるC−R1が複数あるとき、0〜2個のR1が水素以外の基であり、かつその他が水素であることが好ましく、0〜1個のR1が水素以外の基であり、かつその他が水素であることが好ましい。
式(2)におけるX1、X2、Y1、およびC環の好ましい範囲は式(1)におけるX1、X2、Y1、およびC環の好ましい範囲とそれぞれ同じである。
式(2)で表される多環芳香族化合物中の水素は、その全てまたは一部がシアノ、ハロゲンまたは重水素であってもよい。
式(1)で表される多環芳香族化合物の具体例としては、例えば以下の式(1−c1)、式(1−c2f)、式(1−c2b)、式(1−c3f)、式(1−c3b)、式(1−c4f)、式(1−c4b)、式(1−c5f)、式(1−c8f)、および式(1−c9f)からなる群より選択されるいずれかの式で表される多環芳香族化合物があげられる。
Figure 2021172658
Figure 2021172658
上記式において、Raはそれぞれ独立して、水素、置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリール、置換もしくは無置換のジアリールアミノ、置換もしくは無置換のジヘテロアリールアミノ、置換もしくは無置換のアリールヘテロアリールアミノ、置換もしくは無置換のジアルキルアミノ、置換もしくは無置換のジアリールボリル(2つのアリールは単結合もしくは連結基を介して結合していてもよい)、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のシクロアルキル、置換もしくは無置換のアルコキシ、置換もしくは無置換のアリールオキシ、または置換シリルである。
aはそれぞれ独立して水素または無置換のアルキルであることが好ましい。
1、X2、およびY1の定義および好ましい範囲は式(1)におけるそれらとそれぞれ同じである。また、LおよびZ2の定義および好ましい範囲は式(c1)〜式(c18)におけるそれらとそれぞれ同じである。
式(1−c1)、式(1−c2f)、式(1−c2b)、式(1−c3f)、式(1−c3b)、式(1−c4f)、式(1−c4b)、式(1−c5f)、式(1−c8f)、および式(1−c9f)それぞれで表される多環芳香族化合物中の水素は、その全てまたは一部がシアノ、ハロゲンまたは重水素であってもよい。
本発明の式(1)で表される多環芳香族化合物の更なる具体例としては、以下の化合物があげられる。下記構造式において、「Me」はメチル、「tBu」はt−ブチル、「tAm」はt−アミル、「D」は重水素を表す。なお、下記構造は一例である。
Figure 2021172658
Figure 2021172658
Figure 2021172658
Figure 2021172658
Figure 2021172658
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Figure 2021172658
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Figure 2021172658
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本発明の多環芳香族化合物は、以下の手順で製造することができる。
3.式(1)で表される多環芳香族化合物の製造方法
式(1)で表される多環芳香族化合物は、三ヨウ化ホウ素などを用いたタンデムボラフリーデルクラフツ反応(連続的な芳香族求電子置換反応、以下同様)によりYであるホウ素原子を導入する第1工程、C環部分に相当する例えばイソプロペニルなどのアルケニルが置換したアリールグリニャール試薬やアリールリチウムなどの有機金属化合物を反応させることにより中間体を製造する第2工程、この化合物に酸を作用させて環化反応させることにより式(1)で表される多環芳香族化合物を製造する第3工程を経て、製造することができる。なお、後述するスキーム(1)および(2)における構造式中の各符号の定義は式(1)における符号と同じである。
<第1工程および第2工程>
この工程を下記スキーム(1)により説明する。以下のとおり、三ヨウ化ホウ素などを用いたタンデムボラフリーデルクラフツ反応の後、「−C(−Ra)=−Ra'(−Ra' ')」が置換したアリールグリニャール試薬やアリールリチウムなどを反応させ、ホウ素原子上にC環部分を導入することで、中間体化合物を製造することができる。前駆体中間体は、ブッフバルト−ハートウィッグ反応といった一般的なアミノ化反応が利用することで、容易に合成することができる。
Figure 2021172658
上記スキーム(1)においては、第1工程であるタンデムボラフリーデルクラフツ反応において三ヨウ化ホウ素を用いる例を示したが、三塩化ホウ素や三臭化ホウ素、または三フッ化ホウ素・ジエチルエーテル錯体のような、その他のハロゲン化ホウ素試薬を用いることもできる。またこれら反応におけるタンデムボラフリーデルクラフツ反応を促進させるために、例えば三塩化アルミニウム、三塩化ガリウムまたは四塩化チタンのようなルイス酸を添加してもよい。
<第3工程>
第3工程は、上述するようにして製造した、中間体化合物に酸触媒を作用させてフリーデルクラフツ環化反応させることにより、式(1)で表される多環芳香族化合物を製造する工程である。この工程では、下記スキーム(2)に示すように、酸、特にSc(OTf)3のようなルイス酸によるフリーデルクラフツ反応によって、式(1)で表される多環芳香族化合物を製造することができる。
Figure 2021172658
ここで、二重結合部分でE/Z異性体が存在する。しかしながら上記スキーム(2)では、中間体化合物はE体であっても、またZ体であっても同一の式(1)で表される多環芳香族化合物を与える。故に、本明細書中の中間体化合物の表記においては、単一の異性体の構造式のみを記載しているが、中間体化合物の二重結合部分の形態としては、E体またはZ体、どちらの異性体であってもよく、かつE体とZ体の任意の比の混合物であってもよい。
スキーム(1)および(2)においては式(1)において、X2が>C(−R)2である場合の合成方法について述べたが、その他の場合にも、同様に環化前駆体となる官能基をあらかじめ導入した後に環化反応を行なうことで、同様に目的の多環芳香族化合物を得ることができる。
上記スキーム(2)で使用するルイス酸としては、一般的に知られているルイス酸が使用できるが、例えばAlCl3、AlBr3、AlF3、BF3・OEt2、BCl3、BBr3、GaCl3、GaBr3、InCl3、InBr3、In(OTf)3、SnCl4、SnBr4、AgOTf、ScCl3、Sc(OTf)3、ZnCl2、ZnBr2、Zn(OTf)2、MgCl2、MgBr2、Mg(OTf)2、LiOTf、NaOTf、KOTf、Me3SiOTf、Cu(OTf)2、CuCl2、YCl3、Y(OTf)3、TiCl4、TiBr4、ZrCl4、ZrBr4、FeCl3、FeBr3、CoCl3およびCoBr3などがあげられる。
上記スキーム(2)で使用する溶媒としては、一般的な有機溶媒が使用できるが、例えばジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、ベンゼン、トルエン、キシレンの各異性体およびその混合物、トリメチルベンゼンの各異性体およびその混合物、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、ベンゾトリフロリド、ジエチルエーテル、メチルターシャリーブチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル、ジフェニルエーテル、シクロペンタン、ペンタン、シクロヘキサン、ヘキサン、オクタン、ドデカンおよびデカリンなどがあげられ、またこれらの任意の比の混合物も用いることができる。
上述の製造法を適宜選択し、使用する原料も適宜選択することで、所望の位置に置換基を有する、式(1)で表される多環芳香族化合物を製造することができる。
また上述の製造法で、例えばハロゲン、トリフルオロメタンスルホン酸エステルのようなスルホン酸エステル、ボロン酸またはボロン酸エステルといった反応性置換基を有する化合物を製造した後に、鈴木カップリング、根岸カップリングまたは熊田カップリングのようなクロスカップリング反応、ブッフバルト−ハートウィッグ反応、ウルマン反応、ブチルリチウムなどを用いたハロゲン−金属交換反応やグリニャール反応のようなメタル化に続く求電子反応試薬との反応といった、一般的な反応を用いても、所望の位置に置換基を有する、式(1)で表される多環芳香族化合物を製造することができる。
ハロゲンを有する、式(1)で表される多環芳香族化合物は、ハロゲンを有する原料を使用することで製造できるほか、一般的に知られている反応を利用して当該多環芳香族化合物およびその多量体をハロゲン化することでも製造できる。
また、トリフルオロメタンスルホン酸エステルのようなスルホン酸エステルを有する、式(1)で表される多環芳香族化合物は、スルホン酸エステルを有する原料を使用することで製造できるほか、メトキシのようなアルコキシを有する原料を用いるなどして製造した化合物に、三臭化ホウ素やピリジン塩酸塩のような一般的に知られている試薬を反応させることでアルコキシを水酸基に変換した後に、無水トリフルオロメタンスルホン酸のような無水物やノナフルオロ−1−ブタンスルホニルフルオリドのようなハロゲン化物などを反応させることでも製造できる。
また、式(1)で表される多環芳香族化合物には、少なくとも一部の水素原子が重水素で置換されている化合物も含まれるが、このような多環芳香族化合物なども所望の箇所が重水素で置換されている原料を用いることで、上記と同様に製造することができる。
2.有機デバイス
本発明の多環芳香族化合物は、有機デバイス用材料として用いることができる。有機デバイスとしては、例えば、有機電界発光素子、有機電界効果トランジスタまたは有機薄膜太陽電池などがあげられる。
2−1.有機電界発光素子
2−1−1.有機電界発光素子の構造
図1は、有機EL素子の一例を示す概略断面図である。
図1に示された有機EL素子100は、基板101と、基板101上に設けられた陽極102と、陽極102の上に設けられた正孔注入層103と、正孔注入層103の上に設けられた正孔輸送層104と、正孔輸送層104の上に設けられた発光層105と、発光層105の上に設けられた電子輸送層106と、電子輸送層106の上に設けられた電子注入層107と、電子注入層107の上に設けられた陰極108とを有する。
なお、有機EL素子100は、作製順序を逆にして、例えば、基板101と、基板101上に設けられた陰極108と、陰極108の上に設けられた電子注入層107と、電子注入層107の上に設けられた電子輸送層106と、電子輸送層106の上に設けられた発光層105と、発光層105の上に設けられた正孔輸送層104と、正孔輸送層104の上に設けられた正孔注入層103と、正孔注入層103の上に設けられた陽極102とを有する構成としてもよい。
上記各層すべてがなくてはならないわけではなく、最小構成単位を陽極102と発光層105と陰極108とからなる構成として、正孔注入層103、正孔輸送層104、電子輸送層106、電子注入層107は任意に設けられる層である。また、上記各層は、それぞれ単一層からなってもよいし、複数層からなってもよい。
有機EL素子を構成する層の態様としては、上述する「基板/陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極」の構成態様の他に、「基板/陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極」、「基板/陽極/正孔注入層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極」、「基板/陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極」、「基板/陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極」、「基板/陽極/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極」、「基板/陽極/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極」、「基板/陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極」、「基板/陽極/正孔注入層/発光層/電子注入層/陰極」、「基板/陽極/正孔注入層/発光層/電子輸送層/陰極」、「基板/陽極/発光層/電子輸送層/陰極」、「基板/陽極/発光層/電子注入層/陰極」の構成態様であってもよい。
2−1−2.有機電界発光素子における発光層
本発明の多環芳香族化合物は、有機電界発光素子における、いずれか1つ以上の有機層を形成する材料として用いられることが好ましく、発光層を形成する材料として用いられることがより好ましい。
発光層105は、電界を与えられた電極間において、陽極102から注入された正孔と、陰極108から注入された電子とを再結合させることにより発光する層である。発光層105を形成する材料としては、正孔と電子との再結合によって励起されて発光する化合物(発光性化合物)であればよく、安定な薄膜形状を形成することができ、かつ、固体状態で強い発光(蛍光)効率を示す化合物であることが好ましい。
本発明の多環芳香族化合物は、発光層用の材料として用いることができ、ドーパント材料として用いてもよく、ホスト材料として用いてもよい。
なお、ドーパントとしては、アシスティングドーパントとエミッティングドーパントとを併用して用いる例があるが、本明細書において、単に、「ドーパント」と記載した場合には、単独で用いる発光ドーパントのことを指す。
発光層は単一層でも複数層からなってもどちらでもよく、それぞれ発光層用材料(ホスト材料、ドーパント材料)により形成される。ホスト材料とドーパント材料は、それぞれ一種類であっても、複数の組み合わせであっても、いずれでもよい。ドーパント材料はホスト材料の全体に含まれていても、部分的に含まれていても、いずれであってもよい。ドーピング方法としては、ホスト材料との共蒸着法によって形成することができるが、ホスト材料と予め混合してから同時に蒸着してもよい。
ホスト材料の使用量はホスト材料の種類によって異なり、そのホスト材料の特性に合わせて決めればよい。ホスト材料の使用量の目安は、好ましくは発光層用材料全体の50〜99.999質量%であり、より好ましくは80〜99.95質量%であり、さらに好ましくは90〜99.9質量%である。
ドーパント材料の使用量はドーパント材料の種類によって異なり、そのドーパント材料の特性に合わせて決めればよい。ドーパントの使用量の目安は、好ましくは発光層用材料全体の0.001〜50質量%であり、より好ましくは0.05〜20質量%であり、さらに好ましくは0.1〜10質量%である。上記の範囲であれば、例えば、濃度消光現象を防止できるという点で好ましい。
ホスト材料
ホスト材料としては、以前から発光体として知られていたアントラセン、ピレン、ジベンゾクリセンまたはフルオレンなどの縮合環誘導体、ビススチリルアントラセン誘導体やジスチリルベンゼン誘導体などのビススチリル誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、フルオレン誘導体、ベンゾフルオレン誘導体、ジベンゾクリセン系化合物などがあげられる。
また、ホスト材料としては、例えば、下記式(H1)、(H2)および(H3)のいずれかで表される化合物を用いることができる。
Figure 2021172658
式(H1)、(H2)および(H3)中、L1は炭素数6〜24のアリーレン、炭素数2〜24のヘテロアリーレン、炭素数6〜24のヘテロアリーレンアリーレンおよび炭素数6〜24のアリーレンヘテロアリーレンアリーレンであり、炭素数6〜16のアリーレンが好ましく、炭素数6〜12のアリーレンがより好ましく、炭素数6〜10のアリーレンが特に好ましく、具体的には、ベンゼン環、ビフェニル環、テルフェニル環およびフルオレン環などの二価の基があげられる。ヘテロアリーレンとしては、炭素数2〜24のヘテロアリーレンが好ましく、炭素数2〜20のヘテロアリーレンがより好ましく、炭素数2〜15のヘテロアリーレンがさらに好ましく、炭素数2〜10のヘテロアリーレンが特に好ましく、具体的には、ピロール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、ピラゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピラジン環、トリアジン環、インドール環、イソインドール環、1H−インダゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、1H−ベンゾトリアゾール環、キノリン環、イソキノリン環、シンノリン環、キナゾリン環、キノキサリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、プリン環、プテリジン環、カルバゾール環、アクリジン環、フェノキサチイン環、フェノキサジン環、フェノチアジン環、フェナジン環、インドリジン環、フラン環、ベンゾフラン環、イソベンゾフラン環、ジベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ジベンゾチオフェン環、フラザン環、オキサジアゾール環およびチアントレン環などの二価の基があげられる。
上記各式で表される化合物における少なくとも1つの水素は、炭素数1〜6のアルキル、シアノ、ハロゲンまたは重水素で置換されていてもよい。
好ましい具体例としては、以下に列挙したいずれかの構造式で表される化合物があげられる。なお、以下に列挙した構造式においては、少なくとも1つの水素が、ハロゲン、シアノ、炭素数1〜4のアルキル(例えばメチルやt−ブチル)、フェニルまたはナフチルなどで置換されていてもよい。
Figure 2021172658
Figure 2021172658
Figure 2021172658
Figure 2021172658
<アントラセン系化合物>
ホストとしてのアントラセン系化合物は、例えば下記式(3−H)で表される化合物である。
Figure 2021172658
式(3−H)中、
XおよびAr4は、それぞれ独立して、水素、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいジアリールアミノ、置換されていてもよいジヘテロアリールアミノ、置換されていてもよいアリールヘテロアリールアミノ、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいシクロアルキル、置換されていてもよいアルケニル、置換されていてもよいアルコキシ、置換されていてもよいアリールオキシ、置換されていてもよいアリールチオまたは置換されていてもよいシリルであり、全てのXおよびAr4は同時に水素になることはなく、
式(3−H)で表される化合物における少なくとも1つの水素はハロゲン、シアノ、重水素または置換されていてもよいヘテロアリールで置換されていてもよい。
また、式(3−H)で表される構造を単位構造として多量体(好ましくは二量体)を形成してもよい。この場合、例えば式(3−H)で表される単位構造同士がXを介して結合する形態があげられ、このXとしては単結合、アリーレン(フェニレン、ビフェニレンおよびナフチレン等)およびヘテロアリーレン(ピリジン環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、カルバゾール環、ベンゾカルバゾール環およびフェニル置換カルバゾール環などが二価の結合価を有する基)等があげられる。
上記アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルコキシ、アリールオキシ、アリールチオまたはシリルの詳細は、以下の好ましい態様の欄で説明する。また、これらへの置換基としては、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルコキシ、アリールオキシ、アリールチオまたはシリルなどがあげられ、これらの詳細も以下の好ましい態様の欄で説明する。
上記アントラセン系化合物の好ましい態様を以下に説明する。下記構造における符号の定義は上述する定義と同じである。
Figure 2021172658
式(3−H)では、Xはそれぞれ独立して式(3−X1)、式(3−X2)または式(3−X3)で表される基であり、式(3−X1)、式(3−X2)または式(3−X3)で表される基は*において式(3−H)のアントラセン環と結合する。好ましくは、2つのXが同時に式(3−X3)で表される基になることはない。より好ましくは2つのXが同時に式(3−X2)で表される基になることもない。
また、式(3−H)で表される構造を単位構造として多量体(好ましくは二量体)を形成してもよい。この場合、例えば式(3−H)で表される単位構造同士がXを介して結合する形態があげられ、このXとしては単結合、アリーレン(フェニレン、ビフェニレンおよびナフチレン等)およびヘテロアリーレン(ピリジン環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、カルバゾール環、ベンゾカルバゾール環およびフェニル置換カルバゾール環などが二価の結合価を有する基)等があげられる。
式(3−X1)および式(3−X2)におけるナフチレン部位は1つのベンゼン環で縮合されていてもよい。このようにして縮合した構造は以下のとおりである。
Figure 2021172658
Ar1およびAr2は、それぞれ独立して、水素、フェニル、ビフェニリル、テルフェニリル、クアテルフェニリル、ナフチル、フェナントリル、フルオレニル、ベンゾフルオレニル、クリセニル、トリフェニレニル、ピレニリル、または、式(A)で表される基(カルバゾリル、ベンゾカルバゾリルおよびフェニル置換カルバゾリルも含む)である。なお、Ar1またはAr2が後述の式(A)で表される基である場合は、式(A)で表される基はその*において式(3−X1)または式(3−X2)中のナフタレン環と結合する。
Ar3は、フェニル、ビフェニリル、テルフェニリル、クアテルフェニリル、ナフチル、フェナントリル、フルオレニル、ベンゾフルオレニル、クリセニル、トリフェニレニル、ピレニリル、または、式(A)で表される基(カルバゾリル、ベンゾカルバゾリルおよびフェニル置換カルバゾリルも含む)である。なお、Ar3が式(A)で表される基である場合は、式(A)で表される基はその*において式(3−X3)中の直線で表される単結合と結合する。すなわち、式(3−H)のアントラセン環と式(A)で表される基が直接結合する。
また、Ar3は置換基を有していてもよく、Ar3における少なくとも1つの水素はさらに炭素数1〜4のアルキル、炭素数5〜10のシクロアルキル、フェニル、ビフェニリル、テルフェニリル、ナフチル、フェナントリル、フルオレニル、クリセニル、トリフェニレニル、ピレニリル、または、式(A)で表される基(カルバゾリルおよびフェニル置換カルバゾリルも含む)で置換されていてもよい。なお、Ar3が有する置換基が式(A)で表される基である場合は、式(A)で表される基はその*において式(3−X3)中のAr3と結合する。
Ar4は、それぞれ独立して、水素、フェニル、ビフェニリル、ターフェニリル、ナフチル、または炭素数1〜4のアルキル(メチル、エチル、t−ブチルなど)および/もしくは炭素数5〜10のシクロアルキルで置換されているシリルである。
シリルに置換する炭素数1〜4のアルキルは、メチル、エチル、プロピル、i−プロピル、ブチル、sec−ブチル、t−ブチル、シクロブチルなどがあげられ、シリルにおける3つの水素が、それぞれ独立して、これらのアルキルで置換されている。
具体的な「炭素数1〜4のアルキルで置換されているシリル」としては、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリプロピルシリル、トリi−プロピルシリル、トリブチルシリル、トリsec−ブチルシリル、トリt−ブチルシリル、エチルジメチルシリル、プロピルジメチルシリル、i−プロピルジメチルシリル、ブチルジメチルシリル、sec−ブチルジメチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、メチルジエチルシリル、プロピルジエチルシリル、i−プロピルジエチルシリル、ブチルジエチルシリル、sec−ブチルジエチルシリル、t−ブチルジエチルシリル、メチルジプロピルシリル、エチルジプロピルシリル、ブチルジプロピルシリル、sec−ブチルジプロピルシリル、t−ブチルジプロピルシリル、メチルジi−プロピルシリル、エチルジi−プロピルシリル、ブチルジi−プロピルシリル、sec−ブチルジi−プロピルシリル、t−ブチルジi−プロピルシリルなどがあげられる。
シリルに置換する炭素数5〜10のシクロアルキルは、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、ノルボルニル(ビシクロ[2.2.1]ヘプチル)、ビシクロ[1.1.1]ペンチル、ビシクロ[2.1.0]ペンチル、ビシクロ[2.1.1]ヘキシル、ビシクロ[3.1.0]ヘキシル、ビシクロ[2.2.2]オクチル、アダマンチル、デカヒドロナフタレニル、デカヒドロアズレニルなどがあげられ、シリルにおける3つの水素が、それぞれ独立して、これらのシクロアルキルで置換されている。
具体的な「炭素数5〜10のシクロアルキルで置換されているシリル」としては、トリシクロペンチルシリル、トリシクロヘキシルシリルなどがあげられる。
置換されているシリルとしては、2つのアルキルと1つのシクロアルキルが置換したジアルキルシクロアルキルシリルと、1つのアルキルと2つのシクロアルキルが置換したアルキルジシクロアルキルシリルもあり、置換するアルキルおよびシクロアルキルの具体例としては上述した基があげられる。
また、式(3−H)で表されるアントラセン系化合物の化学構造中の水素は式(A)で表される基で置換されていてもよい。式(A)で表される基で置換される場合は、式(A)で表される基はその*において式(3−H)で表される化合物における少なくとも1つの水素と置換する。
式(A)で表される基は、式(3−H)で表されるアントラセン系化合物が有しうる置換基の1つである。
Figure 2021172658
式(A)中、Yは−O−、−S−または>N−R29であり、R21〜R28はそれぞれ独立して水素、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいシクロアルキル、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいアルコキシ、置換されていてもよいアリールオキシ、置換されていてもよいアリールチオ、トリアルキルシリル、トリシクロアルキルシリル、ジアルキルシクロアルキルシリル、アルキルジシクロアルキルシリル、置換されていてもよいアミノ、ハロゲン、ヒドロキシまたはシアノであり、R21〜R28のうち隣接する基は互いに結合して炭化水素環、アリール環またはヘテロアリール環を形成していてもよく、R29は水素または置換されていてもよいアリールである。
21〜R28における「置換されていてもよいアルキル」の「アルキル」としては、直鎖および分岐鎖のいずれでもよく、例えば、炭素数1〜24の直鎖アルキルまたは炭素数3〜24の分岐鎖アルキルがあげられる。炭素数1〜18のアルキル(炭素数3〜18の分岐鎖アルキル)が好ましく、炭素数1〜12のアルキル(炭素数3〜12の分岐鎖アルキル)がより好ましく、炭素数1〜6のアルキル(炭素数3〜6の分岐鎖アルキル)がさらに好ましく、炭素数1〜4のアルキル(炭素数3〜4の分岐鎖アルキル)が特に好ましい。
具体的な「アルキル」としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、t−ペンチル、n−ヘキシル、1−メチルペンチル、4−メチル−2−ペンチル、3,3−ジメチルブチル、2−エチルブチル、n−ヘプチル、1−メチルヘキシル、n−オクチル、t−オクチル、1−メチルヘプチル、2−エチルヘキシル、2−プロピルペンチル、n−ノニル、2,2−ジメチルヘプチル、2,6−ジメチル−4−ヘプチル、3,5,5−トリメチルヘキシル、n−デシル、n−ウンデシル、1−メチルデシル、n−ドデシル、n−トリデシル、1−ヘキシルヘプチル、n−テトラデシル、n−ペンタデシル、n−ヘキサデシル、n−ヘプタデシル、n−オクタデシル、n−エイコシルなどがあげられる。
21〜R28における「置換されていてもよいシクロアルキル」の「シクロアルキル」としては、炭素数3〜24のシクロアルキル、炭素数3〜20のシクロアルキル、炭素数3〜16のシクロアルキル、炭素数3〜14のシクロアルキル、炭素数5〜10のシクロアルキル、炭素数5〜8のシクロアルキル、炭素数5〜6のシクロアルキル、炭素数5のシクロアルキルなどがあげられる。
具体的な「シクロアルキル」としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、およびこれらの炭素数1〜4のアルキル(特にメチル)置換体や、ノルボルニル(ビシクロ[2.2.1]ヘプチル)、ビシクロ[1.1.0]ブチル、ビシクロ[1.1.1]ペンチル、ビシクロ[2.1.0]ペンチル、ビシクロ[2.1.1]ヘキシル、ビシクロ[3.1.0]ヘキシル、ビシクロ[2.2.2]オクチル、アダマンチル、ジアマンチル、デカヒドロナフタレニル、デカヒドロアズレニルなどがあげられる。
21〜R28における「置換されていてもよいアリール」の「アリール」としては、例えば、炭素数6〜30のアリールがあげられ、炭素数6〜16のアリールが好ましく、炭素数6〜12のアリールがより好ましく、炭素数6〜10のアリールが特に好ましい。
具体的な「アリール」としては、単環系であるフェニル、二環系であるビフェニリル、縮合二環系であるナフチル、三環系であるテルフェニリル(m−テルフェニリル、o−テルフェニリル、p−テルフェニリル)、縮合三環系である、アセナフチレニル、フルオレニル、フェナレニル、フェナントレニル、縮合四環系であるトリフェニレニル、ピレニル、ナフタセニル、縮合五環系であるペリレニル、ペンタセニルなどがあげられる。
21〜R28における「置換されていてもよいヘテロアリール」の「ヘテロアリール」としては、例えば、炭素数2〜30のヘテロアリールがあげられ、炭素数2〜25のヘテロアリールが好ましく、炭素数2〜20のヘテロアリールがより好ましく、炭素数2〜15のヘテロアリールがさらに好ましく、炭素数2〜10のヘテロアリールが特に好ましい。また、ヘテロアリールとしては、例えば環構成原子として炭素以外に酸素、硫黄および窒素から選ばれるヘテロ原子を1〜5個含有する複素環などがあげられる。
具体的な「ヘテロアリール」としては、例えば、ピロリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピラジニル、トリアジニル、インドリル、イソインドリル、1H−インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、1H−ベンゾトリアゾリル、キノリル、イソキノリル、シンノリル、キナゾリル、キノキサリニル、フタラジニル、ナフチリジニル、プリニル、プテリジニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェノキサチイニル、フェノキサジニル、フェノチアジニル、フェナジニル、インドリジニル、フリル、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、ジベンゾフラニル、チエニル、ベンゾ[b]チエニル、ジベンゾチエニル、フラザニル、オキサジアゾリル、チアントレニル、ナフトベンゾフラニル、ナフトベンゾチエニルなどがあげられる。
21〜R28における「置換されていてもよいアルコキシ」の「アルコキシ」としては、例えば、炭素数1〜24の直鎖または炭素数3〜24の分岐鎖のアルコキシがあげられる。炭素数1〜18のアルコキシ(炭素数3〜18の分岐鎖のアルコキシ)が好ましく、炭素数1〜12のアルコキシ(炭素数3〜12の分岐鎖のアルコキシ)がより好ましく、炭素数1〜6のアルコキシ(炭素数3〜6の分岐鎖のアルコキシ)がさらに好ましく、炭素数1〜4のアルコキシ(炭素数3〜4の分岐鎖のアルコキシ)が特に好ましい。
具体的な「アルコキシ」としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、s−ブトキシ、t−ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシなどがあげられる。
21〜R28における「置換されていてもよいアリールオキシ」の「アリールオキシ」としては、−OH基の水素がアリールで置換された基であり、このアリールは上述したR21〜R28における「アリール」として説明した基を引用することができる。
21〜R28における「置換されていてもよいアリールチオ」の「アリールチオ」としては、−SH基の水素がアリールで置換された基であり、このアリールは上述したR21〜R28における「アリール」として説明した基を引用することができる。
21〜R28における「トリアルキルシリル」としては、シリル基における3つの水素がそれぞれ独立してアルキルで置換された基があげられ、このアルキルは上述したR21〜R28における「アルキル」として説明した基を引用することができる。置換するのに好ましいアルキルは、炭素数1〜4のアルキルであり、具体的にはメチル、エチル、プロピル、i−プロピル、ブチル、sec−ブチル、t−ブチル、シクロブチルなどがあげられる。
具体的な「トリアルキルシリル」としては、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリプロピルシリル、トリi−プロピルシリル、トリブチルシリル、トリsec−ブチルシリル、トリt−ブチルシリル、エチルジメチルシリル、プロピルジメチルシリル、i−プロピルジメチルシリル、ブチルジメチルシリル、sec−ブチルジメチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、メチルジエチルシリル、プロピルジエチルシリル、i−プロピルジエチルシリル、ブチルジエチルシリル、sec−ブチルジエチルシリル、t−ブチルジエチルシリル、メチルジプロピルシリル、エチルジプロピルシリル、ブチルジプロピルシリル、sec−ブチルジプロピルシリル、t−ブチルジプロピルシリル、メチルジi−プロピルシリル、エチルジi−プロピルシリル、ブチルジi−プロピルシリル、sec−ブチルジi−プロピルシリル、t−ブチルジi−プロピルシリルなどがあげられる。
21〜R28における「トリシクロアルキルシリル」としては、シリル基における3つの水素がそれぞれ独立してシクロアルキルで置換された基があげられ、このシクロアルキルは上述したR21〜R28における「シクロアルキル」として説明した基を引用することができる。置換するのに好ましいシクロアルキルは、炭素数5〜10のシクロアルキルであり、具体的にはシクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、ビシクロ[1.1.1]ペンチル、ビシクロ[2.1.0]ペンチル、ビシクロ[2.1.1]ヘキシル、ビシクロ[3.1.0]ヘキシル、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル、ビシクロ[2.2.2]オクチル、アダマンチル、デカヒドロナフタレニル、デカヒドロアズレニルなどがあげられる。
具体的な「トリシクロアルキルシリル」としては、トリシクロペンチルシリル、トリシクロヘキシルシリルなどがあげられる。
2つのアルキルと1つのシクロアルキルが置換したジアルキルシクロアルキルシリルと、1つのアルキルと2つのシクロアルキルが置換したアルキルジシクロアルキルシリルの具体例としては、上述した具体的なアルキルおよびシクロアルキルから選択される基が置換したシリルがあげられる。
21〜R28における「置換されていてもよいアミノ」の「置換されたアミノ」としては、例えば2つの水素がアリールやヘテロアリールで置換されたアミノがあげられる。2つの水素がアリールで置換されたアミノがジアリール置換アミノであり、2つの水素がヘテロアリールで置換されたアミノがジヘテロアリール置換アミノであり、2つの水素がアリールとヘテロアリールで置換されたアミノがアリールヘテロアリール置換アミノである。このアリールやヘテロアリールは上述したR21〜R28における「アリール」や「ヘテロアリール」として説明した基を引用することができる。
具体的な「置換されたアミノ」としては、ジフェニルアミノ、ジナフチルアミノ、フェニルナフチルアミノ、ジピリジルアミノ、フェニルピリジルアミノ、ナフチルピリジルアミノなどがあげられる。
21〜R28における「ハロゲン」としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素があげられる。
21〜R28として説明した基のうち、いくつかは上述するように置換されてもよく、この場合の置換基としてはアルキル、シクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールがあげられる。このアルキル、シクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールは上述したR21〜R28における「アルキル」、「シクロアルキル」、「アリール」または「ヘテロアリール」として説明した基を引用することができる。
Yとしての「>N−R29」におけるR29は水素または置換されていてもよいアリールであり、このアリールとしては上述したR21〜R28における「アリール」として説明した基を引用することができ、またその置換基としてはR21〜R28に対する置換基として説明した基を引用することができる。
21〜R28のうち隣接する基は互いに結合して炭化水素環、アリール環またはヘテロアリール環を形成していてもよい。環を形成しない場合が下記式(A−1)で表される基であり、環を形成した場合としては例えば下記式(A−2)〜式(A−14)で表される基があげられる。なお、式(A−1)〜式(A−14)のいずれかで表される基における少なくとも1つの水素はアルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アリールオキシ、アリールチオ、トリアルキルシリル、トリシクロアルキルシリル、ジアルキルシクロアルキルシリル、アルキルジシクロアルキルシリル、ジアリール置換アミノ、ジヘテロアリール置換アミノ、アリールヘテロアリール置換アミノ、ハロゲン、ヒドロキシまたはシアノで置換されていてもよい。
Figure 2021172658
隣接する基が互いに結合してできた環としては、炭化水素環であれば例えばシクロヘキサン環があげられ、アリール環やヘテロアリール環としては上述したR21〜R28における「アリール」や「ヘテロアリール」で説明した環構造があげられ、これらの環は式(A−1)における1つまたは2つのベンゼン環と縮合するように形成される。
式(A)で表される基としては、例えば式(A−1)〜式(A−14)のいずれかで表される基があげられ、式(A−1)〜式(A−5)および式(A−12)〜式(A−14)のいずれかで表される基が好ましく、式(A−1)〜式(A−4)のいずれかで表される基がより好ましく、式(A−1)、式(A−3)および式(A−4)のいずれかで表される基がさらに好ましく、式(A−1)で表される基が特に好ましい。
式(A)で表される基は、式(A)中の*において、式(3−X1)または式(3−X2)中のナフタレン環、式(3−X3)中の単結合、式(3−X3)中のAr3と結合し、また式(3−H)で表される化合物における少なくとも1つの水素と置換することは上述したとおりだが、これらの結合形態の中でも式(3−X1)または式(3−X2)中のナフタレン環、式(3−X3)中の単結合および/または式(3−X3)中のAr3と結合した形態が好ましい。
また、式(A)で表される基の構造中で、式(3−X1)または式(3−X2)中のナフタレン環、式(3−X3)中の単結合、式(3−X3)中のAr3が結合する位置、また、式(A)で表される基の構造中で、式(3−H)で表される化合物における少なくとも1つの水素と置換する位置は、式(A)の構造中のいずれの位置であってもよく、例えば、式(A)の構造中の2つのベンゼン環のいずれか、式(A)の構造中のR21〜R28のうち隣接する基が互いに結合して形成されたいずれかの環、または式(A)の構造中のYとしての「>N−R29」におけるR29中のいずれかの位置で結合することができる。
式(A)で表される基としては、例えば以下の基があげられる。式中のYおよび*は上記と同じ定義である。
Figure 2021172658
Figure 2021172658
また、式(3−H)で表されるアントラセン系化合物の化学構造中の水素は、その全てまたは一部が重水素であってもよい。
ホストとしてのアントラセン系化合物は、例えば下記式(3−H−2)で表される化合物でもよい。
Figure 2021172658
式(3−H−2)中、Arcは、置換されていてもよいアリールまたは置換されていてもよいヘテロアリールであり、Rcは、水素、アルキル、またはシクロアルキルであり、Ar11、Ar12、Ar13、Ar14、Ar15、Ar16、Ar17、およびAr18は、それぞれ独立して、水素、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいジアリールアミノ、置換されていてもよいジヘテロアリールアミノ、置換されていてもよいアリールヘテロアリールアミノ、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいシクロアルキル、置換されていてもよいアルケニル、置換されていてもよいアルコキシ、置換されていてもよいアリールオキシ、置換されていてもよいアリールチオ、または置換されていてもよいシリルであり、式(1)で表される化合物における少なくとも1つの水素はハロゲン、シアノ、または重水素で置換されていてもよい。
式(3−H−2)中の、「置換されていてもよいアリール」、「置換されていてもよいヘテロアリール」、「置換されていてもよいジアリールアミノ」、「置換されていてもよいジヘテロアリールアミノ」、「置換されていてもよいアリールヘテロアリールアミノ」、「置換されていてもよいアルキル」、「置換されていてもよいシクロアルキル」、「置換されていてもよいアルケニル」、「置換されていてもよいアルコキシ」、「置換されていてもよいアリールオキシ」、「置換されていてもよいアリールチオ」、または「置換されていてもよいシリル」の定義は上記式(3−H)でされたものと同様である。
「置換されていてもよいアリール」としては、下記式(1−X1)〜式(1−X7)のいずれかで表される基であることも好ましい。
Figure 2021172658
式(1−X1)〜式(1−X7)において、*は結合位置を示す。
式(1−X1)〜式(1−X3)において、Ar21、Ar22、およびAr23は、それぞれ独立して、水素、フェニル、ビフェニリル、テルフェニリル、クアテルフェニリル、ナフチル、フェナントリル、フルオレニル、ベンゾフルオレニル、クリセニル、トリフェニレニル、ピレニル、アントラセニル、または後述の式(A)で表される基である。
式(1−X4)〜式(1−X7)において、Ar24、Ar25、Ar26、Ar27およびAr28は、それぞれ独立して、水素、フェニル、ビフェニリル、テルフェニリル、ナフチル、フェナントリル、フルオレニル、クリセニル、トリフェニレニル、ピレニル、または後述の式(A)で表される基である。
また、式(1−X1)〜式(1−X7)で表される基のそれぞれにおけるいずれか1つまたは2つ以上の水素は、炭素数1〜6のアルキル(好ましくはメチルまたはt−ブチル)で置換されていてもよい。
さらに、「置換されていてもよいアリール」の好ましい例としては、フェニル、ビフェニリル、テルフェニリル、ナフチル、フェナントリル、フルオレニル、クリセニル、トリフェニレニル、ピレニル、および後述の式(A)で表される基からなる群より選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよい、テルフェニリル(特に、m−テルフェニル−5’−リル)があげられる。
「置換されていてもよいヘテロアリール」としては、後述の式(A)で表される基もあげられる。
式(1)で表される化合物における少なくとも1つの水素はハロゲン、シアノ、または重水素で置換されていてもよい。この場合の「ハロゲン」としては、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素があげられる。特に、式(1)で表される化合物における全ての水素が重水素で置換された化合物が好ましい。
式(1)中、Rcは水素、アルキル、またはシクロアルキルであり、水素、メチル、またはt−ブチルであることが好ましく、水素であることがより好ましい。
式(1)中、Ar11〜Ar18の少なくとも2つが置換されていてもよいアリールまたは置換されていてもよいヘテロアリールであることが好ましい。すなわち、式(1)で表されるアントラセン系化合物は、アントラセン環に、置換されていてもよいアリールおよび置換されていてもよいヘテロアリールからなる群より選択される置換基が少なくとも3つ結合した構造を有することが好ましい。
式(1)で表されるアントラセン系化合物は、Ar11〜Ar18の2つが置換されていてもよいアリールまたは置換されていてもよいヘテロアリールであり、他の6つが水素、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいシクロアルキル、置換されていてもよいアルケニル、または置換されていてもよいアルコキシであることがより好ましい。すなわち、式(1)で表されるアントラセン系化合物は、置換されていてもよいアリールおよび置換されていてもよいヘテロアリールからなる群より選択される置換基が、アントラセン環に3つ結合した構造を有することがより好ましい。
式(1)で表されるアントラセン系化合物は、Ar11〜Ar18のいずれか2つが置換されていてもよいアリールまたは置換されていてもよいヘテロアリールであり、他の6つが水素、メチル、またはt−ブチルであることがより好ましい。
さらに、式(1)中、Rcが水素であり、かつAr11〜Ar18のいずれか6つが水素であることが好ましい。
式(1)で表されるアントラセン系化合物は下記式(1A)、(1B)、(1C)、(1D)、または(1E)で表されるアントラセン系化合物であることが好ましい。
Figure 2021172658
式(1A)、(1B)、(1C)、(1D)または(1E)中、Arc’、Ar11’、Ar12’、Ar13’、Ar14’、Ar15’、Ar17’、およびAr18’はそれぞれ独立してフェニル、ビフェニリル、テルフェニリル、クアテルフェニリル、ナフチル、フェナントリル、フルオレニル、ベンゾフルオレニル、クリセニル、トリフェニレニル、ピレニル、または、後述の式(A)で表される基であり、これらの基における少なくとも1つの水素は、フェニル、ビフェニリル、テルフェニリル、クアテルフェニリル、ナフチル、フェナントリル、フルオレニル、ベンゾフルオレニル、クリセニル、トリフェニレニル、ピレニル、または、後述の式(A)で表される基で置換されていてもよい。ここで、フルオレニルおよびベンゾフルオレニルにおけるメチレンの水素がいずれもフェニルで置換されているときは、これらのフェニルは互いに単結合で結合していてもよい。Arc’、Ar11’、Ar12’、Ar13’、Ar14’、Ar15’、Ar17’、およびAr18’が結合していないアントラセン環の炭素原子には水素の代わりにメチルまたはt−ブチルが結合していてもよい。
Arc’、Ar11’、Ar12’、Ar13’、Ar14’、Ar15’、Ar17’、およびAr18’が、それぞれ置換もしくは無置換のフェニルまたは置換もしくは無置換のナフチルであるときは、上記の式(1−X1)〜式(1−X7)のいずれかで表される基であることが好ましい。
Arc’、Ar11’、Ar12’、Ar13’、Ar14’、Ar15’、Ar17’、およびAr18’はそれぞれ独立してフェニル、ビフェニリル(特に、ビフェニル−2−イルまたはビフェニル−4−イル)、テルフェニリル(特に、m−テルフェニル−5’−リル)、ナフチル、フェナントリル、フルオレニル、または、後述の式(A−1)〜式(A−4)のいずれかで表される基であることがより好ましく、このとき、これらの基における少なくとも1つの水素は、フェニル、ビフェニリル、ナフチル、フェナントリル、フルオレニル、または、後述の式(A−1)〜式(A−4)のいずれかで表される基で置換されていてもよい。
また、式(1A)、(1B)、(1C)、(1D)、または(1E)で表される化合物における少なくとも1つの水素はハロゲン、シアノ、または重水素で置換されていてもよい。
以下、前述の式(A)で表される基について説明する。
Figure 2021172658
式(A)中、Yは−O−、−S−、または>N−R29である。また、式(A)中、R21〜R28はそれぞれ独立して、水素、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいシクロアルキル、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいアルコキシ、置換されていてもよいアリールオキシ、置換されていてもよいアリールチオ、トリアルキルシリル、トリシクロアルキルシリル、ジアルキルシクロアルキルシリル、アルキルジシクロアルキルシリル、置換されていてもよいアミノ、ハロゲン、ヒドロキシまたはシアノであり、R21〜R28のうち隣接する基は互いに結合して炭化水素環、アリール環、またはヘテロアリール環を形成していてもよく、R29は水素または置換されていてもよいアリールである。
式(A)で表される基は、式(A)のいずれかの位置の1つの水素を除いて得られる基であり、*が該位置を示す。
式(A)中のR21〜R28における「置換されていてもよいアルキル」の「アルキル」としては、直鎖および分岐鎖のいずれでもよく、例えば、炭素数1〜24の直鎖アルキルまたは炭素数3〜24の分岐鎖アルキルがあげられる。炭素数1〜18のアルキル(炭素数3〜18の分岐鎖アルキル)が好ましく、炭素数1〜12のアルキル(炭素数3〜12の分岐鎖アルキル)がより好ましく、炭素数1〜6のアルキル(炭素数3〜6の分岐鎖アルキル)がさらに好ましく、炭素数1〜4のアルキル(炭素数3〜4の分岐鎖アルキル)が特に好ましい。
式(A)中のR21〜R28として説明した基のうち、いくつかは上述するように置換されてもよく、この場合の置換基としてはアルキル、アリールまたはヘテロアリールがあげられる。このアルキル、アリールまたはヘテロアリールは上述したR21〜R28における「アルキル」、「アリール」または「ヘテロアリール」として説明した基を引用することができる。
式(A)中のYとしての「>N−R29」におけるR29は水素または置換されていてもよいアリールであり、このアリールとしては上述したR21〜R28における「アリール」として説明した基を引用することができ、またその置換基としてはR21〜R28に対する置換基として説明した基を引用することができる。
式(A)中のR21〜R28のうち隣接する基は互いに結合して炭化水素環、アリール環またはヘテロアリール環を形成していてもよい。環を形成しない場合が下記式(A−1)で表される基であり、環を形成した場合としては例えば下記式(A−2)〜式(A−11)で表される基があげられる。なお、式(A−1)〜式(A−11)のいずれかで表される基における少なくとも1つの水素はアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アリールオキシ、アリールチオ、トリアルキルシリル、ジアリール置換アミノ、ジヘテロアリール置換アミノ、アリールヘテロアリール置換アミノ、ハロゲン、ヒドロキシまたはシアノで置換されていてもよく、これらは上述したR21〜R28における各基として説明した基を引用することができる。
隣接する基が互いに結合してできた環としては、炭化水素環であれば例えばシクロヘキサン環があげられ、アリール環やヘテロアリール環であれば上述したR21〜R28における「アリール」や「ヘテロアリール」で説明した環構造があげられ、これらの環は式(A−1)における1つまたは2つのベンゼン環と縮合するように形成される。
式(A)で表される基としては、例えば下記式(A−1)〜式(A−11)のいずれかで表される基があげられ、式(A−1)〜式(A−4)のいずれかで表される基が好ましく、式(A−1)、式(A−3)および式(A−4)のいずれかで表される基がより好ましく、式(A−1)で表される基がさらに好ましい。
Figure 2021172658
式(A)で表される基は、式(A)のいずれかの位置の1つの水素を除いて得られる基であり、*が該位置を示す。すなわち、式(A)で表される基はいずれの位置を結合位置としていてもよい。そのうち、式(A)の構造中の2つのベンゼン環上のいずれかの炭素原子、式(A)の構造中のR21〜R28のうち隣接する基が互いに結合して形成されたいずれかの環上の原子、または式(A)の構造中のYとしての「>N−R29」におけるNと直接結合する(それらに結合手がある)基であることが好ましい。
式(A)中のYおよび式(A−1)〜式(A−11)それぞれにおけるYは−O−であることが好ましい。
式(A)で表される基としては、例えば以下の式で表される基があげられる。式中のYおよび*は上記と同じ定義であり、Yは−O−であることが好ましい。
Figure 2021172658
Figure 2021172658
特に好ましい式(1)で表されるアントラセン系化合物として、下記式(1Aa)で表されるアントラセン系化合物をあげることができる。
Figure 2021172658
式(1Aa)中、Arc’、Ar14’、およびAr15’はそれぞれ独立して、フェニル、ビフェニリル、テルフェニリル、ナフチル、フェナントリル、フルオレニル、ベンゾフルオレニル、クリセニル、トリフェニレニル、ピレニル、または上記式(A−1)〜式(A−11)のいずれかで表される基であり、これらの基における少なくとも1つの水素は、フェニル、ビフェニリル、テルフェニリル、ナフチル、フェナントリル、フルオレニル、ベンゾフルオレニル、クリセニル、トリフェニレニル、ピレニル、または式(A−1)〜式(A−11)のいずれかで表される基で置換されていてもよい。ここで、フルオレニルおよびベンゾフルオレニルにおけるメチレンの水素がいずれもフェニルで置換されているときは、これらのフェニルは互いに単結合で結合していてもよい。また、Arc’、Ar14’、およびAr15’が結合していないアントラセン環上の炭素原子には水素の代わりにメチルまたはt−ブチルが置換していてもよい。式(1Aa)で表される化合物における少なくとも1つの水素はハロゲンまたはシアノで置換されていてもよく、かつ式(1Aa)で表される化合物における少なくとも1つの水素は重水素で置換されている。
式(1Aa)中、Arc’、Ar14’、およびAr15’はそれぞれ独立してフェニル、ビフェニリル、テルフェニリル、ナフチル、フェナントリル、フルオレニル、または上記式(A−1)〜式(A−4)のいずれかで表される基であることが好ましく、これらの基における少なくとも1つの水素は、フェニル、ナフチル、フェナントリル、フルオレニル、または式(A−1)〜式(A−4)のいずれかで表される基で置換されていてもよい。
式(1Aa)で表される化合物においては、少なくとも、アントラセン環の10位の炭素(Arc’が結合する炭素を9位とする)に結合する水素が重水素に置換されていることが好ましい。すなわち、式(1Aa)で表される化合物は、下記式(1Ab)で表される化合物であることが好ましい。なお、式(1Ab)中、Dは重水素であり、Arc’、Ar14’、およびAr15’は式(1Aa)中の定義と同一である。式(1Ab)におけるDは少なくともこの位置が重水素であることを示し、式(1Aa)におけるその他のいずれか1つ以上の水素が同時に重水素であってもよく、式(1Aa)における水素がいずれも重水素であることも好ましい。
Figure 2021172658
アントラセン系化合物の具体的な例としては、例えば、下記式(3−1)〜式(3−72)で表される化合物があげられる。なお、下記構造式中の「Me」はメチル、「D」は重水素、「tBu」はt−ブチルを示す。
Figure 2021172658
Figure 2021172658
Figure 2021172658
Figure 2021172658
Figure 2021172658
Figure 2021172658
Figure 2021172658
Figure 2021172658
また、アントラセン系化合物の他の具体的な例としては、例えば、下記式(3−131−Y)〜式(3−179−Y)で表される化合物、下記式(3−180−Y)〜式(3−182−Y)で表される化合物、下記式(3−183−N)、下記式(3−184−Y)〜式(3−254−Y)、式(3−254−Y)〜式(3−269−Y)、および下記式(3−500)〜式(3−557)で表される化合物があげられる。下記式(3−131−Y)〜式(3−179−Y)で表される化合物、下記式(3−180−Y)〜式(3−182−Y)で表される化合物、下記式(3−183−N)、下記式(3−184−Y)〜式(3−254−Y)、式(3−254−Y)〜式(3−269−Y)、および下記式(3−500)〜式(3−557)中、水素原子は部分的に、またはすべて重水素で置換されていてもよい。式中のYは−O−、−S−、>N−R29(R29は上記と同じ定義)または>C(−R302(R30は連結していてもよいアリール、またはアルキル)のいずれでもよく、R29は例えばフェニル、R30は例えばメチルである。式番号は、例えばYがOの場合は、式(3−131−Y)は式(3−131−O)とし、Yが−S−または>N−R29の場合はそれぞれ式(3−131−S)または式(3−131−N)とする。
Figure 2021172658
Figure 2021172658
Figure 2021172658
Figure 2021172658
Figure 2021172658
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Figure 2021172658
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Figure 2021172658
Figure 2021172658
Figure 2021172658
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Figure 2021172658
これらの化合物の中でも、式(3−131−Y)〜式(3−134−Y)、式(3−138−Y)、式(3−140−Y)〜式(3−143−Y)、式(3−150−Y)、式(3−153−Y)〜式(3−156−Y)、式(3−166−Y)、式(3−168−Y)、式(3−173−Y)、式(3−177−Y)、式(3−180−Y)〜式(3−183−N)、式(3−185−Y)、式(3−190−Y)、式(3−223−Y)、式(3−241−Y)、式(3−250−Y)、式(3−252−Y)〜式(3−254−Y)、式(3−501)、式(3−507)、式(3−508)、式(3−509)、式(3−513)、式(3−514)、式(3−519)、式(3−521)、式(3−538)〜式(3−547)もしくは式(3−600)〜(3−620)で表される化合物が好ましい。また、Yは−O−であることが好ましい。
式(3−H)で表されるアントラセン系化合物は、アントラセン骨格の所望の位置に反応性基を有する化合物と、X、Ar4および式(A)の構造などの部分構造に反応性基を有する化合物を出発原料として、鈴木カップリング、根岸カップリング、その他の公知のカップリング反応を応用して製造することができる。これらの反応性化合物の反応性基としては、ハロゲンやボロン酸などがあげられる。具体的な製造方法としては、例えば国際公開第2014/141725号の段落[0089]〜[0175]における合成法を参考にすることができる。
<フルオレン系化合物>
式(4−H)で表される化合物は基本的にはホストとして機能する。
Figure 2021172658
式(4−H)中、
1からR10は、それぞれ独立して、水素、アリール、ヘテロアリール(当該ヘテロアリールは連結基を介して式(4−H)におけるフルオレン骨格と結合していてもよい)、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルコキシまたはアリールオキシであり、これらにおける少なくとも1つの水素はアリール、ヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキルで置換されていてもよく、
また、R1とR2、R2とR3、R3とR4、R5とR6、R6とR7、R7とR8またはR9とR10がそれぞれ独立して結合して縮合環またはスピロ環を形成していてもよく、形成された環における少なくとも1つの水素はアリール、ヘテロアリール(当該ヘテロアリールは連結基を介して当該形成された環と結合していてもよい)、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルコキシまたはアリールオキシで置換されていてもよく、これらにおける少なくとも1つの水素はアリール、ヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキルで置換されていてもよく、
式(4−H)で表される化合物における少なくとも1つの水素がハロゲン、シアノまたは重水素で置換されていてもよい。
式(4−H)の定義における各基の詳細は、上述した、式(1)の多環芳香族化合物における説明を引用することができる。
1からR10におけるアルケニルとしては、例えば、炭素数2〜30のアルケニルがあげられ、炭素数2〜20のアルケニルが好ましく、炭素数2〜10のアルケニルがより好ましく、炭素数2〜6のアルケニルがさらに好ましく、炭素数2〜4のアルケニルが特に好ましい。好ましいアルケニルは、ビニル、1−プロペニル、2−プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−ペンテニル、4−ペンテニル、1−ヘキセニル、2−ヘキセニル、3−ヘキセニル、4−ヘキセニル、または5−ヘキセニルである。
なお、ヘテロアリールの具体例として、下記式(4−Ar1)、式(4−Ar2)、式(4−Ar3)、式(4−Ar4)または式(4−Ar5)の化合物から任意の1つの水素原子を除いて表される1価の基もあげられる。
Figure 2021172658
式(4−Ar1)から式(4−Ar5)中、Y1は、それぞれ独立して、O、SまたはN−Rであり、Rはフェニル、ビフェニリル、ナフチル、アントラセニルまたは水素であり、
式(4−Ar1)から式(4−Ar5)の構造における少なくとも1つの水素はフェニル、ビフェニリル、ナフチル、アントラセニル、フェナントレニル、メチル、エチル、プロピル、または、ブチルで置換されていてもよい。
これらのヘテロアリールは、連結基を介して、式(4−H)におけるフルオレン骨格と結合していてもよい。すなわち、式(4−H)におけるフルオレン骨格と上記ヘテロアリールとが直接結合するだけでなく、それらの間に連結基を介して結合してもよい。この連結基としては、フェニレン、ビフェニレン、ナフチレン、アントラセニレン、メチレン、エチレン、−OCH2CH2−、−CH2CH2O−、または、−OCH2CH2O−などがあげられる。
また、式(4−H)中のR1とR2、R2とR3、R3とR4、R5とR6、R6とR7またはR7とR8がそれぞれ独立して結合して縮合環を、R9とR10が結合してスピロ環を形成していてもよい。R1からR8により形成された縮合環は、式(4−H)におけるベンゼン環に縮合する環であり、脂肪族環または芳香族環である。好ましくは芳香族環であり、式(4−H)におけるベンゼン環を含めた構造としてはナフタレン環やフェナントレン環などがあげられる。R9とR10により形成されたスピロ環は、式(4−H)における5員環にスピロ結合する環であり、脂肪族環または芳香族環である。好ましくは芳香族環であり、フルオレン環などがあげられる。
式(4−H)で表される化合物は、好ましくは、下記式(4−H−1)、式(4−H−2)または式(4−H−3)で表される化合物であり、それぞれ、式(4−H)においてR1とR2が結合して形成されたベンゼン環が縮合した化合物、式(4−H)においてR3とR4が結合して形成されたベンゼン環が縮合した化合物、式(4−H)においてR1からR8のいずれもが結合していない化合物である。
Figure 2021172658
式(4−H−1)、式(4−H−2)および式(4−H−3)におけるR1からR10の定義は式(4−H)において対応するR1からR10と同じであり、式(4−H−1)および式(4−H−2)におけるR11からR14の定義も式(4−H)におけるR1からR10と同じである。
式(4−H)で表される化合物は、さらに好ましくは、下記式(4−H−1A)、式(4−H−2A)または式(4−H−3A)で表される化合物であり、それぞれ、式(4−H−1)、式(4−H−1)または式(4−H−3)においてR9とR10が結合してスピロ−フルオレン環が形成された化合物である。
Figure 2021172658
式(4−1A)、式(4−2A)および式(4−3A)におけるR2からR7の定義は式(4−1)、式(4−2)および式(4−3)において対応するR2からR7と同じであり、式(4−1A)および式(4−2A)におけるR11からR14の定義も式(4−1)および式(4−2)におけるR11からR14と同じである。
また、式(4−H)で表される化合物における水素は、その全てまたは一部がハロゲン、シアノまたは重水素で置換されていてもよい。
本発明のホストとしてのフルオレン系化合物のさらに具体的な例としては、以下の構造式で表される化合物があげられる。なお、「Me」はメチルを示す。
Figure 2021172658
<ジベンゾクリセン系化合物>
ホストとしてのジベンゾクリセン系化合物は、例えば下記式(5−H)で表される化合物である。
Figure 2021172658
式(5−H)中、
1からR16は、それぞれ独立して、水素、アリール、ヘテロアリール(当該ヘテロアリールは連結基を介して式(5−H)におけるジベンゾクリセン骨格と結合していてもよい)、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルコキシまたはアリールオキシであり、これらにおける少なくとも1つの水素はアリール、ヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキルで置換されていてもよく、
また、R1からR16のうち隣接する基同士が結合して縮合環を形成していてもよく、形成された環における少なくとも1つの水素はアリール、ヘテロアリール(当該ヘテロアリールは連結基を介して当該形成された環と結合していてもよい)、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルコキシまたはアリールオキシで置換されていてもよく、これらにおける少なくとも1つの水素はアリール、ヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキルで置換されていてもよく、
式(5−H)で表される化合物における少なくとも1つの水素がハロゲン、シアノまたは重水素で置換されていてもよい。
式(5−H)の定義における各基の詳細は、上述した、式(1)の多環芳香族化合物における説明を引用することができる。
式(5−H)の定義におけるアルケニルとしては、例えば、炭素数2〜30のアルケニルがあげられ、炭素数2〜20のアルケニルが好ましく、炭素数2〜10のアルケニルがより好ましく、炭素数2〜6のアルケニルがさらに好ましく、炭素数2〜4のアルケニルが特に好ましい。好ましいアルケニルは、ビニル、1−プロペニル、2−プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−ペンテニル、4−ペンテニル、1−ヘキセニル、2−ヘキセニル、3−ヘキセニル、4−ヘキセニル、または5−ヘキセニルである。
なお、ヘテロアリールの具体例として、下記式(5−Ar1)、式(5−Ar2)、式(5−Ar3)、式(5−Ar4)または式(5−Ar5)の化合物から任意の1つの水素原子を除いて表される1価の基もあげられる。
Figure 2021172658
式(5−Ar1)から式(5−Ar5)中、Y1は、それぞれ独立して、O、SまたはN−Rであり、Rはフェニル、ビフェニリル、ナフチル、アントラセニルまたは水素であり、
式(5−Ar1)から式(5−Ar5)の構造における少なくとも1つの水素はフェニル、ビフェニリル、ナフチル、アントラセニル、フェナントレニル、メチル、エチル、プロピル、または、ブチルで置換されていてもよい。
これらのヘテロアリールは、連結基を介して、式(5−H)におけるジベンゾクリセン骨格と結合していてもよい。すなわち、式(5−H)におけるジベンゾクリセン骨格と上記ヘテロアリールとが直接結合するだけでなく、それらの間に連結基を介して結合してもよい。この連結基としては、フェニレン、ビフェニレン、ナフチレン、アントラセニレン、メチレン、エチレン、−OCH2CH2−、−CH2CH2O−、または、−OCH2CH2O−などがあげられる。
式(5−H)で表される化合物は、好ましくは、R1、R4、R5、R8、R9、R12、R13およびR16は水素である。この場合、式(5−H)中のR2、R3、R6、R7、R10、R11、R14およびR15は、それぞれ独立して、水素、フェニル、ビフェニリル、ナフチル、アントラセニル、フェナントレニル、式(5−Ar1)、式(5−Ar2)、式(5−Ar3)、式(5−Ar4)もしくは式(5−Ar5)の構造を有する1価の基(当該構造を有する1価の基は、フェニレン、ビフェニレン、ナフチレン、アントラセニレン、メチレン、エチレン、−OCH2CH2−、−CH2CH2O−、または、−OCH2CH2O−を介して、式(5−H)におけるジベンゾクリセン骨格と結合していてもよい)、メチル、エチル、プロピル、または、ブチルであることが好ましい。
式(5−H)で表される化合物は、より好ましくは、R1、R2、R4、R5、R7、R8、R9、R10、R12、R13、R15およびR16は水素である。この場合、式(5−H)中のR3、R6、R11およびR14の少なくとも1つ(好ましくは1つまたは2つ、より好ましくは1つ)は、単結合、フェニレン、ビフェニレン、ナフチレン、アントラセニレン、メチレン、エチレン、−OCH2CH2−、−CH2CH2O−、または、−OCH2CH2O−を介した、式(5−Ar1)、式(5−Ar2)、式(5−Ar3)、式(5−Ar4)または式(5−Ar5)の構造を有する1価の基であり、
前記少なくとも1つ以外(すなわち、前記構造を有する1価の基が置換した位置以外)は水素、フェニル、ビフェニリル、ナフチル、アントラセニル、メチル、エチル、プロピル、または、ブチルであり、これらにおける少なくとも1つの水素は、フェニル、ビフェニリル、ナフチル、アントラセニル、メチル、エチル、プロピル、または、ブチルで置換されていてもよい。
また、式(5−H)中のR2、R3、R6、R7、R10、R11、R14およびR15として、式(5−Ar1)から式(5−Ar5)で表される構造を有する1価の基が選択された場合には、当該構造における少なくとも1つの水素は式(5−H)中のR1からR16のいずれかと結合して単結合を形成していてもよい。
本発明のホストとしてのジベンゾクリセン系化合物のさらに具体的な例としては、以下の構造式で表される化合物があげられる。なお、「tBu」はt−ブチルを示す。
Figure 2021172658
Figure 2021172658
上述した発光層用材料(ホスト材料およびドーパント材料)は、これらに反応性置換基が置換した反応性化合物をモノマーとして高分子化させた高分子化合物、もしくはその高分子架橋体、または、主鎖型高分子と前記反応性化合物とを反応させたペンダント型高分子化合物、もしくはそのペンダント型高分子架橋体としても、発光層用材料に用いることができる。この場合の反応性置換基としては、式(1)で表される多環芳香族化合物での説明を引用できる。
このような高分子化合物および高分子架橋体の用途の詳細については後述する。
<高分子ホスト材料の一例>
Figure 2021172658
式(SPH−1)において、
MUはそれぞれ独立して2価の芳香族基、ECはそれぞれ独立して1価の芳香族基であり、MU中の2つの水素がECまたはMUと置換され、kは2〜50000の整数である。
より具体的には、
MUは、それぞれ独立して、アリーレン、ヘテロアリーレン、ジアリーレンアリールアミノ、ジアリーレンアリールボリル、オキサボリン−ジイル、アザボリン−ジイルであり、
ECは、それぞれ独立して、水素、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノまたはアリールオキシであり、
MUおよびECにおける少なくとも1つの水素はさらに、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、アルキルおよびシクロアルキルで置換されていてもよく、
kは2〜50000の整数である。
kは20〜50000の整数であることが好ましく、100〜50000の整数であることがより好ましい。
式(SPH−1)中のMUおよびECにおける少なくとも1つの水素は、炭素数1〜24のアルキル、炭素数3〜24のシクロアルキル、ハロゲンまたは重水素で置換されていてもよく、さらに、前記アルキルにおける任意の−CH2−は−O−または−Si(CH32−で置換されていてもよく、前記アルキルにおける式(SPH−1)中のECに直結している−CH2−を除く任意の−CH2−は炭素数6〜24のアリーレンで置換されていてもよく、前記アルキルにおける任意の水素はフッ素で置換されていてもよい。
MUとしては、例えば、以下のいずれかの化合物から任意の2つの水素原子を除いて表される2価の基があげられる。
Figure 2021172658
より具体的には、以下のいずれかの構造で表される2価の基があげられる。これらにおいて、MUは*において他のMUまたはECと結合する。
Figure 2021172658
Figure 2021172658
Figure 2021172658
Figure 2021172658
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Figure 2021172658
Figure 2021172658
Figure 2021172658
Figure 2021172658
また、ECとしては、例えば以下のいずれかの構造で表される1価の基があげられる。これらにおいて、ECは*においてMUと結合する。
Figure 2021172658
Figure 2021172658
式(SPH−1)で表される化合物は、溶解性および塗布成膜性の観点から、分子中のMU総数(k)の10〜100%のMUが炭素数1〜24のアルキルを有することが好ましく、分子中のMU総数(k)の30〜100%のMUが炭素数1〜18のアルキル(炭素数3〜18の分岐鎖アルキル)を有することがより好ましく、分子内のMU総数(k)の50〜100%のMUが炭素数1〜12のアルキル(炭素数3〜12の分岐鎖アルキル)を有することがさらに好ましい。一方、面内配向性および電荷輸送の観点からは、分子中のMU総数(k)の10〜100%のMUが炭素数7〜24のアルキルを有することが好ましく、分子中のMU総数(k)の30〜100%のMUが炭素数7〜24のアルキル(炭素数7〜24の分岐鎖アルキル)を有することがより好ましい。
アシスティングドーパントとエミッティングドーパントとを含む発光層
有機電界発光素子における発光層は、第1成分としてのホスト化合物、第2成分としてのアシスティングドーパント(化合物)、および第3成分としてのエミッティングドーパント(化合物)を含むものであってもよい。
本発明の多環芳香族化合物はエミッティングドーパントとして用いることも好ましい。
アシスティングドーパント(化合物)としては熱活性型遅延蛍光体を用いることができる。
以下の説明では、熱活性型遅延蛍光体をアシスティングドーパントとして用いる有機電界発光素子を、「TAF素子」(TADF Assisting Fluorescence素子)ということがある。
TAF素子における「ホスト化合物」とは、蛍光スペクトルのピーク短波長側の肩より求められる励起一重項エネルギー準位が、第2成分としての熱活性型遅延蛍光体、および、第3成分としてのエミッティングドーパントよりも高い化合物のことを意味する。
「熱活性型遅延蛍光体」とは、熱エネルギーを吸収して励起三重項状態から励起一重項状態への逆項間交差を起こし、その励起一重項状態から放射失活して遅延蛍光を放射しうる化合物のことを意味する。ただし、「熱活性型遅延蛍光」とは、励起三重項状態から励起一重項状態への励起過程で高次三重項を経るものも含む。例えば、Durham大学 Monkmanらによる論文(NATURE COMMUNICATIONS,7:13680,DOI: 10.1038/ncomms13680)、産業技術総合研究所 細貝らによる論文(Hosokai et al., Sci. Adv. 2017;3: e1603282)、京都大学 佐藤らによる論文(Scientific Reports,7:4820, DOI:10.1038/s41598-017-05007-7)および、同じく京都大学 佐藤らによる学会発表(日本化学会第98春季年会、発表番号:2I4-15、DABNAを発光分子として用いた有機電界発光における高効率発光の機構、京都大学大学院工学研究科)などがあげられる。本発明では、対象化合物を含むサンプルについて、300Kで蛍光寿命を測定したとき、遅い蛍光成分が観測されたことをもって該対象化合物が「熱活性型遅延蛍光体」であると判定することとする。ここで、遅い蛍光成分とは、蛍光寿命が0.1μsec以上であるもののことを言う。蛍光寿命の測定は、例えば蛍光寿命測定装置(浜松ホトニクス社製、C11367−01)を用いて行うことができる。
本発明の多環芳香族化合物は、エミッティングドーパントとして機能させることができ、「熱活性型遅延蛍光体」は、本発明の多環芳香族化合物の発光をアシストするアシスティングドーパントとして機能させることができる。
図2に一般的な蛍光ドーパントをエミッティングドーパント(ED)に用いたTAF素子の発光層のエネルギー準位図を示す。図中、ホストの基底状態のエネルギー準位をE(1,G)、ホストの蛍光スペクトルの短波長側の肩より求められる励起一重項エネルギー準位をE(1,S,Sh)、ホストのリン光スペクトルの短波長側の肩より求められる励起三重項エネルギー準位をE(1,T,Sh)、第2成分であるアシスティングドーパントの基底状態のエネルギー準位をE(2,G)、第2成分であるアシスティングドーパントの蛍光スペクトルの短波長側の肩より求められる励起一重項エネルギー準位をE(2,S,Sh)、第2成分であるアシスティングドーパントのリン光スペクトルの短波長側の肩より求められる励起三重項エネルギー準位をE(2,T,Sh)、第3成分であるエミッティングドーパントの基底状態のエネルギー準位をE(3,G)、第3成分であるエミッティングドーパントの蛍光スペクトルの短波長側の肩より求められる励起一重項エネルギー準位をE(3,S,Sh)、第3成分であるエミッティングドーパントのリン光スペクトルの短波長側の肩より求められる励起三重項エネルギー準位をE(3,T,Sh)とする。TAF素子において、一般的な蛍光ドーパントをエミッティングドーパント(ED)として用いた場合、アシスティングドーパントでアップコンバージョンされたエネルギーはエミッティングドーパントの励起一重項エネルギー準位E(3,S,Sh)に移り発光する。しかし、アシスティングドーパント上の一部の励起三重項エネルギーE(2,T,Sh)がエミッティングドーパントの励起三重項エネルギー準位E(3,T,Sh)に移動したり、エミッティングドーパント上で励起一重項エネルギー準位E(3,S,Sh)から励起三重項エネルギー準位E(3,T,Sh)への項間交差が起こり、引き続いて基底状態E(3,G)へ熱的に失活する。この経路により一部のエネルギーは発光に利用されず、エネルギーの無駄が生じる。
これに対して、本態様の有機電界発光素子では、アシスティングドーパントからエミッティングドーパントに移動したエネルギーを効率よく発光に利用することができ、これにより高い発光効率を実現することができる。これは、以下の発光メカニズムによるものと推測される。
本態様の有機電界発光素子における好ましいエネルギー関係を図3に示す。本態様の有機電界発光素子においては、エミッティングドーパントとしての、ホウ素原子を有する化合物が高い励起三重項エネルギー準位E(3,T,Sh)を有する。そのため、アシスティングドーパントでアップコンバージョンされた励起一重項エネルギーが、例え、エミッティングドーパントで励起三重項エネルギー準位E(3,T,Sh)へ項間交差した場合にも、エミッティングドーパント上でアップコンバージョンされるか、アシスティングドーパント(熱活性型遅延蛍光体)上の励起三重項エネルギー準位E(2,T,Sh)へ回収される。したがって、生成した励起エネルギーを無駄なく発光に使用することができる。また、アップコンバージョンおよび発光の機能をそれぞれが得意な2種の分子に分けることで、高いエネルギーの滞留時間が減少し、化合物への負担が減少すると予想される。
本態様において、ホスト化合物としては、公知のものを用いることができ、例えばカルバゾール環およびフラン環の少なくとも一方を有する化合物をあげることができ、中でも、フラニルおよびカルバゾリルの少なくとも一方と、アリーレンおよびヘテロアリーレンの少なくとも一方とが結合した化合物を用いることが好ましい。具体例として、mCPやmCBPなどがあげられる。
ホスト化合物の燐光スペクトルのピーク短波長側の肩より求められる励起三重項エネルギー準位E(1,T,Sh)は、発光層内でのTADFの発生を阻害せず促進させる観点から、発光層内において最も高い励起三重項エネルギー準位を有するエミッティングドーパントまたはアシスティングドーパントの励起三重項エネルギー準位E(2,T,Sh)、E(3,T,Sh)に比べて高い方が好ましく、具体的には、ホスト化合物の励起三重項エネルギー準位E(1,T,Sh)はE(2,T,Sh)、E(3,T,Sh)に比べて、0.01eV以上が好ましく、0.03eV以上がより好ましく、0.1eV以上がさらに好ましい。また、ホスト化合物にTADF活性な化合物を用いてもよい。
ホスト化合物には、例えば、上記式(H1)、(H2)および(H3)のいずれかで表される化合物を用いることができる。
<熱活性型遅延蛍光体(アシスティングドーパント)>
TAF素子で用いる熱活性型遅延蛍光体(TADF化合物)は、ドナーと呼ばれる電子供与性の置換基とアクセプターと呼ばれる電子受容性の置換基を用いて分子内のHOMO(Highest Occupied Molecular Orbital)とLUMO(Lowest Unoccupied Molecular Orbital)を局在化させて、効率的な逆項間交差(reverse intersystem crossing)が起きるようにデザインされた、ドナー−アクセプター型熱活性型遅延蛍光体(D−A型TADF化合物)であることが好ましい。
ここで、本明細書中において「電子供与性の置換基」(ドナー)とは、熱活性型遅延蛍光体分子中でLUMO軌道が局在する置換基および部分構造のことを意味し、「電子受容性の置換基」(アクセプター)とは、熱活性型遅延蛍光体分子中でHOMO軌道が局在する置換基および部分構造のことを意味することとする。
一般的に、ドナーやアクセプターを用いた熱活性型遅延蛍光体は、構造に起因してスピン軌道結合(SOC: Spin Orbit Coupling)が大きく、かつ、HOMOとLUMOの交換相互作用が小さくΔE(ST)が小さいために、非常に速い逆項間交差速度が得られる。一方、ドナーやアクセプターを用いた熱活性型遅延蛍光体は、励起状態での構造緩和が大きくなり(ある分子においては、基底状態と励起状態では安定構造が異なるため、外部刺激により基底状態から励起状態への変換が起きると、その後、励起状態における安定構造へと構造が変化する)、幅広な発光スペクトルを与えるため、発光材料として使うと色純度を低下させる可能性がある。
TAF素子における熱活性型遅延蛍光体として、例えばドナーおよびアクセプターが直接またはスペーサーを介して結合している化合物を用いることができる。本発明の熱活性型遅延蛍光体に用いられるドナー性およびアクセプター性の構造としては、例えば、Chemistry of Materials, 2017, 29, 1946-1963に記載の構造を用いることができる。ドナー性の構造としては、カルバゾール、ジメチルカルバゾール、ジ−tert−ブチルカルバゾール、ジメトキシカルバゾール、テトラメチルカルバゾール、ベンゾフルオロカルバゾール、ベンゾチエノカルバゾール、フェニルジヒドロインドロカルバゾール、フェニルビカルバゾール、ビカルバゾール、ターカルバゾール、ジフェニルカルバゾリルアミン、テトラフェニルカルバゾリルジアミン、フェノキサジン、ジヒドロフェナジン、フェノチアジン、ジメチルジヒドロアクリジン、ジフェニルアミン、ビス(tert−ブチルフェニル)アミン、N1−(4−(ジフェニルアミノ)フェニル)−N4,N4−ジフェニルベンゼン−1,4−ジアミン、ジメチルテトラフェニルジヒドロアクリジンジアミン、テトラメチル−ジヒドロ−インデノアクリジンおよびジフェニルージヒドロジベンゾアザシリンなどがあげられる。アクセプター性の構造としては、スルホニルジベンゼン、ベンゾフェノン、フェニレンビス(フェニルメタノン)、ベンゾニトリル、イソニコチノニトリル、フタロニトリル、イソフタロニトリル、パラフタロニトリル、ベンゼントリカルボニトリル、トリアゾール、オキサゾール、チアジアゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾビス(チアゾール)、ベンゾオキサゾール、ベンゾビス(オキサゾール)、キノリン、ベンゾイミダゾール、ジベンゾキノキサリン、ヘプタアザフェナレン、チオキサントンジオキシド、ジメチルアントラセノン、アントラセンジオン、5H−シクロペンタ[1,2−b:5,4−b’]ジピリジン、フルオレンジカルボニトリル、トリエフェニルトリアジン、ピラジンジカルボニトリル、ピリミジン、フェニルピリミジン、メチルピリミジン、ピリジンジカルボニトリル、ジベンゾキノキサリンジカルボニトリル、ビス(フェニルスルホニル)ベンゼン、ジメチルチオキサンテンジオキシド、チアンスレンテトラオキシドおよびトリス(ジメチルフェニル)ボランがあげられる。特に、TAF素子における熱活性型遅延蛍光を有する化合物は、部分構造として、カルバゾール、フェノキサジン、アクリジン、トリアジン、ピリミジン、ピラジン、チオキサンテン、ベンゾニトリル、フタロニトリル、イソフタロニトリル、ジフェニルスルホン、トリアゾール、オキサジアゾール、チアジアゾールおよびベンゾフェノンから選択される少なくとも1つを有する化合物であることが好ましい。
TAF素子における発光層の第2成分として用いる化合物は、熱活性型遅延蛍光体であって、その発光スペクトルがエミッティングドーパントの吸収ピークと少なくとも一部重なる化合物であることが好ましい。以下において、TAF素子における発光層の第2成分(熱活性型遅延蛍光体)として用いることができる化合物を例示する。ただしTAF素子において熱活性型遅延蛍光体として用いることができる化合物は、以下の例示化合物によって限定的に解釈されることはない。下記式において、Meはメチルを表し、t−Buはt−ブチルを表し、Phはフェニルを表し、波線は結合位置を表す。
Figure 2021172658
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さらに、熱活性型遅延蛍光体として、下記式(AD1)、(AD2)および(AD3)のいずれかで表される化合物も用いることができる。
Figure 2021172658
上記式(AD1)、(AD2)および(AD3)中、
Mは、それぞれ独立して、単結合、−O−、>N−Arまたは>CAr2であり、形成する部分構造のHOMOの深さおよび励起一重項エネルギー準位および励起三重項エネルギー準位の高さの観点から、好ましくは、単結合、−O−または>N−Arである。Jはドナー性の部分構造とアクセプター性の部分構造を分けるスペーサー構造であり、それぞれ独立して、炭素数6〜18のアリーレンであり、ドナー性の部分構造とアクセプター性の部分構造から染み出す共役の大きさの観点から、炭素数6〜12のアリーレンが好ましい。より具体的には、フェニレン、メチルフェニレンおよびジメチルフェニレンがあげられる。Qは、それぞれ独立して、=C(−H)−または=N−であり、形成する部分構造のLUMOの浅さおよび励起一重項エネルギー準位および励起三重項エネルギー準位の高さの観点から、好ましくは、=N−である。Arは、それぞれ独立して、水素、炭素数6〜24のアリール、炭素数2〜24のヘテロアリール、炭素数1〜12のアルキルまたは炭素数3〜18のシクロアルキルであり、形成する部分構造のHOMOの深さおよび励起一重項エネルギー準位および励起三重項エネルギー準位の高さの観点から、好ましくは、水素、炭素数6〜12のアリール、炭素数2〜14のヘテロアリール、炭素数1〜4のアルキルまたは炭素数6〜10のシクロアルキルであり、より好ましくは、水素、フェニル、トリル、キシリル、メシチル、ビフェニル、ピリジル、ビピリジル、トリアジル、カルバゾリル、ジメチルカルバゾリル、ジーtert−ブチルカルバゾリル、ベンゾイミダゾールまたはフェニルベンゾイミダゾールであり、さらに好ましくは、水素、フェニルまたはカルバゾリルである。mは、1または2である。nは、〜(6−m)の整数であり、立体障害の観点から、好ましくは、4〜(6−m)の整数である。さらに、上記各式で表される化合物における少なくとも1つの水素は、ハロゲンまたは重水素で置換されていてもよい。
本態様の第2成分として用いる化合物は、より具体的に言えば、4CzBN、4CzBN−Ph、5CzBN、3Cz2DPhCzBN、4CzIPN、2PXZーTAZ、Cz−TRZ3、BDPCC−TPTA、MA−TA、PA−TA、FA−TA、PXZ−TRZ、DMAC−TRZ、BCzT、DCzTrz、DDCzTRz、spiroAC−TRZ、Ac−HPM、Ac−PPM、Ac−MPM、TCzTrz、TmCzTrzおよびDCzmCzTrzであることが好ましい。
本態様の第2成分として用いる化合物は、1つのドナーDと1つのアクセプターAが直接結合または連結基を介して結合しているD−Aで表されるドナーアクセプター型TADF化合物でもよいが、1つのアクセプターAに複数のドナーDが直接結合または連結基を介して結合している下記式(DAD1)で表される構造を有するものであることが、有機電界発光素子の特性がより優れたものになるため好ましい。
(D1−L1)n−A1 (DAD1)
式(DAD1)には、下記式(DAD2)で表される化合物が含まれる。
2−L2−A2−L3−D3 (DAD2)
式(DAD1)および式(DAD2)において、D1、D2およびD3はそれぞれ独立してドナー性基を表す。ドナー性基としては、上記のドナー性の構造を採用することができる。A1およびA2はそれぞれ独立してアクセプター性基を表す。アクセプター性基としては、上記のアクセプター性の構造を採用することができる。L1、L2およびL3はそれぞれ独立して単結合または共役連結基を表す。共役連結基はドナー性基とアクセプター性基を分けるスペーサー構造であり、炭素数6〜18のアリーレンであることが好ましく、炭素数6〜12のアリーレンがより好ましい。L1、L2およびL3は、それぞれ独立してフェニレン、メチルフェニレンまたはジメチルフェニレンであることがさらに好ましい。式(DAD1)におけるnは2以上であって、A1が置換しうる最大数以下の整数を表す。nは例えば2〜10の範囲内で選択したり、2〜6の範囲内で選択したりしてもよい。nが2であるとき、式(DAD2)で表される化合物になる。n個のD1は同一であっても異なっていてもよく、n個のL1は同一であっても異なっていてもよい。式(DAD1)および式(DAD2)で表される化合物の好ましい具体例として、2PXZ−TAZや下記の化合物をあげることができるが、本発明で採用することができる第2成分はこれらの化合物に限定されない。
Figure 2021172658
本態様において、発光層は単一層でも複数層からなってもどちらでもよい。また、ホスト化合物、熱活性型遅延蛍光体および本発明の多環芳香族化合物は、同一の層内に含まれていてもよく、複数層に少なくとも1成分ずつ含まれていてもよい。発光層が含むホスト化合物、熱活性型遅延蛍光体および本発明の多環芳香族化合物は、それぞれ一種類であっても、複数の組み合わせであっても、いずれでもよい。アシスティングドーパントおよびエミッティングドーパントは、マトリックスとしてのホスト化合物中に、全体的に含まれていてもよいし、部分的に含まれていてもよい。アシスティングドーパントおよびエミッティングドーパントがドープされた発光層は、ホスト化合物とアシスティングドーパントとエミッティングドーパントを三元共蒸着法によって成膜する方法、ホスト化合物とアシスティングドーパントとエミッティングドーパントを予め混合してから同時に蒸着する方法、ホスト化合物とアシスティングドーパントとエミッティングドーパントを有機溶媒に溶解して調製した発光層形成用組成物(塗料)を塗布する、湿式成膜法等により形成することができる。
ホスト化合物の使用量はホスト化合物の種類によって異なり、そのホスト化合物の特性に合わせて決めればよい。ホスト化合物の使用量の目安は、好ましくは発光層用材料全体の40〜99.999質量%であり、より好ましくは50〜99.99質量%であり、さらに好ましくは60〜99.9質量%である。上記の範囲であれば、例えば、効率的な電荷の輸送と、ドーパントへの効率的なエネルギーの移動の点で好ましい。
アシスティングドーパント(熱活性型遅延蛍光体)の使用量はアシスティングドーパントの種類によって異なり、そのアシスティングドーパントの特性に合わせて決めればよい。アシスティングドーパントの使用量の目安は、好ましくは発光層用材料全体の1〜60質量%であり、より好ましくは2〜50質量%であり、さらに好ましくは5〜30質量%である。上記の範囲であれば、例えば、効率的にエネルギーをエミッティングドーパントへ移動させられるという点で好ましい。
エミッティングドーパント(ホウ素原子を有する化合物)の使用量はエミッティングドーパントの種類によって異なり、そのエミッティングドーパントの特性に合わせて決めればよい。エミッティングドーパントの使用量の目安は、好ましくは発光層用材料全体の0.001〜30質量%であり、より好ましくは0.01〜20質量%であり、さらに好ましくは0.1〜10質量%である。上記の範囲であれば、例えば、濃度消光現象を防止できるという点で好ましい。
エミッティングドーパントの使用量は低濃度である方が濃度消光現象を防止できるという点で好ましい。アシスティングドーパントの使用量が高濃度である方が熱活性型遅延蛍光機構の効率の点からは好ましい。さらには、アシスティングドーパントの熱活性型遅延蛍光機構の効率の点からは、アシスティングドーパントの使用量に比べてエミッティングドーパントの使用量が低濃度である方が好ましい。
2−1−3.有機電界発光素子における基板
基板101は、有機EL素子100の支持体であり、通常、石英、ガラス、金属、プラスチックなどが用いられる。基板101は、目的に応じて板状、フィルム状、またはシート状に形成され、例えば、ガラス板、金属板、金属箔、プラスチックフィルム、プラスチックシートなどが用いられる。なかでも、ガラス板、および、ポリエステル、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスルホンなどの透明な合成樹脂製の板が好ましい。ガラス基板であれば、ソーダライムガラスや無アルカリガラスなどが用いられ、また、厚みも機械的強度を保つのに十分な厚みがあればよいので、例えば、0.2mm以上あればよい。厚さの上限値としては、例えば、2mm以下、好ましくは1mm以下である。ガラスの材質については、ガラスからの溶出イオンが少ない方がよいので無アルカリガラスの方が好ましいが、SiO2などのバリアコートを施したソーダライムガラスも市販されているのでこれを使用することができる。また、基板101には、ガスバリア性を高めるために、少なくとも片面に緻密なシリコン酸化膜などのガスバリア膜を設けてもよく、特にガスバリア性が低い合成樹脂製の板、フィルムまたはシートを基板101として用いる場合にはガスバリア膜を設けるのが好ましい。
2−1−4.有機電界発光素子における陽極
陽極102は、発光層105へ正孔を注入する役割を果たす。なお、陽極102と発光層105との間に正孔注入層103および/または正孔輸送層104が設けられている場合には、これらを介して発光層105へ正孔を注入することになる。
陽極102を形成する材料としては、無機化合物および有機化合物があげられる。無機化合物としては、例えば、金属(アルミニウム、金、銀、ニッケル、パラジウム、クロムなど)、金属酸化物(インジウムの酸化物、スズの酸化物、インジウム−スズ酸化物(ITO)、インジウム−亜鉛酸化物(IZO)など)、ハロゲン化金属(ヨウ化銅など)、硫化銅、カーボンブラック、ITOガラスやネサガラスなどがあげられる。有機化合物としては、例えば、ポリ(3−メチルチオフェン)などのポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリンなどの導電性ポリマーなどがあげられる。その他、有機EL素子の陽極として用いられている物質の中から適宜選択して用いることができる。
透明電極の抵抗は、発光素子の発光に十分な電流が供給できればよいので限定されないが、発光素子の消費電力の観点からは低抵抗であることが望ましい。例えば、300Ω/□以下のITO基板であれば素子電極として機能するが、現在では10Ω/□程度の基板の供給も可能になっていることから、例えば100〜5Ω/□、好ましくは50〜5Ω/□の低抵抗品を使用することが特に望ましい。ITOの厚みは抵抗値に合わせて任意に選ぶ事ができるが、通常50〜300nmの間で用いられることが多い。
2−1−5.有機電界発光素子における正孔注入層、正孔輸送層
正孔注入層103は、陽極102から移動してくる正孔を、効率よく発光層105内または正孔輸送層104内に注入する役割を果たす。正孔輸送層104は、陽極102から注入された正孔または陽極102から正孔注入層103を介して注入された正孔を、効率よく発光層105に輸送する役割を果たす。正孔注入層103および正孔輸送層104は、それぞれ、正孔注入・輸送材料の一種または二種以上を積層、混合するか、正孔注入・輸送材料と高分子結着剤の混合物により形成される。また、正孔注入・輸送材料に塩化鉄(III)のような無機塩を添加して層を形成してもよい。
正孔注入・輸送性物質としては電界を与えられた電極間において正極からの正孔を効率よく注入・輸送することが必要で、正孔注入効率が高く、注入された正孔を効率よく輸送することが望ましい。そのためにはイオン化ポテンシャルが小さく、しかも正孔移動度が大きく、さらに安定性に優れ、トラップとなる不純物が製造時および使用時に発生しにくい物質であることが好ましい。
正孔注入層103および正孔輸送層104を形成する材料としては、光導電材料において、正孔の電荷輸送材料として従来から慣用されている化合物、p型半導体、有機EL素子の正孔注入層および正孔輸送層に使用されている公知の化合物の中から任意の化合物を選択して用いることができる。それらの具体例は、カルバゾール誘導体(N−フェニルカルバゾール、ポリビニルカルバゾールなど)、ビス(N−アリールカルバゾール)またはビス(N−アルキルカルバゾール)などのビスカルバゾール誘導体、トリアリールアミン誘導体(4,4',4"−トリス(N−カルバゾリル)トリフェニルアミン、芳香族第3級アミノを主鎖または側鎖に持つポリマー、1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン、N,N'−ジフェニル−N,N'−ジ(3−メチルフェニル)−4,4'−ジアミノビフェニル、N,N'−ジフェニル−N,N'−ジナフチル−4,4'−ジアミノビフェニル、N,N'−ジフェニル−N,N'−ジ(3−メチルフェニル)−4,4'−ジフェニル−1,1'−ジアミン、N,N'−ジナフチル−N,N'−ジフェニル−4,4'−ジフェニル−1,1'−ジアミン、N4,N4'−ジフェニル−N4,N4'−ビス(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)−[1,1'−ビフェニル]−4,4'−ジアミン、N4,N4,N4',N4'−テトラ[1,1'−ビフェニル]−4−イル)−[1,1'−ビフェニル]−4,4'−ジアミン、4,4',4"−トリス(3−メチルフェニル(フェニル)アミノ)トリフェニルアミンなどのトリフェニルアミン誘導体、スターバーストアミン誘導体など)、スチルベン誘導体、フタロシアニン誘導体(無金属、銅フタロシアニンなど)、ピラゾリン誘導体、ヒドラゾン系化合物、ベンゾフラン誘導体やチオフェン誘導体、オキサジアゾール誘導体、キノキサリン誘導体(例えば、1,4,5,8,9,12−ヘキサアザトリフェニレン−2,3,6,7,10,11−ヘキサカルボニトリルなど)、ポルフィリン誘導体などの複素環化合物、ポリシランなどである。ポリマー系では前記単量体を側鎖に有するポリカーボネートやスチレン誘導体、ポリビニルカルバゾールおよびポリシランなどが好ましいが、発光素子の作製に必要な薄膜を形成し、陽極から正孔が注入できて、さらに正孔を輸送できる化合物であれば特に限定されない。
また、有機半導体の導電性は、そのドーピングにより、強い影響を受けることも知られている。このような有機半導体マトリックス物質は、電子供与性の良好な化合物、または、電子受容性の良好な化合物から構成されている。電子供与物質のドーピングのために、テトラシアノキノンジメタン(TCNQ)または2,3,5,6−テトラフルオロテトラシアノ−1,4−ベンゾキノンジメタン(F4TCNQ)などの強い電子受容体が知られている(例えば、文献「M.Pfeiffer,A.Beyer,T.Fritz,K.Leo,Appl.Phys.Lett.,73(22),3202-3204(1998)」および文献「J.Blochwitz,M.Pfeiffer,T.Fritz,K.Leo,Appl.Phys.Lett.,73(6),729-731(1998)」を参照)。これらは、電子供与型ベース物質(正孔輸送物質)における電子移動プロセスによって、いわゆる正孔を生成する。正孔の数および移動度によって、ベース物質の伝導性が、かなり大きく変化する。正孔輸送特性を有するマトリックス物質としては、例えばベンジジン誘導体(TPDなど)またはスターバーストアミン誘導体(TDATAなど)、または、特定の金属フタロシアニン(特に、亜鉛フタロシアニン(ZnPc)など)が知られている(特開2005−167175号公報)。
本発明の多環芳香族化合物は正孔注入層形成用材料または正孔輸送層形成用材料として用いてもよい。
2−1−6.有機電界発光素子における電子阻止層
正孔注入・輸送層と発光層との間には発光層からの電子の拡散を防ぐ電子阻止層を設けてもよい。電子阻止層の形成には、上述の式(H1)、(H2)および(H3)のいずれかで表される化合物を用いることができる。
本発明の多環芳香族化合物は電子阻止層形成用材料として用いてもよい。
2−1−7.有機電界発光素子における電子注入層、電子輸送層
電子注入層107は、陰極108から移動してくる電子を、効率よく発光層105内または電子輸送層106内に注入する役割を果たす。電子輸送層106は、陰極108から注入された電子または陰極108から電子注入層107を介して注入された電子を、効率よく発光層105に輸送する役割を果たす。電子輸送層106および電子注入層107は、それぞれ、電子輸送・注入材料の一種または二種以上を積層、混合するか、電子輸送・注入材料と高分子結着剤の混合物により形成される。
電子注入・輸送層とは、陰極から電子が注入され、さらに電子を輸送することをつかさどる層であり、電子注入効率が高く、注入された電子を効率よく輸送することが望ましい。そのためには電子親和力が大きく、しかも電子移動度が大きく、さらに安定性に優れ、トラップとなる不純物が製造時および使用時に発生しにくい物質であることが好ましい。しかしながら、正孔と電子の輸送バランスを考えた場合に、陽極からの正孔が再結合せずに陰極側へ流れるのを効率よく阻止できる役割を主に果たす場合には、電子輸送能力がそれ程高くなくても、発光効率を向上させる効果は電子輸送能力が高い材料と同等に有する。したがって、本実施形態における電子注入・輸送層は、正孔の移動を効率よく阻止できる層の機能も含まれてもよい。
電子輸送層106または電子注入層107を形成する材料(電子輸送材料)としては、光導電材料において電子伝達化合物として従来から慣用されている化合物、有機EL素子の電子注入層および電子輸送層に使用されている公知の化合物の中から任意に選択して用いることができる。
電子輸送層または電子注入層に用いられる材料としては、炭素、水素、酸素、硫黄、ケイ素およびリンの中から選ばれる一種以上の原子で構成される芳香族環または複素芳香族環からなる化合物、ピロール誘導体およびその縮合環誘導体および電子受容性窒素を有する金属錯体の中から選ばれる少なくとも一種を含有することが好ましい。具体的には、ナフタレン、アントラセンなどの縮合環系芳香族環誘導体、4,4'−ビス(ジフェニルエテニル)ビフェニルに代表されるスチリル系芳香族環誘導体、ペリノン誘導体、クマリン誘導体、ナフタルイミド誘導体、アントラキノンやジフェノキノンなどのキノン誘導体、リンオキサイド誘導体、アリールニトリル誘導体およびインドール誘導体などがあげられる。電子受容性窒素を有する金属錯体としては、例えば、ヒドロキシフェニルオキサゾール錯体などのヒドロキシアゾール錯体、アゾメチン錯体、トロポロン金属錯体、フラボノール金属錯体およびベンゾキノリン金属錯体などがあげられる。これらの材料は単独でも用いられるが、異なる材料と混合して使用しても構わない。
また、他の電子伝達化合物の具体例として、ピリジン誘導体、ナフタレン誘導体、フルオランテン誘導体、BO系誘導体、アントラセン誘導体、フェナントロリン誘導体、ペリノン誘導体、クマリン誘導体、ナフタルイミド誘導体、アントラキノン誘導体、ジフェノキノン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、ペリレン誘導体、オキサジアゾール誘導体(1,3−ビス[(4−t−ブチルフェニル)1,3,4−オキサジアゾリル]フェニレンなど)、チオフェン誘導体、トリアゾール誘導体(N−ナフチル−2,5−ジフェニル−1,3,4−トリアゾールなど)、チアジアゾール誘導体、オキシン誘導体の金属錯体、キノリノール系金属錯体、キノキサリン誘導体、キノキサリン誘導体のポリマー、ベンザゾール類化合物、ガリウム錯体、ピラゾール誘導体、パーフルオロ化フェニレン誘導体、トリアジン誘導体、ピラジン誘導体、ベンゾキノリン誘導体(2,2'−ビス(ベンゾ[h]キノリン−2−イル)−9,9'−スピロビフルオレンなど)、イミダゾピリジン誘導体、ボラン誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体(トリス(N−フェニルベンゾイミダゾール−2−イル)ベンゼンなど)、ベンゾオキサゾール誘導体、チアゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、キノリン誘導体、テルピリジンなどのオリゴピリジン誘導体、ビピリジン誘導体、テルピリジン誘導体(1,3−ビス(4'−(2,2':6',2"−テルピリジニル))ベンゼンなど)、ナフチリジン誘導体(ビス(1−ナフチル)−4−(1,8−ナフチリジン−2−イル)フェニルホスフィンオキサイドなど)、アルダジン誘導体、ピリミジン誘導体、アリールニトリル誘導体、インドール誘導体、リンオキサイド誘導体、ビススチリル誘導体、シロール誘導体およびアゾリン誘導体などがあげられる。
また、電子受容性窒素を有する金属錯体を用いることもでき、例えば、キノリノール系金属錯体やヒドロキシフェニルオキサゾール錯体などのヒドロキシアゾール錯体、アゾメチン錯体、トロポロン金属錯体、フラボノール金属錯体およびベンゾキノリン金属錯体などがあげられる。
上述した材料は単独でも用いられるが、異なる材料と混合して使用しても構わない。
上述した材料の中でも、ボラン誘導体、ピリジン誘導体、フルオランテン誘導体、BO系誘導体、アントラセン誘導体、ベンゾフルオレン誘導体、ホスフィンオキサイド誘導体、ピリミジン誘導体、アリールニトリル誘導体、トリアジン誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、フェナントロリン誘導体、キノリノール系金属錯体、チアゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、シロール誘導体およびアゾリン誘導体が好ましい。
本発明の多環芳香族化合物は電子注入層形成用材料または電子輸送層形成用材料として用いてもよい。
電子輸送層または電子注入層には、さらに、電子輸送層または電子注入層を形成する材料を還元できる物質を含んでいてもよい。この還元性物質は、一定の還元性を有する物質であれば、様々な物質が用いられ、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、アルカリ金属の酸化物、アルカリ金属のハロゲン化物、アルカリ土類金属の酸化物、アルカリ土類金属のハロゲン化物、希土類金属の酸化物、希土類金属のハロゲン化物、アルカリ金属の有機錯体、アルカリ土類金属の有機錯体および希土類金属の有機錯体からなる群から選択される少なくとも1つを好適に使用することができる。
好ましい還元性物質としては、Na(仕事関数2.36eV)、K(同2.28eV)、Rb(同2.16eV)またはCs(同1.95eV)などのアルカリ金属や、Ca(同2.9eV)、Sr(同2.0〜2.5eV)またはBa(同2.52eV)などのアルカリ土類金属があげられ、仕事関数が2.9eV以下の物質が特に好ましい。これらのうち、より好ましい還元性物質は、K、RbまたはCsのアルカリ金属であり、さらに好ましくはRbまたはCsであり、最も好ましいのはCsである。これらのアルカリ金属は、特に還元能力が高く、電子輸送層または電子注入層を形成する材料への比較的少量の添加により、有機EL素子における発光輝度の向上や長寿命化が図られる。また、仕事関数が2.9eV以下の還元性物質として、これら2種以上のアルカリ金属の組み合わせも好ましく、特に、Csを含んだ組み合わせ、例えば、CsとNa、CsとK、CsとRb、またはCsとNaとKとの組み合わせが好ましい。Csを含むことにより、還元能力を効率的に発揮することができ、電子輸送層または電子注入層を形成する材料への添加により、有機EL素子における発光輝度の向上や長寿命化が図られる。
2−1−8.有機電界発光素子における陰極
陰極108は、電子注入層107および電子輸送層106を介して、発光層105に電子を注入する役割を果たす。
陰極108を形成する材料としては、電子を有機層に効率よく注入できる物質であれば特に限定されないが、陽極102を形成する材料と同様の材料を用いることができる。なかでも、スズ、インジウム、カルシウム、アルミニウム、銀、銅、ニッケル、クロム、金、白金、鉄、亜鉛、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウムおよびマグネシウムなどの金属またはそれらの合金(マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、フッ化リチウム/アルミニウムなどのアルミニウム−リチウム合金など)などが好ましい。電子注入効率をあげて素子特性を向上させるためには、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、カルシウム、マグネシウムまたはこれら低仕事関数金属を含む合金が有効である。しかしながら、これらの低仕事関数金属は一般に大気中で不安定であることが多い。この点を改善するために、例えば、有機層に微量のリチウム、セシウムやマグネシウムをドーピングして、安定性の高い電極を使用する方法が知られている。その他のドーパントとしては、フッ化リチウム、フッ化セシウム、酸化リチウムおよび酸化セシウムのような無機塩も使用することができる。ただし、これらに限定されない。
さらに、電極保護のために白金、金、銀、銅、鉄、スズ、アルミニウムおよびインジウムなどの金属、またはこれら金属を用いた合金、そしてシリカ、チタニアおよび窒化ケイ素などの無機物、ポリビニルアルコール、塩化ビニル、炭化水素系高分子化合物などを積層することが、好ましい例としてあげられる。これらの電極の作製法も、抵抗加熱、電子ビーム蒸着、スパッタリング、イオンプレーティングおよびコーティングなど、導通を取ることができれば特に制限されない。
2−1−9.各層で用いてもよい結着剤
以上の正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層および電子注入層に用いられる材料は単独で各層を形成することができるが、高分子結着剤としてポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリブタジエン、炭化水素樹脂、ケトン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアミド、エチルセルロース、酢酸ビニル樹脂、ABS樹脂、ポリウレタン樹脂などの溶剤可溶性樹脂や、フェノール樹脂、キシレン樹脂、石油樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂などの硬化性樹脂などに分散させて用いることも可能である。
2−1−10.有機電界発光素子の作製方法
有機EL素子を構成する各層は、各層を構成すべき材料を蒸着法、抵抗加熱蒸着、電子ビーム蒸着、スパッタリング、分子積層法、印刷法、インクジェット法、スピンコート法またはキャスト法、コーティング法などの方法で薄膜とすることにより、形成することができる。このようにして形成された各層の膜厚については特に限定はなく、材料の性質に応じて適宜設定することができるが、通常2nm〜5000nmの範囲である。膜厚は通常、水晶発振式膜厚測定装置などで測定できる。蒸着法を用いて薄膜化する場合、その蒸着条件は、材料の種類、膜の目的とする結晶構造および会合構造などにより異なる。蒸着条件は一般的に、ボート加熱温度+50〜+400℃、真空度10-6〜10-3Pa、蒸着速度0.01〜50nm/秒、基板温度−150〜+300℃、膜厚2nm〜5μmの範囲で適宜設定することが好ましい。
次に、有機EL素子を作製する方法の一例として、陽極/正孔注入層/正孔輸送層/ホスト材料とドーパント材料からなる発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極からなる有機EL素子の作製法について説明する。適当な基板上に、陽極材料の薄膜を蒸着法などにより形成させて陽極を作製した後、この陽極上に正孔注入層および正孔輸送層の薄膜を形成させる。この上にホスト材料とドーパント材料を共蒸着し薄膜を形成させて発光層とし、この発光層の上に電子輸送層、電子注入層を形成させ、さらに陰極用物質からなる薄膜を蒸着法などにより形成させて陰極とすることにより、目的の有機EL素子が得られる。なお、上述の有機EL素子の作製においては、作製順序を逆にして、陰極、電子注入層、電子輸送層、発光層、正孔輸送層、正孔注入層、陽極の順に作製することも可能である。
このようにして得られた有機EL素子に直流電圧を印加する場合には、陽極を+、陰極を−の極性として印加すればよく、電圧2〜40V程度を印加すると、透明または半透明の電極側(陽極または陰極、および両方)より発光が観測できる。また、この有機EL素子は、パルス電流や交流電流を印加した場合にも発光する。なお、印加する交流の波形は任意でよい。
2−1−11.有機電界発光素子の応用例
有機EL素子は表示装置または照明装置などにも応用することができる。
有機EL素子を備えた表示装置または照明装置は、有機EL素子と公知の駆動装置とを接続するなど公知の方法によって製造することができ、直流駆動、パルス駆動、交流駆動など公知の駆動方法を適宜用いて駆動することができる。
表示装置としては、例えば、カラーフラットパネルディスプレイなどのパネルディスプレイ、フレキシブルカラー有機電界発光(EL)ディスプレイなどのフレキシブルディスプレイなどがあげられる(例えば、特開平10−335066号公報、特開2003−321546号公報、特開2004−281086号公報など参照)。また、ディスプレイの表示方式としては、例えば、マトリクスおよび/またはセグメント方式などがあげられる。なお、マトリクス表示とセグメント表示は同じパネルの中に共存していてもよい。
マトリクスでは、表示のための画素が格子状やモザイク状など二次元的に配置されており、画素の集合で文字や画像を表示する。画素の形状やサイズは用途によって決まる。例えば、パソコン、モニター、テレビの画像および文字表示には、通常一辺が300μm以下の四角形の画素が用いられ、また、表示パネルのような大型ディスプレイの場合は、一辺がmmオーダーの画素を用いることになる。モノクロ表示の場合は、同じ色の画素を配列すればよいが、カラー表示の場合には、赤、緑、青の画素を並べて表示させる。この場合、典型的にはデルタタイプとストライプタイプがある。そして、このマトリクスの駆動方法としては、線順次駆動方法やアクティブマトリックスのどちらでもよい。線順次駆動の方が構造が簡単であるという利点があるが、動作特性を考慮した場合、アクティブマトリックスの方が優れる場合があるので、これも用途によって使い分けることが必要である。
セグメント方式(タイプ)では、予め決められた情報を表示するようにパターンを形成し、決められた領域を発光させることになる。例えば、デジタル時計や温度計における時刻や温度表示、オーディオ機器や電磁調理器などの動作状態表示および自動車のパネル表示などがあげられる。
照明装置としては、例えば、室内照明などの照明装置、液晶表示装置のバックライトなどがあげられる(例えば、特開2003−257621号公報、特開2003−277741号公報、特開2004−119211号公報など参照)。バックライトは、主に自発光しない表示装置の視認性を向上させる目的に使用され、液晶表示装置、時計、オーディオ装置、自動車パネル、表示板および標識などに使用される。特に、液晶表示装置、中でも薄型化が課題となっているパソコン用途のバックライトとしては、従来方式が蛍光灯や導光板からなっているため薄型化が困難であることを考えると、有機EL素子を用いたバックライトは薄型で軽量が特徴になる。
2−2.その他の有機デバイス
本発明に係る多環芳香族化合物は、上述した有機電界発光素子の他に、有機電界効果トランジスタまたは有機薄膜太陽電池などの作製に用いることができる。
有機電界効果トランジスタは、電圧入力によって発生させた電界により電流を制御するトランジスタのことであり、ソース電極とドレイン電極の他にゲート電極が設けられている。ゲート電極に電圧を印加すると電界が生じ、ソース電極とドレイン電極間を流れる電子(あるいはホール)の流れを任意にせき止めて電流を制御することができるトランジスタである。電界効果トランジスタは、単なるトランジスタ(バイポーラトランジスタ)に比べて小型化が容易であり、集積回路などを構成する素子としてよく用いられている。
有機電界効果トランジスタの構造は、通常、本発明に係る多環芳香族化合物を用いて形成される有機半導体活性層に接してソース電極およびドレイン電極が設けられており、さらに有機半導体活性層に接した絶縁層(誘電体層)を挟んでゲート電極が設けられていればよい。その素子構造としては、例えば以下の構造があげられる。
(1)基板/ゲート電極/絶縁体層/ソース電極・ドレイン電極/有機半導体活性層
(2)基板/ゲート電極/絶縁体層/有機半導体活性層/ソース電極・ドレイン電極
(3)基板/有機半導体活性層/ソース電極・ドレイン電極/絶縁体層/ゲート電極
(4)基板/ソース電極・ドレイン電極/有機半導体活性層/絶縁体層/ゲート電極
このように構成された有機電界効果トランジスタは、アクティブマトリックス駆動方式の液晶ディスプレイや有機エレクトロルミネッセンスディスプレイの画素駆動スイッチング素子などとして適用できる。
有機薄膜太陽電池は、ガラスなどの透明基板上にITOなどの陽極、ホール輸送層、光電変換層、電子輸送層、陰極が積層された構造を有する。光電変換層は陽極側にp型半導体層を有し、陰極側にn型半導体層を有している。本発明に係る多環芳香族化合物は、その物性に応じて、ホール輸送層、p型半導体層、n型半導体層、電子輸送層の材料として用いることが可能である。本発明に係る多環芳香族化合物は、有機薄膜太陽電池においてホール輸送材料や電子輸送材料として機能しうる。有機薄膜太陽電池は、上記の他にホールブロック層、電子ブロック層、電子注入層、ホール注入層、平滑化層などを適宜備えていてもよい。有機薄膜太陽電池には、有機薄膜太陽電池に用いられる既知の材料を適宜選択して組み合わせて用いることができる。
3.波長変換材料
本発明の多環芳香族化合物は、波長変換材料として使用することができる。
現在、色変換方式によるマルチカラー化技術を、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ、照明などへ応用することが盛んに検討されている。色変換とは、発光体からの発光をより長波長の光へと波長変換することであり、例えば、紫外光や青色光を緑色光や赤色発光へと変換することを表す。この色変換機能を有する波長変換材料をフィルム化し、例えば青色光源と組み合わせることにより、青色光源から、青、緑、赤色の3原色を取り出すこと、すなわち白色光を取り出すことが可能となる。このような青色光源と色変換機能を有する波長変換フィルムを組み合わせた白色光源を光源ユニットとし、液晶駆動部分と、カラーフィルターと組み合わせることで、フルカラーディスプレイの作製が可能になる。また、液晶駆動部分が無ければ、そのまま白色光源として用いることができ、例えばLED照明などの白色光源として応用できる。また、青色有機EL素子を光源として、青色光を緑色光および赤色光に変換する波長変換フィルムと組み合わせて用いることでメタルマスクを用いないフルカラー有機ELディスプレイの作製が可能になる。さらに、青色マイクロLEDを光源として、青色光を緑色光および赤色光に変換する波長変換フィルムと組み合わせて用いることで低コストのフルカラーマイクロLEDディスプレイの作製が可能になる。
本発明の多環芳香族化合物は、この波長変換材料として使用することができる。本発明の多環芳香族化合物を含む波長変換材料を用いて、紫外光やより短波長の青色を生成する光源や発光素子からの光を、表示装置(有機EL素子を利用した表示装置や液晶表示装置)での利用に適した色純度の高い青色光や緑色光に変換することができる。変換される色の調整は、本発明の多環芳香族化合物の置換基、後述の波長変換用組成物で用いるバインダー樹脂等を適宜選択することにより行うことができる。波長変換材料は本発明の多環芳香族化合物を含む波長変換用組成物として調製することができる。また、この波長変換用組成物を用いて波長変換フィルムを形成してもよい。
波長変換用組成物は、本発明の多環芳香族化合物のほか、バインダー樹脂、その他の添加剤、および溶媒を含んでいてもよい。バインダー樹脂としては、例えば国際公開2016/190283号の段落0173〜0176に記載のものを用いることができる。その他の添加剤としては、国際公開2016/190283号の段落0177〜0181に記載の化合物を用いることができる。溶媒としては、上記の発光層形成用組成物に含まれる溶媒の記載を参照することができる。
波長変換フィルムは波長変換用組成物の硬化により形成される波長変換層を含む。波長変換用組成物からの波長変換層の作製方法としては公知のフィルム形成方法を参照することができる。波長変換フィルムは本発明の多環芳香族化合物を含む組成物から形成される波長変換層のみからなっていてもよく、他の波長変換層(例えば、青色光を緑色光や赤色光に変換する波長変換層、青色光や緑色光を赤色光に変換する波長変換層)を含んでいてもよい。さらに波長変換フィルムは基材層や、色変換層の酸素、水分、または熱による劣化を防ぐためのバリア層を含んでいてもよい。
以下,実施例により本発明をさらに具体的に説明していくが,本発明はこれらに限定されるものではない。
合成例(1):
化合物(1−c1−8)の合成
Figure 2021172658
第1工程
窒素雰囲気下、化合物(T−1)(6.24g)(コンビ−ブッロクス社製)、化合物(T−2)(10.0g)、tert−ブトキシナトリウム(4.22g)、パラジウム触媒としてジクロロビス(ジ−t−ブチル(4−ジメチルアミノフェニル)ホスフィノ)パラジウム(Pd−132、0.21g)およびキシレン(100ml)、を反応器に入れて3時間加熱還流した。反応混合物を室温まで冷却したのち、水層をトルエンで抽出した。一緒にした有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(トルエン)で精製して、化合物(T−3)(11.17g;86%)を得た。
第2工程
窒素雰囲気下、化合物(T−3)(11.17g)、三ヨウ化ホウ素(19.70g)、ドデカン(1.37ml)およびo−ジクロロベンゼン(ODCB)(112ml)を反応器に入れて、150℃で3時間加熱撹拌した。冷却を行い、(T−4)(8.38g)のTHF溶液を滴下し終夜撹拌した。反応混合物を水に注ぎ込み、水層をトルエンで抽出した。一緒にした有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をフロリジルクロマトグラフィー(トルエン)で精製して、ヘプタンからの再結晶により化合物(T−5)(10.01g;64%)を得た。
第3工程
窒素雰囲気下、化合物(T−5)(10.01g)、トリス(トリフルオロメタンスルホン酸)スカンジウム(III)(7.93g)、および1,2−ジクロロエタン(100ml)を反応器に入れて、24時間加熱還流を行った。反応混合物を室温まで冷却したのち、水に注ぎ込み、水層をトルエンで抽出した。一緒にした有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘプタン/トルエン)で精製した。さらにヘプタンからの再結晶により精製して、化合物(1−c1−8)(1.31;13%)を得た。
HRMS m/z 625.3922(calcd C4352BNS、625.3914).
(T−2)の合成
Tertrahedron 68 (2012) 7063-7069に記載の方法を基に合成した。
(T−4)の合成
Figure 2021172658
Aurora Building Blocksから購入した(T−6)を上記ルートに従い(T−4)を合成した。
合成例(2):
化合物(1−c2f−64)の合成
Figure 2021172658
第1工程
窒素雰囲気下、化合物(T−1)(7.5g)(コンビ−ブッロクス社製)、化合物(T−10)(11.43g)、tert−ブトキシナトリウム(5.07g)、パラジウム触媒としてジクロロビス(ジ−t−ブチル(4−ジメチルアミノフェニル)ホスフィノ)パラジウム(Pd−132、0.23g)およびキシレン(110ml)、を反応器に入れて3時間加熱還流した。反応混合物を室温まで冷却したのち、水層をトルエンで抽出した。一緒にした有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(トルエン)で精製して、化合物(T−11)(11.29g;75%)を得た。
第2工程
窒素雰囲気下、化合物(T−11)(11.29g)、三ヨウ化ホウ素(20.67g)、ドデカン(1.45ml)およびo−ジクロロベンゼン(ODCB)(120ml)を反応器に入れて、150℃で3時間加熱撹拌した。冷却を行い、(T−12)(10.56g)のTHF溶液を滴下し終夜撹拌した。反応混合物を水に注ぎ込み、水層をトルエンで抽出した。一緒にした有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をフロリジルクロマトグラフィー(トルエン)で精製して、ヘプタンからの再結晶により化合物(T−13)(9.84g;56%)を得た。
第3工程
窒素雰囲気下、化合物(T−13)(9.84g)、トリス(トリフルオロメタンスルホン酸)スカンジウム(III)(7.27g)、および1,2−ジクロロエタン(100ml)を反応器に入れて、24時間加熱還流を行った。反応混合物を室温まで冷却したのち、水に注ぎ込み、水層をトルエンで抽出した。一緒にした有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘプタン/トルエン)で精製した。さらにヘプタンからの再結晶により精製して、化合物(1−c2f−64)(0.98g;10%)を得た。
HRMS m/z 665.3849(calcd C4352BNOS、665.3863).
(T−10)の合成
Journal of Organic Chemistry, 82(19), 10523-10536; 2017.に記載の方法を基に合成した。
合成例(3):
化合物(1−c2f−65)の合成
Figure 2021172658
第1工程
窒素雰囲気下、化合物(T−1)(7.0g)(コンビ−ブッロクス社製)、化合物(T−14)(10.08g)、tert−ブトキシナトリウム(4.73g)、パラジウム触媒としてジクロロビス(ジ−t−ブチル(4−ジメチルアミノフェニル)ホスフィノ)パラジウム(Pd−132、0.24g)およびキシレン(100ml)、を反応器に入れて3時間加熱還流した。反応混合物を室温まで冷却したのち、水層をトルエンで抽出した。一緒にした有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(トルエン)で精製して、化合物(T−15)(9.59g;71%)を得た。
第2工程
窒素雰囲気下、化合物(T−15)(9.59g)、三ヨウ化ホウ素(18.24g)、ドデカン(1.27ml)およびo−ジクロロベンゼン(ODCB)(110ml)を反応器に入れて、150℃で3時間加熱撹拌した。冷却を行い、(T−12)(7.75g)のTHF溶液を滴下し終夜撹拌した。反応混合物を水に注ぎ込み、水層をトルエンで抽出した。一緒にした有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をフロリジルクロマトグラフィー(トルエン)で精製して、ヘプタンからの再結晶により化合物(T−16)(8.93g;59%)を得た。
第3工程
窒素雰囲気下、化合物(T−16)(8.93g)、トリス(トリフルオロメタンスルホン酸)スカンジウム(III)(6.76g)、および1,2−ジクロロエタン(100ml)を反応器に入れて、24時間加熱還流を行った。反応混合物を室温まで冷却したのち、水に注ぎ込み、水層をトルエンで抽出した。一緒にした有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘプタン/トルエン)で精製した。さらにヘプタンからの再結晶により精製して、化合物(1−c2f−65)(0.98g;11%)を得た。
HRMS m/z 649.3930(calcd C4352BNS、649.3914).
(T−14)の合成
Synthesis, 47(21), 3347-3353; 2015.に記載の方法を基に合成した。
(T−12)の合成
Figure 2021172658
上記ルートに従い(T−12)を合成した。
合成例(4):
化合物(1−n−3)の合成
合成例(1)に記載の(T−2)を(T−17)に変更する以外は同様の手順で合成した。
Figure 2021172658
第1工程
窒素雰囲気下、化合物(T−1)(6.24g)(コンビ−ブッロクス社製)、化合物(T−17)(10.0g)、tert−ブトキシナトリウム(4.22g)、パラジウム触媒としてジクロロビス(ジ−t−ブチル(4−ジメチルアミノフェニル)ホスフィノ)パラジウム(Pd−132、0.21g)およびキシレン(100ml)、を反応器に入れて3時間加熱還流した。反応混合物を室温まで冷却したのち、水層をトルエンで抽出した。一緒にした有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(トルエン)で精製して、化合物(T−18)(7.00g;72%)を得た。
第2工程
窒素雰囲気下、化合物(T−18)(7.00g)、三ヨウ化ホウ素(13.00g)、ドデカン(1.00ml)およびo−ジクロロベンゼン(ODCB)(80ml)を反応器に入れて、150℃で3時間加熱撹拌した。冷却を行い、(T−4)(5.5g)のTHF溶液を滴下し終夜撹拌した。反応混合物を水に注ぎ込み、水層をトルエンで抽出した。一緒にした有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をフロリジルクロマトグラフィー(トルエン)で精製して、ヘプタンからの再結晶により化合物(T−19)(9.02g;83%)を得た。
第3工程
窒素雰囲気下、化合物(T−19)(9.02g)、トリス(トリフルオロメタンスルホン酸)スカンジウム(III)(7.10g)、および1,2−ジクロロエタン(100ml)を反応器に入れて、24時間加熱還流を行った。反応混合物を室温まで冷却したのち、水に注ぎ込み、水層をトルエンで抽出した。一緒にした有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘプタン/トルエン)で精製した。さらにヘプタンからの再結晶により精製して、化合物(1−n−3)(1.03;29%)を得た。
HRMS m/z 515.3734(calcd C3752BN、515.3723).
(T−17)の合成
フィッシャーのインドール合成を用いた。
原料の化合物を適宜変更することにより、上述した合成例に準じた方法で、本発明の他の化合物を合成することができる。
<基礎物性の評価方法>
サンプルの準備
評価対象の化合物の吸収特性と発光特性(蛍光と燐光)を評価する場合、評価対象の化合物を溶媒に溶解して溶媒中で評価する場合と薄膜状態で評価する場合がある。さらに、薄膜状態で評価する場合は、評価対象の化合物の有機EL素子における使用の態様に応じて、評価対象の化合物のみを薄膜化し評価する場合と評価対象の化合物を適切なマトリックス材料中に分散して薄膜化して評価する場合がある。ここでは、評価対象化合物のみを蒸着して得た薄膜を「単独膜」といい、評価対象化合物とマトリックス材料を含む塗工液を塗布、乾燥して得た薄膜を「塗膜」という。
マトリックス材料としては、市販のPMMA(ポリメチルメタクリレート)などを用いることができる。本実施例では、PMMAと評価対象の化合物をトルエン中で溶解させた後、スピンコーティング法により石英製の透明支持基板(10mm×10mm)上に薄膜を形成してサンプルを作製する。
また、マトリックス材料がホスト化合物である場合の薄膜サンプルは、以下のようにして作製する。
石英製の透明支持基板(10mm×10mm×1.0mm)を市販の蒸着装置(長州産業(株)製)の基板ホルダーに固定し、ホスト化合物を入れたモリブデン製蒸着用ボート、ドーパント材料を入れたモリブデン製蒸着用ボートを装着した後、真空槽を5×10-4Paまで減圧する。次に、ホスト化合物が入った蒸着用ボートとドーパント材料が入った蒸着用ボートを同時に加熱して、ホスト化合物とドーパント材料を適切な膜厚になるように共蒸着してホスト化合物とドーパント材料の混合薄膜(サンプル)を形成した。ここで、ホスト化合物とドーパント材料の設定質量比に応じて蒸着速度を制御する。
吸収特性と発光特性の評価
サンプルの吸収スペクトルの測定は、紫外可視近赤外分光光度計((株)島津製作所、UV−2600)を用いて行う。また、サンプルの蛍光スペクトルまたは燐光スペクトルの測定は、分光蛍光光度計(日立ハイテク(株)製、F−7000)を用いて行う。
蛍光スペクトルの測定に対しては、室温で適切な励起波長で励起しフォトルミネッセンスを測定する。燐光スペクトルの測定に対しては、付属の冷却ユニットを使用して、前記サンプルを液体窒素に浸した状態(温度77K)で測定する。燐光スペクトルを観測するため、光学チョッパを使用して励起光照射から測定開始までの遅れ時間を調整した。サンプルは適切な励起波長で励起しフォトルミネッセンスを測定する。
また、絶対PL量子収率測定装置(浜松ホトニクス(株)製、C9920−02G)を用いて蛍光量子収率(PLQY)を測定する。
次に、本発明の多環芳香族化合物の基礎物性評価について記載する。
蛍光寿命(遅延蛍光)の評価
蛍光寿命測定装置(浜松ホトニクス(株)製、C11367−01)を用いて300Kで蛍光寿命を測定した。具体的には、適切な励起波長で測定される極大発光波長において蛍光寿命の早い発光成分と遅い発光成分を観測した。蛍光を発光する一般的な有機EL材料の室温における蛍光寿命測定では、熱による3重項成分の失活により、燐光に由来する3重項成分が関与する遅い発光成分が観測されることはほとんどない。評価対象の化合物において遅い発光成分が観測された場合は、励起寿命の長い3重項エネルギーが熱活性化により1重項エネルギーに移動して遅延蛍光として観測されたことを示すことになる。
エネルギーギャップ(Eg)の算出
前述の方法で得られた吸収スペクトルの長波長末端A(nm)からEg=1240/Aで算出する。
イオン化ポテンシャル(Ip)の測定
ITO(インジウム・スズ酸化物)の蒸着された透明支持基板(28mm×26mm×0.7mm)を市販の蒸着装置(長州産業(株)製)の基板ホルダーに固定し、対象化合物を入れたモリブデン製蒸着用ボートを装着した後、真空槽を5×10-4Paまで減圧する。次に、蒸着用ボートを加熱して対象化合物を蒸発させ、対象化合物の単独膜(Neat膜)を形成する。
得られた単独膜をサンプルとし、光電子分光計(住友重機械工業株式会社 PYS−201)を用いて対象化合物のイオン化ポテンシャルを測定する。
電子親和力(Ea)の算出
前述の方法で測定したイオン化ポテンシャルと前述の方法で算出したエネルギーギャップとの差より、電子親和力を見積ることができる。
励起一重項エネルギー準位E(S,Sh)、励起三重項エネルギー準位E(T,Sh)の測定
ガラス基板上に形成した対象化合物の単独膜について、77Kで、吸収スペクトルの長波長側から2番目の吸収ピークを励起光に蛍光スペクトルを観測し、その蛍光スペクトルのピーク短波長側の肩より励起一重項エネルギー準位E(S,Sh)を求める。
また、ガラス基板上に形成した対象化合物の単独膜について、77Kで、吸収スペクトルの長波長側から2番目の吸収ピークを励起光に燐光スペクトルを観測し、その燐光スペクトルのピーク短波長側の肩より励起三重項エネルギー準位E(T,Sh)を求める。
<有機EL素子の評価>
以上のように、本発明の化合物は、適切なエネルギーギャップ(Eg)、高い三重項励起エネルギー(ET)および小さいΔESTを特徴として有しているため、例えば発光層および電荷輸送層への適用が期待でき、特に発光層への適用が期待できる。
評価項目および評価方法
評価項目としては、駆動電圧(V)、発光波長(nm)、CIE色度(x,y)、外部量子効率(%)、発光スペクトルの最大波長(nm)および半値幅(nm)などがある。これらの評価項目は、適切な発光輝度時の値を用いることができる。
発光素子の量子効率には、内部量子効率と外部量子効率とがあるが、内部量子効率は、発光素子の発光層に電子(または正孔)として注入される外部エネルギーが純粋に光子に変換される割合を示している。一方、外部量子効率は、この光子が発光素子の外部にまで放出された量に基づいて算出され、発光層において発生した光子は、その一部が発光素子の内部で吸収されたりあるいは反射され続けたりして、発光素子の外部に放出されないため、外部量子効率は内部量子効率よりも低くなる。
分光放射輝度(発光スペクトル)と外部量子効率の測定方法は次の通りである。アドバンテスト社製電圧/電流発生器R6144を用いて、電圧を印加することにより素子を発光させた。TOPCON社製分光放射輝度計SR−3ARを用いて、発光面に対して垂直方向から可視光領域の分光放射輝度を測定した。発光面が完全拡散面であると仮定して、測定した各波長成分の分光放射輝度の値を波長エネルギーで割ってπを掛けた数値が各波長におけるフォトン数である。次いで、観測した全波長領域でフォトン数を積算し、素子から放出された全フォトン数とした。印加電流値を素電荷で割った数値を素子へ注入したキャリア数として、素子から放出された全フォトン数を素子へ注入したキャリア数で割った数値が外部量子効率である。また、発光スペクトルの半値幅は、極大発光波長を中心として、その強度が50%になる上下の波長間の幅として求められる。
次に、本発明の多環芳香族化合物を用いた有機EL素子の作製と評価について記載する。
有機EL素子の構成
本発明の多環芳香族化合物を用いて、以下の素子構成Aおよび素子構成Bの有機EL素子を製造した。
[素子構成A]
各層のリファレンスとなる構成材料を下記表1に示す。本構成における正孔輸送層材料、電子阻止層材料、発光層のホスト材料、発光層のドーパント材料または電子輸送層材料の少なくとも1つを本発明の多環芳香族化合物に代替することによって更なる特性改善が期待できる。なお、各層の膜厚や構成材料は本発明の多環芳香族化合物の基礎物性によって適宜変更することができる。
実施例(A−1)に係る有機EL素子における各層の材料構成を表1に示す。
Figure 2021172658
表1において、「HI」はN4,N4'−ジフェニル−N4,N4'−ビス(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)−[1,1'−ビフェニル]−4,4'−ジアミンであり、「HAT−CN」は1,4,5,8,9,12−ヘキサアザトリフェニレンヘキサカルボニトリルであり、「HT−1」はN−([1,1'−ビフェニル]−4−イル−9,9−ジメチル−N−[4−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)フェニル)−9H−フルオレン−2−アミン[1,1'−ビフェニル]−4−アミンであり、「HT−2」はN,N−ビス(4−(ジベンゾ[b,d]フラン−4−イル)フェニル)−[1,1':4',1"−テルフェニル]−4−アミンであり、「BH」は、2−(10−フェニルアントラセン−9−イル)ジベンゾ[b、d]フランであり、「ET−1」は、9,9'−(5−(6−(1,1'−ビフェニル)−4−イル)−2−フェニルピリミジン−4−イル)−1,3−フェニレン]ビス(9H−カルバゾール)であり、「ET−2」は2−エチル−1−(4−(10−フェニルアントラセン−9−イル)フェニル)−1H−ベンゾ[d]イミダゾールである。「Liq」と共に以下に化学構造を示す。
Figure 2021172658
スパッタリングにより180nmの厚さに成膜したITOを150nmまで研磨した、26mm×28mm×0.7mmのガラス基板((株)オプトサイエンス製)を透明支持基板とする。この透明支持基板を市販の蒸着装置(昭和真空(株)製)の基板ホルダーに固定し、HI、HAT−CN、HT−1、HT−2、BH、化合物(1−c1−8)、ET−1およびET−2をそれぞれ入れたモリブデン製蒸着用ボート、Liq、LiFおよびアルミニウムをそれぞれ入れた窒化アルミニウム製蒸着用ボートを装着する。
透明支持基板のITO膜の上に順次、下記各層を形成する。真空槽を5×10-4Paまで減圧し、まず、HIを加熱して膜厚40nmになるように蒸着し、次に、HAT−CNを加熱して膜厚5nmになるように蒸着し、次に、HT−1を加熱して膜厚45nmになるように蒸着し、次に、HT−2を加熱して膜厚10nmになるように蒸着して、4層からなる正孔層を形成する。次に、BHと化合物(1−c1−8)を同時に加熱して膜厚25nmになるように蒸着して発光層を形成する。BHと化合物(1−c1−8)の質量比がおよそ97対3になるように蒸着速度を調節する。さらに、ET−1を加熱して膜厚5nmになるように蒸着し、次に、ET−2とLiqを同時に加熱して膜厚25nmになるように蒸着して、2層からなる電子層を形成する。ET−2とLiqの質量比がおよそ50対50になるように蒸着速度を調節する。各層の蒸着速度は0.01〜1nm/秒である。その後、LiFを加熱して膜厚1nmになるように0.01〜0.1nm/秒の蒸着速度で蒸着し、次いで、アルミニウムを加熱して膜厚100nmになるように蒸着して陰極を形成し、有機EL素子を得る。
評価項目および評価方法
評価項目としては、駆動電圧(V)、発光波長(nm)、CIE色度(x,y)、外部量子効率(%)、発光スペクトルの最大波長(nm)および半値幅(nm)等がある。これらの評価項目は、例えば1000cd/m2発光時の値を用いることができる。
発光素子の量子効率には、内部量子効率と外部量子効率とがあるが、内部量子効率は、発光素子の発光層に電子(または正孔)として注入される外部エネルギーが純粋に光子に変換される割合を示している。一方、外部量子効率は、この光子が発光素子の外部にまで放出された量に基づいて算出され、発光層において発生した光子は、その一部が発光素子の内部で吸収されたりあるいは反射され続けたりして、発光素子の外部に放出されないため、外部量子効率は内部量子効率よりも低くなる。
分光放射輝度(発光スペクトル)と外部量子効率の測定方法は次の通りである。アドバンテスト社製電圧/電流発生器R6144を用いて、素子の輝度が1000cd/m2になる電圧を印加して素子を発光させる。TOPCON社製分光放射輝度計SR−3ARを用いて、発光面に対して垂直方向から可視光領域の分光放射輝度を測定する。発光面が完全拡散面であると仮定して、測定した各波長成分の分光放射輝度の値を波長エネルギーで割ってπを掛けた数値が各波長におけるフォトン数である。次いで、観測した全波長領域でフォトン数を積算し、素子から放出された全フォトン数とする。印加電流値を素電荷で割った数値を素子へ注入したキャリア数として、素子から放出された全フォトン数を素子へ注入したキャリア数で割った数値が外部量子効率である。また、発光スペクトルの半値幅は、極大発光波長を中心として、その強度が50%になる上下の波長間の幅として求められる。
ITO電極を陽極、LiF/アルミニウム電極を陰極として直流電圧を印加し、1000cd/m2発光時の特性を測定したところ、外部量子効率は6.9%であった。また、1000cd/m2発光時の電圧で連続駆動をして、初期輝度の95%以上の輝度を保持する時間を測定したところ、189時間であった。
[素子構成B]
各層のリファレンスとなる構成材料を下記表2に示す。本構成における正孔輸送層材料、電子阻止層材料、発光層のホスト材料、発光層のドーパント材料または電子輸送層材料の少なくとも1つを本発明の多環芳香族化合物に代替することによって更なる特性改善が期待できる。なお、各層の膜厚や構成材料は本発明の多環芳香族化合物の基礎物性によって適宜変更することができる。
Figure 2021172658
表2において、「NPD」はN,N'−ジフェニル−N,N'−ジナフチル−4,4'−ジアミノビフェニルであり、「TcTa」は4,4',4"−トリス(N−カルバゾリル)トリフェニルアミンであり、「mCP」は1,3−ビス(N−カルバゾリル)ベンゼンであり、「mCBP」は3,3'−ビス(N−カルバゾリル)−1,1'−ビフェニルであり「TSPO1」はジフェニル[4−(トリフェニルシリル)フェニル]ホスフィンオキシドであり、「2PXZ−TAZ」は10,10’−((4−フェニル−4H−1,2,4−トリアゾール−3,5−ジイル)ビス(4,1−フェニレン))ビス(10H−フェノキサジン)である。以下に化学構造を示す。
Figure 2021172658
<実施例B−1>
<素子構成B:ホスト化合物をmCBP、アシスティングドーパントを2PXZ−TAZ、エミッティングドーパントを化合物(1−c1−8)とした素子>
スパッタリングにより200nmの厚さに製膜したITOを50nmまで研磨した、26mm×28mm×0.7mmのガラス基板((株)オプトサイエンス製)を透明支持基板とする。この透明支持基板を市販の蒸着装置(長州産業(株)製)の基板ホルダーに固定し、NPD、TcTa、mCP、mCBP、2PXZ−TAZ、化合物(1−c1−8)、およびTSPO1をそれぞれ入れたタンタル製蒸着用ボート、LiFおよびアルミニウムをそれぞれ入れた窒化アルミニウム製蒸着用ボートを装着した。
透明支持基板のITO膜の上に順次、下記各層を形成した。真空槽を5×10-4Paまで減圧し、まず、NPDを加熱して膜厚40nmになるように蒸着し、次に、TcTaを加熱して膜厚15nmになるように蒸着して2層からなる正孔注入輸送層を形成した。次に、mCPを加熱して膜厚15nmになるように蒸着して電子阻止層を形成した。次に、ホストとしてmCBP、アシスティングドーパントとして2PXZ−TAZおよびエミッティングドーパントとして化合物(1−c1−8)を同時に加熱して膜厚20nmになるように共蒸着して発光層を形成した。ホスト、アシスティングドーパントおよびエミッティングドーパントの質量比がおよそ90対9対1になるように蒸着速度を調節した。次に、TSPO1を加熱して膜厚30nmになるように蒸着して電子輸送層を形成した。以上の各層の蒸着速度は0.01〜1nm/秒とした。その後、LiFを加熱して膜厚1nmになるように0.01〜0.1nm/秒の蒸着速度で蒸着し、次いで、アルミニウムを加熱して膜厚100nmになるように蒸着して陰極を形成し、有機EL素子を得た。このとき、アルミニウムの蒸着速度は1nm〜10nm/秒になるように調節した。
ITO電極を陽極、LiF/アルミニウム電極を陰極として直流電圧を印加し、100cd/m2発光時の特性を測定したところ外部量子効率は22,2%であった、また、100cd/m2発光時の電圧で連続駆動をして、初期輝度の90%以上の輝度を保持する時間を測定したところ、92時間であった。
素子構成Aは高い輝度において輝度を保持する時間が長いことを特徴とする素子構成であり、一方、素子構成Bは高い外部量子効率を得ることができることを特徴とする素子構成である。
<蒸着型有機EL素子の評価>
実施例G−1、実施例G−2、比較例CG−1、実施例GX−1、実施例GX−2、実施例BX−1および比較例CB−1に係る有機EL素子を作製し、輝度500cd/m2における、発光波長、半値幅、駆動電圧、外部量子効率、およびLT50(初期輝度500cd/m2における電流密度で連続駆動させたときの250cd/m2になるまでの時間)を測定した。
Figure 2021172658
表3において、「HATCN」、「TBB」、「TcTa」、「4CzIPN」、「T2T」、「TPBi」、「BCC−TPTA」、「FIrpic」、および「Liq」の化学構造を以下に示す。
Figure 2021172658
<実施例G−1>
スパッタリングにより200nmの厚さに製膜したITOを50nmまで研磨した、26mm×28mm×0.7mmのガラス基板((株)オプトサイエンス製)を透明支持基板とした。この透明支持基板を市販の蒸着装置(昭和真空(株)製)の基板ホルダーに固定し、HATCN、TBB、TcTa、4CzIPN、化合物(1−c1−8)、T2T、TPBiおよびLiqをそれぞれ入れたモリブデン製蒸着用ボート、LiFおよびアルミニウムをそれぞれ入れたタングステン製蒸着用ボートを装着した。
透明支持基板のITO膜の上に順次、下記各層を形成した。真空槽を5×10-4Paまで減圧し、まず、HATCNを加熱して膜厚5nmになるように蒸着して正孔注入層を形成した。次に、TBBを加熱して膜厚65nmになるように蒸着し、さらにTcTaを加熱して膜厚10nmになるように蒸着して二層からなる正孔輸送層を形成した。次に、TcTaと4CzIPNと化合物(1−c1−8)を同時に加熱して膜厚30nmになるように蒸着して発光層を形成した。TcTaと4CzIPNと化合物(1−c1−8)の質量比がおよそ85対14対1になるように蒸着速度を調節した。次に、T2Tを加熱して膜厚10nmになるように蒸着し、次いで、TPBiとLiqを加熱して膜厚40nmになるように蒸着して二層からなる電子輸送層を形成した。TPBiとLiqの質量比がおよそ70対30になるように蒸着速度を調整した。各層の蒸着速度は0.01〜1nm/秒であった。その後、LiFを加熱して膜厚1nmになるように0.01〜0.1nm/秒の蒸着速度で蒸着し、次いで、アルミニウムを加熱して膜厚100nmになるように蒸着して陰極を形成し、有機EL素子を得た。このとき、アルミニウムの蒸着速度は1〜10nm/秒になるように調節した。
<比較例CG−1、実施例G−2、実施例GX−1、実施例GX−2、実施例BX−1および比較例CB−1>
実施例G−1のアシスティングドーパントである4CzIPNおよびドーパントである化合物(1−c1−8)および混合比を表3に記載の各アシスティングドーパントおよび各ドーパントおよび各混合比へ変更して各素子を作製した。
各素子の評価結果を表4に示す。
Figure 2021172658
実施例G−1および実施例G−2は比較例CG−1と比べて、高い効率と長い素子寿命が得られた。
実施例G−1の素子構成を変更することで、実施例GX−1および実施例GX−2のようにエキシプレックスとアシスティングドーパントを用いた素子が実現可能である。
実施例GX−1のドーパントを変更することで、実施例BX−1のように青色発光の素子が実現可能である。
実施例BX−1は比較例CB−1と比べて、高い効率、小さな半値幅と長い素子寿命が得られた。
100 有機電界発光素子
101 基板
102 陽極
103 正孔注入層
104 正孔輸送層
105 発光層
106 電子輸送層
107 電子注入層
108 陰極

Claims (22)

  1. 下記式(1)で表される多環芳香族化合物;
    Figure 2021172658
    式(1)中、
    A環、B環、およびC環はそれぞれ独立して、アリール環またはヘテロアリール環であり、A環、B環、およびC環それぞれにおけるアリール環またはヘテロアリール環の少なくとも1つの水素は置換されていてもよく、
    D環は、アリール環、ヘテロアリール環、またはシクロアルカン環であり、D環におけるアリール環、ヘテロアリール環、またはシクロアルカン環の少なくとも1つの水素は置換されていてもよく、
    D環におけるシクロアルカン環のいずれか1つの−CH2−は−S−、−O−または>Si(−CH32で置換されていてもよく、
    A環、B環、C環およびD環それぞれにおけるアリール環、ヘテロアリール環、またはシクロアルカン環は少なくとも1つのシクロアルカンで縮合されていてもよく、当該シクロアルカンにおける少なくとも1つの水素は置換されていてもよく、当該シクロアルカンにおける少なくとも1つの−CH2−は−O−で置換されていてもよく、
    1はB、P、P=O、P=S、Al、Ga、As、Si−R、Ge−R、またはSn−Rであり、前記Si−R、Ge−R、およびSn−RのRは置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいアルキル、または置換されていてもよいシクロアルキルであり、
    1は、単結合、>O、>S、>Se、>N−R、>Si(−R)2、>C(−R)2、または>C=Oであり、前記>N−R、>Si(−R)2、および>C(−R)2のRはそれぞれ独立して水素、アリール、ヘテロアリール、アルキル、またはシクロアルキルであり、>Si(−R)2および>C(−R)2のそれぞれにおける2つのRは互いに結合して環を形成していてもよく、前記>N−R、>Si(−R)2、および>C(−R)2のRは、連結基または単結合を介して、B環および/またはD環と結合していてもよく、
    2は>Si(−R)2、>C(−R)2、または>C=Oであり、前記>Si(−R)2および>C(−R)2のRはそれぞれ独立して水素、アリール、ヘテロアリール、アルキル、またはシクロアルキルであり、>Si(−R)2および>C(−R)2のそれぞれにおける2つのRは互いに結合して環を形成していてもよく、前記>Si(−R)2および>C(−R)2のRは連結基または単結合を介して、A環および/またはC環と結合していてもよく、
    式(1)で表される化合物における少なくとも1つの水素はシアノ、ハロゲン、または重水素で置換されていてもよい。
  2. 1がBである請求項1に記載の多環芳香族化合物。
  3. 1が>O、>S、>N−R、または>C(−R)2である請求項1または2に記載の多環芳香族化合物。
  4. 2が>C(−R)2である請求項1〜3のいずれか一項に記載の多環芳香族化合物。
  5. 2である>C(−R)2のRがそれぞれ独立してアルキルである請求項4に記載の多環芳香族化合物。
  6. A環、B環、C環およびD環からなる群より選択される少なくとも1つにおけるアリール環、ヘテロアリール環、またはシクロアルカン環の少なくとも1つの水素が置換されている請求項1〜5のいずれか一項に記載の多環芳香族化合物。
  7. A環、B環、C環およびD環からなる群より選択される少なくとも1つにおけるアリール環、ヘテロアリール環、またはシクロアルカン環の少なくとも1つの水素が下記式(tR)で表される置換基に置換されている請求項6に記載の多環芳香族化合物;
    Figure 2021172658
    式(tR)中、Ra、Rb、およびRcはそれぞれ独立して炭素数1〜24のアルキルであり、前記アルキルにおける任意の−CH2−は−O−で置換されていてもよく、式(tR)で表される基は*においてアリール環、ヘテロアリール環、またはシクロアルカン環の少なくとも1つの水素と置換する。
  8. A環およびB環がそれぞれ独立して、置換されていてもよいベンゼン環、置換されていてもよいピリジン環、置換されていてもよいピリミジン環、置換されていてもよいピリダジン環、または置換されていてもよいトリアジン環であり、
    D環が、置換されていてもよいベンゼン環、置換されていてもよいピリジン環、置換されていてもよいピリミジン環、置換されていてもよいピリダジン環、置換されていてもよいトリアジン環、または置換されていてもよいテトラジン環である請求項1〜7のいずれか一項に記載の多環芳香族化合物。
  9. A環、B環、およびD環がそれぞれ独立して、置換されていてもよいベンゼン環である請求項8に記載の多環芳香族化合物。
  10. C環が下記式(c1)〜式(c18)からなる群より選択される1つの式で表されるアリール環またはヘテロアリール環である請求項1〜9のいずれか一項に記載の多環芳香族化合物;
    Figure 2021172658
    式(c1)〜式(c18)中、
    *および#は、Y1およびX2との結合位置を表し、
    *および#のいずれにおいてY1およびX2のいずれと結合していてもよく、
    Lは、>O、>S、>Se、>N−R、>Si(−R)2、または>C(−R)2であり、前記>N−R、>Si(−R)2、および>C(−R)2のRは、それぞれ独立して、水素、アリール、ヘテロアリール、アルキル、またはシクロアルキルであるか、または、Lは、追加の一つの結合手を有し、以下の部分構造(A40)となっていてもよく;
    Figure 2021172658
    式(A40)中、Meはメチルであり、X41は単結合、>O、>S、>N−R、>C(−R)2、または>C=Oであり、2つの*の位置で同一の単環に、**の位置で別の単環に結合しており、X41である>N−Rおよび>C(−R)2におけるRは水素、アリール、ヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキルであり、X41である>C(−R)2における2つのRは互いに結合して環を形成していてもよく、
    2はそれぞれ独立して、NまたはC−R2であり、前記C−R2のR2はそれぞれ独立して、水素、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、ジアルキルアミノ、ジアリールボリル(2つのアリールは単結合または連結基を介して結合していてもよい)、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、または置換シリルであり、これらにおける少なくとも1つの水素は、アリール、ヘテロアリール、アルキル、またはシクロアルキルで置換されていてもよく、また、
    隣接する2つのZ2における2つのR2が結合して式(A10)で表される基となっていてもよい;
    Figure 2021172658
    式(A10)中、LSは>N−R、>O、>Si(−R)2または>Sであり、前記>N−RのRは、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいアルキルまたは置換されていてもよいシクロアルキルであり、前記>Si(−R)2のRは、水素、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいアルキルまたは置換されていてもよいシクロアルキルであり、また連結基によって互いに結合していてもよく、また、LSである>N−RのRおよびLSである>Si(−R)2のRの少なくとも1つは連結基または単結合によりZ2であるC−R2中のR2と結合していてもよく、
    rは1〜4の整数であり、
    Sはそれぞれ独立して水素、置換されていてもよいアルキルまたは置換されていてもよいシクロアルキルであり、任意のRSは他の任意のRSと連結基または単結合により互いに結合していてもよく、
    式(A10)で表される基は2つの*でアリール環、ヘテロアリール環、またはシクロアルカン環の環上で隣接する2つの原子にそれぞれ結合する。
  11. C環が式(c1)、式(c2)、式(c3)、式(c4)、式(c5)、式(c8)、および式(c9)からなる群より選択される1つの式で表されるアリール環またはヘテロアリール環である請求項10に記載の多環芳香族化合物。
  12. 式(1−c1−8)で表される請求項1に記載の多環芳香族化合物;
    Figure 2021172658
    式中、Meはメチル、tBuはt−ブチルである。
  13. 式(1−c2f−64)または式(1−c2f−65)で表される請求項1に記載の多環芳香族化合物;
    Figure 2021172658
    式中、Meはメチル、tBuはt−ブチルである。
  14. 式(1−n−3)で表される請求項1に記載の多環芳香族化合物;
    Figure 2021172658
    式中、Meはメチル、tBuはt−ブチルである。
  15. 請求項1〜14のいずれか一項に記載の多環芳香族化合物を含有する、有機デバイス用材料。
  16. 陽極および陰極からなる一対の電極と、該一対の電極間に配置された発光層とを含み
    前記発光層が請求項1〜14のいずれか一項に記載の多環芳香族化合物を含有する、有機電界発光素子。
  17. 前記発光層が、ホストと、ドーパントとしての前記多環芳香族化合物とを含む、請求項16に記載の有機電界発光素子。
  18. 前記ホストが、アントラセン系化合物、フルオレン系化合物、またはジベンゾクリセン系化合物である、請求項17に記載の有機電界発光素子。
  19. 陽極および陰極からなる一対の電極と、該一対の電極間に配置された発光層と、前記陰極および前記発光層との間に配置された電子注入層および/または電子輸送層とを含み、
    前記電子注入層および/または前記電子輸送層が請求項1〜14のいずれか一項に記載の多環芳香族化合物を含有する、有機電界発光素子。
  20. 陽極および陰極からなる一対の電極と、該一対の電極間に配置された発光層と、前記陽極および前記発光層の間に配置された正孔注入層および/または正孔輸送層とを含み、
    前記正孔注入層および/または正孔輸送層が請求項1〜14のいずれか一項に記載の多環芳香族化合物を含有する、有機電界発光素子。
  21. 請求項16〜20のいずれか一項に記載の有機電界発光素子を備えた表示装置。
  22. 請求項16〜20のいずれか一項に記載の有機電界発光素子を備えた照明装置。
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WO2023068288A1 (ja) 2021-10-21 2023-04-27 旭化成株式会社 ジフェニルカーボネートの製造方法

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