JP2021059720A - ポリアミドイミド樹脂、ポリアミドイミドワニス、ポリアミドイミドフィルム、積層体、ディスプレイ用部材、タッチパネル部材、液晶表示装置、及び有機エレクトロルミネッセンス表示装置 - Google Patents

ポリアミドイミド樹脂、ポリアミドイミドワニス、ポリアミドイミドフィルム、積層体、ディスプレイ用部材、タッチパネル部材、液晶表示装置、及び有機エレクトロルミネッセンス表示装置 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、十分な透明性を有しつつ、高い弾性率と、向上した屈曲耐性を有するポリアミドイミドフィルムを提供することを主目的とする。【解決手段】下記式(1)で表される構成単位を含むポリイミド構成単位と、下記式(2)で表される構成単位を含むポリアミド構成単位とを含有するポリアミドイミド樹脂を含有する、ポリアミドイミドフィルム。【化1】(各符号は、明細書に記載の通りである。)

Description

本発明は、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミドイミドワニス、ポリアミドイミドフィルム、積層体、ディスプレイ用部材、タッチパネル部材、液晶表示装置、及び有機エレクトロルミネッセンス表示装置に関するものである。
薄い板ガラスは、硬度、耐熱性等に優れている反面、曲げにくく、落とすと割れやすく、加工性に問題があり、また、プラスチック製品と比較して重いといった欠点があった。このため、近年、樹脂基材や樹脂フィルム等の樹脂製品が、加工性、軽量化の観点でガラス製品と置き換わりつつあり、ガラス代替製品となる樹脂製品の研究が行われてきている。
例えば、液晶や有機EL等のディスプレイや、タッチパネル等のエレクトロニクスの急速な進歩に伴い、デバイスの薄型化や軽量化、更には、フレキシブル化が要求されるようになってきた。これらのデバイスには従来、薄い板ガラス上に様々な電子素子、例えば、薄型トランジスタや透明電極等が形成されているが、この薄い板ガラスを樹脂フィルムに変えることにより、パネル自体の耐衝撃性の強化、フレキシブル化、薄型化や軽量化が図れる。
ガラス代替となる樹脂材料として、例えば、ポリイミドが検討されている。一般にポリイミドは黄色或いは褐色に着色を示すことから、ディスプレイ用途や光学用途など透明性が要求される分野に用いることは困難であったが、透明性を向上したポリイミドが検討されてきている(例えば、特許文献1)。
また、ポリイミドにポリアミドを共重合する試みが行われている(特許文献2)。
国際公開2014/046180号公報 特表2014−528490号公報
ガラス代替製品となる樹脂製品には、透明性だけでなく、表面硬度や耐衝撃性のために、高い弾性率が求められる。
しかしながら、ポリイミドフィルムにおいて、高い弾性率を付与する成分は着色し易く、着色し難く高い透明性を付与する成分は弾性率を低くする傾向があり、高弾性率と低着色(高透明性)とはトレードオフの特性関係であった。
また、画面が折り畳めるモバイル機器は、持ち運ぶ際には折り畳んだ状態とし、使用する際には折り畳みを開いた状態とする。そのため、モバイル機器に搭載されるフレキシブルディスプレイには、繰り返し屈曲させても表示不良が発生しないことが求められ、フレキシブルディスプレイ用の基材や表面材には、繰り返し屈曲させたときの屈曲耐性(以下、動的屈曲耐性という場合がある)が求められる。更に、画面が折り畳めるモバイル機器は、折り畳んだ状態で持ち運ばれることが多いため、モバイル機器に搭載されるフレキシブルディスプレイには、長時間折り曲げられた状態が続いても、平坦に戻した時に元通りになることが求められ、フレキシブルディスプレイ用の基材や表面材にも、長時間折り曲げられた状態が続いた後の復元性(以下、静的屈曲耐性という場合がある)が求められる。
特許文献1に記載されているポリイミドフィルムでは、透明性は十分であっても、弾性率が不十分であった。
特許文献2に記載されているポリアミドイミドフィルムでは、弾性率は十分であっても、特に高湿度環境下で屈曲耐性が悪いという問題があった。
従来技術の透明性を有するフィルムは、高い弾性率と、屈曲耐性の更なる向上が求められていた。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、十分な透明性を有しつつ、高い弾性率と、向上した屈曲耐性を有するポリアミドイミドフィルムを提供することを主目的とする。
また、本発明は、前記ポリアミドイミドフィルムを製造するためのポリアミドイミド樹脂及びポリアミドイミドワニス、前記ポリアミドイミドフィルムを有する積層体、前記ポリアミドイミドフィルム又は前記積層体であるディスプレイ用部材、並びに、前記ポリアミドイミドフィルム又は前記積層体を備えるタッチパネル部材、液晶表示装置、及び有機エレクトロルミネッセンス表示装置を提供することを目的とする。
本発明は、下記式(1)で表される構成単位を含むポリイミド構成単位と、下記式(2)で表される構成単位を含むポリアミド構成単位とを含有するポリアミドイミド樹脂を提供する。
Figure 2021059720
(式(2)において、Xは芳香族環を有するジカルボン酸残基である2価の基を表す。)
また本発明は、前記式(1)で表される構成単位を含むポリイミド構成単位と、前記式(2)で表される構成単位を含むポリアミド構成単位とを含有するポリアミドイミド樹脂と、有機溶剤とを含有する、ポリアミドイミドワニスを提供する。
また本発明は、前記式(1)で表される構成単位を含むポリイミド構成単位と、前記式(2)で表される構成単位を含むポリアミド構成単位とを含有するポリアミドイミド樹脂を含有する、ポリアミドイミドフィルムを提供する。
本発明のポリアミドイミド樹脂、ポリアミドイミドワニス及びポリアミドイミドフィルムにおいては、前記式(2)で表される構成単位を含むポリアミド構成単位の含有割合が、前記式(1)で表される構成単位を含むポリイミド構成単位と前記式(2)で表される構成単位を含むポリアミド構成単位との合計に対して、10モル%以上80モル%以下であることが好ましい。下限値以上では、ポリアミドイミドフィルムの弾性率と室温での屈曲耐性が向上し易く、上限値以下では、ポリアミドイミド樹脂の溶剤への溶解性が良好になり易い。
本発明のポリアミドイミド樹脂、ポリアミドイミドワニス及びポリアミドイミドフィルムにおいては、前記式(2)中のXが、下記式(x1)〜(x3)で表される構造からなる群から選択される少なくとも1つであることが、π−π相互作用による分子間力を促して、高分子鎖の配列性を高める芳香族骨格を有する点から好ましい。
Figure 2021059720
(式(x3)において、Lは、−O−、−S−、−CH−、−CH(CH)−、−C(CH−、−C(CF−、又は−CO−を表し、*は結合手を表す。)
本発明のポリアミドイミド樹脂、ポリアミドイミドワニス及びポリアミドイミドフィルムにおいては、前記ポリイミド構成単位に、更に、下記式(3)で表される構成単位、下記式(4)で表される構成単位、又はこれらの組み合わせを含有することが、透明性、溶剤への溶解性を高める点から好ましい。
Figure 2021059720
また、本発明は、前記本発明のポリアミドイミドフィルムと、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物を含有するハードコート層とを有する積層体を提供する。
また、本発明は、前記本発明のポリアミドイミドフィルム、又は、前記本発明の積層体である、ディスプレイ用部材を提供する。当該ディスプレイ用部材は、フレキシブルディスプレイ用とすることができる。
また、本発明は、前記本発明のポリアミドイミドフィルム又は前記本発明の積層体と、
前記ポリアミドイミドフィルム又は前記積層体の一方の面側に配置された、複数の導電部からなる透明電極と、
前記導電部の端部の少なくとも一方側において電気的に接続される複数の取り出し線と、を有するタッチパネル部材を提供する。
また、本発明は、前記本発明のポリアミドイミドフィルム又は前記本発明の積層体と、
前記ポリアミドイミドフィルム又は前記積層体の一方の面側に配置された、対向基板間に液晶層を有してなる液晶表示部と、を有する液晶表示装置を提供する。
また、本発明は、前記本発明のポリアミドイミドフィルム又は前記本発明の積層体と、
前記ポリアミドイミドフィルム又は前記積層体の一方の面側に配置された、対向基板間に有機エレクトロルミネッセンス層を有してなる有機エレクトロルミネッセンス表示部と、を有する有機エレクトロルミネッセンス表示装置を提供する。
本発明によれば、十分な透明性を有しつつ、高い弾性率と、向上した屈曲耐性を有するポリアミドイミドフィルムを提供することができる。
また、本発明は、前記ポリアミドイミドフィルムを製造するためのポリアミドイミド樹脂及びポリアミドイミドワニス、前記ポリアミドイミドフィルムを有する積層体、前記ポリアミドイミドフィルム又は前記積層体であるディスプレイ用部材、並びに、前記ポリアミドイミドフィルム又は前記積層体を備えるタッチパネル部材、液晶表示装置、及び有機エレクトロルミネッセンス表示装置を提供することができる。
静的屈曲試験の方法を説明するための図である。 動的屈曲試験の方法を説明するための図である。 本発明のタッチパネル部材の一例の一方の面の概略平面図である。 図3に示すタッチパネル部材のもう一方の面の概略平面図である。 図3及び図4に示すタッチパネル部材のA−A’断面図である。 本発明の積層体を備える導電性部材の一例を示す概略平面図である。 本発明の積層体を備える導電性部材の別の一例を示す概略平面図である。 本発明のタッチパネル部材の別の一例を示す概略断面図である。 本発明の液晶表示装置の一例を示す概略断面図である。 本発明の液晶表示装置の別の一例を示す概略断面図である。 本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置の一例を示す概略断面図である。 本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置の別の一例を示す概略断面図である。
以下、本発明に係るポリアミドイミド樹脂、ポリアミドイミドワニス、ポリアミドイミドフィルム、当該ポリアミドイミドフィルムを用いた積層体、ディスプレイ用部材、タッチパネル部材、液晶表示装置、及び有機エレクトロルミネッセンス表示装置について詳細に説明する。
また、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件並びにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
また、本明細書において(メタ)アクリルとは、アクリル及びメタアクリルの各々を表す。
また、本明細書において「光」とは、活性光線又は放射線を意味し、例えば、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外線(EUV光)、X線、電子線等が包含されるものである。
また、本明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある場合がある。
また、本明細書において数値範囲を示す「〜」とは、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
I.ポリアミドイミド樹脂
本発明の1実施形態であるポリアミドイミド樹脂は、下記式(1)で表される構成単位を含むポリイミド構成単位と、下記式(2)で表される構成単位を含むポリアミド構成単位とを含有する。
Figure 2021059720
(式(2)において、Xは芳香族環を有するジカルボン酸残基である2価の基を表す。)
本発明の1実施形態であるポリアミドイミド樹脂は、前記式(1)で表される構成単位を含むポリイミド構成単位と、前記式(2)で表される構成単位を含むポリアミド構成単位とを含有することにより、十分な透明性を有しつつ、高い弾性率と、向上した屈曲耐性を有するポリアミドイミドフィルムを提供することができる。
本発明によれば、主鎖にエステル結合を介して2面角が捻れたパラビフェニレン基を含む特定の構造のテトラカルボン酸残基と前記特定のジアミン残基とを有するポリイミド構成単位に、更に、芳香族環を有するジカルボン酸残基を含み、水素結合による分子間相互作用を促すポリアミド構成単位を導入している。
本発明によれば、高分子の主鎖構造に芳香族環の捻れを持たせることにより、π共役高分子で起こる分子間エネルギー遷移を抑制することができ、十分な透明性を達成しつつ、アミド結合部位と、ポリイミド構成単位中にエステル結合部位とを導入することにより、水素結合形成による分子間力を高めることができ、高い弾性率と、向上した屈曲耐性も達成するフィルムを得ることができると推定される。
本発明によれば、特に高湿度環境下でも屈曲耐性が良好である。従来のポリイミドフィルムやポリアミドイミドフィルムは、高湿度環境下で吸湿し易く、塑性変形しやすくなって、屈曲耐性が悪くなっていたと推定される。それに対して、本発明のポリアミドイミドフィルムは、アミド結合部位と、ポリイミド構成単位中のエステル結合部位とが水素結合を形成することにより、高湿度環境下でも水分との水素結合を抑制できるため、高湿度環境下での屈曲耐性の劣化が抑制されて、屈曲耐性が良好になると推定される。
また、本発明の1実施形態であるポリアミドイミド樹脂は、前記式(1)で表される構成単位を含むことから、前記式(2)で表される構成単位を含んでいても、溶剤への溶解性が良好である。
1.ポリイミド構成単位
ポリイミド構成単位は、テトラカルボン酸成分(テトラカルボン酸二無水物若しくはテトラカルボン酸)とジアミン成分とを反応させて得られる構成単位であり、例えば、下記一般式(PI)で表される構成単位が挙げられる。
Figure 2021059720
(一般式(PI)において、Aは芳香族環又は脂肪族環を有するテトラカルボン酸残基である4価の基を表し、Bは、芳香族環又は脂肪族環を有するジアミン残基である2価の基を表す。)
ここで、テトラカルボン酸残基とは、テトラカルボン酸から、4つのカルボキシル基を除いた残基をいい、テトラカルボン酸二無水物から酸二無水物構造を除いた残基と同じ構造を表し、テトラカルボン酸二無水物残基であってもよい。
また、ジアミン残基とは、ジアミンから2つのアミノ基を除いた残基をいう。
本発明のポリアミドイミド樹脂におけるポリイミド構成単位には、前記式(1)で表される構成単位が必須成分として含まれる。
前記式(1)で表される構成単位は、下記式(1−1)で表されるテトラカルボン酸二無水物と、2,2−ビス(トリフルオロメチル)−4,4−ジアミノビフェニルとを反応させて得ることができる。
Figure 2021059720
本発明の1実施形態であるポリアミドイミド樹脂中のポリイミド構成単位の合計に対して、前記式(1)で表される構成単位の含有割合は100モル%であってもよい。
また、ポリイミド構成単位中には、本発明の効果が損なわれない限り、前記式(1)で表される構成単位とは異なる、他のポリイミド構成単位を含有していても良い。
本発明の1実施形態であるポリアミドイミド樹脂中のポリイミド構成単位の合計に対して、前記式(1)で表される構成単位の含有割合は、好ましくは50モル%以上、更に好ましくは60モル%以上、より更に好ましくは70モル%以上であり、好ましくは100モル%以下であり、90モル%以下であっても良い。前記式(1)で表される構成単位の含有割合が、前記下限値以上であると、十分な透明性を有しつつ、高い弾性率と、向上した屈曲耐性を有する点から好ましい。透明性と弾性率と屈曲耐性のバランスの向上や、更なる特性の追加のために、前記式(1)で表される構成単位とは異なる、他のポリイミド構成単位を含有していても良い。
本発明の1実施形態であるポリアミドイミド樹脂中のポリイミド構成単位に含まれるテトラカルボン酸残基の合計に対して、前記式(1−1)で表されるテトラカルボン酸二無水物残基の含有割合は、好ましくは50モル%以上、更に好ましくは60モル%以上、より更に好ましくは70モル%以上であり、好ましくは100モル%以下であり、90モル%以下であっても良い。前記式(1−1)で表されるテトラカルボン酸二無水物残基の含有割合が、前記下限値以上であると、十分な透明性を有しつつ、高い弾性率と、向上した屈曲耐性を有する点から好ましい。透明性と弾性率と屈曲耐性のバランスの向上や、更なる特性の追加のために、前記式(1−1)で表されるテトラカルボン酸二無水物残基とは異なる、他のテトラカルボン酸二無水物残基を含有していても良い。
ポリイミド構成単位中に含まれていても良い、他のポリイミド構成単位としては、例えば、前記一般式(PI)で表される構成単位のうち、前記式(1)で表される構成単位とは異なるポリイミド構成単位が挙げられる。
前記一般式(PI)で表される構成単位において、A及びBは各構成単位において同一であっても異なっていても良い。すなわち、前記一般式(PI)で表される構成単位において、A及びBはそれぞれ独立に、1種であっても2種以上含まれていても良い。
前記一般式(PI)で表される構成単位において、Aは芳香族環又は脂肪族環を有するテトラカルボン酸残基である4価の基を表す。Aとしては、例えば、下記式(a1)〜(a7)で表される4価の基、及びこれらの式で表される4価の基中の水素原子の一部又は全部がフルオロ基、メチル基、メトキシ基、トリフルオロメチル基、又はトリフルオロメトキシ基からなる群から選択される1種以上の置換基で置換された4価の基等が挙げられる。
Figure 2021059720
(式(a1)〜(a7)において、*は結合手を表し、Qは、単結合、−O−、−S−、−CH−、−CH(CH)−、−C(CH−、−C(CF−、−CO−、−SO−、−Ph−、−Ph−Qa2−Ph−、−Qa2−Ph−Qa2−、−Qa2−Ph−Ph−Qa2−、−Qa2−Ph−Qa2−Ph−Qa2−、又はフルオレン基を表す。Phはフェニレン基を表し、Qa2は、−O−、−S−、−CH−、−CH(CH)−、−C(CH−、−C(CF−、−CO−、又は−SO−を表す。)
の各環に対する結合位置は、それぞれ独立に、各環に結合している2つのカルボキシ基のうち一方のカルボキシ基に対してオルト位又はメタ位となる場合が挙げられる。Qa2の各環に対する結合位置は、それぞれ独立に、フェニレン基に対してはメタ位又はパラ位であることが好ましく、パラ位であることがより好ましい。
前記一般式(PI)で表される構成単位において、Aとしては、前記式(a1)〜(a7)で表される4価の基の中でも、前記式(a1)〜(a3)のように芳香族環を含む構造の場合は、透明性と溶剤への溶解性を付与する観点で、前記式(a1)及び(a2)で表される4価の基が好ましい。また、更に芳香族環同士の間に屈曲可能な構造を持たせたものが好ましく、前記式(a2)におけるQとしては、−O−、−S−、−CH−、−CH(CH)−、−C(CH−、−C(CF−、−SO−、−Qa2−Ph−Qa2−(Qa2は、−O−、−S−、−CH−、−CH(CH)−、−C(CH−、−C(CF−、−CO−、又は−SO−を表す。)であることが好ましい。更に、フッ素原子を含有する方が透明性が向上することから、Qとしては、−C(CF−、−Qa2−Ph−Qa2−(Qa2は、−C(CF−)が好ましく、弾性率の点から、Qとしては、中でも−C(CF−がより好ましい。
また、前記一般式(PI)で表される構成単位において、Aとしては、前記式(a1)〜(a7)で表される4価の基の中でも、前記式(a4)〜(a7)のように脂肪族環を含む場合は、脂肪族構造であることより、透明性、溶解性に優れている点から好ましい。中でも、弾性率が良好になる点から、屈曲部位の少ない構造(a4)、(a5)、又は(a6)で表される4価の基が好ましく、中でも(a4)で表される4価の基が好ましい。
前記一般式(PI)で表される構成単位において、Bは、芳香族環又は脂肪族環を有するジアミン残基である2価の基を表す。Bとしては、例えば、下記式(b1)〜(b6)で表される2価の基、及びこれらの式で表される2価の基中の水素原子の一部又は全部がフルオロ基、メチル基、メトキシ基、トリフルオロメチル基、又はトリフルオロメトキシ基からなる群から選択される1種以上の置換基で置換された2価の基等が挙げられる。
Figure 2021059720
(式(b1)〜(b6)において、*は結合手を表し、Qは、単結合、−O−、−S−、−CH−、−CH(CH)−、−C(CH−、−C(CF−、−CO−、−SO−、−Ph−、−Ph−Qb2−Ph−、−Qb2−Ph−Qb2−、−Qb2−Ph−Ph−Qb2−、−Qb2−Ph−Qb2−Ph−Qb2−、又はフルオレン基を表す。Phはフェニレン基を表し、Qb2は、−O−、−S−、−CH−、−CH(CH)−、−C(CH−、−C(CF−、−CO−、又は−SO−を表す。)
の各環に対する結合位置は、それぞれ独立に、各環に結合しているアミノ基に対してメタ位又はパラ位であることが好ましく、パラ位であることがより好ましくい。Qb2の各環に対する結合位置は、それぞれ独立に、フェニレン基に対してはメタ位又はパラ位であることが好ましく、パラ位であることがより好ましい。
前記一般式(PI)で表される構成単位において、Bとしては、前記(b1)〜(b6)で表される2価の基の中でも透明性と弾性率維持の点から、フェニレン骨格を有しつつ、フェニレン基同士のπ共役が切断された分子構造を有することが好ましく、更にフッ素を含んでいることがより好ましい。
フェニレン基同士のπ共役が切断された分子構造として、前記(b2)で表される2価の基において、Qが、−O−、−S−、−CH−、−CH(CH)−、−C(CH−、−C(CF−、又は−SO−であることが好ましく、更に−C(CF−又は−SO−であることが好ましい。
また、前記一般式(PI)で表される構成単位において、Bとしては、透明性と弾性率維持の点から下記一般式(B)で表される2価の基からなる群から選ばれる少なくとも1種の2価の基であることが好ましい。下記一般式(B)で表される2価の基としては、透明性の点からR及びRがメチル基、又はトリフルオロメチル基であることがより好ましく、透明性の点からトリフルオロメチル基であることがより更に好ましい。
Figure 2021059720
(一般式(B)において、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、メチル基、またはトリフルオロメチル基を表す。)
また、前記式(1)で表される構成単位とは異なる、他のポリイミド構成単位としては、下記式(5)で表される構成単位であっても良い。
Figure 2021059720
(式(5)において、B’は、芳香族環又は脂肪族環を有するジアミン残基である2価の基を表し、2,2−ビス(トリフルオロメチル)−4,4−ジアミノビフェニル残基とは異なる。)
前記式(5)において、B’は、2,2−ビス(トリフルオロメチル)−4,4−ジアミノビフェニル残基とは異なる、芳香族環又は脂肪族環を有するジアミン残基を表し、前記一般式(PI)におけるBと同様であって良い。
ポリイミド構成単位中に、他のポリイミド構成単位を含む場合、中でも、下記式(3)で表される構成単位、下記式(4)で表される構成単位、又はこれらの組み合わせを含有することが好ましい。下記式(3)で表される構成単位、下記式(4)で表される構成単位、又はこれらの組み合わせを含有する場合には、透明性を向上し、溶剤への溶解性を高める点から好ましい。
中でも下記式(3)で表される構成単位を含有する場合は、高弾性率を維持したまま、透明性を向上する点からより好ましい。
Figure 2021059720
前記式(3)で表される構成単位は、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物と、2,2−ビス(トリフルオロメチル)−4,4−ジアミノビフェニルとを反応させて得ることができる。前記式(4)で表される構成単位は、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物と、2,2−ビス(トリフルオロメチル)−4,4−ジアミノビフェニルとを反応させて得ることができる。
本発明の1実施形態であるポリアミドイミド樹脂中のポリイミド構成単位の合計に対して、前記式(1)で表される構成単位とは異なる、他のポリイミド構成単位の合計含有割合は、0モル%であってよいが、含まれる場合、好ましくは5モル%以上であり、10モル%以上であっても良く、好ましくは50モル%以下、更に好ましくは40モル%以下、より更に好ましくは30モル%以下である。前記他のポリイミド構成単位の合計含有割合が、前記下限値以上であると、高透明性を付与できる点から好ましく、前記上限値以下であると、弾性率が良好になる点から好ましい。
中でも、前記式(3)で表される構成単位、前記式(4)で表される構成単位、又はこれらの組み合わせを含有する場合、本発明の1実施形態であるポリアミドイミド樹脂中のポリイミド構成単位の合計に対して、前記式(3)で表される構成単位、及び前記式(4)で表される構成単位の合計含有割合は、好ましくは5モル%以上であり、10モル%以上であっても良く、好ましくは50モル%以下、更に好ましくは40モル%以下、より更に好ましくは30モル%以下である。前記式(3)で表される構成単位、及び前記式(4)で表される構成単位の合計含有割合が、前記下限値以上であると、高透明性を付与できる点から好ましく、前記上限値以下であると、弾性率が良好になる点から好ましい。
2.ポリアミド構成単位
ポリアミド構成単位は、ジカルボン酸成分とジアミン成分とを反応させて得られる構成単位であり、例えば、下記一般式(PA)で表される構成単位が挙げられる。
Figure 2021059720
(一般式(PA)において、Xは芳香族環を有するジカルボン酸残基である2価の基を表し、Bは、芳香族環又は脂肪族環を有するジアミン残基である2価の基を表す。)
ここで、ジカルボン酸残基とは、ジカルボン酸から、2つのカルボキシル基を除いた残基をいい、ジカルボン酸クロリドから2つのカルボン酸クロリド基を除いた残基と同じ構造を表す。
また、ジアミン残基とは、ジアミンから2つのアミノ基を除いた残基をいう。
本発明のポリアミドイミド樹脂におけるポリアミド構成単位には、前記式(2)で表される構成単位が必須成分として含まれる。前記一般式(2)で表される構成単位は、ポリアミド構成単位において1種又は2種以上含まれる。
前記式(2)で表される構成単位は、芳香族環を有するジカルボン酸成分と、2,2−ビス(トリフルオロメチル)−4,4−ジアミノビフェニルとを反応させて得ることができる。ジカルボン酸成分としては、ジカルボン酸とジカルボン酸クロリドとが挙げられるが、反応性の点からジカルボン酸クロリドを用いることが好ましい。
前記式(2)で表される構成単位は、前記式(2)中のXが、下記式(x1)〜(x3)で表される構造からなる群から選択される少なくとも1つであることが、十分な透明性を有しつつ、高い弾性率を有するポリアミドイミドフィルムを提供可能になる点から好ましい。
また、下記式(x1)で表される1,4−フェニレン基だけでなく、1,3−フェニレン基であっても良く、すなわち、式(X1’)であってもよい。
Figure 2021059720
(式(x3)において、Lは、−O−、−S−、−CH−、−CH(CH)−、−C(CH−、−C(CF−、又は−CO−を表し、*は結合手を表す。)
前記式(2)中のXにおいて、前記式(x1)〜(x3)で表される構造の中では、高弾性率、及び屈曲耐性が向上する点から、前記式(x1)、(x1’)又は式(x2)で表される構造がより好ましく、前記式(x2)で表される構造がより更に好ましい。
本発明の1実施形態であるポリアミドイミド樹脂中のポリアミド構成単位の合計に対して、前記式(2)で表される構成単位の含有割合は100モル%であってもよい。
また、ポリアミド構成単位中には、本発明の効果が損なわれない限り、前記式(2)で表される構成単位とは異なる、他のポリアミド構成単位を更に含有していても良い。
本発明の1実施形態であるポリアミドイミド樹脂中のポリアミド構成単位の合計に対して、前記式(2)で表される構成単位の含有割合は、好ましくは80モル%以上、更に好ましくは85モル%以上、より更に好ましくは90モル%以上であり、好ましくは100モル%以下であり、95モル%以下であっても良い。前記式(2)で表される構成単位の含有割合が、前記下限値以上前記上限値以下であると、透明性と弾性率のバランスの点から好ましい。
透明性と弾性率のバランスの点から、本発明の1実施形態であるポリアミドイミド樹脂中の前記式(2)で表される構成単位の合計に対して、前記式(2)中のXが、前記式(x1)〜(x3)で表される構造からなる群から選択される1種以上の合計の含有割合は100モル%であってもよく、80モル%以上100モル%以下、更に90モル%以上100モル%以下であることが好ましく、より更に95モル%以上100モル%以下であることが好ましい。
ポリアミド構成単位中には、本発明の効果が損なわれない限り、前記式(2)で表される構成単位とは異なる、他のポリアミド構成単位が含まれていても良く、例えば、前記一般式(PA)で表される構成単位のうち、前記式(2)で表される構成単位とは異なるポリアミド構成単位が挙げられる。
前記一般式(PA)で表される構成単位において、X及びBは各構成単位において同一であっても異なっていても良い。すなわち、前記一般式(PA)で表される構成単位において、X及びBはそれぞれ独立に、1種であっても2種以上含まれていても良い。
前記一般式(PA)において、Xは、前記式(2)で表される構成単位におけるXと同様であって良く、Bは、前記一般式(PI)で表される構成単位におけるBと同様であって良い。
ポリアミド構成単位中に含まれていても良い、前記式(2)で表される構成単位とは異なる、他のポリアミド構成単位としては、透明性の点から、前記一般式(PA)において、Xは、前記式(x1)〜(x3)で表される構造からなる群から選択される少なくとも1つであり、Bは、前記(b2)で表される2価の基において、Qが、−O−、−S−、−CH−、−CH(CH)−、−C(CH−、−C(CF−、又は−SO−であるか、或いは、前記一般式(B)で表される2価の基においてR及びRが水素原子又はメチル基であることが好ましく、前記(b2)で表される2価の基において、Qが、−C(CF−又は−SO−であるか、或いは、前記一般式(B)で表される2価の基において、R及びRがメチル基であることがより好ましく、前記(b2)で表される2価の基において、Qが、−C(CF−であることがより更に好ましい。
3.ポリアミドイミド樹脂の組成
前記式(2)で表される構成単位を含むポリアミド構成単位の含有割合は、前記式(1)で表される構成単位を含むポリイミド構成単位と前記式(2)で表される構成単位を含むポリアミド構成単位との合計に対して、好ましくは10モル%以上、更に好ましくは30モル%以上、より更に好ましくは40モル%以上であり、より更に好ましくは50モル%以上であり、好ましくは80モル%以下、更に好ましくは70モル%以下、より更に好ましくは60モル%以下である。前記式(2)で表される構成単位を含むポリアミド構成単位の含有割合が、前記下限値以上では、ポリアミドイミドフィルムの弾性率と室温での屈曲耐性が向上し易く、前記上限値以下では、ポリアミドイミド樹脂の溶剤への溶解性と、高温高湿下での屈曲耐性が良好になり易い点から好ましい。
前記式(2)中の芳香族環を有するジカルボン酸残基Xの含有割合は、ポリアミドイミド樹脂中のテトラカルボン酸残基とジカルボン酸残基の合計に対して、好ましくは10モル%以上、更に好ましくは30モル%以上、より更に好ましくは40モル%以上であり、より更に好ましくは50モル%以上であり、好ましくは80モル%以下、更に好ましくは70モル%以下、より更に好ましくは60モル%以下である。前記式(2)中の芳香族環を有するジカルボン酸残基Xの含有割合が、ポリアミドイミド樹脂中のテトラカルボン酸残基とジカルボン酸残基の合計に対して、前記下限値以上では、ポリアミドイミドフィルムの弾性率と室温での屈曲耐性が向上し易く、前記上限値以下では、ポリアミドイミド樹脂の溶剤への溶解性と、高温高湿下での屈曲耐性が良好になり易い点から好ましい。
また、本発明のポリアミドイミド樹脂は、本発明の効果が損なわれない限り、その一部に前記ポリイミド構成単位及び前記ポリアミド構成単位とは異なる構造を有していても良い。
本発明のポリアミドイミド樹脂は、前記式(1)で表される構成単位を含むポリイミド構成単位と前記式(2)で表される構成単位を含むポリアミド構成単位との合計が、ポリアミドイミド樹脂の全構成単位の95%以上であることが好ましく、98%以上であることがより好ましく、100%であることがより更に好ましい。
前記ポリイミド構成単位及び前記ポリアミド構成単位とは異なる構造としては、例えば、テトラカルボン酸成分が完全にイミド化されずに一部にポリアミド酸構造を有する構成単位、トリメリット酸無水物のようなトリカルボン酸残基を含むポリアミドイミド構成単位等が挙げられる。
ポリアミドイミド樹脂中の各構成単位、及び各残基の含有割合(モル%)は、H−NMRを用いて測定することができ、ポリアミドイミド製造時には原料の仕込み比から求めることもできる。また、ポリアミドイミド樹脂の構造は、NMR、各種質量分析等を用いて行うことができる。また、ポリアミドイミド樹脂中の各残基の構造や含有割合は、例えば、ポリアミドイミドをアルカリ水溶液、又は、超臨界メタノールにより分解し、得られた分解物について、高速液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフ質量分析計、NMR、元素分析、XPS/ESCA及びTOF−SIMSを用いて求めることができる。
4.ポリアミドイミド樹脂の特性
本発明のポリアミドイミド樹脂のゲル浸透クロマトグラフィーのポリスチレン換算による重量平均分子量は、好ましくは50,000以上であり、より好ましくは100,000以上、より更に好ましくは150,000以上であり、好ましくは1,000,000以下であり、より好ましくは500,000以下、より更に好ましくは300,000以下である。
前記ポリアミドイミド樹脂の重量平均分子量が前記下限値以上であると、焼成後にクラックや白化などの外観不良が生じ難く、透明性が良好なフィルムを得やすい点から好ましい。一方、前記上限値以下であると、合成、ワニス調製、フィルム形成時に高粘度化が抑制され、フィルムを形成しやすくなる点から好ましい。
ポリアミドイミド樹脂の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定できる。具体的には、ポリアミドイミドを0.1質量%の濃度のN−メチルピロリドン(NMP)溶液とし、展開溶媒は、含水量500ppm以下の30mmol%LiBr−NMP溶液を用い、東ソー製GPC装置(HLC−8120、使用カラム:SHODEX製GPC LF−804)を用い、サンプル打ち込み量50μL、溶媒流量0.4mL/分、37℃の条件で測定を行う。重量平均分子量は、サンプルと同濃度のポリスチレン標準サンプルを基準に求める。
本発明のポリアミドイミド樹脂は、耐熱性の点から、ガラス転移温度が250℃以上であることが好ましく、更に、270℃以上であることが好ましい。一方、ベーク温度低減の点から、ガラス転移温度が400℃以下であることが好ましい。
また、本発明のポリアミドイミド樹脂は、損失弾性率を貯蔵弾性率で除した値であるtanδ曲線において、ピークの頂点を150℃以上の温度領域にのみ有するものであることが好ましい。前記tanδ曲線で、ピークの頂点が150℃未満に存在すると、ポリアミドイミドの分子鎖が動きやすく、塑性変形しやすくなって、屈曲耐性が悪くなる恐れがあるのに対し、ピークの頂点が150℃未満に存在しないと、分子鎖の運動性が抑制され、塑性変形し難くなり、屈曲耐性を向上することが出来るからである。
また、前記tanδ曲線で、ピークの頂点を150℃以上の温度領域にのみ有すると、高温環境下、例えば夏の車内などにおいても、熱変形によって屈曲耐性が損なわれることが抑制されるため、高温環境下でも屈曲耐性が向上したものとなる。
また、前記tanδ曲線で、ピークの頂点を150℃以上の温度領域にのみ有すると、引張弾性率が高くなる傾向があり、表面硬度が高くなる傾向がある。
本発明のポリアミドイミド樹脂は、屈曲耐性や表面硬度を向上する点から、前記tanδ曲線で、ピークの頂点を200℃以上の温度領域にのみ有するものであることがより好ましく、250℃以上の温度領域にのみ有するものであることがより更に好ましく、270℃以上の温度領域にのみ有するものであることがより更に好ましい。一方、ベーク温度を低減することができる点から、前記tanδ曲線で、ピークの頂点は400℃以下の温度領域に有することが好ましい。
前記tanδ曲線は、動的粘弾性測定によって、温度とtanδ(tanδ=損失弾性率(E’’)/貯蔵弾性率(E’))の関係から求められるものであり、ピークの極大値が最大であるピークの頂点の温度をガラス転移温度の指標とすることができる。動的粘弾性測定は、ポリアミドイミド樹脂を単独で用いて、後述するポリアミドイミドフィルムと同様に40μmのフィルムを製造し、当該フィルムを用いて、例えば、動的粘弾性測定装置 RSA−G2(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株))によって、測定範囲を−150℃以上490℃以下として、周波数1Hz、昇温速度5℃/minにより行うことができる。また、サンプル幅を5mm、チャック間距離を20mmとして測定することができる。ピーク及び変曲点の解析時は、目視評価せず、データを数値化して、数値から解析する。
なお、温度(横軸)とtanδ(tanδ=損失弾性率(E’’)/貯蔵弾性率(E’))(縦軸)の曲線において、ピークとは、tanδの値が0.2以上、好ましくは0.3以上であって極大値を有し、且つ、ピークの谷と谷の間であるピーク幅が3℃以上であるものをいい、ノイズ等測定由来の曲線における細かい上下変動については、前記ピークの頂点のピークとして観測しない。
tanδ曲線を測定するサンプルとしては、25℃ RH60%の環境下に2時間静置したポリアミドイミドフィルムを10cm角以上にサンプリングしたフィルムのさらに中央部を、剃刀またはメスにて5mm幅にスリットの入った切り出し治具を用いて、幅5mm×長さ50mmに(チャック時にサンプル長が20mmとなるように)切り出した物を用いる。幅の測定はノギスを用いて、位置を変えて3回計測した平均値を記録する。この際、幅測定の一部に平均値の3%以上の変動幅のある場合、そのサンプルは使用しない。
本発明のポリアミドイミド樹脂は、十分な透明性を有する点から、単独で40μmのフィルムを形成した場合に、JIS K7361−1に準拠して測定する全光線透過率が、80.0%以上であることが好ましい。本発明のポリアミドイミド樹脂を単独で用いて形成した40μmのフィルムのJIS K7361−1に準拠して測定する全光線透過率は、85.0%以上であることがより好ましく、88.0%以上であることが更に好ましく、89.0%以上であることがより更に好ましい。
当該全光線透過率は、後述するポリアミドイミドフィルムのJIS K7361−1に準拠して測定する全光線透過率と同様にして測定することができる。
本発明のポリアミドイミド樹脂は、十分な透明性を有する点から、単独で40μmのフィルムを形成した場合に、JIS K7373−2006に準拠して算出される黄色度(YI値)が、4.0以下であることが好ましい。このように黄色度が低いと、黄色味の着色が抑制され、光透過性が向上する点から好ましい。前記JIS K7373−2006に準拠して算出される黄色度(YI値)は、3.8以下であることが好ましく、3.6以下であることが更に好ましい。
当該黄色度(YI値)は、後述するポリアミドイミドフィルムのJIS K7373−2006に準拠して算出される黄色度(YI値)と同様にして算出することができる。
本発明のポリアミドイミド樹脂は、十分な弾性率を有する点から、単独で40μmのフィルムを形成した場合に、10mm×150mmの試験片をJIS K7127に準拠し、引張り速度を50mm/分、チャック間距離を100mmとして測定する25℃における引張弾性率が、5.0GPa以上であることが好ましい。このように、25℃(室温)での引張弾性率が高いと、保護フィルムとして十分な表面硬度を室温でも維持することができ、表面材乃至基材として用いることができる。前記引張弾性率は、5.5GPa以上であることがより好ましく、5.8GPa以上であることが更に好ましく、6.0GPa以上であることがより更に好ましい。一方で、前記引張弾性率は、屈曲耐性を向上させる点から、15.0GPa以下であっても良い。
当該引張弾性率は、後述するポリアミドイミドフィルムのJIS K7127に準拠して算出される引張弾性率と同様にして算出することができる。
5.ポリアミドイミド樹脂の製造方法
本発明のポリアミドイミド樹脂の製造方法としては特に限定されないが、例えば、下記式(1−1)で表されるテトラカルボン酸二無水物と必要に応じて芳香族環又は脂肪族環を有するテトラカルボン酸二無水物とを含む1種又は2種以上のテトラカルボン酸二無水物と、2,2−ビス(トリフルオロメチル)−4,4−ジアミノビフェニルと必要に応じて芳香族環又は脂肪族環を有するジアミンとを含む1種又は2種以上のジアミンとを反応させることにより、ポリイミド前駆体(ポリアミド酸)を得る工程と、得られた前記ポリイミド前駆体(ポリアミド酸)と、芳香族環を有するジカルボン酸成分とを反応させることにより、ポリアミド−ポリイミド前駆体(ポリアミド酸)共重合体を得る工程と、得られた前記ポリアミド−ポリイミド前駆体(ポリアミド酸)共重合体をイミド化する工程を経て製造することができる。
Figure 2021059720
前記一般式(1−1)で表されるテトラカルボン酸二無水物は、対応するビフェニル4,4’−ジオール類と、トリメリット酸類とを用いて公知のエステル化反応により得ることができる。前記トリメリット酸類としては、無水トリメリット酸、無水トリメリット酸ハライド等が挙げられる。2,2−ビス(トリフルオロメチル)−4,4−ジアミノビフェニル(TFMB)を製造するための方法としては特に限定されず、公知の製造方法を適宜採用することができる。2,2−ビス(トリフルオロメチル)−4,4−ジアミノビフェニル(TFMB)としては、市販品を適宜用いても良い。
必要に応じて用いられる芳香族環又は脂肪族環を有するテトラカルボン酸二無水物、及び、芳香族環又は脂肪族環を有するジアミンとしてはそれぞれ、前記一般式(PI)におけるA:芳香族環又は脂肪族環を有するテトラカルボン酸残基の構造に対応するテトラカルボン酸二無水物、B:芳香族環又は脂肪族環を有するジアミン残基の構造に対応するジアミンを適宜選択して用いればよい。
テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、前記式(a1)〜(a7)で表されるテトラカルボン酸残基、及びこれらの式で表されるテトラカルボン酸残基中の水素原子の一部又は全部がフルオロ基、メチル基、メトキシ基、トリフルオロメチル基、又はトリフルオロメトキシ基からなる群から選択される1種以上の置換基で置換されたテトラカルボン酸残基の構造に対応するテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
ジアミンとしては、例えば、前記式(b1)〜(b6)で表されるジアミン残基、及びこれらの式で表されるジアミン残基中の水素原子の一部又は全部がフルオロ基、メチル基、メトキシ基、トリフルオロメチル基、又はトリフルオロメトキシ基からなる群から選択される1種以上の置換基で置換されたジアミン残基の構造に対応するジアミンが挙げられる。
必要に応じて用いられる芳香族環又は脂肪族環を有するテトラカルボン酸二無水物としては、具体的に例えば、透明性を向上し、溶剤への溶解性向上の点から、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、ジシクロヘキサン−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、3,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、3,3’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、4,4’−オキシジフタル酸無水物、及び、3,4’−オキシジフタル酸無水物が挙げられ、弾性率を向上する点から、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
必要に応じて用いられる芳香族環又は脂肪族環を有するジアミンとしては、例えば、具体的に例えば、透明性、弾性率向上の点から、trans−シクロヘキサンジアミン、trans−1,4−ビスメチレンシクロヘキサンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、3,3’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−[(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン−2,2−ジイル)ビス(4,1−フェニレンオキシ)]ジアニリン、2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
必要に応じて用いられる芳香族環又は脂肪族環を有するテトラカルボン酸二無水物、及び、芳香族環又は脂肪族環を有するジアミンを製造するための方法としては特に限定されず、公知の製造方法を適宜採用することができ、市販品を適宜用いても良い。
前記ポリイミド前駆体は、上述のテトラカルボン酸二無水物と、上述のジアミンとを、溶剤中で反応させて得られる。ポリイミド前駆体の合成に用いる溶剤としては、上述のテトラカルボン酸二無水物及びジアミンを溶解可能であれば特に制限はなく、例えば非プロトン性極性溶剤または水溶性アルコール系溶剤等を用い得る。本発明においては、中でも、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等の窒素原子を含む有機溶剤;γ−ブチロラクトン等を用いることが好ましい。なお、有機溶剤とは、炭素原子を含む溶剤である。
また、前記ポリイミド前駆体溶液が、少なくとも2種のテトラカルボン酸酸二無水物を組み合わせて調製される場合、ジアミンが溶解した重合溶媒に少なくとも2種の酸二無水物を一度に添加し、ポリアミド酸を合成してもよいし、少なくとも2種の酸二無水物を適切なモル比で段階を踏んで反応液に添加し、ある程度、各原料が高分子鎖へ組み込まれるシーケンスをコントロールしてもよい。
たとえば、ジアミンが溶解された反応液に、一般式(1−1)で表されるテトラカルボン酸二無水物を投入し反応させることで、一般式(1−1)で表されるテトラカルボン酸二無水物とジアミンが反応したアミド酸を合成し、そこへ、一般式(1−1)で表されるテトラカルボン酸二無水物とは異なるテトラカルボン酸二無水物を投入し、必要に応じて更にジアミンを加えてポリアミド酸を重合しても良い。この方法で重合すると、一般式(1−1)で表されるテトラカルボン酸二無水物が1つのジアミンを介して、連結した形でポリアミド酸の中に導入される。
このような方法でポリアミド酸を重合することは、主鎖にエステル結合を介して2面角がねじれたパラビフェニレン基を含む特定の構造のテトラカルボン酸残基の位置関係がある程度特定され、表面硬度が良好で屈曲耐性の優れたポリアミドイミドフィルムを得易い点から好ましい。
ポリイミド前駆体(ポリアミド酸)を得る工程においては、例えば、溶剤中、ジアミン成分100モル%に対して、テトラカルボン酸二無水物成分aモル%を反応させることにより、ポリイミド前駆体(ポリアミド酸)を得て、その後、当該反応溶液中で、前記ポリイミド前駆体(ポリアミド酸)と(100−a)モル%のジカルボン酸成分とを反応させることにより、ポリアミド−ポリイミド前駆体(ポリアミド酸)共重合体を得ることが、より高分子量体を得られる点から好ましい。
芳香族環を有するジカルボン酸成分としては、芳香族環を有するジカルボン酸、芳香族環を有するジカルボン酸クロリドが挙げられるが、ジカルボン酸クロリドの方が反応性が高く、高分子量体を得られる点から芳香族環を有するジカルボン酸クロリドを用いることが好ましい。
芳香族環を有するジカルボン酸成分としては、例えば、前記式(x1)〜(x3)で表される構造からなる群から選択される少なくとも1つのジカルボン酸残基の構造に対応するジカルボン酸クロリドを用いることが好ましい。
前記ジカルボン酸成分としては、具体的には例えば、テレフタル酸ジクロリド、イソフタル酸ジクロリド、2,6−ナフタレンジカルボン酸クロリド、4,4’−ビフェニルジカルボニルクロリド、4,4−オキシビス(ベンゾイルクロリド)等が挙げられる。
イミド化するために用いられるポリアミド−ポリイミド前駆体共重合体としては、合成反応により得られたポリアミド−ポリイミド前駆体共重合体溶液をそのまま用いても良いし、ポリアミド−ポリイミド前駆体共重合体溶液の溶剤を乾燥させ、別の溶剤に溶解して用いても良い。
ポリイミド前駆体部分をイミド化する方法としては、加熱により脱水閉環反応を行う加熱イミド化と、化学イミド化剤(脱水閉環剤)を用いて脱水閉環反応を行う化学イミド化が挙げられる。中でも、加熱による黄変を抑制する点から、化学イミド化を用いることが好ましい。
化学イミド化を行う場合は、化学イミド化剤としてピリジンやβ−ピコリン酸等のアミン、ジシクロヘキシルカルボジイミドなどのカルボジイミド、無水酢酸等の酸無水物等、公知の化合物を用いても良い。酸無水物としては無水酢酸に限らず、プロピオン酸無水物、n−酪酸無水物、安息香酸無水物、トリフルオロ酢酸無水物等が挙げられるが特に限定されない。また、その際にピリジンやβ−ピコリン酸等の3級アミンを併用してもよい。ただし、これらアミン類は、フィルム中に残存すると光学特性、特に黄色度(YI値)を低下させるため、ポリアミド−ポリイミド前駆体共重合体からポリアミドイミドへと反応させた反応液を、再沈殿などにより精製し、ポリアミドイミド以外の化学イミド化剤成分をそれぞれ、ポリアミドイミド全重量の100ppm以下まで除去することが好ましい。
ポリアミド−ポリイミド前駆体共重合体の化学イミド化を行う反応液に用いられる有機溶剤としては、前記ポリアミド−ポリイミド前駆体共重合体が溶解可能であれば特に制限はない。例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等の窒素原子を含む有機溶剤;γ−ブチロラクトン等を用いることができる。
ポリアミドイミドへと反応させた反応液を再沈殿する方法としては、一般的には、大量の貧溶媒中へ、反応液を撹拌しながら滴下する方法が挙げられる。不純物をより低減し易い点から、反応液を再沈殿する方法としては、ポリアミドイミドへと反応させた反応液を必要に応じて適切な濃度まで希釈後、反応液へ、ポリアミドイミドの貧溶媒を徐々に加えてポリアミドイミドを析出させる方法が好ましい。
ポリアミドイミドを析出させるために前記貧溶媒を滴下するときの、前記反応液(ポリアミドイミド溶液)の固形分濃度は、収率の点及び不純物を効率良く除去する点から、0.1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、1質量%以上10質量%以下であることがより好ましい。
ポリアミドイミドの析出に適した、前記ポリアミドイミド溶液の固形分濃度とするために、適宜ポリアミドイミドの良溶媒を用いて希釈してもよい。
なお、ポリアミドイミドの良溶媒は、目安として、ポリアミドイミドの溶解度が25℃で20g/100g以上である溶媒の中から適宜選択して用いることができる。
また、ポリアミドイミドの貧溶媒は、目安として、ポリアミドイミドの溶解度が25℃で20g/100g未満の溶媒の中から適宜選択して用いることができる。
例えば、ポリアミドイミドへと反応させた反応液に、例えば、N,N−ジメチルアセトアミド等のポリアミドイミドの良溶媒である有機溶剤を加え均一になるまで撹拌して反応液を希釈し、次にt−ブタノール、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、2−ブタノール、シクロヘキサノール、t−アミルアルコール等のアルコール系有機溶剤を徐々に加えてポリアミドイミドを析出させ、白色スラリーを得て、当該スラリーをろ過してポリアミドイミドを得る。前記アルコール系有機溶剤としては、中でも、ポリイミド部分の安定性に優れる点から、2級又は3級アルコールを用いることが好ましく、3級アルコールを用いることがより好ましい。
上記のように再沈殿させて得られたポリアミドイミドは、屈曲耐性がより向上する点から、残留溶剤や反応により生成する塩酸等を除くために有機溶剤を用いた洗浄工程を繰り返すことが好ましい。
例えば、再沈殿させて得られたポリアミドイミドを洗浄用有機溶剤中で洗浄し、その後ろ過する、という洗浄工程を5回以上繰り返し、真空乾燥機を用いて100℃〜120℃で乾燥し、ポリアミドイミドを得る。
洗浄用有機溶剤としては、再沈殿させて得られたポリアミドイミドに含まれる残留溶剤等と相溶性が高く、ポリアミドイミドの貧溶媒であって、且つ、真空乾燥機を用いて100℃〜120℃で乾燥すれば全て揮発することが可能なように沸点が真空乾燥機の乾燥温度未満の有機溶剤から選択する。
例えば、残留溶剤が、ポリアミド−ポリイミド前駆体を調製する際に用いられるN,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等の場合、イソプロピルアルコール、メタノール等が洗浄用有機溶剤として好適に用いられる。洗浄用有機溶剤としては、1種又は2種以上用いることができる。
6.ポリアミドイミド樹脂の用途
本発明のポリアミドイミド樹脂は、薄くて曲げられるフレキシブルタイプの有機ELディスプレイや、スマートフォンや腕時計型端末などの携帯端末、自動車内部の表示装置、腕時計などに使用するフレキシブルパネル等、フレキシブルディスプレイ用の基材や表面材に好適に用いることができる。また、本発明のポリアミドイミド樹脂は、液晶表示装置、有機EL表示装置等の画像表示装置用部材や、タッチパネル用部材、フレキシブルプリント基板、表面保護膜や基板材料等の太陽電池パネル用部材、光導波路用部材、その他半導体関連部材等に適用することもできる。
また、本発明のポリアミドイミド樹脂は、上述のような用途以外にも、例えば、自動車用部品、航空宇宙用部品、軸受部品、シール材、ベアリング部品、ギアホイールおよびバルブ部品等に、適用することもできる。
II.ポリアミドイミドワニス
本発明のポリアミドイミドワニスは、前記本発明のポリアミドイミド樹脂と、有機溶剤とを含有する。
本発明のポリアミドイミドワニスは、本発明の効果が損なわれない限り、更にその他の成分を含有していても良い
1.ポリアミドイミドワニスの組成
本発明のポリアミドイミドワニスに含まれる、ポリアミドイミド樹脂は、前述の本発明のポリアミドイミド樹脂と同様であって良いので、ここでの説明を省略する。
ポリアミドイミドワニスに含まれる有機溶剤は、前述の本発明のポリアミドイミド樹脂を溶解可能であれば特に制限はなく、例えば非プロトン性極性溶剤または水溶性アルコール系溶剤等を用い得る。本発明においては、中でも、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等の窒素原子を含む有機溶剤;γ−ブチロラクトン等を用いることが好ましい。
ワニスは、必要に応じて添加剤を含有していてもよい。当該添加剤としては、後述するポリアミドイミドフィルムの説明における、必要に応じて含まれていても良い添加剤と同様のものを用いることができる。
2.ポリアミドイミドワニスの調製
ポリアミドイミドワニスは、有機溶剤に、前述の本発明のポリアミドイミド樹脂を溶解させ、更に必要に応じて添加剤を溶解乃至分散させることにより、調製することができる。
ワニス中のポリアミドイミドの含有割合は、用途等に合わせて適宜選択されれば良く、特に限定されない。
後述する本発明のポリアミドイミドフィルムの製造方法に用いられるポリアミドイミドワニスは、ポリアミドイミドの含有割合がポリアミドイミドワニス中に好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下である。
ポリアミドイミドの含有割合が、前記下限値以上であると、フィルム形成時の膜厚ムラや乾燥ムラが発生しにくくなる点から好ましく、前記上限値以下であると、コーティング前の準備として異物除去のために濾過を行うが、ワニスの通過性が良好である点から好ましい。
ポリアミドイミドワニスの粘度は、用途等に合わせて適宜選択されれば良く、特に限定されない。
後述する本発明のポリアミドイミドフィルムの製造方法に用いられるポリアミドイミドワニスは、回転粘度計により測定した25℃における粘度が好ましくは1000mPa・s以上、より好ましくは3000mPa・s以上であり、好ましくは10000mPa・s以下、より好ましくは6000mPa・s以下である。
ポリアミドイミドフィルムの製造時に、ポリアミドイミドワニスの粘度が前記下限値以上であると、フィルム形成時の膜厚ムラや乾燥ムラが発生しにくくなる点から好ましく、前記上限値以下であると、コーティング前の準備として異物除去のために濾過を行うが、ワニスの通過性が良好である点から好ましい。
ここでポリアミドイミドワニスの粘度は、JIS K7117−1に記載の方法で、単一円筒型回転粘度計(例えば、東機産業株式会社製、TVB−10形粘度計)を用いて、25℃において測定することができる。
III.ポリアミドイミドフィルム
本発明に係るポリアミドイミドフィルムは、前記本発明のポリアミドイミド樹脂を含有するものである。本発明の効果が損なわれない限り、更にその他の成分を含有していても良いし、他の構成を有していてもよい。
1.ポリアミドイミドフィルムの組成
本発明のポリアミドイミドフィルムに含まれる、ポリアミドイミド樹脂は、前述の本発明のポリアミドイミド樹脂と同様であって良いので、ここでの説明を省略する。
本発明のポリアミドイミドフィルムは、前記ポリアミドイミド樹脂の他に、必要に応じて更に添加剤を含有していてもよい。前記添加剤としては、例えば、無機粒子、巻き取りを円滑にするためのシリカフィラーや、製膜性や脱泡性を向上させる界面活性剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。
2.ポリアミドイミドフィルムの特性
本発明のポリアミドイミドフィルムは、透明性の点から、JIS K7361−1に準拠して測定する全光線透過率が、厚みが40μm±5μmで、80.0%以上であることが好ましい。本発明のポリアミドイミドフィルムのJIS K7361−1に準拠して測定する全光線透過率は、厚みが40μm±5μmで、85.0%以上であることがより好ましく、88.0%以上であることが更に好ましく、89.0%以上であることがより更に好ましい。
JIS K7361−1に準拠して測定する全光線透過率は、例えば、ヘイズメーター(例えば村上色彩技術研究所製 HM150)により測定することができる。なお、ある厚みの全光線透過率の測定値から、異なる厚みの全光線透過率は、ランベルトベールの法則により換算値を求めることができ、それを利用することができる。
具体的には、ランベルトベールの法則によれば、透過率Tは、
Log10(1/T)=kcb
(k=物質固有の定数、c=濃度、b=光路長)で表される。
フィルムの透過率の場合、膜厚が変化しても密度が一定であると仮定するとcも定数となるので、上記式は、定数fを用いて
Log10(1/T)=fb
(f=kc)と表すことができる。ここで、ある膜厚の時の透過率がわかれば、各物質の固有の定数fを求めることができる。従って、T=1/10f・b の式を用いて、fに固有の定数、bに目標の膜厚を代入すれば、所望の膜厚の時の透過率を求めることができる。
また、本発明のポリアミドイミドフィルムは、前記JIS K7373−2006に準拠して算出される黄色度(YI値)が、JIS K7373−2006に準拠して算出される黄色度(YI値)が、厚みが40μm±5μmで、4.0以下であることが好ましい。このように黄色度が低いと、黄色味の着色が抑制され、光透過性が向上する点から好ましい。前記JIS K7373−2006に準拠して算出される黄色度(YI値)は、厚みが40μm±5μmで、3.8以下であることがより好ましく、3.6以下であることが更に好ましい。
なお、黄色度(YI値)は、前記JIS K7373−2006に準拠して、紫外可視近赤外分光光度計(例えば、日本分光(株) V−7100)を用い、分光測色方法により、補助イルミナントC、2度視野を用いて、250nm以上800nm以下の範囲を1nm間隔で測定される透過率をもとに、XYZ表色系における三刺激値X,Y,Zを求め、そのX,Y,Zの値から以下の式より算出することができる。
YI=100(1.2769X−1.0592Z)/Y
なお、ある厚みの黄色度の測定値から、異なる厚みの黄色度は、ある特定の膜厚のサンプルの250nm以上800nm以下の間の1nm間隔で測定された各波長における各透過率について、前記全光線透過率と同様にランベルトベールの法則により異なる厚みの各波長における各透過率の換算値を求め、それを元に算出し用いることができる。
また、本発明のポリアミドイミドフィルムは、黄色味の着色が抑制され、光透過性が向上し、ガラス代替材料として好適に用いることができる点から、前記JIS K7373−2006に準拠して算出される黄色度(YI値)を膜厚(μm)で除した値(YI値/膜厚(μm))が0.20以下であることが好ましく、0.14以下であることがより好ましく、0.12以下であることがより更に好ましい。
なお、本発明において、前記黄色度(YI値)を膜厚(μm)で除した値(YI値/膜厚(μm))は、JIS Z8401:1999の規則Bに従い、小数点以下第2位に丸めた値とする。
本発明のポリアミドイミドフィルムのヘイズ値は、光透過性の点から、2.0以下であることが好ましく、1.0以下であることが更に好ましく、0.5以下であることがより更に好ましい。当該ヘイズ値は、ポリアミドイミドフィルムの厚みが5μm以上100μm以下において達成できることが好ましい。
前記ヘイズ値は、JIS K−7136に準拠した方法で測定することができ、例えば村上色彩技術研究所製のヘイズメーターHM150により測定することができる。
本発明のポリアミドイミドフィルムは、10mm×150mmの試験片をJIS K7127に準拠し、引張り速度を50mm/分、チャック間距離を100mmとして測定する25℃における引張弾性率が、厚みが40μm±5μmで、5.0以上であることが好ましい。このように、25℃(室温)での引張弾性率が高いと、保護フィルムとして十分な表面硬度を室温でも維持することができ、表面材乃至基材として用いることができる。前記引張弾性率は、厚みが40μm±5μmで、5.5GPa以上であることがより好ましく、5.8GPa以上であることが更に好ましく、6.0GPa以上であることがより更に好ましい。一方で、前記引張弾性率は、屈曲耐性を向上させる点から、15.0GPa以下であっても良い。
前記引張弾性率は、引張り試験機(例えば島津製作所製:オートグラフAG−X 1N、ロードセル:SBL−1KN)を用い、幅10mm×長さ150mmの試験片をポリアミドイミドフィルムから切り出して、25℃で、引張り速度50mm/分、チャック間距離は100mmとして測定することができる。前記引張弾性率を求める際のポリアミドイミドフィルムは厚みが40μm±5μmであることが好ましい。
本発明のポリアミドイミドフィルムはJIS 5600−5−4(1999)で規定される鉛筆硬度試験において、表面の鉛筆硬度がB以上であることが好ましく、HB以上であることがより好ましく、F以上であることがより更に好ましい。
前記ポリアミドイミドフィルムの鉛筆硬度は、測定サンプルを温度25℃、相対湿度60%の条件で2時間調湿した後、JIS−S−6006が規定する試験用鉛筆を用いて、JIS K5600−5−4(1999)に規定する鉛筆硬度試験(0.98N荷重)をフィルム表面に行い、傷がつかない最も高い鉛筆硬度を評価することにより行うことができる。試験機としては、例えば東洋精機(株)製 鉛筆引っかき塗膜硬さ試験機を用いることができる。
本発明のポリアミドイミドフィルムの厚さは、用途により適宜選択されれば良いが、1μm以上であればよく、5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることが好ましく、20μm以上であってよい。一方、300μm以下であることが好ましく、更に200μm以下であることが好ましく、より更に150μm以下であることが好ましく、より更に100μm以下であることが好ましい。
厚みが薄いと強度が低下し、厚みが厚いと屈曲時の内径と外径の差が大きくなり、フィルムへの負荷が大きくなることから屈曲耐性が低下する恐れがある。
また、本発明のポリアミドイミドフィルムには、例えば、けん化処理、グロー放電処理、コロナ放電処理、紫外線処理、火炎処理等の表面処理が施されていてもよい。
3.ポリアミドイミドフィルムの製造方法
本発明のポリアミドイミドフィルムを製造する方法としては、前記本発明のポリアミドイミドフィルムを製造できる方法であれば特に制限はなく、例えば、以下の工程:
前記本発明のポリアミドイミドワニスを準備する工程と、
前記ポリアミドイミドワニスを支持体に塗布する工程と、
前記塗布されたポリアミドイミドワニスを乾燥させてフィルムを形成する工程を有する製造方法によって製造することができる。
本発明のポリアミドイミドワニスを準備する工程については、前述のポリアミドイミドワニスを調製する方法と同様であって良いので、ここでの記載を省略する。
前記ポリアミドイミドワニスを支持体に塗布する工程において、用いられる支持体としては、表面が平滑で耐熱性および耐溶剤性のある材料であれば特に制限はない。例えばガラス板などの無機材料、表面を鏡面処理した金属板等が挙げられる。また支持体の形状は塗布方式によって選択され、例えば板状であってもよく、またドラム状やベルト状、ロールに巻き取り可能なシート状等であってもよい。
前記塗布手段は目的とする膜厚で塗布可能な方法であれば特に制限はなく、例えばダイコータ、コンマコータ、ロールコータ、グラビアコータ、カーテンコータ、スプレーコータ、リップコータ等の公知のものを用いることができる。
塗布は、枚葉式の塗布装置により行ってもよく、ロールtoロール方式の塗布装置により行ってもよい。
ポリアミドイミドワニスを支持体に塗布した後は、塗膜がタックフリーとなるまで、150℃以下の温度、好ましくは30℃以上120℃以下で前記塗膜中の溶剤を乾燥する。
乾燥時間は、ポリアミドイミド樹脂塗膜の膜厚や、溶剤の種類、乾燥温度等に応じて適宜調整されれば良いが、通常5分〜60分、好ましくは10分〜40分とすることが好ましい。上限値を超える場合には、ポリアミドイミドフィルムの作製効率の面から好ましくない。一方、下限値を下回る場合には、急激な溶剤の乾燥によって、得られるポリアミドイミドフィルムの外観等に影響を与える恐れがある。
溶剤の乾燥方法は、上記温度で溶剤の乾燥が可能であれば特に制限はなく、例えばオーブンや、乾燥炉、ホットプレート、赤外線加熱等を用いることが可能である。
光学特性の高度な管理が必要な場合、溶剤の乾燥時の雰囲気は、不活性ガス雰囲気下であることが好ましい。不活性ガス雰囲気下としては、窒素雰囲気下であることが好ましく、酸素濃度が100ppm以下であることが好ましく、50ppm以下であることがより好ましい。大気下で熱処理を行うと、フィルムが酸化され、着色したり、性能が低下する可能性がある。
乾燥工程としては、支持体上で予備乾燥を行って乾燥後塗膜を形成し、前記乾燥後塗膜を支持体から剥離後に、高温での本乾燥を行ってもよい。
前記乾燥後塗膜を、後述する、高温での本乾燥を行う前に、支持体から剥離することにより、後述する本乾燥において、フィルムの両表面から前記有機溶剤を蒸発させることができ、残留溶剤を十分に低減することが可能になる。
支持体から剥離された乾燥後塗膜は、端部を固定後、当該乾燥後塗膜を、150℃以上の温度で加熱する工程を有することが好ましい。当該150℃以上の温度で加熱する工程において、フィルム中の残留溶剤を可能な限り除去することが屈曲耐性の点から好ましい。
支持体から剥離された前記乾燥後塗膜は、150℃以上の温度で加熱する工程において加熱時の収縮を防止し、外観及び膜厚均一性を向上する点から、当該乾燥後塗膜の端部を固定後に加熱する。当該乾燥後塗膜の端部を固定しない場合には、ポリアミドイミドフィルムにうねりが生じやすい。
支持体から剥離された乾燥後塗膜の端部を固定する方法としては、例えば、前記乾燥後塗膜が枚様の場合、前記乾燥後塗膜と概略同様の外寸と適切な内寸を有する金属枠を2枚使用して、前記乾燥後塗膜を挟持し、固定治具で2枚の金属枠と前記乾燥後塗膜とを固定する方法が挙げられる。
また、例えば、前記乾燥後塗膜がロール状の場合、例えば、連続するフィルムの左右両端をクリップ等の固定治具で把持してフィルムを搬送可能な装置を用いて、前記乾燥後塗膜の端部を固定する方法が挙げられる。
支持体から剥離された前記乾燥後塗膜の乾燥手段は、150℃以上の温度で加熱する工程において、前記有機溶剤の乾燥が可能であれば特に制限はなく、前述と同様の乾燥手段を用いることができる。
支持体から剥離された前記乾燥後塗膜は、最高温度として150℃以上の温度で加熱すればよい。
加熱温度は、ワニス中の有機溶剤や残留溶剤の種類や量、塗膜の膜厚により適宜調整すればよい。常圧下では最高温度として350℃以下の範囲とすることが好ましく、更に最高温度として330℃以下の範囲とすることが好ましい。減圧下では最高温度として310℃以下の範囲とすることが好ましく、更に最高温度として300℃以下の範囲とすることが好ましい。
昇温速度としては、例えば3〜50℃/分の範囲内が挙げられ、5〜20℃/分の範囲内が好ましい。
最高温度として150℃以上の温度で加熱する本乾燥工程においても、乾燥温度や、乾燥時間はワニス中の有機溶剤や残留溶剤の種類や量、塗膜の膜厚により適宜調整すればよい。
また、支持体から剥離された乾燥後塗膜を延伸する延伸工程を有していてもよい。
延伸工程では、延伸を実施する前の初期の寸法を100%とした時に101%以上10000%以下延伸する工程を、80℃以上で加熱しながら行うことが好ましい。
延伸時の加熱温度は、ポリアミドイミドのガラス転移温度±50℃の範囲内であることが好ましく、ガラス転移温度±40℃の範囲内であることが好ましい。延伸温度が低すぎるとフィルムが変形せず充分に配向を誘起できない恐れがある。一方で、延伸温度が高すぎると延伸によって得られた配向が温度で緩和し、充分な配向が得られない恐れがある。
ポリアミドイミドフィルムの延伸倍率は、好ましくは101%以上10000%以下であり、さらに好ましくは101%以上500%以下である。上記範囲で延伸を行うことにより、得られるポリアミドイミドフィルムの表面硬度をより向上することができる。
延伸時におけるポリアミドイミドフィルムの固定方法は、特に制限はなく、延伸装置の種類等に合わせて選択される。また、延伸方法は特に制限はなく、例えばテンター等の搬送装置を有する延伸装置を用い、加熱炉を通しながら延伸することが可能である。ポリアミドイミドフィルムは、一方向のみに延伸(縦延伸または横延伸)してもよく、また同時2軸延伸、もしくは逐次2軸延伸、斜め延伸等によって、二方向に延伸処理を行ってもよい。
4.ポリアミドイミドフィルムの用途
本発明のポリアミドイミドフィルムの用途は特に限定されるものではないが、十分な透明性を有しつつ、高い弾性率と、向上した屈曲耐性を有することから、従来薄い板ガラス等ガラス製品が用いられていた基材や表面材等の部材として用いることができる。
本発明のポリアミドイミドフィルムは、具体的には例えば、薄くて曲げられるフレキシブルタイプの有機ELディスプレイや、スマートフォンや腕時計型端末などの携帯端末、自動車内部の表示装置、腕時計などに使用するフレキシブルパネル等、フレキシブルディスプレイ用の基材や表面材に好適に用いることができる。また、本発明のポリアミドイミドフィルムは、液晶表示装置、有機EL表示装置等の画像表示装置用部材や、タッチパネル用部材、フレキシブルプリント基板、表面保護膜や基板材料等の太陽電池パネル用部材、光導波路用部材、その他半導体関連部材等に適用することもできる。
IV.積層体
本発明の積層体は、前述した本発明のポリアミドイミドフィルムと、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物を含有するハードコート層とを有する積層体である。
ここで、「ハードコート層」とは、表面硬度を向上させるための層であり、具体的には、JIS 5600−5−4(1999)で規定される鉛筆硬度試験で「H」以上の硬度を示すものをいう。
本発明の積層体は、前述した本発明のポリアミドイミドフィルムを用いたものであるため、十分な透明性を有しつつ、高い弾性率と、向上した屈曲耐性を有するものであり、更にハードコート層を有するため、表面硬度がより向上したフィルムである。
1.ポリアミドイミドフィルム
本発明の積層体に用いられるポリアミドイミドフィルムとしては、前述した本発明のポリアミドイミドフィルムを用いることができるので、ここでの説明を省略する。
2.ハードコート層
本発明の積層体に用いられるハードコート層は、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物を含有する。本発明の効果が損なわれない限り、必要に応じて、任意添加成分を含有していても良い。
(ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物)
ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物は、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種を、必要に応じて重合開始剤を用い、公知の方法で重合反応させることにより得ることができる。
ラジカル重合性化合物とは、ラジカル重合性基を有する化合物である。前記ラジカル重合性化合物が有するラジカル重合性基としては、ラジカル重合反応を生じ得る官能基であればよく、特に限定されないが、例えば、炭素−炭素不飽和二重結合を含む基などが挙げられ、具体的には、ビニル基、(メタ)アクリロイル基などが挙げられる。なお、前記ラジカル重合性化合物が2個以上のラジカル重合性基を有する場合、これらのラジカル重合性基はそれぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
前記ラジカル重合性化合物が1分子中に有するラジカル重合性基の数は、ハードコート層の硬度を向上する点から、2つ以上であることが好ましく、更に3つ以上であることが好ましい。
前記ラジカル重合性化合物としては、反応性の高さの点から、中でも(メタ)アクリロイル基を有する化合物が好ましく、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、ポリフルオロアルキル(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート等と称される分子内に数個の(メタ)アクリロイル基を有する分子量が数百から数千の多官能(メタ)アクリレートモノマー及びオリゴマーを好ましく使用でき、またアクリレートポリマーの側鎖に(メタ)アクリロイル基を2個以上有する多官能(メタ)アクリレートポリマーも好ましく使用できる。中でも、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートモノマーを好ましく使用できる。前記ハードコート層が、前記多官能(メタ)アクリレートモノマーの重合物を含むことにより、ハードコート層の硬度を向上し、さらに、密着性を向上することができる。また、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートオリゴマー又はポリマーも好ましく使用できる。前記ハードコート層が、前記多官能(メタ)アクリレートオリゴマー又はポリマーの重合物を含むことにより、ハードコート層の硬度及び屈曲耐性を向上し、さらに、密着性を向上することができる。
なお、本明細書において、(メタ)アクリロイルとは、アクリロイル及びメタクリロイルの各々を表し、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートの各々を表す。
前記多官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトールデカ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート、ポリエステルトリ(メタ)アクリレート、ポリエステルジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールジ(メタ)アクリレート、ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、アダマンチルジ(メタ)アクリレート、イソボロニルジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、及びこれらをPO、EO、カプロラクトン等で変性したもの等が挙げられる。中でも、反応性が高く、ハードコート層の硬度を向上する点、及び密着性の点から、1分子中に3個以上6個以下の(メタ)アクリロイル基を有するものが好ましく、例えば、ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETTA)、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(DPPA)、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトールデカ(メタ)アクリレート等を好ましく用いることができ、特に、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、及びジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種が好ましい。
本開示においては、前記ラジカル重合性化合物として、硬度やハードコート層用組成物の粘度調整、密着性の向上等のために、単官能(メタ)アクリレートモノマーを含んでいてもよい。前記単官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、グリシジルメタクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、2−アクリロイルオキシエチルサクシネート、アクリロイルモルホリン、N−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、シクロヘキシルアクリレート、テトラヒドロフリルアクリレート、イソボルニルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、及び、アダマンチルアクリレート等が挙げられる。
カチオン重合性化合物とは、カチオン重合性基を有する化合物である。前記カチオン重合性化合物が有するカチオン重合性基としては、カチオン重合反応を生じ得る官能基であればよく、特に限定されないが、例えば、エポキシ基、オキセタニル基、ビニルエーテル基などが挙げられる。なお、前記カチオン重合性化合物が2個以上のカチオン重合性基を有する場合、これらのカチオン重合性基はそれぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
前記カチオン重合性化合物が1分子中に有するカチオン重合性基の数は、ハードコート層の硬度を向上する点から、2つ以上であることが好ましく、更に3つ以上であることが好ましい。
また、前記カチオン重合性化合物としては、中でも、カチオン重合性基としてエポキシ基及びオキセタニル基の少なくとも1種を有する化合物が好ましく、エポキシ基及びオキセタニル基の少なくとも1種を1分子中に2個以上有する化合物がより好ましい。エポキシ基、オキセタニル基等の環状エーテル基は、重合反応に伴う収縮が小さいという点から好ましい。また、環状エーテル基のうちエポキシ基を有する化合物は多様な構造の化合物が入手し易く、得られたハードコート層の耐久性に悪影響を与えず、ラジカル重合性化合物との相溶性もコントロールし易いという利点がある。また、環状エーテル基のうちオキセタニル基は、エポキシ基と比較して重合度が高い、低毒性であり、得られたハードコート層を、エポキシ基を有する化合物と組み合わせた際に塗膜中でのカチオン重合性化合物から得られるネットワーク形成速度を早め、ラジカル重合性化合物と混在する領域でも未反応のモノマーを膜中に残さずに独立したネットワークを形成する等の利点がある。
エポキシ基を有するカチオン重合性化合物としては、例えば、脂環族環を有する多価アルコールのポリグリシジルエーテル又は、シクロヘキセン環、シクロペンテン環含有化合物を、過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化する事によって得られる脂環族エポキシ樹脂;脂肪族多価アルコール、又はそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテル、脂肪族長鎖多塩基酸のポリグリシジルエステル、グリシジル(メタ)アクリレートのホモポリマー、コポリマーなどの脂肪族エポキシ樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールFや水添ビスフェノールA等のビスフェノール類、又はそれらのアルキレンオキサイド付加体、カプロラクトン付加体等の誘導体と、エピクロルヒドリンとの反応によって製造されるグリシジルエーテル、及びノボラックエポキシ樹脂等でありビスフェノール類から誘導されるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂等が挙げられる。
上記脂環族エポキシ樹脂としては、例えば、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス−3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアディペート等が挙げられる。
また、上記グリシジルエーテル型エポキシ樹脂としては、例えば、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトルポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、レソルチノールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ヒドロジビスフェノールAジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、フェノールグリシジルエーテル、ブチルフェニルグリシジルエーテル、ジグリシジルフタレート、ヒドロキノンジグリシジルエーテル、ジグリシジルテレフタレート、グリシジルフタルイミド、ジブロモフェニルグリシジルエーテル、ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル等が挙げられる。
また、その他の市販品のエポキシ樹脂を用いても良い。
オキセタニル基を有するカチオン重合性化合物としては、例えば、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、1,4−ビス−3−エチルオキセタン−3−イルメトキシメチルベンゼン、ビス−1−エチル−3−オキセタニルメチルエーテル、3−エチル−3−2−エチルへキシロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−フェノキシメチルオキセタン等が挙げられる。
(重合開始剤)
本発明に用いられるハードコート層が含有する前記ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物は、例えば、前記ラジカル重合性化合物及び前記カチオン重合性化合物の少なくとも1種に、必要に応じて重合開始剤を添加して、公知の方法で重合反応させることにより得ることができる。
前記重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤、カチオン重合開始剤、ラジカル及びカチオン重合開始剤等を適宜選択して用いることができる。これらの重合開始剤は、光照射及び加熱の少なくとも一種により分解されて、ラジカルもしくはカチオンを発生してラジカル重合とカチオン重合を進行させるものである。
ラジカル重合開始剤は、光照射及び加熱の少なくともいずれかによりラジカル重合を開始させる物質を放出することが可能であれば良い。例えば、光ラジカル重合開始剤としては、イミダゾール誘導体、ビスイミダゾール誘導体、N−アリールグリシン誘導体、有機アジド化合物、チタノセン類、アルミナート錯体、有機過酸化物、N−アルコキシピリジニウム塩、チオキサントン誘導体等が挙げられ、更に具体的には、1,3−ジ(tert−ブチルジオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラキス(tert−ブチルジオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3−フェニル−5−イソオキサゾロン、2−メルカプトベンズイミダゾール、ビス(2,4,5−トリフェニル)イミダゾール、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(商品名イルガキュア651、チバ・ジャパン(株)製)、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(商品名イルガキュア184、チバ・ジャパン(株)製)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン(商品名イルガキュア369、チバ・ジャパン(株)製)、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム)(商品名イルガキュア784、チバ・ジャパン(株)製)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
上記以外にも、適宜選択して市販品を使用できる。
また、カチオン重合開始剤は、光照射及び加熱の少なくともいずれかによりカチオン重合を開始させる物質を放出することが可能であれば良い。カチオン重合開始剤としては、スルホン酸エステル、イミドスルホネート、ジアルキル−4−ヒドロキシスルホニウム塩、アリールスルホン酸−p−ニトロベンジルエステル、シラノール−アルミニウム錯体、(η−ベンゼン)(η−シクロペンタジエニル)鉄(II)等が例示され、さらに具体的には、ベンゾイントシレート、2,5−ジニトロベンジルトシレート、N−トシフタル酸イミド等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
ラジカル重合開始剤としても、カチオン重合開始剤としても用いられるものとしては、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ホスホニウム塩、トリアジン化合物、鉄アレーン錯体等が例示されるが、これらに限定されるものではない。
(任意添加成分)
本発明に用いられるハードコート層は、前記重合物の他に、必要に応じて、任意添加成分を更に含有することができる。
前記任意添加成分は、ハードコート層に付与する機能に応じて適宜選択され、特に限定はされないが、例えば、硬度や屈折率を調整するための無機又は有機微粒子、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、防眩剤、防汚剤、帯電防止剤等が挙げられ、更に、レベリング剤、界面活性剤、易滑剤、各種増感剤、難燃剤、接着付与剤、重合禁止剤、酸化防止剤、表面改質剤等を含んでいても良い。
なお、本発明に用いられるハードコート層に含まれるラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物等は、フーリエ変換赤外分光光度計(FTIR)、熱分解ガスクロマトグラフ装置(GC−MS)や、重合物の分解物について、高速液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフ質量分析計、NMR、元素分析、XPS/ESCA及びTOF−SIMS等の組み合わせを用いて分析することができる。
3.積層体の構成
本発明の積層体は、前記ポリアミドイミドフィルムと、前記ハードコート層とを有するものであれば特に限定はされず、前記ポリアミドイミドフィルムの一方の面側に前記ハードコート層が積層されたものであってもよいし、前記ポリアミドイミドフィルムの両面に前記ハードコート層が積層されたものであってもよい。また、本発明の積層体は、本発明の効果を損なわない範囲で、前記ポリアミドイミドフィルム及び前記ハードコート層の他に、例えば、前記ポリアミドイミドフィルムと前記ハードコート層との密着性を向上させるためのプライマー層等の他の層を有するものであってもよく、前記ポリアミドイミドフィルムと前記ハードコート層とがプライマー層等の他の層を介して積層されたものであっても良い。また、本発明の積層体は、前記ポリアミドイミドフィルムと、前記ハードコート層とが隣接して位置するものであってもよい。また、本発明の積層体はさらに、耐衝撃層、指紋付着防止層、接着乃至粘着層等を有していても良い。
本発明の積層体の全体厚さは、用途により適宜選択されれば良いが、強度の点から、10μm以上であることが好ましく、更に40μm以上であることが好ましい。一方、屈曲耐性の点から、300μm以下であることが好ましく、更に250μm以下であることが好ましい。
また、本発明の積層体において、各ハードコート層の厚さは、用途により適宜選択されれば良いが、2μm以上80μm以下であることが好ましく、3μm以上50μm以下であることがより好ましい。また、カール防止の観点からポリアミドイミドフィルムの両面にハードコート層を形成しても良い。
4.積層体の特性
本発明の積層体は、ハードコート層側表面の鉛筆硬度がH以上であることが好ましく、2H以上であることがより好ましく、3H以上であることが更に好ましく、4H以上であることがより更に好ましい。
本発明の積層体の鉛筆硬度は、前記ポリアミドイミドフィルムの鉛筆硬度の測定方法において、荷重を9.8Nとする以外は同様にして測定することができる。
本発明の積層体は、JIS K7361−1に準拠して測定する全光線透過率が、厚みが50μm±5μmで、75.0%以上であることが好ましく、更に80.0%以上であることが好ましく、より更に83.0%以上であることが好ましい。このように透過率が高いことから、透明性が良好になり、ガラス代替材料となり得る。
本発明の積層体の前記全光線透過率は、前記ポリアミドイミドフィルムのJIS K7361−1に準拠して測定する全光線透過率と同様にして測定することができる。
本発明の積層体は、JIS K7373−2006に準拠して算出される黄色度(YI値)が、厚みが50μm±5μmで、10.0以下であることが好ましく、7.0以下であることがより好ましく、5.0以下であることがより更に好ましく、4.0以下であることが特に好ましい。
また、本発明の積層体は、黄色味の着色が抑制され、光透過性が向上し、ガラス代替材料として好適に用いることができる点から、前記JIS K7373−2006に準拠して算出される黄色度(YI値)を膜厚(μm)で割った値(YI値/膜厚(μm))が0.60以下であることが好ましく、0.40以下であることがより好ましく、0.30以下であることがより更に好ましい。
本発明の積層体の前記黄色度(YI値)は、前記ポリアミドイミドフィルムのJIS K7373−2006に準拠して算出される黄色度(YI値)と同様にして測定することができる。
本発明の積層体のヘイズ値は、光透過性の点から、2.0以下であることが好ましく、1.0以下であることが更に好ましく、0.5以下であることがより更に好ましい。
本発明の積層体のヘイズ値は、前記ポリアミドイミドフィルムのヘイズ値と同様にして測定することができる。
5.積層体の用途
本発明の積層体の用途は特に限定されるものではなく、例えば、前述した本発明のポリアミドイミドフィルムの用途と同様の用途に用いることができる。
6.積層体の製造方法
本発明の積層体の製造方法としては、例えば、
前記本発明のポリアミドイミドフィルムの少なくとも一方の面に、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種を含有するハードコート層形成用組成物の塗膜を形成する工程と、
前記塗膜を硬化する工程と、を含む製造方法が挙げられる。
前記ハードコート層形成用組成物は、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種を含有し、必要に応じて更に重合開始剤、溶剤及び添加剤等を含有していてもよい。
ここで、前記ハードコート層形成用組成物が含有するラジカル重合性化合物、カチオン重合性化合物、重合開始剤及び添加剤については、前記ハードコート層において説明したものと同様のものを用いることができ、溶剤は、公知の溶剤から適宜選択して用いることができる。
ポリアミドイミドフィルムの少なくとも一方の面に、前記ハードコート層形成用組成物の塗膜を形成する方法としては、例えば、ポリアミドイミドフィルムの少なくとも一方の面に、前記ハードコート層形成用組成物を、公知の塗布手段により塗布する方法が挙げられる。
前記塗布手段は、目的とする膜厚で塗布可能な方法であれば特に制限はなく、例えば、前記ポリイミド前駆体樹脂組成物を支持体に塗布する手段と同様のものが挙げられる。
前記ハードコート層用硬化性樹脂組成物の塗膜は必要に応じて乾燥することにより溶剤を除去する。乾燥方法としては、例えば、減圧乾燥又は加熱乾燥、更にはこれらの乾燥を組み合わせる方法等が挙げられる。また、常圧で乾燥させる場合は、30℃以上110℃以下で乾燥させることが好ましい。
前記ハードコート層用硬化性樹脂組成物を塗布、必要に応じて乾燥させた塗膜に対し、当該硬化性樹脂組成物に含まれるラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の重合性基に応じて、光照射及び加熱の少なくともいずれかにより塗膜を硬化させることにより、ポリアミドイミドフィルムの少なくとも一方の面に、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物を含有するハードコート層を形成することができる。
光照射には、主に、紫外線、可視光、電子線、電離放射線等が使用される。紫外線硬化の場合には、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、キセノンアーク、メタルハライドランプ等の光線から発する紫外線等を使用する。エネルギー線源の照射量は、紫外線波長365nmでの積算露光量として、50〜5000mJ/cm程度である。
加熱をする場合は、通常40℃以上120℃以下の温度にて処理する。また、室温(25℃)で24時間以上放置することにより反応を行っても良い。
V.ディスプレイ用部材
本発明のディスプレイ用部材は、前述した本発明のポリアミドイミドフィルム、或いは、本発明の積層体を含む。
本発明のディスプレイ用部材としては、例えば、ディスプレイ用表面材やディスプレイ用基材等が挙げられる。
本発明のディスプレイ用部材は、前述した本発明のポリアミドイミドフィルム、或いは、本発明の積層体であってよい。
本発明のディスプレイ用部材は、例えばディスプレイ用表面材として、各種ディスプレイの表面に位置するように配置して用いられる。本発明のディスプレイ用部材は、前述した本発明のポリアミドイミドフィルム及び本発明の積層体と同様に、十分な透明性を有しつつ、高い弾性率と、向上した屈曲耐性を有するため、フレキシブルディスプレイ用として特に好適に用いることができる。
本発明のディスプレイ用部材は、公知の各種ディスプレイに用いることができ、特に限定はされないが、例えば、前記本発明のポリアミドイミドフィルムの用途で説明したディスプレイ等に用いることができる。
なお、本発明のディスプレイ用部材が前記本発明の積層体である場合、当該積層体をディスプレイの表面に配置した後に最表面となる面は、ポリアミドイミドフィルム側の表面であってもよいし、ハードコート層側の表面であってもよい。中でも、ハードコート層側の表面が、より表側の面となるように本発明のディスプレイ用部材を配置することが好ましい。また、本発明のディスプレイ用部材は、最表面に指紋付着防止層を有するものであっても良い。
また、本発明のディスプレイ用部材をディスプレイの表面に配置する方法としては、特に限定はされないが、例えば、接着層を介する方法等が挙げられる。前記接着層としては、ディスプレイ用部材の接着に用いることができる従来公知の接着層を用いることができる。
VI.タッチパネル部材
本発明のタッチパネル部材は、前述した本発明のポリアミドイミドフィルム又は前述した本発明の積層体と、
前記ポリアミドイミドフィルム又は前記積層体の一方の面側に配置された、複数の導電部からなる透明電極と、
前記導電部の端部の少なくとも一方側において電気的に接続される複数の取り出し線と、を有する。
本発明のタッチパネル部材は、前述した本発明のポリアミドイミドフィルム又は積層体を備えるものであることから、十分な透明性を有しつつ、高い弾性率と、向上した屈曲耐性を有するものであるため、フレキシブルディスプレイ用として特に好適に用いることができ、また光学特性に優れる。
本発明のタッチパネル部材に用いられる本発明の積層体は、ポリアミドイミドフィルムの両面に隣接して、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物を含有するハードコート層を有するものであることが好ましい。
また、本発明のタッチパネル部材は、特に限定はされないが、前記透明電極が、前記積層体の一方の面側に接して積層されてなるものであることが好ましい。
本発明のタッチパネル部材は、例えば、各種ディスプレイの表面に位置するように配置して用いることができる。また、各種ディスプレイの表面に、本発明のタッチパネル部材と、表面材としての本発明のポリアミドイミドフィルム又は積層体とを、この順に配置して用いることもできる。
以下、本発明のタッチパネル部材について、前述した本発明の積層体を用いた例で説明するが、前述した本発明の積層体の代わりに、前述した本発明のポリアミドイミドフィルムも同様に用いることができる。
図3は、本発明のタッチパネル部材の一例の一方の面の概略平面図であり、図4は、図3に示すタッチパネル部材のもう一方の面の概略平面図であり、図5は、図3及び図4に示すタッチパネル部材のA−A’断面図である。図3、図4及び図5に示すタッチパネル部材20は、本発明の積層体10と、積層体10の一方の面に接して配置された第一の透明電極4と、積層体10のもう一方の面に接して配置された第二の透明電極5とを備える。第一の透明電極4においては、x軸方向に伸長するように延在する短冊状の電極片である複数の第一の導電部41が、所定の間隔を空けて配置されている。第一の導電部41には、その長手方向の端部のいずれか一方において、当該第一の導電部41と電気的に接続される第一の取出し線7が接続されている。積層体10の端縁21まで延設された第一の取出し線7の端部には、外部回路と電気的に接続するための第一の端子71を設けることがよい。第一の導電部41と第一の取出し線7とは、一般には、タッチパネルの使用者が視認可能なアクティブエリア22の外側に位置する、非アクティブエリア23内において接続される。
第一の導電部41と第一の取出し線7との接続は、例えば図3に示すように、接続部24を介在させた接続構造を採用することができる。接続部24は、具体的には、第一の導電部41の長手方向端部から、非アクティブエリア23内の所定の位置まで導電性材料の層を延設することにより形成することができる。さらに、当該接続部24上に、第一の取出し線7の少なくとも一部を重ねることにより、第一の導電部41と第一の取出し線7との接続構造を形成することができる。
第一の導電部41と第一の取出し線7との接続は、図3に示すような、接続部24を形成する構造には限定されない。例えば、図示は省略するが、第一の導電部41の長手方向端部を非アクティブエリア23まで伸長させ、非アクティブエリア23内において、当該非アクティブエリア23まで伸長させた第一の導電部41の端部に、第一の取出し線7を乗り上げさせることによって、両者を電気的に接続させてもよい。
なお、図3では、第一の導電部41の長手方向端部のいずれか一方と、第一の取出し線7とを接続する形態を示したが、本発明においては、1つの第一の導電部41の長手方向の両端に、それぞれ、第一の取出し線7を電気的に接続する形態としてもよい。
図4に示すように、タッチパネル部材20は、積層体10のもう一方の面に接して配置された第二の透明電極5とを備える。第二の透明電極5においては、y軸方向に伸長するように延在する複数の短冊状の電極片である第二の導電部51が、x軸方向に所定の間隔を空けて配置されている。
第二の導電部51には、その長手方向端部の一方において、当該第二の導電部51と電気的に接続される第二の取出し線8が接続されている。
第二の取出し線8は、積層体10の端縁のうち、前述した第一の取出し線7が延設された端縁21における、第一の端子71と重ならない位置まで延設されている。
積層体10の端縁21まで延設された第二の取出し線8の端部には、外部回路と電気的に接続するための第二の端子81を設けることがよい。
第二の導電部51と第二の取出し線8との電気的な接続は、第一の取出し線7と第一の導電部41との電気的な接続と同様の形態を適用することができる。
なお、図3及び図4に示すような、第1取出し線7を長尺配線とし、第2取出し線8を短尺配線とするパターンは、本発明のタッチパネル部材の一実施形態に過ぎず、例えば、第一の取出し線7を短尺配線とし、第二の取出し線8を長尺配線とするパターンとすることも可能である。また、第一の取出し線7の伸長方向及び第二の取出し線8の伸長方向も、図3及び図4に示す方向に限られず、任意に設計することが可能である。
本発明のタッチパネル部材が備える導電部は、タッチパネル部材において透明電極を構成するものを適宜選択して適用することができ、導電部のパターンは、図3及び図4に示すものに限定されない。例えば、静電容量方式によって、指などの接触または接触に近い状態による電気容量の変化を検知可能な透明電極のパターンを適宜選択して適用することができる。
前記導電部の材料としては、光透過性の材料であることが好ましく、例えば、インジウム錫オキサイド(ITO)、酸化インジウム、インジウム亜鉛オキサイド(IZO)等を主たる構成成分とする酸化インジウム系透明電極材料、酸化錫(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)等を主たる構成成分とする透明導電膜、ポリアニリン、ポリアセチレン等の導電性高分子化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、第一の導電部41及び第二の導電部51は、互いに同種の導電性材料を用いて形成してもよいし、異種の材料を用いて形成してもよい。特に同種の導電性材料を用いて第一の導電部41及び第2導電部51を形成すると、タッチパネル部材の反りや歪みの発生をより効果的に抑制できる観点で好ましい。
前記導電部の厚みは、特に限定されないが、例えばフォトリソグラフィ手法により導電部を形成する場合には、一般的には、10nm〜500nm程度に形成することができる。
本発明のタッチパネル部材が備える取出し線を構成する導電材料は、光透過性の有無を問わない。一般的には、取出し線は、高い導電性を有する銀や銅などの金属材料を用いて形成することができる。具体的には、金属単体、金属の複合体、金属と金属化合物の複合体、金属合金を挙げることができる。金属単体としては、銀、銅、金、クロム、プラチナ、アルミニウムの単体などを例示することができる。金属の複合体としては、MAM(モリブデン、アルミニウム、モリブデンの3層構造体)等を例示することができる。金属と金属化合物の複合体としては、酸化クロムとクロムの積層体等を例示することができる。金属合金としては、銀合金や銅合金が汎用される。また、金属合金としては、APC(銀、パラジウム及び銅の合金)等を例示することができる。また、前記取出し線には、前述した金属材料に、適宜樹脂成分が混在していてもよい。
本発明のタッチパネル部材において、取出し線の端部に設けられる端子は、例えば、前記取出し線と同じ材料を用いて形成することができる。
前記取出し線の厚み、及び幅寸法は、特に限定されないが、例えばフォトリソグラフィ手法により取出し線を形成する場合には、一般的には、厚みは10nm〜1000nm程度に形成され、幅寸法は5μm〜200μm程度に形成される。一方、スクリーン印刷などの印刷により取出し線を形成する場合には、一般的には、厚みは5μm〜20μm程度に形成され、幅寸法は20μm〜300μm程度に形成される。
本発明のタッチパネル部材は、図3〜図5に示す形態には限られず、例えば、第一の透明電極と、第二の透明電極とが、それぞれ別個の積層体の上に積層されて構成されるものであってもよい。
図6及び図7は、各々本発明の積層体を備える導電性部材の一例を示す概略平面図である。図6に示す第一の導電性部材201は、本発明の積層体10と、当該積層体10の一方の面に接して配置された第一の透明電極4とを有し、当該第一の透明電極4は、複数の第一の導電部41を有する。図7に示す第二の導電性部材202は、本発明の積層体10’と、当該積層体10’の一方の面に接して配置された第二の透明電極5とを有し、当該第二の透明電極5は、複数の第二の導電部51を有する。
図8は、本発明のタッチパネル部材の別の一例を示す概略断面図であり、図8に示すタッチパネル部材20’は、図6に示す第一の導電性部材201と、図7に示す第二の導電性部材202とを備える。タッチパネル部材20’においては、第一の導電性部材201の第一の透明電極4を有しない面と、第二の導電性部材202の透明電極5を有する面とが、接着層6を介して貼り合わせられている。なお、本発明において、例えば、本発明の積層体と本発明のタッチパネル部材とを接着するための接着層、本発明のタッチパネル部材同士を接着するための接着層、本発明のタッチパネル部材と表示装置等とを接着するための接着層としては、光学部材に用いられている従来公知の接着層を適宜選択して用いることができる。本発明のタッチパネル部材に用いられる導電性部材において、透明電極、取出し線及び端子の構成及び材料は、前述した本発明のタッチパネル部材に用いられる透明電極、取出し線及び端子と各々同様とすることができる。
VII.液晶表示装置
本発明の液晶表示装置は、前述した本発明のポリアミドイミドフィルム又は前述した本発明の積層体と、前記ポリアミドイミドフィルム又は前記積層体の一方の面側に配置された、対向基板間に液晶層を有してなる液晶表示部とを有する。
本発明の液晶表示装置は、前述した本発明のポリアミドイミドフィルム又は前述した本発明の積層体を備えるものであることから、十分な透明性を有しつつ、高い弾性率と、向上した屈曲耐性を有し、フレキシブルディスプレイ用として特に好適に用いることができ、光学特性に優れる。
本発明の液晶表示装置に用いられる本発明の積層体は、ポリアミドイミドフィルムの両面に隣接して、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物を含有するハードコート層を有するものであることが好ましい。
また、本発明の液晶表示装置は、前述した本発明のタッチパネル部材を備えるものであっても良い。
また、本発明の液晶表示装置が有する対向基板は、本発明のポリアミドイミドフィルム又は積層体を備えるものであっても良い。
以下、本発明の液晶表示装置について、前述した本発明の積層体を用いた例で説明するが、前述した本発明の積層体の代わりに、前述した本発明のポリアミドイミドフィルムも同様に用いることができる。
図9は、本発明の液晶表示装置の一例を示す概略断面図である。図9に示す液晶表示装置100は、本発明の積層体10と、本発明の積層体10’の一方の面に第一の透明電極4を備え、もう一方の面に第二の透明電極5を備えるタッチパネル部材20と、液晶表示部30とを有する。液晶表示装置100において、積層体10は表面材として用いられており、積層体10とタッチパネル部材20とは、接着層6を介して貼り合わせられている。
本発明の液晶表示装置に用いられる液晶表示部は、対向配置された基板の間に形成された液晶層を有するものであり、従来公知の液晶表示装置に用いられている構成を採用することができる。
本発明の液晶表示装置の駆動方式としては、特に限定はなく一般的に液晶表示装置に用いられている駆動方式を採用することができ、例えば、TN方式、IPS方式、OCB方式、及びMVA方式等を挙げることができる。
本発明の液晶表示装置に用いられる対向基板としては、液晶表示装置の駆動方式等に応じて適宜選択して用いることができ、本発明のポリアミドイミドフィルム又は積層体を備えるものを用いても良い。
液晶層を構成する液晶としては、本発明の液晶表示装置の駆動方式等に応じて、誘電異方性の異なる各種液晶、及びこれらの混合物を用いることができる。
液晶層の形成方法としては、一般に液晶セルの作製方法として用いられる方法を使用することができ、例えば、真空注入方式や液晶滴下方式等が挙げられる。前記方法によって液晶層を形成後、液晶セルを常温まで徐冷することにより、封入された液晶を配向させることができる。
本発明の液晶表示装置において、対向配置された基板の間には、さらに複数色の着色層や、画素を画定する遮光部を有していてもよい。また、液晶表示部は、対向配置された基板の外側において、タッチパネル部材が位置する側とは反対側の位置に、発光素子や蛍光体を有するバックライト部を有していてもよい。また、対向配置された基板の外表面には、それぞれ偏光板を有していてもよい。
図10は、本発明の液晶表示装置の別の一例を示す概略断面図である。図10に示す液晶表示装置200は、本発明の積層体10と、本発明の積層体10’の一方の面に第一の透明電極4を備える第一の導電性部材201と、本発明の積層体10”の一方の面に第二の透明電極5を備える第二の導電性部材202とを有するタッチパネル部材20’と、液晶表示部30とを有する。液晶表示装置200において、積層体10と第一の導電性部材201、及び第一の導電性部材201と第二の導電性部材202とは、各々接着層6を介して貼り合わせられている。タッチパネル部材20’の構成は、例えば、図8に示すタッチパネル部材20’の構成と同様にすることができる。本発明の液晶表示装置に用いられる導電性部材としては、本発明のタッチパネル部材に用いられる導電性部材と同様のものを用いることができる。
VIII.有機エレクトロルミネッセンス表示装置
本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置は、前述した本発明のポリアミドイミドフィルム又は前述した本発明の積層体と、前記ポリアミドイミドフィルム又は前記積層体の一方の面側に配置された、対向基板間に有機エレクトロルミネッセンス層を有してなる有機エレクトロルミネッセンス表示部とを有する。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置は、前述した本発明のポリアミドイミドフィルム又は前述した本発明の積層体を備えるものであることから、十分な透明性を有しつつ、高い弾性率と、向上した屈曲耐性を有するものであるため、フレキシブルディスプレイ用として特に好適に用いることができ、光学特性に優れる。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置に用いられる本発明の積層体は、ポリアミドイミドフィルムの両面に隣接して、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物を含有するハードコート層を有するものであることが好ましい。
また、本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置は、前述した本発明のタッチパネル部材を備えるものであっても良い。
また、本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置が有する対向基板は、本発明のポリアミドイミドフィルム又は積層体を備えるものであっても良い。
図11は、本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置の一例を示す概略断面図である。図11に示す有機エレクトロルミネッセンス表示装置300は、本発明の積層体10と、本発明の積層体10’の一方の面に第一の透明電極4を備え、もう一方の面に第二の透明電極5を備えるタッチパネル部材20と、有機エレクトロルミネッセンス表示部40とを有する。有機エレクトロルミネッセンス表示装置300において、積層体10は表面材として用いられており、積層体10とタッチパネル部材20とは、接着層6を介して貼り合わせられている。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置(有機EL表示装置)に用いられる有機エレクトロルミネッセンス表示部(有機EL表示部)は、対向配置された基板の間に形成された有機エレクトロルミネッセンス層(有機EL層)を有するものであり、従来公知の有機EL表示装置に用いられている構成を採用することができる。
有機EL表示部は、さらに、支持基板と、有機EL層並びに有機EL層を挟持する陽極層及び陰極層を含む有機EL素子と、有機EL素子を封止する封止基材と、を有していてもよい。前記有機EL層としては、少なくとも有機EL発光層を有するものであれば良いが、例えば、上記陽極層側から、正孔注入層、正孔輸送層、有機EL発光層、電子輸送層および電子注入層がこの順で積層した構造を有するものを有するものを用いることができる。
本発明の有機EL表示装置は、例えば、パッシブ駆動方式の有機ELディスプレイにもアクティブ駆動方式の有機ELディスプレイにも適用可能である。本発明の有機EL表示装置に用いられる対向基板としては、有機EL表示装置の駆動方式等に応じて適宜選択して用いることができ、本発明の積層体を備えるものを用いても良い。
図12は、本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置の別の一例を示す概略断面図である。図12に示す有機エレクトロルミネッセンス表示装置400は、本発明の積層体10と、本発明の積層体10’の一方の面に第一の透明電極4を備える第一の導電性部材201と、本発明の積層体10”の一方の面に第二の透明電極5を備える第二の導電性部材202とを有するタッチパネル部材20’と、有機エレクトロルミネッセンス表示部40とを有する。有機エレクトロルミネッセンス表示装置400において、積層体10と第一の導電性部材201、第一の導電性部材201と第二の導電性部材202とは、各々接着層6を介して貼り合わせられている。タッチパネル部材20’の構成は、例えば、図7に示すタッチパネル部材20’の構成と同様にすることができる。本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置に用いられる導電性部材としては、本発明のタッチパネル部材に用いられる導電性部材と同様のものを用いることができる。
[評価方法]
以下、特に断りがない場合は、25℃で測定又は評価を行った。
フィルムの試験片は、フィルムの中央部付近から切り出した。
フィルムの試験片は、特に断りがない場合は、温度25℃、相対湿度60%の条件で2時間調湿した後、評価に用いた。
<ポリアミドイミドの重量平均分子量>
ポリアミドイミド粉体15mgを、15000mgのN−メチルピロリドン(NMP)に浸漬し、ウォーターバスで60℃に加熱しながら、スターラーを用いて回転速度200rpmで、目視で溶解を確認するまで3〜60時間撹拌することにより、0.1質量%の濃度のNMP溶液を得た。その溶液をシリンジフィルター(孔径:0.45μm)に通じて濾過させ、展開溶媒として、含水量500ppm以下の30mmol%LiBr−NMP溶液を用い、GPC装置(東ソー製、HLC−8120、検出器:示差屈折率(RID)検出器、使用カラム:SHODEX製GPC LF−804を2本直列に接続)を用い、サンプル打ち込み量50μL、溶媒流量0.4mL/分、カラム温度37℃、検出器温度37℃の条件で測定を行った。ポリイミドの重量平均分子量は、サンプルと同濃度のポリスチレン標準サンプル(重量平均分子量:364,700、204,000、103,500、44,360,27,500、13,030、6,300、3,070)を基準に測定した標準ポリスチレンに対する換算値とした。溶出時間を検量線と比較し、重量平均分子量を求めた。
<ポリアミドイミドワニスの粘度>
ポリイミドワニスの粘度は、JIS K7117−1に記載の方法で、単一円筒型回転粘度計(例えば、東機産業株式会社製、TVB−10形粘度計、M4ローター)を用いて、25℃において、サンプル量50mlとして測定した。
<フィルムの膜厚測定法>
10cm×10cmの大きさに切り出したポリアミドイミドフィルムの試験片の四隅と中央の計5点の膜厚を、デジタルリニアゲージ(株式会社尾崎製作所製、型式PDN12 デジタルゲージ)を用いて測定し、測定値の平均をポリアミドイミドフィルムの膜厚とした。
<全光線透過率>
ポリアミドイミドフィルム、積層体の全光線透過率は、JIS K7361−1に準拠して、ヘイズメーター(村上色彩技術研究所製 HM150)により測定した。
<YI値(黄色度)>
ポリアミドイミドフィルム、積層体のYI値は、JIS K7373−2006に準拠して、紫外可視近赤外分光光度計(日本分光(株) V−7100)を用い、分光測色方法により、補助イルミナントC、2度視野を用いて、250nm以上800nm以下の範囲を1nm間隔で測定される透過率をもとに、XYZ表色系における三刺激値X,Y,Zを求め、そのX,Y,Zの値から以下の式より算出した。
YI=100(1.2769X−1.0592Z)/Y
<引張弾性率>
10mm×150mmに切り出したポリアミドイミドフィルムの試験片を、JIS K7127に準拠し、引張り速度を50mm/分、チャック間距離を100mmとして、25℃における引張弾性率を測定した。引張り試験機は(島津製作所製:オートグラフAG−X 1N、ロードセル:SBL−1KN)を用いた。
<鉛筆硬度>
ポリアミドイミドフィルムの鉛筆硬度は、ポリアミドイミドフィルムの試験片を、JIS−S−6006が規定する試験用鉛筆を用い、東洋精機(株)製 鉛筆引っかき塗膜硬さ試験機を用いて、JIS K5600−5−4(1999)に規定する鉛筆硬度試験(0.98N荷重)をフィルム表面に行い、傷がつかない最も高い鉛筆硬度を評価することにより行った。
積層体の鉛筆硬度は、前記ポリアミドイミドフィルムの鉛筆硬度の測定方法において、荷重を9.8Nとする以外は同様にして評価した。
<静的屈曲試験(φ6mm、24時間静置)>
以下、静的屈曲試験の方法について、図1を参照して説明する。
15mm×40mmに切り出したポリアミドイミドフィルムの試験片1を長辺の半分の位置で折り曲げ、試験片1の長辺の両端部が厚み6mmの金属片2(100mm×30mm×6mm)を上下面から挟むようにして配置し、試験片1の両端部と金属片2との上下面での重なりしろが各々10mmずつになるようにテープで固定した。試験片1が固定された金属片2を、上下からガラス板(100mm×100mm×0.7mm)3a、3bで挟み、試験片1を内径6mmで屈曲した状態で固定した。その際に、金属片2上で試験片1がない部分にダミーの試験片4a、4bを挟み込み、ガラス板3a、3bが平行になるようにテープで固定した。
このようにして屈曲した状態で固定した試験片を、25℃、60%相対湿度(RH)、又は60±2℃で93±2%相対湿度(RH)の環境下で24時間静置した後、ガラス板と試験片固定用のテープを外し、試験片にかかる力を解放した。その後、試験片の一方の端部を固定し、試験片にかかる力を解放してから30分後に試験片の内角を測定した。
なお、当該静的屈曲試験によってフィルムが影響を受けずに完全に元に戻った場合は、前記内角は180°となる。
<動的屈曲試験(φ6mm)>
以下、動的屈曲試験の方法について、図2を参照して説明する。
可動部11aと非可動部11bとを備える可動式の金属板11(100mm×30mm)を2枚用意し、2枚の金属板11の非可動部11b間の距離が60mmとなるように、平行に配置する。金属板11の可動部11aを、図2の(A)に示すように、非可動部11bに対して垂直になるように折り曲げ、可動部11aの上に、20mm×100mmに切り出したポリアミドイミドフィルムの試験片1を置き、試験片1の中央が金属板間の距離の中央に位置するように、試験片1の両端をカプトン(登録商標)テープで可動部11aに固定する。次いで、可動部11aと非可動部11bとを直線状に配置して、図2の(B)に示すような状態とし、すなわち、長辺の半分の位置で湾曲させた試験片1を両側から金属板11で挟み、両側の金属板11間の距離が60mmとなるように両側の金属板11を平行に配置した状態とする。このような状態と、図2の(C)に示すような、両側の金属板11間の距離が6.0mmとなるように両側の金属板を平行に配置した状態に、25℃、60%相対湿度(RH)、又は60±2℃で93±2%相対湿度(RH)の環境下で、1分間に90回の屈曲回数で繰り返し変化させ、20万回屈曲を繰り返す。試験治具としては、恒温恒湿器内耐久試験システム(ユアサシステム機器製、面状体無負荷U字伸縮試験治具 DMX−FS)を用いることができる。
その後、当該試験片の一方の端部を固定し、試験片にかかる力を解放してから30分後の試験片の内角を測定する。
なお、当該動的屈曲試験によってフィルムが影響を受けずに完全に元に戻った場合は、前記内角は180°となる。
(実施例1)
(1)ポリアミドイミド樹脂の合成
国際公開2014/046180号公報の合成例1を参照して、下記化学式(1−1)で表されるテトラカルボン酸二無水物(TMPBPTME)を合成した。
Figure 2021059720
500mLのセパラブルフラスコをN置換し、脱水されたジメチルアセトアミド(DMAc)を293.29g、及び、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)を14.3g(44.7mmol)溶解させた溶液が液温30℃となるように制御したところに、TMPBPTME24.8g(40.1mmol)を温度上昇が2℃以下になるように徐々に投入し、メカニカルスターラーで3時間撹拌した。その後、前記溶液にテレフタル酸ジクロリド(TPC)0.91g(4.5mmol)を添加して更に3時間撹拌することでポリアミド酸溶液を得た。次に触媒であるピリジン6.66g(84.2mmol)及び無水酢酸8.60g(84.2mmol)を投入して、25℃で30分間攪拌して溶液が均一であることを確認し、70℃に加温して1時間攪拌した。その後、常温まで冷却させた溶液に対して、2−プロピルアルコール(IPA)174.26gを徐々に加え、僅かに濁りが見られる溶液を得た。濁りの見られる溶液にIPA435.64gを一気に加え白色スラリーを得た。上記スラリーをろ過して5回IPAで洗浄した後、100℃に加熱したオーブンで減圧しながら6時間乾燥させることでポリアミドイミド1の粉体(37.1g)を得た。
GPCによって測定したポリアミドイミドの重量平均分子量は、62000であった。
(2)ポリアミドイミドワニスの調製
ポリアミドイミド1の固形分濃度が19質量%となるように、ポリアミドイミド1にDMAcを添加して、ポリアミドイミド1がワニス中に19質量%のポリアミドイミドワニス1を作製した。ポリアミドイミドワニス1(固形分濃度19質量%)の25℃における粘度は4000mPa・sであった。
(3)ポリアミドイミドフィルムの製造
ポリアミドイミドワニス1を用い、下記(i)〜(ii)の手順を行うことで、40μmの厚みの単層のポリアミドイミドフィルム1を作製した。
(i)ポリアミドイミドワニス1を、ガラス板上に塗布し、120℃の循環オーブンで10分乾燥後、25℃まで冷却し、ポリアミドイミド樹脂塗膜を剥離した。
(ii)剥離したポリアミドイミド樹脂塗膜を150mm×200mmの大きさに切り出した。金属枠(外寸150mm×200mm、内寸130mm×180mm)を2枚使用して、切り出したポリアミドイミド樹脂塗膜を挟持し、固定治具で金属枠とポリアミドイミド樹脂塗膜とを固定した。固定したポリアミドイミド樹脂塗膜を窒素気流下(酸素濃度100ppm以下)、循環オーブン中で、昇温速度10℃/分で、300℃まで昇温し、300℃で1時間保持後、25℃まで冷却し、単層のポリアミドイミドフィルムを作製した。
得られたポリアミドイミドフィルムの評価結果を表1に示す。
(実施例2〜8)
実施例1のポリアミドイミド樹脂の合成において、テトラカルボン酸二無水物(TMPBPTME)とテレフタル酸ジクロリド(TPC)の組成比率(モル%)を表1に記載されているように変更した以外は、実施例1と同様にして、ポリアミドイミド樹脂を合成した。
得られた各ポリアミドイミド樹脂を用いて、実施例1と同様にしてポリアミドイミドワニスを調製し、ポリアミドイミドフィルムを製造した。
得られたポリアミドイミドフィルムの評価結果を表1に示す。
(比較例1)
実施例1のポリアミドイミド樹脂の合成において、テトラカルボン酸二無水物(TMPBPTME)とテレフタルジクロリド(TPC)の組成比率(モル%)を100:0に変更した以外は、実施例1と同様にして、ポリイミド樹脂を合成した。
得られたポリイミド樹脂を用いて、実施例1と同様にしてポリイミドワニスを調製し、ポリイミドフィルムを製造した。
得られたポリイミドフィルムの評価結果を表1に示す。
(比較例2)
実施例1のポリアミドイミド樹脂の合成において、テトラカルボン酸二無水物(TMPBPTME)とテレフタルジクロリド(TPC)の組成比率(モル%)を0:100に変更した以外は、実施例1と同様にして、ポリアミド樹脂を合成した。
得られたポリアミド樹脂を用いて、実施例1と同様にしてポリアミドワニスを調製した。その結果、ポリアミドワニスは、アミド構造の導入量が多く、水素結合による分子鎖同士の分子間力が高まったことが原因で溶剤との親和性が低くなり、ゲル化し、ポリアミドフィルムを製造することはできなかった。
Figure 2021059720
室温:25℃、60%相対湿度(RH)の環境下
高温高湿:60±2℃で93±2%相対湿度(RH)の環境下
(実施例9)
実施例1のポリアミドイミド樹脂の合成において、テトラカルボン酸二無水物(TMPBPTME)とTMPBPTMEとは異なる他のテトラカルボン酸(6FDA)とテレフタルジクロリド(TPC)の組成比率(モル%)を30:10:60に変更した以外は、実施例1と同様にして、ポリアミドイミド樹脂9を合成した。
得られたポリアミドイミド樹脂9を用いて、実施例1と同様にしてポリアミドイミドワニスを調製し、ポリアミドイミドフィルムを製造した。
得られたポリアミドイミドフィルムの評価結果を表3に示す。
(実施例10〜19)
実施例9のポリアミドイミド樹脂の合成において、テトラカルボン酸二無水物(TMPBPTME)とTMPBPTMEとは異なる他のテトラカルボン酸二無水物(6FDA又はCBDA)の組成比率(モル%)を表2に記載されているように変更し、場合により、ジカルボン酸クロリドの種類を表2に記載されているように更に変更した以外は、実施例9と同様にして、ポリアミドイミド樹脂を合成した。
得られた各ポリアミドイミド樹脂を用いて、実施例1と同様にしてポリアミドイミドワニスを調製し、ポリアミドイミドフィルムを製造した。
得られたポリアミドイミドフィルムの評価結果を表3に示す。
(比較例3)
実施例1のポリアミドイミド樹脂の合成において、テトラカルボン酸二無水物(3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸ニ無水物、BPDA)と、BPDAとは異なる他のテトラカルボン酸(6FDA)と、テレフタルジクロリド(TPC)の組成比率(モル%)を30:10:60に変更した以外は、実施例1と同様にして、ポリアミドイミド樹脂を合成した。
得られたポリアミドイミド樹脂を用いて、実施例1と同様にしてポリアミドイミドワニスを調製し、ポリアミドイミドフィルムを製造した。
得られたポリアミドイミドフィルムの評価結果を表3に示す。
Figure 2021059720
TMBPTME:前記化学式(1−1)で表されるテトラカルボン酸二無水物
CBDA:シクロブタンテトラカルボン酸二無水物
6FDA:4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物
BPDA:3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
TPC:テレフタル酸ジクロリド
IPC:イソフタル酸ジクロリド
OBBC:4,4’−オキシビス(ベンゾイルクロリド)
BBC:4,4’−ビフェニルジカルボニルクロリド
TFMB:2,2−ビス(トリフルオロメチル)−4,4−ジアミノビフェニル
Figure 2021059720
室温:25℃、60%相対湿度(RH)の環境下
高温高湿:60±2℃で93±2%相対湿度(RH)の環境下
(実施例20〜38、比較例4〜5:積層体の製造)
下記組成のハードコート層用樹脂組成物を調製した。
(ハードコート層用樹脂組成物)
・ペンタエリスリトールトリアクリレートの40質量%メチルイソブチルケトン溶液:固形分65質量部
・シリカ微粒子(日産化学製、MIBK−SD−L、メチルイソブチルケトン分散シリカゾル、SiO 30質量%):固形分30質量部
・1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(BASF製、イルガキュア184)固形分5質量部
実施例1〜19の各ポリアミドイミドフィルム、比較例1のポリイミドフィルム、及び比較例3のポリアミドイミドフィルム上に前記ハードコート層用樹脂組成物を塗布し、紫外線を窒素気流下200mJ/cmの露光量で照射し硬化させ、約10μm膜厚の硬化膜を形成し、積層体を製造した。
得られた積層体の評価結果を表4、5及び6に示す。実施例28、32、36、37、及び38の積層体については、全光線透過率と、YI値も測定したので、評価結果を表6に示す。
Figure 2021059720
Figure 2021059720
Figure 2021059720

Claims (14)

  1. 下記式(1)で表される構成単位を含むポリイミド構成単位と、下記式(2)で表される構成単位を含むポリアミド構成単位とを含有するポリアミドイミド樹脂。
    Figure 2021059720
    (式(2)において、Xは芳香族環を有するジカルボン酸残基である2価の基を表す。)
  2. 前記式(2)で表される構成単位を含むポリアミド構成単位の含有割合が、前記式(1)で表される構成単位を含むポリイミド構成単位と前記式(2)で表される構成単位を含むポリアミド構成単位との合計に対して、10モル%以上80モル%以下である、請求項1に記載のポリアミドイミド樹脂。
  3. 前記式(2)中のXが、下記式(x1)〜(x3)で表される構造からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1又は2に記載のポリアミドイミド樹脂。
    Figure 2021059720
    (式(x3)において、Lは、−O−、−S−、−CH−、−CH(CH)−、−C(CH−、−C(CF−、又は−CO−を表し、*は結合手を表す。)
  4. 前記ポリイミド構成単位に、更に、下記式(3)で表される構成単位、下記式(4)で表される構成単位、又はこれらの組み合わせを含有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリアミドイミド樹脂。
    Figure 2021059720
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリアミドイミド樹脂と、有機溶剤とを含有する、ポリアミドイミドワニス。
  6. 下記式(1)で表される構成単位を含むポリイミド構成単位と、下記式(2)で表される構成単位を含むポリアミド構成単位とを含有するポリアミドイミド樹脂を含有する、ポリアミドイミドフィルム。
    Figure 2021059720
    (式(2)において、Xは芳香族環を有するジカルボン酸残基である2価の基を表す。)
  7. 前記ポリアミドイミド樹脂において、前記式(2)で表される構成単位を含むポリアミド構成単位の含有割合が、前記式(1)で表される構成単位を含むポリイミド構成単位と前記式(2)で表される構成単位を含むポリアミド構成単位との合計に対して、10モル%以上80モル%以下である、請求項6に記載のポリアミドイミドフィルム。
  8. 前記ポリアミドイミド樹脂において、前記式(2)中のXが、下記式(x1)〜(x3)で表される構造からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項6又は7に記載のポリアミドイミドフィルム。
    Figure 2021059720
    (式(x3)において、Lは、−O−、−S−、−CH−、−CH(CH)−、−C(CH−、−C(CF−、又は−CO−を表し、*は結合手を表す。)
  9. 前記ポリイミド構成単位に、更に、下記式(3)で表される構成単位、下記式(4)で表される構成単位、又はこれらの組み合わせを含有する、請求項6〜8のいずれか1項に記載のポリアミドイミドフィルム。
    Figure 2021059720
  10. 請求項6〜9のいずれか一項に記載のポリアミドイミドフィルムと、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物を含有するハードコート層とを有する積層体。
  11. 請求項6〜9のいずれか一項に記載のポリアミドイミドフィルム、又は、請求項10に記載の積層体である、ディスプレイ用部材。
  12. 請求項6〜9のいずれか一項に記載のポリアミドイミドフィルム、又は、請求項10に記載の積層体と、
    前記ポリアミドイミドフィルム又は前記積層体の一方の面側に配置された、複数の導電部からなる透明電極と、
    前記導電部の端部の少なくとも一方側において電気的に接続される複数の取り出し線と、を有するタッチパネル部材。
  13. 請求項6〜9のいずれか一項に記載のポリアミドイミドフィルム、又は、請求項10に記載の積層体と、
    前記ポリアミドイミドフィルム又は前記積層体の一方の面側に配置された、対向基板間に液晶層を有してなる液晶表示部と、を有する液晶表示装置。
  14. 請求項6〜9のいずれか一項に記載のポリアミドイミドフィルム、又は、請求項10に記載の積層体と、
    前記ポリアミドイミドフィルム又は前記積層体の一方の面側に配置された、対向基板間に有機エレクトロルミネッセンス層を有してなる有機エレクトロルミネッセンス表示部と、を有する有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
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