JP7512710B2 - ポリイミド前駆体樹脂、ポリイミドフィルムの製造方法、積層体の製造方法、ポリイミドフィルム、積層体、ディスプレイ用部材、タッチパネル部材、液晶表示装置、及び有機エレクトロルミネッセンス表示装置 - Google Patents

ポリイミド前駆体樹脂、ポリイミドフィルムの製造方法、積層体の製造方法、ポリイミドフィルム、積層体、ディスプレイ用部材、タッチパネル部材、液晶表示装置、及び有機エレクトロルミネッセンス表示装置 Download PDF

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本発明は、ポリイミド前駆体樹脂、当該ポリイミド前駆体樹脂を用いたポリイミドフィルムの製造方法及び積層体の製造方法、ポリイミドフィルム、積層体、ディスプレイ用部材、タッチパネル部材、液晶表示装置、並びに有機エレクトロルミネッセンス表示装置に関するものである。
薄い板ガラスは、硬度、耐熱性等に優れている反面、曲げにくく、落とすと割れやすく、加工性に問題があり、また、プラスチック製品と比較して重いといった欠点があった。このため、近年、樹脂基材や樹脂フィルム等の樹脂製品が、加工性、軽量化の観点でガラス製品と置き換わりつつあり、ガラス代替製品となる樹脂製品の研究が行われてきている。
例えば、液晶や有機EL等のディスプレイや、タッチパネル等のエレクトロニクスの急速な進歩に伴い、デバイスの薄型化や軽量化、更には、フレキシブル化が要求されるようになってきた。これらのデバイスには従来、薄い板ガラス上に様々な電子素子、例えば、薄型トランジスタや透明電極等が形成されているが、この薄い板ガラスを樹脂フィルムに変えることにより、パネル自体の耐衝撃性の強化、フレキシブル化、薄型化や軽量化が図れる。
ガラス代替となる樹脂材料として、例えば、ポリイミドが検討されている。一般にポリイミドは黄色或いは褐色に着色を示すことから、ディスプレイ用途や光学用途など透明性が要求される分野に用いることは困難であったが、透明性を向上したポリイミドが検討されてきている。
透明性を向上したポリイミドとしては、例えば、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物と4,4’-ジアミノ-2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニルを重合したポリイミドが知られている(例えば、特許文献1)。
また、特許文献2には、優れた透明性を有し、高い耐熱性及び低い線熱膨張係数を併せ持ち、低吸湿性溶媒による溶媒加工性を示すとして、特定構造のテトラカルボン酸二無水物と4,4’-ジアミノ-2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニルを重合したポリイミドが開示されている。
特開平4-288331号公報 国際公開2014/046180号公報
ガラス代替製品となる樹脂製品には、透明性だけでなく、表面硬度や耐衝撃性のために、高い弾性率に加えて、光学的歪みが小さいことが求められる。
しかしながら、ポリイミドフィルムにおいて、高い弾性率を付与する成分は着色し易く透明性を低くする傾向があり、着色し難く高い透明性を付与する成分は弾性率を低くする傾向があり、高弾性率と高透明性とはトレードオフの特性関係であった。また、従来のポリイミドフィルムは、光学的歪みが大きく、特に膜厚方向の位相差が大きいという問題があった。
更に、画面が折り畳めるモバイル機器は、持ち運ぶ際には折り畳んだ状態とし、使用する際には折り畳みを開いた状態とする。そのため、モバイル機器に搭載されるフレキシブルディスプレイには、繰り返し屈曲させても表示不良が発生しないことが求められ、フレキシブルディスプレイ用の基材や表面材には、繰り返し屈曲させたときの屈曲耐性(以下、動的屈曲耐性という場合がある)が求められる。
特許文献1及び2に記載されているポリイミドフィルムでは、透明性は十分であり、弾性率は比較的良好なものの、光学的歪みが大きく、特に膜厚方向の位相差が大きいという問題がある。そのため、屈曲耐性の低下を抑制して、位相差をより低減するポリイミドフィルムの製造方法が求められていた。
また、透明性と、低い位相差と、高い弾性率と、良好な屈曲耐性を同時に満たすフィルムが求められていた。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、十分な透明性を有しつつ、屈曲耐性の低下を抑制して、位相差をより低減するポリイミドフィルムの製造方法を提供することを第一の目的とする。また、本発明は、前記ポリイミドフィルムの製造方法に用いられるポリイミド前駆体樹脂、及び前記ポリイミドフィルムの製造方法を用いた積層体の製造方法を提供することを目的とする。
更に、本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、十分な透明性を有しつつ、低い位相差と、高い弾性率と、向上した屈曲耐性を有するポリイミドフィルム、及び積層体を提供することを第二の目的とする。また、本発明は、前記ポリイミドフィルム又は前記積層体であるディスプレイ用部材、並びに、前記ポリイミドフィルム又は前記積層体を備えるタッチパネル部材、液晶表示装置、及び有機エレクトロルミネッセンス表示装置を提供することを目的とする。
前記第一の目的を解決するための第一の本発明は、下記一般式(1-1)又は下記一般式(1-2)
Figure 0007512710000001
(一般式(1-1)及び(1-2)において、Aは、下記グループA1及び下記グループA2からなる群から選択される少なくとも1種のテトラカルボン酸二無水物の残基である4価の基を表し、Bは下記グループB1及び下記グループB2からなる群から選択される少なくとも1種のジアミンの残基である2価の基を表し、Rは水素原子又は炭素数1~10のアルキル基を表す。)で表される構成単位を有し、
<グループA1:4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、及び下記化学式(a-1)で表される酸二無水物>
Figure 0007512710000002
<グループA2:ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、及びp-フェニレンビス(トリメリテート無水物)>
<グループB1:2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、ビス(4-アミノフェニル)スルホン、及びビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン>
<グループB2:フェニレンジアミン、4-アミノ安息香酸4-アミノフェニル、ビス(4-アミノフェニル)テレフタレート、4,4’-ジアミノベンズアニリド、及びN,N’-ビス(4-アミノフェニル)テレフタルアミド>
前記一般式(1-1)及び(1-2)において、前記グループA1からなる群から選択される少なくとも1種のテトラカルボン酸二無水物の残基であるA、及び、前記グループB1からなる群から選択される少なくとも1種のジアミンの残基であるBの少なくとも一方を含有し、
前記一般式(1-1)及び(1-2)中に含まれる全てのRに対する95.0%以上が炭素数1~10のアルキル基であり、
更に、下記一般式(2)
Figure 0007512710000003
{一般式(2)において、Xは下記式(x1)~(x4)
Figure 0007512710000004
(式(x3)において、Lは、-O-、-S-、-CH-、-CH(CH)-、-C(CH-、-C(CF-、又は-CO-を表し、*は結合手を表す。)で表される構造からなる群から選択される少なくとも1つの2価の基を表し、Bは前記グループB1及び前記グループB2からなる群から選択される少なくとも1種のジアミンの残基である2価の基を表す。}で表される構成単位を有していてもよく、
ゲル浸透クロマトグラフィーのポリスチレン換算による重量平均分子量が108,000以上である、ポリイミド前駆体樹脂を提供する。
第一の本発明の1実施形態であるポリイミド前駆体樹脂においては、前記一般式(1-1)及び(1-2)において、Aが4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、及び前記化学式(a-1)で表される酸二無水物からなる群から選択される少なくとも1種のテトラカルボン酸二無水物の残基である4価の基を表すことが、透明性と溶解性付与の点から好ましい。
第一の本発明の1実施形態であるポリイミド前駆体樹脂においては、前記一般式(1-1)及び(1-2)において、Bが2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジンの残基である2価の基を表すことが、透明性付与の点から好ましい。
また第一の本発明は、前記第一の本発明の1実施形態であるポリイミド前駆体樹脂と、有機溶剤とを含むポリイミド前駆体樹脂組成物を調製する工程と、
前記ポリイミド前駆体樹脂組成物を支持体に塗布して、ポリイミド前駆体樹脂塗膜を形成する工程と、
前記ポリイミド前駆体樹脂塗膜を加熱することにより、前記ポリイミド前駆体樹脂をイミド化する工程と、を含むポリイミドフィルムの製造方法を提供する。
また第一の本発明は、前記第一の本発明の1実施形態であるポリイミドフィルムの製造方法により、ポリイミドフィルムを製造する工程と、
前記ポリイミドフィルムの少なくとも一面に、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種を含有するハードコート層用組成物を塗布して、ハードコート層形成用塗膜を形成する工程と、
前記ハードコート層形成用塗膜を硬化することにより、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物を含有するハードコート層を形成する工程と、を含む積層体の製造方法を提供する。
前記第二の目的を解決するための第二の本発明は、下記一般式(1’)
Figure 0007512710000005
(一般式(1’)において、Aは、下記グループA1及び下記グループA2からなる群から選択される少なくとも1種のテトラカルボン酸二無水物の残基である4価の基を表し、Bは下記グループB1及び下記グループB2からなる群から選択される少なくとも1種のジアミンの残基である2価の基を表す。)で表される構成単位を有し、
<グループA1:4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、及び下記化学式(a-1)で表される酸二無水物>
Figure 0007512710000006
<グループA2:ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸ニ無水物、及びp-フェニレンビス(トリメリテート無水物)>
<グループB1:2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、ビス(4-アミノフェニル)スルホン、及びビス[4-(4-アニノフェノキシ)フェニル]スルホン>
<グループB2:フェニレンジアミン、4-アミノ安息香酸4-アミノフェニル、ビス(4-アミノフェニル)テレフタレート、4,4’-ジアミノベンズアニリド、及びN,N’-ビス(4-アミノフェニル)テレフタルアミド>
前記一般式(1’)において、Aは、少なくとも前記化学式(a-1)で表される酸二無水物の残基である4価の基を含有し、
更に、下記一般式(2)
Figure 0007512710000007
{一般式(2)において、Xは下記式(x1)~(x4)
Figure 0007512710000008
(式(x3)において、Lは、-O-、-S-、-CH-、-CH(CH)-、-C(CH-、-C(CF-、又は-CO-を表し、*は結合手を表す。)で表される構造からなる群から選択される少なくとも1つの2価の基を表し、Bは前記グループB1及び前記グループB2からなる群から選択される少なくとも1種のジアミンの残基である2価の基を表す。}で表される構成単位を有していてもよいポリイミド樹脂を含有し、
JIS K7361-1に準拠して測定する全光線透過率が、膜厚40μmの換算値で85.0%以上であり、JIS K7373-2006に準拠して算出される黄色度を膜厚(μm)で除した値が、0.15未満であり、
波長590nmにおける厚み方向の複屈折率が、0.025未満であり、
10mm×150mmの試験片を、JIS K7127に準拠し、引張り速度を50mm/分、チャック間距離を100mmとして、25℃で測定する引張試験における引張弾性率が4.0GPa以上であり、且つ、下記動的屈曲試験において、屈曲回数が、10万回以上である、ポリイミドフィルムを提供する。
(動的屈曲試験)
20mm×100mmの試験片を、長辺の半分の位置で湾曲させて、平行に配置した金属板で挟み、両側の金属板間の距離が60mmから2.5mmとなるように25℃、60%相対湿度(RH)の環境下で、1分間に90回の屈曲回数で繰り返し変化させ、試験片の屈曲を繰り返す。
また、第二の本発明は、前記第二の本発明の1実施形態であるポリイミドフィルムと、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物を含有するハードコート層とを有する、積層体を提供する。
また、第二の本発明は、前記第二の本発明のポリイミドフィルム、又は、前記第二の本発明の積層体である、ディスプレイ用部材を提供する。
また、第二の本発明は、前記第二の本発明の1実施形態であるポリイミドフィルム、又は、前記第二の本発明の1実施形態である積層体と、
前記ポリイミドフィルム、又は、前記積層体の一方の面側に配置された、複数の導電部からなる透明電極と、
前記導電部の端部の少なくとも一方側において電気的に接続される複数の取り出し線と、を有するタッチパネル部材を提供する。
また、第二の本発明は、前記第二の本発明の1実施形態であるポリイミドフィルム、又は、前記第二の本発明の1実施形態である積層体と、
前記ポリイミドフィルム、又は、前記積層体の一方の面側に配置された、対向基板間に液晶層を有してなる液晶表示部と、を有する液晶表示装置を提供する。
また、第二の本発明は、前記第二の本発明の1実施形態であるポリイミドフィルム、又は、前記第二の本発明の1実施形態である積層体と、
前記ポリイミドフィルム、或いは前記積層体の一方の面側に配置された、対向基板間に有機エレクトロルミネッセンス層を有してなる有機エレクトロルミネッセンス表示部と、を有する有機エレクトロルミネッセンス表示装置を提供する。
第一の本発明によれば、十分な透明性を有しつつ、屈曲耐性の低下を抑制して、位相差をより低減するポリイミドフィルムの製造方法を提供することができる。また、第一の本発明は、前記ポリイミドフィルムの製造方法に用いられるポリイミド前駆体樹脂、及び前記ポリイミドフィルムの製造方法を用いた積層体の製造方法を提供することができる。
更に、第二の本発明によれば、十分な透明性を有しつつ、低い位相差と、高い弾性率と、向上した屈曲耐性を有するポリイミドフィルム、及び積層体を提供することができる。また、第二の本発明によれば、前記ポリイミドフィルム又は前記積層体であるディスプレイ用部材、並びに、前記ポリイミドフィルム又は前記積層体を備えるタッチパネル部材、液晶表示装置、及び有機エレクトロルミネッセンス表示装置を提供することができる。
動的屈曲試験の方法を説明するための図である。 本発明のタッチパネル部材の一例の一方の面の概略平面図である。 図2に示すタッチパネル部材のもう一方の面の概略平面図である。 図2及び図3に示すタッチパネル部材のA-A’断面図である。 本発明の積層体を備える導電性部材の一例を示す概略平面図である。 本発明の積層体を備える導電性部材の別の一例を示す概略平面図である。 本発明のタッチパネル部材の別の一例を示す概略断面図である。 本発明の液晶表示装置の一例を示す概略断面図である。 本発明の液晶表示装置の別の一例を示す概略断面図である。 本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置の一例を示す概略断面図である。 本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置の別の一例を示す概略断面図である。
以下、第一の本発明に係るポリイミド前駆体樹脂、ポリイミドフィルムの製造方法、積層体の製造方法、第二の本発明に係るポリイミドフィルム、積層体、ディスプレイ用部材、タッチパネル部材、液晶表示装置、及び有機エレクトロルミネッセンス表示装置について詳細に説明する。
また、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件並びにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
また、本明細書において(メタ)アクリルとは、アクリル及びメタアクリルの各々を表す。
また、本明細書において「光」とは、活性光線又は放射線を意味し、例えば、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外線(EUV光)、X線、電子線等が包含されるものである。
また、本明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある場合がある。
また、本明細書において数値範囲を示す「~」とは、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
I.ポリイミド前駆体樹脂
第一の本発明の1実施形態であるポリイミド前駆体樹脂は、下記一般式(1-1)又は下記一般式(1-2)
Figure 0007512710000009
(一般式(1-1)及び(1-2)において、Aは、下記グループA1及び下記グループA2からなる群から選択される少なくとも1種のテトラカルボン酸二無水物の残基である4価の基を表し、Bは下記グループB1及び下記グループB2からなる群から選択される少なくとも1種のジアミンの残基である2価の基を表し、Rは水素原子又は炭素数1~10のアルキル基を表す。)で表される構成単位を有し、
<グループA1:4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、及び下記化学式(a-1)で表される酸二無水物>
Figure 0007512710000010
<グループA2:ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、及びp-フェニレンビス(トリメリテート無水物)>
<グループB1:2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、ビス(4-アミノフェニル)スルホン、及びビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン>
<グループB2:フェニレンジアミン、4-アミノ安息香酸4-アミノフェニル、ビス(4-アミノフェニル)テレフタレート、4,4’-ジアミノベンズアニリド、及びN,N’-ビス(4-アミノフェニル)テレフタルアミド>
前記一般式(1-1)及び(1-2)において、前記グループA1からなる群から選択される少なくとも1種のテトラカルボン酸二無水物の残基であるA、及び、前記グループB1からなる群から選択される少なくとも1種のジアミンの残基であるBの少なくとも一方を含有し、
前記一般式(1-1)及び(1-2)中に含まれる全てのRに対する95.0%以上が炭素数1~10のアルキル基であり、
更に、下記一般式(2)
Figure 0007512710000011
{一般式(2)において、Xは下記式(x1)~(x4)
Figure 0007512710000012
(式(x3)において、Lは、-O-、-S-、-CH-、-CH(CH)-、-C(CH-、-C(CF-、又は-CO-を表し、*は結合手を表す。)で表される構造からなる群から選択される少なくとも1つの2価の基を表し、Bは前記グループB1及び前記グループB2からなる群から選択される少なくとも1種のジアミンの残基である2価の基を表す。}で表される構成単位を有していてもよく、
ゲル浸透クロマトグラフィーのポリスチレン換算による重量平均分子量が108,000以上である。
従来よりポリイミドフィルムの製法としては、可溶性ポリイミドを溶剤に溶解したポリイミドワニスを用いて塗膜を形成し、溶剤を乾燥することによりポリイミドフィルムを製造する方法と、ポリイミド前駆体溶液を用いてポリイミド前駆体塗膜を形成し、当該ポリイミド前駆体塗膜を加熱することによりイミド化して、ポリイミドフィルムを製造する方法の2つが挙げられる。
しかしながら、可溶性ポリイミドを用いた製法によるポリイミドフィルムは、光学的歪みが大きく、特に膜厚方向の位相差が大きいという問題があり、特に弾性率が高い剛直な骨格を有するポリイミドを用いると、その傾向が強かった。
一方、ポリイミド前駆体を用いた製法によるポリイミドフィルムは、光学的歪みは改善されるものの、屈曲耐性が低下するという問題があった。
位相差は、屈折率の異方性が原因で発生する。高分子の場合、屈折率の異方性は、一般に固体中で高分子鎖がランダムに存在せず、方向性を持って規則正しく並んでいる場合に生じる。ポリイミドは、他の樹脂と比較して、前記化学構造中に折れ曲がり可能な結合箇所が少ないため、高分子鎖中に直線状の分子構造が多くなりやすい。特に弾性率が高い剛直な骨格を有するポリイミドワニスを用いると、塗膜形成時に直線状の分子構造が膜厚方向に配向した状態で規則的に折り重なりやすくなり、溶剤を乾燥して形成されたポリイミドフィルムでは膜厚方向の位相差が大きくなると想定される。
一方、ポリイミドよりもポリイミド前駆体の方が骨格の柔軟性が高く、塗膜中に不規則な形で存在しやすい。そういった不規則な状態で存在しているポリイミド前駆体から、実質的な固層中でイミド化をすることで、ポリイミドとした後でも、不規則な構造を取りやすい。その結果、ポリイミド前駆体の製膜後に加熱によりポリイミドフィルムとする製造方法の方が、位相差が低くなりやすいと推定される。
一般的なポリイミド前駆体であるポリアミド酸は、140℃程度の分解温度を超えると、原料のテトラカルボン酸二無水物とジアミンとに戻る分解反応と平衡反応になる。一般的なポリイミド前駆体であるポリアミド酸を加熱イミド化する場合、ポリアミド酸の分解温度よりも高温で加熱するので、イミド化のための加熱によって、分解反応が必ず起こり、分子量低下が引き起こされる。そのため、ポリイミド前駆体の分子量がイミド化後に維持されず低下してしまう。この分子量低下によって、ポリイミド前駆体を用いた製法によるポリイミドフィルムは、屈曲耐性が低下すると推定される。
それに対して、本発明の1実施形態であるポリイミド前駆体樹脂は、ポリイミド前駆体樹脂中に含まれる全ての-COOR基(Rは水素原子又は炭素数1~10のアルキル基)のRに対する95.0%以上が炭素数1~10のアルキル基、すなわち、ポリイミド前駆体樹脂中に含まれる全ての-COOR基の95.0%以上がアルキルエステル基であり、且つ、ゲル浸透クロマトグラフィーのポリスチレン換算による重量平均分子量が108,000以上である。そのため、本発明の1実施形態であるポリイミド前駆体樹脂は、イミド化のために高温で加熱しても分解が抑制され、分子量低下を起こし難く、ポリイミドの重量平均分子量が106,000以上を維持できるものである。
また、本発明の1実施形態であるポリイミド前駆体樹脂は、前記特定の構成単位を有するポリイミド前駆体樹脂であるため、十分な透明性を有しつつ、高い弾性率を有するポリイミドフィルムを提供可能であり、且つ、上述のように加熱イミド化しても分子量低下が起こらず特定以上の高分子量を維持できるため、加熱イミド化をすることによる屈曲耐性の低下を抑制して、位相差をより低減するポリイミドフィルムの製造方法を提供することができる。
また、従来のポリイミド前駆体であるポリアミド酸は、水分が存在すると分解しやすく、保存安定性が悪かった。それに対して、本発明の1実施形態であるポリイミド前駆体樹脂は、カルボキシ基の殆どがエステル化されていることにより、水分による分解反応が抑制されるため、保存安定性が良好である。
更に、従来のポリイミド前駆体であるポリアミド酸は、ポリアミド酸のカルボン酸同士の水素結合により、低極性溶剤への溶解性が低かった。それに対して、本発明の1実施形態であるポリイミド前駆体樹脂は、カルボキシ基がエステル化されていることにより、低極性溶剤への溶解性も良好になり、樹脂の溶解濃度が同一の場合、ポリアミド酸と比較して低粘度化できるというメリットがある。
以下、本発明の1実施形態であるポリイミド前駆体樹脂の詳細について説明する。
前記一般式(1-1)及び(1-2)において、Aは、前記グループA1及び前記グループA2からなる群から選択される少なくとも1種のテトラカルボン酸二無水物の残基である4価の基を表す。
前記グループA1は、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、及び前記化学式(a-1)で表される酸二無水物からなり、いずれも透明性を向上し、且つ弾性率が良好になる構成単位を付与する。芳香族環同士をフッ素で置換されていても良いアルキレン基やエーテル基で連結した構造を含むと、ポリイミド骨格内のπ電子の共役を断ち切ることで骨格内の電荷の移動を阻害することができる点から透明性が向上する。また、脂肪族環を含むと、ポリイミド骨格内のπ電子の共役を断ち切ることで骨格内の電荷の移動を阻害することができる点から、透明性が向上する。また、前記化学式(a-1)で表される酸二無水物においては、主鎖にエステル結合を介して2面角が捻れたパラビフェニレン基を含むので、π電子の共役を断ち切ることで骨格内の電荷の移動を阻害することができる点から透明性が向上する。また、芳香環又は脂肪族環を含有すると弾性率は良好になる。
前記グループA1において、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸二無水物及び前記化学式(a-1)で表される酸二無水物を用いると、芳香族環間に屈曲部位を有する点から更にポリイミドの溶剤溶解性を向上する傾向があり、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物を用いると、脂肪族骨格である点から更にポリイミドフィルムの光学歪みを低減させる傾向がある。
グループA2は、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェルテトラカルボン酸二無水物、及びp-フェニレンビス(トリメリテート無水物)からなり、いずれも弾性率を高くする構成単位を付与する。これらはいずれも、芳香族環を含み、且つ剛直な構造を有するので、ポリマー同士がπ-π相互作用によりスタッキング構造を取りやすく、弾性率を向上する。
前記一般式(1-1)及び(1-2)において、Bは、前記グループB1及び前記グループB2からなる群から選択される少なくとも1種のジアミンの残基である2価の基を表す。
グループB1は、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、ビス(4-アミノフェニル)スルホン、及びビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホンからなり、いずれも透明性を向上し、且つ弾性率が良好になる構成単位を付与する。フッ素原子を含むとポリイミド骨格内の電子状態を電荷移動し難くすることができる点から透明性が向上する。芳香族環同士をスルホニル基やエーテル基で連結した構造を含むと、ポリイミド骨格内のπ電子の共役を断ち切ることで骨格内の電荷の移動を阻害することができる点から透明性が向上する。また、芳香環を含有すると弾性率は良好になる。
前記グループB1において、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、及びビス(4-アミノフェニル)スルホンを用いると、芳香族環同士の捻れや屈曲部位を有する事でポリマーのスタッキングを抑制できる点から更にポリイミドフィルムの光学歪みを低減させる傾向がある。また、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホンを用いると、屈曲部位の数が増し、スタッキング構造を抑制できる点から更にポリイミドの溶剤溶解性を向上する傾向がある。
グループB2は、フェニレンジアミン、4-アミノ安息香酸4-アミノフェニル、ビス(4-アミノフェニル)テレフタレート、4,4’-ジアミノベンズアニリド、及びN,N’-ビス(4-アミノフェニル)テレフタルアミドからなり、いずれも弾性率を高くする構成単位を付与する。これらはいずれも、芳香族環を含み、且つ剛直な構造を有するので、π-π相互作用または水素結合による分子間力が強固となり、弾性率を向上する。
本発明の1実施形態であるポリイミド前駆体樹脂は、前記一般式(1-1)及び(1-2)において、前記グループA1からなる群から選択される少なくとも1種のテトラカルボン酸二無水物の残基であるA、及び、前記グループB1からなる群から選択される少なくとも1種のジアミンの残基であるBの少なくとも一方を含有することから、透明性が向上し、弾性率が良好になる構成単位を必ず含み、更に、弾性率を向上する構成単位を含んでいてもよいので、これらの組み合わせにより、前述のように、十分な透明性を有しつつ、高い弾性率を有するポリイミドフィルムを提供可能である。
本発明の1実施形態であるポリイミド前駆体樹脂は、前記一般式(1-1)及び(1-2)中に含まれる全てのAに対して50%以上、更に60%以上、より更に70%以上が前記グループA1からなる群から選択される少なくとも1種のテトラカルボン酸二無水物の残基であることが好ましい。
一方、本発明の1実施形態であるポリイミド前駆体樹脂は、前記一般式(1-1)及び(1-2)中に含まれる全てのAに対して50%以下、更に40%以下、より更に30%以下が前記グループA2からなる群から選択される少なくとも1種のテトラカルボン酸二無水物の残基であってよい。
本発明の1実施形態であるポリイミド前駆体樹脂は、前記一般式(1-1)及び(1-2)中に含まれる全てのBに対して50%以上、更に60%以上、より更に70%以上が前記グループB1からなる群から選択される少なくとも1種のテトラカルボン酸二無水物の残基であることが好ましい。
一方、本発明の1実施形態であるポリイミド前駆体樹脂は、前記一般式(1-1)及び(1-2)中に含まれる全てのBに対して50%以下、更に40%以下、より更に30%以下が前記グループB2からなる群から選択される少なくとも1種のテトラカルボン酸二無水物の残基であってよい。
本発明の1実施形態であるポリイミド前駆体樹脂は、透明性と弾性率の特性バランス及び溶剤への溶解性の点から、前記一般式(1-1)及び(1-2)において、Aが4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、及び前記化学式(a-1)で表される酸二無水物からなる群から選択される少なくとも1種のテトラカルボン酸二無水物の残基である4価の基を表すことが好ましく、更に、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、及び前記化学式(a-1)で表される酸二無水物からなる群から選択される少なくとも1種のテトラカルボン酸二無水物の残基である4価の基であることがより好ましい。
また、本発明の1実施形態であるポリイミド前駆体樹脂は、透明性および溶剤溶解性の点から、前記一般式(1-1)及び(1-2)において、Bが2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジンの残基である2価の基を表すことが好ましい。
本発明の1実施形態であるポリイミド前駆体樹脂は、前記一般式(1-1)及び(1-2)中に含まれる全てのRに対する95.0%以上が炭素数1~10のアルキル基である。
炭素数1~10のアルキル基としては、直鎖、分岐又は環状であってよく、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、シクロペンチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、n-オクチル基等が挙げられる。
Rにおける炭素数1~10のアルキル基としては、熱イミド化時におけるアルコールの脱離性能を高める点から、炭素数1~6のアルキル基であることが好ましく、炭素数1~4のアルキル基であることがより好ましく、メチル基、エチル基、n-プロピル基、又はi-プロピル基であることがさらに好ましく、メチル基又はエチル基であることがよりさらに好ましい。
本発明の1実施形態であるポリイミド前駆体樹脂は、前記一般式(1-1)及び(1-2)中に含まれる全てのRに対する95.0%以上が炭素数1~10のアルキル基であるが、ポリイミド前駆体の大気中での安定性の点から、全てのRに対する炭素数1~10のアルキル基の比率は、98.0%以上が好ましく、99.0%以上がより好ましく、100%であってもよい。
本発明の1実施形態であるポリイミド前駆体樹脂中の前記一般式(1-1)及び(1-2)で表される構成単位はそれぞれ、1種又は2種以上含まれて良い。
本発明の1実施形態であるポリイミド前駆体樹脂中の構成単位の合計に対して、前記一般式(1-1)及び(1-2)で表される構成単位の合計含有割合は100モル%であってもよいが、本発明の1実施形態であるポリイミド樹脂中には、本発明の効果が損なわれない限り、前記一般式(1-1)及び(1-2)で表される構成単位とは異なる構成単位を含有していても良い。
異なる構成単位を含有する場合であっても、本発明の1実施形態であるポリイミド前駆体樹脂の全構成単位に対して、前記一般式(1-1)及び(1-2)で表される構成単位の合計含有割合は80モル%以上であることが好ましく、更に90モル%以上であることがより好ましい。
本発明の1実施形態であるポリイミド前駆体樹脂は、十分な透明性を有しつつ、高い弾性率を有するポリアミドイミドフィルムを提供可能になる点から、更に、下記一般式(2)で表される構成単位を有していてもよい。
Figure 0007512710000013
{一般式(2)において、Xは下記式(x1)~(x4)で表される構造からなる群から選択される少なくとも1つの2価の基を表し、Bは前記グループB1及び前記グループB2からなる群から選択される少なくとも1種のジアミンの残基である2価の基を表す。
Figure 0007512710000014
(式(x3)において、Lは、-O-、-S-、-CH-、-CH(CH)-、-C(CH-、-C(CF-、又は-CO-を表し、*は結合手を表す。)}
前記式(x1)~(x4)で表される構造の中では、高弾性率、及び屈曲耐性が向上する点から、前記式(x1)~(x3)で表される構造からなる群から選択される1種以上が好ましく、前記式(x1)又は式(x2)で表される構造がより好ましく、前記式(x2)で表される構造がより更に好ましい。
Bは、前記グループB1及び前記グループB2からなる群から選択される少なくとも1種のジアミンの残基と同様であって良く、透明性の点から、前記グループB1からなる群から選択される少なくとも1種のジアミンの残基であることが好ましく、透明性と高弾性率化の点から、Bが2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジンの残基である2価の基を表すことが好ましい。
一般式(2)で表される構成単位において、X及びBはそれぞれ独立に、1種であっても2種以上含まれていても良い。
本発明の1実施形態であるポリイミド前駆体樹脂の全構成単位に対して、前記一般式(2)で表される構成単位の合計含有割合は、60モル%以下であることが好ましく、更に40モル%以下であることがより好ましい。
すなわち、本発明の1実施形態であるポリイミド前駆体樹脂において、ジカルボン酸残基の合計の含有割合は、0モル%であってもよいが、全テトラカルボン酸残基と全ジカルボン酸残基の合計に対して、60モル%以下であることが好ましく、更に40モル%以下であることがより好ましい。
ジカルボン酸残基は、ポリイミド前駆体樹脂の分解に影響を与えないので、本発明の1実施形態であるポリイミド前駆体樹脂の全構成単位に対して、50モル%超過であっても含有可能である。
また、本発明の1実施形態であるポリイミド前駆体樹脂は、透明性、複屈折率、弾性率のバランスを崩さなければ良く、更に、前記一般式(1-1)及び(1-2)において、Aが、前記グループA1及び前記グループA2とは異なる他のテトラカルボン酸二無水物の残基である4価の基を表すか、或いは、Bが前記グループB1及び前記グループB2とは異なる他のジアミンの残基である2価の基を表すような、前記一般式(1-1)及び(1-2)とは異なる構成単位を含んでいてもよい。
前記グループA1及び前記グループA2とは異なる他のテトラカルボン酸二無水物や、前記グループB1及び前記グループB2とは異なる他のジアミンは、ポリイミドに用いられるテトラカルボン酸二無水物やジアミンから適宜選択されればよく、例えば国際公開2018/030410号、国際公開2019/078051号、国際公開2019/013169号等に記載されているテトラカルボン酸二無水物やジアミンが挙げられる。
なお、前記一般式(1-1)及び(1-2)とは異なるポリイミド前駆体構成単位を含む場合であっても、ポリイミド前駆体樹脂中に含まれる全ての-COOR基の95.0%以上が炭素数1~10のアルキルエステル基であることが好ましい。
前記一般式(1-1)及び(1-2)とは異なるポリイミド前駆体構成単位を含む場合であっても、前記グループA1及び前記グループA2とは異なる他のテトラカルボン酸二無水物の残基の合計の含有割合は、全テトラカルボン酸残基と全ジカルボン酸残基の合計に対して、20モル%以下であることが好ましく、10モル%以下であることがより好ましく、5モル%以下であることがさらに好ましく、2モル%以下であることがよりさらに好ましい。
また、前記グループB1及び前記グループB2とは異なる他のジアミンの残基の合計の含有割合は、全ジアミン残基の合計に対して、20モル%以下であることが好ましく、更に10モル%以下であることがより好ましく、5モル%以下であることがさらに好ましく、2モル%以下であることがよりさらに好ましい。
本発明の1実施形態であるポリイミド前駆体樹脂は、前記一般式(1-1)で表される構成単位、前記一般式(1-2)で表される構成単位、及び前記一般式(2)で表される構成単位の合計が、ポリイミド前駆体樹脂の全構成単位の95%以上であることが好ましく、98%以上であることがより好ましく、100%であることがより更に好ましい。
本発明の1実施形態であるポリイミド前駆体樹脂のゲル浸透クロマトグラフィーのポリスチレン換算による重量平均分子量は、108,000以上であるが、好ましくは120,000以上、より好ましくは150,000以上であり、好ましくは1,000,000以下であり、より好ましくは500,000以下、より更に好ましくは300,000以下である。
前記ポリイミド前駆体樹脂の重量平均分子量が前記下限値以上であると、屈曲耐性が良好であり、また、焼成後にクラックや白化などの外観不良が生じ難く、透明性が良好なフィルムを得やすい点から好ましい。一方、前記上限値以下であると、合成、ワニス調製、フィルム形成時に高粘度化が抑制され、フィルムを形成しやすくなる点から好ましい。
なお、ポリイミド前駆体樹脂の重量平均分子量は、ポリイミド前駆体樹脂を0.5重量%の濃度のN-メチルピロリドン(NMP)溶液とし、その溶液をシリンジフィルター(孔径:0.45μm)に通じて濾過させ、展開溶媒として、含水量500ppm以下の10mmol%LiBr-NMP溶液を用い、GPC装置(東ソー製、HLC-8120、使用カラム:SHODEX製GPC LF-804)を用い、サンプル打ち込み量50μL、溶媒流量0.5mL/分、40℃の条件で測定を行う。ポリイミド前駆体樹脂の重量平均分子量は、サンプルと同濃度のポリスチレン標準サンプル(重量平均分子量:364,700、204,000、103,500、44,360、27,500、13,030、6,300、3,070)を基準に測定した標準ポリスチレンに対する換算値とした。溶出時間を検量線と比較し、重量平均分子量を求める。
(ポリイミド前駆体樹脂の製造方法)
本発明の1実施形態であるポリイミド前駆体樹脂の製造方法としては特に限定されないが、例えば、前記特定のテトラカルボン酸二無水物を含む1種又は2種以上のテトラカルボン酸二無水物と、前記特定のジアミンを含む1種又は2種以上のジアミンとを反応させることにより、ポリアミド酸を得る工程と、必要に応じて、得られたポリアミド酸と、芳香族環を有するジカルボン酸成分とを反応させることにより、ポリアミド-ポリアミド酸共重合体を得る工程とを有し、得られた前記ポリアミド酸又は前記ポリアミド-ポリアミド酸共重合体のカルボキシ基をアルキルエステル化する工程を経て製造することができる。
前記ポリアミド酸は、上述のテトラカルボン酸二無水物と、上述のジアミンとを、溶剤中で反応させて得られる。ポリアミド酸の合成に用いる溶剤としては、上述のテトラカルボン酸二無水物及びジアミンを溶解可能であれば特に制限はなく、例えば非プロトン性極性溶剤または水溶性アルコール系溶剤等を用い得る。本発明においては、中でも、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルアミド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等の窒素原子を含む有機溶剤;γ-ブチロラクトン等を用いることが好ましい。なお、有機溶剤とは、炭素原子を含む溶剤である。
また、前記ポリアミド酸が、少なくとも2種のテトラカルボン酸二無水物を組み合わせて調製される場合、ジアミンが溶解した重合溶媒に少なくとも2種のテトラカルボン酸二無水物を一度に添加し、ポリアミド酸を合成してもよいし、少なくとも2種のテトラカルボン酸二無水物を適切なモル比で段階を踏んで反応液に添加し、ある程度、各原料が高分子鎖へ組み込まれるシーケンスをコントロールしてもよい。
たとえば、ジアミンが溶解された反応液に、前記化学式(a-1)で表される酸二無水物を投入し反応させることで、前記化学式(a-1)で表される酸二無水物とジアミンが反応したアミド酸を合成し、そこへ、前記化学式(a-1)で表される酸二無水物とは異なるテトラカルボン酸二無水物を投入し、必要に応じて更にジアミンを加えてポリアミド酸を重合しても良い。この方法で重合すると、前記化学式(a-1)で表される酸二無水物が1つのジアミンを介して、連結した形でポリアミド酸の中に導入される。
このような方法でポリアミド酸を重合することは、特定の構造のテトラカルボン酸残基の位置関係がある程度特定され、表面硬度が良好で屈曲耐性の優れたポリイミドフィルムを得易い点から好ましい。
必要に応じてポリアミド-ポリアミド酸共重合体を得る場合、ポリアミド酸を得る工程においては、例えば、溶剤中、ジアミン成分100モル%に対して、テトラカルボン酸二無水物成分aモル%を反応させることにより、ポリアミド酸を得て、その後、当該反応溶液中で、前記ポリアミド酸と(100-a)モル%のジカルボン酸成分とを反応させることにより、ポリアミド-ポリアミド酸共重合体を得ることが、より高分子量体を得られる点から好ましい。
前記ポリアミド酸溶液中のジアミンのモル数をX、テトラカルボン酸二無水物のモル数をYとしたとき、Y/Xを0.9以上1.1以下とすることが好ましく、0.95以上1.05以下とすることがより好ましく、0.97以上1.03以下とすることがさらに好ましく、0.99以上1.01以下とすることが特に好ましい。このような範囲とすることにより得られるポリアミド酸の分子量(重合度)を適度に調整することができる。
得られた前記ポリアミド酸又は前記ポリアミド-ポリアミド酸共重合体のカルボキシ基をアルキルエステル化する工程において、炭素数1~10のアルキルエステル化は、例えば、N,N-ジメチルホルムアミドジメチルアセタール、N,N-ジメチルホルムアミドジエチルアセタール、N,N-ジメチルホルムアミドジプロピルアセタール等のN,N-ジメチルホルムアミドジアルキルアセタールを用いて行うことができる。中でも、エステル化剤の反応性および熱イミド化時における閉環のしやすさの点からN,N-ジメチルホルムアミドジメチルアセタールを用いることが好ましい。
エステル化は、25℃のポリアミド酸溶液に対して、ポリアミド酸を構成しているテトラカルボン酸二無水物のモル数の2倍となるように、N,N-ジメチルホルムアミドジアルキルアセタールを加えて3時間ほど撹拌する事が好ましい。ポリアミド酸溶液の溶剤はN,N-ジメチルアセトアミドを用いることが透明性向上の点からより好ましい。
本発明の1実施形態であるポリイミド前駆体樹脂の構造は、NMR分析、各種質量分析、元素分析、IR分析等を用いて求めることができる。
II.ポリイミドフィルムの製造方法
第一の本発明の1実施形態であるポリイミドフィルムの製造方法は、前記本発明の1実施形態であるポリイミド前駆体樹脂と、有機溶剤とを含むポリイミド前駆体樹脂組成物を調製する工程と、
前記ポリイミド前駆体樹脂組成物を支持体に塗布して、ポリイミド前駆体樹脂塗膜を形成する工程と、
前記ポリイミド前駆体樹脂塗膜を加熱することにより、前記ポリイミド前駆体樹脂をイミド化する工程と、を含む。
本発明の1実施形態であるポリイミドフィルムの製造方法においては、前記本発明の1実施形態である特定の構造と分子量を有するポリイミド前駆体樹脂を用いて、熱イミド化することにより製造される。そのため、前述のように、フィルム中でポリイミドが不規則な構造を取りやすく、且つ、ポリイミドは熱イミド化の過程で分解されることなく特定の高分子量が維持されていることから、十分な透明性を有しつつ、屈曲耐性の低下を抑制して、位相差をより低減するポリイミドフィルムを製造することができる。
本発明の1実施形態であるポリイミドフィルムの製造方法においては、更に、前記ポリイミド前駆体樹脂塗膜、及び、前記ポリイミド前駆体樹脂塗膜をイミド化したイミド化後塗膜の少なくとも一方を延伸する工程(以下、延伸工程という)を有していてもよい。
以下、ポリイミドフィルムの製造方法の例について工程ごとに詳細に説明する。
1.ポリイミド前駆体樹脂組成物調製工程
ポリイミド前駆体樹脂組成物は、前記本発明の1実施形態であるポリイミド前駆体樹脂と、有機溶剤とを含有し、必要に応じて添加剤等を含有してもよい。
前記本発明の1実施形態であるポリイミド前駆体樹脂としては、前記と同様であって良いので、ここでの説明を省略する。
合成反応により得られたポリイミド前駆体樹脂溶液をそのまま用い、そこに必要に応じて他の成分を混合しても良いし、合成反応により得られたポリイミド前駆体樹脂溶液の溶剤を乾燥させ、別の溶剤に溶解して用いても良い。
前記ポリイミド前駆体樹脂組成物に用いられる有機溶剤は、前記ポリイミド前駆体樹脂が溶解可能であれば特に制限はない。例えば、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルアミド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等の窒素原子を含む有機溶剤;γ-ブチロラクトン等を用いることができる。
必要に応じて含有してもよい添加剤としては、例えば、巻き取りを円滑にするためのシリカフィラーや、製膜性や脱泡性を向上させる界面活性剤等が挙げられる。
前記ポリイミド前駆体樹脂組成物中の前記ポリイミド前駆体樹脂の含有量は、均一な塗膜及びハンドリング可能な強度を有するポリイミドフィルムを形成する点から、樹脂組成物の固形分中に50質量%以上であることが好ましく、更に60質量%以上であることが好ましく、上限は含有成分により適宜調整されればよい。
前記ポリイミド前駆体樹脂組成物中の有機溶剤は、均一な塗膜及びポリイミドフィルムを形成する点から、樹脂組成物中に40質量%以上であることが好ましく、更に50質量%以上であることが好ましく、また99質量%以下であることが好ましい。
また、前記ポリイミド前駆体樹脂組成物は、含有水分量が1000ppm以下であることが、ポリイミド前駆体樹脂組成物の保存安定性が良好になり、生産性を向上することができる点から好ましい。ポリイミド前駆体樹脂組成物中に水分を多く含むと、ポリイミド前駆体が分解しやすくなる恐れがある。
なお、ポリイミド前駆体樹脂組成物の含有水分量は、カールフィッシャー水分計(例えば、三菱化学株式会社製、微量水分測定装置CA-200型)を用いて求めることができる。
前記ポリイミド前駆体樹脂組成物は、回転粘度計により測定した25℃における粘度が好ましくは1000mPa・s以上、より好ましくは3000mPa・s以上であり、好ましくは15000mPa・s以下、より好ましくは10000mPa・s以下、さらに好ましくは6000Pa・s以下である。
ポリイミドフィルムの製造時に、ポリイミド前駆体樹脂組成物の粘度が前記下限値以上であると、フィルム形成時の膜厚ムラや乾燥ムラが発生しにくくなる点から好ましく、前記上限値以下であると、コーティング前の準備として異物除去のために濾過を行うが、樹脂組成物の通過性が良好である点から好ましい。
ここでポリイミド前駆体樹脂組成物の粘度は、JIS K7117-1に記載の方法で、単一円筒型回転粘度計(例えば、東機産業株式会社製、TVB-10形粘度計)を用いて、25℃において測定することができる。
2.ポリイミド前駆体樹脂塗膜形成工程
前記ポリイミド前駆体樹脂組成物を支持体に塗布して、ポリイミド前駆体樹脂塗膜を形成する工程において、用いられる支持体としては、表面が平滑で耐熱性および耐溶剤性のある材料であれば特に制限はない。例えばガラス板などの無機材料、表面を鏡面処理した金属板等が挙げられる。また支持体の形状は塗布方式によって選択され、例えば板状であってもよく、またドラム状やベルト状、ロールに巻き取り可能なシート状等であってもよい。
前記塗布手段は目的とする膜厚で塗布可能な方法であれば特に制限はなく、例えばダイコータ、コンマコータ、ロールコータ、グラビアコータ、カーテンコータ、スプレーコータ、リップコータ等の公知のものを用いることができる。
塗布は、枚葉式の塗布装置により行ってもよく、ロールtoロール方式の塗布装置により行ってもよい。
ポリイミド前駆体樹脂組成物を支持体に塗布した後は、塗膜がタックフリーとなるまで、150℃以下の温度、好ましくは30℃以上120℃以下で前記塗膜中の溶剤を乾燥する。溶剤の乾燥温度を150℃以下とすることにより、ポリアミド酸のイミド化を抑制することができる。
乾燥時間は、ポリイミド前駆体樹脂塗膜の膜厚や、溶剤の種類、乾燥温度等に応じて適宜調整されれば良いが、通常1分~60分、好ましくは2分~30分とする。上限値を超える場合には、ポリイミドフィルムの作製効率の面から好ましくない。一方、下限値を下回る場合には、急激な溶剤の乾燥によって、得られるポリイミドフィルムの外観等に影響を与える恐れがある。
溶剤の乾燥方法は、上記温度で溶剤の乾燥が可能であれば特に制限はなく、例えばオーブンや、乾燥炉、ホットプレート、赤外線加熱等を用いることが可能である。
光学特性の高度な管理が必要な場合、溶剤の乾燥時の雰囲気は、不活性ガス雰囲気下であることが好ましい。不活性ガス雰囲気下としては、窒素雰囲気下であることが好ましく、酸素濃度が100ppm以下であることが好ましく、50ppm以下であることがより好ましい。大気下で熱処理を行うと、フィルムが酸化され、着色したり、性能が低下する可能性がある。
3.熱イミド化工程
本発明の1実施形態のポリイミドフィルムの製造方法では加熱によりイミド化する。
前述のように、熱イミド化では、ポリイミド前駆体の状態で塗膜を形成後イミド化するが、製膜された状態では熱による分子鎖の運動の影響でポリイミド前駆体のアミド結合が折れ曲がり形状になりやすいため、得られるポリイミド中の高分子鎖が折れ曲がり形状の分子構造をとりやすく、低位相差のポリイミドフィルムを得ることができるからである。
ポリイミドフィルムの残留溶剤量を低減し、屈曲耐性を向上するために、ポリイミド前駆体樹脂塗膜を、塗布する際に用いた支持体から剥離後、加熱をすることにより、前記ポリイミド前駆体をイミド化する工程を行うことが好ましい。塗布する際に用いた支持体から剥離して、フィルムの両表面が支持体等に接していない状態で加熱することにより、フィルムの両表面から溶剤を揮発させることができ、残留溶剤を十分に低減することができる。
また、支持体から剥離後のポリイミド前駆体樹脂塗膜は、加熱時の収縮を防止する点から、端部を固定後に加熱することが好ましい。
ポリイミド前駆体樹脂塗膜の端部を固定する方法としては、例えば、ポリイミド前駆体樹脂塗膜が枚様の場合、ポリイミド前駆体樹脂塗膜と概略同様の外寸と適切な内寸を有する金属枠を2枚使用して、ポリイミド前駆体樹脂塗膜を挟持し、固定治具で2枚の金属枠とポリイミド前駆体樹脂塗膜とを固定する方法が挙げられる。
また、例えば、ポリイミド前駆体樹脂塗膜がロール状の場合、例えば、連続する樹脂フィルムの左右両端をクリップ等の固定治具で把持して樹脂フィルムを搬送可能な装置を用いて、ポリイミド前駆体樹脂塗膜の端部を固定する方法が挙げられる。
当該製造方法において、延伸工程を有する場合、熱イミド化工程は、延伸工程前の前記ポリイミド前駆体樹脂塗膜中のポリイミド前駆体に対して行っても良いし、延伸工程後の前記ポリイミド前駆体樹脂塗膜中のポリイミド前駆体に対して行っても良いし、延伸工程前の前記ポリイミド前駆体樹脂塗膜中のポリイミド前駆体及び延伸工程後の膜中に存在するポリイミド前駆体の両方に対して行っても良い。
イミド化の温度は、ポリイミド前駆体中の高分子鎖が折れ曲がり形状の分子構造をとりやすいように、ポリイミド前駆体の構造に合わせて適宜選択されれば良い。
通常、昇温開始温度を30℃以上とすることが好ましく、100℃以上とすることがより好ましい。一方、昇温終了温度は250℃以上とすることが好ましい。
昇温速度は、得られるポリイミドフィルムの膜厚によって適宜選択することが好ましく、ポリイミドフィルムの膜厚が厚い場合には、昇温速度を遅くすることが好ましい。
ポリイミドフィルムの製造効率の点から、5℃/分以上とすることが好ましい。一方、昇温速度の上限は、通常50℃/分以下とされ、好ましくは40℃/分以下、さらに好ましくは30℃/分以下である。上記昇温速度とすることが、フィルムの外観不良や強度低下の抑制、イミド化反応に伴う白化をコントロールでき、光透過性が向上する点から好ましい。
昇温は、連続的でも段階的でもよいが、連続的とすることが、得られるポリイミド中の高分子鎖が折れ曲がり形状の分子構造がとりやすくなるため好ましい。また、上述の全温度範囲において、昇温速度を一定としてもよく、また途中で変化させてもよい。
イミド化の昇温時の雰囲気は、不活性ガス雰囲気下であることが好ましい。不活性ガス雰囲気下としては、窒素雰囲気下であることが好ましく、酸素濃度が500ppm以下であることが好ましく、200ppm以下であることがより好ましく、100ppm以下であることがさらに好ましい。大気下で熱処理を行うと、フィルムが酸化され、着色したり、性能が低下する可能性がある。
イミド化のための加熱方法は、上記温度で昇温が可能であれば特に制限はなく、例えばオーブンや、加熱炉、赤外線加熱、電磁誘導加熱等を用いることが可能である。
中でも、延伸工程前に、ポリイミド前駆体のイミド化率を50%以上とすることがより好ましい。延伸工程前にイミド化率を50%以上とすることにより、当該工程後に延伸を行い、その後さらに高い温度で一定時間加熱を行い、イミド化を行った場合であっても、フィルムの外観不良や白化が抑制される。中でもポリイミドフィルムの表面硬度が向上する点から、延伸工程前に、当該イミド化工程において、イミド化率を80%以上とすることが好ましく、90%以上、さらには100%まで反応を進行させることが好ましい。イミド化後に延伸することにより、剛直な高分子鎖が配向しやすいことから表面硬度が向上すると推定される。
なお、イミド化率の測定は、赤外測定(IR)によるスペクトルの分析等により行うことができる。
最終的なポリイミドフィルムを得るには、イミド化を90%以上、さらには95%以上、さらには100%まで反応を進行させることが好ましい。
イミド化を90%以上、さらには100%まで反応を進行させるには、昇温終了温度で一定時間保持することが好ましく、当該保持時間は、通常1分~180分、更に、5分~150分とすることが好ましい。
4.延伸工程
前記ポリイミド前駆体樹脂塗膜、及び、前記ポリイミド前駆体樹脂塗膜をイミド化したイミド化後塗膜の少なくとも一方を延伸する延伸工程を有していてもよい。当該延伸工程を有する場合は、中でも、イミド化後塗膜を延伸する工程を含むことが、ポリイミドフィルムの表面硬度が向上する点から好ましい。
延伸を実施する前の初期の寸法を100%とした時に101%以上10000%以下延伸する工程を、80℃以上で加熱しながら行うことが好ましい。
延伸時の加熱温度は、ポリイミド乃至ポリイミド前駆体のガラス転移温度±50℃の範囲内であることが好ましく、ガラス転移温度±40℃の範囲内であることが好ましい。延伸温度が低すぎるとフィルムが変形せず充分に配向を誘起できない恐れがある。一方で、延伸温度が高すぎると延伸によって得られた配向が温度で緩和し、充分な配向が得られない恐れがある。
延伸工程は、イミド化工程と同時に行っても良い。イミド化率80%以上、更に90%以上、より更に95%以上、特に実質的に100%イミド化を行った後のイミド化後塗膜を延伸することが、ポリイミドフィルムの表面硬度を向上する点から好ましい。
ポリイミドフィルムの延伸倍率は、好ましくは101%以上10000%以下であり、さらに好ましくは101%以上500%以下である。上記範囲で延伸を行うことにより、得られるポリイミドフィルムの表面硬度をより向上することができる。
延伸時におけるポリイミドフィルムの固定方法は、特に制限はなく、延伸装置の種類等に合わせて選択される。また、延伸方法は特に制限はなく、例えばテンター等の搬送装置を有する延伸装置を用い、加熱炉を通しながら延伸することが可能である。ポリイミドフィルムは、一方向のみに延伸(縦延伸または横延伸)してもよく、また同時2軸延伸、もしくは逐次2軸延伸、斜め延伸等によって、二方向に延伸処理を行ってもよい。
5.製造されるポリイミドフィルム
前記第一の本発明の1実施形態のポリイミドフィルムの製造方法により製造されるポリイミドフィルムは、下記一般式(1)
Figure 0007512710000015
(一般式(1)において、Aは、下記グループA1及び下記グループA2からなる群から選択される少なくとも1種のテトラカルボン酸二無水物の残基である4価の基を表し、Bは下記グループB1及び下記グループB2からなる群から選択される少なくとも1種のジアミンの残基である2価の基を表す。)で表される構成単位を有し、
<グループA1:4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、及び下記化学式(a-1)で表される酸二無水物>
Figure 0007512710000016
<グループA2:ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸ニ無水物、及びp-フェニレンビス(トリメリテート無水物)>
<グループB1:2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、ビス(4-アミノフェニル)スルホン、及びビス[4-(4-アニノフェノキシ)フェニル]スルホン>
<グループB2:フェニレンジアミン、4-アミノ安息香酸4-アミノフェニル、ビス(4-アミノフェニル)テレフタレート、4,4’-ジアミノベンズアニリド、及びN,N’-ビス(4-アミノフェニル)テレフタルアミド>
前記一般式(1)において、前記グループA1からなる群から選択される少なくとも1種のテトラカルボン酸二無水物の残基であるA、及び、前記グループB1からなる群から選択される少なくとも1種のジアミンの残基であるBの少なくとも一方を含有し、
更に、下記一般式(2)
Figure 0007512710000017
{一般式(2)において、Xは下記式(x1)~(x4)
Figure 0007512710000018
(式(x3)において、Lは、-O-、-S-、-CH-、-CH(CH)-、-C(CH-、-C(CF-、又は-CO-を表し、*は結合手を表す。)で表される構造からなる群から選択される少なくとも1つの2価の基を表し、Bは前記グループB1及び前記グループB2からなる群から選択される少なくとも1種のジアミンの残基である2価の基を表す。}で表される構成単位を有していてもよいポリイミド樹脂を含有する。
前記一般式(1)で表される構成単位におけるテトラカルボン酸二無水物の残基であるA、及び、ジアミンの残基であるBは、前記本発明の1実施形態のポリイミド前駆体樹脂における前記一般式(1-1)又は前記一般式(1-2)で表される構成単位におけるテトラカルボン酸二無水物の残基であるA、及び、ジアミンの残基であるBと同様であって良い。
更に、前記一般式(2)で表される構成単位も、前記本発明の1実施形態のポリイミド前駆体樹脂における前記一般式(2)で表される構成単位と同様であって良い。
第一の本発明の1実施形態のポリイミドフィルムに対しても、後述の第二の本発明の1実施形態のポリイミドフィルムと同様の特性を有することが好ましい。
III.積層体の製造方法
第一の本発明の積層体の製造方法は、
前記第一の本発明の1実施形態であるポリイミドフィルムの製造方法により、ポリイミドフィルムを製造する工程と、
前記ポリイミドフィルムの少なくとも一面に、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種を含有するハードコート層用組成物を塗布して、ハードコート層形成用塗膜を形成する工程と、
前記ハードコート層形成用塗膜を硬化することにより、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物を含有するハードコート層を形成する工程と、を含む。
前記第一の本発明の1実施形態のポリイミドフィルムの製造方法により、ポリイミドフィルムを製造する工程については、前記II.ポリイミドフィルムの製造方法に記載した方法と同様であって良いので、ここでの説明を省略する。
前記ハードコート層形成用組成物は、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種を含有し、必要に応じて更に重合開始剤、溶剤及び添加剤等を含有していてもよい。
ここで、前記ハードコート層形成用組成物が含有するラジカル重合性化合物、カチオン重合性化合物、重合開始剤及び添加剤については、後述する第二の本発明の1実施形態の積層体のハードコート層において説明するものと同様のものを用いることができ、溶剤は、公知の溶剤から適宜選択して用いることができる。
前記第一の本発明の1実施形態のポリイミドフィルムの製造方法により製造されたポリイミドフィルムの少なくとも一方の面に、前記ハードコート層形成用組成物の塗膜を形成する方法としては、例えば、ポリイミドフィルムの少なくとも一方の面に、前記ハードコート層形成用組成物を、公知の塗布手段により塗布する方法が挙げられる。
前記塗布手段は、目的とする膜厚で塗布可能な方法であれば特に制限はなく、例えば、前記ポリイミド前駆体樹脂組成物を支持体に塗布する手段と同様のものが挙げられる。
前記ハードコート層用硬化性樹脂組成物の塗膜は必要に応じて乾燥することにより溶剤を除去する。乾燥方法としては、例えば、減圧乾燥又は加熱乾燥、更にはこれらの乾燥を組み合わせる方法等が挙げられる。また、常圧で乾燥させる場合は、30℃以上110℃以下で乾燥させることが好ましい。
前記ハードコート層用硬化性樹脂組成物を塗布、必要に応じて乾燥させた塗膜に対し、当該硬化性樹脂組成物に含まれるラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の重合性基に応じて、光照射及び加熱の少なくともいずれかにより塗膜を硬化させることにより、ポリイミドフィルムの少なくとも一方の面に、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物を含有するハードコート層を形成することができる。
光照射には、主に、紫外線、可視光、電子線、電離放射線等が使用される。紫外線硬化の場合には、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、キセノンアーク、メタルハライドランプ等の光線から発する紫外線等を使用する。エネルギー線源の照射量は、紫外線波長365nmでの積算露光量として、50~5000mJ/cm程度である。
加熱をする場合は、通常40℃以上120℃以下の温度にて処理する。また、室温(25℃)で24時間以上放置することにより反応を行っても良い。
IV.ポリイミドフィルム
第二の本発明の1実施形態のポリイミドフィルムは、下記一般式(1’)
Figure 0007512710000019
(一般式(1’)において、Aは、下記グループA1及び下記グループA2からなる群から選択される少なくとも1種のテトラカルボン酸二無水物の残基である4価の基を表し、Bは下記グループB1及び下記グループB2からなる群から選択される少なくとも1種のジアミンの残基である2価の基を表す。)で表される構成単位を有し、
<グループA1:4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、及び下記化学式(a-1)で表される酸二無水物>
Figure 0007512710000020
<グループA2:ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸ニ無水物、及びp-フェニレンビス(トリメリテート無水物)>
<グループB1:2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、ビス(4-アミノフェニル)スルホン、及びビス[4-(4-アニノフェノキシ)フェニル]スルホン>
<グループB2:フェニレンジアミン、4-アミノ安息香酸4-アミノフェニル、ビス(4-アミノフェニル)テレフタレート、4,4’-ジアミノベンズアニリド、及びN,N’-ビス(4-アミノフェニル)テレフタルアミド>
前記一般式(1’)において、Aは、少なくとも前記化学式(a-1)で表される酸二無水物の残基である4価の基を含有し、
更に、下記一般式(2)
Figure 0007512710000021
{一般式(2)において、Xは下記式(x1)~(x4)
Figure 0007512710000022
(式(x3)において、Lは、-O-、-S-、-CH-、-CH(CH)-、-C(CH-、-C(CF-、又は-CO-を表し、*は結合手を表す。)で表される構造からなる群から選択される少なくとも1つの2価の基を表し、Bは前記グループB1及び前記グループB2からなる群から選択される少なくとも1種のジアミンの残基である2価の基を表す。}で表される構成単位を有していてもよいポリイミド樹脂を含有し、
JIS K7361-1に準拠して測定する全光線透過率が、膜厚40μmの換算値で85.0%以上であり、JIS K7373-2006に準拠して算出される黄色度を膜厚(μm)で除した値が、0.15未満であり、
波長590nmにおける厚み方向の複屈折率が、0.025未満であり、
10mm×150mmの試験片を、JIS K7127に準拠し、引張り速度を50mm/分、チャック間距離を100mmとして、25℃で測定する引張試験における引張弾性率が4.0GPa以上であり、且つ、下記動的屈曲試験において、屈曲回数が、10万回以上である、ポリイミドフィルムである。
(動的屈曲試験)
20mm×100mmの試験片を、長辺の半分の位置で湾曲させて、平行に配置した金属板で挟み、両側の金属板間の距離が60mmから2.5mmとなるように25℃、60%相対湿度(RH)の環境下で、1分間に90回の屈曲回数で繰り返し変化させ、試験片の屈曲を繰り返す。
第二の本発明の1実施形態のポリイミドフィルムは、前記第一の本発明の1実施形態の中でも特定の構造を有するポリイミド前駆体樹脂を用いて、熱イミド化することにより製造されてなるものであってよい。
第一の本発明によれば、前述のように、フィルム中でポリイミドが不規則な構造を取りやすく、且つ、ポリイミドは熱イミド化の過程で分解されることなく、特定の高分子量が維持されることから、十分な透明性を有しつつ、屈曲耐性の低下を抑制して、位相差をより低減するポリイミドフィルムを製造できる。中でも特定の構造を有するポリイミド前駆体樹脂を用いることにより、第二の本発明の1実施形態のポリイミドフィルムは、透明性と、位相差と、弾性率と、屈曲耐性のバランスが良好になり、十分な透明性を有しつつ、低い位相差と、高い弾性率と、向上した屈曲耐性を有するポリイミドフィルムを達成することができる。
1.ポリイミド樹脂
第二の本発明の1実施形態のポリイミドフィルムに含まれるポリイミド樹脂は、前記一般式(1’)で表される構成単位を有し、前記一般式(1’)において、Aは、少なくとも前記化学式(a-1)で表される酸二無水物の残基である4価の基を含有し、更に、前記一般式(2)で表される構成単位を有していてもよいポリイミド樹脂である。
前記一般式(1’)で表される構成単位におけるテトラカルボン酸二無水物の残基であるA、及び、ジアミンの残基であるBは、前記本発明の1実施形態のポリイミド前駆体樹脂における前記一般式(1-1)又は前記一般式(1-2)で表される構成単位におけるテトラカルボン酸二無水物の残基であるA、及び、ジアミンの残基であるBと同様であって良い。
更に、前記一般式(2)で表される構成単位も、前記本発明の1実施形態のポリイミド前駆体樹脂における前記一般式(2)で表される構成単位と同様であって良い。
前記一般式(1’)において、Aは、少なくとも前記化学式(a-1)で表される酸二無水物の残基である4価の基を含有する。
本発明の1実施形態であるポリイミド樹脂は、前記一般式(1’)で表される構成単位における全てのAに対して50%以上、更に60%以上、より更に70%以上が前記化学式(a-1)で表される酸二無水物の残基である4価の基であることが好ましく、100%であってもよい。
一方、本発明の1実施形態であるポリイミド樹脂は、前記一般式(1’)で表される構成単位における全てのAに対して50%以下、更に40%以下、より更に30%以下が、前記化学式(a-1)で表される酸二無水物とは異なる前記グループA1及び前記グループA2からなる群から選択される少なくとも1種のテトラカルボン酸二無水物の残基であってよい。
本発明の1実施形態であるポリイミド樹脂は、前記一般式(1’)で表される構成単位における全てのBに対して50%以上、更に60%以上、より更に70%以上が前記グループB1からなる群から選択される少なくとも1種のテトラカルボン酸二無水物の残基であることが好ましい。
一方、本発明の1実施形態であるポリイミド樹脂は、前記一般式(1’)で表される構成単位における全てのBに対して50%以下、更に40%以下、より更に30%以下が前記グループB2からなる群から選択される少なくとも1種のテトラカルボン酸二無水物の残基であってよい。
ポリイミド樹脂に、前記一般式(1’)で表される構成単位とは異なるポリイミド構成単位を含有する場合であっても、本発明に用いられるポリイミド樹脂の全ポリイミド構成単位に対して、前記一般式(1’)で表される構成単位の合計含有割合は80モル%以上であることが好ましく、90モル%以上であることがより好ましく、95モル%以上であることがさらに好ましく、98モル%以上であることがよりさらに好ましい。
また、本発明に用いられるポリイミド樹脂の全構成単位に対して、前記一般式(2)で表される構成単位の合計含有割合は、60モル%以下であることが好ましく、更に40モル%以下であることがより好ましい。
すなわち、本発明に用いられるポリイミド樹脂において、ジカルボン酸残基の合計の含有割合は、0モル%であってもよいが、全テトラカルボン酸残基と全ジカルボン酸残基の合計に対して、60モル%以下であることが好ましく、更に40モル%以下であることがより好ましい。
また、本発明に用いられるポリイミド樹脂が本発明の効果が損なわれない限り含んでいてもよい、前記一般式(1’)において、Aが、前記グループA1及び前記グループA2とは異なる他のテトラカルボン酸二無水物の残基である4価の基を表すか、或いは、Bが前記グループB1及び前記グループB2とは異なる他のジアミンの残基である2価の基を表すような、前記一般式(1’)とは異なる構成単位も、前述のポリイミド前駆体樹脂と同様であって良い。このような前記一般式(1’)とは異なる構成単位を含む場合であっても、前記グループA1及び前記グループA2とは異なる他のテトラカルボン酸二無水物の残基の合計の含有割合は、全テトラカルボン酸残基と全ジカルボン酸残基の合計に対して、20モル%以下であることが好ましく、10モル%以下であることがより好ましく、5モル%以下であることがさらに好ましく、2モル%以下であることがよりさらに好ましい。
また、前記グループB1及び前記グループB2とは異なる他のジアミンの残基の合計の含有割合は、全ジアミン残基の合計に対して、20モル%以下であることが好ましく、更に10モル%以下であることがより好ましく、5モル%以下であることがさらに好ましく、2モル%以下であることがよりさらに好ましい。
本発明に用いられるポリイミド樹脂は、前記一般式(1’)で表される構成単位、及び前記一般式(2)で表される構成単位の合計が、ポリイミドの全構成単位の95%以上であることが好ましく、98%以上であることがより好ましく、100%であることがより更に好ましい。
本発明に用いられるポリイミド樹脂は、ゲル浸透クロマトグラフィーのポリスチレン換算による重量平均分子量が、好ましくは106,000以上であり、より好ましくは120,000以上、さらに好ましくは150,000以上であり、好ましくは1,000,000以下であり、より好ましくは500,000以下、さらに好ましくは300,000以下である。
前記ポリイミドの重量平均分子量が前記下限値以上であると、屈曲耐性が良好になりやすい点から好ましい。一方、前記上限値以下であると、ワニス粘度を抑えられ、支持体へのコーティングがしやすくなる点から好ましい。
なお、ポリイミド樹脂の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定できる。具体的には、ポリイミド樹脂を0.1質量%の濃度のN-メチルピロリドン(NMP)溶液とし、展開溶媒は、含水量500ppm以下の30mmol%LiBr-NMP溶液を用い、東ソー製GPC装置(HLC-8120、使用カラム:SHODEX製GPC LF-804)を用い、サンプル打ち込み量50μL、溶媒流量0.4mL/分、37℃の条件で測定を行う。重量平均分子量は、サンプルと同濃度のポリスチレン標準サンプルを基準に求める。
本発明に用いられるポリイミド樹脂は、下記の方法によって、原料組成の比率を確認し、各残基の含有割合(モル%)を求めることができる。
まず、水酸化ナトリウムを2.0g、水を25mL、メタノールを25mLを混合した水酸化ナトリウム溶液を準備し、当該水酸化ナトリウム溶液10mLに対して、樹脂200mgを溶解させる。前記溶液を耐圧容器中で250℃で1時間加熱することによって、ポリイミド樹脂の解重合を促進させる。得られた溶液をクロロホルムと水で抽出し、分解物(原料モノマー)を分離する。原料組成の比率はガスクロマトグラフィー(アジレント・テクノロジー社製のHP6890/HP5973)により測定(カラムは「InertCap 5MS/Sil(30m×250μm×0.25μm、ジーエルサイエンス社製」を使用。測定条件は50℃で5min保持、その後10℃/minで320℃まで昇温して3min保持。)する。各原料の組成比率については、ガスクロマトグラフィーの面積比から算出することができる。
ポリイミド樹脂中の各残基の含有割合(モル%)は、樹脂製造時には原料の仕込み比から求めることもできる。また、ポリイミド樹脂の構造は、NMR、各種質量分析、元素分析、XPS/ESCA及びTOF-SIMS等を用いて求めることができる。
2.全光線透過率
本発明の1実施形態のポリイミドフィルムは、良好な透明性の点から、JIS K7361-1に準拠して測定する全光線透過率が、膜厚40μmの換算値で85.0%以上である。本発明の1実施形態のポリイミドフィルムのJIS K7361-1に準拠して測定する全光線透過率は、膜厚40μmの換算値で87.0%以上であることがより好ましく、89.0%以上であることが更に好ましく、89.2%以上であることがより更に好ましい。
JIS K7361-1に準拠して測定する全光線透過率は、例えば、ヘイズメーター(例えば村上色彩技術研究所製 HM150)により測定することができる。なお、ある厚みの全光線透過率の測定値から、異なる厚みの全光線透過率は、ランベルトベールの法則により換算値を求めることができ、それを利用することができる。
具体的には、ランベルトベールの法則によれば、透過率Tは、
Log10(1/T)=kcb
(k=物質固有の定数、c=濃度、b=光路長)で表される。
フィルムの透過率の場合、膜厚が変化しても密度が一定であると仮定するとcも定数となるので、上記式は、定数fを用いて
Log10(1/T)=fb
(f=kc)と表すことができる。ここで、ある膜厚の時の透過率がわかれば、各物質の固有の定数fを求めることができる。従って、T=1/10f・b の式を用いて、fに固有の定数、bに目標の膜厚を代入すれば、所望の膜厚の時の透過率を求めることができる。
3.黄色度
本発明の1実施形態のポリイミドフィルムは、黄色味の着色が抑制され、光透過性が向上し、ガラス代替材料として好適に用いることができる点から、前記JIS K7373-2006に準拠して算出される黄色度(YI値)を当該ポリイミドフィルムの膜厚(μm)で除した値(YI値/膜厚(μm))が0.15以下であり、0.13以下であることがより好ましく、0.10以下であることがより更に好ましい。
なお、本発明において、前記黄色度(YI値)を当該ポリイミドフィルムの膜厚(μm)で除した値(YI値/膜厚(μm))は、JIS Z8401:1999の規則Bに従い、小数点以下第2位に丸めた値とする。
また、本発明の1実施形態のポリイミドフィルムは、前記JIS K7373-2006に準拠して算出される黄色度(YI値)が、JIS K7373-2006に準拠して算出される黄色度(YI値)が、膜厚40μmの換算値で、10.0以下であることが好ましい。このように黄色度が低いと、黄色味の着色が抑制され、光透過性が向上する点から好ましい。前記JIS K7373-2006に準拠して算出される黄色度(YI値)は、膜厚40μmの換算値で、5.0以下であることがより好ましく、4.0以下であることが更に好ましい。
なお、黄色度(YI値)は、前記JIS K7373-2006に準拠して、紫外可視近赤外分光光度計(例えば、日本分光(株) V-7100)を用い、分光測色方法により、補助イルミナントC、2度視野を用いて、250nm以上800nm以下の範囲を1nm間隔で測定される透過率をもとに、XYZ表色系における三刺激値X,Y,Zを求め、そのX,Y,Zの値から以下の式より算出することができる。
YI=100(1.2769X-1.0592Z)/Y
なお、ある厚みの黄色度の測定値から、異なる厚みの黄色度は、ある特定の膜厚のサンプルの250nm以上800nm以下の間の1nm間隔で測定された各波長における各透過率について、前記全光線透過率と同様にランベルトベールの法則により異なる厚みの各波長における各透過率の換算値を求め、それを元に算出し用いることができる。
4.複屈折率
本発明の1実施形態のポリイミドフィルムは、低位相差を実現できたものであり、波長590nmにおける厚み方向の複屈折率が、0.025未満である。
このような複屈折率を有することから、本態様のポリイミドフィルムは光学的歪みが低減したものである。前記波長590nmにおける複屈折率は、より小さい方が好ましく、0.023以下であることが好ましく、0.022以下であることがより好ましく、0.021以下であることが更に好ましい。
なお、本発明の1実施形態のポリイミドフィルムの前記波長590nmにおける厚み方向の複屈折率は、以下のように求めることができる。
まず、位相差測定装置(例えば、王子計測機器株式会社製、製品名「KOBRA-WR」)を用いて、23℃、波長590nmの光で、ポリイミドフィルムの厚み方向位相差値(Rth)を測定する。厚み方向位相差値(Rth)は、0度入射の位相差値と、斜め40度入射の位相差値を測定し、これらの位相差値から厚み方向位相差値Rthを算出する。前記斜め40度入射の位相差値は、位相差フィルムの法線から40度傾けた方向から、波長590nmの光を位相差フィルムに入射させて測定する。
ポリイミドフィルムの厚み方向の複屈折率は、式:Rth/dに代入して求めることができる。前記dは、ポリイミドフィルムの膜厚(nm)を表す。
なお、厚み方向位相差値は、フィルムの面内方向における遅相軸方向(フィルム面内方向における屈折率が最大となる方向)の屈折率をnx、フィルム面内における進相軸方向(フィルム面内方向における屈折率が最小となる方向)の屈折率をny、及びフィルムの厚み方向の屈折率をnzとしたときに、Rth[nm]={(nx+ny)/2-nz}×dに従って算出されるものである。
また、波長590nmにおける面内位相差値(Re)は、200nm以下であることが好ましく、150nm以下であることがより好ましく、50nm以下であることが更に好ましく、30nm以下であることがより更に好ましい。なお、Re[nm]=(nx-ny)×dに従って算出されるものである。
5.弾性率
本発明の1実施形態のポリイミドフィルムは、10mm×150mmの試験片を、JIS K7127に準拠し、引張り速度を50mm/分、チャック間距離を100mmとして、25℃で測定する引張試験における引張弾性率が4.0GPa以上である。このように、25℃(室温)での引張弾性率が高いと、保護フィルムとして十分な表面硬度を室温でも維持することができ、表面材乃至基材として用いることができる。前記引張弾性率は、4.3GPa以上であることがより好ましい。一方で、前記引張弾性率は、屈曲耐性を向上させる点から、15.0GPa以下であっても良い。
前記引張弾性率は、引張り試験機(例えば島津製作所製:オートグラフAG-X 1N、ロードセル:SBL-1KN)を用い、幅10mm×長さ150mmの試験片をポリイミドフィルムから切り出して、25℃で、引張り速度50mm/分、チャック間距離は100mmとして測定することができる。前記引張弾性率を求める際のポリイミドフィルムは厚みが40μm±5μmであることが好ましい。
6.動的屈曲試験
本発明の1実施形態のポリイミドフィルムは、屈曲耐性の点から、下記動的屈曲試験において、屈曲回数が10.0万回以上であり、11.0万回以上であることが好ましく、12.5万回以上であることがより好ましい。
(動的屈曲試験)
動的屈曲試験の方法について、図1を参照して説明する。
可動部11aと非可動部11bとを備える可動式の金属板11(100mm×30mm)を2枚用意し、2枚の金属板11の非可動部11b間の距離が60mmとなるように、平行に配置する。金属板11の可動部11aを、図1の(A)に示すように、非可動部11bに対して垂直になるように折り曲げ、可動部11aの上に、20mm×100mmに切り出したポリイミドフィルムの試験片1を置き、試験片1の中央が金属板間の距離の中央に位置するように、試験片1の両端をカプトン(登録商標)テープで可動部11aに固定する。次いで、可動部11aと非可動部11bとを直線状に配置して、図1の(B)に示すような状態とし、すなわち、長辺の半分の位置で湾曲させた試験片1を両側から金属板11で挟み、両側の金属板11間の距離が60mmとなるように両側の金属板11を平行に配置した状態とする。このような状態と、図1の(C)に示すような、両側の金属板11間の距離が2.5mmとなるように両側の金属板を平行に配置した状態に、25℃、60%相対湿度(RH)の環境下で、1分間に90回の屈曲回数で繰り返し変化させ、屈曲を繰り返す。試験治具としては、恒温恒湿器内耐久試験システム(ユアサシステム機器製、面状体無負荷U字伸縮試験治具 DMX-FS)を用いることができる。
破断するまでの屈曲回数(破断回数)を測定する。
7.鉛筆硬度
本発明の1実施形態のポリイミドフィルムは、JIS 5600-5-4(1999)で規定される鉛筆硬度試験において、表面の鉛筆硬度がB以上であることが好ましく、HB以上であることがより好ましく、F以上であることがより更に好ましい。
前記ポリイミドフィルムの鉛筆硬度は、測定サンプルを温度25℃、相対湿度60%の条件で2時間調湿した後、JIS-S-6006が規定する試験用鉛筆を用いて、JIS K5600-5-4(1999)に規定する鉛筆硬度試験(0.98N荷重)をフィルム表面に行い、傷がつかない最も高い鉛筆硬度を評価することにより行うことができる。試験機としては、例えば東洋精機(株)製 鉛筆引っかき塗膜硬さ試験機を用いることができる。
8.フィルムの厚さ
本発明の1実施形態のポリイミドフィルムの厚さは、用途により適宜選択されれば良いが、1μm以上であればよく、5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることが好ましく、20μm以上であってよい。一方、300μm以下であることが好ましく、更に200μm以下であることが好ましく、より更に150μm以下であることが好ましく、より更に100μm以下であることが好ましい。
厚みが薄いと強度が低下し、厚みが厚いと屈曲時の内径と外径の差が大きくなり、フィルムへの負荷が大きくなることから屈曲耐性が低下する恐れがある。
9.表面処理
また、本発明の1実施形態のポリイミドフィルムには、例えば、けん化処理、グロー放電処理、コロナ放電処理、紫外線処理、火炎処理等の表面処理が施されていてもよい。
10.ポリイミドフィルムの用途
本発明のポリイミドフィルムの用途は特に限定されるものではないが、十分な透明性を有しつつ、低い位相差と、高い弾性率と、向上した屈曲耐性を有することから、従来薄い板ガラス等ガラス製品が用いられていた基材や表面材等の部材として用いることができる。
本発明のポリイミドフィルムは、具体的には例えば、薄くて曲げられるフレキシブルタイプの有機ELディスプレイや、スマートフォンや腕時計型端末などの携帯端末、自動車内部の表示装置、腕時計などに使用するフレキシブルパネル等、フレキシブルディスプレイ用の基材や表面材に好適に用いることができる。また、本発明のポリイミドフィルムは、液晶表示装置、有機EL表示装置等の画像表示装置用部材や、タッチパネル用部材、フレキシブルプリント基板、表面保護膜や基板材料等の太陽電池パネル用部材、光導波路用部材、その他半導体関連部材等に適用することもできる。
V.積層体
第二の本発明の1実施形態の積層体は、前記第二の本発明の1実施形態のポリイミドフィルムと、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物を含有するハードコート層とを有する積層体である。
ここで、「ハードコート層」とは、表面硬度を向上させるための層であり、具体的には、JIS 5600-5-4(1999)で規定される鉛筆硬度試験で「H」以上の硬度を示すものをいう。
第二の本発明の1実施形態の積層体は、前記第二の本発明の1実施形態のポリイミドフィルムを用いたものであるため、十分な透明性を有しつつ、低い位相差と、高い弾性率と、向上した屈曲耐性を有するものであり、更にハードコート層を有するため、表面硬度がより向上したフィルムである。
1.ポリイミドフィルム
第二の本発明の1実施形態の積層体に用いられるポリイミドフィルムとしては、前述した第二の本発明の1実施形態のポリイミドフィルムと同様のものを用いることができるので、ここでの説明を省略する。
2.ハードコート層
本発明の積層体に用いられるハードコート層は、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物を含有する。本発明の効果が損なわれない限り、必要に応じて、任意添加成分を含有していても良い。
(ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物)
ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物は、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種を、必要に応じて重合開始剤を用い、公知の方法で重合反応させることにより得ることができる。
ラジカル重合性化合物とは、ラジカル重合性基を有する化合物である。前記ラジカル重合性化合物が有するラジカル重合性基としては、ラジカル重合反応を生じ得る官能基であればよく、特に限定されないが、例えば、炭素-炭素不飽和二重結合を含む基などが挙げられ、具体的には、ビニル基、(メタ)アクリロイル基などが挙げられる。なお、前記ラジカル重合性化合物が2個以上のラジカル重合性基を有する場合、これらのラジカル重合性基はそれぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
前記ラジカル重合性化合物が1分子中に有するラジカル重合性基の数は、ハードコート層の硬度を向上する点から、2つ以上であることが好ましく、更に3つ以上であることが好ましい。
前記ラジカル重合性化合物としては、反応性の高さの点から、中でも(メタ)アクリロイル基を有する化合物が好ましく、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、ポリフルオロアルキル(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート等と称される分子内に数個の(メタ)アクリロイル基を有する分子量が数百から数千の多官能(メタ)アクリレートモノマー及びオリゴマーを好ましく使用でき、またアクリレートポリマーの側鎖に(メタ)アクリロイル基を2個以上有する多官能(メタ)アクリレートポリマーも好ましく使用できる。中でも、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートモノマーを好ましく使用できる。前記ハードコート層が、前記多官能(メタ)アクリレートモノマーの重合物を含むことにより、ハードコート層の硬度を向上し、さらに、密着性を向上することができる。また、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートオリゴマー又はポリマーも好ましく使用できる。前記ハードコート層が、前記多官能(メタ)アクリレートオリゴマー又はポリマーの重合物を含むことにより、ハードコート層の硬度及び屈曲耐性を向上し、さらに、密着性を向上することができる。
なお、本明細書において、(メタ)アクリロイルとは、アクリロイル及びメタクリロイルの各々を表し、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートの各々を表す。
前記多官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトールデカ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート、ポリエステルトリ(メタ)アクリレート、ポリエステルジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールジ(メタ)アクリレート、ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、アダマンチルジ(メタ)アクリレート、イソボロニルジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、及びこれらをPO、EO、カプロラクトン等で変性したもの等が挙げられる。中でも、反応性が高く、ハードコート層の硬度を向上する点、及び密着性の点から、1分子中に3個以上6個以下の(メタ)アクリロイル基を有するものが好ましく、例えば、ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETTA)、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(DPPA)、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトールデカ(メタ)アクリレート等を好ましく用いることができ、特に、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、及びジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種が好ましい。
本発明においては、前記ラジカル重合性化合物として、硬度やハードコート層用組成物の粘度調整、密着性の向上等のために、単官能(メタ)アクリレートモノマーを含んでいてもよい。前記単官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、グリシジルメタクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、2-アクリロイルオキシエチルサクシネート、アクリロイルモルホリン、N-アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、シクロヘキシルアクリレート、テトラヒドロフリルアクリレート、イソボルニルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、及び、アダマンチルアクリレート等が挙げられる。
カチオン重合性化合物とは、カチオン重合性基を有する化合物である。前記カチオン重合性化合物が有するカチオン重合性基としては、カチオン重合反応を生じ得る官能基であればよく、特に限定されないが、例えば、エポキシ基、オキセタニル基、ビニルエーテル基などが挙げられる。なお、前記カチオン重合性化合物が2個以上のカチオン重合性基を有する場合、これらのカチオン重合性基はそれぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
前記カチオン重合性化合物が1分子中に有するカチオン重合性基の数は、ハードコート層の硬度を向上する点から、2つ以上であることが好ましく、更に3つ以上であることが好ましい。
また、前記カチオン重合性化合物としては、中でも、カチオン重合性基としてエポキシ基及びオキセタニル基の少なくとも1種を有する化合物が好ましく、エポキシ基及びオキセタニル基の少なくとも1種を1分子中に2個以上有する化合物がより好ましい。エポキシ基、オキセタニル基等の環状エーテル基は、重合反応に伴う収縮が小さいという点から好ましい。また、環状エーテル基のうちエポキシ基を有する化合物は多様な構造の化合物が入手し易く、得られたハードコート層の耐久性に悪影響を与えず、ラジカル重合性化合物との相溶性もコントロールし易いという利点がある。また、環状エーテル基のうちオキセタニル基は、エポキシ基と比較して重合度が高い、低毒性であり、得られたハードコート層を、エポキシ基を有する化合物と組み合わせた際に塗膜中でのカチオン重合性化合物から得られるネットワーク形成速度を早め、ラジカル重合性化合物と混在する領域でも未反応のモノマーを膜中に残さずに独立したネットワークを形成する等の利点がある。
エポキシ基を有するカチオン重合性化合物としては、例えば、脂環族環を有する多価アルコールのポリグリシジルエーテル又は、シクロヘキセン環、シクロペンテン環含有化合物を、過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化する事によって得られる脂環族エポキシ樹脂;脂肪族多価アルコール、又はそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテル、脂肪族長鎖多塩基酸のポリグリシジルエステル、グリシジル(メタ)アクリレートのホモポリマー、コポリマーなどの脂肪族エポキシ樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールFや水添ビスフェノールA等のビスフェノール類、又はそれらのアルキレンオキサイド付加体、カプロラクトン付加体等の誘導体と、エピクロルヒドリンとの反応によって製造されるグリシジルエーテル、及びノボラックエポキシ樹脂等でありビスフェノール類から誘導されるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂等が挙げられる。
上記脂環族エポキシ樹脂としては、例えば、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス-3,4-エポキシシクロヘキシルメチルアディペート等が挙げられる。
また、上記グリシジルエーテル型エポキシ樹脂としては、例えば、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトルポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、レソルチノールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ヒドロジビスフェノールAジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、フェノールグリシジルエーテル、ブチルフェニルグリシジルエーテル、ジグリシジルフタレート、ヒドロキノンジグリシジルエーテル、ジグリシジルテレフタレート、グリシジルフタルイミド、ジブロモフェニルグリシジルエーテル、ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル等が挙げられる。
また、その他の市販品のエポキシ樹脂を用いても良い。
オキセタニル基を有するカチオン重合性化合物としては、例えば、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、1,4-ビス-3-エチルオキセタン-3-イルメトキシメチルベンゼン、ビス-1-エチル-3-オキセタニルメチルエーテル、3-エチル-3-2-エチルへキシロキシメチルオキセタン、3-エチル-3-フェノキシメチルオキセタン等が挙げられる。
(重合開始剤)
本発明に用いられるハードコート層が含有する前記ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物は、例えば、前記ラジカル重合性化合物及び前記カチオン重合性化合物の少なくとも1種に、必要に応じて重合開始剤を添加して、公知の方法で重合反応させることにより得ることができる。
前記重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤、カチオン重合開始剤、ラジカル及びカチオン重合開始剤等を適宜選択して用いることができる。これらの重合開始剤は、光照射及び加熱の少なくとも一種により分解されて、ラジカルもしくはカチオンを発生してラジカル重合とカチオン重合を進行させるものである。
ラジカル重合開始剤は、光照射及び加熱の少なくともいずれかによりラジカル重合を開始させる物質を放出することが可能であれば良い。例えば、光ラジカル重合開始剤としては、イミダゾール誘導体、ビスイミダゾール誘導体、N-アリールグリシン誘導体、有機アジド化合物、チタノセン類、アルミナート錯体、有機過酸化物、N-アルコキシピリジニウム塩、チオキサントン誘導体等が挙げられ、更に具体的には、1,3-ジ(tert-ブチルジオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’-テトラキス(tert-ブチルジオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3-フェニル-5-イソオキサゾロン、2-メルカプトベンズイミダゾール、ビス(2,4,5-トリフェニル)イミダゾール、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン(商品名イルガキュア651、チバ・ジャパン(株)製)、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン(商品名イルガキュア184、チバ・ジャパン(株)製)、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタン-1-オン(商品名イルガキュア369、チバ・ジャパン(株)製)、ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタニウム)(商品名イルガキュア784、チバ・ジャパン(株)製)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
上記以外にも、適宜選択して市販品を使用できる。
また、カチオン重合開始剤は、光照射及び加熱の少なくともいずれかによりカチオン重合を開始させる物質を放出することが可能であれば良い。カチオン重合開始剤としては、スルホン酸エステル、イミドスルホネート、ジアルキル-4-ヒドロキシスルホニウム塩、アリールスルホン酸-p-ニトロベンジルエステル、シラノール-アルミニウム錯体、(η-ベンゼン)(η-シクロペンタジエニル)鉄(II)等が例示され、さらに具体的には、ベンゾイントシレート、2,5-ジニトロベンジルトシレート、N-トシフタル酸イミド等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
ラジカル重合開始剤としても、カチオン重合開始剤としても用いられるものとしては、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ホスホニウム塩、トリアジン化合物、鉄アレーン錯体等が例示されるが、これらに限定されるものではない。
(任意添加成分)
本発明に用いられるハードコート層は、前記重合物の他に、必要に応じて、任意添加成分を更に含有することができる。
前記任意添加成分は、ハードコート層に付与する機能に応じて適宜選択され、特に限定はされないが、例えば、硬度や屈折率を調整するための無機又は有機微粒子、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、防眩剤、防汚剤、帯電防止剤等が挙げられ、更に、レベリング剤、界面活性剤、易滑剤、各種増感剤、難燃剤、接着付与剤、重合禁止剤、酸化防止剤、表面改質剤等を含んでいても良い。
なお、本発明に用いられるハードコート層に含まれるラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物等は、フーリエ変換赤外分光光度計(FTIR)、熱分解ガスクロマトグラフ装置(GC-MS)や、重合物の分解物について、高速液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフ質量分析計、NMR、元素分析、XPS/ESCA及びTOF-SIMS等の組み合わせを用いて分析することができる。
3.積層体の構成
本発明の積層体は、前記ポリイミドフィルムと、前記ハードコート層とを有するものであれば特に限定はされず、前記ポリイミドフィルムの一方の面側に前記ハードコート層が積層されたものであってもよいし、前記ポリイミドフィルムの両面に前記ハードコート層が積層されたものであってもよい。また、本発明の積層体は、本発明の効果を損なわない範囲で、前記ポリイミドフィルム及び前記ハードコート層の他に、例えば、前記ポリイミドフィルムと前記ハードコート層との密着性を向上させるためのプライマー層等の他の層を有するものであってもよく、前記ポリイミドフィルムと前記ハードコート層とがプライマー層等の他の層を介して積層されたものであっても良い。また、本発明の積層体は、前記ポリイミドフィルムと、前記ハードコート層とが隣接して位置するものであってもよい。また、本発明の積層体はさらに、耐衝撃層、指紋付着防止層、接着乃至粘着層等を有していても良い。
本発明の積層体の全体厚さは、用途により適宜選択されれば良いが、強度の点から、10μm以上であることが好ましく、更に40μm以上であることが好ましい。一方、屈曲耐性の点から、300μm以下であることが好ましく、更に250μm以下であることが好ましい。
また、本発明の積層体において、各ハードコート層の厚さは、用途により適宜選択されれば良いが、2μm以上80μm以下であることが好ましく、3μm以上50μm以下であることがより好ましい。また、カール防止の観点からポリイミドフィルムの両面にハードコート層を形成しても良い。
4.積層体の特性
本発明の1実施形態の積層体は、ハードコート層側表面の鉛筆硬度がH以上であることが好ましく、2H以上であることがより好ましく、3H以上であることが更に好ましく、4H以上であることがより更に好ましい。
本発明の積層体の鉛筆硬度は、前記ポリイミドフィルムの鉛筆硬度の測定方法において、荷重を9.8Nとする以外は同様にして測定することができる。
本発明の1実施形態の積層体は、良好な透明性の点から、JIS K7361-1に準拠して測定する全光線透過率が、膜厚50μmの換算値で85.0%以上である。本発明の1実施形態の積層体のJIS K7361-1に準拠して測定する全光線透過率は、膜厚40μmの換算値で87.0%以上であることがより好ましく、89.0%以上であることが更に好ましく、89.3%以上であることがより更に好ましい。
本発明の積層体の前記全光線透過率は、前記ポリイミドフィルムのJIS K7361-1に準拠して測定する全光線透過率と同様にして測定することができる。
本発明の1実施形態の積層体は、黄色味の着色が抑制され、光透過性が向上し、ガラス代替材料として好適に用いることができる点から、前記JIS K7373-2006に準拠して算出される黄色度(YI値)をポリイミドフィルムとハードコート層の合計膜厚(μm)で除した値(YI値/膜厚(μm))が0.15以下であり、0.10以下であることがより好ましく、0.08以下であることがより更に好ましい。
なお、本発明において、前記黄色度(YI値)をポリイミドフィルムとハードコート層の合計膜厚(μm)で除した値(YI値/膜厚(μm))は、JIS Z8401:1999の規則Bに従い、小数点以下第2位に丸めた値とする。
本発明の積層体の前記黄色度(YI値)は、前記ポリイミドフィルムのJIS K7373-2006に準拠して算出される黄色度(YI値)と同様にして測定することができる。
また、本発明の1実施形態の積層体は、前記JIS K7373-2006に準拠して算出される黄色度(YI値)が、JIS K7373-2006に準拠して算出される黄色度(YI値)が、膜厚50μmの換算値で、10.0以下であることが好ましい。このように黄色度が低いと、黄色味の着色が抑制され、光透過性が向上する点から好ましい。前記JIS K7373-2006に準拠して算出される黄色度(YI値)は、膜厚50μmの換算値で、5.0以下であることがより好ましく、4.0以下であることが更に好ましい。
本発明の1実施形態の積層体は、低位相差を実現できたものであり、波長590nmにおける厚み方向の複屈折率が、0.025未満である。
このような複屈折率を有することから、本態様の積層体は光学的歪みが低減したものである。前記波長590nmにおける複屈折率は、より小さい方が好ましく、0.023以下であることが好ましく、更に0.022以下であることが好ましく、より更に0.021以下であることが好ましい。
本発明の積層体の波長590nmにおける厚み方向の複屈折率は、前記ポリイミドフィルムの波長590nmにおける厚み方向の複屈折率と同様にして測定することができる。
本発明の1実施形態の積層体は、10mm×150mmの試験片を、JIS K7127に準拠し、引張り速度を50mm/分、チャック間距離を100mmとして、25℃で測定する引張試験における引張弾性率が4.0GPa以上である。このように、25℃(室温)での引張弾性率が高いと、保護フィルムとして十分な表面硬度を室温でも維持することができ、表面材乃至基材として用いることができる。前記引張弾性率は、4.3GPa以上であることがより好ましい。一方で、前記引張弾性率は、屈曲耐性を向上させる点から、15.0GPa以下であっても良い。
本発明の積層体の前記引張弾性率は、前記ポリイミドフィルムの前記引張弾性率と同様にして測定することができる。
本発明の1実施形態の積層体は、屈曲耐性の点から、前記動的屈曲試験において、屈曲回数が10万回以上であり、11万回以上であることが好ましく、12.5万回以上であることがより好ましい。
本発明の積層体の動的屈曲試験は、前記ポリイミドフィルムの動的屈曲試験と同様にして測定することができる。
5.積層体の用途
本発明の1実施形態の積層体の用途は特に限定されるものではなく、例えば、前述した本発明の1実施形態のポリイミドフィルムの用途と同様の用途に用いることができる。
VI.ディスプレイ用部材
本発明の1実施形態のディスプレイ用部材は、前述した本発明の1実施形態のポリイミドフィルム、或いは、本発明の1実施形態の積層体を含む。
本発明の1実施形態のディスプレイ用部材としては、例えば、ディスプレイ用表面材やディスプレイ用基材等が挙げられる。
本発明の1実施形態のディスプレイ用部材は、前述した本発明の1実施形態のポリイミドフィルム、或いは、本発明の1実施形態の積層体であってよい。
本発明の1実施形態のディスプレイ用部材は、例えばディスプレイ用表面材として、各種ディスプレイの表面に位置するように配置して用いられる。本発明の1実施形態のディスプレイ用部材は、前述した本発明のポリイミドフィルム及び本発明の積層体と同様に、十分な透明性を有しつつ、低い位相差と、高い弾性率と、向上した屈曲耐性を有するため、フレキシブルディスプレイ用として特に好適に用いることができる。
本発明の1実施形態のディスプレイ用部材は、公知の各種ディスプレイに用いることができ、特に限定はされないが、例えば、前記本発明のポリイミドフィルムの用途で説明したディスプレイ等に用いることができる。
なお、本発明の1実施形態のディスプレイ用部材が前記本発明の1実施形態の積層体である場合、当該積層体をディスプレイの表面に配置した後に最表面となる面は、ポリイミドフィルム側の表面であってもよいし、ハードコート層側の表面であってもよい。中でも、ハードコート層側の表面が、より表側の面となるように本発明のディスプレイ用部材を配置することが好ましい。また、本発明の1実施形態のディスプレイ用部材は、最表面に指紋付着防止層を有するものであっても良い。
また、本発明の1実施形態のディスプレイ用部材をディスプレイの表面に配置する方法としては、特に限定はされないが、例えば、接着層を介する方法等が挙げられる。前記接着層としては、ディスプレイ用部材の接着に用いることができる従来公知の接着層を用いることができる。
VII.タッチパネル部材
本発明の1実施形態のタッチパネル部材は、前述した本発明の1実施形態のポリイミドフィルム、或いは前述した本発明の1実施形態の積層体と、
前記ポリイミドフィルム、或いは前記積層体の一方の面側に配置された、複数の導電部からなる透明電極と、
前記導電部の端部の少なくとも一方側において電気的に接続される複数の取り出し線と、を有する。
本発明の1実施形態のタッチパネル部材は、前述した本発明の1実施形態のポリイミドフィルム、或いは前記積層体を備えるものであることから、十分な透明性を有しつつ、低い位相差と、高い弾性率と、向上した屈曲耐性を有するものであるため、フレキシブルディスプレイ用として特に好適に用いることができ、また光学特性に優れる。
本発明の1実施形態のタッチパネル部材に用いられる本発明の積層体は、前記ポリイミドフィルムの両面に隣接して、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物を含有するハードコート層を有するものであることが好ましい。
また、本発明の1実施形態のタッチパネル部材は、特に限定はされないが、前記透明電極が、前記積層体の一方の面側に接して積層されてなるものであることが好ましい。
本発明の1実施形態のタッチパネル部材は、例えば、各種ディスプレイの表面に位置するように配置して用いることができる。また、各種ディスプレイの表面に、本発明のタッチパネル部材と、表面材としての本発明の1実施形態のポリイミドフィルム或いは積層体とを、この順に配置して用いることもできる。
以下、本発明の1実施形態のタッチパネル部材について、前述した本発明の1実施形態の積層体を用いた例で説明するが、前述した本発明の積層体の代わりに、前述した本発明のポリイミドフィルムも同様に用いることができる。
図2は、本発明の1実施形態のタッチパネル部材の一例の一方の面の概略平面図であり、図3は、図2に示すタッチパネル部材のもう一方の面の概略平面図であり、図4は、図2及び図3に示すタッチパネル部材のA-A’断面図である。図2、図3及び図4に示すタッチパネル部材20は、本発明の積層体10と、積層体10の一方の面に接して配置された第一の透明電極4と、積層体10のもう一方の面に接して配置された第二の透明電極5とを備える。第一の透明電極4においては、x軸方向に伸長するように延在する短冊状の電極片である複数の第一の導電部41が、所定の間隔を空けて配置されている。第一の導電部41には、その長手方向の端部のいずれか一方において、当該第一の導電部41と電気的に接続される第一の取出し線7が接続されている。積層体10の端縁21まで延設された第一の取出し線7の端部には、外部回路と電気的に接続するための第一の端子71を設けることがよい。第一の導電部41と第一の取出し線7とは、一般には、タッチパネルの使用者が視認可能なアクティブエリア22の外側に位置する、非アクティブエリア23内において接続される。
第一の導電部41と第一の取出し線7との接続は、例えば図2に示すように、接続部24を介在させた接続構造を採用することができる。接続部24は、具体的には、第一の導電部41の長手方向端部から、非アクティブエリア23内の所定の位置まで導電性材料の層を延設することにより形成することができる。さらに、当該接続部24上に、第一の取出し線7の少なくとも一部を重ねることにより、第一の導電部41と第一の取出し線7との接続構造を形成することができる。
第一の導電部41と第一の取出し線7との接続は、図2に示すような、接続部24を形成する構造には限定されない。例えば、図示は省略するが、第一の導電部41の長手方向端部を非アクティブエリア23まで伸長させ、非アクティブエリア23内において、当該非アクティブエリア23まで伸長させた第一の導電部41の端部に、第一の取出し線7を乗り上げさせることによって、両者を電気的に接続させてもよい。
なお、図2では、第一の導電部41の長手方向端部のいずれか一方と、第一の取出し線7とを接続する形態を示したが、本発明においては、1つの第一の導電部41の長手方向の両端に、それぞれ、第一の取出し線7を電気的に接続する形態としてもよい。
図3に示すように、タッチパネル部材20は、積層体10のもう一方の面に接して配置された第二の透明電極5とを備える。第二の透明電極5においては、y軸方向に伸長するように延在する複数の短冊状の電極片である第二の導電部51が、x軸方向に所定の間隔を空けて配置されている。
第二の導電部51には、その長手方向端部の一方において、当該第二の導電部51と電気的に接続される第二の取出し線8が接続されている。
第二の取出し線8は、積層体10の端縁のうち、前述した第一の取出し線7が延設された端縁21における、第一の端子71と重ならない位置まで延設されている。
積層体10の端縁21まで延設された第二の取出し線8の端部には、外部回路と電気的に接続するための第二の端子81を設けることがよい。
第二の導電部51と第二の取出し線8との電気的な接続は、第一の取出し線7と第一の導電部41との電気的な接続と同様の形態を適用することができる。
なお、図2及び図3に示すような、第1取出し線7を長尺配線とし、第2取出し線8を短尺配線とするパターンは、本発明のタッチパネル部材の一実施形態に過ぎず、例えば、第一の取出し線7を短尺配線とし、第二の取出し線8を長尺配線とするパターンとすることも可能である。また、第一の取出し線7の伸長方向及び第二の取出し線8の伸長方向も、図2及び図3に示す方向に限られず、任意に設計することが可能である。
本発明の1実施形態のタッチパネル部材が備える導電部は、タッチパネル部材において透明電極を構成するものを適宜選択して適用することができ、導電部のパターンは、図2及び図3に示すものに限定されない。例えば、静電容量方式によって、指などの接触または接触に近い状態による電気容量の変化を検知可能な透明電極のパターンを適宜選択して適用することができる。
前記導電部の材料としては、光透過性の材料であることが好ましく、例えば、インジウム錫オキサイド(ITO)、酸化インジウム、インジウム亜鉛オキサイド(IZO)等を主たる構成成分とする酸化インジウム系透明電極材料、酸化錫(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)等を主たる構成成分とする透明導電膜、ポリアニリン、ポリアセチレン等の導電性高分子化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、第一の導電部41及び第二の導電部51は、互いに同種の導電性材料を用いて形成してもよいし、異種の材料を用いて形成してもよい。特に同種の導電性材料を用いて第一の導電部41及び第2導電部51を形成すると、タッチパネル部材の反りや歪みの発生をより効果的に抑制できる観点で好ましい。
前記導電部の厚みは、特に限定されないが、例えばフォトリソグラフィ手法により導電部を形成する場合には、一般的には、10nm~500nm程度に形成することができる。
本発明の1実施形態のタッチパネル部材が備える取出し線を構成する導電材料は、光透過性の有無を問わない。一般的には、取出し線は、高い導電性を有する銀や銅などの金属材料を用いて形成することができる。具体的には、金属単体、金属の複合体、金属と金属化合物の複合体、金属合金を挙げることができる。金属単体としては、銀、銅、金、クロム、プラチナ、アルミニウムの単体などを例示することができる。金属の複合体としては、MAM(モリブデン、アルミニウム、モリブデンの3層構造体)等を例示することができる。金属と金属化合物の複合体としては、酸化クロムとクロムの積層体等を例示することができる。金属合金としては、銀合金や銅合金が汎用される。また、金属合金としては、APC(銀、パラジウム及び銅の合金)等を例示することができる。また、前記取出し線には、前述した金属材料に、適宜樹脂成分が混在していてもよい。
本発明の1実施形態のタッチパネル部材において、取出し線の端部に設けられる端子は、例えば、前記取出し線と同じ材料を用いて形成することができる。
前記取出し線の厚み、及び幅寸法は、特に限定されないが、例えばフォトリソグラフィ手法により取出し線を形成する場合には、一般的には、厚みは10nm~1000nm程度に形成され、幅寸法は5μm~200μm程度に形成される。一方、スクリーン印刷などの印刷により取出し線を形成する場合には、一般的には、厚みは5μm~20μm程度に形成され、幅寸法は20μm~300μm程度に形成される。
本発明の1実施形態のタッチパネル部材は、図2~図4に示す形態には限られず、例えば、第一の透明電極と、第二の透明電極とが、それぞれ別個の積層体の上に積層されて構成されるものであってもよい。
図5及び図6は、各々本発明の積層体を備える導電性部材の一例を示す概略平面図である。図5に示す第一の導電性部材201は、本発明の積層体10と、当該積層体10の一方の面に接して配置された第一の透明電極4とを有し、当該第一の透明電極4は、複数の第一の導電部41を有する。図6に示す第二の導電性部材202は、本発明の積層体10’と、当該積層体10’の一方の面に接して配置された第二の透明電極5とを有し、当該第二の透明電極5は、複数の第二の導電部51を有する。
図7は、本発明の1実施形態のタッチパネル部材の別の一例を示す概略断面図であり、図7に示すタッチパネル部材20’は、図5に示す第一の導電性部材201と、図6に示す第二の導電性部材202とを備える。タッチパネル部材20’においては、第一の導電性部材201の第一の透明電極4を有しない面と、第二の導電性部材202の透明電極5を有する面とが、接着層6を介して貼り合わせられている。なお、本発明において、例えば、本発明の1実施形態の積層体と本発明の1実施形態のタッチパネル部材とを接着するための接着層、本発明のタッチパネル部材同士を接着するための接着層、本発明のタッチパネル部材と表示装置等とを接着するための接着層としては、光学部材に用いられている従来公知の接着層を適宜選択して用いることができる。本発明のタッチパネル部材に用いられる導電性部材において、透明電極、取出し線及び端子の構成及び材料は、前述した本発明のタッチパネル部材に用いられる透明電極、取出し線及び端子と各々同様とすることができる。
VIII.液晶表示装置
本発明の1実施形態の液晶表示装置は、前述した本発明の1実施形態のポリイミドフィルム、或いは前述した本発明の1実施形態の積層体と、前記ポリイミドフィルム、或いは前記積層体の一方の面側に配置された、対向基板間に液晶層を有してなる液晶表示部とを有する。
本発明の1実施形態の液晶表示装置は、前述した本発明の1実施形態のポリイミドフィルム、或いは積層体を備えるものであることから、十分な透明性を有しつつ、低い位相差と、高い弾性率と、向上した屈曲耐性を有し、フレキシブルディスプレイ用として特に好適に用いることができ、光学特性に優れる。
本発明の1実施形態の液晶表示装置に用いられる本発明の1実施形態の積層体は、前記ポリイミドフィルムの両面に隣接して、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物を含有するハードコート層を有するものであることが好ましい。
また、本発明の1実施形態の液晶表示装置は、前述した本発明の1実施形態のタッチパネル部材を備えるものであっても良い。
また、本発明の1実施形態の液晶表示装置が有する対向基板は、本発明の1実施形態のポリイミドフィルム、或いは積層体を備えるものであっても良い。
以下、本発明の1実施形態の液晶表示装置について、前述した本発明の1実施形態の積層体を用いた例で説明するが、前述した本発明の1実施形態の積層体の代わりに、前述した本発明の1実施形態のポリイミドフィルムも同様に用いることができる。
図8は、本発明の1実施形態の液晶表示装置の一例を示す概略断面図である。図8に示す液晶表示装置100は、本発明の1実施形態の積層体10と、本発明の1実施形態の積層体10’の一方の面に第一の透明電極4を備え、もう一方の面に第二の透明電極5を備えるタッチパネル部材20と、液晶表示部30とを有する。液晶表示装置100において、積層体10は表面材として用いられており、積層体10とタッチパネル部材20とは、接着層6を介して貼り合わせられている。
本発明の1実施形態の液晶表示装置に用いられる液晶表示部は、対向配置された基板の間に形成された液晶層を有するものであり、従来公知の液晶表示装置に用いられている構成を採用することができる。
本発明の1実施形態の液晶表示装置の駆動方式としては、特に限定はなく一般的に液晶表示装置に用いられている駆動方式を採用することができ、例えば、TN方式、IPS方式、OCB方式、及びMVA方式等を挙げることができる。
本発明の1実施形態の液晶表示装置に用いられる対向基板としては、液晶表示装置の駆動方式等に応じて適宜選択して用いることができ、本発明の1実施形態のポリイミドフィルム或いは積層体を備えるものを用いても良い。
液晶層を構成する液晶としては、本発明の液晶表示装置の駆動方式等に応じて、誘電異方性の異なる各種液晶、及びこれらの混合物を用いることができる。
液晶層の形成方法としては、一般に液晶セルの作製方法として用いられる方法を使用することができ、例えば、真空注入方式や液晶滴下方式等が挙げられる。前記方法によって液晶層を形成後、液晶セルを常温まで徐冷することにより、封入された液晶を配向させることができる。
本発明の1実施形態の液晶表示装置において、対向配置された基板の間には、さらに複数色の着色層や、画素を画定する遮光部を有していてもよい。また、液晶表示部は、対向配置された基板の外側において、タッチパネル部材が位置する側とは反対側の位置に、発光素子や蛍光体を有するバックライト部を有していてもよい。また、対向配置された基板の外表面には、それぞれ偏光板を有していてもよい。
図9は、本発明の1実施形態の液晶表示装置の別の一例を示す概略断面図である。図9に示す液晶表示装置200は、本発明の1実施形態の積層体10と、本発明の1実施形態の積層体10’の一方の面に第一の透明電極4を備える第一の導電性部材201と、本発明の1実施形態の積層体10”の一方の面に第二の透明電極5を備える第二の導電性部材202とを有するタッチパネル部材20’と、液晶表示部30とを有する。液晶表示装置200において、積層体10と第一の導電性部材201、及び第一の導電性部材201と第二の導電性部材202とは、各々接着層6を介して貼り合わせられている。タッチパネル部材20’の構成は、例えば、図7に示すタッチパネル部材20’の構成と同様にすることができる。本発明の1実施形態の液晶表示装置に用いられる導電性部材としては、本発明の1実施形態のタッチパネル部材に用いられる導電性部材と同様のものを用いることができる。
IX.有機エレクトロルミネッセンス表示装置
本発明の1実施形態の有機エレクトロルミネッセンス表示装置は、前述した本発明の1実施形態のポリイミドフィルム、或いは前述した本発明の1実施形態の積層体と、前記ポリイミドフィルム、或いは前記積層体の一方の面側に配置された、対向基板間に有機エレクトロルミネッセンス層を有してなる有機エレクトロルミネッセンス表示部とを有する。
本発明の1実施形態の有機エレクトロルミネッセンス表示装置は、前述した本発明の1実施形態のポリイミドフィルム、或いは積層体を備えるものであることから、十分な透明性を有しつつ、低い位相差と、高い弾性率と、向上した屈曲耐性を有するものであるため、フレキシブルディスプレイ用として特に好適に用いることができ、光学特性に優れる。
本発明の1実施形態の有機エレクトロルミネッセンス表示装置に用いられる本発明の1実施形態の積層体は、前記ポリイミドフィルムの両面に隣接して、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物を含有するハードコート層を有するものであることが好ましい。
また、本発明の1実施形態の有機エレクトロルミネッセンス表示装置は、前述した本発明の1実施形態のタッチパネル部材を備えるものであっても良い。
また、本発明の1実施形態の有機エレクトロルミネッセンス表示装置が有する対向基板は、本発明の1実施形態のポリイミドフィルム或いは積層体を備えるものであっても良い。
図10は、本発明の1実施形態の有機エレクトロルミネッセンス表示装置の一例を示す概略断面図である。図10に示す有機エレクトロルミネッセンス表示装置300は、本発明の1実施形態の積層体10と、本発明の1実施形態の積層体10’の一方の面に第一の透明電極4を備え、もう一方の面に第二の透明電極5を備えるタッチパネル部材20と、有機エレクトロルミネッセンス表示部40とを有する。有機エレクトロルミネッセンス表示装置300において、積層体10は表面材として用いられており、積層体10とタッチパネル部材20とは、接着層6を介して貼り合わせられている。
本発明の1実施形態の有機エレクトロルミネッセンス表示装置(有機EL表示装置)に用いられる有機エレクトロルミネッセンス表示部(有機EL表示部)は、対向配置された基板の間に形成された有機エレクトロルミネッセンス層(有機EL層)を有するものであり、従来公知の有機EL表示装置に用いられている構成を採用することができる。
有機EL表示部は、さらに、支持基板と、有機EL層並びに有機EL層を挟持する陽極層及び陰極層を含む有機EL素子と、有機EL素子を封止する封止基材と、を有していてもよい。前記有機EL層としては、少なくとも有機EL発光層を有するものであれば良いが、例えば、上記陽極層側から、正孔注入層、正孔輸送層、有機EL発光層、電子輸送層および電子注入層がこの順で積層した構造を有するものを有するものを用いることができる。
本発明の有機EL表示装置は、例えば、パッシブ駆動方式の有機ELディスプレイにもアクティブ駆動方式の有機ELディスプレイにも適用可能である。本発明の有機EL表示装置に用いられる対向基板としては、有機EL表示装置の駆動方式等に応じて適宜選択して用いることができ、本発明の積層体を備えるものを用いても良い。
図11は、本発明の1実施形態の有機エレクトロルミネッセンス表示装置の別の一例を示す概略断面図である。図11に示す有機エレクトロルミネッセンス表示装置400は、本発明の1実施形態の積層体10と、本発明の1実施形態の積層体10’の一方の面に第一の透明電極4を備える第一の導電性部材201と、本発明の1実施形態の積層体10”の一方の面に第二の透明電極5を備える第二の導電性部材202とを有するタッチパネル部材20’と、有機エレクトロルミネッセンス表示部40とを有する。有機エレクトロルミネッセンス表示装置400において、積層体10と第一の導電性部材201、第一の導電性部材201と第二の導電性部材202とは、各々接着層6を介して貼り合わせられている。タッチパネル部材20’の構成は、例えば、図7に示すタッチパネル部材20’の構成と同様にすることができる。本発明の1実施形態の有機エレクトロルミネッセンス表示装置に用いられる導電性部材としては、本発明の1実施形態のタッチパネル部材に用いられる導電性部材と同様のものを用いることができる。
[評価方法]
以下、特に断りがない場合は、25℃で測定又は評価を行った。
フィルムの試験片は、フィルムの中央部付近から切り出した。
フィルムの試験片は、特に断りがない場合は、温度25℃、相対湿度60%の条件で2時間調湿した後、評価に用いた。
なお、以下において実施例7及び8は参考例とする。
<ポリイミド前駆体樹脂のエステル化率>
ポリイミド前駆体樹脂のエステル化率は、ポリイミド前駆体樹脂についてH NMR測定を実施し、11~15ppmに存在するカルボン酸プロトン由来のピークと1.0~1.4ppm及び3.5~4.5ppmに存在する置換されたエステルのアルキル部に由来するピークの強度比から算出する。算出式としては、ポリアミド酸のカルボン酸プロトン由来のピーク積分値を“a”とし、ポリアミド酸エステルの末端アルキルプロトンのピーク積分値を“b”とし、アルキルのプロトン数を“n”とした時に、「エステル化率(%)=(b/n)/(a + b/n)×100」から求める。例えばエステルのアルキル部がメチルの場合、ポリアミド酸のカルボン酸プロトン由来のピーク積分値を“a”とし、ポリアミド酸エステルの末端メチルプロトンのピーク積分値を“b”とした時に、「エステル化率(%)=(b/3)/(a + b/3)×100」から求める。
<ポリイミド前駆体樹脂の重量平均分子量>
ポリイミド前駆体樹脂の重量平均分子量は、ポリイミド前駆体樹脂を0.5重量%の濃度のN-メチルピロリドン(NMP)溶液とし、その溶液をシリンジフィルター(孔径:0.45μm)に通じて濾過させ、展開溶媒として、含水量500ppm以下の10mmol%LiBr-NMP溶液を用い、GPC装置(東ソー製、HLC-8120、使用カラム:SHODEX製GPC LF-804)を用い、サンプル打ち込み量50μL、溶媒流量0.5mL/分、40℃の条件で測定を行った。ポリイミド前駆体樹脂の重量平均分子量は、サンプルと同濃度のポリスチレン標準サンプル(重量平均分子量:364,700、204,000、103,500、44,360、27,500、13,030、6,300、3,070)を基準に測定した標準ポリスチレンに対する換算値とした。溶出時間を検量線と比較し、重量平均分子量を求めた。
<ポリイミドの重量平均分子量>
ポリイミド粉体、又は、ポリイミドフィルム15mgを、15000mgのN-メチルピロリドン(NMP)に浸漬し、ウォーターバスで60℃に加熱しながら、スターラーを用いて回転速度200rpmで、目視で溶解を確認するまで3~60時間撹拌することにより、0.1質量%の濃度のNMP溶液を得た。その溶液をシリンジフィルター(孔径:0.45μm)に通じて濾過させ、展開溶媒として、含水量500ppm以下の30mmol%LiBr-NMP溶液を用い、GPC装置(東ソー製、HLC-8120、検出器:示差屈折率(RID)検出器、使用カラム:SHODEX製GPC LF-804を2本直列に接続)を用い、サンプル打ち込み量50μL、溶媒流量0.4mL/分、カラム温度37℃、検出器温度37℃の条件で測定を行った。ポリイミドの重量平均分子量は、サンプルと同濃度のポリスチレン標準サンプル(重量平均分子量:364,700、204,000、103,500、44,360,27,500、13,030、6,300、3,070)を基準に測定した標準ポリスチレンに対する換算値とした。溶出時間を検量線と比較し、重量平均分子量を求めた。
<膜厚測定法>
10cm×10cmの大きさに切り出したポリイミドフィルム又は積層体の試験片の四隅と中央の計5点の膜厚を、デジタルリニアゲージ(株式会社尾崎製作所製、型式PDN12 デジタルゲージ)を用いて測定し、測定値の平均をポリイミドフィルム又は積層体の膜厚とした。
<全光線透過率>
全光線透過率は、JIS K7361-1に準拠して、ヘイズメーター(村上色彩技術研究所製 HM150)により測定した。
<YI値(黄色度)>
YI値は、JIS K7373-2006に準拠して、紫外可視近赤外分光光度計(日本分光(株) V-7100)を用い、分光測色方法により、補助イルミナントC、2度視野を用いて、250nm以上800nm以下の範囲を1nm間隔で測定される透過率をもとに、XYZ表色系における三刺激値X,Y,Zを求め、そのX,Y,Zの値から以下の式より算出した。
YI=100(1.2769X-1.0592Z)/Y
<引張弾性率>
10mm×150mmに切り出したフィルムの試験片を、JIS K7127に準拠し、引張り速度を50mm/分、チャック間距離を100mmとして、25℃における引張弾性率を測定した。引張り試験機は(島津製作所製:オートグラフAG-X 1N、ロードセル:SBL-1KN)を用いた。
<複屈折率>
波長590nmにおける厚み方向の複屈折率は、以下のように求めた。
まず、位相差測定装置(例えば、王子計測機器株式会社製、製品名「KOBRA-WR」)を用いて、23℃、波長590nmの光で、ポリイミドフィルムの面内位相差値(Re)及び厚み方向位相差値(Rth)を測定した。厚み方向位相差値(Rth)は、0度入射の位相差値と、斜め40度入射の位相差値を測定し、これらの位相差値から厚み方向位相差値Rthを算出した。前記斜め40度入射の位相差値は、位相差フィルムの法線から40度傾けた方向から、波長590nmの光を位相差フィルムに入射させて測定した。
ポリイミドフィルムの厚み方向の複屈折率は、式:Rth/d(ポリイミドフィルムの膜厚(nm))に代入して求めた。
積層体の複屈折率もポリイミドフィルムと同様にして求めた。
<動的屈曲試験(φ2.5mm)>
以下、動的屈曲試験の方法について、図1を参照して説明する。
可動部11aと非可動部11bとを備える可動式の金属板11(100mm×30mm)を2枚用意し、2枚の金属板11の非可動部11b間の距離が60mmとなるように、平行に配置する。金属板11の可動部11aを、図1の(A)に示すように、非可動部11bに対して垂直になるように折り曲げ、可動部11aの上に、20mm×100mmに切り出したポリイミドフィルムの試験片1を置き、試験片1の中央が金属板間の距離の中央に位置するように、試験片1の両端をカプトン(登録商標)テープで可動部11aに固定する。次いで、可動部11aと非可動部11bとを直線状に配置して、図1の(B)に示すような状態とし、すなわち、長辺の半分の位置で湾曲させた試験片1を両側から金属板11で挟み、両側の金属板11間の距離が60mmとなるように両側の金属板11を平行に配置した状態とする。このような状態と、図1の(C)に示すような、両側の金属板11間の距離が2.5mmとなるように両側の金属板を平行に配置した状態に、25℃、60%相対湿度(RH)の環境下で、1分間に90回の屈曲回数で繰り返し変化させ、屈曲を繰り返す。試験治具としては、恒温恒湿器内耐久試験システム(ユアサシステム機器製、面状体無負荷U字伸縮試験治具 DMX-FS)を用いることができる。
破断するまでの屈曲回数(破断回数)を測定した。
<鉛筆硬度>
ポリイミドフィルムの鉛筆硬度は、測定サンプルを温度25℃、相対湿度60%の条件で2時間調湿した後、JIS-S-6006が規定する試験用鉛筆を用いて、JIS K5600-5-4(1999)に規定する鉛筆硬度試験(0.98N荷重)をフィルム表面に行い、傷がつかない最も高い鉛筆硬度を評価することにより行った。試験機として、東洋精機(株)製 鉛筆引っかき塗膜硬さ試験機を用いた。
積層体の鉛筆硬度は、前記ポリイミドフィルムの鉛筆硬度の測定方法において、荷重を9.8Nとする以外は同様にして測定した。
(実施例1)
<式(a-1)で表されるテトラカルボン酸二無水物の合成>
国際公開2014/046180号公報の合成例1を参照して、下記式(a-1)で表されるテトラカルボン酸二無水物(TMPBPTME)を合成した。
Figure 0007512710000023
<ポリイミド前駆体樹脂の合成>
500mLのセパラブルフラスコを窒素置換し、脱水されたジメチルアセトアミド(DMAc)を396.14g、及び2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)を29.66g(92.7mmol)溶解させた溶液が液温30℃となるように制御したところに、TMPBPTME56.98g(92.1mmol)を温度上昇が2℃以下になるように徐々に投入し、メカニカルスターラーで3時間撹拌し、ポリアミド酸溶液を得た。その後、前記ポリアミド酸溶液にN,N-ジメチルホルムアミドジメチルアセタール(東京化成製)22.04g(185mmol)を添加して更に3時間撹拌することでポリアミド酸エステル溶液を得た。得られたポリアミド酸エステル溶液に水216.40gを徐々に加えて、僅かに濁りが見られる溶液を得た。濁りの見られる溶液に水649.19gを一気に加え白色スラリーを得た。上記スラリーをろ過して5回水で洗浄した後、100℃に加熱したオーブンで減圧しながら10時間乾燥させることでポリイミド前駆体樹脂1の粉体61.9gを得た。
ポリイミド前駆体樹脂1は、全カルボキシ基の99.9%がメチルエステル化されていた。
<ポリイミドフィルムの製造>
ポリイミド前駆体樹脂1にN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)を添加して、固形分が12%のポリイミド前駆体樹脂組成物1を調製した。
固形分が12%のポリイミド前駆体樹脂組成物1を用い、下記(1)~(2)の手順を行うことで、40μmの厚みの単層のポリイミドフィルムを製造した。
(1)ポリイミド前駆体樹脂組成物を、ガラス板上に塗布し、120℃の循環オーブンで10分乾燥後、25℃まで冷却し、ポリイミド前駆体樹脂塗膜を形成し、当該ポリイミド前駆体樹脂塗膜を剥離した。
(2)剥離したポリイミド前駆体樹脂塗膜を150mm×200mmの大きさに切り出した。金属枠(外寸150mm×200mm、内寸130mm×180mm)を2枚使用して、切り出したポリアミド酸エステル樹脂塗膜を挟持し、固定治具で金属枠とポリアミド酸エステル樹脂塗膜とを固定した。固定したポリイミド前駆体樹脂塗膜を窒素気流下(酸素濃度100ppm以下)、循環オーブン中で、昇温速度10℃/分で、300℃まで昇温し、300℃で1時間保持後、25℃まで冷却し、単層のポリイミドフィルムを製造した。
得られたポリイミドフィルムの評価結果を表1に示す。
(実施例2)
実施例1において、ポリイミド前駆体樹脂を製造する際に、N,N-ジメチルホルムアミドジメチルアセタール(東京化成製)22.04g(185mmol)を添加する代わりに、N,N-ジメチルホルムアミドジメチルアセタール(東京化成製)20.94g(176mmol)とした以外は、実施例1と同様にポリイミド前駆体樹脂2を製造した。ポリイミド前駆体樹脂2は、全カルボキシ基の95.0%がメチルエステル化されていた。
得られたポリイミド前駆体樹脂2を用いて、実施例1と同様にして、ポリイミドフィルムを製造した。
得られたポリイミドフィルムの評価結果を表1に示す。
(実施例3)
実施例1において、ポリイミド前駆体樹脂を製造する際に、N,N-ジメチルホルムアミドジメチルアセタール(東京化成製)22.04g(185mmol)を添加する代わりに、N,N-ジメチルホルムアミドジエチルアセタール(東京化成製)25.90g(176mmol)とした以外は、実施例1と同様にポリイミド前駆体樹脂3を製造した。ポリイミド前駆体樹脂3は、全カルボキシ基の95.1%がメチルエステル化されていた。
得られたポリイミド前駆体樹脂3を用いて、実施例1と同様にして、ポリイミドフィルムを製造した。
得られたポリイミドフィルムの評価結果を表1に示す。
(実施例4)
実施例1において、ポリイミド前駆体樹脂を製造する際に、N,N-ジメチルホルムアミドジメチルアセタール(東京化成製)22.04g(185mmol)を添加する代わりに、N,N-ジメチルホルムアミドジn-プロピルアセタール(東京化成製)30.79g(176mmol)とした以外は、実施例1と同様にポリイミド前駆体樹脂4を製造した。ポリイミド前駆体樹脂4は、全カルボキシ基の95.0%がメチルエステル化されていた。
得られたポリイミド前駆体樹脂4を用いて、実施例1と同様にして、ポリイミドフィルムを製造した。
得られたポリイミドフィルムの評価結果を表1に示す。
(実施例5)
500mLのセパラブルフラスコを窒素置換し、脱水されたジメチルアセトアミド(DMAc)を402.41g、及び2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)を30.13g(94.1mmol)溶解させた溶液が液温30℃となるように制御したところに、TMPBPTME57.91g(93.6mmol)を温度上昇が2℃以下になるように徐々に投入し、メカニカルスターラーで3時間撹拌し、ポリアミド酸溶液を得た。その後、前記ポリアミド酸溶液にN,N-ジメチルホルムアミドジメチルアセタール(東京化成製)22.4g(189mmol)を添加して更に3時間撹拌することでポリアミド酸エステル溶液を得た。得られたポリアミド酸エステル溶液に水220.23gを徐々に加えて、僅かに濁りが見られる溶液を得た。濁りの見られる溶液に水668.81gを一気に加え白色スラリーを得た。上記スラリーをろ過して5回水で洗浄した後、100℃に加熱したオーブンで減圧しながら10時間乾燥させることでポリイミド前駆体樹脂5の粉体65.2gを得た。
ポリイミド前駆体樹脂5は、全カルボキシ基の95.1%がメチルエステル化されていた。
得られたポリイミド前駆体樹脂5を用いて、実施例1と同様にして、ポリイミドフィルムを製造した。
得られたポリイミドフィルムの評価結果を表1に示す。
(実施例6)
500mLのセパラブルフラスコを窒素置換し、脱水されたジメチルアセトアミド(DMAc)を388.37g、及び2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)を29.08g(90.8mmol)溶解させた溶液が液温30℃となるように制御したところに、TMPBPTME55.27g(89.3mmol)を温度上昇が2℃以下になるように徐々に投入し、メカニカルスターラーで3時間撹拌し、ポリアミド酸溶液を得た。その後、前記ポリアミド酸溶液にN,N-ジメチルホルムアミドジメチルアセタール(東京化成製)20.36g(171mmol)を添加して更に3時間撹拌することでポリアミド酸エステル溶液を得た。得られたポリアミド酸エステル溶液に水211.40gを徐々に加えて、僅かに濁りが見られる溶液を得た。濁りの見られる溶液に水635.2gを一気に加え白色スラリーを得た。上記スラリーをろ過して5回水で洗浄した後、100℃に加熱したオーブンで減圧しながら10時間乾燥させることでポリイミド前駆体樹脂6の粉体57.6gを得た。
ポリイミド前駆体樹脂6は、全カルボキシ基の95.2%がメチルエステル化されていた。
得られたポリイミド前駆体樹脂6を用いて、実施例1と同様にして、ポリイミドフィルムを製造した。
得られたポリイミドフィルムの評価結果を表1に示す。
(比較例1)
実施例1において、ポリイミド前駆体樹脂を製造する際に、N,N-ジメチルホルムアミドジメチルアセタール(東京化成製)22.04g(185mmol)を添加する代わりに、N,N-ジメチルホルムアミドジメチルアセタール(東京化成製)20.71g(173mmol)とした以外は、実施例1と同様に比較ポリイミド前駆体樹脂1を製造した。比較ポリイミド前駆体樹脂1は、全カルボキシ基の94.0%がメチルエステル化されていた。
得られた比較ポリイミド前駆体樹脂1を用いて、実施例1と同様にして、ポリイミドフィルムC1を製造した。
得られたポリイミドフィルムの評価結果を表1に示す。
(比較例2)
<ポリアミド酸の合成>
500mLのセパラブルフラスコを窒素置換し、脱水されたジメチルアセトアミド(DMAc)を396.14g、及び、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)を29.66g(92.7mmol)溶解させた溶液が液温30℃となるように制御したところに、TMPBPTME56.98g(92.1mmol)を温度上昇が2℃以下になるように徐々に投入し、メカニカルスターラーで3時間撹拌することにより、ポリアミド酸溶液を得た。
<ポリイミドフィルムの製造>
前記ポリアミド酸溶液にN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)を添加することにより、固形分12%の比較ポリイミド前駆体樹脂組成物C2を調製した。
実施例1のポリイミドフィルムの製造において、ポリイミド前駆体樹脂組成物1を用いる代わりに、比較ポリイミド前駆体樹脂組成物C2を用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例2のポリイミドフィルムC2を得た。
得られたポリイミドフィルムの評価結果を表1に示す。
(比較例3)
<ポリイミドの合成>
500mLのセパラブルフラスコを窒素置換し、脱水されたジメチルアセトアミド(DMAc)を396.14g、及び、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)を29.66g(92.7mmol)溶解させた溶液が液温30℃となるように制御したところに、TMPBPTME56.98g(92.1mmol)を温度上昇が2℃以下になるように徐々に投入し、メカニカルスターラーで3時間撹拌する事でポリアミド酸溶液を得た。次に触媒であるピリジン1.69g(16.6mmol)及び無水酢酸32.20g(412.8mmol)を投入して、更に3時間撹拌することでポリイミド溶液を得た。その後、常温まで冷却させた溶液に対して、2-プロピルアルコール(IPA)216.40gを徐々に加え、僅かに濁りが見られる溶液を得た。濁りの見られる溶液にIPA324.59gを一気に加え白色スラリーを得た。上記スラリーをろ過して5回IPAで洗浄した後、100℃に加熱したオーブンで減圧しながら6時間乾燥させることでポリイミドC3の粉体60.4gを得た。
<ポリイミドフィルムの製造>
前記ポリイミドC3の固形分濃度が19質量%となるように、ポリイミドC3にDMAcを添加して、ポリイミドC3がワニス中に19質量%のポリイミドワニスC3を作製した。
ポリイミドワニスC3を用い、下記(i)~(ii)の手順を行うことで、40μmの厚みの単層のポリイミドフィルムC3を作製した。
(i)ポリイミドワニスC3を、ガラス板上に塗布し、120℃の循環オーブンで10分乾燥後、25℃まで冷却し、ポリイミド樹脂塗膜を剥離した。
(ii)剥離したポリイミド樹脂塗膜を150mm×200mmの大きさに切り出した。金属枠(外寸150mm×200mm、内寸130mm×180mm)を2枚使用して、切り出したポリイミド樹脂塗膜を挟持し、固定治具で金属枠とポリイミド樹脂塗膜とを固定した。固定したポリイミド樹脂塗膜を窒素気流下(酸素濃度100ppm以下)、循環オーブン中で、昇温速度10℃/分で、300℃まで昇温し、300℃で1時間保持後、25℃まで冷却し、単層のポリイミドフィルムC3を製造した。
得られたポリイミドフィルムの評価結果を表1に示す。
[表1のまとめ]
従来のポリイミド前駆体であるポリアミド酸を用いて熱イミド化して製造された比較例2のポリイミドフィルムは、フィルム製造後にポリイミドの分子量が低下してしまい、屈曲耐性が悪いものであり、透明性も低下してしまった。
エステル化率が低い比較ポリイミド前駆体樹脂1を用いて熱イミド化して製造された比較例1のポリイミドフィルムも、フィルム製造後にポリイミドの分子量が低下してしまい、屈曲耐性が悪化し、透明性も低下してしまった。
特許文献2に相当する比較例3のポリイミドフィルムは、弾性率は高く、屈曲耐性も良好なものの、位相差が高く、複屈折率が大きかった。
それに対して、本発明のエステル化されたポリイミド前駆体樹脂を用いて熱イミド化して製造された実施例1及び2のポリイミドフィルムは、フィルム製造後にポリイミドの分子量が低下することなく、屈曲耐性が良好なものであり、透明性も低下せず良好で、弾性率が高く、位相差が比較例1及び2よりもさらに低いポリイミドフィルムであった。
(実施例7)
<ポリイミド前駆体樹脂の合成>
500mLのセパラブルフラスコを窒素置換し、脱水されたジメチルアセトアミド(DMAc)を392.37g、及び2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)を36.08g(112.7mmol)溶解させた溶液が液温30℃となるように制御したところに4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)49.19g(110.7mmol)を温度上昇が2℃以下になるように徐々に投入し、メカニカルスターラーで3時間撹拌し、ポリアミド酸溶液を得た。その後、前記ポリアミド酸溶液にN,N-ジメチルホルムアミドジメチルアセタール(東京化成製)24.99g(209.7mmol)を添加して更に3時間撹拌することでポリアミド酸エステル溶液を得た。得られたポリアミド酸エステル溶液に水226.55gを徐々に加えて、僅かに濁りが見られる溶液を得た。濁りの見られる溶液に水453.1gを一気に加え白色スラリーを得た。上記スラリーをろ過して5回水で洗浄した後、100℃に加熱したオーブンで減圧しながら10時間乾燥させることでポリイミド前駆体樹脂7の粉体62.9gを得た。
ポリイミド前駆体樹脂7は、全カルボキシ基の95.1%がメチルエステル化されていた。
得られたポリイミド前駆体樹脂7を用いて、実施例1と同様にして、ポリイミドフィルムを製造した。
得られたポリイミドフィルムの評価結果を表2に示す。
(比較例4)
<ポリアミド酸の合成>
500mLのセパラブルフラスコを窒素置換し、脱水されたジメチルアセトアミド(DMAc)を402.4g、及び2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)を37.00g(115.5mmol)溶解させた溶液が液温30℃となるように制御したところに6FDA50.92g(114.6mmol)を温度上昇が2℃以下になるように徐々に投入し、メカニカルスターラーで3時間撹拌しポリアミド酸溶液を得た。
<ポリイミドフィルムの製造>
前記ポリアミド酸溶液にN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)を添加することにより、固形分12%の比較ポリイミド前駆体樹脂組成物C4を調製した。
実施例1のポリイミドフィルムの製造において、ポリイミド前駆体樹脂組成物1を用いる代わりに、比較ポリイミド前駆体樹脂組成物C4を用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例4のポリイミドフィルムC4を得た。
得られたポリイミドフィルムの評価結果を表2に示す。
(比較例5)
<ポリイミドの合成>
500mLのセパラブルフラスコを窒素置換し、脱水されたジメチルアセトアミド(DMAc)を398.58g、及び、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)を36.65g(114.4mmol)溶解させた溶液が液温30℃となるように制御したところに、6FDA50.54g(113.8mmol)を温度上昇が2℃以下になるように徐々に投入し、メカニカルスターラーで3時間撹拌する事でポリアミド酸溶液を得た。次に触媒であるピリジン1.73g(79.1mmol)及び無水酢酸55.85g(547.1mmol)を投入して、更に3時間撹拌することでポリイミド溶液を得た。その後、常温まで冷却させた溶液に対して、2-プロピルアルコール(IPA)233.65gを徐々に加え、僅かに濁りが見られる溶液を得た。濁りの見られる溶液にIPA467.5gを一気に加え白色スラリーを得た。上記スラリーをろ過して5回IPAで洗浄した後、100℃に加熱したオーブンで減圧しながら6時間乾燥させることでポリイミドC5の粉体66.1gを得た。
<ポリイミドフィルムの製造>
比較例3において、前記ポリイミドC3の代わりに、前記ポリイミドC5を用いた以外は、比較例3と同様にして、単層のポリイミドフィルムC5を製造した。
得られたポリイミドフィルムの評価結果を表2に示す。
(実施例8)
<ポリイミド前駆体樹脂の合成>
500mLのセパラブルフラスコを窒素置換し、脱水されたジメチルアセトアミド(DMAc)を385.52g、及び2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)を50.34g(157.2mmol)溶解させた溶液が液温30℃となるように制御したところにピロメリット酸二無水物(PMDA)24.15g(110.7mmol)を温度上昇が2℃以下になるように徐々に投入し、メカニカルスターラーで3時間撹拌し、ポリアミド酸溶液を得た。その後、前記ポリアミド酸溶液にN,N-ジメチルホルムアミドジメチルアセタール(東京化成製)53.53g(449.2mmol)を添加して更に3時間撹拌することでポリアミド酸エステル溶液を得た。得られたポリアミド酸エステル溶液に水223.3gを徐々に加えて、僅かに濁りが見られる溶液を得た。濁りの見られる溶液に水446.2gを一気に加え白色スラリーを得た。上記スラリーをろ過して5回水で洗浄した後、100℃に加熱したオーブンで減圧しながら10時間乾燥させることでポリイミド前駆体樹脂8の粉体66.7gを得た。
ポリイミド前駆体樹脂8は、全カルボキシ基の95.0%がメチルエステル化されていた。
得られたポリイミド前駆体樹脂8を用いて、実施例1と同様にして、ポリイミドフィルムを製造した。
得られたポリイミドフィルムの評価結果を表2に示す。
(比較例6)
<ポリアミド酸の合成>
500mLのセパラブルフラスコを窒素置換し、脱水されたジメチルアセトアミド(DMAc)を398.19g、及び2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)を51.99g(162.4mmol)溶解させた溶液が液温30℃となるように制御したところにPMDA35.13g(161.1mmol)を温度上昇が2℃以下になるように徐々に投入し、メカニカルスターラーで3時間撹拌し、ポリアミド酸溶液を得た。
<ポリイミドフィルムの製造>
前記ポリアミド酸溶液にN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)を添加することにより、固形分12%の比較ポリイミド前駆体樹脂組成物C6を調製した。
実施例1のポリイミドフィルムの製造において、ポリイミド前駆体樹脂組成物1を用いる代わりに、比較ポリイミド前駆体樹脂組成物C6を用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例6のポリイミドフィルムC6を得た。
得られたポリイミドフィルムの評価結果を表2に示す。
(比較例7)
<ポリイミドの合成>
500mLのセパラブルフラスコを窒素置換し、脱水されたジメチルアセトアミド(DMAc)を405.60g、及び、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)を52.96g(165.4mmol)溶解させた溶液が液温30℃となるように制御したところに、PMDA35.82g(164.2mmol)を温度上昇が2℃以下になるように徐々に投入し、メカニカルスターラーで3時間撹拌する事でポリアミド酸溶液を得た。次に触媒であるピリジン2.598g(32.8mmol)及び無水酢酸83.83g(821.1mmol)を投入して、更に3時間撹拌することでポリイミド溶液を得た。その後、常温まで冷却させた溶液に対して、2-プロピルアルコール(IPA)247.3gを徐々に加え、僅かに濁りが見られる溶液を得た。濁りの見られる溶液にIPA494.6gを一気に加え白色スラリーを得た。上記スラリーをろ過して5回IPAで洗浄した後、100℃に加熱したオーブンで減圧しながら6時間乾燥させることでポリイミドC7の粉体69.9gを得た。
<ポリイミドフィルムの製造>
比較例3において、前記ポリイミドC3の代わりに、前記ポリイミドC7を用いた以外は、比較例3と同様にして、単層のポリイミドフィルムC7を製造した。
得られたポリイミドフィルムの評価結果を表2に示す。
(実施例9~14、比較例8~10:積層体の製造)
下記組成のハードコート層用樹脂組成物を調製した。
(ハードコート層用樹脂組成物)
・ペンタエリスリトールトリアクリレートの40質量%メチルイソブチルケトン溶液:固形分65質量部
・シリカ微粒子(日産化学製、MIBK-SD-L、メチルイソブチルケトン分散シリカゾル、SiO 30質量%):固形分30質量部
・1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン(BASF製、イルガキュア184)固形分5質量部
実施例1~6、及び比較例1~3の各ポリイミドフィルム上に前記ハードコート層用樹脂組成物を塗布し、紫外線を窒素気流下200mJ/cmの露光量で照射し硬化させ、約10μm膜厚の硬化膜(ハードコート層)を形成し、積層体を製造した。
得られた積層体の評価結果を表3に示す。
Figure 0007512710000026
(実施例15~16:積層体の製造)
実施例7及び8と同様にしてポリイミドフィルムを製造した。その後、得られた各ポリイミドフィルム上に前記実施例9と同じハードコート層用樹脂組成物を塗布し、ハードコート層形成用塗膜を形成し、当該ハードコート層形成用塗膜に紫外線を窒素気流下200mJ/cmの露光量で照射して硬化させ、約10μm膜厚の硬化膜(ハードコート層)を形成し、積層体を製造した。
得られた積層体の評価結果を表4に示す。
Figure 0007512710000027

Claims (11)

  1. 下記一般式(1-1)又は下記一般式(1-2)
    Figure 0007512710000028
    (一般式(1-1)及び(1-2)において、Aは、下記化学式(a-1)で表される酸二無水物の残基である4価の基を表し、Bは2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジンの残基である2価の基を表し、Rは水素原子又は炭素数1~10のアルキル基を表す。)で表される構成単位を有し
    Figure 0007512710000029
    記一般式(1-1)及び(1-2)中に含まれる全てのRに対する95.0%以上が炭素数1~10のアルキル基であり、
    更に、下記一般式(2)
    Figure 0007512710000030
    {一般式(2)において、Xは下記式(x1)~(x4)
    Figure 0007512710000031
    (式(x3)において、Lは、-O-、-S-、-CH-、-CH(CH)-、-C(CH-、-C(CF-、又は-CO-を表し、*は結合手を表す。)で表される構造からなる群から選択される少なくとも1つの2価の基を表し、Bは2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジンの残基である2価の基を表す。}で表される構成単位を有していてもよく、
    ゲル浸透クロマトグラフィーのポリスチレン換算による重量平均分子量が108,000以上である、ポリイミド前駆体樹脂。
  2. 前記一般式(1-1)及び(1-2)で表される構成単位の合計含有割合はポリイミド前駆体樹脂の全構成単位に対して80モル%以上である、請求項1に記載のポリイミド前駆体樹脂。
  3. 請求項1又は2に記載のポリイミド前駆体樹脂と、有機溶剤とを含むポリイミド前駆体樹脂組成物を調製する工程と、
    前記ポリイミド前駆体樹脂組成物を支持体に塗布して、ポリイミド前駆体樹脂塗膜を形成する工程と、
    前記ポリイミド前駆体樹脂塗膜を加熱することにより、前記ポリイミド前駆体樹脂をイミド化する工程と、を含むポリイミドフィルムの製造方法。
  4. 前記請求項に記載のポリイミドフィルムの製造方法により、ポリイミドフィルムを製造する工程と、
    前記ポリイミドフィルムの少なくとも一面に、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種を含有するハードコート層用組成物を塗布して、ハードコート層形成用塗膜を形成する工程と、
    前記ハードコート層形成用塗膜を硬化することにより、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物を含有するハードコート層を形成する工程と、を含む積層体の製造方法。
  5. 下記一般式(1’)
    Figure 0007512710000032
    (一般式(1’)において、Aは、下記化学式(a-1)で表される酸二無水物の残基である4価の基を表し、Bは2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジンの残基である2価の基を表す。)で表される構成単位を有し
    Figure 0007512710000033
    更に、下記一般式(2)
    Figure 0007512710000034
    {一般式(2)において、Xは下記式(x1)~(x4)
    Figure 0007512710000035
    (式(x3)において、Lは、-O-、-S-、-CH-、-CH(CH)-、-C(CH-、-C(CF-、又は-CO-を表し、*は結合手を表す。)で表される構造からなる群から選択される少なくとも1つの2価の基を表し、Bは2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジンの残基である2価の基を表す。}で表される構成単位を有していてもよいポリイミド樹脂を含有し、
    JIS K7361-1に準拠して測定する全光線透過率が、膜厚40μmの換算値で85.0%以上であり、JIS K7373-2006に準拠して算出される黄色度を膜厚(μm)で除した値が、0.15未満であり、
    波長590nmにおける厚み方向の複屈折率が、0.025未満であり、
    10mm×150mmの試験片を、JIS K7127に準拠し、引張り速度を50mm/分、チャック間距離を100mmとして、25℃で測定する引張試験における引張弾性率が4.0GPa以上であり、且つ、下記動的屈曲試験において、屈曲回数が10万回以上である、ポリイミドフィルム。
    (動的屈曲試験)
    20mm×100mmの試験片を、長辺の半分の位置で湾曲させて、平行に配置した金属板で挟み、両側の金属板間の距離が60mmから2.5mmとなるように25℃、60%相対湿度(RH)の環境下で、1分間に90回の屈曲回数で繰り返し変化させ、試験片の屈曲を繰り返す。
  6. 前記ポリイミド樹脂は、前記一般式(1’)で表される構成単位の合計含有割合がポリイミド樹脂の全構成単位に対して80モル%以上である、請求項に記載のポリイミドフィルム。
  7. 請求項5又は6に記載のポリイミドフィルムと、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物を含有するハードコート層とを有する積層体。
  8. 請求項5又は6に記載のポリイミドフィルム、又は、請求項に記載の積層体である、ディスプレイ用部材。
  9. 請求項5又は6に記載のポリイミドフィルム又は請求項に記載の積層体と、
    前記ポリイミドフィルム又は前記積層体の一方の面側に配置された、複数の導電部からなる透明電極と、
    前記導電部の端部の少なくとも一方側において電気的に接続される複数の取り出し線と、を有するタッチパネル部材。
  10. 請求項5又は6に記載のポリイミドフィルム又は請求項に記載の積層体と、
    前記ポリイミドフィルム又は前記積層体の一方の面側に配置された、対向基板間に液晶層を有してなる液晶表示部と、を有する液晶表示装置。
  11. 請求項5又は6に記載のポリイミドフィルム又は請求項に記載の積層体と、
    前記ポリイミドフィルム又は前記積層体の一方の面側に配置された、対向基板間に有機エレクトロルミネッセンス層を有してなる有機エレクトロルミネッセンス表示部と、を有する有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
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