JP2021059523A - 有機化合物、有機発光素子、表示装置、撮像装置、照明装置、移動体 - Google Patents

有機化合物、有機発光素子、表示装置、撮像装置、照明装置、移動体 Download PDF

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Abstract

【課題】 色純度の高い、青色発光材料を提供する。【解決手段】 下記式(1)で表される有機化合物を提供する。式(1)において、R1乃至R18は、水素原子または置換基からそれぞれ独立に選ばれる。ただし、R1乃至R18の少なくとも一つは、置換基であり、当該置換基は、シアノ基を有するアリール基またはシアノ基を有する複素環基である。【選択図】 図2

Description

本発明は、有機化合物、並びにこれを有する有機発光素子、表示装置、撮像装置、照明装置及び移動体に関する。
有機発光素子(有機エレクトロルミネッセンス素子、あるいは有機発光素子と呼ぶ)は、一対の電極とこれら電極間に配置される有機化合物層とを有する電子素子である。これら一対の電極から電子及び正孔を注入することにより、有機化合物層中の発光性有機化合物の励起子を生成し、該励起子が基底状態に戻る際に、有機発光素子は光を放出する。
有機発光素子の最近の進歩は著しく、低駆動電圧、多様な発光波長、高速応答性、発光デバイスの薄型化・軽量化が可能であることが挙げられる。
ディスプレイに用いられる色再現範囲として、sRGBやAdobeRGBの規格が知られており、これら色再現範囲に適した材料が求められてきた。最近ではさらに色再現範囲が広がった規格であるBT−2020の再現が求められている。
ところで、現在までに発光特性の優れた化合物の創出が盛んに行なわれている。特許文献1には、発光特性に優れる有機化合物として、下記の構造式で表される有機化合物が記載されている。本明細書においては、化合物Aと呼ぶ。
Figure 2021059523
特開2010−143879号公報
特許文献1に記載の化合物A−1は青色発光材料である。しかし、sRGBやAdobeRGBさらにはBT2020に必要な色再現範囲を考慮すると青色発光の色純度が十分でない。
本発明は、上記課題に鑑みてなされるものであり、その目的は、BT2020の色再現範囲に求められる、色純度が良い青色発光材料を提供することである。
本発明の一実施形態は、下記式(1)で表されることを特徴とする有機化合物である。
Figure 2021059523
式(1)において、R乃至R18は、水素原子、ハロゲン原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアルコキシ基、置換あるいは無置換のアミノ基、置換あるいは無置換のアリール基及び置換あるいは無置換の複素環基、置換あるいは無置換のアリールオキシ基、シリル基及びシアノ基からそれぞれ独立に選ばれる。ただし、R乃至R18の少なくとも1つは、シアノ基を有する前記アリール基またはシアノ基を有する前記複素環基である。
本発明によれば、色純度が良い青色発光材料を提供できる。
本発明の一実施形態に係る有機化合物の基本骨格におけるHOMOの電子軌道分布及びLUMOの電子軌道分布である。 (a)本発明の一実施形態に係る表示装置の画素の一例を表す概略断面図である。(b)本発明の一実施形態に係る有機発光素子を用いた表示装置の一例の概略断面図である。 本発明の一実施形態に係る有機発光素子を用いた表示装置の一例の模式図である。 (a)本発明の一実施形態に係る撮像装置の一例を表す模式図である。(b)本発明の一実施形態に係る携帯機器の一例を表す模式図である。 (a)本発明の一実施形態に係る表示装置の一例を表す模式図である。(b)折り曲げ可能な表示装置の一例を表す模式図である。 (a)本発明の一実施形態に係る照明装置の一例を示す模式図である。(b)本発明の一実施形態に係る移動体の一例である自動車を示す模式図である。
本発明の一実施形態に係る有機化合物について説明する。本発明の一実施形態に係る有機化合物は、下記式(1)で表される有機化合物である。本発明の一実施形態に係る有機化合物は、基本骨格に加えて特定の置換基を設けることで、色純度の高い青発光を発する有機化合物である。本明細書において、基本骨格とは、下記式(1)で表される有機化合物のR乃至R18がすべて水素原子である骨格を指す。また、本明細書において、色純度が高いとは、CIE座標で表される発光座標が、BT2020の青座標、すなわち、(0.131、0.046)により近いことを指す。
Figure 2021059523
式(1)において、R乃至R18は、水素原子または置換基からそれぞれ独立に選ばれる。置換基は、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、アリール基及び複素環基からそれぞれ独立に選ばれる。
だたし、R乃至R18のうち少なくとも1つは、シアノ基を有する当該アリール基またはシアノ基を有する当該複素環基である。
本実施形態において、ハロゲン原子は、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本実施形態において、アルキル基は、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、ターシャリーブチル基、セカンダリーブチル基、オクチル基、シクロヘキシル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。アルキル基は、炭素原子数が1乃至10であってよい。
本実施形態において、アルコキシ基は、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、2−エチル−オクチルオキシ基、ベンジルオキシ基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。アルコキシ基は、炭素原子数が1乃至6であってよい。
本実施形態において、アミノ基は、N−メチルアミノ基、N−エチルアミノ基、N,N−ジメチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基、N−メチル−N−エチルアミノ基、N−ベンジルアミノ基、N−メチル−N−ベンジルアミノ基、N,N−ジベンジルアミノ基、アニリノ基、N,N−ジフェニルアミノ基、N,N−ジナフチルアミノ基、N,N−ジフルオレニルアミノ基、N−フェニル−N−トリルアミノ基、N,N−ジトリルアミノ基、N−メチル−N−フェニルアミノ基、N,N−ジアニソリルアミノ基、N−メシチル−N−フェニルアミノ基、N,N−ジメシチルアミノ基、N−フェニル−N−(4−ターシャリブチルフェニル)アミノ基、N−フェニル−N−(4−トリフルオロメチルフェニル)アミノ基、N−ピペリジル基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。すなわち、アルキル基、アリール基またはアラルキル基を置換基として有するアミノ基であってよい。アミノ基に置換するアリール基は、具体的には、フェニル基、ナフチル基、ベンジル基であってよい。フェニル基、ナフチル基、ベンジル基は、アルキル基を置換基として有してよい。当該アルキル基は炭素原子数が1乃至10であってよい。また、当該アルキル基の炭素原子数が1乃至4であってよい。
本実施形態において、アリール基は、フェニル基、ナフチル基、インデニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、フルオレニル基、フェナントリル基、トリフェニレニル基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。アリール基の炭素原子数は6乃至18であってよい。
本実施形態において、複素環基は、ピリジル基、ピリミジル基、ピラジル基、トリアジル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチオフェニル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、ジベンゾセレノフェニル基、ジベンゾテルロフェニル基、オキサゾリル基、オキサジアゾリル基、チアゾリル基、チアジアゾリル基、カルバゾリル基、アクリジニル基、フェナントロリル基、キノリル基、イソキノリル等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。すなわち複素環基は、窒素原子、酸素原子、硫黄原子を複素原子として有する置換基である。複素原子は1つまたは複数であってよく、複素原子は1種類または複数種類であってよい。複素環基の炭素原子数は3乃至15であってよい。
本実施形態において、アリールオキシ基として、フェノキシ基、チエニルオキシ基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本実施形態において、シリル基として、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。シリル基はアルキル基またはアリール基を置換基として有してよい。当該アルキル基は炭素原子数が1乃至10であってよい。アリール基は炭素原子数が6乃至18であってよい。
上記アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、アリール基、複素環基、アリールオキシ基は、それぞれの説明に記載した以外に、さらに置換基を有してよい。さらに有してもよい置換基は、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、ターシャリーブチル基等の炭素数1乃至4のアルキル基、ベンジル基等のアラルキル基、フェニル基、ビフェニル基等のアリール基、ピリジル基、ピロリル基等の複素環基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジベンジルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基等のアミノ基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基等のアリールオキシ基、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子、シアノ基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
次に、本発明の一実施形態に係る有機化合物の合成方法を説明する。本発明の一実施形態に係る有機化合物は、例えば、下記に示す反応スキームに従って合成される。
Figure 2021059523
Figure 2021059523
Figure 2021059523
ここで、上記置換基Arを適宜変更することにより、式(1)で表される有機化合物を得ることができる。なお、合成法の詳細については実施例にて説明する。
次に、本発明の一実施形態に係る有機化合物について説明する。
本発明者らは、式(1)で表される有機化合物を発明するにあたり、基本骨格それ自体に注目した。色純度が良い青色発光材料を得るためには、基本骨格が発する発光が色純度の高い青色領域にある方が好ましいからである。すなわち、式(1)で表される有機化合物の基本骨格は色純度の高い青発光に適した骨格である。そして、本発明者らは、基本骨格に、シアノ基を有するアリール基または複素環基を有する式(1)で表される有機化合物に至った。
本発明の一実施形態に係る有機化合物は、色純度に優れた基本骨格に、シアノ基を有するアリール基または複素環基を有するため、基本骨格自体の発光よりも色純度がさらに高い青発光を発光する。
本明細書において、色純度が高い青色領域とは、希薄溶液中で最大発光波長が430nm以上445nm以下の帯域内にあることを指す。また、色純度が高い青色発光は、CIE色座標のy座標が0.10以下であってよい。
また、本発明の一実施形態に係る有機化合物は、基本骨格にシアノ基を有するアリール基または複素環基を有するため、基本骨格自体の電子受容性よりも電子受容性が高い。また、シアノ基を有するアリール基またはシアノ基を有する複素環基の数が、1以上4以下であってよく、シアノ基を有するアリール基またはシアノ基を有する複素環基の数が1以上2以下であってよい。
電子受容性が高い有機化合物は、酸化に対する安定性が高い化合物である。特に有機発光材料は酸化に対する安定性を高めることが求められる。それは、有機発光素子の有機化合物層内では、有機化合物が酸化と還元を繰り返すことで電荷の移動、再結合が行われるからである。酸化や還元、すなわち、電荷の授受に対して不安定な化合物では、酸化還元過程や励起状態において化学変化を起こし、異なる化合物へと変化してしまう。その結果、本来の素子特性が損なわれ、有機発光素子の輝度低下を生じ、素子寿命を低減させる。このような劣化を低減するためには、酸化に対する安定性が求められ、それを満たす一手段として高い電子受容性が高いことが好ましい。
そこで本発明者らは、高い電子受容性を有する材料の設計指針の一つとして還元電位を大きくすることに着目し、式(1)の化合物を見出した。
具体的には基本骨格に対して電子求引性の置換基としてシアノ基を有する、アリール基または複素環基を置換することによって、電子受容性を向上させた。
電子求引基としてはフッ素原子のようなハロゲン基もあげられるが、ハロゲンは他の電子求引基よりも高い酸化力を有するため、有機発光素子を構成する他の有機化合物に影響を与えやすい。そのため、素子寿命を低減させる場合がある。また、電気求引基としてカルボキシル基もあげられるが、カルボキシル基を設ける場合、有機化合物の熱安定性が低下する。そのため、カルボキシル基を設けた有機化合物は、昇華精製が困難な場合がある。昇華精製をしない場合に有機化合物は、純度を高めることが困難なので、有機発光素子の構成材料に適さない場合がある。そこで、本発明者らは素子寿命を低減せず、熱安定性を損ねない、電子求引性の置換基としてシアノ基を見出した。
以下の表1に示すのは基本骨格に対して電子求引性の置換基としてシアノ基を有する式(1)で表される有機化合物とシアノ基を有さないことのみが異なる比較化合物Aの発光波長及び還元電位を比較した表である。なお、比較化合物Aは、特許文献1に記載された例示化合物である。
発光波長の測定は、日立製F−4500を用い、室温下、励起波長350nmにおける希釈トルエン溶液のフォトルミネッセンス測定により行った。
また、還元電位は、CV(サイクリックボルタンメトリー)測定により行った。なお、CV測定は、0.1Mテトラブチルアンモニウム過塩素酸塩のDMF溶液(還元電位測定)を行い、参照電極はAg/Ag、対極はPt、作用電極はグラッシーカーボンを用いて測定した。また、電圧の挿引速度は、1.0V/sで行った。測定装置はALS社製のモデル660C、電気化学アナライザーを用いた。
Figure 2021059523
表1より、比較化合物Aに対して本実施形態の化合物は、電子求引性の置換基としてシアノ基を有することで還元電位が0.1eV以上大きくなることがわかる。つまり、式(1)で表される有機化合物は電子受容性が向上していることを示している。また、シアノ基を有するアリール基である、シアノ基を有するフェニル基を設けたことで発光波長が短波長化している。
表1の通り、基本骨格に電子求引性の置換基としてシアノ基を有する、アリール基または複素環基を置換することで青色純度が向上する。この効果は以下構造式において矢印で示す置換位置にシアノ基を有するアリール基または複素環基を置換する場合、特に効果が大きい。つまり、式(1)で表される有機化合物においてR、R、R、R16、R17、R18にシアノ基を有するアリール基またはシアノ基を有する複素環基を置換する場合、青色純度が向上する。
Figure 2021059523
上記構造式の置換位置は基本骨格のHOMO及びLUMOの電子軌道分布について比較すると、LUMOの電子軌道分布が少なく、HOMOの電子部分布の方が多い。そのため相対的にHOMOへの電子求引性の効果が大きくなり、光学的バンドギャップは逆に広くなる効果が働いていることによると考えられる。なお、HOMOは最高被占有分子軌道、LUMOは最低非占有分子軌道である。
上述の考察を支持するため、基本骨格のHOMO及びLUMOの電子軌道分布について分子軌道計算を用いて算出し図示した。その結果を図1に示す。上記構造式における矢印の置換位置はLUMOの電子軌道分布が少なく軌道係数が小さい、HOMOの電子部分布の方が多く、軌道係数が大きいことが計算結果からもわかる。
なお、分子軌道計算法の計算手法は、現在広く用いられている密度汎関数法(Density Functional Theory,DFT)を用いた。汎関数はB3LYP、基底関数は6−31Gを用いた。この基底関数は6−31G(d)とも呼ばれる。なお、分子軌道計算法は、現在広く用いられているGaussian09(Gaussian09,RevisionC.01,M.J.Frisch,G.W.Trucks,H.B.Schlegel,G.E.Scuseria,M.A.Robb,J.R.Cheeseman,G.Scalmani,V.Barone,B.Mennucci,G.A.Petersson,H.Nakatsuji,M.Caricato,X.Li,H.P.Hratchian,A.F.Izmaylov,J.Bloino,G.Zheng,J.L.Sonnenberg,M.Hada,M.Ehara,K.Toyota,R.Fukuda,J.Hasegawa,M.Ishida,T.Nakajima,Y.Honda,O.Kitao,H.Nakai,T.Vreven,J.A.Montgomery,Jr.,J.E.Peralta,F.Ogliaro,M.Bearpark,J.J.Heyd,E.Brothers,K.N.Kudin,V.N.Staroverov,T.Keith,R.Kobayashi,J.Normand,K.Raghavachari,A.Rendell,J.C.Burant,S.S.Iyengar,J.Tomasi,M.Cossi,N.Rega,J.M.Millam,M.Klene,J.E.Knox,J.B.Cross,V.Bakken,C.Adamo,J.Jaramillo,R.Gomperts,R.E.Stratmann,O.Yazyev,A.J.Austin,R.Cammi,C.Pomelli,J.W.Ochterski,R.L.Martin,K.Morokuma,V.G.Zakrzewski,G.A.Voth,P.Salvador,J.J.Dannenberg,S.Dapprich,A.D.Daniels,O.Farkas,J.B.Foresman,J.V.Ortiz,J.Cioslowski,and D.J.Fox,Gaussian,Inc.,Wallingford CT,2010.)により実施した。
本発明の一実施形態に係る有機化合物は、式(1)におけるR、R、R、R16、R17、R18にシアノ基を有するアリール基またはシアノ基を有する複素環基を設けることで、分子間の重なりを低減することができる。分子間の重なりを低減することで、昇華性の向上、結晶性を低減することができる。
本明細書において、昇華性とは、有機化合物の昇華温度が有機化合物の熱分解温度よりも大きい場合に昇華性があるとし、さらにその差がより大きい場合に、昇華性が高いという。また、結晶性とは、高温になるまたは電界がかかる等、エントロピーが高い状態において、分子がアモルファス状態を保つことを指し、よりアモルファス状態を保つ性質を結晶性が低いという。
昇華性が向上すれば、昇華精製の際に、熱分解してしまう分子を低減することができる。昇華精製を行うことで、有機化合物の純度の向上を比較的容易に行うことができる。これにより、有機発光素子中に含まれる不純物を減少することができ、不純物による発光効率の低下、駆動耐久の低下を低減することができる。また、結晶化を低減することで濃度消光を低減することができる。濃度消光の低減は、有機発光素子の発光効率の向上の点から好ましい。
式(1)で表される有機化合物の基本骨格平面は、長軸と短軸との比が大きい。そのため、置換基が設けられていない場合、薄膜状態において、基本骨格平面間の距離が近くなり、分子間相互作用が大きくなる。これは、濃度消光や昇華性の低下を引き起こす要因となりうる。また、式(1)で表される有機化合物は、4つの6員環が縮環している部分の平面性が高い。4つの6員環が縮環している部分とは、基本骨格のうちのクリセン部分といってもよく、分子の中心部分と呼んでもよい。したがって、分子間相互作用を低減し、昇華性の向上、濃度消光の低減を行うには、分子の平面性が高い、分子の中心付近に置換基が設けられることが好ましい。すなわち、式(1)で表される有機化合物においてR、R、R、R16、R17、R18の少なくとも1つに置換基が設けられることが好ましい。
本発明の一実施形態に係る有機化合物の基本骨格は炭化水素のみから構成される。そのため、当該有機化合物は、結合エネルギーが高く、化学的に安定な骨格である。有機化合物全体の結合エネルギーを高く保つためには、基本骨格に設けられる置換基は、結合エネルギーが高い置換基であることが好ましい。例えば、アミノ基のように結合エネルギーの小さい結合を有する化合物は、有機発光素子を構成する発光材料に用いた場合、素子駆動時に化合物の駆動劣化が起こりやすく、有機発光素子の耐久寿命を低減する場合がある。
下記に示す化合物A−1、A−2及びB−1を例にとると、結合安定性の低い結合とは、カルバゾール環とフェニレン基をつなぐ結合及びアミノ基とフェニル基をつなぐ結合(窒素―炭素結合)である。化合物B−1のような炭素と炭素をつなぐ結合の方が、結合安定性が高い。
Figure 2021059523
以上の通り、本発明の一実施形態に係る有機化合物は、比較化合物と比較して、色純度の高い青色を発光することができる。また、還元電位が大きいことで化学的に安定な化合物である。
本発明の一実施形態に係る有機化合物の具体例を以下に示す。しかし、本発明はこれらに限られるものではない。
Figure 2021059523
Figure 2021059523
Figure 2021059523
Figure 2021059523
Figure 2021059523
Figure 2021059523
上記例示化合物のうち、D群の例示化合物は、式(1)で表される有機化合物においてR、R、R、R16、R17、R18の少なくとも1つにシアノ基を有する、置換あるいは無置換のアリール基または複素環基を有する有機化合物である。上述した通り、電子受容性に優れ、青発光が短波長発光で青として色純度が良い。また、有機化合物の安定性が高いので、有機発光素子に用いた場合には、素子寿命が長い。式(1)におけるR、R、R、R16、R17、R18の少なくとも1つに置換基を有するため、分子全体の平面性は低く、分子間の重なりが低減されている。そのため、結晶性が低減され、濃度消光が低減され、昇華性が良好な有機化合物である。
上記例示化合物のうち、E群の例示化合物は、D群の例示化合物がC2対称であることに対して、置換基が非対称に置換され、C1対称で対称性が低い。そのため、分子全体の分子間の重なりが低減されているので、結晶性が低減され、濃度消光の低減や昇華性の向上の効果がさらに大きい。
上記例示化合物のうち、F群の例示化合物は、式(1)におけるR、R、R12、R13の少なくとも1つにシアノ基を有する置換あるいは無置換のアリール基または複素環基が設けられている。分子の長軸方向に置換基が設けられているので分子の振動子強度が高い。
上記例示化合物のうち、G群の例示化合物は、シアノ基を有する置換あるいは無置換のアリール基または複素環基が3つ以上設けられた有機化合物である。そのため、電子受容性がさらに高く、化学的に安定な有機化合物である。また、シアノ基を有する置換あるいは無置換のアリール基または複素環基の数は4以下であってよい。
シアノ基を有する前記アリール基または前記複素環基は、式(1)において、R、R、R、R16、R17、R18のいずれかにのみに設けられていてよい。シアノ基を有する前記アリール基または前記複素環基が、式(1)において、R、R、R、R16、R17、R18以外にも設けられる場合よりも、より短波な発光が得られ、色純度がさらに高い有機化合物が得られるからである。特に、R、R、R12及びR13には、シアノ基を有するアリール基またはシアノ基を有する複素環基が設けられていない構成が短波な発光を得られる。より具体的には、式(1)において、R、R、R12及びR13は、水素原子であってよい。
以上の例示化合物の他にも、本発明の一実施形態に係る有機化合物は、シアノ基を有するアリール基と、シアノ基を有する複素環基の双方を有する有機化合物であってよい。
次に、本発明の一実施形態に係る有機発光素子について説明する。
本実施形態に係る有機発光素子は、一対の電極である第一電極と第二電極と、これら電極間に配置される有機化合物層と、を少なくとも有する。本実施形態の有機発光素子において、有機化合物層は発光層を有していれば単層であってもよいし複数層からなる積層体であってもよい。一対の電極は陽極と陰極であってよい。
ここで有機化合物層が複数層からなる積層体である場合、有機化合物層は、発光層の他に、ホール注入層、ホール輸送層、電子ブロッキング層、ホール・エキシトンブロッキング層、電子輸送層、電子注入層等を有してもよい。また発光層は、単層であってもよいし、複数の層からなる積層体であってもよい。
本実施形態の有機発光素子において、上記有機化合物層の少なくとも一層に本実施形態に係る有機化合物が含有されている。具体的には、本実施形態に係る有機化合物は、上述したホール注入層、ホール輸送層、電子ブロッキング層、発光層、ホール・エキシトンブロッキング層、電子輸送層、電子注入層等のいずれかに含有されている。本実施形態の係る有機化合物は、好ましくは、発光層に含有される。
本実施形態の有機発光素子において、本実施形態に係る有機化合物が発光層に含まれる場合、発光層は、本実施形態に係る有機化合物のみからなる層であってもよいし、本実施形態に係る有機化合物である第一化合物と第一化合物と異なる第二化合物とを有する層であってもよい。ここで、発光層が第一化合物と第二化合物とを有する層である場合、第一化合物は、発光層のホストとして使用してもよいし、ゲストとして使用してもよい。また発光層に含まれ得るアシスト材料として使用してもよい。
ここでホストとは、発光層を構成する化合物の中で重量比が最も大きい化合物である。またゲストとは、発光層を構成する化合物の中で重量比がホストよりも小さい化合物であって、主たる発光を担う化合物である。またアシスト材料とは、発光層を構成する化合物の中で重量比がホストよりも小さく、ゲストの発光を補助する化合物である。尚、アシスト材料は、第2のホストとも呼ばれている。
ここで、本実施形態に係る有機化合物を発光層のゲストとして用いる場合、ゲストの濃度は、発光層全体に対して0.01重量%以上20重量%以下であることが好ましく、0.1重量%以上5.0重量%以下であることがより好ましい。
また本実施形態に係る有機化合物を発光層のゲストとして用いる際には、本実施形態に係る有機化合物よりもLUMOが高い材料(LUMOが真空準位により近い材料)をホストとして用いることが好ましい。というのも本実施形態に係る有機化合物はLUMOが低いため、本実施形態に係る有機化合物よりもLUMOが高い材料をホストにすることで、発光層のホストに供給される電子を本実施形態に係る有機化合物がより受領することができるからである。
本発明者らは種々の検討を行い、本実施形態に係る有機化合物を、発光層のホスト又はゲストとして、特に、発光層のゲストとして用いると、高効率で高輝度な光出力を呈し、かつ極めて耐久性が高い素子が得られることを見出した。この発光層は単層でも複層でも良いし、他の発光色を有する発光材料を含むことで本実施形態の発光色である青の発光と混色させることも可能である。複層とは発光層と別の発光層とが積層している状態を意味する。この場合、有機発光素子の発光色は青に限られない。より具体的には白色でもよいし、中間色でもよい。白色の場合、別の発光層が青以外の色、すなわち赤色や緑色を発光する。また、製膜方法も蒸着もしくは塗布製膜で製膜を行う。この詳細については、後述する実施例で詳しく説明する。
本実施形態に係る有機化合物は、本実施形態の有機発光素子を構成する発光層以外の有機化合物層の構成材料として使用することができる。具体的には、電子輸送層、電子注入層、ホール輸送層、ホール注入層、ホールブロッキング層等の構成材料として用いてもよい。この場合、有機発光素子の発光色は青に限られない。より具体的には白色でもよいし、中間色でもよい。
本実施形態に係る有機発光素子を製造する場合、本実施形態に係る有機化合物以外にも、必要に応じて従来公知の低分子系及び高分子系のホール注入性化合物あるいはホール輸送性化合物、ホストとなる化合物、発光性化合物、電子注入性化合物あるいは電子輸送性化合物等を一緒に使用することができる。
以下にこれらの化合物例を挙げる。
ホール注入輸送性材料としては、陽極からのホールの注入を容易にして、かつ注入されたホールを発光層へ輸送できるようにホール移動度が高い材料が好ましい。また有機発光素子中において結晶化等の膜質の劣化を低減するために、ガラス転移点温度が高い材料が好ましい。ホール注入輸送性能を有する低分子及び高分子系材料としては、トリアリールアミン誘導体、アリールカルバゾール誘導体、フェニレンジアミン誘導体、スチルベン誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、ポリ(ビニルカルバゾール)、ポリ(チオフェン)、その他導電性高分子が挙げられる。さらに上記のホール注入輸送性材料は、電子ブロッキング層にも好適に使用される。
以下に、ホール注入輸送性材料として用いられる化合物の具体例を示すが、もちろんこれらに限定されるものではない。
Figure 2021059523
正孔輸送材料としてあげた中でも、HT16乃至HT18は、陽極に接する層に用いることで駆動電圧を低減することができる。HT16は広く有機発光素子に用いられている。HT16に隣接する有機化合物層に、HT2、HT3、HT10、HT12を用いてよい。また、一つの有機化合物層に複数の材料を用いてもよい。例えば、HT2とHT4、HT3とHT10、HT8とHT9、の組み合わせを用いてよい。
主に発光機能に関わる発光材料としては、式(1)で表わされる有機化合物の他に、縮環化合物(例えばフルオレン誘導体、ナフタレン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、テトラセン誘導体、アントラセン誘導体、ルブレン等)、キナクリドン誘導体、クマリン誘導体、スチルベン誘導体、トリス(8−キノリノラート)アルミニウム等の有機アルミニウム錯体、イリジウム錯体、白金錯体、レニウム錯体、銅錯体、ユーロピウム錯体、ルテニウム錯体、及びポリ(フェニレンビニレン)誘導体、ポリ(フルオレン)誘導体、ポリ(フェニレン)誘導体等の高分子誘導体が挙げられる。
以下に、発光材料として用いられる化合物の具体例を示すが、もちろんこれらに限定されるものではない。
Figure 2021059523
Figure 2021059523
発光層に含まれる発光層ホストあるいは発光アシスト材料としては、芳香族炭化水素化合物もしくはその誘導体の他、カルバゾール誘導体、ジベンゾフラン誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体、トリス(8−キノリノラート)アルミニウム等の有機アルミニウム錯体、有機ベリリウム錯体等が挙げられる。
特に好ましくは、ホスト材料は分子骨格に、アントラセン、テトラセン、ペリレン、フルオレン、ピレン骨格を有していることが好ましい。なぜなら、上記のように炭化水素で構成されることに加え、本発明の有機化合物に十分なエネルギー移動を起こすことができるS1エネルギーを有しているからである。
以下に、発光層に含まれる発光層ホストあるいは発光アシスト材料として用いられる化合物の具体例を示すが、もちろんこれらに限定されるものではない。
Figure 2021059523
電子輸送性材料としては、陰極から注入された電子を発光層へ輸送することができるものから任意に選ぶことができ、ホール輸送性材料のホール移動度とのバランス等を考慮して選択される。電子輸送性能を有する材料としては、オキサジアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、ピラジン誘導体、トリアゾール誘導体、トリアジン誘導体、キノリン誘導体、キノキサリン誘導体、フェナントロリン誘導体、有機アルミニウム錯体、縮環化合物(例えばフルオレン誘導体、ナフタレン誘導体、クリセン誘導体、アントラセン誘導体等)が挙げられる。さらに上記の電子輸送性材料は、ホールブロッキング層にも好適に使用される。
以下に、電子輸送性材料として用いられる化合物の具体例を示すが、もちろんこれらに限定されるものではない。
Figure 2021059523
電子注入性材料としては、陰極からの電子注入が容易に可能なものから任意に選ぶことができ、正孔注入性とのバランス等を考慮して選択される。有機化合物としてn型ドーパント及び還元性ドーパントも含まれる。例えば、フッ化リチウム等のアルカリ金属を含む化合物、リチウムキノリノール等のリチウム錯体、ベンゾイミダゾリデン誘導体、イミダゾリデン誘導体、フルバレン誘導体、アクリジン誘導体があげられる。
[有機発光素子の構成]
有機発光素子は、基板の上に設けられた絶縁層上に、第一電極、有機化合物層、第二電極を形成して設けられる。第二電極の上には、保護層、カラーフィルタ等を設けてよい。カラーフィルタを設ける場合は、保護層との間に平坦化層を設けてよい。平坦化層はアクリル樹脂等で構成することができる。第一電極、第二電極はいずれかが陽極で、他方が陰極であってよい。
[基板]
基板は、石英、ガラス、シリコンウエハ、樹脂、金属等が挙げられる。また、基板上には、トランジスタなどのスイッチング素子や配線を備え、その上に絶縁層を備えてもよい。絶縁層としては、陽極2と配線の導通を確保するために、コンタクトホールを形成可能で、かつ接続しない配線との絶縁を確保できれば、材料は問わない。例えば、ポリイミド等の樹脂、酸化シリコン、窒化シリコンなどを用いることができる。
[電極]
電極は、一対の電極を用いることができる。一対の電極は、陽極と陰極であってよい。有機発光素子が発光する方向に電界を印加する場合に、電位が高い電極が陽極であり、他方が陰極である。また、発光層にホールを供給する電極が陽極であり、電子を供給する電極が陰極であるということもできる。
陽極の構成材料としては仕事関数がなるべく大きいものが良い。例えば、金、白金、銀、銅、ニッケル、パラジウム、コバルト、セレン、バナジウム、タングステン、等の金属単体やこれらを含む混合物、あるいはこれらを組み合わせた合金、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化錫インジウム(ITO)、酸化亜鉛インジウム等の金属酸化物が使用できる。またポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン等の導電性ポリマーも使用できる。
これらの電極物質は一種類を単独で使用してもよいし、二種類以上を併用して使用してもよい。また、陽極は一層で構成されていてもよく、複数の層で構成されていてもよい。
反射電極として用いる場合には、例えばクロム、アルミニウム、銀、チタン、タングステン、モリブデン、又はこれらの合金、積層したものなどを用いることができる。また、透明電極として用いる場合には、酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム亜鉛などの酸化物透明導電層などを用いることができるが、これらに限定されるものではない。電極の形成には、フォトリソグラフィ技術を用いることができる。
一方、陰極の構成材料としては仕事関数の小さなものがよい。例えばリチウム等のアルカリ金属、カルシウム等のアルカリ土類金属、アルミニウム、チタニウム、マンガン、銀、鉛、クロム等の金属単体またはこれらを含む混合物が挙げられる。あるいはこれら金属単体を組み合わせた合金も使用することができる。例えばマグネシウム−銀、アルミニウム−リチウム、アルミニウム−マグネシウム、銀−銅、亜鉛−銀等が使用できる。酸化錫インジウム(ITO)等の金属酸化物の利用も可能である。これらの電極物質は一種類を単独で使用してもよいし、二種類以上を併用して使用してもよい。また陰極は一層構成でもよく、多層構成でもよい。中でも銀を用いることが好ましく、銀の凝集を抑制するため、銀合金とすることがさらに好ましい。銀の凝集が抑制できれば、合金の比率は問わない。例えば、1:1であってよい。
陰極は、ITOなどの酸化物導電層を使用してトップエミッション素子としてもよいし、アルミニウム(Al)などの反射電極を使用してボトムエミッション素子としてもよいし、特に限定されない。陰極の形成方法としては、特に限定されないが、直流及び交流スパッタリング法などを用いると、膜のカバレッジがよく、抵抗を下げやすいためより好ましい。
[保護層]
陰極の上に、保護層を設けてもよい。例えば、陰極上に吸湿剤を設けたガラスを接着することで、有機化合物層に対する水等の浸入を低減し、表示不良の発生を低減することができる。また、別の実施形態としては、陰極上に窒化ケイ素等のパッシベーション膜を設け、有機EL層に対する水等の浸入を低減してもよい。例えば、陰極を形成後に真空を破らずに別のチャンバーに搬送し、CVD法で厚さ2μmの窒化ケイ素膜を形成することで、保護層としてもよい。CVD法の成膜の後で原子堆積法(ALD法)を用いた保護層を設けてもよい。
[カラーフィルタ]
保護層の上にカラーフィルタを設けてもよい。例えば、有機発光素子のサイズを考慮したカラーフィルタを別の基板上に設け、それと有機発光素子を設けた基板と貼り合わせてもよいし、上記で示した保護層上にフォトリソグラフィ技術を用いて、カラーフィルタをパターニングしてもよい。カラーフィルタは、高分子で構成されてよい。
[平坦化層]
カラーフィルタと保護層との間に平坦化層を有してもよい。平坦化層は有機化合物で構成されてよく、低分子であっても、高分子であってもよいが、高分子であることが好ましい。
平坦化層は、カラーフィルタの上下に設けられてもよく、その構成材料は同じであっても異なってもよい。具体的には、ポリビニルカルバゾール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、尿素樹脂等があげられる。
[対向基板]
平坦化層の上には、対向基板を有してよい。対向基板は、前述の基板と対応する位置に設けられるため、対向基板と呼ばれる。対向基板の構成材料は、前述の基板と同じであってよい。対向基板は、前述の基板を第一基板とした場合、第二基板であってよい。
[有機層]
本発明の一実施形態に係る有機発光素子を構成する有機化合物層(正孔注入層、正孔輸送層、電子阻止層、発光層、正孔阻止層、電子輸送層、電子注入層等)は、以下に示す方法により形成される。
本発明の一実施形態に係る有機発光素子を構成する有機化合物層は、真空蒸着法、イオン化蒸着法、スパッタリング、プラズマ等のドライプロセスを用いることができる。またドライプロセスに代えて、適当な溶媒に溶解させて公知の塗布法(例えば、スピンコーティング、ディッピング、キャスト法、LB法、インクジェット法等)により層を形成するウェットプロセスを用いることもできる。
ここで真空蒸着法や溶液塗布法等によって層を形成すると、結晶化等が起こりにくく経時安定性に優れる。また塗布法で成膜する場合は、適当なバインダー樹脂と組み合わせて膜を形成することもできる。
上記バインダー樹脂としては、ポリビニルカルバゾール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、尿素樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、これらバインダー樹脂は、ホモポリマー又は共重合体として一種類を単独で使用してもよいし、二種類以上を混合して使用してもよい。さらに必要に応じて、公知の可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の添加剤を併用してもよい。
[有機発光素子の構成]
有機発光素子は、基板の上に、陽極、有機化合物層、陰極を形成して設けられる。陰極の上には、保護層、カラーフィルタ等を設けてよい。カラーフィルタを設ける場合は、保護層との間に平坦化層を設けてよい。平坦化層はアクリル樹脂等で構成することができる。
[基板]
基板は、石英、ガラス、シリコンウエハ、樹脂、金属等が挙げられる。また、基板上には、トランジスタなどのスイッチング素子や配線を備え、その上に絶縁層を備えてもよい。絶縁層としては、陽極2と配線の導通を確保するために、コンタクトホールを形成可能で、かつ接続しない配線との絶縁を確保できれば、材料は問わない。例えば、ポリイミド等の樹脂、酸化シリコン、窒化シリコンなどを用いることができる。
[電極]
電極は、一対の電極を用いることができる。一対の電極は、陽極と陰極であってよい。有機発光素子が発光する方向に電界を印加する場合に、電位が高い電極が陽極であり、他方が陰極である。また、発光層にホールを供給する電極が陽極であり、電子を供給する電極が陰極であるということもできる。
陽極の構成材料としては仕事関数がなるべく大きいものが良い。例えば、金、白金、銀、銅、ニッケル、パラジウム、コバルト、セレン、バナジウム、タングステン、等の金属単体やこれらを含む混合物、あるいはこれらを組み合わせた合金、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化錫インジウム(ITO)、酸化亜鉛インジウム等の金属酸化物が使用できる。またポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン等の導電性ポリマーも使用できる。
これらの電極物質は一種類を単独で使用してもよいし、二種類以上を併用して使用してもよい。また、陽極は一層で構成されていてもよく、複数の層で構成されていてもよい。
反射電極として用いる場合には、例えばクロム、アルミニウム、銀、チタン、タングステン、モリブデン、又はこれらの合金、積層したものなどを用いることができる。また、透明電極として用いる場合には、酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム亜鉛などの酸化物透明導電層などを用いることができるが、これらに限定されるものではない。電極の形成には、フォトリソグラフィ技術を用いることができる。
一方、陰極の構成材料としては仕事関数の小さなものがよい。例えばリチウム等のアルカリ金属、カルシウム等のアルカリ土類金属、アルミニウム、チタニウム、マンガン、銀、鉛、クロム等の金属単体またはこれらを含む混合物が挙げられる。あるいはこれら金属単体を組み合わせた合金も使用することができる。例えばマグネシウム−銀、アルミニウム−リチウム、アルミニウム−マグネシウム、銀−銅、亜鉛−銀等が使用できる。酸化錫インジウム(ITO)等の金属酸化物の利用も可能である。これらの電極物質は一種類を単独で使用してもよいし、二種類以上を併用して使用してもよい。また陰極は一層構成でもよく、多層構成でもよい。中でも銀を用いることが好ましく、銀の凝集を抑制するため、銀合金とすることがさらに好ましい。銀の凝集が抑制できれば、合金の比率は問わない。例えば、1:1であってよい。
陰極は、ITOなどの酸化物導電層を使用してトップエミッション素子としてもよいし、アルミニウム(Al)などの反射電極を使用してボトムエミッション素子としてもよいし、特に限定されない。陰極の形成方法としては、特に限定されないが、直流及び交流スパッタリング法などを用いると、膜のカバレッジがよく、抵抗を下げやすいためより好ましい。
[保護層]
陰極の上に、保護層を設けてもよい。例えば、陰極上に吸湿剤を設けたガラスを接着することで、有機化合物層に対する水等の浸入を低減し、表示不良の発生を低減することができる。また、別の実施形態としては、陰極上に窒化ケイ素等のパッシベーション膜を設け、有機EL層に対する水等の浸入を低減してもよい。例えば、陰極を形成後に真空を破らずに別のチャンバーに搬送し、CVD法で厚さ2μmの窒化ケイ素膜を形成することで、保護層としてもよい。CVD法の成膜の後で原子堆積法(ALD法)を用いた保護層を設けてもよい。
[カラーフィルタ]
保護層の上にカラーフィルタを設けてもよい。例えば、有機発光素子のサイズを考慮したカラーフィルタを別の基板上に設け、それと有機発光素子を設けた基板と貼り合わせてもよいし、上記で示した保護層上にフォトリソグラフィ技術を用いて、カラーフィルタをパターニングしてもよい。カラーフィルタは、高分子で構成されてよい。
[平坦化層]
カラーフィルタと保護層との間に平坦化層を有してもよい。平坦化層は有機化合物で構成されてよく、低分子であっても、高分子であってもよいが、高分子であることが好ましい。
平坦化層は、カラーフィルタの上下に設けられてもよく、その構成材料は同じであっても異なってもよい。具体的には、ポリビニルカルバゾール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、尿素樹脂等があげられる。
[対向基板]
平坦化層の上には、対向基板を有してよい。対向基板は、前述の基板と対応する位置に設けられるため、対向基板と呼ばれる。対向基板の構成材料は、前述の基板と同じであってよい。対向基板は、前述の基板を第一基板とした場合、第二基板であってよい。
[有機層]
本発明の一実施形態に係る有機発光素子を構成する有機化合物層(正孔注入層、正孔輸送層、電子阻止層、発光層、正孔阻止層、電子輸送層、電子注入層等)は、以下に示す方法により形成される。
本発明の一実施形態に係る有機発光素子を構成する有機化合物層は、真空蒸着法、イオン化蒸着法、スパッタリング、プラズマ等のドライプロセスを用いることができる。またドライプロセスに代えて、適当な溶媒に溶解させて公知の塗布法(例えば、スピンコーティング、ディッピング、キャスト法、LB法、インクジェット法等)により層を形成するウェットプロセスを用いることもできる。
ここで真空蒸着法や溶液塗布法等によって層を形成すると、結晶化等が起こりにくく経時安定性に優れる。また塗布法で成膜する場合は、適当なバインダー樹脂と組み合わせて膜を形成することもできる。
上記バインダー樹脂としては、ポリビニルカルバゾール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、尿素樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、これらバインダー樹脂は、ホモポリマー又は共重合体として一種類を単独で使用してもよいし、二種類以上を混合して使用してもよい。さらに必要に応じて、公知の可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の添加剤を併用してもよい。
[本発明の一実施形態に係る有機発光素子の用途]
本発明の一実施形態に係る有機発光素子は、表示装置や照明装置の構成部材として用いることができる。他にも、電子写真方式の画像形成装置の露光光源や液晶表示装置のバックライト、白色光源にカラーフィルタを有する発光装置等の用途がある。
表示装置は、エリアCCD、リニアCCD、メモリーカード等からの画像情報を入力する画像入力部を有し、入力された情報を処理する情報処理部を有し、入力された画像を表示部に表示する画像情報処理装置でもよい。
また、撮像装置やインクジェットプリンタが有する表示部は、タッチパネル機能を有していてもよい。このタッチパネル機能の駆動方式は、赤外線方式でも、静電容量方式でも、抵抗膜方式であっても、電磁誘導方式であってもよく、特に限定されない。また表示装置はマルチファンクションプリンタの表示部に用いられてもよい。
次に、図面を参照しながら本実施形態に係る表示装置について説明する。
図2(a)は、本実施形態に係る表示装置を構成する画素の一例の断面模式図である。画素は、副画素10を有している。副画素はその発光により、10R、10G、10Bに分けられている。発光色は、発光層から発光される波長で区別されても、副画素から出射する光がカラーフィルタ等により、選択的透過または色変換が行われてもよい。それぞれの副画素は、層間絶縁層1の上に第一電極である反射電極2、反射電極2の端を覆う絶縁層3、第一電極と絶縁層とを覆う有機化合物層4、透明電極5、保護層6、カラーフィルタ7を有している。
層間絶縁層1は、その下層または内部にトランジスタ、容量素子を配されていてよい。トランジスタと第一電極は不図示のコンタクトホール等を介して電気的に接続されていてよい。
絶縁層3は、バンク、画素分離膜とも呼ばれる。第一電極の端を覆っており、第一電極を囲って配されている。絶縁層の配されていない部分が、有機化合物層4と接し、発光領域となる。
有機化合物層4は、正孔注入層41、正孔輸送層42、第一発光層43、第二発光層44、電子輸送層45を有する。
第二電極5は、透明電極であっても、反射電極であっても、半透過電極であってもよい。
保護層6は、有機化合物層に水分が浸透することを低減する。保護層は、一層のように図示されているが、複数層であってよい。層ごとに無機化合物層、有機化合物層があってよい。
カラーフィルタ7は、その色により7R、7G、7Bに分けられる。カラーフィルタは、不図示の平坦化膜上に形成されてよい。また、カラーフィルタ上に不図示の樹脂保護層を有してよい。また、カラーフィルタは、保護層6上に形成されてよい。またはガラス基板等の対向基板上に設けられた後に、貼り合わせられてよい。
図2(b)は、有機発光素子とこの有機発光素子に接続されるトランジスタとを有する表示装置の例を示す断面模式図である。トランジスタは、能動素子の一例である。トランジスタは薄膜トランジスタ(TFT)であってもよい。
図2(b)の表示装置100は、ガラス、シリコン等の基板11とその上部に絶縁層12が設けられている。絶縁層の上には、TFT等の能動素子18が配されており、能動素子のゲート電極13、ゲート絶縁膜14、半導体層15が配置されている。TFT18は、他にも半導体層15とドレイン電極16とソース電極17とで構成されている。TFT18の上部には絶縁膜19が設けられている。絶縁膜に設けられたコンタクトホール20を介して有機発光素子を構成する陽極21とソース電極17とが接続されている。
なお、有機発光素子に含まれる電極(陽極、陰極)とTFTに含まれる電極(ソース電極、ドレイン電極)との電気接続の方式は、図1(b)に示される態様に限られるものではない。つまり陽極又は陰極のうちいずれか一方とTFTソース電極またはドレイン電極のいずれか一方とが電気接続されていればよい。TFTは、薄膜トランジスタを指す。
図2(b)の表示装置100では有機化合物層を1つの層の如く図示をしているが、有機化合物層22は、複数層であってもよい。陰極23の上には有機発光素子の劣化を低減するための第一の保護層24や第二の保護層25が設けられている。
図2(b)の表示装置100ではスイッチング素子としてトランジスタを使用しているが、これに代えて他のスイッチング素子として用いてもよい。
また図2(b)の表示装置100に使用されるトランジスタは、単結晶シリコンウエハを用いたトランジスタに限らず、基板の絶縁性表面上に活性層を有する薄膜トランジスタでもよい。活性層として、単結晶シリコン、アモルファスシリコン、微結晶シリコンなどの非単結晶シリコン、インジウム亜鉛酸化物、インジウムガリウム亜鉛酸化物等の非単結晶酸化物半導体が挙げられる。なお、薄膜トランジスタはTFT素子とも呼ばれる。
図2(b)の表示装置100に含まれるトランジスタは、Si基板等の基板内に形成されていてもよい。ここで基板内に形成されるとは、Si基板等の基板自体を加工してトランジスタを作製することを意味する。つまり、基板内にトランジスタを有することは、基板とトランジスタとが一体に形成されていると見ることもできる。
本実施形態に係る有機発光素子はスイッチング素子の一例であるTFTにより発光輝度が制御され、有機発光素子を複数面内に設けることでそれぞれの発光輝度により画像を表示することができる。なお、本実施形態に係るスイッチング素子は、TFTに限られず、低温ポリシリコンで形成されているトランジスタ、Si基板等の基板上に形成されたアクティブマトリクスドライバーであってもよい。基板上とは、その基板内ということもできる。基板内にトランジスタを設けるか、TFTを用いるかは、表示部の大きさによって選択され、例えば0.5インチ程度の大きさであれば、Si基板上に有機発光素子を設けることが好ましい。
図3は、本実施形態に係る表示装置の一例を表す模式図である。表示装置1000は、上部カバー1001と、下部カバー1009と、の間に、タッチパネル1003、表示パネル1005、フレーム1006、回路基板1007、バッテリー1008、を有してよい。タッチパネル1003及び表示パネル1005は、フレキシブルプリント回路FPC1002、1004が接続されている。回路基板1007には、トランジスタがプリントされている。バッテリー1008は、表示装置が携帯機器でなければ、設けなくてもよいし、携帯機器であっても、別の位置に設けてもよい。
本実施形態に係る表示装置は、赤色、緑色、青色を有するカラーフィルタを有してよい。カラーフィルタは、当該赤色、緑色、青色がデルタ配列で配置されてよい。
本実施形態に係る表示装置は、携帯端末の表示部に用いられてもよい。その際には、表示機能と操作機能との双方を有してもよい。携帯端末としては、スマートフォン等の携帯電話、タブレット、ヘッドマウントディスプレイ等が挙げられる。
本実施形態に係る表示装置は、複数のレンズを有する光学部と、当該光学部を通過した光を受光する撮像素子とを有する撮像装置の表示部に用いられてよい。撮像装置は、撮像素子が取得した情報を表示する表示部を有してよい。また、表示部は、撮像装置の外部に露出した表示部であっても、ファインダ内に配置された表示部であってもよい。撮像装置は、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラであってよい。撮像装置は、光電変換装置と呼ぶこともできる。
図4(a)は、本実施形態に係る撮像装置の一例を表す模式図である。撮像装置1100は、ビューファインダ1101、背面ディスプレイ1102、操作部1103、筐体1104を有してよい。ビューファインダ1101は、本実施形態に係る表示装置を有してよい。その場合、表示装置は、撮像する画像のみならず、環境情報、撮像指示等を表示してよい。環境情報には、外光の強度、外光の向き、被写体の動く速度、被写体が遮蔽物に遮蔽される可能性等であってよい。
撮像に好適なタイミングはわずかな時間なので、少しでも早く情報を表示した方がよい。したがって、本発明の有機発光素子を用いた表示装置を用いるのが好ましい。有機発光素子は応答速度が速いからである。有機発光素子を用いた表示装置は、表示速度が求められる、これらの装置、液晶表示装置よりも好適に用いることができる。
撮像装置1100は、不図示の光学部を有する。光学部は複数のレンズを有し、筐体1104内に収容されている撮像素子に結像する。複数のレンズは、その相対位置を調整することで、焦点を調整することができる。この操作を自動で行うこともできる。
図4(b)は、本実施形態に係る電子機器の一例を表す模式図である。電子機器1200は、表示部1201と、操作部1202と、筐体1203を有する。筐体1203には、回路、当該回路を有するプリント基板、バッテリー、通信部、を有してよい。操作部1202は、ボタンであってもよいし、タッチパネル方式の反応部であってもよい。操作部は、指紋を認識してロックの解除等を行う、生体認識部であってもよい。通信部を有する電子機器は通信機器ということもできる。電子機器は、レンズと、撮像素子とを備えることでカメラ機能をさらに有してよい。カメラ機能により撮像された画像が表示部に映される。電子機器としては、スマートフォン、ノートパソコン等があげられる。
図5は、本実施形態に係る表示装置の一例を表す模式図である。図5(a)は、テレビモニタやPCモニタ等の表示装置である。表示装置1300は、額縁1301を有し表示部1302を有する。表示部1302には、本実施形態に係る発光装置が用いられてよい。
額縁1301と、表示部1302を支える土台1303を有している。土台1303は、図5(a)の形態に限られない。額縁1301の下辺が土台を兼ねてもよい。
また、額縁1301及び表示部1302は、曲がっていてもよい。その曲率半径は、5000mm以上6000mm以下であってよい。
図5(b)は本実施形態に係る表示装置の他の例を表す模式図である。図5(b)の表示装置1310は、折り曲げ可能に構成されており、いわゆるフォルダブルな表示装置である。表示装置1310は、第一表示部1311、第二表示部1312、筐体1313、屈曲点1314を有する。第一表示部1311と第二表示部1312とは、本実施形態に係る発光装置を有してよい。第一表示部1311と第二表示部1312とは、つなぎ目のない1枚の表示装置であってよい。第一表示部1311と第二表示部1312とは、屈曲点で分けることができる。第一表示部1311、第二表示部1312は、それぞれ異なる画像を表示してもよいし、第一及び第二表示部とで一つの画像を表示してもよい。
図6(a)は、本実施形態に係る照明装置の一例を表す模式図である。照明装置1400は、筐体1401と、光源1402と、回路基板1403と、光学フィルム1404と、光拡散部1405と、を有してよい。光源は、本実施形態に係る有機発光素子を有してよい。光学フィルタは光源の演色性を向上させるフィルタであってよい。光拡散部は、ライトアップ等、光源の光を効果的に拡散し、広い範囲に光を届けることができる。光学フィルタ、光拡散部は、照明の光出射側に設けられてよい。必要に応じて、最外部にカバーを設けてもよい。
照明装置は例えば室内を照明する装置である。照明装置は白色、昼白色、その他青から赤のいずれの色を発光するものであってよい。それらを調光する調光回路を有してよい。照明装置は本発明の有機発光素子とそれに接続される電源回路を有してよい。電源回路は、交流電圧を直流電圧に変換する回路である。また、白とは色温度が4200Kで昼白色とは色温度が5000Kである。照明装置はカラーフィルタを有してもよい。
また、本実施形態に係る照明装置は、放熱部を有していてもよい。放熱部は装置内の熱を装置外へ放出するものであり、比熱の高い金属、液体シリコン等が挙げられる。
図6(b)は、本実施形態に係る移動体の一例である自動車の模式図である。当該自動車は灯具の一例であるテールランプを有する。自動車1500は、テールランプ1501を有し、ブレーキ操作等を行った際に、テールランプを点灯する形態であってよい。
テールランプ1501は、本実施形態に係る有機発光素子を有してよい。テールランプは、有機EL素子を保護する保護部材を有してよい。保護部材はある程度高い強度を有し、透明であれば材料は問わないが、ポリカーボネート等で構成されることが好ましい。ポリカーボネートにフランジカルボン酸誘導体、アクリロニトリル誘導体等を混ぜてよい。
自動車1500は、車体1503、それに取り付けられている窓1502を有してよい。窓は、自動車の前後を確認するための窓でなければ、透明なディスプレイであってもよい。当該透明なディスプレイは、本実施形態に係る有機発光素子を有してよい。この場合、有機発光素子が有する電極等の構成材料は透明な部材で構成される。
本実施形態に係る移動体は、船舶、航空機、ドローン等であってよい。移動体は、機体と当該機体に設けられた灯具を有してよい。灯具は、機体の位置を知らせるための発光をしてよい。灯具は本実施形態に係る有機発光素子を有する。
以上説明した通り、本実施形態に係る有機発光素子を用いた装置を用いることにより、良好な画質で、長時間表示にも安定な表示が可能になる。
以下、実施例により本発明を説明する。ただし本発明はこれらに限定されるものではない。実施例中では、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)をPd(dba)、トリシクロヘキシルホスフィンをP(Cy)、N−クロロスクシンイミドをNCS、N,N−ジメチルホルムアミドをDMF、ジメチルスルホキシドをDMSO、ジメチルアセトアミドをDMAc、ジアザビシクロウンデセンをDBUと略記することがある。
[実施例1(例示化合物D−4の合成)]
Figure 2021059523
(1)化合物E3の合成
500mlのナスフラスコに、以下に示す試薬、溶媒を仕込んだ。
化合物E1:7.23g(25.1mmol)
化合物E2:5.00g(22.8mmol)
Pd(PPh:790mg(1.14mmol)
炭酸ナトリウム:9.66g(91.2mmol)
トルエン:200ml
エタノール:100ml
水:100ml
次に、反応溶液を、窒素気流下で90℃に加熱し、この温度(90℃)で5時間攪拌を行った。反応終了後、トルエンと水で抽出を行った後、濃縮し、これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘプタン:トルエン=1:1)にて精製後、メタノールで分散洗浄を行うことにより、白色の化合物E3を5.5g(収率:80%)得た。
(2)化合物E4の合成
200mlのナスフラスコに、以下に示す試薬、溶媒を仕込んだ。
(メトキシメチル)トリフェニルホスホニウムクロリド:12.8g(41.5mmol)
テトラヒドロフラン:50ml
次に、反応溶液を、窒素気流下で、以下に示す試薬を室温でゆっくり滴下投入した。
t−ブトキシカリウム[1.0Mテトラヒドロフラン溶液]
次に、反応溶液をこの温度(室温)で1時間攪拌後、以下の混合溶液を室温でゆっくり滴下した。
化合物E3:5.0g(16.6mmol)
テトラヒドロフラン:50ml
反応終了後、トルエンと水で抽出を行った後、濃縮し、これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘプタン:トルエン=1:1)にて精製後、メタノールで分散洗浄を行うことにより、白色の化合物E4を4.48g(収率:82%)得た。
(3)化合物E5の合成
200mlのナスフラスコに、以下に示す試薬、溶媒を仕込んだ。
化合物E4:4.00g(12.1mmol)
ジクロロメタン:100ml
次に、反応溶液を、窒素気流下で0℃に冷却し、以下に示す試薬を滴下投入した。
メタンスルホン酸:1.75g(18.2mmol)
次に、反応溶液を室温で3時間攪拌を行った。反応終了後、メタノール50mlを投入し0℃で30分撹拌した。その後、ろ過し、水とメタノールで洗浄することにより、白色の化合物E4を3.09g(収率:86%)得た。
(4)化合物E6の合成
500mlのナスフラスコに、以下に示す試薬、溶媒を仕込んだ。
化合物E5:3.00g(10.1mmol)
ビスピナコールボラン:10.3g(40.4mmol)
Pd(dba):580mg(1.01mmol)
P(Cy):850mg(3.03mmol)
酢酸カリウム:3.96mg(40.4mmol)
オルトキシレン:300ml
次に、反応溶液を、窒素気流下で150℃に加熱し、この温度(150℃)で7時間攪拌を行った。反応終了後、セライトろ過を行い、濃縮し、ヘプタンで分散洗浄を行うことにより、白色の化合物E6を3.93g(収率:81%)得た。
(5)化合物E7の合成
500mlのナスフラスコに、以下に示す試薬、溶媒を仕込んだ。
化合物E6:3.8g(7.91mmol)
NCS:5.28g(39.6mmol)
メタンスルホン酸:227mg(2.37mmol)
DMF:380ml
次に、反応溶液を、窒素気流下で65℃に加熱し、この温度(65℃)で7時間攪拌を行った。反応終了後、ろ過した。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン)にて精製後、ヘプタンで分散洗浄を行うことにより、白色の化合物E7を2.17g(収率:50%)得た。
(6)化合物E9の合成
200mlのナスフラスコに、以下に示す試薬、溶媒を仕込んだ。
化合物E7:2.00g(3.64mmol)
化合物E8:4.17g(14.6mmol)
Pd(PPhCl:128mg(0.18mmol)
炭酸ナトリウム:1.54g(14.6mmol)
DMSO:100ml
次に、反応溶液を、窒素気流下で90℃に加熱し、この温度(90℃)で5時間攪拌を行った。反応終了後、メタノール100mlを投入し室温で30分撹拌した。その後、ろ過した。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘプタン:クロロベンゼン=3:1)にて精製後、メタノールで分散洗浄を行うことにより、白色の化合物E9を1.24g(収率:48%)得た。
(7)化合物E10の合成
100mlのナスフラスコに、以下に示す試薬、溶媒を仕込んだ。
化合物E9:1.00g(1.41mmol)
Pd(dba):81mg(0.14mmol)
P(Cy):119mg(0.42mmol)
酢酸カリウム:415mg(4.23mmol)
DMAc:50ml
次に、反応溶液を、窒素気流下で170℃に加熱し、この温度(170℃)で2時間攪拌を行った。反応終了後、ろ過した。これをヘプタン/トルエンで分散洗浄を行うことにより、濃緑色の化合物E11を523mg(収率:68%)得た。
(8)例示化合物D−4の合成
200mlのナスフラスコに、以下に示す試薬、溶媒を仕込んだ。
化合物E10:100mg(0.18mmol)
化合物E11:96mg(0.60mmol)
Pd(OAc):4mg(0.02mmol)
s−phos:18mg(0.05mmol)
炭酸カリウム:149g(1.08mmol)
DMSO:10ml
次に、反応溶液を、窒素気流下で100℃に加熱し、この温度(100℃)で6時間攪拌を行った。反応終了後、メタノール100mlを投入し室温で30分撹拌した。その後、ろ過した。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロベンゼン)にて精製後、ヘプタン/トルエンで分散洗浄を行うことにより、黄色の例示化合物D−4を82mg(収率:65%)得た。
例示化合物D−4の1×10−5mol/Lにおけるトルエン溶液の発光スペクトルは、日立製F−4500を用いて、350nmの励起波長においてフォトルミネッセンスの測定を行った結果、441nmに最大強度を有するスペクトルを得た。
なお、例示化合物Aは、MALDI−TOF−MS(Bruker社製Autoflex LRF)を用いて質量分析を行った。
[MALDI−TOF−MS]
実測値:m/z=706 計算値:C5430=706
[実施例2(例示化合物D−26の合成)]
Figure 2021059523
(1)化合物E14の合成
実施例1と同様にして、E1を下記E12に、E2を下記原料13に変えた他は実施例1と同様にして中間体E14を合成した。E12からE14への反応は、実施例1と同様であるため、中間体の記載を省略して矢印のみの記載とした。
(2)化合物E16の合成
500mlのナスフラスコに、以下に示す試薬、溶媒を仕込んだ。
化合物E14:3.6g(10.0mmol)
ナトリウムエタンチオラート:3.36g(40.0mmol)
DMF:280ml
次に、反応溶液を、窒素気流下で60℃に加熱し、この温度で7時間攪拌を行った。反応終了後、塩化アンモニア水溶液を加え、ろ過した。これを水100mlで分散洗浄を行うことにより、白色の化合物E16を2.46g(収率:75%)得た。
(3)化合物E17の合成
500mlのナスフラスコに、以下に示す試薬、溶媒を仕込んだ。
化合物E16:2.4g(7.29mmol)
トリフルオロメタンスルホン酸無水物:4.78ml(29.1mmol)
ピリジン:3.5ml
塩化メチレン:240ml
次に、反応溶液を、氷冷下でトリフルオロメタンスルホン酸無水物:4.78ml(29.1mmol)を滴下し、室温下、2時間攪拌を行った。反応終了後、氷水200mlを追加し、有機層の抽出を行った。有機層を濃縮し、これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン、ヘプタン混合)にて精製することにより、白色の化合物E17を3.54g(収率:82%)得た。
(4)化合物E18の合成
500mlのナスフラスコに、以下に示す試薬、溶媒を仕込んだ。
化合物E17:3.5g(6.37mmol)
ビスピナコールボラン:9.71g(38.2mmol)
Pd(dppf)Cl:453mg(0.637mmol)
酢酸カリウム:2.50g(25.5mmol)
ジオキサン:200ml
次に、反応溶液を、窒素気流下で100℃に加熱し、この温度で7時間攪拌を行った。反応終了後、セライトろ過を行い、濃縮し、ヘプタンで分散洗浄を行うことにより、灰色色の化合物E18を3.18g(収率:91%)得た。
(5)化合物E20の合成
200mlのナスフラスコに、以下に示す試薬、溶媒を仕込んだ。
化合物E18:2.00g(2.83mmol)
化合物E19:2.43g(8.48mmol)
Pd(PPhCl:199mg(0.28mmol)
炭酸ナトリウム:1.80g(17.0mmol)
DMSO:100ml
次に、反応溶液を、窒素気流下で90℃に加熱し、この温度で5時間攪拌を行った。反応終了後、水100mlを投入し室温で30分撹拌した。その後、ろ過した。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘプタン:クロロベンゼン混合)にて精製後、メタノールで分散洗浄を行うことにより、黄色の化合物E20を0.76g(収率:38%)得た。
(6)化合物E21の合成
100mlのナスフラスコに、以下に示す試薬、溶媒を仕込んだ。
化合物E20:0.75g(1.06mmol)
Pd(PPhCl:77mg(0.11mmol)
DBU:5.0ml
DMAc:50ml
次に、反応溶液を、窒素気流下で170℃に加熱し、この温度(170℃)で2時間攪拌を行った。反応終了後、ろ過した。これをヘプタン/トルエンで分散洗浄を行うことにより、濃緑色の化合物E21を417mg(収率:72%)得た。
(7)例示化合物D−26の合成
500mlのナスフラスコに、以下に示す試薬、溶媒を仕込んだ。
化合物E21:400mg(0.18mmol)
化合物E22:106mg(0.54mmol)
Pd(OAc):4mg(0.02mmol)
s−phos:18mg(0.05mmol)
リン酸カリウム:0.458g(2.16mmol)
キシレン:200ml
水:20ml
次に、反応溶液を、窒素気流下で120℃に加熱し、この温度で7時間攪拌を行った。反応終了後、ろ過した。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン)にて精製後、ヘプタンで分散洗浄を行うことにより、黄色の例示化合物D−26を42mg(収率:30%)得た。
例示化合物D−26の1×10−5mol/Lにおけるトルエン溶液の発光スペクトルは、日立製F−4500を用いて、350nmの励起波長においてフォトルミネッセンスの測定を行った結果、443nmに最大強度を有するスペクトルを得た。
また、MALDI−TOF−MS(Bruker社製Autoflex LRF)を用いて質量分析を行った。
[MALDI−TOF−MS]
実測値:m/z=778 計算値:C6030=778
[実施例3(例示化合物E−4の合成)]
Figure 2021059523
実施例2におけるE12をE23に、E13をE24に変えた他は実施例2を参考にして例示化合物E−4を合成した。また、実施例1と同様にして測定した質量分析結果の実測値は706m/zを示した。
[実施例4(例示化合物D−52の合成)]
Figure 2021059523
実施例2の中間体E21を用いて、例示化合物D−52を合成した。
(1)化合物E29の合成
500mlのナスフラスコに、以下に示す試薬、溶媒を仕込んだ。
化合物E21:400mg(0.18mmol)
化合物E28:62mg(0.36mmol)
Pd(OAc):4mg(0.02mmol)
s−phos:18mg(0.05mmol)
リン酸カリウム:0.229g(1.08mmol)
キシレン:200ml
水:20ml
次に、反応溶液を、窒素気流下で120℃に加熱し、この温度で5時間攪拌を行った。反応終了後、ろ過した。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン)にて精製後、ヘプタンで分散洗浄を行うことにより、黄色の化合物E29を48mg(収率:42%)得た。
(2)例示化合物D−52の合成
50mlのナスフラスコに、以下に示す試薬、溶媒を仕込んだ。
化合物E29:46mg(0.072mmol)
化合物E30:43mg(0.28mmol)
Pd(OAc):2mg(0.010mmol)
s−phos:11mg(0.03mmol)
リン酸カリウム:0.115g(0.54mmol)
キシレン:20ml
水:2ml
次に、反応溶液を、窒素気流下で120℃に加熱し、この温度で5時間攪拌を行った。反応終了後、ろ過した。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン)にて精製後、ヘプタンで分散洗浄を行うことにより、黄色の例示化合物D−52を19mg(収率:38%)得た。
例示化合物E−52の1×10−5mol/Lにおけるトルエン溶液の発光スペクトルは、日立製F−4500を用いて、350nmの励起波長においてフォトルミネッセンスの測定を行った結果、443nmに最大強度を有するスペクトルを得た。
また、MALDI−TOF−MS(Bruker社製Autoflex LRF)を用いて質量分析を行った。
[MALDI−TOF−MS]
実測値:m/z=706 計算値:C5430=706
[実施例5(例示化合物D−54の合成)]
実施例4におけるE25をE29に、E28をE30に変えた他は実施例4を同様にして例示化合物D−54を合成した。また、実施例1と同様にして測定した質量分析結果の実測値は748m/zを示した。
Figure 2021059523
[実施例6(例示化合物D−56の合成)]
実施例4におけるE25をE31に、E28をE32に変えた他は実施例4を同様にして例示化合物D−54を合成した。また、実施例1と同様にして測定した質量分析結果の実測値は692m/zを示した。
Figure 2021059523
[実施例7乃至13(例示化合物の合成)]
本実施例において、実施例1または2における原料を表2に記載の原料1乃至4に記載の原料を用いた以外は同様に例示化合物を合成した。具体的には、実施例1のE1は原料1に記載の原料、E2は原料2に記載の原料、E8は原料3に記載の原料、E11は原料4に記載の原料を用いた。また、実施例2のE12は原料1に記載の原料、E13は原料2に記載の原料、E19は原料3に記載の原料、E22は原料4に記載の原料を用いた。実施例1と同様にして測定した質量分析結果の実測値:m/zを示す。
Figure 2021059523
Figure 2021059523
Figure 2021059523
[実施例28]
本実施例では、表3に示す構成の有機発光素子を作製した。具体的には、絶縁層上に、陽極、正孔注入層、正孔輸送層、電子ブロッキング層、発光層、正孔ブロッキング層、電子輸送層、電子注入層、陰極が順次形成されたボトムエミッション型構造の有機発光素子を作製した。
まずガラス基板上にITOを成膜し、所望のパターニング加工を施すことによりITO電極(陽極)を形成した。この時、ITO電極の膜厚を100nmとした。このようにITO電極が形成された基板をITO基板として、以下の工程で使用した。
次に、真空チャンバー内における抵抗加熱による真空蒸着を行って、上記ITO基板上に、下記表3に示す有機化合物層及び電極層を連続成膜した。なお、この時、対向する電極(金属電極層、陰極)の電極面積が3mmとなるようにした。
Figure 2021059523
得られた素子について、素子の特性を測定・評価した。発光素子の最大発光波長は445nmであり、最大外部量子効率(E.Q.E.)は4.9%、色度は(X,Y)=(0.14、0.07)の色純度の高い青色発光が得られた。測定装置は、具体的には電流電圧特性をヒューレッドパッカード社製・微小電流計4140Bで測定し、発光輝度は、トプコン社製BM7で測定した。さらに、電流密度80mA/cmでの連続駆動試験を行い、輝度劣化率が5%に達した時の時間を測定したところ、100時間を越えた。測定の結果は、以下の実施例29乃至43と併せて、表4に示す。
[実施例29乃至43、比較例1、比較例2]
実施例28において、表4に示される化合物に適宜変更する以外は、実施例28と同様の方法により有機発光素子を作製した。得られた素子について実施例14と同様に素子の特性を測定・評価した。測定の結果を表4に示す。
比較例1では、ゲスト材料を下記J−1に変更した以外は、実施例29と同様にして、有機発光素子を作製、それを評価した。比較例2では、ゲスト材料を下記J−2に変更した以外は実施例28と同様にして有機発光素子を作製、それを評価した。評価結果は、実施例の結果と合わせて表4に示す。
Figure 2021059523
Figure 2021059523
表4より、比較例1及び比較例2の色度座標はそれぞれ(0.14、0.13)であり、実施例の評価結果と比較して、色純度が低い。また、比較例の5%劣化寿命は100時間以下であり、いずれも105時間以上の5%劣化寿命を有する実施例の有機発光素子に比べて、耐久特性が低い。これは比較化合物にシアノ基を有するアリール基が設けられていないため、比較化合物の色純度が低いことによる。また、比較化合物にはシアノ基が設けられていないので、電子受容性が低いことにより化学的な安定性が劣っていることが考えられる。
一方、実施例の有機化合物を用いた有機発光素子は、シアノ基を有するアリール基が設けられているため、比較化合物を用いた有機発光素子に比べて、色純度の高い青色発光特性を示した。また、実施例の有機化合物を用いた有機発光素子は、比較化合物を用いた有機発光素子に比べて、電子受容性が高いので、化学的に安定であり、5%劣化寿命が長かった。
[実施例44]
本実施例では、表5に示す構成の有機発光素子を作製した。具体的には、絶縁層上に陽極、正孔注入層、正孔輸送層、電子ブロッキング層、第二発光層、第一発光層、正孔ブロッキング層、電子輸送層、電子注入層、陰極が順次形成されたトップエミッション型構造の有機発光素子を作製した。
ガラス基板上に、スパッタリング法でAlとTiとの積層膜を40nm成膜し、フォトリソグラフィ技術を用いてパターニングし、陽極を形成した。なお、この時、対向する電極(金属電極層、陰極)の電極面積が3mmとなるようにした。
続いて、真空蒸着装置(アルバック社製)に洗浄済みの電極までを形成した基板と材料を取り付け、1.3×10−4Pa(1×10−6Torr)まで排気した後、UV/オゾン洗浄を施した。その後、下記表5に示される層構成で各層の製膜を行い、最後に、窒素雰囲気下において封止を行った。
Figure 2021059523
得られた素子について、素子の特性を測定・評価した。得られた素子は、良好な白色発光を示した。さらに、初期輝度1000cd/mでの連続駆動試験を行い、100時間後の輝度劣化率を測定した。結果を下記実施例及び比較例と合わせて表6に示す。
[実施例45乃至52、比較例3、比較例4]
本実施例において、表6に示される有機化合物に適宜変更する以外は、実施例44と同様にして有機発光素子を作製、評価した。測定の結果を表6に示す。
Figure 2021059523
表6より比較化合物J−1及びJ−2を用いた有機発光素子では輝度劣化率が各々23%、25%であった。これは比較化合物にシアノ基を有するアリール基を設けられていないため、電子受容性が低いことにより化学的な安定性が劣っていることが考えられる。
一方、実施例の有機化合物を用いた有機発光素子は、シアノ基を有するアリール基が設けられているため、比較化合物に比べて、良好な青色発光特性を示した。また、実施例の有機化合物を用いた有機発光素子は、比較化合物を用いた有機発光素子に比べて、電子受容性が高く、化学的安定なため、高い耐久特性を示した。
本発明の一実施形態に係る有機化合物は、青色発光に適した発光を呈し、化学的安定性が高い化合物である。このため本発明の一実施形態に係る有機化合物を有機発光素子の構成材料として用いることで、BTBT2020に求められる、良好な発光特性と優れた耐久特性を有する有機発光素子を得ることができる。
1 層間絶縁層
2 反射電極
3 絶縁層
4 有機化合物層
5 透明電極
6 保護層
7 カラーフィルタ
10 副画素
11 基板
12 絶縁層
13 ゲート電極
14 ゲート絶縁膜
15 半導体層
16 ドレイン電極
17 ソース電極
18 薄膜トランジスタ
19 絶縁膜
20 コンタクトホール
21 下部電極
22 有機化合物層
23 上部電極
24 第一保護層
25 第二保護層
26 有機発光素子
100 表示装置
1000 表示装置
1001 上部カバー
1002 フレキシブルプリント回路
1003 タッチパネル
1004 フレキシブルプリント回路
1005 表示パネル
1006 フレーム
1007 回路基板
1008 バッテリー
1009 下部カバー
1100 撮像装置
1101 ビューファインダ
1102 背面ディスプレイ
1103 操作部
1104 筐体
1200 電子機器
1201 表示部
1202 操作部
1203 筐体
1300 表示装置
1301 額縁
1302 表示部
1303 土台
1310 表示装置
1311 第一表示部
1312 第二表示部
1313 筐体
1314 屈曲点
1400 照明装置
1401 筐体
1402 光源
1403 回路基板
1404 光学フィルム
1405 光拡散部
1500 自動車
1501 テールランプ
1502 窓
1503 車体

Claims (20)

  1. 下記式(1)で表されることを特徴とする有機化合物。
    Figure 2021059523

    式(1)において、R乃至R18は、水素原子、ハロゲン原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアルコキシ基、置換あるいは無置換のアミノ基、置換あるいは無置換のアリール基及び、置換あるいは無置換の複素環基、置換あるいは無置換のアリールオキシ基、シリル基及びシアノ基からそれぞれ独立に選ばれる。ただし、R乃至R18の少なくとも1つは、シアノ基を有する前記アリール基またはシアノ基を有する前記複素環基である。
  2. 式(1)において、シアノ基を有する前記アリール基または前記複素環基の数が、1以上4以下であることを特徴とする請求項1に記載の有機化合物。
  3. 式(1)において、シアノ基を有する前記アリール基または前記複素環基の数が1以上2以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の有機化合物。
  4. 式(1)において、R、R、R、R16、R17、R18の少なくとも1つにシアノ基を有する前記アリール基または前記複素環基を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の有機化合物。
  5. 式(1)において、R、R、R、R16、R17、R18のいずれか2つにシアノ基を有する前記アリール基または前記複素環基を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の有機化合物。
  6. シアノ基を有する前記アリール基または前記複素環基は、式(1)において、R、R、R、R16、R17、R18のいずれかにのみに設けられていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の有機化合物。
  7. 式(1)において、R、R、R12及びR13には、前記シアノ基を有する前記アリール基または前記シアノ基を有する前記複素環基が設けられていないことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の有機化合物。
  8. 式(1)において、R、R、R12及びR13は、水素原子であることを特徴とする請求項7に記載の有機化合物。
  9. シアノ基を有する前記アリール基がフェニル基、ナフチル基またはビフェニル基のいずれかから選ばれることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の有機化合物。
  10. シアノ基を有する前記複素環基がピリジル基、ピリミジル基、ピラジル基、トリアジル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチオフェニル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基のいずれかから選ばれることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の有機化合物。
  11. 第一電極と、第二電極と、前記第一電極と前記第二電極との間に配置されている有機化合物層と、を有する有機発光素子であって、
    前記有機化合物層は、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の有機化合物を含有することを特徴とする有機発光素子。
  12. 前記有機化合物層の少なくとも一層が発光層であり、前記発光層に前記有機化合物が含有されていることを特徴とする、請求項11に記載の有機発光素子。
  13. 青色発光することを特徴とする請求項11または12に記載の有機発光素子。
  14. 前記発光層と積層して配置されている第二発光層を更に有し、前記第二発光層は前記発光層が発する発光色とは異なる色を発光することを特徴とする請求項11または12に記載の有機発光素子。
  15. 白色発光することを特徴とする請求項14に記載の有機発光素子。
  16. 複数の画素を有し、前記複数の画素の少なくとも一つが、請求項11乃至15のいずれか一項に記載の有機発光素子と、前記有機発光素子に接続されたトランジスタと、を有することを特徴とする表示装置。
  17. 複数のレンズを有する光学部と、前記光学部を通過した光を受光する撮像素子と、前記撮像素子が撮像した画像を表示する表示部と、を有し、
    前記表示部は請求項11乃至15のいずれか一項に記載の有機発光素子を有することを特徴とする撮像装置。
  18. 請求項11乃至15のいずれか一項に記載の有機発光素子を有する表示部と、前記表示部が設けられた筐体と、前記筐体に設けられ、外部と通信する通信部と、を有することを特徴とする電子機器。
  19. 請求項11乃至15のいずれか一項に記載の有機発光素子を有する光源と、前記光源が発する光を透過する光拡散部または光学フィルムと、を有することを特徴とする照明装置。
  20. 請求項11乃至15のいずれか一項に記載の有機発光素子を有する灯具と、前記灯具が設けられた機体と、を有することを特徴とする移動体。
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