JP2021059515A - 歯科用接着性組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】象牙質に対して高い接着性(初期接着力及び接着耐久性)を有し、かつ高い象牙質凝集破壊率を示す、歯科用接着性組成物を提供する。【解決手段】フルオロカーボン基、2つ以上のオレフィン性二重結合、及び1つ以上のエーテル結合を有する重合性単量体(A)、酸性基含有重合性単量体(B)、並びに重合開始剤(C)を含有する、歯科用接着性組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、歯科用接着性組成物に関する。
齲蝕等により損傷した歯質(エナメル質、象牙質及びセメント質)の修復には、通常、充填用コンポジットレジン、充填用コンポマー等の充填修復材料や、金属合金、陶材、レジン材料等の歯冠修復材料が用いられる。しかしながら、一般的に、充填修復材料及び歯冠修復材料(この明細書においては、両者を「歯科用修復材料」と総称することがある)自体には歯質に対する接着性がない。このため、従来、歯質と歯科用修復材料との接着には、接着材を用いる様々な接着システムが用いられている。従来汎用されている接着システムとしては、酸エッチング型の接着システム(トータルエッチング型)と、酸エッチング材を用いない接着システム(セルフエッチング型)がある。最近では、セルフエッチングプライマーとボンディング材の機能を併せ持つ1液型の歯科用接着材(1液型のボンディング材)を用いた1ステップの接着システムが汎用されている。
このような1液型のボンディング材は、一般的に、酸性単量体、親水性単量体、架橋性単量体等を単量体成分として含有するものであり、単量体成分としては、(メタ)アクリレート化合物が一般的に用いられている。
1液型のボンディング材は、歯質、特に象牙質に対して優れた接着性を有することが求められている。これに対し、特許文献1では、フルオロカーボン基を有する特定の重合性単量体を使用することにより、長期間にわたって象牙質に対して優れた接着性が得られることが報告されている。また、特許文献2では、フルオロカーボン基及び2個以上の重合性基を有する重合性単量体、親水性の重合性単量体、並びに重合開始剤を含む歯科用組成物が、優れた撥水性を発現するだけでなく、歯質や接着材とのなじみが良いことから、優れた接着性を示すことが報告されている。さらに非特許文献1では、フルオロカーボン基とエチレングリコール骨格と2個以上の重合性基とを有する重合性単量体を用いた充填用コンポジットレジンが、優れた硬化性を示すことが報告されている。
国際公開第2011/121966号 特開2003−81731号公報
Journal of Macromolecular Science,Part A: Pure and Applied Chemistry,1999年,vol.36,Issue 3,pages373〜388
しかしながら、特許文献1、2に開示されている歯科用組成物は、フルオロカーボン基に起因する高い撥水性により、接着耐久性試験において、初期接着強さからの接着性の低下はある程度抑制されているものの、象牙質に対する組成物の浸透性が乏しく、初期接着性及び象牙質凝集破壊率にさらなる改善の余地があった。また、非特許文献1の組成物は、優れた硬化性が得られることは確認されているが、歯質に対して接着性を有しているものではなかった。
そこで、本発明は、象牙質に対して高い接着性(初期接着力及び接着耐久性)が得られ、かつ高い象牙質凝集破壊率を示す歯科用接着性組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、フルオロカーボン基とエーテル結合とを有する特定の重合性単量体を含む歯科用接着性組成物により、上記課題を解決できることを見出し、当該知見に基づきさらに検討を重ねて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下に関する。
[1]フルオロカーボン基、2つ以上のオレフィン性二重結合、及び1つ以上のエーテル結合を有する重合性単量体(A)、酸性基含有重合性単量体(B)、並びに重合開始剤(C)を含有する、歯科用接着性組成物。
[2]前記重合性単量体(A)が下記一般式(1)又は(2)で表される前記重合性単量体を含有する、[1]に記載の歯科用接着性組成物。
Figure 2021059515
Figure 2021059515
(上記式中、R1は−O−、−NH−、又は−CH2O−を表し、R2はH、F、又はCH3を表し、Xは下記一般式(3)又は(4)で表される基であり、Yは−CH2−、−CF2−、及び−O−からなる群から選ばれる1種以上を含む基であり、Yにおいて、−CH2−の数は0〜10であり、−CF2−の数は1〜10であり、−O−の数は1〜10である。)
Figure 2021059515
Figure 2021059515
(式中、R1は上記式(2)と同一意味を有し、R3はH、又はCH3を表し、R4は−O−、−NH−、又は−NHCO−を表す。)
[3]前記重合性単量体(A)が一般式(1)で表される重合性単量体であり、Xが一般式(3)で表される基である、[2]に記載の歯科用接着性組成物。
[4]R3がHである、[2]又は[3]に記載の歯科用接着性組成物。
[5]Yにおける−CF2−の数が2〜9である、[2]〜[4]のいずれかに記載の歯科用接着性組成物。
[6]Yにおける−O−の数が2〜9である、[2]〜[5]のいずれかに記載の歯科用接着性組成物。
[7]Yが−CF2−CF2−を含む、[2]〜[6]のいずれかに記載の歯科用接着性組成物。
[8]前記重合性単量体(A)が有するエーテル結合の数が1〜10である、[1]〜[7]のいずれかに記載の歯科用接着性組成物。
[9]前記重合性単量体(A)が有するフッ素原子の数が2〜20である、[1]〜[8]のいずれかに記載の歯科用接着性組成物。
[10]酸性基を有しない親水性重合性単量体(D)をさらに含む、[1]〜[9]のいずれかに記載の歯科用接着性組成物。
[11]酸性基を有しない疎水性重合性単量体(E)(ただし、重合性単量体(A)に該当するものを除く)をさらに含む、[1]〜[10]のいずれかに記載の歯科用接着性組成物。
[12]前記重合開始剤(C)が、光重合開始剤(C−1)である、[1]〜[11]のいずれかに記載の歯科用接着性組成物。
[13]前記酸性基含有重合性単量体(B)が、リン酸基含有重合性単量体である、[1]〜[12]のいずれかに記載の歯科用接着性組成物。
[14]前記重合性単量体(A)の含有量が、重合性単量体の全量100質量部において、0.5〜40質量部である、[1]〜[13]のいずれかに記載の歯科用接着性組成物。
[15][1]〜[14]のいずれかに記載の歯科用接着性組成物からなる、歯科用ボンディング材。
本発明によれば、象牙質に対して高い接着性(初期接着力及び接着耐久性)を有し、かつ高い象牙質凝集破壊率を示す、歯科用接着性組成物が提供される。また、本発明によれば、歯科用接着性組成物の硬化物は、十分な機械的強度を有する。
本発明の歯科用接着性組成物は、フルオロカーボン基、2つ以上のオレフィン性二重結合、及び1つ以上のエーテル結合を有する重合性単量体(A)、酸性基含有重合性単量体(B)、並びに重合開始剤(C)を含有する。なお、本明細書において、(メタ)アクリルとは、メタクリルとアクリルの総称であり、これと類似の表現についても同様である。なお、本明細書において、数値範囲(各成分の含有量、各成分から算出される値及び各物性等)の上限値及び下限値は適宜組み合わせ可能である。
本発明の歯科用接着性組成物が、象牙質に対して、高い接着性(初期接着力及び接着耐久性)を有し、かつ高い象牙質凝集破壊率を示す理由は定かではないが、以下のように推定される。すなわち、フルオロカーボン基、2つ以上のオレフィン性二重結合、及び1つ以上のエーテル結合を有する重合性単量体(A)は、フルオロカーボン基に起因する高い撥水性だけでなく、1つ以上のエーテル結合を有することによってある程度の親水性も有することから、象牙質への浸透作用が向上していると考えられる。さらには、重合性基であるオレフィン性二重結合を複数有することから、エーテル結合(酸素原子)導入により危惧される硬化性の低下が抑制されたものと考えられる。そのため、重合性単量体(A)を含有する本発明の歯科用接着性組成物は、優れた初期接着力、接着耐久性及び象牙質凝集破壊率を示したともの考えられる。
すなわち、本発明の歯科用接着性組成物は、フルオロカーボン基による高い撥水性、1つ以上のエーテル結合を有することによる歯質への浸透作用、及び2つ以上のオレフィン性二重結合を有することによる優れた硬化性という3つの特性のバランスのとれた重合性単量体(A)を含有することにより、組成物全体としても親水性、疎水性、機械的強度等といった接着性に寄与する性能のバランスに優れた組成物となったことから、優れた初期接着力、接着耐久性及び象牙質凝集破壊率を示したと考えられる。
以下、本発明の歯科用接着性組成物に用いられる各成分について説明する。
〔フルオロカーボン基、2つ以上のオレフィン性二重結合、及び1つ以上のエーテル結合を有する重合性単量体(A)〕
本発明の歯科用接着性組成物は、フルオロカーボン基、2つ以上のオレフィン性二重結合、及び1つ以上のエーテル結合を有する重合性単量体(A)(以下、単に「重合性単量体(A)」と記載することもある)を含む。本発明では重合性単量体(A)を用いることを技術の核とし、このような重合性単量体(A)を他の成分と組み合わせることで、歯科用接着性組成物の象牙質に対する高い接着性(初期接着力及び接着耐久性)、及び高い象牙質凝集破壊率を達成することができる。重合性単量体(A)は1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記重合性単量体(A)において、接着性と接着耐久性の観点から、エーテル結合(−O−)の数は1〜10が好ましく、1〜7がより好ましく、1〜5がさらに好ましい。また、前記重合性単量体(A)におけるフッ素原子の数は2〜20が好ましく、2〜16がより好ましく、2〜12さらに好ましい。
前記重合性単量体(A)としては、例えば、下記一般式(1)又は(2)で表される重合性単量体を挙げられる。
Figure 2021059515
Figure 2021059515
(上記式中、R1は−O−、−NH−、又は−CH2O−を表し、R2はH、F、又はCH3を表し、Xは下記一般式(3)又は(4)で表される基であり、Yは−CH2−(メチレン基)、−CF2−(ジフルオロメチレン基)、及び−O−からなる群から選ばれる1種以上を含む基であり、Yにおいて、−CH2−の数は0〜10であり、−CF2−の数は1〜10であり、−O−の数は1〜10である。)
Figure 2021059515
Figure 2021059515
(式中、R1は上記式(2)と同一意味を有し、R3はH、又はCH3を表し、R4は−O−、−NH−、又は−NHCO−を表す。)
一般式(1)及び(2)において、2つのXは、同一であってもよく、異なっていてもよい。一般式(1)又は(2)中のYにおいて、メチレン基、ジフルオロメチレン基、及びエーテル結合を任意に組み合わせていてもよい。Yは、メチレン基、ジフルオロメチレン基、及びエーテル結合からなる群から選ばれる1種以上を含む基であり、他の二価の官能基が含まれていてもよいが、メチレン基、ジフルオロメチレン基、及びエーテル結合から構成されていることが好ましい。また、浸透性と撥水性を両立させるために、メチレン基、ジフルオロメチレン基、及びエーテル結合は、それぞれ2回を超えて連続して結合しないことが好ましい。また、Yは−CF2−CF2−を含むことがより好ましく、−CF2−CF2−O−を含むことがさらに好ましい。Yは、直鎖状、又は分岐鎖状であり、直鎖状が好ましい。一般式(1)及び(2)において、Xは一般式(3)で表される基であることが好ましい。
一般式(3)において、R3は、より硬化性が高い点から、Hであることが好ましい。R4は、−O−又は−NH−であることが好ましく、より高い親水性を示し、象牙質への浸透作用が向上する点から、−O−であることがより好ましい。一般式(4)において、R1は、−O−又は−NH−であることが好ましく、より高い親水性を示し、象牙質への浸透作用が向上する点から、−O−であることがより好ましい。
重合性単量体(A)の中でも、優れた初期接着力、接着耐久性及び象牙質凝集破壊率を示すという観点から、式(1)で表される重合性単量体が好ましく用いられる。重合性単量体(A)としては、それらの中でもYに含まれる−CH2−の数が0〜10、−CF2−の数が1〜10、−O−の数が1〜10であることが好ましく、−CH2−の数が0〜8、−CF2−の数が2〜9、−O−の数が2〜9であることがより好ましく、−CH2−の数が0〜6、−CF2−の数が3〜7、−O−の数が3〜7であることがさらに好ましい。Yにおいて、−CH2−の数、−CF2−の数、及び−O−の数の合計は、2〜30が好ましく、4〜26がより好ましく、6〜20がさらに好ましい。また、Yに含まれる炭素数は、1〜18が好ましく、2〜15がより好ましく、3〜12がさらに好ましい。
式(1)で表される重合性単量体としては、Xがいずれも一般式(3)で表される基であり、Yが−CF2−CF2−を含み、Yに含まれる−CH2−の数が0〜8、−CF2−の数が2〜9、−O−の数が2〜9である化合物が好ましく、Xがいずれも一般式(3)で表される基であり、Yが直鎖状であり、−CF2−CF2−O−を含み、Yに含まれる−CH2−の数が0〜6、−CF2−の数が3〜7、−O−の数が3〜7である化合物がより好ましく、Xがいずれも一般式(3)で表される基であり、R4が−O−又は−NH−であり、Yが直鎖状であり、−CF2−CF2−O−を含み、Yに含まれる−CH2−の数が0〜6、−CF2−の数が3〜7、−O−の数が3〜7であり、Yに含まれる炭素数が3〜12である化合物がさらに好ましく、Xがいずれも一般式(3)で表される基であり、R3がHであり、R4が−O−又は−NH−であり、Yが直鎖状であり、−CF2−CF2−O−を含み、Yに含まれる−CH2−の数が0〜6、−CF2−の数が3〜7、−O−の数が3〜7であり、Yに含まれる炭素数が3〜12である化合物が特に好ましい。式(2)で表される重合性単量体としては、前記式(1)で表される重合性単量体の好ましいX、Yと同様であり、かつ、R2がH又はFである化合物が好ましい。
式(1)で表される重合性単量体の具体例を下記に示す。
Figure 2021059515
Figure 2021059515
Figure 2021059515
式(2)で表される重合性単量体の具体例を下記に示す。
Figure 2021059515
Figure 2021059515
Figure 2021059515
前記重合性単量体(A)の含有量は特に限定されないが、含有量が少なすぎると、重合性単量体(A)の接着性向上効果が得られないおそれがある。一方、含有量が多すぎると、硬化性が低下し、接着性能を発揮できなくなるおそれがある。よって重合性単量体(A)の含有量は、歯科用接着性組成物における重合性単量体成分の全量100質量部において、0.5〜40質量部が好ましく、0.5〜34質量部がより好ましく、1〜23質量部がさらに好ましい。
〔酸性基含有重合性単量体(B)〕
酸性基含有重合性単量体(B)は、酸エッチング効果及びプライマー処理効果を有しており、脱灰作用及び浸透作用を与える成分である。また、酸性基含有重合性単量体(B)は、重合可能であり、硬化作用も付与する。酸性基含有重合性単量体(B)を含有することにより、歯質に対する接着性と接着耐久性が向上する。
酸性基含有重合性単量体(B)としては、リン酸基、ピロリン酸基、チオリン酸基、ホスホン酸基、スルホン酸基、カルボン酸基などの酸性基を少なくとも1個有し、且つアクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、スチレン基などの重合性基を少なくとも1個有する重合性単量体が挙げられる。下記に酸性基含有重合性単量体(B)の具体例を挙げる。
リン酸基含有重合性単量体としては、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルジヒドロジェンホスフェート、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルジヒドロジェンホスフェート、4−(メタ)アクリロイルオキシブチルジヒドロジェンホスフェート、5−(メタ)アクリロイルオキシペンチルジヒドロジェンホスフェート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルジヒドロジェンホスフェート、7−(メタ)アクリロイルオキシヘプチルジヒドロジェンホスフェート、8−(メタ)アクリロイルオキシオクチルジヒドロジェンホスフェート、9−(メタ)アクリロイルオキシノニルジヒドロジェンホスフェート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジヒドロジェンホスフェート、11−(メタ)アクリロイルオキシウンデシルジヒドロジェンホスフェート、12−(メタ)アクリロイルオキシドデシルジヒドロジェンホスフェート、16−(メタ)アクリロイルオキシヘキサデシルジヒドロジェンホスフェート、20−(メタ)アクリロイルオキシイコシルジヒドロジェンホスフェート、ビス〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕ヒドロジェンホスフェート、ビス〔4−(メタ)アクリロイルオキシブチル〕ヒドロジェンホスフェート、ビス〔6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシル〕ヒドロジェンホスフェート、ビス〔8−(メタ)アクリロイルオキシオクチル〕ヒドロジェンホスフェート、ビス〔9−(メタ)アクリロイルオキシノニル〕ヒドロジェンホスフェート、ビス〔10−(メタ)アクリロイルオキシデシル〕ヒドロジェンホスフェート、1,3−ジ(メタ)アクリロイルオキシプロピルジヒドロジェンホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルヒドロジェンホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ブロモエチルヒドロジェンホスフェート、ビス〔2−(メタ)アクリロイルオキシ−(1−ヒドロキシメチル)エチル〕ヒドロジェンホスフェート及びこれらの酸塩化物、アルカリ金属塩、アンモニウム塩等のリン酸基含有(メタ)アクリル系単量体が挙げられる。
ピロリン酸基含有重合性単量体としては、ピロリン酸ビス〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕、ピロリン酸ビス〔4−(メタ)アクリロイルオキシブチル〕、ピロリン酸ビス〔6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシル〕、ピロリン酸ビス〔8−(メタ)アクリロイルオキシオクチル〕、ピロリン酸ビス〔10−(メタ)アクリロイルオキシデシル〕及びこれらの酸塩化物、アルカリ金属塩、アンモニウム塩等のピロリン酸基含有(メタ)アクリル系単量体が挙げられる。
チオリン酸基含有重合性単量体としては、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルジヒドロジェンチオホスフェート、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルジヒドロジェンチオホスフェート、4−(メタ)アクリロイルオキシブチルジヒドロジェンチオホスフェート、5−(メタ)アクリロイルオキシペンチルジヒドロジェンチオホスフェート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルジヒドロジェンチオホスフェート、7−(メタ)アクリロイルオキシヘプチルジヒドロジェンチオホスフェート、8−(メタ)アクリロイルオキシオクチルジヒドロジェンチオホスフェート、9−(メタ)アクリロイルオキシノニルジヒドロジェンチオホスフェート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジヒドロジェンチオホスフェート、11−(メタ)アクリロイルオキシウンデシルジヒドロジェンチオホスフェート、12−(メタ)アクリロイルオキシドデシルジヒドロジェンチオホスフェート、16−(メタ)アクリロイルオキシヘキサデシルジヒドロジェンチオホスフェート、20−(メタ)アクリロイルオキシイコシルジヒドロジェンチオホスフェート及びこれらの酸塩化物、アルカリ金属塩、アンモニウム塩が挙げられる。
ホスホン酸基含有重合性単量体としては、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルホスホネート、5−(メタ)アクリロイルオキシペンチル−3−ホスホノプロピオネート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシル−3−ホスホノプロピオネート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシル−3−ホスホノプロピオネート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルホスホノアセテート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルホスホノアセテート及びこれらの酸塩化物、アルカリ金属塩、アンモニウム塩が挙げられる。
スルホン酸基含有重合性単量体としては、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−スルホエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
カルボン酸基含有重合性単量体としては、分子内に1つのカルボキシ基を有する重合性単量体と、分子内に複数のカルボキシ基を有する単量体とが挙げられる。
分子内に1つのカルボキシ基を有する重合性単量体としては、(メタ)アクリル酸、N−(メタ)アクリロイルグリシン、N−(メタ)アクリロイルアスパラギン酸、O−(メタ)アクリロイルチロシン、N−(メタ)アクリロイルチロシン、N−(メタ)アクリロイルフェニルアラニン、N−(メタ)アクリロイル−p−アミノ安息香酸、N−(メタ)アクリロイル−o−アミノ安息香酸、p−ビニル安息香酸、2−(メタ)アクリロイルオキシ安息香酸、3−(メタ)アクリロイルオキシ安息香酸、4−(メタ)アクリロイルオキシ安息香酸、N−(メタ)アクリロイル−5−アミノサリチル酸、N−(メタ)アクリロイル−4−アミノサリチル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヒドロジェンサクシネート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヒドロジェンフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヒドロジェンマレート及びこれらの酸ハロゲン化物が例示される。
分子内に複数のカルボキシ基を有する重合性単量体としては、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキサン−1,1−ジカルボン酸、9−(メタ)アクリロイルオキシノナン−1,1−ジカルボン酸、10−(メタ)アクリロイルオキシデカン−1,1−ジカルボン酸、11−(メタ)アクリロイルオキシウンデカン−1,1−ジカルボン酸、12−(メタ)アクリロイルオキシドデカン−1,1−ジカルボン酸、13−(メタ)アクリロイルオキシトリデカン−1,1−ジカルボン酸、4−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリテート、4−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリテートアンハイドライド、4−(メタ)アクリロイルオキシブチルトリメリテート、4−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルトリメリテート、4−(メタ)アクリロイルオキシデシルトリメリテート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−3’−(メタ)アクリロイルオキシ−2’−(3,4−ジカルボキシベンゾイルオキシ)プロピルサクシネート及びこれらの酸無水物又は酸ハロゲン化物が例示される。
これらの酸性基含有重合性単量体(B)の中でも、リン酸基又はピロリン酸基含有(メタ)アクリル系単量体が歯質に対してより優れた接着性を発現するので好ましく、特に、リン酸基含有(メタ)アクリル系単量体が好ましい。その中でも、有機溶媒の不存在下で高い脱灰性を示し、高い接着性を示すという点で、分子内に主鎖として炭素数が6〜20のアルキル基又はアルキレン基を有する2価のリン酸基含有(メタ)アクリル系単量体がより好ましく、10−メタクリロイルオキシデシルジヒドロジェンホスフェートなどの分子内に主鎖として炭素数が8〜12のアルキレン基を有する2価のリン酸基含有(メタ)アクリル系単量体が最も好ましい。
酸性基含有重合性単量体(B)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。酸性基含有重合性単量体(B)の含有量が過多及び過少いずれの場合も接着性が低下することがある。そこで、酸性基含有重合性単量体(B)の含有量は、歯科用接着性組成物における重合性単量体成分の全量100質量部に対して、1〜50質量部の範囲が好ましく、1〜30質量部の範囲がより好ましく、1〜20質量部の範囲がさらに好ましい。
〔重合開始剤(C)〕
本発明に用いられる重合開始剤(C)としては、一般工業界で使用されている重合開始剤から選択して使用でき、中でも歯科用途に用いられる重合開始剤が好ましく用いられる。重合開始剤(C)は、特に、光重合開始剤(C−1)及び化学重合開始剤(C−2)からなる群から選ばれる少なくとも1種を使用できる。
光重合開始剤(C−1)としては、例えば、(ビス)アシルホスフィンオキシド類(塩を含む)、チオキサントン類(第4級アンモニウム塩などの塩を含む)、ケタール類、α−ジケトン類、クマリン類、アントラキノン類、ベンゾインアルキルエーテル化合物類、α−アミノケトン系化合物などが挙げられる。光重合開始剤(C−1)は1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの光重合開始剤(C−1)の中でも、(ビス)アシルホスフィンオキシド類及びα−ジケトン類からなる群から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。これにより、可視光領域及び近紫外領域での光硬化性に優れ、ハロゲンランプ、発光ダイオード(LED)、及びキセノンランプのいずれの光源を用いても十分な光硬化性を示す歯科用接着性組成物が得られる。
(ビス)アシルホスフィンオキシド類のうち、アシルホスフィンオキシド類としては、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,6−ジメトキシベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,6−ジクロロベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルメトキシフェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルエトキシフェニルホスフィンオキシド、2,3,5,6−テトラメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ベンゾイルジ(2,6−ジメチルフェニル)ホスホネート、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィンオキシドのナトリウム塩、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィンオキシドのカリウム塩、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィンオキシドのアンモニウム塩などが挙げられる。
(ビス)アシルホスフィンオキシド類のうち、ビスアシルホスフィンオキシド類としては、例えば、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−プロピルフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)−1−ナフチルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(2,3,6−トリメチルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシドなどが挙げられる。
さらに、(ビス)アシルホスフィンオキシド類として、特開2000−159621号公報に記載されている化合物が挙げられる。
これらの(ビス)アシルホスフィンオキシド類の中でも、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルメトキシフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィンオキシドのナトリウム塩を光重合開始剤(C−1)として用いることが特に好ましい。
α−ジケトン類としては、例えば、ジアセチル、ベンジル、カンファーキノン、2,3−ペンタジオン、2,3−オクタジオン、9,10−フェナントレンキノン、4,4’−オキシベンジル、アセナフテンキノンなどが挙げられる。これらの中でも、可視光領域に極大吸収波長を有する観点から、カンファーキノンが特に好ましい。
化学重合開始剤(C−2)としては、有機過酸化物が好ましく用いられる。化学重合開始剤(C−2)として使用される有機過酸化物は特に限定されず、公知のものを使用することができる。代表的な有機過酸化物としては、例えば、ケトンペルオキシド、ヒドロペルオキシド、ジアシルペルオキシド、ジアルキルペルオキシド、ペルオキシケタール、ペルオキシエステル、ペルオキシジカーボネートなどが挙げられる。化学重合開始剤(C−2)は1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
ケトンペルオキシドとしては、例えば、メチルエチルケトンペルオキシド、メチルイソブチルケトンペルオキシド、メチルシクロヘキサノンペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシドなどが挙げられる。
ヒドロペルオキシドとしては、例えば、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルヒドロペルオキシドなどが挙げられる。
ジアシルペルオキシドとしては、例えば、アセチルペルオキシド、イソブチリルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、デカノイルペルオキシド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシドなどが挙げられる。
ジアルキルペルオキシドとしては、例えば、ジ−t−ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、1,3−ビス(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)−3−ヘキシンなどが挙げられる。
ペルオキシケタールとしては、例えば、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルペルオキシ)ブタン、2,2−ビス(t−ブチルペルオキシ)オクタン、4,4−ビス(t−ブチルペルオキシ)バレリン酸n−ブチルエステルなどが挙げられる。
ペルオキシエステルとしては、例えば、α−クミルペルオキシネオデカノエート、t−ブチルペルオキシネオデカノエート、t−ブチルペルオキシピバレート、2,2,4−トリメチルペンチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−アミルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルペルオキシイソフタレート、ジ−t−ブチルペルオキシヘキサヒドロテレフタレート、t−ブチルペルオキシ−3,3,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシアセテート、t−ブチルペルオキシベンゾエート、t−ブチルペルオキシマレエートなどが挙げられる。
ペルオキシジカーボネートとしては、例えば、ジ−3−メトキシペルオキシジカーボネート、ジ(2−エチルヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルペルオキシジカーボネート、ジ(2−エトキシエチル)ペルオキシジカーボネート、ジアリルペルオキシジカーボネートなどが挙げられる。
これらの有機過酸化物の中でも、安全性と、保存安定性との総合的なバランスから、ヒドロペルオキシドが化学重合開始剤(C−2)として好ましく用いられる。その中でも、クメンヒドロペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、及び1,1,3,3−テトラメチルブチルヒドロペルオキシドが化学重合開始剤(C−2)として特に好ましく用いられる。
本発明の歯科用接着性組成物中における重合開始剤(C)の含有量は特に限定されないが、得られる組成物の硬化性などの観点から、重合性単量体の総量100質量部に対して、重合開始剤(C)が0.01〜10質量部の範囲が好ましく、0.05〜7質量部の範囲がより好ましく、0.1〜5質量部の範囲がさらに好ましい。なお、重合開始剤(C)の含有量が10質量部を超えると、重合開始剤自体の重合性能が低い場合には、十分な接着強さが得られなくなるおそれがあり、さらには歯科用接着性組成物からの析出を招くおそれがある。
〔酸性基を有しない親水性重合性単量体(D)〕
酸性基を有しない親水性重合性単量体(D)としては、酸性基を有さず、重合性基を有するラジカルモノマーが好ましく、ラジカル重合が容易である観点から、重合性基は(メタ)アクリル基及び/又は(メタ)アクリルアミド基が好ましい。酸性基を有しない親水性重合性単量体(D)とは、25℃における水に対する溶解度が10質量%以上のものを意味し、該溶解度が30質量%以上のものが好ましく、25℃において任意の割合で水に溶解可能なものがより好ましい。酸性基を有しない親水性重合性単量体(D)は、歯科用接着性組成物の成分の歯質への浸透を促進するとともに、自らも歯質に浸透して歯質中の有機成分(コラーゲン)に接着する。酸性基を有しない親水性重合性単量体(D)としては、水酸基、オキシメチレン基、オキシエチレン基、オキシプロプレン基、アミド基などの親水性基を有するものが好ましく、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,3−ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3−ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−((メタ)アクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート(オキシエチレン基の数が9以上のもの)などの親水性の単官能性(メタ)アクリレート系重合性単量体;N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、4−(メタ)アクリロイルモルホリン、N−トリヒドロキシメチル−N−メチル(メタ)アクリルアミド及び下記一般式(5)で表される単官能(メタ)アクリルアミド系単量体などの親水性の単官能性(メタ)アクリルアミド系重合性単量体などが挙げられる。
Figure 2021059515
(式(5)中、R5及びR6はそれぞれ独立して、置換基を有していてもよい直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1〜3のアルキル基であり、R7は水素原子又はメチル基である。)
5及びR6における前記置換基としては、炭素数1〜4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基又はハロゲン原子である。R5及びR6における前記炭素数1〜3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基が挙げられる。
これら酸性基を有しない親水性重合性単量体(D)の中でも、歯質に対する接着性の観点から、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2,3−ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジアセトン(メタ)アクリルアミド及び親水性の単官能性(メタ)アクリルアミド系単量体が好ましく、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、一般式(5)で表される単官能性(メタ)アクリルアミド系単量体がより好ましい。酸性基を有しない親水性重合性単量体(D)は、1種を単独で配合してもよく、2種以上を併用してもよい。
また、一般式(5)で表される単官能性(メタ)アクリルアミド系単量体の中でも、貯蔵安定性の観点から、N,N−ジメチルアクリルアミド及びN,N−ジエチルアクリルアミドがより好ましく、N,N−ジエチルアクリルアミドが最も好ましい。
本発明における酸性基を有しない親水性重合性単量体(D)が過少な場合には歯質への浸透作用が低下することがある。そこで、酸性基を有しない親水性重合性単量体(D)の含有量は、歯科用接着性組成物における重合性単量体成分の全量100質量部において、10〜80質量部の範囲が好ましく、15〜70質量部の範囲がより好ましく、20〜60質量部の範囲がさらに好ましく、25〜50質量部の範囲が特に好ましい。
〔酸性基を有しない疎水性重合性単量体(E)〕
酸性基を有しない疎水性重合性単量体(E)としては、酸性基を有さず、重合性基を有するラジカル重合性単量体が好ましく、ラジカル重合が容易である観点から、重合性基は(メタ)アクリル基及び/又は(メタ)アクリルアミド基が好ましい。酸性基を有しない疎水性重合性単量体(E)とは、25℃における水に対する溶解度が10質量%未満のものを意味し、例えば、芳香族化合物系の二官能性単量体、脂肪族化合物系の二官能性単量体、三官能性以上の単量体などの架橋性の単量体が例示される(ただし、重合性単量体(A)に該当するものを除く)。酸性基を有しない疎水性重合性単量体(E)は、歯科用接着性組成物の硬化物の機械的強度、取り扱い性などを向上させる。
芳香族化合物系の二官能性単量体としては、例えば、2,2−ビス((メタ)アクリロイルオキシフェニル)プロパン、2,2−ビス〔4−(3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシテトラエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシペンタエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシジプロポキシフェニル)プロパン、2−(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)−2−(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、2−(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)−2−(4−(メタ)アクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン、2−(4−(メタ)アクリロイルオキシジプロポキシフェニル)−2−(4−(メタ)アクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシプロポキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシイソプロポキシフェニル)プロパンなどが挙げられる。これらの中でも、2,2−ビス〔4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕プロパン(通称「Bis−GMA」)、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン(エトキシ基の平均付加モル数が2.6のもの、通称「D−2.6E」)、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシテトラエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシペンタエトキシフェニル)プロパンが好ましい。
脂肪族化合物系の二官能性単量体としては、例えば、グリセロールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2−ビス(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)エタン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンビス(2−カルバモイルオキシエチル)ジ(メタ)アクリレート、N−メタクリロイルオキシエチルアクリルアミド、N−メタクリロイルオキシプロピルアミドなどが挙げられる。これらの中でも、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート(通称「3G」)、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート(通称「DD」)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンビス(2−カルバモイルオキシエチル)ジメタクリレート(通称「UDMA」)、N−メタクリロイルオキシエチルアクリルアミド(通称「MAEA」)が好ましい。
三官能性以上の単量体としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、N,N−(2,2,4−トリメチルヘキサメチレン)ビス〔2−(アミノカルボキシ)プロパン−1,3−ジオール〕テトラ(メタ)アクリレート、1,7−ジアクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラ(メタ)アクリロイルオキシメチル−4−オキシヘプタンなどが挙げられる。これらの中でも、N,N−(2,2,4−トリメチルヘキサメチレン)ビス〔2−(アミノカルボキシ)プロパン−1,3−ジオール〕テトラメタクリレートが好ましい。
上記の酸性基を有しない疎水性重合性単量体(E)の中でも、機械的強度や取り扱い性の観点で、芳香族化合物系の二官能性単量体、及び脂肪族化合物系の二官能性単量体が好ましく用いられる。芳香族化合物系の二官能性単量体としては、2,2−ビス〔4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕プロパン(通称「Bis−GMA」)、及び2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン(エトキシ基の平均付加モル数が2.6のもの、通称「D−2.6E」)が好ましい。脂肪族化合物系の二官能性単量体としては、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート(通称「3G」)、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート(通称「DD」)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンビス(2−カルバモイルオキシエチル)ジメタクリレート(通称「UDMA」)、N−メタクリロイルオキシエチルアクリルアミド(通称「MAEA」)が好ましい。
上記の酸性基を有しない疎水性重合性単量体(E)の中でも、接着力、硬化物の機械的強度の観点から、Bis−GMA、D−2.6E、DD、MAEAがより好ましく、Bis−GMA、MAEAがさらに好ましい。
酸性基を有しない疎水性重合性単量体(E)は、1種単独を配合してもよく、2種以上を併用してもよい。酸性基を有しない疎水性重合性単量体(E)の含有量が過少な場合は、硬化物の機械的強度が低下することがある。そこで、酸性基を有しない疎水性重合性単量体(E)の含有量は、歯科用接着性組成物における重合性単量体成分の全量100質量部に対して、10〜80質量部の範囲が好ましく、15〜70質量部の範囲がより好ましく、20〜60質量部の範囲がさらに好ましく、25〜50質量部の範囲が特に好ましい。
本発明の歯科用接着性組成物は、フィラーをさらに含むことが好ましい。このようなフィラーは、有機フィラー、無機フィラー及び有機−無機複合フィラーに大別することができる。フィラーは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合としては、例えば、素材、粒度分布、形態などが異なるフィラーを併用する場合などが挙げられる。フィラーとしては、市販品を使用することができる。
有機フィラーの素材としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、メタクリル酸メチル−メタクリル酸エチル共重合体、架橋型ポリメタクリル酸メチル、架橋型ポリメタクリル酸エチル、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合体などが挙げられる。有機フィラーは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。有機フィラーの形状は特に限定されない。
無機フィラーの素材としては、例えば、石英、シリカ、アルミナ、シリカ−チタニア、シリカ−チタニア−酸化バリウム、シリカ−ジルコニア、シリカ−アルミナ、ランタンガラス、ホウケイ酸ガラス、ソーダガラス、バリウムガラス、ストロンチウムガラス、ガラスセラミック、アルミノシリケートガラス、バリウムボロアルミノシリケートガラス、ストロンチウムボロアルミノシリケートガラス、フルオロアルミノシリケートガラス、カルシウムフルオロアルミノシリケートガラス、ストロンチウムフルオロアルミノシリケートガラス、バリウムフルオロアルミノシリケートガラス、ストロンチウムカルシウムフルオロアルミノシリケートガラスなどが挙げられる。無機フィラーは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
無機フィラーの形状に特に制限はなく、無機フィラーとしては、例えば、不定形フィラー、球状フィラーなどが挙げられる。硬化物の機械的強度を向上させる観点からは、無機フィラーとして球状フィラーを用いることが好ましい。ここで球状フィラーとは、走査型電子顕微鏡(SEM)でフィラーの写真を撮り、その単位視野内に観察される粒子が丸みを帯びており、その最大径に直交する方向の粒子径をその最大径で割った平均均斉度が0.6以上であるフィラーとすることができる。無機フィラーとして球状フィラーを用いる場合、その平均粒子径は、歯科用接着性組成物における球状フィラーの充填率が低下せず、硬化物の機械的強度を維持することができる点から、0.1μm以上であることが好ましく、また、硬化物の機械的強度を維持するのに十分な表面積となることから平均粒子径は、5μm以下であることが好ましい。
無機フィラーは、歯科用接着性組成物の流動性を調整するため、必要に応じてシランカップリング剤等の公知の表面処理剤で予め表面処理してから用いてもよい。かかる表面処理剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリ(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、11−メタクリロイルオキシウンデシルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。
有機−無機複合フィラーとしては、上述の無機フィラーに単量体化合物を予め添加し、ペースト状にした後に重合させ、粉砕することにより得られるものを用いることができる。前記有機−無機複合フィラーとしては、例えば、TMPTフィラー(トリメチロールプロパンメタクリレートとシリカフィラーを混和、重合させた後に粉砕したもの)などを用いることができる。有機−無機複合フィラーの形状は特に限定されない。
フィラーの粒子径は特に限定されず、その平均粒子径を適宜選択することができる。得られる歯科用接着性組成物のハンドリング性及び硬化物の機械的強度などの観点から、フィラーの平均粒子径は、0.001μm以上であることが好ましく、また、50μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。なお、本明細書においてフィラーの平均粒子径とは、フィラーの一次粒子の平均粒子径(平均一次粒子径)を意味する。
フィラーの平均粒子径は、レーザー回折散乱法や粒子の電子顕微鏡観察により求めることができる。具体的には、0.1μm以上の粒子の粒子径測定にはレーザー回折散乱法が簡便であり、0.1μm未満の超微粒子の粒子径測定には電子顕微鏡観察が簡便である。0.1μm以上であるか否かの判別にはレーザー回折散乱法を採用すればよい。
レーザー回折散乱法では、例えば、レーザー回折式粒度分布測定装置(例えば、株式会社島津製作所製「SALD−2300」等)により、0.2%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を分散媒に用いて測定することで平均粒子径を求めることができる。
電子顕微鏡観察では、例えば、粒子の走査型電子顕微鏡(例えば、株式会社日立製作所製「S−4000型」等)写真を撮り、その写真の単位視野内に観察される粒子(200個以上)の粒子径を画像解析式粒度分布測定ソフトウェア(株式会社マウンテック製「Macview」等)を用いて測定することにより平均粒子径を求めることができる。このとき、粒子の粒子径は、その粒子の最長の長さと最短の長さの算術平均値として求められ、粒子の数とその粒子径より、平均粒子径が算出される。
本発明の歯科用接着性組成物におけるフィラーの含有量は、歯科用接着性組成物の全量において、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましく、1.0質量%以上であることがさらに好ましく、また、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましい。
この他、歯科用接着性組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲でpH調整剤、重合禁止剤、増粘剤、着色剤、蛍光剤、香料などを配合してもよい。また、セチルピリジニウムクロライド、塩化ベンザルコニウム、(メタ)アクリロイルオキシドデシルピリジニウムブロマイド、(メタ)アクリロイルオキシヘキサデシルピリジニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシデシルアンモニウムクロライド、トリクロサンなどの抗菌性物質を配合してもよい。
本発明の歯科用接着性組成物に、公知の染料、顔料を配合してもよい。
本発明の歯科用接着性組成物は、例えば、歯科用ボンディング材、自己接着性歯科用コンポジットレジン、歯科用セメント、小窩裂溝填塞材、動揺歯固定材、歯科矯正用接着材などに用いることができ、中でも、歯科用ボンディング材として好適に用いられる。このとき、本発明の歯科用接着性組成物の成分を2つに分けた2剤型(2液型、2ペースト型)として用いてもよい。
歯科用ボンディング材の中でも、1液型のボンディング材においては脱灰、浸透、硬化の総てのプロセスを1液1ステップで行う必要がある。このため、本発明の歯科用接着性組成物を1液型のボンディング材として用いる場合は、浸透性を重視する観点から、溶媒として水を含むことが好ましい。一方、硬化性を重視する観点からは、歯科用接着性組成物は、疎水性重合性単量体(E)を適切な量含んでいることが好ましく、均一な溶液を得る観点からは、前記溶媒として有機溶媒を含むことが好ましい。そして、前記溶媒が水と有機溶媒との混合溶媒の形態で用いられることがより好ましい実施形態である。かかる実施形態においては、前記混合溶媒中の水の含有量は、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることがさらに好ましい。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。また、実施例の中で説明されている特徴の組み合わせすべてが本発明の解決手段に必須のものとは限らない。以下の実施例及び比較例で用いた各種成分とその略称、構造、並びに試験方法は、以下の通りである。
〔フルオロカーボン基、2つ以上のオレフィン性二重結合、及び1つ以上のエーテルを有する重合性単量体(A)〕
DA−F3EO:
Figure 2021059515
DA−F4EO:
Figure 2021059515
〔酸性基含有重合性単量体(B)〕
MDP:10−メタクリロイルオキシデシルジヒドロジェンホスフェート
〔重合開始剤(C)〕
CQ:カンファーキノン
BAPO:ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド
〔酸性基を有しない親水性重合性単量体(D)〕
HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
〔酸性基を有しない疎水性重合性単量体(E)〕
Bis−GMA:2,2−ビス〔4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕プロパン
〔その他〕
DABE:4−(N,N−ジメチルアミノ)安息香酸エチル(重合促進剤)
DEPT:N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン(重合促進剤)
BHT:2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(安定剤(重合禁止剤))
水:精製水
EtOH:エタノール
R972:日本アエロジル株式会社製、微粒子シリカ「AEROSIL(商標登録) R 972」、平均粒子径:16nm
8FMA:オクタフルオロペンチルメタクリレート
Figure 2021059515
8FDA:1H,1H,6H,6H−PERFLUORO−1,6−HEXANEDIOL DIACRYLATE(Exfluor Reseach社製)
Figure 2021059515
〔象牙質に対する引張り接着強さ〕
ウシ下顎前歯の唇面を流水下にて#80シリコンカーバイド紙(日本研紙株式会社製)で研磨して、象牙質の平坦面を露出させたサンプルを得た。得られたサンプルを流水下にて#1000のシリコンカーバイド紙(日本研紙株式会社製)でさらに研磨した。研磨終了後、表面の水をエアブローすることで乾燥した。乾燥後の平滑面に、直径3mmの丸穴を有する厚さ約150μmの粘着テープを貼着し、接着面積を規定した。
各実施例及び比較例で作製した歯科用ボンディング材を上記の丸穴内に筆を用いて塗布し、10秒間放置した後、表面をエアブローした。続いて、歯科用LED光照射器(株式会社モリタ製、商品名「ペンキュアー2000」)にて10秒間光照射することにより、塗布した歯科用ボンディング材を硬化させた。
得られた歯科用ボンディング材の硬化物の表面に歯科充填用コンポジットレジン(クラレノリタケデンタル株式会社製、商品名「クリアフィル(登録商標)AP−X」)を充填し、離型フィルム(ポリエステル)で被覆した。次いで、その離型フィルムの上にスライドガラスを載置して押しつけることで、前記コンポジットレジンの塗布面を平滑にした。続いて、前記離型フィルムを介して、前記コンポジットレジンに対して前記LED光照射器「ペンキュアー2000」を用いて20秒間光照射を行い、前記コンポジットレジンを硬化させた。
得られた歯科充填用コンポジットレジンの硬化物の表面に対して、市販の歯科用レジンセメント(クラレノリタケデンタル株式会社製、商品名「パナビア(登録商標)21」)を用いてステンレス製円柱棒(直径7mm、長さ2.5cm)の一方の端面(円形断面)を接着した。接着後、当該サンプルを30分間室温で静置した後、蒸留水に浸漬して、接着試験供試サンプルを得た。該接着試験供試サンプルは20個作製し、37℃に保持した恒温器内に24時間静置した。20個のサンプルのうち10個については、初期接着力を評価するため、24時間静置後ただちに引張り接着強さを測定した。残りの10個については、接着耐久性を評価するため、さらに4℃の冷水と60℃の温水に交互に1分間浸漬する工程を1サイクルとする熱サイクルを4000サイクル行った後に引張り接着強さを測定した。
前記接着試験供試サンプルの引張り接着強さを、万能試験機(商品名:AG−I 100N、株式会社島津製作所製)にてクロスヘッドスピードを2mm/分に設定して測定し、平均値を引張り接着強さとした。
〔象牙質凝集破壊率〕
上記初期接着力及び接着耐久性に関して引張り接着強さの測定を行った接着試験供試サンプルのそれぞれについて、該試験後の破断面を目視で観察し、全サンプル中、象牙質側が破壊しているサンプルの数の割合(%)を象牙質凝集破壊率とした。象牙質凝集破壊率が高ければ、樹脂含浸層内部への歯科用接着性組成物の浸透性が高く、それによって樹脂含浸層内部の硬化性に寄与でき、結果的に接着界面及び樹脂含浸層内部の硬化性が高くなり、接着界面の接合状態が良好であることを意味する。
〔曲げ強さ〕
調製した実施例及び比較例の歯科用接着性組成物に圧縮空気を吹き付けて揮発性有機溶媒を揮発させた。真空脱泡後、ステンレス製の金型(寸法2mm×2mm×25mm)に充填し、上下をスライドガラスで圧接し、歯科用LED光照射器(株式会社モリタ製、商品名「ペンキュアー2000」)で1点10秒、片面を5点ずつ、スライドガラスの両面に光を照射して硬化させて硬化物を得た。各実施例及び比較例について、硬化物を5本ずつ作製し、該硬化物を金型から取り出した後、37℃の蒸留水中に24時間保管した。保管後の硬化物を試験供試サンプルとして、万能試験機(商品名:AG−I 100N、株式会社島津製作所製)を用いて、支点間距離20mm、クロスヘッドスピード1mm/分の条件下で曲げ強さを測定し、各サンプルの測定値の平均値を算出し、曲げ強さとした。
Figure 2021059515
表1に示すように、本発明に係る歯科用接着性組成物(実施例1〜8)は象牙質に対して14.0MPa以上の初期接着力を示し、14.5MPa以上の接着耐久性を発現した。また、象牙質凝集破壊率は、初期接着力を測定したサンプルでは80%以上、接着耐久性を測定したサンプルでは60%以上であり、樹脂含浸層内部への歯科用接着性組成物の浸透性が高くなっていることが示唆された。それに対し、重合性単量体(A)を含まない歯科用接着性組成物(比較例1〜9)は、象牙質に対する初期接着力は14.0MPa以下、接着耐久性は13MPa以下であった。また、象牙質凝集破壊率は、初期接着力を測定したサンプルで60%以下、接着耐久性を測定したサンプルで40%以下であり、樹脂含浸層内部への歯科用接着性組成物の浸透性が十分でないことが示唆された。また、曲げ強さについては、実施例と比較例がほぼ同等であり、歯科用接着性組成物の硬化物は十分な機械的強度を示した。
本発明に係る歯科用接着性組成物は、歯科医療の分野において、特に歯科用ボンディング材として好適に用いられる。

Claims (15)

  1. フルオロカーボン基、2つ以上のオレフィン性二重結合、及び1つ以上のエーテル結合を有する重合性単量体(A)、酸性基含有重合性単量体(B)、並びに重合開始剤(C)を含有する、歯科用接着性組成物。
  2. 前記重合性単量体(A)が下記一般式(1)又は(2)で表される重合性単量体を含有する、請求項1に記載の歯科用接着性組成物。
    Figure 2021059515
    Figure 2021059515
    (上記式中、R1は−O−、−NH−、又は−CH2O−を表し、R2はH、F、又はCH3を表し、Xは下記一般式(3)又は(4)で表される基であり、Yは−CH2−、−CF2−、及び−O−からなる群から選ばれる1種以上を含む基であり、Yにおいて、−CH2−の数は0〜10であり、−CF2−の数は1〜10であり、−O−の数は1〜10である。)
    Figure 2021059515
    Figure 2021059515
    (式中、R1は上記式(2)と同一意味を有し、R3はH、又はCH3を表し、R4は−O−、−NH−、又は−NHCO−を表す。)
  3. 前記重合性単量体(A)が一般式(1)で表される重合性単量体であり、Xが一般式(3)で表される基である、請求項2に記載の歯科用接着性組成物。
  4. 3がHである、請求項2又は3に記載の歯科用接着性組成物。
  5. Yにおける−CF2−の数が2〜9である、請求項2〜4のいずれか1項に記載の歯科用接着性組成物。
  6. Yにおける−O−の数が2〜9である、請求項2〜5のいずれか1項に記載の歯科用接着性組成物。
  7. Yが−CF2−CF2−を含む、請求項2〜6のいずれか1項に記載の歯科用接着性組成物。
  8. 前記重合性単量体(A)が有するエーテル結合の数が1〜10である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の歯科用接着性組成物。
  9. 前記重合性単量体(A)が有するフッ素原子の数が2〜20である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の歯科用接着性組成物。
  10. 酸性基を有しない親水性重合性単量体(D)をさらに含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の歯科用接着性組成物。
  11. 酸性基を有しない疎水性重合性単量体(E)(ただし、重合性単量体(A)に該当するものを除く)をさらに含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の歯科用接着性組成物。
  12. 前記重合開始剤(C)が、光重合開始剤(C−1)である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の歯科用接着性組成物。
  13. 前記酸性基含有重合性単量体(B)が、リン酸基含有重合性単量体である、請求項1〜12のいずれか1項に記載の歯科用接着性組成物。
  14. 前記重合性単量体(A)の含有量が、重合性単量体の全量100質量部において、0.5〜40質量部である、請求項1〜13のいずれか1項に記載の歯科用接着性組成物。
  15. 請求項1〜14のいずれか1項に記載の歯科用接着性組成物からなる、歯科用ボンディング材。
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