JP2021054945A - プロペラシャフト - Google Patents

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Abstract

【課題】高速回転、低温及び/又は高温の条件下において良好な抵抗特性を有するグリース組成物をスプライン軸に備えるプロペラシャフトを提供する。【解決手段】本発明の一態様は、互いに摺動自在に嵌合した雄スプライン軸と雌スプライン軸とを少なくとも備えるプロペラシャフトであって、前記雄スプライン軸と雌スプライン軸とのいずれか一方又は両方の軸のスプライン嵌合部表面上に形成されたナイロン樹脂の皮膜と、前記雄スプライン軸と雌スプライン軸との間に配置されたグリース組成物と、を有し、前記グリース組成物は、エチレン−αオレフィン共重合体を含む基油を含み、前記基油の40℃における動粘度が6,000 mm2/s以上且つ15,000 mm2/s未満の範囲であり、前記グリース組成物は、ポリテトラフルオロエチレン及び炭化水素系合成ワックスを含む、プロペラシャフトに関する。【選択図】図1

Description

本発明は、プロペラシャフトに関する。
自動車等の動力伝達部は、一般的に、軸方向の変位を吸収する機能を備えるプロペラシャフトを有する。プロペラシャフトは、通常は、雄スプライン軸と雌スプライン軸とを嵌合させたスプライン部を有する。雄スプライン軸及び雌スプライン軸は、例えばホブ加工によってスプライン溝を形成することによって作製される。
前記雄スプライン軸及び雌スプライン軸の嵌合部には、伸縮軸の軸方向の摺動抵抗を軽減するために、グリースが塗布される。スプライン部のような摺動部材に用いられるグリースは、通常は、基油を含有する。
例えば、特許文献1は、樹脂部材と金属部材との間、並びに金属部材と金属部材との間の滑り潤滑を、長期にわたり良好に維持できる樹脂潤滑用グリース組成物を提供することを目的として、基油と、増ちょう剤と、非極性ワックス及び極性ワックスの少なくとも1種類とを含有することを特徴とする樹脂潤滑用グリース組成物を記載する。特許文献1は、前記樹脂潤滑用グリース組成物を車両ステアリング用伸縮棒又は電動パワーステアリング装置に適用することにより、耐久性を向上させて長寿命化を図ることができると記載する。
特許文献2は、雄スプライン軸と雌スプライン軸のスプライン嵌合部表面にナイロン樹脂の皮膜を形成し、且つ、グリースに含まれる基油が合成炭化水素油と鉱油からなる群から選択される少なくとも1種の炭化水素油を含み、40℃において20 mm2/s以上の動粘度を有する、車両ステアリング用伸縮軸を開示する。特許文献2は、スプライン軸の嵌合部の表面にナイロン樹脂の皮膜を形成し、さらに摺動部にグリースを塗布することにより、摺動抵抗が低減され、且つ耐摩耗性が向上すると記載する。
特許文献3は、互いに嵌合するスプラインシャフト及びスプラインスリーブを有し、スプラインシャフトの外面又はスプラインスリーブの内面の少なくとも一方に樹脂コーティングを施したプロペラシャフトにおいて、前記樹脂コーティングが施される前記スプラインの表面は、0.75 mm以下のピッチでホブ加工されてなることを特徴とするプロペラシャフトを記載する。特許文献3は、前記樹脂コーティングが、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)又はポリエチレンのような固体潤滑剤を含むことを記載する。
特許文献4は、基油、増ちょう剤及び添加剤を含む、プロペラシャフトスプライン部の嵌合部に使用されるグリース組成物であって、前記基油としてポリブテンを含み、前記添加剤としてワックスを含み、かつ前記基油の40℃における動粘度が5,000〜40,000 mm2/sの範囲であるグリース組成物を記載する。
特許文献5は、互いに摺動自在に嵌合した雄スプライン軸と雌スプライン軸を少なくとも備えるプロペラシャフトであって、前記雄スプライン軸と雌スプライン軸のいずれか一方又は両方の軸のスプライン嵌合部表面上に形成されたナイロン樹脂の皮膜と、前記雄スプライン軸と雌スプライン軸の間に配置されたグリース組成物と、を有し、前記グリース組成物は、ポリブテンを含む基油を含み、前記基油の40℃における動粘度が15,000 mm2/s以上36,000 mm2/s以下である、プロペラシャフトを記載する。
国際公開第2004/081156号 特開2006-123820号公報 特開2014-238105号公報 特開2017-145284号公報 特開2018-155367号公報
前記のように、自動車等のプロペラシャフトの摺動部材における摺動抵抗を軽減させることを目的とした様々なグリース組成物が知られている。しかしながら、これらの従来技術のグリース組成物には、いくつかの課題が存在した。例えば、特許文献2に記載の伸縮軸では、招動抵抗の低減を目的として比較的低粘度(20〜200 mm2/s、40℃)の基油を用いたグリースが使用されている。しかしながら、低粘度の基油を用いたグリースでは、スプライン軸に加わるトルクが大きくなると、スプライン嵌合部に十分な油膜が形成されず、性能低下を引き起こす可能性がある。また、伸縮軸を長期に亘って使用した場合、嵌合部表面の皮膜が摩耗する可能性がある。皮膜が摩耗すると、面圧が低下するため、低粘度の基油を用いたグリースでは、動スライド抵抗が低下する。その結果、いわゆるスティックスリップが発生し易くなる場合がある。
また、特許文献5に記載のプロペラシャフトでは、スプライン嵌合部に、ポリブテンを含み、且つ40℃における動粘度が15,000 mm2/s以上である基油を用いたグリース組成物が使用されている。しかしながら、ポリブテンを基油として含むグリース組成物は、基油の分子屈曲性が低いため、二面間の摺動部において抵抗が大きくなり、静スライド抵抗が上昇する可能性がある。また、当該文献に記載のグリース組成物は、基油の40℃における動粘度が高く、且つ基油に粘度指数の高いポリブテンを含むことから、低温でのグリース攪拌抵抗が上昇する可能性がある。
それ故、本発明は、高速回転、低温及び/又は高温の条件下において良好な抵抗特性を有するグリース組成物をスプライン軸に備えるプロペラシャフトを提供することを目的とする。
本発明者らは、前記課題を解決するための手段を種々検討した。本発明者らは、プロペラシャフトのスプライン軸に使用するグリース組成物において、所定の動粘度を有するエチレン−αオレフィン共重合体を基油に含み、且つポリテトラフルオロエチレン及び炭化水素系合成ワックスを含むことにより、スプライン軸の嵌合部における静スライド抵抗を低下させ、且つ動スライド抵抗を上昇させることができることを見出した。本発明者らは、前記知見に基づき、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の態様及び実施形態を包含する。
(1) 互いに摺動自在に嵌合した雄スプライン軸と雌スプライン軸とを少なくとも備えるプロペラシャフトであって、
前記雄スプライン軸と雌スプライン軸とのいずれか一方又は両方の軸のスプライン嵌合部表面上に形成されたナイロン樹脂の皮膜と、
前記雄スプライン軸と雌スプライン軸との間に配置されたグリース組成物と、
を有し、
前記グリース組成物は、エチレン−αオレフィン共重合体を含む基油を含み、前記基油の40℃における動粘度が6,000 mm2/s以上且つ15,000 mm2/s未満の範囲であり、
前記グリース組成物は、ポリテトラフルオロエチレン及び炭化水素系合成ワックスを含む、プロペラシャフト。
本発明により、高速回転、低温及び/又は高温の条件下において良好な抵抗特性を有するグリース組成物をスプライン軸に備えるプロペラシャフトを提供することを提供することが可能となる。それ故、本発明の一態様のプロペラシャフトは、スティックスリップの発生を実質的に抑制して、車両の静粛性を向上させることが可能となる。
図1は、本発明の一態様のプロペラシャフトの一実施形態を示す断面図である。(a)雄スプライン軸の横断面図、(b)雌スプライン軸の横断面図。
以下、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
<1. プロペラシャフト>
本発明者らは、プロペラシャフトのスプライン軸に使用するグリース組成物において、所定の動粘度を有するエチレン−αオレフィン共重合体を基油に含み、且つポリテトラフルオロエチレン及び炭化水素系合成ワックスを含むことにより、スプライン軸の嵌合部における静スライド抵抗を低下させ、且つ動スライド抵抗を上昇させることができることを見出した。それ故、本発明の一態様は、互いに摺動自在に嵌合した雄スプライン軸と雌スプライン軸とを少なくとも備えるプロペラシャフトであって、前記雄スプライン軸と雌スプライン軸との間に配置されたグリース組成物を有する前記プロペラシャフトに関する。
本態様のプロペラシャフトは、通常は、自動車等の車両の動力伝達部に使用することができる。本態様のプロペラシャフトを自動車等の車両の動力伝達部に使用することにより、スティックスリップの発生を実質的に抑制して、車両の静粛性を向上させることができる。
[プロペラシャフト及びスプライン部]
本態様のプロペラシャフトは、通常は、軸方向の変位を吸収するために、互いに摺動自在に嵌合した雄スプライン軸と雌スプライン軸とを少なくとも備える。本態様のプロペラシャフトにおいて、雄スプライン軸と雌スプライン軸とのいずれか一方又は両方の軸のスプライン嵌合部表面上には、ナイロン樹脂の皮膜が形成されている。ナイロン樹脂の皮膜は、雄スプライン軸及び雌スプライン軸のどちらか一方の軸のスプライン嵌合部表面に形成されていればよい。本態様のプロペラシャフトの一実施形態を示す断面図を図1に示す。図中、(a)は、雄スプライン軸の横断面図であり、(b)は、雌スプライン軸の横断面図である。例えば、図1(a)に示すように、本態様のプロペラシャフトの一実施形態において、ナイロン樹脂の皮膜3aは、雄スプライン軸1のスプライン嵌合部表面に形成されている。例えば、図1(b)に示すように、本態様のプロペラシャフトの別の一実施形態において、ナイロン樹脂の皮膜3bは、雌スプライン軸2のスプライン嵌合部表面に形成されている。本態様のプロペラシャフトの別の一実施形態において、ナイロン樹脂の皮膜は、雄スプライン軸及び雌スプライン軸の両方の軸のスプライン嵌合部表面に形成されている。いずれの実施形態も、本態様のプロペラシャフトに包含される。
本態様のプロペラシャフトにおいて、スプライン嵌合部表面上にナイロン樹脂の皮膜を設けることにより、嵌合部表面の面圧が下がり、嵌合部に油膜が形成され易くなる。その結果、本態様のプロペラシャフトの軸方向の静スライド抵抗を低下させることができる。また、スプライン嵌合部表面上にナイロン樹脂の皮膜を設けることにより、嵌合部表面の面圧が下がり、潤滑油としてのグリース組成物が流体潤滑領域で作用し易くなる。このため、グリース組成物の動摩擦係数が大きくなる(参照:ストライベック曲線)。その結果、本態様のプロペラシャフトの軸方向の動スライド抵抗を上昇させることができる。
本態様のプロペラシャフトにおいて、ナイロン樹脂の皮膜の厚さは、例えば、50 μm以上且つ500 μm以下の範囲であり、100 μm以上且つ400 μm以下の範囲であることが好ましく、200 μm以上且つ300 μm以下の範囲であることがより好ましい。ナイロン樹脂の皮膜の厚さが前記下限値未満である場合、スプライン嵌合部の表面全体に亘ってグリース組成物の十分な油膜を形成できない可能性がある。それ故、スプライン嵌合部表面上に前記範囲の厚さのナイロン樹脂の皮膜を形成することにより、本態様のプロペラシャフトの軸方向の静スライド抵抗を低下させ、且つ動スライド抵抗を上昇させることができる。
本態様のプロペラシャフトにおいて、スプライン嵌合部の溝の深さは、例えば、1 mm以上且つ3 mm以下の範囲であり、溝の幅は、例えば、0.5 mm以上且つ3.0 mm以下の範囲である。スプライン嵌合部の溝の深さが前記範囲内の場合、雄スプライン軸及び雌スプライン軸が互いに摺動自在に嵌合することができる。
[グリース組成物]
本態様のプロペラシャフトにおいて、グリース組成物は、通常は、雄スプライン軸と雌スプライン軸との間に配置される。
(基油)
本態様のプロペラシャフトに使用されるグリース組成物は、エチレン−αオレフィン共重合体を含む基油を含む。本発明の各態様において、「エチレン−αオレフィン共重合体」は、エチレン及びαオレフィンをユニットとして含む共重合体を意味する。本態様のプロペラシャフトに使用されるグリース組成物において、所定の特徴を有するエチレン−αオレフィン共重合体を基油に含むことにより、スプライン軸の嵌合部における静スライド抵抗を低下させ、且つ動スライド抵抗を上昇させることができる。
エチレン−αオレフィン共重合体を基油の主成分として使用することにより前記のような作用効果を奏する理由は、以下のように説明することができる。なお、本発明の各態様は、以下の作用及び原理に限定されるものではない。αオレフィンを重合反応して製造されるポリαオレフィンは、工業的に高粘度化に限界がある。また、市販のポリαオレフィンの場合、40℃における動粘度は、通常は最大で3,400 mm2/sである。このような動粘度を有するポリαオレフィンを基油の主成分として使用した場合、以下において説明する範囲の40℃における基油動粘度を得ることは非常に困難である。
鉱油の場合、通常は粘度指数が低く流動点が高い。このため、鉱油を基油の主成分として使用した場合、結果として得られるグリース組成物の低温流動性を低下させる可能性がある。
イソブチレンを主体としたポリブテンの場合、重合反応で高粘度油を得ることができる。このため、基油の高粘度化に有効である。しかしながら、ポリブテンは、一個おきに第四級炭素が結合している構造を有する。このため、ポリブテンは、分子屈曲性が低く、低温粘度が高い。さらに、ポリブテンは、同じ理由で圧力粘度係数が高く、二面間の摺動部においてせん断抵抗が大きくなり、静スライド抵抗が上昇する可能性がある。
これに対し、エチレン−αオレフィン共重合体は、ポリαオレフィンと略同じような分子屈曲性に優れた構造を有する。このため、エチレン−αオレフィン共重合体は、優れた温度粘度特性、圧力粘度特性及び低温流動性を有している。また、エチレン−αオレフィン共重合体は、工業的に高粘度油の製造もできる。それ故、エチレン−αオレフィン共重合体を基油の主成分として使用することにより、以下において説明する範囲の40℃における基油動粘度を得ることができる。
エチレン−αオレフィン共重合体において、αオレフィンユニットは、通常は炭素数3以上のアルケンを重合して得られる。また、αオレフィンユニットは、好ましくは炭素数10以下、より好ましくは8以下、最も好ましくは5以下のアルケンを重合して得られる。前記範囲内の炭素数を有するαオレフィンユニットを含むエチレン−αオレフィン共重合体を基油の主成分として使用することにより、以下において説明する範囲の40℃における基油動粘度を得ることができる。
エチレン−αオレフィン共重合体は、室温(約25℃)において液体であることが好ましい。また、エチレン−αオレフィン共重合体は、低温での粘性を維持するために、JIS K2269で示される流動点が、0℃以下であることが好ましい。前記特徴を有するエチレン−αオレフィン共重合体は、低温条件下において良好な抵抗特性を発現することができる。
エチレン−αオレフィン共重合体は、40℃における動粘度が、6,000 mm2/s以上であることが好ましく、8,000 mm2/s以上であることがより好ましく、9,000 mm2/s以上であることがさらに好ましい。エチレン−αオレフィン共重合体は、40℃における動粘度が、50,000 mm2/s以下であることが好ましく、45,000 mm2/s以下であることがより好ましく、40,000 mm2/s以下であることがさらに好ましい。エチレン−αオレフィン共重合体は、40℃における動粘度が、6,000 mm2/s以上且つ50,000 mm2/s以下の範囲であることが好ましく、8,000 mm2/s以上且つ45,000 mm2/s以下の範囲であることがより好ましく、9,000 mm2/s以上且つ40,000 mm2/s以下の範囲であることがさらに好ましい。エチレン−αオレフィン共重合体の40℃における動粘度が前記下限値未満の場合、結果として得られる基油の40℃における動粘度が、以下において説明する範囲に到達することが困難となる可能性がある。エチレン−αオレフィン共重合体の40℃における動粘度が前記上限値を超える場合、グリース組成物中で共重合体分子が凝集するため、高せん断になる二面間の摺動部において、均一なグリース見かけ粘度の増加効果を得ることができない可能性がある。そのような場合、結果として得られる本態様のプロペラシャフトの軸方向の動スライド抵抗が低下する可能性がある。
本態様のプロペラシャフトに使用されるグリース組成物は、基油の40℃における動粘度が、通常は6,000 mm2/s以上であり、8,000 mm2/s以上であることが好ましく、9,000 mm2/s以上であることがより好ましい。また、基油の40℃における動粘度が、通常は15,000 mm2/s未満であり、14,000 mm2/s以下であることが好ましく、13,000 mm2/s以下であることがより好ましい。グリース組成物における基油の40℃における動粘度が前記下限値未満の場合、二面間の摺動部において油膜を形成することができず、静摩擦係数が上昇し、結果として静スライド抵抗が上昇する可能性がある。また、グリース組成物の見かけ粘度が低下し、結果として動スライド抵抗が低下する可能性がある。グリース組成物における基油の40℃における動粘度が前記上限値を超える場合、グリース組成物の見かけ粘度が過度に上昇し、スプライン嵌合部にグリース組成物が十分に流入しない可能性がある。また、雄スプライン軸と雌スプライン軸とを嵌合させる際の抵抗が過度に上昇し、本態様のプロペラシャフトを形成することが困難となる可能性がある。さらに、低温雰囲気下でグリース組成物が十分に流動せず、摺動部の潤滑不良となる可能性がある。それ故、前記範囲内の基油の40℃における動粘度を有することにより、本態様のプロペラシャフトのスプライン軸の嵌合部における静スライド抵抗を低下させ、且つ動スライド抵抗を上昇させることができる。これにより、本態様のプロペラシャフトはスティックスリップの発生を実質的に抑制して、車両の静粛性を向上させることができる。
本発明の各態様において、基油等の所定の温度における動粘度は、限定するものではないが、例えば、ガラス細管粘度計を用いて、JIS K2283に基づき所定の温度において測定することができる。
本態様のプロペラシャフトに使用されるグリース組成物におけるエチレン−αオレフィン共重合体の含有量は、グリース組成物の総質量に対して、60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。エチレン−αオレフィン共重合体の含有量は、グリース組成物の総質量に対して、100質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましい。前記範囲内の含有量でエチレン−αオレフィン共重合体を含むことにより、本態様のプロペラシャフトのスプライン軸の嵌合部における静スライド抵抗を低下させ、且つ動スライド抵抗を上昇させることができる。これにより、本態様のプロペラシャフトはスティックスリップの発生を実質的に抑制して、車両の静粛性を向上させることができる。
本発明の各態様において、グリース組成物の基油の主成分として含まれるエチレン−αオレフィン共重合体の構造及び含有量は、限定するものではないが、例えば、NMR、FT-IR又はGPC等の分析手段により確認することができる。
本態様のプロペラシャフトに使用されるグリース組成物は、エチレン−αオレフィン共重合体に加えて、所望により1種類以上の他の基油を含んでもよい。1種類以上の他の基油は、前記で説明した基油の40℃における動粘度を有するものであれば特に限定されない。但し、本実施形態の場合、グリース組成物は、1種類以上の他の基油としてポリブテンを実質的に含まない。低温流動性、及び樹脂・ゴム適合性の悪化を回避する観点から、1種類以上の他の基油は、ポリαオレフィンであることが好ましい。1種類以上の他の基油の40℃における動粘度は、10 mm2/s以上であることが好ましく、20 mm2/s以上であることがより好ましく、30 mm2/s以上であることがさらに好ましい。1種類以上の他の基油の40℃における動粘度は、1,500 mm2/s以下であることが好ましく、500 mm2/s以下であることがより好ましく、100 mm2/s以下であることがさらに好ましい。1種類以上の他の基油の40℃における動粘度は、10 mm2/s以上且つ1,500 mm2/s以下の範囲であることが好ましく、20 mm2/s以上且つ500 mm2/s以下の範囲であることがより好ましく、30 mm2/s以上且つ100 mm2/s以下であることがさらに好ましい。
本発明の各態様において、グリース組成物に所望により含まれる1種類以上の他の基油の構造及び含有量は、限定するものではないが、例えば、NMR、FT-IR又はGPC等の分析手段により確認することができる。
(ポリテトラフルオロエチレン)
本態様のプロペラシャフトに使用されるグリース組成物は、通常は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含む。グリース組成物に含まれるPTFEは、任意の方法で製造された粉末状の形態であればよい。本実施形態の場合、粉末状の形態のPTFEの平均粒径は、0.5 μm以上且つ10 μm以下の範囲であることが好ましい。PTFEの含有量は、グリース組成物の総質量に対して、2質量%以上且つ30質量%以下の範囲であることが好ましく、6質量%以上且つ20質量%以下の範囲であることがより好ましく、10質量%以上且つ15質量%以下の範囲であることがさらに好ましい。PTFEの含有量が前記下限値未満の場合、静摩擦係数の低減効果が十分に発現しない可能性がある。PTFEの含有量が前記上限値を超える場合、静摩擦係数の低減効果が頭打ちになる、且つ/又はグリース組成物の見かけ粘度が上昇して低温流動性が低下する可能性がある。それ故、グリース組成物が前記特徴を有するPTFEを含むことにより、本態様のプロペラシャフトは、良好な抵抗特性を発現することができる。
本発明の各態様において、PTFEの含有量は、限定するものではないが、例えば、FT-IRにより、PTFEの特性吸収と基油の特性吸収との吸光度比を測定する等の分析手段により確認することができる。
本発明の各態様において、粉末状の形態のPTFEの平均粒径は、限定するものではないが、例えば、乾式レーザー法又はマイクロトラック法等の方法で測定することができる。
(炭化水素系合成ワックス)
本態様のプロペラシャフトに使用されるグリース組成物は、通常は、炭化水素系合成ワックスを含む。グリース組成物に含まれる炭化水素系合成ワックスの構造及び分子量は、特に限定されない。炭化水素系合成ワックスとしては、限定するものではないが、例えば、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス及びポリプロピレンワックス等を挙げることができる。炭化水素系合成ワックスの軟化点は、100℃以上であることが好ましく、120℃以上であることがより好ましく、140℃以上であることがさらに好ましい。炭化水素系合成ワックスの軟化点が前記下限値未満の場合、本態様のプロペラシャフトは高温環境下で使用されるためグリース組成物に含まれる炭化水素系合成ワックスが液状化して、摩擦低減効果が十分に発現しない可能性がある。それ故、グリース組成物が前記特徴を有する炭化水素系合成ワックスを含むことにより、本態様のプロペラシャフトは、良好な抵抗特性を発現することができる。
本発明の各態様において、炭化水素系合成ワックスの軟化点は、限定するものではないが、例えば、ASTMD 3104に基づき測定することができる。
炭化水素系合成ワックスの含有量は、グリース組成物の総質量に対して、1質量%以上且つ10質量%以下の範囲であることが好ましく、2質量%以上且つ5質量%以下の範囲であることがより好ましい。炭化水素系合成ワックスの含有量が前記下限値未満の場合、静摩擦係数の低減効果が十分に発現しない可能性がある。炭化水素系合成ワックスの含有量が前記上限値を超える場合、静摩擦係数の低減効果が頭打ちになる、且つ/又はグリース組成物の見かけ粘度が上昇して低温流動性が低下する可能性がある。それ故、グリース組成物が前記特徴を有する炭化水素系合成ワックスを含むことにより、本態様のプロペラシャフトは、良好な抵抗特性を発現することができる。
本発明の各態様において、炭化水素系合成ワックスの構造及び含有量は、限定するものではないが、例えば、NMR、FT-IR又はGPC等の分析手段により確認することができる。
(増ちょう剤)
本態様のプロペラシャフトに使用されるグリース組成物は、所望により増ちょう剤を含むことができる。本実施形態の場合、グリース組成物に含まれる増ちょう剤は、特に限定されない。増ちょう剤としては、限定するものではないが、例えば、リチウム石鹸及びリチウム複合石鹸に代表される金属石鹸系増ちょう剤、ジウレアに代表されるウレア系増ちょう剤、並びに有機化クレイ及びシリカに代表される無機系増ちょう剤等を挙げることができる。増ちょう剤は、任意の金属元素及び任意の脂肪酸の組み合わせからなる金属石鹸系増ちょう剤であることが好ましい。金属石鹸系増ちょう剤を形成する金属元素は、リチウム、カルシウム、バリウム、アルミニウム又は亜鉛等であることが好ましい。また、金属石鹸系増ちょう剤を形成する脂肪酸は、ステアリン酸又は12-ヒドロキシステアリン酸であることが好ましい。
グリース組成物の混和ちょう度は、265以上且つ430以下の範囲であることが好ましく、310以上且つ385以下の範囲であることがより好ましく、335以上且つ370以下の範囲であることがさらに好ましい。グリース組成物の混和ちょう度が前記下限値未満の場合、本態様のプロペラシャフトにおいて、グリース組成物が十分に行き渡らない可能性がある。また、グリース組成物の混和ちょう度が前記上限値を超える場合、グリース組成物が過度に軟化し、本態様のプロペラシャフトから漏洩する可能性がある。それ故、前記範囲の混和ちょう度を有するグリース組成物を使用することにより、本態様のプロペラシャフトは、スプライン嵌合部から該組成物が漏洩することなく、良好な抵抗特性を発現することができる。
なお、グリース組成物の混和ちょう度は、例えば、JIS K2220 9に基づき測定することができる。
グリース組成物に含まれる増ちょう剤の含有量は、増ちょう剤の種類に基づき適宜選択することができる。増ちょう剤は、グリース組成物が前記範囲の混和ちょう度となる量で該グリース組成物に含まれることが好ましい。前記要件を満たす増ちょう剤の含有量は、グリース組成物の総質量に対して通常は0.1〜30 質量%の範囲であり、典型的には0.5〜25質量%の範囲である。増ちょう剤の含有量が前記上限値を超える場合、本態様のプロペラシャフトにおいて、グリース組成物が十分に行き渡らない可能性がある。また、増ちょう剤の含有量が前記下限値未満の場合、グリース組成物が過度に軟化し、本態様のプロペラシャフトから漏洩する可能性がある。それ故、前記範囲の含有量で増ちょう剤を含むグリース組成物を使用することにより、本態様のプロペラシャフトは、スプライン嵌合部から該組成物が漏洩することなく、良好な抵抗特性を発現することができる。
本発明の各態様において、増ちょう剤の構造及び含有量は、限定するものではないが、例えば、増ちょう剤がリチウム石鹸等の金属石鹸系増ちょう剤の場合、FT-IR等の分析手段による定性分析、及び増ちょう剤を酸分解後、酸価測定する等の定量分析により確認することができる。
(さらなる添加剤)
本態様のプロペラシャフトに使用されるグリース組成物は、前記で説明した成分に加えて、所望により、当該技術分野で通常使用される1種以上のさらなる添加剤を含むことができる。さらなる添加物としては、限定するものではないが、例えば、フェノール系若しくはアミン系に代表される酸化防止剤、スルフォネート系、コハク酸系、アミン系若しくはカルボン酸塩系に代表される錆止め剤、ベンゾトリアゾール若しくはチアジアゾールに代表される金属腐食防止剤、脂肪酸、脂肪酸エステル若しくはリン酸エステルに代表される油性剤、リン系、硫黄系若しくは有機金属系に代表される耐摩耗剤又は極圧剤、並びに酸化金属塩若しくは二硫化モリブデンに代表される固体潤滑剤等を挙げることができる。本実施形態の場合、1種以上のさらなる添加剤の含有量は、グリース組成物の総質量に対して、0.1質量%以上且つ20質量%以下の範囲であることが好ましく、0.5質量%以上且つ10質量%以下の範囲であることがより好ましい。本態様のプロペラシャフトは使用温度が高いため、酸化防止のために、1種以上のさらなる添加剤としてフェノール系酸化防止剤を0.5質量%以上含むことが特に好ましい。
前記特徴を有する本態様のプロペラシャフトは、スプライン軸の嵌合部における静スライド抵抗を低下させ、且つ動スライド抵抗を上昇させることができる。これにより、本態様のプロペラシャフトはスティックスリップの発生を実質的に抑制して、車両の静粛性を向上させることができる。
本発明の各態様において、プロペラシャフトのスプライン軸の嵌合部における静スライド抵抗は、限定するものではないが、例えば、所定の温度環境(例えば80℃)下で回転するプロペラシャフトにトルクを負荷し、特定パターンでスプライン部を低速度で揺動させ、軸方向のスライド抵抗を計測することにより測定することができる。プロペラシャフトのスプライン軸の嵌合部における動スライド抵抗は、限定するものではないが、例えば、所定の温度環境(例えば80℃)下で回転するプロペラシャフトにトルクを負荷し、特定パターンでスプライン部を中〜高速度で揺動させ、軸方向のスライド抵抗を計測することにより測定することができる。また、プロペラシャフトのスティックスリップ発生は、限定するものではないが、例えば、前記手順により静スライド抵抗及び動スライド抵抗を測定し、「静スライド抵抗指標−動スライド抵抗指標」の値が0未満の場合を「良」と、0以上の場合を「不良」とそれぞれ判定することにより評価することができる。
<2. グリース組成物>
本発明の別の一態様は、グリース組成物に関する。本態様のグリース組成物は、通常は、互いに摺動自在に嵌合した雄スプライン軸と雌スプライン軸とを少なくとも備える車両用のプロペラシャフトに使用され、特に、該車両用のプロペラシャフトの雄スプライン軸と雌スプライン軸との間に配置される。
本態様のグリース組成物は、前記で説明した特徴を有する基油、PTFE、炭化水素系合成ワックス、所望により増ちょう剤、及び所望により1種以上のさらなる添加剤を含む。
前記特徴を有する本態様のグリース組成物を車両用のプロペラシャフト、特に該車両用のプロペラシャフトの雄スプライン軸と雌スプライン軸との間に配置して使用することにより、プロペラシャフトのスプライン軸の嵌合部における静スライド抵抗を低下させ、且つ動スライド抵抗を上昇させることができる。これにより、本態様のグリース組成物は、車両用のプロペラシャフトにおけるスティックスリップの発生を実質的に抑制して、該車両の静粛性を向上させることができる。
<3. グリース組成物及びプロペラシャフトの製造方法>
本発明の別の一態様は、本発明の一態様のグリース組成物及びプロペラシャフトの製造方法に関する。本態様の方法は、グリース組成物調製工程、及びプロペラシャフト作製工程を含む。
本態様の方法において、グリース組成物調製工程は、例えば、基油と、PTFEと、炭化水素系合成ワックスと、所望により増ちょう剤と、及び所望により1種以上のさらなる添加剤とを混合する工程(以下、「混合工程」とも記載する)を含む。混合工程は、ロールミル、フライマミル、シャーロットミル又はホモゲナイザ等の当該技術分野において通常使用される混練手段を用いて実施することができる。混合工程において、各種成分を混合する順序は特に限定されない。例えば、基油に、PTFE、炭化水素系合成ワックス、所望により増ちょう剤、及び所望により1種以上のさらなる添加剤を同時に添加して混合してもよく、或いは別々に(例えば、連続的に又は所定の間隔を空けて)添加して混合してもよい。
本発明の一態様のプロペラシャフトに使用されるグリース組成物が、エチレン−αオレフィン共重合体に加えて、1種類以上の他の基油を含む実施形態の場合、グリース組成物調製工程は、例えば、低粘度の1種類以上の他の基油を用いる増ちょう剤の合成反応、並びに各増ちょう剤を含むグリース組成物の加熱及び冷却等の初期工程を実施し、次いで初期工程の反応物に、基油の主成分であるエチレン−αオレフィン共重合体、PTFE、炭化水素系合成ワックス、及び所望により1種以上のさらなる添加剤を加えて混合し、所定の基油動粘度に調整する工程を実施することによって行うことが好ましい。本実施形態の場合、グリース組成物調製工程の実施時間を短縮することができる。
本態様の方法において、プロペラシャフト作製工程は、例えば、互いに摺動自在に嵌合した雄スプライン軸と雌スプライン軸とを少なくとも備えるプロペラシャフトを準備する工程、雄スプライン軸と雌スプライン軸とのいずれか一方又は両方の軸のスプライン嵌合部表面上にナイロン樹脂の皮膜を形成する工程、及び雄スプライン軸と雌スプライン軸との間に、グリース組成物調製工程によって得られた本発明の一態様のグリース組成物を配置する工程を含む。前記各工程は、当該技術分野において通常使用される各種手段を用いて実施することができる。例えば、プロペラシャフトを準備する工程において、スプライン嵌合部の溝は、例えばホブ加工等の慣用の手段で形成することができる。
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
<I:グリース組成物の調製>
表1及び2に示す増ちょう剤、基油及び添加剤を用いて、実施例及び比較例のグリース組成物を調製した。具体的には、表1及び2に記載の基油と12-ヒドロキシステアリン酸とを容器中で混合した後、水酸化リチウム水溶液を加え、ケン化反応によってLi石鹸(12-ヒドロキシステアリン酸リチウム)を得た。得られた反応物を撹拌しながら昇温及び冷却して、リチウムベースグリースを得た。得られたリチウムベースグリースに、基油に溶解して冷却したワックスを場合によって加えた。得られた混合物を、3本ロールミルを用いて混練し、所定の混和ちょう度になるように調製した。
<II:グリース組成物の性能評価>
[混和ちょう度の測定試験]
実施例及び比較例のグリース組成物の混和ちょう度(25℃の60回混和ちょう度)を、JIS K2220 7に基づき測定した。
[静摩擦係数の測定試験]
本発明の各態様において、「静摩擦係数」は、平面を有する2つの試験片の往復摺動における、20回目の摺動におけるストローク端(速度=0)から動き出しの摩擦係数を意味する。本試験では、2つの試験片の間に実施例又は比較例のグリース組成物を塗布し、以下の条件で測定を行った。
・装置:SRV振動摩擦摩耗試験機
・測定条件:
上試験片;直径11 mmの円盤状、材質S35C、摺動面の面粗度Rz:約10 μm
下試験片;直径24 mmの円盤状、材質SUJ-2、
摺動面に厚さ250 μmのナイロン11コーティング
樹脂表面温度;80℃、平均面圧;1 MPa、ストローク;±2 mm、周波数;0.5 Hz
[見かけ粘度の測定試験]
本発明の各態様において、「見かけ粘度」は、一定の剪断率の条件下でグリース組成物が流動する際の粘度を意味する。本試験では、プレート及びコーンの間に実施例又は比較例のグリース組成物を塗布し、以下の条件で測定を行った。
・装置:回転型レオメーター(コーンプレート)
・測定条件:
ジオメトリ;コーン半径12.5 mm、コーン角度2°
ギャップ;0.05 mm、温度;室温25℃、せん断率;350 s-1
[低温トルクの測定試験]
実施例及び比較例のグリース組成物の-30℃における低温トルクのうち起動トルクを、JIS K2220 18に基づき測定した。
[スティックスリップ評価]
雄スプライン軸の嵌合部表面にナイロン樹脂(膜厚300 μm、商品名:RILSAN T、アルケマ社製)が形成されているスプライン構造を有するプロペラシャフトを使用して、実機での効果確認を行った。
評価手順は、初期に静スライド抵抗及び動スライド抵抗を計測した。
・静スライド抵抗計測
温度環境80℃下で回転するプロペラシャフトにトルクを負荷し、特定パターンでスプライン部を低速度で揺動させ、軸方向のスライド抵抗を計測した。
・動スライド抵抗計測
温度環境80℃下で回転するプロペラシャフトにトルクを負荷し、特定パターンでスプライン部を中〜高速度で揺動させ、軸方向のスライド抵抗を計測した。
なお、静スライド抵抗指標及び動スライド抵抗指標は、実施例1の静スライド抵抗値を基準(=1)として示した。なお、動スライド測定時のすべり速度は、段階的に変化させ、すベり速度8 mm/sのデータで整理した。
スティックスリップ評価の判定は、以下の条件にて行った。
○:(静スライド抵抗指標−動スライド抵抗指標)<0
×:(静スライド抵抗指標−動スライド抵抗指標)≧0
<III:結果>
実施例及び比較例のグリース組成物の組成及び評価結果を表1及び2に示す。表中、基油の含有量は、基油の全成分の総質量に対する質量%であり、添加剤の含有量は、グリース組成物の全成分の総質量に対する質量%である。
Figure 2021054945
Figure 2021054945
表1及び2において示す材料の具体的特徴は以下の通りである。
Li石鹸:12-ヒドロキシステアリン酸リチウム
共重合体a:エチレンプロピレン共重合体、40℃における動粘度:37,500 mm2/s
共重合体b:エチレンプロピレン共重合体、40℃における動粘度9,800 mm2/s
PAOa:ポリαオレフィン、40℃における動粘度46 mm2/s
PAOb:ポリαオレフィン、40℃における動粘度3,400 mm2/s
鉱油:パラフィン系鉱油、40℃における動粘度180 mm2/s
ポリブテン:ポリイソブチレン、40℃における動粘度160,000 mm2/s
PTFE:ポリテトラフルオロエチレンパウダー、平均粒径3.7μm
ワックスa:ポリプロピレンワックス、軟化点145〜150℃
ワックスb:ポリプロピレンワックス、軟化点142〜148℃
ワックスc:ポリエチレンワックス、軟化点132〜138℃
酸化防止剤:フェノール系酸化防止剤
MCA:メラミンシアヌレートパウダー、平均粒径2.1μm
ワックスd:モンタンワックス、軟化点96〜102℃
実施例及び比較例のグリース組成物を有するプロペラシャフトのスティックスリップ評価結果を表3に示す。
Figure 2021054945
比較例1〜3と比較して、基油動粘度が高い実施例1〜4のグリース組成物は、静摩擦係数が低く、見かけ粘度が高いことが明らかとなった。特開2018-155367号公報に記載のグリース組成物に相当する、基油にポリブテンを含有し、添加剤としてワックスaを含有する比較例5及び6は、静摩擦係数が高いことが明らかとなった。実施例1の成分からPTFEを除去した比較例8、実施例1の成分からワックスaを除去した比較例11の静摩擦係数はいずれも高かったことから、PTFE及びワックスaの併用により静摩擦係数を低減できることが明らかとなった。また、実施例1と、比較例3、8及び11とのスティックスリップ性能評価結果の比較から、本発明の一態様のプロペラシャフトによりスティックスリップを抑制できることが明らかとなった。

Claims (1)

  1. 互いに摺動自在に嵌合した雄スプライン軸と雌スプライン軸とを少なくとも備えるプロペラシャフトであって、
    前記雄スプライン軸と雌スプライン軸とのいずれか一方又は両方の軸のスプライン嵌合部表面上に形成されたナイロン樹脂の皮膜と、
    前記雄スプライン軸と雌スプライン軸との間に配置されたグリース組成物と、
    を有し、
    前記グリース組成物は、エチレン−αオレフィン共重合体を含む基油を含み、前記基油の40℃における動粘度が6,000 mm2/s以上且つ15,000 mm2/s未満の範囲であり、
    前記グリース組成物は、ポリテトラフルオロエチレン及び炭化水素系合成ワックスを含む、プロペラシャフト。
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