JP2021052081A - 光電変換素子及び太陽電池、光吸収剤、並びに、発光素子 - Google Patents

光電変換素子及び太陽電池、光吸収剤、並びに、発光素子 Download PDF

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Abstract

【課題】感光層の光吸収剤として、簡便な塗布工程によりペロブスカイト膜を構築でき、しかも得られた膜が優れた耐熱性を有する、鉛フリーのペロブスカイト化合物を含む光電変換素子及び太陽電池、光吸収剤、並びに、発光素子を提供する。【解決手段】導電層11と導電層11上に設けられた光吸収剤を含む感光層13Aとを有する第一電極1Aと、第一電極1Aに対向する第二電極2とを有する光電変換素子10Aであって、光吸収剤が特定の組成式で表されるペロブスカイト型結晶構造を有する太陽電池。【選択図】図1

Description

本発明は、光電変換素子及び太陽電池、光吸収剤、並びに、発光素子に関する。
光電変換素子は、各種の光センサー、複写機及び太陽電池等に用いられている。太陽電池は、非枯渇性の太陽エネルギーを利用するものとして、その実用化が進められている。この中でも、増感剤として有機色素又はRuビピリジル錯体等を用いた色素増感太陽電池は、研究開発が盛んに進められ、光電変換効率が11%程度に到達している。
その一方で、近年、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物(以下、「ペロブスカイト化合物」ともいう。)として鉛ハロゲン化物を用いた太陽電池が、比較的高い光電変換効率を達成できるとの研究成果が報告され、注目を集めている。しかし、鉛は有害元素であるため、鉛を含まない又は含んでも少量である(これらを併せて鉛フリーと称す。)ペロブスカイト化合物の開発が望まれ、種々の検討がなされている。
例えば、非特許文献1及び2には、1価の金属カチオン及び3価の金属カチオンの2種のBサイト金属カチオンを等モル量用いた、いわゆるダブルペロブスカイト型化合物が記載されている。
上記ダブルペロブスカイト型化合物のように3次元の結晶構造を有するものの他に、2次元の結晶構造を有する、いわゆる2次元ペロブスカイト化合物も検討されている。例えば、非特許文献3には、一般式Cs3+nM(II)Sb9+3n(M=Sn又はGe、n=1、3、5、7又は9を示す。)で表される2次元ペロブスカイト化合物の物性に係るシミュレーションが報告されている。
The Journal of Physical Chemistry Letters, 2016, vol.7, p.1254 Journal of Materials Chemistry A, 2017, 5, p.19972 The Journal of Physical Chemistry Letters, 2018, vol.9, p.43-48
光電変換素子の感光層に含まれる光吸収剤には、光電変換素子の工業的な生産効率を向上させる観点から、より少ない工程数で簡便に、目的のペロブスカイト化合物の膜を形成できること(以下、「製膜性」とも称す。)が求められてくる。また、ペロブスカイト化合物の膜(以下、ペロブスカイト膜とも称す。)を光電変換素子に適用する場合、使用環境に依っては素子が高温(例えば、80℃以上)にさらされることから、熱に対する安定性も求められる。これは、鉛フリーのペロブスカイト化合物の膜についても同じである。
しかし、本発明者が検討したところ、これまで知られている鉛フリーのペロブスカイト化合物では、上記の特性を十分に満足するには至っていないことがわかってきた。例えば、上記非特許文献1及び2に記載のペロブスカイト化合物は、簡便な方法でペロブスカイト型結晶構造を有する膜を作製できるものはほとんどなく、そもそも、得られた膜は、加熱によって膜にクラックが生じてしまうことがわかってきた。このクラックの発生は、ペロブスカイト膜を適用した光電変換素子の性能の低下に繋がる可能性がある。また、上記非特許文献3に記載のペロブスカイト化合物の膜は、加熱により吸光度そのものが低下してしまう問題があることがわかってきた。この吸光度の低下は、例えば、ペロブスカイト膜を適用した光電変換素子の光電変換効率の低下に繋がる。
これらの点に鑑み、簡便な方法でペロブスカイト膜を構築でき、しかも、得られた膜は、加熱によるペロブスカイト膜のクラックの発生及び吸光度の低下のいずれもが効果的に抑制された(以下、これらの特性を耐熱性と称す。)、鉛フリーのペロブスカイト化合物の開発が求められている。
本発明は、感光層の光吸収剤として、簡便な塗布工程によりペロブスカイト膜を構築でき、しかも得られた膜が優れた耐熱性を有する、鉛フリーのペロブスカイト化合物を含む光電変換素子及びこの光電変換素子を用いた太陽電池を提供することを課題とする。
また、本発明は、簡便な塗布工程によりペロブスカイト膜を構築でき、しかも得られた膜が優れた耐熱性を有する、鉛フリーのペロブスカイト化合物を含む光吸収剤を提供することを課題とする。
さらに、本発明は、上記優れた特性を有する光吸収剤を含む層を具備する、発光素子を提供することを課題とする。
本発明者が上記課題に鑑み鋭意検討した結果、特定のカチオンA及びカチオンBを有するペロブスカイト化合物であって、カチオンBを構成する金属カチオンとして、1価の金属カチオン及び2価の金属カチオンを少なくとも含む組合わせを適用し、また、カチオンBに対するカチオンAの組成比を特定の範囲とし、さらに、カチオンBとして、価数毎に算出される金属カチオンの割合のうち最も高い割合が2価の金属カチオンの割合となるように含有することにより、金属カチオンとして鉛を用いなくても、優れた製膜性を有し、しかも得られた膜が優れた耐熱性を示すことを見出した。本発明はこれらの知見に基づき更に検討を重ね、完成されるに至ったものである。
すなわち、本発明の上記の課題は以下の手段により解決された。
<1>
導電層とこの導電層上に設けられた光吸収剤を含む感光層とを有する第一電極と、上記第一電極に対向する第二電極とを有する光電変換素子であって、
上記光吸収剤が下記組成式(I)で表されるペロブスカイト型結晶構造を有する、光電変換素子。
組成式(I):A
上記組成式中、Aはセシウム、ルビジウム及びカチオン性有機基の少なくとも1種を示す。Bは下記(i)、(ii)及び(iii)を満たす金属元素を示す。Xは塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子の少なくとも1種を含むアニオン性の原子又は原子団を示す。X中の塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子の含有量の合計は80mol%以上である。a〜cは組成比を示し、a及びbは0.50<a/b<1.50を満たす。ただし、Bは鉛を含まない。
(i)周期表の1族〜15族に属する金属元素のうち、セシウム及びルビジウムを除く2種以上の金属元素である。
(ii)価数が1価の金属元素及び価数が2価の金属元素を少なくとも含む。
(iii)価数毎に算出される金属元素の割合のうち、価数が2価の金属元素の割合が最も高い。ただし、上記の価数が2価の金属元素の割合は、2価以外のいずれかの価数の金属元素の割合と同じであってもよい。
<2>
上記Bが、周期表の2族〜15族に属する2種以上の金属元素である、<1>に記載の光電変換素子。
<3>
上記光吸収剤が3次元ペロブスカイト型結晶構造を有する、<1>又は<2>に記載の光電変換素子。
<4>
上記Xが臭素原子及びヨウ素原子の少なくとも1種を含む、<1>〜<3>のいずれか1つに記載の光電変換素子。
<5>
上記X中のヨウ素原子の含有量が70mol%を越える、<1>〜<4>のいずれか1つに記載の光電変換素子。
<6>
上記Bが3種以上の金属元素を含む、<1>〜<5>のいずれか1つに記載の光電変換素子。
<7>
上記Bが、Ti、Zr、Nb、Ta、Cu、Ag、Au、Zn、Ga、In、Ge、Sn、Sb及びBiのうち少なくとも1種の金属元素を含む、<1>〜<6>のいずれか1つに記載の光電変換素子。
<8>
上記のa及びbが0.80≦a/b≦1.15を満たす、<1>〜<7>のいずれか1つに記載の光電変換素子。
<9>
<1>〜<8>のいずれか1つに記載の光電変換素子を用いた太陽電池。
<10>
下記組成式(I)で表されるペロブスカイト型結晶構造を有する光吸収剤。
組成式(I):A
上記組成式中、Aはセシウム、ルビジウム及びカチオン性有機基の少なくとも1種を示す。Bは下記(i)、(ii)及び(iii)を満たす金属元素を示す。Xは塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子の少なくとも1種を含むアニオン性の原子又は原子団を示す。X中の塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子の含有量の合計は80mol%以上である。a〜cは組成比を示し、a及びbは0.50<a/b<1.50を満たす。ただし、Bは鉛を含まない。
(i)周期表の1族〜15族に属する金属元素のうち、セシウム及びルビジウムを除く2種以上の金属元素である。
(ii)価数が1価の金属元素及び価数が2価の金属元素を少なくとも含む。
(iii)価数毎に算出される金属元素の割合のうち、価数が2価の金属元素の割合が最も高い。ただし、上記の価数が2価の金属元素の割合は、2価以外のいずれかの価数の金属元素の割合と同じであってもよい。
<11>
<10>に記載のペロブスカイト型結晶構造を有する光吸収剤を含む層を具備する、発光素子。
本発明において、各式の表記は、化合物の化学構造の理解のために、一部を示性式として表記することもある。これに伴い、各式において、部分構造を、(置換)基、イオン又は原子等と称するが、本発明において、これらは、(置換)基、イオン又は原子等の他に、上記式で表される(置換)基若しくはイオンを構成する元素団、又は、元素を意味することがある。
本発明において、化合物(錯体、色素を含む)の表示については、化合物そのものの他、その塩、そのイオンを含む意味に用いる。また、置換又は無置換を明記していない化合物については、目的とする効果を損なわない範囲で、任意の置換基を有する化合物を含む意味である。このことは、置換基及び連結基等(以下、置換基等という)についても同様である。
本発明において、特定の符号で表示された置換基が複数あるとき、又は複数の置換基等を同時に規定するときには、特段の断りがない限り、それぞれの置換基等は互いに同一でも異なっていてもよい。このことは、置換基等の数の規定についても同様である。また、複数の置換基等が近接するとき(特に、隣接するとき)には、特段の断りがない限り、それらは互いに連結していなくてもよく(環を形成していない)、また、それらが互いに連結して環を形成してもよい。更に、環、例えば脂肪族環、芳香族環、ヘテロ環は更に縮環して縮環を形成していてもよい。
また、本発明において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本発明の光電変換素子及び太陽電池は、光吸収剤として、簡便な塗布工程によりペロブスカイト膜を構築することができ、しかも得られた膜が優れた耐熱性を有する、鉛フリーのペロブスカイト化合物を含むため、耐熱性に優れる。
また、本発明の光吸収剤は、鉛フリーで鉛フリーでありながらも、簡便な塗布工程によりペロブスカイト膜を構築でき、しかも得られた膜は優れた耐熱性を示すことができる。
さらに、本発明の発光素子は、光吸収剤として、簡便な塗布工程によりペロブスカイト膜を構築することができ、しかも得られた膜が優れた耐熱性を有する、鉛フリーのペロブスカイト化合物を含むため、耐熱性に優れる。
図1は本発明の光電変換素子の好ましい態様について、層中の円a部分の拡大図も含めて模式的に示した断面図である。 図2は本発明の光電変換素子の厚い感光層を有する好ましい態様について模式的に示す断面図である。 図3は本発明の光電変換素子の別の好ましい態様について模式的に示した断面図である。 図4は本発明の光電変換素子のまた別の好ましい態様について模式的に示した断面図である。 図5は本発明の光電変換素子の更に別の好ましい態様について模式的に示した断面図である。 図6は本発明の製造方法で得られる光電変換素子のさらにまた別の好ましい態様について模式的に示した断面図である。
[光電変換素子]
本発明の光電変換素子は、導電層とこの導電層上に設けられた光吸収剤を含む感光層とを有する第一電極と、この第一電極に対向する第二電極とを有する光電変換素子である。上記光吸収剤は、後述する特定の組成式で表されるペロブスカイト型結晶構造を有する。
本発明において、第一電極と第二電極が対向するとは、第一電極と第二電極が互いに接した状態で積層された形態と、第一電極と第二電極とが他の層(例えば正孔輸送層)を介して積層された形態(すなわち第一電極と第二電極が他の層を挟んで互いに対向して設けられた形態)を意味する。
また、第一電極において、上記感光層は、導電層よりも第二電極側に配される。
本発明において、第一電極は、導電層上に感光層が設けられた形態を有している。導電層上に感光層を有するとは、導電層の表面に接して感光層を設ける(直接設ける)態様、及び、導電層の表面上方に他の層を介して感光層を設ける態様を含む意味である。
導電層の表面上方に他の層を介して感光層を有する態様において、導電層と感光層との間に設けられる他の層としては、光電変換素子の性能(好ましくは、太陽電池に用いた場合の電池性能)を低下させないものであれば特に限定されない。例えば、多孔質層、ブロッキング層、電子輸送層及び正孔輸送層等が挙げられる。
本発明において、導電層の表面上方に他の層を介して感光層を有する態様としては、例えば、感光層が、多孔質層の表面に薄い膜状(図1参照)又は厚い膜状(図2及び図6参照)に設けられる態様、ブロッキング層の表面に薄い膜状又は厚い膜状(図3参照)に設けられる態様、電子輸送層の表面に薄い膜状又は厚い膜状(図4参照)に設けられる態様、及び、正孔輸送層の表面に薄い膜状又は厚い膜状(図5参照)に設けられる態様が挙げられる。感光層は、線状又は分散状に設けられてもよいが、好ましくは膜状に設けられる。
本発明の光電変換素子において、感光層に含有される光吸収剤は、後述する特定の組成式(I)で表されるペロブスカイト型結晶構造を有している。この光吸収剤は鉛フリーである。この光吸収剤を有する本発明の光電変換素子は、優れた耐熱性を示す。
本発明の光電変換素子は、本発明で規定する構成以外の構成は特に限定されず、光電変換素子及び太陽電池に関する公知の構成を採用できる。本発明の光電変換素子を構成する各層は、目的に応じて設計され、例えば、単層に形成されても、複層に形成されてもよい。例えば、多孔質層を導電層と感光層との間に設けることもできる(図1、図2及び図6参照)。
なお、本発明の光電変換素子の適用態様としては、太陽電池に限らず、その他、光電変換を利用する種々の装置として、イメージセンサ及びX線検出器等に適用することができる。イメージセンサとしては、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ、CCD(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ及びNMOS(N-channel metal oxide semiconductor)イメージセンサ等が挙げられる。イメージセンサ及びX線検出器としては、本発明の光電変換素子以外の構成は特に限定されず、イメージセンサ及びX線検出器に関する公知の構成を採用でき、例えば、NPG Asia Materials, 2017, vol.9, p.e431及びNature, 2017, vol.550, p.87等を参照することができる。
以下、本発明の光電変換素子の好ましい態様について説明する。
図1〜図6において、同じ符号は同じ構成要素(部材)を意味する。
なお、図1、図2及び図6は、多孔質層12を形成する微粒子の大きさを強調して示してある。これらの微粒子は、好ましくは、導電層11に対して水平方向及び垂直方向に詰まり(堆積又は密着して)、多孔質構造を形成している。
本発明において、単に光電変換素子10という場合は、特に断らない限り、光電変換素子10A〜10Fを意味する。このことは、システム100、第一電極1についても同様である。また、単に感光層13という場合は、特に断らない限り、感光層13A〜13Cを意味する。同様に、正孔輸送層3という場合は、特に断らない限り、正孔輸送層3A及び3Bを意味する。
本発明の光電変換素子の好ましい態様として、例えば、図1に示す光電変換素子10Aが挙げられる。図1に示されるシステム100Aは、光電変換素子10Aを外部回路6で動作手段M(例えば電動モーター)に仕事をさせる電池用途に応用したシステムである。
この光電変換素子10Aは、第一電極1Aと、第二電極2と、第一電極1Aと第二電極2の間に正孔輸送層3Aとを有している。
第一電極1Aは、支持体11a及び透明電極11bからなる導電層11と、多孔質層12と、図1において断面領域aを拡大した拡大断面領域aに模式的に示されるように多孔質層12の表面に、ペロブスカイト型結晶構造を有する光吸収剤を含む感光層13Aとを有している。また透明電極11b上にブロッキング層14を有し、ブロッキング層14上に多孔質層12が形成される。このように多孔質層12を有する光電変換素子10Aは、感光層13Aの表面積が大きくなるため、電荷分離及び電荷移動効率が向上すると推定される。
図2に示す光電変換素子10Bは、図1に示す光電変換素子10Aの感光層13Aを厚く設けた好ましい態様を模式的に示したものである。この光電変換素子10Bにおいて、正孔輸送層3Bは薄く設けられている。光電変換素子10Bは、図1で示した光電変換素子10Aに対して感光層13B及び正孔輸送層3Bの膜厚の点で異なるが、これらの点以外は光電変換素子10Aと同様に構成されている。
図3に示す光電変換素子10Cは、本発明の光電変換素子の別の好ましい態様を模式的に示したものである。光電変換素子10Cは、図2に示す光電変換素子10Bに対して多孔質層12を設けていない点で異なるが、この点以外は光電変換素子10Bと同様に構成されている。すなわち、光電変換素子10Cにおいて、感光層13Cはブロッキング層14の表面に厚い膜状に形成されている。光電変換素子10Cにおいて、正孔輸送層3Bは正孔輸送層3Aと同様に厚く設けることもできる。
図4に示す光電変換素子10Dは、本発明の光電変換素子のまた別の好ましい態様を模式的に示したものである。この光電変換素子10Dは、図3に示す光電変換素子10Cに対してブロッキング層14に代えて電子輸送層15を設けた点で異なるが、この点以外は光電変換素子10Cと同様に構成されている。第一電極1Dは、導電層11と、導電層11上に順に形成された、電子輸送層15及び感光層13Cとを有している。この光電変換素子10Dは、各層を有機材料で形成できる点で、好ましい。これにより、光電変換素子の生産性が向上し、しかも薄型化又はフレキシブル化が可能になる。
図5に示す光電変換素子10Eは、本発明の光電変換素子の更に別の好ましい態様を模式的に示したものである。この光電変換素子10Eを含むシステム100Eは、システム100Aと同様に電池用途に応用したシステムである。
光電変換素子10Eは、第一電極1Eと、第二電極2と、第一電極1E及び第二電極2の間に電子輸送層4とを有している。第一電極1Eは、導電層11と、導電層11上に順に形成された、正孔輸送層16及び感光層13Cとを有している。この光電変換素子10Eは、光電変換素子10Dと同様に、各層を有機材料で形成できる点で、好ましい。
図6に示す光電変換素子10Fは、本発明の光電変換素子のさらにまた別の好ましい態様を模式的に示したものである。光電変換素子10Fは、図2に示す光電変換素子10Bに対して正孔輸送層3Bを設けていない点で異なるが、この点以外は光電変換素子10Bと同様に構成されている。
本発明において、光電変換素子10を応用したシステム100は、以下のようにして、太陽電池として機能する。
すなわち、光電変換素子10において、導電層11を透過して、又は第二電極2を透過して感光層13に入射した光は光吸収剤を励起し、光吸収剤内(ペロブスカイト結晶中)に電子及び正孔が生成する。
光電変換素子10A〜10D及び10Fにおいては、光吸収剤内に生成した電子が移動して導電層11に到達し、光吸収剤内に生成した正孔が移動して(正孔輸送層3がある場合にはさらに正孔輸送層3を経由して)第二電極2に到達することで、光電流が生じ、外部回路6において出力される。一方、光電変換素子10Eにおいては、光吸収剤内に生成した電子が移動して、感光層13Cから電子輸送層4を経て第二電極2に到達し、光吸収剤内に生成した正孔が移動して、正孔輸送層16を経て導電層11に到達することで、光電流が生じ、外部回路6において出力される。
光電変換素子10においては、このような、上記光吸収剤の励起、並びに、電荷(電子及び正孔)移動のサイクルを繰り返すことにより、システム100が太陽電池として機能する。
光電変換素子10A〜10D及び10Fにおいて、感光層13から導電層11への電子の流れ方は、多孔質層12の有無及びその種類等により、異なる。本発明の光電変換素子10においては、光吸収剤間を電子が移動する電子伝導が起こる。したがって、本発明において、多孔質層12を設ける場合、多孔質層12は従来の半導体以外に絶縁体で形成することができる。多孔質層12が半導体で形成される場合、多孔質層12の半導体微粒子内部及び半導体微粒子間を電子が移動する電子伝導も起こる。一方、多孔質層12が絶縁体で形成される場合、多孔質層12での電子伝導は起こらない。多孔質層12が絶縁体で形成される場合、絶縁体微粒子に酸化アルミニウム(Al)の微粒子を用いると、比較的高い起電力(Voc)が得られる。
上記他の層としてのブロッキング層14が導体又は半導体により形成された場合もブロッキング層14での電子伝導が起こる。また、電子輸送層15でも電子伝導が起こる。
本発明の光電変換素子は、上記の好ましい態様に限定されず、各態様の構成等は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、各態様間で適宜組合わせることができる。例えば、光電変換素子10A、10C及び10Dにおいて、光電変換素子10Fのように、正孔輸送層3A又は3Bを設けない構成とすることもできる。
本発明において、光電変換素子に用いられる材料及び各部材は、光吸収剤を除いて、常法により調製することができる。ペロブスカイト化合物(ペロブスカイト型結晶構造を有する光吸収剤)を用いた光電変換素子又は太陽電池については、例えば、非特許文献2、並びに、J.Am.Chem.Soc.,2009,131(17),p.6050−6051を参照することができる。
また、色素増感太陽電池に用いられる材料及び各部材についても参考にすることができる。色素増感太陽電池について、例えば、特開2001−291534号公報、米国特許第4,927,721号明細書、米国特許第4,684,537号明細書、米国特許第5,084,365号明細書、米国特許第5,350,644号明細書、米国特許第5,463,057号明細書、米国特許第5,525,440号明細書、特開平7−249790号公報、特開2004−220974号公報、特開2008−135197号公報を参照することができる。
以下、本発明の光電変換素子が備える部材及び化合物の好ましい態様について、説明する。
<第一電極1>
第一電極1は、導電層11と感光層13とを有し、光電変換素子10において作用電極として機能する。
第一電極1は、図1〜図6に示されるように、多孔質層12、ブロッキング層14及び電子輸送層15及び正孔輸送層16の少なくとも1つの層を有することが好ましい。
第一電極1は、短絡防止の点で少なくともブロッキング層14を有することが好ましく、光吸収効率の点及び短絡防止の点で多孔質層12及びブロッキング層14を有していることが更に好ましい。
また、第一電極1は、光電変換素子の生産性の向上、薄型化又はフレキシブル化の点で、有機材料で形成された、電子輸送層15又は正孔輸送層16を有することが好ましい。
− 導電層11 −
導電層11は、導電性を有するものであれば特に限定されない。導電層11は、導電性を有する材料、例えば金属で形成された構成、又は、ガラス若しくはプラスチックの支持体11aと、この支持体11aの表面に形成された導電膜としての透明電極11bとを有する構成が好ましい。この支持体11aは、透明電極11bを支持できるものであることが好ましい。
中でも、図1〜図6に示されるように、ガラス又はプラスチックの支持体11aの表面に導電性の金属酸化物を塗設して透明電極11bを成膜した導電層11が更に好ましい。プラスチックで形成された支持体11aとしては、例えば、特開2001−291534号公報の段落番号0153に記載の透明ポリマーフィルムが挙げられる。支持体11aを形成する材料としては、ガラス及びプラスチックの他にも、セラミック(特開2005−135902号公報)、導電性樹脂(特開2001−160425号公報)を用いることができる。金属酸化物としては、スズ酸化物(TO)が好ましく、インジウム−スズ酸化物(スズドープ酸化インジウム:ITO)、フッ素をドープした酸化スズ(FTO)等のフッ素ドープスズ酸化物が特に好ましい。このときの金属酸化物の塗布量は、支持体11aの表面積1m当たり0.1〜100gが好ましい。導電層11を用いる場合、光は支持体11a側から入射させることが好ましい。
導電層11は、実質的に透明であることが好ましい。本発明において、「実質的に透明である」とは、光(波長300〜1200nm)の透過率が10%以上であることを意味し、50%以上が好ましく、80%以上が特に好ましい。
支持体11a及び導電層11の厚みは、特に限定されず、適宜の厚みに設定される。例えば、0.01μm〜10mmであることが好ましく、0.1μm〜5mmであることが更に好ましく、0.3μm〜4mmであることが特に好ましい。
透明電極11bを設ける場合、透明電極11bの膜厚は、特に限定されず、例えば、0.01〜30μmであることが好ましく、0.02〜25μmであることが更に好ましく、0.025〜20μmであることが特に好ましい。
導電層11又は支持体11aは、表面に光マネージメント機能を有してもよい。例えば、導電層11又は支持体11aの表面に、特開2003−123859号公報に記載の、高屈折膜及び低屈折率の酸化物膜を交互に積層した反射防止膜を有してもよく、特開2002−260746号公報に記載のライトガイド機能を有してもよい。
− ブロッキング層14 −
本発明においては、光電変換素子10A〜10C及び10Fのように、好ましくは、透明電極11bの表面に、すなわち、導電層11と、多孔質層12、感光層13又は正孔輸送層3等との間に、ブロッキング層14を有している。
光電変換素子において、例えば感光層13又は正孔輸送層3と、透明電極11b等とが電気的に接続すると逆電流を生じる。ブロッキング層14は、この逆電流を防止する機能を果たす。ブロッキング層14は短絡防止層ともいう。
ブロッキング層14を、光吸収剤を担持する足場として機能させることもできる。
このブロッキング層14は、光電変換素子が電子輸送層を有する場合にも設けられてもよい。例えば、光電変換素子10Dの場合、導電層11と電子輸送層15との間に設けられてもよく、光電変換素子10Eの場合、第二電極2と電子輸送層4との間に設けられてもよい。
ブロッキング層14を形成する材料は、上記機能を果たすことのできる材料であれば特に限定されないが、可視光を透過する物質であって、導電層11(透明電極11b)又は第二電極等に対する絶縁性物質であることが好ましい。「導電層11(透明電極11b)に対する絶縁性物質」とは、具体的には、伝導帯のエネルギー準位が、導電層11を形成する材料(透明電極11bを形成する金属酸化物)の伝導帯のエネルギー準位以上であり、かつ、多孔質層12を構成する材料の伝導帯及び光吸収剤の伝導帯より低い化合物(n型半導体化合物)をいう。
ブロッキング層14を形成する材料は、例えば、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸セシウム、ポリビニルアルコール、ポリウレタン等が挙げられる。また、一般的に光電変換材料に用いられる材料でもよく、例えば、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化ニオブ、酸化タングステン等も挙げられる。中でも、酸化チタン、酸化スズ、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム等が好ましい。
ブロッキング層14の膜厚は、0.001〜10μmが好ましく、0.005〜1μmが更に好ましく、0.01〜0.1μmが特に好ましい。
本発明において、各層の膜厚は、走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)等を用いて光電変換素子10の断面を観察することにより、測定できる。
− 多孔質層12 −
本発明においては、光電変換素子10A、10B及び10Fのように、好ましくは、透明電極11b上に多孔質層12を有している。ブロッキング層14を有している場合、多孔質層12はブロッキング層14上に形成されることが好ましい。
多孔質層12は、表面に感光層13を担持する足場として機能する層である。太陽電池において、光吸収効率を高めるためには、少なくとも太陽光等の光を受ける部分の表面積を大きくすることが好ましく、多孔質層12の全体としての表面積を大きくすることが好ましい。
多孔質層12は、多孔質層12を形成する材料の微粒子が堆積又は密着してなる、細孔を有する微粒子層であることが好ましい。多孔質層12は、2種以上の微粒子が堆積してなる微粒子層であってもよい。感光層13が多孔質層12の表面に薄い膜状に設けられる場合は、多孔質層12が細孔を有する微粒子層であると、光吸収剤の担持量(吸着量)を増量できる。
多孔質層12の表面積を大きくするには、多孔質層12を構成する個々の微粒子の表面積を大きくすることが好ましい。本発明では、多孔質層12を形成する微粒子を導電層11等に塗設した状態で、この微粒子の表面積が投影面積に対して10倍以上であることが好ましく、100倍以上であることがより好ましい。この上限には特に制限はないが、通常5000倍程度である。多孔質層12を形成する微粒子の粒径は、投影面積を円に換算したときの直径を用いた平均粒径において、1次粒子として0.001〜1μmが好ましい。微粒子の分散物を用いて多孔質層12を形成する場合、微粒子の上記平均粒径は、分散物の平均粒径として0.01〜100μmが好ましい。
多孔質層12を形成する材料は、導電性に関しては特に限定されず、絶縁体(絶縁性の材料)であっても、導電性の材料又は半導体(半導電性の材料)であってもよい。
多孔質層12を形成する材料としては、例えば、金属のカルコゲニド(例えば酸化物、硫化物、セレン化物等)、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物(本発明の光吸収剤として用いるものを除く。)、ケイ素の酸化物(例えば、二酸化ケイ素、ゼオライト)、又はカーボンナノチューブ(カーボンナノワイヤ及びカーボンナノロッド等を含む)を用いることができる。
金属のカルコゲニドとしては、特に限定されないが、好ましくは、チタン、スズ、亜鉛、タングステン、ジルコニウム、ハフニウム、ストロンチウム、インジウム、セリウム、イットリウム、ランタン、バナジウム、ニオブ、アルミニウム又はタンタルの各酸化物、硫化カドミウム、セレン化カドミウム等が挙げられる。金属のカルコゲニドの結晶構造として、アナターゼ型、ブルッカイト型及びルチル型が挙げられ、アナターゼ型又はブルッカイト型が好ましい。
ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物としては、特に限定されないが、遷移金属酸化物等が挙げられる。例えば、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、ジルコン酸バリウム、スズ酸バリウム、ジルコン酸鉛、ジルコン酸ストロンチウム、タンタル酸ストロンチウム、ニオブ酸カリウム、鉄酸ビスマス、チタン酸ストロンチウムバリウム、チタン酸バリウムランタン、チタン酸ナトリウム、チタン酸ビスマスが挙げられる。中でも、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム等が好ましい。
カーボンナノチューブは、炭素膜(グラフェンシート)を筒状に丸めた形状を有する。カーボンナノチューブは、1枚のグラフェンシートが円筒状に巻かれた単層カーボンナノチューブ(SWCNT)、2枚のグラフェンシートが同心円状に巻かれた2層カーボンナノチューブ(DWCNT)、複数のグラフェンシートが同心円状に巻かれた多層カーボンナノチューブ(MWCNT)に分類される。多孔質層12としては、いずれのカーボンナノチューブも特に限定されず、用いることができる。
多孔質層12を形成する材料は、中でも、チタン、スズ、亜鉛、ジルコニウム、アルミニウム若しくはケイ素の酸化物、又はカーボンナノチューブが好ましく、酸化チタン又は酸化アルミニウムが更に好ましい。
多孔質層12は、上述の、金属のカルコゲニド、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物、ケイ素の酸化物及びカーボンナノチューブのうち少なくとも1種で形成されていればよく、複数種で形成されていてもよい。
多孔質層12の膜厚は、特に限定されないが、通常0.05〜100μmの範囲であり、好ましくは0.1〜100μmの範囲である。太陽電池として用いる場合は、0.1〜50μmが好ましく、0.2〜30μmがより好ましい。
− 電子輸送層15−
本発明においては、光電変換素子10Dのように、好ましくは、透明電極11bの表面に電子輸送層15を有している。
電子輸送層15は、感光層13で発生した電子を導電層11へと輸送する機能を有する。電子輸送層15は、この機能を発揮することができる電子輸送材料で形成される。電子輸送材料としては、特に限定されないが、有機材料(有機電子輸送材料)が好ましい。有機電子輸送材料としては、[6,6]−Phenyl−C61−Butyric Acid Methyl Ester(PC61BM)等のフラーレン化合物、ペリレンテトラカルボキシジイミド(PTCDI)等のペリレン化合物、その他、テトラシアノキノジメタン(TCNQ)等の低分子化合物、又は、高分子化合物等が挙げられる。
電子輸送層15の膜厚は、特に限定されないが、0.001〜10μmが好ましく、0.01〜1μmがより好ましい。
− 感光層(光吸収層)13 −
感光層13は、好ましくは、多孔質層12(光電変換素子10A、10B及び10F)、ブロッキング層14(光電変換素子10C)、電子輸送層15(光電変換素子10D)又は正孔輸送層16(光電変換素子10E)の各層の表面(感光層13が設けられる表面が凹凸の場合の凹部内表面を含む。)に設けられる。
本発明において、感光層13中には光吸収剤が含まれる。この光吸収剤は、後述するペロブスカイト型結晶構造を有する光吸収剤を少なくとも1種含有している。
また、感光層は上記ペロブスカイト型結晶構造を有する光吸収剤以外に、例えば金属錯体色素、有機色素等の光吸収成分を有してもよい。
感光層13中に含まれる光吸収剤は、すべて上記ペロブスカイト型結晶構造を有することが好ましい。
感光層13は、単層であっても2層以上の積層構造であってもよい。感光層13が2層以上の積層構造である場合、互いに異なった光吸収剤からなる層を積層してなる積層構造でもよく、また、感光層と感光層の間に正孔輸送材料を含む中間層を有する積層構造でもよい。感光層13が2層以上の積層構造である場合、少なくとも1層に、ペロブスカイト型結晶構造を有する光吸収剤を有していれば、いずれの層に有していてもよく、すべての層に有していてもよい。
感光層13を導電層11上に有する態様は、上述した通りである。感光層13は、好ましくは、光吸収剤内に生成した電子が導電層11又は第二電極2に移動し、光吸収剤内に生成した正孔が導電層11及び第二電極2のうち上記電子が移動した層とは逆の層に移動するように、上記各層の表面に設けられる。このとき、感光層13は、上記各層の表面全体に設けられていてもよく、その表面の一部に設けられていてもよい。
感光層13の膜厚は、導電層11上に感光層13を有する態様に応じて適宜に設定され、特に限定されない。通常、膜厚は、例えば、0.001〜100μmが好ましく、0.01〜10μmが更に好ましく、0.01〜5μmが特に好ましい。
多孔質層12を有する場合、多孔質層12の膜厚との合計膜厚は、0.01μm以上が好ましく、0.05μm以上がより好ましく、0.1μm以上が更に好ましく、0.3μm以上が特に好ましい。また、合計膜厚は、100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましく、30μm以下が更に好ましい。合計膜厚は、上記値を適宜に組合わせた範囲とすることができる。
光電変換素子10において、多孔質層12及び正孔輸送層3を有する場合、多孔質層12と感光層13と正孔輸送層3との合計膜厚は、特に限定されないが、例えば、0.01μm以上が好ましく、0.05μm以上がより好ましく、0.1μm以上が更に好ましく、0.3μm以上が特に好ましい。また、この合計膜厚は、200μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましく、30μm以下が更に好ましく、5μm以下が特に好ましい。合計膜厚は、上記値を適宜に組合わせた範囲とすることができる。
本発明において、感光層を厚い膜状に設ける場合(感光層13B及び13C)、この感光層に含まれる光吸収剤は正孔輸送材料として機能することもある。
〔光吸収剤〕
− ペロブスカイト型結晶構造を有する光吸収剤 −
感光層13中の光吸収剤は、下記組成式(I)で表されるペロブスカイト型結晶構造を有する光吸収剤(単に「ペロブスカイト型結晶構造を有する光吸収剤」とも称す。)を含有する。
組成式(I):A
上記組成式中、Aはセシウム、ルビジウム及びカチオン性有機基の少なくとも1種を示す。Bは下記(i)、(ii)及び(iii)を満たす金属元素を示す。Xは塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子の少なくとも1種を含むアニオン性の原子又は原子団を示す。X中の塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子の含有量の合計は80mol%以上である。a〜cは組成比を示し、a及びbは0.50<a/b<1.50を満たす。ただし、Bは鉛を含まない。
(i)周期表の1族〜15族に属する金属元素のうち、セシウム及びルビジウムを除く2種以上の金属元素である。
(ii)価数が1価の金属元素及び価数が2価の金属元素を少なくとも含む。
(iii)価数毎に算出される金属元素の割合のうち、価数が2価の金属元素の割合が最も高い。ただし、上記の価数が2価の金属元素の割合は、2価以外のいずれかの価数の金属元素の割合と同じであってもよい。
ペロブスカイト型結晶構造とは結晶構造の1つであり、チタン酸バリウム(BaTiO)に代表される結晶構造である。通常、ペロブスカイト型結晶構造の組成はABXで表され、ペロブスカイト型結晶構造において、このA、B及びXは、Aカチオン、Bカチオン及びXアニオンの各構成イオンとして存在する。また、CsSnI等のBカチオン欠陥型ペロブスカイト化合物、及び、La2/3TiO等のAカチオン欠陥型ペロブスカイト化合物も、本願ではペロブスカイト型結晶構造を有する化合物と定義する。
本発明の光吸収剤についても、上記組成式(I)中のA、B及びXは、それぞれ、ペロブスカイト型結晶構造において、Aのカチオン(便宜上、カチオンAということがある)、Bのカチオン(便宜上、カチオンBということがある)及びXのアニオン(便宜上、アニオンXということがある)として存在する。本発明において、カチオン性有機基とは、ペロブスカイト型結晶構造においてカチオンになる性質を有する有機基をいい、アニオン性の原子又は原子団とはペロブスカイト型結晶構造においてアニオンになる性質を有する原子又は原子団をいう。
上記光吸収剤におけるカチオンA及びカチオンBは、後述する元素の分類を表すものであり、ペロブスカイト型結晶構造のAサイト及びBサイトに必ずしも存在しなくてよい。
本発明において、「ペロブスカイト型結晶構造を有する」とは、実施例において記載する測定方法によりその構造の有無を判断する。
本発明の光電変換素子は、感光層中に、上記組成式(I)で表されるペロブスカイト型結晶構造を有する光吸収剤を含有する。この光吸収剤から得られるペロブスカイト型結晶構造を有する膜は優れた耐熱性を示すことができる。この理由は定かではないが、以下の様に推定される。
上記組成式(I)で表される光吸収剤は、カチオンBを構成する金属元素が、価数が1価の金属元素及び2価の金属元素を含む2種以上の特定の金属元素の組合わせであり、また、カチオンBに対するカチオンAの比(a/b)が特定の範囲内にある。これにより、上記光吸収剤は、従来のダブルペロブスカイト化合物と同様にカチオン欠陥がないか、部分的にカチオン欠陥があるものの、伝導帯及び価電子帯形成に寄与する軌道の相互作用が強まることでバンド構造が好適化された、ペロブスカイト型結晶構造を有することができる。
また、上記のカチオンBを構成する金属元素は、価数が1価の金属元素及び価数が2価の金属元素を少なくとも含有することに加えて、価数が2価の金属元素をその他の価数(2価以外の価数)の金属元素のいずれに対しても、同じ割合か、または高い割合で含有する。価数が1価の金属元素を含有することにより、推定であるものの、加熱によるペロブスカイト型化合物の熱分解(Sn2+の様な酸化耐性の低いカチオンを含む場合は、上記熱分解に加えて酸化分解)を抑制することができると考えられ、結果、加熱によるペロブスカイト膜の吸光度の低下を充分に抑制することができる。また、価数が2価の金属元素を上記(iii)の規定を満たすように含有することにより、推定であるものの、加熱により生じるペロブスカイト型結晶構造中でのイオン拡散を抑制することができると考えられ、これにより膜の結晶粒の余剰な成長や結晶相の転移等を抑制でき、結果、加熱によるペロブスカイト膜のクラックの発生を充分に抑制することができる。この結果、上記組成式(I)で表される光吸収剤を含有する光電変換素子の耐熱性も向上される。
さらに、上記組成式(I)で表される特定の組成であることに基づき、ペロブスカイト型結晶構造を有する薄膜を簡便な塗布工程により構築することができ、この結果、ペロブスカイト膜を有する本発明の光電変換素子の生産性をも向上させることができる。この理由は定かではないが、0.50<a/b<1.50を満たし、かつ、カチオンBを構成する金属元素として低酸価数である1価の金属元素及び2価の金属元素を含み、2価の金属元素をその他の価数の金属元素のいずれに対しても同じか、または高い割合となる構成とすることにより、ペロブスカイト化合物における欠陥部分がより少なくなるような構造が形成され、その他の低酸価数(1価)又は高酸価数(例えば、3〜5価)の金属元素による残りの欠陥部分の埋め込みが容易となることが一因と考えられる。上記のように欠陥部分が補填されることでペロブスカイト型構造の安定性が高まり、ペロブスカイト型結晶構造を有する膜の形成の生産性が向上されると推定される。
また、本発明のペロブスカイト型結晶構造を有する光吸収剤は、組成式(I)で表される特定の組成であることに基づき、簡便な方法でも膜として目的とするペロブスカイト型結晶構造を構築できるばかりでなく、この結果上記の優れた耐熱性をも発現させると考えられる。
そのため、本発明の光吸収剤は化合物としての組成上、目的のペロブスカイト型結晶構造を有する薄膜を簡便な塗布工程により形成しやすいものであり、薄膜を形成する対象の材質及び形状等によらず、優れた耐熱性を示すペロブスカイト型結晶構造を有する薄膜を、簡便な方法で形成することができる。すなわち、本発明の光吸収剤は、本発明の光電変換素子を作製する際に、本発明の光吸収剤を含む感光層を形成し得る各層、例えば、多孔質層12、ブロッキング層14、電子輸送層15及び正孔輸送層16(図5)に対しても優れた耐熱性を示す薄膜を簡便な方法で形成することができ、本発明の光電変換素子及び太陽電池の工業的な生産効率を向上させることができる。同様に、本発明の発光素子についても、ペロブスカイト型結晶構造を有する薄膜の形成効率を高め、生産効率を向上させることができる。
以下、上記組成式中のA、B及びXについて、それぞれ、ペロブスカイト型結晶構造において存在するカチオンA、カチオンB及びアニオンXとして説明する。すなわち、Aのセシウム、ルビジウム及びカチオン性有機基は、下記カチオンAで説明するセシウム、ルビジウム及びカチオン性有機基と同義であり、好ましいものも同じである。Bの(i)、(ii)及び(iii)を満たす金属元素は、下記カチオンBで説明する(i)、(ii)及び(iii)を満たす金属元素と同義であり、好ましいものも同じである。また、Xの塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子の少なくとも1種を含む、アニオン性の原子又は原子団は、下記アニオンXで説明する塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子の少なくとも1種を含む、アニオン性の原子又は原子団と同義であり、好ましいものも同じである。
(カチオンA)
本発明に用いるペロブスカイト型結晶構造を有する光吸収剤において、カチオンAは、セシウムのイオン(Cs)、ルビジウムのイオン(Rb)及びカチオン性有機基のカチオンの少なくとも1種のカチオンを示す。
カチオンAが2種以上のカチオンである場合、Cs及びRbを含む2種以上のカチオンでもよく、2種以上の有機カチオンでもよく、また、Cs又はRbと少なくとも1種の有機カチオンとを含むものでもよい。2種以上のカチオンである場合の各カチオンの存在比は特に限定されない。
有機カチオンは、上記性質を有する有機基のカチオンであれば特に限定されないが、1価の有機カチオンであることが好ましく、下記式(1)で表されるカチオン性有機基の有機カチオンであることが更に好ましい。
式(1): R1A−N(R1a
式中、R1Aは置換基を表す。R1Aとして採りうる置換基は有機基であれば特に限定されないが、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基(芳香族ヘテロ環基)、脂肪族へテロ環基又は下記式(2)で表すことができる基が好ましい。中でも、アルキル基又は下記式(2)で表すことができる基がより好ましい。
また、R1aは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、芳香族ヘテロ環又は脂肪族へテロ環基を示す。中でも、水素原子又はアルキル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
Figure 2021052081
式中、XはNR1c、酸素原子又は硫黄原子を表す。R1b及びR1cは各々独立に水素原子又は置換基を表す。***は式(1)のN原子との結合位置を表す。
本発明において、カチオン性有機基Aの有機カチオンは、R1aが水素原子であり、上記式(1)中のR1AとN(R1aとが結合してなるアンモニウムカチオン性有機基Aからなる有機アンモニウムカチオン(R1A−NH )が好ましい。この有機アンモニウムカチオンが共鳴構造を採り得る場合、有機カチオンは有機アンモニウムカチオンに加えて共鳴構造のカチオンを含む。例えば、上記式(2)で表すことができる基においてXがNH(R1cが水素原子)である場合、有機カチオンは、上記式(2)で表すことができる基とNHとが結合してなるアンモニウムカチオン性有機基の有機アンモニウムカチオンに加えて、この有機アンモニウムカチオンの共鳴構造の1つである有機アミジニウムカチオンをも包含する。アミジニウムカチオン性有機基からなる有機アミジニウムカチオンとしては、下記式(Aam)で表されるカチオンが挙げられる。本発明において、下記式(Aam)で表されるカチオンを便宜上、「R1bC(=NH)−NH 」又は「[CR1b(NH」と表記することがある。
Figure 2021052081
1A及びR1aとして採りうるアルキル基の炭素数は、1〜36が好ましく、1〜18がより好ましく、1〜6が更に好ましく、1〜3が特に好ましい。例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、tert−ブチル、ペンチル又はヘキシル等が挙げられる。なかでもメチルが好ましい。
1A及びR1aとして採りうるシクロアルキル基の炭素数は、3〜10が好ましく、3〜8がより好ましく、例えば、シクロプロピル、シクロペンチル又はシクロヘキシル等が挙げられる
1A及びR1aとして採りうるアルケニル基の炭素数は、2〜36が好ましく、2〜18がより好ましく、2〜6が更に好ましい。例えば、ビニル、アリル、ブテニル又はヘキセニル等が挙げられる。
1A及びR1aとして採りうるアルキニル基の炭素数は、2〜36が好ましく、2〜18がより好ましく、2〜4が更に好ましい。例えば、エチニル、ブチニル又はヘキシニル等が挙げられる。
1A及びR1aとして採りうるアリール基の炭素数は、6〜24が好ましく、炭素数6〜12がより好ましく、例えば、フェニルが挙げられる。
1A及びR1aとして採りうる芳香族ヘテロ環基は、単環の芳香族ヘテロ環からなる基に加えて、単環の芳香族ヘテロ環に他の環、例えば、芳香族炭化水素環、脂肪族炭化水素環又はヘテロ環が縮合した縮合ヘテロ環からなる基とを包含する。芳香族ヘテロ環を構成する環構成ヘテロ原子の数は1個以上であればよく、ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子が好ましい。また、芳香族ヘテロ環の環員数としては、3〜8員環が好ましく、5員環又は6員環がより好ましい。5員環の芳香族ヘテロ環基及び5員環の芳香族ヘテロ環を含む縮合ヘテロ環基としては、例えば、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、トリアゾール環、フラン環、チオフェン環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、インドリン環及びインダゾール環の各環基が挙げられる。また、6員環の芳香族ヘテロ環基及び6員環の芳香族ヘテロ環を含む縮合ヘテロ環基としては、例えば、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、キノリン環及びキナゾリン環の各環基が挙げられる。
1A及びR1aとして採りうる脂肪族ヘテロ環基は、脂肪族ヘテロ環からなる単環の基と、脂肪族ヘテロ環に他の環(例えば、脂肪族環)が縮合した脂肪族縮合ヘテロ環からなる基とを包含する。脂肪族ヘテロ環を構成する環構成ヘテロ原子の数は1個以上であればよく、ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子が好ましい。また、脂肪族ヘテロ環の環員数としては、3〜8員環が好ましく、5員環又は6員環がより好ましい。脂肪族ヘテロ環の炭素数は0〜24であることが好ましく、1〜18であることがより好ましく、更に好ましくは2〜10、特に好ましくは3〜5である。脂肪族ヘテロ環基の好ましい具体例としては、ピロリジン環、オキソラン環、チオラン環、ピペリジン環、テトラヒドロフラン環、オキサン環(テトラヒドロピラン環)、チアン環、ピペラジン環、モルホリン環、キヌクリジン環、ピロリジン環、アゼチジン環、オキセタン環、アジリジン環、ジオキサン環、ペンタメチレンスルフィド環及びγ−ブチロラクトンの各環基等を挙げることができる。
1Aとして採りうる、式(2)で表すことができる基において、XはNR1c、酸素原子又は硫黄原子を表し、NR1cが好ましい。ここで、R1cは、水素原子又は置換基を表し、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、芳香族ヘテロ環基又は脂肪族ヘテロ環基が好ましく、水素原子がより好ましい。
1bは、水素原子又は置換基を表し、水素原子が好ましい。R1bとして採り得る置換基は、アミノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、芳香族ヘテロ環基及び脂肪族ヘテロ環基が挙げられる。
1b及びR1cがそれぞれ採り得る、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、芳香族ヘテロ環又は脂肪族ヘテロ環基は、上記R1Aの各基と同義であり、好ましいものも同じである。
1bとして採り得るアミノ基は、無置換でも置換アミノ基でもよく、アルキルアミノ基、アルケニルアミノ基、アルキニルアミノ基、シクロアルキルアミノ基、シクロアルケニルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基を含む。アミノ基の炭素数は0〜20が好ましい。
式(2)で表すことができる基としては、例えば、(チオ)アシル基、(チオ)カルバモイル基、イミドイル基又はアミジノ基が挙げられる。
(チオ)アシル基は、アシル基及びチオアシル基を包含する。アシル基は、総炭素数が1〜7のアシル基が好ましく、例えば、ホルミル、アセチル(CHC(=O)−)、プロピオニル、ヘキサノイル等が挙げられる。チオアシル基は、総炭素数が1〜7のチオアシル基が好ましく、例えば、チオホルミル、チオアセチル(CHC(=S)−)、チオプロピオニル等が挙げられる。
(チオ)カルバモイル基は、カルバモイル基(HNC(=O)−)及びチオカルバモイル基(HNC(=S)−)を包含する。
イミドイル基は、R1b−C(=NR1c)−で表される基であり、R1b及びR1cはそれぞれ水素原子又はアルキル基が好ましく、アルキル基は上記R1Aのアルキル基と同義であるのがより好ましい。例えば、ホルムイミドイル(HC(=NH)−)、アセトイミドイル(CHC(=NH)−)、プロピオンイミドイル(CHCHC(=NH)−)等が挙げられる。中でも、ホルムイミドイルが好ましい。
式(2)で表すことができる基としてのアミジノ基は、上記イミドイル基のR1bがアミノ基でR1cが水素原子である構造(−C(=NH)NH)を有する。
1A及びR1aとして採りうる、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、芳香族ヘテロ環、脂肪族ヘテロ環基及び上記式(2)で表すことができる基は、いずれも、置換基を有していてもよい。R1A及びR1aが有していてもよい置換基としては、特に限定されないが、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基(芳香族ヘテロ環、脂肪族ヘテロ環基)、アルコキシ基、アルキルチオ基、アミノ基(アルキルアミノ基、アリールアミノ基等)、アシル基、アルキルカルボニルオキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、ハロゲン原子、シアノ基、ヒドロキシ基又はカルボキシ基が挙げられる。R1A及びR1aが有していてもよい各置換基は、更に置換基で置換されていてもよい。
上記光吸収剤は、吸収波長及び光電変換効率の観点から3次元ペロブスカイト型結晶構造を有することが好ましく、この点から、カチオンAは、セシウムイオン、ルビジウムイオン及び有機アンモニウムカチオン(R1A−NH で示されるカチオン(R1Aは炭素数1〜3のアルキル基を示し、メチル基又はエチル基が好ましい。)、又は、R1bC(=NH)−NH で示されるカチオン(R1bは水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を示し、水素原子が好ましい。)である、低分子有機アンモニウムカチオン)の少なくとも1種のカチオンであることが好ましい。
また、ペロブスカイト型結晶構造の製膜性をより高める観点からは、カチオンAはセシウム及びルビジウムの少なくとも1種のカチオンを含むことが好ましい。この場合、カチオンA中のセシウムカチオン及びルビジウムカチオンの含有量の合計は、特に限定されないが、例えば、20mol%以上とすることができる。なお、カチオンAがセシウムカチオン及びルビジウムカチオンの少なくとも1種であることも好ましい。
また、加熱によるペロブスカイト膜の吸光度の低下をより抑制する観点からは、カチオンAはセシウム及びルビジウムの少なくとも1種のカチオンを少なくとも含むことが好ましい。この場合、カチオンA中のセシウムカチオン及びルビジウムカチオンの含有量の合計は、特に限定されないが、例えば、5mol%以上とすることができ、20mol%以上が好ましく、80mol%以上がより好ましい。なお、カチオンAがセシウムカチオン及びルビジウムカチオンの少なくとも1種であることも好ましい。
(カチオンB)
本発明に用いるペロブスカイト型結晶構造を有する光吸収剤において、カチオンBは、下記(i)、(ii)及び(iii)を満たす金属元素のカチオン(金属カチオンとも称す。)である。ただし、カチオンBは鉛のカチオンを含まない。
(i)周期表の1族〜15族に属する金属元素のうち、セシウムおよびルビジウムを除く2種以上の金属元素である。
(ii)価数が1価の金属元素及び価数が2価の金属元素を少なくとも含む。
(iii)価数毎に算出される金属元素の割合のうち、価数が2価の金属元素の割合が最も高い。ただし、上記の価数が2価の金属元素の割合は、2価以外のいずれかの価数の金属元素の割合と同じであってもよい。
上記カチオンBは、上記(i)、(ii)及び(iii)を満たすカチオンであれば特に限定されず、通常、ペロブスカイト型結晶構造を採り得る金属元素のカチオンが選択される。
また、「ただし、カチオンBは鉛のカチオンを含まない。」とは、本発明の効果を損なわない範囲で、鉛のカチオンを少量含んでいてもよいことを意味する。B中の鉛の含有量は、30mol%以下が好ましく、15mol%以下がより好ましく、5mol%以下が更に好ましく、B中に鉛を全く含有しないことが特に好ましい。
なお、本発明に用いるペロブスカイト型結晶構造を有する光吸収剤としても、鉛を含まないことが好ましく、光吸収剤中に含有されるセシウムカチオン及びルビジウムカチオンを除く金属元素のカチオン中の鉛のカチオンの含有量としては、上記B中の鉛の含有量の記載を好ましく適用することができる。
上記(iii)の「価数毎に算出される金属元素の割合」とは、カチオンBを構成する全ての金属元素の合計モル量に対する、価数毎の金属元素のモル量の割合を意味する。価数毎の金属元素のモル量は、カチオンBを構成する2種以上の金属元素を同じ価数の金属元素毎に分類し計算される。同じ価数の金属元素が複数種存在する場合には、その合計モル量を価数毎の金属元素のモル量として用い、計算される。
また、「価数毎に算出される金属元素の割合のうち、価数が2価の金属元素の割合が最も高い。ただし、上記の価数が2価の金属元素の割合は、2価以外のいずれかの価数の金属元素の割合と同じであってもよい。」とは、価数が2価の金属元素の割合が、2価以外のいずれの価数の金属元素の割合よりも大きいか、同じであることを意味する。例えば、下記組成式(Ia)で表される化合物においては、b2≧b1、b2≧b3、b2≧b4及びb2≧b5のいずれも満たすことを意味する。
組成式(Ia):AB1b1B2b2B3b3B4b4B5b5
上記組成式中、B1は価数が1価の金属元素を示し、B2は価数が2価の金属元素を示し、B3は価数が3価の金属元素を示し、B4は価数が4価の金属元素を示し、B5は価数が5価の金属元素を示す。a、b1〜b5及びcは組成比を示す数であって、化合物として中性(電荷0)を示すよう、a+b1+2×b2+3×b3+4×b4+5×b5=cを満たす。
すなわち、上記(iii)における割合はモルでの割合(組成比)を意味する。なお、同じ価数の金属元素を複数有する場合の組成比は合計量とする。
周期表の1族〜15族に属する金属元素のうち、セシウムおよびルビジウムを除く2種以上の金属元素は、伝導帯もしくは価電子帯の形成に寄与し得る金属元素、又は、自身はバンド形成に寄与しないものの、ペロブスカイト型結晶構造の歪みを良化させることで他の金属元素の軌道相互作用を良化させる金属元素(Li、Na、K、Mg、Ca、Sr及びBa等)である。これらの金属元素のカチオンを、上記(i)〜(ii)を満たすようにカチオンBとして有することにより、上記組成式(I)で表されるペロブスカイト型結晶構造を有する光吸収剤は、伝導帯もしくは価電子帯の形成に寄与し得る軌道の相互作用が強まり、バンド構造が好適化される。さらに、上記(ii)〜(iii)を満たすことにより、上述の通り、ペロブスカイト膜の耐熱性を高めることができる。なかでも、上記(i)の規定は、耐熱性をより向上させる観点から、周期表の2族〜15族に属する2種以上の金属元素であることが好ましい。これは、上述の元素拡散(イオン拡散)をより強く抑制できるためと考えられる。
本発明において、周期表の1族〜15族に属する金属元素とは、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、希土類金属元素、遷移金属元素、周期表の12族に属する金属元素、卑金属元素及び半金属元素を意味する。以下に、各金属元素のカチオンを例示する。
周期表1族に属するアルカリ金属元素のカチオンは、セシウムのカチオン(Cs)又はルビジウムのカチオン(Rb)でない限り特に限定されず、例えば、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)及びカリウム(K)の各元素のカチオン(Li、Na及びK)が挙げられ、K又はNaが好ましい。
周期表2族に属するアルカリ土類金属元素のカチオンは、特に限定されず、例えば、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)及びバリウム(Ba)の各元素のカチオン(Be2+、Mg2+、Ca2+、Sr2+及びBa2+)が挙げられ、Ba2+が好ましい。
希土類金属元素のカチオンは、特に限定されず、周期表3族に属するスカンジウム(Sc)及びイットリウム(Y)並びにランタノイド15元素(例えば、ランタン(La)、ユウロピウム(Eu)及びイッテルビウム(Yb))の各元素のカチオン(例えば、Sc3+、Y3+、La3+、Eu3+及びYb3+)が挙げられ、La3+が好ましい。
遷移金属元素(スカンジウム及びイットリウムを除く。)のカチオンは、特に限定されず、周期表4族〜11族に属する、例えば、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、銅(Cu)、銀(Ag)及び金(Au)の各元素のカチオン(例えば、Ti4+、Zr4+、Nb5+、Ta5+、Cu、Ag、Au及びAu3+)が挙げられ、これらの元素のカチオンが好ましく、Ti4+、Zr4+、Ta5+、Cu、Ag又はAuがより好ましい。
周期表12族に属する金属元素のカチオンは、特に限定されず、例えば、亜鉛(Zn)及びカドミウム(Cd)の各元素のカチオン(Zn2+及びCd2+)が挙げられ、Zn2+が好ましい。
周期表13族に属する卑金属元素のカチオンは、特に限定されず、例えば、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)及びインジウム(In)の各元素のカチオン(Al3+、Ga3+及びIn3+)が挙げられ、Ga3+又はIn3+が好ましい。
周期表14族に属する卑金属元素又は半金属元素のカチオンは、鉛のカチオン(Pb2+、Pb4+)でない限り特に限定されず、例えば、ゲルマニウム(Ge)及びスズ(Sn)の各元素のカチオン(Ge2+、Ge4+、Sn2+及びSn4+)が挙げられ、Ge2+、Ge4+又はSn4+が好ましく、Ge4+又はSn4+がより好ましい。
周期表15族に属する卑金属元素又は半金属元素のカチオンは、特に限定されず、例えば、アンチモン(Sb)及びビスマス(Bi)の各元素のカチオン(Sb3+、Sb5+、Bi3+及びBi5+)が挙げられ、Sb3+又はBi3+が好ましい。
カチオンBは、バンド構造の好適化の観点から、Ti、Zr、Nb、Ta、Cu、Ag、Au、Zn、Ga、In、Ge、Sn、Sb及びBiのうち少なくとも1種の金属元素のカチオンを含むことが好ましく、Ti、Zr、Nb、Ta、Cu、Ag、Au、Zn、Ga、In、Ge、Sn、Sb及びBiのうちの少なくとも2種以上の金属元素のカチオンで構成されていることがより好ましい。
カチオンBは、ペロブスカイト膜の耐熱性をより高める観点から、価数が1価の金属元素のカチオン及び価数が2価の金属元素のカチオンを少なくとも含み、製膜性の観点から、これらの1価の金属元素のカチオン及び2価の金属元素のカチオンを各々独立に、1〜3種含むことが好ましく、1種含むことがより好ましい。
カチオンB中の、価数が2価の金属元素のカチオンの含有量は、上記(iii)を満たす限り特に制限はないが、例えば、33mol%以上とすることができる。耐熱性をより向上させる観点から、下限値は、50mol%を越えることが好ましく、60mol%以上がより好ましく、70mol%以上が更に好ましい。上限値は、99mol%以下が好ましく、95mol%以下がより好ましく、90mol%以下が更に好ましい。
カチオンB中の価数毎に算出される金属元素の含有量のうち、2価以外の価数の金属元素のカチオンの含有量は、価数が2価の金属元素のカチオンの含有量が、いずれの価数の金属元素のカチオンの含有量よりも多いか、同じである限り特に制限はない。カチオンB中において、価数が2価の金属元素のカチオンの含有量は、2価以外のいずれかの価数の金属元素の含有量と同じであるとは、耐熱性の観点から、価数が2価の金属元素のカチオンの含有量が、少なくとも1価の金属元素の割合と同じであることが好ましい。
例えば、カチオンB中の、価数が1価の金属元素のカチオンの含有量は、耐熱性をより向上させる点から、下限値は、1mol%以上が好ましく、5mol%以上がより好ましい。上限値は、45mol%以下が好ましく、30mol%以下がより好ましい。
また、カチオンB中の、価数が1価の金属元素のカチオンの含有量に対する、価数が2価の金属元素のカチオンの含有量の比[価数が2価の金属元素のカチオンの含有量/価数が1価の金属元素のカチオンの含有量]は、特に制限されず、例えば、1〜100が好ましく、2〜50がより好ましい。
カチオンBが含む金属元素のカチオンの種類は、2種以上であり、好ましくは2〜10種であり、より好ましくは2〜5種である。2種以上の金属元素のカチオンの組合わせは、(ii)及び(iii)の規定を満たす組合わせであればよく、適宜に決定される。また、上記(ii)及び(iii)の規定を満たし、かつ、互いに周期表の異なる族に属する金属元素のカチオンを含む組合わせであることも好ましい。互いに周期表の異なる族に属する金属元素のカチオンを含む組合わせとしては、カチオンBが含む金属元素のカチオンの少なくとも2種が互いに周期表の異なる族に属する金属元素である組合わせと、カチオンBが含む金属元素のカチオンのすべてが互いに周期表の異なる族に属する金属元素のカチオンである組合わせとを包含する。
また、カチオンBは3種以上の異なる金属元素のカチオンを含むことも、ペロブスカイト膜の耐熱性をより高める点から好ましい。上記3種以上の異なる金属元素のカチオンの組合わせも、上記(ii)及び(iii)の規定を満たす範囲で、適宜に決定される。例えば、カチオンBが含む少なくとも3種の金属元素のカチオンのすべてが、互いに異なる価数の金属元素のカチオンである組合わせ、又は、互いに周期表の異なる族に属する金属元素のカチオンである組合わせを包含する。
カチオンBは、製膜性及びバンド構造の好適化の観点から、1価のカチオン及び2価のカチオンに加え、3価のカチオン、4価のカチオン及び5価のカチオンの少なくとも1種を含むことが好ましい。
カチオンBに含有され得る、3価のカチオンの種類、4価のカチオンの種類及び5価のカチオンの種類、各々独立に、1種でもよく、2種以上でもよい。
上記1価のカチオンは、遷移金属元素の1価のカチオンが好ましい。
上記2価のカチオンは、周期表14族に属する卑金属元素もしくは半金属元素又は遷移金属元素の2価のカチオンが好ましい。
上記4価のカチオンは、周期表14族に属する卑金属元素もしくは半金属元素又は遷移金属元素の4価のカチオンが好ましく、上記5価のカチオンは、周期表15族に属する卑金属元素もしくは半金属元素又は遷移金属元素の5価のカチオンが好ましく、遷移金属元素の5価のカチオンがより好ましい。
上記3価のカチオンは、周期表13族に属する卑金属元素又は15族に属する卑金属元素もしくは半金属元素の3価のカチオンが好ましく、15族に属する卑金属元素もしくは半金属元素の3価のカチオンがより好ましい。
カチオンBを構成する価数の異なる金属元素のカチオンの組合わせとしては、1価のカチオン、2価のカチオン及び3価のカチオンの組合わせ、1価のカチオン、2価のカチオン及び4価のカチオンの組合わせ、1価のカチオン、2価のカチオン及び5価のカチオンの組合わせ、1価のカチオン、2価のカチオン、3価のカチオン及び4価のカチオンの組合わせ、1価のカチオン、2価のカチオン、3価のカチオン及び5価のカチオンの組合わせ、1価のカチオン、2価のカチオン、4価のカチオン及び5価のカチオンの組合わせ、又は、1価のカチオン、2価のカチオン、3価のカチオン、4価のカチオン及び5価のカチオンの組合わせが好ましい。
カチオンBを構成する金属元素のカチオンとしては、1価のカチオンとしてCu、Ag及びAuの少なくとも1種、2価のカチオンとしてSn2+、Ge2+及びZn2+の少なくとも1種、3価のカチオンとしてBi3+、Sb3+、Ga3+及びIn3+の少なくとも1種、4価のカチオンとしてSn4+、Ge4+、Ti4+及びZr4+の少なくとも1種、並びに、5価のカチオンとしてNb5+及びTa5+の少なくとも1種がそれぞれ好ましく挙げられる。
耐熱性をより高める観点からは、上記のカチオンBを構成する価数の異なる金属元素のカチオンの組合わせの好ましい形態のうち、各価数の金属元素のカチオンとして、上記のカチオンBを構成する具体的な金属元素のカチオンを少なくとも有する組み合わせがより好ましい。
なかでも、以下の組合わせが好ましい。
遷移金属元素の1価のカチオンと周期表14族に属する卑金属元素もしくは半金属元素又は遷移金属元素の2価のカチオンと周期表13族に属する卑金属元素又は15族に属する卑金属元素もしくは半金属元素の3価のカチオンとを少なくとも有する組合わせ;
遷移金属元素の1価のカチオンと周期表14族に属する卑金属元素もしくは半金属元素又は遷移金属元素の2価のカチオンと周期表14族に属する卑金属元素もしくは半金属元素又は遷移金属元素の4価のカチオンとを少なくとも有する組合わせ;
遷移金属元素の1価のカチオンと周期表14族に属する卑金属元素もしくは半金属元素又は遷移金属元素の2価のカチオンと周期表15族に属する卑金属元素もしくは半金属元素又は遷移金属元素の5価のカチオンとを少なくとも有する組合わせ
より好ましくは、以下の組合わせである。
Ag、Cu及びAuの少なくとも1種とSn2+、Ge2+及びZn2+の少なくとも1種とBi3+、Sb3+、Ga3+及びIn3+の少なくとも1種とを有する組合わせ;
Ag、Cu及びAuの少なくとも1種とSn2+、Ge2+及びZn2+の少なくとも1種とTi4+、Ge4+及びSn4+の少なくとも1種とを有する組合わせ;
Ag、Cu及びAuの少なくとも1種とSn2+、Ge2+及びZn2+の少なくとも1種とNb5+及びTa5+の少なくとも1種とを有する組合わせ
カチオンB中における2種以上の金属元素のカチオンの割合は、カチオンBに係る上記(i)〜(iii)の規定を満たし、ペロブスカイト型結晶構造を採り得る限り、特に限定されない。なお、例えば、1価〜5価を示す金属元素のカチオンの組成比としては、後述するb1〜b5の組成比の記載を好ましく適用することができる。
(アニオンX)
本発明に用いるペロブスカイト型結晶構造を有する光吸収剤において、アニオンXは、塩素原子のアニオン(Cl)、臭素原子のアニオン(Br)及びヨウ素原子のアニオン(I)の少なくとも1種のアニオンを含む、アニオン性の原子又は原子団のアニオンを示す。アニオンXはCl、Br及びI以外のアニオンを特定量含んでもよい。このようなアニオンXの構成により、ペロブスカイト型結晶構造を形成でき、バンド構造が好適化されることで、吸収ピーク波長における高い吸光度を示すことができる。
上記のCl、Br及びI以外のその他のアニオン(以下、「その他のアニオン」とも称す。)としては、本発明の効果を奏する限り特に制限されず、例えば、F、NCS、SCN、NCO、OCN、O2−、HO、NO 、CHCOO及びHCOOが挙げられる。光吸収剤の安定性の点から、その他のアニオンはNCS、SCN、NCO、OCN、HO、NO 、CHCOO又はHCOOが好ましい。
アニオンX中に含有されるその他のアニオンは、1種でもよく2種以上でもよい。
アニオンXは、長波長領域の光吸収能を高める観点及び加熱によるペロブスカイト膜のラックの発生をより抑制する観点から、臭素原子及びヨウ素原子の少なくとも1種のアニオンを含むことが好ましく、ヨウ素原子のアニオンを含むことがより好ましい。
アニオンX中の塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子のアニオンの含有量の合計は、長波長領域の光吸収能を高める観点から、80mol%以上であり、90mol%以上が好ましく、95mol%以上がより好ましい。また、100mol%であることも好ましい。
アニオンX中のヨウ素原子のアニオンの割合は、加熱によるペロブスカイト膜のラックの発生をより抑制する観点から、70mol%を超えることが好ましく、75mol%以上がより好ましい。また、100mol%であることも好ましい。
上記組成式において、a〜cは各元素の組成比を示し、a及びbは0.50<a/b<1.50を満たす。
cは、化合物としてペロブスカイト型結晶構造を採るために、A及びBの組成比であるa及びbに対して適宜採り得るものである。すなわち、カチオンA及びカチオンBとアニオンXとが電荷を打ち消し合い、化合物として中性(電荷0)を示す、Xの組成比を示すものである。
例えば、c=6である組成式においては、aは1.3≦a≦2.8を満たす数であることが好ましく、1.5≦a≦2.6を満たす数であることがより好ましく、1.6≦a≦2.4を満たす数であることがさらに好ましく、bは上記a/bを満たすように定まる数である。
上記a/bは、耐熱性をより高める点から、0.70<a/b≦1.20を満たすことが好ましく、0.80≦a/b≦1.15を満たすことがより好ましい。
ペロブスカイト型結晶構造を有する光吸収剤は、下記組成式のいずれかで表されることがより好ましい。
AB21−2xaB1xaB3xa(0<xa≦1/3)
AB21−3xbB12xbB4xb(0<xb≦1/5)
AB21−4xcB13xcB5xc(0<xc≦1/7)
AB21−(2xd+3ya)B1xd+2yaB3xdB4ya(0<xd<1/2、0<ya<1/3、3xd+5ya≦1)
AB21−(2xe+4yb)B1xe+3ybB3xeB5yb(0<xe<1/2、0<yb<1/4、3xe+7yb≦1)
AB21−(3xf+4yc)B12xf+3ycB4xfB5yc(0<xf<1/3、0<yc<1/4、5xf+7yc≦1)
AB21−(2xg+3yd+4z)B1xg+2yd+3zB3xgB4ydB5(0<xg<1/2、0<yd<1/3、0<z<1/4、3xg+5yd+7z≦1)
なお、上記各組成式中において、A及びXは上記組成式(I)におけるA及びXと同義である。
B1は価数が1価の金属元素を、B2は価数が2価の金属元素を、B3は価数が3価の金属元素を、B4は価数が4価の金属元素を、B5は価数が5価の金属元素をそれぞれ示す。B1〜B5の各価数の金属元素は、上記組成式(I)のBにおける、対応する価数の金属元素と同義である。ただし、B1〜B5は鉛を含まない。B1はCu、Ag又はAuが好ましく、Cu又はAgがより好ましい。B2はSn、Ge又はZnが好ましい。B3はGa、In、Bi又はSbが好ましい。B4はGe、Sn、Ti又はZrが好ましい。B5はNb又はTaが好ましい。
xa〜xg、ya〜yd及びzは組成比を示す数であり、対応する金属元素が複数存在する場合は合計量を示す。
ペロブスカイト型結晶構造を有する光吸収剤で形成された層は、ペロブスカイト型結晶構造を有していれば、ペロブスカイト型結晶構造を有していない部分があってもよい。
ペロブスカイト型結晶構造を有する光吸収剤は、1種でもよく2種以上の混合物でもよい。したがって、本発明において、ペロブスカイト型結晶構造を有する光吸収剤は、光吸収剤として少なくとも1種が存在していればよく、組成式、分子式及び結晶構造等により、厳密にいかなる化合物であるかを明確に区別する必要はない。例えば、上記カチオンA及びカチオンBの一部は、ペロブスカイト型結晶構造を有する光吸収剤が化合物として中性を示す範囲内で、同じ金属元素で価数の異なるカチオンとして存在していてもよい。
「光吸収剤が下記組成式(I)で表されるペロブスカイト型結晶構造を有する」とは、光吸収剤を2種以上用いる場合には、少なくとも1種の光吸収剤が上記組成式(I)で表されるペロブスカイト型結晶構造を有することを意味する。
上記ペロブスカイト型結晶構造を有する光吸収剤としては、例えば以下の組成式(1)〜(7)のいずれかで表される化合物が挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。なお、以下の組成式において、A、B1〜B5及びXは、各々独立に、1種であっても、2種以上の組合わせであってもよい。
(1)AB21−2xaB1xaB3xa(0<xa≦1/3、A=Cs、Rb、CHNH又はCH(NHを、B2=Ge、Sn又はZnを、B1=Ag又はCuを、B3=Sb、Bi、Ga又はInを、X=Br又はIを、それぞれ示す。)
(2)AB21−3xbB12xbB4xb(0<xb≦1/5、A=Cs、Rb、CHNH又はCH(NHを、B2=Ge、Sn又はZnを、B1=Ag又はCuを、B4=Sn又はGeを、X=Br又はIを、それぞれ示す。)
(3)AB21−4xcB13xcB5xc(0<xc≦1/7、A=Cs、Rb、CHNH又はCH(NHを、B2=Ge、Sn又はZnを、B1=Ag又はCuを、B5=Nb又はTaを、X=Br又はIを、それぞれ示す。)
(4)AB21−(2xd+3ya)B1xd+2yaB3xdB4ya(0<xd<1/2、0<ya<1/3、3xd+5ya≦1、A=Cs、Rb、CHNH又はCH(NHを、B2=Ge、Sn又はZnを、B1=Ag又はCuを、B3=Sb、Bi、Ga又はInを、B4=Sn又はGeを、X=Br又はIを、それぞれ示す。)
(5)AB21−(2xe+4yb)B1xe+3ybB3xeB5yb(0<xe<1/2、0<yb<1/4、3xe+7yb≦1、A=Cs、Rb、CHNH又はCH(NHを、B2=Ge、Sn又はZnを、B1=Ag又はCuを、B3=Sb、Bi、Ga又はInを、B5=Nb又はTaを、X=Br又はIを、それぞれ示す。)
(6)AB21−(3xf+4yc)B12xf+3ycB4xfB5yc(0<xf<1/3、0<yc<1/4、5xf+7yc≦1、A=Cs、Rb、CHNH又はCH(NHを、B2=Ge、Sn又はZnを、B1=Ag又はCuを、B4=Sn又はGeを、B5=Nb又はTaを、X=Br又はIを、それぞれ示す。)
(7)AB21−(2xg+3yd+4z)B1xg+2yd+3zB3xgB4ydB5(0<xg<1/2、0<yd<1/3、0<z<1/4、3xg+5yd+7z≦1、A=Cs、Rb、CHNH又はCH(NHを、B2=Ge、Sn又はZnを、B1=Ag又はCuを、B3=Sb、Bi、Ga又はInを、B4=Sn又はGeを、B5=Nb又はTaを、X=Br又はIを、それぞれ示す。)
ペロブスカイト型結晶構造を有する光吸収剤は、目的とするペロブスカイト型結晶構造を有する組成となるように、原料として、少なくとも1種の下記式(A−1)で表される化合物と少なくとも1種の下記式(B−1)で表される化合物とを化学量論量用いることで、合成することができる。ここでの化学量論量とは、上記ペロブスカイト型結晶構造を有する光吸収剤における各元素の組成比及び各元素のイオンの価数が、原料の仕込み比(モル比)から計算される各元素のモル比及び原料における各イオンの価数と同じになることに基づき、決定される量である。
式(A−1):AX
式(B−1):BX
式(A−1)中、Aはセシウム、ルビジウム又はカチオン性有機基を表し、式(I)のAで記載するセシウム、ルビジウム及びカチオン性有機基と同義である。式(A−1)中、Xはアニオン性の原子又は原子団を表し、式(I)のXで記載するアニオン性原子及び原子団と同義である。式(A−1)で表される化合物は、式(I)の組成を有する光吸収剤を導く原料として、式(I)のA及びXで表される元素を有する化合物が好ましい。式(A−1)で表される化合物は、通常、カチオンAと、アニオンXとがイオン結合してなる化合物である。
式(B−1)中、Bは周期表の1族〜15族に属する金属元素のうち、セシウムおよびルビジウムを除く金属元素を表し、式(I)のBで記載する周期表の1族〜15族に属する金属元素のうち、セシウムおよびルビジウムを除く金属元素と同義である。式(B−1)中、Xはアニオン性の原子又は原子団を表し、式(I)のXで記載するアニオン性原子及び原子団と同義である。式(B−1)で表される化合物は、通常、カチオンBと、アニオン性の原子又は原子団のXとがイオン結合してなる化合物である。式(B−1)中、nは化合物として中性になるよう採択される値であって、Xが1価の場合、カチオンBの価数と同じ数となる。具体的には、nは1〜4の整数であることが好ましい。
なお、式(B−1)で表される化合物は、上記Bに係る(ii)及び(iii)の規定を満たすように、少なくとも2種以上用いて作製される。
式(A−1)又は(B−1)で表される具体的な化合物としては、例えば、実施例で使用する化合物が挙げられる。
ペロブスカイト化合物の合成方法については、例えば、非特許文献2に記載の方法が挙げられる。また、J.Am.Chem.Soc.,2009,131(17),p.6050−6051又はNat.Mater.2014,13,p897−903に記載の方法も挙げられる。これらの文献記載の方法、及び、後述する実施例の項における合成方法の記載も参照し、適宜合成することができる。
ペロブスカイト型結晶構造を有する光吸収剤の使用量は、第一電極1の表面の少なくとも一部を覆う量であればよく、表面全体を覆う量が好ましい。
感光層13中、ペロブスカイト型結晶構造を有する光吸収剤の含有量は、通常1〜100質量%である。
上記ペロブスカイト型結晶構造を有する光吸収剤の用途は特に限定されず、例えば、太陽電池、発光素子、シンチレーション検知器及びイメージセンサー等に用いることができる。また、目的に適合すれば、光吸収と関係のない用途にも使用できる。なお、上記ペロブスカイト型結晶構造を有する光吸収剤を含む層を、ペロブスカイト型化合物層、ペロブスカイト型半導体層、ペロブスカイト型光吸収層及びペロブスカイト型エネルギー変換層等とも称する。
別の態様では、上記ペロブスカイト型結晶構造を有する光吸収剤は、上記の耐熱性に優れることに加え、従来のペロブスカイト型結晶構造を有する化合物に比べて、蛍光強度(発光強度)にも優れる。このため、上記ペロブスカイト型結晶構造を有する光吸収剤は、発光素子にも好適に用いることができる。
<正孔輸送層3>
本発明の光電変換素子は、光電変換素子10A〜10Dのように、第一電極1と第二電極2との間に正孔輸送層3を有することが好ましい態様の1つである。この態様において、正孔輸送層3は感光層13Cと接触(積層)していることが好ましい。正孔輸送層3は、好ましくは第一電極1の感光層13と第二電極2の間に設けられる。
この正孔輸送層3は、光吸収剤内に生成した正孔を捕捉して第二電極2に移動する機能を有し、好ましくは固体状の層(固体正孔輸送層)である。
正孔輸送層3を形成する正孔輸送材料は、上記機能を奏するものであれば、公知のものを特に限定されずに用いることができる。用いる正孔輸送材料は、液体材料でも固体材料でもよいが、溶液塗布可能な固体材料が好ましい。例えば、特開2001−291534号公報の段落番号0209〜0212に記載の有機正孔輸送材料等が挙げられる。有機正孔輸送材料としては、好ましくは、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール及びポリシラン等の導電性高分子、2個の環がC、Siなど四面体構造をとる中心原子を共有するスピロ化合物、トリアリールアミン構造等を有する芳香族アミン化合物、トリフェニレン化合物、含窒素複素環化合物、ポルフィリン、フタロシアニン、ナフタロシアニン等の環状化合物、液晶性シアノ化合物等が挙げられる。これ以外にも、国際公開第2015/107454号、同2015/114521号又は同2014/111365号に記載の正孔輸送材料が挙げられる。
正孔輸送材料は、溶液塗布可能で固体状になる有機正孔輸送材料が好ましく、具体的には、2,2’,7,7’−テトラキス−(N,N−ジ−p−メトキシフェニルアミノ)−9,9’−スピロビフルオレン(spiro−MeOTADともいう)、ポリ(3−ヘキシルチオフェン−2,5−ジイル)、4−(ジエチルアミノ)ベンズアルデヒド ジフェニルヒドラゾン、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)等が挙げられる。
正孔輸送層3の膜厚は、特に限定されないが、50μm以下が好ましく、1nm〜10μmがより好ましく、5nm〜5μmが更に好ましく、10nm〜1μmが特に好ましい。なお、正孔輸送層3の膜厚は、第二電極2と感光層13の表面との平均距離に相当し、走査型電子顕微鏡(SEM)等を用いて光電変換素子の断面を観察することにより、測定できる。
− 正孔輸送層16−
本発明においては、光電変換素子10Eのように、好ましくは、透明電極11bの表面に正孔輸送層16を有している。正孔輸送層16は、光吸収剤内に生成した正孔を捕捉して導電性支持体11に輸送する機能を有しており、形成される位置が異なること以外は、上記正孔輸送層3と同じである。
<正孔注入層>
本発明の光電変換素子は、正孔注入層(図1〜図6において図示しない。)を備えていてもよい。正孔注入層は、正孔輸送層(正孔輸送材料)から電荷を受け取ることで正孔輸送材層中に自由電荷を発生させ、正孔輸送層の導電率を向上させる層をいう。導電率を向上させる程度は、特に限定されないが、例えば、1.01〜1010倍程度であることが好ましい。
正孔注入層は、通常、正孔輸送層の近傍に設けられ、正孔輸送層に対して感光層と反対側に、好ましくは正孔輸送層に隣接して設けられる。
正孔注入層を形成する材料は、特に限定されないが、例えば、金属錯体、金属塩及び有機化合物が挙げられ、より具体的には、例えば、(p−BrCNSbCl、三価のコバルト錯体(FK209他)、LiTFSI(lithiumbis(trifluoromethanesulfonyl)imide)、FeCl、WO、MoO、Molybdenum tris(1−(trifluoroacetyl)−2−(trifluoromethyl)ethane−1,2−dithiolene)、SnCl、SbCl、F4−TCNQ等が挙げられる。
正孔注入層の膜厚は、特に限定されず、0.1nm〜10μmが好ましく、1nm〜1μmがより好ましく、10nm〜0.5μmが更に好ましい。
<電子輸送層4>
本発明の光電変換素子は、光電変換素子10Eのように、第一電極1と第二電極2との間に電子輸送層4を有することも好ましい態様の1つである。この態様において、電子輸送層4は感光層13Cと接触(積層)していることが好ましい。
電子輸送層4は、電子の輸送先が第二電極である点、及び、形成される位置が異なること以外は、上記電子輸送層15と同じである。
<第二電極2>
第二電極2は、太陽電池において正極として機能する。第二電極2は、導電性を有していれば特に限定されず、通常、導電層11と同じ構成とすることができる。強度が十分に保たれる場合は、支持体11aは必ずしも必要ではない。
第二電極2の構造としては、集電効果が高い構造が好ましい。感光層13に光が到達するためには、導電層11と第二電極2との少なくとも一方は実質的に透明でなければならない。本発明の太陽電池においては、導電層11が透明であって太陽光等を支持体11a側から入射させるのが好ましい。この場合、第二電極2は光を反射する性質を有することが更に好ましい。
第二電極2を形成する材料としては、例えば、白金(Pt)、金(Au)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、銀(Ag)、インジウム(In)、ルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、アルミニウム(Al)等の金属、上述の導電性の金属酸化物、炭素材料及び伝導性高分子等が挙げられる。炭素材料としては、炭素原子同士が結合してなる、導電性を有する材料であればよく、例えば、フラーレン、カーボンナノチューブ、グラファイト、グラフェン等が挙げられる。炭素材料としては、炭素原子同士が結合してなる、導電性を有する材料であればよく、例えば、フラーレン、カーボンナノチューブ、グラファイト、グラフェン等が挙げられる。
第二電極2としては、金属若しくは導電性の金属酸化物の薄膜(蒸着してなる薄膜を含む)、又は、この薄膜を有するガラス基板若しくはプラスチック基板が好ましい。ガラス基板若しくはプラスチック基板としては、金若しくは白金の薄膜を有するガラス、又は、白金を蒸着したガラスが好ましい。
第二電極2の膜厚は、特に限定されず、0.01〜100μmが好ましく、0.01〜10μmがより好ましく、0.01〜1μmが更に好ましい。
<その他の構成>
本発明においては、第一電極1と第二電極2との接触を防ぐために、ブロッキング層14に代えて、又は、ブロッキング層14等とともに、スペーサー及びセパレータ等を用いることもできる。
また、第二電極2と正孔輸送層3の間に正孔ブロッキング層を設けてもよい。
[太陽電池]
本発明の太陽電池は、本発明の光電変換素子を用いて構成される。
本発明の光電変換素子は、感光層における光吸収剤として耐熱性に優れたペロブスカイト膜を有するため、耐熱性に優れる。このため、本発明の太陽電池は、優れた耐熱性をも示すことができる。
例えば図1〜図6に示されるように、外部回路6に対して仕事させるように構成した光電変換素子10を太陽電池として用いることができる。第一電極1(導電層11)及び第二電極2に接続される外部回路6は、公知のものを特に制限されることなく、用いることができる。
本発明は、例えば、非特許文献2、J.Am.Chem.Soc.,2009,131(17),p.6050−6051に記載の各太陽電池に適用することができる。
本発明の太陽電池は、構成物の劣化及び蒸散等を防止するために、側面をポリマー及び接着剤等で密封することが好ましい。
[光電変換素子及び太陽電池の製造方法]
本発明の光電変換素子及び太陽電池は、公知の製造方法、例えば、非特許文献2、J.Am.Chem.Soc.,2009,131(17),p.6050−6051、並びに、Science,338,p.643(2012)等に記載の方法によって製造できる。
以下に、本発明の光電変換素子及び太陽電池の製造方法を簡潔に説明する。
本発明の光電変換素子においては、まず、導電層11の表面に、所望によりブロッキング層14、多孔質層12、電子輸送層15及び正孔輸送層16の少なくとも1つを形成する。
ブロッキング層14は、例えば、上記絶縁性物質又はその前駆体化合物等を含有する分散物を導電層11の表面に塗布し、焼成する方法又はスプレー熱分解法等によって、形成できる。
多孔質層12を形成する材料は、好ましくは微粒子として用いられ、更に好ましくは微粒子を含有する分散物として用いられる。
多孔質層12を形成する方法としては、特に限定されず、例えば、湿式法、乾式法、その他の方法(例えば、Chemical Review,第110巻,6595頁(2010年刊)に記載の方法)が挙げられる。これらの方法において、導電層11の表面又はブロッキング層14の表面に分散物(ペースト)を塗布した後に、100〜800℃の温度で10分〜10時間、例えば空気中で焼成することが好ましい。これにより、微粒子同士を密着させることができる。
焼成を複数回行う場合、最後の焼成以外の焼成の温度(最後以外の焼成温度)を、最後の焼成の温度(最後の焼成温度)よりも低い温度、すなわち最後の焼成温度未満で行うのがよい。例えば、酸化チタンペーストを用いる場合、最後以外の焼成温度を50〜300℃の範囲内に設定することができる。また、最後の焼成温度を、100〜600℃の範囲内において、最後以外の焼成温度よりも高くなるように、すなわち最後以外の焼成温度を越えるように設定することができる。支持体11aとしてガラス支持体を用いる場合、焼成温度は60〜500℃が好ましい。
多孔質層12を形成するときの、多孔質材料の塗布量は、多孔質層12の膜厚及び塗布回数等に応じて適宜に設定され、特に限定されない。導電層11の表面積1m当たりの、多孔質材料の塗布量は、例えば、0.5〜500gが好ましく、更には5〜100gが好ましい。
電子輸送層15又は正孔輸送層16を設ける場合、それぞれ、後述する正孔輸送層3又は電子輸送層4と同様にして、形成することができる。
透明電極11上に正孔輸送層16を設ける場合、所望により、正孔輸送層16の形成に先立ち、正孔注入層を形成することができる。正孔注入層の形成方法は後述する。
次いで、感光層13を設ける。
感光層13を設ける方法は、湿式法及び乾式法が挙げられ、特に限定されない。本発明においては、湿式法が好ましく、例えば、ペロブスカイト型結晶構造を有する光吸収剤を含有する光吸収剤組成物(溶液)に接触させる方法が好ましい。
この方法においては、まず、感光層13を形成するための光吸収剤組成物を調製する。光吸収剤組成物は、上記ペロブスカイト型結晶構造を有する光吸収剤の原料である少なくとも1種の上記式(A−1)で表される化合物及び少なくとも1種の上記式(B−1)で表される化合物を、目的とするペロブスカイト型結晶構造を有する光吸収剤の組成となる化学量論比(モル比)で含有する。この光吸収剤組成物は、原料を所定のモル比で混合した後に加熱することにより、調製できる。上記原料の混合順は特に制限されず、例えば、一度に原料である全ての化合物を混合してもよく、原料を含有する2以上の溶液を別途調製した上で、混合してもよい。例えば、上記式(A−1)で表される化合物及び上記式(B−1)で表される化合物を含む溶液と、上記式(B−1)で表される化合物を含む溶液の2種をそれぞれ別途調製した後、これらの溶液を混合する方法も挙げられる。
この組成物は通常溶液であるが、懸濁液でもよい。加熱する条件は、特に限定されないが、加熱温度は30〜200℃が好ましく、70〜150℃が更に好ましい。また、2以上の原料溶液を混合する際には、加熱せずに、単に混合してもよい。加熱時間は0.5〜100時間が好ましく、1〜3時間が更に好ましい。溶媒又は分散媒は後述するものを用いることができる。
次いで、調製した光吸収剤組成物を、その表面に感光層13を形成する層(多孔質層12、ブロッキング層14又は電子輸送層15のいずれかの層)の表面に接触させる。具体的には、光吸収剤組成物を塗布又は浸漬することが好ましい。接触させる温度は5〜100℃であることが好ましく、浸漬時間は5秒〜24時間であるのが好ましく、20秒〜1時間がより好ましい。塗布した光吸収剤組成物を乾燥させる場合、乾燥は熱による乾燥が好ましく、通常は、20〜300℃、好ましくは50〜170℃に加熱することで乾燥させる。
また、上記ペロブスカイト型結晶構造を有する光吸収剤の合成方法に準じて感光層を形成することもできる。
更に、上記式(A−1)で表される化合物を含有するAX組成物(アンモニウム塩組成物)と、上記式(B−1)で表される化合物を含有するBX組成物(金属塩組成物)とを、別々に塗布(浸漬法を含む)し、必要により乾燥する方法も挙げられる。この方法では、いずれの溶液を先に塗布してもよいが、好ましくはBX組成物を先に塗布する。この方法における各化合物のモル比、塗布条件及び乾燥条件は、上記方法と同じである。この方法では、上記AX組成物及び上記MX組成物の塗布に代えて、上記各化合物を、蒸着させることもできる。
更に他の方法として、上記光吸収剤組成物の溶剤を除去した化合物又は混合物を用いた、真空蒸着等の乾式法が挙げられる。例えば、上記式(A−1)で表される化合物及び上記式(B−1)で表される化合物を、同時又は順次、蒸着させる方法も挙げられる。
これらの方法等により、ペロブスカイト型結晶構造を有する光吸収剤が多孔質層12、ブロッキング層14、電子輸送層15又は正孔輸送層16の表面に感光層として形成される。
このようにして設けられた感光層13上に、正孔輸送層3又は電子輸送層4を形成する。
正孔輸送層3は、正孔輸送材料を含有する正孔輸送材料溶液を塗布し、乾燥して、形成することができる。正孔輸送材料溶液は、塗布性に優れる点、及び多孔質層12を有する場合は多孔質層12の孔内部まで侵入しやすい点で、正孔輸送材料の濃度が0.1〜1.0M(モル/L)であるのが好ましい。塗布する温度及び塗布時間は、特に限定されず、適宜に設定される。正孔輸送材料溶液の乾燥条件は、加熱条件が好ましく、通常、30〜200℃、好ましくは40〜110℃の加熱条件を適用できる。
電子輸送層4は、電子輸送材料を含有する電子輸送材料溶液を塗布し、乾燥して、形成することができる。
正孔輸送層3を形成した後に、所望により正孔注入層を形成する。
正孔注入層は、上述の材料を含有する正孔注入材料溶液を塗布し、乾燥して、又は、上述の材料を用いて乾式法(蒸着等)により、形成することができる。
正孔輸送層3若しくは正孔注入層又は電子輸送層4を形成した後に、第二電極2を形成する。このようにして、感光層を設ける工程と、正孔輸送層を設ける工程とが行われ、導電層と第二電極との間に感光層と正孔輸送層とが積層された光電変換素子及び太陽電池が製造される。
各層の膜厚は、各分散液又は組成物(溶液)の濃度、塗布回数を適宜に変更して、調整できる。例えば、膜厚が厚い感光層13B及び13Cを設ける場合には、感光層形成用組成物、又は、アンモニウム塩組成物若しくは金属塩組成物を複数回塗布、乾燥すればよい。
上述の各分散液及び組成物は、それぞれ、必要に応じて、分散助剤、界面活性剤等の添加剤を含有していてもよい。
光電変換素子の製造方法に使用する溶媒又は分散媒としては、特開2001−291534号公報に記載の溶媒が挙げられるが、特にこれに限定されない。本発明においては、有機溶媒が好ましく、更に、アルコール溶媒、アミド溶媒、ニトリル溶媒、スルホキシド溶媒、炭化水素溶媒、ラクトン溶媒、ハロゲン溶媒及びこれらの2種以上の混合溶媒が好ましい。混合溶媒としては、アルコール溶媒と、アミド溶媒、ニトリル溶媒、スルホキシド溶媒又は炭化水素溶媒から選ばれる溶媒との混合溶媒が好ましい。具体的には、メタノール、エタノール、イソプロパノール、γ−ブチロラクトン、クロロベンゼン、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド若しくはジメチルスルホキシド(DMSO)、又は、これらの混合溶媒が好ましい。
各層を形成する組成物又は分散剤の塗布方法は、特に限定されず、スピンコート、エクストルージョンダイコート、ブレードコート、バーコート、スクリーン印刷、ステンシル印刷、ロールコート、カーテンコート、スプレーコート、ディップコート、インクジェット印刷法、浸漬法等、公知の塗布方法を用いることができる。中でも、スピンコート法、スクリーン印刷法等が好ましい。
本発明の光電変換素子は、必要に応じて、アニール、ライトソーキング、酸素雰囲気下での放置等の効率安定化処理を行ってもよい。
上記のようにして作製した光電変換素子は、第一電極1及び第二電極2に外部回路6を接続して、太陽電池として用いることができる。
[発光素子]
[発光素子]
本発明の光電変換素子において説明した感光層(上記光吸収剤を含む層)は、その優れた特性(耐熱性及びペロブスカイト型結晶構造を有する膜の製膜性)を利用して、光電変換素子以外にも、発光素子等にも好ましく適用できる。
本発明の発光素子は、本発明の光吸収剤を含む層を具備すればよく、用途等に応じて適宜の形状ないしは寸法に設定される。本発明の光吸収剤を含む層は、入射光をより長波長の光に変換して発光する波長変換部、又は、電界発光素子における発光層として機能することができ、耐熱性及び発光強度に優れる。
本発明の光吸収剤を含む層は、例えば、後述する波長変換部材、好ましくは波長変換ユニット中に組み込まれた状態で、発光素子中に具備することが好ましい。
本発明の発光素子の構成としては、特に限定されないが、次の各構成が挙げられる。
具体的な構成として、例えば、光源/波長変換部材、光源/透光性基板/波長変換部材、光源/波長変換部材/透光性基板、光源/透光性基板/波長変換部材/透光性基板、光源/波長変換部材/カラーフィルタ、光源/透光性基板/波長変換部材/カラーフィルタ、光源/波長変換部材/透光性基板/カラーフィルタ、光源/透光性基板/波長変換部材/透光性基板/カラーフィルタ、光源/透光性基板/波長変換部材/カラーフィルタ/透光性基板、光源/波長変換部材/カラーフィルタ/透光性基板の各構成が挙げられる。上記において、「/」は、左右に記載する部材を積層した構成であることを意味する。
各構成部材について、詳述する。
[波長変換部材]
上記波長変換部材は、本発明の光吸収剤を含む層を波長変換部として有するものであれば、その形状、寸法等は特に限定されず、用途等に応じて適宜に設定される。例えば、上記波長変換部材及び波長変換部の形状としては、それぞれ、膜状、板状(例えば、シート状、フィルタ状、ディスク状)、レンズ状、ファイバー状、光導波路状等が挙げられる。
上記波長変換部材は、板状であることが好ましい態様の1つである。この場合、上記波長変換部材(波長変換フィルタともいう)は、本発明の光吸収剤を含む波長変換層を波長変換部として有していればよく、基板との積層体であってもよい。波長変換層の厚さは、特に限定されないが、例えば、0.001〜100μmが好ましく、0.01〜10μmがより好ましく、0.01〜5μmがさらに好ましい。
基板としては、ガラス基板又はポリマー基板が挙げられる。ガラス基板としては、例えば、ソーダ石灰ガラス、バリウム−ストロンチウム含有ガラス、鉛ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウム−ホウケイ酸ガラス、石英等の各ガラス製の基板が挙げられる。ポリマー基板としては、例えば、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルスルフィド、ポリスルフォン等の各ポリマー製の基板が挙げられる。
上記波長変換部材は、基板以外の構成部材を有していてもよい。このような構成部材としては、波長変換部材に通常用いられるものであれば特に限定されず、例えば、保護膜(フィルム)等が挙げられる。
上記波長変換部材の作製方法としては、前述の感光層を設ける方法の記載を適用することができる。例えば、湿式法では、光吸収剤組成物(溶液)に上記基板を接触させる方法が挙げられる。
[波長変換ユニット]
本発明の波長変換ユニットは、光源と、上述した、上記波長変換部材とを有する。
本発明の波長変換ユニットの構造としては、従来公知の構造を特に限定されることなく適用することができる。光源と波長変換部材との配置についても、特に限定されず、光源と波長変換部材とが接した状態に配置されていてもよく、離間した状態若しくは他の部材を介在した状態に配置されていてもよい。
光源としては、特に限定されず、例えば、白熱電球、メタルハライドランプ、HIDランプ(高輝度放電灯:High Intensity Discharge Lamp)、キセノンランプ、ナトリウムランプ、水銀ランプ、蛍光ランプ、冷陰極管、カソードルミネッセンス、低速電子線管、発光ダイオード〔例えば、GaP(赤色、緑色)、GaPAs(1−x)(赤色、橙色、黄色:0<x<1)、AlGa(1−x)As(赤色:0<x<1)、GaAs(赤色)、SiC(青色)、GaN(青色)、ZnS、ZnSe〕、エレクトロルミネッセンス(例えば、ZnS母体と発光中心を使用する無機EL、有機EL)、レーザー(例えば、He−Neレーザー、COレーザー、Ar,Kr,He−Cdレーザー、エキシマレーザー、窒素レーザー等の気体レーザー、ルビーレーザー、イットリウム−アルミニウム−ガーネット(YAG)レーザー、ガラスレーザー等の固体レーザー、色素レーザー、半導体レーザー)、太陽光等を挙げることができる。
光源は、発光ダイオード、エレクトロルミネッセンス又は半導体レーザーが好ましく、発光ダイオードがより好ましい。
発光ダイオードとしては、本発明の光吸収剤を励起可能な発光波長を発光できる発光層を有する半導体発光素子が好ましい。このような半導体発光素子として、上記半導体を有するものが挙げられる。上記半導体以外の半導体としては、本発明の光吸収剤を効率よく励起できる短波長を発光可能な窒化物半導体(InAlGa(1−x−y)、0≦X、0≦Y、X+Y≦1)が好ましい。半導体の構造としては、MIS(Metal−Insulator−Silicon)接合、PIN接合、pn接合などを有するホモ構造、ヘテロ構造又はダブルヘテロ構造のものが挙げられる。半導体層の材料又はその混晶度によって発光波長を種々選択することができる。また、半導体活性層を量子効果が生ずる薄膜に形成させた単一量子井戸構造又は多重量子井戸構造とすることもできる。
上記半導体レーザーは、特に限定されないが、以下の機構によるものが好ましい。すなわち、半導体をpn接合し、ここに順方向バイアスを印加し、高いエネルギー準位にある少数キャリアーの注入を行って、p形領域に流れ込んだ電子を正孔と、n形領域に流れ込んだ正孔を電子と再結合させる。これによって、電子を高いエネルギー準位から低いエネルギー準位に遷移させ、そのエネルギー差に相当する光子を放出させる機構が挙げられる。
半導体レーザーの材料としては、ゲルマニウム、シリコン等のIV族元素、GaAs、InPなどの格子振動を伴わない直接遷移型のIII−V族、II−VI族化合物等を挙げることができる。また、これらの材料は、2元系のみならず、3元系、4元系、5元系等の多元系であってもよい。また、その積層構造はクラッド層を設けたダブルヘテロ構造であってもよく、また、下部クラッド、活性層、上部クラッドよりなる構成であってもよい。更には多重量子井戸構造を適用したものであってもよい。
上記波長変換ユニットは、所望により、カラーフィルタを備え、色純度を調整してもよい。カラーフィルタとしては、通常用いられるものであれば特に限定されない。カラーフィルタに用いる顔料としては、例えば、ペリレン顔料、レーキ顔料、アゾ顔料、キナクリドン顔料、アントラキノン顔料、アントラセン顔料、イソインドリン顔料、イソインドリノン顔料、フタロシアニン顔料、トリフェニルメタン塩基性染料、インダンスロン顔料、インドフェノール顔料、シアニン顔料、ジオキサジン顔料等の各種顔料、又は、これら顔料2種以上の顔料混合物、更には、上記顔料若しくは顔料混合物とバインダー樹脂との混合物(溶解又は分散させた固体状態のもの)が挙げられる。
上記波長変換ユニットは、上記波長変換部材を備えており、光源からの入射光を吸収し、高い量子収率で射出光に変換し、優れた発光強度で発光することができる。
本発明の波長変換ユニットは、上記波長変換部の作製以外は、公知の方法で作製できる。
上記透光性基板とは、可視光を50%以上透過することができる基板をいい、具体的には、上記波長変換部材が有していてもよい基材と同義である。また、カラーフィルタについても上記波長変換部材が有していてもよいカラーフィルタと同義である。透光性基板及びカラーフィルタの形状は、特に限定されるものではなく、板状であってもよく、またレンズ状の形状であってもよい。
本発明の発光素子は、各種の用途に用いることができ、好ましくは、各種ディスプレイ等の表示装置、照明装置等が挙げられる。
表示装置としては、特に限定されず、例えば、各種ディスプレイ、交通信号、交通表示装置、液晶バックライト、液晶フロントライト、フィールドシーケンシャル液晶表示等が挙げられる。照明装置としては、特に限定されず、例えば、一般照明装置(器具)、局所照明装置、インテリア照明装置等が挙げられる。
本発明の発光素子は、上述の構成に用いる各構成要素を順次積層して作製することができ、各構成要素を貼り合わせて作製することもできる。構成要素の積層順は、特に限定されない。
以下に実施例に基づき本発明について更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されない。
以下の実施例において組成を表す「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。本発明において「室温」とは25℃を意味する。
実施例1
以下に示す手順により、光吸収剤の塗布膜を作製した。
[光吸収剤の塗布膜(試料No.101)の作製]
<光吸収剤形成用塗布液1の調製>
CsI(関東化学社製)、AgI(Alfa Aesar社製)、SnI(TCI社製)及びBiI(ALDRICH社製)をモル比20:1:18:1となるようガラス容器に秤量した。このガラス容器に、さらにジメチルスルホキシド(DMSO、関東化学社製)1mLを加え、110℃で1時間混合撹拌することにより、濃度45質量%の光吸収剤形成用塗布液1を調製した。
<塗布膜の作製>
調製した塗布液1をガラス基板(日本電子硝子社製)にスピンコート法(2000rpmで30秒)により塗布(塗布温度:25℃)した。その後、塗布した塗布液1を、ホットプレートを用いて、160℃で5分間加熱して焼成し、膜厚200nmの、試料No.101の光吸収剤の塗布膜(薄膜)を作製した。上記塗布液1の調製及び塗布膜の作製は窒素雰囲気のグローブボックス内で実施した。
膜厚は、走査型電子顕微鏡(SEM)により観察して、決定した。
[光吸収剤の塗布膜(試料No.102〜132、c01〜c12)の作製]
<塗布膜(試料No.104〜107、128、130、131、c01〜c04、c07、c08、c10及びc12)の作製>
上述した試料No.101の光吸収剤の塗布膜の作製において、後記表1記載の組成式の光吸収剤が得られるよう原料の仕込み比(モル比)を変えた以外は同様にして、試料No.104〜107、128、130、131、c01〜c04、c07、c08、c10及びc12の光吸収剤の塗布膜をそれぞれ作製した。
<塗布膜(試料No.102、103、108、110〜113、123〜127、129及び132)の作製>
上述した試料No.101の光吸収剤の塗布膜の作製において、原料として、GeI(ALDRICH社製)、ZnI(ALDRICH社製)、SbI(ALDRICH社製)、InI(ALDRICH社製)、CuI(富士フイルム和光純薬社製)、SnI(高純度化学研究所社製)、GeI(ALDRICH社製)、AuI(ALDRICH社製)、InI(Alfa Aesar社製)、CaI(Alfa Aesar社製)、SrI(高純度化学研究所社製)、BaI(高純度化学研究所社製)、RbI(ALDRICH社製)及びNaI(富士フイルム和光純薬社製)をそれぞれさらに用い、後記表1記載の組成式の光吸収剤が得られるよう仕込み比(モル比)を変えた以外は同様にして、試料No.102、103及び108、110〜113、123〜127、129及び132の光吸収剤の塗布膜をそれぞれ作製した。
<塗布膜(試料No.c05及びc06)の作製>
上述した試料No.108の光吸収剤の塗布膜の作製において、後記表1記載の組成式の光吸収剤が得られるよう原料の仕込み比(モル比)を変えた以外は同様にして、試料No.c05及びc06の光吸収剤の塗布膜をそれぞれ作製した。
<塗布膜(試料No.c09)の作製>
上述した試料No.102の光吸収剤の塗布膜の作製において、後記表1記載の組成式の光吸収剤が得られるよう原料の仕込み比(モル比)を変えた以外は同様にして、試料No.c09の光吸収剤の塗布膜を作製した。
<塗布膜(試料No.c11)の作製>
上述した試料No.101の光吸収剤の塗布膜の作製において、原料として、CsBr(関東化学社製)、AgBr(富士フイルム和光純薬社製)及びBiBr(ALDRICH社製)をさらに用い、後記表1記載の組成式の光吸収剤が得られるよう仕込み比(モル比)を変えた以外は同様にして、試料No.c11の光吸収剤の塗布膜を作製した。
<塗布膜(試料No.116及び117)の作製>
上述した試料No.101の光吸収剤の塗布膜の作製において、原料として、NbBr(Strem Chemicals社製)、TaBr(Alfa Aesar社製)をさらに用い、後記表1記載の組成式の光吸収剤が得られるよう仕込み比(モル比)を変えた以外は同様にして、試料No.116及び117の光吸収剤の塗布膜をそれぞれ作製した。
<塗布膜(試料No.118及び119)の作製>
上述した試料No.101の光吸収剤の塗布膜の作製において、原料として、CsBr(関東化学社製)、AgBr(富士フイルム和光純薬社製)、SnBr(TCI社製)及びBiBr(ALDRICH社製)をさらに用い、後記表1記載の組成式の光吸収剤が得られるよう仕込み比(モル比)を変えた以外は同様にして、試料No.118の光吸収剤の塗布膜を作製した。
上述した試料No.101の光吸収剤の塗布膜の作製において、原料として、CsCl、AgCl及びBiCl(いずれも富士フイルム和光純薬社製)並びにSnCl(富士フイルム和光純薬社製)をさらに用い、後記表1記載の組成式の光吸収剤が得られるよう仕込み比(モル比)を変えた以外は同様にして、試料No.119の光吸収剤の塗布膜を作製した。
<塗布膜(試料No.120及び121)の作製>
上述した試料No.101の光吸収剤の塗布膜の作製において、原料として、CH(NHI(ALDRICH社製)をさらに用い、後記表1記載の組成式の光吸収剤が得られるよう仕込み比(モル比)を変えた以外は同様にして、試料No.120及び121の光吸収剤の塗布膜をそれぞれ作製した。
<塗布膜(試料No.122)の作製>
上述した試料No.101の光吸収剤の塗布膜の作製において、原料として、CsIに代えてCsBr(関東化学社製)を用い、後記表1記載の組成式の光吸収剤が得られるよう仕込み比(モル比)を変えた以外は同様にして、試料No.122の光吸収剤の塗布膜を作製した。
<塗布膜(試料No.109)の作製>
CsI(関東化学社製)、AgI(Alfa Aesar社製)及びSnI(TCI社製)をモル比20:1:18となるようガラス容器に秤量した。このガラス容器に、さらにジメチルスルホキシド(DMSO、関東化学社製)1mLを加え、110℃で1時間混合撹拌した。
次に、GaI(ALDRICH社製)を別のガラス容器に秤量した。このガラス容器に、さらにN,N‐ジメチルホルムアミド(DMF、関東化学社製)1mLを加え、室温で1時間混合撹拌した。
得られたそれぞれの液を、後記表1記載の組成式の光吸収剤が得られる仕込み比(モル比)で混合して、濃度45質量%の光吸収剤形成用溶液(塗布液)2を調製した。
上述した試料No.101の光吸収剤の塗布膜の作製において、塗布液1に代えて塗布液2を用いた以外は同様にして、試料No.109の光吸収剤の塗布膜を作製した。
<塗布膜(試料No.114)の作製>
CsI(関東化学社製)、AgI(Alfa Aesar社製)及びSnI(TCI社製)をモル比20:2:17となるようガラス容器に秤量した。このガラス容器に、さらにジメチルスルホキシド(DMSO、関東化学社製)1mLを加え、110℃で1時間混合撹拌した。
次に、TiI(富士フイルム和光純薬社製)を別のガラス容器に秤量した。このガラス容器に、さらにテトラヒドロフラン(THF、富士フイルム和光純薬社製)1mLを加え、室温で1時間混合撹拌した。
得られたそれぞれの液を、後記表1記載の組成式の光吸収剤が得られる仕込み比(モル比)で混合して、濃度45質量%の光吸収剤形成用溶液(塗布液)3を調製した。
上述した試料No.101の光吸収剤の塗布膜の作製において、塗布液1に代えて塗布液3を用いた以外は同様にして、試料No.114の光吸収剤の塗布膜を作製した。
<塗布膜(試料No.115)の作製>
上述した試料No.114の光吸収剤の塗布膜の作製において、原料として、TiIに代えてZrI(Strem Chemicals社製をさらに用い、後記表1記載の組成式の光吸収剤が得られるよう仕込み比(モル比)を変えた以外は同様にして、試料No.115の光吸収剤の塗布膜を作製した。
なお、後記表1に記載する、塗布膜中の光吸収剤の組成は、XRF(X−ray Fluorescence)により分析した。
ここで、カチオンA、カチオンB及びアニオンXの価数は、使用した原料中での各イオンの価数と同じである。
[ペロブスカイト型結晶構造の確認]
X線回折装置を用いて、上記で作製した光吸収剤の塗布膜(薄膜)のペロブスカイト型結晶構造に帰属される回折ピークの有無を測定した。なお、ペロブスカイト型結晶構造に帰属される回折ピークの有無は、非特許文献2に記載のダブルペロブスカイト型構造を有するCsAgBiBr、及び、Adv. Sci. 2017, 4, 1700204に記載のFASnIの回折ピークを指標とし、同様の回折パターンが得られたか否かで判断した。
− 評価基準 −
A:ペロブスカイト型結晶構造に帰属される回折ピークが確認された。
C:ペロブスカイト型結晶構造に帰属される回折ピークが確認されなかった。
<耐熱性試験>
上記で作製した光吸収剤の塗布膜を、大気圧(101.33kPa)下、設定温度150℃のホットプレート上で1時間加熱した。
[1.吸光度の維持率]
紫外可視分光光度計(島津製作所社製、商品名:UV3600)を用いて、耐熱試験前後における光吸収剤の塗布膜の最大吸光度をそれぞれ測定した。下記式より、耐熱性試験前後での吸光度の維持率を算出し、下記評価基準により評価した。本試験において、評価ランク「A」〜「C」が実用上求められ、評価ランク「A」又は「B」が好ましく、評価ランク「A」がより好ましい。
(吸光度の維持率)=(耐熱試験後の最大吸光度)/(耐熱試験前の最大吸光度)×100%
− 評価基準 −
A:吸光度の維持率が0.8以上
B:吸光度の維持率が0.6以上0.8未満
C:吸光度の維持率が0.4以上0.6未満
D:吸光度の維持率が0.4未満
[2.膜面状]
光学顕微鏡(ニコン社製、ECLIPSE E600)を用いて、光吸収剤の塗布膜の耐熱試験後の膜面状を観察した。具体的には、倍率400で縦100μm×横100μmの視野の写真を10枚撮影し、撮影された10枚の画像について、クラックの有無を目視で観察し、下記評価基準により、耐熱試験後の膜面状を評価した。本試験において、評価ランク「A」〜「C」が実用上求められ、評価ランク「A」又は「B」が好ましく、評価ランク「A」がより好ましい。
− 評価基準 −
A:クラックが存在する画像が1枚もなかった。
B:クラックが存在する画像が1〜2枚あった。
C:クラックが存在する画像が3〜4枚あった。
D:クラックが存在する画像が5枚以上あった。
Figure 2021052081
Figure 2021052081
<表1の注>
光吸収剤におけるA、B及びX欄には、それぞれペロブスカイト型結晶構造におけるカチオンA、カチオンB及びアニオンXに相当する元素または原子団をイオン表記で記載している。そのため、比較例の試料No.c01〜c12のA、B及びX欄には、便宜上、本発明で規定する組成式におけるA、B及びXに該当しないカチオン及びアニオンを記載している場合がある。
また、a/b欄に記載する数値も、便宜上、表中のA、B及びX欄の記載に基づき計算した値である。
「Bを構成する金属元素の組成」の欄のうち、「1価」の欄は価数が1価の金属元素を、「2価」の欄は価数が2価の金属元素を、それぞれ記載する。また、「−」はその欄の金属元素を含有しないことを意味する。
「2価の割合が最も高い」の欄においては、価数毎に算出される金属元素の割合のうち最も高い割合が、価数が2価の金属元素の割合である場合を「○」、価数が2価の金属元素の割合が、その他の価数の金属元素の少なくともいずれかの割合に対して少ない場合を「×」として表記した。なお、割合とは上述のようにモル割合を意味する。また、Bとして採りうる金属元素中の価数が2価の金属元素のカチオンの含有量(mol%)を同欄の丸括弧内に示した。
なお、試料No.c01、c02及びc10における吸光度の維持率は、目的とするペロブスカイ型結晶構造とは異なる化合物の吸光度の維持率を測定しているものと考えらえる。
表1の結果から、以下のことが分かる。
試料No.c01及びc11は、カチオンBとしてAgとBi3+とを等モル量有する、いわゆるダブルペロブスカイト型の光吸収剤であり、カチオンB中に2価の金属元素のカチオンを含有しない点で本発明で規定する光吸収剤でない。これらのうち、試料No.c01は、そもそもの製膜性が十分でなく、耐熱性(膜面状)が十分でなかった。試料No.c11は、簡便な塗布工程により目的とするペロブスカイト型結晶構造を有する膜を構築することができたものの、加熱試験後に膜面状を観察すると、クラックが実用できないレベルで生じており、耐熱性が十分でなかった。
試料No.c02、c08〜c10は、カチオンBとして2価の金属元素のカチオンを含有するものの、カチオンB中の2価の金属元素のカチオンの割合が最も高くない点で本発明で規定する光吸収剤でない。これらのうち、試料No.c02及びc10はいずれも、そもそもの製膜性が十分でなく、耐熱性(膜面状)が十分でなかった。試料No.c08及びc09はいずれも、簡便な塗布工程により目的とするペロブスカイト型結晶構造を有する膜を構築することができたものの、加熱試験後に膜面状を観察すると、クラックが実用できないレベルで生じており、耐熱性が十分でなかった。
試料No.c03の光吸収剤は、a/bの値が1.50である点で、本発明で規定する光吸収剤でなく、試料No.c04の光吸収剤は、a/bの値が0.50である点で、本発明で規定する光吸収剤でない。これらの試料No.c03及びc04はいずれも、そもそもの製膜性が十分でなく、吸光度の維持率及び膜の面状のいずれの耐熱性も十分でなかった。
試料No.c05〜c07の光吸収剤は、カチオンB中に2価の金属元素のカチオンを含有しない点で、本発明で規定する光吸収剤でない。これらのうち、試料No.c05はそもそもの製膜性が十分でなく、耐熱性(吸光度の維持率)が十分でなかった。試料No.c06及びc07はいずれも、簡便な塗布工程により目的とするペロブスカイト型結晶構造を有する膜を構築することができたものの、加熱試験前後での吸光度の維持率が十分でなく、耐熱性が十分でなかった。
試料No.c12は、カチオンBとして2価の金属元素のカチオンを100モル%の割合で含有するものの、カチオンB中に1価の金属元素を含有しない点で本発明で規定する光吸収剤でない。この試料No.c12は、簡便な塗布工程により目的とするペロブスカイト型結晶構造を有する膜を構築することができたものの、加熱試験前後での吸光度の維持率が十分でなく、耐熱性が十分でなかった。
これに対して、本発明で規定する試料No.101〜132の光吸収剤の膜は、いずれも、簡便な塗布工程により目的とするペロブスカイト型結晶構造を有する膜を構築することができた。しかも、得られた膜は、加熱試験前後での吸光度の維持率が十分であり、また、加熱試験後の膜面状の観察においても、クラックがないか、実用可能なレベルのクラックしか生じておらず、耐熱性に優れていた。
特に、カチオンBに対するカチオンAの組成比a/bを特定の範囲にすることにより、吸光度の維持率がさらに高められ、クラックの発生も見られず、耐熱性をさらに高めることができる。またX中のヨウ素原子の割合を特定の値を越える範囲にすると、クラックの発生も見られず、耐熱性をさらに高めることができる。上記以外にも、カチオンBを構成する金属元素を3種以上とする構成、カチオンBを構成する各価数のカチオンとしてそれぞれ特定の金属元素のカチオンを少なくとも有する構成、又は、カチオンBを構成する2価のカチオンの含有量を特定の値を越える範囲とする構成、X中に臭素原子及びヨウ素原子の少なくとも1種を含む構成(好ましくは、X中のヨウ素原子の割合を特定の値を越える範囲とする構成)により、耐熱性をさらに高めることができる。
以上の結果から、本発明の光電変換素子及び太陽電池は、ペロブスカイト膜として優れた耐熱性を示すことが可能な光吸収剤を感光層における光吸収剤として用いているため、優れた耐熱性を示すことができる。
実施例2:発光用途への応用
実施例1で作製した試料No.101、118、119、c01及びc11の光吸収剤の塗布膜について、下記方法により相対蛍光強度を評価した。
<相対蛍光強度の評価>
蛍光分光光度計を用いて、上記で作製した光吸収剤の塗布膜(薄膜)の蛍光スペクトルを測定し、下記評価基準により、相対蛍光強度を評価した。励起光は、各塗布膜の最大吸光度が得られる波長を用いた。なお、相対蛍光強度は試料No.c01の塗布膜の最大蛍光強度を基準とする相対蛍光強度として、下記式より算出した。
(相対蛍光強度)=(各塗布膜の最大蛍光強度)/(試料No.c01の最大蛍光強度)
− 相対蛍光強度の評価基準 −
A:相対蛍光強度が0.5以上
C:相対蛍光強度が0.5未満
Figure 2021052081
表2の結果から、本発明で規定する試料No.101、118及び119の光吸収剤は、いずれも発光用途として好適に用いることができることが分かる。また、上記実施例1で合成した本発明の光吸収剤、及び、実施例1で合成した本発明の光吸収剤のアニオンXをClとした光吸収剤も、発光用途として好適に用いることができることが分かった。
以上の結果から、本発明の光吸収剤を含む層を具備する発光素子は、耐熱性に優れ、また、最大の吸光度を示す吸収ピーク波長に励起光を照射した場合の蛍光光度(発光強度)にも優れることが分かる。
1A〜1F 第一電極
11 導電層
11a 支持体
11b 透明電極
12 多孔質層
13A〜13C 感光層
14 ブロッキング層
2 第二電極
3A、3B、16 正孔輸送層
4、15 電子輸送層
6 外部回路(リード)
10A〜10F 光電変換素子
100A〜100F 太陽電池を利用したシステム
M 電動モーター

Claims (11)

  1. 導電層と該導電層上に設けられた光吸収剤を含む感光層とを有する第一電極と、前記第一電極に対向する第二電極とを有する光電変換素子であって、
    前記光吸収剤が下記組成式(I)で表されるペロブスカイト型結晶構造を有する、光電変換素子。
    組成式(I):A
    上記組成式中、Aはセシウム、ルビジウム及びカチオン性有機基の少なくとも1種を示す。Bは下記(i)、(ii)及び(iii)を満たす金属元素を示す。Xは塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子の少なくとも1種を含むアニオン性の原子又は原子団を示す。X中の塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子の含有量の合計は80mol%以上である。a〜cは組成比を示し、a及びbは0.50<a/b<1.50を満たす。ただし、Bは鉛を含まない。
    (i)周期表の1族〜15族に属する金属元素のうち、セシウム及びルビジウムを除く2種以上の金属元素である。
    (ii)価数が1価の金属元素及び価数が2価の金属元素を少なくとも含む。
    (iii)価数毎に算出される金属元素の割合のうち、価数が2価の金属元素の割合が最も高い。ただし、前記の価数が2価の金属元素の割合は、2価以外のいずれかの価数の金属元素の割合と同じであってもよい。
  2. 前記Bが、周期表の2族〜15族に属する2種以上の金属元素である、請求項1に記載の光電変換素子。
  3. 前記光吸収剤が3次元ペロブスカイト型結晶構造を有する、請求項1又は2に記載の光電変換素子。
  4. 前記Xが臭素原子及びヨウ素原子の少なくとも1種を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の光電変換素子。
  5. 前記X中のヨウ素原子の含有量が70mol%を越える、請求項1〜4のいずれか1項に記載の光電変換素子。
  6. 前記Bが3種以上の金属元素を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の光電変換素子。
  7. 前記Bが、Ti、Zr、Nb、Ta、Cu、Ag、Au、Zn、Ga、In、Ge、Sn、Sb及びBiのうち少なくとも1種の金属元素を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の光電変換素子。
  8. 前記のa及びbが0.80≦a/b≦1.15を満たす、請求項1〜7のいずれか1項に記載の光電変換素子。
  9. 請求項1〜8のいずれか1項に記載の光電変換素子を用いた太陽電池。
  10. 下記組成式(I)で表されるペロブスカイト型結晶構造を有する光吸収剤。
    組成式(I):A
    上記組成式中、Aはセシウム、ルビジウム及びカチオン性有機基の少なくとも1種を示す。Bは下記(i)、(ii)及び(iii)を満たす金属元素を示す。Xは塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子の少なくとも1種を含むアニオン性の原子又は原子団を示す。X中の塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子の含有量の合計は80mol%以上である。a〜cは組成比を示し、a及びbは0.50<a/b<1.50を満たす。ただし、Bは鉛を含まない。
    (i)周期表の1族〜15族に属する金属元素のうち、セシウム及びルビジウムを除く2種以上の金属元素である。
    (ii)価数が1価の金属元素及び価数が2価の金属元素を少なくとも含む。
    (iii)価数毎に算出される金属元素の割合のうち、価数が2価の金属元素の割合が最も高い。ただし、前記の価数が2価の金属元素の割合は、2価以外のいずれかの価数の金属元素の割合と同じであってもよい。
  11. 請求項10に記載のペロブスカイト型結晶構造を有する光吸収剤を含む層を具備する、発光素子。
JP2019173718A 2019-09-25 2019-09-25 光電変換素子及び太陽電池、光吸収剤、並びに、発光素子 Active JP7217213B2 (ja)

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