(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態に係る電子管楽器について、図面を参照しながら説明する。図中、互いに同一又は同等の構成には、互いに同一の符号を付す。
図1に示す電子管楽器1は、自然木管楽器であるサクソフォンの形状を模した形状を有しており、演奏者による演奏操作に応じて、サクソフォンの楽音を模した楽音を発音する。
電子管楽器1は、図1に示すように、サクソフォンの形状を模した形状を有する管体2と、複数の演奏キー3と、演奏の際に演奏者が口に咥えるマウスピース4と、楽音を発音する発音部5と、を備えている。また、電子管楽器1は、図2に示すように、演奏者による演奏操作以外の操作を受け付ける複数の操作スイッチ6を備えている。操作スイッチ6には、電子管楽器1の電源のオン/オフを切り替える操作を受け付ける電源スイッチが含まれている。
演奏キー3は、演奏者による指で押圧する演奏操作を受け付ける。詳細は後述するものの、電子管楽器1は、演奏キー3が受け付けた演奏操作に応じた音高を有する楽音を発音部5から発音する。すなわち、演奏キー3は、楽音の音高を指定する演奏操作を受け付ける演奏操作子である。
マウスピース4は、演奏者によるマウスピース4に息を吹き込む演奏操作、後述するリード41に舌を接触させる演奏操作、マウスピース4に唇を接触させる演奏操作及びマウスピース4に息を吹き込んでいるときに声を発する演奏操作を受け付ける。詳細は後述するものの、電子管楽器1は、マウスピース4が受け付けた演奏操作に応じた音量及び音色を有する楽音を発音部5から発音する。すなわち、マウスピース4は、楽音の音量及び音色を指定する演奏操作を受け付ける演奏操作子である。
マウスピース4は、図3に示すように、マウスピース本体40と、リード41と、固定金具42と、ボイスセンサ43と、ブレスセンサ44と、タンセンサ45と、複数のリップセンサ46と、を備えている。
マウスピース本体40の内部には空洞が設けられており、マウスピース本体40には当該空洞に連通する開口部40aが設けられている。演奏者がマウスピース4を口に咥えた状態で息を吹き込むと、息が開口部40aを通じてマウスピース本体40内部の空洞へ導かれる。
自然木管楽器の演奏法として、マウスピース4に息を吹き込む演奏操作を行っているときに声を発することにより楽音の音色を変化させるグロウルという手法が知られている。演奏者が、電子管楽器1を用いてグロウルを行う際に、マウスピース4を口に咥えた状態で声を発すると、声が開口部40aを通じてマウスピース本体40内部の空洞へ導かれる。
リード41の一方の端部は、固定金具42によってマウスピース本体40に固定されているのに対し、リード41の他方の端部は、マウスピース本体40に固定されておらず、演奏者によるマウスピース4に息を吹き込む演奏操作に応じて振動する。以下、リード41のマウスピース本体40に固定されている端部をヒール側端部と称し、リード41のマウスピース本体40に固定されていない端部をティップ側端部と称する。
ボイスセンサ43は、マウスピース本体40内部の空洞に配置されており、演奏者による声を発する演奏操作を検出し、検出の結果を示すボイスセンサ信号を後述するCPU7へ供給する。具体的に、ボイスセンサ43は、マイクロフォンであり、演奏者がマウスピース4を口に咥えた状態で声を発したときに、開口部40aを通じてマウスピース本体40内部の空洞へ導かれた演奏者の声を検出する。演奏者が電子管楽器1を用いてグロウルを行った場合、ボイスセンサ43が、マウスピース本体40内部の空洞へ導かれた演奏者の声を検出する。詳細については後述するものの、電子管楽器1は、ボイスセンサ43による検出の結果に応じた音色の楽音を発音することにより、サクソフォンを用いてグロウルを行った場合の演奏表現を再現する。
ブレスセンサ44は、演奏者によるマウスピース4に息を吹き込む演奏操作を検出し、検出の結果を示すブレスセンサ信号を後述するCPU7へ供給する。具体的に、ブレスセンサ44は、圧力センサであり、演奏者がマウスピース4を口に咥えた状態で息を吹き込んだときに、開口部40aを通じてマウスピース本体40内部の空洞へ導かれた演奏者の息の圧力を検出する。詳細については後述するものの、電子管楽器1は、ブレスセンサ44による検出の結果に応じた音量で楽音を発音する。
タンセンサ45は、演奏者によるリード41に舌を接触させる演奏操作を検出し、検出の結果を示すタンセンサ信号を後述するCPU7へ供給する。具体的に、タンセンサ45は、静電容量方式のタッチセンサであり、リード41に対する演奏者の舌の接触を検出する。演奏者が電子管楽器1を用いて、舌をリード41に接触させるタンギングを行った場合、タンセンサ45が、リード41に対する演奏者の舌の接触を検出する。詳細については後述するものの、電子管楽器1は、タンセンサ45による検出の結果に応じた音量で楽音を発音することにより、サクソフォンを用いてタンギングを行った場合の演奏表現を再現する。
リップセンサ46は、演奏者によるマウスピース4に唇を接触させる演奏操作を検出し、検出の結果を示すリップセンサ信号を後述するCPU7へ供給する。具体的に、リップセンサ46は、静電容量方式のタッチセンサであり、マウスピース4に対する演奏者の唇の接触を検出する。
タンセンサ45及びリップセンサ46は、図4に示すように、リード41上に配置されている。マウスピース4は、11個のリップセンサ46を備えている。各リップセンサ46には、「1」から「11」までの番号が識別子として予め付されており、図4では、各リップセンサ46に付された番号が図示されている。例えば、リップセンサ46−5は、番号「5」が識別子として付されたリップセンサ46である。以下、理解を容易にするため、図4に示すX座標軸を設定する。また、以下、X軸方向正の向きを奥と称し、X軸方向負の向きを手前と称する。リード41のティップ側端部41aは、リード41の手前側の端部であり、リード41のヒール側端部41bは、リード41の奥側の端部である。
タンセンサ45は、リード41のティップ側端部41aに配置されている。タンセンサ46−1〜46−11は、何れも、タンセンサ45から奥方向に離間した位置に配置されている。以下、タンセンサ45に最も近いリップセンサ46−1の手前側端部のX座標が「0」となるように、X座標軸の原点を設定する。
詳細については後述するものの、電子管楽器1は、リップセンサ46による検出の結果に従って、マウスピース4上の演奏者の唇が接触した位置であるリップ位置を取得し、取得されたリップ位置に応じた楽音を発音することにより、サクソフォンを用いてサブトーン演奏又はパーカッシブトーン演奏を行った場合の演奏表現を再現する。サブトーン演奏は、サクソフォンが備えるマウスピースを、通常の演奏を行っているときに比べて浅く咥えた状態、すなわちリップ位置が通常の演奏を行っているときのリップ位置よりも手前であるに位置している状態で息を吹き込むことにより、通常の演奏を行っているときより柔らかい音色の楽音を発音させる演奏法である。パーカッシブトーン演奏は、サクソフォンが備えるマウスピースを通常の演奏を行っているときに比べて深く咥えた状態、すなわちリップ位置が通常の演奏を行っているときのリップ位置よりも奥に位置している状態で息を吹き込むことにより、通常の演奏を行っているときより歯切れの良い音色の楽音を発音させる演奏法である。
リップ位置は、X座標によって示される。リップ位置が手前であるほど、リップ位置を示すX座標は小さく、リップ位置が奥であるほど、リップ位置を示すX座標は大きい。例えば、電子管楽器1を用いてサブトーン演奏を行っているときのリップ位置を示すX座標は、電子管楽器1を用いて通常の演奏を行っているときのリップ位置を示すX座標より小さい。また、電子管楽器1を用いてパーカッシブトーン演奏を行っているときのリップ位置を示すX座標は、電子管楽器1を用いて通常の演奏を行っているときのリップ位置を示すX座標より大きい。
電子管楽器1は、上述した各構成に加えて、図5に示すように、CPU(Central Processing Unit)7と、ROM(Read Only Memory)8と、RAM(Random Access Memory)9と、キー/スイッチ操作検出部10と、音源部11と、DAC(Digital-to-Analog Converter)/増幅器50と、スピーカ51と、出力インタフェース52と、表示部12と、計時部13と、これらの各部を相互に接続するシステムバス14と、を備えている。
CPU7は、ROM8に記憶されたプログラム及びデータに従って各種処理を実行する。CPU7は、コマンド及びデータの伝送経路であるシステムバス14を介して電子管楽器1の各部に接続されており、電子管楽器1全体を統括制御する。
ROM8は、CPU7が各種処理を実行するために用いるプログラム及びデータを非一時的に記憶する。具体的に、ROM8は、CPU7が実行する制御プログラムを記憶する。また、ROM8は、ノーマル音波形データ80と、グロウル音波形データ81と、サブトーン音波形データ82と、パーカッシブトーン音波形データ83と、音高決定情報84と、合成比決定情報85と、音量決定情報86と、消音効果決定情報87と、を記憶する。
ノーマル音波形データ80は、通常の演奏を行っているときのサクソフォンの楽音を示す音声波形データである。グロウル音波形データ81は、グロウルが行われているときのサクソフォンの楽音を示す音声波形データである。サブトーン音波形データ82は、サブトーン演奏が行われているときのサクソフォンの楽音を示す音声波形データである。パーカッシブトーン音波形データ83は、パーカッシブトーン演奏が行われているときのサクソフォンの楽音を示す音声波形データである。詳細は後述するものの、音源部11は、CPU7による制御に従って、ROM8に記憶されたノーマル音波形データ80、グロウル音波形データ81、サブトーン音波形データ82及びパーカッシブトーン音波形データ83を混合することによってデジタル楽音信号を生成する。
ノーマル音波形データ80は、通常の演奏を行っているときのサクソフォンの楽音を録音することにより外部の録音装置によって生成された後、電子管楽器1に取り込まれ、ROM8に予め記憶されている。グロウル音波形データ81は、グロウルが行われているときのサクソフォンの楽音を録音することにより外部の録音装置によって生成された後、電子管楽器1に取り込まれ、ROM8に予め記憶されている。サブトーン音波形データ82は、サブトーン演奏が行われているときのサクソフォンの楽音を録音することにより外部の録音装置によって生成された後、電子管楽器1に取り込まれ、ROM8に予め記憶されている。パーカッシブトーン音波形データ83は、パーカッシブトーン演奏が行われているときのサクソフォンの楽音を録音することにより外部の録音装置によって生成された後、電子管楽器1に取り込まれ、ROM8に予め記憶されている。
音高決定情報84、合成比決定情報85、音量決定情報86及び消音効果決定情報87については、後述する。
RAM9は、CPU7が各種処理を実行することによって生成又は取得したデータを一時的に記憶する。RAM9は、CPU7のワークエリアとして機能する。すなわち、CPU7は、ROM8に記憶されたプログラム及びデータをRAM9へ読み出し、読み出されたプログラム及びデータを参照することによって、各種処理を実行する。
キー/スイッチ操作検出部10は、演奏キー3に対する演奏操作と、操作スイッチ6に対する操作と、を検出し、検出の結果を示すキー/スイッチ操作信号をCPU7へ供給する。以下、演奏キー3に対する演奏操作と、操作スイッチ6に対する操作と、をまとめてキー/スイッチ操作と称する。
音源部11は、DSP(Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Array)等の音源LSI(Large Scale Integrated Circuit)を備え、CPU7による制御に従って、楽音を示すデジタル楽音信号を生成する。音源部11は、生成したデジタル楽音信号を、発音部5へ供給する。
DAC/増幅器50、スピーカ51及び出力インタフェース52は、発音部5に設けられている。DAC/増幅器50は、音源部11から供給されたデジタル楽音信号に対してD/A(Digital-to-Analog)変換を行うことによって楽音を示すアナログ楽音信号を生成した後、生成したアナログ楽音信号を増幅し、増幅したアナログ楽音信号をスピーカ51及び出力インタフェース52へ供給する。スピーカ51は、DAC/増幅器50から供給されたアナログ楽音信号が示す楽音を発音する。出力インタフェース52は、DAC/増幅器50から供給されたアナログ楽音信号を、外部のスピーカ、外部のヘッドフォン等の外部の機器へ出力する。
表示部12は、CPU7による制御に従って、電子管楽器1の操作画面を含む各種画像を表示する。表示部12は、表示制御回路120と、表示装置121と、を備えている。表示制御回路120は、CPU7による制御に従って、表示装置121を制御する。表示装置121は、液晶ディスプレイ、有機EL(Electroluminescence)ディスプレイ等のディスプレイであり、表示制御回路120による制御に従って、各種画像を表示する。
計時部13は、電力の供給が停止している間も計時を継続するRTC(Real Time Clock)を備え、計時を行う。計時部13は、計時の結果を示す信号を、CPU7へ供給する。
上述した物理的構成を備える電子管楽器1は、機能的に、図6に示すように、キー/スイッチ操作信号取得部100と、音高決定部101と、ボイスセンサ信号取得部102と、ボイス値取得部103と、ブレスセンサ信号取得部104と、ブレス値取得部105と、リップセンサ信号取得部106と、リップ位置取得部107と、タンセンサ信号取得部108と、タンギング値取得部109と、消音効果値決定部110と、音量決定部111と、合成比決定部112と、楽音出力部113と、タンギング値推移情報記憶部114と、を備えている。
キー/スイッチ操作信号取得部100、音高決定部101、ボイスセンサ信号取得部102、ボイス値取得部103、ブレスセンサ信号取得部104、ブレス値取得部105、リップセンサ信号取得部106、リップ位置取得部107、タンセンサ信号取得部108、タンギング値取得部109、消音効果値決定部110、音量決定部111、合成比決定部112及び楽音出力部113は、CPU7によって実現される。具体的に、CPU7は、ROM8に記憶された上述の制御プログラムを実行して電子管楽器1を制御することにより、これらの各部として機能する。タンギング値推移情報記憶部114は、RAM9によって実現される。具体的に、タンギング値推移情報記憶部114は、RAM9の記憶領域に構築される。
キー/スイッチ操作信号取得部100は、キー/スイッチ操作検出部10からキー/スイッチ操作信号を取得し、取得したキー/スイッチ操作信号を音高決定部101へ供給する。音高決定部101は、キー/スイッチ操作信号取得部100によって取得されたキー/スイッチ操作信号が示すキー/スイッチ操作検出部10によるキー/スイッチ操作の検出の結果に応じて楽音の音高を決定し、決定した音高を示す音高情報を楽音出力部113へ供給する。
具体的に、音高決定部101は、ROM8に記憶された、キー/スイッチ操作検出部10によるキー/スイッチ操作の検出の結果と楽音の音高との対応関係を示す音高決定情報84に従って、キー/スイッチ操作信号取得部100によって取得されたキー/スイッチ操作信号が示すキー/スイッチ操作検出部10によるキー/スイッチ操作の検出の結果に応じた楽音の音高を決定する。
音高決定情報84は、キー/スイッチ操作検出部10によるキー/スイッチ操作の検出の結果と楽音の音高との対応関係を、サクソフォンにおける演奏キーと楽音の音高との対応関係に従って設定することによって外部の情報処理装置において生成された後、電子管楽器1に取り込まれ、ROM8に予め記憶されている。なお、上述した音高決定情報84の生成の方法は一例に過ぎず、音高決定情報84は、任意の方法によって生成できる。
ボイスセンサ信号取得部102は、ボイスセンサ43からボイスセンサ信号を取得し、取得したボイスセンサ信号をボイス値取得部103へ供給する。ボイス値取得部103は、ボイスセンサ信号取得部102によって取得されたボイスセンサ信号の大きさに応じたボイス値を取得し、取得したボイス値を示すボイス値情報を合成比決定部112へ供給する。
具体的に、ボイス値取得部103は、ボイスセンサ信号取得部102によって取得されたボイスセンサ信号のエンベロープを抽出し、当該ボイスセンサ信号の大きさを示す当該エンベロープのレベルをボイス値として取得する。
ブレスセンサ信号取得部104は、ブレスセンサ44からブレスセンサ信号を取得し、取得したブレスセンサ信号をブレス値取得部105へ供給する。ブレス値取得部105は、ブレスセンサ信号取得部104によって取得されたブレスセンサ信号の大きさに応じたブレス値を取得し、取得したブレス値を示すブレス値情報を音量決定部111及び合成比決定部112へ供給する。
具体的に、ブレス値取得部105は、ブレスセンサ信号取得部104によって取得されたブレスセンサ信号のエンベロープを抽出し、当該ブレスセンサ信号の大きさを示す当該エンベロープのレベルをブレス値として取得する。
リップセンサ信号取得部106は、リップセンサ46からリップセンサ信号を取得し、取得したリップセンサ信号をリップ位置取得部107へ供給する。リップ位置取得部107は、リップセンサ信号取得部106によって取得されたリップセンサ信号が示すリップセンサ46によるマウスピース4に唇を接触させる演奏操作の検出の結果に応じてリップ位置を取得し、取得したリップ位置を示すリップ位置情報を消音効果値決定部110及び合成比決定部112へ供給する。
具体的に、リップ位置取得部107は、リップセンサ信号取得部106によって取得されたリップセンサ信号が示すリップセンサ46によるマウスピース4に唇を接触させる演奏操作の検出の結果を、下記の式(1)に代入することによってリップ位置を取得する。式(1)中、XLは、リップ位置を示すX座標を表し、Xiは、番号iが識別子として付されたリップセンサ46のX座標を表し、miは、番号iが識別子として付されたリップセンサ46の出力値を表す。例えば、X5は、番号「5」が識別子として付されたリップセンサ46−5のX座標を表し、m5は、リップセンサ46−5の出力値を表す。また、式(1)中、Nは、リップセンサ46の個数を表す。電子管楽器1は、上述したように、11個のリップセンサ46を備えている。従って、Nは11である。
タンセンサ信号取得部108は、タンセンサ45からタンセンサ信号を取得し、取得したタンセンサ信号をタンギング値取得部109へ供給する。タンギング値取得部109は、タンセンサ信号取得部108によって取得されたタンセンサ信号の大きさに応じたタンギング値を取得し、取得したタンギング値を示すタンギング値情報を消音効果値決定部110及びタンギング値推移情報記憶部114へ供給する。タンギング値取得部109によるタンギング値の取得の詳細については、後述する。
消音効果値決定部110は、リップ位置取得部107によって取得されたリップ位置と、タンギング値取得部109によって取得されたタンギング値と、に応じて、音量を低下させる度合いを示す消音効果値を決定し、決定した消音効果値を示す消音効果値情報を音量決定部111へ供給する。
具体的に、消音効果値決定部110は、ROM8に記憶された、リップ位置と消音乗数との対応関係を示す消音効果決定情報87に従って、リップ位置取得部107によって取得されたリップ位置に応じた消音乗数を決定し、決定した消音乗数をタンギング値取得部109によって取得されたタンギング値に乗算することによって消音効果値を算出する。すなわち、タンギング値、消音乗数及び消音効果値の間には、下記の式(2)に示す関係が成立している。式(2)中、Eは、消音効果値を表し、Kは、消音乗数を表し、Gは、タンギング値を表す。消音効果値決定部110による消音乗数の決定の詳細については、後述する。
E=K×G ・・・(2)
上記式(2)が示すように、タンギング値Gが大きいほど、消音効果値Eが大きい。また、上記式(2)が示すように、消音乗数Kが大きいほど、消音効果値Eが大きい。
音量決定部111は、ブレス値取得部105によって取得されたブレス値と、消音効果値決定部110によって決定された消音効果値と、に応じて楽音の音量を決定し、決定した音量を示す音量情報を楽音出力部113へ供給する。
具体的に、音量決定部111は、ブレス値取得部105によって取得されたブレス値に応じた音量を、消音効果値決定部110によって決定された消音効果値に応じて低下させることにより取得された音量を、楽音の音量として決定する。
より具体的に、音量決定部111は、ROM8に記憶された、ブレス値と楽音の音量との対応関係を示す音量決定情報86に従って、ブレス値取得部105によって取得されたブレス値に応じた楽音の音量を決定する。
音量決定情報86は、予め設定されたブレス閾値よりブレス値が小さい場合、楽音の音量が0に決定され、ブレス値が当該ブレス閾値以上である場合、楽音の音量が、予め設定された最大音量以下の音量に決定され、かつ、ブレス値が大きいほど大きな音量に決定されるように構成されている。
音量決定情報86は、サクソフォンを用いた演奏における演奏者の息の圧力の大きさと楽音の音量との相関関係を実験により求め、当該相関関係に従って、ブレス閾値及び最大音量を設定し、ブレス値と楽音の音量との対応関係を設定することによって外部の情報処理装置において生成された後、電子管楽器1に取り込まれ、ROM8に予め記憶されている。最大音量は、スピーカ51が出力可能な音量の最大値に応じて予め設定されている。
音量決定部111は、ブレス値に応じた音量を決定した後、決定したブレス値に応じた音量と、消音効果値決定部110によって決定された消音効果値と、を下記の式(3)に代入することにより、楽音の音量を決定する。式(3)中、Jは、楽音の音量を表し、Rは、ブレス値に応じた音量を表し、Eは、消音効果値を表す。
J=R×(1−E) ・・・(3)
上記式(3)が示すように、消音効果値Eが大きいほど、楽音の音量Jが小さい。すなわち、消音効果値Eが大きいほど、音量を低下させる度合いが大きい。
合成比決定部112は、ボイス値取得部103によって取得されたボイス値と、ブレス値取得部105によって取得されたブレス値と、リップ位置取得部107によって取得されたリップ位置と、に応じて、ノーマル音波形データ80、グロウル音波形データ81、サブトーン音波形データ82及びパーカッシブトーン音波形データ83の合成比を決定し、決定した合成比を示す合成比情報を楽音出力部113へ供給する。詳細については後述するものの、楽音出力部113は、音源部11を制御し、合成比決定部112によって決定された合成比に従って、ノーマル音波形データ80、グロウル音波形データ81、サブトーン音波形データ82及びパーカッシブトーン音波形データ83を混合することによって、楽音を示すデジタル楽音信号を生成させる。
具体的に、合成比決定部112は、ROM8に記憶された合成比決定情報85に従って合成比を決定する。合成比決定情報85は、ブレス値とノーマル音波形データ80の合成比との対応関係と、ボイス値とグロウル音波形データ81の合成比との対応関係と、リップ位置とサブトーン音波形データ82の合成比との対応関係と、リップ位置とパーカッシブトーン音波形データ83の合成比との対応関係と、を示している。
合成比決定部112は、合成比決定情報85に従い、ブレス値取得部105によって取得されたブレス値に応じたノーマル音波形データ80の合成比を決定する。合成比決定部112は、合成比決定情報85に従い、ボイス値取得部103によって取得されたボイス値に応じたグロウル音波形データ81の合成比を決定する。合成比決定部112は、合成比決定情報85に従い、リップ位置取得部107によって取得されたリップ位置に応じたサブトーン音波形データ82の合成比を決定する。合成比決定部112は、合成比決定情報85に従い、リップ位置取得部107によって取得されたリップ位置に応じたパーカッシブトーン音波形データ83の合成比を決定する。
合成比決定情報85は、ノーマル音波形データ80の合成比が、1以下の値に決定され、かつ、ブレス値が大きいほど大きい値に決定されるように構成されている。合成比決定情報85は、グロウル音波形データ81の合成比が、1以下の値に決定され、かつ、ボイス値が大きいほど大きい値に決定されるように構成されている。合成比決定情報85は、サブトーン音波形データ82の合成比が、1以下の値に決定され、かつ、リップ位置が手前であるほど大きい値に決定されるように構成されている。合成比決定情報85は、パーカッシブトーン音波形データ83の合成比が、1以下の値に決定され、かつ、リップ位置が奥であるほど大きい値に決定されるように構成されている。
合成比決定情報85は、サクソフォンを用いて通常の演奏、グロウル、サブトーン演奏及びパーカッシブトーン演奏の4種類の演奏を行った場合における、演奏の種類と、演奏者の息の圧力の大きさ、演奏者の声の大きさ及びリップ位置と、の相関関係を実験により求め、当該相関関係に従って、ブレス値とノーマル音波形データ80の合成比との対応関係と、ボイス値とグロウル音波形データ81の合成比との対応関係と、リップ位置とサブトーン音波形データ82の合成比との対応関係と、リップ位置とパーカッシブトーン音波形データ83の合成比との対応関係と、を設定することによって外部の情報処理装置において生成された後、電子管楽器1に取り込まれ、ROM8に予め記憶されている。なお、上述した合成比決定情報85の生成の方法は一例に過ぎず、合成比決定情報85は、任意の方法によって生成できる。
楽音出力部113は、音高決定部101によって決定された音高を有すると共に、音量決定部111によって決定された音量を有する、合成比決定部112によって決定された合成比に応じた楽音を出力する。
具体的に、楽音出力部113は、音源部11を制御し、音高決定部101によって決定された音高を有すると共に、音量決定部111によって決定された音量を有する、合成比決定部112によって決定された合成比に応じた楽音を示すデジタル楽音信号を生成させ、発音部5を制御し、音源部11に生成させたデジタル楽音信号に応じた楽音を発音させる。音源部11が行う、楽音出力部113による制御に従ったデジタル楽音信号の生成の詳細については、後述する。
タンギング値推移情報記憶部114は、時間の経過に従ったタンギング値の推移を示すタンギング値推移情報を記憶する。具体的に、タンギング値推移情報には、タンギング値と、タンギング値が取得された時刻と、が互いに対応付けて格納されている。
以下、タンギング値取得部109によるタンギング値の取得の詳細について説明する。
タンギング値取得部109は、舌をリード41に接触させるタンギングが行われているときに、当該タンギングが開始されてから経過した時間であるタンギング時間に応じたタンギング値を取得する。
具体的に、タンギング値取得部109は、図6に示すように、特別信号処理部1091と、信号レベル取得部1092と、正規化部1093と、を備えている。
特別信号処理部1091は、タンセンサ信号取得部108によって取得されたタンセンサ信号に対し、当該タンセンサ信号の立ち下がりを緩やかにすることなく当該タンセンサ信号の立ち上がりを緩やかにする特別信号処理を行う。
信号レベル取得部1092は、特別信号処理部1091によって特別信号処理が行われたタンセンサ信号のレベルを取得する。また、信号レベル取得部1092は、タンセンサ信号取得部108によって取得されたタンセンサ信号のレベルを取得する。具体的に、信号レベル取得部1092は、タンセンサ信号のエンベロープを抽出し、当該エンベロープのレベルを、当該タンセンサ信号のレベルとして取得する。
正規化部1093は、信号レベル取得部1092によって取得されたタンセンサ信号のレベルを、0以上1以下の範囲に正規化する。
タンギング値取得部109は、特別信号処理部1091によって特別信号処理が行われた後のタンセンサ信号の大きさに応じてタンギング値を取得する。具体的に、タンギング値取得部109は、特別信号処理部1091によって特別信号処理が行われた後のタンセンサ信号の大きさを示す、正規化部1093によって正規化された当該タンセンサ信号のレベルを、タンギング値として取得する。このような構成により、タンギング値取得部109は、タンギング時間に応じたタンギング値を取得する。
タンギング値取得部109は、タンギング値を取得する度に、取得したタンギング値を、当該タンギング値を取得した時刻に対応付けてタンギング値推移情報に格納することによって、タンギング値推移情報記憶部114により記憶されたタンギング値推移情報を更新する。タンギング値を取得した時刻は、計時部13から供給された計時の結果を示す信号に基づいて取得される。
より具体的に、特別信号処理部1091は、立ち上がり判定部1091aと、特別信号処理フィルタ1091bと、を備えている。
立ち上がり判定部1091aは、タンセンサ信号取得部108によって取得されたタンセンサ信号が立ち上がり時の信号であるか否かを判定する。具体的に、立ち上がり判定部1091aは、タンセンサ信号取得部108によって取得されたタンセンサ信号の大きさを示す、正規化部1093によって正規化された当該タンセンサ信号のレベルと、タンギング値取得部109によって前回取得されたタンギング値と、の大小関係に応じて、当該タンセンサ信号が立ち上がり時の信号であるか否かを判定する。
より具体的に、立ち上がり判定部1091aは、正規化部1093によって正規化されたタンセンサ信号のレベルと、タンギング値推移情報記憶部114によって記憶されたタンギング値推移情報が示す最も新しいタンギング値と、の大小関係に応じて、当該タンセンサ信号が立ち上がり時の信号であるか否かを判定する。すなわち、立ち上がり判定部1091aは、正規化部1093によって正規化されたタンセンサ信号取得部108によって取得されたタンセンサ信号のレベルが、タンギング値推移情報が示す最も新しいタンギング値より大きい場合、当該タンセンサ信号が立ち上がり時の信号であると判定する。一方、立ち上がり判定部1091aは、正規化部1093によって正規化されたタンセンサ信号取得部108によって取得されたタンセンサ信号のレベルが、タンギング値推移情報が示す最も新しいタンギング値以下である場合、当該タンセンサ信号が立ち上がり時の信号ではないと判定する。タンギング値推移情報が示す最も新しいタンギング値は、当該タンギング値推移情報に格納されたタンギング値のうち、最も新しい取得時刻に対応付けて格納されたタンギング値であり、タンギング値取得部109によって前回取得されたタンギング値である。
特別信号処理フィルタ1091bは、入力された信号の立ち上がりを緩やかにする信号処理フィルタである。具体的に、特別信号処理フィルタ1091bは、IIR(Infinite Impulse Response)フィルタである。
IIRフィルタである特別信号処理フィルタ1091bのフィルタ係数は、フィルタ係数として設定される数値を変化させつつ電子管楽器1を用いて演奏を行ったときの楽音と、サクソフォンを用いて演奏を行ったときの楽音と、の類似度を取得する実験を行い、フィルタ係数として設定される数値と当該類似度との相関関係を求め、当該相関関係に従い、当該類似度が最も高くなる数値をフィルタ係数として設定することによって設定されている。なお、上述したフィルタ係数の設定の方法は一例に過ぎず、フィルタ係数は、任意の方法により設定できる。
特別信号処理部1091は、タンセンサ信号取得部108によって取得されたタンセンサ信号が立ち上がり時の信号であると立ち上がり判定部1091aによって判定された場合、当該タンセンサ信号を特別信号処理フィルタ1091bへ入力し、当該入力に応答して特別信号処理フィルタ1091bから出力された信号を出力する。一方、特別信号処理部1091は、タンセンサ信号取得部108によって取得されたタンセンサ信号が立ち上がり時の信号ではないと立ち上がり判定部1091aによって判定された場合、当該タンセンサ信号を、特別信号処理フィルタ1091bへ入力することなく出力する。このような構成により、特別信号処理部1091は、タンセンサ信号取得部108によって取得されたタンセンサ信号に対し、当該タンセンサ信号の立ち下がりを緩やかにすることなく当該タンセンサ信号の立ち上がりを緩やかにする特別信号処理を行う。
以下、タンギング値取得部109によるタンギング値の取得について、演奏者が、電子管楽器1を用いて、レガートタンギングを1回行った後、通常のタンギングを1回行い、タンセンサ45が、当該演奏操作に応答して、図7(a)に示す信号波形を有するタンセンサ信号を出力した場合を例に用いて説明する。
図7(a)に示すタンセンサ信号の信号波形には、第1の信号波形A1と、第2の信号波形A2と、が含まれている。以下、第1の信号波形A1及び第2の信号波形A2におけるタンセンサの出力値の最大値が、第1の値U1である場合を例に用いて説明する。
第1の信号波形A1は、レガートタンギングに応答して出力されたタンセンサ信号の信号波形である。すなわち、第1の信号波形A1が立ち上がる時刻t1は、演奏者の舌がリード41に接触し、レガートタンギングが開始された時刻である。第1の信号波形A1が立ち下がる時刻t2は、演奏者の舌がリード41から離れ、レガートタンギングが終了した時刻である。時刻t1から時刻t2までの第1の時間T1は、レガートタンギングが行われており、演奏者の舌がリード41に接触している時間である。第1の信号波形A1において、時刻t1から経過した時間は、レガートタンギングのタンギング時間に相当する。
第2の信号波形A2は、通常のタンギングに応答して出力されたタンセンサ信号の信号波形である。すなわち、第2の信号波形A2が立ち上がる時刻t3は、演奏者の舌がリード41に接触し、通常のタンギングが開始された時刻である。第2の信号波形A2が立ち下がる時刻t4は、演奏者の舌がリード41から離れ、通常のタンギングが終了した時刻である。時刻t3から時刻t4までの第2の時間T2は、通常のタンギングが行われており、演奏者の舌がリード41に接触している時間である。第2の信号波形A2において、時刻t3から経過した時間は、通常のタンギングのタンギング時間に相当する。
以下、特別信号処理部1091が、図7(a)に示すタンセンサ信号に対して特別信号処理を行うことにより、図7(b)に示すタンセンサ信号を取得した場合を例に用いて説明する。また、以下、図7(b)に示す特別信号処理を行った後のタンセンサ信号が立ち上がり始めてからタンセンサの出力値が第1の値U1となるまでに第3の時間T3を要する場合を例に用いて説明する。また、以下、第1の時間T1が第3の時間T3未満であり、第2の時間T2が第3の時間T3より長い場合を例に用いて説明する。
図7(b)に示すように、特別信号処理を行った後の第1の信号波形A1及び第2の信号波形A2は、何れも、立ち下がりが緩やかになることなく、立ち上がりが緩やかになっている。
具体的に、特別信号処理を行った後の第1の信号波形A1は、時刻t1に立ち上がり始め、時刻t2に立ち下がる。特別信号処理を行った後の第1の信号波形A1では、タンセンサの出力値は、第1の値U1より小さく、かつ、タンギング時間である時刻t1から経過した時間が長いほど大きい。
特別信号処理を行った後の第2の信号波形A2は、時刻t3に立ち上がり始め、時刻t4に立ち下がる。特別信号処理を行った後の第2の信号波形A2では、タンギング時間である時刻t3から経過した時間が第3の時間T3以上であるときに、タンセンサの出力値は、第1の値U1である。また、特別信号処理を行った後の第2の信号波形A2では、時刻t3から経過した時間が第3の時間T3未満であるときに、タンセンサの出力値は、第1の値U1より小さく、かつ、時刻t3から経過した時間が長いほど大きい。
以下、タンギング値取得部109が、図7(b)に示す特別信号処理を行った後のタンセンサ信号の大きさを示す、正規化部1093によって正規化された当該タンセンサ信号のレベルをタンギング値として取得した場合を例に用いて説明する。図7(c)は、この場合における、タンギング値取得部109によって取得されたタンギング値の時間の経過に従った推移を示している。また、以下、第1の値U1を0以上1以下の範囲に正規化したときに、1となる場合を例に用いて説明する。
図7(c)に示すように、タンギング値取得部109は、図7(b)に示す特別信号処理を行った後のタンセンサ信号の大きさに応じてタンギング値を取得することにより、タンギング時間に応じたタンギング値を取得する。
具体的に、図7(c)に示すタンギング値の推移を示す波形は、第1の推移の波形B1と、第2の推移の波形B2と、を含んでいる。第1の推移の波形B1は、特別信号処理を行った後の第1の信号波形A1に応じて取得されたタンギング値の推移を示している。第2の推移の波形B2は、特別信号処理を行った後の第2の信号波形A2に応じて取得されたタンギング値の推移を示している。
特別信号処理を行った後の第1の信号波形A1において、タンセンサの出力値が、第1の値U1より小さく、かつ、タンギング時間である時刻t1から経過した時間が長いほど大きいことに対応して、第1の推移の波形B1では、タンギング値が、1より小さく、かつ、時刻t1から経過した時間が長いほど大きい。
上述したように、特別信号処理を行った後の第2の信号波形A2において、タンギング時間である時刻t3から経過した時間が第3の時間T3以上であるときに、タンセンサの出力値が、第1の値U1である。これに対応して、第2の推移の波形B2では、時刻t3から経過した時間が第3の時間T3以上であるときに、タンギング値が、1である。また、特別信号処理を行った後の第2の信号波形A2において、時刻t3から経過した時間が第3の時間T3未満であるときに、タンセンサの出力値が、第1の値U1より小さく、かつ、時刻t3から経過した時間が長いほど大きい。これに対応して、第2の推移の波形B2では、時刻t3から経過した時間が第3の時間T3未満であるときに、タンギング値が、1より小さく、かつ、時刻t3から経過した時間が長いほど大きい。
第3の時間T3は、特別時間の一例である。また、1は、特別値の一例である。
上述したように、タンギング値が大きいほど消音効果値が大きく、消音効果値が大きいほど、音量を低下させる度合いが大きい。従って、図7(c)に示す例では、タンギング時間が第3の時間T3未満であるときに、タンギング時間が第3の時間T3以上であるときよりも音量を低下させる度合いが小さく、かつ、タンギング時間が長いほど音量を低下させる度合いが大きい。
このため、演奏者は、電子管楽器1を用いてタンギングを行うときに、舌をリード41に接触させる時間を、第3の時間T3未満となるように調整する演奏操作を行うことにより、サクソフォンを用いてレガートタンギングを行った場合の演奏表現を再現できる。すなわち、電子管楽器1を用いた演奏においては、サクソフォンを用いてレガートタンギングを行った場合の演奏表現を簡単な演奏操作により再現することができる。
また、演奏者は、電子管楽器1を用いてタンギングを行うときに、舌をリード41に接触させる時間を、第3の時間T3以上となるように調整する演奏操作を行うことにより、サクソフォンを用いて通常のタンギングを行った場合の演奏表現を再現できる。すなわち、電子管楽器1を用いた演奏においては、サクソフォンを用いて通常のタンギングを行った場合の演奏表現を簡単な演奏操作により再現することができる。
次に、消音効果値決定部110による消音乗数の決定の詳細について説明する。上述したように、消音効果値決定部110は、消音効果決定情報87に従って、リップ位置取得部110によって取得されたリップ位置に応じた消音乗数を決定し、決定した消音乗数をタンギング値取得部109によって取得されたタンギング値に乗算することによって消音効果値を算出する。
消音効果決定情報87は、図8に示すように、消音乗数が、予め設定された消音乗数の最大値Kmax以下の値に決定され、かつ、リップ位置が奥であるほど大きな値に決定されるように構成されている。
具体的に、本実施形態では、X軸上に第1の範囲W1、第2の範囲W2、第3の範囲W3、第4の範囲W4及び第5の範囲W5が設定されており、リップ位置を示すX座標が何れの範囲に属しているかに応じて消音乗数を決定する。
第1の範囲W1は、第2の範囲W2より手前に設定されており、第2の範囲W2は、第3の範囲W3より手前に設定されており、第3の範囲W3は、第4の範囲W4より手前に設定されており、第4の範囲W4は、第5の範囲W5より手前に設定されている。第2の範囲W2は、電子管楽器1を用いてサブトーン演奏を行っているときのリップ位置に対応している。第3の範囲W3は、電子管楽器1を用いて通常の演奏を行っているときのリップ位置に対応している。第4の範囲W4は、電子管楽器1を用いてパーカッシブトーン演奏を行っているときのリップ位置に対応している。
リップ位置を示すX座標が第1の範囲W1に属している場合、消音乗数は、0に決定される。リップ位置を示すX座標が第2の範囲W2に属している場合、消音乗数は、0より大きく1より小さい値に決定され、かつ、リップ位置が奥であるほど大きな値に決定される。リップ位置を示すX座標が第3の範囲W3に属している場合、消音乗数は、1に決定される。リップ位置を示すX座標が第4の範囲W4に属している場合、消音乗数は、1より大きく消音乗数の最大値Kmaxより小さい値に決定され、かつ、リップ位置が奥であるほど大きな値に決定される。リップ位置を示すX座標が第5の範囲W5に属している場合、消音乗数は、消音乗数の最大値Kmaxに決定される。
すなわち、リップ位置を示すX座標が、通常の演奏を行っているときのリップ位置に対応する第3の範囲W3より手前に設定された第2の範囲W2に属している場合、消音乗数は、リップ位置を示すX座標が第3の範囲W3に属している場合よりも小さい値に決定される。また、リップ位置を示すX座標が、第3の範囲W3より奥に設定された第4の範囲W4に属している場合、消音乗数は、リップ位置を示すX座標が第3の範囲W3に属している場合よりも大きい値に決定される。
上述したように、消音乗数が大きいほど消音効果値が大きく、消音効果値が大きいほど、音量を低下させる度合いが大きい。従って、リップ位置を示すX座標が第2の範囲W2に属しているときは、リップ位置を示すX座標が第3の範囲W3に属しているときよりも音量を低下させる度合いが小さく、サクソフォンを用いてサブトーン演奏を行った場合に適したタンギング演奏表現が再現される。また、リップ位置を示すX座標が第4の範囲W4に属しているときは、リップ位置を示すX座標が第3の範囲W3に属しているときよりも音量を低下させる度合いが大きく、サクソフォンを用いてパーカッシブトーン演奏を行った場合に適したタンギング演奏表現が再現される。
このような構成により、演奏者は、電子管楽器1を用いて演奏を行う際、リップ位置を調整する演奏操作を行うことにより、サクソフォンを用いてサブトーン演奏又はパーカッシブトーン演奏を行った場合の演奏表現を再現することができる。すなわち、このような構成により、電子管楽器1を用いた演奏において、サクソフォンを用いてサブトーン演奏又はパーカッシブトーン演奏を行った場合の演奏表現を簡単な演奏操作により再現することができる。
消音効果決定情報87は、サクソフォンを用いて通常の演奏、サブトーン演奏及びパーカッシブトーン演奏の3種類の演奏を行った場合における、演奏の種類と、リップ位置及び楽音の音量と、の相関関係を実験により求め、当該相関関係に従って、第1の範囲W1、第2の範囲W2、第3の範囲W3、第4の範囲W4及び第5の範囲W5を設定し、リップ位置と消音乗数との対応関係を設定することによって外部の情報処理装置において生成された後、電子管楽器1に取り込まれ、ROM8に予め記憶されている。なお、上述した消音効果決定情報87の生成の方法は一例に過ぎず、消音効果決定情報87は、任意の方法によって生成できる。
次に、音源部11が行う、楽音出力部113による制御に従ったデジタル楽音信号の生成の詳細について、図9を参照して説明する。
音源部11は、図9に示すように、第1の乗算器P1と、第2の乗算器P2と、第3の乗算器P3と、第4の乗算器P4と、第5の乗算器P5と、加算器Q1と、を備えている。
楽音出力部113は、音源部11を制御し、音高情報が示す楽音の音高に応じたノーマル音波形データ80、グロウル音波形データ81、サブトーン音波形データ82及びパーカッシブトーン音波形データ83を、ROM8から取得させる。
楽音出力部113は、第1の乗算器P1を制御し、ROM8から取得されたノーマル音波形データ80に、合成比情報が示すノーマル音波形データ80の合成比に応じた乗数を乗算させる。
楽音出力部113は、第2の乗算器P2を制御し、ROM8から取得されたグロウル音波形データ81に、合成比情報が示すグロウル音波形データ81の合成比に応じた乗数を乗算させる。
楽音出力部113は、第3の乗算器P3を制御し、ROM8から取得されたサブトーン音波形データ82に、合成比情報が示すサブトーン音波形データ82の合成比に応じた乗数を乗算させる。
楽音出力部113は、第4の乗算器P4を制御し、ROM8から取得されたパーカッシブトーン音波形データ83に、合成比情報が示すパーカッシブトーン音波形データ83の合成比に応じた乗数を乗算させる。
楽音出力部113は、加算器Q1を制御し、第1の乗算器P1の出力値に、第2の乗算器P2の出力値と、第3の乗算器P3の出力値と、第4の乗算器P4の出力値と、を加算させる。このような構成により、ROM8から取得されたノーマル音波形データ80、グロウル音波形データ81、サブトーン音波形データ82及びパーカッシブトーン音波形データ83が、合成比決定部112が決定した合成比に従って混合される。
楽音出力部113は、第5の乗算器P5を制御し、加算器Q1の出力値に、音量情報が示す音量に応じた乗数を乗算させる。
楽音出力部113は、音源部11を制御し、第5の乗算器P5の出力値を、デジタル楽音信号として発音部5へ供給する。
このような構成により、音源部11は、楽音出力部113による制御に従って、音高決定部101によって決定された音高を有すると共に、音量決定部111によって決定された音量を有する、合成比決定部112によって決定された合成比に応じた楽音を示すデジタル楽音信号を生成する。
以下、上述した物理的・機能的構成を備える電子管楽器1が実行するメイン制御処理について、図10のフローチャートを参照して説明する。
電子管楽器1は、ノーマル音波形データ80、グロウル音波形データ81、サブトーン音波形データ82、パーカッシブトーン音波形データ83、音高決定情報84、合成比決定情報85、消音効果決定情報86及び音量決定情報87を取り込み、ROM8に予め記憶している。
この状態において、演奏者が、操作スイッチ6が含む電源スイッチを操作することによって電子管楽器1の電源をオンにすると、CPU7は、図10のフローチャートに示すメイン制御処理を開始する。
メイン制御処理が開始されると、まず、CPU7は、初期化処理を実行し、RAM9の記憶領域をクリアする(ステップS101)。次に、CPU7は、割り込みを設定する(ステップS102)。ステップS102の処理が実行された後、メイン制御処理が終了するまで、予め設定されたサンプリング時間が経過したことを計時部13が検出する度に、計時部13からCPU7へ割り込み要求信号が供給される。本実施形態では、サンプリング時間は、4msに設定されている。CPU7は、計時部13から割り込み要求信号が供給されると、RAM9の記憶領域に構築された割り込みフラグをオン状態に設定する。
ステップS102の処理を実行した後、CPU7は、割り込みフラグがオン状態であるか否かを判定する(ステップS103)。割り込みフラグがオン状態ではないと判定された場合(ステップS103;No)、処理はステップS103へ戻る。一方、割り込みフラグがオン状態であると判定された場合(ステップS103;Yes)、CPU7は、割り込みフラグをクリアしてオフ状態に設定し(ステップS104)、ステップS105〜ステップS116の処理を実行する。ステップS105〜ステップS116の処理が実行された後、処理はステップS103へ戻る。このような構成により、サンプリング時間が経過する度に、ステップS105〜ステップS116の処理が実行される。
ステップS105において、キー/スイッチ操作信号取得部100は、キー/スイッチ操作検出部10からキー/スイッチ操作信号を取得する(ステップS105)。ステップS105の処理を実行した後、音高決定部101は、音高決定情報84に従って、ステップS105で取得されたキー/スイッチ操作信号が示すキー/スイッチ操作検出部10によるキー/スイッチ操作の検出の結果に応じて楽音の音高を決定する(ステップS106)。
ステップS106の処理を実行した後、ボイスセンサ信号取得部102は、ボイスセンサ43からボイスセンサ信号を取得する(ステップS107)。ステップS107の処理を実行した後、ボイス値取得部103は、ステップS107で取得されたボイスセンサ信号の大きさに応じたボイス値を取得する(ステップS108)。
ステップS108の処理を実行した後、ブレスセンサ信号取得部104は、ブレスセンサ44からブレスセンサ信号を取得する(ステップS109)。ステップS109の処理を実行した後、ブレス値取得部105は、ステップS109で取得されたブレスセンサ信号の大きさに応じたブレス値を取得する(ステップS110)。
ステップS110の処理を実行した後、リップセンサ信号取得部106は、リップセンサ46からリップセンサ信号を取得する(ステップS111)。ステップS111の処理を実行した後、リップ位置取得部107は、ステップS111で取得されたリップセンサ信号が示すリップセンサ46によるマウスピース4に唇を接触させる演奏操作の検出の結果に応じてリップ位置を取得する(ステップS112)。
ステップS112の処理を実行した後、合成比決定部112は、合成比決定情報85に従って、ステップS108で取得されたボイス値と、ステップS110で取得されたブレス値と、ステップS112で取得されたリップ位置と、に応じて、ノーマル音波形データ80、グロウル音波形データ81、サブトーン音波形データ82及びパーカッシブトーン音波形データ83の合成比を決定する(ステップS113)。
ステップS113の処理を実行した後、CPU7は、音量決定処理を実行し、楽音の音量を決定する(ステップS114)。音量決定処理の詳細については、後述する。
ステップS114の処理を実行した後、楽音出力部113は、音源部11に、ステップS106で決定された音高を有すると共に、ステップS114で決定された音量を有する、ステップS113で決定された合成比に応じた楽音を示すデジタル楽音信号を生成させる(ステップS115)。
ステップS115の処理を実行した後、楽音出力部113は、発音部5に、ステップS115で生成されたデジタル楽音信号に応じた楽音を発音させる(ステップS116)。ステップS116の処理が実行された後、処理はステップS103へ戻る。
演奏者が、電源ボタンを操作することにより電子管楽器1の電源をオフにすると、CPU7は、図10のフローチャートに示すメイン制御処理を終了する。
以下、ステップS114にて実行される音量決定処理の詳細について、図11のフローチャートを参照して説明する。
音量決定処理を開始すると、CPU7は、タンギング値取得処理を実行し、タンギング値を取得する(ステップS201)。タンギング値取得処理の詳細については、後述する。
ステップS201の処理を実行した後、消音効果値決定部110は、消音効果決定情報87に従って、ステップS112で取得されたリップ位置に応じた消音乗数を決定する(ステップS202)。
ステップS202の処理を実行した後、消音効果値決定部110は、ステップS201で取得されたタンギング値に、ステップS202で決定された消音乗数を乗算することによって消音効果値を算出する(ステップS203)。
ステップS203の処理を実行した後、音量決定部111は、音量決定情報86に従って、ステップS110で取得されたブレス値に応じた音量を決定する(ステップS204)。
ステップS204の処理を実行した後、音量決定部111は、ステップS204で決定されたブレス値に応じた音量を、ステップS203で算出した消音効果値に応じて低下させた音量を、楽音の音量として決定し(ステップS205)、音量決定処理を終了する。
以下、ステップS201にて実行されるタンギング値取得処理の詳細について、図12のフローチャートを参照して説明する。
タンギング値取得処理を開始すると、まず、タンセンサ信号取得部108は、タンセンサ45からタンセンサ信号を取得する(ステップS301)。ステップS301の処理を実行した後、信号レベル取得部1092は、ステップS301で取得されたタンセンサ信号のレベルを取得する(ステップS302)。ステップS302の処理を実行した後、正規化部1093は、ステップS302で取得されたタンセンサ信号のレベルを、0以上1以下の範囲に正規化する(ステップS303)。
ステップS303の処理を実行した後、立ち上がり判定部1091aは、ステップS303で正規化されたタンセンサ信号のレベルが、タンギング値推移情報記憶部114によって記憶されたタンギング値推移情報が示す最も新しいタンギング値より大きいか否かを判定することにより、ステップS301で取得されたタンセンサ信号が立ち上がり時の信号であるか否かを判定する(ステップS304)。なお、タンギング値推移情報が示す最も新しいタンギング値は、前回のタンギング値取得処理において取得されたタンギング値である。
ステップS303で正規化されたタンセンサ信号のレベルが、タンギング値推移情報が示す最も新しいタンギング値以下であると判定された場合(ステップS304;No)、タンギング値取得部109は、ステップS303で正規化されたタンセンサ信号のレベルをタンギング値として取得する(ステップS305)。ステップS305の処理を実行した後、タンギング値取得部109は、ステップS305で取得されたタンギング値を、当該タンギング値が取得された時刻に対応付けてタンギング値推移情報に格納することによってタンギング値推移情報を更新し(ステップS306)、タンギング値取得処理を終了する。
ステップS304において、ステップS303で正規化されたタンセンサ信号のレベルが、タンギング値推移情報が示す最も新しいタンギング値より大きいと判定された場合(ステップS304;Yes)、特別信号処理部1091は、ステップS301で取得されたタンセンサ信号を特別信号処理フィルタ1091bへ入力する(ステップS307)。ステップS307の処理を実行した後、信号レベル取得部1092は、ステップS307における入力に応答して特別信号処理フィルタ1091bから出力されたタンセンサ信号のレベルを取得する(ステップS308)。ステップS308の処理を実行した後、正規化部1093は、ステップS308で取得したタンセンサ信号のレベルを、0以上1以下の範囲に正規化する(ステップS309)。
タンギング値取得部109は、ステップS309で正規化されたタンセンサ信号のレベルをタンギング値として取得する(ステップS310)。ステップS310の処理を実行した後、タンギング値取得部109は、ステップS310で取得されたタンギング値を、当該タンギング値が取得された時刻に対応付けてタンギング値推移情報に格納することによってタンギング値推移情報を更新し(ステップS306)、タンギング値取得処理を終了する。
以上説明したとおり、電子管楽器1は、特別信号処理を行った後のタンセンサ信号の大きさに応じてタンギング値を取得することにより、タンギング時間に応じたタンギング値を取得し、取得したタンギング値に応じて消音効果値を決定し、ブレス値に応じた音量を、決定した消音効果値に応じて低下させることにより取得された音量を有する楽音を出力する。このような構成により、電子管楽器1を用いた演奏においては、自然木管楽器であるサクソフォンを用いてレガートタンギングを行った場合の演奏表現を簡単な演奏操作により再現することができる。
なお、本実施形態では、特別信号処理フィルタ1091bが、IIRフィルタであるものとして説明したが、これは一例に過ぎず、特別信号処理フィルタ1091bは、タンセンサ信号の立ち上がりを緩やかにする任意の信号処理フィルタであってよい。例えば、特別信号処理フィルタ1091bは、FIR(Finite Impulse Response)フィルタであってもよい。なお、この場合、FIRフィルタである特別信号処理フィルタ1091bのフィルタ係数は、フィルタ係数として設定される数値を変化させつつ電子管楽器1を用いて演奏を行ったときの楽音と、サクソフォンを用いて演奏を行ったときの楽音と、の類似度を取得する実験を行い、フィルタ係数として設定される数値と当該類似度との相関関係を求め、当該相関関係に従い、当該類似度が最も高くなる数値をフィルタ係数として設定することによって設定すればよい。なお、上述したフィルタ係数の設定の方法は一例に過ぎず、フィルタ係数は、任意の方法により設定できる。
なお、本実施形態では、立ち上がり判定部1091aは、正規化部1093によって正規化されたタンセンサ信号のレベルと、タンギング値推移情報記憶部114によって記憶されたタンギング値推移情報が示す最も新しいタンギング値と、の大小関係に応じて、当該タンセンサ信号が立ち上がり時の信号であるか否かを判定することにより、当該正規化されたタンセンサ信号のレベルと、タンギング値取得部109によって前回取得されたタンギング値と、の大小関係に応じて、当該タンセンサ信号が立ち上がり時の信号であるか否かを判定するものとして説明した。しかしながら、これは一例に過ぎず、立ち上がり判定部1091aは、任意の方法により、正規化部1093によって正規化されたタンセンサ信号のレベルと、タンギング値取得部109によって前回取得されたタンギング値と、の大小関係に応じて、当該タンセンサ信号が立ち上がり時の信号であるか否かを判定することができる。
例えば、特別信号処理フィルタ1091bが、タンギング値取得部109によって前回取得されたタンギング値を記憶するように構成し、立ち上がり判定部1091aは、正規化部1093によって正規化されたタンセンサ信号のレベルと、特別信号フィルタ1091bによって記憶されている前回取得されたタンギング値と、の大小関係に応じて、当該タンセンサ信号が立ち上がり時の信号であるか否かを判定するように構成してもよい。この場合、タンギング値取得部109が、特別信号処理フィルタ1091bとして、タンギング値取得部109によって取得されたタンギング値を順番にFIFO(First In, First Out)バッファに格納する2次以上のIIRフィルタ又は2次以上のFIRフィルタを備えるように構成すればよい。
(第2実施形態)
上記第1実施形態では、電子管楽器1が、特別信号処理を行った後のタンセンサ信号の大きさに応じてタンギング値を取得することにより、タンギング時間に応じたタンギング値を取得するものとして説明した。しかしながら、これは一例に過ぎず、電子管楽器1は、任意の方法でタンギング時間に応じたタンギング値を取得できる。以下、タンギング時間を計測し、計測されたタンギング時間に応じたタンギング乗数を、タンセンサ信号の大きさを示す、正規化された当該タンセンサ信号のレベルに乗算してタンギング値を算出することにより、タンギング時間に応じたタンギング値を取得する電子管楽器1について説明する。
本実施形態に係る電子管楽器1が備える物理的・機能的構成は、上記第1実施形態に係る電子管楽器1が備える物理的・機能的構成と概ね同様であるものの、一部が相違している。以下、本実施形態に係る電子管楽器1が備える物理的・機能的構成について、上記第1実施形態に係る電子管楽器1が備える物理的・機能的構成との相違点を中心に説明する。
図13に示すように、本実施形態に係る電子管楽器1は、上記第1実施形態に係る電子管楽器1が備えているタンギング値推移情報記憶部114を備えていない一方、上記第1実施形態に係る電子管楽器1とは異なり、タンギング時間計測タイマ115と、タンギング乗数情報記憶部116と、を備えている。また、本実施形態に係る電子管楽器1が備えるタンギング値取得部109は、上記第1実施形態に係る電子管楽器1が備えるタンギング値取得部109が有している特別信号処理部1091を有していない一方、上記第1実施形態に係る電子管楽器1が備えるタンギング値取得部109とは異なり、タンギング判定部1094と、タンギング値算出部1095と、を有している。
タンギング時間計測タイマ115は、RAM9により実現される。具体的に、タンギング時間計測タイマ115は、RAM9の記憶領域に構築される。タンギング乗数情報記憶部116は、ROM8により実現される。具体的に、タンギング乗数情報記憶部116は、ROM8の記憶領域に構築される。タンギング判定部1094及びタンギング値算出部1095は、CPU7により実現される。具体的に、CPU7は、ROM8に記憶された上述の制御プログラムを実行して電子管楽器1を制御することにより、タンギング判定部1094及びタンギング値算出部1095として機能する。
タンギング判定部1094は、タンセンサ信号取得部108によって取得されたタンセンサ信号の大きさを示す、正規化部1093によって正規化された当該タンセンサ信号のレベルと、予め設定されたタンギング閾値と、の大小関係に応じて、タンギングが行われているか否かを判定する。具体的に、タンギング判定部1094は、正規化部1093によって正規化されたタンセンサ信号のレベルがタンギング閾値より大きい場合、タンギングが行われていると判定する。一方、タンギング判定部1094は、正規化部1093によって正規化されたタンセンサ信号のレベルがタンギング閾値以下である場合、タンギングが行われていないと判定する。
タンギング閾値は、サクソフォンを用いて通常の演奏及びタンギングの2種類の演奏を行った場合における、演奏の種類と、リードに舌を接触させる演奏操作の強度と、の相関関係を実験により求め、当該相関関係に従って予め設定されている。なお、上述したタンギング閾値の設定の方法は一例に過ぎず、タンギング閾値は、任意の方法によって設定できる。
タンギング時間計測タイマ115は、タンギング判定部1094による判定の結果に従って、タンギング時間を計測する。具体的に、タンギング時間計測タイマ115は、タンギングが行われているとタンギング判定部1094が判定してから、タンギングが行われていないとタンギング判定部1094が判定するまでの時間を計測することにより、タンギング時間を計測する。タンギング時間計測タイマ115は、タンギング時間計測手段の一例である。
タンギング乗数情報記憶部116は、タンギング時間とタンギング乗数との対応関係を示すタンギング乗数情報を記憶する。タンギング乗数情報の詳細については、後述する。
タンギング値算出部1095は、タンギング時間計測タイマ115によって計測されたタンギング時間に応じたタンギング乗数を、タンギング乗数情報記憶部116によって記憶されたタンギング乗数情報に応じて決定する。タンギング値算出部1095は、正規化部1093によって正規化されたタンセンサ信号のレベルに、決定されたタンギング時間計測タイマ115によって計測されたタンギング時間に応じたタンギング乗数を乗算することによってタンギング値を算出する。このような構成により、タンギング値取得部109は、タンギング時間に応じたタンギング値を取得する。
以下、タンギング値取得部109によるタンギング値の取得について、図14(a)〜図14(c)を参照して説明する。
タンギング乗数情報は、図14(a)に示すように、タンギング時間が予め設定された第1標準時間Ta以上であるときに、タンギング乗数が1に決定され、タンギング時間が第1標準時間Ta未満であるときに、タンギング乗数が、1より小さい値に決定され、かつ、タンギング時間が長いほど大きな値に決定されるように構成されている。
タンギング乗数情報は、サクソフォンを用いてタンギングを行った場合における、タンギング時間と楽音の音量との相関関係を実験により求め、当該相関関係に従ってタンギング時間とタンギング乗数との対応関係を設定することによって外部の情報処理装置において生成された後、電子管楽器1に取り込まれ、ROM8に予め記憶されている。なお、上述したタンギング乗数情報の生成の方法は一例に過ぎず、タンギング乗数情報は、任意の方法によって生成できる。
以下、演奏者が、電子管楽器1を用いて、レガートタンギングを1回行った後、通常のタンギングを1回行い、タンセンサ45が、当該演奏操作に応答して、図14(b)に示す信号波形を有するタンセンサ信号を出力した場合を例に用いて説明する。
図14(b)に示すタンセンサ信号の信号波形には、第3の信号波形A3と、第4の信号波形A4と、が含まれている。以下、第3の信号波形A3及び第4の信号波形A4におけるタンセンサの出力値の最大値が、第2の値U2である場合を例に用いて説明する。
第3の信号波形A3は、レガートタンギングに応答して出力されたタンセンサ信号の信号波形である。すなわち、第3の信号波形A3が立ち上がる時刻t5は、演奏者の舌がリード41に接触し、レガートタンギングが開始された時刻である。第3の信号波形A3が立ち下がる時刻t6は、演奏者の舌がリード41から離れ、レガートタンギングが終了した時刻である。時刻t5から時刻t6までの第4の時間T4は、レガートタンギングが行われており、演奏者の舌がリード41に接触している時間である。第3の信号波形A3では、時刻t5から時刻t6まで、タンセンサの出力値が第2の値U2である。
第4の信号波形A4は、通常のタンギングに応答して出力されたタンセンサ信号の信号波形である。すなわち、第4の信号波形A4が立ち上がる時刻t7は、演奏者の舌がリード41に接触し、通常のタンギングが開始された時刻である。第4の信号波形A4が立ち下がる時刻t8は、演奏者の舌がリード41から離れ、通常のタンギングが終了した時刻である。時刻t7から時刻t8までの第5の時間T5は、通常のタンギングが行われており、演奏者の舌がリード41に接触している時間である。第4の信号波形A4では、時刻t7から時刻t8まで、タンセンサの出力値が第2の値U2である。
以下、第2の値U2が、タンギング閾値Uaより大きい場合を例に用いて説明する。この場合、タンギング時間計測タイマ115は、第3の信号波形A3において、時刻t5から経過した時間を、レガートタンギングのタンギング時間として計測する。また、タンギング時間計測タイマ115は、第4の信号波形A4において、時刻t7から経過した時間を、通常のタンギングのタンギング時間として計測する。
以下、タンギング値算出部1095が、タンギング時間計測タイマ115によって計測されたタンギング時間に応じたタンギング乗数を、図14(a)に示すタンギング乗数情報に応じて決定し、決定されたタンギング乗数を、図14(b)に示すタンセンサ信号の大きさを示す、正規化部1093によって正規化された当該タンセンサ信号のレベルに対して乗算することによりタンギング値を算出した場合を例に用いて説明する。図14(c)は、この場合における、タンギング値取得部109によって取得されたタンギング値の時間の経過に従った推移を示している。
以下、第2の値U2を0以上1以下の範囲に正規化したときに、1となる場合を例に用いて説明する。また、以下、第4の時間T4が第1標準時間Ta未満であり、第5の時間T5が第1標準時間Taより長い場合を例に用いて説明する。
図14(c)に示すように、タンギング値取得部109は、タンギング時間計測タイマ115によって計測されたタンギング時間に応じたタンギング乗数を、正規化部1093によって正規化された当該タンセンサ信号のレベルに対して乗算してタンギング値を算出することにより、タンギング時間に応じたタンギング値を取得する。
具体的に、図14(c)に示すタンギング値の推移を示す波形は、第3の推移の波形B3と、第4の推移の波形B4と、を含んでいる。第3の推移の波形B3は、第3の信号波形A3に応じて取得されたタンギング値の推移を示している。第4の推移の波形B4は、第4の信号波形A4に応じて取得されたタンギング値の推移を示している。
第3の信号波形A3において、時刻t5から時刻t6まで、タンセンサの出力値が第2の値U2であり、タンギング乗数情報において、タンギング時間が第1標準時間Ta未満であるときに、タンギング乗数が1より小さく、かつ、タンギング時間が長いほど大きい値である。これに対応して、第3の推移の波形B3では、タンギング値が、1より小さく、かつ、タンギング時間計測タイマ115によって計測されたタンギング時間である時刻t5から経過した時間が長いほど大きい。
第4の信号波形A4において、時刻t7から時刻t8まで、タンセンサの出力値が第2の値U2であり、タンギング乗数情報において、タンギング時間が第1標準時間Ta以上であるときに、タンギング乗数が1に決定される。これに対応して、第4の推移の波形B4では、タンギング時間計測タイマ115によって計測されたタンギング時間である時刻t7から経過した時間が第1標準時間Ta以上であるときに、タンギング値が、1である。また、第4の信号波形A4において、時刻t7から時刻t8まで、タンセンサの出力値が第2の値U2であり、タンギング乗数情報において、タンギング時間が第1標準時間Ta未満であるときに、タンギング乗数が1より小さい値に決定され、かつ、タンギング時間が長いほど大きい値に決定される。これに対応して、第4の推移の波形B4では、タンギング時間計測タイマ115によって計測されたタンギング時間である時刻t7から経過した時間が第1標準時間Ta未満であるときに、タンギング値が、1より小さく、かつ、時刻t7から経過した時間が長いほど大きい。
第1標準時間Taは、特別時間の一例である。また、1は、特別値の一例である。
上述したように、タンギング値が大きいほど消音効果値が大きく、消音効果値が大きいほど、音量を低下させる度合いが大きい。従って、図14(c)に示す例では、タンギング時間が第1標準時間Ta未満であるときに、タンギング時間が第1標準時間Ta以上であるときよりも音量を低下させる度合いが小さく、かつ、タンギング時間が長いほど音量を低下させる度合いが大きい。
このため、演奏者は、電子管楽器1を用いてタンギングを行うときに、舌をリード41に接触させる時間を、第1標準時間Ta未満となるように調整する演奏操作を行うことにより、サクソフォンを用いてレガートタンギングを行った場合の演奏表現を再現できる。すなわち、電子管楽器1を用いた演奏においては、サクソフォンを用いてレガートタンギングを行った場合の演奏表現を簡単な演奏操作により再現することができる。
また、演奏者は、電子管楽器1を用いてタンギングを行うときに、舌をリード41に接触させる時間を、第1標準時間Ta以上となるように調整する演奏操作を行うことにより、サクソフォンを用いて通常のタンギングを行った場合の演奏表現を再現できる。すなわち、電子管楽器1を用いた演奏においては、サクソフォンを用いて通常のタンギングを行った場合の演奏表現を簡単な演奏操作により再現することができる。
上述した物理的・機能的構成を備える電子管楽器1は、上記第1実施形態に係る電子管楽器1が実行する図10のフローチャートに示すメイン制御処理及び図11のフローチャートに示す音量決定処理と概ね同様の処理を実行する。ただし、本実施形態に係る電子管楽器1は、図11のフローチャートに示す音量決定処理のステップS201において、図12のフローチャートに示すタンギング値取得処理の代わりに、図15のフローチャートに示すタンギング値取得処理を実行する。以下、本実施形態に係る電子管楽器1が実行するタンギング値取得処理について、図15のフローチャートを参照して説明する。
図15のフローチャートに示すタンギング値取得処理が実行される前に、タンギング乗数情報が電子管楽器1に取り込まれ、ROM8に予め記憶されている。
図15のフローチャートに示すタンギング値取得処理を開始すると、まず、タンセンサ信号取得部108は、タンセンサ45からタンセンサ信号を取得する(ステップS401)。ステップS401の処理を実行した後、信号レベル取得部1092は、ステップS401で取得されたタンセンサ信号のレベルを取得する(ステップS402)。ステップS402の処理を実行した後、正規化部1093は、ステップS402で取得されたタンセンサ信号のレベルを、0以上1以下の範囲に正規化する(ステップS403)。
ステップS403の処理を実行した後、タンギング判定部1094は、ステップS403で正規化されたタンセンサ信号のレベルが、タンギング閾値Uaより大きいか否かを判定することにより、タンギングが行われているか否かを判定する(ステップS404)。
ステップS403で正規化されたタンセンサ信号のレベルが、タンギング閾値Ua以下であると判定した場合(ステップS404;No)、CPU7は、タンギング時間計測タイマ115の格納値であるタイマ値が0であるか否かを判定する(ステップS405)。タイマ値が0であると判定した場合(ステップS405;Yes)、処理はステップS407へ移る。一方、タイマ値が0ではないと判定した場合(ステップS405;No)、CPU7は、タンギング時間計測タイマ115をクリアしてタイマ値を初期値である0に設定し(ステップS406)、処理はステップS407へ移る。
ステップS404において、ステップS403で正規化されたタンセンサ信号のレベルが、タンギング閾値Uaより大きいと判定した場合(ステップS404;Yes)、CPU7は、タイマ値を1加算することによって更新し(ステップS409)、処理はステップS407へ移る。
ステップS404〜ステップS406及びステップS409の処理が実行されることにより、タンギング時間計測タイマ115によってタンギング時間が計測される。
ステップS407において、タンギング値算出部1095は、タンギング乗数情報記憶部116によって記憶されたタンギング乗数情報に従い、現在のタイマ値が示すタンギング時間に応じたタンギング乗数を決定する(ステップS407)。
ステップS407の処理を実行した後、タンギング値算出部1095は、ステップS403で正規化されたタンセンサ信号のレベルに、ステップS407で決定されたタンギング乗数を乗算することによってタンギング値を算出し(ステップS408)、タンギング値取得処理を終了する。
以上説明したとおり、本実施形態に係る電子管楽器1は、タンセンサ信号取得部108によって取得されたタンセンサ信号の大きさを示す、正規化部1093によって正規化された当該タンセンサ信号のレベルに、タンギング時間計測タイマ115によって計測されたタンギング時間に応じたタンギング乗数を乗算してタンギング値を算出することにより、タンギング時間に応じたタンギング値を取得する。このような構成により、電子管楽器1を用いた演奏では、自然木管楽器であるサクソフォンを用いてレガートタンギングを行った場合の演奏表現を簡単な演奏操作により再現することができる。
(第3実施形態)
上記第2実施形態では、電子管楽器1が、タンギング時間を計測し、計測されたタンギング時間に応じたタンギング乗数を、タンセンサ信号の大きさを示す、正規化された当該タンセンサ信号のレベルに乗算してタンギング値を算出することにより、タンギング時間に応じたタンギング値を取得するものとして説明した。しかしながら、これは一例に過ぎず、電子管楽器1は、計測されたタンギング時間に従って、任意の方法によりタンギング時間に応じたタンギング値を取得できる。以下、タンギング時間とタンギング値との対応関係を示すタンギング値決定情報を予め記憶しており、当該タンギング値決定情報に従って、計測したタンギング時間に応じたタンギング値を取得することにより、タンギング時間に応じたタンギング値を取得する電子管楽器1について説明する。
本実施形態に係る電子管楽器1が備える物理的・機能的構成は、上記第2実施形態に係る電子管楽器1が備える物理的・機能的構成と概ね同様であるものの、一部が相違している。以下、本実施形態に係る電子管楽器1が備える物理的・機能的構成について、上記第2実施形態に係る電子管楽器1が備える物理的・機能的構成との相違点を中心に説明する。
図16に示すように、本実施形態に係る電子管楽器1は、上記第2実施形態に係る電子管楽器1が備えているタンギング乗数情報記憶部116を備えていない一方、上記第2実施形態に係る電子管楽器1とは異なり、タンギング値決定情報記憶部117を備えている。また、本実施形態に係る電子管楽器1が備えるタンギング値取得部109は、上記第2実施形態に係る電子管楽器1が備えるタンギング値取得部109が有しているタンギング値算出部1095を有していない一方、上記第2実施形態に係る電子管楽器1が備えるタンギング値取得部109とは異なり、選択部1096を有している。
タンギング値決定情報記憶部117は、ROM8により実現される。具体的に、タンギング値決定情報記憶部117は、ROM8の記憶領域に構築される。選択部1096は、CPU7により実現される。具体的に、CPU7は、ROM8に記憶された上述の制御プログラムを実行して電子管楽器1を制御することにより、選択部1096として機能する。
タンギング値決定情報記憶部117は、タンギング時間とタンギング値との対応関係を示すタンギング値決定情報を記憶する。具体的に、タンギング値決定情報記憶部117は、タンギング値決定情報として、第1タンギング値決定情報と、第2タンギング値決定情報と、を記憶している。第1タンギング値決定情報及び第2タンギング値決定情報の詳細については、後述する。
選択部1096は、タンセンサ信号取得部108によって取得されたタンセンサ信号の大きさを示す、正規化部1093によって正規化された当該タンセンサ信号のレベルに応じて、第1タンギング値決定情報と第2タンギング値決定情報との何れかを選択する。具体的に、選択部1096は、正規化部1093によって正規化されたタンセンサ信号のレベルが予め設定された選択閾値以上であるときに、第1タンギング値決定情報を選択し、当該正規化されたタンセンサ信号のレベルが当該選択閾値未満であるときに、第2タンギング値決定情報を選択する。選択閾値の詳細については、後述する。
タンギング値取得部109は、タンギング時間計測タイマ115によって計測されたタンギング時間に応じたタンギング値を、選択部1096によって選択されたタンギング値決定情報に従って取得する。このような構成により、タンギング値取得部109は、タンギング時間に応じたタンギング値を取得する。
以下、タンギング値取得部109によるタンギング値の取得について、図17(a)〜図17(d)を参照して説明する。
第1タンギング値決定情報は、図17(a)に示すように、タンギング時間が予め設定された第2標準時間Tb以上であるときに、タンギング値が1に決定され、タンギング時間が第2標準時間Tb未満であるときに、タンギング値が、1より小さい値に決定され、かつ、タンギング時間が長いほど大きな値に決定されるように構成されている。
第2タンギング値決定情報は、図17(b)に示すように、タンギング時間が第2標準時間Tb以上であるときに、タンギング値が、1より小さい第1標準値Ubに決定され、タンギング時間が第2標準時間Tb未満であるときに、タンギング値が、第1標準値Ubより小さい値に決定され、かつ、タンギング時間が長いほど大きな値に決定されるように構成されている。
このような構成により、タンギング時間が互いに同一である場合、第1タンギング値決定情報が選択部1096によって選択されたときに、第2タンギング値決定情報が選択部1096によって選択されたときのタンギング値よりも大きい値がタンギング値として取得される。例えば、第1タンギング値決定情報が選択部1096によって選択された場合、タンギング時間計測タイマ115によって計測されたタンギング時間が第2標準時間Tbであるときに、タンギング値取得部109は、1をタンギング値として取得する。これに対し、第2タンギング値決定情報が選択部1096によって選択された場合、タンギング時間計測タイマ115によって計測されたタンギング時間が第2標準時間Tbであるときに、タンギング値取得部109は、1より小さい第1標準値Ubをタンギング値として取得する。第2標準時間Tbは、基準時間の一例である。また、1は、第1基準値の一例であり、第1標準値Ubは、第2基準値の一例である。
タンギング値取得部109は、タンギング信号の大きさを示す、正規化部1093によって正規化された当該タンセンサ信号のレベルに応じて選択部1096により選択されたタンギング値決定情報に従ってタンギング値を取得することにより、当該タンギング信号の大きさに応じたタンギング値を取得する。
なお、上述した選択閾値は、サクソフォンを用いてタンギングを行った場合における、リードに舌を接触させる演奏操作の強度と楽音の音量との相関関係を実験により求め、当該相関関係に従って設定される。なお、上述した選択閾値の設定の方法は一例に過ぎず、選択閾値は、任意の方法により設定できる。
第1タンギング値決定情報及び第2タンギング値決定情報は、サクソフォンを用いてタンギングを行った場合における、リードに舌を接触させる演奏操作の強度、タンギング時間及び楽音の音量の相関関係を実験により求め、当該相関関係に従ってタンギング時間とタンギング値との対応関係を設定することによって外部の情報処理装置において生成された後、電子管楽器1に取り込まれ、ROM8に予め記憶されている。
以下、演奏者が、電子管楽器1を用いて、レガートタンギングを2回行った後、通常のタンギングを2回行い、タンセンサ45が、当該演奏操作に応答して、図17(c)に示す信号波形を有するタンセンサ信号を出力した場合を例に用いて説明する。
図17(c)に示すタンセンサ信号の信号波形には、第5の信号波形A5と、第6の信号波形A6と、第7の信号波形A7と、第8の信号波形A8と、が含まれている。以下、第5の信号波形A5及び第7の信号波形A7におけるタンセンサの出力値の最大値が、第3の値U3であり、第6の信号波形A6及び第8の信号波形A8におけるタンセンサの出力値の最大値が、第4の値U4である場合を例に用いて説明する。
第5の信号波形A5は、1回目のレガートタンギングに応答して出力されたタンセンサ信号の信号波形である。すなわち、第5の信号波形A5が立ち上がる時刻t9は、演奏者の舌がリード41に接触し、1回目のレガートタンギングが開始された時刻である。第5の信号波形A5が立ち下がる時刻t10は、演奏者の舌がリード41から離れ、1回目のレガートタンギングが終了した時刻である。時刻t9から時刻t10までの第6の時間T6は、1回目のレガートタンギングが行われており、演奏者の舌がリード41に接触している時間である。第5の信号波形A5では、時刻t9から時刻t10まで、タンセンサの出力値が第3の値U3である。
第6の信号波形A6は、2回目のレガートタンギングに応答して出力されたタンセンサ信号の信号波形である。すなわち、第6の信号波形A6が立ち上がる時刻t11は、演奏者の舌がリード41に接触し、2回目のレガートタンギングが開始された時刻である。第6の信号波形A6が立ち下がる時刻t12は、演奏者の舌がリード41から離れ、2回目のレガートタンギングが終了した時刻である。時刻t11から時刻t12までの第7の時間T7は、2回目のレガートタンギングが行われており、演奏者の舌がリード41に接触している時間である。第6の信号波形A6では、時刻t11から時刻t12まで、タンセンサの出力値が第4の値U4である。
第7の信号波形A7は、1回目の通常のタンギングに応答して出力されたタンセンサ信号の信号波形である。すなわち、第7の信号波形A7が立ち上がる時刻t13は、演奏者の舌がリード41に接触し、1回目の通常のタンギングが開始された時刻である。第7の信号波形A7が立ち下がる時刻t14は、演奏者の舌がリード41から離れ、1回目の通常のタンギングが終了した時刻である。時刻t13から時刻t14までの第8の時間T8は、1回目の通常のタンギングが行われており、演奏者の舌がリード41に接触している時間である。第7の信号波形A7では、時刻t13から時刻t14まで、タンセンサの出力値が第3の値U3である。
第8の信号波形A8は、2回目の通常のタンギングに応答して出力されたタンセンサ信号の信号波形である。すなわち、第8の信号波形A8が立ち上がる時刻t15は、演奏者の舌がリード41に接触し、2回目の通常のタンギングが開始された時刻である。第8の信号波形A8が立ち下がる時刻t16は、演奏者の舌がリード41から離れ、2回目の通常のタンギングが終了した時刻である。時刻t15から時刻t16までの第9の時間T9は、2回目の通常のタンギングが行われており、演奏者の舌がリード41に接触している時間である。第8の信号波形A8では、時刻t15から時刻t16まで、タンセンサの出力値が第4の値U4である。
以下、第3の値U3及び第4の値U4が、タンギング閾値Uaより大きい場合を例に用いて説明する。この場合、タンギング時間計測タイマ115は、第5の信号波形A5において、時刻t9から経過した時間を、1回目のレガートタンギングのタンギング時間として計測する。タンギング時間計測タイマ115は、第6の信号波形A6において、時刻t11から経過した時間を、2回目のレガートタンギングのタンギング時間として計測する。タンギング時間計測タイマ115は、第7の信号波形A7において、時刻t13から経過した時間を、1回目の通常のタンギングのタンギング時間として計測する。タンギング時間計測タイマ115は、第8の信号波形A8において、時刻t15から経過した時間を、2回目の通常のタンギングのタンギング時間として計測する。
以下、選択部1096が、図17(c)に示すタンセンサ信号の大きさを示す、正規化部1093によって正規化された当該タンセンサ信号のレベルに応じて第1タンギング値決定情報と第2タンギング値決定情報との何れかを選択した場合を例に用いて説明する。
具体的に、以下、第3の値U3が選択閾値Ucより大きく、第4の値U4が選択閾値Ucより小さい場合を例に用いて説明する。この場合、選択部1096は、第5の信号波形A5及び第7の信号波形A7に応じたタンギング値決定情報として第1タンギング値決定情報を選択する。一方、選択部1096は、第6の信号波形A6及び第8の信号波形A8に応じたタンギング値決定情報として第2タンギング値決定情報を選択する。
以下、タンギング値取得部109が、選択部1096によって選択されたタンギング値決定情報に従い、タンギング時間計測タイマ115によって計測されたタンギング時間に応じたタンギング値を取得した場合を例に用いて説明する。図17(d)は、この場合における、タンギング値取得部109によって取得されたタンギング値の時間の経過に従った推移を示している。
図17(d)に示すタンギング値の推移を示す波形は、第5の推移の波形B5と、第6の推移の波形B6と、第7の推移の波形B7と、第8の推移の波形B8と、を含んでいる。第5の推移の波形B5は、第5の信号波形A5に応じて取得されたタンギング値の推移を示している。第6の推移の波形B6は、第6の信号波形A6に応じて取得されたタンギング値の推移を示している。第7の推移の波形B7は、第7の信号波形A7に応じて取得されたタンギング値の推移を示している。第8の推移の波形B8は、第8の信号波形A8に応じて取得されたタンギング値の推移を示している。
第5の信号波形A5に応じたタンギング値決定情報として第1タンギング値決定情報が選択部1096によって選択されたことに対応して、第5の推移の波形B5では、タンギング値が、1より小さく、かつ、タンギング時間計測タイマ115によって計測されたタンギング時間である時刻t9から経過した時間が長いほど大きい。
第6の信号波形A6に応じたタンギング値決定情報として第2タンギング値決定情報が選択部1096によって選択されたことに対応して、第6の推移の波形B6では、タンギング値が、第1標準値Ubより小さく、かつ、タンギング時間計測タイマ115によって計測されたタンギング時間である時刻t11から経過した時間が長いほど大きい。
第7の信号波形A7に応じたタンギング値決定情報として第1タンギング値決定情報が選択部1096によって選択されたことに対応して、第7の推移の波形B7では、タンギング時間計測タイマ115によって計測されたタンギング時間である時刻t13から経過した時間が第2標準時間Tb以上であるときに、タンギング値が、1である。また、第7の推移の波形B7では、タンギング時間計測タイマ115によって計測されたタンギング時間である時刻t13から経過した時間が第2標準時間Tb未満であるときに、タンギング値が、1より小さく、かつ、時刻t13から経過した時間が長いほど大きい。
第2標準時間Tbは、特別時間の一例である。また、1は、特別値の一例である。
第8の信号波形A8に応じたタンギング値決定情報として第2タンギング値決定情報が選択部1096によって選択されたことに対応して、第8の推移の波形B8では、タンギング時間計測タイマ115によって計測されたタンギング時間である時刻t15から経過した時間が第2標準時間Tb以上であるときに、タンギング値が、第1標準値Ubである。また、第8の推移の波形B8では、タンギング時間計測タイマ115によって計測されたタンギング時間である時刻t15から経過した時間が第2標準時間Tb未満であるときに、タンギング値が、第1標準値Ubより小さく、かつ、時刻t15から経過した時間が長いほど大きい。
第2標準時間Tbは、特別時間の一例である。また、第1標準値Ubは、特別値の一例である。
上述したように、タンギング値が大きいほど消音効果値が大きく、消音効果値が大きいほど、音量を低下させる度合いが大きい。従って、図17(d)に示す例では、タンギング時間が第2標準時間Tb未満であるときに、タンギング時間が第2標準時間Tb以上であるときよりも音量を低下させる度合いが小さく、かつ、タンギング時間が長いほど音量を低下させる度合いが大きい。
このため、演奏者は、電子管楽器1を用いてタンギングを行うときに、舌をリード41に接触させる時間を、第2標準時間Tb未満となるように調整する演奏操作を行うことにより、サクソフォンを用いてレガートタンギングを行った場合の演奏表現を再現できる。すなわち、電子管楽器1を用いた演奏においては、サクソフォンを用いてレガートタンギングを行った場合の演奏表現を簡単な演奏操作により再現することができる。
また、演奏者は、電子管楽器1を用いてタンギングを行うときに、舌をリード41に接触させる時間を、第2標準時間Tb以上となるように調整する演奏操作を行うことにより、サクソフォンを用いて通常のタンギングを行った場合の演奏表現を再現できる。すなわち、電子管楽器1を用いた演奏においては、サクソフォンを用いて通常のタンギングを行った場合の演奏表現を簡単な演奏操作により再現することができる。
上述した物理的・機能的構成を備える電子管楽器1は、上記第1実施形態に係る電子管楽器1が実行する図10のフローチャートに示すメイン制御処理及び図11のフローチャートに示す音量決定処理と概ね同様の処理を実行する。ただし、本実施形態に係る電子管楽器1は、図11のフローチャートに示す音量決定処理のステップS201において、図12のフローチャートに示すタンギング値取得処理の代わりに、図18のフローチャートに示すタンギング値取得処理を実行する。以下、本実施形態に係る電子管楽器1が実行するタンギング値取得処理について、図18を参照して説明する。
図18のフローチャートに示すタンギング値取得処理が実行される前に、第1タンギング値決定情報及び第2タンギング値決定情報が電子管楽器1に取り込まれ、ROM8に予め記憶されている。
図18のフローチャートに示すタンギング値取得処理を開始すると、まず、タンセンサ信号取得部108は、タンセンサ45からタンセンサ信号を取得する(ステップS501)。ステップS501の処理を実行した後、信号レベル取得部1092は、ステップS501で取得されたタンセンサ信号のレベルを取得する(ステップS502)。ステップS502の処理を実行した後、正規化部1093は、ステップS502で取得されたタンセンサ信号のレベルを、0以上1以下の範囲に正規化する(ステップS503)。
ステップS503の処理を実行した後、タンギング判定部1094は、ステップS503で正規化されたタンセンサ信号のレベルが、タンギング閾値Uaより大きいか否かを判定することにより、タンギングが行われているか否かを判定する(ステップS504)。
ステップS503で正規化されたタンセンサ信号のレベルが、タンギング閾値Ua以下であると判定した場合(ステップS504;No)、CPU7は、タイマ値が0であるか否かを判定する(ステップS505)。タイマ値が0であると判定した場合(ステップS505;Yes)、処理はステップS507へ移る。一方、タイマ値が0ではないと判定した場合(ステップS505;No)、CPU7は、タンギング時間計測タイマ115をクリアしてタイマ値を初期値である0に設定し(ステップS506)、処理はステップS507へ移る。
ステップS504において、ステップS503で正規化されたタンセンサ信号のレベルが、タンギング閾値Uaより大きいと判定した場合(ステップS504;Yes)、CPU7は、タイマ値を1加算することによって更新し(ステップS509)、処理はステップS507へ移る。
ステップS504〜ステップS506及びステップS509の処理が実行されることにより、タンギング時間計測タイマ115によってタンギング時間が計測される。
ステップS507において、選択部1096は、ステップS503で正規化されたタンセンサ信号のレベルと選択閾値Ucとの大小関係に応じて、第1タンギング値決定情報と第2タンギング値決定情報との何れかを選択する(ステップS507)。
ステップS507の処理を実行した後、タンギング値取得部109は、ステップS507で選択されたタンギング値決定情報に従い、現在のタイマ値が示すタンギング時間応じたタンギング値を取得し(ステップS508)、タンギング値取得処理を終了する。
以上説明したとおり、本実施形態に係る電子管楽器1は、タンギング時間とタンギング値との対応関係を示すタンギング値決定情報に従い、タンギング時間計測タイマ115によって計測されたタンギング時間に応じたタンギング値を取得する。このような構成により、電子管楽器1を用いた演奏では、自然木管楽器であるサクソフォンを用いてレガートタンギングを行った場合の演奏表現を簡単な演奏操作により再現することができる。
なお、本実施形態では、タンギング値決定情報記憶部117が、第1タンギング値決定情報と第2タンギング値決定情報との2種類のタンギング値決定情報を記憶するものとして説明した。しかし、これは一例に過ぎず、タンギング値決定情報記憶部117は、1種類のタンギング値決定情報のみを記憶し、タンギング値取得部109は、当該タンギング値決定情報に従ってタンギング値を取得するように構成してもよい。このような構成によれば、ROM8の記憶負荷を軽減することができる。
なお、タンギング値決定情報記憶部117が、3種類以上のタンギング値決定情報を記憶するように構成してもよい。この場合、選択部1096は、3種類以上のタンギング値決定情報の何れかを、タンセンサ信号の大きさを示す、正規化部1093によって正規化された当該タンセンサ信号のレベルに応じて選択し、タンギング値取得部109は、選択部1096によって選択されたタンギング値決定情報に従ってタンギング値を取得すればよい。このような構成によれば、タンセンサ信号の大きさに応じてきめ細かくタンギング値を取得し、サクソフォンを用いた演奏表現の電子管楽器1による再現の精度を向上させることができる。
なお、本実施形態では、第1タンギング値決定情報が、タンギング時間が第2標準時間Tb以上であるときに、タンギング値が最大値としての1に決定されるように構成され、第2タンギング値決定情報が、タンギング時間が第2標準時間Tb以上であるときに、タンギング値が最大値としての第1標準値Ubに決定されるように構成されているものとして説明した。すなわち、本実施形態では、第1タンギング値決定情報においてタンギング値の最大値に対応するタンギング時間と、第2タンギング値決定情報においてタンギング値の最大値に対応するタンギング時間と、が互いに同一であるものとして説明した。しかしながら、これは一例に過ぎず、第1タンギング値決定情報においてタンギング値の最大値に対応するタンギング時間と、第2タンギング値決定情報においてタンギング値の最大値に対応するタンギング時間と、は互い異なっていてもよい。
以上に本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は一例であり、本発明の適用範囲はこれに限られない。すなわち、本発明の実施形態は種々の応用が可能であり、あらゆる実施の形態が本発明の範囲に含まれる。
例えば、上記第1〜第3実施形態では、電子管楽器1が、サクソフォンの形状を模した形状を有しているものとして説明したが、これは一例に過ぎず、電子管楽器1は、任意の自然木管楽器の形状を模した形状を有するように構成できる。例えば、電子管楽器1が、クラリネット、フルート、オーボエ、又はトランペットの形状を模した形状を有するように構成してもよい。
上記第1〜第3実施形態では、電子管楽器1が、サクソフォンの楽音を模した楽音を発音するものとして説明したが、これは一例に過ぎず、電子管楽器1は、任意の自然木管楽器の楽音を模した楽音を発音するように構成できる。例えば、電子管楽器1が、クラリネット、フルート、オーボエ、又はトランペットの楽音を模した楽音を発音するように構成してもよい。
上記第1〜第3実施形態では、操作スイッチ6に電源スイッチが含まれているものとして説明したが、これは一例に過ぎず、操作スイッチ6は、演奏者による演奏操作以外の操作を受け付ける任意のスイッチを含むように構成できる。例えば、操作スイッチ6が、楽音の音量を指定する操作を受け付ける音量スイッチや、楽音の音高を指定する操作を受け付ける音高スイッチを含むように構成してもよい。
上記第1〜第3実施形態では、ブレスセンサ44が、演奏者の息の圧力を検出する圧力センサであるものとして説明したが、これは一例に過ぎず、ブレスセンサ44は、演奏者によるマウスピース4に息を吹き込む演奏操作を検出可能な任意のセンサであってよい。例えば、ブレスセンサ44は、演奏者がマウスピース4を口に咥えた状態で息を吹き込んだときに、開口部40aを通じてマウスピース本体40内部の空洞へ導かれた演奏者の息の量を検出する流量センサであってもよい。
上記第1〜第3実施形態では、タンセンサ45が、静電容量方式のタッチセンサであるものとして説明したが、これは一例に過ぎず、タンセンサ45は、演奏者によるリード41に舌を接触させる演奏操作を検出可能な任意のセンサであってよい。例えば、タンセンサ45は、抵抗膜方式のタッチセンサ、赤外線方式のタッチセンサ、圧力センサ又は温度センサであってもよい。
上記第1〜第3実施形態では、リップセンサ46が、静電容量方式のタッチセンサであるものとして説明したが、これは一例に過ぎず、リップセンサ46は、演奏者によるマウスピース4に唇を接触させる演奏操作を検出可能な任意のセンサであってよい。例えば、リップセンサ46は、抵抗膜方式のタッチセンサ、赤外線方式のタッチセンサ、圧力センサ又は温度センサであってもよい。
上記第1〜第3実施形態では、消音効果値決定部110が、リップ位置取得部107によって取得されたリップ位置と、タンギング値取得部109によって取得されたタンギング値と、に応じて消音効果値を決定するものとして説明した。しかし、これは一例に過ぎず、消音効果値決定部110が、リップ位置取得部107によって取得されたリップ位置を参酌することなく、タンギング値取得部109によって取得されたタンギング値に応じた消音効果値を決定するように構成してもよい。例えば、消音効果値決定部110は、タンギング値取得部109によって取得されたタンギング値を、消音効果値として決定してもよい。このような構成によれば、CPU7の処理負荷を軽減することができる。
上記第1〜第3実施形態では、楽音出力部113が、音源部11に、楽音を示すデジタル楽音信号を生成させ、発音部5に、当該デジタル楽音信号に従って楽音を発音させるものとして説明した。しかし、これは一例に過ぎず、楽音出力部113は、任意の方法で楽音を出力することができる。例えば、楽音出力部113は、音源部11に、楽音を示すデジタル楽音信号を生成させ、DAC/増幅器50に、当該デジタル楽音信号に対応するアナログ楽音信号を生成させ、出力インタフェース52に、当該アナログ楽音信号を外部のヘッドフォン又は外部のスピーカへ出力させてもよい。
なお、上記第1〜第3実施形態に示した電子管楽器1の機能的構成のうち一部又は全部を、音源部11が備える音源LSIによって実現するように構成してもよい。
なお、本発明に係る機能を実現するための構成を予め備えた電子管楽器として提供できることはもとより、プログラムの適用により、既存の電子管楽器を、本発明に係る電子管楽器として機能させることもできる。すなわち、本発明に係る電子管楽器の各機能構成を実現させるためのプログラムを、既存の電子管楽器を制御するCPU等が実行できるように適用することで、当該既存の電子管楽器を本発明に係る電子管楽器として機能させることができる。
なお、このようなプログラムの適用方法は任意である。プログラムを、例えば、フレキシブルディスク、CD(Compact Disc)−ROM、DVD(Digital Versatile Disc)−ROM、メモリーカード等のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に格納して適用できる。さらに、プログラムを搬送波に重畳し、インターネットなどの通信媒体を介して適用することもできる。例えば、通信ネットワーク上の掲示板(BBS:Bulletin Board System)にプログラムを掲示して配信してもよい。そして、このプログラムを起動し、OS(Operating System)の制御下で、他のアプリケーションプログラムと同様に実行することにより、上記の処理を実行できるように構成してもよい。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明には、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲とが含まれる。以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
(付記1)
タンギングが開始されてから経過した時間であるタンギング時間に応じたタンギング値を取得するタンギング値取得手段と、
音量を低下させる度合いを示す消音効果値を、前記タンギング値に応じて決定する消音効果値決定手段と、
ブレスセンサによる検出の結果を示すブレスセンサ信号の大きさに応じたブレス値を取得するブレス値取得手段と、
前記ブレス値に応じた音量を、前記消音効果値に応じて低下させることにより取得された音量を有する楽音を出力する楽音出力手段と、
を備えることを特徴とする電子管楽器。
(付記2)
前記タンギング値取得手段は、
前記タンギング時間が特別時間以上であるときに、特別値を前記タンギング値として取得し、
前記タンギング時間が前記特別時間未満であるときに、前記特別値より小さい値を前記タンギング値として取得し、かつ、前記タンギング時間が長いほど前記タンギング値として大きい値を取得し、
前記タンギング値が大きいほど前記消音効果値は大きく、
前記消音効果値が大きいほど音量を低下させる度合いが大きい、
ことを特徴とする付記1に記載の電子管楽器。
(付記3)
前記タンギング値取得手段は、
タンセンサによる検出の結果を示すタンセンサ信号に対して、当該タンセンサ信号の立ち下がりを緩やかにすることなく当該タンセンサ信号の立ち上がりを緩やかにする特別信号処理を行う特別信号処理手段を含み、
前記特別信号処理を行った後の前記タンセンサ信号の大きさに応じて前記タンギング値を取得する、
ことを特徴とする付記1又は2に記載の電子管楽器。
(付記4)
前記特別信号処理手段は、
前記タンセンサ信号が立ち上がり時の信号であるか否かを判定する立ち上がり判定手段を含み、
前記タンセンサ信号が立ち上がり時の信号であると前記立ち上がり判定手段によって判定されたときに、当該タンセンサ信号を、信号の立ち上がりを緩やかにする特別信号処理フィルタへ入力し、
前記タンセンサ信号が立ち上がり時の信号ではないと前記立ち上がり判定手段によって判定されたときに、当該タンセンサ信号を、前記特別信号処理フィルタへ入力しない、
ことを特徴とする付記3に記載の電子管楽器。
(付記5)
前記立ち上がり判定手段は、前記タンセンサ信号の大きさと、前回取得された前記タンギング値と、の大小関係に応じて、当該タンセンサ信号が立ち上がり時の信号であるか否かを判定する、
ことを特徴とする付記4に記載の電子管楽器。
(付記6)
前記特別信号処理フィルタは、IIR(Infinite Impulse Response)フィルタ又はFIR(Finite Impulse Response)フィルタである、
ことを特徴とする付記4又は5に記載の電子管楽器。
(付記7)
前記タンギング時間を計測するタンギング時間計測手段と、
前記タンギング時間とタンギング乗数との対応関係を示すタンギング乗数情報を記憶するタンギング乗数情報記憶手段と、
をさらに備え、
前記タンギング値取得手段は、
前記タンギング時間計測手段によって計測された前記タンギング時間に応じた前記タンギング乗数を、前記タンギング乗数情報に応じて決定し、
タンセンサによる検出の結果を示すタンセンサ信号の大きさに、前記タンギング時間計測手段によって計測された前記タンギング時間に応じた前記タンギング乗数を乗算することによって前記タンギング値を算出する、
ことを特徴とする付記1又は2に記載の電子管楽器。
(付記8)
前記タンギング時間を計測するタンギング時間計測手段と、
前記タンギング時間と前記タンギング値との対応関係を示すタンギング値決定情報を記憶するタンギング値決定情報記憶手段と、
をさらに備え、
前記タンギング値取得手段は、前記タンギング時間計測手段によって計測された前記タンギング時間に応じた前記タンギング値を、前記タンギング値決定情報に従って取得する、
ことを特徴とする付記1又は2に記載の電子管楽器。
(付記9)
前記タンギング値決定情報記憶手段は、前記タンギング値決定情報として、第1タンギング値決定情報と、第2タンギング値決定情報と、を記憶しており、
前記タンギング値取得手段は、
タンセンサによる検出の結果を示すタンセンサ信号の大きさに応じて、前記第1タンギング値決定情報と前記第2タンギング値決定情報との何れかを選択する選択手段を含み、
前記タンギング時間計測手段によって計測された前記タンギング時間に応じた前記タンギング値を、前記選択手段によって選択された前記タンギング値決定情報に従って取得し、
前記第1タンギング値決定情報が前記選択手段によって選択された場合、前記タンギング時間計測手段によって計測された前記タンギング時間が基準時間であるときに、第1基準値を前記タンギング値として取得し、
前記第2タンギング値決定情報が前記選択手段によって選択された場合、前記タンギング時間計測手段によって計測された前記タンギング時間が前記基準時間であるときに、前記第1基準値より小さい第2基準値を前記タンギング値として取得する、
ことを特徴とする付記8に記載の電子管楽器。
(付記10)
タンギングが開始されてから経過した時間であるタンギング時間に応じたタンギング値を取得し、
音量を低下させる度合いを示す消音効果値を、前記タンギング値に応じて決定し、
ブレスセンサによる検出の結果を示すブレスセンサ信号の大きさに応じたブレス値を取得し、
前記ブレス値に応じた音量を、前記消音効果値に応じて低下させることにより取得された音量を有する楽音を出力する、
ことを特徴とする電子管楽器の制御方法。
(付記11)
電子管楽器を制御するコンピュータに、
タンギングが開始されてから経過した時間であるタンギング時間に応じたタンギング値を取得させ、
音量を低下させる度合いを示す消音効果値を、前記タンギング値に応じて決定させ、
ブレスセンサによる検出の結果を示すブレスセンサ信号の大きさに応じたブレス値を取得させ、
前記ブレス値に応じた音量を、前記消音効果値に応じて低下させることにより取得された音量を有する楽音を出力させる、
ことを特徴とするプログラム。