JP2021046536A - ポリ塩化ビニル系炭素繊維強化複合材料 - Google Patents

ポリ塩化ビニル系炭素繊維強化複合材料 Download PDF

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Yoshihiro Yamamoto
誉大 山本
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修平 冠
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Ryosuke Nakao
亮介 中尾
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紗理 今西
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Abstract

【課題】難燃性、耐久性、耐油・耐薬品性に優れるとともに、曲げ強度やクリープ特性等の機械特性にも優れるポリ塩化ビニル系炭素繊維強化複合材料を提供する。【解決手段】少なくとも酸変性ポリ塩化ビニル(a)を含む塩化ビニル系樹脂組成物(A)と、炭素繊維基材(B)と、を有する炭素繊維強化複合材料であって、前記酸変性ポリ塩化ビニル(a)の赤外吸収スペクトルにおいて、ポリ塩化ビニル由来のピーク(C−Cl伸縮、610cm-1)強度をI0、酸変性由来のピーク(C=O伸縮、1730cm-1)強度をIM、前記塩化ビニル系樹脂組成物(A)中の樹脂成分に対する前記酸変性ポリ塩化ビニル(a)の質量割合をM(質量%)とした場合に、下記式:R=IM/I0×M/100で表される酸変性割合Rが0.2〜2.0である、炭素繊維強化複合材料とする。【選択図】なし

Description

本発明は、炭素繊維基材に塩化ビニル系樹脂組成物を含浸させた炭素繊維強化複合材料
に関する。
炭素繊維とマトリックス樹脂とからなる炭素繊維強化複合材料(以下、CFRPと略すことがある。)は、比強度、比弾性率が高く、力学特性に優れ、耐候性、耐薬品性などの高機能特性を有する。そのため、CFRPは、航空機構造部材、風車のブレード、自動車外板や、一般産業用途においても注目され、その需要は年々高まりつつある。
現在、市場で採用されているCFRPに用いられるマトリックス樹脂の大半はエポキシ等の熱硬化性樹脂である。これは、熱硬化性樹脂が低粘度であり、炭素繊維への含浸性が高いためである。その反面、熱硬化性樹脂をマトリックス樹脂とするCFRPは、加工性やリサイクル性が低いといった課題を有している。そのため近年では、ポリオレフィンやポリアミド系ポリマーアロイなどの熱可塑性樹脂をマトリックス樹脂として使用することが注目されている。
CFRPに用いられる炭素繊維は、マトリックス樹脂と化学組成および分子構造が異なり、かつマトリックス樹脂との親和性が低いことから、マトリックス樹脂との接着性が低い。したがって、炭素繊維の優れた機械特性を活かすには、炭素繊維とマトリックス樹脂の界面接着性が優れることも重要である。例えばプロピレン系樹脂をマトリックス樹脂として使用する場合、炭素繊維に対する界面接着性が悪く、単にプロピレン系樹脂と炭素繊維を溶融混練しても期待する機械物性を得ることは困難である。この問題点を改善する方法として、特許文献1では、無水マレイン酸などをプロピレン系樹脂にグラフト結合させた酸変性プロピレン系樹脂を添加することによりプロピレン系樹脂と炭素繊維との界面接着性の改善が図られている。
熱可塑性樹脂をマトリックス樹脂として使用したCFRPにおいて、難燃性や耐薬品性が求められる用途には、プロピレン系樹脂は適していない。この観点から、汎用の熱可塑性樹脂である塩化ビニル樹脂は、難燃性、耐久性、耐油・耐薬品性に優れ、且つエチレン系樹脂やプロピレン系樹脂に比べてクリープ変形が極めて少なく、機械的強度も優れる材料であることが知られている。
しかしながら、塩化ビニル樹脂は、熱可塑性樹脂の中でも溶融粘度が大きく、且つ炭素繊維へ塩化ビニル樹脂を含浸させる際の加工温度が塩化ビニル樹脂の熱分解温度に近いため炭素繊維への含浸は困難を伴うことが推測され、その実用化例も見られない。実際、特許文献2に見られるように、塩化ビニル樹脂をエポキシ樹脂の副成分としての配合するに留まり、塩化ビニル樹脂をマトリックス樹脂としたCFPRは未だ実現されていないのが現状である。
特開2015−52102号公報 特開2017−95537号公報
ところで、塩化ビニル樹脂は塩素基を有する極性ポリマーであるため、非極性ポリマーであるプロピレン樹脂よりも炭素繊維との界面接着性は優れると推測される。一方で塩化ビニル樹脂は、成形加工時に熱分解や金型への付着が生じやすいため、熱安定剤や滑剤などの種々の添加剤が配合されることが一般的であり、他の熱可塑性樹脂と比べて添加剤の配合比率が高いといえる。
本発明者らは、塩化ビニル樹脂に配合される種々の添加剤が塩化ビニル樹脂と炭素繊維との界面接着性に悪影響を及ぼすことで、塩化ビニル系樹脂を炭素繊維基材に含浸させたCFRPにおいて界面接着性が低下し、その結果、曲げ強度等の力学特性が不十分になることを見出した。したがって、本発明の目的は、難燃性、耐久性、耐油・耐薬品性に優れるとともに、曲げ強度やクリープ特性等の機械特性にも優れるポリ塩化ビニル系炭素繊維強化複合材料を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討の結果、塩化ビニル系樹脂として、酸変性された塩化ビニル樹脂が特定量で含まれる塩化ビニル系樹脂を使用することにより、炭素繊維との界面接着性が良好になり、その結果、機械特性にも優れるポリ塩化ビニル系炭素繊維強化複合材料を実現できることを見出し、本発明に至った。即ち、本発明の要旨は、以下のとおりである。
[1] 少なくとも酸変性ポリ塩化ビニル(a)を含む塩化ビニル系樹脂組成物(A)と、炭素繊維基材(B)と、を有する炭素繊維強化複合材料であって、
前記酸変性ポリ塩化ビニル(a)の赤外吸収スペクトルにおいて、ポリ塩化ビニル由来のピーク(C−Cl伸縮、610cm-1)強度をI、酸変性由来のピーク(C=O伸縮、1730cm-1)強度をI、前記塩化ビニル系樹脂組成物(A)中の樹脂成分に対する前記酸変性ポリ塩化ビニル(a)の質量割合をM(質量%)とした場合に、下記式:
R=I/I×M/100
で表される酸変性割合Rが0.2〜2.0である、炭素繊維強化複合材料。
[2] 前記酸変性が無水マレイン酸変性である、[1]に記載の炭素繊維強化複合材料。
[3] 前記塩化ビニル系樹脂組成物(A)として、200℃、周波数10Hzでの複素粘度η(Pa・s)が、1≦η≦1500である、[1]又は[2]に記載の炭素繊維強化複合材料。
[4] 前記炭素繊維強化複合材料の繊維体積率(Vf)が50±3%のとき、三点曲げ試験の平均曲げ強度が300MPa以上である、[1]〜[3]の何れかに記載の炭素繊維強化複合材料。
[5] [1]〜[4]の何れかに記載の炭素繊維強化複合材料からなる、成形体。
本発明によれば、塩化ビニル系樹脂として、酸変性された塩化ビニル樹脂が特定量で含まれる塩化ビニル系樹脂を使用することにより、炭素繊維との界面接着性が良好になり、難燃性、耐久性、耐油・耐薬品性に優れるとともに、曲げ強度やクリープ特性等の機械特性にも優れるポリ塩化ビニル系炭素繊維強化複合材料を提供することができる。
<炭素繊維強化複合材料>
本発明による炭素繊維強化複合材料は、少なくとも酸変性ポリ塩化ビニル(a)を含む塩化ビニル系樹脂組成物(A)と炭素繊維基材(B)とを有するものである。以下、炭素繊維強化複合材料を構成する各要素について詳述する。
[塩化ビニル系樹脂組成物(A)]
本発明による炭素繊維強化複合材料に含まれる塩化ビニル系樹脂組成物(A)は、炭素繊維強化複合材料のマトリッス樹脂として機能するものである。本発明において、塩化ビニル系樹脂組成物(A)は少なくとも酸変性ポリ塩化ビニル(a)を含む。マトリッス樹脂として酸変性された塩化ビニル樹脂を特定量含む塩化ビニル系樹脂を使用することにより、塩化ビニル系樹脂に各種の添加剤が含まれる場合であっても、マトリックス樹脂と炭素繊維との界面接着性が向上し、難燃性、耐久性、耐油・耐薬品性に優れるとともに、曲げ強度やクリープ特性等の機械特性にも優れるポリ塩化ビニル系炭素繊維強化複合材料を実現できる。
本発明による炭素繊維強化複合材料に使用される塩化ビニル系樹脂組成物(A)は、酸変性ポリ塩化ビニル(a)を、下記式:
R=I/I×M/100
で表される酸変性割合Rが0.2〜2.0の範囲となるような割合で含むものである。
(式中、
は、酸変性ポリ塩化ビニル(a)の赤外吸収スペクトルにおいて、ポリ塩化ビニル由来のピーク(C−Cl伸縮、610cm-1)強度を表し、
は、酸変性ポリ塩化ビニル(a)の赤外吸収スペクトルにおいて、酸変性由来のピーク(C=O伸縮、1730cm-1)強度を表し、
Mは、塩化ビニル系樹脂組成物(A)中の樹脂成分に対する酸変性ポリ塩化ビニル(a)の質量割合(質量%)を表す。)
Rが0.2〜2.0の範囲であるような塩化ビニル系樹脂組成物(A)をマトリックス樹脂として使用することにより、難燃性、耐久性、耐油・耐薬品性等のポリ塩化ビニル系樹脂としての利点を損なうことなく、マトリックス樹脂と炭素繊維との界面接着性が向上し、曲げ強度やクリープ特性等の機械特性にも優れるポリ塩化ビニル系炭素繊維強化複合材料を実現できる。Rが0.2未満であるとマトリックス樹脂と炭素繊維との界面接着性の改善が不十分となる。一方、Rが2.0を超えると、難燃性、耐久性、耐油・耐薬品性等のポリ塩化ビニル系樹脂が本来有する特性が損なわれるとともに、粘度が高くなる傾向があり炭素繊維への含浸性も低下する。好ましいRの範囲は、0.5〜1.5である。なお、I及びIは、フーリエ変換赤外分光光度計(Nicolet iS50、Thermo SCIENTIFIC社製)を用いてATR方にて赤外吸収スペクトルを測定することにより求めることができる。
Rの範囲は、上記した酸変性ポリ塩化ビニル(a)における酸変性率(即ち、I/Iの値)によって調整してもよいし、塩化ビニル系樹脂組成物(A)に含まれる酸変性ポリ塩化ビニル(a)の量によって調整してもよい。
酸変性ポリ塩化ビニル(a)は、重合体鎖に結合したカルボン酸基を有するポリ塩化ビニルである。酸変性ポリ塩化ビニル(a)は、種々の方法で得ることができ、例えば、ポリ塩化ビニルに、カルボン酸基を有する単量体および/またはカルボン酸エステルを有する単量体をグラフト重合することにより得ることができる。酸変性ポリ塩化ビニル(a)を炭素繊維と組み合わせて用いることで、炭素繊維とマトリックス樹脂の界面接着性に優れ、炭素繊維の強度を成形品に効率良く反映させることができる。
カルボン酸基を有する単量体またはカルボン酸エステル基を有する単量体としては、例えば、エチレン系不飽和カルボン酸、エチレン系不飽和カルボン酸無水物、エチレン系不飽和カルボン酸エステル、カルボン酸基および/またはカルボン酸エステル基とオレフィン以外の不飽和ビニル基を有する化合物などが挙げられる。
エチレン系不飽和カルボン酸としては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマール酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸などが例示される。その無水物としては、例えば、ナジック酸TM(エンドシス−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸)、無水マレイン酸、無水シトラコン酸などが例示できる。
カルボン酸基および/またはカルボン酸エステル基とオレフィン以外の不飽和ビニル基を有する単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウロイル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類、ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、ラクトン変性ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート等の水酸基含有ビニル類、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有ビニル類、マレイン酸アミド等のアミド類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタアクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジヒドロキシエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノアルキル(メタ)アクリレート類等が挙げられる。これらの単量体は単独で用いることもできるし、また2種類以上のものを用いることもできるが、これらのなかでも、エチレン系不飽和カルボン酸の酸無水物類が好ましく、無水マレイン酸がより好ましい。
酸変性ポリ塩化ビニル(a)を製造する方法としては、特に限定されず、例えばポリ塩化ビニルと前記カルボン酸基を有する単量体および/またはカルボン酸エステルを有する単量体と有機過酸化物と溶融混練する方法や、ポリ塩化ビニルと前記カルボン酸基を有する単量体および/またはカルボン酸エステルを有する単量体をトルエンやキシレンなどの溶媒に溶解した混合溶液に、有機過酸化物を添加してグラフト重合する方法などが挙げられる。
酸変性ポリ塩化ビニル(a)を調製する際に使用されるポリ塩化ビニルは、−CH−CHCl−で表される基を有する全ての重合体を指し、塩化ビニルの単独重合体;塩化ビニル−エチレン・酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル・(メタ)アクリル酸共重合体、塩化ビニル・(メタ)アクリル酸メチル共重合体、塩化ビニル・(メタ)アクリル酸エチル共重合体、塩化ビニル・マレイン酸エステル共重合体、塩化ビニル・エチレン共重合体、塩化ビニル・プロピレン共重合体、塩化ビニル・スチレン共重合体、塩化ビニル・イソブチレン共重合体、塩化ビニル・塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル・スチレン・無水マレイン酸三元共重合体、塩化ビニル・スチレン・アクリロニトリル三元共重合体、塩化ビニル・ブタジエン共重合体、塩化ビニル・イソプレン共重合体、塩化ビニル・塩素化プロピレン共重合体、塩化ビニル・塩化ビニリデン・酢酸ビニル三元共重合体、塩化ビニル・アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル・各種ビニルエーテル共重合体等の塩化ビニルと塩化ビニルと共重合可能な他のモノマーとの共重合体;後塩素化ビニル共重合体等の塩化ビニル単独重合体や塩化ビニル系共重合体を改質したもの;さらには塩素化ポリエチレン等の構造上塩化ビニル樹脂と類似の塩素化ポリオレフィンを包含するが、これらに限定されない。
ポリ塩化ビニルの重合度は、特に制限されるものではないが、好ましい平均重合度は250〜1500であり、好ましくは400〜1200、さらに好ましくは400〜800である。上記範囲の平均重合度を有するポリ塩化ビニルを使用することにより、溶融混練し易く、ポリ塩化ビニルと有機過酸化物や無水マレイン酸との反応性が向上するとともに、得られる塩化ビニル系樹脂組成物に好ましい物性(たとえば強靭性)を付与することができる。
酸変性する際に使用される有機過酸化物の例としては、アセチルシクロヘキシルスルホニルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、ジクロロベンゾイルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ジ−tert−ブチルペルオキシド、ラウロイルペルオキシドなどが挙げられ、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
溶融混練により酸変性ポリ塩化ビニル(a)を製造する場合、溶融混練は、公知の混練機を用いることができ、例えば単軸押出機、2軸押出機、コニーダー、プラネタリーギアー押出機、プラスチケータ、ロール混練機、バンバリーミキサー等を使用して各成分の溶融混練を行うことができる。また、溶融混練を行う前に、各成分をヘンシェルミキサー、V型ミキサー、リボンブレンダー等の装置を用いて混合しておいてもよい。
溶融混練は、無酸素環境下で行われることが好ましい。なお、無酸素環境下とは、酸素が供給されない状態であることを意味するが、溶融混練時に全く酸素が存在しないことを意味するものではない。外部からの酸素供給を防ぐことにより、有機過酸化物の酸素によるラジカル失活を抑制することができる。外部からの酸素供給を防ぐ方法は限定されず、従来公知の方法を採用することができ、例えば、押出機を密閉してもよく、また窒素やアルゴン等の不活性ガスフロー下で溶融混練を行ってもよい。
溶融混練を行う際に、上記した成分に加えて、任意成分として外滑剤を添加してもよい。外滑剤は、成形加工時の溶融樹脂と金属面との滑り効果を上げる目的で使用される。外部滑剤としては特に限定されず、パラフィンワックス、酸化ポリエチレンワックス、エステルワックス、およびモンタン酸ワックス等の1種または2種以上を使用することができる。
外滑剤の添加量は、ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対して0.5〜3質量部であることが好ましく、0.5〜2質量部であることがより好ましい。所定量の外滑剤を添加することにより、ポリ塩化ビニルと無水マレイン酸との反応をより一層円滑にできるとともに、ポリ塩化ビニル系樹脂組成物の金属への付着を抑制できる。
上記した以外にも、ポリ塩化ビニル系樹脂に一般的に使用できる各種添加剤を添加してもよい。添加剤としては、内滑剤、加工助剤、衝撃改質剤、耐熱向上剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、顔料、帯電防止剤、可塑剤、難燃剤等の1種または2種以上を使用することができる。
内滑剤は、成形加工時の溶融樹脂の流動粘度を低下させ摩擦発熱を防止する目的で使用されるものであり、具体的には例えばブチルステアレート、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、エポキシ大豆油、グリセリンモノステアレート、ステアリン酸、ビスアミド等の1種または2種以上を使用することができる。
加工助剤としては、特に限定されるものではなく従来公知の加工助剤を使用することができ、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート等のアルキルメタクリレートの単独重合体または共重合体、アルキルメタクリレートと、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート等のアルキルアクリレートとの共重合体、アルキルメタクリレートと、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物との共重合体、アルキルメタクリレートと、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニルシアン化合物等との共重合体等が挙げられ、これらは1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのなかでも、重量平均分子量が10万〜200万のアルキルアクリレート−アルキルメタクリレート共重合体を好適に使用することができる。具体的には、具体的には、n−ブチルアクリレート−メチルメタクリレート共重合体、および2−エチルヘキシルアクリレート−メチルメタクリレート−ブチルメタクリレート共重合体等を好適に使用することができる。
衝撃改質剤としては、特に限定されるものではなく従来公知の衝撃改質剤を使用することができ、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、塩素化ポリエチレン、フッ素ゴム、スチレン−ブタジエン系共重合体ゴム、メタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン系共重合体、メタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン系グラフト共重合体、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン系共重合体ゴム、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン系グラフト共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体ゴム、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体ゴム、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体ゴム、エチレン−プロピレン共重合体ゴム、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体ゴム(EPDM)、シリコーン含有アクリル系ゴム、シリコーン/アクリル複合ゴム系グラフト共重合体、シリコーン系ゴム等が挙げられ、これらは1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
酸化防止剤としては、4,4’−ブチリデンビス−(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)等のフェノール系酸化防止剤、トリス(ミックスドモノおよびジ−ノニルフェニル)ホスファイト等のホスファイト系酸化防止剤、ジステアリルチオジプロピオネート等のチオエーテル系酸化防止剤等を挙げることができる。中でも、高温分解阻害機能が低い4,4’−ブチリデンビス−(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)等のフェノール系酸化防止剤が特に好ましい。
光安定剤や紫外線吸収剤としては、ヒンダードフェノール、サリチル酸エステル、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール、ヒンダードアミン系光安定剤等を挙げることができ、これらは1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
充填剤としては、タルク、重質炭酸カルシウム、沈降性炭酸カルシウム、膠質炭酸カルシウム等の炭酸塩、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化チタン、クレー、マイカ、ウォラストナイト、ゼオライト、シリカ、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、カーボンブラック、グラファイト、ガラスビーズ、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維等の無機質系のもののほか、ポリアミド等のような有機繊維も使用でき、これらは1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
顔料としては、有機顔料、無機顔料のいずれも使用することができ、有機顔料としては、アゾ系有機顔料、フタロシアニン系有機顔料、スレン系有機顔料、染料レーキ系有機顔料等が挙げられ、無機顔料としては、酸化物系無機顔料、クロム酸モリブデン系無機顔料、硫化物・セレン化物系無機顔料、フェロシアニン化物系無機顔料等が挙げられる。これらは1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
帯電防止剤としては、特に限定されるものではなく従来公知の帯電防止剤を使用することができ、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤等を使用することがきる。アニオン性界面活性剤としては、脂肪酸塩類、高級アルコール硫酸エステル塩類、液体脂肪油硫酸エステル塩類、脂肪族アミン、アミドの硫酸塩類、二塩基性脂肪酸エステルのスルホン塩類、脂肪酸アミドスルホン酸塩類、アルキルアリールスルホン酸塩類、ホルマリン縮合のナフタレンスルホン酸塩類およびこれらの混合物等を挙げることができる。カチオン性界面活性剤としては、脂肪族アミン塩類、第四級アンモニウム塩類、アルキルピリジウム塩およびこれらの混合物等を挙げることができる。非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエステル類、ポリオキシエチレンアルキルエステル類、ソルビタンアルキルエステル類、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル類、およびこれらの混合物等を挙げることができる。非イオン性界面活性剤と、アニオン性界面活性剤あるいはカチオン性界面活性剤との混合物でもよい。両性界面活性剤としては、イミダゾリン型、高級アルキルアミノ型(ベタイン型)、硫酸エステル、リン酸エステル型、スルホン酸型等を挙げることができる。これら帯電防止剤は1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
可塑剤としては、特に制限されるものではなく従来公知の可塑剤を用いることができ、例えばフタル酸エステル可塑剤、や非フタル酸系の可塑剤を用いることができる。フタル酸エステル可塑剤としては、フタル酸ジオクチル(DOP)等が挙げられる。また、非フタル酸系の可塑剤としては、トリメリット酸系化合物、リン酸系化合物、アジピン酸系化合物、クエン酸系化合物、エーテル系化合物、ポリエステル系化合物、大豆油系化合物、シクロヘキサンジカルボキシレート系化合物、テレフタル酸系化合物等が挙げられる。
難燃剤としては、例えば金属水酸化物、臭素系化合物、トリアジン環含有化合物、亜鉛化合物、リン系化合物、ハロゲン系難燃剤、シリコーン系難燃剤、イントメッセント系難燃剤、酸化アンチモン等が挙げられ、これらは1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明においては、上記したような各種添加剤が塩化ビニル系樹脂組成物(A)に含まれている場合であっても、Rが0.2〜2.0の範囲となるように酸変性ポリ塩化ビニル(a)を含有するため、塩化ビニル系樹脂組成物(A)と炭素繊維との界面接着性が向上し、難燃性、耐久性、耐油・耐薬品性といったポリ塩化ビニル樹脂の特性を損なうことなく、曲げ強度やクリープ特性等の機械特性にも優れるポリ塩化ビニル系炭素繊維強化複合材料を実現することができる。
塩化ビニル系樹脂組成物(A)は、後記する炭素繊維基材(B)への含浸性の観点から、200℃、周波数10Hzでの複素粘度η(Pa・s)が、1≦η≦1500であることが好ましく、10≦η≦1000であることがより好ましく、20≦η≦800であることが好ましい。なお、複素粘度ηは、塩化ビニル系樹脂組成物(A)からなる樹脂フィルムを、30(mm)×90(mm)のサイズに切り出し、約5gとなるように重さを量り、170℃、約3分間、熱プレス成形し、約1分間冷却することにより、厚み1mmの粘度測定用サンプルを作製し、粘弾性測定装置(MCR102 Anton Paar社製)を用いて、平行平板の半径を25mm、平行間距離1mm、温度200℃、角周波数10Hzの条件で測定した値をいうものとする。
[炭素繊維基材(B)]
本発明による炭素繊維強化複合材料を構成する炭素繊維基材(B)について説明する。
炭素繊維とは、炭素を含む材料で構成された繊維のことである。その他の繊維と併用した場合、単独で用いた場合も含む概念である。
炭素繊維基材とは、複数の炭素繊維からなる炭素繊維束を経糸束および緯糸束とする炭素繊維織物のことである。
炭素繊維は、短炭素繊維、長炭素繊維、連続炭素繊維を含む概念である。
短炭素繊維とは、1mm以下の繊維長を有する炭素繊維のことである。
長炭素繊維とは、5cm以下の繊維長を有する炭素繊維のことである。
連続炭素繊維とは、短繊維と長繊維、以外の炭素繊維のことである。
炭素繊維の材料としては特に限定されず、PAN(ポリアクリロニトリル)系炭素繊維およびピッチ系炭素繊維などの炭素繊維であれば良く、その他の繊維;スチール繊維などの金属繊維;ガラス繊維、セラミックス繊維、ボロン繊維などの無機繊維;ならびに、アラミド、ポリエステル、ポリエチレン、ナイロン、ビニロン、ポリアセタール、ポリパラフェニレンベンズオキサゾール、高強度ポリプロピレンなどの有機繊維;ケナフ、麻などの天然繊維と複数種を組み合わされて使用されてよい。比強度の観点からは、炭素繊維のみから構成されることが好ましい。
炭素繊維としては、短炭素繊維、長炭素繊維、連続炭素繊維を適宜用いることができるが、得られるCFRPの機械物性の観点から連続炭素繊維が好ましい。
炭素繊維の形態としては連続繊維であれば特に限定されず、例えば、トウ、トウの方向を一方向に引き揃え横糸補助糸で保持した形態、繊維を経緯にして織物とした形態(クロス);繊維の方向を一方向に引き揃えた複数の繊維シートを、それぞれ繊維の方向が異なるように重ね補助糸でステッチして留めたマルチアキシャルワープニットの形態などが挙げられる。炭素繊維を上記形態に基づく各製造方法で製造することで、炭素繊維基材(B)を得ることができる。
各炭素繊維は、一般的に単繊維であり、また、炭素繊維は複数集まって炭素繊維束を構成する。各炭素繊維束を構成している炭素繊維の本数は、1000〜50000本であることが好ましく、2000〜40000本であることがより好ましく、5000〜25000本であることがさらに好ましい。
フィラメントの繊維径は3μm以上であることが好ましく、また、12μm以下であることが好ましい。繊維径が3μm以上であれば十分な強度が得られ、例えばフィラメントが、各種加工プロセスにおいて、ロールやスプール等の表面で横移動を起こす際に、切断したり毛羽だまりが生じたりすることを抑制できる。上限については、炭素繊維の製造が容易であるという理由から、通常12μm程度である。
複数の炭素繊維束は、特に限定されないが、シート状とされることが好ましい。シート状とされた炭素繊維束の目付は、例えば100g/m以上600g/m以下が好ましく、150g/m以上500g/m以下がより好ましい。目付が前記下限値以上であることは、得られたCFRPシートを積層などさせて二次加工する際に効率的である点で好ましく、前記上限値以下であることは、含浸性を得やすいなどの点で好ましい。
炭素繊維基材(B)としては、樹脂の含浸を容易にする目的で、予め開繊処理されている炭素繊維束(以下、開繊炭素繊維束ということがある)を用いることが好ましい。開繊工程としては特に限定されるものではなく、例えばスペーサ粒子を含ませる方法、丸棒で繊維をしごく方法、気流を用いる方法、超音波等で繊維を振動させる方法等を挙げることができる。好ましくは、スペーサ粒子を含ませる方法であり、このように繊維間距離を広げておくことで、製造段階で炭素繊維に高い張力が付与されても、繊維間の距離が予め広くされているので、樹脂の含浸が容易になる。また、繊維に張力が付与されても、繊維間距離が狭くなりにくい。
スペーサ粒子は、各繊維束において炭素繊維間に入り込み、それにより、炭素繊維束を開繊させる。炭素繊維間に入り込んだスペーサ粒子は、炭素繊維間を架橋させるとよい。ここで、「架橋」するとは、炭素繊維間に入り込んだスペーサ粒子が少なくとも2つの炭素繊維を架け渡すように配置される構造を有することを意味する。またスペーサ粒子は、粒子表面に存在する炭素同素体を介して炭素繊維に接着されるとよい。炭素繊維が炭素繊維間を架橋し、また、スペーサ粒子が炭素繊維に接着することで、繊維束の開繊状態をより強固に保持しやすくなる。
スペーサ粒子は特に限定されないが、例えば、炭素同素体を含んでもよい。スペーサ粒子において、炭素同素体は、例えば、無定形炭素、黒鉛、ダイヤモンドなどが挙げられる。無定形炭素としてはアモルファスカーボンが挙げられる。これらの中では、無定形炭素が好ましく、アモルファスカーボンがより好ましい。
ここで、炭素同素体は、熱硬化性樹脂の炭素由来であることが好ましく、すなわち、炭素同素体は、熱硬化性樹脂を炭化することで得られることが好ましい。熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン、オキサジン系樹脂などが挙げられ、低温での炭化処理によって、強固なアモルファスカーボンの皮膜を形成できる観点から、オキサジン系樹脂が好ましい。また、オキサジン系樹脂としては、例えば、ベンゾオキサジン樹脂、ナフトキサジン樹脂などが挙げられる。これらの中では、より低温で炭化しやすい点からナフトキサジン樹脂が好ましく、本発明のCFRP製造時の温度および圧力の条件下であっても、過度に軟化しにくい。このため、繊維間距離が十分に確保され、樹脂の含浸性がより一層高くなる。
スペーサ粒子の平均粒子径は、1〜20μmであることが好ましい。この範囲の大きさのスペーサ粒子を使用することにより、スペーサ粒子を炭素繊維間に入り込ませやすくなるとともに、炭素繊維束をより広く開繊させることができる。スペーサ粒子のより好ましい平均粒子径は2〜20μmであり、特に好ましくは4〜15μmである。
開繊処理した炭素繊維束におけるスペーサ粒子の合計付着量は、開繊炭素繊維束基準で0.5〜20質量%が好ましく、1〜10質量%がより好ましい。付着量を下限値以上とすることで、炭素繊維束を適切に開繊できる。また、付着量を上限値以下とすることで、開繊炭素繊維束が必要以上にスペーサ粒子を含有し、機械物性が低下することが防止される。
[炭素繊維強化複合材料の製造方法]
本発明による炭素繊維強化複合材料は、一例として、塩化ビニル系樹脂組成物(A)を炭素繊維基材(B)に含浸させることにより製造することができる。炭素繊維基材(B)としては、上記で説明した通りであり、例えば、適切な炭素繊維の材料、形態、目付量を選択することができる。また、市販の炭素繊維束を用いて所望の組織となるような織布を作製してもよい。
炭素繊維基材としては、炭素繊維束が開繊されているものを使用することが好ましい。上記したような炭素繊維表面にスペーサ粒子を備える炭素繊維束から構成された炭素繊維織物は、物理的に開繊されたものではないことから、繊維強化複合材の意匠性の悪化を抑制することができ、かつスペーサ粒子によって炭素繊維束が十分に開繊されていることから、塩化ビニル系樹脂組成物(A)の含浸性を向上させることができると考えられる。
塩化ビニル系樹脂組成物(A)を炭素繊維基材(B)に含浸させる手法としては、例えば、開繊炭素繊維束から構成される炭素繊維基材(B)に、塩化ビニル系樹脂組成物(A)からなるフィルムを重ね合わせ熱プレス成形したり、炭素繊維基材(B)上に塩化ビニル系樹脂組成物(A)の溶融押出成形を行ったりすることにより、塩化ビニル系樹脂組成物(A)を炭素繊維基材(B)に含浸することができる。炭素繊維強化複合材料は、塩化ビニル系樹脂組成物(A)を含浸した炭素繊維基材(B)を複数枚重ね合わせてもよく、この際、各炭素繊維織物の組織方向が一定の角度でずれるように該炭素繊維基材(B)を重ね合わせることにより、より一層機械強度に優れる炭素繊維強化複合材料を得ることができる。
熱プレスには、押出成形やプレス成型を用いることができ、成形型を使用することにより、所望形状の炭素繊維強化複合材料を得ることができる。熱プレス成型を行う際の温度は、使用する塩化ビニル系樹脂組成物(A)が軟化ないし溶融する温度以上で行うことができる。
本発明による炭素繊維強化複合材料は、良好な曲げ強度を有するものである。例えば、炭素繊維強化複合材料の繊維体積率(Vf)が50±3%のとき、三点曲げ試験の曲げ強度は300MPa以上であることが好ましく、400MPa以上であることがより好ましく、500MPa以上であることがさらに好ましい。曲げ強度が上記下限値以上であれば、航空機構造部材、風車のブレード、自動車外板等の高強度が要求される用途において好適に使用することができる。なお、本発明において、曲げ強度は、JIS K 7074に準拠した三点曲げ試験により測定される値を意味し、長さ(l)40±1mm、幅(b)15±0.2mm、厚さ(h)0.21mm≦h≦0.24mmのサイズの試験片について、支点間距離(L)は40×hmmとして、測定した値(MPa)である。また、曲げ試験の治具圧子の半径は5mmで、圧子の幅は2mmである。
また、繊維体積率(Vf)は、下記式:
Vf(%)=炭素繊維の厚み(mm)/炭素繊維強化複合材料の厚み(mm)×100
により算出される値を意味する。
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、これらの例により本発明が限定されるものではない。
[酸変性ポリ塩化ビニルの調製]
下記の各成分を配合した配合粉63gを、ラボプラストミル(4C150、東洋精機株式会社製)を用いて170℃で10分間加熱混練することにより酸無水物付加成形体を得た。次いで得られた成形体を真空乾燥器で130℃、1時間加熱・脱気させることによって、成形体から未反応の無水マレイン酸を除去し、酸変性ポリ塩化ビニル1を得た。
・ポリ塩化ビニル:SL−P40 100質量部
(重合度400のポリ塩化ビニル、徳山積水株式会社製)
・熱安定剤:オクチル錫マレート 10質量部
(TVS#8105、日東化成株式会社製)
・無水マレイン酸(特級、和光純薬社製) 50質量部
・有機過酸化物:ジアルキルパーオキサイドA 1質量部
(Perkadox BC−FF、170℃半減期2.5分、化薬アクゾ社製)
・外滑剤:
モンタン酸エステル(Wax−OP、クラリアント社製) 1質量部
酸化ポリエチレン(AC316A、Honeywell社製) 1質量部
上記のようにして得られた酸変性ポリ塩化ビニル1をテトラヒドロフラン(以下、THFと称す)に10質量%となるように溶解させた。続いて、THF溶液1mlをエタノール10mlに滴下して樹脂を再沈殿させて1時間エタノール下で攪拌し、その後、吸引ろ過により固形分を回収し、60℃にて24時間乾燥することにより、IR測定用サンプルを作製した。
続いて、IR測定用サンプルについて、フーリエ変換赤外分光光度計(Nicolet iS50、Thermo SCIENTIFIC社製)を用いてATR方にて赤外吸収スペクトルを測定したところ、マレイン酸由来のピーク(1730cm−1)が存在することを確認した。ポリ塩化ビニル由来のピーク(C−Cl伸縮、610cm-1)強度をI、酸変性由来のピーク(C=O伸縮、1730cm-1)強度をIとした場合のI/Iは5.64であった。
[塩化ビニル樹脂フィルムの作製]
ポリ塩化ビニル(SL−P40、重合度400のポリ塩化ビニル、徳山積水株式会社製)を溶液濃度約10質量%になるようにTHFへ溶解させた。続いて、THF溶液に、ポリ塩化ビニル100質量部に対して5質量部となるように酸変性ポリ塩化ビニル1を加え、添加剤として、熱安定剤(オクチル錫マレート、TVS♯8105、日東化成株式会社製)2質量部加え、十分撹拌させて、塩化ビニル系樹脂組成物(A)を得た。
得られた塩化ビニル系樹脂組成物(A)をガラス板上にガラス棒を用いて溶液を塗布し、静置し溶媒を揮発させて、樹脂フィルムを得た。得られた樹脂フィルムをガラス板から剥離させた後、さらに60℃の巡風式オーブンにて約3時間乾燥させて、CFRP作成用の樹脂フィルムを得た。
[炭素繊維基材の作製]
1,5−ジヒドロキシナフタレン10質量部、40質量%メチルアミン水溶液4質量部、およびホルマリン(ホルムアルデヒドの含有量:37質量%)8質量部からなるモノマーと、溶媒としてエタノール水(エタノールの含有量:50質量%)800質量部とを均一に混合して、モノマーを溶解してなるモノマー溶液を作製した。次に上記モノマー溶液にジビニルベンゼン架橋重合体からなる粒子(積水化学工業株式会社社製、商品名「ミクロパールSP」、平均粒径10μm)を10質量部添加し、開繊含浸液を作製した。
続いて、PAN系炭素繊維束から構成される炭素繊維織物(炭素繊維数:3000本、炭素繊維の平均径:7μm、目付:200g/m2、厚み:0.19mm、平織)を用意した。当該炭素繊維織物を上記の開繊含浸液に浸漬した後に引き上げ、その後、200℃で2分間加熱した。この加熱によって、ナフトキサジン樹脂の重合反応と、炭化が生じ、ナフトキサジン樹脂由来のアモルファスカーボンが生成し、開繊炭素繊維束の織物が得られた。開繊炭素繊維束における有機粒子および炭素同素体の合計付着量は、1質量%であった。この開繊炭素繊維束を炭素繊維基材とした。
[実施例1]
上記のようにして得られた炭素繊維基材を、上記樹脂フィルム2枚で上下より挟み込み、200℃にて0〜6MPaへ段階的に加圧し、合計約10分間プレスすることによりCFRPを得た。得られたCFRPを物性評価用のサンプル「実−1」とした。
[実施例2]
塩化ビニル樹脂フィルムの作製において、酸変性ポリ塩化ビニル1を10質量部へ変更した以外は、実施例1と同様にしてCFRPを得た。得られたCFRPを物性評価用のサンプル「実−2」とした。
[実施例3]
塩化ビニル樹脂フィルムの作製において、酸変性ポリ塩化ビニル1を20質量部へ変更した以外は、実施例1と同様にしてCFRPを得た。得られたCFRPを物性評価用のサンプル「実−3」とした。
[実施例4]
塩化ビニル樹脂フィルムの作製において、酸変性ポリ塩化ビニル1を30質量部へ変更した以外は、実施例1と同様にしてCFRPを得た。得られたCFRPを物性評価用のサンプル「実−4」とした。
[実施例5]
塩化ビニル樹脂フィルムの作製において、酸変性ポリ塩化ビニル1を32質量部へ変更した以外は、実施例1と同様にしてCFRPを得た。得られたCFRPを物性評価用のサンプル「実−5」とした。
[実施例6]
塩化ビニル樹脂フィルムの作製において、酸変性ポリ塩化ビニル1を35質量部へ変更した以外は、実施例1と同様にしてCFRPを得た。得られたCFRPを物性評価用のサンプル「実−6」とした。
[比較例1]
塩化ビニル樹脂フィルムの作製において、酸変性ポリ塩化ビニル1を添加しなかった以外は実施例1と同様にしてCFRPを得た。得られたCFRPを物性評価用のサンプル「比−1」とした。
[比較例2]
塩化ビニル樹脂フィルムの作製において、塩化ビニル樹脂を使用せずに酸変性ポリ塩化ビニル1を100質量部使用した以外は、実施例1と同様にしてCFRPを得た。得られたCFRPを物性評価用のサンプル「比−2」とした。
[比較例3]
塩化ビニル樹脂フィルムの作製において、酸変性ポリ塩化ビニル1を50質量部へ変更した以外は、実施例1と同様にしてCFRPを得た。得られたCFRPを物性評価用のサンプル「比−3」とした。
[複素粘度ηの測定]
先ず、実施例1〜6及び比較例1〜3で使用した各樹脂シートを30(mm)×90(mm)のサイズに切り出し、約5gとなるように重さを量り、170℃、約3分間、熱プレス成形し、約1分間冷却することにより、厚み1mmの粘度測定用サンプルを作製した。
各粘度測定用サンプルを粘弾性測定装置(MCR102 Anton Paar社製)を使用し、平行平板の半径を25mm、平行間距離1mm、温度200℃、角周波数10Hzの条件において、複素粘度ηの測定を行った。測定結果は下記表1に示されるとおりであった。
[曲げ強度の測定]
実施例1〜6及び比較例1〜3で得られた各CFRPを、長さ(l)40±1mm、幅(b)15±0.2mm、厚さ(h)0.21mm≦h≦0.24mmのサイズに切り出した測定用サンプルを、JIS K 7074に準拠して、試験機(SHIMADZU製、AUTOGRAPH AGS−H)を用い、3点曲げ方式にて曲げ強度(MPa)を測定した。
次いで、各CFRPの繊維体積率(Vf)を算出し、Vfが50±3%の範囲にあるサンプルの曲げ強度をN=3以上測定し、測定値から直線近似を行い、Vf50%の時の曲げ強度を算出した。曲げ強度の評価基準を以下のとおりとした。
○:400MPa以上
△:350MPa以上、400MPa未満
×:350MPa未満
評価結果は表1に示されるとおりであった。
Figure 2021046536
表1の評価結果からも明らかなように、酸変性割合Rが0.2〜2.0の範囲内であるポリ塩化ビニル組成物を使用したCFRP(実施例1〜6)では、Rが0.2〜2.0の範囲外であるポリ塩化ビニル組成物を使用したCFRP(比較例1〜3)と比較して、曲げ強度等の機械特性が優れていることがわかる。

Claims (5)

  1. 少なくとも酸変性ポリ塩化ビニル(a)を含む塩化ビニル系樹脂組成物(A)と、炭素繊維基材(B)と、を有する炭素繊維強化複合材料であって、
    前記酸変性ポリ塩化ビニル(a)の赤外吸収スペクトルにおいて、ポリ塩化ビニル由来のピーク(C−Cl伸縮、610cm-1)強度をI、酸変性由来のピーク(C=O伸縮、1730cm-1)強度をI、前記塩化ビニル系樹脂組成物(A)中の樹脂成分に対する前記酸変性ポリ塩化ビニル(a)の質量割合をM(質量%)とした場合に、下記式:
    R=I/I×M/100
    で表される酸変性割合Rが0.2〜2.0である、炭素繊維強化複合材料。
  2. 前記酸変性が無水マレイン酸変性である、請求項1に記載の炭素繊維強化複合材料。
  3. 前記塩化ビニル系樹脂組成物(A)として、200℃、周波数10Hzでの複素粘度η(Pa・s)が、1≦η≦1500である、請求項1又は2に記載の炭素繊維強化複合材料。
  4. 前記炭素繊維強化複合材料の繊維体積率(Vf)が50±3%のとき、三点曲げ試験の平均曲げ強度が300MPa以上である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の炭素繊維強化複合材料。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の炭素繊維強化複合材料からなる、成形体。
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