JP2021138906A - ポリ塩化ビニル系炭素繊維強化複合材料 - Google Patents

ポリ塩化ビニル系炭素繊維強化複合材料 Download PDF

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Abstract

【課題】含浸性および炭素繊維との界面接着性に優れ、曲げ強度および耐熱性が良好な、塩化ビニル系樹脂をマトリクス樹脂とする炭素繊維強化複合材料を提供する。【解決手段】下記成分(A)と下記成分(B)および/または成分(C)とを含むマトリックス樹脂が炭素繊維基材に含浸されてなる炭素繊維強化複合材料。成分(A):重合度が600以下の塩化ビニル系樹脂を含む樹脂組成物成分(B):重合度が600以上の塩化ビニル系樹脂粒子成分(C):重合度が400以上1000未満の塩素化塩ビ系樹脂粒子【選択図】なし

Description

本発明は、炭素繊維基材に塩化ビニル系樹脂組成物を含浸させた炭素繊維強化複合材料に関する。
炭素繊維とマトリックス樹脂とからなる炭素繊維強化複合材料(以下、CFRPと略すことがある)は、比強度、比弾性率が高く、力学特性に優れ、耐候性、耐薬品性などの高機能特性を有する。そのため、CFRPは、航空機構造部材、風車のブレード、自動車外板や、一般産業用途においても注目され、その需要は年々高まりつつある。
現在、市場で採用されているCFRPに用いられるマトリックス樹脂の大半はエポキシ等の熱硬化性樹脂である。これは、熱硬化性樹脂が低粘度であり、炭素繊維への含浸性が高いためである。その反面、熱硬化性樹脂をマトリックス樹脂とするCFRPは、加工性やリサイクル性が低いといった課題を有している。そのため近年では、耐衝撃性の改善や高生産性への要求やリサイクル化への関心から、ポリオレフィンやポリアミド系ポリマーアロイなどの熱可塑性樹脂をマトリックス樹脂として使用することが注目されている。
また、炭素繊維の優れた特性である軽量化と機械的強度を活かすためには、炭素繊維がマトリックス樹脂中に均一分散していることが重要であり、含浸性向上の観点から含浸時の樹脂粘度が低いことが必要である。しかしながら、一般に熱可塑性樹脂は高温条件では熱分解が進むことがあり、さらに溶融状態でも高粘度のものが多く、樹脂の含浸が不足するなどの課題を生じ易い。
一方で、炭素繊維の優れた機械特性を活かすには、炭素繊維とマトリックス樹脂の界面接着性が優れることも重要である。例えばプロピレン系樹脂においては、炭素繊維に対する界面接着性が悪く、単にプロピレン系樹脂と炭素繊維を溶融混練しても期待する機械物性を得ることは困難である。この問題点を改善する方法として、無水マレイン酸などをプロピレン系樹脂にグラフト結合させた変性プロピレン系樹脂が開発され、これを添加することによりプロピレン系樹脂と炭素繊維との界面接着性の改善が図られている。
しかしながら、熱可塑性樹脂であるポリオレフィンやポリアミド系ポリマーアロイなどをマトリックス樹脂とするCFRPが実用化されているものの、依然として、マトリックス樹脂に依存する耐薬品性や難燃性の性能で劣ることが課題となる場合があった。
ところで、汎用の熱可塑性樹脂である塩化ビニル樹脂は、難燃性、耐久性、耐油・耐薬品性に優れ、且つエチレン系樹脂やプロピレン系樹脂に比べてクリープ変形が極めて少なく、機械的強度も優れる材料であることが知られている。しかしながら、塩化ビニル樹脂は、熱可塑性樹脂の中でも溶融粘度が大きく、且つ成形加工温度、すなわちCFRPの製造に関しては、炭素繊維へ塩化ビニル樹脂を含浸させる際の加工温度が塩化ビニル樹脂の熱分解温度に近いため炭素繊維への含浸は困難を伴うことが予想され、その実用化例も未だ見られない。実際、特許文献1では、塩化ビニル樹脂は副成分としての配合量に留まり、且つ塩化ビニル樹脂を溶解する熱硬化性樹脂との混合物として取り扱われるもののみであった。
塩化ビニル樹脂の溶融粘度を下げるためには、重合度の低い塩化ビニル樹脂を用いることが一つの解決手段として挙げられる。しかしながら、塩化ビニル樹脂は重合度が500程度を下回ると、機械物性が劣ることが知られており、一般的な射出成形品では重合度は600以上のものが、押出成形では800以上のものが用いられている。従って、低重合度の塩化ビニル樹脂を用いたCFRPでは機械物性に課題が生じる可能性が懸念される。
また、塩化ビニル樹脂の耐熱性、難燃性、低煙性を向上させる目的として、後塩素化させた塩素化塩化ビニル樹脂(CPVC)が知られているが、塩素化塩化ビニル樹脂は溶融粘度が塩化ビニル樹脂よりも高いため、炭素繊維への含浸はより困難を伴うと考えられる。
一方、塩化ビニル樹脂を用いた繊維強化プラスチック(FRP)の製造法としては、上記のように高温溶融状態の樹脂を用いることにより含浸させる他の手段として、溶媒で溶解させて含浸させる溶液含浸法や、樹脂微粒子を溶融させること無く気中で含浸させる粉体含浸法(特許文献2)、コロイド分散系で含浸させるコロイド含浸法(特許文献3)が知られている。
塩化ビニル樹脂は、一般的に水懸濁重合または乳化重合にて重合され0.1〜100μm程度の微粒子として得られる。従って、粉体含浸法やコロイド含浸法が手段となり得る。しかしながら、ガラス繊維や亜麻繊維、バサルト繊維での適用は見られるものの、炭素繊維に関しては報告例が見られない。
特開2017−95537号公報 特開平10−58448号公報 特開2017−193710号公報
上記のように、塩化ビニル系樹脂組成物においては、溶融粘度が高く、熱安定性が低い。そのため、塩化ビニル系樹脂組成物は、炭素繊維基材に含浸し難く、複合化が困難と推測される。なかでも高重合度の塩化ビニル樹脂や、塩素化塩化ビニル樹脂は炭素繊維基材への含浸が困難であると推測されるが、機械物性、耐熱性、難燃性、低煙性の向上が期待されるため、それら樹脂をマトリックス樹脂として含むCFRPが求められている。
したがって、本発明の目的は、含浸性および炭素繊維との界面接着性に優れ、曲げ強度および耐熱性が良好な、塩化ビニル系樹脂をマトリクス樹脂とする炭素繊維強化複合材料を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討の結果、所定の重合度を有する塩化ビニル系樹脂粒子および塩素化塩化ビニル系樹脂粒子を接触させた炭素繊維基材に、所定の重合度を有する塩化ビニル系樹脂を含浸させることによって、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明に至った。即ち、本発明の要旨は、以下のとおりである。
[1] 下記成分(A)と、下記成分(B)および/または成分(C)と、
を含むマトリックス樹脂が炭素繊維基材に含浸されてなる炭素繊維強化複合材料。
成分(A):重合度が600以下の塩化ビニル系樹脂を含む樹脂組成物
成分(B):重合度が600以上の塩化ビニル系樹脂粒子
成分(C):重合度が400以上1000未満の塩素化塩ビ系樹脂粒子
[2] マトリックス樹脂100質量部に対して0質量部超の前記成分(B)および/または前記成分(C)を接触させた炭素繊維基材に、前記成分(A)が含浸されてなる、[1]に記載の炭素繊維強化複合材料。
[3] 前記成分(B)および前記成分(C)の各粒子の平均粒子径が2μm以下である、[1]または[2]に記載の炭素繊維強化複合材料。
[4] [1]〜[3]のいずれかに記載の炭素繊維強化複合材料を製造する方法であって、
炭素繊維基材に、マトリックス樹脂100質量部に対して0質量部超の前記成分(B)および/または前記成分(C)を含むコロイド分散液を接触させる工程と、
前記コロイド分散液が接触した炭素繊維基材に、前記成分(A)を含浸させる工程と、
を含む、炭素繊維強化複合材料の製造方法。
[5] [1]〜[3]のいずれかに記載の炭素繊維強化複合材料を製造する方法であって、
炭素繊維基材に、マトリックス樹脂100質量部に対して0質量部超の前記成分(B)および/または前記成分(C)を接触させる工程と、
前記成分(B)および/または前記成分(C)が接触した炭素繊維基材に、前記成分(A)を含浸させる工程と、
を含む、炭素繊維強化複合材料の製造方法。
[6] [1]〜[3]のいずれかに記載の炭素繊維強化複合材料からなる、成形体。
本発明によれば、塩化ビニル系樹脂をマトリクス樹脂とするポリ塩化ビニル系炭素繊維強化複合材料において、所定の重合度を有する塩化ビニル系樹脂粒子もしくは塩素化塩化ビニル系樹脂粒子の何れかまたはその両方を接触させた炭素繊維基材に、所定の重合度を有する塩化ビニル系樹脂を含浸させることによって、炭素繊維との界面接着性および含浸性が良好になり、難燃性、耐久性、耐油・耐薬品性に優れるとともに、曲げ強度やクリープ特性等の機械特性にも優れるポリ塩化ビニル系炭素繊維強化複合材料を提供することができる。
<炭素繊維強化複合材料>
本発明による炭素繊維強化複合材料は、マトリックス樹脂が炭素繊維基材に含浸されたものであり、マトリクス樹脂として、成分(A):重合度が600以下の塩化ビニル系樹脂を含む樹脂組成物、成分(B):重合度が600以上の塩化ビニル系樹脂粒子および/または成分(C):重合度が400以上1000未満の塩素化塩ビ系樹脂粒子を含む。以下、炭素繊維強化複合材料を構成する各要素について詳述する。
<成分(A):塩化ビニル系樹脂組成物>
本発明において、成分(A)の塩化ビニル系樹脂組成物は炭素繊維強化複合材料のマトリクス樹脂として機能するものである。成分(A)の塩化ビニル系樹脂組成物は、主成分として塩化ビニル系樹脂を含む。本発明において使用される塩化ビニル系樹脂は特に限定されるものではないが重合度が600以下であることが必要である。重合度が600を超える塩化ビニル系樹脂では樹脂の溶融粘度が高く炭素繊維基材に含浸しにくい。炭素繊維基材への含浸性と得られる成形品の機械物性を両立する観点から、好ましい重合度の範囲は300〜500である。なお、本明細書において「重合度」とは平均重合度を意味するものとする。
本発明の成分(A)として使用できる塩化ビニル系樹脂といては、は特に限定されず、塩化ビニル単量体の単独重合体の他、例えば、(1)塩化ビニル単量体と塩化ビニル単量体以外の重合性単量体との共重合体、(2)塩化ビニル系樹脂以外の重合体に塩化ビニル単量体または塩化ビニル系樹脂をグラフトさせたグラフト共重合体、(3)塩化ビニル系樹脂以外の重合体に塩化ビニル単量体または塩化ビニル系樹脂を混合したポリマーアロイ等が挙げられる。さらに、これらの塩化ビニル系樹脂を塩素化した塩素化塩化ビニル系樹脂も挙げられる。これら塩化ビニル系樹脂は単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
(1)塩化ビニル単量体と塩化ビニル単量体以外の重合性単量体との共重合体における重合性単量体としては特に限定されないが、炭素数2以上16以下のα−オレフィン(例えば、エチレン、プロピレン、およびブチレン);炭素数2以上16以下の脂肪族カルボン酸のビニルエステル(例えば、酢酸ビニルおよびプロピオン酸ビニル);炭素数2以上16以下のアルキルビニルエーテル(例えば、ブチルビニルエーテルおよびセチルビニルエーテル);炭素数1以上16以下のアルキル(メタ)アクリレート(例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレートおよびブチルアクリレート);アリール(メタ)アクリレート(例えば、フェニルメタクリレート);芳香族ビニル(例えば、スチレンおよびα−置換スチレン(例えば、α−メチルスチレン));ハロゲン化ビニル(例えば、塩化ビニリデンおよびフッ化ビニリデン);およびN−置換マレイミド(N−フェニルマレイミドおよびN−シクロヘキシルマレイミド)が挙げられる。
(2)塩化ビニル単量体または塩化ビニル系樹脂とともにグラフト共重合体を与える重合体としては、塩化ビニルモノマーにグラフト重合可能な重合体であれば単独重合体および共重合体を問わず、いかなるものも含まれる。例えば、α−オレフィンとビニルエステルとの共重合体(例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体);α−オレフィンとビニルエステルと一酸化炭素との共重合体(例えば、エチレン−酢酸ビニル−一酸化炭素共重合体);α−オレフィンとアルキル(メタ)アクリレートとの共重合体(例えば、エチレン−メチルメタクリレート共重合体およびエチレン−エチルアクリレート共重合体);α−オレフィンとアルキル(メタ)アクリレートと一酸化炭素との共重合体(例えば、エチレン−ブチルアクリレート−一酸化炭素共重合体);異なる2種以上のα−オレフィンの共重合体(例えば、エチレン−プロピレン共重合体);不飽和ニトリルとジエンとの共重合体(例えば、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体);ポリウレタン;および塩素化ポリオレフィン(例えば、塩素化ポリエチレンおよび塩素化ポリプロピレン)が挙げられる。
(3)塩化ビニル系樹脂とのポリマーアロイ(相互侵入高分子網目構造体を含む)として用いられる他の重合体としては、特に限定されない。例えば、熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ビニルエステル樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、ポリイミド樹脂、オキセタン樹脂、マレイミド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂などが挙げられる。また、熱可塑性樹脂としては、例えば、塩素化塩ビ、塩素化ポリエチレン等の塩素化樹脂、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリアミド66、ポリアミド6、ポリアミド12等の脂肪族ポリアミド系樹脂、酸成分として芳香族成分を有する半芳香族ポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)やポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)等の芳香族ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスチレン系樹脂(ポリスチレン樹脂、AS樹脂、ABS樹脂等)、あるいは、ポリ乳酸系などの脂肪族ポリエステル系樹脂などが挙げられる。
ポリマーアロイにした場合、マトリックス樹脂全体に対する塩化ビニル系樹脂の配合比率は1〜95質量%であればよく、5〜80質量%が好ましく、10〜70質量%が更に好ましい。塩化ビニル系樹脂の配合割合が上記範囲内であることにより、耐熱性、強度、耐衝撃性、難燃性の向上等、マトリックス樹脂の性能に応じた効果が得られる。
通常の塩化ビニル系樹脂よりもさらに耐熱性や難燃性の向上を期待する場合には、塩素化塩化ビニル系樹脂を主成分とするものを選択すると良い。
成分(A)の塩化ビニル系樹脂組成物は、上記した塩化ビニル系樹脂を主成分として含むものであるが、塩化ビニル系樹脂に一般的に配合される添加剤が含まれていてもよい。成分(A)に加えられる各種添加剤としては、熱安定剤、滑剤、加工助剤、衝撃改質剤、耐熱向上剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、光安定剤、充填剤、顔料、難燃剤、および可塑剤等が挙げられる。添加剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
熱安定剤としては特に限定されず、熱安定剤および熱安定化助剤などが挙げられる。前記熱安定剤としては特に限定されず、有機錫系安定剤、鉛系安定剤、カルシウム−亜鉛系安定剤、バリウム−亜鉛系安定剤、およびバリウム−カドミウム系安定剤等が挙げられ、有機系安定剤が好適に用いられる。
有機錫系安定剤としては、ジブチル錫メルカプト、ジオクチル錫メルカプト、ジメチル錫メルカプト、ジブチル錫メルカプト、ジブチル錫マレート、ジブチル錫マレートポリマー、ジオクチル錫マレート、ジオクチル錫マレートポリマー、ジブチル錫ラウレート、およびジブチル錫ラウレートポリマー等が挙げられる。上記安定剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
熱安定化助剤としては特に限定されず、例えば、エポキシ化大豆油、りん酸エステル、ポリオール、ハイドロタルサイト、およびゼオライト等が挙げられる。上記熱安定化助剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
滑剤としては、内部滑剤および外部滑剤が挙げられる。前記内部滑剤は、成形加工時の溶融樹脂の流動粘度を下げ、摩擦発熱を防止する目的で使用される。前記内部滑剤としては特に限定されず、ブチルステアレート、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、エポキシ大豆油、グリセリンモノステアレート、ステアリン酸、およびビスアミド等が挙げられる。上記滑剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
外部滑剤は、成形加工時の溶融樹脂と金属面との滑り効果を上げる目的で使用される。前記外部滑剤としては特に限定されず、パラフィンワックス、ポリオレフィンワックス、エステルワックス、およびモンタン酸ワックス等が挙げられる。上記滑剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
加工助剤としては特に限定されず、従来公知の加工助剤を使用することができ、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート等のアルキルメタクリレートの単独重合体または共重合体、アルキルメタクリレートと、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート等のアルキルアクリレートとの共重合体、アルキルメタクリレートと、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物との共重合体、アルキルメタクリレートと、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニルシアン化合物等との共重合体等が挙げられ、これらは1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのなかでも、質量平均分子量が10万〜200万であるアルキルアクリレート−アルキルメタクリレート共重合体等を好適に使用することができる。具体的には、n−ブチルアクリレート−メチルメタクリレート共重合体、および2−エチルヘキシルアクリレート−メチルメタクリレート−ブチルメタクリレート共重合体等が挙げられる。上記加工助剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
衝撃改質剤としては特に限定されず、特に限定されるものではなく従来公知の衝撃改質剤を使用することができ、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、塩素化ポリエチレン、フッ素ゴム、スチレン−ブタジエン系共重合体ゴム、メタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン系共重合体、メタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン系グラフト共重合体、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン系共重合体ゴム、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン系グラフト共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体ゴム、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体ゴム、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体ゴム、エチレン−プロピレン共重合体ゴム、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体ゴム(EPDM)、シリコーン含有アクリル系ゴム、シリコーン/アクリル複合ゴム系グラフト共重合体、シリコーン系ゴム等が挙げられる。前記衝撃改質剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
耐熱向上剤としては特に限定されず、α−メチルスチレン系、およびN−フェニルマレイミド系樹脂等が挙げられる。前記耐熱向上剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
酸化防止剤としては特に限定されず、4,4’−ブチリデンビス−(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)等のフェノール系酸化防止剤、トリス(ミックスドモノおよびジ−ノニルフェニル)ホスファイト等のホスファイト系酸化防止剤、ジステアリルチオジプロピオネート等のチオエーテル系酸化防止剤等が挙げられる。中でも、高温分解阻害機能が低い4,4’−ブチリデンビス−(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)等のフェノール系酸化防止剤が特に好ましい。前記酸化防止剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
紫外線吸収剤としては特に限定されず、サリチル酸エステル系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、およびシアノアクリレート系紫外線吸収剤等が挙げられる。前記紫外線吸収剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
帯電防止剤としては特に限定されず、従来公知の帯電防止剤を使用することができ、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤等を使用することがきる。アニオン性界面活性剤としては、脂肪酸塩類、高級アルコール硫酸エステル塩類、液体脂肪油硫酸エステル塩類、脂肪族アミン、アミドの硫酸塩類、二塩基性脂肪酸エステルのスルホン塩類、脂肪酸アミドスルホン酸塩類、アルキルアリールスルホン酸塩類、ホルマリン縮合のナフタレンスルホン酸塩類およびこれらの混合物等を挙げることができる。カチオン性界面活性剤としては、脂肪族アミン塩類、第四級アンモニウム塩類、アルキルピリジウム塩およびこれらの混合物等を挙げることができる。非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエステル類、ポリオキシエチレンアルキルエステル類、ソルビタンアルキルエステル類、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル類、およびこれらの混合物等を挙げることができる。非イオン性界面活性剤と、アニオン性界面活性剤あるいはカチオン性界面活性剤との混合物でもよい。両性界面活性剤としては、イミダゾリン型、高級アルキルアミノ型(ベタイン型)、硫酸エステル、リン酸エステル型、スルホン酸型等を挙げることができる。帯電防止剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
光安定剤としては特に限定されず、ヒンダードアミン系光安定剤等が挙げられる。前記光安定剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
充填剤としては特に限定されず、タルク、重質炭酸カルシウム、沈降性炭酸カルシウム、膠質炭酸カルシウム等の炭酸塩、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化チタン、クレー、マイカ、ウォラストナイト、ゼオライト、シリカ、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、カーボンブラック、グラファイト、ガラスビーズ、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維等の無機質系のもののほか、ポリアミド等のような有機繊維が挙げられる。上記充填剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
顔料としては特に限定されず、有機顔料および無機顔料が挙げられる。前記有機顔料としては、アゾ系有機顔料、フタロシアニン系有機顔料、スレン系有機顔料、および染料レーキ系有機顔料等が挙げられる。上記無機顔料としては、酸化物系無機顔料、クロム酸モリブデン系無機顔料、硫化物・セレン化物系無機顔料、およびフェロシアニン化物系無機顔料等が挙げられる。上記顔料は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
難燃剤としては、例えば金属水酸化物、臭素系化合物、トリアジン環含有化合物、亜鉛化合物、リン系化合物、ハロゲン系難燃剤、シリコーン系難燃剤、イントメッセント系難燃剤、酸化アンチモン等が挙げられ、これらは1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
可塑剤は、成形時の加工性を高める目的で添加されていてもよい。前記可塑剤としては特に限定されず、従来公知の可塑剤を用いることができ、例えばフタル酸エステル可塑剤、や非フタル酸系の可塑剤を用いることができる。フタル酸エステル可塑剤としては、フタル酸ジオクチル(DOP)等が挙げられる。また、非フタル酸系の可塑剤としては、トリメリット酸系化合物、リン酸系化合物、アジピン酸系化合物、クエン酸系化合物、エーテル系化合物、ポリエステル系化合物、大豆油系化合物、シクロヘキサンジカルボキシレート系化合物、テレフタル酸系化合物等が挙げられる。前記可塑剤は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
<成分(B):重合度が600以上の塩化ビニル系樹脂粒子>
本発明の炭素繊維強化複合材料は、炭素繊維基材に含浸されるマトリクス樹脂として、成分(B)の重合度が600以上の塩化ビニル系樹脂粒子もしくは成分(C)の重合度が400以上1000未満の塩素化塩ビ系樹脂粒子のいずれか、またはその両方を含む。後記するように特定の塩化ビニル系樹脂粒子を炭素繊維に接触させた炭素繊維基材に成分(A)を含浸させることにより、炭素繊維強化複合材料の機械物性および耐熱性を向上させることができる。即ち、重合度が600以上である塩化ビニル系樹脂からなる粒子が炭素繊維基材の炭素繊維表面に接触して存在することにより、成分(A)の樹脂組成物を炭素繊維基材に含浸する際に、成分(B)の一部は粒子状の形態を維持したまま炭素繊維基材の繊維表面近傍に存在するため、当該粒子が炭素繊維間のスペーサとして機能し、成分(A)の樹脂組成物の含浸性が向上する。また、成分(B)の粒子表面の大部分は溶融し、炭素繊維機材の炭素繊維表面や成分(A)と接着するため、界面接着性が向上する。その結果、難燃性、耐久性、耐油・耐薬品性に優れるとともに、曲げ強度やクリープ特性等の機械特性にも優れるポリ塩化ビニル系炭素繊維強化複合材料を実現することができる。なお、成分(A)の塩化ビニル系樹脂と成分(B)の塩化ビニル系樹脂の分子量が異なる場合は、両者の硬さの違いを利用して、炭素繊維の近傍に成分(B)が存在することを、AFM−IRを用いた微小領域の表面硬さ測定により確認することができる。一方、成分(A)の塩化ビニル系樹脂と成分(B)の塩化ビニル系樹脂の分子量が同程度である場合、炭素繊維基材に予め接触していた成分(B)の塩化ビニル系樹脂粒子は、成分(A)の樹脂組成物を炭素繊維基材に含浸させた際に、成分(A)中の塩化ビニル系樹脂と一体化するため、両者を区別することはできなくなる。
成分(B)の塩化ビニル系樹脂粒子を構成する塩化ビニル系樹脂は、上記した成分(A)と同様のものを使用することができるが、重合度が600以上のものを使用する必要がある。なお、成分(B)の塩化ビニル系樹脂粒子を構成する塩化ビニル系樹脂には、後記する塩素化塩ビ系樹脂は含まれないものとする。塩化ビニル系樹脂粒子を構成する塩化ビニル系樹脂の好ましい重合度は1500である。
成分(B)の塩化ビニル系樹脂粒子は、平均粒子径の上限値が2μm以下であることが好ましく、1μm以下であることがより好ましい。平均粒子径の下限値は0.01μm以上であることが好ましく、0.1μm以上であることがより好ましい。所定の平均粒子径を有する塩化ビニル系樹脂粒子を使用することで、炭素繊維基材と接触させた際に炭素繊維間に入り込みやすく、炭素繊維に接触しやすい。なお、平均粒子径は粒度分布計や走査型電子顕微鏡観察で測定することができる。上記平均粒子径を有する塩化ビニル系樹脂粒子は乳化重合や微細懸濁重合により生産された平均粒子径の小さい市販品を用いることができる。あるいは、市販の塩化ビニル系樹脂を適当な粉砕装置を用いて細かく粉砕し、上記平均粒子径を有する粒子に調整したものを使用してもよい。
<成分(C):重合度が400以上1000未満の塩素化塩ビ系樹脂粒子>
本発明の炭素繊維強化複合材料は、炭素繊維基材に含浸されるマトリクス樹脂として、上記成分(B)に代えてまたは成分(B)に加えて、重合度が400以上1000未満の塩素化塩化ビニル系樹脂粒子である成分(C)を含む。所定の重合度を有する塩素化塩化ビニル系樹脂粒子を炭素繊維に接触させた炭素繊維基材に成分(A)を含浸させることにより、炭素繊維強化複合材料の機械物性および耐熱性をより一層向上させることができる。また、上記した成分(B)の塩化ビニル系樹脂粒子と同様に、所定の重合度を有する塩素化塩化ビニル系樹脂粒子(成分(C))が炭素繊維基材の炭素繊維表面に接触して存在することにより、成分(A)の樹脂組成物を炭素繊維基材に含浸する際に、成分(C)の一部は粒子状の形態を維持したまま炭素繊維基材の繊維表面近傍に存在するため、当該粒子が炭素繊維間のスペーサとして機能し、成分(A)の樹脂組成物の含浸性が向上する。また、成分(C)の粒子表面の大部分は溶融し、炭素繊維機材の炭素繊維表面や成分(A)と接着するため、界面接着性が向上する。なお、成分(A)や成分(B)の塩化ビニル系樹脂の重合度の違いを利用して、炭素繊維の近傍に成分(C)が存在することを、AFM−IRを用いた微小領域の表面硬さ測定により確認することができる。また、成分(A)や成分(B)と成分(C)の重合度が同程度であった場合であっても、ラマン分光によるイメージングラマン測定によって塩素化度を比較することにより、炭素繊維近傍に存在するそれぞれの成分を特定することができる。
成分(C)の粒子として使用される塩素化塩化ビニル系樹脂は、成分(A)において説明した塩化ビニル系樹脂を塩素化したものである。塩素化塩化ビニル系樹脂の塩素化度は、耐熱性の観点から60〜72質量%であることが好ましい。なお、塩素化塩化ビニル系樹脂の塩素含有率は、JIS K 7229に準拠して測定することができる。
また、塩素化塩化ビニル系樹脂の重合度の下限値は600以上であることが好ましく、上限値は800以下であることが好ましい。
成分(C)の塩素化塩化ビニル系樹脂粒子は、平均粒子径の上限値が2μm以下であることが好ましく、1μm以下であることがより好ましい。平均粒子径の下限値は0.01μm以上であることが好ましく、0.1μm以上であることがより好ましい。成分(B)の塩化ビニル系樹脂粒子と同様に、所定の平均粒子径を有する塩化ビニル系樹脂粒子を使用することで、炭素繊維基材と接触させた際に炭素繊維間に入り込みやすく、炭素繊維に接触しやすい。なお、成分(B)と同様に、平均粒子径は粒度分布計や走査型電子顕微鏡観察で測定することができる。上記平均粒子径を有する塩素化塩化ビニル系樹脂粒子は乳化重合や微細懸濁重合により生産された平均粒子径の小さい市販品を用いることができる。あるいは、市販の塩素化塩化ビニル系樹脂を適当な粉砕装置を用いて細かく粉砕し、上記平均粒子径を有する粒子に調整したものを使用してもよい。
[炭素繊維基材]
本発明による炭素繊維強化複合材料を構成する炭素繊維基材について説明する。
炭素繊維とは、炭素を含む材料で構成された繊維のことである。その他の繊維と併用した場合、単独で用いた場合も含む概念である。
炭素繊維基材とは、複数の炭素繊維からなる炭素繊維束を経糸束および緯糸束とする炭素繊維織物のことである。
炭素繊維は、短炭素繊維、長炭素繊維、連続炭素繊維を含む概念である。
短炭素繊維とは、1mm以下の繊維長を有する炭素繊維のことである。
長炭素繊維とは、5cm以下の繊維長を有する炭素繊維のことである。
連続炭素繊維とは、短繊維と長繊維、以外の炭素繊維のことである。
炭素繊維の材料としては特に限定されず、PAN(ポリアクリロニトリル)系炭素繊維およびピッチ系炭素繊維などの炭素繊維であれば良く、その他の繊維;スチール繊維などの金属繊維;ガラス繊維、セラミックス繊維、ボロン繊維などの無機繊維;ならびに、アラミド、ポリエステル、ポリエチレン、ナイロン、ビニロン、ポリアセタール、ポリパラフェニレンベンズオキサゾール、高強度ポリプロピレンなどの有機繊維;ケナフ、麻などの天然繊維と複数種を組み合わされて使用されてよい。比強度の観点からは、炭素繊維のみから構成されることが好ましい。
炭素繊維としては、短炭素繊維、長炭素繊維、連続炭素繊維を適宜用いることができるが、得られるCFRPの機械物性の観点から連続炭素繊維が好ましい。
炭素繊維の形態としては連続繊維であれば特に限定されず、例えば、トウ、トウの方向を一方向に引き揃え横糸補助糸で保持した形態、繊維を経緯にして織物とした形態(クロス);繊維の方向を一方向に引き揃えた複数の繊維シートを、それぞれ繊維の方向が異なるように重ね補助糸でステッチして留めたマルチアキシャルワープニットの形態などが挙げられる。炭素繊維を上記形態に基づく各製造方法で製造することで、炭素繊維基材(B)を得ることができる。
各炭素繊維は、一般的に単繊維であり、また、炭素繊維は複数集まって炭素繊維束を構成する。各炭素繊維束を構成している炭素繊維の本数は、1000〜50000本であることが好ましく、2000〜40000本であることがより好ましく、5000〜25000本であることがさらに好ましい。
フィラメントの繊維径は3μm以上であることが好ましく、また、12μm以下であることが好ましい。繊維径が3μm以上であれば十分な強度が得られ、例えばフィラメントが、各種加工プロセスにおいて、ロールやスプール等の表面で横移動を起こす際に、切断したり毛羽だまりが生じたりすることを抑制できる。上限については、炭素繊維の製造が容易であるという理由から、通常12μm程度である。
複数の炭素繊維束は、特に限定されないが、シート状とされることが好ましい。シート状とされた炭素繊維束の目付は、例えば100g/m以上600g/m以下が好ましく、150g/m以上500g/m以下がより好ましい。目付が下限値以上であることは、得られたCFRPシートを積層などさせて二次加工する際に効率的である点で好ましく、上限値以下であることは、含浸性を得やすいなどの点で好ましい。
炭素繊維基材としては、マトリクス樹脂の含浸を容易にする目的で、予め開繊処理されている炭素繊維束(以下、開繊炭素繊維束ということがある)を用いることが好ましい。開繊工程としては特に限定されるものではなく、例えばスペーサ粒子を含ませる方法、丸棒で繊維をしごく方法、気流を用いる方法、超音波等で繊維を振動させる方法等を挙げることができる。好ましくは、スペーサ粒子を含ませる方法であり、このように繊維間距離を広げておくことで、製造段階で炭素繊維に高い張力が付与されても、繊維間の距離が予め広くされているので、樹脂の含浸が容易になる。また、繊維に張力が付与されても、繊維間距離が狭くなりにくい。
スペーサ粒子は、各繊維束において炭素繊維間に入り込み、それにより、炭素繊維束を開繊させる。炭素繊維間に入り込んだスペーサ粒子は、炭素繊維間を架橋させるとよい。ここで、「架橋」するとは、炭素繊維間に入り込んだスペーサ粒子が少なくとも2つの炭素繊維を架け渡すように配置される構造を有することを意味する。またスペーサ粒子は、粒子表面に存在する炭素同素体を介して炭素繊維に接着されるとよい。炭素繊維が炭素繊維間を架橋し、また、スペーサ粒子が炭素繊維に接着することで、繊維束の開繊状態をより強固に保持しやすくなる。
スペーサ粒子は特に限定されないが、例えば、炭素同素体を含んでもよい。スペーサ粒子において、炭素同素体は、例えば、無定形炭素、黒鉛、ダイヤモンドなどが挙げられる。無定形炭素としてはアモルファスカーボンが挙げられる。これらの中では、無定形炭素が好ましく、アモルファスカーボンがより好ましい。
スペーサ粒子の平均粒子径は、1〜20μmであることが好ましい。この範囲の大きさのスペーサ粒子を使用することにより、スペーサ粒子を炭素繊維間に入り込ませやすくなるとともに、炭素繊維束をより広く開繊させることができる。スペーサ粒子のより好ましい平均粒子径は2〜20μmであり、特に好ましくは4〜15μmである。
開繊処理した炭素繊維束におけるスペーサ粒子の合計付着量は、開繊炭素繊維束基準で0.5〜20質量%が好ましく、1〜10質量%がより好ましい。付着量を下限値以上とすることで、炭素繊維束を適切に開繊できる。また、付着量を上限値以下とすることで、開繊炭素繊維束が必要以上にスペーサ粒子を含有し、機械物性が低下することが防止される。
炭素繊維基材としては、上記で説明した通りであり、例えば、適切な炭素繊維の材料、形態、目付量を選択することができる。また、市販の炭素繊維束を用いて所望の組織となるような織布を作製してもよい。
[炭素繊維強化複合材料の製造方法]
次に、本発明による炭素繊維強化複合材料を製造する方法について説明する。本発明の一実施態様による炭素繊維強化複合材料の製造方法は、炭素繊維基材に、マトリックス樹脂100質量部に対し前記成分(B)および前記成分(C)を0質量部超含むコロイド分散液を接触させ、次いで、前記コロイド分散液が付着した炭素繊維基材に、前記成分(A)を含浸させることを含む。
また、本発明の他の実施態様による炭素繊維強化複合材料の製造方法は、炭素繊維基材に、マトリックス樹脂100質量部に対して0質量部超の前記成分(B)および/または前記成分(C)を接触させ、次いで、前記成分(B)および/または前記成分(C)が接触した炭素繊維基材に、前記成分(A)を含浸させることを含む。以下、本発明による炭素繊維強化複合材料の製造方法における各工程について詳述する。
まず、炭素繊維基材を準備する。炭素繊維基材としては上記で説明した通りであり、例えば、適切な炭素繊維の材料、形態、目付量を選択することができる。また、市販の炭素繊維束を用いて所望の組織となるような織布を作製してもよい。
使用する炭素繊維基材は、そのまま上記したような炭素繊維束を使用してもよいが、予め炭素繊維が開繊された開繊炭素繊維束を用いることが好ましい。炭素繊維束の開繊は種々の方法が考えられるが、一例として、炭素繊維束が、炭素繊維間に配置されたスペーサ粒子を備えてもよい。炭素繊維間にスペーサ粒子が配置されることにより、炭素繊維束が開繊され、熱可塑性樹脂を炭素繊維織物に十分に含浸することができる。また、繊維束をある一定の大きさでたわませた空間に、空気流を作用させ開繊する空気開繊を用いてもよい。
次いで、炭素繊維基材に所定のコロイド分散液を接触させる。すなわち、上記した成分(B)の樹脂粒子および成分(C)の樹脂粒子のコロイド分散液を炭素繊維基材に接触させることにより、炭素繊維間に樹脂粒子が入り込み、その結果、後記するようによう成分(A)の塩化ビニル系樹脂を炭素繊維基材に含浸させ易くなるとともに界面接着性も向上し、機械物性も向上する。また、塩素化塩化ビニル系樹脂粒子を含むことにより耐熱性も向上する。なお、本明細書において「接触」とは炭素繊維基材の炭素繊維表面に接している状態をいうものとする。
本発明の一実施態様においては、成分(B)の樹脂粒子および成分(C)の樹脂粒子のコロイド分散液を使用することに代えて、成分(B)および/または成分(C)の樹脂粒子自体を直接、炭素繊維基材に接触させてもよい。
炭素繊維基材の炭素繊維表面に、上記した成分(B)および/または(C)の樹脂粒子を接触させる手法としては、特に限定されず、粉体状の樹脂粒子をスプレーにより塗布し接触させる等の公知の手法を採用できるが、簡易かつ簡便に、炭素繊維間の隙間に樹脂粒子を入り込ませやすいことから、樹脂粒子のコロイド分散液を炭素繊維基材に接触させる手法を好ましく採用することができる。コロイド分散液は、上記した成分(B)および(C)を、界面活性剤を含む適当な溶媒に混合することにより調製することができる。
コロイド分散液を調製し得る界面活性剤としては、特に限定されるものではなくアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤等の従来公知の界面活性剤を使用することができる。アニオン性界面活性剤としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルベンゼンスルホン酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウムなどのアルキル硫酸エステル塩;ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ジへキシルスルホコハク酸ナトリウムなどのスルホコハク酸塩;ラウリン酸ナトリウム、半硬化牛脂脂肪酸カリウムなどの脂肪酸塩;ポリオキシエチレンラウリルエーテルサルフェートナトリウム塩、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルサルフェートナトリウム塩などのエトキシサルフェート塩;アルカンスルホン酸塩;アルキルエーテル燐酸エステルナトリウム塩などを挙げることができる。ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンラウリルエステルなどを挙げることができる。また、非イオン性界面活性剤としては、ソルビタントリオレエート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(商品名「Tween」シリーズ(登録商標))、ポリオキシエチレンp−t−オクチルフェニルエーテル(商品名「Triton」シリーズ(登録商標))、ポリオキシエチレンp−t−ノニルフェニルエーテル(商品名「TritonN」シリーズ(登録商標))、アルキルポリグルコシド脂肪酸ジエタノールアミド、アルキルモノグリセリルエーテル等を挙げることができる。これら界面活性剤は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
調製したコロイド分散液は、そのまま炭素繊維基材に塗布ないし浸漬してもよいが、コロイド分散液中に炭素繊維基材を浸漬させた状態で、炭素繊維基材を正極または負極として電圧を印加し、電気泳動によりコロイド粒子(即ち、成分(B)および(C)の樹脂粒子)を炭素繊維の表面に接触させることが好ましい。
コロイド分散液中の成分(B)および/または(C)の樹脂粒子の割合は、マトリックス樹脂100質量部に対して0質量部超である必要がある。含浸性および機械物性向上の観点から、成分(B)および/または(C)の樹脂粒子の割合の下限値は、マトリックス樹脂100質量部に対して0.1質量部以上であることが好ましく、1質量部以上であることがより好ましい。また、成分(B)および/または(C)の樹脂粒子の割合の上限値は、マトリックス樹脂100質量部に対して50質量部以下であることが好ましく、20質量部以下であることがより好ましい。なお、成分(B)および(C)の樹脂粒子の割合とは、マトリックス樹脂100質量部に対する成分(B)および(C)の合計含有量の割合を意味する。また、コロイド分散液に代えて、成分(B)および/または成分(C)の樹脂粒子自体を直接、炭素繊維基材に接触させる場合においても、マトリックス樹脂に対する(B)および/または(C)の樹脂粒子の割合は、上記と同様である。
次いで、成分(B)および/または(C)の樹脂粒子を含むコロイド分散液を接触させた炭素繊維基材に、成分(A)の塩化ビニル系樹脂組成物を含浸させる。成分(A)を含浸させる手法としては、特に制限なく従来公知の手法を採用することができ、例えば、炭素繊維基材に、塩化ビニル系樹脂組成物からなるフィルムを重ね合わせ熱プレス成形したり、炭素繊維基材上に塩化ビニル系樹脂組成物の溶融押出成形を行ったりすることにより、塩化ビニル系樹脂組成物を炭素繊維基材に含浸することができる。また、成分(B)および/または(C)の樹脂粒子を直接、炭素繊維基材に接触させた炭素繊維基材に、成分(A)の塩化ビニル系樹脂組成物を含浸させる場合も、上記と同様に行うことができる。
炭素繊維強化複合材料は、塩化ビニル系樹脂組成物を含浸した炭素繊維基材を複数枚重ね合わせてもよく、この際、各炭素繊維織物の組織方向が一定の角度でずれるように該炭素繊維基材を重ね合わせることにより、より一層機械強度に優れる炭素繊維強化複合材料を得ることができる。
熱プレスには、押出成形やプレス成型を用いることができ、成形型を使用することにより、所望形状の炭素繊維強化複合材料を得ることができる。熱プレス成型を行う際の温度は、使用する塩化ビニル系樹脂組成物が軟化ないし溶融する温度以上で行うことができる。
上記のようにして得られた本発明の炭素繊維強化複合材料は良好な曲げ強度を有する。本発明において、炭素繊維強化複合材料の三点曲げ試験の曲げ強度は400MPa以上であることが好ましい。曲げ強度が400MPa以上であれば、航空機構造部材、風車のブレード、自動車外板等の高強度が要求される用途において好適に使用することができる。なお、三点曲げ試験は、JIS K 7074に準拠し、また、曲げ試験の治具圧子の半径は5mmで、圧子の幅は2mmである。所定サイズの曲げ試験の治具圧子を使用して測定する。
また、炭素繊維強化複合材料の繊維体積率は、下限値が30%以上であることが好ましく、35%以上であることがより好ましい。また、繊維体積率の上限値は65%以下であることが好ましく、60%以下であることがより好ましい。繊維体積率が上記範囲にある炭素繊維強化複合材料とすることにより、機械強度に優れる炭素繊維強化複合材料とすることができる。炭素繊維強化複合材料の繊維体積率は、使用する炭素繊維基材の目付や成分(A)の塩化ビニル系樹脂組成物の含浸程度によって調整することができる。なお、本明細書において繊維体積率(Vf)は、下記式により算出される値を意味する。
Vf(%)=100×炭素繊維の厚み(mm)÷炭素繊維強化複合材料の厚み(mm)
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、これらの例により本発明が限定されるものではない。
<成分(A)である塩化ビニル系樹脂組成物からなるフィルムの作製>
塩化ビニル樹脂(徳山積水工業製、SL−P40、重合度約400)100質量部に対して、熱安定剤(日東化成製 AT5300、メチル錫メルカプト)2質量部、滑剤(ハネウェル製、AC316A、酸化ポリエチレンワックス)0.5質量部をスーパーミキサーにて混合、昇温した後、冷却ミキサーで冷却し、塩化ビニル系樹脂組成物を得た。得られた塩化ビニル系樹脂組成物をカレンダー成型機で製膜し、樹脂フィルムを作製した。
<開繊炭素繊維束の準備>
1,5−ジヒドロキシナフタレン10質量部、40質量%メチルアミン水溶液4質量部、およびホルマリン(ホルムアルデヒドの含有量:37質量%)8質量部からなるモノマーと、溶媒としてエタノール水(エタノールの含有量:50質量%)800質量部とを均一に混合して、モノマーを溶解してなるモノマー溶液を作製した。次に上記モノマー溶液にジビニルベンゼン架橋重合体からなる粒子(積水化学工業製、商品名「ミクロパールSP」、平均粒径10μm)を10質量部添加し、開繊含浸液を作製した。
続いて、PAN系炭素繊維束から構成される炭素繊維織物(炭素繊維数:3000本、炭素繊維の平均径:7μm、目付:200g/m2、厚み:0.19mm、平織)を用意した。当該炭素繊維織物を上記の開繊含浸液に浸漬した後に引き上げ、その後、200℃で2分間加熱した。この加熱によって、ナフトキサジン樹脂の重合反応と、炭化が生じ、ナフトキサジン樹脂由来のアモルファスカーボンが生成し、開繊炭素繊維束の織物が得られた。開繊炭素繊維束における有機粒子および炭素同素体の合計付着量は、1質量%であった。
<成分(B)の準備>
[粒子B1]
塩化ビニル系樹脂粒子(カネカ製、PSH−24、重合度約3000)とエタノールを質量比1:1.5で混合し、コロイド分散液を調製した。粒子の濃度が0.0001質量%となるように、得られたコロイド分散液にイオン交換水を加えて混合撹拌を行い、粒度分布計(Malvern Panalytical製、Zetasizer Nano ZS90)を用いてZ平均粒子径を測定した。Z平均粒子径は1480nmであった。
[粒子B2]
塩化ビニル系樹脂粒子として、カネカ製 PSL−31(平均重合度940)を用いた以外は、上記と同様にしてコロイド分散液を調製し、Z平均粒子径を測定した。Z平均粒子径は1710nmであった。
[粒子B3]
塩化ビニル系樹脂粒子として、カネカ製 PCH−72(平均重合度2000)を用いた以外は、上記と同様にしてコロイド分散液を調製し、Z平均粒子径を測定した。Z平均粒子径は1840nmであった。
<成分(C)の準備>
[粒子C1]
塩化ビニル系樹脂粒子に代えて、塩素化塩化ビニル系樹脂をメノウ乳鉢で15分間磨り潰した徳山積水製 HA−53K(平均重合度1000、塩素化度67質量%)を用いた以外は、上記と同様にしてコロイド分散液を調製し、Z平均粒子径を測定した。Z平均粒子径は1610nmであった。
[粒子C2]
塩素化塩化ビニル系樹脂粒子として、塩素化塩化ビニル系樹脂をメノウ乳鉢で15分間磨り潰した徳山積水製 HA−28K(平均重合度700、塩素化度67質量%)を用いた以外は、上記と同様にしてコロイド分散液を調製し、Z平均粒子径を測定した。Z平均粒子径は1520nmであった。
[粒子C3]
塩素化塩化ビニル系樹脂粒子として、塩素化塩化ビニル系樹脂をメノウ乳鉢で5分間磨り潰した徳山積水製 HA−05K(平均重合度500、塩素化度67質量%)を用いた以外は、上記と同様にしてコロイド分散液を調製し、Z平均粒子径を測定した。Z平均粒子径は1470nmであった。
[実施例1]
粒子B1のコロイド分散液を開繊炭素繊維束に塗布し、粒子B1を開繊炭素繊維束の炭素繊維表面に接触させた。
次いで、粒子B1を接触させた開繊炭素繊維束が9層、樹脂フィルムが10層となるように交互に積層し、200℃にて0〜6MPaへ段階的に加圧し、合計15分間プレスすることにより炭素繊維強化複合材料を得た。得られた炭素繊維強化複合材料を物性評価用のサンプル「実−1」とした。
「実−1」サンプルについて、粒子B1が炭素繊維と接触していることをAFM−IR(アナシスインスツルメント社 nanoIR2)を用いた微小領域の表面硬さ測定により確認した。
[実施例2]
実施例1において、粒子B1のコロイド分散液に代えて粒子B2のコロイド分散液を用いた以外は実施例1と同様にして炭素繊維強化複合材料を得た。得られた炭素繊維強化複合材料を物性評価用のサンプル「実−2」とした。
「実−2」サンプルについて、粒子B2が炭素繊維と接触していることをAFM−IR(アナシスインスツルメント社 nanoIR2)を用いた微小領域の表面硬さ測定により確認した。
[実施例3]
実施例1において、粒子B1のコロイド分散液に代えて粒子C1のコロイド分散液を用いた以外は実施例1と同様にして炭素繊維強化複合材料を得た。得られた炭素繊維強化複合材料を物性評価用のサンプル「実−3」とした。
「実−3」サンプルについて、粒子C1が炭素繊維と接触していることをイメージング顕微ラマン(Thermo Fisher社、DXR2xi)によって塩素化度の比較を行い確認した。
[実施例4]
実施例1において、粒子B1のコロイド分散液に代えて粒子C2のコロイド分散液を用いた以外は実施例1と同様にして炭素繊維強化複合材料を得た。得られた炭素繊維強化複合材料を物性評価用のサンプル「実−4」とした。
「実−4」サンプルについて、粒子C2が炭素繊維と接触していることをイメージング顕微ラマン(Thermo Fisher社、DXR2xi)によって塩素化度の比較を行い確認した。
[実施例5]
実施例1において、粒子B1のコロイド分散液に代えて粒子B1のコロイド分散液と粒子C1のコロイド分散液との混合液を用いた以外は実施例1と同様にして炭素繊維強化複合材料を得た。得られた炭素繊維強化複合材料を物性評価用のサンプル「実−5」とした。
「実−5」サンプルについて、粒子B1が炭素繊維と接触していることをAFM−IR(アナシスインスツルメント社 nanoIR2)を用いた微小領域の表面硬さ測定により確認した。また、C1粒子が炭素繊維と接触していることをイメージング顕微ラマン(Thermo Fisher社、DXR2xi)によって塩素化度の比較を行い確認した。
[実施例6]
実施例1において、粒子B1のコロイド分散液に代えて粒子B3のコロイド分散液を用いた以外は実施例1と同様にして炭素繊維強化複合材料を得た。得られた炭素繊維強化複合材料を物性評価用のサンプル「実−6」とした。「実−6」サンプルについて、粒子B3が炭素繊維と接触していることをAFM−IR(アナシスインスツルメント社 nanoIR2)を用いた微小領域の表面硬さ測定により確認した。
実施例1において、粒子B1のコロイド分散液に代えて粒子C3のコロイド分散液を用いた以外は実施例1と同様にして炭素繊維強化複合材料を得た。得られた炭素繊維強化複合材料を物性評価用のサンプル「実−7」とした。「実−7」サンプルについて、粒子C3が炭素繊維と接触していることをイメージング顕微ラマン(Thermo Fisher社、DXR2xi)によって塩素化度の比較を行い確認した。
[比較例1]
粒子B1のコロイド分散液を開繊繊維束に塗布しなかった以外は、実施例1と同様にして炭素繊維強化複合材料を得た。得られた炭素繊維強化複合材料を物性評価用のサンプル「比−1」とした。
[比較例2]
成分(A)の樹脂フィルムの重合度を640に変更し、粒子B1のコロイド分散液を開繊繊維束に塗布しなかった以外は、実施例1と同様にして炭素繊維強化複合材料を得た。得られた炭素繊維強化複合材料を物性評価用のサンプル「比−2」とした。
成分(A)の樹脂フィルムの重合度を800に変更し、粒子B1のコロイド分散液を開繊繊維束に塗布しなかった以外は、実施例1と同様にして炭素繊維強化複合材料を得た。得られた炭素繊維強化複合材料を物性評価用のサンプル「比−3」とした。
<荷重たわみ温度測定>
サンプル「実−1」〜「実−7」および「比−1」〜「比−3」から、測定用試料として長さ(l)80±2mm、幅(b)10±0.2mm、厚さ2±0.2mmサイズの試験片について、支点間距離(L)は64mm、フラットワイズ面、温度範囲は30〜150℃として、作成した試験片について、試験機(安田精機製作所製、148 HDPC Heat Distortion Tester)を用い、JIS K 7191に準拠して、荷重たわみ温度を測定した。測定結果を表1に示す。
また、荷重たわみ温度に基づく下記の評価基準に基づいて耐熱性の評価を行った。評価結果を表1に示す。
○:荷重たわみ温度が90℃以上
×:荷重たわみ温度が90℃未満
<曲げ強度測定>
サンプル「実−1」〜「実−7」および「比−1」〜「比−3」から、測定用試料として長さ(l)100±1mm、幅(b)15±0.2mm、厚さ2±0.4mmサイズの試験片について、支点間距離(L)は80mmとして、作成した試験片について、試験機(SHIMADZU社製、AUTOGRAPH AGS−H)を用い、JIS K 7074に準拠して、3点曲げ方式にて曲げ強度(MPa)を測定した。このとき、曲げ試験の治具圧子の半径は5mm、支点の半径2mmのものを使用した。測定結果を表1に示す。
また、曲げ強度に基づく下記の評価基準に基づいて機械物性の評価を行った。評価結果を表1に示す。
○:曲げ強度が400MPa以上
×:曲げ強度が400MPa未満
<繊維体積率(Vf)の算出>
サンプル「実−1」〜「実−7」および「比−1」〜「比−3」について、繊維体積率(Vf)を下記式により算出した。算出したVf(%)を表1に示す。
Figure 2021138906
表1の評価結果から明らかなように、ポリ塩化ビニル系樹脂粒子(成分B)および/または塩素化塩化ビニル系樹脂粒子(成分C)を接触させた炭素繊維基材を用いたCFRP(実施例1〜7)では、従来の手法で作製したCFRP(比較例1〜3)と比較して、耐熱性および機械物性が優れていることがわかる。

Claims (6)

  1. 下記成分(A)と、下記成分(B)および/または成分(C)と、
    を含むマトリックス樹脂が炭素繊維基材に含浸されてなる炭素繊維強化複合材料。
    成分(A):重合度が600以下の塩化ビニル系樹脂を含む樹脂組成物
    成分(B):重合度が600以上の塩化ビニル系樹脂粒子
    成分(C):重合度が400以上1000未満の塩素化塩ビ系樹脂粒子
  2. マトリックス樹脂100質量部に対して0質量部超の前記成分(B)および/または前記成分(C)を接触させた炭素繊維基材に、前記成分(A)が含浸されてなる、請求項1に記載の炭素繊維強化複合材料。
  3. 前記成分(B)および前記成分(C)の各粒子の平均粒子径が2μm以下である、請求項1または2に記載の炭素繊維強化複合材料。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の炭素繊維強化複合材料を製造する方法であって、
    炭素繊維基材に、マトリックス樹脂100質量部に対して0質量部超の前記成分(B)および/または前記成分(C)を含むコロイド分散液を接触させる工程と、
    前記コロイド分散液が接触した炭素繊維基材に、前記成分(A)を含浸させる工程と、
    を含む、炭素繊維強化複合材料の製造方法。
  5. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の炭素繊維強化複合材料を製造する方法であって、
    炭素繊維基材に、マトリックス樹脂100質量部に対して0質量部超の前記成分(B)および/または前記成分(C)を接触させる工程と、
    前記成分(B)および/または前記成分(C)が接触した炭素繊維基材に、前記成分(A)を含浸させる工程と、
    を含む、炭素繊維強化複合材料の製造方法。
  6. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の炭素繊維強化複合材料からなる、成形体。
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