JP2021044123A - 鉛蓄電池用クラッド式正極板およびそれを備える鉛蓄電池 - Google Patents

鉛蓄電池用クラッド式正極板およびそれを備える鉛蓄電池 Download PDF

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Abstract

【課題】鉛電池用クラッド式正極板において、一列に並んだ複数の芯金の他端部の偏心を抑制した鉛電池用クラッド式正極板を提供する。【解決手段】鉛蓄電池用クラッド式正極板は、複数の多孔質のチューブ31と、前記チューブ内に収容された芯金32と、前記チューブ内に充填された正極電極材料33と、一列に並んだ状態の複数の前記芯金の長さ方向の一端部を連結する集電部34とを備える。前記芯金の表面から前記チューブの内壁までの距離Tが1.5mmを超える部分を第1部分P1とし、前記距離Tが1.5mm以下である部分を第2部分P2とするとき、前記第1部分の長さL1の、前記芯金の長さL0に対する比L1/L0の平均は、0.45以下である。【選択図】図2

Description

本発明は、鉛蓄電池に関する。
鉛蓄電池では、正極板として、ペースト式正極板、およびクラッド式正極板などが用いられている。クラッド式正極板は、例えば、複数の多孔質のチューブと、チューブ内に収容された芯金と、チューブ内に充填された正極電極材料と、を備えている。複数の芯金は、通常、一列に並んでおり、長さ方向の一端部が集電部により連結された状態となっている。
クラッド式正極板の製造工程において、芯金の集電体とは反対側の端を固定せずに、正極電極材料をチューブ内に充填する場合がある。この場合、芯金がチューブの中心軸からずれ易くなる(すなわち偏心し易くなる)。従来のクラッド式正極板は、正極電極材料をチューブに充填する際に、芯金がチュ−ブの中央に配置するよう設計されており、そのための工夫がいくつか提案されている。
特許文献1では、内部に突起を有するノズルをチューブに挿入し、次いで、ノズルを抜きながら突起により芯金をチューブの略中心に矯正すると共にペーストをチューブ内へ圧入するクラッド式正極板の製造法が提案されている。
特許文献2では、円柱形の芯金の極板面と平行な両側面にのみ複数の羽を設け、羽の高さcを式[(チューブ内径a−芯金外径b)÷2×0.74]で求めた値以上とするクラッド式正極板が提案されている。
特開平7−235299号公報 特開平8−203505号公報
クラッド式正極板において、一列に並んだ複数の芯金は、長さ方向の一端部が集電部により固定されている。しかし、芯金の他端部は固定されていないため、芯金が偏心し易い。芯金の偏心により、芯金とチューブの内壁との距離が小さい部分が生じると、この部分に化成電流が集中して正極電極材料の化成が進行する。一方で、芯金の他の部分では化成電流が減少し、その近傍の正極電極材料の化成が進行し難くなる。その結果、正極板全体における電極材料全体の化成度が低下する。
本発明の一側面は、複数の多孔質のチューブと、前記チューブ内に収容された芯金と、前記チューブ内に充填された正極電極材料と、一列に並んだ状態の複数の前記芯金の長さ方向の一端部を連結する集電部とを備え、
前記芯金の長さ方向において、前記芯金の表面から前記チューブの内壁までの距離Tが1.5mmを超える部分を第1部分とし、前記距離Tが1.5mm以下である部分を第2部分とするとき、前記第1部分の長さL1の、前記芯金の長さL0に対する比L1/L0の平均は、0.45以下である、鉛蓄電池用クラッド式正極板に関する。
鉛蓄電池のクラッド式正極板において、正極板全体における正極電極材料の化成度を高めることができる。
本発明の一実施形態に係るクラッド式正極板を模式的に示す上面図である。 図1のII−II線における断面を矢印方向から見たときの概略断面図である。 図2のIII−III線における断面を矢印方向から見たときの概略断面図である。 図3とは別の、芯金の第2部分の位置の態様を説明するための概略断面図である。 図1のクラッド式正極板3の側面図である。 芯金が図4の例である場合に、図5のVI−VI線における断面を矢印方向から見たときの概略断面図である。 芯金が図2とは別の芯金である場合に、図1のVII−VII線における断面を矢印方向から見たときの概略断面図である。 本発明の実施形態に係る鉛蓄電池のフタを外した一例を模式的に示す斜視図である。 図8の鉛蓄電池の正面図である。 図9AのIXB−IXB線における断面を矢印方向から見たときの概略断面図である。 図2に対応する従来のクラッド式正極板の概略断面図である。
鉛蓄電池用クラッド式正極板は、例えば、複数の多孔質のチューブと、チューブ内に収容された芯金と、チューブ内に充填された正極電極材料と、一列に並んだ状態の複数の芯金の長さ方向の一端部を連結する集電部とを備える。クラッド式正極板の中には、製造上の理由で、芯金の長さ方向の他端部(具体的には、集電部とは反対側の芯金の長さ方向の端部)が、正極電極材料の充填時に固定されていないものがある。このような正極板を製造する場合、製造過程において、チューブ内で芯金が偏心し易い。各チューブ内で芯金の偏心の方向または偏心の程度なども異なった状態になり易い。
芯金が偏心すると、正極電極材料に含まれる正極活物質が均一に利用されにくくなる。 そこで従来は、芯金の偏心が低減されるように正極板が設計されている。例えば、特許文献1または特許文献2では、芯金に突起または羽(フィン(ひれ)など)を設けることにより、芯金の偏心を低減することが提案されている。
一般に、クラッド式正極板では、正極電極材料がチューブ内に保持されるため、正極電極材料の軟化および脱落が抑制され、比較的高いサイクル寿命を確保し易い。よって、クラッド式正極板は、サイクル使用または深放電で使用される鉛蓄電池に採用されており、産業用途でも利用されている。産業用途では、高さが大きい電池(例えば、フォークリフト用の鉛蓄電池)も存在する。鉛蓄電池の高さが大きくなると、芯金の長さも長くなり、偏心を抑制することが難しくなる。また、各チューブにおける芯金の偏心の方向、または偏心の程度のばらつきも大きくなる。
クラッド式正極板において、芯金が偏心すると、特に芯金の上記他端部付近では、芯金とチューブの内壁との距離が小さい部分(例えば、芯金とチューブの内壁が接触する部分)が生じる。本発明者は、クラッド式正極板において、芯金の表面からチューブの内壁までの距離をTとするとき、距離Tが小さい部分(具体的にはその距離が1.5mm以下の第2部分)と他の部分(距離Tが1.5mmを超える第1部分)とでは、化成の進行に伴う電流密度の変化の挙動が著しく異なることを発見した。第2部分と、第1部分とで、化成における電流密度の挙動が異なるのは、次のような理由によるものと考えられる。
正極電極材料には、電気伝導率が低い一酸化鉛PbOなど(以下、未化成活物質と呼ぶ)が多く含まれる。また化成反応に関与するイオンは、正極電極材料の細孔を通って移動する。従って、距離Tが小さい第2部分の周辺の正極電極材料では、未化成活物質の抵抗およびイオンが細孔を通過する際の抵抗が比較的小さいことで、化成初期に化成電流がより多く流れ、化成反応によりPbOが生成する。PbOは、未化成活物質に比べて電気伝導率が高い。そのため、第2部分の周辺の正極電極材料では、もとより小さな抵抗と、化成が進行するにつれて向上する電気伝導率とにより、化成反応が急速に進行する。ただし化成は、正極板と対向する負極板でも同時に進行する。そのため負極板においても、正極板の芯金の第2部分と対向する部分の負極電極材料から先に化成が進行する。正極板の第2部分の周辺の正極電極材料と、負極板の正極板の第2部分と対向する部分の負極電極材料とで活物質の化成がほぼ完了すると(例えば、化成後期には)、第1部分に化成電流の大半が流れ込む。しかし、化成電流が第1部分に集中することで電流密度が高くなることに加え、第1部分の周辺の正極電極材料の抵抗がもとより大きいために、第1部分では、印加された電気量に対するPbOの増加率(すなわち化成効率)が、第2部分に比べて、著しく低下する。
このようなメカニズムにより、偏心した芯金を有する従来のクラッド式正極板では、偏心がない芯金を備える正極板に比べて、正極板全体における正極電極材料の化成度のばらつきが大きくなるとともに、正極板全体における正極電極材料の化成度そのものが低下する傾向がある。
なお、正極板における正極電極材料の化成度のばらつきは、化成の際に正極板に印加する化成電流が小さいときはそれほど大きな問題とならない。ところが、正極板に印加される化成電流が大きくなると、化成の初期段階で、第2部分に比べて第1部分における化成電流密度が極端に小さくなる。逆に第2部分の化成がほぼ終了した化成後期には、抵抗が大きい第1部分に化成電流が集中して、化成効率が低下する。よって、化成電流が大きい場合には、正極板における正極電極材料の化成度のばらつきが顕著になる。
正極板の化成度および化成度のばらつきは、化成時間にも影響される。通常の化成時間で行う化成に比べて、短時間で行う高速化成では、同じ化成電流を印加する場合、化成電流を大きくする必要がある。例えば、化成時間が40時間である高速化成では、化成時間が68時間である通常化成に比べて、同じ化成電気量を印加する場合、化成電流を1.7倍大きくする必要がある。そのため、芯金が偏心していると、正極板における化成度のばらつきがさらに大きくなり、化成効率の低下もさらに大きくなる。また高速化成では通常化成より化成効率が低下するため、より大きな電気量を印加する場合がある。高速化成で、化成度のばらつきが大きくなり、化成効率が低下するのは、通常化成に比べて大きな化成電流を印加することで、第1部分が化成される際により大きな化成電流が第1部分に集中し、電流密度がさらに高くなるためである。
このように、偏心した芯金を有するクラッド式正極板では、化成度のばらつきが大きくなる。ところが、本発明者は、予想外にも、芯金を、敢えて偏心させると、芯金の長さ方向における正極電極材料の化成度のばらつきが低減される場合があることを見出した。
本発明の一側面に係る鉛蓄電池用クラッド式正極板は、複数の多孔質のチューブと、チューブ内に収容された芯金と、チューブ内に充填された正極電極材料と、一列に並んだ状態の複数の芯金の長さ方向の一端部を連結する集電部とを備える。芯金の長さ方向において、芯金の表面からチューブの内壁までの距離Tが1.5mmを超える部分を第1部分とし、距離Tが1.5mm以下である部分を第2部分とするとき、第1部分の長さL1の、芯金の長さL0に対する比L1/L0の平均は、0. 45以下である。
本発明の他の側面には、少なくとも1つの正極板と、少なくとも1つの負極板と、正極板および負極板の間に介在するセパレータと、電解液とを備え、正極板の少なくとも1つは、上記のクラッド式正極板である鉛蓄電池も包含される。
このように、芯金において芯金の表面とチューブの内壁との距離Tが小さい第2部分(接触している部分を含む)の比率を増加させることで、正極板全体における正極電極材料の化成度を高めることができる。より具体的には、上記のように、正極板において、距離Tが1.5mmを超える第1部分の長さL1の、芯金の長さL0に対する比L1/L0の平均を、0.45以下とする。比L1/L0の平均を小さく制御して第2部分の比率を高めることで、第2部分により、より均等に化成電流を流すことができる。そのため、芯金の長さ方向における化成電流分布が、正極板全体において、より均一になり、化成初期の第2部分における化成電流密度を低減することができる。また第2部分の抵抗が小さくなるため、正極板全体において化成効率を向上することができる。その結果、正極板全体における正極電極材料の化成度のばらつきを小さくすることができるとともに、正極板の化成度自体を高めることができる。さらに、化成電流が大きい場合でも、正極板全体における正極電極材料の化成度のばらつきを抑制することができ、正極板全体における正極電極材料の化成度を高めることができる。化成電流を大きくしても高い化成度を確保することができるため、化成時間を短縮することができ、高速化成が可能となる。よって、生産性を高めることもできる。
なお、正極板を製造する際に芯金の他端部が固定されていない状態でチューブに正極電極材料を充填した従来のクラッド式正極板では、芯金の偏心の程度も制御することが難しいため、比L1/L0は芯金ごとにばらつきがある。このような従来のクラッド式正極板における比L1/L0は、概ね0.5から0.75の間であり、その平均は0.6程度である。
クラッド式正極板において、正極電極材料を充填した後のチューブは、通常、円筒状(円筒状に類似の形状も含む)である。チューブの長さ方向に平行な方向において、正極電極材料が充填されている部分の芯金の両端部間の距離を、芯金の長さL0とする。また、第1部分の長さL1および第2部分の長さL2は、それぞれ、チューブの長さ方向に平行な方向において各部分の両端部間の距離とする。長さL1と長さL2の合計はL0である。芯金が複数の第1部分を有する場合には、各第1部分の長さの合計をL1とする。同様に、芯金が複数の第2部分を有する場合には、各第2部分の長さの合計をL2とする。
チューブの長さ方向とは、円筒状のチューブの中心軸と平行な方向を言うものとする。なお、チューブの集電部側の端部のチューブの長さ方向に垂直な断面における中心と、集電部とは反対側の端部のチューブの長さ方向に垂直な断面における中心とを通る直線を、チューブの中心軸とする。芯金の長さ方向とは、芯金をチューブ内に収容した状態において、チューブの長さ方向に沿う方向(より具体的には、チューブの長さ方向と平行な方向またはチューブの長さ方向となす角度が20°以下である方向)とする。
芯金の表面からチューブの内壁までの距離とは、クラッド式正極板の各チューブの長さ方向に垂直な断面方向において、芯金の表面とチューブの内壁との距離の最小値を言う。この距離の最小値が1.5mmを超える部分を第1部分とし、1.5mm以下である部分を第2部分とする。なお、チューブは、通常円筒状であるため、第2部分は、芯金と近い側のチューブの内壁までの距離は1.5mm以下と小さいものの、反対側のチューブの内壁との距離は第1部分の場合よりも大きくなる。しかし、化成電流は、芯金と近いチューブの内壁との距離が小さい部分に流れ易いため、チューブの長さ方向に垂直な断面において、芯金の表面とチューブの内壁との距離の最小値を基準にすれば化成度への影響を有効に把握することができる。
比L1/L0の平均は、1つのクラッド式正極板に含まれる各芯金について比L1/L0を求め、全ての芯金について比L1/L0を平均化することにより求められる。
芯金は、屈曲部分を有していてもよい。芯金が屈曲部分を有することで、比L1/L0を小さく制御し易くなる。
屈曲部分とは、芯金のある位置(位置A)を挟んで芯金の中心軸にずれを生じる場合に、位置Aを通る平面に対して、芯金の位置Aおよびその周辺の部分の芯金の幅方向における中心点を投影することにより描かれる曲線の曲率半径rが200mm以下である部分を言うものとする。ここで、位置Aを通る平面は、位置Aと、位置Aを挟んで位置Aからの距離が20mmでかつ芯金の中心軸上の位置Bおよび位置Cとの3点を含む平面である。芯金の幅方向における中心点とは、上記平面に対して垂直な方向から芯金を見たときの幅方向における中心点を言うものとする。屈曲部分は、例えば、チューブに芯金を収容する前に、芯金を屈曲させる工程、屈曲部分を形成可能な形状の金型を用いて芯金を形成する工程、またはこれらの双方の工程を経ることにより形成される。
第2部分の位置は、特に制限されず、芯金のどの位置に形成されていてもよい。芯金を容易に製造し易い観点からは、集電部とは反対側に第2部分を形成することが好ましい。
第2部分の少なくとも一部では、芯金がチューブの内壁と接触していてもよい。従来、芯金がチューブの内壁と接触していると、この接触部分に化成電流が集中し易く、正極電極材料の化成度が低下し易い。しかし、このように芯金がチューブの内壁と接触する場合であっても、比L1/L0の平均を0.45以下とすることで、正極板全体における正極電極材料の化成度を高め易くなる。第2部分では、少なくとも一部がチューブの内壁と接触していてもよい。
芯金は、チューブの中心軸から見たとき、集電部の長さ方向に平行な径方向に対向する内壁と接触していてもよく、集電部の厚さ方向に平行な径方向に対向する内壁と接触していてもよい。あるいはこれ以外の方向に対向する内壁と接触していてもよい。いずれの場合にも、正極板全体における正極電極材料の化成度を高めることができる。金型を用いて容易に芯金を作製する観点からは、集電部の長さ方向に平行な径方向に対向する内壁と接触するように芯金を形成することが好ましい。
なお、所定の径方向に対向する内壁とは、チューブの長さ方向に垂直な断面において、内壁の、当該径方向を中心に±30°以内の部分を言うものとする。
集電部の長さ方向とは、正極板の主面における集電部の長さ方向を言う。従って、正極板において、複数のチューブは、集電部の長さ方向に沿って一列に並んでいる。集電部の厚さ方向は、正極板の厚さ方向と同じである。
本発明の他の側面に係る鉛蓄電池は、正極板を、少なくとも1つ備えていればよく、複数備えていてもよい。鉛蓄電池が複数の正極板を備える場合、1つの正極板が比L1/L0の平均が0.45以下の上記正極板であればよく、2つ以上の正極板が上記正極板であってもよい。電池内またはセル内における正極板全体の化成度をより均一にする観点からは、電池内または少なくとも1つのセル内の全ての正極板における比L1/L0の平均が、0.45以下であることが好ましく、0.40以下であることがより好ましい。
以下、本発明の一側面に係るクラッド式正極板およびそれを用いる鉛蓄電池の実施形態について、主要な構成要件ごとに説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
(クラッド式正極板)
クラッド式正極板は、複数の多孔質のチューブと、チューブ内に収容された芯金と、チューブ内に充填された正極電極材料と、一列に並んだ状態の複数の芯金の長さ方向の一端部を連結する集電部とを備える。さらに、クラッド式正極板は、通常、複数のチューブを連結する連座を備えている。
(芯金)
芯金は、例えば、鉛合金で構成されている。芯金には、Pb−Sb系合金を用いることが好ましい。Pb−Sb系合金は、必要に応じて、ヒ素、セレン、ビスマス、およびスズの少なくとも一種などを含んでいてもよい。
正極板全体に含まれる芯金において、第1部分の長さL1の、芯金の長さL0に対する比L1/L0の平均を、0.45以下とする。これにより、化成電流の集中を低減することができ、正極板全体における正極電極材料の化成度を高めることができる。正極板全体における化成度をさらに高める観点からは、比L1/L0の平均は、0.44以下が好ましく、0.40以下または0.36以下であることがより好ましく、0.35以下であることがさらに好ましく、0.30以下または0.20以下であってもよい。芯金の製造が容易である観点からは、比L1/L0の平均は、0.10以上であってもよく、0.15以上であってもよい。
正極板全体に含まれる芯金において、比L1/L0の平均は、0.10以上(または0.15以上)0.45以下、0.10以上(または0.15以上)0.44以下、0.10以上(または0.15以上)0.40以下、0.10以上(または0.15以上)0.36以下、0.10以上(または0.15以上)0.35以下、0.10以上(または0.15以上)0.30以下、あるいは0.10以上(または0.15以上)0.20以下であってもよい。
正極板における比L1/L0の平均が上記の範囲であればよいが、正極板の各芯金における比L1/L0が、0.45以下であることが好ましく、0.40以下または0.36以下であることがより好ましく、0.35以下であってもよく、0.30以下または0.20以下であることがさらに好ましい。各芯金における比L1/L0は、0.10以上であってもよく、0.15以上であってもよい。各芯金における比L1/L0がこのような範囲である場合、正極板全体における正極電極材料の化成度のばらつきをより効果的に抑制でき、正極板全体における化成度をより高め易い。
各芯金における比L1/L0は、0.10以上(または0.15以上)0.45以下、0.10以上(または0.15以上)0.40以下、0.10以上(または0.15以上)0.36以下、0.10以上(または0.15以上)0.35以下、0.10以上(または0.15以上)0.30以下、あるいは0.10以上(または0.15以上)0.20以下であってもよい。
クラッド式正極板において、芯金は、一般には、集電部側のテーパ部とテーパ部の先端から集電部とは反対側に延びる棒状部とを備えている。テーパ部は、集電部側から棒状部側に向かって径が小さくなっており、通常、円錐台状(円錐台状に類似する形状も含む)であるが、テーパ部の形状は、円錐台状に限られるものではない。また、芯金は、必ずしもテーパ部を有している必要はなく、集電部から棒状部が突き出した形状であってもよい。芯金は、必要に応じて、テーパ部と集電部との間に、柱状部を備えていてもよい。柱状部は、通常、円柱状(円柱状に類似の形状も含む)である。集電部の近傍では、チューブの集電部側の開口を塞ぐように、テーパ部、またはテーパ部および柱状部が配されている。テーパ部の一部とチューブの内壁との隙間、またはテーパ部の一部および柱状部とチューブの内壁との隙間には、樹脂(例えば、ポリオレフィン(ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)など))が充填されている。
芯金は、屈曲部分を有していなくてもよいが、比L1/L0を制御し易い観点から屈曲部分を有することが好ましい。屈曲部分の個数は、特に制限されず、芯金の長さなどに応じて決定すればよい。第2部分の比率を高めて化成度のばらつきをより抑制し易い観点からは、屈曲部分の個数は、例えば、1個または2個である。比L1/L0を制御し易い観点からは、屈曲部分は、芯金の棒状部に形成することが好ましい。
第2部分の位置は、特に制限されず、芯金の長さ方向のどの位置に形成されていてもよい。例えば、第2部分は、芯金の集電部側に形成されていてもよく、集電部とは反対側に形成されていてもよく、芯金の長さ方向における中央付近に形成されていてもよい。また、これらのうち、複数箇所に第2部分が形成されていてもよい。芯金を容易に製造し易い観点からは、集電部とは反対側に第2部分を形成することが好ましい。同様の観点から、芯金の集電部とは反対側の他端部から1つの第2部分が形成されていることが好ましい。
第2部分の長さL2の90%以上(好ましくは95%以上)の部分において、芯金の表面からチューブ内壁までの距離Tは、1.0mm以下であることが好ましく、0.7mm以下または0.5mm以下であってもよい。第2部分の少なくとも一部では、芯金はチューブの内壁と接触していてもよい(つまり、距離Tは0mmであってもよい)。これらの場合には、通常、正極電極材料の化成度のばらつきが生じ易いが、比L1/L0の平均を上記の範囲とすることで、正極板全体における正極電極材料の化成度のばらつきを抑制する効果が高まり、化成度自体をさらに高めることができる。なお、距離Tは、0mm以上である。
第2部分の長さL2に占める、距離Tが1.0mm以下(または、0.7mm以下もしくは0.5mm以下)の部分、または芯金がチューブの内壁と接触している部分の長さの比率は、それぞれ、比L1/L0の場合に準じて、第2部分の長さL2を100%としたときの各部分の長さの比率(%)として求めることができる。長さL2に占める各部分の比率は、クラッド式正極板の各芯金について求めた値を全ての芯金について平均化することにより求められる平均値である。
チューブの長さ方向に垂直な断面において、チューブの中心軸から見たときに、第2部分は、どの位置に形成されていてもよい。例えば、第2部分は、チューブの中心軸から見たときに、集電部の長さ方向に沿う径方向およびその周辺に形成されていてもよい。また、第2部分は、チューブの中心軸から見たときに、集電部の厚さ方向に沿う径方向およびその周辺に形成されていてもよい。芯金がチューブの内壁と接触している場合、例えば、芯金は、チューブの中心軸から見たとき、集電部の長さ方向に沿う径方向と対向する内壁と接触していてもよく、集電部の厚さ方向に沿う径方向と対向する内壁と接触していてもよい。金型を用いて容易に芯金を作製し易い観点からは、集電部の長さ方向に沿う径方向と対向する内壁と接触するように芯金を形成することが好ましい。複数の芯金において、チューブの中心軸から見たときの第2部分の方向は、少なくとも2つの芯金において同方向であってもよく、全ての芯金において異なる方向であってもよい。
正極板において、芯金の長さL0は、例えば、150mm以上であり、200mm以上であってもよい。芯金の長さL0が250mm以上の場合には、特に、高速化成における化成度のばらつきが生じ易い。本発明の一側面に係る正極板では、化成度のばらつきを効果的に低減できるため、芯金の長さL0がこのような範囲である場合にも高速化成における化成度のばらつきを低減できる。芯金の長さL0の上限は特に制限されないが、芯金の長さL0は、例えば、900mm以下である。
芯金の棒状部の径は、例えば、2.5mm以上である。芯金の棒状部の径は、3.5mm以下であってもよい。
棒状部の径は、棒状部の長さ方向に垂直な断面の直径である。断面の形状が円でない場合には、断面の面積と同じ面積を有する円(相当円)の直径を棒状部の径とする。一本の芯金の棒状部において径が一定でない場合には、棒状部の任意の5箇所について測定した径の平均値が上記の範囲であることが好ましい。
芯金には、必要に応じて、突部(または突起)およびフィンの少なくとも一方などを設けてもよい。突部またはフィンを設けることで、距離Tの制御が容易になる。また、正極電極材料を充填する際の距離Tの変動を低減できる。突部またはフィンは、第1部分に設けてもよいが、距離Tを制御し易い観点からは、少なくとも第2部分に設けることが好ましい。突部およびフィンのそれぞれの個数も特に制限されず、1つであってもよく、2つ以上であってもよい。
芯金は、特に限定されないが、例えば、鋳造法(ダイキャスト法も含む)を利用して製造される。芯金は、通常、集電部と一体に形成される。より具体的には、芯金は、例えば、比L1/L0が所定の範囲となるような形状の金型を用いて形成してもよい。また、従来の手順で芯金を作製した後に、芯金を屈曲させることにより、比L1/L0の平均が上記の範囲となるように調節してもよい。必要に応じて、これらの技術を組み合わせてもよい。
図1は、本発明の一実施形態に係るクラッド式正極板を模式的に示す上面図である。図2は、図1のII−II線における断面を矢印方向から見たときの概略断面図である。クラッド式正極板3は、複数の多孔質のチューブ31と、チューブ31内に収容された芯金32と、チューブ31内に収容された正極電極材料33と、複数の芯金32を連結する集電部34と、を備える。各チューブ31には、1つの芯金32が収容されており、複数の芯金32は、一列に並んだ状態で、長さ方向の一端部が集電部34により連結されている。複数のチューブ31は、芯金32を収容した状態で、チューブ31の長さ方向とは垂直な方向に(または集電部34の長さ方向に沿って)一列に並んだ状態となっている。そして、集電部34と複数のチューブ31の集電部34側の一端部とは、上部連座35により覆われている。チューブ31の集電部34側の開口は、芯金32の集電部34側の一端部と上部連座35により封止されている。集電部34の長さ方向の一端部には、クラッド式正極板3から集電するための耳部34aが形成されている。耳部34aは、上部連座35から外に突出した状態となっている。複数のチューブ31の長さ方向の他端部は、下部連座36により連結された状態となっている。各チューブ31の他端部側の開口は、下部連座36により封止されている。
芯金32は、芯金32の長さ方向の一端部に形成されたテーパ部322と、テーパ部322に連結し、テーパ部322の反対側に向かって延びる棒状部323とを備えている。芯金32は、テーパ部322が集電部34側で、棒状部323が集電部34とは反対側になるようにチューブ31内に収容されている。テーパ部322は、集電部34側から反対側に向かって径が小さくなっており、棒状部323は、テーパ部322の集電部34とは反対側の先端から延びている。図2の例においては、芯金32は、テーパ部322と集電部34との間に断面が円柱状の柱状部321を有している。チューブ31の集電部34側の開口は、芯金32の柱状部321および上部連座35でほぼ塞がれた状態である。芯金32の柱状部321と、チューブ31の開口側の端部との間には、上部連座35が介在する状態で上部連座35を構成する樹脂により溶着されている。集電部34および芯金32の柱状部321付近は、上部連座35で覆われている。
図2の例において、芯金32は、屈曲部分32aを有している。屈曲部分32aは、棒状部323に形成されている。棒状部323は、チューブ31の中心軸付近に位置するテーパ部322の先端から屈曲部分32aまで、チューブ31の概ね中心軸付近から内壁に向かって延びている。そして、棒状部323は、屈曲部分32a付近から棒状部323の集電部34とは長さ方向の他端部(または集電部34とは反対側の端部)までチューブ31の内壁に沿って延びている。屈曲部分32a付近から集電部34側では、芯金32の表面とチューブ31の内壁との距離が1.5mmを超える第1部分P1が形成されている。屈曲部分32a付近から集電部34とは反対側では、芯金32とチューブ31の内壁との距離が1.5mm以下の第2部分P2が形成されている。なお、芯金32は、集電部34側の柱状部321においてチューブ31の内壁と接触しているが、この部分は第2部分P2には含めないものとする。チューブ31の長さ方向と平行な方向において、第1部分P1の長さL1の芯金32の長さL0に対する比L1/L0を、クラッド式正極板3の全ての芯金32について平均化した平均値を0.45以下とする。これにより、化成電流をより均一化することができるため、正極板3全体における正極電極材料の化成度を高めることができる。なお、芯金32の長さL0は、チューブ31の長さ方向と平行な方向における第1部分P1の長さL1と第2部分P2の長さL2との合計である。
一方、従来のクラッド式正極板では、図10に示すように、第1部分P1の長さL1の、芯金132の長さL0に対する比L1/L0は、図2の場合に比べて格段に大きくなっている。そのため、わずかな第2部分P2に化成電流が集中し易くなり、第1部分P1(特に、集電部34側の付近)では化成が進行し難くなる。よって、従来のクラッド式正極板では、正極板全体における正極電極材料の化成度を高めることが難しい。
図3は、図2のIII−III線における断面を矢印方向から見たときの概略断面図である。図2の例では、図3に示すように、芯金32の第2部分P2は、チューブ31の中心軸Cから見たときに、集電部34の厚さ方向Dに平行な径方向DR1と対向する内壁側に位置している。径方向DR1と対向する内壁とは、径方向DR1を0°とした±30°の範囲(つまり、図3中のθが、0°≦θ≦30°の範囲)の内壁を意味する。第2部分P2の少なくとも一部は、チューブ31の内壁と接触していてもよい。なお、集電部34の長さ方向は、厚さ方向Dと直交する方向であり、図3中にDで表す。
チューブ31の長さ方向に垂直な断面において、芯金32の第2部分P2の位置は、図3の例に限らず、どの位置であってもよい。図4は、図3とは別の、芯金の第2部分の位置の態様を説明するための概略断面図である。図4では、芯金32の第2部分P2は、チューブ31の中心軸Cから見たときに、集電部34の長さ方向Dに平行な径方向DR2と対向する内壁側に位置している。径方向DR2と対向する内壁とは、径方向DR2を0°とした±30°の範囲(つまり、図4中のθが、0°≦θ≦30°の範囲)の内壁を意味する。この例においても、第2部分P2の少なくとも一部は、チューブ31の内壁と接触していてもよい。
図4の場合の芯金32の集電部34の長さ方向に平行な断面における状態を説明するための概略断面図を図6に示す。図5には、図1のクラッド式正極板3を耳部34aとは反対側の側面から見た側面図を示す。図1のクラッド式正極板3において、耳部34aとは反対側のチューブ31内に収容された芯金32が図4のような芯金である場合、図6は、図5のVI−VI線における断面を矢印方向から見たときの概略断面図になる。また、図4は、図6のIV−IV線における断面を矢印方向から見たときの概略断面図になる。図6に示すように、図4の例では、クラッド式正極板3の側面側に芯金32の第2部分P2が位置することになる。
なお、図3および図4では、正極電極材料33を省略している。
図7に、別の形状の芯金を示す。図1の正極板が図7の芯金を備える場合には、図7は、図1のVII−VII線における断面を矢印方向から見たときの概略断面図である。図7の例において、芯金232は、2つの屈曲部分232a,232bを有している。いずれの屈曲部分も棒状部323に形成されている。芯金232の表面からチューブ31の内壁までの距離Tが1.5mm以下の第2部分P2には、チューブ31の内壁に向かって突出する突部37が設けられている。突部37が第2部分P2とチューブ31の内壁との間に存在することで、正極電極材料を充填しても第2部分P2において距離Tがある程度一定に維持される。図7では、屈曲部分232a,232bにより芯金232の形状が異なるとともに、突部37が形成されている点で図2とは異なるが、それ以外は図2の説明を参照できる。
(その他)
集電部は、例えば、鉛合金で構成されている。集電部には、Pb−Sb系合金を用いることが好ましい。Pb−Sb系合金は、必要に応じて、ヒ素、セレン、ビスマス、およびスズの少なくとも一種などを含んでいてもよい。
多孔質のチューブは、内部に芯金を収容して、正極電極材料を保持できればよい。多孔質のチューブは、通常、チューブ状の繊維集合体である。チューブ状の繊維集合体としては、繊維をチューブ状に編み上げたものを使用してもよく、チューブ状の不織布または織布を用いてもよい。繊維としては、例えば、無機繊維(ガラス繊維など)、樹脂繊維が挙げられるが、これらに限定されるものではない。多孔質のチューブは、必要に応じて、加熱処理されたものであってもよい。また、多孔質のチューブは、チューブ状の繊維集合体に、樹脂を含浸させたものであってもよい。
チューブの長さは、芯金の長さに応じて選択すればよい。チューブの外径および厚さは、例えば、芯金の形状、または鉛蓄電池の用途に応じて選択される。
チューブの外径は、例えば、8mm以上である。チューブの外径は、10mm以下であってもよい。なお、チューブの外径とは、チューブの長さ方向に垂直な断面の直径(具体的には、断面においてチューブの外縁で形成される円の直径)である。断面の形状が円でない場合には、断面と同じ面積の円の直径をチューブの外径とする。
チューブの厚さは、例えば、0.3mm以上である。チューブの厚さは、0.6mm以下であってもよい。
連座は、通常、チューブの集電部側の一端部および集電部とは反対側の他端部に、それぞれ配置される。より具体的には、チューブの長さ方向において、チューブの集電部側の一端部は、通常、上部連座により集電部に固定されている。チューブの他端部は、下部連座により封止されている。上部連座は、通常、芯金の柱状部および集電部を覆うように、樹脂を一体成形することにより形成される。下部連座は、通常、樹脂製であり、各チューブの他端部の開口内に挿入される。集電部には、通常、鉛蓄電池から電気を取り出すための耳部が形成されている。本明細書中、正極板において、耳部がある側(つまり、集電部側)を上部と称し、集電部とは反対側を下部と称することがある。
正極電極材料は、酸化還元反応により容量を発現する正極活物質(具体的には、二酸化鉛および硫酸鉛の少なくとも一方)を含む。正極電極材料は、必要に応じて、他の添加剤を含んでもよい。
クラッド式正極板は、集電部で長さ方向の一端部が連結された複数の芯金を、それぞれ、複数のチューブ内に収容し、鉛粉をチューブ内に充填することにより形成される未化成の正極板を化成することにより形成される。芯金の収容と鉛粉の充填の順序は、特に制限されない。より具体的には、未化成の正極板は、複数の芯金のそれぞれをチューブ内に収容した後、上部連座で複数のチューブの一端部と集電部とを固定し、チューブの他端部の開口から鉛粉をチューブ内に充填し、下部連座で複数のチューブの他端部の開口を封止することにより形成される。鉛粉は、少なくとも一酸化鉛を含む。鉛粉は、金属鉛を含んでもよい。また、鉛粉と鉛丹とを併用してもよい。
鉛粉の充填は、乾式および湿式のいずれであってもよい。例えば、乾式の場合、乾燥状態の鉛粉がそのままチューブに充填され、湿式の場合、スラリー状の鉛粉が充填される。必要に応じて、鉛粉には添加剤を添加してもよい。例えば、スラリー状の鉛粉は、鉛粉と、水と、硫酸と、必要に応じて添加剤などとを混合することにより調製される。従来のクラッド式正極板では、乾式充填に比べて湿式充填の場合に、芯金に充填される鉛粉による応力が加わり易く、芯金が偏心し易いため、化成度のばらつきが生じ易い。本発明の一側面に係る正極板によれば、湿式充填の場合でも、化成度のばらつきを抑制できる。
未化成の正極板は、さらに化成される。化成により、二酸化鉛が生成する。化成は、例えば、鉛蓄電池の電槽内の硫酸を含む電解液中に、未化成のクラッド式正極板を含む極板群を浸漬させた状態で、極板群を充電することにより行うことができる。このような化成は電槽化成と呼ばれる。ただし、電槽化成の場合に限らず、正極板の化成は、極板群の組み立て前に行ってもよい。なお、極板群は、正極板と、負極板と、正極板および負極板の間に介在するセパレータと、を備える。
(鉛蓄電池)
本発明の他の側面に係る鉛蓄電池は、正極板と、負極板と、正極板および負極板の間に介在するセパレータと、電解液とを備える。少なくとも1つの正極板として、上記のクラッド式正極板が用いられる。鉛蓄電池または鉛蓄電池に含まれる少なくとも1つのセルが複数の正極板を備える場合、鉛蓄電池またはセル内の少なくとも1つの正極板が上記のクラッド式正極板であればよく、他の正極板としては、従来のクラッド式正極板(例えば、比L1/L0の平均が0.45より大きいクラッド式正極板)を用いてもよい。複数の正極板を備える電池内全体またはセル内全体において、より均一でより高い化成度を確保する観点からは、電池内またはセルの少なくとも1つの全ての正極板における比L1/L0の平均が、正極板について記載した比L1/L0の平均の範囲となることが好ましい。この場合、化成は、極板群の組み立て前に各正極板について行ってもよいが、極板群を組み立てた後または電池を組み立てた後に化成を行うことが好ましい。電池またはセル全体において正極電極材料のより高い化成度を確保する観点からは、電池内または少なくとも1つのセル内の全ての正極板における比L1/L0の平均は、0.40以下が好ましく、0.36以下、0.35以下、0.30以下、または0.20以下であってもよい。電池内または少なくとも1つのセル内の全ての正極板における比L1/L0の平均は、0.10以上であってもよく、0.15以上であってもよい。
電池内または少なくとも1つのセル内の全ての正極板における比L1/L0の平均は、0.10以上(または0.15以上)0.45以下、0.10以上(または0.15以上)0.40以下、0.10以上(または0.15以上)0.36以下、0.10以上(または0.15以上)0.35以下、0.10以上(または0.15以上)0.30以下、あるいは0.10以上(または0.15以上)0.20以下であってもよい。
鉛蓄電池における全ての正極板の化成度を高める観点から、鉛蓄電池に含まれる全ての正極板の各芯金について、比L1/L0が、0.45以下または0.40以下が好ましく、0.36以下または0.35以下であることがより好ましく、0.30以下または0.20以下であることがさらに好ましい。各芯金についての比L1/L0は、0.10以上であってもよく、0.15以上であってもよい。
鉛蓄電池に含まれる全ての正極板の各芯金について、比L1/L0は、0.10以上(または0.15以上)0.45以下、0.10以上(または0.15以上)0.40以下、0.10以上(または0.15以上)0.36以下、0.10以上(または0.15以上)0.35以下、0.10以上(または0.15以上)0.30以下、あるいは0.10以上(または0.15以上)0.20以下であってもよい。
鉛蓄電池は、例えば、電槽内に、正極板と、負極板と、これらの間に介在するセパレータと、電解液とを収容することにより製造できる。
(負極板)
鉛蓄電池の負極板は、集電体と、負極電極材料とで構成されている。負極電極材料は、負極板から負極集電体を除いたものである。なお、負極板には、マット、ペースティングペーパなどの部材が貼り付けられていることがある。このような部材(貼付部材)は負極板と一体として使用されるため、負極板に含まれるものとする。また、負極板がこのような部材を含む場合には、負極電極材料は、負極集電体および貼付部材を除いたものである。
なお、極板群にセパレータとマットとが併用される場合、ならびに負極板に不織布を主体とするマットが貼り付けられている場合は、負極板の厚さはマットを含む厚さとする。マットは負極板と一体として使用されるためである。ただし、セパレータにマットが貼り付けられている場合は、マットの厚さはセパレータの厚さに含まれる。
負極集電体は、例えば、鉛または鉛合金の鋳造、もしくは鉛または鉛合金シートの加工により形成することができる。加工方法としては、例えば、エキスパンド加工または打ち抜き(パンチング)加工が挙げられる。負極集電体として、格子状の集電体(負極格子)を用いると、負極電極材料を担持させ易いため好ましい。
負極集電体に用いる鉛合金は、Pb−Sb系合金、Pb−Ca系合金、Pb−Ca−Sn系合金のいずれであってもよい。これらの鉛もしくは鉛合金は、更に、添加元素として、Ba、Ag、Al、Bi、As、Seなどからなる群より選択された少なくとも1種を含んでもよい。負極集電体は、表面層を備えていてもよい。負極集電体の表面層と内側の層とは組成が異なるものであってもよい。表面層は、負極集電体の一部に形成されていてもよい。表面層は、負極集電体の耳部に形成されていてもよい。耳部の表面層は、SnまたはSn合金を含有するものであってもよい。
負極電極材料は、酸化還元反応により容量を発現する負極活物質(鉛もしくは硫酸鉛)を必須成分として含み、有機防縮剤、炭素質材料、硫酸バリウムなどの添加剤を含み得る。充電状態の負極活物質は、海綿状鉛であるが、未化成の負極板は、通常、鉛粉を用いて作製される。鉛粉は、少なくとも一酸化鉛を含むことが好ましい。鉛粉は、さらに金属鉛を含んでもよい。
有機防縮剤には、リグニン類および合成有機防縮剤の少なくとも一方を用いてもよい。リグニン類としては、リグニン、リグニンスルホン酸またはその塩(ナトリウム塩などのアルカリ金属塩など)などのリグニン誘導体などが挙げられる。合成有機防縮剤は、硫黄元素を含む有機高分子である。合成有機防縮剤としては、例えば、硫黄含有基を有するとともに芳香環を有する化合物のアルデヒド化合物(アルデヒドまたはその縮合物、例えば、ホルムアルデヒドなど)による縮合物が挙げられるが、これに限定されるものではない。
負極電極材料中に含まれる有機防縮剤の含有量は、例えば0.01質量%以上であり、0.05質量%以上であってもよい。有機防縮剤の含有量は、例えば、1.0質量%以下であり、0.5質量%以下であってもよい。ここで、負極電極材料中に含まれる有機防縮剤の含有量とは、既化成の満充電状態の鉛蓄電池から、後述の方法で採取した負極電極材料における含有量である。
負極電極材料中に含まれる有機防縮剤の含有量は、0.01質量%以上1.0質量%以下(または0.5質量%以下)、あるいは0.05質量%以上1.0質量%以下(または0.5質量%以下)であってもよい。
本明細書中、鉛蓄電池の満充電状態とは、25℃の水槽中で、定格容量として記載の数値の0.2倍の電流で2.8/セルに達するまで定電流充電を行った後、さらに定格容量として記載の数値の0.2倍の電流で2時間、定電流充電を行った状態である。
なお、満充電状態の鉛蓄電池は、既化成の鉛蓄電池を満充電したものをいう。鉛蓄電池の満充電は、化成後であれば、化成直後でもよく、化成から時間が経過した後に行ってもよい(例えば、化成後で、使用中(好ましくは使用初期)の鉛蓄電池を満充電してもよい)。使用初期の電池とは、使用開始後、それほど時間が経過しておらず、ほとんど劣化していない電池をいう。
負極電極材料中に含まれる炭素質材料としては、カーボンブラック、黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボンなどを用いることができる。カーボンブラックとしては、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、ランプブラックなどが例示される。黒鉛は、黒鉛型の結晶構造を含む炭素材料であればよく、人造黒鉛および天然黒鉛のいずれであってもよい。
負極電極材料中の硫酸バリウムの含有量は、例えば、0.5質量%以上であり、1質量%以上であってもよい。硫酸バリウムの含有量は、例えば、3.0質量%以下であり、2質量%以下であってもよい。
負極電極材料中の硫酸バリウムの含有量は、0.5質量%以上3.0質量%以下(または2質量%以下)、あるいは1質量%以上3.0質量%以下(または2質量%以下)であってもよい。
負極板は、負極集電体に、負極ペーストを塗布または充填し、熟成および乾燥することにより未化成の負極板を作製し、その後、未化成の負極板を化成することにより形成できる。負極ペーストは、鉛粉と各種添加剤に、水と硫酸を加えて混練することで作製する。熟成工程では、室温、もしくは室温より高温かつ高湿度で、未化成の負極板を熟成させることが好ましい。
化成は、鉛蓄電池の電槽内の硫酸を含む電解液中に、未化成の負極板を含む極板群を浸漬させた状態で、極板群を充電することにより行うことができる。ただし、化成は、鉛蓄電池または極板群の組み立て前に行ってもよい。化成により、海綿状鉛が生成する。
以下、負極電極材料に含まれる有機防縮剤、硫酸バリウムの分析方法について記載する。分析に先立ち、化成後の鉛蓄電池を満充電してから解体して分析対象の負極板を入手する。入手した負極板を水洗し、負極板から硫酸分を除去する。水洗は、水洗した負極板表面にpH試験紙を押し当て、試験紙の色が変化しないことが確認されるまで行う。ただし、水洗を行う時間は、30分以内とする。水洗した負極板は、減圧環境下、60±5℃で6時間程度乾燥する。次に、負極板から負極電極材料を分離して粉砕し、初期試料を入手する。
(A)有機防縮剤の定量
(A−1)負極電極材料中の有機防縮剤の定性分析
初期試料を1mol/LのNaOH水溶液に浸漬し、有機防縮剤を抽出する。抽出された有機防縮剤を含むNaOH水溶液から不溶成分を濾過で除く。得られた濾液(以下、分析対象濾液とも称する。)を脱塩した後、濃縮し、乾燥することにより、有機防縮剤の粉末(以下、分析対象粉末とも称する。)が得られる。脱塩は、脱塩カラムを用いて行うか、濾液をイオン交換膜に通すことにより行うか、もしくは、濾液を透析チューブに入れて蒸留水中に浸すことにより行う。
分析対象粉末を用いて測定した赤外分光スペクトル、分析対象粉末を蒸留水等で希釈し、紫外可視吸光度計で測定した紫外可視吸収スペクトル、分析対象粉末を重水等の所定の溶媒で希釈し、得られた溶液のNMRスペクトル、物質を構成している個々の化合物の情報を得ることができる熱分解GC−MSなどから情報を得ることで、有機防縮剤の種類を特定する。
(A−2)負極電極材料中の有機防縮剤の定量分析
上記(A−1)と同様に、分析対象濾液の紫外可視吸収スペクトルを測定する。有機防縮剤に特徴的なピーク強度と、予め作成した検量線とを用いて、負極電極材料中の有機防縮剤の含有量を求める。
なお、有機防縮剤の含有量が未知の鉛蓄電池を入手して有機防縮剤の含有量を測定する際に、有機防縮剤の構造式の厳密な特定ができないために検量線に同一の有機防縮剤が使用できないことがある。この場合には、当該電池の負極から抽出した有機防縮剤と、紫外可視吸収スペクトル、赤外分光スペクトル、およびNMRスペクトルなどが類似の形状を示す、別途入手可能な有機高分子を使用して検量線を作成することで、紫外可視吸収スペクトルを用いて有機防縮剤の含有量を測定するものとする。
(B)硫酸バリウムの定量分析
初期試料10gに対し、(1+2)硝酸を50ml加え、約20分加熱し、鉛成分を硝酸鉛として溶解させる。次に、硝酸鉛を含む溶液を濾過して、炭素質材料、硫酸バリウム等の固形分を濾別する。
得られた固形分を水中に分散させて分散液とした後、篩いを用いて分散液から炭素質材料および硫酸バリウム以外の成分(例えば補強材)を除去する。次に、分散液に対し、予め質量を測定したメンブレンフィルターを用いて吸引ろ過を施し、濾別された試料とともにメンブレンフィルターを110℃の乾燥器で乾燥する。濾別された試料は、炭素質材料と硫酸バリウムとの混合試料である。乾燥後の混合試料とメンブレンフィルターとの合計質量からメンブレンフィルターの質量を差し引いて、混合試料の質量(M)を測定する。その後、乾燥後の混合試料をメンブレンフィルターとともに坩堝に入れ、700℃以上で灼熱灰化させる。残った残渣は酸化バリウムである。酸化バリウムの質量を硫酸バリウムの質量に変換して硫酸バリウムの質量(M)を求める。
(セパレータ)
負極板と正極板との間に配置されるセパレータには、不織布、微多孔膜などが用いられる。負極板と正極板との間に介在させるセパレータの厚さおよび枚数は、それぞれ、極間距離に応じて選択すればよい。
不織布は、繊維を織らずに絡み合わせたマットであり、繊維を主体とする。不織布は、例えば、不織布の60質量%以上が繊維で形成されている。繊維としては、ガラス繊維、ポリマー繊維(ポリオレフィン繊維、アクリル繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などのポリエステル繊維など)、パルプ繊維などを用いることができる。中でも、ガラス繊維が好ましい。不織布は、繊維以外の成分、例えば、耐酸性の無機粉体、および結着剤としてのポリマーの少なくとも一方を含んでもよい。
一方、微多孔膜は、繊維成分以外を主体とする多孔性のシートであり、例えば、造孔剤(ポリマー粉末およびオイルの少なくとも一方など)を含む組成物をシート状に押し出し成形した後、造孔剤を除去して細孔を形成することにより得られる。微多孔膜は、耐酸性を有する材料で構成することが好ましく、ポリマー成分を主体とするものが好ましい。ポリマー成分としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンが好ましい。
セパレータは、例えば、不織布のみで構成してもよく、微多孔膜のみで構成してもよい。また、セパレータは、必要に応じて、不織布と微多孔膜との積層物、異種または同種の素材を貼り合わせた物、または異種または同種の素材において凹凸をかみ合わせた物などであってもよい。
セパレータは、シート状であってもよく、袋状に形成されていてもよい。正極板と負極板との間に1枚のシート状のセパレータを挟むように配置してもよい。また、折り曲げた状態の1枚のシート状のセパレータで極板を挟むように配置してもよい。この場合、折り曲げたシート状のセパレータで挟んだ正極板と、折り曲げたシート状のセパレータで挟んだ負極板とを重ねてもよく、正極板および負極板の一方を折り曲げたシート状のセパレータで挟み、他方の極板と重ねてもよい。また、シート状のセパレータを蛇腹状に折り曲げ、正極板および負極板を、これらの間にセパレータが介在するように、蛇腹状のセパレータに挟み込んでもよい。蛇腹状に折り曲げられたセパレータを用いる場合、折り曲げ部が鉛蓄電池の水平方向に沿うように(例えば、折り曲げ部が水平方向と平行になるように)セパレータを配置してもよく、鉛直方向に沿うように(例えば、折り曲げ部が鉛直方向と平行になるように)セパレータを配置してもよい。蛇腹状に折り曲げられたセパレータでは、セパレータの両方の主面側に交互に凹部が形成されることになる。正極板または負極板の上部には通常耳部が形成されているため、折り曲げ部が鉛蓄電池の水平方向に沿うようにセパレータを配置する場合、セパレータの一方の主面側の凹部のみに正極板および負極板が配置される(つまり、隣接する正極板と負極板との間には、二重のセパレータが介在した状態となる)。折り曲げ部が鉛蓄電池の鉛直方向に沿うようにセパレータを配置する場合、一方の主面側の凹部に正極板を収容し、他方の主面側の凹部に負極板を収容することができる(つまり、隣接する正極板と負極板との間には、セパレータが一重に介在した状態とすることができる。)。袋状のセパレータを用いる場合、袋状のセパレータが正極板を収容していてもよいし、負極板を収容してもよい。なお、負極板においても、正極板の場合と同様に、耳部がある側を上部と称し、耳部とは反対側を下部と称する。
(電解液)
電解液は、硫酸を含む水溶液であり、必要に応じてゲル化させてもよい。満充電状態の鉛蓄電池における電解液の20℃における比重は、例えば、1.20以上であり、1.23以上であってもよい。電解液の20℃における比重は、例えば、1.32以下であり、1.30以下であってもよい。
満充電状態の鉛蓄電池における電解液の20℃における比重は、1.20以上(または1.23以上)1.32以下、あるいは1.20以上(または1.23以上)1.30以下であってもよい。
図8は、本発明の実施形態に係る鉛蓄電池のフタを外した一例を模式的に示す斜視図である。図9Aは、図8の鉛蓄電池の正面図であり、図9Bは、図9AのIXB−IXB線における断面を矢印方向から見たときの概略断面図である。
鉛蓄電池1は、極板群11と電解液12とを収容する電槽10を具備する。極板群11は、それぞれ複数枚の負極板2およびクラッド式正極板3を、セパレータ4を介して積層することにより構成されている。ここでは、負極板2とクラッド式正極板3との間に、シート状のセパレータ4が挟まれている状態を示すが、セパレータの形態は特に限定されない。
複数の負極板2のそれぞれの上部には、上方に突出する集電用の耳部(図示せず)が設けられている。複数のクラッド式正極板3のそれぞれの上部にも、上方に突出する集電用の耳部(図示せず)が設けられている。そして、負極板2の耳部同士は負極用ストラップ5aにより連結され一体化されている。同様に、クラッド式正極板3の耳部同士も正極用ストラップ5bにより連結されて一体化されている。負極用ストラップ5aの上部には負極柱6aの下端部が固定され、正極用ストラップ5bの上部には正極柱6bの下端部が固定されている。
《化成度の評価》
なお、正極板の化成度の評価は、以下のようにして行われる。
正極電極材料の化成度は、鉛蓄電池を解体し、取り出したクラッド式正極板を用いて、下記の手順で評価される。
取り出した正極板について、芯金の長さL0の部分に相当する部分を、チューブの長さ方向に集電部側から上部、中部、および下部の3つの部分に3等分に分割する。上部、中部、および下部の各部について、正極電極材料を取り出し回収する。各部について、回収した正極電極材料から1.5gをビーカーに採取し、酢酸水溶液(酢酸濃度5質量%)50cmを加える。混合物を加熱し、10分間沸騰させる。混合物を冷却後、濾紙(JIS3801−1995の6種)を用いて濾過する。濾紙上の残渣を蒸留水で十分に洗浄し、水溶性の成分を除去する。洗浄した濾紙上の残渣を全て、約100cmの蒸留水でビーカー内に洗い落とす。濾紙上に残った残滓を、硝酸水溶液(硝酸濃度30質量%)10cm、および過酸化水素水(過酸化水素濃度10質量%)1cmの混合物を用いてゆっくり溶かしながら、得られる溶液をビーカーに流し入れる。さらに、残った残滓を約30cmの蒸留水で洗浄し、得られる水溶液をビーカーに流し入れる。ビーカー内に回収された混合物を、時計皿でフタをして、80℃まで加熱し、80℃で10分間加熱を続けた後、冷却する。冷却した混合物を、濾紙(JIS3801−1995の6種)を用いて濾過し、濾液をメスフラスコに回収する。濾紙を蒸留水で洗浄しながら、メスフラスコ内の溶液の体積が約250cmになるまで、洗浄水をメスフラスコに回収する。メスフラスコに回収した水溶液から50cmを分取し、酒石酸1g、およびアンモニア水(アンモニア濃度28質量%)20cmを加える。得られる溶液に、BT(エリオクロムブラックT)指示薬を数滴添加し、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)水溶液(EDTA濃度0.1mol/L)で滴定する。溶液の色が赤紫から青に変化する点を滴定の終点とし、このときのEDTA水溶液の量m1(cm)を求める。そして、下記式により、正極電極材料に含まれるPbのうちPbOに変換されたPbの比率(原子%)を求める。このPbの比率を、正極電極材料の化成度(%)とする。
PbOに変換されたPbの比率(原子%)=化成度(%)=m1(cm)×X×FA×100
(式中、FAは、EDTA溶液1g当たりの力価であり、Xは、EDTA水溶液の滴定量1cmあたりのPb2+イオンの捕捉量から求められるPbOの量(=23.92mg)である。)なお、PbOの分子量は239.2であり、EDTA1molが1molのPb2+イオンを捕捉するものとする。
本発明の一側面に係る正極板によれば、高速化成の場合でも、チューブ内の正極電極材料の化成度のばらつきを低減できるとともに、正極板全体における正極電極材料の化成度のばらつきを低減できる。例えば、チューブの上部と下部とにおける正極電極材料の化成度(%)の差を、10%以下に低減することができ、さらに7%以下または5%以下にまで低減することができる。
また、高速化成の場合でも、正極板全体において正極電極材料の化成度を高めることができる。高速化成の場合に、正極板全体において正極電極材料の化成度の平均を、例えば、88%以上、好ましくは90%以上にまで向上することができる。
本発明の一側面に係るクラッド式正極板および鉛蓄電池を以下にまとめて記載する。
(1)複数の多孔質のチューブと、前記チューブ内に収容された芯金と、前記チューブ内に充填された正極電極材料と、一列に並んだ状態の複数の前記芯金の長さ方向の一端部を連結する集電部とを備え、
前記芯金の長さ方向において、前記芯金の表面から前記チューブの内壁までの距離Tが1.5mmを超える部分を第1部分とし、前記距離Tが1.5mm以下である部分を第2部分とするとき、前記第1部分の長さL1の、前記芯金の長さL0に対する比L1/L0の平均は、0.45以下である、鉛蓄電池用クラッド式正極板。
(2)少なくとも1つの正極板と、少なくとも1つの負極板と、前記正極板および前記負極板の間に介在するセパレータと、電解液とを備え、
前記正極板の少なくとも1つは、上記(1)に記載のクラッド式正極板である、鉛蓄電池。
(3)上記(2)において、前記負極板は、負極電極材料を含んでいてもよく、前記負極電極材料は、有機防縮剤を含んでいてもよい。前記負極電極材料中の前記有機防縮剤の含有量は、0.01質量%以上、0.05質量%以上であってもよい。
(4)上記(2)または(3)において、前記負極板は、負極電極材料を含んでいてもよく、前記負極電極材料は、有機防縮剤を含んでいてもよい。前記負極電極材料中の前記有機防縮剤の含有量は、1.0質量%以下、または0.5質量%以下であってもよい。
(5)上記(2)〜(4)のいずれか1つにおいて、前記負極板は、負極電極材料を含んでいてもよく、前記負極電極材料は、硫酸バリウムを含んでいてもよい。前記負極電極材料中の硫酸バリウムの含有量は、0.5質量%以上または1質量%以上であってもよい。
(6)上記(2)〜(5)のいずれか1つにおいて、前記負極板は、負極電極材料を含んでいてもよく、前記負極電極材料は、硫酸バリウムを含んでいてもよい。前記負極電極材料中の硫酸バリウムの含有量は、3.0質量%以下、または2質量%以下であってもよい。
(7)上記(2)〜(6)のいずれか1つにおいて、満充電状態の前記鉛蓄電池における電解液の20℃における比重は、1.20以上または1.23以上であってもよい。
(8)上記(2)〜(7)のいずれか1つにおいて、満充電状態の前記鉛蓄電池における電解液の20℃における比重は、1.32以下または1.30以下であってもよい。
(9)上記(1)〜(8)のいずれか1つにおいて、前記正極板の各芯金における前記比L1/L0が、0.45以下、0.40以下、0.36以下、0.35以下、0.30以下、または0.20以下であってもよい。
(10)上記(1)〜(9)のいずれか1つにおいて、前記正極板の各芯金における前記比L1/L0は、0.10以上であってもよく、0.15以上であってもよい。
(11)上記(1)〜(10)のいずれか1つにおいて、前記比L1/L0の平均は、0.44以下、0.40以下、0.36以下、0.35以下、0.30以下、または0.20以下であってもよい。
(12)上記(1)〜(11)のいずれか1つにおいて、前記比L1/L0の平均は、0.10以上、または0.15以上であってもよい。
(13)上記(2)、または(2)〜(12)の(2)に関係する場合において、前記鉛蓄電池は、少なくとも1つのセルを備え、前記セルは、複数の正極板を備え、前記セルの少なくとも1つについて、全ての正極板における前記比L1/L0の平均が、0.45以下、0.40以下、0.36以下、または0.30以下であってもよい。
(14)上記(2)、(13)、または(2)〜(12)の(2)に関係する場合において、前記鉛蓄電池は、少なくとも1つのセルを備え、前記セルは、複数の正極板を備え、前記セルの少なくとも1つについて、全ての正極板における前記比L1/L0の平均が、0.10以上、または0.15以上であってもよい。
(15)上記(2)、または(3)〜(14)の(2)に関係する場合において、前記鉛蓄電池は、複数の正極板を備え、全ての正極板における前記比L1/L0の平均が、0.45以下、0.40以下、0.36以下、または0.30以下であってもよい。
(16)上記(2)、(15)、または(3)〜(14)の(2)に関係する場合において、前記鉛蓄電池は、複数の正極板を備え、全ての正極板における前記比L1/L0の平均が、0.10以上、または0.15以上であってもよい。
(17)上記(1)〜(16)のいずれか1つにおいて、前記芯金は、屈曲部分を有してもよい。
(18)上記(1)〜(17)のいずれか1つにおいて、前記第2部分は、前記芯金の長さ方向において前記集電部とは反対側に形成されていてもよい。
(19)上記(1)〜(18)のいずれか1つにおいて、前記第2部分の長さの90%以上(好ましくは95%以上)において、前記距離Tは、1.0mm以下、0.7mm以下、または0.5mm以下であってもよい。
(20)上記(1)〜(19)のいずれか1つにおいて、前記第2部分の少なくとも一部では、前記芯金が前記内壁と接触していてもよい。
(21)上記(1)〜(20)のいずれか1つにおいて、前記芯金は、前記チューブの中心軸から見たとき、前記集電部の長さ方向に平行な径方向と対向する前記内壁と接触していてもよい。
(22)上記(1)〜(20)のいずれか1つにおいて、前記芯金は、前記チューブの中心軸から見たとき、前記集電部の厚さ方向に平行な径方向と対向する前記内壁と接触していてもよい。
(23)上記(1)〜(22)のいずれか1つにおいて、前記芯金の長さL0は、150mm以上、200mm以上、または250mm以上であってもよい。
(24)上記(1)〜(23)のいずれか1つにおいて、前記芯金の長さL0は、900mm以下であってもよい。
(25)上記(1)〜(24)のいずれか1つにおいて、前記芯金の棒状部の径は、2.5mm以上であってもよい。
(26)上記(1)〜(25)のいずれか1つにおいて、前記芯金の棒状部の径は、3.5mm以下であってもよい。
(27)上記(1)〜(26)のいずれか1つにおいて、前記チューブの外径は、8mm以上であってもよい。
(28)上記(1)〜(27)のいずれか1つにおいて、前記チューブの外径は、10mm以下であってもよい。
(29)上記(1)〜(28)のいずれか1つにおいて、前記チューブの厚さは、0.3mm以上であってもよい。
(30)上記(1)〜(29)のいずれか1つにおいて、前記チューブの厚さは、0.6mm以下であってもよい。
[実施例]
以下、本発明を実施例および比較例に基づいて具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例の鉛蓄電池は全て、定格電圧2Vの単セル電池である。
《鉛蓄電池A1〜A5》
(1)クラッド式正極板の作製
図7に示すような芯金を備える図1に示すようなクラッド式正極板を下記の手順で作製する。
まず、耳部を備える集電部に長さ方向の一端部が一体化された15本の芯金のそれぞれを、15個のチューブ内にそれぞれ収容する。正極スラリー充填後の15本の芯金における比L1/L0の平均が表1に示す値となるように、各芯金における比L1/L0が調節される。このとき、各芯金には、図7に示すように第2部分が集電部の反対側に配置されるように、屈曲部分が2か所に形成される。屈曲部分は、第2部分が集電部の長さ方向に平行な径方向(DR2)と対向する内壁と接触するように形成される。各屈曲部分の曲率半径rは、10mmとする。各芯金の第2部分には、高さ0.5mmの突部を2〜3箇所設けることで、芯金の表面からチューブの内壁までの距離Tが調節される。より具体的には、正極スラリー充填後において、距離Tが0.5mm以下(具体的には、0.4〜0.5mm)である部分が、第2部分の長さL2の95%以上を占めるように距離Tが調節される。耳部が露出した状態となるように、集電部とチューブの集電部側の長さ方向の一端部とを樹脂で覆うことにより樹脂製の上部連座を形成する。なお、芯金および集電部の材質は、Pb−Sb系合金であり、各芯金の長さは295mmである。チューブとしては、長さ310mm、外径9.5mmのガラス繊維製の多孔質チューブを用いる。
鉛粉(酸化鉛80質量%および金属鉛20質量%を含む)と鉛丹と水と希硫酸とを混練することにより調製した正極スラリーを、チューブの長さ方向の他端部の開口から充填する。鉛粉と鉛丹との質量比は、9:1とする。次いで、チューブの他端部の開口を、下部連座で封止し、乾燥させる。このようにして、未化成のクラッド式正極板を作製する。作製した正極板の幅は、143mmである。
なお、正極スラリーの充填量は、化成完了後の正極板が、化成後の正極活物質をPbO換算で1枚あたり841±8g含むように調整される。
(2)負極の作製
鉛粉(酸化鉛80質量%および金属鉛20質量%を含む)と、有機防縮剤(リグニンスルホン酸ナトリウム)0.15質量%、および硫酸バリウム1.2質量%を、水および希硫酸とともに混合して、負極ペーストを調製する。負極集電体としてSb系合金製の鋳造格子に負極ペーストを充填し、乾燥させることにより未化成の負極板を作製する。このとき、厚みが2.6mmの格子を用いて厚み2.7mmの負極板(負極板A)を作製するとともに、厚みが4.4mmの格子を用いて厚み4.5mmの負極板(負極板B)を作製する。負極板Aと負極板Bとは半数ずつ作製する。負極板A1枚に含まれる負極活物質量が、Pb換算で420±6g、負極板B1枚に含まれる負極活物質量が、Pb換算で750±6gとなるように、負極ペーストの充填量を調節する。負極板の長さは、正極板のチューブの長さと同じにし、負極板の幅は、正極板の幅と同じにする。
(3)鉛蓄電池の作製
未化成の負極板4枚と、たがいに同形状の芯金を持つ未化成のクラッド式正極板3枚とを、間にポリプロピレン製の微多孔膜であるセパレータを介在させた状態で、交互に重ねて、図9Bに示すような極板群を形成する。極板群の外側の2枚の負極板としては、負極板Aを用い、内側の2枚の負極板としては、負極板Bを用いる。
極板群をポリプロピレン製の電槽に収容し、14質量%濃度の希硫酸を注液して、電槽の開口に蓋を接着により固定する。電槽を30℃の水槽内に保持した状態で化成を行う。化成は、高速化成で行う。高速化成は、化成時間40時間で、31.5Aの化成電流を定電流で通電することにより行う。このようにして鉛蓄電池A1〜A5を得る。
(4)化成度の評価
製作した鉛蓄電池から取り出した正極板について、既述の手順で、正極電極材料の化成度を評価する。
表1には、各鉛蓄電池の3枚の正極板のうち、中央の正極板について求めた各部分の化成度、および鉛蓄電池全体の正極板の化成度を、それぞれ、3つの鉛蓄電池について平均化した平均値を示す。
《鉛蓄電池A6》
各芯金において、第2部分が集電部の厚さ方向に平行な径方向(DR1)と対向する内壁と接触するように屈曲部が形成される。これ以外は、鉛蓄電池A4と同様にクラッド式正極板および鉛蓄電池を作製し、評価を行う。
《鉛蓄電池A7》
正極スラリー充填後において、15本の芯金のうち耳側の9本の比L1/L0が、それぞれ0.1となり、他の6本の芯金の比L1/L0が、それぞれ0.6となるように各芯金の比L1/L0を調節する。これら以外は、鉛蓄電池A1と同様にクラッド式正極板および鉛蓄電池を作製し、評価を行う。
《鉛蓄電池B1〜B3》
鉛蓄電池B1〜B3のクラッド式正極板では、芯金は、基本的にチューブの長さ方向に沿うように直線状に形成される。正極スラリー充填後の15本の芯金の比L1/L0の平均が表1に示す値となるように、突部の個数および位置の少なくとも一方を調節する。鉛蓄電池B1およびB3について、正極板における比L1/L0の平均は、それぞれ0.6であり、鉛蓄電池B2について、比L1/L0は、0.75である。これらの値は、従来のクラッド正極板を湿式製造法で製作した場合の比L1/L0の典型的な範囲内である。化成は、鉛蓄電池B3では、通常化成で行い、鉛蓄電池B1およびB2では、高速化成で行う。これら以外は、鉛蓄電池A1と同様に、クラッド式正極板、ならびに鉛蓄電池B1〜B3をそれぞれ作製し、評価を行う。なお、通常化成は、化成時間68時間で、18.5Aの化成電流を定電流で通電することにより行う。
鉛蓄電池A1〜A7、およびB1〜B3の結果を表1に示す。表1には、各3つの鉛蓄電池について、各正極板における比L1/L0の平均、および芯金の偏り方向についても合わせて示す。
Figure 2021044123
表1に示されるように、クラッド式正極板の比L1/L0の平均が0.45より大きく、通常化成の場合には、チューブの上部においてある程度高い正極電極材料の化成度を確保することができる(鉛蓄電池B3)。そのため、これらの鉛蓄電池では、正極板全体の化成度のばらつきもそれほど大きくならない。ところが、高速化成の場合には、チューブの上部において化成が進行し難くなり、第1部分を含む上部の化成度が極端に低くなる(鉛蓄電池B1)。その結果、鉛蓄電池B1では、鉛蓄電池B3に比べて、正極板全体における化成度も大きく低下する。
それに対し、鉛蓄電池A1〜A7では、正極板の比L1/L0の平均を0.45以下にする。これにより、高速化成条件下にも拘わらず、第1部分を含む上部において正極電極材料の高い化成度を確保することができる。これは、第2部分の比率が大きくなることで、より均一に化成電流を流すことができると考えられる。その結果、正極板全体において、化成初期の第2部分における化成電流密度を低減できるとともに、化成効率を向上できるため、正極板全体における正極電極材料の化成度を高めることができる。また、高速化成条件下でも、正極板全体および鉛蓄電池全体において、通常化成の場合に匹敵するかもしくはそれより高い化成度を確保することができる。よって、生産性を向上できる。正極板全体の化成度が、より均一かつ高くなる観点からは、比L1/L0の平均は、0.30以下が好ましく、0.20以下であることがさらに好ましい。比L1/L0の平均が0.44以下または0.35以下である場合にも、88%以上または89%以上といった高い化成度(正極板全体における正極電極材料の化成度)を確保することができるため、これらの範囲とすることも好ましい。
なお、鉛蓄電池A4およびA6の結果からは、第2部分の偏りの方向が、集電部の長さ方向に平行な方向および厚さ方向に平行な方向のいずれの場合でも、正極板全体の高い化成度を確保できることが分かる。
また、鉛蓄電池A3と鉛蓄電池A7との比較からと、正極板の比L1/L0の平均が同程度であれば、各芯金の比L1/L0が異なる場合でも、正極板全体の化成度は同程度となることが確認できる。
《鉛蓄電池A8〜A10およびR1》
正極スラリー充填後において、芯金の表面からチューブの内壁までの距離Tの芯金の長さ方向における最小値Tminが、表2に示す値となるように突部の高さを調節する。これ以外は、鉛蓄電池A3と同様にクラッド正極板および鉛蓄電池を作製し、評価を行う。なお、鉛蓄電池A8〜A10では、正極スラリー充填後の距離T=最小値Tminである部分が、第2部分の長さL2の95%以上を占める。鉛蓄電池R1(参考例)では、正極スラリー充填後の距離T=最小値Tminである部分が、集電部とは反対側に形成され、芯金の長さL0の80%を占める。
《鉛蓄電池B4》
鉛蓄電池B1と同じ芯金を用い、芯金の長さ方向がチューブの中心軸と重なるように各芯金をワイヤで固定する。正極スラリーを充填し、ワイヤを除去する。正極スラリー充填後の距離Tは、芯金の長さL0の全体において3mm(=最小値Tmin)である。これら以外は、鉛蓄電池B1と同様にクラッド正極板および鉛蓄電池を作製し、評価を行う。
鉛蓄電池A8〜A10、R1、およびB4の結果を表2に示す。表2には、鉛蓄電池A3の結果に加え、各3つの鉛蓄電池について、各正極板における比L1/L0の平均についても合わせて示す。
Figure 2021044123
表2より、芯金の表面からチューブ内壁までの距離Tの最小値Tminが1.5mm以下であれば、概ね90%以上の高い化成度を確保できることが判る。それに対し、最小値Tminが1.5mmを超えると化成度が低下し、90%以上の化成度を確保することが難しくなる。Tminが2.0mm以上では化成度88%より低くなる。鉛蓄電池A3、A8〜A10、およびR1では、芯金の長さL0に占める距離Tが最小値Tminとなる部分の比率は、ほぼ同じである。従って、正極板全体における正極電極材料の化成度を高めるには、距離Tが1.5mm以下の部分(つまり、第2部分)の比率を制御することが重要である。正極板全体においてより高い化成度を確保し易い観点からは、第2部分の長さL2の大部分(例えば、90%以上、好ましくは95%以上)において距離Tが、1.5mm以下であることが好ましく、1.0mm以下であることがより好ましく、0.5mm以下であってもよい。
《鉛蓄電池A11〜A15》
正極スラリー充填後の15本の芯金の比の平均が表3に示す値となるように、突部の個数および位置の少なくとも一方を調節して、3枚の正極板(正極板1〜3)をそれぞれ作製する。正極板1を極板群に含まれる3枚の正極板のうち中央の正極板として用い、正極板2および3を負極板Aと負極板Bとに挟まれるように配置する。これら以外は、鉛蓄電池A1と同様にクラッド式正極板および鉛蓄電池を作製し、評価を行う。
鉛蓄電池A11〜A15の結果を表3に示す。表3には、鉛蓄電池A2およびB1の結果も合わせて示す。また、表3には、各3つの鉛蓄電池について、各正極板における比L1/L0の平均、全正極板における比L1/L0の平均についても合わせて示す。
Figure 2021044123
表3に示されるように、正極板における比L1/L0の平均が0.45以下であれば、その正極板については、正極板全体の化成度のばらつきが抑制され、高い化成度を確保できる。電池全体の正極板の比L1/L0の平均が0.45以下の場合には、電池全体の正極電極材料の化成度をおよそ87%以上にまで高めることができる。電池全体の化成度をさらに高める観点からは、電池全体の正極板の比L1/L0の平均を0.40以下または0.36以下とすることが好ましい。このような高い化成度は、各正極板における化成度のばらつきが抑制されることで、電池全体における化成度のばらつきが低減されたことによるものと考えられる。
ここでは、正極板を3枚備える鉛蓄電池を例に挙げて効果を説明した。しかし、これらの場合に限らず、正極板の数が3枚より多い場合も少ない場合も、上記と同様のまたは類似の効果が得られる。また、鉛蓄電池または鉛蓄電池に含まれるセルが、複数の正極板を備える場合には、少なくとも1つの正極板において、比L1/L0が特定の範囲であれば上記のような効果が得られる。しかし、鉛蓄電池または少なくとも1つのセルにおいて、全ての正極板の比L1/L0の平均を特定の範囲とすることで、化成度のばらつきをより効果的に抑制することができる。
本発明の一側面に係るクラッド式正極板は、産業用の長寿命型の蓄電池または電動車両(フォークリフトなど)用の蓄電池などに好適に利用できる。また、クラッド式正極板は、例えば、自動車、バイクなどの車両用の蓄電池に用いてもよい。しかし、これらの用途は、一例であり、クラッド式正極板の用途はこれらに限定されるものではない。
1:鉛蓄電池
2:負極板
3:正極板
31:チューブ
32,232:芯金
32a,232a,232b:屈曲部分
321:柱状部
322:テーパ部
323:棒状部
33:正極電極材料
34:集電部
34a:正極板の耳部
35:上部連座
36:下部連座
37:突部
4:セパレータ
5a:負極用ストラップ
5b:正極用ストラップ
6a:負極柱
6b:正極柱
10:電槽
11:極板群
12:電解液
132:芯金
P1:第1部分
P2:第2部分
L1:第1部分の長さ
L2:第2部分の長さ
L0:芯金の長さ
:集電部の長さ方向
:集電部の厚さ方向
C:チューブの中心軸
R1:集電部の厚さ方向に平行な径方向
R2:集電部の長さ方向に平行な径方向

Claims (12)

  1. 複数の多孔質のチューブと、前記チューブ内に収容された芯金と、前記チューブ内に充填された正極電極材料と、一列に並んだ状態の複数の前記芯金の長さ方向の一端部を連結する集電部とを備え、
    前記芯金の長さ方向において、前記芯金の表面から前記チューブの内壁までの距離Tが1.5mmを超える部分を第1部分とし、前記距離Tが1.5mm以下である部分を第2部分とするとき、前記第1部分の長さL1の、前記芯金の長さL0に対する比L1/L0の平均は、0.45以下である、鉛蓄電池用クラッド式正極板。
  2. 前記芯金は、屈曲部分を有する、請求項1に記載の鉛蓄電池用クラッド式正極板。
  3. 前記比L1/L0の平均は、0.30以下である、請求項1または2に記載の鉛蓄電池用クラッド式正極板。
  4. 前記第2部分は、前記芯金の長さ方向において前記集電部とは反対側に形成されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の鉛蓄電池用クラッド式正極板。
  5. 前記第2部分の長さの90%以上において前記距離Tが1.0mm以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の鉛蓄電池用クラッド式正極板。
  6. 前記第2部分の少なくとも一部では、前記芯金が前記内壁と接触している、請求項1〜5のいずれか1項に記載の鉛蓄電池用クラッド式正極板。
  7. 前記芯金は、前記チューブの中心軸から見たとき、前記集電部の長さ方向に平行な径方向と対向する前記内壁と接触している、請求項6に記載の鉛蓄電池用クラッド式正極板。
  8. 前記芯金は、前記チューブの中心軸から見たとき、前記集電部の厚さ方向に平行な径方向と対向する前記内壁と接触している、請求項6に記載の鉛蓄電池用クラッド式正極板。
  9. 少なくとも1つの正極板と、少なくとも1つの負極板と、前記正極板および前記負極板の間に介在するセパレータと、電解液とを備え、
    前記正極板の少なくとも1つは、請求項1〜8のいずれか1項に記載のクラッド式正極板である、鉛蓄電池。
  10. 少なくとも1つのセルを備え、
    前記セルは、複数の正極板を備え、
    前記セルの少なくとも1つについて、全ての正極板における前記比L1/L0の平均が、0.45以下である、請求項9に記載の鉛蓄電池。
  11. 複数の正極板を備え、
    全ての正極板における前記比L1/L0の平均が、0.45以下である、請求項9に記載の鉛蓄電池。
  12. 前記全ての正極板における前記比L1/L0の平均が、0.40以下である、請求項10または11に記載の鉛蓄電池。
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