JP7388110B2 - 鉛蓄電池 - Google Patents

鉛蓄電池 Download PDF

Info

Publication number
JP7388110B2
JP7388110B2 JP2019184698A JP2019184698A JP7388110B2 JP 7388110 B2 JP7388110 B2 JP 7388110B2 JP 2019184698 A JP2019184698 A JP 2019184698A JP 2019184698 A JP2019184698 A JP 2019184698A JP 7388110 B2 JP7388110 B2 JP 7388110B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
electrode plate
negative electrode
positive electrode
lead
positive
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2019184698A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2021061171A (ja
Inventor
力郎 小嶋
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
GS Yuasa International Ltd
Original Assignee
GS Yuasa International Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by GS Yuasa International Ltd filed Critical GS Yuasa International Ltd
Priority to JP2019184698A priority Critical patent/JP7388110B2/ja
Priority to CN202011067686.8A priority patent/CN112635926A/zh
Publication of JP2021061171A publication Critical patent/JP2021061171A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7388110B2 publication Critical patent/JP7388110B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • HELECTRICITY
    • H01ELECTRIC ELEMENTS
    • H01MPROCESSES OR MEANS, e.g. BATTERIES, FOR THE DIRECT CONVERSION OF CHEMICAL ENERGY INTO ELECTRICAL ENERGY
    • H01M10/00Secondary cells; Manufacture thereof
    • H01M10/06Lead-acid accumulators
    • H01M10/12Construction or manufacture
    • H01M10/14Assembling a group of electrodes or separators
    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02EREDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
    • Y02E60/00Enabling technologies; Technologies with a potential or indirect contribution to GHG emissions mitigation
    • Y02E60/10Energy storage using batteries
    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02PCLIMATE CHANGE MITIGATION TECHNOLOGIES IN THE PRODUCTION OR PROCESSING OF GOODS
    • Y02P70/00Climate change mitigation technologies in the production process for final industrial or consumer products
    • Y02P70/50Manufacturing or production processes characterised by the final manufactured product

Landscapes

  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Manufacturing & Machinery (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • Electrochemistry (AREA)
  • General Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Secondary Cells (AREA)
  • Connection Of Batteries Or Terminals (AREA)
  • Battery Electrode And Active Subsutance (AREA)

Description

本発明は、鉛蓄電池に関する。
鉛蓄電池は、正極板および負極板とこれらの間に介在するセパレータとを備える極板群と、電解液と、極板群から電気を取り出すための端子として機能する正極極柱および負極極柱を備えている。極板群中の正極板と正極極柱とは、正極ストラップにより電気的に接続されており、負極板と負極極柱とは、負極ストラップにより電気的に接続されている。
強度等を確保する観点から、鉛蓄電池の正極極柱またはストラップにSbを添加することが知られている。しかし、正極極柱または正極ストラップが腐食して、Sbが溶出すると、負極ストラップまたは負極板の耳に析出して負極板の耳が腐食する。
特許文献1には、鉛蓄電池において、正極格子と正極棚と正極極柱および正極接続体で構成される正極部材は実質上Sbを含有しない鉛もしくは鉛合金からなり、負極格子と負極棚と負極極柱および負極接続体で構成される負極部材のうち負極格子骨部を除く部位は実質上Sbを含有しない鉛もしくは鉛合金からなり、負極格子骨部もしくは負極活物質のいずれか一方はSbを含み、Sbの負極活物質量に対する含有量が0.001~0.1質量%であることが記載されている。
特許文献2は、中性領域で重金属吸着能が高く酸性領域で重金属吸着能が低くなる希土類化合物からなる重金属吸着剤を含有させた微多孔性シートからなり、前記シートの厚さ方向に、前記重金属吸着剤が偏在して、前記シートの水平方向に延びる前記重金属吸着剤の含有層と前記重金属吸着剤の実質的な非含有層とが形成される鉛蓄電池用セパレータを提案している。
特開2003-346888号公報 特開2007-311333号公報
従来の鉛蓄電池では、正極板と負極板との間の隙間が比較的広くなっていた。一方、正極板と負極板との間の隙間を狭くして、体積エネルギー密度を向上させることも検討されている。
正極極柱または正極ストラップにSbが含まれる場合でも、極板とセパレータとの隙間が広い場合には、負極ストラップへのSbの析出は問題とならず、このような課題は従来知られていなかった。また、極板とセパレータとの隙間が狭い場合でも、正極側の構成部材にSbが含まれなければ、負極側におけるSbの析出の課題は生じない。しかし、極板とセパレータとの隙間が狭い場合に、正極極柱および正極ストラップの少なくとも一方にSbが含まれていると、負極ストラップに多量のSbが析出し、負極板の上部に硫酸鉛が蓄積するという課題が生じることが明らかとなった。
本発明の一側面は、正極板と、負極板と、前記正極板および前記負極板の間に介在するセパレータと、を備える極板群と、電解液と、正極極柱および負極極柱と、前記正極板と前記正極極柱とを電気的に接続する正極ストラップと、前記負極板と前記負極極柱とを電気的に接続する負極ストラップと、を備え、
前記正極極柱および前記正極ストラップからなる群より選択される少なくとも1つはSbを含み、
前記極板群において、前記セパレータと、前記セパレータに対向する前記正極板および前記負極板との間の隙間は、0.5mm以下であり、
前記極板群の上部に、Sb捕捉剤を含む捕捉部材が配置されている、鉛蓄電池に関する。
鉛蓄電池において、極板とセパレータとの隙間が狭い場合に、負極板の上部における硫酸鉛の蓄積を大幅に低減できる。
本発明の一実施形態に係る鉛蓄電池の蓋を外した状態を模式的に示す上面図である。 図1の鉛蓄電池のII-II線による矢示断面図である。 極板の厚みの測定箇所の説明図である。
本発明の一側面に係る鉛蓄電池は、正極板、負極板、ならびに正極板および負極板の間に介在するセパレータ、を備える極板群と、電解液と、正極極柱および負極極柱と、正極板と正極極柱とを電気的に接続する正極ストラップと、負極板と負極極柱とを電気的に接続する負極ストラップと、を備える。正極極柱および正極ストラップからなる群より選択される少なくとも1つはSbを含む。極板群において、セパレータと、セパレータに対向する正極板および負極板との間の隙間は、0.5mm以下である。極板群の上部に、Sb捕捉剤を含む捕捉部材が配置されている。なお、Sb捕捉剤を含む捕捉部材を、Sb捕捉部材と称することがある。
鉛蓄電池において、正極極柱および正極ストラップでは、充放電により腐食層が形成される。正極極柱および正極ストラップの少なくとも一方にSbが含まれると、充電時に腐食層からSbが溶出する。極板とセパレータとの隙間が広い従来の鉛蓄電池では、正極側の腐食層から溶出したSbの、負極ストラップへの析出は問題とならなかった。しかし、極板とセパレータとの隙間が狭い鉛蓄電池では、腐食層から溶出したSbが負極ストラップに選択的に析出し、負極板の上部に硫酸鉛が蓄積するという課題が生じることが明らかとなった。この負極板上部における硫酸鉛の蓄積は、負極ストラップ上に多量に析出したSbにより、負極板上部において局部電池反応が顕著になるためと考えられる。なお、負極板上部における硫酸鉛の蓄積は、極板とセパレータとの隙間が0.5mmを超えると、ほとんど見られない。つまり、負極板上部における硫酸鉛の蓄積という課題は、鉛蓄電池において、正極極柱および正極ストラップの少なくとも一方にSbが含まれ、かつ、極板とセパレータとの隙間が0.5mm以下の場合に初めて生じる課題であると言える。
また、従来の鉛蓄電池では、Sbなどの金属捕捉能を有するセパレータを用いたり、金属捕捉能を有する粉末を電解液に添加したりすることがある。しかし、極板とセパレータとの隙間が0.5mm以下の場合には、セパレータまたは粉末の金属捕捉能を十分に発揮させることが難しく、負極板上部における硫酸鉛の蓄積量を大きく低減することは難しい。
本発明の上記側面によれば、極板群の上部に、Sb捕捉部材を配置する。このSb捕捉部材により、正極極柱または正極ストラップから溶出したSbを、極板群上で効率よく捕捉することができる。これにより、極板群における極板とセパレータとの隙間が0.5mm以下の場合(換言すれば、極板群における圧迫が大きい場合)に、負極ストラップへのSb析出量を低減することができる。負極ストラップにおけるSb析出量を低減できるため、局部電池の形成が抑制され、負極板上部における硫酸鉛の蓄積(およびサルフェーション)が抑制される。局部電池の形成が抑制されることで、自己放電が抑制されるとともに、電解液が副反応により消費されることが抑制されるため、減液が低減される。これらの点から、鉛蓄電池の寿命性能の低下を抑制できる。
正極極柱または正極ストラップにSbが含まれる従来の鉛蓄電池では、極板とセパレータとの隙間が、0.5mmを超える場合には、負極板上部における硫酸鉛の蓄積はほとんど見られない。隙間が0.5mmを超える場合には、溶出したSbは、隙間を通って下方にも移動でき、極板群内に拡散されることになるためであると考えられる。一方、隙間が0.5mm以下の場合には、隙間が小さくなるほど、負極板上部における硫酸鉛の蓄積が多くなる。例えば、隙間が0.5mmから、0.3mm、0.1mmと小さくなるにつれて、負極板上部における硫酸鉛の蓄積は顕著になる。ところが、この従来の鉛蓄電池における隙間の大きさに対する負極板上部の硫酸鉛の蓄積量の挙動は、本発明の上記側面に係る鉛蓄電池における挙動とは全く異なる。具体的には、本発明の上記側面に係る鉛蓄電池では、隙間が0.5mmから0.3mmまたは0.1mmと小さくなるにつれて、負極板上部における硫酸鉛の蓄積量を低減することができる。なお、隙間がある程度小さくなると、負極板上部における硫酸鉛の蓄積量は、少ない状態でほとんど変化しなくなる。このような観点から、隙間を、0.3mm以下としてもよい。また、隙間を0.2mm以下としても、負極板上部における硫酸鉛の蓄積量を大幅に低減することができる。
なお、本発明の上記側面に係る鉛蓄電池は、液式電池である。そのため、本明細書中、極板群または極板における上下は、鉛蓄電池の鉛直方向における上下を意味する。
本明細書中、負極板の上部とは、正極極柱または正極ストラップの下方の負極板において、負極電極材料が存在する上端から、負極板の耳部側の側端部の上部に向かって広がる三角形またはそれに類似する形状の領域とする。
Sb捕捉部材の少なくとも一部は、負極ストラップの下面より下に配置されていてもよい。この場合、捕捉部材が、正極極柱または正極ストラップから溶出したSbと接触し易くなるため、Sb捕捉部材によるSbの捕捉効果をさらに高めることができる。
Sb捕捉部材は、少なくとも1つの貫通孔を備えていてもよい。このようなSb捕捉部材は、防沫板としての機能を有するため、補水時に水と電解液とを混合し易くなる。
なお、本明細書中、貫通孔とは、大気圧下で水がスムーズに通過するサイズおよび形状を有し、Sb捕捉部材を厚み方向に貫通する孔を言うものとする。貫通孔の平均孔径は、例えば、1mm以上であり、5mm以上であってもよい。貫通孔の平均孔径は、例えば、50mm以下である。
貫通孔の孔径は、Sb捕捉部材の1つの主面(具体的には、Sb捕捉部材の極板群とは反対側の主面)における貫通孔の開口と同じ面積を有する円の直径とする。平均孔径は、この円の直径を平均化したものである。
Sb捕捉部材は、微小な空孔を複数有する多孔質材料で形成されていてもよい。この場合、Sb捕捉部材の表面積が大きくなるため、Sbの捕捉機能をさらに高めることができる。
微小な空孔とは、上記の貫通孔よりも孔径が小さな空孔であり、上記の貫通孔とは区別される。微小な空孔が複数存在することにより、Sb捕捉部材の表面積を高めることができる。ただし、微小な空孔は、Sb捕捉部材の厚み方向に貫通するものであってもよい。微小な空孔の平均空孔径は、例えば、100μm以下であり、50μm以下であってもよい。微小な空孔の平均空孔径は、例えば、5nm以上である。微小な空孔の平均空孔径は、ポロシメータ(島津製作所(株)製の自動ポロシメータ、オートポアIV9505)を用いて、水銀圧入法により測定される。なお、微小な空孔の平均空孔径は、上記の貫通孔がない領域について測定される。
Sb捕捉部材の形状は、特に制限されないが、極板群の上部に安定に配置し易い観点からは、シート状であることが好ましい。
液式の鉛蓄電池では、Sbの溶出および析出が問題となり易い。従って、本発明の上記側面に係る鉛蓄電池は、液式の鉛蓄電池に適用される。
なお、極板とセパレータとの隙間(隙間G)は、下記式により算出される。
隙間G(mm)=(極間距離D(mm)-セパレータの厚みT(mm))/2
極間距離Dおよびセパレータの厚みTは以下の手順で測定される。なお、セパレータの厚みTは、下記のように鉛蓄電池から取り出したセパレータについて測定されるため、極板群における圧迫の程度が大きければ、隙間Gは、マイナスの値を取り得る。
(極間距離D)
満充電状態の鉛蓄電池を分解し、極板群を取り出し、式:「極間距離D=(ピッチ-正極板の厚み-負極板の厚み)/2」から算出する。ピッチとは、隣接する一対の正極板の耳の中心間距離である。極板群に含まれる全ての隣接する正極板の対についてピッチを求め、それらの平均値を上記式に代入する。例えば、極板群が正極板6枚と負極板7枚とで構成される場合、ピッチは5箇所で測定される。また、極板群が正極板7枚と負極板7枚とで構成される場合、ピッチは6箇所で測定される。耳の中心間距離は、複数の正極板の耳を並列接続するストラップの断面の下部で測定すればよい。複数の直列接続された極板群を具備する鉛蓄電池においては、任意の2つの極板群(セル)におけるピッチの平均値を求める。例えば、6個の極板群を含む12Vの鉛蓄電池の場合、正極端子側から数えて1セル目と4セル目の極板群においてピッチを測定し、平均化する。
正極板の厚みは、極板群に含まれる全ての正極板の厚みの平均値であり、負極板の厚みは、極板群に含まれる全ての負極板の厚みの平均値である。各極板の厚みは、例えば極板の周縁に沿って、1辺当たり両端付近および中心付近の3箇所(合計8箇所:図3中数字1~8で示す位置)をマイクロメータで測定し、平均化する。正極板は、水洗により硫酸を除去し、大気圧下で乾燥してから厚みを測定し、負極板は、水洗により硫酸を除去し、真空乾燥(大気圧より低い圧力下で乾燥)してから厚みを測定する。
極板群にセパレータとマットとが併用される場合、ならびに極板に不織布を主体とするマットが貼り付けられている場合は、極板の厚みはマットを含む厚みとする。マットは極板と一体として使用されるためである。ただし、セパレータにマットが貼り付けられている場合は、マットの厚みはセパレータの厚みに含まれる。
(セパレータの厚みT)
セパレータの厚みは、極板群(セル)に含まれる全てのセパレータの最大厚みの平均値である。水洗により、セパレータから硫酸を除去し、大気圧下で乾燥した後、セパレータの断面写真を撮影し、断面写真において5箇所で最大厚みを測定し、平均化する。
セパレータの最大厚みとは、セパレータがベース部と、ベース部の少なくとも一方の主面から突出するリブとを備える場合には、ベース部とリブとを含む厚みである。例えば、セパレータの両面にリブが形成されている場合、セパレータの最大厚みは、ベース部の厚みと、一方の主面のリブのベース部からの高さと、他方の主面のリブのベース部からの高さとの合計である。このときベース部の部位によってリブの高さが異なる場合は、高さが最大のリブを選択する。
本明細書中、鉛蓄電池の満充電状態とは、25℃±2℃の水槽中で、定格容量として記載の数値の0.2倍の電流(A)で2.5V/セルに達するまで定電流充電を行った後、さらに定格容量として記載の数値の0.2倍の電流(A)で2時間、定電流充電を行った状態である。なお、定格容量として記載の数値は、単位をAhとした数値である。定格容量として記載の数値を元に設定される電流の単位はAとする。
なお、満充電状態の鉛蓄電池は、既化成の鉛蓄電池を満充電したものをいう。鉛蓄電池の満充電は、化成後であれば、化成直後でもよく、化成から時間が経過した後に行ってもよい(例えば、化成後で、使用中(好ましくは使用初期)の鉛蓄電池を満充電してもよい)。使用初期の電池とは、使用開始後、それほど時間が経過しておらず、ほとんど劣化していない電池をいう。
以下、本発明の上記側面に係る鉛蓄電池の実施形態について、主要な構成要件ごとに説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
鉛蓄電池は、極板群と、電解液と、正極極柱および負極極柱と、正極ストラップと、負極ストラップと、極板群の上部に配置されるSb捕捉部材とを備える。鉛蓄電池は、例えば、電槽内に、極板群と、Sb捕捉部材と、電解液とを収容することにより製造できる。
(極板群)
極板群は、正極板と、負極板と、正極板および負極板の間に介在するセパレータと、を備える。極板群において、セパレータと、セパレータに対向する極板(具体的には、正極板および負極板)との間の隙間Gは、0.5mm以下であり、0.3mm以下であることが好ましく、0.2mm以下であることがさらに好ましい。隙間Gが0.5mmを超える場合、負極板の上部における硫酸鉛の蓄積の課題自体が生じない。隙間Gの下限は特に制限されないが、例えば、-0.3mm以上であってもよい。
(正極板)
鉛蓄電池の正極板は、ペースト式、クラッド式などに分類できる。ペースト式およびクラッド式のいずれの正極板を用いてもよい。
鉛蓄電池の正極板は、通常、正極集電体と、正極電極材料とを含む。正極電極材料は、正極集電体に保持されている。
正極集電体は、鉛(Pb)または鉛合金の鋳造により形成してもよく、鉛シートまたは鉛合金シートを加工して形成してもよい。加工方法としては、例えば、エキスパンド加工または打ち抜き(パンチング)加工が挙げられる。正極集電体として格子状の集電体を用いると、正極電極材料を担持させ易いため好ましい。
正極集電体に用いる鉛合金としては、耐食性および機械的強度の点で、Pb-Sb系合金、Pb-Ca系合金、Pb-Ca-Sn系合金が好ましい。正極集電体は、表面層を備えていてもよい。正極集電体の表面層と内側の層とは組成が異なるものであってもよい。表面層は、正極集電体の一部に形成されていてもよい。表面層は、正極集電体の格子部分のみや、耳部分のみ、枠骨部分のみに形成されていてもよい。
ペースト式正極板では、正極電極材料は、正極板から正極集電体を除いたものである。正極板には、マット、ペースティングペーパなどの部材が貼り付けられていることがある。このような部材(貼付部材)は正極板と一体として使用されるため、正極板に含まれるものとする。また、正極板が貼付部材(マット、ペースティングペーパなど)を含む場合には、正極電極材料は、ペースト式正極板では、正極板から正極集電体および貼付部材を除いたものである。
正極電極材料は、酸化還元反応により容量を発現する正極活物質(二酸化鉛もしくは硫酸鉛)を含む。正極電極材料は、必要に応じて、他の添加剤を含んでもよい。
未化成のペースト式正極板は、正極集電体に、正極ペーストを充填し、熟成、乾燥することにより得られる。正極ペーストは、鉛粉、添加剤、水、および硫酸を混練することで調製される。
未化成の正極板を化成することにより正極板が得られる。化成は、鉛蓄電池の電槽内の硫酸を含む電解液中に、未化成の正極板を含む極板群を浸漬させた状態で、極板群を充電することにより行うことができる。ただし、化成は、鉛蓄電池または極板群の組み立て前に行ってもよい。
(負極板)
鉛蓄電池の負極板は、集電体と、負極電極材料とで構成されている。負極電極材料は、負極板から負極集電体を除いたものである。なお、負極板には、マット、ペースティングペーパなどの部材が貼り付けられていることがある。このような部材(貼付部材)は負極板と一体として使用されるため、負極板に含まれるものとする。また、負極板が貼付部材を含む場合には、負極電極材料は、負極集電体および貼付部材を除いたものである。ただし、セパレータに貼付部材(マット、ペースティングペーパなど)が貼り付けられている場合には、貼付部材の厚みは、セパレータの厚みに含まれる。
負極集電体は、正極集電体の場合に準じて形成すればよく、例えば、鉛または鉛合金の鋳造、あるいは鉛または鉛合金シートの加工により形成することができる。負極集電体として、格子状の集電体(負極格子)を用いると、負極電極材料を担持させ易いため好ましい。
負極集電体に用いる鉛合金は、Pb-Sb系合金、Pb-Ca系合金、Pb-Ca-Sn系合金のいずれであってもよい。これらの鉛もしくは鉛合金は、更に、添加元素として、Ba、Ag、Al、Bi、As、Se、Cuなどからなる群より選択された少なくとも1種を含んでもよい。負極集電体は、表面層を備えていてもよい。負極集電体の表面層と内側の層とは組成が異なるものであってもよい。表面層は、負極集電体の一部に形成されていてもよい。表面層は、負極集電体の耳部に形成されていてもよい。耳部の表面層は、SnまたはSn合金を含有するものであってもよい。
負極電極材料は、酸化還元反応により容量を発現する負極活物質(鉛もしくは硫酸鉛)を必須成分として含み、添加剤(有機防縮剤、炭素質材料、硫酸バリウムなど)を含み得る。充電状態の負極活物質は、海綿状鉛であるが、未化成の負極板は、通常、鉛粉を用いて作製される。
有機防縮剤には、リグニン類および合成有機防縮剤からなる群より選択される少なくとも一種を用いてもよい。リグニン類としては、リグニン、リグニン誘導体などが挙げられる。リグニン誘導体としては、リグニンスルホン酸またはその塩(アルカリ金属塩(ナトリウム塩など)など)などが挙げられる。合成有機防縮剤は、硫黄元素を含む有機高分子であり、一般に、分子内に複数の芳香環を含むとともに、硫黄含有基として硫黄元素を含んでいる。硫黄含有基の中では、安定形態であるスルホン酸基もしくはスルホニル基が好ましい。スルホン酸基は、酸型で存在してもよく、Na塩のように塩型で存在してもよい。
有機防縮剤の具体例としては、硫黄含有基を有するとともに芳香環を有する化合物のアルデヒド化合物(アルデヒドまたはその縮合物(例えば、ホルムアルデヒド))による縮合物が好ましい。芳香環としては、ベンゼン環、ナフタレン環などが挙げられる。芳香環を有する化合物が複数の芳香環を有する場合には、複数の芳香環は直接結合または連結基(例えば、アルキレン基、スルホン基)などで連結していてもよい。このような構造としては、例えば、ビフェニル、ビスフェニルアルカン、ビスフェニルスルホンが挙げられる。芳香環を有する化合物としては、例えば、上記の芳香環と、ヒドロキシ基およびアミノ基の少なくとも一方とを有する化合物が挙げられる。ヒドロキシ基またはアミノ基は、芳香環に直接結合していてもよく、ヒドロキシ基またはアミノ基を有するアルキル鎖として結合していてもよい。芳香環を有する化合物としては、ビスフェノール化合物、ヒドロキシビフェニル化合物、ヒドロキシナフタレン化合物、フェノール化合物などが好ましい。芳香環を有する化合物は、さらに置換基を有していてもよい。有機防縮剤は、これらの化合物の残基を一種含んでもよく、複数種含んでもよい。ビスフェノール化合物としては、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールFなどが好ましい。
硫黄含有基は、化合物に含まれる芳香環に直接結合していてもよく、例えば、硫黄含有基を有するアルキル鎖として芳香環に結合していてもよい。
また、例えば、上記の芳香環を有する化合物と、単環式の芳香族化合物(アミノベンゼンスルホン酸、アルキルアミノベンゼンスルホン酸、フェノールスルホン酸またはその置換体など)との、アルデヒド化合物による縮合物を、有機防縮剤として用いてもよい。
負極電極材料中に含まれる有機防縮剤の含有量は、例えば0.01質量%以上であり、0.02質量%以上であってもよく、0.05質量%以上であってもよい。有機防縮剤の含有量は、例えば、1.0質量%以下であり、0.8質量%以下であってもよく、0.5質量%以下であってもよい。ここで、負極電極材料中に含まれる有機防縮剤の含有量とは、既化成の満充電状態の鉛蓄電池から、後述の方法で採取した負極電極材料における含有量である。
負極電極材料中に含まれる有機防縮剤の含有量は、0.01質量%以上(または0.02質量%以上)1.0質量%以下、0.01質量%以上(または0.02質量%以上)0.8質量%以下、0.01質量%以上(または0.02質量%以上)0.5質量%以下、0.05質量%以上1.0質量%以下(または0.8質量%以下)、あるいは0.05質量%以上0.5質量%以下であってもよい。
負極電極材料中に含まれる炭素質材料としては、カーボンブラック、黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボンなどを用いることができる。カーボンブラックとしては、アセチレンブラック、ファーネスブラック、ランプブラックなどが例示される。ファーネスブラックには、ケッチェンブラック(商品名)も含まれる。黒鉛は、黒鉛型の結晶構造を含む炭素材料であればよく、人造黒鉛および天然黒鉛のいずれであってもよい。
負極電極材料中の炭素質材料の含有量は、例えば、0.05質量%以上であり、0.2質量%以上であってもよい。炭素質材料の含有量は、例えば、4.0質量%以下であり、3質量%以下であってもよく、2質量%以下であってもよい。
負極電極材料中の炭素質材料の含有量は、0.05質量%以上(または0.2質量%以上)4.0質量%以下、0.05質量%以上(または0.2質量%以上)3質量%以下、あるいは0.05質量%以上(または0.2質量%以上)2質量%以下であってもよい。
負極電極材料中の硫酸バリウムの含有量は、例えば、0.5質量%以上であり、1質量%以上であってもよく、1.3質量%以上であってもよい。硫酸バリウムの含有量は、例えば、3.0質量%以下であり、2.5質量%以下であってもよく、2質量%以下であってもよい。
負極電極材料中の硫酸バリウムの含有量は、0.5質量%以上(または1質量%以上)3.0質量%以下、0.5質量%以上(または1質量%以上)2.5質量%以下、0.5質量%以上(または1質量%以上)2質量%以下、1.3質量%以上3.0質量%以下(または2.5質量%以下)、あるいは1.3質量%以上2質量%以下であってもよい。
負極板は、負極集電体に負極ペーストを塗布または充填し、熟成および乾燥することにより未化成の負極板を作製し、その後、未化成の負極板を化成することにより形成できる。負極ペーストは、鉛粉と各種添加剤に、水と硫酸を加えて混練することで作製する。熟成する際には、室温、もしくは室温より高温かつ高湿度で、未化成の負極板を熟成させることが好ましい。
化成は、鉛蓄電池の電槽内の硫酸を含む電解液中に、未化成の負極板を含む極板群を浸漬させた状態で、極板群を充電することにより行うことができる。ただし、化成は、鉛蓄電池または極板群の組み立て前に行ってもよい。化成により、海綿状鉛が生成する。
以下に、負極電極材料に含まれる有機防縮剤、炭素質材料および硫酸バリウムの分析方法について記載する。分析に先立ち、化成後の鉛蓄電池を満充電してから解体して分析対象の負極板を入手する。入手した負極板を水洗し、負極板から硫酸分を除去する。水洗は、水洗した負極板表面にpH試験紙を押し当て、試験紙の色が変化しないことが確認されるまで行う。ただし、水洗を行う時間は、2時間以内とする。水洗した負極板は、減圧環境下、60±5℃で6時間程度乾燥する。乾燥後に、負極板に貼付部材が含まれる場合には、剥離により負極板から貼付部材が除去される。次に、負極板から負極電極材料を分離することにより、試料(以下、試料Aと称する)を得る。試料Aは、必要に応じて粉砕され、分析に供される。
(1)有機防縮剤の分析
(1-1)負極電極材料中の有機防縮剤の定性分析
粉砕した試料Aを1mol/LのNaOH水溶液に浸漬し、有機防縮剤を抽出する。抽出された有機防縮剤を含むNaOH水溶液から不溶成分を濾過で除く。得られた濾液(以下、濾液Bとも称する。)を脱塩した後、濃縮し、乾燥することにより、有機防縮剤の粉末(以下、試料Cとも称する。)が得られる。脱塩は、脱塩カラムを用いて行うか、濾液をイオン交換膜に通すことにより行うか、もしくは、濾液を透析チューブに入れて蒸留水中に浸すことにより行う。
試料Cを用いて測定した赤外分光スペクトル、試料Cを蒸留水等で希釈し、紫外可視吸光度計で測定した紫外可視吸収スペクトル、試料Cを重水等の所定の溶媒で溶解することにより得られる溶液のNMRスペクトル、または物質を構成している個々の化合物の情報を得ることができる熱分解GC-MSなどから得た情報を組み合わせて、有機防縮剤の種類を特定する。
(1-2)定量分析
上記(1-1)と同様に、濾液Bの紫外可視吸収スペクトルを測定する。有機防縮剤に特徴的なピーク強度と、予め作成した検量線とを用いて、負極電極材料中の有機防縮剤の含有量を求める。
なお、有機防縮剤の含有量が未知の鉛蓄電池を入手して有機防縮剤の含有量を測定する際に、有機防縮剤の構造式の厳密な特定ができないために検量線に同一の有機防縮剤が使用できないことがある。この場合には、当該電池の負極から抽出した有機防縮剤と、紫外可視吸収スペクトル、赤外分光スペクトル、およびNMRスペクトルなどが類似の形状を示す、別途入手可能な有機高分子を使用して検量線を作成することで、紫外可視吸収スペクトルを用いて有機防縮剤の含有量を測定するものとする。
(2)炭素質材料と硫酸バリウムの定量
粉砕した試料A10gに対し、20質量%濃度の硝酸を50ml加え、約20分加熱し、鉛成分を硝酸鉛として溶解させる。次に、硝酸鉛を含む溶液を濾過して、炭素質材料、硫酸バリウム等の固形分を濾別する。
得られた固形分を水中に分散させて分散液とした後、篩いを用いて分散液から炭素質材料および硫酸バリウム以外の成分(例えば補強材)を除去する。次に、分散液に対し、予め質量を測定したメンブレンフィルタを用いて吸引ろ過を施し、濾別された試料とともにメンブレンフィルタを110℃±5℃の乾燥器で乾燥する。得られる試料は、炭素質材料と硫酸バリウムとの混合試料(以下、試料Dとも称する)である。乾燥後の試料Dとメンブレンフィルタとの合計質量からメンブレンフィルタの質量を差し引いて、試料Dの質量(M)を測定する。その後、乾燥後の試料Dをメンブレンフィルタとともに坩堝に入れ、700℃以上で灼熱灰化させる。残った残渣は酸化バリウムである。酸化バリウムの質量を硫酸バリウムの質量に変換して硫酸バリウムの質量(M)を求める。質量Mから質量Mを差し引いて炭素質材料の質量を算出する。
(セパレータ)
負極板と正極板との間に配置されるセパレータには、不織布、微多孔膜などが用いられる。負極板と正極板との間に介在させるセパレータの厚さは、極間距離に応じて選択すればよい。セパレータの枚数は、極間数に応じて選択すればよい。
不織布は、繊維を織らずに絡み合わせたマットであり、繊維を主体とする。不織布は、例えば、不織布の60質量%以上が繊維で形成されている。繊維としては、ガラス繊維、ポリマー繊維(ポリオレフィン繊維、アクリル繊維、ポリエステル繊維(ポリエチレンテレフタレート繊維など)など)、パルプ繊維などを用いることができる。中でも、ガラス繊維が好ましい。不織布は、繊維以外の成分、例えば、耐酸性の無機粉体、結着剤としてのポリマーを含んでもよい。
一方、微多孔膜は、繊維成分以外を主体とする多孔性のシートであり、例えば、造孔剤(ポリマー粉末およびオイルの少なくとも一方など)を含む組成物をシート状に押し出し成形した後、造孔剤を除去して細孔を形成することにより得られる。微多孔膜は、耐酸性を有する材料で構成することが好ましく、ポリマー成分を主体とするものが好ましい。ポリマー成分としては、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)が好ましい。
セパレータは、例えば、不織布のみで構成してもよく、微多孔膜のみで構成してもよい。また、セパレータは、必要に応じて、不織布と微多孔膜との積層物、異種または同種の素材を貼り合わせた物、または異種または同種の素材において凹凸をかみ合わせた物などであってもよい。
セパレータは、シート状であってもよく、袋状に形成されていてもよい。正極板と負極板との間に1枚のシート状のセパレータを挟むように配置してもよい。また、折り曲げた状態の1枚のシート状のセパレータで極板を挟むように配置してもよい。この場合、折り曲げたシート状のセパレータで挟んだ正極板と、折り曲げたシート状のセパレータで挟んだ負極板とを重ねてもよく、正極板および負極板の一方を折り曲げたシート状のセパレータで挟み、他方の極板と重ねてもよい。また、シート状のセパレータを蛇腹状に折り曲げ、正極板および負極板を、これらの間にセパレータが介在するように、蛇腹状のセパレータに挟み込んでもよい。蛇腹状に折り曲げられたセパレータを用いる場合、折り曲げ部が鉛蓄電池の水平方向に沿うように(例えば、折り曲げ部が水平方向と平行になるように)セパレータを配置してもよく、鉛直方向に沿うように(例えば、折り曲げ部が鉛直方向と平行になるように)セパレータを配置してもよい。蛇腹状に折り曲げられたセパレータでは、セパレータの両方の主面側に交互に凹部が形成されることになる。正極板や負極板の上部には通常耳部が形成されているため、折り曲げ部が鉛蓄電池の水平方向に沿うようにセパレータを配置する場合、セパレータの一方の主面側の凹部のみに正極板および負極板が配置される(つまり、隣接する正極板と負極板との間には、二重のセパレータが介在した状態となる)。折り曲げ部が鉛蓄電池の鉛直方向に沿うようにセパレータを配置する場合、一方の主面側の凹部に正極板を収容し、他方の主面側の凹部に負極板を収容することができる(つまり、隣接する正極板と負極板との間には、セパレータが一重に介在した状態とすることができる。)。袋状のセパレータを用いる場合、袋状のセパレータが正極板を収容していてもよいし、負極板を収容してもよい。
(正極極柱および正極ストラップ)
正極ストラップは、正極板と正極極柱とを電気的に接続する部材である。正極板の集電体は、正極板から集電するための耳部を備えている。正極ストラップは、この耳部を介して正極板と電気的に接続される。極板群が、複数の正極板を含む場合、各正極板の耳部と、正極ストラップとが、溶接等により接続される。正極ストラップは、正極板の耳部および正極極柱と接続し易い形状であればよく、例えば、板状である。
正極極柱は、正極ストラップを介して正極板と電気的に接続しており、鉛蓄電池から外部へ電気を取り出すための部材である。正極極柱と、正極ストラップとは、一体であってもよく、溶接等により接続されていてもよい。正極極柱は、通常、柱状体である。柱状体としては、例えば、円柱、楕円柱、角柱が挙げられるが、これらに制限されない。通常、正極極柱の軸方向の一方の端部(具体的には、下方の端部)が、正極ストラップに接続している。
正極極柱および正極ストラップを構成する材料としては、鉛または鉛合金が用いられる。鉛合金としては、例えば、正極集電体について例示した合金が挙げられる。正極極柱および正極ストラップの少なくともいずれか一方にSbが含まれていればよく、双方にSbが含まれていてもよい。正極極柱および正極ストラップのそれぞれは、組成の異なる鉛合金層を有してもよく、合金層は複数でもよい。複数の合金層を有する場合、いずれか1つの合金層にSbが含まれていてもよい。
正極極柱にSbが含まれる場合、正極極柱中のSbの含有量は、例えば、1質量%以上である。正極ストラップにSbが含まれる場合、正極ストラップ中のSbの含有量は、例えば、1質量%以上である。Sbの含有量がこのような範囲である場合、充電時に正極極柱または正極ストラップからSbが溶出し易い。しかし、このような場合であっても、負極ストラップへのSbの析出を効果的に抑制できる。なお、正極極柱または正極ストラップ中のSbの含有量は、例えば、6質量%以下である。
正極極柱または正極ストラップ中のSbの含有量は、満充電状態の鉛蓄電池から取り出した正極極柱または正極ストラップについて以下の手順で求められる。
まず、満充電状態の鉛蓄電池から正極極柱または正極ストラップを取り出し、水洗し、60±5℃の温度で送風することにより乾燥する。乾燥した正極極柱または正極ストラップから所定量のサンプルを切り出し、秤量する。秤量したサンプルを、硝酸を用いて完全に溶解する。得られる溶液、または得られる溶液をイオン交換水で希釈して定容した溶液を用いて、誘導結合プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma)発光分光法により、溶液中のSbの発光強度を測定する。そして、予め作成した検量線を用いて溶液中に含まれるSbの質量を求める。得られるSb質量の、分析に供したサンプルの質量に対する割合をSbの含有量として求める。
(負極極柱および負極ストラップ)
負極ストラップは、負極板と負極極柱とを電気的に接続する部材である。負極板の集電体は、負極板から集電するための耳部を備えている。負極ストラップは、この耳部を介して負極板と電気的に接続される。極板群が、複数の負極板を含む場合、各負極板の耳部と、負極ストラップとが、溶接等により接続される。負極ストラップは、負極板の耳部および負極極柱と接続し易い形状であればよく、例えば、板状である。
負極極柱は、負極ストラップを介して負極板と電気的に接続しており、鉛蓄電池から外部へ電気を取り出すための部材である。負極極柱と、負極ストラップとは、一体であってもよく、溶接等により接続されていてもよい。負極極柱は、通常、柱状体である。柱状体としては、正極極柱について例示したものが挙げられるが、特に制限されない。通常、負極極柱の軸方向の一方の端部(具体的には、下方の端部)が、負極ストラップに接続している。
負極極柱および負極ストラップを構成する材料としては、鉛または鉛合金が用いられる。鉛合金としては、例えば、負極集電体について例示した合金が挙げられる。負極極柱および負極ストラップのそれぞれは、組成の異なる鉛合金層を有してもよく、合金層は複数でもよい。
(電解液)
電解液は、硫酸を含む水溶液であり、必要に応じてゲル化させてもよい。満充電状態の鉛蓄電池における電解液の20℃における比重は、例えば、1.20以上であり、1.25以上であってもよい。電解液の20℃における比重は、例えば、1.35以下であり、1.32以下であってもよい。
満充電状態の鉛蓄電池における電解液の20℃における比重は、1.20以上(または1.25以上)1.35以下、あるいは1.20以上(または1.25以上)1.32以下であってもよい。
(Sb捕捉部材)
本発明の上記側面に係る鉛蓄電池では、極板群の上部に、Sb捕捉剤を含む捕捉部材を配置することが重要である。これにより、セパレータと極板との隙間Gが0.5mm以下であるにも拘わらず、負極ストラップへの多量のSb析出を抑制できるとともに、負極板上部における硫酸鉛の蓄積を大幅に低減できる。
Sb捕捉部材は、極板群の上部に配置されていればよいが、より高いSb捕捉効果を確保する観点からは、少なくとも一部が電解液に浸漬した状態で配置することが好ましい。また、同様の観点から、Sb捕捉部材の少なくとも一部は、負極ストラップの下面よりも下に配置することが好ましい。極板群の上端面とストラップの下面との間に形成される空間に、Sb捕捉部材を配置してもよい。特に、正極ストラップの下面とこの下面に対向する極板群の上端面との間の空間、および負極ストラップの下面とこの下面に対向する極板群の上端面との間の空間に、それぞれ、Sb捕捉部材の端部を入れ込んだ状態で、極板群上にSb捕捉部材を配置すると、負極ストラップへの多量のSb析出を効果的に低減できる。Sb捕捉部材は、極板群の上端面に接触するように配置してもよく、電解液中で浮遊した状態であってもよい。
Sb捕捉部材の形状は特に制限されず、極板群上に配置し易い形状とすることができる。極板群上には、耳部が上方に突出していたり、ストラップが配置されていたりと、構造が複雑であるため、シート状のSb捕捉部材を用いることが好ましい。シート状のSb捕捉部材は、高いSb捕捉性を確保し易いながらも、柔軟で、狭いスペースにも配置し易い。
Sb捕捉部材は、極板群の上端面の広い領域を覆うように配置すると、溶出したSbと接触し易く好ましい。しかし、このような場合に限らず、Sb捕捉部材の少なくとも一部が、正極極柱および正極ストラップの少なくとも一方と、負極極柱および負極ストラップの少なくとも一方との間に位置するように配置すればよい。
Sb捕捉部材は、貫通孔を有していてもよい。この場合、補水時に、水と電解液とをスムーズに混合することができる。貫通孔は、1つであってもよいが、水と電解液との混合を容易にする観点からは、複数であることが好ましい。貫通孔の個数および/サイズは、高いSb捕捉効果を確保しながら、補水が妨げられないような範囲で決定すればよい。貫通孔の平均孔径は、上述のように、例えば、10mm以上であり、50mm以下であってもよい。
Sb捕捉部材は、微小な空孔(ただし、上記貫通孔とは区別される)を複数有する多孔質材料で形成してもよい。多孔質材料を用いると、Sb捕捉部材の表面積が大きくなるため、溶出したSbを捕捉する効果をさらに高めることができる。微小な空孔の平均空孔径は、上述のように、例えば、5nm以上であり、100μm以下または50μm以下であってもよい。
Sb捕捉部材は、Sb捕捉剤を含むことでSb捕捉効果を有する。Sb捕捉剤としては、ヘテロ元素(例えば、硫黄、酸素、および窒素の少なくともいずれか)を含む材料などが挙げられる。Sb捕捉部材は、Sb捕捉剤を一種含んでいてもよく、二種以上組み合わせて含んでもよい。
Sb捕捉剤としては、硫黄元素および酸素元素の少なくとも一方を有する材料などが好ましい。このような材料としては、硫黄原子および酸素元素の少なくとも一方を有するヘテロ元素含有基(ヘテロ元素含有結合も含む)を有する材料などが挙げられる。このようなヘテロ元素含有基としては、例えば、メルカプト基、スルホン酸基またはその塩、スルホン酸エステル基、チオエーエル結合、ヒドロキシ基、カルボキシ基、エーテル結合、エステル結合、ウレタン結合、アミド結合などが挙げられる。
Sb捕捉部材は、主としてSb捕捉剤で形成されたものであってもよく、基材にSb捕捉剤を担持させたものであってもよい。Sb捕捉部材としては、例えば、Sb捕捉剤が担持された高分子材料(樹脂など)製のシート、Sb捕捉剤である高分子材料(樹脂など)で構成されたシートなどが挙げられ、後者のシートにさらにSb捕捉剤を担持したものを用いてもよい。Sb捕捉剤は、基材シートに添加してもよく、表面に担持させてもよく、これらの双方であってもよい。シートとしては、高分子材料製のフィルム、織布、および不織布などが挙げられ、これらから選択される少なくとも2種の積層体であってもよい。基材を構成する高分子材料としては、フィルムまたは繊維を形成可能な様々な樹脂(例えば、熱可塑性樹脂)が挙げられる。
Sb捕捉剤としては、例えば、加硫ゴム、フェノール樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂が挙げられる。なお、これらの材料は、成形してSb捕捉部材を形成してもよく、高分子材料(樹脂など)などに添加して成形し、Sb捕捉部材を形成してもよく、基材シートの表面に付着させてSb捕捉部材としてもよい。
有機防縮剤は、多くの硫黄元素を含むため、Sb捕捉剤として機能させることもできる。従って、Sb捕捉剤として有機防縮剤(例えば、負極板について例示した有機防縮剤)を用いてもよい。有機防縮剤は、樹脂などに添加して成形することで、Sb捕捉部材を得ることができる。
Sb捕捉剤として、例えば、多糖類(セルロースも含む)、変性多糖類、ポリエーテル、カルボキシ基またはその塩を含有するポリマー(ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、またはその塩など)、スルホン酸基またはその塩を含有するポリマー(ポリスチレンスルホン酸またはその塩など)、ヒドロキシ基含有ポリマー(ポリ酢酸ビニルのケン化物(ポリビニルアルコールなど)など)などを用いてもよい。ポリエーテルとしては、例えば、C2-4アルキレンオキサイドの繰り返し構造を有する化合物などが挙げられる。このような化合物としては、ポリC2-4アルキレンオキサイド、多価アルコールのポリC2-4アルキレンオキサイド付加物、これらのエーテル化物またはエステル化物、ポリエーテルポリカルボキシレートなどが挙げられる。これらの化合物において、C2-4アルキレンオキサイドとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、トリメチレンオキサイド、およびブチレンオキサイドから選択される少なくとも一種が挙げられる。ポリC2-4アルキレンオキサイドとしては、単独重合体(例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなど)、および共重合体(例えば、エチレンオキサイド-プロピレンオキサイド共重合体)が含まれる。多価アルコールとしては、糖アルコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなどが挙げられる。これらのSb捕捉剤を高分子材料(樹脂など)などに添加して成形することでSb捕捉部材を形成できる。
なお、鉛蓄電池の評価は、以下のようにして行われる。
《負極板上部における硫酸鉛の蓄積量の測定》
満充電状態の鉛蓄電池を、温度60℃±0.5℃にて、充電電圧2.15V/セルで6ヶ月間フロート充電する。次のようにして、充電後の負極板上部の所定の領域における硫酸鉛の蓄積量を調べる。所定の領域とは、耳部の下方で、負極電極材料が存在する上端を含む縦3cm×横3cmの領域とする。なお、鉛蓄電池としては、定格電圧2V、定格容量30Ah(10時間率)の液式電池が用いられる。
まず、鉛蓄電池から負極板を取り出し、負極板を水洗、大気圧より低い圧力下で乾燥する。水洗は、水洗した負極板表面にpH試験紙を押し当て、試験紙の色が変化しないことが確認されるまで行う。ただし、水洗を行う時間は、2時間以内とする。負極板上部から負極電極材料を採取し、粉砕する。次に、硫黄元素分析装置(LECO社製、S-200型)を用いて、粉砕した負極電極材料(粉砕試料)中の硫黄元素の含有量を測定する。そして、下記式に従い、負極電極材料中に蓄積された硫酸鉛中の硫黄元素の含有量を求める。
硫酸鉛中の硫黄元素の含有量
=(硫黄元素分析装置で得られる硫黄元素の含有量)-(粉砕試料の質量(g)×有機防縮剤の含有量(g/g)×有機防縮剤中の硫黄元素の含有量(g/g))
次に、硫酸鉛中の硫黄元素の含有量を、硫酸鉛量に換算し、粉砕試料の単位質量あたりの硫酸鉛濃度(質量%)を求めて、硫酸鉛の蓄積量とする。
《寿命性能および液面低下速度》
満充電状態の鉛蓄電池の電解液の液面の高さH0を測定する。この鉛蓄電池を、3Aの電流で、1.8V/セルの電圧まで放電し、このときの放電容量(初期容量)C0を求める。なお、鉛蓄電池としては、定格電圧2V、定格容量30Ah(10時間率)の液式電池が用いられる。
次いで、鉛蓄電池を、温度60℃±0.5℃にて、充電電圧2.15V/セルで6ヶ月間フロート充電する。フロート充電後の鉛蓄電池における電解液の液面の高さH1を測定する。また、初期容量と同じ条件で、放電して放電容量C1を求める。下記式より、容量維持率(%)および液面低下速度(%)を求める。容量維持率を、寿命性能の指標とする。
容量維持率(%)=C1/C0×100
液面低下速度(%)=(H0-H1)/H0×100
図1は、本実施形態に係る鉛蓄電池の蓋を外した一例を模式的に示す上面図である。図2は、図1の鉛蓄電池のII-II線による矢示断面図である。
鉛蓄電池1は、極板群11と電解液12とを収容する電槽10を具備する。極板群11は、3枚の負極板11aおよび2枚の正極板11bを含む。極板群11は、負極板11aと正極板11bとが、これらの間にセパレータ11cを介した状態で積層することにより構成されている。ここでは、シート状のセパレータ11cを用いた状態を示すが、セパレータの形態は特に限定されない。また、負極板11aおよび正極板11bの枚数も図示例の場合に限定されない。負極板11aおよび正極板11bのいずれが極板群11の端部に配置されていてもよい。
各負極板11aの上部には、上方に突出する集電用の耳部111aが設けられている。各正極板11bの上部にも、上方に突出する集電用の耳部111bが設けられている。負極板11aの耳部111aは、負極板11aの一方の主面から見たときに一方の側端部寄りに設けられている。同じく、正極板11bの耳部111bも、正極板11aの一方の主面から見たときに一方の側端部寄りに設けられている。負極板11aと正極板11bとは、負極板11aの耳部111aと、正極板11bの耳部111bとが、互いに離れた状態となるように積層される。
3枚の負極板11aの耳部111a同士は、板状の負極ストラップ13により連結され一体化されている。同様に、2枚の正極板11bの耳部111b同士も、板状の正極ストラップ14により連結されて一体化されている。負極ストラップ13および正極ストラップ14は、それぞれ、負極板11aおよび正極板11bの積層方向と平行な方向における中央付近が極板群11の中心に向かって延出した延出部13aおよび14aを含む。そして、延出部13aおよび14aのそれぞれ、負極極柱15および正極極柱16のそれぞれの下端部が固定されている。正極ストラップ14および正極極柱16の少なくとも一方は、Sbを含んでいる。
本実施形態では、このような鉛蓄電池1において、Sb捕捉部材20を極板群11の上部に配置する。Sb捕捉部材20は、シート状(または板状とも言う。)であり、複数の貫通孔20aを有するが、このような場合に限定されない。図示例では、Sb捕捉部材20は、負極ストラップ13の下面より下に配置されている。より具体的には、負極ストラップ13の延出部13aの下面より下に配置されている。また、Sb捕捉部材20は、正極ストラップ14の下面より下(より具体的には、延出部14aの下面より下)に配置されている。
セパレータ11cおよび極板11a,11bとの間の隙間Gが0.5mm以下であり、Sb捕捉部材20がない場合には、正極ストラップ14および正極極柱16に含まれるSbが充電時に溶出すると、負極板11aの耳部111a、および負極ストラップ13に多量のSbが析出し、負極板11aの上部における硫酸鉛が顕著になる。硫酸鉛の蓄積は、特に、正極極柱16または正極ストラップ14の下方の極板11aの上端付近から、負極板11aの耳部111a側の側端部の上部に向かって広がる三角形またはそれに類似する形状の領域Rで顕著になる。
それに対し、本実施形態では、図示例のように、Sb捕捉部材20を、極板群11上に配置する。そのため、正極ストラップ14および正極極柱16に含まれるSbが溶出しても、負極ストラップ13におけるSbの析出を顕著に抑制できる。そして、正極極柱隙間Gが0.5mm以下の場合に問題となる負極板11aの上部(特に、領域R)における硫酸鉛の蓄積量を大幅に低減することができる。
なお、鉛蓄電池の蓋としては、一重構造(単蓋)を有するものを用いてもよく、中蓋と外蓋(または上蓋)とを備える二重構造を有するものを用いてもよい。二重構造を有する蓋は、中蓋と外蓋との間に、中蓋に設けられた還流口から電解液を電池内(中蓋の内側)に戻すための還流構造を備えるものであってもよい。
[実施例]
以下、本発明を実施例および比較例に基づいて具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
《鉛蓄電池A1~A4》
(1)負極板の作製
鉛粉、水、希硫酸、硫酸バリウム、カーボンブラックおよび有機防縮剤(リグニンスルホン酸ナトリウム)を混合して、負極ペーストを調製する。負極集電体としてのPb-Sb合金系の鋳造格子に負極ペーストを充填し、熟成乾燥し、未化成の負極板を得る。
(2)正極板の作製
鉛粉と、水と、硫酸とを混練させて、正極ペーストを作製する。正極ペーストを、正極集電体としての4質量%のSbを含むPb-Sb系合金製の鋳造格子の網目部に充填し、熟成、乾燥し、未化成の正極板を得る。
(3)鉛蓄電池の作製
未化成の負極板3枚と未化成の正極板2枚とを、間にポリエチレン(PE)製の微多孔膜であるセパレータを介在させた状態で、交互に重ねて、図1に示すような極板群を形成する。図1および図2に示すような負極極柱の下端面と一体化した負極ストラップを、各負極板の耳部と溶接により接続する。同様に、正極極柱の下端面と一体化した正極ストラップを、各正極板の耳部と溶接により接続する。負極極柱および負極ストラップには、負極板の集電体と同じ材質を用い、正極極柱および正極ストラップには、正極板の集電体と同じ材質を用いる。
極板群を電槽内に挿入する。必要に応じて、極板群の両端の極板の外側にスペーサを配置する。このとき、既述の手順で求められるセパレータと極板との隙間Gが表1に示す値となるように、スペーサの厚みを調節する。極板群の上端面とストラップとの間に、図1および図2に示すようなシート状のSb捕捉部材を配置する。Sb捕捉部材としては、図1および図2に示すような貫通孔を有する多孔質の加硫ゴムシート(貫通孔の平均孔径:5mm、微小空孔の平均空孔径:0.2μm)を用いる。電解液を注液して、電槽内で化成を施して、鉛電池の定格電圧は2Vで、定格容量が30Ah(10時間率)の液式の鉛蓄電池A1~A4を組み立てる。電解液としては、硫酸を含む水溶液を用いる。満充電状態の鉛蓄電池における電解液の20℃における比重は、1.28である。
なお、満充電状態の鉛蓄電池から取り出した正極極柱および正極ストラップについて、既述の手順で求められるSb含有量は、それぞれ、4質量%である。
《鉛蓄電池B1~B5》
これらの鉛蓄電池では、Sb捕捉部材を配置せずに、表1に示す電解液およびセパレータを用いる。また、セパレータと極板との隙間Gが表1に示す値となるように、極板群の両端の極板の外側に配置するスペーサの厚みを調節する。これら以外は、鉛蓄電池A1と同様にして鉛蓄電池B1~B5を組み立てる。
なお、表1中の電解液の硫酸水溶液の20℃における比重は1.28である。加硫ゴム粉末の質量%は、電解液中の比率である。加硫ゴム製多孔膜の平均孔径は、0.2μmである。
得られる鉛蓄電池について、以下の評価を行う。
[評価:負極板上部における硫酸鉛の蓄積量および負極ストラップへのSbの析出状態]
既述の手順で、負極板上部における硫酸鉛の蓄積量を定量する。
硫酸鉛の蓄積量を測定する際の負極ストラップの状態を目視で観察し、下記の基準でSbの析出状態を評価する。
A:負極ストラップの変色が見られない。
B:負極ストラップの変色がみられるが、変色の程度はごくわずかである。
C:負極ストラップに多量のSbが析出して黒く変色している。
[評価:容量維持率および液面低下速度]
既述の手順で、容量維持率および液面低下速度を求める。
なお、負極板上部における硫酸鉛の蓄積量、容量維持率、および液面低下速度は、それぞれ、鉛蓄電池B1を100としたときの値で示す。
鉛蓄電池A1~A4、およびB1~B5の結果を表1に示す。
Figure 0007388110000001
表1に示されるように、鉛蓄電池A1~A4では、鉛蓄電池B1~B4に比べて、負極ストラップへのSb析出が抑制され、負極板上部における硫酸鉛の蓄積量が大きく低減されている。また、鉛蓄電池A1~A4では、鉛蓄電池B1~B4に比べて、液面低下速度も低減されており、高い容量維持率が確保できている。
なお、隙間Gが0.6mmと大きい鉛蓄電池B5では、負極ストラップへのSbの析出も少なく、負極板上部における硫酸鉛の蓄積量も比較的少なく、それほど問題にならない。ところが、隙間Gが小さくなると、負極ストラップへのSbの析出が顕著になり、負極板上部における硫酸鉛の蓄積量が多くなる。鉛蓄電池B2~B4では、Sb捕捉能を有する加硫ゴム製多孔膜または加硫ゴム粉末を用いているが、負極ストラップへのSbの析出量も多く、負極板上部における硫酸鉛の蓄積量の低減効果も低い。また、鉛蓄電池B3およびB4の結果から、Sb捕捉部材を用いない場合には、隙間Gが小さくなるほど、負極板上部における硫酸鉛の蓄積量が多くなる。
それに対し、Sb捕捉部材を用いる鉛蓄電池A1~A4では、隙間Gが小さくなるほど、負極ストラップへのSbの析出が低減され、負極板上部における硫酸鉛の蓄積量が低減される。その値も、鉛蓄電池B1~B5に比べて格段に少量である。このように、隙間Gと負極板上部における硫酸鉛の蓄積量との関係は、極板群上のSb捕捉部材の有無により、挙動が全く相違する。このように、極板群上のSb捕捉部材による負極板上部における硫酸鉛の蓄積量の低減効果は、隙間Gが小さい(具体的には、0.5mm以下)の場合に初めて発揮される効果であると言える。
本発明の上記側面に係る鉛蓄電池は、液式の鉛蓄電池に適用可能である。鉛蓄電池は、車両(自動車、バイクなど)の始動用電源、産業用蓄電装置などの電源(電動車両(フォークリフトなど)など)として好適に利用できる。なお、これらの用途は単なる例示であり、これらの用途に限定されるものではない。
1:鉛蓄電池
10:電槽
11:極板群
11a:負極板
11b:正極板
11c:セパレータ
111a:負極板の耳部
111b:正極板の耳部
12:電解液
13:負極ストラップ
13a:延出部
14:正極ストラップ
14a:延出部
15:負極極柱
16:正極極柱
20:Sb捕捉部材
20a:貫通孔

Claims (7)

  1. 正極板と、負極板と、前記正極板および前記負極板の間に介在するセパレータと、を備える極板群と、電解液と、正極極柱および負極極柱と、前記正極板と前記正極極柱とを電気的に接続する正極ストラップと、前記負極板と前記負極極柱とを電気的に接続する負極ストラップと、を備え、
    前記正極極柱および前記正極ストラップからなる群より選択される少なくとも1つはSbを含み、
    前記極板群において、前記セパレータと、前記セパレータに対向する前記正極板および前記負極板との間の隙間は、0.3mm以下であり、
    前記隙間Gは、下記式から求められ、
    隙間G(mm)=(極間距離D(mm)-セパレータの厚みT(mm))/2
    前記極間距離Dは、下記式から求められ、
    極間距離D(mm)=(ピッチ(mm)-正極板の厚み(mm)-負極板の厚み(mm))/2
    前記正極板は耳を備え、前記ピッチは、隣接する一対の前記正極板の前記耳の中心間距離であり、
    前記極板群の上部に、前記セパレータとは別に、Sb捕捉剤を含む捕捉部材が配置されている、鉛蓄電池。
  2. 前記捕捉部材は、少なくとも1つの貫通孔を備える、請求項1に記載の鉛蓄電池。
  3. 正極板と、負極板と、前記正極板および前記負極板の間に介在するセパレータと、を備える極板群と、電解液と、正極極柱および負極極柱と、前記正極板と前記正極極柱とを電気的に接続する正極ストラップと、前記負極板と前記負極極柱とを電気的に接続する負極ストラップと、を備え、
    前記正極極柱および前記正極ストラップからなる群より選択される少なくとも1つはSbを含み、
    前記極板群において、前記セパレータと、前記セパレータに対向する前記正極板および前記負極板との間の隙間Gは、0.3mm以下であり、
    前記隙間Gは、下記式から求められ、
    隙間G(mm)=(極間距離D(mm)-セパレータの厚みT(mm))/2
    前記極間距離Dは、下記式から求められ、
    極間距離D(mm)=(ピッチ(mm)-正極板の厚み(mm)-負極板の厚み(mm))/2
    前記正極板は耳を備え、前記ピッチは、隣接する一対の前記正極板の前記耳の中心間距離であり、
    前記極板群の上部に、Sb捕捉剤を含む捕捉部材が配置され
    前記捕捉部材は、少なくとも1つの貫通孔を備え、
    前記貫通孔の平均孔径は、10mm以上である、鉛蓄電池。
  4. 前記捕捉部材の少なくとも一部は、前記負極ストラップの下面より下に配置されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の鉛蓄電池。
  5. 前記捕捉部材は、前記極板群の上端面と、前記負極ストラップの下面との間の空間に配置される、請求項1~4のいずれか1項に記載の鉛蓄電池。
  6. 前記捕捉部材は、微小な空孔を複数有する多孔質材料で形成されている、請求項1~のいずれか1項に記載の鉛蓄電池。
  7. 前記捕捉部材は、シート状である、請求項1~のいずれか1項に記載の鉛蓄電池。
JP2019184698A 2019-10-07 2019-10-07 鉛蓄電池 Active JP7388110B2 (ja)

Priority Applications (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2019184698A JP7388110B2 (ja) 2019-10-07 2019-10-07 鉛蓄電池
CN202011067686.8A CN112635926A (zh) 2019-10-07 2020-09-30 铅蓄电池

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2019184698A JP7388110B2 (ja) 2019-10-07 2019-10-07 鉛蓄電池

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2021061171A JP2021061171A (ja) 2021-04-15
JP7388110B2 true JP7388110B2 (ja) 2023-11-29

Family

ID=75302741

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2019184698A Active JP7388110B2 (ja) 2019-10-07 2019-10-07 鉛蓄電池

Country Status (2)

Country Link
JP (1) JP7388110B2 (ja)
CN (1) CN112635926A (ja)

Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2005096431A1 (ja) 2004-04-02 2005-10-13 Matsushita Electric Industrial Co., Ltd. 鉛蓄電池

Family Cites Families (12)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2573082B2 (ja) * 1990-05-25 1997-01-16 日本電池株式会社 密閉形鉛蓄電池
JPH11329391A (ja) * 1998-05-12 1999-11-30 Kenichi Fujita 鉛蓄電池
US20060257728A1 (en) * 2003-08-08 2006-11-16 Rovcal, Inc. Separators for use in alkaline cells having high capacity
WO2006088959A2 (en) * 2005-02-15 2006-08-24 Rovcal, Inc. Separators for use in alkaline cells having high capacity
US8067120B2 (en) * 2006-03-24 2011-11-29 Panasonic Corporation Non-aqueous electrolyte secondary battery
CN103119755B (zh) * 2010-07-23 2015-07-15 日本瑞翁株式会社 二次电池多孔膜、二次电池多孔膜用浆料及二次电池
JPWO2013108841A1 (ja) * 2012-01-19 2015-05-11 株式会社カネカ 捕捉体を含む非水電解質二次電池
JP2013206846A (ja) * 2012-03-29 2013-10-07 Nippon Zeon Co Ltd 二次電池多孔膜用スラリー組成物
JP2014022321A (ja) * 2012-07-23 2014-02-03 Kaneka Corp 捕捉剤を含む非水電解質二次電池
JP6273956B2 (ja) * 2014-03-26 2018-02-07 日本ゼオン株式会社 二次電池多孔膜用バインダー、二次電池多孔膜用スラリー組成物、二次電池用多孔膜及び二次電池
JP6162754B2 (ja) * 2015-07-03 2017-07-12 本田技研工業株式会社 リチウムイオン電池の電解質除去方法
US10964936B2 (en) * 2018-03-02 2021-03-30 Global Graphene Group, Inc. Conducting elastomer composite-encapsulated particles of anode active materials for lithium batteries

Patent Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2005096431A1 (ja) 2004-04-02 2005-10-13 Matsushita Electric Industrial Co., Ltd. 鉛蓄電池

Also Published As

Publication number Publication date
JP2021061171A (ja) 2021-04-15
CN112635926A (zh) 2021-04-09

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP7143927B2 (ja) 鉛蓄電池
JP6766504B2 (ja) 鉛蓄電池
JP6756182B2 (ja) 鉛蓄電池
EP3855537A1 (en) Lead storage battery
JP7388110B2 (ja) 鉛蓄電池
JP6954353B2 (ja) 鉛蓄電池
JP6750377B2 (ja) 鉛蓄電池
WO2022113633A1 (ja) 鉛蓄電池
WO2022113621A1 (ja) 鉛蓄電池
JP6958034B2 (ja) 鉛蓄電池
WO2020241880A1 (ja) 鉛蓄電池
JP7424310B2 (ja) 鉛蓄電池
WO2018199053A1 (ja) 鉛蓄電池
EP4037023A1 (en) Lead acid storage battery
JP2021057120A (ja) 鉛蓄電池用負極板および鉛蓄電池、ならびに鉛蓄電池用負極板の製造方法
WO2018199207A1 (ja) 鉛蓄電池
WO2022137700A1 (ja) 鉛蓄電池用クラッド式正極板および鉛蓄電池
WO2022113625A1 (ja) 鉛蓄電池
JP7424037B2 (ja) 鉛蓄電池
JP7452538B2 (ja) 鉛蓄電池
WO2024005041A1 (ja) 鉛蓄電池
JP6756181B2 (ja) 鉛蓄電池
WO2022113624A1 (ja) 鉛蓄電池
WO2022113626A1 (ja) 鉛蓄電池
WO2022113636A1 (ja) 鉛蓄電池

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20220801

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20230524

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20230620

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20230802

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20231017

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20231030

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 7388110

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150