JP2021043160A - 硬度変化部検出装置、硬度変化部検出方法及びプログラム - Google Patents

硬度変化部検出装置、硬度変化部検出方法及びプログラム Download PDF

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正樹 山野
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【課題】鋼材の表層の硬度の変化をより精度高く検出することが可能な硬度変化部検出装置、硬度変化部検出方法及びプログラムを提供する。【解決手段】硬度変化部検出装置1は、測定対象となる鋼材101の表層に対して複数の測定位置でそれぞれ少なくとも2種類の鋼材の表層の性状によって変化するパラメータを測定する測定部10と、測定部10の測定結果と基準値と判定テーブルとを比較して硬度変化部か否かを判定する判定部20とを備え、基準値は、硬度変化部と同等の硬度を有する鋼材に対して測定されたパラメータであり、判定テーブルは、応力の変化に対して、両者とも増加傾向及び減少傾向のいずれかで一致する同一傾向及び増加傾向及び減少傾向で互いに異なる逆傾向のいずれかの傾向となり、硬度の変化に対して応力の変化と異なる逆傾向及び同一傾向のいずれかの傾向となる2種類のパラメータに基づいて作成された硬度の増減が示されたテーブルである。【選択図】図1

Description

本発明は、鋼材の表層の硬度変化部を検出する硬度変化部検出装置、硬度変化部検出方法及びプログラムに関する。
近年、硫化水素環境下に晒される鋼材では、硫化物腐食割れ(SSC:Sulfide Stress Cracking)が問題となっている。SSCは、硫化水素などの硫化物にさらされる鋼材の表層において、予め定められた硬度の上限値よりも硬度の高い表層硬化部が起点となって発生することが明らかとなっている。また、鋼材の強度が不足すると、鋼材の表層においては予め定められた硬度の下限値よりも硬度の低い表層軟化部が起点となって鋼材の破断が発生してしまう場合がある。このため、このような表層硬化部や表層軟化部(以下、表層硬化部および表層軟化部を総称して表層硬度変化部という)を硬度の測定により検出する方法が求められている。
鋼材の表層の硬度を測定する方法としては、例えば鋼材の表層の電磁気特性を測定する方法が知られている。例えば、特許文献1に記載する技術では、このような電磁気特性が鋼材の硬度に対して対応関係を示す一方、簡単な分析的な解決を不可能とするように変動することから、複数の電磁気特性によって鋼材の硬度を概算する方法が提案されている。具体的には、特許文献1に記載する技術では、各電磁気特性に関して、類似の化学組成を有する複数の鋼試料の硬度および電磁気特性を測定し、これら測定値をデータバンク内に、各々測定された電磁気特性に対する硬度の量子化された複数の組分け中に記憶する。そして、硬度を概算すべき鋼の複数の電磁気特性を測定し、データバンク内に記憶された量子化された組分けと比較して、測定された電磁気特性が入る量子化された組分けを決定した後に、それぞれの電磁気特性で組分けされた結果を比較することで硬度を概算している。
特表平9−507570号公報
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、それぞれの電磁気特性値において、あくまでも組分けを決定することに限られており、複数の電磁気特性値で得られた組分けから確からしい硬度を概算することができるにすぎなかった。このため、必ずしも硬度以外の影響によって電磁気特性値が変化した場合を控除できているわけではなく、確実に硬度以外の影響を控除して硬度が変化した部分を検出する技術が求められていた。
そこで、この発明は上述した事情に鑑みてなされたものであって、鋼材の表層の硬度の変化をより精度高く検出することが可能な硬度変化部検出装置、硬度変化部検出方法及びプログラムを提供するものである。
発明者らは、様々な鋼種の鋼材に対して、様々な条件の下、鋼材の表層の性状によって変化するパラメータを測定した。その結果、発明者らは、測定されるパラメータが、表層の硬度に依存するとともに、表層の応力状態にも依存することを見出した。すなわち、表層の硬度が所定の値であったとしても応力状態が異なると測定されるパラメータの測定値が異なる。鋼材の表層には、外力が加わっていなくても、製造プロセスにおける冷却条件の違いにより部分ごとに異なる残留応力が生じうる。このため、同じ硬度を有していても、残留応力が異なることにより測定されるパラメータの測定値は異なってしまう。また、発明者らは、パラメータの種類によって、応力の変化に対する変化の傾向が一致する場合と異なる場合、硬度の変化に対する変化の傾向が一致する場合と異なる場合がそれぞれ存在することを見出した。これらの事実より、発明者らは、応力の変化または硬度の変化の一方に対して同一の傾向を示すとともに他方に対して異なる傾向を示す2種類のパラメータを測定し比較することで、複数位置で測定した2種類のパラメータの増減から応力の影響を控除して硬度が変化したか否かを判定することができるとの知見に至った。
本知見に基づいて、上記の課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用している。
すなわち、本発明の一態様に係る硬度変化部検出装置は、測定対象となる鋼材の表層に対して、複数の測定位置でそれぞれ少なくとも2種類の鋼材の表層の性状によって変化するパラメータを測定する測定部と、前記測定部で測定された前記パラメータの測定結果と、あらかじめ設定された基準値と、あらかじめ設定された判定テーブルとを比較して硬度が変化した硬度変化部か否かを判定する判定部とを備え、前記基準値は、前記硬度変化部と同等の硬度を有する鋼材に対して測定されたパラメータであって、前記判定テーブルは、応力または硬度のうちいずれか一方の変化に対する変化傾向が、両者とも増加傾向及び減少傾向のいずれかで一致する同一傾向であって、応力または硬度のうちいずれか他方の変化に対する変化傾向が、増加傾向及び減少傾向で互いに異なる逆傾向である2種類のパラメータに基づいて作成された硬度の増減が示されたテーブルである。
この構成によれば、測定部によって少なくとも2種類のパラメータを測定する。ここで、測定される2種類のパラメータは、応力の変化に対して、両者とも増加傾向または減少傾向で一致する同一傾向を示す。一方、硬度の変化に対しては、一方が増加傾向または減少傾向を示すのに対して、他方が減少傾向または増加傾向を示すように、互いに逆傾向を示す。または、測定される2種類のパラメータは、応力の変化に対して、一方が増加傾向または減少傾向を示すのに対して、他方が減少傾向または増加傾向を示すように互いに逆傾向を示す。一方、硬度の変化に対しては、両者とも増加傾向または減少傾向で一致する同一傾向を示す。このように、2種類のパラメータが、応力の変化及び硬度の変化に対して、同一傾向及び逆傾向の異なる傾向を示すことにより、判定部では、複数の測定位置で測定された測定結果と、あらかじめ設定された基準値と、当該2種類のパラメータと対応する判定テーブルとを比較して同一傾向及び逆傾向かのいずれであるかに基づいて硬度が変化したかを判定し、これにより応力の変化の影響を控除して硬度変化部を検出することができる。
本発明の一態様に係る硬度変化部検出方法は、測定対象となる鋼材の表層に対して、複数の測定位置でそれぞれ少なくとも2種類の鋼材の表層の性状によって変化するパラメータを測定する測定工程と、前記測定工程で測定された前記パラメータの測定結果と、あらかじめ設定された基準値と、あらかじめ設定された判定テーブルとを比較して硬度が変化した硬度変化部か否かを判定する判定工程とを備え、前記測定工程では、2種類の前記パラメータとして、応力の変化に対して、両者とも増加傾向及び減少傾向のいずれかで一致する同一傾向、及び、増加傾向及び減少傾向で互いに異なる逆傾向のいずれかの傾向となり、硬度の変化に対して、応力の変化と異なる前記逆傾向及び前記同一傾向のいずれかの傾向となる前記パラメータをそれぞれ測定し、前記判定テーブルは、応力または硬度のうちいずれか一方の変化に対する変化傾向が、両者とも増加傾向及び減少傾向のいずれかで一致する同一傾向であって、応力または硬度のうちいずれか他方の変化に対する変化傾向が、増加傾向及び減少傾向で互いに異なる逆傾向である2種類のパラメータに基づいて作成された硬度の増減が示されたテーブルである。
この方法によれば、測定工程では、少なくとも2種類のパラメータを測定する。ここで、測定される2種類のパラメータは、応力の変化に対して、両者とも増加傾向または減少傾向で一致する同一傾向を示す。一方、硬度の変化に対しては、一方が増加傾向または減少傾向を示すのに対して、他方が減少傾向または増加傾向を示すように、互いに逆傾向を示す。または、測定される2種類のパラメータは、応力の変化に対して、一方が増加傾向または減少傾向を示すのに対して、他方が減少傾向または増加傾向を示すように互いに逆傾向を示す。一方、硬度の変化に対しては、両者とも増加傾向または減少傾向で一致する同一傾向を示す。このように、2種類のパラメータが、応力の変化及び硬度の変化に対して、同一傾向及び逆傾向の異なる傾向を示すことにより、判定工程では、複数の測定位置で測定された測定結果と、あらかじめ設定された基準値と、当該2種類のパラメータと対応する判定テーブルとを比較して同一傾向及び逆傾向かのいずれであるかに基づいて硬度が変化したかを判定し、これにより応力の変化の影響を控除して硬度変化部を検出することができる。
また、上記硬度変化部検出方法において、測定対象となる前記鋼材と同一の鋼種であって、予め表層の応力及び硬度が既知の標準片を、応力または硬度が異なるようにして複数準備する第一準備工程と、前記第一準備工程で準備された複数の前記標準片について、少なくとも2種類の前記パラメータを測定する第二準備工程と、前記第二準備工程で測定された結果に基づいて、前記パラメータのそれぞれに関して、応力の変化及び硬度の変化に対して増加傾向及び減少傾向を示すかが記録された判定テーブルを取得する第三準備工程とを備えるものとしても良い。
この方法によれば、第一準備工程及び第二準備工程を実施することで、検査対象となる鋼材と同一の鋼種について、異なる応力及び硬度と対応して、少なくとも2種類のパラメータを測定することができる。このため、第三準備工程で、これらの結果に基づいて、上記パラメータのそれぞれに関して、応力の変化及び硬度の変化に対して増加傾向及び減少傾向を示すかが記録された判定テーブルを取得することができ、判定工程では、取得した当該判定テーブルを用いて硬度変化部を検出することができる。
本発明の一態様に係るプログラムは、コンピュータを、測定対象となる鋼材の表層に対して、複数の測定位置で測定された少なくとも2種類の鋼材の表層の性状によって変化するパラメータを取得するパラメータ取得手段、前記パラメータの変化の組み合わせごとに硬度の増減が示される判定テーブルを取得する判定テーブル取得手段、前記測定部で測定された前記パラメータの測定結果と、あらかじめ設定された基準値と、あらかじめ設定された判定テーブルとを比較して硬度が変化した硬度変化部か否かを判定する判定手段として機能させ、前記判定手段が、前記基準値として、前記硬度変化部と同等の硬度を有する鋼材に対して測定されたパラメータを用いて、前記判定テーブルとして、応力または硬度のうちいずれか一方の変化に対する変化傾向が、両者とも増加傾向及び減少傾向のいずれかで一致する同一傾向であって、応力または硬度のうちいずれか他方の変化に対する変化傾向が、増加傾向及び減少傾向で互いに異なる逆傾向である2種類のパラメータに基づいて作成された硬度の増減が示されたテーブルを用いて、硬度が変化したかを判定する。
本発明によれば、鋼材の表層の硬度の変化をより精度高く検出することができる。
第1の実施形態の硬度変化部検出装置の構成を示す模式図である。 第1の実施形態のパラメータ測定装置で得られるBHループの模式図である。 第1の実施形態の硬度変化部判定装置のハードウェア構成を示すブロック図である。 電磁気特性値と、応力及び硬度との相関関係の例を模式的に示したグラフである。 第1の実施形態の硬度変化部判定装置で用いられる判定テーブルの例を示した模式図である。 第1の実施形態の硬度変化部判定装置の機能構成を示すブロック図である。 第1の実施形態の硬度変化部検出方法を説明するフロー図である。 第1の実施形態の硬度変化部検出方法において、判定工程で実施される処理手順を示すフロー図である。 第2の実施形態の硬度変化部検出装置の構成を示す模式図である。 第2の実施形態のパラメータ測定装置で得られる波形の模式図である。 第3の実施形態の硬度変化部検出方法を説明するフロー図である。
(第1の実施形態)
以下、本発明に係る第1の実施形態について図1から図7を参照して説明する。図1は本実施形態の硬度変化部検出装置を示している。
(硬度変化部検出装置)
図1に示すように、本実施形態の硬度変化部検出装置1は、鋼材101の表層の性状によって変化するパラメータに基づいて硬度変化部を検出する装置である。本実施形態のパラメータとしては、例えば鋼材101の表層に磁界をかけた場合に、磁界を生成するために入力するパラメータであって当該表層の性状の影響を受けて変化するパラメータ、及び、磁界をかけることによって当該表層の性状に応じた値が測定されるパラメータを含む。なお、鋼材101の表層に磁界をかけた場合に、当該表層の性状の影響を受けて変化するパラメータを総称して電磁気特性と称し、得られるパラメータの値を電磁気特性値と称する。以下、鋼材101の表層の性状によって変化するパラメータが、鋼材101の表層の電磁気特性である場合について説明する。
硬度変化部検出装置1は、鋼材101の表層の電磁気特性値を測定するパラメータ測定装置(測定部)10と、パラメータ測定装置10で測定された電磁気特性値に基づいて鋼材101の表層における硬度変化部の存在を判定する硬度変化部判定装置(判定部)20とを備える。ここで、本実施形態における硬度とは、様々な試験によって定量される硬度を含む。例えば、ビッカース硬さ試験によるビッカース硬度、ブリネル硬さ試験によるブリネル硬度、ヌープ硬さ試験によるヌープ硬度、ロックウェル硬さ試験によるロックウェル硬度などである。また、これらの硬度は、各硬度を測定する試験方法によって測定される値である必要はなく、予め相関関係が分かっていれば、リバウンド式試験機によって測定された結果に基づいて測定値を得ても良く、リバウンド式試験で得られる測定値そのものを硬度の指標として用いても良い。以下においては、一例としてビッカース硬度を測定するものとして説明し、単に硬度と称する。
また、硬度変化部とは、鋼材の表層における正常な他の部分と比較して硬度が所定の範囲を超えて異なる部分である。このような硬度変化部は、例えば予め定められた硬度の上限値を超える領域である硬化部や、予め定められた硬度の下限値を超える領域である軟化部である。鋼材に熱処理を施す際、熱処理設備のトラブルなどによって鋼材を均一に加熱したり冷却したりすることができない場合がある。このような場合、製造された鋼材の結晶組織は不均一となり鋼材の表層の硬度が均一とならず、鋼材の表層の一部に硬度変化部が生じてしまう。例えば硫化水素を含むガスの搬送用に用いられる鋼管では、ガスに接触する内面に、硫化物腐食割れに対する耐性が求められ、それ故に硫化物腐食割れの起点となりうる硬度変化部が生じていないことが求められ、硬度変化部の検出が必要となる。
(パラメータ測定装置)
図1に示すように、本実施形態においてパラメータ測定装置10は、例えば鋼材101のBHループから得られる電磁気特性値を測定する装置である。BHループは、鋼材101の表層に周期的に印加される磁界の強さHと、印加された磁界により鋼材101の表層に生じた磁束密度Bとの関係を示す相関データである。パラメータ測定装置10は、磁化器11と、発振器12と、励磁電源13と、磁界演算部14と、検出コイル15と、磁束密度演算部16と、BHループ演算部17と、電磁気特性値検出部18とを備える。
磁化器11は、ヨーク111と、励磁コイル112とを有する。ヨーク111は、磁極となる先端面を測定対象である鋼材101の表層の表面に対向して配した一対の鉄芯部111aと、一対の鉄芯部111aの基端同士を連結する連結部111bとを有してU字状に形成されている。励磁コイル112は、鉄芯部111aのそれぞれに巻かれている。このような構成により、ヨーク111は、励磁コイル112に交流電流が流れることで、鉄芯部111aと対向する位置に配された鋼材101の表層に、交流電流の大きさに応じた強さHの磁界を発生させることができる。
発振器12は、目的とする交流電流の周波数に応じた周波数の信号を出力する。励磁電源13は、発振器12から受け付けた信号の周波数に応じた交流電流を励磁コイル112に出力する。また、励磁電源13は、出力する交流電流の大きさ、すなわち交流電流の振幅を設定できる。磁界演算部14は、励磁電源13から励磁コイル112に出力される交流電流の大きさを検出し、検出された交流電流の大きさ、予め記憶された励磁コイル112の巻き数などから、鋼材101の表層に発生した磁界の強さHを演算する。磁界演算部14は、演算した磁界の強さHをBHループ演算部17に出力する。
検出コイル15は、一対の鉄芯部111aの少なくとも一方の先端部分に、磁極となる先端面を囲むように巻かれている。磁化器11によって発生する磁界と鋼材101の表層の状態とにより、磁極と鋼材101の表面とのギャップに発生する磁束Φは変化する。そして、検出コイル15には、この磁束Φの時間変化に応じて電磁誘導により電流が発生する。磁束密度演算部16は、検出コイル15に発生する電流を検出し、検出された電流と、予め求められた検出コイル15の巻き数、検出コイル15の断面積などから、磁束密度Bを演算する。磁束密度演算部16は、演算した磁束密度BをBHループ演算部17に出力する。
BHループ演算部17は、磁界演算部14から出力された磁界の強さHと、磁束密度演算部16から出力された磁束密度Bとに基づいて、磁界の強さHと磁束密度Bとの関係を示すBHループを演算する。図2は、BHループ演算部17で演算されるBHループの一例を示している。図2に示すようなBHループにより、測定対象である鋼材101の表層の電磁気特性値を得ることができる。具体的には、電磁気特性値を示す値としては、残留磁束密度Br、保磁力Hc、透磁率μなどが挙げられる。残留磁束密度Brは、BHループにおいてHが最大なった点R1から磁界の強さHを小さくしてゼロになった点R2における磁束密度である。また、保磁力Hcは、さらに磁界の向きを逆転させて磁束密度がゼロとなる点R3における磁界の強さを示している。また、透磁率μは、任意の磁界の強さHの時において磁界の強さをΔH分変動させた時の磁界の強さHに対する磁束密度Bの変化率を示している。なお、電磁気特性値としては、残留磁束密度Br、保磁力Hc、透磁率μに限られず、磁界の強さの変化により検出される電磁気特性値であればこれに限られるものではない。電磁気特性値検出部18は、少なくとも2種類の電磁気特性値をBHループ演算部17で演算されたBHループから抽出する。本実施形態では、電磁気特性値検出部18は、例えば、残留磁束密度Brと保磁力Hcを抽出する。ただし、これに限られず、電磁気特性値検出部18は、残留磁束密度Brまたは保磁力Hcに代えて、他の電磁気特性値を検出するものとしても良く、3種類以上の電磁気特性値を検出するものとしても良い。電磁気特性値検出部18は、抽出した複数種類の電磁気特性値を硬度変化部判定装置20に出力する。
(硬度変化部判定装置)
次に、硬度変化部判定装置20について説明する。硬度変化部判定装置20は、パラメータ測定装置によって測定された電磁気特性値と後述する基準値とを比較し、電磁気特性値が促成された部位が硬度変化部か否かを判定する。図3に示すように、硬度変化部判定装置20は、バスで接続されたCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ200とメモリ201とを備える制御部21を備え、プログラムを実行する。硬度変化部判定装置20は、プログラムの実行によって制御部21、出力部22及び記憶部23を備える装置として機能する。なお、硬度変化部判定装置20の各機能の全て又は一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やPLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されてもよい。プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置である。プログラムは、電気通信回線を介して送信されてもよい。
出力部22は、各種情報を出力する。出力部22は、例えば、パラメータ測定装置10で測定された鋼材101の表面上の位置のうち、硬度変化部と判定された位置を出力する。また、位置情報取得し、位置情報と硬度変化部に関する情報とを対応付けて表示しても良い。出力部22は、例えば、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイや液晶ディスプレイ、有機EL(Electro−Luminescence)ディスプレイ等の表示装置を含んで構成される。出力部22は、これらの表示装置を自装置に接続するインタフェースとして構成されてもよい。
記憶部23は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置などの記憶装置を用いて構成される。記憶部23はパラメータ測定装置10に関する各種情報を記憶する。記憶部23は、パラメータ測定装置10で測定される複数種類の電磁気特性値のそれぞれと、応力の変化に対して増加傾向か減少傾向かを示す情報、及び、硬度の変化に対して増加傾向か減少傾向かを示す情報とが対応付けられた判定テーブルが記憶されている。判定テーブルの詳細について以下に示す。
図4は、電磁気特性値と、応力及び硬度との相関関係のパターンの一例を示したグラフである。図4のグラフは、横軸を測定した部分の鋼材の表層の応力、縦軸を対象となる電磁気特性値の大きさとし、また、応力と電磁気特性値との関係を硬度ごとにまとめたグラフである。応力は引張応力を正の値とし、圧縮応力を負の値として示している。各グラフで示している硬度の種類は、硬度が高い実線で示す硬度と、硬度が低い点線で示す硬度と2種類示しているが、これに限るものではなく、3種類以上で示すものとしても良い。図4(a)〜(h)に示すように、応力変化及び硬度変化に対する電磁気特性値の変化の傾向、すなわち応力増加に対して電磁気特性値は増加傾向か減少傾向か、硬度増加に対して電磁気特性値は増加傾向か減少傾向かは、電磁気特性値の種類によって異なる。
図4(a)〜(d)に示すパターンでは、単純増加または単純減少の傾向を示す。すなわち、図4(a)に示すパターンは、圧縮応力が小さくなるにつれて、また、引張応力が大きくなるにつれて電磁気特性値も大きくなり、また、硬度が高くなるにつれて電磁気特性値は小さくなる相関関係を有している。図4(b)に示すパターンは、圧縮応力が小さくなるにつれて、また、引張応力が大きくなるにつれて電磁気特性値も大きくなり、また、硬度が高くなるにつれて電磁気特性値も大きくなる相関関係を有している。図4(c)に示すパターンは、圧縮応力が小さくなるにつれて、また、引張応力が大きくなるにつれて電磁気特性値は小さくなり、また、硬度が高くなるにつれて電磁気特性値は小さくなる相関関係を有している。図4(d)に示すパターンは、圧縮応力が小さくにつれて、また、引張応力が大きくなるにつれて電磁気特性値は小さくなり、また、硬度が高くなるにつれて電磁気特性値も大きくなる相関関係を有している。
一方、図4(e)〜(h)に示すパターンでは、一部の応力範囲Mで、応力の変化に対する電磁気特性値の変化が飽和し、応力に対して電磁気特性値が略一定となるパターンを示す。すなわち、図4(e)に示すパターンは、圧縮応力となる一部の範囲では、応力が変化しても電磁気特性値に変化はない、または、同等レベルである。さらに、当該範囲よりも圧縮応力が小さい、または、引張応力の場合には、圧縮応力が小さくなるにつれて、また、引張応力が大きくなるにつれて電磁気特性値も大きくなり、また、硬度が高くなるにつれて電磁気特性値も大きくなる相関関係を有している。図4(f)に示すパターンは、圧縮応力となる一部の範囲では、応力が変化しても電磁気特性値に変化はない、または、同等レベルである。さらに、当該範囲よりも圧縮応力が小さい、または、引張応力の場合には、圧縮応力が小さくなるにつれて、また、引張応力が大きくなるにつれて電磁気特性値は小さくなり、また、硬度が高くなるにつれて電磁気特性値は小さくなる相関関係を有している。図4(g)に示すパターンは、圧縮応力となる一部の範囲では、応力が変化しても電磁気特性値に変化はない、または、同等レベルである。さらに、当該範囲よりも圧縮応力が小さい、または、引張応力の場合には、圧縮応力が小さくなるにつれて、また、引張応力が大きくなるにつれて電磁気特性値は小さくなり、また、硬度が高くなるにつれて電磁気特性値も大きくなる相関関係を有している。図4(h)に示すパターンは、圧縮応力となる範囲では、応力が小さくなるにつれて電磁気特性値が大きくなるとともに、引張応力となる範囲では、応力が変化しても電磁気特性値に変化はない、または、同等レベルである。さらに、硬度が高くなるにつれて電磁気特性値は小さくなる相関関係を有している。なお、このような相関関係については、横軸を測定した部分の鋼材の表層の硬度、縦軸を対象となる電磁気特性値の大きさとし、また、硬度と電磁気特性値との関係を応力ごとにまとめたグラフとしても良い。また、相関関係のパターンについては図4に示すパターンに限られず、電磁気特性値の変化がない、または、同等レベルにある応力の範囲の存在や、傾きの程度などにより様々なパターンが存在している。また、図4に示すような直線状の相関関係の組み合わせではなく、2次曲線や反比例曲線で示される相関関係を有していても良い。
図4に示されるように、電磁気特性値と、応力及び硬度との相関関係のパターンは電磁気特性値ごとに異なる関係となる場合がある。そのため、電磁気特性値ごとに、電磁気特性値と、応力及び硬度との相関関係のパターンを確認する必要がある。例えば、図4(e)に示される電磁気特性値は、応力が変化しても電磁特性値に変化はない、または、同等レベルである応力範囲M1と、応力範囲M1よりも圧縮応力が小さい、及び、引張応力である範囲であって、引張応力の増大に従って残留磁束密度Brが増加傾向を示す応力範囲N1とを有する。また、応力範囲N1では、硬度が高くなるに従って電磁特性値が増加傾向を示す。また、図4(g)に示される電磁特性値は応力が変化しても電磁特性値に変化はない、または、同等レベルである応力範囲M2と、応力範囲M2よりも圧縮応力が小さい、及び、引張応力である範囲であって、引張応力の増大に従って電磁特性値が減少傾向を示す応力範囲N2とを有する。また、応力範囲N2では、硬度が高くなるに従って電磁特性値が増加傾向を示す。このように、応力範囲N1と応力範囲N2とが重なる応力範囲では、2箇所の測定位置で比較して、硬度が高くなった場合には、図4(e)に示される電磁気特性値は増大し、図4(g)に示される電磁気特性値も増大する。また、硬度が低くなった場合には、図4(e)に示される電磁気特性値は減少し、図4(g)に示される電磁気特性値も減少する。一方、圧縮応力が小さくなり、または、引張応力が大きくなる(以下では、単に応力が大きくなる、または、増大するという)場合には、残留磁束密度Brは増大し、保磁力Hcは減少する。また、圧縮応力が大きくなり、または、引張応力が小さくなる(以下では、単に応力が小さくなる、または、減少するという)応力が小さくなった場合には、図4(e)に示される電磁気特性値は減少し、図4(g)に示される電磁気特性値は増大する。したがって、硬度(応力または硬度のうちいずれか一方)の変化に対して同一傾向を示すとともに、応力(応力または硬度のうちいずれか他方)の変化に対しては逆傾向を示す2種類の電磁気特性値の組み合わせである図4(e)に示される電磁気特性値と図4(g)に示される電磁気特性値とについて2箇所の測定位置における測定結果を比較し、どのような変化の組み合わせとなっているかに注目することで、硬度変化部、すなわち硬度が高くなっている部分(硬化部)及び硬度が低くなっている部分(軟化部)であるかどうかを判定することができる。上記した内容を判定テーブルとして整理すると、図5(a)に示すように、2種類の電磁気特性値の増減の組み合わせごとに応力及び硬度の増減が示されるテーブルとなる。
なお、上記例においては、図4(e)に示される電磁気特性値と図4(g)に示される電磁気特性値の組み合わせにより、硬度の変化に対して同一傾向を示すとともに、応力の変化に対しては逆傾向を示す例を示したが、これに限らない。図4(b)の相関関係を示す電磁気特性値と、図4(d)の相関関係を示す電磁気特性値との組合せにおいても、一方の電磁気特性値(図4(b))では、応力が大きくなるにしたがって電磁気特性値も大きくなり、硬度が高くなるに従って電磁気特性値も大きくなる。また、他方の電磁気特性値(図4(d))では、応力が大きくなるに従って電磁気特性値は小さくなり、硬度が高くなるに従って電磁気特性値は大きくなる。このように、硬度の変化に対していずれも増大傾向となる同一傾向を示すとともに、応力の変化に対しては一方では増大傾向、他方では減少傾向となる逆傾向を示す場合には、同様の傾向を示す範囲において図5(a)に示す判定テーブルで整理することができる。
また、例えば図4(c)と図4(d)の相関関係を示す2種類の電磁気特性値の組み合わせ、すなわち硬度の変化に対していずれも減少傾向となる同一傾向を示すとともに、応力の変化に対しては一方では増大傾向、他方では減少傾向となる逆傾向を示す場合には、同様の傾向を示す範囲において図5(b)に示す判定テーブルで整理することができる。また、例えば図4(a)と図4(b)の相関関係を示す2種類の電磁気特性値の組み合わせ、すなわち硬度の変化に対して一方では増大傾向、他方では減少傾向となる逆傾向を示すとともに、応力の変化に対してはいずれも増加傾向となる同一傾向を示す場合には、同様の傾向を示す範囲において図5(c)に示す判定テーブルで整理することができる。また、例えば図4(c)と図4(d)の相関関係を示す2種類の電磁気特性値の組み合わせ、すなわち硬度の変化に対して一方では増大傾向、他方では減少傾向となる逆傾向を示すとともに、応力の変化に対してはいずれも減少傾向となる同一傾向を示す場合には、同様の傾向を示す範囲において図5(d)に示す判定テーブルで整理することができる。なお、上記においては2種類の電磁気特性値における硬度及び応力に関する傾向の組み合わせとしたが、3種類以上の電磁気特性値における硬度及び応力に関する傾向の組み合わせとしても良い。
以上のような少なくとも2種類の電磁気特性値の組み合わせにより示される判定テーブルは、予め同一の鋼種の標準片について、応力状態及び硬度を異なるものを準備し、それぞれについて電磁気特性値を測定することによって得ることができる。ここで、同一の鋼種の標準片とは、対象となる鋼材と成分が同一であって、同一の製造条件で製造された同一形状の鋼材を言う。詳細については後述する準備工程で詳細に説明する。そして、上記判定テーブルは、記憶部23に記憶されている。
次に、制御部21の機能構成の一例について説明する。
図6に示すように、制御部21は、電磁気特性値取得部(パラメータ取得部)211と、判定テーブル取得部212と、判定部213とを有する。電磁気特性値取得部211は、パラメータ測定装置10による測定単位ごと(同一の測定位置での測定ごと)に、電磁気特性値検出部18から出力された少なくとも2種類の電磁気特性値を取得する。例えば、本実施形態では、電磁気特性値取得部211は、残留磁束密度Brと保磁力Hcとを取得する。判定テーブル取得部212は、電磁気特性値取得部211で取得された電磁気特性値の種類の組み合わせと対応した判定テーブルを取得する。例えば、本実施形態では、図5(a)に示す判定テーブルを取得する。判定部213は、電磁気特性値取得部211で取得された電磁気特性値と、当該電気特性値の種類と対応して判定テーブル取得部212で取得された判定テーブルとに基づいて、基準となる測定位置に対して硬度が変化、すなわち高くなったか、低くなったかを判定する。また、合わせて基準となる測定位置に対して応力が変化、すなわち応力が大きくなったか、小さくなったかを判定しても良い。ここで、基準となる測定位置とは、予め決めた基準位置としても良いし、常に前回の測定位置を基準となる測定位置として更新するものとしても良い。
(硬度変化部検出方法)
次に、硬度変化部検出装置1によって実施される本実施形態の硬度変化部検出方法について説明する。図7及び図8は、本実施形態の硬度変化部検出方法のフローを示している。なお、準備工程については予め実施して複数種類の電磁気測定値と応力及び硬度との相関関係を取得していれば省略することができる。
図7に示すように、本実施形態の硬度変化部検出方法は、準備工程S1と、測定工程S2と、判定工程S3とを備える。準備工程S1は、第一準備工程S11と、第二準備工程S12と、第三準備工程S13とを備える。第一準備工程S11は、測定対象となる鋼材101と同一鋼種であって、予め表層の応力σ及び硬度Hvが既知の標準片を、応力σまたは硬度Hvが異なるようにして複数準備する。各標準片において硬度Hvを異ならせるためには、例えば、当該標準片を切り出す材料について、加熱及び冷却を実施し、微細な組織の状態を異ならせることで実現できる。このようにして微細な組織の状態を異ならせた複数の標準片について、ビッカース硬さ試験により硬度Hvを測定することで、異なる値で硬度Hvが既知である標準片を得ることができる。これら硬度Hvの異なる標準片それぞれについて、さらに応力状態を異ならせる。応力状態を異ならせる方法としては、例えば外力を加えることが可能な試験機に標準片を設置して、所定の圧縮応力または引張応力を生じさせることで実現できる。
第二準備工程S12では、第一準備工程S11で準備した各標準片の表層について各種類の電磁気特性値を測定する。電磁気測定値の測定方法については後述する測定工程S2と同じであるので説明を省略する。第三準備工程では、各標準片で第二準備工程S12を実施して得られた電磁気特性値と、第一準備工程S11で得られている各標準片の応力及び硬度に基づいて、図4に示されるようなグラフに整理し、整理した結果から図5に示すような判定テーブルを作成する。
第四準備工程では、硬度変化部に相当する硬度を有する基準片の表層について基準片の応力状態を変更しながら各種の電磁気特性値を測定する。第四準備工程で測定された各種の電磁気特性値は、各種の基準値として記録する。
測定工程S2では、パラメータ測定装置10により鋼材101の表面上の各測定位置において表層の電磁気特性値を測定する。具体的には、励磁電源13から交流電流を供給して磁界を発生させつつ磁化器11の磁極面の位置が異なるように鋼材101の表面上で走査し、検出コイル15で磁束Φを検出する。これにより上記のとおりBHループを各測定位置で取得し、当該取得したBHループから電磁気特性値を求める。測定された結果は、パラメータ測定装置10から硬度変化部判定装置20に出力される。
図7は、硬度変化部判定装置20において実行される処理手順を示している。図7に示すように、判定工程S3では、電磁気測定値取得工程S31と、判定テーブル取得工程S32と、硬度変化判定工程S33とを実施する。電磁気測定値取得工程S31では、電磁気特性値取得部211がパラメータ測定装置10から各測定位置における少なくとも2種類の電磁気特性値を取得する。本実施形態では、例えば電磁気特性値として残留磁束密度Brと保磁力Hcとを取得する。判定テーブル取得工程S32では、電磁気測定値取得工程S31で取得された電磁気特性値の種類の組み合わせと対応した判定テーブルを記憶部23から取得する。
硬度変化判定工程S33では、電磁気測定値取得工程S31で取得された電磁気特性値と、第四準備工程で取得された電磁気特性値の基準値と、判定テーブル取得工程S32で取得された対応する判定テーブルとに基づいて測定位置に硬度変化部があるかを判定する。なお、第四準備工程で取得された電磁気特性値の基準値は、電磁気測定値取得工程S31で取得された電磁気特性値と同一の電磁気特性値の基準値である。そして、第四準備工程で取得された電磁気特性値の基準値に対して測定した測定位置における電磁気特性値が増大したか、減少したかを判定する。そして、2種類の電磁気特性値に関する増減の結果を判定テーブルに当てはめることで、第四準備工程の基準片の硬度と比較して、硬度が高くなったか、低くなったかを判定する。第四準備工程で取得された電磁気特性値の基準値は、硬度変化部と同等の硬度を有するため、上記判定を行うことによって測定された部位が硬度変化部であるか否かを判定することができる。
検出対象が硬化部の場合であって、判定テ―ブルとして図5(a)に示される判定テ―ブルを用いる場合について説明する。この場合、第四準備工程では硬化部相当の硬度を有する基準片を用意する。そして、電磁気測定値取得工程S31で取得された電磁気特性値と、第四準備工程で測定された基準片の電磁気特性値とを比較する。比較の結果、電磁気特性値(1)(2)がいずれも増大している場合、電磁気測定値取得工程S31で取得された電磁気特性値を有する部位は、硬化部と判定する。同様にして、比較の結果、電磁気特性値(1)(2)がいずれも減少している場合、電磁気測定値取得工程S31で取得された電磁気特性値を有する部位は、硬化部でないと判定される。なお、検出対象が軟化部の場合であっても同様である。この場合、第四準備工程では軟化部相当の硬度を有する基準片を用意する。そして、電磁気測定値取得工程S31で取得された電磁気特性値と、第四準備工程で測定された基準片の電磁気特性値とを比較する。比較の結果、電磁気特性値(1)(2)がいずれも増大している場合、電磁気測定値取得工程S31で取得された電磁気特性値を有する部位は、軟化部ではないと判定する。同様にして、比較の結果、電磁気特性値(1)(2)がいずれも減少している場合、電磁気測定値取得工程S31で取得された電磁気特性値を有する部位は、軟化部であると判定されない。
以上のように、本実施形態の硬度変化部検出装置1、硬度変化部検出方法及びプログラムによれば、2種類の電磁気特性値が、応力の変化及び硬度の変化に対して、同一傾向及び逆傾向の異なる傾向を示すことにより、判定工程では、測定位置で測定された測定結果と、準備工程で測定された基準値とを比較して同一傾向及び逆傾向かのいずれであるかに基づいて硬度が変化したかを判定し、これにより応力の変化の影響を控除して硬度変化部を精度高く検出することができる。
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。図9及び図10は、本発明の第2の実施形態を示したものである。この実施形態において、前述した実施形態で用いた部材と共通の部材には同一の符号を付して、その説明を省略する。
図9に示すように、本実施形態の硬度変化部検出装置50は、パラメータ測定装置60と、硬度変化部判定装置20とを備える。パラメータ測定装置60は、第1の実施形態のようなBHループを測定し、当該BHループから得られる電磁気特性値を得る装置ではなく、渦流探傷試験装置である。すなわち、パラメータ測定装置60は、検査プローブ61と、発振器62と、ブリッジ63と、移送器64と、増幅器65と、同期検波器66と、波形生成部67と、電磁気特性値検出部68とを有する。検査プローブ61は、測定コイル611を有する。発振器62は、所定の周波数を有する基準信号を生成し、ブリッジ63及び移送器64に出力する。ブリッジ63は、測定コイル611の微小なインピーダンス変化を電圧に変換し増幅器65に出力する。増幅器65は、ブリッジ63から出力された信号を増幅して、同期検波器66に出力する。移送器64は、基準信号の周波数を保ったまま位相をシフトした信号を生成し、同期検波器66に出力する。同期検波器66は、増幅器65から出力された信号を、移送器64から出力される信号によって同期検波し、直流成分を抽出して波形生成部67に出力する。波形史枝政部波形生成部67では、同期検波器66から出力された信号に基づいて図10に示すような波形を生成する。電磁気特性値検出部68では、電磁気特性値として、同期検出器66で生成された波形から、例えば渦流振幅Aと渦流位相δとを検出する。そして、電磁気特性値検出部68は、2種類の電磁気特性値である渦流振幅Aと渦流位相δとを硬度変化部判定装置20に出力する。硬度変化部判定装置20では、これら2種類の電磁気特性値である渦流振幅Aと渦流位相δとに基づいて第1の実施形態同様に硬度変化部を検出する。
以上のように、電磁気特性値を測定する測定部としては、BHループを検出する装置に限られず、本実施形態のような渦流探傷試験装置とし、これによって得られる電磁気特性値としても良い。また、BHループを検出する装置と渦流探傷試験装置とを組み合わせても良いし、BHループを検出する装置及び渦流探傷試験装置以外でも良い。少なくとも鋼材101表層に磁界を発生させ、硬度及び応力の違いによって異なる傾向が得られる電磁気特性値を測定可能な装置であれば適用可能である。
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。図11は、本発明の第3の実施形態を示したものである。この実施形態において、前述した実施形態で用いた部材と共通の部材には同一の符号を付して、その説明を省略する。
図11に示すように、本実施形態の硬度変化部検出方法は、応力調整工程S4を備える点が第1の実施形態と異なる。応力調整工程S4は、測定工程S2の前に実施される。応力調整工程S4は、測定対象となる鋼材101の表層に応力を与えて、応力状態を変化させる。応力調整工程S4において、鋼材101の表層に応力を与える方法としては、例えば、鋼材101の表層の表面にブラスト処理を行うことが挙げられる。これにより、鋼材101の表層には、応力調整工程S4を実施する前の鋼材101と比較して大きな残留圧縮応力を与えることができる。あるいは、応力調整工程S4を実施する前の鋼材101が残留応力として引張応力が生じている部分と圧縮応力が生じている部分とがある場合に、全体を圧縮応力が生じた状態とすることができる。なお、鋼材101の表層に応力を与える方法としてはこれに限られず、例えば両端部が固定された鋼材101を加熱または冷却して熱変形させることで熱応力を与えたり、外力を加えることで引張応力または圧縮応力を与えたりするものとしても良い。
このように応力調整工程S4を実施することで、図4に示すような電磁気特性値ごとの相関関係において、応力及び硬度に対する傾向が異なる応力の範囲に設定することができる。
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。例えば、鋼材101の表層の性状によって変化するパラメータが、鋼材101の表層の電磁気特性である場合について説明したが、これに限られない。また、本実施形態では、鋼材101の表層の電磁気特性として、磁界をかけることによって当該表層の性状に応じた値が測定されるパラメータを例としたが、これに限られない。たとえば、第1の実施形態に示されるように測定部が電磁気特性を測定する装置である場合、鋼材101の表層にかける磁界を生成するために、当該電磁気測定装置に印加(入力)される励磁電流や励磁電圧であってもよく、これらの信号に関する情報(例えば、振幅や高調波成分、半値幅(振幅の50%における信号の幅)等)であってもよい。また、第2の実施形態に示されるように測定部が渦電流探傷試験装置である場合、測定された信号に関する情報(波形の幅や位相など)であっても良い。
1 硬度変化部検出装置
10 パラメータ測定装置(パラメータ測定装置、測定部))
20 硬度変化部判定装置(判定部)
101 鋼材
A 渦流振幅
Br 残留磁束密度
Hc 保磁力
Hv 硬度
μΔ 増分透磁率(透磁率)
δ 渦流位相
S11 第一準備工程
S12 第二準備工程
S13 第三準備工程
S2 測定工程
S3 判定工程
S4 応力調整工程

Claims (4)

  1. 測定対象となる鋼材の表層に対して、複数の測定位置でそれぞれ少なくとも2種類の鋼材の表層の性状によって変化するパラメータを測定する測定部と、
    前記測定部で測定された前記パラメータの測定結果と、あらかじめ設定された基準値と、あらかじめ設定された判定テーブルとを比較して硬度が変化した硬度変化部か否かを判定する判定部とを備え、
    前記基準値は、前記硬度変化部と同等の硬度を有する鋼材に対して測定されたパラメータであって、
    前記判定テーブルは、
    応力または硬度のうちいずれか一方の変化に対する変化傾向が、両者とも増加傾向及び減少傾向のいずれかで一致する同一傾向であって、
    応力または硬度のうちいずれか他方の変化に対する変化傾向が、増加傾向及び減少傾向で互いに異なる逆傾向である2種類のパラメータに基づいて作成された硬度の増減が示されたテーブルである硬度変化部検出装置。
  2. 測定対象となる鋼材の表層に対して、複数の測定位置でそれぞれ少なくとも2種類の鋼材の表層の性状によって変化するパラメータを測定する測定工程と、
    前記測定工程で測定された前記パラメータの測定結果と、あらかじめ設定された基準値と、あらかじめ設定された判定テーブルとを比較して硬度が変化した硬度変化部か否かを判定する判定工程とを備え、
    前記測定工程では、2種類の前記パラメータとして、応力の変化に対して、両者とも増加傾向及び減少傾向のいずれかで一致する同一傾向、及び、増加傾向及び減少傾向で互いに異なる逆傾向のいずれかの傾向となり、硬度の変化に対して、応力の変化と異なる前記逆傾向及び前記同一傾向のいずれかの傾向となる前記パラメータをそれぞれ測定し、
    前記判定テーブルは、応力または硬度のうちいずれか一方の変化に対する変化傾向が、両者とも増加傾向及び減少傾向のいずれかで一致する同一傾向であって、応力または硬度のうちいずれか他方の変化に対する変化傾向が、増加傾向及び減少傾向で互いに異なる逆傾向である2種類のパラメータに基づいて作成された硬度の増減が示されたテーブルである硬度変化部検出方法。
  3. 測定対象となる前記鋼材と同一の鋼種であって、予め表層の応力及び硬度が既知の標準片を、応力または硬度が異なるようにして複数準備する第一準備工程と、
    前記第一準備工程で準備された複数の前記標準片について、少なくとも2種類の前記パラメータを測定する第二準備工程と、
    前記第二準備工程で測定された結果に基づいて、前記パラメータのそれぞれに関して、応力の変化及び硬度の変化に対して増加傾向及び減少傾向を示すかが記録された判定テーブルを取得する第三準備工程とを備える請求項2に記載の硬度変化部検出方法。
  4. コンピュータを、
    測定対象となる鋼材の表層に対して、複数の測定位置で測定された少なくとも2種類の鋼材の表層の性状によって変化するパラメータを取得するパラメータ取得手段、
    前記パラメータの変化の組み合わせごとに硬度の増減が示される判定テーブルを取得する判定テーブル取得手段、
    前記測定部で測定された前記パラメータの測定結果と、あらかじめ設定された基準値と、あらかじめ設定された判定テーブルとを比較して硬度が変化した硬度変化部か否かを判定する判定手段として機能させ、
    前記判定手段が、前記基準値として、前記硬度変化部と同等の硬度を有する鋼材に対して測定されたパラメータを用いて、前記判定テーブルとして、応力または硬度のうちいずれか一方の変化に対する変化傾向が、両者とも増加傾向及び減少傾向のいずれかで一致する同一傾向であって、応力または硬度のうちいずれか他方の変化に対する変化傾向が、増加傾向及び減少傾向で互いに異なる逆傾向である2種類のパラメータに基づいて作成された硬度の増減が示されたテーブルを用いて、硬度が変化したかを判定するためのプログラム。
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