JP2021043161A - 硬度測定装置、硬度測定方法及びプログラム - Google Patents

硬度測定装置、硬度測定方法及びプログラム Download PDF

Info

Publication number
JP2021043161A
JP2021043161A JP2019167480A JP2019167480A JP2021043161A JP 2021043161 A JP2021043161 A JP 2021043161A JP 2019167480 A JP2019167480 A JP 2019167480A JP 2019167480 A JP2019167480 A JP 2019167480A JP 2021043161 A JP2021043161 A JP 2021043161A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
hardness
stress
steel material
parameter
surface layer
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2019167480A
Other languages
English (en)
Inventor
充 宮本
Mitsuru Miyamoto
充 宮本
山田 裕久
Hirohisa Yamada
裕久 山田
正樹 山野
Masaki Yamano
正樹 山野
山本 龍司
Ryuji Yamamoto
龍司 山本
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Corp
Original Assignee
Nippon Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Steel Corp filed Critical Nippon Steel Corp
Priority to JP2019167480A priority Critical patent/JP2021043161A/ja
Publication of JP2021043161A publication Critical patent/JP2021043161A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Investigating Or Analyzing Materials By The Use Of Magnetic Means (AREA)

Abstract

【課題】鋼材の表層の硬度をより精度高く測定することが可能な硬度測定装置、硬度測定方法及びプログラムを提供する。【解決手段】硬度測定装置1は、測定対象となる鋼材101の表層に対して、パラメータを測定する測定部10と、鋼材101の鋼種に応じて予め求められたパラメータと鋼材101の表層の硬度との相関関係、及び、測定部10で測定されたパラメータの測定結果に基づいて、測定部10によって測定した位置における鋼材101の表層の硬度を求める硬度取得部20とを備え、測定部10は、パラメータとして、測定範囲の鋼材101の表層の応力状態が少なくとも含まれる応力範囲で、応力に対してパラメータが略一定となる種類のパラメータを測定し、硬度取得部20は、前記応力範囲で前記相関関係から硬度を求める。【選択図】図1

Description

本発明は、鋼材の表層の硬度を測定する硬度測定装置、硬度測定方法及びプログラムに関する。
近年、硫化水素環境下に晒される鋼材では、硫化物腐食割れ(SSC:Sulfide Stress Cracking)が問題となっている。SSCは、硫化水素などの硫化物にさらされる鋼材の表層において、予め定められた硬度の上限値よりも硬度の高い表層硬化部が起点となって発生することが明らかとなっている。また、鋼材の強度が不足すると、鋼材の表層においては予め定められた硬度の下限値よりも硬度の低い表層軟化部が起点となって鋼材の破断が発生してしまう場合がある。このため、このような表層硬化部や表層軟化部(以下、表層硬化部および表層軟化部を総称して表層硬度変化部という)を硬度の測定により検出する方法が求められている。
鋼材の表層の硬度を測定する方法としては、例えば鋼材の表層の電磁気特性値を測定する方法が知られている。例えば、特許文献1に記載する技術では、このような電磁気特性値が鋼材の硬度に対して対応関係を示す一方、簡単な分析的な解決を不可能とするように変動することから、複数の電磁気特性値によって鋼材の硬度を概算する方法が提案されている。具体的には、特許文献1に記載する技術では、各電磁気特性値に関して、類似の化学組成を有する複数の鋼試料の硬度および電磁気特性値を測定し、これら測定値をデータバンク内に、各々測定された電磁気特性値に対する硬度の量子化された複数の組分け中に記憶する。そして、硬度を概算すべき鋼の複数の電磁気特性値を測定し、データバンク内に記憶された量子化された組分けと比較して、測定された電磁気特性値が入る量子化された組分けを決定した後に、それぞれの電磁気特性値で組分けされた結果を比較することで硬度を概算している。
特表平9−507570号公報
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、それぞれの電磁気特性において、あくまでも組分けを決定することに限られており、複数の電磁気特性で得られた組分けから確からしい硬度を概算することができるにすぎなかった。このため、より精度高く鋼材の表層の硬度を測定することが可能な装置及び方法が求められていた。
そこで、この発明は上述した事情に鑑みてなされたものであって、鋼材の表層の硬度をより精度高く測定することが可能な硬度測定装置、硬度測定方法及びプログラムを提供するものである。
発明者らは、様々な鋼種の鋼材に対して、様々な条件の下、表層の電磁気特性値など、鋼材の性状によって変化するパラメータを測定した。その結果、発明者らは、測定されるパラメータが、表層の硬度に依存するとともに、表層の応力状態にも依存することを見出した。すなわち、表層の硬度が所定の値であったとしても応力状態が異なると測定されるパラメータが異なる場合がある。鋼材の表層には、外力が加わっていなくても、製造プロセスにおける冷却条件の違いにより部分ごとに異なる残留応力が生じうる。このため、同じ硬度を有していても、残留応力が異なることにより測定されるパラメータは異なってしまう。その一方で、様々な種類のパラメータの中で、一部の種類のパラメータでは、特定の応力範囲において、応力に対してパラメータが略一定となることを見出した。発明者らは、鋼材の表層のパラメータを測定し、パラメータと応力および硬度との相関関係を複数作成し、作成した複数の相関関係のうち、応力に対してパラメータが略一定となる応力範囲を有する相関関係を用い、当該応力範囲でパラメータから硬度を求めることによって、応力の影響を控除してパラメータから硬度を求めることができるとの知見に至った。
本知見に基づいて、上記の課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用している。
すなわち、本発明の一態様に係る硬度測定装置は、測定対象となる鋼材の表層に対して、鋼材の性状によって変化するパラメータを測定する測定部と、前記鋼材の鋼種に応じて予め求められた前記パラメータと前記鋼材の表層の硬度との相関関係、及び、前記測定部で測定された前記パラメータの測定結果に基づいて、前記測定部によって測定した位置における前記鋼材の表層の硬度を求める硬度取得部とを備え、前記測定部は、前記パラメータとして、測定範囲の前記鋼材の表層の応力状態が少なくとも含まれる応力範囲で、応力に対してパラメータが略一定となる種類のパラメータを測定し、前記硬度取得部は、前記応力範囲で前記相関関係から硬度を求める。
この構成によれば、鋼材の鋼種に応じて、パラメータと、鋼材の表層の硬度との相関関係を求めた結果を予め取得しておく。この際、パラメータと、鋼材の表層の応力との相関関係も求めておき、応力に対してパラメータが略一定となる応力範囲を特定しておく。そして、測定部によってパラメータとして、測定範囲の鋼材の表層の応力状態が少なくとも含まれる応力範囲で、応力に対してパラメータが略一定となる種類のパラメータを測定する。そして、硬度取得部は、パラメータと鋼材の表層の硬度との相関関係と、パラメータの測定結果に基づいて、測定部によって測定した位置における鋼材の表層の硬度を求める。このように、測定範囲の鋼材の表層の応力状態が少なくとも含まれる応力範囲で、応力に対してパラメータが略一定となる種類のパラメータを測定し、これによって硬度を求めることで、応力による影響を控除して硬度を精度高く求めることができる。
また、上記硬度測定装置において、 前記応力範囲は以下の式(1)及び式(2)に基づいて定められるものとしても良い。
Δσ≦ΔP/α ・・・・・(1)
ΔP≦a・ΔHv/2 ・・・・・(2)
ただし、
Δσ:前記応力範囲の最小応力σ1と最大応力σ2との差(=σ2−σ1)
ΔHv:前記硬度取得部で求める硬度として要求される硬度分解能
ΔP:前記硬度分解能に基づいて許容される前記パラメータの測定誤差
a:予め求められた硬度に対する前記パラメータの変化率
α:予め求められた応力に対する前記パラメータの変化率
この構成によれば、求める硬度として要求される硬度分解能に基づいて、パラメータに対して許容される応力の変動幅を求めることができる。そして、当該変動幅に含まれる応力範囲をパラメータが略一定となる範囲とし、当該範囲に鋼材の表層の応力状態が含まれていることで、要求される硬度分解能に基づいて鋼材の表層の硬度を測定することができる。
本発明の一態様に係る硬度測定方法は、測定対象となる鋼材の表層に対して、パラメータを測定する測定工程と、前記鋼材の鋼種に応じて予め求められた前記パラメータと前記鋼材の表層の硬度との相関関係、及び、前記測定工程で測定された複数種類の前記パラメータの測定結果に基づいて、前記測定工程で測定した位置における前記鋼材の表層の硬度を求める硬度取得工程とを備え、前記測定工程では、前記パラメータとして、測定範囲の前記鋼材の表層の応力状態が少なくとも含まれる応力範囲で、応力に対してパラメータが略一定となる種類のパラメータを測定し、前記硬度取得工程では、前記応力範囲で前記相関関係から硬度を求める。
この方法によれば、鋼材の鋼種に応じて、パラメータと、鋼材の表層の硬度との相関関係を求めた結果を予め取得しておく。この際、パラメータと、鋼材の表層の応力との相関関係も求めておき、応力に対してパラメータが略一定となる応力範囲を特定しておく。そして、測定工程では、パラメータとして、測定範囲の鋼材の表層の応力状態が少なくとも含まれる応力範囲で、応力に対してパラメータが略一定となる種類のパラメータを測定する。そして、硬度取得工程では、パラメータと鋼材の表層の硬度との相関関係と、パラメータの測定結果に基づいて、測定部によって測定した位置における鋼材の表層の硬度を求める。このように、測定範囲の鋼材の表層の応力状態が少なくとも含まれる応力範囲で、応力に対してパラメータが略一定となる種類のパラメータを測定し、これによって硬度を求めることで、応力による影響を控除して硬度を精度高く求めることができる。
また、上記硬度測定方法において、前記鋼材の表層の応力状態を変化させる応力調整工程を備え、前記測定工程では、前記応力調整工程で応力状態が調整された前記鋼材に対して測定を行うものとしても良い。
この方法によれば、応力調整工程で、測定対象となる鋼材の表層の応力状態を変化させることができる。そして、このように応力状態を変化させることで、測定工程で測定するパラメータが応力に対して略一定となる応力範囲に、鋼材の表層の応力状態を調整することができ、これにより応力の影響を控除して精度高く硬度を測定することができる。
また、上記硬度測定方法において、 測定対象となる前記鋼材と同一の鋼種であって、予め表層の応力及び硬度が既知の標準片を、応力または硬度が異なるようにして複数準備する第一準備工程と、前記第一準備工程で準備された複数の前記標準片について、前記パラメータを測定する第二準備工程と、前記第二準備工程で測定された結果に基づいて、前記パラメータに関する前記相関関係を取得する第三準備工程とを備えるものとしても良い。
この方法によれば、第一準備工程及び第二準備工程を実施することで、検査対象となる鋼材と同一の鋼種について、異なる応力及び硬度と対応してパラメータを測定することができる。このため、第三準備工程で、これらの結果に基づいて、パラメータに関する相関関係を取得し、また、当該相関関係において応力に対して電磁特性値が略一定となる応力範囲を得ることができる。そして、測定工程では、当該応力範囲に鋼材の表層の応力状態が含まれている状態でパラメータを測定し、硬度取得工程では、取得した当該相関関係を用いて硬度を求めることで、応力の影響を控除して精度高く硬度を測定することができる。
本発明の一態様に係るプログラムは、コンピュータを、測定対象となる鋼材の表層で測定されたパラメータを取得するパラメータ取得手段、前記鋼材の鋼種に応じて予め求められた前記パラメータと前記鋼材の表層の硬度との相関関係を取得する相関関係取得手段、前記相関関係取得部で取得された前記相関関係及び前記パラメータ取得手段で取得された前記パラメータに基づいて、前記鋼材の表層の硬度を求める硬度演算手段、として機能させ、前記パラメータ取得手段が、前記パラメータとして、測定範囲の前記鋼材の表層の応力状態が少なくとも含まれる応力範囲で、応力に対してパラメータが略一定となる種類のパラメータを取得し、前記硬度取得手段が、前記応力範囲で前記相関関係から硬度を求める。
本発明によれば、鋼材の表層の硬度をより精度高く測定することができる。
第1の実施形態の硬度測定装置の構成を示す模式図である。 第1の実施形態のパラメータ測定装置で得られるBHループの模式図である。 第1の実施形態の硬度演算装置のハードウェア構成を示すブロック図である。 電磁気特性値と、応力及び硬度との相関関係の例を模式的に示したグラフである。 第1の実施形態の硬度演算装置で用いられる電磁気特性値と硬度との相関関係であって、応力に対して電磁気特性値が略一定となる応力範囲における相関関係の例を模式的に示したグラフである。 第1の実施形態の硬度演算装置の機能構成を示すブロック図である。 第1の実施形態の硬度測定方法を説明するフロー図である。 第1の実施形態の硬度測定方法において、硬度取得工程で実施される処理手順を示すフロー図である。 第2の実施形態の硬度測定装置の構成を示す模式図である。 第2の実施形態のパラメータ測定装置で得られる波形の模式図である。 第3の実施形態の硬度測定方法を説明するフロー図である。
(第1の実施形態)
以下、本発明に係る第1の実施形態について図1から図8を参照して説明する。図1は本実施形態の硬度測定装置を示している。
(硬度測定装置)
図1に示すように、本実施形態の硬度測定装置1は、鋼材101の表層の性状によって変化するパラメータに基づいて硬度を測定する装置である。本実施形態のパラメータとしては、例えば鋼材101の表層に磁界をかけた場合に、磁界を生成するために入力するパラメータであって当該表層の性状の影響を受けて変化するパラメータ、及び、磁界をかけることによって当該表層の性状に応じた値が測定されるパラメータを含む。なお、鋼材101の表層に磁界をかけた場合に、当該表層の性状の影響を受けて変化するパラメータを総称して電磁気特性と称し、得られるパラメータの値を電磁気特性値と称する。以下、鋼材101の表層の性状によって変化するパラメータが、鋼材101の表層の電磁気特性である場合について説明する。
硬度測定装置1は、鋼材101の表層の電磁気特性値を測定するパラメータ測定装置(測定部)10と、パラメータ測定装置10で測定された電磁気特性値に基づいて鋼材101の表層の硬度を求める硬度演算装置(硬度取得部)20とを備える。ここで、本実施形態における硬度とは、様々な試験によって定量される硬度を含む。例えば、ビッカース硬さ試験によるビッカース硬度、ブリネル硬さ試験によるブリネル硬度、ヌープ硬さ試験によるヌープ硬度、ロックウェル硬さ試験によるロックウェル硬度などである。また、これらの硬度は、各硬度を測定する試験方法によって測定される値である必要はなく、予め相関関係が分かっていれば、リバウンド式試験機によって測定された結果に基づいて測定値を得ても良く、リバウンド式試験で得られる測定値そのものを硬度の指標として用いても良い。以下においては、一例としてビッカース硬度を測定するものとして説明し、単に硬度と称する。
(パラメータ測定装置)
図1に示すように、本実施形態においてパラメータ測定装置10は、例えば鋼材101のBHループから得られる電磁気特性値を測定する装置である。BHループは、鋼材101の表層に周期的に印加される磁界の強さHと、印加された磁界により鋼材101の表層に生じた磁束密度Bとの関係を示す相関データである。パラメータ測定装置10は、磁化器11と、発振器12と、励磁電源13と、磁界演算部14と、検出コイル15と、磁束密度演算部16と、BHループ演算部17と、電磁気特性値検出部18とを備える。
磁化器11は、ヨーク111と、励磁コイル112とを有する。U字形状のヨーク111は、胴部111bと、胴部111bの両端に形成された一対の先端部111aとを有している。一対の先端部111aは、磁極となる先端面を測定対象である鋼材101の表層の表面に対向して配される。励磁コイル112は、先端部111aのそれぞれに巻かれている。このような構成により、ヨーク111は、励磁コイル112に交流電流が流れることで、先端部111aと対向する位置に配された鋼材101の表層に、交流電流の大きさに応じた強さHの磁界を発生させることができる。
発振器12は、目的とする交流電流の周波数に応じた周波数の信号を出力する。励磁電源13は、発振器12から受け付けた信号の周波数に応じた交流電流を励磁コイル112に出力する。また、励磁電源13は、出力する交流電流の大きさ、すなわち交流電流の振幅を設定できる。磁界演算部14は、励磁電源13から励磁コイル112に出力される交流電流の大きさを検出し、検出された交流電流の大きさ、予め記憶された励磁コイル112の巻き数などから、鋼材101の表層に発生した磁界の強さHを演算する。磁界演算部14は、演算した磁界の強さHをBHループ演算部17に出力する。
検出コイル15は、一対の先端部111aの少なくとも一方の先端部分に、磁極となる先端面を囲むように巻かれている。磁化器11によって発生する磁界と鋼材101の表層の状態とにより、磁極と鋼材101の表面とのギャップに発生する磁束Φは変化する。そして、検出コイル15には、この磁束Φの時間変化に応じて電磁誘導により電圧が発生する。磁束密度演算部16は、検出コイル15に発生する電圧を検出し、検出された電圧と、予め求められた検出コイル15の巻き数、検出コイル15の断面積などから、磁束密度Bを演算する。磁束密度演算部16は、演算した磁束密度BをBHループ演算部17に出力する。
BHループ演算部17は、磁界演算部14から出力された磁界の強さHと、磁束密度演算部16から出力された磁束密度Bとに基づいて、磁界の強さHと磁束密度Bとの関係を示すBHループを演算する。図2は、BHループ演算部17で演算されるBHループの一例を示している。図2に示すようなBHループにより、測定対象である鋼材101の表層の電磁気特性値を得ることができる。具体的には、電磁気特性値としては、残留磁束密度Br、保磁力Hc、透磁率μなどが挙げられる。残留磁束密度Brは、BHループにおいてHが最大なった点R1から磁界の強さHを小さくしてゼロになった点R2における磁束密度である。また、保磁力Hcは、さらに磁界の向きを逆転させて磁束密度がゼロとなる点R3における磁界の強さを示している。また、透磁率μは、任意の磁界の強さHの時において磁界の強さをΔH分変動させた時の磁界の強さHに対する磁束密度Bの変化率を示している。なお、電磁気特性値としては、残留磁束密度Br、保磁力Hc、透磁率μに限られず、磁界の強さの変化により検出される電磁気特性値であればこれに限られるものではない。電磁気特性値検出部18は、後述する測定範囲の鋼材101の表層の応力状態が少なくとも含まれる応力範囲で、応力に対して電磁気特性値が略一定となる種類の電磁気特性値をBHループ演算部17で演算されたBHループから抽出する。本実施形態では、電磁気特性値検出部18は、例えば、保磁力Hcを抽出する。ただし、これに限られず、電磁気特性値検出部18は、保磁力Hcに代えて残留磁束密度Brや透磁率μなど、少なくとも、後述する測定範囲の鋼材101の表層の応力状態が少なくとも含まれる応力範囲で、応力に対して電磁気特性値が略一定となる他の種類の電磁気特性値を検出するものとしても良く、複数種類の電磁気特性値を検出するものとしても良い。電磁気特性値検出部18は、抽出した電磁気特性値を硬度演算装置20に出力する。
(硬度演算装置)
次に、硬度演算装置20について説明する。
図3に示すように、硬度演算装置20は、バスで接続されたCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ200とメモリ201とを備える制御部21を備え、プログラムを実行する。硬度演算装置20は、プログラムの実行によって制御部21、出力部22及び記憶部23を備える装置として機能する。なお、硬度演算装置20の各機能の全て又は一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やPLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されてもよい。プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置である。プログラムは、電気通信回線を介して送信されてもよい。
出力部22は、各種情報を出力する。出力部22は、例えば、パラメータ測定装置10で測定された鋼材101の表面上の任意の位置おける硬度を出力する。また、位置情報取得し、位置情報と硬度に関する情報とを対応付けて表示しても良い。また、位置情報と硬度に基づいて鋼材101を示す平面上に硬度に関する情報を数値、または、色により視覚的に示すものとしても良い。出力部22は、例えば、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイや液晶ディスプレイ、有機EL(Electro−Luminescence)ディスプレイ等の表示装置を含んで構成される。出力部22は、これらの表示装置を自装置に接続するインタフェースとして構成されてもよい。
記憶部23は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置などの記憶装置を用いて構成される。記憶部23はパラメータ測定装置10に関する各種情報を記憶する。記憶部23は、例えば、パラメータ測定装置10で測定される複数種類の電磁気特性値のそれぞれと、硬度及び応力との相関関係が記憶されている。電磁気特性値と硬度及び応力との相関関係の詳細について以下に示す。
図4は、電磁気特性値と、応力及び硬度との相関関係のパターンの一例を示したグラフである。図4のグラフは、横軸を測定した部分の鋼材の表層の応力、縦軸を対象となる電磁気特性値の大きさとし、また、応力と電磁気特性値との関係を硬度ごとにまとめたグラフである。応力は引張応力を正の値とし、圧縮応力を負の値として示している。各グラフで示している硬度の種類は、硬度が高い実線で示す硬度と、硬度が低い点線で示す硬度と2種類示しているが、これに限るものではなく、3種類以上で示すものとしても良い。
図4(a)〜(d)に示すパターンでは、単純増加または単純減少の傾向を示す。すなわち、図4(a)に示すパターンは、圧縮応力が小さくなるにつれて、また、引張応力が大きくなるにつれて電磁気特性値も大きくなり、また、硬度が高くなるにつれて電磁気特性値は小さくなる相関関係を有している。図4(b)に示すパターンは、圧縮応力が小さくなるにつれて、また、引張応力が大きくなるにつれて電磁気特性値も大きくなり、また、硬度が高くなるにつれて電磁気特性値も大きくなる相関関係を有している。図4(c)に示すパターンは、圧縮応力が小さくなるにつれて、また、引張応力が大きくなるにつれて電磁気特性値は小さくなり、また、硬度が高くなるにつれて電磁気特性値は小さくなる相関関係を有している。図4(d)に示すパターンは、圧縮応力が小さくにつれて、また、引張応力が大きくなるにつれて電磁気特性値は小さくなり、また、硬度が高くなるにつれて電磁気特性値も大きくなる相関関係を有している。
一方、図4(e)〜(h)に示すパターンでは、一部の応力範囲Mで、応力の変化に対する電磁気特性値の変化が飽和し、応力に対して電磁気特性値が略一定となるパターンを示す。すなわち、図4(e)に示すパターンは、圧縮応力となる一部の応力範囲Mでは、応力が変化しても電磁気特性値は略一定である。さらに、当該範囲Mよりも圧縮応力が小さい、または、引張応力の場合には、圧縮応力が小さくなるにつれて、また、引張応力が大きくなるにつれて電磁気特性値も大きくなり、また、硬度が高くなるにつれて電磁気特性値も大きくなる相関関係を有している。図4(f)に示すパターンは、圧縮応力となる一部の応力範囲Mでは、応力が変化しても電磁気特性値は略一定である。さらに、当該範囲Mよりも圧縮応力が小さい、または、引張応力の場合には、圧縮応力が小さくなるにつれて、また、引張応力が大きくなるにつれて電磁気特性値は小さくなり、また、硬度が高くなるにつれて電磁気特性値は小さくなる相関関係を有している。図4(g)に示すパターンは、圧縮応力となる一部の応力範囲Mでは、応力が変化しても電磁気特性値は略一定である。さらに、当該範囲Mよりも圧縮応力が小さい、または、引張応力の場合には、圧縮応力が小さくなるにつれて、また、引張応力が大きくなるにつれて電磁気特性値は小さくなり、また、硬度が高くなるにつれて電磁気特性値も大きくなる相関関係を有している。図4(h)に示すパターンは、圧縮応力となる応力範囲では、応力が小さくなるにつれて電磁気特性値が大きくなるとともに、引張応力となる応力範囲Mでは、応力が変化しても電磁気特性値は略一定である。さらに、硬度が高くなるにつれて電磁気特性値は小さくなる相関関係を有している。なお、このような相関関係については、横軸を測定した部分の鋼材の表層の硬度、縦軸を対象となる電磁気特性値の大きさとし、また、硬度と電磁気特性値との関係を応力ごとにまとめたグラフとしても良い。
図4に示されるように、電磁気特性値と、応力及び硬度との相関関係のパターンは電磁気特性ごとに異なる関係となる場合がある。そのため、電磁気特性ごとに、電磁気特性値と、応力及び硬度との相関関係のパターンを確認する必要がある。なお、相関関係のパターンについては図4に示すパターンに限られず、電磁気特性値が略一定となる応力の範囲の存在や、傾きの程度などにより様々なパターンが存在している。また、図4に示すような直線状の相関関係の組み合わせではなく、2次曲線や反比例曲線等で示される相関関係を有していても良い。そして、本実施形態では、少なくとも応力に対して電磁気特性値の変化が略一定となる応力範囲Mを有する電磁気特性値であって、当該応力範囲Mに測定対象となる鋼材の表層の応力状態が含まれていれば、様々な種類の電磁気特性値を用いることができる。ここで、電磁気特性値が略一定となる応力範囲Mとは、応力の変化に対して電磁気特性値の変化がゼロとなる応力範囲に限るものではなく、硬度の測定に対して影響のない範囲で応力の変化に対して電磁気特性値が変化するパターンも含まれる。以下に、電磁気特性値が略一定となる応力範囲Mに関する考え方の一例を示す。
図4(e)〜(h)に示すように、所定の応力のときに、電磁気特性値と、硬度との相関関係は、式(3)で以下のように示される。
=f(Hv) ・・・・・(3)
ただし、
i :電磁気特性(パラメータの種類)を示す符号
:相関関係を示す関数
:電磁気特性値(パラメータの値)
Hv:電磁気特性値(パラメータ)を測定した各位置における硬度
そして、電磁気特性値として上記例示した残留磁束密度、保磁力、透磁率などでは、硬度と電磁気特性値とが直線状の相関関係を示すことを見出した。すなわち、図5に示すような直線状の相関関係を示す場合、電磁気特性値と、硬度との相関関係を示す関数は以下の式(4)で示される。
=a・Hv+b ・・・・・(4)
ただし、
i :電磁気特性(パラメータの種類)を示す符号
:電磁気特性値(パラメータの値)
、b:電磁気特性値(パラメータ)ごとに求められる定数
Hv:電磁気特性値(パラメータ)を測定した各位置における硬度
ここで、本実施形態の硬度測定装置1において要求される硬度分解能をΔHv(±ΔHv/2)とすると、硬度分解能と対応して電磁気特性値として許容される測定誤差ΔPは、式(4)を用いて以下の式(5)のように示される。
ΔP=a・ΔHv/2 ・・・・・(5)
また、所定の応力範囲における応力に対する電磁気測定値Pの変化率をαとすると、硬度分解能ΔHvを満たす、当該応力範囲において許容される応力の変動範囲Δσは、以下の式(6)で示される。
Δσ≦ΔP/α ・・・・・(6)
以上から、硬度分解能ΔHvが要求される場合において、所定の応力範囲が応力に対して電磁気特性値が略一定の範囲であることは、式(5)及び式(6)によりΔσを求め、応力範囲を示す下限σと上限σとの差(σ−σ)が式(6)から求められるΔσ以下であることにより判断することができる。
このような電磁気特性値の種類ごとに示される相関関係は、予め同一の鋼種の標準片について、応力状態及び硬度を異なるものを準備し、それぞれについて電磁気特性値を測定することによって得ることができる。ここで、同一の鋼種の標準片とは、対象となる鋼材と成分が同一であって、同一の製造条件で製造された同一形状の鋼材を言う。詳細については後述する準備工程で詳細に説明する。そして、硬度と電磁気特性値の相関関係を示す相関データは、例えば式(4)の形式により記憶部23に記憶されている。なお、式(4)に限られず、一次式以外となる関係式も含めて式(3)の形式により記憶されても良く、あるいは、図4に示されるようなグラフをテーブル形式で示された数値の集合により構成し記憶していても良い。また、記憶部23に記憶された相関データが適用可能な応力範囲Mが、鋼材101の表層の応力状態を含んでいるか否かを判定するために、応力範囲M(σ≦σ≦σ)を示す情報と対応付けて記憶されていても良い。
次に、制御部21の機能構成の一例について説明する。
図6に示すように、制御部21は、電磁気特性値取得部(パラメータ取得部)211と、相関関係取得部212と、硬度演算部213とを有する。電磁気特性値取得部211は、パラメータ測定装置10による測定単位ごと(同一の測定位置での測定ごと)に、電磁気特性値検出部18から出力された電磁気特性値を取得する。例えば、本実施形態では、電磁気特性値取得部211は、保磁力Hcを取得する。相関関係取得部212は、電磁気特性値取得部211で取得された電磁気特性値の種類と対応した相関データを取得する。硬度演算部213は、電磁気特性値取得部211で取得された電磁気特性値と、当該電磁気特性値の種類と対応して相関関係取得部212で取得された相関データとに基づいて硬度を演算する。応力範囲Mでは、上記のとおり応力に対して電磁気特性値が略一定であるため、上記式(3)、または、式(4)で示される相関関係に基づいて電磁気特性値から硬度Hvを求めることができる。硬度演算部213は、求めた硬度Hvを出力部22に出力する。なお、制御部21では、パラメータ測定装置10から電磁気特性値を取得して硬度を演算するものとしたが、電磁気特性値を取得する前処理、すなわち例えば電磁気特性値検出部18で実行する処理や、さらにはBHループ演算部で実行する処理についても実行するものとしても良い。
(硬度測定方法)
次に、硬度測定装置1によって実施される本実施形態の硬度測定方法について説明する。図7及び図8は、本実施形態の硬度測定方法のフローを示している。なお、準備工程については予め実施して複数種類の電磁気測定値と応力及び硬度との相関関係を取得していれば省略することができる。
図7に示すように、本実施形態の硬度測定方法は、準備工程S1と、測定工程S3と、硬度取得工程S4とを備える。準備工程S1は、第一準備工程S11と、第二準備工程S12と、第三準備工程S13とを備える。第一準備工程S11は、測定対象となる鋼材101と同一鋼種であって、予め表層の応力σ及び硬度Hvが既知の標準片を、応力σまたは硬度Hvが異なるようにして複数準備する。各標準片において硬度Hvを異ならせるためには、例えば、当該標準片を切り出す材料について、加熱及び冷却を実施し、微細な組織の状態を異ならせることで実現できる。このようにして微細な組織の状態を異ならせた複数の標準片について、ビッカース硬さ試験により硬度Hvを測定することで、異なる値で硬度Hvが既知である標準片を得ることができる。これら硬度Hvの異なる標準片それぞれについて、さらに応力状態を異ならせる。応力状態を異ならせる方法としては、例えば外力を加えることが可能な試験機に標準片を設置して、所定の圧縮応力または引張応力を生じさせることで実現できる。
第二準備工程S12では、第一準備工程S11で準備した各標準片の表層について電磁気特性値を測定する。電磁気測定値の測定方法については後述する測定工程S3と同じであるので説明を省略する。第三準備工程では、各標準片で第二準備工程S12を実施して得られた電磁気特性値と、第一準備工程S11で得られている各標準片の応力及び硬度に基づいて、図4(a)〜(h)のような電磁気特性値と応力及び硬度との相関関係を取得する。そして、取得された相関関係の中から、応力に対して電磁気特性値が略一定となる応力範囲Mおよび、応力範囲Mを有する相関関係(電磁気特性)を特定する。特定される相関関係(電磁気特性)は、図4(e)〜(h)に示されるように電磁気特性値として、測定範囲の鋼材の表層の応力状態が少なくとも含まれる応力範囲で、応力に対して電磁気特性値が略一定となる関係である。
測定工程S3では、パラメータ測定装置10により鋼材101の表面上の各測定位置において表層の電磁気特性値を測定する。この際、測定対象となる電磁気特性値には、少なくとも第二準備工程S12で特定された応力範囲Mを有する。具体的には、励磁電源13から交流電流を供給して磁界を発生させつつ磁化器11の磁極面の位置が異なるように鋼材101の表面上で走査し、検出コイル15で磁束Φを検出する。これにより上記のとおりBHループを各測定位置で取得し、当該取得したBHループから電磁気特性値を求める。測定された結果は、パラメータ測定装置10から硬度演算装置20に出力される。
図8は、硬度演算装置20において実行される処理手順を示している。図8に示すように、硬度取得工程S4では、電磁気測定値取得工程S41と、相関関係取得工程S42と、硬度演算工程S43とを実施する。電磁気測定値取得工程S41では、電磁気特性値取得部211がパラメータ測定装置10から各測定位置における電磁気特性値を取得する。本実施形態では、例えば電磁気特性値として保磁力Hcを取得する。相関関係取得工程S42では、電磁気測定値取得工程S41で取得された電磁気特性値の種類と対応した相関データを記憶部23から取得する。
硬度演算工程S43では、電磁気測定値取得工程S41で取得された電磁気特性値と、相関関係取得工程S42で取得された対応する相関データとに基づいて硬度Hvを演算する。
以上のように、本実施形態の硬度測定装置1、硬度測定方法及びプログラムによれば、硬度と相関があるとともに、所定の応力範囲Mで応力に対して略一定である電磁気特性値を測定し、鋼材101の表層の応力状態が応力範囲Mに含まれていることを条件として上記相関関係から硬度を求めることで、応力による影響を控除して硬度を精度高く求めることができる。
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。図9及び図10は、本発明の第2の実施形態を示したものである。この実施形態において、前述した実施形態で用いた部材と共通の部材には同一の符号を付して、その説明を省略する。
図9に示すように、本実施形態の硬度測定装置50は、パラメータ測定装置60と、硬度演算装置20とを備える。パラメータ測定装置60は、第1の実施形態のようなBHループを測定し、当該BHループから得られる電磁気特性値を得る装置ではなく、渦流探傷試験装置である。すなわち、パラメータ測定装置60は、検査プローブ61と、発振器62と、ブリッジ63と、移送器64と、増幅器65と、同期検波器66と、波形生成部67と、電磁気特性値検出部68とを有する。検査プローブ61は、測定コイル611を有する。発振器62は、所定の周波数を有する基準信号を生成し、ブリッジ63及び移送器64に出力する。ブリッジ63は、測定コイル611の微小なインピーダンス変化を電圧に変換し増幅器65に出力する。増幅器65は、ブリッジ63から出力された信号を増幅して、同期検波器66に出力する。移送器64は、基準信号の周波数を保ったまま位相をシフトした信号を生成し、同期検波器66に出力する。同期検波器66は、増幅器65から出力された信号を、移送器64から出力される信号によって同期検波し、直流成分を抽出して波形生成部67に出力する。波形史枝政部波形生成部67では、同期検波器66から出力された信号に基づいて図10に示すような波形を生成する。電磁気特性値検出部68では、電磁気特性値として、同期検出器66で生成された波形から、例えば渦流位相δを検出する。そして、電磁気特性値検出部68は、電磁気特性値である渦流位相δを硬度演算装置20に出力する。硬度演算装置20では、電磁気特性値である渦流位相δに基づいて、鋼材101の表層の応力状態が、応力に対して渦流位相δが略一定である応力範囲Mに含まれることを条件として第1の実施形態同様に硬度を求める。
以上のように、電磁気特性値を測定する測定部としては、BHループを検出する装置に限られず、本実施形態のような渦流探傷試験装置とし、これによって得られる電磁気特性値としても良い。また、BHループを検出する装置と渦流探傷試験装置とを組み合わせても良いし、BHループを検出する装置及び渦流探傷試験装置以外でも良い。少なくとも鋼材101の表層に磁界を発生させ、硬度の違いによって異なる応答が得られるとともに、少なくとも一部の応力範囲で応力に対して略一定となる電磁気特性値を測定可能な装置であれば適用可能である。
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。図11は、本発明の第3の実施形態を示したものである。この実施形態において、前述した実施形態で用いた部材と共通の部材には同一の符号を付して、その説明を省略する。
図11に示すように、本実施形態の硬度測定方法は、応力調整工程S5を備える点が第1の実施形態と異なる。応力調整工程S5は、測定工程S3の前に実施される。応力調整工程S5は、測定対象となる鋼材101の表層に応力を与えて、応力状態を変化させる。応力調整工程S5において、鋼材101の表層に応力を与える方法としては、例えば、鋼材101の表層の表面にショットブラスト処理を行うことが挙げられる。これにより、鋼材101の表層には、応力調整工程S5を実施する前の鋼材101と比較して大きな残留圧縮応力を与えることができる。あるいは、応力調整工程S5を実施する前の鋼材101が残留応力として引張応力が生じている部分と圧縮応力が生じている部分とがある場合に、全体を圧縮応力が生じた状態とすることができる。したがって、例えば測定工程S3で測定する電磁気特性値において、応力に対して電磁気特性値が略一定となる応力範囲Mと比較して、元の鋼材101の表層の応力状態が小さい圧縮応力または引張応力である場合に、上記のようにブラスト処理を実施して残留圧縮応力を与えることで、鋼材101の表層の応力状態を応力範囲Mに含まれるようにすることができる。なお、鋼材101の表層に応力を与える方法としてはこれに限られず、例えば両端部が固定された鋼材101を加熱または冷却して熱変形させることで熱応力を与えたり、外力を加えることで引張応力または圧縮応力を与えたりするものとしても良い。例えば、応力範囲Mに対して元の鋼材101の表層の応力状態が小さい引張応力または大きい圧縮応力であった場合には、鋼材101に引張応力を生じさせることで鋼材101の表層の応力状態を応力範囲Mに含ませることができる。
このように応力調整工程S5を実施することで、測定工程S3で測定する電磁気特性値において、応力に対して電磁気特性値が略一定となる応力範囲Mに、鋼材101の表層の応力状態を調整することができ、これにより応力の影響を控除して精度高く硬度を測定することができる。なお、応力調整工程S5において、鋼材101の表層の応力状態が応力範囲Mに含まれたか否かは、例えば応力を付与しながら電磁気特性値を測定し、応力の変化に対して電磁気特性値の変化が所定範囲以内か否かを確認することで判断できる。
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。例えば、鋼材101の表層の性状によって変化するパラメータが、鋼材101の表層の電磁気特性である場合について説明したが、これに限られない。また、本実施形態では、鋼材101の表層の電磁気特性として、磁界をかけることによって当該表層の性状に応じた値が測定されるパラメータを例としたが、これに限られない。たとえば、第1の実施形態に示されるように測定部が電磁気特性を測定する装置である場合、鋼材101の表層にかける磁界を生成するために、当該電磁気測定装置に印加(入力)される励磁電流や励磁電圧であってもよく、これらの信号に関する情報(例えば、振幅や高調波成分、半値幅(振幅の50%における信号の幅)等)であってもよい。また、第2の実施形態に示されるように測定部が渦電流探傷試験装置である場合、測定された信号に関する情報(波形の幅や位相など)であっても良い。
1 硬度測定装置
10 パラメータ測定装置(測定部)
20 硬度演算装置(硬度取得部)
101 鋼材
A 渦流振幅
Br 残留磁束密度
Hc 保磁力
Hv 硬度
μ 透磁率
δ 渦流位相
S11 第一準備工程
S12 第二準備工程
S13 第三準備工程
S3 測定工程
S4 硬度取得工程
S5 応力調整工程

Claims (6)

  1. 測定対象となる鋼材の表層に対して、鋼材の表層の性状によって変化するパラメータを測定する測定部と、
    前記鋼材の鋼種に応じて予め求められた前記パラメータと前記鋼材の表層の硬度との相関関係、及び、前記測定部で測定された前記パラメータの測定結果に基づいて、前記測定部によって測定した位置における前記鋼材の表層の硬度を求める硬度取得部とを備え、
    前記相関関係は、前記パラメータとして、測定範囲の前記鋼材の表層の応力状態が少なくとも含まれる応力範囲で、応力に対してパラメータが略一定となる関係であって、
    前記硬度取得部は、前記応力範囲で前記相関関係から硬度を求める硬度測定装置。
  2. 前記応力範囲は以下の式(1)及び式(2)に基づいて定められる請求項1に記載の硬度測定装置。
    Δσ≦ΔP/α ・・・・・(1)
    ΔP≦a・ΔHv/2 ・・・・・(2)
    ただし、
    Δσ:前記応力範囲の最小応力σ1と最大応力σ2との差(=σ2−σ1)
    ΔHv:前記硬度取得部で求める硬度として要求される硬度分解能
    ΔP:前記硬度分解能に基づいて許容される前記パラメータの測定誤差
    a:予め求められた硬度に対する前記パラメータの変化率
    α:予め求められた応力に対する前記パラメータの変化率
  3. 測定対象となる鋼材の表層に対して、パラメータを測定する測定工程と、
    前記鋼材の鋼種に応じて予め求められた前記パラメータと前記鋼材の表層の硬度との相関関係、及び、前記測定工程で測定された複数種類の前記パラメータの測定結果に基づいて、前記測定工程で測定した位置における前記鋼材の表層の硬度を求める硬度取得工程とを備え、
    前記測定工程では、前記パラメータとして、測定範囲の前記鋼材の表層の応力状態が少なくとも含まれる応力範囲で、応力に対してパラメータが略一定となる種類のパラメータを測定し、
    前記硬度取得工程では、前記応力範囲で前記相関関係から硬度を求める硬度測定方法。
  4. 前記鋼材の表層の応力状態を変化させる応力調整工程を備え、
    前記測定工程では、前記応力調整工程で応力状態が調整された前記鋼材に対して測定を行う請求項3に記載の硬度測定方法。
  5. 測定対象となる前記鋼材と同一の鋼種であって、予め表層の応力及び硬度が既知の標準片を、応力または硬度が異なるようにして複数準備する第一準備工程と、
    前記第一準備工程で準備された複数の前記標準片について、前記パラメータを測定する第二準備工程と、
    前記第二準備工程で測定された結果に基づいて、前記パラメータに関する前記相関関係を取得する第三準備工程とを備える請求項3または請求項4に記載の硬度測定方法。
  6. コンピュータを、
    測定対象となる鋼材の表層で測定されたパラメータを取得するパラメータ取得手段、
    前記鋼材の鋼種に応じて予め求められた前記パラメータと前記鋼材の表層の硬度との相関関係を取得する相関関係取得手段、
    前記相関関係取得部で取得された前記相関関係及び前記パラメータ取得手段で取得された前記パラメータに基づいて、前記鋼材の表層の硬度を求める硬度演算手段、
    として機能させ、
    前記パラメータ取得手段が、前記パラメータとして、測定範囲の前記鋼材の表層の応力状態が少なくとも含まれる応力範囲で、応力に対してパラメータが略一定となる種類のパラメータを取得し、
    前記硬度取得手段が、前記応力範囲で前記相関関係から硬度を求めるためのプログラム。
JP2019167480A 2019-09-13 2019-09-13 硬度測定装置、硬度測定方法及びプログラム Pending JP2021043161A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2019167480A JP2021043161A (ja) 2019-09-13 2019-09-13 硬度測定装置、硬度測定方法及びプログラム

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2019167480A JP2021043161A (ja) 2019-09-13 2019-09-13 硬度測定装置、硬度測定方法及びプログラム

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2021043161A true JP2021043161A (ja) 2021-03-18

Family

ID=74862232

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2019167480A Pending JP2021043161A (ja) 2019-09-13 2019-09-13 硬度測定装置、硬度測定方法及びプログラム

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2021043161A (ja)

Citations (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS63279185A (ja) * 1987-04-16 1988-11-16 シーメンス、アクチエンゲゼルシヤフト 部品の固有応力検出方法
JPH02262958A (ja) * 1989-03-31 1990-10-25 Toyoda Mach Works Ltd 研削焼け検出装置
JPH0466863A (ja) * 1990-07-09 1992-03-03 Toyota Motor Corp 鋼材の加工による残留応力の測定方法
JPH07128294A (ja) * 1993-09-09 1995-05-19 Japan Atom Energy Res Inst 原子炉圧力容器劣化検定方法及び装置
JP2000221167A (ja) * 1999-01-29 2000-08-11 Nippon Steel Corp バルクハウゼンノイズを用いた応力診断方法
JP2000241391A (ja) * 1999-02-19 2000-09-08 Nippon Steel Corp 鋼管の応力診断方法
JP2003215104A (ja) * 1993-09-09 2003-07-30 Japan Atom Energy Res Inst 原子炉圧力容器劣化検定方法及び装置

Patent Citations (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS63279185A (ja) * 1987-04-16 1988-11-16 シーメンス、アクチエンゲゼルシヤフト 部品の固有応力検出方法
JPH02262958A (ja) * 1989-03-31 1990-10-25 Toyoda Mach Works Ltd 研削焼け検出装置
JPH0466863A (ja) * 1990-07-09 1992-03-03 Toyota Motor Corp 鋼材の加工による残留応力の測定方法
JPH07128294A (ja) * 1993-09-09 1995-05-19 Japan Atom Energy Res Inst 原子炉圧力容器劣化検定方法及び装置
JP2003215104A (ja) * 1993-09-09 2003-07-30 Japan Atom Energy Res Inst 原子炉圧力容器劣化検定方法及び装置
JP2000221167A (ja) * 1999-01-29 2000-08-11 Nippon Steel Corp バルクハウゼンノイズを用いた応力診断方法
JP2000241391A (ja) * 1999-02-19 2000-09-08 Nippon Steel Corp 鋼管の応力診断方法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
EP2707705B1 (en) Surface property inspection device and surface property inspection method
Stupakov Controllable magnetic hysteresis measurement of electrical steels in a single-yoke open configuration
JP2010048723A (ja) 鉄筋腐食検査方法,鉄筋腐食検査装置
JP4736811B2 (ja) 磁性体の複素透磁率測定装置の脚部間隔決定方法
JP5293755B2 (ja) 磁性体の複素透磁率測定装置およびこれを用いた磁性体の結晶粒径測定方法
JPH02262026A (ja) 非破壊検査装置
JP2011185623A (ja) 表面処理評価装置
CN109521082A (zh) 一种磁声复合无损检测装置、系统及方法
GB2495292A (en) Calibrating barkhausen noise signals for evaluation of thickness of surface hardened layers of steels
JP3910222B2 (ja) 疲労度測定装置
JP2021043160A (ja) 硬度変化部検出装置、硬度変化部検出方法及びプログラム
JP2021043161A (ja) 硬度測定装置、硬度測定方法及びプログラム
JP2021043163A (ja) 硬度測定装置、硬度測定方法及びプログラム
Perevertov Increase of precision of surface magnetic field measurements by magnetic shielding
Andrei et al. An efficient procedure to assess the static magnetization relationship
EP4080204A1 (en) Device and method for testing surface material of steel plate
EP4310490A1 (en) Hardness computing device, hardness measuring system, hardness computing method, and hardness computing program
US11519796B2 (en) Stress-induced magnetic field signal acquisition method and stress measurement method based thereon
JPS62853A (ja) 硬度測定方法
JP2012184931A (ja) 鋼板における組織分率の測定方法
Li et al. Topological sensitivity analysis for steady state eddy current problems with an application to nondestructive testing
JP4029400B2 (ja) 鋼管内面の浸炭深さ測定方法
Yue et al. Measurement and analysis of the non-symmetry of transverse magnetisation and resulting loss in grain-oriented steel using a modified RSST
Wang et al. Quantitative characterization of tensile stress in electroplated nickel coatings with a magnetic incremental permeability sensor
JP2005315732A (ja) 強磁性体の変位測定装置

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20220512

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20230228

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20230307

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20230413

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20230606

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20231128