JP2021038711A - エンジンの冷却装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】ウォータージャケット内にウォータージャケットスペーサが配置されたエンジンの冷却装置において、ボア間壁の冷却を良好に行う。【解決手段】エンジンの冷却装置は、ウォータージャケット22の内部に配置され、冷却水の流通経路を、気筒21に近いボア側経路22Aと、気筒21から遠い反ボア側経路22Bとに区分すると共に、反ボア側経路22Bに冷却水の主流が形成させるウォータージャケットスペーサ3を備える。ウォータージャケットスペーサ3は、ボア間壁25に対向するボア間スペーサ部32を含む。ボア間スペーサ部32は、ボア側経路22Aと反ボア側経路22Bとを連通させる連通孔33と、連通孔33からウォータージャケットスペーサ3の上端32Tに向けて延びる凹部34とを含む。凹部34は、ボア間スペーサ部32の位置において、ボア側経路22AのY方向の横幅を、連通孔33の下方側より上方側を広くしている。【選択図】図6

Description

本発明は、ウォータージャケット内に、冷却水を分流させるウォータージャケットスペーサが配置された冷却構造を有するエンジンの冷却装置に関する。
多気筒型の内燃機関のエンジンブロックには、各気筒の周囲及び隣り合う気筒間の壁であるボア間壁を通過するように、冷却水の流通経路となるウォータージャケットが設けられる。ウォータージャケットの内部には、冷却水の水流をコントロールするウォータージャケットスペーサが配置されることがある。前記水流のコントロールによって、気筒及びボア間壁を狙いの温度に設定することが可能となる。
一般に、ウォータージャケットスペーサは、冷却水の流通経路を、気筒に近いボア側経路(内側経路)と、気筒から遠い反ボア側経路(外側経路)とに区分する。ここで、気筒の周囲については冷却を抑制する一方で、ボア間壁については積極的な冷却が求められる場合がある。特許文献1には、ウォータージャケットスペーサにおける前記ボア間壁と対向するボア間スペーサ部の上端付近に、反ボア側経路とボア側経路とを連通させる連通孔を設ける冷却装置が開示されている。当該冷却装置では、前記連通孔を通して、反ボア側経路からボア側経路へ冷却水を導くことで、よりボア間壁を冷却させることを企図している。
特開2018−62923号公報
しかし、特許文献1の冷却装置では、連通孔から冷却水がボア間壁へ向けて導入されるものの、ボア間壁を十分に冷却させることができなかった。本発明者らの検討によれば、前記連通孔が、ボア間スペーサ部の上端付近に配置されていることから、ボア間壁の上端を除く下方領域において冷却水の流動が少なく、当該下方領域での熱交換が不十分となることが要因と判明した。
本発明の目的は、ウォータージャケット内にウォータージャケットスペーサが配置されたエンジンの冷却装置において、ボア間壁の冷却を良好に行えるようにすることにある。
本発明の一局面に係るエンジンの冷却装置は、複数の気筒が所定方向に一列に並んだ気筒列と、冷却水を前記気筒列の一端側から他端側へ向かうように流通させる流通経路となるウォータージャケットと、を各々区画する壁面を有するエンジンブロックと、前記ウォータージャケットの内部に配置され、前記流通経路を、前記気筒に近いボア側経路と、前記気筒から遠い反ボア側経路とに区分すると共に、前記反ボア側経路に前記冷却水の主流が形成されるように前記冷却水を分流させるウォータージャケットスペーサと、を備え、前記ウォータージャケットスペーサは、前記エンジンブロックにおける隣り合う気筒間の壁であるボア間壁に対向するボア間スペーサ部を含み、前記ボア間スペーサ部は、前記ウォータージャケットスペーサの上端よりも下方に位置し、前記ボア側経路と前記反ボア側経路とを連通させる連通孔を備えた中間部と、前記連通孔から当該ウォータージャケットスペーサの上端に向けて延びる幅広部と、を含み、前記幅広部は、前記ボア間スペーサ部の位置において、前記ボア側経路の横幅を、前記連通孔の下方側より上方側を広くする形状を有する。
この冷却装置によれば、ウォータージャケットスペーサによって、気筒から遠い反ボア側経路に冷却水の主流が形成されるので、気筒が過度に冷却されないようにすることができる。一方、ボア間壁については、ボア間スペーサ部の中間部に設けられた連通孔を通して、反ボア側経路からボア側経路へ導入される冷却水で積極的に冷却される。しかも、前記連通孔から当該ウォータージャケットスペーサの上端に向けて延びる幅広部によって、ボア側経路の横幅が拡張されている。従って、幅広部において冷却水の流路抵抗が他の領域に比べて小さくなることから、ボア間壁の気筒軸方向の中間から上端に沿った冷却水の流通を促進でき、結果としてボア間壁の冷却効率を高めることができる。
上記のエンジンの冷却装置において、前記エンジンブロックは、前記ボア間壁を気筒列方向と直交する方向に延び、前記冷却水を流通させるボア間経路と、前記ウォータージャケットを区画する壁面であって前記ボア間経路の入口孔を有する壁面と、を備え、前記幅広部は、前記入口孔と対向する上端部と、前記連通孔に連なる下端部とを備えていることが望ましい。
この冷却装置によれば、連通孔からボア間経路の入口孔にかけて、幅広部によって冷却水の流路抵抗が小さい領域が形成される。さらに、前記ボア間経路に生じる冷却水の流動に伴って前記入口孔から冷却水が引き込まれるので、前記幅広部の領域に一層積極的な冷却水の流動を生じさせることができる。従って、ボア間壁の冷却効率をより高めることができる。
上記のエンジンの冷却装置において、前記一列に並ぶ気筒列の配列ラインに対して、各気筒の吸気弁が配置される側を吸気側、及び、排気弁が配置される側を排気側とするとき、前記ウォータージャケットは、前記気筒列の前記吸気側に配置された吸気側ジャケット部と、前記排気側に配置された排気側ジャケット部と、を含み、前記入口孔を有する壁面は、前記排気側ジャケット部を区画する壁面であり、前記排気側ジャケット部の内部に配置される排気側ウォータージャケットスペーサが備える前記幅広部が、前記上端部と前記下端部とを備えていることが望ましい。
ボア間壁は、吸気側に比べて、排気ガスが流れる排気側の方が高温となる。上記の冷却装置によれば、排気側ウォータージャケットスペーサが備える前記幅広部が、連通孔からボア間経路の入口孔にかけて、冷却水の流路抵抗が小さい領域を形成する。従って、高温化する排気側ボア間壁を良好に冷却させることができる。
上記のエンジンの冷却装置において、前記連通孔は、気筒軸方向において前記ボア間経路の最も低い位置よりも下方に位置していることが望ましい。
この冷却装置によれば、ボア間経路を流通する冷却水では十分に冷却できないボア間壁の下方領域を、連通孔から流入する冷却水にて冷却させることができる。
上記のエンジンの冷却装置において、前記気筒には、スカート部を備えたピストンが収容され、前記連通孔は、前記ピストンが上死点に存在しているとき、気筒軸方向において前記スカート部の下端よりも上方に位置していることが望ましい。
この冷却装置によれば、連通孔は、上死点におけるスカート部の下端よりも上方であって、前記ボア間経路の最も低い位置よりも下方に配置される。このため、エンジンブロックにおいて熱源となる気筒の上方領域に対応する、ボア間壁の前記中央部から上方の部分に沿って冷却水を効率的に流通させ、当該部分を良好に冷却させることができる。
上記のエンジンの冷却装置において、前記幅広部は、前記ボア間スペーサ部において前記ボア側経路から前記反ボア側経路へ向けて凹設され、上下方向へ直線状に延びる凹部であることが望ましい。
この冷却装置によれば、凹部によって、安定した水流が形成され易い包囲性の高い領域が形成される。しかも、前記凹部は上下方向へ直線状に延びる。従って、ボア間壁に沿って、冷却効果の高い冷却水のスムースな流動を形成させることができる。
この場合、前記凹部で区画される領域の断面積は、上下方向において略一定とすることがより望ましい。
この冷却装置によれば、上下方向へ直線状に延びる凹部において、冷却水の水流を拡散させたり、逆に水流を滞わせたりすることなく、ボア間壁に沿って下から上で冷却水を流動させることができる。つまり、ボア間壁を集中的に効率よく冷却させることができる。
上記のエンジンの冷却装置において、前記ウォータージャケットスペーサは、前記反ボア側経路から冷却水を前記連通孔に導くガイド部を備えることが望ましい。
この冷却装置によれば、冷却水の主流が形成されている反ボア側経路から、冷却水を連通孔内へ導入させ易くすることができる。従って、幅広部に冷却水の流動を形成させ易くすることができる。
上記のエンジンの冷却装置において、前記吸気側ジャケット部の内部に配置される吸気側ウォータージャケットスペーサ及び前記排気側ウォータージャケットスペーサは、前記一端側から前記他端側に向かう冷却水の流通方向に並ぶ複数の前記連通孔を各々備え、前記吸気側ウォータージャケットスペーサは、前記反ボア側経路から冷却水を前記連通孔に導くガイド部を全ての前記連通孔について備え、前記排気側ウォータージャケットスペーサは、前記冷却水の流通方向の下流側に位置する前記連通孔については前記ガイド部を備える一方、上流側に位置する前記連通孔については具備しない構成とすることができる。
ボア間壁にボア間経路が形成される場合、冷却水の流通方向上流側に位置する気筒間では、下流側の気筒間に比べてボア間経路における冷却水の流動が比較的大きい傾向が出る。このため、上流側のボア間経路の入口孔では、比較的大きな冷却水の吸引力が発生する。従って、排気側ウォータージャケットスペーサについて、上流側に位置する前記連通孔には、ガイド部を設けずとも前記吸引力にて冷却水を連通孔内へ導入させることができる。換言すると、ガイド部を設けることによる水流促進で、上流側のボア間壁が過冷却されることを防止できる。
上記のエンジンの冷却装置において、前記ガイド部は、前記連通孔における前記冷却水の流通方向の下流側の側部周縁及びその下方から前記反ボア側経路に向けて延び出す側壁と、前記連通孔の上部周縁から前記反ボア側経路に向けて延び出す天壁と、を備えることが望ましい。
この冷却装置によれば、ガイド部の側壁によって連通孔の側部周縁及びその下方を流れる冷却水を受け止めることができる。さらに、前記側壁で受け止められた冷却水を、天壁で受け止め、前記連通孔へ向かわせることができる。
本発明によれば、ウォータージャケット内にウォータージャケットスペーサが配置されたエンジンの冷却装置において、ボア間壁の冷却を良好に行わせることができる。
図1は、本発明に係るエンジンの冷却装置が適用されるエンジンの正面図である。 図2は、シリンダブロックとウォータージャケットスペーサとを併せて示す分解斜視図である。 図3は、シリンダブロックのXY平面の断面図である。 図4は、ウォータージャケットスペーサの斜視図である。 図5は、図3のX−X線断面図である。 図6は、図3のXI−XI線断面図である。 図7は、図4の要部拡大斜視図である。 図8は、ボア間スペーサ部における冷却水の流通状態を示す断面図である。 図9は、連通孔のガイド部を示す斜視図である。 図10(A)は、吸気側ウォータージャケットスペーサの側面図、図10(B)は、排気側ウォータージャケットスペーサの側面図である。
[エンジンの全体構成]
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態について詳細に説明する。図1は、本発明に係るエンジンの冷却装置が適用されるエンジン1の正面図である。エンジン1は、走行用の動力源として車両に搭載されるエンジンであって、例えば4サイクルの多気筒型ディーゼルエンジンである。
エンジン1は、複数の気筒を内部にシリンダブロック2(図2)と、シリンダブロック2の上面に取り付けられたシリンダヘッドと、前記気筒内に収容されたピストンと、を含むエンジン本体10を備えている。エンジン1は、縦置き又は横置きで車両に搭載される。縦置きの場合、図1に付記する方向表示において、Y方向は車幅方向に相当する左右方向、Z方向は上下方向(+Z=上、−Z=下)となる。
エンジン1は、エンジン本体10内に冷却水を強制循環させるためのウォーターポンプ11を備える。ウォーターポンプ11は、冷却水を圧送するインペラを備えたインペラ式ポンプである。ウォーターポンプ11は、エンジン本体10が発生する駆動力で駆動される。すなわち、エンジン本体10のクランクシャフトに取り付けられたクランクプーリー12、及び、このクランクプーリー12に架け渡されたストレッチベルト13を介して、前記クランクシャフトの駆動力がウォーターポンプ11に伝達される。
図1には、エンジン本体10内へ冷却水を導入する冷却水入口14と、エンジン本体10内の冷却水の流通経路を通過した後の冷却水の出口となる冷却水出口15とが示されている。ウォーターポンプ11は、前記流通経路の途中に組み入れられている。なお、冷却水は、エンジン本体10内の前記流通経路の他、図略の暖房用ヒータユニットや、放熱用のラジエータ等を経由する循環経路を循環する。
[シリンダブロックの冷却装置]
図2は、エンジン本体10における冷却水の流通経路のうち、シリンダブロック2の部分に流通経路を示す分解斜視図である。図2には、シリンダブロック2と、このシリンダブロック2に組み付けられるウォータージャケットスペーサ3とが示されている。シリンダブロック2は、6個の気筒21がX方向(所定方向)に一列に並んだ気筒列21Lと、この気筒列21Lの周囲を取り囲むように配置された溝からなるウォータージャケット22とを備えている。なお、X方向は、エンジン1が縦置きされる場合は車両の前後方向となる。ウォータージャケットスペーサ3は、ウォータージャケット22の内部に配置される。
シリンダブロック2は、X方向に長い略直方体のブロックである。シリンダブロック2の−X側の側面には、当該シリンダブロック2への冷却水の入口となるブロック側入口14Hが設けられている。ブロック側入口14Hは、図1に示した冷却水入口14に連通している。冷却水は、ウォーターポンプ11の圧送力により、ブロック側入口14Hからウォータージャケット22内に入る。そして、矢印FLで示すように、冷却水は、シリンダブロック2の−X側側面から+X側側面に向けてウォータージャケット22内を流通する。すなわち、ウォータージャケット22は、冷却水を気筒列21Lの一端側(−X側)から他端側(+X側)へ向かうように流通させる流通経路である。
シリンダブロック2の上面(+Z面)には、気筒列21Lの各気筒21の上面開口を塞ぐように、図略のシリンダヘッドが取り付けられる。当該シリンダヘッドには、各気筒21へ吸気を供給する吸気ポート及び吸気バルブと、各気筒21から燃焼ガスを排出する排気ポート及び排気バルブとが設けられる。図2には、気筒列21Lの配列ライン(X方向のライン)に対して、前記吸気弁が配置される側として「吸気側」と、前記排気弁が配置される側として「排気側」との表示が記されている。ウォータージャケット22は、気筒列21Lの吸気側に配置された吸気側ジャケット21INと、排気側に配置された排気側ジャケット22EXとを含む。
シリンダブロック2についてさらに詳述する。図3は、シリンダブロック2のXY平面の断面図である。図3には、要部Aの拡大図が付記されている。シリンダブロック2は、内ブロック23と、この内ブロック23の周囲を取り囲むように配置された外ブロック24とを含む。要部Aの拡大図に示すように、内ブロック23は、気筒21を区画する筒状の壁面である内周壁231と、ウォータージャケット22の内側面を区画する壁面となる外壁232とを含む。さらに、内ブロック23は、X方向に隣り合う気筒21間の壁としてボア間壁25を有している。また、内ブロック23の内周壁231側には、ピストンが実際に摺接する内面となるライナー26が配置されている。
外ブロック24は、ウォータージャケット22の内側面を区画する壁面となる内壁241を含む。この内壁241と、内ブロック23の外壁232との間の隙間が、冷却水の流通するウォータージャケット22の空間である。気筒21の径方向において、内ブロック23の肉厚は、ボア間壁25の部分を除いて略一定である。従って、内ブロック23の外壁232は、上面視において、X方向に並ぶ6個の気筒21の輪郭に沿った凹凸曲面形状を有している。すなわち外壁232は、ボア間壁25の領域付近では内側に窪んだ凹曲面を、一対のボア間壁25の間の領域では外側に膨らむ凸曲面の形状を有している。外ブロック24の内壁241も、外壁232の凹凸曲面形状に対応した凹凸曲面形状を有している。従って、ウォータージャケット22の延伸方向(X方向)において、概ね、内壁241と外壁232との隙間は一定である。
ウォータージャケットスペーサ3もまた、内壁241及び外壁232の凹凸曲面形状に対応した凹凸曲面形状を有している。ウォータージャケットスペーサ3は、ウォータージャケット22の空間に挿入され、冷却水の流通経路をボア側経路22Aと反ボア側経路22Bとの2つの領域に区分している。ボア側経路22Aは、気筒21の径方向において、気筒21に近い側の経路である。反ボア側経路22Bは、ボア側経路22Aの外側に位置し、気筒21から遠い側の経路である。
ウォータージャケットスペーサ3は、ウォータージャケット22内における冷却水の水流をコントロールする役目を果たす。本実施形態では、ウォータージャケットスペーサ3は、反ボア側経路22Bに冷却水の主流が形成されるように、ウォータージャケット22内における冷却水の水流を分流する。つまり、反ボア側経路22Bにおいては冷却水の水流を積極的に形成(主流の形成)する一方で、ボア側経路22Aにおいては水流を積極的には形成しないように、ウォータージャケットスペーサ3は水流をコントロールする。
このような水流コントロールを行うのは、気筒21に近い側のボア側経路22Aに積極的に水流を形成すると、気筒21が冷え過ぎて冷損を発生させてしまうからである。他方、気筒21間のボア間壁25は、双方の気筒21から熱を受け、且つ、ウォータージャケット22が入り込めないことから、高温化する傾向がある。従って、ボア間壁25の領域付近だけには、ボア側経路22Aにおいて積極的に冷却水の水流を形成し、冷却効果を高めることが望ましい。本実施形態のウォータージャケットスペーサ3は、これら相反する2つの要請に対応することが可能な構造的特徴を有している。以下、この点について詳述する。
[ウォータージャケットスペーサの詳細]
図4は、ウォータージャケットスペーサ3の斜視図である。ウォータージャケットスペーサ3は、気筒列21Lの周囲を取り囲むことが可能な筒型形状を有し、上端32T(+Z端)に上端フランジ301を、下端32B(−Z端)に下端フランジ304を、各々備えている。これらフランジ301、304は、ウォータージャケット22内でのウォータージャケットスペーサ3の姿勢維持、所望の水流の形成等に寄与する。上端フランジ301において、矢印FLで示す冷却水の流通方向上流端側には入口フランジ302が設けられている。一方、下流端側では、上端フランジ301が切り欠かれた切り欠き部303が設けられている。この切り欠き部303を通して、冷却水が図略のシリンダヘッド内のウォータージャケットへ導かれる。
ウォータージャケットスペーサ3は、+Y側の吸気側スペーサ3IN(吸気側ウォータージャケットスペーサ)と、−Y側の排気側スペーサ3EX(排気側ウォータージャケットスペーサ)とを含む。吸気側スペーサ3INは、ウォータージャケット22の吸気側ジャケット21IN内に配置されるスペーサ部分、排気側スペーサ3EXは排気側ジャケット22EX内に配置されるスペーサ部分である。
吸気側スペーサ3IN及び排気側スペーサ3EXは、各々、気筒スペーサ部31及びボア間スペーサ部32を備えている。気筒スペーサ部31は、気筒21の外形形状に応じて+Y方向又は−Y方向へ凸型に膨出している部分である。ボア間スペーサ部32は、ボア間壁25に対向する部分であって、吸気側スペーサ3INでは−Y方向へ、排気側スペーサ3EXでは+Y方向へ凹型に湾曲する部分である。吸気側スペーサ3INと排気側スペーサ3EXとは、+X側端部及び−X側端部において連結され、一体化されている。
ボア間スペーサ部32は、連通孔33を備えた中間部32Mと、凹部34(幅広部)とを備えている。連通孔33は、ウォータージャケットスペーサ3の上端32Tよりも下方に位置し、ボア間スペーサ部32をY方向に貫通する孔である。本実施形態では、ボア間スペーサ部32のZ方向の略中間位置に連通孔33が穿孔されている例を示している。連通孔33の穿孔位置は、ボア間スペーサ部32の特に冷却を要する領域に応じて定められる。連通孔33の形成によって、ボア間スペーサ部32の位置において、ボア側経路22Aと反ボア側経路22Bとが連通されている。
凹部34は、連通孔33からウォータージャケットスペーサ3の上端32Tに向けて直線状に延びている。凹部34は、ボア間スペーサ部32の位置において、ボア側経路22Aの横幅、すなわち気筒軸方向に相当するZ方向と直交するY方向の幅を部分的に広くするために設けられている。つまり、凹部34は、ボア側経路22Aを部分的に拡張して冷却水の流通を促進し、ボア間壁25を積極的に冷却するために設けられている。
図5は、図3のX−X線断面図、図6は、図3のXI−XI線断面図である。図5は、気筒スペーサ部31の断面であって、シリンダブロック2のY方向の断面において、気筒21の径が最大となる部分を示している。気筒2内には、ピストン4が収容されている。既述の通り、ウォータージャケット22は、内ブロック23の外壁232と外ブロック24の内壁241とで区画され、上端が開口した溝である。図5に示すY方向断面では、ウォータージャケット22は上下方向(Z方向)に細長いU字型の溝形状を有している。ウォータージャケットスペーサ3は、このようなウォータージャケット22に挿入され、ウォータージャケット22内における冷却水の流通経路を、ボア側経路22Aと反ボア側経路22Bとに区分している。
ウォータージャケットスペーサ3は、気筒21から遠い側の反ボア側経路22Bに冷却水の主流が形成されるように配置される。具体的には、ボア側経路22AのY方向幅をd1、反ボア側経路22BのY方向幅をd2とすると、d2>d1の関係となるように、ウォータージャケットスペーサ3がウォータージャケット22内に収容される。ボア側経路22AのY方向幅d1は、内ブロック23の外壁232と気筒スペーサ部31の内面との間の隙間である。反ボア側経路22BのY方向幅d2は、外ブロック24の内壁241と気筒スペーサ部31の外面との間の隙間である。例えばd2は、d1の1.5倍〜4倍程度の範囲から選択することができる。
d2がd1に対して十分に広幅とされる結果、冷却水の流路抵抗は、ボア側経路22Aに比べて反ボア側経路22Bの方が低くなる。このため、ブロック側入口14H(図3)から所定の供給圧で矢印FL方向に冷却水が供給された場合、専ら水流は反ボア側経路22Bに形成されるようになる。冷却水の流路抵抗が高いボア側経路22Aにおいては、冷却水の水流は比較的緩いものとなる。従って、気筒スペーサ部31が気筒21と対向する領域において、気筒21が過度に冷却されないようにすることができる。
図6は、ウォータージャケットスペーサ3のボア間スペーサ部32及びシリンダブロック2のボア間壁25のY方向の断面を示している。ボア間スペーサ部32においても、ボア側経路22AのY方向幅d1と反ボア側経路22BのY方向幅d2との関係は、d2>d1である。気筒スペーサ部31と相違する点は、ボア間スペーサ部32には上述の連通孔33及び凹部34が設けられている点である。
凹部34の存在によって、ボア側経路22AのY方向幅(横幅)は、連通孔33の下方側よりも上方側の方が広くなっている。つまり、連通孔33より−Z側のボア側経路22Aの横幅d11に対して、連通孔33より+Z側のボア側経路22Aの横幅d12の方が広幅(d11<d12)とされている。凹部34によって拡幅された横幅d12が形成される結果、当該凹部34の形成領域は、ボア間スペーサ部32が区画するボア側経路22Aにおいて、冷却水の流路抵抗が部分的に低い領域となる。
図4の要部拡大斜視図である図7を参照して、凹部34について詳述する。凹部34は、ボア間スペーサ部32において、ボア側経路22A側から反ボア側経路22B側へ向けて凹設された溝である。凹部34は、上下方向(Z方向)へ直線状に延びる縦溝である。凹部34は、連通孔33に連なる下端部341と、ウォータージャケットスペーサ3(ボア間スペーサ部32)の上端32Tに至る上端部342とを有している。下端部341から上端部342にかけて、凹部34のXY断面形状は略同一であり、X方向に長い矩形形状を有している。すなわち、凹部34で区画される領域の断面積は、上下方向において略一定である。
凹部34は、ボア間スペーサ部32において、最も内側に突出した箇所の内壁面を、外側に窪ませる態様で形成されている。凹部34のX方向幅は、連通孔33のX方向幅とほぼ同じである。このような凹部34の形成によって、流路抵抗が高いボア側経路22Aにおいて、ボア間スペーサ部32の連通孔33の直上部分に、流路抵抗が低く、かつ、安定した水流が形成され易い包囲性の高い領域が形成される。つまり、冷却水が連通孔33から上端32Tへ向けて流れ易い領域が作られる。また、凹部34は、XY平面の断面積が一定で直線状にZ方向に延びている。このため、冷却水の水流を拡散させたり、逆に水流を滞わせたりすることなく、ボア間壁25に沿って下から上で冷却水を流動させることができる。
上記のd11<d12の関係を満たす限りにおいて、凹部34の態様は任意である。例えば、凹部34のX方向幅が、下端部341から上端部342に向けて徐々に拡がる又は狭くなる態様や、凹部34の溝深さが徐々に深くなる又は浅くなる態様としても良い。連通孔33のX方向幅に対して、凹部34のX方向幅を幅狭もしくは幅広としても良い。また、凹部34の延在方向が、Z方向に対して若干傾いていても良い。さらに、下端部341が、連通孔33よりもやや下方まで延びていても良い。
[ボア間経路について]
図6を参照して、シリンダブロック2は、ボア間壁25に冷却水を流通させるためのボア間経路27を備えている。ボア間経路27は、ボア間壁25を横断するようにY方向(気筒列方向と直交する方向)に延びている。ボア間経路27は、+Y側から−Y側へ下降するように傾斜して延びる上流ドリル孔271と、−Y側から+Y側へ下降するように傾斜して延びる下流ドリル孔272とが下端で合流する流路形状を備える。上流ドリル孔271の上端には大径の導入開口273が、下流ドリル孔272の上端には大径の出口開口274が、各々連設されている。
排気側ジャケット22EXを区画している内ブロック23の外壁232(ウォータージャケットを区画する壁面)の上端付近には、入口孔28が設けられている。入口孔28は、ボア間経路27へ冷却水を導くための孔であり、ボア間経路27の導入開口273に連通している。排気側スペーサ3EXが備える凹部34の上端部342は、入口孔28に対向している。つまり、連通孔33から、凹部34を通して上方向に向かい、入口孔28からボア間経路27へ向かう冷却水の流通経路が形成されている。とりわけ、連通孔33から入口孔28にかけては、凹部34によって流路抵抗が小さい領域となる。一方、ボア間経路27の出口開口274は、吸気側ジャケット22INとは直接的に連通していない。出口開口274は、図略のシリンダヘッドに備えられているウォータージャケットに連通する。
ボア間経路27の上流ドリル孔271と下流ドリル孔272とは、下端同士で合流し、合流部275を形成している。合流部275は、ボア間経路27においてZ軸方向で最も低い位置に存在する。連通孔33は、合流部275よりも下方に位置している。つまり、連通孔33の配置ラインL1は、合流部275の高さ位置よりもさらに下方の位置である。換言すると、ボア間経路27を通過する冷却水では十分に冷却できないボア間壁25の下方領域に、連通孔33が対向する配置とされている。
また、ピストン5と連通孔33との配置関係は次の通りである。図5に示されているように、気筒21にはピストン4が収容されている。ピストン4は下方側にスカート部41を有している。図5では、ピストン4が上死点に存在しているときの、スカート部41の下端の位置を、スカート下端ラインL2として表示している。そして、図6に示すように、連通孔33は、ピストン4が上死点に存在しているとき、気筒軸方向においてスカート部41の下端よりも上方に位置している。つまり、連通孔33の配置ラインL1は、上述の通りボア間経路27の合流部275よりも下方で、且つ、スカート下端ラインL2よりも上方に配置されている。
[冷却水の流通状態]
図8は、ボア間スペーサ部32における冷却水の流通状態を示す断面図である。既述の通り、ウォータージャケットスペーサ3は、ウォータージャケット22内の冷却水の流通経路をボア側経路22Aと反ボア側経路22Bとに区画している。冷却水は、基本的には、比較的広いY方向幅d2を有する反ボア側経路22Bを専ら流れる。
しかし、ウォータージャケットスペーサ3のボア間スペーサ部32には、ボア側経路22Aと反ボア側経路22Bとを連通する連通孔33と、連通孔33の直上においてボア側経路22AのY方向幅をd12に拡幅する凹部34とが設けられている。さらに、ボア間経路27を経て前記シリンダヘッドへ向かう冷却水の流通経路が存在する。従って、ウォーターポンプ11(図1、図2)の駆動によって、ボア間スペーサ部32には、図8の矢印F1〜F4で示す流動が形成される。
まず、冷却水の主流が形成されている反ボア側経路22Bから、矢印F1で示すように、冷却水の一部が連通孔33を通してボア側経路22Aへ流れ込む。連通孔33の直上には、流路抵抗を小さくする凹部34が延在している。従って、冷却水は、ボア側経路22Aで拡散することなく、凹部34に沿って上方に流動する。
凹部34の上端部342は、ボア間経路27への入口孔28と対向している。ウォーターポンプ11の駆動によってボア間経路27が負圧化されることも相俟って、矢印F2で示すように、冷却水はボア側経路22Aから入口孔28へ進入する。その後、矢印F3で示すように、冷却水はボア間経路27の導入開口273、上流ドリル孔271及び下流ドリル孔272を通過する。しかる後、矢印F4で示すように、冷却水は、導入開口273からシリンダヘッド内のウォータージャケットへ進入する。
上記の矢印F1〜F4の冷却水の流動が形成されることで、ボア間壁25を良好に冷却させることができる。まず、流路抵抗の小さい凹部34がボア側経路22Aに具備されているため、冷却水は連通孔33を通して積極的にボア側経路22Aへ流れ込むことができる(矢印F1)。その後、冷却水は凹部34に沿って上方へ流れる。従って、ボア間壁25の気筒軸方向(Z方向)の中間から上端に沿った冷却水の流通を促進でき、結果としてボア間壁25の冷却効率を高めることができる。
詳しくは、凹部34によって、流路抵抗が小さく且つ安定した水流が形成され易い包囲性の高い領域が形成されている。すなわち、連通孔33を通して冷却水がボア側経路22Aへ流入した後、当該冷却水の水流を拡散させたり、逆に水流を滞わせたりすることなく、ボア間壁25に沿って下から上で冷却水を流動させることができる。しかも、凹部34は上下方向へ直線状に延びている。従って、ボア間壁25に沿って、冷却効果の高い冷却水のスムースな流動を形成させることができる。つまり、ボア間壁25を集中的に効率よく冷却させることができる。
その後、冷却水は凹部34の上端部342から入口孔28へ向かう(矢印F2)。本実施形態では、上端部342と入口孔28とが対向していることから、連通孔33からボア間経路27の入口孔28にかけて、凹部34によって冷却水の流路抵抗が小さい領域が形成されている。さらに、ボア間経路27に生じる冷却水の流動(矢印F3、F4)に伴って入口孔28から冷却水が引き込まれる。このため、矢印F2で示す冷却水の流動がスムースなものとなる。このような矢印F2のスムースは流動に牽引されて、凹部34の領域に一層積極的な冷却水の流動を生じさせることができる。従って、ボア間壁25の冷却効率をより高めることができる。
一般にボア間壁25は、吸気側に比べて、排気ガスが流れる排気側の方が高温となる。本実施形態では、排気側ジャケット22EXを区画する外壁232に入口孔28が設けられ、排気側スペーサ3EXが備える凹部34の上端部342が入口孔28と対向している。従って、高温化する排気側のボア間壁25を良好に冷却させることができる。
ボア間経路27を流れる冷却水(矢印F3)によって、ボア間壁25は冷却される。しかし、ボア間経路27はドリル孔によって形成されることもあり、あまり−Z側の深い位置まで入り込むことができない。しかし、本実施形態では、冷却水をボア側経路22Aに流入させる連通孔33は、Z方向においてボア間経路27の最下点である合流部275よりも下方に位置している。従って、ボア間経路27を流通する冷却水では十分に冷却できないボア間壁25の下方領域を、連通孔33からボア側経路22Aへ流入する冷却水にて冷却させることができる。
さらに、連通孔33は、ピストン4が上死点に存在しているとき、スカート部41の下端よりも上方に位置している。シリンダブロック2において熱源となる燃焼が発生するのは、専ら気筒21の上方領域である。この上方領域は、ピストン4が上死点に存在しているときの、当該ピストン4の下端位置、すなわちスカート部の41の下端(スカート下端ラインL2)よりも上方の領域と扱うことができる。本実施形態では、連通孔33は、ボア間経路27の合流部275よりも下方で、且つ、スカート下端ラインL2よりも上方に配置されている。従って、熱源を含む気筒21の上方領域に対応する、ボア間壁25の中間部32Mから上方の部分に沿って、連通孔33から冷却水を効率的に流通させ、当該部分を良好に冷却させることができる。
[冷却水のガイド部]
上述の通り、本実施形態では、反ボア側経路22Bに冷却水の主流が形成されると共に、連通孔33を通して冷却水が反ボア側経路22Bからボア側経路22Aへ導かれ、ボア間壁25を冷却させる。このため、反ボア側経路22Bから連通孔33へ冷却水を導き易い構造を具備させ、凹部34に冷却水の流動を形成させ易くすることが望ましい。この点に鑑み、本実施形態では、ウォータージャケットスペーサ3は、反ボア側経路2Bから冷却水を連通孔33に導くガイド部35を備えている。
図9は、連通孔33に付設されるガイド部35を示す斜視図であって、ボア間スペーサ部32の凹部34を、反ボア側経路22B側から見た斜視図である。ガイド部35は、側壁351と天壁352とを備えている。側壁351は、連通孔33における冷却水の流通方向(矢印FL)の下流側の側部周縁33Aから反ボア側経路22Bに向けて延び出す壁である。天壁352は、連通孔33の上部周縁33Bから反ボア側経路22Bに向けて延び出す壁である。
側壁351は、側部周縁33Aよりも下方に延びる延長部353を備える。延長部353を含む側壁351は、連通孔33の下方から側部周縁33Aにかけて、+Z方向にせり上がる傾斜面を形成している。当該傾斜面は、矢印FLに流れる冷却水と交差する面、つまり冷却水が衝突する面となる。従って、図中で矢印F11にて示すように、連通孔33の周辺だけでなく、連通孔33の下方を流れる冷却水が、側壁351に受け止められ、さらにガイドされて連通孔33に向かうようになる。
天壁352は、矢印FLとは反対方向に湾曲している側壁351の上端に連なる、略水平方向に延びる壁面を有している。この略水平な壁面と、側壁351の傾斜面とで、略U字型の受け面が、上部周縁33Bと側部周縁33Aとを取り囲むように形成されている。このため、側壁351で受け止められた冷却水を、そのまま上方へ逃がすのではなく、天壁352で受け止め、連通孔33へ向かわせることができる。図中の矢印F12は、そのような冷却水の流れを示している。このようなガイド部35を連通孔33の反ボア側経路22B側に突設することによって、反ボア側経路2Bを流れる冷却水を、連通孔33に導入し易くすることができる。
[ガイド部の配置例]
上記のガイド部35は、ウォータージャケットスペーサ3の排気側スペーサ3EX及び吸気側スペーサ3INの双方が備える全ての連通孔33に付設しても良い。他方、過冷却を考慮して、一部の連通孔33についてはガイド部35の付設を省くようにしても良い。図10(A)及び(B)は、一部の連通孔33にガイド部35を付設しない例を示している。
図10(A)は、吸気側スペーサ3INの側面図、図10(B)は、排気側スペーサ3EXの側面図である。吸気側スペーサ3IN及び排気側スペーサ3EXは、矢印FLで示す冷却水の流通方向に並ぶ複数(5個)の連通孔33及び凹部34を各々備えている。なお、図10(A)及び(B)には、凹部34は表出していない。図10(A)に示すように、吸気側スペーサ3INについては、5個全ての連通孔33にガイド部35が付設されている。これに対し、排気側スペーサ3EXでは、冷却水の流通方向の下流側に位置する2個の連通孔33についてはガイド部35が付設されている一方、上流側に位置する3個の連通孔33についてはガイド部35が付設されていない。
本実施形態では、ボア間壁25にボア間経路27が形成されている。この場合、冷却水の流通方向上流側に位置する気筒21間のボア間経路27では、下流側の気筒21間のボア間経路27に比べて、冷却水の流動が比較的大きい傾向が出る。これは、シリンダヘッド側に冷却水を引く吸引力が、より短絡的にシリンダヘッドのウォータージャケットへ向かうことができる上流側の方が強くなるからである。このため、上流側のボア間経路27の入口孔28では、比較的大きな冷却水の吸引力が発生する。
従って、排気側スペーサ3EXについて、上流側に位置する3個の連通孔33には、ガイド部35を設けずとも、前記吸引力にて冷却水を連通孔33内へ十分に導入させることができる。換言すると、これら3個の上流側の連通孔33にガイド部35を設けると、連通孔33に導入される水流が過度に促進され、上流側のボア間壁25が過冷却される怖れがある。従って、排気側スペーサ3EXにおいて、上流側3個の連通孔33にガイド部35の付設を省くことで、前記過冷却の問題が生じないようにすることができる。
[変形例]
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、種々の変形実施形態を取ることができる。
(1)上記実施形態では、連通孔33からウォータージャケットスペーサ3の上端32Tに向けて延びる幅広部として、凹部34を例示した。ボア間スペーサ部32が区画しているボア側経路22Aにおいて、図6に示すd11<d12の関係を満たす限り、凹部34に代えて、他の構造を採用しても良い。例えば、ボア間スペーサ部32の内面側において、凸曲面の頂部付近を平面形状にカットすることで、ボア側経路22Aの横幅を拡張するようにしても良い。
(2)上記実施形態では、凹部34とボア間経路27とを実質的に連続させる例を示した。つまり、凹部34の下流端である上端部342を、ボア間経路27の入口孔28に対向させる例を示した。これに代えて、凹部34の上端部342と、ボア間経路27の入口孔28とを互いに離間して配置するようにしても良い。
(3)上記実施形態では、一つの凹部34に一つの連通孔33を配置する例を示した。これに代えて、一つの凹部34に複数の連通孔33を配置するようにしても良い。例えば、一つ凹部34に対して、Z方向に並ぶように2個の連通孔33を配置しても良い。また、連通孔33の開口径を、冷却水の流通方向上流側と下流側とで異ならせるようにしても良い。
1 エンジン
11 ウォーターポンプ
2 シリンダブロック(エンジンブロック)
21 気筒
21L 気筒列
22 ウォータージャケット
22EX 排気側ジャケット
22IN 吸気側ジャケット
22A ボア側経路
22B 反ボア側経路
23 内ブロック
231 内周壁(気筒を区画する壁面)
232 外壁(ウォータージャケットを区画する壁面)
24 外ブロック
241 内壁(ウォータージャケットを区画する壁面)
25 ボア間壁
27 ボア間経路
275 合流部(ボア間経路の最も低い位置)
28 入口孔
3 ウォータージャケットスペーサ
3EX 排気側スペーサ(排気側ウォータージャケットスペーサ)
3IN 吸気側スペーサ(吸気側ウォータージャケットスペーサ)
31 気筒スペーサ部
32 ボア間スペーサ部
32M 中間部
32T 上端
33 連通孔
33A 側部周縁
33B 上部周縁
34 凹部(幅広部)
341 下端部
342 上端部
35 ガイド部
351 側壁
352 天壁
X方向 気筒が一列に並ぶ所定方向
Z方向 気筒軸方向
FL 冷却水の流通方向

Claims (10)

  1. 複数の気筒が所定方向に一列に並んだ気筒列と、冷却水を前記気筒列の一端側から他端側へ向かうように流通させる流通経路となるウォータージャケットと、を各々区画する壁面を有するエンジンブロックと、
    前記ウォータージャケットの内部に配置され、前記流通経路を、前記気筒に近いボア側経路と、前記気筒から遠い反ボア側経路とに区分すると共に、前記反ボア側経路に前記冷却水の主流が形成されるように前記冷却水を分流させるウォータージャケットスペーサと、を備え、
    前記ウォータージャケットスペーサは、前記エンジンブロックにおける隣り合う気筒間の壁であるボア間壁に対向するボア間スペーサ部を含み、
    前記ボア間スペーサ部は、
    前記ウォータージャケットスペーサの上端よりも下方に位置し、前記ボア側経路と前記反ボア側経路とを連通させる連通孔を備えた中間部と、
    前記連通孔から当該ウォータージャケットスペーサの上端に向けて延びる幅広部と、を含み、
    前記幅広部は、前記ボア間スペーサ部の位置において、前記ボア側経路の横幅を、前記連通孔の下方側より上方側を広くする形状を有する、エンジンの冷却装置。
  2. 請求項1に記載のエンジンの冷却装置において、
    前記エンジンブロックは、前記ボア間壁を気筒列方向と直交する方向に延び、前記冷却水を流通させるボア間経路と、前記ウォータージャケットを区画する壁面であって前記ボア間経路の入口孔を有する壁面と、を備え、
    前記幅広部は、前記入口孔と対向する上端部と、前記連通孔に連なる下端部とを備えている、エンジンの冷却装置。
  3. 請求項2に記載のエンジンの冷却装置において、
    前記一列に並ぶ気筒列の配列ラインに対して、各気筒の吸気弁が配置される側を吸気側、及び、排気弁が配置される側を排気側とするとき、
    前記ウォータージャケットは、前記気筒列の前記吸気側に配置された吸気側ジャケット部と、前記排気側に配置された排気側ジャケット部と、を含み、
    前記入口孔を有する壁面は、前記排気側ジャケット部を区画する壁面であり、
    前記排気側ジャケット部の内部に配置される排気側ウォータージャケットスペーサが備える前記幅広部が、前記上端部と前記下端部とを備えている、エンジンの冷却装置。
  4. 請求項2又は3に記載のエンジンの冷却装置において、
    前記連通孔は、気筒軸方向において前記ボア間経路の最も低い位置よりも下方に位置している、エンジンの冷却装置。
  5. 請求項4に記載のエンジンの冷却装置において、
    前記気筒には、スカート部を備えたピストンが収容され、
    前記連通孔は、前記ピストンが上死点に存在しているとき、気筒軸方向において前記スカート部の下端よりも上方に位置している、エンジンの冷却装置。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載のエンジンの冷却装置において、
    前記幅広部は、前記ボア間スペーサ部において前記ボア側経路から前記反ボア側経路へ向けて凹設され、上下方向へ直線状に延びる凹部である、エンジンの冷却装置。
  7. 請求項6に記載のエンジンの冷却装置において、
    前記凹部で区画される領域の断面積は、上下方向において略一定である、エンジンの冷却装置。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載のエンジンの冷却装置において、
    前記ウォータージャケットスペーサは、前記反ボア側経路から冷却水を前記連通孔に導くガイド部を備える、エンジンの冷却装置。
  9. 請求項3に記載のエンジンの冷却装置において、
    前記吸気側ジャケット部の内部に配置される吸気側ウォータージャケットスペーサ及び前記排気側ウォータージャケットスペーサは、前記一端側から前記他端側に向かう冷却水の流通方向に並ぶ複数の前記連通孔を各々備え、
    前記吸気側ウォータージャケットスペーサは、前記反ボア側経路から冷却水を前記連通孔に導くガイド部を全ての前記連通孔について備え、
    前記排気側ウォータージャケットスペーサは、前記冷却水の流通方向の下流側に位置する前記連通孔については前記ガイド部を備える一方、上流側に位置する前記連通孔については具備しない、エンジンの冷却装置。
  10. 請求項8又は9に記載のエンジンの冷却装置において、
    前記ガイド部は、
    前記連通孔における前記冷却水の流通方向の下流側の側部周縁及びその下方から前記反ボア側経路に向けて延び出す側壁と、
    前記連通孔の上部周縁から前記反ボア側経路に向けて延び出す天壁と、を備える、エンジンの冷却装置。
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