JP2021031317A - リチウムアルミノシリケートガラスの製造方法、およびフロートガラス板 - Google Patents
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Abstract
Description
また、本発明は、フロート法により製造された失透の少ないリチウムアルミノシリケートガラスを提供することを目的とする。
logη2−logηB<0.7 (1)
logη2−logηB>0 (2)
本発明のリチウムアルミノシリケートガラスの製造方法の一態様において、レアー速度が300m/h以上であってもよい。
本発明のリチウムアルミノシリケートガラスの製造方法の一態様において、リチウムアルミノシリケートガラスは、酸化物基準のモル百分率表示でSiO2を55〜75%、Al2O3を8〜20%、Li2Oを7〜20%、Na2Oを0〜8%含有し、Na2OとK2Oの含有量の合計が5〜10%であってもよい。
本発明のリチウムアルミノシリケートガラスの製造方法の一態様において、溶融ガラスは溶融窯においてガラス原料を溶融して得られた溶融ガラスであり、溶融窯は、上流側において溶融ガラスと接触する部分が高ジルコニア質レンガからなってもよい。
本発明のリチウムアルミノシリケートガラスの製造方法の一態様において、溶融金属上に供給される際の溶融ガラスの粘度η1と、溶融ガラスの失透粘度ηAとがlogη1<logηAを満足してもよい。
また、本発明のフロートガラス板は、酸化物基準のモル百分率表示でSiO2を45〜75%、Al2O3を1〜30%、Li2Oを1〜20%含有するフロートガラス板であって、フロートガラス板の主面を光学顕微鏡で観察して数えた全析出結晶の個数を、フロートガラス板の主面の面積で割った失透個数密度が100個/m2以下である。
本実施形態のリチウムアルミノシリケートガラスの製造方法(以下単に「本実施形態のガラスの製造方法」ともいう)は、酸化物基準のモル百分率表示でSiO2を45〜75%、Al2O3を1〜30%、Li2Oを1〜20%含有するリチウムアルミノシリケートガラスの製造方法である。
また、本実施形態のガラスの製造方法は、溶融ガラスを溶融金属浴上に流入させて板状に成形するリチウムアルミノシリケートガラスの製造方法であって、溶融金属浴の長さをLとして上流端から0.2L〜0.4L下流の領域における溶融ガラスの平均粘度をη2(dPa・s)、リチウムアルミノシリケートガラスのスポジュメンの結晶成長速度が0になる粘度をηB(dPa・s)として、下記式(1)及び(2)を満足する製造方法である。
logη2−logηB<0.7 (1)
logη2−logηB>0 (2)
このように溶融ガラスを溶融金属浴上に流入させて板状に成形する製造方法は、フロート法と呼ばれる。以下、図面を参照して本実施形態のガラスの製造方法について説明する。
なお、本明細書において、溶融金属浴の上流とは溶融ガラスが流入する側を、下流とはリボン状に成形されたガラスが搬出される側をいう。
溶融炉10は、溶融窯11を有し、溶融窯11において、投入されたガラス原料1が溶融されて溶融ガラス2が得られる。より詳細には、溶融窯11は、上流側の溶解槽12と、下流側の冷却槽13とを備え、これらがネック14(またはスロート)により接続された構成を有し、上流側(すなわち溶解槽)においてガラス原料1が溶融されて溶融ガラス2となり、下流側では溶融ガラス2の温度が調整される。
溶融窯11の溶融ガラスと接触する部分は、Al2O3を45質量%以上含有するアルミナ質、ムライト質、ジルコンアルミナ質等のレンガにより構成されることがある。しかしながら、リチウムアルミノシリケートガラスを製造する場合は、特に、溶融窯の上流側(すなわち、溶解槽)においては、溶融ガラスとレンガとが反応しやすく、その反応でスポジュメン結晶が生成して失透が生じる恐れがある。このことから、本実施形態のガラスの製造方法において用いる溶融窯11は、特に上流側(すなわち溶解槽)において溶融ガラスと接触する部分が高ジルコニア質レンガからなることが好ましい。高ジルコニア質レンガはリチウムアルミノシリケートガラスとの反応性が低く、上記のような問題の生じる恐れが少ない。高ジルコニア質レンガとはジルコニア含有量が90質量%以上、好ましくは95質量%以上のレンガである。
溶融金属の種類は特に限定はされないが一般的には溶融錫が用いられる。
なお、フロートバス20には、ガラスリボン3の幅が表面張力により、また、下流側でのガラスリボンの搬送による引張により収縮することを防ぐために、適宜トップロール22が設置される。
なお、ガラスの失透粘度ηAとは、ガラスにおいて最も析出しやすい結晶(すなわち、溶融したガラスを冷却した際に最も高い温度で析出する結晶)が析出する温度である失透温度(液相温度)TAにおける溶融ガラスの粘度である。最も析出しやすい結晶はガラスの組成によっても異なるが、例えばガラスがZrO2を含む場合は、最も析出しやすい結晶はジルコニアの結晶であることが多い。すなわち、ガラスがZrO2を含む場合の失透粘度ηAは、溶融ガラスを降温させた際にジルコニアの結晶が析出する温度における溶融ガラスの粘度である場合が多い。
ηAは、溶融ガラスの組成に依存する。
溶融ガラスの温度を調節するためには、フロートバスの入口付近、たとえばリストリクタータイルで囲まれるフロートバス入り口付近にヒーターを設置して加熱してもよい。フロートバス入口の温度を上げるとη1が小さくなるので、logη1<logηAとなりやすい。
具体的には、たとえば、フロートバスの入り口付近にヒータを設置して加熱した場合には、クーラー等を使って急速に温度下げることで粘度を調節できる
logη2−logηB<0.7 (1)
logη2−logηB>0 (2)
また、ηBは、溶融ガラスの組成を調節することにより調節することができる。
(ηBの測定方法)
まず、測定対象のガラスを溶融し、スポジュメンの結晶が析出した状態で固化させる。次に、これを顕微鏡等で観察しながら昇温し、析出したスポジュメンの結晶が消失する温度TBを記録する。当該温度TBにおけるガラスの粘度がスポジュメンの結晶成長速度が0になる粘度ηBである。
次に、本実施形態のガラスの製造方法により製造されるリチウムアルミノシリケートガラス(以下、「本ガラス」ともいう)について説明する。本ガラスは、上記のようにフロート法により製造されるガラス、即ち、フロートガラスである。
この効果を得るために、本ガラスのAl2O3の含有量は1%以上とする。ヤング率を高くするためには、本ガラスのAl2O3の含有量は好ましくは8%以上、より好ましくは9%以上、さらに好ましくは10%以上、特に好ましくは11%以上、最も好ましくは12%以上である。
一方、Al2O3の含有量が多すぎるとスポジュメンの結晶成長速度が大きくなるのでガラスの溶融時に失透が生じやすくなり、また、粘度が増大して溶融性が低下する。したがって、本ガラスのAl2O3の含有量は30%以下であり、好ましくは20%以下、より好ましくは18%以下、さらに好ましくは16%以下である。
本ガラスに化学強化処理を施して得られる化学強化ガラスにおいて高いCS及び大きなDOLを達成するために、本ガラスのLi2Oの含有量は1%以上、好ましくは5%以上、より好ましくは7%以上、さらに好ましくは9%以上、特に好ましくは10%以上である。
一方、Li2Oの含有量が多すぎるとスポジュメンの結晶成長速度が大きくなるのでガラスの溶融時に失透が生じやすくなる。したがって、本ガラスのLi2Oの含有量は20%以下、好ましくは15%以下、より好ましくは13%以下、さらに好ましくは12%以下である。
一方、ナトリウム塩による強化処理において表面圧縮応力(CS)が低下するのを避けるために、本ガラスのNa2Oの含有量は10%以下が好ましく、8%以下がより好ましく、6%以下がさらに好ましく、5%以下が特に好ましい。
一方、カリウム塩による強化処理において表面圧縮応力(CS)が低下するのを避けるために、本ガラスにK2Oを含有させる場合の含有量は10%以下が好ましく、5%以下がより好ましく、3%以下がさらに好ましく、2%以下が特に好ましい。
なお、ここではガラス中の鉄酸化物をすべてFe2O3として説明したが、実際には、酸化状態のFe(III)と還元状態のFe(II)が混在しているのが普通である。このうちFe(III)は黄色の着色を生じ、Fe(II)は青色の着色を生じ、両者のバランスでガラスに緑色の着色が生じる。
着色成分の含有量は、酸化物基準のモル百分率表示で、合計で5%以下が好ましい。5%を超えるとガラスが失透しやすくなる場合がある。着色成分の含有量は好ましくは3%以下、さらに好ましくは1%以下である。透過率を高くしたい場合は、これらの成分は実質的に含有しないことが好ましい。
また、ガラスの溶融の際の清澄剤として、SO3、塩化物、フッ化物などを適宜添加してもよい。As2O3は含有しないことが好ましい。Sb2O3を含有する場合は、0.3%以下が好ましく、0.1%以下がより好ましく、含有しないことが最も好ましい。
また、本ガラスの粘度が104dPa・sとなる温度(T4)は1350℃以下が好ましく、1250℃以下がより好ましく、1200℃以下であることがさらに好ましく、1150℃以下が特に好ましい。T4はガラスを板状に成形する温度の目安となる温度であり、T4が高いガラスは成形設備への負荷が高くなる傾向がある。T4の下限は特に限定されるものではないが、T4が低いガラスは安定性が乏しい場合があるので、T4は、通常900℃以上、好ましくは950℃以上、より好ましくは1000℃以上である。
軟化点はJIS R3103−1:2001に記載の繊維引き伸ばし法で測定できる。
本ガラスの失透個数密度は、好ましくは100個/m2以下、より好ましくは10個/m2以下、さらに好ましくは1個/m2以下、特に好ましくは0.1個/m2以下、最も好ましくは0である。
(ガラス板の製造)
表1の例1の欄に示す組成となるようにガラス原料を混合し、白金るつぼに入れ、1650℃で溶解した後、冷却することによってガラスブロックを得た。該ガラスブロックを後述する粘度の評価に用いた。また、該ガラスブロックの一部を粉砕し、失透温度TA、スポジュメンの結晶成長速度が0になる温度TBの評価を行った。さらに、該ガラスブロックを白金るつぼに入れ、1650℃で再溶融させて溶融ガラスを得た。得られた溶融ガラスを図1に示すようなガラスの製造装置の溶融金属浴に供給して、フロート法によりガラス板を製造した。製造方法の条件は表1に示す通りであった。
得られたガラス板のT2、T4、失透温度TA、失透粘度ηA、スポジュメンの結晶成長速度が0になる温度TB及び粘度ηB、を以下のように測定した。また、得られたガラス板の失透個数密度を以下のように評価した。結果を表1に示す。なお、表中の空欄は未測定を意味する。
また、上記のガラス板の製造時におけるη1及びη2の測定方法についても以下に説明する。
ASTM C965−96(2012年)に規定されている方法に従い、回転粘度計を用いてガラスの粘度の温度依存性データを取得した。粘度が102dPa・sとなる温度をT2、104dPa・sとなる温度をT4とした。
平均粒径が500μm程度になるように粉砕したガラス5gを35mlの白金皿に入れ、所定温度の電気炉中に17時間保持した後、取り出して倍率10倍〜50倍の偏光顕微鏡で観察し、結晶析出の有無を調べた。800℃〜1500℃の温度域で、保持する温度を変えながら結晶析出の有無を調べる操作を繰り返し、結晶が析出しない最低の温度を液相温度TAとした。
スポジュメンの結晶成長速度が0になる温度をTBとした。スポジュメンの結晶成長速度は以下の方法で評価した。
まず、ガラス片を乳鉢で粉砕して分級し、3.35mmメッシュの篩を通過し、2.36mmメッシュの篩を通過しなかったガラス粒子をイオン交換水で洗浄し、乾燥したものを試験に用いた。多数の凹部を有する細長い白金セルの個々の凹部にガラス粒子を1個のせ、1000〜1100℃の電気炉内にてガラス粒子の表面が溶けて平滑になるまで加熱した。次いで、そのガラスを、所定の温度に保った温度傾斜炉中に投入し、一定時間(tとする)、熱処理を行った後、室温に取り出して急冷した。この方法によれば、温度傾斜炉内に細長い容器を設置して同時に多数のガラス粒子を加熱処理できるので、所定の温度範囲内でのスポジュメンの失透成長速度が測定できる。
熱処理後のガラスを、偏光顕微鏡(ニコン社製:ECLIPSE LV100ND)で観察し、観察されたスポジュメン結晶の内、最大の大きさのものの直径(lμmとする)を測定した。接眼レンズ10倍、対物レンズ5倍〜100倍、透過光、偏光観察の条件で観察した。スポジュメン結晶は等方的に成長すると考えてよいので、その結晶成長速度はl/(2t)[単位:μm/h]である。ただし、測定する結晶は、容器との界面から析出していない結晶を選択した。金属界面における結晶成長はガラス内部やガラス−雰囲気界面で起こる失透成長挙動とは異なる傾向にあるからである。
以上の方法で、スポジュメン結晶成長速度の温度依存性を評価し、成長速度が0になる温度をTBとした。また、その温度における粘度をηBとした。
フロート法で成形したガラス板の主面を、倍率10倍〜50倍の光学顕微鏡で観察し、結晶析出の有無を調べた。
観察された失透(析出結晶)の個数を、観察したガラス板の主面の面積で除することにより、表1に示す単位面積あたりの失透個数密度を得た。また、失透(析出結晶)の平均直径も調べた。結果を表1に示す。
溶融窯から流れ出たガラス融液が、溶融金属浴に最初に接する点の溶融ガラスの温度におけるガラスの粘度をη1とした。なお、表1のη1における空欄は、未測定を意味する。
溶融金属浴の長さをLとして上流端から0.2L〜0.4L下流の領域における溶融金属浴の平均温度を測定し、その温度におけるガラスの粘度をη2とした。
ガラスの組成、製造方法の条件を表2に示すように変更した以外は例1と同様にして例2〜8のガラス板を製造した。また、得られた例2〜8のガラス板に対して、例1と同様に物性の測定及び評価を行った。結果を表1に示す。
一方、logη2−logηBが0より大きく0.7より小さい例1から3及び例6〜8では、失透が少ないガラスが得られた。
Claims (6)
- 溶融ガラスを溶融金属浴上に流入させて板状に成形するリチウムアルミノシリケートガラスの製造方法であって、
前記リチウムアルミノシリケートガラスは、酸化物基準のモル百分率表示でSiO2を45〜75%、Al2O3を1〜30%、Li2Oを1〜20%含有し、
前記溶融金属浴の長さをLとして、その上流端から0.2L〜0.4L下流の領域における前記溶融ガラスの平均粘度η2(dPa・s)と、前記リチウムアルミノシリケートガラスのスポジュメンの結晶成長速度が0になる粘度ηB(dPa・s)とが、下記式(1)及び(2)を満足するリチウムアルミノシリケートガラスの製造方法。
logη2−logηB<0.7 (1)
logη2−logηB>0 (2) - レアー速度が300m/h以上である、請求項1に記載のリチウムアルミノシリケートガラスの製造方法。
- 前記リチウムアルミノシリケートガラスは、酸化物基準のモル百分率表示でSiO2を55〜75%、Al2O3を8〜20%、Li2Oを7〜20%、Na2Oを0〜8%含有し、Na2OとK2Oの含有量の合計が5〜10%である、請求項1または2に記載のリチウムアルミノシリケートガラスの製造方法。
- 前記溶融ガラスは溶融窯においてガラス原料を溶融して得られた溶融ガラスであり、前記溶融窯は、上流側において前記溶融ガラスと接触する部分が高ジルコニア質レンガからなる、請求項1から3のいずれか1項に記載のリチウムアルミノシリケートガラスの製造方法。
- 前記溶融金属上に供給される際の溶融ガラスの粘度η1と、前記溶融ガラスの失透粘度ηAとがlogη1<logηAを満足する、請求項1から4のいずれか1項に記載のリチウムアルミノシリケートガラスの製造方法。
- 酸化物基準のモル百分率表示でSiO2を45〜75%、Al2O3を1〜30%、Li2Oを1〜20%含有するフロートガラス板であって、
前記フロートガラス板の主面を光学顕微鏡で観察して数えた全析出結晶の個数を、前記フロートガラス板の主面の面積で割った失透個数密度が100個/m2以下である、フロートガラス板。
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