JP2021031043A - 重荷重用空気入りタイヤ - Google Patents

重荷重用空気入りタイヤ Download PDF

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Abstract

【課題】ウェットトラクション性を高めるには、キャップトレッドゴムの硬度を下げる等の手法があるが、操縦安定性および転がり抵抗性が悪化するというという問題点がある。【解決手段】アンダートレッドゴムは、窒素吸着比表面積が70〜130m2/gのカーボンブラックを含み、アンダートレッドゴムは、60℃におけるtanδ(tanδ@60℃(UT))が0.03〜0.10であり、かつ20℃における貯蔵弾性率(E’@20℃(UT))が3.0〜5.5であり、上ビードフィラーの60℃におけるtanδ、前記(tanδ@60℃(UT))、下ビードフィラーの20℃における貯蔵弾性率、前記(E’@20℃(UT))、キャップトレッドゴムとアンダートレッドゴムの質量の関係を特定化した重荷重用空気入りタイヤ。【選択図】図1

Description

本発明は、重荷重用空気入りタイヤに関するものであり、詳しくは、ウェットトラクション性、操縦安定性および転がり抵抗性をそれぞれ実用上十分なレベルに維持し得る重荷重用空気入りタイヤに関するものである。
空気入りタイヤは左右一対のビード部およびサイドウォール部と、両サイドウォール部に連なるとともにキャップトレッドとアンダートレッドとからなるトレッド部から主に構成されている。タイヤの内側にはカーカスが設けられ、カーカスの両端部はビードコアをタイヤ内側から外側へ包みこむように折り返されている。
ビード部はビードコアとその外周上の断面三角形状のゴム組成物からなるビードフィラーとを備えてなる。
一方、トラックまたはバス用タイヤのような重荷重用空気入りタイヤとしては、安全かつ快適な運行が重視されている。そのため重荷重用空気入りタイヤは、雨天時等のウェット路面での坂道発進性(ウェットトラクション性)や操縦安定性が重視される。ウェットトラクション性を高めるには、キャップトレッドゴムを柔らかくして接地面積を増加させ、かつ高tanδ化する手法があるが、操縦安定性が悪化し、また高tanδ化により転がり抵抗性が悪化するという問題点がある。
このように重荷重用空気入りタイヤのウェットトラクション性、操縦安定性および転がり抵抗性をそれぞれ実用上十分なレベルに維持するのは困難な事項である。
なお、重荷重用空気入りタイヤのウェットトラクション性の向上を図る技術としては、例えば特許文献1〜2に開示がある。
特開平6−48122号公報 特開平1−306304号公報
したがって本発明の目的は、ウェットトラクション性、操縦安定性および転がり抵抗性をそれぞれ実用上十分なレベルに維持し得る重荷重用空気入りタイヤを提供することにある。
本発明者は鋭意研究を重ねた結果、アンダートレッドゴムの組成、アンダートレッドゴムの60℃におけるtanδ(tanδ@60℃(UT))および20℃における貯蔵弾性率(E’@20℃(UT))、上ビードフィラーの60℃におけるtanδ(tanδ@60℃(UBF))と前記(tanδ@60℃(UT))の関係、下ビードフィラーの20℃における貯蔵弾性率(E’@20℃(LBF))と前記(E’@20℃(UT))の関係、並びに、キャップトレッドゴムとアンダートレッドゴムの合計質量(WT)に対するアンダートレッドゴムの質量(WU)の関係を特定化することにより、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成することができた。
すなわち本発明は以下の通りである。
1.タイヤビード部に設けられたビードフィラーと、タイヤ接地面を構成するキャップトレッドゴムと、前記キャップトレッドゴムのタイヤ径方向内側に設けられたアンダートレッドゴムとを備える重荷重用空気入りタイヤにおいて、
前記アンダートレッドゴムは、天然ゴムを含むジエン系ゴムを含有し、
前記ジエン系ゴム100質量部中、ブタジエンゴムの占める割合が15質量部以下であり、
前記アンダートレッドゴムは、前記ジエン系ゴム100質量部に対し、窒素吸着比表面積(NSA)が70〜130m/gのカーボンブラックを30質量部以上含み、
前記アンダートレッドゴムは、60℃におけるtanδ(tanδ@60℃(UT))が0.03〜0.10であり、かつ20℃における貯蔵弾性率(E’@20℃(UT))が3.0〜5.5であり、
前記ビードフィラーは、タイヤ径方向外側に位置する上ビードフィラーと、前記上ビードフィラーに対しタイヤ径方向内側に位置する下ビードフィラーとを備え、
前記上ビードフィラーの60℃におけるtanδ(tanδ@60℃(UBF))と前記(tanδ@60℃(UT))が下記関係式(1)を満たし、
前記下ビードフィラーの20℃における貯蔵弾性率(E’@20℃(LBF))と前記(E’@20℃(UT))が下記関係式(2)を満たし、かつ
前記キャップトレッドゴムと前記アンダートレッドゴムの合計質量(WT)に対する前記アンダートレッドゴムの質量(WU)が下記関係式(3)を満たす
ことを特徴とする重荷重用空気入りタイヤ。
0.3≦(tanδ@60℃(UBF))/(tanδ@60℃(UT))≦1.3 (1)
3.3≦(E’@20℃(LBF))/(E’@20℃(UT))≦6.0 (2)
0.05≦(WU)/(WT)≦0.45 (3)
2.前記カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)が、90〜120m/gであることを特徴とする前記1に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
3.前記カーボンブラックの配合量が、前記ジエン系ゴム100質量部に対し、35〜50質量部であることを特徴とする前記1または2に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
本発明の重荷重用空気入りタイヤ(以下、単に空気入りタイヤと言うことがある)は、タイヤビード部に設けられたビードフィラーと、タイヤ接地面を構成するキャップトレッドゴムと、前記キャップトレッドゴムのタイヤ径方向内側に設けられたアンダートレッドゴムとを備え、前記アンダートレッドゴムは、天然ゴムを含むジエン系ゴムを含有し、前記ジエン系ゴム100質量部中、ブタジエンゴムの占める割合が15質量部以下であり、前記アンダートレッドゴムは、前記ジエン系ゴム100質量部に対し、窒素吸着比表面積(NSA)が70〜130m/gのカーボンブラックを30質量部以上含み、前記アンダートレッドゴムは、60℃におけるtanδ(tanδ@60℃(UT))が0.03〜0.10であり、かつ20℃における貯蔵弾性率(E’@20℃(UT))が3.0〜5.5であり、前記ビードフィラーは、タイヤ径方向外側に位置する上ビードフィラーと、前記上ビードフィラーに対しタイヤ径方向内側に位置する下ビードフィラーとを備え、前記上ビードフィラーの60℃におけるtanδ(tanδ@60℃(UBF))と前記(tanδ@60℃(UT))が下記関係式(1)を満たし、前記下ビードフィラーの20℃における貯蔵弾性率(E’@20℃(LBF))と前記(E’@20℃(UT))が下記関係式(2)を満たし、かつ前記キャップトレッドゴムと前記アンダートレッドゴムの合計質量(WT)に対する前記アンダートレッドゴムの質量(WU)が下記関係式(3)を満たすことを特徴としているので、ウェットトラクション性、操縦安定性および転がり抵抗性をそれぞれ実用上十分なレベルに維持することができる。
0.3≦(tanδ@60℃(UBF))/(tanδ@60℃(UT))≦1.3 (1)
3.3≦(E’@20℃(LBF))/(E’@20℃(UT))≦6.0 (2)
0.05≦(WU)/(WT)≦0.45 (3)
上述のように、ウェットトラクション性を高めるには、キャップトレッドゴムを柔らかくして接地面積を増加させ、かつ高tanδ化する手法があるが、操縦安定性が悪化し、また高tanδ化により転がり抵抗性が悪化するという問題点があった。本発明では、アンダートレッドゴムの組成、アンダートレッドゴムの60℃におけるtanδ(tanδ@60℃(UT))および20℃における貯蔵弾性率(E’@20℃(UT))、上ビードフィラーの60℃におけるtanδ(tanδ@60℃(UBF))と前記(tanδ@60℃(UT))の関係、下ビードフィラーの20℃における貯蔵弾性率(E’@20℃(LBF))と前記(E’@20℃(UT))の関係、並びに、キャップトレッドゴムとアンダートレッドゴムの合計質量(WT)に対するアンダートレッドゴムの質量(WU)の関係を特定化し、キャップトレッドゴムがウェットトラクション性の改善を担い操縦安定性および転がり抵抗性を減じた場合でも、アンダートレッドゴム、上ビードフィラーおよび下ビードフィラーが操縦安定性および転がり抵抗性を補完する役割を果たし、結果としてウェットトラクション性、操縦安定性および転がり抵抗性をそれぞれ実用上十分なレベルに維持する空気入りタイヤを提供することができる。
空気入りタイヤの子午線断面図である。
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
図1は、空気入りタイヤの子午線断面図である。
図1において、空気入りタイヤは左右一対のビード部1およびサイドウォール2と、両サイドウォール2に連なるトレッド3からなり、ビード部1、1間にタイヤ骨格をなすカーカス層4が装架され、カーカス層4の端部がビードコア5およびビードフィラー6の廻りにタイヤ内側から外側に折り返されて巻き上げられている。
トレッド3は、タイヤ接地面を構成するキャップトレッドゴム30と、キャップトレッドゴム30のタイヤ径方向内側に設けられたアンダートレッドゴム31とを備える。
ビードフィラー6は2つの部材から構成され、タイヤ径方向外側に位置する上ビードフィラー62と、前記上ビードフィラー62に対しタイヤ径方向内側に位置する下ビードフィラー64とを有する。
またカーカス層4の外側には、ベルト層7がタイヤ1周に亘って配置されている。ベルト層7の両端部には、ベルトクッション8が配置されている。空気入りタイヤの内面には、タイヤ内部に充填された空気がタイヤ外部に漏れるのを防止するために、インナーライナー9が設けられ、インナーライナー9を接着するためのタイゴム10が、カーカス層4とインナーライナー9との間に積層されている。
タイヤ径方向とは、タイヤ回転軸に直交する方向であり、タイヤ径方向内側とはタイヤ回転軸に近づく方向を指し、タイヤ径方向外側とはタイヤ回転軸から離れる方向を指す。
本発明では、アンダートレッドゴムの組成が特定される。すなわち、前記アンダートレッドゴムは、天然ゴムを含むジエン系ゴムを含有し、前記ジエン系ゴム100質量部中、ブタジエンゴムの占める割合が15質量部以下であり、前記アンダートレッドゴムは、前記ジエン系ゴム100質量部に対し、窒素吸着比表面積(NSA)が70〜130m/gのカーボンブラックを30質量部以上含む。
前記アンダートレッドゴムにおいて、前記ブタジエンゴム(BR)の割合が15質量部を超える場合、前記カーボンブラックの配合量が30質量部未満の場合、および/または、前記カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)が70〜130m/gの範囲外である場合は、ウェットトラクション性、操縦安定性および転がり抵抗性をそれぞれ実用上十分なレベルに維持するという本発明の効果を奏することができない。
ここで、本発明の効果向上の観点から、下記の形態が好ましい。
(1)前記アンダートレッドゴムにおいて、ジエン系ゴム100質量部中、NRの割合は80〜100質量部が好ましい。
(2)前記アンダートレッドゴムにおいて、前記カーボンブラックの配合量は、ジエン系ゴム100質量部に対し、35〜50質量部が好ましい。
(3)前記アンダートレッドゴムにおいて、前記カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)は85〜125m/gが好ましい。なおカーボンブラックは2種類以上をブレンドして用いてもよい。
なお本発明でいうNRは、合成イソプレンゴム(IR)を含むものとする。また窒素吸着比表面積(NSA)は、JIS K 6217−2:2001「第2部:比表面積の求め方−窒素吸着法−単点法」にしたがって測定した値である。
本発明で使用されるアンダートレッドゴムを構成するゴムは、天然ゴム(NR)およびブタジエンゴム(BR)以外にも、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム(NBR)等を併用することもできる。本発明で使用されるゴムは、その分子量やミクロ構造はとくに制限されず、アミン、アミド、シリル、アルコキシシリル、カルボキシル、ヒドロキシル基等で末端変性されていても、エポキシ化されていてもよい。
また、前記アンダートレッドゴムには、前記した成分に加えて、各種充填剤、各種オイル、老化防止剤、可塑剤、酸化亜鉛などのアンダートレッドゴムに一般的に配合されている各種添加剤を配合することができる。また加硫の際は、公知の加硫又は架橋剤、加硫又は架橋促進剤を制限なく使用できる。これらの添加剤の配合量も、本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
本発明における前記アンダートレッドゴムは、60℃におけるtanδ(tanδ@60℃(UT))が0.03〜0.10であり、かつ20℃における貯蔵弾性率(E’@20℃(UT))が3.0〜5.5であることが必要である。これらの物性の範囲を満たさない場合は、本発明の前記効果を奏することができない。
(tanδ@60℃(UT))は、0.03〜0.08がさらに好ましい。
(E’@20℃(UT))は、3.5〜5.0がさらに好ましい。
なお、本明細書における60℃におけるtanδは、(株)東洋精機製作所製、粘弾性スペクトロメーターを用い、初期歪10%、振幅±2%、周波数20Hz、温度60℃の条件で測定される。
また、本明細書における20℃における貯蔵弾性率は、JIS K6394に準拠し、粘弾性スペクトロメーターを用いて、初期歪み10%、振幅±2%、周波数20Hz、20℃の条件で測定した値(MPa)とする。
本発明におけるビードフィラーは、上述のようにタイヤ径方向外側に位置する上ビードフィラーと、前記上ビードフィラーに対しタイヤ径方向内側に位置する下ビードフィラーとを備える。
本発明において、上ビードフィラーおよび下ビードフィラーの組成は、下記で説明する(tanδ@60℃(UBF))/(tanδ@60℃(UT))および(E’@20℃(LBF))/(E’@20℃(UT))の関係を満たすことができれば、とくに制限されず、適宜選択することができる。
例えば、ジエン系ゴム、シリカやカーボンブラック等の各種充填剤、カップリング剤、各種オイル、老化防止剤、可塑剤、酸化亜鉛などのビードフィラーに一般的に配合されている各種成分を配合することができる。また加硫の際は、公知の加硫又は架橋剤、加硫又は架橋促進剤を制限なく使用できる。これらの添加剤の配合量も、本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
また、本発明の空気入りタイヤにおけるキャップトレッドゴムは、空気入りタイヤの接地面を構成するゴムであり、本発明の効果向上の観点から、60℃におけるtanδは0.03〜0.18が好ましく、0.04〜0.15がさらに好ましい。また、20℃における硬度は50〜80が好ましく、60〜75がさらに好ましい。
なお硬度は、JIS K6253に準拠して20℃にて測定される。
本発明において、キャップトレッドゴムの組成は、とくに制限されず、適宜選択することができる。
例えば、ジエン系ゴム、シリカやカーボンブラック等の各種充填剤、カップリング剤、各種オイル、老化防止剤、可塑剤、酸化亜鉛などのキャップトレッドゴムに一般的に配合されている各種成分を配合することができる。また加硫の際は、公知の加硫又は架橋剤、加硫又は架橋促進剤を制限なく使用できる。これらの添加剤の配合量も、本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
また、本発明の空気入りタイヤにおけるその他の部材を構成する部材についても、各成分の配合割合はとくに制限されず、適宜選択することができる。
例えばその他の部材のゴム組成物として、ジエン系ゴム、各種充填剤、各種オイル、老化防止剤、可塑剤、酸化亜鉛等の一般的に配合されている各種成分を配合することができる。また加硫の際は、公知の加硫又は架橋剤、加硫又は架橋促進剤を制限なく使用できる。これらの添加剤の配合量も、本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
本発明の空気入りタイヤは、前記上ビードフィラーの60℃におけるtanδ(tanδ@60℃(UBF))と前記(tanδ@60℃(UT))が下記関係式(1)を満たすことが必要である。
0.3≦(tanδ@60℃(UBF))/(tanδ@60℃(UT))≦1.3 (1)
また、本発明の空気入りタイヤは、前記下ビードフィラーの20℃における貯蔵弾性率(E’@20℃(LBF))と前記(E’@20℃(UT))が下記関係式(2)を満たすことが必要である。
3.3≦(E’@20℃(LBF))/(E’@20℃(UT))≦6.0 (2)
すなわち、(tanδ@60℃(UBF))/(tanδ@60℃(UT))の値が0.3〜1.3の範囲内であり、かつ、(E’@20℃(LBF))/(E’@20℃(UT))が3.3〜6.0の範囲内であることにより、上述のように、キャップトレッドゴムがウェットトラクション性の改善を担い操縦安定性および転がり抵抗性を減じた場合でも、アンダートレッドゴム、上ビードフィラーおよび下ビードフィラーが操縦安定性および転がり抵抗性を補完する役割を果たし、結果としてウェットトラクション性、操縦安定性および転がり抵抗性をそれぞれ実用上十分なレベルに維持する空気入りタイヤを提供することができる。
なお本発明の効果が一層向上するという観点から、前記式(1)における(tanδ@60℃(UBF))/(tanδ@60℃(UT))は、0.4〜1.2がさらに好ましい。
前記(2)式における(E’@20℃(LBF))/(E’@20℃(UT))は、4.0〜5.5がさらに好ましい。
また、(tanδ@60℃(UBF))は、0.03〜0.10が好ましく、0.03〜0.08がさらに好ましい。
(E’@20℃(LBF))は、15〜30(MPa)が好ましく、20〜30(MPa)がさらに好ましい。
前記(tanδ@60℃(UT))、前記(E’@20℃(UT))、前記(tanδ@60℃(UBF))および前記(E’@20℃(LBF))の調整は、例えば充填剤、加硫剤または架橋剤の増減により可能である。
また本発明の空気入りタイヤは、前記キャップトレッドゴムと前記アンダートレッドゴムの合計質量(WT)に対する前記アンダートレッドゴムの質量(WU)が下記関係式(3)を満たすことが必要である。
0.05≦(WU)/(WT)≦0.45 (3)
(WU)/(WT)が0.05〜0.45の範囲外である場合は、ウェットトラクション性、操縦安定性および転がり抵抗性をそれぞれ実用上十分なレベルに維持する空気入りタイヤを提供するという本発明の効果を奏することができない。
なお本発明の効果が一層向上するという観点から、前記(WU)/(WT)は、0.1〜0.45が好ましく、0.2〜0.45がさらに好ましい。
また本発明の空気入りタイヤは、従来の空気入りタイヤの製造方法に従って製造が可能である。
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。
標準例、実施例1〜4および比較例1〜4
表1に示す配合(質量部)において、加硫促進剤と硫黄を除く成分を16リットルの密閉式バンバリーミキサーで5分間混練し、ゴムをミキサー外に放出して室温冷却した。次いで、該ゴムを同ミキサーに再度入れ、加硫促進剤および硫黄を加えてさらに混練し、各種アンダードレッドゴム組成物を得た。
一方、上ビードフィラーおよび下ビードフィラーを常法にしたがい調製し、加硫剤、架橋剤、充填剤量を増減することにより、表1に示す各種物性を有するビードフィラーを得た。
(tanδ@60℃(UT))、(E’@20℃(UT))、(tanδ@60℃(UBF))および(E’@20℃(LBF))は、上述のように測定した。また、(WU)/(WT)を測定した。結果を表1に示す。
前記ビードフィラーと、前記キャップトレッドゴムとを組み込み、タイヤサイズ275/80R22.5 151/148Jの各種試験タイヤを製造した。またアンダートレッドゴムおよびビードフィラー以外の各部材の条件は、各種試験タイヤ間で同一とした。なお、キャップトレッドゴムの20℃における硬度は63、tanδ(60℃)は0.25であった。
得られた各種試験タイヤについて、下記の評価を行った。結果を表1に示す。
ウェットトラクション性:試験タイヤを12770ccの排気量の試験車両(トラクタヘッド)に装着し、空気圧をフロント900kPa、リヤ900kPaに調整し、水深1mmの舗装路面上を走行させ、時速6〜21km/hの加速時における後輪のスリップ率を計測した。結果は、標準例の値を100として指数表示した。指数が大きいほど、ウェットトラクション性に優れることを意味する。
転がり抵抗性:タイヤサイズが275/80R22.5の空気入りタイヤを加硫成形し、得られたタイヤを標準リム(サイズ22.5×7.5のホイール)に組み付け、JIS D4230に準拠する室内ドラム試験機(ドラム径1707mm)に取り付け、空気圧900kPa、荷重33.8kN、速度80km/時で走行したときの抵抗力を測定し、転がり抵抗とした。結果は、標準例の値を100として指数表示した。指数が大きいほど、低転がり抵抗性であることを意味する。
操縦安定性:前記試験車両を用い、テストドライバーによる官能評価を行った。評価は5段階評価とし、「3」点を基準とし、相対評価した。
5:「3」点に対し、操縦安定性に顕著な向上が見られる。
4:「3」点に対し、操縦安定性に向上が見られる。
3:基準
2:「3」点に対し、操縦安定性に劣っていた。
1:「3」点に対し、操縦安定性に顕著に劣っていた。
Figure 2021031043
*1:NR(RSS#3)
*2:BR(日本ゼオン(株)製Nipol BR1220)
*3:カーボンブラックISAF(キャボットジャパン社製ショウブラックN234、NSA=123m/g)
*4:カーボンブラックHAF(キャボットジャパン社製ショウブラックN339、NSA=88m/g)
*5:老化防止剤(精工化学(株)製オゾノン6C)
*6:ワックス(大内新興化学工業株式会社製パラフィンワックス)
*7:ステアリン酸(千葉脂肪酸(株)製工業用ステアリン酸N)
*8:酸化亜鉛(正同化学工業(株)製酸化亜鉛3種)
*9:硫黄(鶴見化学工業(株)製金華印油入微粉硫黄)
*10:加硫促進剤(大内新興化学工業(株)製ノクセラーNS−P)
上記の表1から明らかなように、各実施例では、アンダートレッドゴムの組成、アンダートレッドゴムの60℃におけるtanδ(tanδ@60℃(UT))および20℃における貯蔵弾性率(E’@20℃(UT))、上ビードフィラーの60℃におけるtanδ(tanδ@60℃(UBF))と前記(tanδ@60℃(UT))の関係、下ビードフィラーの20℃における貯蔵弾性率(E’@20℃(LBF))と前記(E’@20℃(UT))の関係、並びに、キャップトレッドゴムとアンダートレッドゴムの合計質量(WT)に対するアンダートレッドゴムの質量(WU)の関係を特定化しているので、ウェットトラクション性、操縦安定性および転がり抵抗性がそれぞれ実用上十分なレベルに維持されていることが分かる。
これに対し、比較例1は、アンダートレッドゴムの60℃におけるtanδ(tanδ@60℃(UT))が本発明で規定する上限を超えているので、転がり抵抗性が悪化した。
比較例2は、(E’@20℃(UT))が本発明で規定する下限未満であるので、操縦安定性が悪化した。
比較例3は、(tanδ@60℃(UBF))/(tanδ@60℃(UT))および(E’@20℃(LBF))/(E’@20℃(UT))が本発明で規定する範囲外であるので、転がり抵抗性および操縦安定性が悪化した。
比較例4は、(WU)/(WT)が本発明で規定する上限を超えているので、ウェットトラクション性および操縦安定性が悪化した。
1 ビード部
2 サイドウォール
3 トレッド
30 キャップトレッドゴム
31 アンダートレッドゴム
4 カーカス層
5 ビードコア
6 ビードフィラー
62 上ビードフィラー
64 下ビードフィラー
7 ベルト層
8 ベルトクッション
9 インナーライナー

Claims (3)

  1. タイヤビード部に設けられたビードフィラーと、タイヤ接地面を構成するキャップトレッドゴムと、前記キャップトレッドゴムのタイヤ径方向内側に設けられたアンダートレッドゴムとを備える重荷重用空気入りタイヤにおいて、
    前記アンダートレッドゴムは、天然ゴムを含むジエン系ゴムを含有し、
    前記ジエン系ゴム100質量部中、ブタジエンゴムの占める割合が15質量部以下であり、
    前記アンダートレッドゴムは、前記ジエン系ゴム100質量部に対し、窒素吸着比表面積(NSA)が70〜130m/gのカーボンブラックを30質量部以上含み、
    前記アンダートレッドゴムは、60℃におけるtanδ(tanδ@60℃(UT))が0.03〜0.10であり、かつ20℃における貯蔵弾性率(E’@20℃(UT))が3.0〜5.5であり、
    前記ビードフィラーは、タイヤ径方向外側に位置する上ビードフィラーと、前記上ビードフィラーに対しタイヤ径方向内側に位置する下ビードフィラーとを備え、
    前記上ビードフィラーの60℃におけるtanδ(tanδ@60℃(UBF))と前記(tanδ@60℃(UT))が下記関係式(1)を満たし、
    前記下ビードフィラーの20℃における貯蔵弾性率(E’@20℃(LBF))と前記(E’@20℃(UT))が下記関係式(2)を満たし、かつ
    前記キャップトレッドゴムと前記アンダートレッドゴムの合計質量(WT)に対する前記アンダートレッドゴムの質量(WU)が下記関係式(3)を満たす
    ことを特徴とする重荷重用空気入りタイヤ。
    0.3≦(tanδ@60℃(UBF))/(tanδ@60℃(UT))≦1.3 (1)
    3.3≦(E’@20℃(LBF))/(E’@20℃(UT))≦6.0 (2)
    0.05≦(WU)/(WT)≦0.45 (3)
  2. 前記カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)が、90〜120m/gであることを特徴とする請求項1に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
  3. 前記カーボンブラックの配合量が、前記ジエン系ゴム100質量部に対し、35〜50質量部であることを特徴とする請求項1または2に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
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