以下、本発明を図面に従って説明する。本発明にかかる自動車用スマートフォンホルダ(以下、単に「ホルダ」という。)10は、ダッシュボードなどの設置面Xに取り付けて使用されるもので、取付基台12、アーム14および保持部材16により大略構成されている。図1は、本発明にかかるホルダ10を示す斜視図であり、図2は、ホルダ10の分解斜視図である。
取付基台12は、設置面(ここでは、ダッシュボード)Xの表面形状に沿って成形された板状のもので、その上面中央部分から取付基台12の前縁を突き抜けて前方に延出されている。取付基台12の設置面Xへの取付状態では、アーム支持部材12aが運転席側に向かって延設されている。
アーム支持部材12aの先端部分は、その上面部分が段状に切り欠かれており、この段状切り欠き部分には、上面に開口するアーム取付凹所12bが形成されている(図2参照)。アーム取付凹所12bの底面であって互いに対向する隅部には、係止孔12cがそれぞれ形成されている。
アーム14は、取付基台12に取り付けられ、後述する保持部材16を回転可能に支持するためのもので、本実施例では、アーム14がアーム本体14aとカバー部材14bとに2分割されており(図3参照)、アーム本体14aの背面側にカバー部材14bを取り付けることでアーム14が構成される。
アーム14(より詳しくは、アーム本体14a)の下端部には、アーム支持部材12aのアーム取付凹所12bに嵌まり込む差込部14cが形成されており、この差込部14cの両脇には、一対の係止片14dが、アーム取付凹所12bの係止孔12cと対応する位置にそれぞれ形成されている。
各係止片14dの下端部には、外方に向かって突出する係止爪14eが形成されており、係止片14dをアーム取付凹所12bの係止孔12cに挿入したときに、係止爪14eが係止孔12cの孔縁に係止されることでアーム14を取付基台12のアーム支持部材12aに取り付けることができるようになっている。
アーム本体14aの上端部前面には、保持部材16を回転可能に支持する円柱状の保持部材取付部14fが、前方に向かって突設されている。保持部材取付部14fの外面は、基端部から先端部に向かうにしたがって段状に縮径している。保持部材取付部14fの基端部を大径部分14f1、先端部分を小径部分14f2とする。この大径部分14f1は、後述する保持部材本体28を構成している背面部材34の円形リブ34gに挿入されている。この円形リブ34gは大径部分14f1に対して軸受けの働きをなす。
そして、小径部分14f2の外周面には、係止凸部14jが形成されており、この小径部分14f2は後述する回転ギア26に挿入され、回転ギア26の内周面に設けられた切り欠き溝26b内に係止凸部14jが位置するようになっている。
保持部材取付部14fには、その背面側に開口する弾発バネ収容凹所14gが形成されており、弾発バネ収容凹所14gの穴底中央部分には、ボルト挿通孔14hが形成されている。
円柱状の保持部材取付部14fの前面には、4本の突条14iがボルト挿通孔14hを中心として放射状に所定間隔を隔てて(本実施例では90度間隔で上下左右にて十字状に)形成されている。そして後述する保持部材16の仕切り板36cに設けた十字状に凹設された係合凹溝36fに上記突条14iが嵌り込んでいる。アーム14に対して保持部材16が回転させられると、後述する弾発バネ18の作用で回転に伴って出没するようになっている。
上記弾発バネ収容凹所14gには、弾発バネ18が収容されており、更にこの弾発バネ収容凹所14gから突出している弾発バネ18の突出端に平座金20が配され、締付ボルト22の脚部を保持部材取付部14fの背方から平座金20の中心孔20aおよび弾発バネ18に挿通するとともに、その挿通端部を後述する保持部材16における取付支柱36dの雌ネジ36eに螺着する。これにより、保持部材16がアーム14に対して回動自在、且つ、弾発的に取り付けられることになる。
保持部材16は、スマートフォンPを保持する部分であり、保持部材本体28、第1の挟持部材30および第2の挟持部材32により大略構成されている。
保持部材本体28は、背面部材34と、前面部材36とを前後に重ね合わせた構造のもので、背面部材34と前面部材36とで第1の挟持部材30および第2の挟持部材32を保持部材本体28の横方向にスライド可能に保持している。
保持部材16がアーム14に取り付けられた状態において、保持部材取付部14f(より詳しくは、保持部材取付部14fの先端である小径部分14f2)の外周には、リング状の回転ギア26が回動可能に装着されている。回転ギア26は、後述するように、保持部材16を回転させた時の回転運動を、第1の挟持部材30の保持部材16内に引き込む直線運動へと変換するものである。回転ギア26の外周面下方部分には、歯26aが形成されており、この歯26aが後述する第1の挟持部材30の下方の挿入プレート42bの上面に刻設されたラック歯42cと噛合している。
なお、上述した保持部材取付部14f、回転ギア26および回転ギア26と噛合するラック歯42cが、保持部材16を回転させた時の回転運動を第1の挟持部材30の保持部材16内に引き込む直線運動へと変換する「挟持機構部」として機能する。
回転ギア26の内周面の上部を周方向に部分的に切り欠くことによって円弧状の切り欠き溝26bが形成されており、この切り欠き溝26bに保持部材取付部14fの係止凸部14jが嵌り込んでいる。この円弧状の切り欠き溝26bは、アーム本体14aの小径部分14f2の周りに形成されている。
背面部材34は、正面視略矩形状にて前面側が開口している皿状の部材である。背面部材34の一方(正面視左側)の側壁34aには、第1の挟持部材30が挿通可能な第1の開口部38が設けられており、反対側は、第2の挟持部材32を配置できるよう、全体が大きく開口している。この部分を、第2の開口部39とする。
背面部材34の背板34bの中央部には、回転ギア配置孔34cが形成されており、この回転ギア配置孔34c内に上述した回転ギア26が配置されている。
回転ギア配置孔34cの孔縁には、円形リブ34gが突設されており、この円形リブ34gに保持部材取付部14fの大径部分14f1の外面が回転自在に挿入されている。上記のように円形リブ34gが大径部分14f1の軸受けとなる。
回転ギア配置孔34cの側方(第2の挟持部材32側)には、背面部材34の背板34bを部分的に切り欠くことによってストッパー抜止片34dと、上下一対のストッパー片34e,34eとが形成されている。ストッパー抜止片34dは、上下一対のストッパー片34e,34eの間に(換言すれば、ストッパー抜止片34dの両脇に上下一対のストッパー片34e,34eがストッパー抜止片34dに沿って)形成されている。
各ストッパー片34e,34eは、保持部材本体28に対する第2の挟持部材32の近接離間方向への横移動を規制するもので、ストッパー抜止片34dに平行に伸びた部分から保持部材本体28の前方(前面部材36側)に向かって延びた屈曲部分34fとで略L字形に形成されている。その屈曲部分34fの外面には屈曲部分34fの長手方向に伸びた噛合突起34f1が突設され、第2の挟持部材32のラック歯52cとそれぞれ係合している(図2(B)、図8(A)参照)。
ストッパー抜止片34dには、ストッパー40が取り付けられている。ストッパー40は、第2の挟持部材32のラック歯52cとストッパー片34e,34eとの係合状態をロック・アンロックするもので、操作板40aと、操作板40aから垂設された2本の脚40b,40bと、各脚40b同士を連結する連結板40cとを有しており、これらの部材に囲まれた抜止片取付空間40dにストッパー抜止片34dが挿入されている。
従って、脚40b,40bは、屈曲部分34fの内面に沿ってスライド可能に配設されることになる。操作板40aの両端部は、指で摘まみやすいよう、背方に一段下がっている。そして、操作板40aを指で操作し、ストッパー40を保持部材本体28の背面部材34に押し込んだり、引き出したりすることが出来るようになっている。
ストッパー40が保持部材本体28内に押し込まれた状態では、図8(A)に示すように、各脚40b,40bがストッパー片34e,34eの屈曲部分34fに沿って、且つ、その全長に亘って配置されており、これにより、ストッパー片34e,34eの屈曲部分34fの噛合突条34f1のラック歯52cから離脱する方向への撓みが規制される(ロック状態)
一方、ストッパー40が保持部材本体28から手前に引き出された状態では、図8(B)に示すように、各脚40b,40bの位置が後退し、各ストッパー片34e,34eの屈曲部分34fはフリーとなっており、これにより、ストッパー片34e,34eの屈曲部分34fの噛合突条34f1がラック歯52cから離脱する方向に撓むことができるようになる(解除状態)。
前面部材36は、背面部材34の前面開口部を覆う板状の前面パネル36aと、前面パネル36aの下端縁から垂設された左右一対の支持脚36bとを有する。
前面パネル36aの背面側(背面部材34に面する側)の中心部分には、仕切り板36cが前面パネル36aの背方にて前面パネル36aとの間に所定の隙間を隔てて配置されており、この仕切り板36cと前面パネル36aとの間の隙間に、後述する第2の挟持部材32における第2の幅調整部材52の上下一対の挿入プレート52aが挿入されている。
仕切り板36cの背側には、第1の挟持部材30の二股に分かれた上下一対の挿入プレート42bが配置されており、この挿入プレート42bの間に円筒状の取付支柱36dが背方に向けて突設されている。取付支柱36dの中心の孔には、雌ネジ36eが刻設されており、この雌ネジ36eに締付ボルト22の先端が螺着されている。
そして、この仕切り板36cには、取付支柱36dを中心として4本の係合凹溝36fが放射状に等間隔にて十字状(90°で上下左右方向に)に凹設されており、この係合凹溝36fに保持部材取付部14fの十字状の突条14iが嵌り込んでいる。この時、後述するようにホルダ10を設置面に設置した状態で、保持部材16が垂直に立っており、保持部材16を回すと突条14iが係合凹溝36fから離脱し、90°回転させた時に隣接の係合凹溝36fに突条14iが嵌り込んで保持部材16の横向き状態を維持する。
また、取付支柱36dの周囲には、該取付支柱36dを中心とする円周上に複数(本実施例では4つ)の回転ギア装着片36jが仕切り板36c上に等角度間隔(90度間隔で±45°方向)で突設されており、この4つの回転ギア装着片36jで囲まれた空間に回転ギア26が嵌め込まれている(図2参照)。
前面部材36の背面側であって仕切り板36cの上下両側には、第1の挟持部材30の挿入プレート42bならびに第2の挟持部材32の挿入プレート52aの保持部材本体28に対する近接離間方向への移動をガイドする上下一対のガイドプレート36gがそれぞれ形成されている。また、前面パネル36aの前面には、化粧パネル36hが取り付けられている。
各支持脚36bは、保持部材16にてスマートフォンPを保持する際、これを下方にて支持するもので、その下端部が前方に向かってL字型に屈曲している。前方に向かってL字型に屈曲している部分がスマートフォンPの下端を受ける受け脚36kである。支持脚36b同士は、その下端部において接続部材36iを介して連結されている。
第1の挟持部材30は、後述する第2の挟持部材32と協働してスマートフォンPを左右両側から挟持するもので、第1の幅調整部材42と、第1の側面保持部材44とで大略構成されている。
第1の幅調整部材42は、角筒状の支持部42aと、支持部42aから延設され二股に分かれた挿入プレート42bとからなる横向きY字状の部材で、二股に分かれた挿入プレート42bが上述したように、仕切り板36cの背面側にて取付支柱36dを間に挟むようにして配置されている。
二股に分かれた挿入プレート42bのうち、下側の挿入プレート42bの移動方向に伸びた上面には、ラック歯42cが形成されており、このラック歯42cに上述した回転ギア26の歯26aが噛合している。
第1の幅調整部材42の支持部42aは、保持部材本体28の第1の開口部38に位置しており、この支持部42aの側方に開口したスライド孔42a1に後述する第1の側面保持部材44の支持部材46の挿入部46a(後述)がスライド可能に収容されている。
第1の幅調整部材42において、挿入プレート42bと支持部42aとの境界部分(即ち、挿入プレート42bの二股となっている部分の基部)には、係止ピン42dが突設されており、この係止ピン42dに弾発バネ50の一端が係止されている。
第1の側面保持部材44は、支持部材46と爪部材48とで大略構成されている。支持部材46は、挿入部46aと爪部材取付部46bとを略L字状に組み合わせることによって形成されている。
挿入部46aは、第1の幅調整部材42の角筒状部分である支持部42aのスライド孔42a1にスライド自在に挿入できるよう、その外形が支持部42aのスライド孔42a1の内面形状に合わせて形成されている。挿入部46aの底面は凹設されており、この凹設部分における爪部材取付部46bの近傍に係止ピン46cが突設されている。そして、この係止ピン46cに、弾発バネ50の他端がスライド孔42a1を通って係止されている。なお、弾発バネ50の一端は、上述したように、第1の幅調整部材42の係止ピン42dに係止されており、弾発バネ50は、自然長よりも伸びた状態で係止されているので、第1の側面保持部材44には、弾発バネ50の弾発力によって常時、第1の幅調整部材42側に引き寄せる方向の力が付与されることになる。
支持部材46の爪部材取付部46bは、その外面が外方に向かって凸湾曲し、且つ、長手方向に伸びた蒲鉾形をなしており、保持部材16と対向する側の内側面には、多数の平行凹凸溝51aが前後方向(即ち、爪部材取付部46bの長手方向)に一定間隔で並んだ平行凹凸溝帯51が形成されている。
爪部材48は、その先端部分が内側に向けてL字形に屈曲している板状の部材で、その屈曲部分には、当接部材49が取り付けられている。また、爪部材48における当接部材49との境界部分には、スマートフォンPの出し入れ時にスマートフォンPが衝突して当接部材49が位置ズレするのを防止するための位置ズレ防止部材48aが形成されている。位置ズレ防止部材48aは、爪部材48の屈曲部分に当接部材49を上下から挟むように突設されている(図5)。
当接部材49は、保持部材16に収容されているスマートフォンPを挟持する際にスマートフォンPと当接する部材で、ゴム等の弾性部材により形成されており、スマートフォンPとの当接面49aには、スマートフォンPの保持方向(図1における上下方向)に沿ってV字溝49bが形成されている。V字溝49bは、スマートフォンPの側壁を挟持した際に、スマートフォンPの側壁とは接触するが、スマートフォンPの物理ボタンBとは接触することがないような寸法に設定されている(図6参照)。即ち、スマートフォンPの側壁は、外側に突畝状に膨らんだ断面凸円弧状であり、物理ボタンBはその凸円弧の中央に設けられている。V字溝49bは、凸円弧の中央の物理ボタンBを避け、その両側の側面に当接するようになっている。
爪部材48の背面側には、スライド溝48cが形成されており、このスライド溝48cに爪部材取付部46bが挿入されている。スライド溝48cの溝底には、これを部分的(長手方向に沿ってコ字形)に切り欠くことによってその先端にストッパー48dが形成されており、このストッパー48dの先端突出部48eが爪部材取付部46bの平行凹凸溝51aに嵌り込んでいる。
第2の挟持部材32は、第2の幅調整部材52と、2個の第2の側面保持部材54とにより大略構成されている。
第2の幅調整部材52は、上下一対の挿入プレート52a,52aと、これらを互いに接続する連結部材52bとを有し、この上下一対の挿入プレート52a,52aが前面部材36の前面パネル36aと仕切り板36cとの間の隙間に配置されている。
各挿入プレート52a,52aの互いに対向する側面には、ラック歯52cがそれぞれ形成されており、このラック歯52cにストッパー片34eの屈曲部分34fの噛合突条34f1がそれぞれ係合している。
連結部材52bは、細長の中空のブロック状部材で、挿入プレート52a,52aが設けられているのとは反対側の側面には、外方に開口する細長の挿入穴52dが上下に所定間隔を隔てて形成されており、各挿入穴52dに後述する第2の側面保持部材54がそれぞれ挿入されている。
連結部材52bの背面側には、上下方向に延びるガイド孔52eが2つ所定間隔を隔てて形成されており、各挿入穴52dの内側面であってガイド孔52eの反対側の内面には、ガイド孔52eに沿って多数の平行凹凸溝56aが一定間隔で並んで形成された平行凹凸溝帯56が形成されている。
各第2の側面保持部材54は、移動部材58と爪部材60とで大略構成されている。移動部材58は、スライド部58aと爪部材取付部58bとが略L字形に組み合わされた形状をなしている。スライド部58aは、連結部材52bの挿入穴52dに挿入される板状部分で、ガイド孔52eに嵌まり込むガイド突条58cと、平行凹凸溝56aに弾発的に係合する係合突起58dとが形成されている。ガイド突条58cは、上記のストッパー48dと同様、コ字形に切り欠くことによってその先端にガイド突条58cが形成されており、このガイド突条58cが係合突起58dに弾性を以って係脱して第2の側面保持部材54の位置保持を行うようになっている。
爪部材取付部58bは、その外面が外方に向かって凸湾曲し、長手方向に伸びた蒲鉾形をなしており、保持部材16と対向する側の内側面には、多数の平行凹凸溝62aが前後方向に一定間隔で並んだ平行凹凸溝帯62が形成されている。
爪部材60は、その先端部分が内側に向けてL字形に屈曲している板状の部材で、その屈曲部分には、当接部材61が取り付けられている。また、爪部材60における当接部材61との境界部分には、スマートフォンPの出し入れ時にスマートフォンPが衝突して当接部材61が位置ズレするのを防止するための位置ズレ防止部材60aが当接部材61の上下に形成され、当接部材61を上下から挟むようになっている。
当接部材61は、保持部材16に収容されているスマートフォンPを挟持する際にスマートフォンPと当接する部材で、ゴム等の弾性部材により形成されており、スマートフォンPとの当接面61aには、第1の挟持部材30と同様、スマートフォンPの保持方向(図1における上下方向)に沿ってV字溝61bが形成されている。V字溝61bは、スマートフォンPの側壁を挟持した際に、スマートフォンPの側壁とは接触するが、第1の挟持部材30と同様、スマートフォンPの物理ボタンBとは接触することがないような寸法に設定されている(図7参照)。
爪部材60の背面側には、スライド溝60cが形成されており、このスライド溝60cに爪部材取付部58bが挿入されている。スライド溝60cの溝底には、これを部分的(長手方向にコ字形)に切り欠くことによってその先端にストッパー60dが形成されており、このストッパー60dの先端突出部60eが爪部材取付部58bの平行凹凸溝62aに嵌り込んでいる。
以上のように構成されているホルダ10をダッシュボードのような設置面Xに取り付ける際は、取付基台12の底面に図示しない粘着テープを貼り付けて、これを設置面Xに押し付ける。これにより、ホルダ10の設置面Xへの取り付けが完了する(図5参照)。
次に、ホルダ10の使用方法について説明する。スマートフォンPをホルダ10に装着する際は、まず、図5のように支持脚36bが下方に位置している状態(スマートフォンPの縦置き状態)とする。この時点では、アーム本体14aの突条14iが前面部材36の係合凹溝36fに嵌り込み、縦置き状態が維持される。そして、この状態では、第1の挟持部材30は、保持部材本体28から最大に突き出された状態となっている。第1の挟持部材30の第1の側面保持部材44は、弾発バネ50にて支持部42a内に引き込まれている。
この状態において、第2の挟持部材32を保持部材本体28に対して近接離間させることによって、第1の挟持部材30と第2の挟持部材32との間隔をスマートフォンPの横幅に合わせて調整する。具体的には、以下のような作業が行われる。
まず、ストッパー40の操作板40aを指先で摘まんでこれを引き出す。すると、ストッパー40の脚40bが背方へと移動して背面部材34のストッパー片34eがフリーとなり、撓むことができる状態となる(図8(B)参照)。
この状態で、第2の挟持部材32を保持部材本体28から引き出す(或いは保持部材本体28内に押し込む)と、挿入プレート52aのラック歯52cと係合しているストッパー片34eが撓んでラック歯52cとの係脱が繰り返され、第2の挟持部材32を任意の位置に移動させることができる。このようにして第1の挟持部材30と第2の挟持部材32との間隔を、スマートフォンPの横幅よりもやや広めに設定する。
第1の挟持部材30、第2の挟持部材32および支持脚36bの受け脚36kで囲まれた空間(以下、「スマートフォン収容空間A」と呼ぶ)内にスマートフォンPを収容する。即ち、この状態でスマートフォンPを第1の挟持部材30と第2の挟持部材32の当接部材49・61のV字溝49b・61bの間に挿入し、スマートフォンPの下端を受け脚36kで受ける。続いて、第2の挟持部材32を保持部材本体28内に押し込んで前記係脱を繰り返しつつスマートフォンPの両側面をV字溝49b・61bで挟み付ける。第2の挟持部材32の押し込み代は、第1の挟持部材30が若干押し出される位となる。これにより、弾発バネ50が作用してスマートフォンPの両側を第1の挟持部材30、第2の挟持部材32のV字溝49b・61bが弾性を持って挟持することになる。
第2の挟持部材32の位置決めが完了すると、ストッパー40を保持部材本体28側へ押し込み、噛合突条34f1をラック歯52cに噛合させた状態でストッパー40の脚40bをストッパー片34eに沿わせる。これにより、ストッパー片34eの内側への撓みが規制されて、第2の挟持部材32の位置が固定される(図8(A)参照)。
スマートフォンPの機械ボタンは、スマートフォンPの側面に設けられている。スマートフォンPの側面は、長手方向に伸びた断面円弧状の曲面で、機械ボタンの幅は、スマートフォンPの側面の厚さの1/3程度で、側面の中心線上に若干出っ張らせて設けられている。V字溝49b・61bの開き角度は、この機械ボタンに接触しない状態で機械ボタンの両側の側面部分に接触する角度、例えば、90°±10°で形成されている。これにより、スマートフォンPを縦置きの状態で使用することが可能となる(図5参照)。
上記第2の挟持部材32では、平行凹凸溝56aに対する係合突起58dの働き(脱作用)により、上下一対の第2の挟持部材32を拡縮方向に移動させることが出来る。これにより、両者の間隔を変えることが出来るので、必要に応じてスマートフォンPの長さに合わせて第2の挟持部材32の間隔を変更することになる。
また、スマートフォンPにカバーを取り付けている等の場合には、カバーが化粧パネル36hに接触して、スマートフォンPが第1の挟持部材30の爪部材48のV字溝49bや第2の挟持部材32の爪部材60のV字溝61bにうまく嵌まらない場合がある。この場合は、第1の挟持部材30にあっては支持部材46に対する爪部材48の、化粧パネル36hに対する近接離間方向の位置を調整(先端突出部48eの平行凹凸溝51aに対する係脱)し、第2の挟持部材32にあっては、移動部材58に対する爪部材60の近接離間方向の位置を調整することにより、化粧パネル36hとの間に隙間を設けることでスマートフォンPの側壁が第1の挟持部材30の爪部材48に形成されているV字溝49bや、第2の挟持部材32の爪部材60に形成されているV字溝61bに嵌まり込むようにすることができる。
なお、第2の挟持部材32の押し込みを行わず、そのままストッパー40による固定を行い、第1の挟持部材30と第2の挟持部材32との間の間隔をスマートフォンPの横幅よりも若干広めに設定しておけば、スマートフォンPの出し入れの際、第1の挟持部材30や第2の挟持部材32と干渉することなく、スムーズに作業を行うことができる。
次に、スマートフォンPを横向きに保持する方法について説明する。スマートフォンPを横向きに保持する際は、上述した縦向きに保持した状態(図9)から、保持部材16を90度回転させればよい。
本実施例では、図11に示すように、第1の挟持部材30が上方に位置し、第2の挟持部材32が下方に位置するよう、保持部材16を時計周り方向に回転させる。第2の挟持部材32は、上述したように、幅調整後は、ストッパー40によりその位置が固定されて移動しないため、保持部材16の回転時にスマートフォンPの自重や走行中の衝撃が加わっても落下することはない。
保持部材16に対して時計周り方向に回転させる方向の力を加えると、保持部材16は、アーム14の保持部材取付部14fを回転中心として回転し始める。
ここで、保持部材取付部14fは、弾発バネ18の弾発力を受けて、保持部材本体28側に常時押圧付勢された状態となっている。従って、保持部材16を回転させると、保持部材本体28の係合凹溝36fに嵌り込んでいる突条14iは、弾発バネ18の弾発力に抗して係合凹溝36fを乗り越え、仕切り板36cの表面を滑りつつ移動する。そして、隣の係合凹溝36fに差し掛かったところで、保持部材取付部14fが弾発バネ18の弾発力を受けて突条14iが隣の係合凹溝36f内に嵌まり込む。この状態が、保持部材16が90度回転した状態であり、これにより保持部材16が横向き状態となる。
また、上述した保持部材16の回転時には、第1の挟持部材30が保持部材16内に引き込まれ、第1の挟持部材30と第2の挟持部材32とでスマートフォンPが挟持固定されることになる。以下、説明する。
保持部材16を回転させる初期の段階では、(i)保持部材取付部14fが弾発バネ18の弾発力を受けて、保持部材本体28側に常時押圧付勢された状態となっており、回転ギア26が保持部材16に圧接されていること、(ii)保持部材取付部14fには、回転ギア26が装着されており、この回転ギア26の切り欠き溝26b内を保持部材取付部14fの係止凸部14jが移動できること、さらには、(iii)回転ギア26の歯26aが、第1の挟持部材30を構成している第1の幅調整部材42のラック歯42cと噛合していることから、保持部材取付部14fに回動可能に装着されている回転ギア26は、保持部材16と一体となって保持部材取付部14fの周囲を空転する。回転ギア26は保持部材16と一体となって回転するので、回転ギア26の歯26aと第1の幅調整部材42のラック歯42cとの位置関係は維持されたままであり、第1の挟持部材30はこの段階ではまだ保持部材本体28内に引き込まれない。
保持部材16を回転させていくと、回転ギア26の切り欠き溝26b内を移動している保持部材取付部14fの係止凸部14jは、やがて切り欠き溝26bの終端26cと当接する(図10参照)。
この状態でさらに保持部材16を回転させると、アーム本体14aの保持部材取付部14fの固定している係止凸部14jに切り欠き溝26bの終端が当接してそれ以上の回転が規制され、保持部材16だけが回転することになる。
保持部材16だけが保持部材取付部14fに対して回転すると、回転ギア26の歯26aと、第1の幅調整部材42のラック歯42cとが噛合していることにより、第1の挟持部材30が保持部材本体28の内部に引き込まれ、第1の挟持部材30と第2の挟持部材32とでスマートフォンPが更に挟持されることになる。
ここで、第1の挟持部材30ならびに第2の挟持部材32のスマートフォンPとの当接面(より具体的に言えば、各当接部材49,61の当接面49a,61a)には、上記のようにV字溝49b、61bがそれぞれ形成されているので、スマートフォンPの外側面に設けられている物理ボタンB(音量ボタンや電源ボタン)部分を挟持したとしても、当該物理ボタンBがV字溝49b,61b内に嵌り込むので、物理ボタンBが不所望に押圧されるようなことはない。
第1の挟持部材30が保持部材16の内部に引き込まれると、第1の挟持部材30を構成している側面保持部材44は、スマートフォンPの側壁と当接してそれ以上の移動が規制され、弾発バネ50に抗して側面保持部材44が支持部42aから引き出されて第1の幅調整部材42だけが保持部材16内に引き込まれる。これにより、保持部材16を確実に90度回転させてスマートフォンPを横向き保持することができる(図11参照)。
なお、第1の幅調整部材42と第1の側面保持部材44とは、弾発バネ50を介して弾発的に接続されているので、第1の側面保持部材44が第1の幅調整部材42側に向けて常時引き寄せられており、この時の引き寄せ力が第1の挟持部材30と第2の挟持部材32とによるスマートフォンPの挟持力となり、スマートフォンPを横向きに保持した状態においてスマートフォンPをしっかりと挟持固定できる。
本実施例のホルダ10によれば、スマートフォンPを横向き状態で保持する際、第1の挟持部材30と第2の挟持部材32とでスマートフォンPを挟持することになるが、第1の挟持部材30ならびに第2の挟持部材32のスマートフォンPとの当接面(より具体的に言えば、各当接部材49,61の当接面49a,61a)には、V字溝49b、61bがそれぞれ形成されているので、スマートフォンPの外側面に設けられている物理ボタンB(音量ボタンや電源ボタン)部分を挟持したとしても、当該物理ボタンBがV字溝49b,61b内に嵌り込むので、物理ボタンBが不所望に押圧されるようなことはない。