JP2021022681A - 光電変換素子 - Google Patents

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Abstract

【課題】耐久性試験後に生じる正孔輸送層の劣化を抑え、光電変換効率の低下を抑えることができる光電変換素子を提供する。【解決手段】一対の電極101、105と、該電極に挟持された電子輸送層102と光電変換層103と正孔輸送層104とを含み、正孔輸送層は、電荷注入抵抗増大型のホール輸送材と、電荷再結合増大型のホール輸送材とを含む、光電変換素子により課題を解決する。【選択図】図3

Description

本発明は、太陽電池として有用な光電変換素子に関する。
太陽電池素子(光電変換素子とも称する)に用いられる光電変換層として、シリコン半導体を初め様々な提案がされている。このうち、ペロブスカイト型材料(PVSK型材料とも称する)を光電変換物質として用いる光電変換素子においては、正孔輸送層の劣化が問題になることが知られている。具体的には、85℃の暗所に240時間放置する試験後に生じる正孔輸送層の劣化である。正孔輸送層の劣化が起こると、当然ながら光電変換効率の低下をもたらすため、光電変換効率の低下を抑えることが課題として知られている。
正孔輸送層(ホール輸送層とも称する)に含まれる正孔輸送材料(ホール輸送材料とも称する)としては、2,2’,7,7’−テトラキス(N,N−ジ−p−メトキシフェニルアミノ)−9,9’−スピロビフルオレン](Spiro−OMeTAD)がその最も代表的なものとして知られている(例えば非特許文献1参照)。しかしながら、非特許文献1に記載されているように、Spiro−OMeTADを正孔輸送材料として正孔輸送層に含有させた光電変換素子は、様々な理由からその耐光性と耐熱性に大きな課題を有することが知られている。
また、他の代表的な正孔輸送材料としてポリトリアリールアミン(PTAA)が知られている(例えば、特許文献1及び非特許文献2参照)。そして特許文献1には、正孔輸送材料としてPTAAを用いた太陽電池は、比較的良好な耐久性を持つことが開示されている。また、非特許文献2では、PTAAを有する正孔輸送層の膜厚はわずか30−50nmのものが使用されることが開示される。この理由は、この正孔輸送材料にはPTAAのほかにリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドといった添加剤が付与されているものの、この正孔輸送層の抵抗率が非常に高い。そのため、膜厚が50nmよりも大きい場合、正孔輸送層の抵抗が太陽電池素子の特性に大きく影響を与え、光電変換効率が低下するためである。太陽電池パネルのような大面積のモジュールを工業的に連続生産するような場合に通常用いられる塗布プロセスでは、このような薄膜を容易に精度良く得ることは容易ではない。
そのため、一般に正孔輸送材料の膜厚が100nmを超える場合にはドーパントと呼ばれる酸化剤が添加され、このドーパントが主材料である有機半導体から電子を引き抜き正電荷を与えることにより、この導電性を増加させる手法が一般にとられる。PTAAの場合、例えば非特許文献3に示されるように、4−イソプロピル−4’−メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート(TPFB)をドーパントとして用いることが知られている。しかし、PTAAとTPFBとをともに用いた正孔輸送層を有する太陽電池素子の耐熱性についてはこれまで十分な知見は得られていない。
特開2017−126731号公報
Chemical Review、2019,1193036−3103 Science Vol.354、Issue6309、pp.206―209 Sci. Adv. 2017;3: e1701293
本発明では、耐久性試験後に生じる正孔輸送層の劣化を抑え、光電変換素子の光電変換効率の低下を抑えることを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討の結果、ホール輸送材料の劣化には2通りのパターンがあることを見出した。
すなわち、上述のSpiro−OMeTADは、環境試験として60℃90RHの暗所での耐久試験を行うと、図1に示す様な劣化を生じる。この様な劣化は、PVSK型材料が含まれる光電変換層とホール輸送層との界面での電荷の再結合が生じる「電荷再結合増大型」の劣化である。
「電荷再結合増大型」は、曲線因子が初期では0.65以上だが上述の耐久試験(60℃90RH)の結果、240時間以内に曲線因子が初期の9割未満に低下するような劣化であり、同期間中に短絡電流と開放電圧がそれぞれの初期値の9割以上、直列抵抗が10Ωcm未満を保つものとする。本明細書ではこのような劣化をするホール輸送物質を、「電荷再結合増大型」のホール輸送材と呼ぶ。
また別の劣化は図2に示す。
図2に示す別の劣化は、ホール輸送材料としてPTAAを用いた場合であり、PVSK型材料が含まれる光電変換層とホール輸送層との界面には問題を生じていないが、電極とホール輸送層との界面の抵抗が高くなってしまっている「電荷注入抵抗増大型」の劣化である。このタイプの劣化は、直列抵抗が初期では10Ωcm未満だが、上述の劣化試験(60℃90RH)の結果、240時間以内に10Ωcm以上に増大するような劣化で、同期間中に短絡電流と開放電圧がそれぞれの初期値の9割以上を保つものとする。本明細書ではこのような劣化をするホール輸送物質を、「電荷注入抵抗増大型」のホール輸送材と呼ぶ。
上述のような2パターンのホール輸送材の劣化があることから、「電荷注入抵抗増大型」のホール輸送材を、PVSK型材料が含まれる正孔輸送層の光電変換層側に、「電荷再結合増大型」のホール輸送材を、正孔輸送層の電極側に配置し、2層構造とすることが考えられる。しかしながら驚くべきことに、本発明者らの検討によれば、正孔輸送層をこれら2種のホール輸送材を含む混合層にすることで、両者の中間的な性能が得られるのではなく、どちらの劣化も抑えられてしまうという驚くべき結果を得て、本発明に到達した。すなわち本発明の要旨は、以下のものを含む。
[1]一対の電極と、該電極に挟持された電子輸送層と光電変換層と正孔輸送層とを含み、
前記正孔輸送層は、電荷注入抵抗増大型のホール輸送材と、電荷再結合増大型のホール輸送材とを含む、光電変換素子。
[2]光電変換層は、PVSK型光電変換材料を含む、[1]に記載の光電変換素子。
[3]前記正孔輸送層は、電荷注入抵抗増大型のホール輸送材と、電荷再結合増大型のホール輸送材とを、質量比が1:9から9:1の割合で含有する、[1]又は[2]に記載の光電変換素子。
[4]前記正孔輸送層は、電荷再結合増大型のホール輸送材の含有質量が、電荷注入抵抗増大型のホール輸送材の含有質量より多い、[1]〜[3]のいずれかに記載の光電変換素子。[5]少なくとも一つの前記ホール輸送材のイオン化エネルギーは4.5エレクトロンボルトよりも大きい、[1]〜[4]のいずれかに記載の光電変換素子。
[6]前記正孔輸送層に含まれるホール輸送材は有機化合物を含む、[1]〜[5]のいずれかに記載の光電変換素子。
[7]前記電荷注入抵抗増大型のホール輸送材と、前記電荷再結合増大型のホール輸送材とがともに有機化合物である、[1]〜[6]のいずれかに記載の光電変換素子。
[8]前記正孔輸送層は、添加剤を有する、[1]〜[7]のいずれかに記載の光電変換素子。[9]前記添加剤は、正孔輸送層の成膜前または成膜後で、少なくとも一つのホール輸送材との間で電荷移動反応を起こす、[8]に記載の光電変換素子。
[10]前記正孔輸送層は塗布法により成膜されたものである、[1]〜[9]のいずれかに記載の光電変換素子。
[11]前記正孔輸送層は、芳香族アミン骨格を有するホール輸送材を含む、[1]〜[10]のいずれかに記載の光電変換素子。
[12]前記正孔輸送層は、フルオレン骨格を有するホール輸送材を含む、[1]〜[11]のいずれかに記載の光電変換素子。
[13]前記フルオレン骨格がスピロ骨格の一部である、[12]に記載の光電変換素子。
[14]前記添加剤は、ホウ素化合物を含む、[8]〜[13]のいずれかに記載の光電変換素子。
[15]前記ホウ素化合物が、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラートである、[14]に記載の光電変換素子。
[16]前記正孔輸送層は、ポリトリアリールアミン及びSpiro−OMeTADを含む、請求項1〜15のいずれか1項に記載の光電変換素子。
本発明により、耐久性試験後に生じる正孔輸送層の劣化を抑え、光電変換効率の低下を抑えることができる光電変換素子を提供できる。
Spiro−OMeTADを含む正孔輸送層を備えた光電変換素子に対し、60℃90RHの暗所で耐久試験を行った結果を示すグラフである。 PTAAを含む正孔輸送層を備えた光電変換素子に対し、60℃90RHの暗所で耐久試験を行った結果を示すグラフである。 本実施形態の光電変換素子の一形態を模式的に示す図である。
以下、本発明について詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施形態の一例(代表例)であり、本発明はこれらの内容に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
本発明の一実施形態に係る光電変換素子は、一対の電極と、該電極に挟持された電子輸送層と光電変換層と正孔輸送層とを含む。そして、前記正孔輸送層は、電荷注入抵抗増大型のホール輸送材と、電荷再結合増大型のホール輸送材とを含む。以下、図を用いて本実施形態の光電変換素子の構成を説明する。
図3は、光電変換素子の一実施形態を模式的に表す断面図である。図3に示される光電変換素子は、一般的な薄膜太陽電池に用いられる光電変換素子の構造であるが、本実施形態に係る光電変換素子が図3に示される構造のものに限られるわけではない。図3に示す光電変換素子100においては、下部電極101、及び上部電極105で構成される一対の電極の間に、光電変換層103が位置している。また、光電変換素子100において、下部電極101と光電変換層103との間に、電子輸送層102が配置されており、また、上部電極105と光電変換層103との間に、正孔輸送層104が配置されている。さらに、図3に示すように、光電変換素子100が、基材106を有してもよく、絶縁体層
及び仕事関数チューニング層のようなその他の層を有していてもよい。
光電変換層103は光電変換が行われる層である。光電変換素子100が光を受けると、光が光電変換層103に吸収されてキャリアが発生し、発生したキャリアは下部電極101及び上部電極105から取り出される。
本実施形態において、光電変換層103は有機無機ハイブリッド型半導体材料を含有してもよい。有機無機ハイブリッド型半導体材料とは、有機成分と無機成分とが分子レベル又はナノレベルで組み合わせられた材料であって、半導体特性を示す材料のことを指す。
本実施形態において、有機無機ハイブリッド型半導体材料は、ペロブスカイト構造を有する化合物(以下、PVSK型光電変換材料と呼ぶことがある)であってよい。PVSK型光電変換材料とは、ペロブスカイト構造を有する半導体化合物のことを指す。PVSK型光電変換材料としては、特段の制限はないが、例えば、Galasso et al. Structure and
Properties of Inorganic Solids, Chapter 7 - Perovskite type and related structuresで挙げられているものから選ぶことができる。例えば、PVSK型光電変換材料としては、一般式AMXで表されるAMX型のもの又は一般式AMXで表されるAMX型のものが挙げられる。ここで、Mは2価のカチオンを、Aは1価のカチオンを、Xは1価のアニオンを指す。
1価のカチオンAに特段の制限はないが、上記Galassoの著書に記載されているものを用いることができる。より具体的な例としては、周期表第1族及び第13族乃至第16族元素を含むカチオンが挙げられる。これらの中でも、セシウムイオン、ルビジウムイオン、置換基を有していてもよいアンモニウムイオン又は置換基を有していてもよいホスホニウムイオンが好ましい。置換基を有していてもよいアンモニウムイオンの例としては、1級アンモニウムイオン又は2級アンモニウムイオンが挙げられる。置換基にも特段の制限はない。置換基を有していてもよいアンモニウムイオンの具体例としては、アルキルアンモニウムイオン又はアリールアンモニウムイオンが挙げられる。特に、立体障害を避けるために、3次元の結晶構造となるモノアルキルアンモニウムイオンが好ましく、安定性向上の観点からは、一つ以上のフッ素基を置換したアルキルアンモニウムイオンを用いることが好ましい。また、カチオンAとして2種類以上のカチオンの組み合わせを用いることもできる。
1価のカチオンAの具体例としては、メチルアンモニウムイオン、モノフッ化メチルアンモニウムイオン、ジフッ化メチルアンモニウムイオン、トリフッ化メチルアンモニウムイオン、エチルアンモニウムイオン、イソプロピルアンモニウムイオン、n−プロピルアンモニウムイオン、イソブチルアンモニウムイオン、n−ブチルアンモニウムイオン、t−ブチルアンモニウムイオン、ジメチルアンモニウムイオン、ジエチルアンモニウムイオン、フェニルアンモニウムイオン、ベンジルアンモニウムイオン、フェネチルアンモニウムイオン、グアニジウムイオン、ホルムアミジニウムイオン、アセトアミジニウムイオン又はイミダゾリウムイオン等が挙げられる。
2価のカチオンMにも特段の制限はないが、2価の金属カチオン又は半金属カチオンであることが好ましい。具体的な例としては周期表第14族元素のカチオンが挙げられ、より具体的な例としては、鉛カチオン(Pb2+)、スズカチオン(Sn2+)、ゲルマニウムカチオン(Ge2+)が挙げられる。また、カチオンMとして2種類以上のカチオンの組み合わせを用いることもできる。なお、安定な光電変換素子を得る観点からは、鉛カチオン又は鉛カチオンを含む2種以上のカチオンを用いることが特に好ましい。
1価のアニオンXの例としては、ハロゲン化物イオン、酢酸イオン、硝酸イオン、硫酸
イオン、ホウ酸イオン、アセチルアセトナートイオン、炭酸イオン、クエン酸イオン、硫黄イオン、テルルイオン、チオシアン酸イオン、チタン酸イオン、ジルコン酸イオン、2,4−ペンタンジオナトイオン又はケイフッ素イオン等が挙げられる。バンドギャップを調整するためには、Xは1種類のアニオンであってもよいし、2種類以上のアニオンの組み合わせであってもよい。一実施形態において、Xとしてはハロゲン化物イオン、又はハロゲン化物イオンとその他のアニオンとの組み合わせが挙げられる。ハロゲン化物イオンXの例としては、塩化物イオン、臭化物イオン又はヨウ化物イオン等が挙げられる。半導体のバンドギャップを広げすぎない観点から、ヨウ化物イオンを用いることが好ましい。
光電変換層103は、Xがハロゲン化物イオン、又はハロゲン化物イオンとその他のアニオンとの組み合わせである、ハライド系PVSK型光電変換材料を少なくとも含み、他のペロブスカイト半導体化合物を含有していてもよい。例えば、A、B及びXのうちの少なくとも1つが異なるPVSK型光電変換材料が光電変換層103に含まれていてもよい。また光電変換層103は、異なる材料を含み又は異なる成分を有する複数の層で形成される積層構造を有していてもよい。
ハライド系PVSK型光電変換材料の具体例としては、CHNHPbI、CHNHPbBr、CHNHPbCl、CHNHSnI、CHNHSnBr、CHNHSnCl、CHNHPbI(3−x)Cl、CHNHPbI(3−x)Br、CHNHPbBr(3−x)Cl、CHNHPb(1−y)Sn、CHNHPb(1−y)SnBr、CHNHPb(1−y)SnCl、CHNHPb(1−y)Sn(3−x)Cl、CHNHPb(1−y)Sn(3−x)Br、及びCHNHPb(1−y)SnBr(3−x)Cl、並びに、上記の化合物においてCHNHの代わりにCFHNH、CFHNH、又はCFNHを用いたもの、等が挙げられる。なお、xは0以上3以下、yは0以上1以下の任意の値を示す。
光電変換層103に含まれるPVSK型光電変換材料の量は、良好な半導体特性が得られるように、好ましくは50質量%以上であり、さらに好ましくは70質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上である。上限に特に制限はない。また、光電変換層103には、PVSK型光電変換材料に加えて添加剤が含まれていてもよい。添加剤の例としては、ハロゲン化物、酸化物、又は硫化物、硫酸塩、硝酸塩若しくはアンモニウム塩等の無機塩のような、無機化合物、又は有機化合物が挙げられる。
光電変換層103の厚さに特段の制限はない。より多くの光を吸収できる点で、光電変換層103の厚さは、一実施形態において10nm以上、別の実施形態において50nm以上、さらに別の実施形態において100nm以上、さらに別の実施形態において120nm以上である。一方で、直列抵抗が下がる点、又は電荷の取出し効率を高める点で、光電変換層103の厚さは、一実施形態において1500nm以下、別の実施形態において1000nm以下、さらに別の実施形態において600nm以下である。
光電変換層103の形成方法は特に限定されず、任意の方法を用いることができる。具体例としては、塗布法及び蒸着法(又は共蒸着法)が挙げられる。簡易に光電変換層103を形成できる点で、塗布法を用いることができる。例えば、PVSK型光電変換材料又はその前駆体を含有する塗布液を塗布し、必要に応じて加熱乾燥することにより光電変換層103を形成する方法が挙げられる。また、このような塗布液を塗布した後で、PVSK型光電変換材料の溶解性が低い溶媒をさらに塗布することにより、PVSK型光電変換材料を析出させることもできる。
PVSK型光電変換材料の前駆体とは、塗布液を塗布した後にPVSK型光電変換材料
へと変換可能な材料のことを指す。具体的な例として、加熱することによりPVSK型光電変換材料へと変換可能なPVSK型光電変換材料前駆体を用いることができる。例えば、一般式AXで表される化合物と、一般式MXで表される化合物と、溶媒と、を混合して加熱攪拌することにより、塗布液を作製することができる。この塗布液を塗布して加熱乾燥を行うことにより、一般式AMXで表されるPVSK型光電変換材料を含有する光電変換層103を作製することができる。溶媒としては、PVSK型光電変換材料及び添加剤が溶解するのであれば特に限定されず、例えばN,N−ジメチルホルムアミドのような有機溶媒が挙げられる。
塗布液の塗布方法としては任意の方法を用いることができるが、例えば、スピンコート法、インクジェット法、ドクターブレード法、ドロップキャスティング法、リバースロールコート法、グラビアコート法、キスコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアナイフコート法、ワイヤーバーバーコート法、パイプドクター法、含浸・コート法又はカーテンコート法等が挙げられる。
[1.2 電極]
電極は、光電変換層103における光吸収により生じた正孔及び電子を捕集する機能を有する。一実施形態に係る光電変換素子100は一対の電極を有し、一対の電極のうち一方を上部電極と呼び、他方を下部電極と呼ぶ。光電変換素子100が基材を有するか又は基材上に設けられている場合、基材により近い電極を下部電極と、基材からより遠い電極を上部電極と、それぞれ呼ぶことができる。また、透明電極を下部電極と、下部電極よりも透明性が低い電極を上部電極と、それぞれ呼ぶこともできる。図3に示す光電変換素子100は、下部電極101及び上部電極105を有している。
一対の電極としては、正孔の捕集に適したアノードと、電子の捕集に適したカソードとを用いることができる。この場合、光電変換素子100は、下部電極101がアノードであり上部電極105がカソードである順型構成を有していてもよいし、下部電極101がカソードであり上部電極105がアノードである逆型構成を有していてもよい。
一対の電極は、いずれか一方が透光性であればよく、両方が透光性であっても構わない。透光性があるとは、太陽光が40%以上透過することを指す。また、透明電極の太陽光線透過率は70%以上であることが、より多くの光が透明電極を透過して活性層103に到達するために好ましい。光の透過率は、分光光度計(例えば、日立ハイテク社製U−4100)で測定できる。
下部電極及び/又は上部電極を透明電極とする場合、下部電極及び/又は上部電極は、上述の可視光線透過率を有してさえいれば、透明導電層又は金属層による単層で形成されていてもよいし、透明導電層及び金属層との積層により形成されていてもよい。しかしながら、透明電極を透明導電層のみで形成すると、抵抗が高く、良好な導電性を示さない傾向があるために変換効率が低下する場合がある。また、透明電極を薄い金属層のみにより形成する場合、金属層は腐食しやすく、経時的に光電変換素子が劣化する傾向があるために、透明電極とする電極は、透明導電層と金属層の積層により形成することが好ましい。
透明導電層に用いられる材料としては、特段の制限はないが、スズをドープしたインジウム酸化物(ITO)、亜鉛をドープしたインジウム酸化物(IZO)、タングステンをドープしたインジウム酸化物(IWO)、亜鉛とアルミニウムとの酸化物(AZO)、酸化インジウム(In)等である。これらの中でも、スズをドープしたインジウム酸化物(ITO)、亜鉛をドープしたインジウム酸化物(IZO)、タングステンをドープしたインジウム酸化物(IWO)、亜鉛とスズの複合酸化物(ZTO)等の非晶質性酸化物を用いることが好ましい。
また、透明導電層は、シート抵抗が100Ω/□以下であることが好ましく、50Ω/□以下であることがさらに好ましく、一方、0.1Ω/□以上であることが好ましい。
金属層の材料は、特段の制限はなく、例えば、金、白金、銀、アルミニウム、ニッケル、チタン、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ナトリウム、クロム、銅、コバルトの等の金属又はその合金が挙げられる。これらのなかでも、金属層を形成する材料は、高い電気伝導性を示すとともに、薄膜における可視光線透過率の高い銀又は銀の合金であることが好ましい。なお、銀の合金としては、硫化又は塩素化の影響を受けにくく薄膜としての安定性を向上させるために、銀と金の合金、銀と銅の合金、銀とパラジウムの合金、銀と銅とパラジウムの合金、銀と白金の合金等が挙げられる。
金属層の膜厚は、透明電極として70%以上の可視光線透過率を維持できる限りにおいて、特段の制限はないが、良好な導電性を得るために1nm以上であることが好ましく、5nm以上であることがより好ましく、一方、光透過率が低下して活性層に入射する光量が低下するのを防ぐために、15nm以下であることが好ましく、10nm以下であることがより好ましい。
上述の通り、一対の電極は、一方の電極が透明電極であれば、他方の電極は必ずしも透明電極でなくてもよく、非透明電極であってもよい。非透明電極を用いる場合、特段の制限はないが、例えば、上述したような金属層を厚膜化して形成することにより、非透明電極を形成することができる。なお、下部電極及び上部電極を共に透明電極とする場合、下部電極及び上部電極はともに、金属層と透明導電層の積層構造であることが好ましい。
下部電極及び上部電極の全体の厚さは、特段の制限はなく、光学特性及び電気特性を考慮して任意で選択すればよい。なかでも、シート抵抗を抑えるために、下部電極及び上部電極のそれぞれの膜厚は、10nm以上であることが好ましく、20nm以上であることがより好ましく、50nm以上であることがさらに好ましく、一方、高い透過率を維持するために、10μm以下であることが好ましく、1μm以下であることがより好ましく、500nm以下であることがさらに好ましい。
下部電極及び上部電極の形成方法は、特段の制限はなく、使用する材料に合わせて公知の方法により形成することができる。コーティングにおける膜形成ステップとしては、例えば、蒸着法、スパッタ法等の真空法、又はナノ粒子や前駆体を含有するインクを塗布する湿式法が挙げられる。なお、下部電極及び上部電極に対して表面処理を行うことにより、電気特性や濡れ特性等を改良してもよい。
[1.3 正孔輸送層]
正孔輸送層104は、光電変換層103と電極105との間に位置する層である。正孔輸送層104は、例えば、光電変換層103から上部電極105へのキャリア移動効率を向上させるために用いることができる。
本実施形態では、正孔輸送層は、電荷注入抵抗増大型のホール輸送材と、電荷再結合増大型のホール輸送材と、を含む。
電荷注入抵抗増大型のホール輸送材とは、以下の劣化を生じるホール輸送物質である;
直列抵抗が初期では10Ωcm未満だが、60℃90RHの劣化試験の結果、240時間以内に10Ωcm以上に増大するような劣化であって、同期間中に短絡電流と開放電圧がそれぞれの初期値の9割以上を保つ劣化。
電荷再結合増大型のホール輸送材とは、以下の劣化を生じるホール輸送物質である;
曲線因子が初期では0.65以上だが、60℃90RHの耐久試験の結果、240時間以内に曲線因子が初期の9割未満に低下するような劣化であって、同期間中に短絡電流と開放電圧がそれぞれの初期値の9割以上、直列抵抗が10Ωcm未満を保つ劣化。
電荷注入抵抗増大型のホール輸送材としては、上記劣化を生じるものであれば特段限定されるものではなく、有機化合物であってよく、芳香族アミン骨格を有する有機化合物であることが好ましく、典型的には、ポリトリアリールアミン(PTAA)が挙げられる。
電荷再結合増大型のホール輸送材としては、上記劣化を生じるものであれば特段限定されるものではなく、有機化合物であってよく、フルオレン骨格を有する有機化合物であることが好ましく、該フルオレン骨格がスピロ骨格の一部であることがより好ましく、典型的には、2,2’,7,7’−テトラキス(N,N−ジ−p−メトキシフェニルアミノ)−9,9’−スピロビフルオレン](Spiro−OMeTAD)が挙げられる。
正孔輸送層中の、電荷注入抵抗増大型のホール輸送材と、電荷再結合増大型のホール輸送材との含有比(質量比)は、9:1〜1:9の範囲内であることが好ましく、8:2〜2;8の範囲内であることがより好ましく、電荷再結合増大型のホール輸送材の含有質量が、電荷注入抵抗増大型のホール輸送材より多いことが好ましい。
正孔輸送層中の、ホール輸送材の含有量は、電荷注入抵抗増大型のホール輸送材と、電荷再結合増大型のホール輸送材との合計で、通常30質量%以上であり、50質量%以上であることが好ましく、また通常100質量%以下である。ホール輸送材の含有量を上記範囲とすることで、正孔輸送層全体の導電率を良好に保ち、初期の直列抵抗及びFFが改善され得る。
また、正孔輸送層に含まれるホール輸送材のイオン化エネルギーは、4.5エレクトロンボルト以上であることが好ましい。
正孔輸送層は、上記ホール輸送材の他、添加剤を含有してもよい。添加剤としては、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラートなどのホウ素化合物、 トリス[1−(メトキシカルボニル)−2−(トリフルオロメチル)−エタン−1,2−ジチオレン]モリブデンなどのモリブデン化合物、2,3,4,6−テトラフルオロ−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタンといったテトラシアノキノジメタン骨格を有する有機化合物などが挙げられる。
添加剤は、正孔輸送層の成膜前または成膜後で、少なくとも一つのホール輸送材との間で電荷移動反応を起こすことが好ましい。
添加剤の添加量としては、正孔輸送層中、通常0質量%以上であり、0.01質量%以上であることが好ましく、通常70質量%以下であり、50質量%以下であることが好ましい。
添加剤は正孔輸送層の膜厚が厚い時に使用することが好ましく、特に限定されないが、正孔輸送層の膜厚を50nm以上、特に100nm以上にする場合に添加することが好ましい。正孔輸送層の膜厚が100nm以上である場合には、添加剤を含有しないと膜の導電率が不足する傾向になるため、添加剤を含有することで、膜の導電率を改善することができる。
正孔輸送層は、光電変換層と同様、塗布法で形成されることが好ましい。塗布法の詳細は、上記光電変換層の説明の欄で述べたとおりである。
正孔輸送層の厚みは特段限定されないが、通常10nm以上であり、20nm以上であることが好ましく、また通常1000nm以下であり、50nm以下であることが好ましい。
[1.4 電子輸送層]
電子輸送層102は、光電変換層103と電極101との間に位置する層である。電子
輸送層102は、例えば、光電変換層103から下部電極101へのキャリア移動効率を向上させるために用いることができる。
本実施形態では、電子輸送層102の構成部材及びその製造方法について特段の制限はなく、周知技術を用いることができる。例えば、国際公開第2013/171517号、国際公開第2013/180230号又は特開2012−191194号公報等の公知文献に記載の部材及びその製造方法を使用することができる。
[1.4 基材]
光電変換素子100は、通常は支持体となる基材106を有する。基材106の材料は、本発明の効果を著しく損なわない限り特に限定されず、例えば、国際公開第2013/171517号、国際公開第2013/180230号又は特開2012−191194号公報等の公知文献に記載の材料を使用することができる。
[1.5 その他の層]
光電変換素子100は、その他の層を有していてもよい。例えば、光電変換素子100は、電極の仕事関数を調整する仕事関数チューニング層を、下部電極101と電子輸送層102との間、又は上部電極105と正孔輸送層104との間に有していてもよい。また、光電変換素子100は、下部電極101と光電変換層103との間、又は上部電極105と光電変換層103との間に、水分等が光電変換層103に到達することを抑制する薄い絶縁体層を有していてもよい。また、耐久性を向上させるため、光電変換素子100をさらに封止してもよい。例えば、上部電極105にさらに封止板を積層し、基材106と封止板とを接着剤で固定することにより、光電変換素子100を封止することができる。
[2.光電変換素子の作製方法]
上述の方法に従って、光電変換素子100を構成する各層を形成することにより、光電変換素子100を作製することができる。光電変換素子100を構成する各層の形成方法に特段の制限はなく、シートツゥーシート(枚葉)方式、又はロールツゥーロール方式で形成することができる。
なお、ロールツゥーロール方式とは、ロール状に巻かれたフレキシブルな基材を繰り出して、間欠的、或いは連続的に搬送しながら、巻き取りロールにより巻き取られるまでの間に加工を行う方式である。ロールツゥーロール方式によれば、kmオーダの長尺基板を一括処理することが可能であるため、ロールツゥーロール方式はシートツゥーシート方式に比べて量産化に適している。一方、ロールツゥーロール方式で各層を成膜しようとすると、その構造上、成膜面とロールとが接触することにより膜に傷がついたり、部分的に剥がれてしまったりする場合がある。
また、上部電極105を積層した後に、光電変換素子100を一実施形態において50℃以上、別の実施形態において80℃以上、一方、一実施形態において300℃以下、別の実施形態において280℃以下、さらに別の実施形態において250℃以下の温度範囲において、加熱することができる(この工程をアニーリング処理工程と称する場合がある)。アニーリング処理工程を50℃以上の温度で行うことは、光電変換素子100の各層間の密着性、例えば電子輸送層102と下部電極101、電子輸送層102と光電変換層103等の層間の密着性が向上する効果が得られる。各層間の密着性が向上することにより、光電変換素子の熱安定性や耐久性等が向上しうる。アニーリング処理工程の温度を300℃以下にすることは、光電変換素子100に含まれる有機化合物が熱分解する可能性が低くなる。アニーリング処理工程においては、上記の温度範囲内において異なる温度を用いた段階的な加熱を行ってもよい。
加熱時間としては、熱分解を抑えながら密着性を向上させるために、一実施形態において1分以上、別の実施形態において3分以上、一方、一実施形態において180分以下、別の実施形態において60分以下である。アニーリング処理工程は、太陽電池性能のパラメータである開放電圧、短絡電流及びフィルファクターが一定の値になったところで終了させることができる。また、アニーリング処理工程は、構成材料の熱酸化を防ぐ上でも、常圧下、かつ不活性ガス雰囲気中で実施することができる。加熱方法としては、ホットプレート等の熱源に光電変換素子を載せてもよいし、オーブン等の加熱雰囲気中に光電変換素子を入れてもよい。また、加熱はバッチ式で行っても連続方式で行ってもよい。
[3.光電変換特性]
光電変換素子100の光電変換特性は使用する光源毎に対して次のようにして求めることができる。光電変換素子100に光を照射して、電流−電圧特性を測定する。得られた電流−電圧曲線から、光電変換効率(PCE)、短絡電流密度(Jsc)、開放電圧(Voc)、フィルファクター(FF)、直列抵抗、シャント抵抗といった光電変換特性を求めることができる。
光電変換特性を求める際に使用する光源は太陽光、および、人工的な光源を用いることができる。人工的な光源は、ハロゲンランプ、キセノンランプ、メタルハライドランプ、蛍光ランプ、白色LEDランプ、電球色LEDランプ、水銀ランプ、ナトリウムランプ、および、これらのランプを組合せたものが挙げられる。
一般的に、擬似太陽光としては光源としてキセノンランプやメタルハライドランプが用いられ、AM1.5Gのスペクトルに近似した条件の光を照射強度100mW/cmで光電変換特性を得るための測定光源として使用する。また、低照度光源としては特段の制限はないが、白色LEDランプが用いられ、1〜5000Lxの照度での光電変換特性を得るための測定光源として使用する。
光電変換素子100の光電変換効率は、特段の制限はないが、一実施形態において3%以上、別の実施形態において5%以上、さらに別の実施形態において8%以上である。一方、上限に特段の制限はなく、高ければ高いほどよい。また、光電変換素子100のフィルファクターは、特段の制限はないが、一実施形態において0.6以上、別の実施形態において0.7以上、さらに別の実施形態において0.8以上である。一方、上限に特段の制限はなく、高ければ高いほどよい。
本実施形態に係る光電変換素子は、温度85℃の試験環境に1日間おいた後の、最大出力(Pmax)の維持率は、60%以上であり、一実施形態において80%以上であり、別の実施形態において90%以上であり、さらに別の実施形態において95%以上である。例えば、光電変換素子を作製した直後の初期Pmaxと、この光電変換素子を試験環境においた後のPmaxとに基づいて、Pmax維持率を求めることができる。また、Pmax維持率は、上記のように光電変換素子を封止した後で測定することができる。ここで、Pmax維持率とは、試験環境におく前後でのPmaxに基づいて、以下のように算出することができる。
Pmax維持率(%)=((試験環境においた後のPmax)/(試験環境におく前のPmax))×100
また、温度85℃の試験環境に長時間(例えば、60時間以上)おいた後の、Pmax維持率は、40%以上であり、一実施形態において60%以上であり、別の実施形態において80%以上であり、さらに別の実施形態において90%以上であり、さらに別の実施形態において95%以上である。
光電変換素子100は、太陽電池、なかでも薄膜太陽電池の太陽電池素子として好適に使用され得る。薄膜太陽電池として使用する場合、公知の構成を適用することができる。
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明の範囲は、以下の実施例により限定されるものではない。
[塗布液の調製]
(電子輸送層用塗布液の調製)
酸化スズ(IV)15%水分散液(Alfa Aesar社製)に超純水を加えることにより、7.5%の酸化スズ水分散液を作製した。
(光電変換層用塗布液の調製)
ヨウ化鉛(II)をバイアル瓶に量りとりグローブボックスに導入した。ヨウ化鉛(II)の濃度が1.3mol/Lとなるように溶媒としてN,N−ジメチルホルムアミドを加え、その後、100℃で1時間加熱撹拌することで光電変換層用塗布液1を作製した。
次に、別のバイアル瓶にホルムアミジンヨウ化水素酸塩(FAI)、メチルアミン臭化水素酸塩(MABr)、及びメチルアミン塩化水素酸塩(MACl)を10:1:1.5の質量比となるよう量りとり、グローブボックスに導入した。そこへ溶媒としてイソプロピルアルコールを加えることにより、FAI、MABr、及びMAClの合計濃度が0.49mol/Lである光電変換層用塗布液2を調製した。
(正孔輸送層用塗布液1の調製)
15mgのポリ[ビス(4−フェニル)(2,4,6−トリメチルフェニル)アミン](PTAA、自社製)と、5mgの[2,2’,7,7’−テトラキス(N,N−ジ−p−メトキシフェニルアミノ)−9,9’−スピロビフルオレン](Spiro−OMeTAD、Aldrich社製)と、2.25mgの4−イソプロピル−4’−メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート(TPFB,TCI社製)とをバイアル瓶に量りとり、グローブボックスに導入した。そこへ溶媒として0.5mLのオルトジクロロベンゼンを加えた。次に、得られた混合液を150℃で1時間加熱撹拌することにより、正孔輸送層用塗布液1を調製した。
[実施例1]
パターニングされた酸化インジウムスズ(ITO)透明導電膜を備えるガラス基板(ジオマテック社製)に対して、超純水を用いた超音波洗浄、窒素ブローによる乾燥、及びUV−オゾン処理を行った。
次に、上記のように調製した電子輸送層用塗布液を、室温で、上記の基板上に2000rpmの速度でスピンコートすることにより、厚さ約35nmの電子輸送層を形成した。その後、基板をホットプレート上150℃で10分間加熱した。
次に、基板をグローブボックスに導入し、100℃に加熱した光電変換層用塗布液1を電子輸送層上に150μL滴下し、2000rpmの速度でスピンコートした。次に、基板をホットプレート上100℃で10分間加熱アニールすることにより、ヨウ化鉛層を形成した。次に、基板が室温に戻った後、ヨウ化鉛層上に光電変換層塗布液2(120μL)を2000rpmの速度でスピンコートし、150℃で20分間加熱することにより、有機無機ペロブスカイトの活性層(厚さ650nm)を形成した。
次に、基板が室温に戻った後、光電変換層上に、正孔輸送層塗布液(200μL)を1
000rpmの速度でスピンコートし、さらにホットプレート上90℃で5分間加熱することで、正孔輸送層(170nm)を形成した。
次に、正孔輸送層上に、金属層上にスパッタリング法により厚さ約30nmのIZOを成膜させ、金属酸化物層を形成した。さらに、金属酸化物層上に、抵抗加熱型真空蒸着法により厚さ約100nmの銀を蒸着させ、金属層を形成し、上部電極とした。以上のようにして、光電変換素子を作製した。
[実施例2]
(正孔輸送層用塗布液2の調製)
10mgのPTAA(自社製)と、10mgのSpiro−OMeTAD(Aldrich社製)と、2.25mgのTPFB(TCI社製)とをバイアル瓶に量りとり、グローブボックスに導入した。そこへ溶媒として0.5mLのオルトジクロロベンゼンを加えた。次に、得られた混合液を150℃で1時間加熱撹拌することにより、正孔輸送層用塗布液2を調製した。
(光電変換素子の作成)
正孔輸送層を、上記正孔輸送層用塗布液2を用いて形成したことを除き、実施例1と同様に光電変換素子を作成した。
[実施例3]
(正孔輸送層用塗布液3の調製)
5mgのPTAA(自社製)と、15mgのSpiro−OMeTAD(Aldrich社製)と、2.25mgのTPFB(TCI社製)とをバイアル瓶に量りとり、グローブボックスに導入した。そこへ溶媒として0.5mLのオルトジクロロベンゼンを加えた。次に、得られた混合液を150℃で1時間加熱撹拌することにより、正孔輸送層用塗布液3を調製した。
(光電変換素子の作成)
正孔輸送層を、上記正孔輸送層用塗布液3を用いて形成したことを除き、実施例1と同様に光電変換素子を作成した。
[比較例1]
(正孔輸送層用塗布液4の調製)
64mgのポリ[ビス(4−フェニル)(2,4,6−トリメチルフェニル)アミン](PTAA)と、7.2mgの4−イソプロピル−4’−メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート(TPFB,TCI社製)とをバイアル瓶に量りとり、グローブボックスに導入した。そこへ溶媒として1.6mLのオルトジクロロベンゼンを加えた。次に、得られた混合液を150℃で1時間加熱撹拌することにより、正孔輸送層用塗布液4を調製した。
(光電変換素子の作成)
正孔輸送層を、上記正孔輸送層用塗布液4を用いて形成したことを除き、実施例1と同様に光電変換素子を作成した。
[比較例2]
(正孔輸送層用塗布液5の調製)
20mgの[2,2’,7,7’−テトラキス(N,N−ジ−p−メトキシフェニルアミノ)−9,9’−スピロビフルオレン](Spiro−OMeTAD、Aldrich社製)と、2mgのTPFBとをバイアル瓶に量りとり、グローブボックスに導入した。
そこへ溶媒として0.5mLのオルトジクロロベンゼンを加えた。次に、得られた混合液を150℃で1時間加熱撹拌することにより、正孔輸送層用塗布液5を調製した。
(光電変換素子の作成)
正孔輸送層を、上記正孔輸送層用塗布液5を用いて形成のものとしたことを除き、実施例1と同様に光電変換素子を作成した。
[光電変換素子の評価]
実施例1乃至実施例3、及び比較例1と比較例2で得られた光電変換素子に1mm角のメタルマスクを付け、ITO電極と上部電極との間における電流−電圧特性を測定した。測定にはソースメーター(ケイスレー社製,2400型)を用い、照射光源としてはエアマス(AM)1.5G、放射照度100mW/cmのソーラシミュレータを用いた。この測定結果から、開放電圧Voc(V)、短絡電流密度Jsc(mA/cm)、形状因子FF、及び光電変換効率PCE(%)を算出した。光電変換素子を作製した直後の測定結果に基づいて算出されたこれらの値を表1に示す。
Figure 2021022681
ここで、開放電圧Vocとは電流値=0(mA/cm)の際の電圧値であり、短絡電流密度Jscとは電圧値=0(V)の際の電流密度である。形状因子FFとは内部抵抗を表すファクターであり、最大出力をPmaxとすると次式で表される。
FF = Pmax/(Voc×Jsc)
また、光電変換効率PCEは、入射エネルギーをPinとすると次式で与えられる。
PCE = (Pmax/Pin)×100
= (Voc×Jsc×FF/Pin)×100
また、中央部分が掘り下げられているガラスと光電変換素子のガラス基板とをシール材(光硬化樹脂)によって貼り合わせることで、得られた比較例1及び2の光電変換素子を封止し、温度60℃の暗所に240時間静置し、同様の方法で電流−電圧特性を測定して光電変換効率PCEを算出し、試験前後での光電変換効率から、光電変換効率の維持率を算出した。光電変換効率の維持率を表2に示す。
Figure 2021022681
また、実施例1乃至3及び比較例1の素子を温度85℃の暗所に240時間静置し、同様の方法で電流−電圧特性を測定して光電変換効率PCEを算出し、試験前後での光電変換効率から、光電変換効率の維持率を算出した。光電変換効率の維持率を表3に示す
Figure 2021022681
表1に示すように、初期の変換効率は、実施例1乃至3と比較例1と2で大きな差は見られなかった。また、表2に示すように、60度での耐熱性試験での光電変換効率の維持率は比較例1と比較例2でほとんど変わらないことがわかる。ところが、表3で示すように、85度の耐熱性試験においては比較例1に比べて、PTAAとSpiro−OMeTADの二つを混合した正孔輸送層を有する実施例1乃至3の光電変換効率の維持率が大きく向上していることがわかる。これらの実施例の中でPTAAとSpiro−OMeTADの重量混合比が1対3である実施例3が維持率0.93と最も高く、次いでこれらの重量混合比が1対1である実施例2の維持率が0.87、さらに次いでこれらの重量混合比が3対1である実施例1の維持率が0.80である。
この理由としては、PTAAとSpiro−OMeTADでは熱劣化の機構が異なり、二つの材料を混合することで、互いの劣化部位を補完し合えるためであると考えられる。例えば、PTAAは上部電極に近い部位がより多く劣化し、Spiro−OMeTADは活性層に違い部位がより多く劣化する、などということが考えられる。
以上の結果から、正孔輸送層に少なくとも二つの異なる半導体材料、即ち電荷注入抵抗増大型のホール輸送材と、電荷再結合増大型のホール輸送材と、を用いることで、光電変換素子が、光電変換効率の高い維持率(耐熱性)を備えることが分かる。
100 光電変換素子
101 下部電極
102 電子輸送層
103 活性層
104 正孔輸送層
105 上部電極
106 基材

Claims (16)

  1. 一対の電極と、該電極に挟持された電子輸送層と光電変換層と正孔輸送層とを含み、
    前記正孔輸送層は、電荷注入抵抗増大型のホール輸送材と、電荷再結合増大型のホール輸送材とを含む、光電変換素子。
  2. 光電変換層は、PVSK型光電変換材料を含む、請求項1に記載の光電変換素子。
  3. 前記正孔輸送層は、電荷注入抵抗増大型のホール輸送材と、電荷再結合増大型のホール輸送材とを、質量比が1:9から9:1の割合で含有する、請求項1又は2に記載の光電変換素子。
  4. 前記正孔輸送層は、電荷再結合増大型のホール輸送材の含有質量が、電荷注入抵抗増大型のホール輸送材の含有質量より多い、請求項1〜3のいずれか1項に記載の光電変換素子。
  5. 少なくとも一つの前記ホール輸送材のイオン化エネルギーは4.5エレクトロンボルト以上である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の光電変換素子。
  6. 前記正孔輸送層に含まれるホール輸送材は有機化合物を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の光電変換素子。
  7. 前記電荷注入抵抗増大型のホール輸送材と、前記電荷再結合増大型のホール輸送材とがともに有機物である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の光電変換素子。
  8. 前記正孔輸送層は、添加剤を有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の光電変換素子。
  9. 前記添加剤は、正孔輸送層の成膜前または成膜後で、少なくとも一つのホール輸送材との間で電荷移動反応を起こす、請求項8に記載の光電変換素子。
  10. 前記正孔輸送層は塗布法により成膜されたものである、請求項1〜9のいずれか1項に記載の光電変換素子。
  11. 前記正孔輸送層は、芳香族アミン骨格を有するホール輸送材を含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の光電変換素子。
  12. 前記正孔輸送層は、フルオレン骨格を有するホール輸送材を含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載の光電変換素子。
  13. 前記フルオレン骨格がスピロ骨格の一部である、請求項12に記載の光電変換素子。
  14. 前記添加剤は、ホウ素化合物を含む、請求項8〜13のいずれか1項に記載の光電変換素子。
  15. 前記ホウ素化合物が、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラートである、請求項14に記載の光電変換素子。
  16. 前記正孔輸送層は、ポリトリアリールアミン及びSpiro−OMeTADを含む、請求項1〜15のいずれか1項に記載の光電変換素子。
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