JP2021017397A - 単斜晶系リチウムニッケルマンガン系複合酸化物及びその製造方法 - Google Patents

単斜晶系リチウムニッケルマンガン系複合酸化物及びその製造方法 Download PDF

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田渕 光春
Mitsuharu Tabuchi
光春 田渕
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Abstract

【課題】作動電圧、初期及び充放電サイクル後の充放電容量、並びに放電レート特性が既存のNMC系正極活物質と比較して同等又はそれ以上の電極活物質を提供する。【解決手段】単斜晶Li2MnO3型層状岩塩型構造を有するリチウムニッケルマンガン系複合酸化物において、以下の(1)〜(3):(1)X線回折パターンにおいて、I020/I20−2,131が、Ni/(Ni+Mn)比(y)が0.190以上0.225未満の場合は15.0%以下であり、yが0.225以上0.275未満の場合は8.7%以下であり、yが0.275〜0.325の場合は5.0%以下である、(2)gtotalが、前記yが0.190以上0.225未満の場合は0.720以上であり、前記yが0.225〜0.325の場合は0.790以上である、(3)g4g−g2bが、−0.10〜0.20であるの少なくとも1つを満たす。【選択図】図1

Description

本発明は、単斜晶系リチウムニッケルマンガン系複合酸化物及びその製造方法に関する。
ノートパソコン、スマートフォン等に搭載される二次電池として有用なリチウムイオン二次電池は、電気自動車及びプラグインハイブリッド車のバッテリー、並びに電力負荷平準化システム等用のシステム構成電源としても重要視され、開発が進められている。
リチウムイオン二次電池は、正極として主にリチウム遷移金属複合酸化物、負極として炭素材料、及び有機電解液を構成要素とすることが一般的である。正極活物質は、リチウム供給源として機能し、正極活物質におけるリチウムイオン脱離量及び挿入量と、単電池内における正極量との積が単電池の電池容量を、正極活物質における作動電圧が単電池電圧を決定づけることから、最も重要な構成部材の一つである。
現在大型リチウムイオン二次電池正極活物質として一般的に活用されているのが、ニッケルマンガンコバルト酸リチウム系(NMC系)正極活物質とニッケル酸リチウム系正極活物質である。ニッケル酸リチウム正極は、NMC系正極活物質と対比し、正極活物質重量あたりの容量が大きいが、充電時の安全性の問題がある。従ってNMC系正極は大容量角形電池用として実用化されているが、ニッケル酸リチウム系正極活物質は小容量円筒型電池用としてのみ実用化されている。
両材料系正極活物質中には、資源として偏在性が高く、かつ希少なコバルト元素が含まれており、コバルト原料価格の不安定性や高騰のリスク低減のために、コバルトフリーの充放電特性に優れた正極活物質開発が強く求められている。
本発明者は、単斜晶LiMnO層状岩塩型構造を有する、リチウム鉄マンガン系複合酸化物(特許文献1)及びリチウムニッケルマンガン系複合酸化物(非特許文献1及び2)が優れた充放電特性を示すことを明らかにしているが、リチウムニッケルマンガン系複合酸化物の中で、どのような材料を選択すれば特に作動電圧、初期及び充放電サイクル後の充放電容量、並びに放電レート特性に優れる二次電池を製造できるかについては、依然として不明である。
特開2009−179501号公報
田渕光春他、Electrochimica Acta,210(2016)105−110. 田渕光春他、第59回電池討論会講演要旨集3D21、(2018)
上記のような事情に鑑み、本発明の目的とするところは、作動電圧、初期及び充放電サイクル後の充放電容量、並びに放電レート特性が既存のNMC系正極活物質と比較して同等又はそれ以上の電極活物質を提供することにある。
本発明者は上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、リチウムニッケルマンガン系複合酸化物において、Ni及びMnからなる遷移金属イオンの分布又は存在量を所定の条件とすることにより、上記課題を解決できることを見出した。本発明者は、かかる知見に基づきさらに研究を重ね、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、以下のリチウムニッケルマンガン系複合酸化物及びその製造方法を包含する。
項1.一般式(1):
Li1+x(NiMn1−y1−x (1)
[式中、x及びyはそれぞれ、0<x<1/3、0.190≦y≦0.325を示す。]
で表され、単斜晶LiMnO型層状岩塩型構造を有するリチウムニッケルマンガン系複合酸化物であって、以下の(1)〜(3):
(1)前記単斜晶LiMnO型層状岩塩型構造の結晶相のX線回折パターンにおいて、(020)面のピークのピーク高さの、(20−2)面及び(131)面のピークのピーク高さに対する割合が、yが0.190以上0.225未満の場合は15.0%以下であり、yが0.225以上0.275未満の場合は8.7%以下であり、yが0.275〜0.325の場合は5.0%以下である、
(2)前記単斜晶LiMnO型層状岩塩型構造内におけるLi層及び遷移金属−Li層内の遷移金属の平均存在量の和(gtotal)が、前記yが0.190以上0.225未満の場合は0.720以上であり、前記yが0.225〜0.325の場合は0.790以上である、及び
(3)前記単斜晶LiMnO型層状岩塩型構造内における遷移金属含有層内での六角網目規則構造において、六角網目格子構成位置(4g位置)の遷移金属占有率(g4g)から六角網目格子中心位置(2b位置)の遷移金属占有率(g2b)を引いた値(g4g−g2b)が、−0.10〜0.20である
の少なくとも1つを満たすことを特徴とする、リチウムニッケルマンガン系複合酸化物。
項2.前記(1)を満たす、項1に記載のリチウムニッケルマンガン系複合酸化物。
項3.前記単斜晶LiMnO型層状岩塩型構造内におけるLi層及び遷移金属−Li層内の遷移金属の平均存在量の和(gtotal)が、前記yが0.190以上0.225未満の場合は0.720以上であり、前記yが0.225〜0.325の場合は0.790以上である、項2に記載のリチウムニッケルマンガン系複合酸化物。
項4.前記(2)を満たす、項1に記載のリチウムニッケルマンガン系複合酸化物。
項5.前記単斜晶LiMnO型層状岩塩型構造内における遷移金属含有層内での六角網目規則構造において、六角網目格子構成位置(4g位置)の遷移金属占有率(g4g)から六角網目格子中心位置(2b位置)の遷移金属占有率(g2b)を引いた値(g4g−g2b)が、−0.10〜0.20である、項2〜4のいずれか1項に記載のリチウムニッケルマンガン系複合酸化物。
項6.前記(3)を満たす、項1に記載のリチウムニッケルマンガン系複合酸化物。
項7.前記yが0.225〜0.325である、項6に記載のリチウムニッケルマンガン系複合酸化物。
項8.前記単斜晶LiMnO型層状岩塩型構造の結晶相、又は前記単斜晶LiMnO型層状岩塩型構造の結晶相と立方晶岩塩型構造の結晶相との混合相により構成される、項1〜7のいずれか1項に記載のリチウムニッケルマンガン系複合酸化物。
項9.項1〜8のいずれか1項に記載のリチウムニッケルマンガン系複合酸化物を含有する、リチウムイオン二次電池用電極活物質。
項10.項9に記載のリチウムイオン二次電池用電極活物質を備えるリチウムイオン二次電池。
項11.項1〜8のいずれか1項に記載のリチウムニッケルマンガン系複合酸化物の製造方法であって、
マンガン化合物及びニッケル化合物をアルカリ処理することにより沈殿を形成する工程1、
前記沈殿を酸化させて複合酸化物前駆体を得る工程2、
リチウム化合物存在下、前記複合酸化物前駆体を酸化雰囲気中で熱処理する工程3、及び
前記工程3で得られる生成物を、不活性雰囲気下で前記工程3よりも高温条件で熱処理する工程4
を有することを特徴とする、製造方法。
項12.前記工程4で得られる生成物を、還元雰囲気下にて前記工程4よりも低温条件で熱処理する工程5をさらに有する、項11に記載の製造方法。
本発明によれば、作動電圧、初期及び充放電サイクル後の充放電容量、並びに放電レート特性が既存のNMC系正極活物質と比較して同等又はそれ以上の電極用材料を提供することができる。
(a)本発明のリチウムニッケルマンガン系複合酸化物の結晶構造のb−c面配列図。(b)本発明のリチウムニッケルマンガン系複合酸化物の結晶構造のa―b面上の遷移金属層内の配列図。 CuKα線を用いた実施例1のリチウムニッケルマンガン系複合酸化物の実測(+)及び計算(実線)X線回折図。 CuKα線を用いた実施例2のリチウムニッケルマンガン系複合酸化物の実測(+)及び計算(実線)X線回折図。 CuKα線を用いた比較例1のリチウムニッケルマンガン系複合酸化物の実測(+)及び計算(実線)X線回折図。 実施例1の複合酸化物を正極活物質としたリチウムイオン二次電池の充放電特性。 実施例2の複合酸化物を正極活物質としたリチウムイオン二次電池の充放電特性。 比較例1の複合酸化物を正極活物質としたリチウムイオン二次電池の充放電特性。 実施例1の複合酸化物を正極活物質としたリチウムイオン二次電池の放電レート特性。 実施例2の複合酸化物を正極活物質としたリチウムイオン二次電池の放電レート特性。 比較例1の複合酸化物を正極活物質としたリチウムイオン二次電池の放電レート特性。 CuKα線を用いた実施例3のリチウムニッケルマンガン系複合酸化物の実測(+)及び計算(実線)X線回折図。 CuKα線を用いた実施例4のリチウムニッケルマンガン系複合酸化物の実測(+)及び計算(実線)X線回折図。 CuKα線を用いた比較例2のリチウムニッケルマンガン系複合酸化物の実測(+)及び計算(実線)X線回折図。 実施例3の複合酸化物を正極活物質としたリチウムイオン二次電池の充放電特性。 実施例4の複合酸化物を正極活物質としたリチウムイオン二次電池の充放電特性。 比較例2の複合酸化物を正極活物質としたリチウムイオン二次電池の充放電特性。 実施例3の複合酸化物を正極活物質としたリチウムイオン二次電池の放電レート特性。 実施例4の複合酸化物を正極活物質としたリチウムイオン二次電池の放電レート特性。 比較例2の複合酸化物を正極活物質としたリチウムイオン二次電池の放電レート特性。
本明細書において、「含有」は、「含む(comprise)」、「実質的にのみからなる(consist essentially of)」、及び「のみからなる(consist of)」のいずれも包含する概念である。また、本明細書において、数値範囲を「A〜B」で示す場合、A以上B以下を意味する。
(1.リチウムニッケルマンガン系複合酸化物)
本発明のリチウムニッケルマンガン系複合酸化物は、下記一般式(1):
Li1+x(NiMn1−y1−x (1)
[式中、x及びyはそれぞれ、0<x<1/3、0.190≦y≦0.325を示す。]
で表される。
本発明のリチウムニッケルマンガン系複合酸化物は、単斜晶LiMnO型層状岩塩型構造を有するリチウムニッケルマンガン系複合酸化物である。
単斜晶LiMnO型層状岩塩型構造は、P.Strobel et al.,J.Solid State Chem.,75,90−98,(1988).に記載されている下記(a)の空間式で表わされる空間群の結晶構造を有する。
Figure 2021017397
ここで、本発明のリチウムニッケルマンガン系複合酸化物における第1の態様(要件(3))においては、前記単斜晶LiMnO型層状岩塩型構造内における遷移金属含有層内での六角網目規則構造において、六角網目格子構成位置の遷移金属占有率(g4g)から六角網目格子中心位置の遷移金属占有率(g2b)を引いた値(g4g−g2b)が−0.10以上0.17以下である。この第1の態様における本発明のリチウムニッケルマンガン系複合酸化物は、図1にあるように、Ni及びMnからなる遷移金属(TM)イオンが、公知のLiMnOとは異なる分布を有する。
図1(a)は層状岩塩型構造全体を表示し、図1(b)は、図1(a)のTM−Li層を90°回転させて得られるTM−Li層内の陽イオン配列を示す。図1(a)において、酸化物イオン(大きな灰色の丸)層を介して遷移金属層とリチウム層が交互に積層する点については、従来のNMC正極等の六方晶層状岩塩型結晶構造(下記(b)の空間式で表される空間群)と同様であるが、リチウム層及び遷移金属層内の陽イオン分布が既存正極と異なる。
Figure 2021017397
また、従来のNMC正極等の六方晶層状岩塩型結晶構造において、リチウム層及び遷移金属層内の陽イオン格子位置はそれぞれ一種類であるが、第1の態様における本発明の単斜晶層状岩塩型結晶構造においては、リチウム層及び遷移金属層内の陽イオン格子位置はそれぞれ二種類存在する。
図1(a)のリチウム層において格子位置は、2c及び4h位置に対応し、TM−Li層において格子位置は、図1(b)に示すように、4g及び2b位置に対応する。第1の態様における本発明のリチウムニッケルマンガン系複合酸化物はこの遷移金属層内の遷移金属イオン分布に特徴がある。
図1(b)に示すように4g位置が六角網目格子構成位置に相当し、2b位置が六角網目格子中心位置に相当する。理想的なLiMnO構造においては4g位置にのみ遷移金属イオンが入り、2b位置にはリチウムイオンが入るが、実際には両格子位置に遷移金属イオンが占有しうる。
本発明の第1の態様において、X線リートベルト法によって得られる4g位置の遷移金属イオン占有率(g4g)と2b位置の遷移金属イオン占有率(g2b)との差(g4g−g2b)が小さい。(g4g−g2b)の値は、−0.10〜0.20であり、0〜0.17であることが好ましい。(g4g−g2b)が−0.10未満であると、高価数のMn源が必要となりMn源の選択肢が狭くなり工業的に不利となってしまう。一方、(g4g−g2b)が0.17より大きくなると、所定の初期及び充放電サイクル後の充放電容量、並びに高放電レート特性の試料が得られなくなってしまう。
また、前記単斜晶LiMnO型層状岩塩型構造内にはLi層に2c及び4h位置に遷移金属が存在し、遷移金属−Li層内には前述のように4g及び2b位置に遷移金属が存在する。組成式あたりの遷移金属量(gtotal)は、Li層内平均遷移金属量((2g4h+g2c)/3)と遷移金属−Li層内平均遷移金属量((2g4g+g2b)/3)の和で定義される。この値を可能な限り大きくすることも充放電特性(特に初期及び充放電サイクル後の充放電容量、並びに放電レート特性)改善のためには重要である。一方でこの値は組成式あたりのNiイオン量yが小さくなるほど小さくなるので、y値によって最適値が異なる。具体的には、第2の態様(要件(2))における本発明のリチウムニッケルマンガン系複合酸化物においては、y値が0.225以上(0.225〜0.325)の場合、gtotal値は0.790以上、好ましくは0.795〜0.900である。一方y値が0.190以上0.225未満の場合は、gtotal値は0.720以上、好ましくは0.725〜0.800である。このgtotal値が好ましい範囲より低くなると所定の初期及び充放電サイクル後の充放電容量、並びに高放電レート特性の試料が得られなくなってしまう。
また、本発明のリチウムニッケルマンガン系複合酸化物は、CuKα線を用いたX線回折パターンにおいて2θ=20°付近に見られる六角網目構造に起因する(020)面のピークのピーク高さと2θ=45°付近に見られる(20−2)面及び(131)面のピークの重なりからなる単一のピークの高さで除して得られる、X線ピーク強度の割合ができるだけ低くなることが好ましい。このX線ピーク強度の割合はy値が大きくなるほど小さくなる傾向があるためy値によって最適値が異なる。このため、第3の態様(要件(1))における本発明のリチウムニッケルマンガン系複合酸化物においては、yが0.190以上0.225未満の場合、このX線ピーク強度の割合は15.0%以下、好ましくは11.0%以下である。当該割合が15.0%を超えると、所望の初期及び充放電サイクル後の充放電容量、並びに高放電レート特性を有する試料が得られなくなってしまう。なお、yが0.190以上0.225の場合における当該割合の下限値としては特に限定はなく、例えば、8.0%とすることが好ましい。また、第3の態様(要件(1))における本発明のリチウムニッケルマンガン系複合酸化物においては、yが0.225以上0.275未満の場合、このX線ピーク強度の割合は8.70%以下、好ましくは8.40%以下である。こちらについても、当該割合が8.70%を超えると、所望の初期及び充放電サイクル後の充放電容量、並びに高放電レート特性を有する試料が得られなくなってしまう。なお、yが0.225以上0.275未満の場合における当該割合の下限値としては特に限定はなく、例えば、7.0%とすることが好ましい。また、第3の態様(要件(1))における本発明のリチウムニッケルマンガン系複合酸化物においては、yが0.275〜0.325の場合、このX線ピーク強度の割合は5.0%以下、好ましくは4.7%以下である。こちらについても、当該割合が5.0%を超えると、所望の初期及び充放電サイクル後の充放電容量、並びに高放電レート特性を有する材料が得ることができなくなってしまう。なお、yが0.275〜0.325の場合における当該割合の下限値としては特に限定はなく、例えば、3.5%とすることが好ましい。
また、一般式(1)において、xは過剰リチウム量を示し、具体的には、0<x<1/3である。xの値が1/3を超えると、構造中にリチウムが導入されず不純物相として生成物中に残留しかつリチウムを多量に使用する必要が生じることから、コスト面で不利である。また、xは0.05〜0.30とすることが好ましい。
本発明のリチウムニッケルマンガン系複合酸化物は、例えば後述する共沈−焼成法を利用した特定の組成式で表される酸化物を製造することによって得ることができる。当該製造方法を採用することにより、ニッケル及びマンガンイオンが4g位置の遷移金属イオン占有率(g4g)と2b位置の遷移金属イオン占有率(g2b)の差(g4g−g2b)、組成式あたりの遷移金属量(gtotal)及びX線ピーク強度の割合を小さくする効果があるものと考えられる。
なお、例えば後述する共沈−焼成法を利用した特定の組成式で表される酸化物を製造する場合、y値が0.225〜0.325となるように原料組成を調整した場合は、上記した要件(1)〜(3)全てを満たすリチウムニッケルマンガン系複合酸化物が生成されやすい。具体的には、単斜晶LiMnO型層状岩塩型構造内における遷移金属含有層内での六角網目規則構造において、六角網目格子構成位置の遷移金属占有率(g4g)から六角網目格子中心位置の遷移金属占有率(g2b)を引いた値(g4g−g2b)が、−0.10〜0.20であり(要件(3))、単斜晶LiMnO型層状岩塩型構造の結晶相のX線回折パターンにおいて、(020)面のピークのピーク高さの、(20−2)面及び(131)面のピークのピーク高さに対する割合が、yが0.225以上0.275未満の場合は8.7%以下であり、yが0.275〜0.325の場合は5.0%以下であり(要件(1))、単斜晶LiMnO型層状岩塩型構造内におけるLi層及び遷移金属−Li層内の遷移金属の平均存在量の和(gtotal)が0.790以上である(要件(2))リチウムニッケルマンガン系複合酸化物が生成されやすい。
一方、例えば後述する共沈−焼成法を利用した特定の組成式で表される酸化物を製造する場合、y値が0.190以上0.225未満となるように原料組成を調整した場合は、上記した要件(1)〜(2)を満たすリチウムニッケルマンガン系複合酸化物が生成されやすい。具体的には、単斜晶LiMnO型層状岩塩型構造の結晶相のX線回折パターンにおいて、(020)面のピークのピーク高さの、(20−2)面及び(131)面のピークのピーク高さに対する割合が、15.0%以下であり(要件(1))、単斜晶LiMnO型層状岩塩型構造内におけるLi層及び遷移金属−Li層内の遷移金属の平均存在量の和(gtotal)が0.720以上である(要件(2))リチウムニッケルマンガン系複合酸化物が生成されやすい。
従ってこの遷移金属イオン分布の安定化のためには前遷移金属量あたりのニッケルイオン量yが0.190≦y≦0.325であり、0.200≦y≦0.300とすることもできる。yをこの範囲とすることで、組成式内のMn量を多くしすぎることがなく遷移金属層内の遷移金属イオン分布が安定化させることができ、組成式内のLiイオン量を十分にする結果として充放電容量を向上させることができる。
本発明のリチウムニッケルマンガン系複合酸化物は、前記単斜晶LiMnO型層状岩塩型構造の結晶相、又は前記単斜晶LiMnO型層状岩塩型構造の結晶相と立方晶岩塩型構造の結晶相との混合相により構成されることが好ましい。
換言すると、リチウムニッケルマンガン系複合酸化物には、上記した単斜晶系LiMnO型層状岩塩型構造の結晶相が含まれることが好ましい。もちろん、その他の岩塩型結晶構造を含む混合相であることも好ましい。具体的には、下記式(c)の空間群で表される立方晶岩塩型構造の結晶相をさらに含む混合相であることも、好ましい。
Figure 2021017397
単斜晶LiMnO型層状岩塩型構造の結晶相と立方晶岩塩型構造との結晶相の存在割合は、通常、単斜晶LiMnO型層状岩塩型構造結晶相:立方晶岩塩型構造結晶相(質量比)=100:0〜10:90程度の範囲であることが好ましい。また、本発明のリチウムニッケルマンガン系複合酸化物は、他の不純物相(炭酸リチウム、水酸化リチウム、マンガン及びニッケル化合物、又はそれらの複合化合物等)を、充放電特性に大きく影響しない範囲(X線回折パターンにピークが確認できる結晶相の総量を100質量%として0.01〜10質量%程度)で含むこともできる。なお、例えば後述する共沈−焼成法を利用した特定の組成式で表される酸化物を製造する場合、単斜晶LiMnO型層状岩塩型構造単相又は単斜晶LiMnO型層状岩塩型構造の存在割合が極めて大きい(例えば、X線回折パターンにピークが確認できる結晶相の総量を100質量%として90〜99.9質量%程度)リチウムニッケルマンガン系複合酸化物が生成されやすい。
(2.リチウムイオン二次電池用電極活物質及びリチウムイオン二次電池)
本発明のリチウムニッケルマンガン系複合酸化物は、リチウムイオン二次電池用電極活物質として、特に、リチウムイオン二次電池用正極活物質として、好適に使用することができる。本発明のリチウムマンガン系複合酸化物を使用し、常法によりリチウムイオン二次電池を製造することも可能である。具体的には、正極活物質として、本発明のリチウムニッケルマンガン系複合酸化物を使用し、負極活物質として、公知の金属リチウム、チタン酸リチウム、ケイ素、酸化ケイ素、炭素系材料(黒鉛系材料、難黒鉛系材料)等を使用し、電解液として、公知のエチレンカーボネート、ジメチルカーボネート等の溶媒に、過塩素酸リチウム、LiPF等のリチウム塩を溶解させた有機電解液あるいはポリマー電解質、硫化物固体電解質、さらにその他の公知の電池構成要素を使用して、常法に従って、リチウムイオン二次電池を組立てることができる。
(3.リチウムニッケルマンガン系複合酸化物の製造方法)
本発明のリチウムニッケルマンガン系複合酸化物の製造方法は、例えば、マンガン化合物及びニッケル化合物の混合物を、アルカリ性に調整することにより沈殿を形成する工程1、前記沈殿を、酸化させて複合酸化物前駆体を得る工程2、リチウム化合物と共に、前記複合酸化物前駆体を酸化雰囲気中で加熱する工程3、及び前記工程3で得られる生成物を、不活性雰囲気下で、前記工程3よりも高温で加熱する工程4を、この順に含んで構成される。
(3.1.工程1)
工程1では、マンガン化合物及びニッケル化合物をアルカリ処理することにより、沈殿を形成する。
マンガン化合物及びニッケル化合物は、それぞれリチウムニッケルマンガン系複合酸化物のマンガン源及びニッケル源として機能し、公知のマンガン及びニッケルの金属塩を広く使用することが可能であり、特に限定はない。例えば、コスト面を考慮し、2価の塩(硫酸塩、硝酸塩、塩化物、酢酸塩及びこれらの水和物等)を使用することが好ましい。また、高価数Mn源として過マンガン酸カリウムを用いてもよい。これら以外にも、例えばマンガン金属又はニッケル金属や、マンガン又はニッケルの酸化物を使用することも好ましく、マンガン又はニッケルを酸で溶解させたものを金属塩として使用することも好ましい。マンガン化合物及びニッケル化合物共に、上記した物の中から一種を単独で使用してもよいし、複数種を併用してもよい。
使用するマンガン化合物及びニッケル化合物の混合割合は、目的とする遷移金属イオンにおけるマンガン及びニッケルの配合比と同一とすることが好ましい。
特に、上記したように、本発明のリチウムニッケルマンガン系複合酸化物においてy値が0.225〜0.325(ニッケル:マンガン=0.225〜0.325:0.675〜0.775(モル比))となるように原料組成を調整した場合は、上記した要件(1)〜(3)全てを満たすリチウムニッケルマンガン系複合酸化物が生成されやすい。具体的には、単斜晶LiMnO型層状岩塩型構造内における遷移金属含有層内での六角網目規則構造において、六角網目格子構成位置の遷移金属占有率(g4g)から六角網目格子中心位置の遷移金属占有率(g2b)を引いた値(g4g−g2b)が、−0.10〜0.20であり(要件(1))、単斜晶LiMnO型層状岩塩型構造の結晶相のX線回折パターンにおいて、(020)面のピークのピーク高さの、(20−2)面及び(131)面のピークのピーク高さに対する割合が、yが0.225以上0.275未満の場合は8.7%以下であり、yが0.275〜0.325の場合は5.0%以下であり(要件(2))、単斜晶LiMnO型層状岩塩型構造内におけるLi層及び遷移金属−Li層内の遷移金属の平均存在量の和(gtotal)が0.790以上である(要件(3))リチウムニッケルマンガン系複合酸化物が生成されやすい。
一方、上記したように、本発明のリチウムニッケルマンガン系複合酸化物においてy値が0.190以上0.225未満(ニッケル:マンガン=0.190以上0.225未満:0.775より大きく0.800以下(モル比))となるように原料組成を調整した場合は、上記した要件(2)〜(3)を満たすリチウムニッケルマンガン系複合酸化物が生成されやすい。具体的には、単斜晶LiMnO型層状岩塩型構造の結晶相のX線回折パターンにおいて、(020)面のピークのピーク高さの、(20−2)面及び(131)面のピークのピーク高さに対する割合が、15.0%以下であり(要件(2))、単斜晶LiMnO型層状岩塩型構造内におけるLi層及び遷移金属−Li層内の遷移金属の平均存在量の和(gtotal)が0.720以上である(要件(3))リチウムニッケルマンガン系複合酸化物が生成されやすい。
以上から、得られる本発明のリチウムニッケルマンガン系複合酸化物の要求物性及び要求特性に応じて、適宜選択することができる。
マンガン化合物及びニッケル化合物は、マンガン化合物及びニッケル化合物を含む混合物とすることが好ましく、適宜の溶媒に溶解させてマンガン化合物及びニッケル化合物の混合溶液とすることがより好ましく、水に溶解させてマンガン化合物及びニッケル化合物の混合水溶液とすることがさらに好ましい。当該混合水溶液の濃度に関しては特に限定はなく、例えば、マンガン化合物及びニッケル化合物の合計濃度が0.01〜5mol/Lとすることが好ましく、0.1〜2.0mol/Lとすることがより好ましい。
マンガン化合物及びニッケル化合物の混合物を、好ましくは混合液、より好ましくは混合水溶液とし、アルカリ処理することにより沈殿を形成する。アルカリ処理は、マンガン化合物及びニッケル化合物の混合物(混合水溶液)をアルカリ性とすることにより達成される。
マンガン化合物及びニッケル化合部の混合物をアルカリ処理する際のpHとしては、化合物の種類及び濃度等を考慮し、適切なpHを設定すればよい。具体的には、pH8以上とすることが好ましく、pH11以上とすることがより好ましい。この際のpHの上限値は特に制限はないが、通常14程度である。
アルカリ処理の具体的な操作方法に関しては、特に限定はない。例えば、マンガン化合物及びニッケル化合物の混合物を、アルカリ水溶液に徐々に添加する方法を挙げることができる。かかる方法を採用する場合には、例えば送液ポンプを使用し、上記混合物(好ましくは混合液、より好ましくは混合水溶液)を、好ましくは1〜10時間、より好ましくは2〜5時間かけて滴下することが好ましい。かかる方法を採用することにより、均一な沈殿物を得ることができる。
アルカリ処理に使用するアルカリ物質は特に限定されず、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物、アンモニア等を使用することが可能である。これらのアルカリ物質は、適宜の溶媒に溶解させ、例えば0.1〜20mol/L、好ましくは0.3〜10mol/Lの濃度に調整したアルカリ溶液として、使用することが好ましい。
アルカリ物質を溶解させる溶媒としては、特に限定されないが、水の他、水−アルコール混合溶媒を使用することも好ましい。ここで、使用するアルコールは、エタノール、メタノール等の水溶性アルコールであることが好ましい。水−アルコール混合溶媒を使用することにより、0℃を下回る温度での沈殿生成が行いやすいが、水を使用することが簡便である。またアルコール添加を行うことにより高価数Mn源の一つである過マンガン酸カリウムを用いての沈殿生成も容易である。
水−アルコール混合溶媒におけるアルコールの使用量は、目的とする沈殿生成温度に応じて適宜設定すればよく、例えば、水100質量部に対し、アルコールを10〜50質量部とすることが好ましく、20〜40質量部とすることがより好ましい。
沈殿形成に伴い中和熱が発生することを考慮し、アルカリ処理時における設定温度は、−20〜80℃とすることが好ましく、−10〜50℃とすることがより好ましい。
(3.2.工程2)
工程2では、前記工程1で得られる沈殿を酸化させて複合酸化物前駆体を得る。
工程2においては、沈殿を含む反応系に酸化処理を行うことが好ましい。当該酸化処理は、好ましくは0〜150℃、より好ましくは10〜100℃の温度条件にて、好ましくは1〜7日間、より好ましくは2〜4日間にわたり、反応系に空気又は酸素を吹き込むことにより実施できる。
酸化処理は、均一な試料を得るために、湿式条件で行われることが好ましい。湿式条件の具体的な態様としては、バブリング処理を例示することができる。
上記酸化処理を経て、複合酸化物前駆体を得ることができる。複合酸化物前駆体は、そのまま次の工程3で使用してもよいし、蒸留水等で洗浄した後、過剰のアルカリ成分及び残留原料等を除去し、濾別することにより精製した複合酸化物前駆体とした後に、工程3に使用してもよい。
(3.3.工程3)
工程3では、前記工程2で得られる複合酸化物前駆体を、リチウム化合物存在下、酸化雰囲気中で熱処理する。
使用するリチウム化合物としては、特に限定はなく、例えばリチウム塩を使用することができる。より具体的には、炭酸リチウム、水酸化リチウム、水酸化リチウムの水和物、硝酸リチウム、及び酢酸リチウム等を例示することができる。
遷移金属化合物モル量に対するリチウム化合物の使用量は特に限定されない。但し、(Li/(Ni+Mn)(モル比))で、ニッケルを2価、マンガンを4価とした場合のyNiO−(1−y)LiMnOを仮定して得られる値とすることが好ましい。例えば、後述する実施例1のようにyが0.250の場合、上記固体組成より(Li/(Ni+Mn)(モル比))=0.250×0+0.750×2=1.500
を使用することにより、後述する工程4の熱処理後の水洗処理が不要となり、工程を単純化できる。
複合酸化物前駆体とリチウム化合物とを混合し、得られた混合物を熱処理に供してもよいが、複合酸化物前駆体とリチウム化合物とを溶媒(好ましくは、水)中でスラリー化し、スラリーを乾燥させて得られる乾燥物を、熱処理に供することが好ましい。
例えば、リチウム化合物として水溶性化合物を使用する場合には、リチウム化合物を水に溶解させて水溶液とし、複合酸化物前駆体と混合し、スラリー化することが好ましい。一方、リチウム化合物として水に対して不溶性のものを使用する場合には、当該リチウム化合物を水に分散させた後に複合酸化物前駆体を添加して混合してスラリー化することが好ましい。
得られたスラリーは、熱処理前に乾燥させて、乾燥混合物とすることが好ましい。乾燥条件は、特に限定されない。例えば、40〜60℃の温度で徐々に乾燥させることが好ましい。
その後、複合酸化物前駆体とリチウム化合物との混合物、又はスラリーを乾燥させた乾燥混合物を、酸化雰囲気中で熱処理を行う。ここで、乾燥混合物に熱処理を行う場合には、熱処理前に粉砕処理を行うことが好ましい。粉砕処理の処理条件に関しては特に限定されず、粉砕物が粗大粒子を含まず、均一な色調となっていればよい。
工程3において、熱処理は酸化雰囲気中で実施する。酸化性雰囲気としては、例えば、大気中、酸素中等の環境を例示することができる。
熱処理における温度条件としては、400〜800℃とすることが好ましく、500〜700℃とすることがより好ましい。熱処理時間に関しては、例えば、1〜30時間とすることが好ましく、3〜20時間とすることがより好ましい。
(3.4.工程4)
工程4では、前記工程3で得られる生成物に、不活性雰囲気下において、前記工程3よりも高温条件で熱処理を行う。
工程3で得られる生成物は、工程3の熱処理後、そのまま使用してもよいが、粉砕して使用することが好ましい。
工程4における熱処理は、不活性雰囲気下で実施する。不活性雰囲気下とは、高温での酸化を抑制するような環境であれば特に限定はなく、例えば、窒素中、アルゴン中等の環境を例示することができる。
工程4における熱処理温度は、工程3における熱処理温度よりも高い。工程4における熱処理温度が工程3における熱処理温度以下である場合、充分な粒成長が得られない。
工程4における熱処理の具体的な温度条件に関しては、800〜1000℃とすることが好ましく、850〜950℃とすることがより好ましい。熱処理時間に関しては、例えば、1〜30時間とすることが好ましく、3〜20時間とすることがより好ましい。
(3.5.工程5)
本発明のリチウムニッケルマンガン系複合酸化物の製造法においては、さらに、熱処理をおこなうための工程5を設けることも、好ましい。工程5では、前記工程4で得られる生成物に、還元雰囲気下において、前記工程4よりも低温条件で熱処理を行うことが好ましい。工程5を設けることにより、初期及び充放電サイクル後の充放電容量、並びに放電レート特性がさらに向上する。
工程4で得られる生成物は、工程4の熱処理後、そのまま使用してもよいが、粉砕して使用することが好ましい。
工程5における熱処理は、還元性雰囲気下で実施することが好ましい。還元性雰囲気下とは、試料を還元するような環境であれば特に限定はなく、例えば、水素−窒素混合ガス等の環境を例示することができる。水素−窒素混合ガスにおいて、水素ガスと窒素ガスとの混合割合は特に制限されず、得られる本発明のリチウムニッケルマンガン系複合酸化物の作動電圧、初期及び充放電サイクル後の充放電容量、並びに放電レート特性の観点から、通常、水素ガスを1〜10体積%(特に3〜7体積%)、窒素ガスを90〜99%(特に93〜97体積%)とすることができる。
工程5における熱処理温度は、工程4における熱処理温度よりも低いことが好ましい。工程5における熱処理温度を工程4における熱処理温度よりも低く設定することにより、試料の分解を抑制しやすい。
工程5における熱処理の具体的な温度条件に関しては、300〜600℃とすることが好ましく、350〜500℃とすることがより好ましい。熱処理時間に関しては、例えば、0.5〜30時間とすることが好ましく、1〜20時間とすることがより好ましい。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこうした例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
以下、実施例に基づき、本発明の実施形態をより具体的に説明するが、本発明がこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
硝酸ニッケル(II)6水和物18.17gと塩化マンガン(II)4水和物37.11g(全量0.25mol、Ni:Mnモル比=25:75)とを500mLの蒸留水に加え、完全に溶解させ、Ni−Mn水溶液(0.50mol/L)を得た。別のビーカーに水酸化ナトリウム水溶液(蒸留水500mLに水酸化ナトリウム50gを溶解させた溶液;2.50mol/L)を作製した。この水酸化ナトリウム水溶液をチタン製ビーカーに入れ、攪拌しつつ恒温漕内に設置し、恒温漕内を+20℃に保った。次いで、この水酸化ナトリウム水溶液に上記Ni−Mn水溶液を2〜3時間かけて徐々に滴下して、Ni−Mn沈殿物を形成させた(工程1)。反応液が完全にアルカリ性(pH11以上)になっていることを確認し、攪拌下に共沈物を含む反応液に室温で48時間以上酸素を吹き込んで湿式酸化処理して、沈殿を熟成させ目的とする前駆体を得た(工程2)。
前駆体を蒸留水で洗浄後濾別し得られたものを、全量に対して0.75倍の炭酸リチウム(13.85g;(Li/(Ni+Mn)(モル比)が1.500))と蒸留水200mLを加え、ミキサーで混合して均一なスラリーを作製し、その後ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製シャーレに移して、50℃で2日間乾燥させた。
乾燥粉末を振動ミルで粉砕後、電気炉に入れ、大気中650℃で5時間一次焼成した(工程3)。その後粉末を電気炉から取り出し、再び振動ミルで粉砕後、電気炉に入れ窒素気流中950℃で5時間二次焼成した(工程4)。その後粉末を電気炉から取り出し、再び振動ミルで粉砕後、リチウムニッケルマンガン系複合酸化物を得た。
(比較例1)
工程4の二次焼成を、不活性雰囲気である窒素雰囲気から大気に変えて、実施例1と同様に作製しリチウムニッケルマンガン系複合酸化物を得た。
(実施例2)
硝酸ニッケル(II)6水和物21.81gと塩化マンガン(II)4水和物34.63g(全量0.25mol、Ni:Mnモル比=3:7)とを500mLの蒸留水に加え、完全に溶解させ、Ni−Mn水溶液(0.50mol/L)を得た。別のビーカーに水酸化ナトリウム水溶液(蒸留水500mLに水酸化ナトリウム50gを溶解させた溶液;2.50mol/L)を作製した。この水酸化ナトリウム水溶液をチタン製ビーカーに入れ、攪拌しつつ恒温漕内に設置し、恒温漕内を+20℃に保った。次いで、この水酸化ナトリウム水溶液に上記Ni−Mn水溶液を2〜3時間かけて徐々に滴下して、Ni−Mn沈殿物を形成させた(工程1)。反応液が完全にアルカリ性(pH11以上)になっていることを確認し、攪拌下に共沈物を含む反応液に室温で48時間以上酸素を吹き込んで湿式酸化処理して、沈殿を熟成させ目的とする前駆体を得た(工程2)。
前駆体を蒸留水で洗浄後濾別し得られたものを、全量に対して1.00倍の炭酸リチウム(18.47g;(Li/(Ni+Mn)(モル比)が2.000))と蒸留水200mLを加え、ミキサーで混合して均一なスラリーを作製し、その後ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製シャーレに移して、50℃で2日間乾燥させた。乾燥粉末を振動ミルで粉砕後、電気炉に入れ、酸素中500℃で20時間一次焼成した(工程3)。その後粉末を電気炉から取り出し、再び振動ミルで粉砕後、電気炉に入れ窒素気流中850℃で5時間二次焼成した(工程4)。その後粉末を電気炉から取り出し、再び振動ミルで粉砕後、4体積%水素−96体積%窒素混合ガス中で425℃で1時間三次焼成した(工程5)。その後粉末を電気炉から取り出し、蒸留水での水洗処理と濾過、乾燥工程を経て、リチウムニッケルマンガン系複合酸化物を得た。
X線回折測定(実施例1)
X線リートベルト解析ソフトRIETAN−FP(泉富士夫他、Solid State Phenom.130(2007)15−20.)を用いて得られた実施例1の実測パターン(+)と単斜晶LiMnO単位胞を用いて得られた計算パターンとの比較(実線)を図2に示す(ピーク位置は縦棒で、実測値と計算値の残差は強度0付近に表記。)。実測値と計算値の差は小さく、信頼できる解析値が得られたことが確認された。得られた格子定数はa=4.9572(3)Å、b=8.5825(3)Å、c=5.03447(16)Å、β=109.229(4)°、V=202.2(3)Åであった。各格子位置における遷移金属(仮想原子Ni0.25Mn0.75を仮定)占有率を、等方性熱振動パラメータBを1と仮定して求めると、下記表1の通りとなった。
X線回折測定(実施例2)
X線リートベルト解析ソフトRIETAN−FPを用いて得られた実施例2の実測パターン(+)と単斜晶LiMnO単位胞を用いて得られた計算パターンとの比較(実線)を図3に示す(ピーク位置は縦棒で、実測値と計算値の残差は強度0付近に表記。)。実測値と計算値の差は小さく、信頼できる解析値が得られたことが確認された。得られた格子定数はa=4.9587(5)Å、b=8.5750(5)Å、c=5.0232(3)Å、β=109.197(8)°、V=201.7(6)Åであった。各格子位置における遷移金属(仮想原子Ni0.3Mn0.7を仮定)占有率を、等方性熱振動パラメータBを1と仮定して求めると、下記表1の通りとなった。
X線回折測定(比較例1)
X線リートベルト解析ソフトRIETAN−FPを用いて得られた比較例1の実測パターン(+)と単斜晶LiMnO単位胞を用いて得られた計算パターンとの比較(実線)を図4に示す(ピーク位置は縦棒で、実測値と計算値の残差は強度0付近に表記。)。実測値と計算値の差は小さく、信頼できる解析値が得られたことが確認された。得られた格子定数はa=4.9565(4)Å、b=8.5704(4)Å、c=5.0316(2)Å、β=109.168(6)°、V=201.9(4)Åであった。各格子位置における遷移金属(仮想原子Ni0.25Mn0.75を仮定)占有率を、等方性熱振動パラメータBを1と仮定して求めると、下記表1の通りとなった。
Figure 2021017397
表1に示す通り、実施例1の複合酸化物は、六角網目構成位置(4g位置)占有率と六角網目中心位置(2b位置)占有率との差g4g−g2bは0.090であり、本発明の範囲内であることが明らかである。また2θ=20°付近の(020)面のピークと2θ=45°付近の(20−2)面及び(131)面のピークのピーク高さの比I020/I20−2,131は、8.35%であり、本発明の範囲内であることが明らかである。またLi層内平均遷移金属量((2g4h+g2c)/3)と遷移金属−Li層内平均遷移金属量((2g4g+g2b)/3)の和で定義される組成式あたりの遷移金属量(gtotal)は、0.805であり、本発明の範囲内であることが明らかである。
また、実施例2の複合酸化物に関しても表1に示すとおり、六角網目構成位置(4g位置)占有率と六角網目中心位置(2b位置)占有率との差g4g−g2bは0.162であり、本発明の範囲内であることが明らかである。また2θ=20°付近の(020)面のピークと2θ=45°付近の(20−2)面及び(131)面のピークのピーク高さの比I020/I20−2,131は、4.46%であり、本発明の範囲内であることが明らかである。またLi層内平均遷移金属量((2g4h+g2c)/3)と遷移金属−Li層内平均遷移金属量((2g4g+g2b)/3)の和で定義される組成式あたりの遷移金属量(gtotal)は、0.797であり、本発明の範囲内であることが明らかである。
また、比較例1の複合酸化物に関しては、表1に示すとおり、六角網目構成位置(4g位置)占有率と六角網目中心位置(2b位置)占有率の差g4g−g2bは0.283であり、本発明の範囲外であることが明らかである。また2θ=20°付近の(020)面のピークと2θ=45°付近の(20−2)面及び(131)面ピークのピーク高さの比I020/I20−2,131は、8.95%であり、本発明の範囲外であることが明らかである。またLi層内平均遷移金属量((2g4h+g2c)/3)と遷移金属−Li層内平均遷移金属量((2g4g+g2b)/3)の和で定義される組成式あたりの遷移金属量(gtotal)は、0.784であり、本発明の範囲外であることが明らかである。従って、工程4を不活性雰囲気下において行うことが必要なことが分かる。
化学分析(実施例1〜2及び比較例1)
実施例1〜2及び比較例1のリチウムニッケルマンガン系複合酸化物の遷移金属量を波長分散型蛍光X線分光計により、リチウム量をICP発光分析により求め、結果を下記表2に示す。表中のx値はLi/(Ni+Mn)(モル比)より以下の計算式:
x=(Li/(Ni+Mn)−1)/(Li/(Ni+Mn)+1)
で求めた。一方y値はNi/(Ni+Mn)(モル比)それ自体である。実施例1〜2の複合酸化物ともに、本発明の組成式範囲内にあることが明らかである。
Figure 2021017397
充放電特性評価(実施例1〜2及び比較例1)
実施例1〜2及び比較例1のリチウムニッケルマンガン系複合酸化物20mg及びアセチレンブラック粉末5mgを乳鉢でよく混合後、0.5mgのポリテトラフルオロエチレン粉末を加えて互いを結着させた。これをアルミニウムメッシュ上に圧着して合材電極を作製した。合材電極を120℃で一晩真空乾燥後、露点−80℃以下のグローブボックス内に導入し、負極に金属リチウム、電解液として1M LiPFを炭酸エチレンと炭酸ジメチルとの混合溶媒(体積比 炭酸エチレン:炭酸ジメチル=3:7)に溶解させたものを用いてコイン型リチウム二次電池を組み立てた。作製した電池をグローブボックス内より取り出し、充放電試験装置に接続し、充電開始にて30℃、電流密度40mAh/gで充放電試験を行った。なお電気化学的活性化のために4サイクル目まで段階充電法を適用した。1−4サイクル目までは、充電容量を80mAh/gから40mAh/gずつあげて充電させ、各サイクルにおいて、2.0Vまで放電させた。5サイクル目は4.8Vまで充電後2.0Vまで放電させた。その後6サイクル目以降は2.0−4.6Vの電位範囲内で29回定電流充放電させた。
実施例1〜2及び比較例1を正極としたリチウム二次電池の充放電特性を、それぞれ図5〜7に示した。尚、図5〜7共に、図中右上がりの曲線が充電曲線(添字cで表記)を、右下がりの曲線が放電曲線(添字dで表記)を示す。数字はサイクル数を示す。なお1−4サイクルに関しては、電気化学的活性化のためのサイクルであるため、図示していない。また、実施例1〜2及び比較例1の充放電容量を、下記表3に示した。
Figure 2021017397
図5、図7及び表3より、実施例1のリチウムイオン二次電池は、比較例1のリチウムイオン二次電池に比べて、5サイクル目から34サイクル目までの充放電容量が大きく、サイクル経過時の充放電曲線変化も小さいことがわかる。また実施例1及び実施例2の電池の5サイクル目放電平均電圧はそれぞれ3.56及び3.61Vであり、比較例1の電池の値(3.55V)とほぼ同等又はそれ以上であった。
図6、図7及び表3より、実施例2のリチウムイオン二次電池は、比較例1のリチウムイオン二次電池に比べて、5サイクル目から34サイクル目までの充放電容量が大きく、サイクル経過時の充放電曲線変化も小さいのみならず、実施例1のリチウムイオン二次電池と比べても、5サイクル目から34サイクル目までの充放電容量が大きく、サイクル経過時の充放電曲線変化も小さいことがわかる。また実施例2の電池の5サイクル目放電平均電圧は3.59Vであった。
放電レート特性評価(実施例1〜2及び比較例1)
次に、別の実施例1〜2及び比較例1のリチウムイオン二次電池を用いて高電流密度下での放電レート特性を評価した。5サイクル目までは上記サイクル試験と同様に充放電させ、その後2.0−4.6Vの電位範囲で、充電時の電流密度を40mA/gに固定し、放電電流密度を100mA/gから400mA/gまで変化させて評価した。尚、高電流密度放電試験評価後は電池の充電深度が通常の定電流密度試験より大きくずれるため、各高電流密度放電試験後に1サイクル低電流密度(40mA/g)下での充放電を実施して調整した。
図8〜10及び表4に、各実施例及び比較例のリチウム二次電池の放電レート特性を示した。
Figure 2021017397
図8〜10及び表4より、実施例1及び2のリチウムイオン二次電池の方が比較例1のリチウムイオン二次電池に比べて、各電流密度での放電容量が大きく、放電レート特性に優れることが明らかである。また、工程5を加えた方が、充放電特性、放電レート特性のいずれも向上する。
(実施例3)
硝酸ニッケル(II)6水和物14.59gと過マンガン酸(VII)カリウム31.61g(全量0.25mol、Ni:Mnモル比=2:8)とを700mLの蒸留水に加え、完全に溶解させ、Ni−Mn水溶液(0.36mol/L)を得た。別のビーカーに水酸化ナトリウム水溶液(蒸留水500mL及びエタノール200mLに水酸化ナトリウム50gを溶解させた溶液;1.79mol/L)を作製した。この水酸化ナトリウム水−エタノール混合溶液をチタン製ビーカーに入れ、攪拌しつつ恒温漕内に静置し、恒温漕内を+20℃に保った。次いで、この水酸化ナトリウム水−エタノール混合溶液に上記Ni−Mn水溶液を2〜3時間かけて徐々に滴下して、Ni−Mn沈殿物を形成させた(工程1)。反応液が完全にアルカリ性(pH11以上)になっていることを確認し、攪拌下に共沈物を含む反応液に室温で48時間以上酸素を吹き込んで湿式酸化処理して、沈殿を熟成させ目的とする前駆体を得た(工程2)。
前駆体を蒸留水で洗浄後濾別し得られたものを、仕込みモル比に対して1.00倍の炭酸リチウム(18.47g;(Li/(Ni+Mn)(モル比)が2.00))と蒸留水200mLを加え、ミキサーで混合して均一なスラリーを作製し、その後ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製シャーレに移して、50℃で2日間乾燥させた。乾燥粉末を振動ミルで粉砕後、電気炉に入れ、大気中650℃で5時間一次焼成した(工程3)。その後粉末を電気炉から取り出し、再び振動ミルで粉砕後、電気炉に入れ窒素気流中900℃で1時間二次焼成した(工程4)。その後粉末を電気炉から取り出し、再び振動ミルで粉砕後、4体積%水素−96体積%窒素混合ガス中、450℃で3時間三次焼成した(工程5)。その後粉末を電気炉から取り出し、蒸留水での水洗処理と濾過、乾燥工程を経て、リチウムニッケルマンガン系複合酸化物を得た。
(実施例4)
三次焼成を行わない以外は実施例3と同様に試料作製を行い、リチウムニッケルマンガン系複合酸化物を得た。
(比較例2)
硝酸ニッケル(II)6水和物14.59gと塩化マンガン(II)4水和物39.58g(全量0.25mol、Ni:Mnモル比=2:8)とを500mLの蒸留水に加え、完全に溶解させ、Ni−Mn水溶液(0.50mol/L)を得た。別のビーカーに水酸化ナトリウム水溶液(蒸留水500mLに水酸化ナトリウム50gを溶解させた溶液;2.50mol/L)を作製した。この水酸化ナトリウム水溶液をチタン製ビーカーに入れ、攪拌しつつ恒温漕内に静置し、恒温漕内を+20℃に保った。次いで、この水酸化ナトリウム水溶液に上記Ni−Mn水溶液を2〜3時間かけて徐々に滴下して、Ni−Mn沈殿物を形成させた(工程1)。反応液が完全にアルカリ性(pH11以上)になっていることを確認し、攪拌下に共沈物を含む反応液に室温で48時間以上酸素を吹き込んで湿式酸化処理して、沈殿を熟成させ目的とする前駆体を得た(工程2)。
前駆体を蒸留水で洗浄後濾別し得られたものを、仕込みモル比に対して1.00倍の炭酸リチウム(18.47g;(Li/(Ni+Mn)(モル比)が2.00))と蒸留水200mLを加え、ミキサーで混合して均一なスラリーを作製し、その後ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製シャーレに移して、50℃で2日間乾燥させた。乾燥粉末を振動ミルで粉砕後、電気炉に入れ、大気中650℃で5時間一次焼成した(工程3)。その後粉末を電気炉から取り出し、再び振動ミルで粉砕後、電気炉に入れ大気中900℃で5時間二次焼成した(工程4)。その後粉末を電気炉から取り出し、蒸留水での水洗処理と濾過、乾燥工程を経て、リチウムニッケルマンガン系複合酸化物を得た。
X線回折測定(実施例3)
実施例3のリチウムニッケルマンガン系複合酸化物の実測パターン(+)と単斜晶LiMnO単位胞を用いて得られた計算パターンとの比較(実線)を図11に示す(ピーク位置は縦棒で、実測値と計算値の残差は強度0付近に表記。)。実測値と計算値の差は小さく、信頼できる解析値が得られたことがわかる。得られた格子定数はa=4.9474(3)Å、b=8.5579(4)Å、c=5.0219(2)Å、β=109.232(5)°、V=200.8(4)Åであった。各格子位置における遷移金属(仮想原子Ni0.2Mn0.8を仮定)占有率を実施例1と同様に、表5に示す。表5より六角網目構成位置(4g位置)占有率と六角網目中心位置(2b位置)占有率の差g4g−g2bは0.323である。また2θ=20°付近の(020)面のピークと2θ=45°付近の(20−2)面及び(131)面ピークのピーク高さの比I020/I20−2,131は、9.64%であり、本発明の範囲内であることが明らかである。また組成式あたりの遷移金属量(gtotal)は0.759であり本発明の範囲内であることが明らかである。
X線回折測定(実施例4)
実施例4のリチウムニッケルマンガン系複合酸化物の実測パターン(+)と単斜晶LiMnO単位胞を用いて得られた計算パターンとの比較(実線)を図12に示す(ピーク位置は縦棒で、実測値と計算値の残差は強度0付近に表記。)。実測値と計算値の差は小さく、信頼できる解析値が得られたことがわかる。得られた格子定数はa=4.9435(3)Å、b=8.5529(4)Å、c=5.0198(2)Å、β=109.245(5)°、V=200.4(3)Åであった。各格子位置における遷移金属(仮想原子Ni0.2Mn0.8を仮定)占有率を実施例1と同様に、表5に示す。表5より六角網目構成位置(4g位置)占有率と六角網目中心位置(2b位置)占有率の差g4g−g2bは0.321である。また2θ=20°付近の(020)面のピークと2θ=45°付近の(20−2)面及び(131)面ピークのピーク高さの比I020/I20−2,131は、10.6%であり、本発明の範囲内であることが明らかである。また組成式あたりの遷移金属量(gtotal)は0.746であり本発明の範囲内であることが明らかである。
X線回折測定(比較例2)
比較例2のリチウムニッケルマンガン系複合酸化物の実測パターン(+)と単斜晶LiMnO単位胞を用いて得られた計算パターンとの比較(実線)を図13に示す(ピーク位置は縦棒で、実測値と計算値の残差は強度0付近に表記。)。実測値と計算値の差は小さく、信頼できる解析値が得られたことがわかる。得られた格子定数はa=4.93362(19)Å、b=8.5395(2)Å、c=5.02392(14)Å、β=109.284(2)°、V=199.79(16)Åであった。各格子位置における遷移金属占有率を実施例1と同様に、表5に示す。表5より六角網目構成位置(4g位置)占有率と六角網目中心位置(2b位置)占有率の差g4g−g2bは0.347である。また2θ=20°付近の(020)面のピークと2θ=45°付近の(20−2)面及び(131)面ピークのピーク高さの比I020/I20−2,131は、16.3%であり、本発明の範囲外であることが明らかである。また組成式あたりの遷移金属量(gtotal)は0.704であり本発明の範囲外であることが明らかである。従って、工程4を不活性雰囲気下において行うことが必要なことが分かる。
Figure 2021017397
化学分析(実施例3〜4及び比較例2)
実施例3〜4及び比較例2のリチウムニッケルマンガン系複合酸化物の遷移金属量及びリチウム量をICP発光分析により求め、結果を下記表6に示す。表中のx値はLi/(Ni+Mn)(モル比)より以下の計算式:
x=(Li/(Ni+Mn)−1)/(Li/(Ni+Mn)+1)
で求めた。一方y値はNi/(Ni+Mn)(モル比)それ自体である。実施例3〜4の複合酸化物ともに、本発明の組成式範囲内にあることが明らかである。
Figure 2021017397
充放電特性評価(実施例3〜4及び比較例2)
実施例3〜4及び比較例2の試料を前述の実施例1と同様に充放電試験を行った。実施例3〜4及び比較例2を正極としたリチウム二次電池の充放電特性を、それぞれ図14〜16に示した。尚、図14〜16共に、図中右上がりの曲線が充電曲線(添字cで表記)を、右下がりの曲線が放電曲線(添字dで表記)を示す。数字はサイクル数を示す。なお1−4サイクルに関しては、電気化学的活性化のためのサイクルであるため、図示していない。また、実施例3〜4及び比較例2の充放電容量を、下記表7に示した。
Figure 2021017397
図14〜16及び表7からわかるように実施例3〜4の試料は比較例2の試料に比べて高容量であり、34サイクルの充放電後にも高容量を維持していることから優れた充放電特性を有することが明らかである。
放電レート特性評価
次に、別の実施例3〜4及び比較例2のリチウムイオン二次電池を用いて高電流密度下での放電レート特性を評価した。評価条件は上記実施例1〜2及び比較例1と同様である。結果を図17〜図19および下記表8に示す。
Figure 2021017397
図17〜19及び表8より、実施例3〜4の試料の方が比較例2の試料より放電レート特性に優れることが明らかである。また、工程5を加えた方が、充放電特性、放電レート特性のいずれも向上する。
以上から、本発明のリチウムニッケルマンガン系複合酸化物は、特異な遷移金属イオン分布又は存在量を有するため、通常の遷移金属イオン分布及び存在量を有するものに比べて優れた充放電特性を有し、車載用等の大型リチウムイオン二次電池用正極材料として好適に使用可能であると考えられる。
本発明のリチウムニッケルマンガン系複合酸化物は、作動電圧、初期及び充放電サイクル後の充放電容量、並びに放電レート特性が既存のNMC系正極材料と比較して同等又はそれ以上である。そのため、電気自動車若しくはプラグインハイブリッド車用のバッテリー、又は定置用蓄電池などに好適に利用することが可能である。

Claims (12)

  1. 一般式(1):
    Li1+x(NiMn1−y1−x (1)
    [式中、x及びyはそれぞれ、0<x<1/3、0.190≦y≦0.325を示す。]
    で表され、単斜晶LiMnO型層状岩塩型構造を有するリチウムニッケルマンガン系複合酸化物であって、以下の(1)〜(3):
    (1)前記単斜晶LiMnO型層状岩塩型構造の結晶相のX線回折パターンにおいて、(020)面のピークのピーク高さの、(20−2)面及び(131)面のピークのピーク高さに対する割合が、yが0.190以上0.225未満の場合は15.0%以下であり、yが0.225以上0.275未満の場合は8.7%以下であり、yが0.275〜0.325の場合は5.0%以下である、
    (2)前記単斜晶LiMnO型層状岩塩型構造内におけるLi層及び遷移金属−Li層内の遷移金属の平均存在量の和(gtotal)が、前記yが0.190以上0.225未満の場合は0.720以上であり、前記yが0.225〜0.325の場合は0.790以上である、及び
    (3)前記単斜晶LiMnO型層状岩塩型構造内における遷移金属含有層内での六角網目規則構造において、六角網目格子構成位置(4g位置)の遷移金属占有率(g4g)から六角網目格子中心位置(2b位置)の遷移金属占有率(g2b)を引いた値(g4g−g2b)が、−0.10〜0.20である
    の少なくとも1つを満たすことを特徴とする、リチウムニッケルマンガン系複合酸化物。
  2. 前記(1)を満たす、請求項1に記載のリチウムニッケルマンガン系複合酸化物。
  3. 前記単斜晶LiMnO型層状岩塩型構造内におけるLi層及び遷移金属−Li層内の遷移金属の平均存在量の和(gtotal)が、前記yが0.190以上0.225未満の場合は0.720以上であり、前記yが0.225〜0.325の場合は0.790以上である、請求項2に記載のリチウムニッケルマンガン系複合酸化物。
  4. 前記(2)を満たす、請求項1に記載のリチウムニッケルマンガン系複合酸化物。
  5. 前記単斜晶LiMnO型層状岩塩型構造内における遷移金属含有層内での六角網目規則構造において、六角網目格子構成位置(4g位置)の遷移金属占有率(g4g)から六角網目格子中心位置(2b位置)の遷移金属占有率(g2b)を引いた値(g4g−g2b)が、−0.10〜0.20である、請求項2〜4のいずれか1項に記載のリチウムニッケルマンガン系複合酸化物。
  6. 前記(3)を満たす、請求項1に記載のリチウムニッケルマンガン系複合酸化物。
  7. 前記yが0.225〜0.325である、請求項6に記載のリチウムニッケルマンガン系複合酸化物。
  8. 前記単斜晶LiMnO型層状岩塩型構造の結晶相、又は前記単斜晶LiMnO型層状岩塩型構造の結晶相と立方晶岩塩型構造の結晶相との混合相により構成される、請求項1〜7のいずれか1項に記載のリチウムニッケルマンガン系複合酸化物。
  9. 請求項1〜8のいずれか1項に記載のリチウムニッケルマンガン系複合酸化物を含有する、リチウムイオン二次電池用電極活物質。
  10. 請求項9に記載のリチウムイオン二次電池用電極活物質を備えるリチウムイオン二次電池。
  11. 請求項1〜8のいずれか1項に記載のリチウムニッケルマンガン系複合酸化物の製造方法であって、
    マンガン化合物及びニッケル化合物をアルカリ処理することにより沈殿を形成する工程1、
    前記沈殿を酸化させて複合酸化物前駆体を得る工程2、
    リチウム化合物存在下、前記複合酸化物前駆体を酸化雰囲気中で熱処理する工程3、及び
    前記工程3で得られる生成物を、不活性雰囲気下で前記工程3よりも高温条件で熱処理する工程4
    を有することを特徴とする、製造方法。
  12. 前記工程4で得られる生成物を、還元雰囲気下にて前記工程4よりも低温条件で熱処理する工程5をさらに有する、請求項11に記載の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2022242714A1 (zh) * 2021-05-19 2022-11-24 蜂巢能源科技股份有限公司 铁锰基正极材料及其制备方法和应用

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