以下、添付図面を参照して本開示の実施形態を説明する。なお、後述する実施の形態における前後左右上下の各方向は、台車の各方向をいうものとする。ただし、本実施の形態における各方向は、説明の便宜のために用いるものであり、後述する部材間の相対的な位置関係を表す。
図1は台車1が使用される工場の一例を示す斜視図である。図1に示すように、工場内には、ワーク2を供給する供給ライン3が形成されると共に、製品4を組み立てる組立ライン5が形成される。供給ライン3と組立ライン5は予め設定された所定間隔を隔てて平行に配置される。供給ライン3及び組立ライン5間には、作業エリア6が設けられる。
供給ライン3はローラコンベアで構成される。ローラコンベアは作業エリア6の床面6aより高い位置に設置される。供給ライン3には、複数種類のワーク2が混在した状態で流れる。
組立ライン5の床面5aの高さは、作業エリア6の床面6aの高さと概ね同じに設定される。また、組立ライン5上にはスタンド7が設置され、スタンド7上には組立中の製品4が配置される。
また、作業エリア6には、供給ライン3から台車1にワーク2を受け渡す供給位置8が予め設定されていると共に、台車1上のワーク2を製品4に組み付ける組立位置9が予め設定されている。また、供給位置8に隣接する供給ライン3には、台車1を検出する近接センサ(図示せず)が設けられると共に、供給ライン3上のワーク2を台車1に受け渡すためのプッシャ(図示せず)が設けられている。プッシャは、近接センサが台車1を検出したとき供給ライン3上のワーク2を前方の台車1上に押し出すように構成される。
台車1は、供給位置8から組立位置9にワーク2を搬送したのち、作業員の手作業によるワーク2の組み付け作業をアシストし、しかるのち、組立位置9から供給位置8に戻るという一連の動作を繰り返す。図2に示すように、台車1は、組立位置9において製品4に対するワーク2の位置合わせをアシストする。
図3は台車1の斜視図である。図3に示すように、台車1は、台車本体10と、台車本体10に設けられた複数の全方向車輪11a、11b、11cと、全方向車輪11a、11b、11cを個別に駆動させる走行駆動装置12と、台車本体10上に水平方向に離間して配置された複数のロードセル13(図4参照)と、複数のロードセル13上に設けられるワーク載せ部14と、ロードセル13の検出値に基づいて走行駆動装置12を制御する制御装置15とを備える。
台車本体10は、全方向車輪11a、11b、11cが設けられる固定部16と、固定部16に昇降自在に設けられるリフト部17と、固定部16に対してリフト部17を昇降駆動させる昇降駆動装置38とを備える。
固定部16は、底部フレーム18と、下部柱フレーム19と、第1下部梁フレーム20aと、第2下部梁フレーム20bと、上部柱フレーム21と、上部梁フレーム22と、ガイドフレーム24とを備える。
底部フレーム18は、平面視六角形状の枠状に形成され、水平に配置される。底部フレーム18は、全方向車輪11a、11b、11cを回転自在に支持する。
また、底部フレーム18には、磁気センサ(図示せず)が設けられる。磁気センサは、作業エリア6の床に貼られた磁気テープ25を検出するものであり、後述する制御装置15に接続される。磁気テープ25は、供給位置8と組立位置9とを結ぶように配置される。
また、底部フレーム18には、供給位置用近接センサ(図示せず)及び組立位置用近接センサ(図示せず)が設けられている。供給位置用近接センサは、台車1が供給位置8に到達していることを検出する。組立位置用近接センサは、台車1が組立位置9に到達していることを検出する。供給位置8には、供給位置用近接センサに検出されるターゲット(図示せず)が設置されている。組立位置9には、組立位置用近接センサに検出されるターゲット(図示せず)が設置されている。なお、供給位置用近接センサ及び組立位置用近接センサは、底部フレーム18以外の部材に設けられてもよい。
下部柱フレーム19は、底部フレーム18上に起立して設けられる。下部柱フレーム19は、前後左右に離間して4本配置される。
第1下部梁フレーム20aは、前後方向に対向する下部柱フレーム19間に掛け渡して設けられる。第1下部梁フレーム20aは、左右方向に離間して一対平行に配置される。第2下部梁フレーム20bは、左右の第1下部梁フレーム20a間に掛け渡して設けられる。第2下部梁フレーム20bは、前後方向に離間して一対平行に配置される。
上部柱フレーム21は、第2下部梁フレーム20b上に起立して設けられる。上部柱フレーム21は、前後左右方向に離間して4本配置される。
上部梁フレーム22は、左右方向に対向する上部柱フレーム21間に掛け渡して設けられる。すなわち、上部梁フレーム22は、第2下部梁フレーム20bと平行に配置される。
ガイドフレーム24は、上部柱フレーム21に中間フレーム23を介して設けられる。ガイドフレーム24は、リフト部17を昇降可能にガイドする。ガイドフレーム24は、概ね後述するワーク載せ部14の四隅の鉛直下方に配置される。ガイドフレーム24は、上下方向に延びる円筒状に形成される。また、左右方向に隣り合うガイドフレーム24間には、補強フレーム26が設けられる。なお、ガイドフレーム24は、リフト部17を昇降自在にガイドできるものであればよく、他の形状に形成されてもよい。例えば、ガイドフレーム24は、断面矩形の筒状に形成されてもよい。
リフト部17は、ガイドフレーム24に挿通される複数本の可動柱フレーム27と、可動柱フレーム27に設けられる荷重受けフレーム28とを備える。
可動柱フレーム27は、それぞれガイドフレーム24に挿通される。可動柱フレーム27は、上下方向に延びる円柱状に形成される。なお、可動柱フレーム27は、ガイドフレーム24に昇降自在にガイドされるものであればよく、他の形状に形成されてもよい。例えば、可動柱フレーム27は、断面矩形の柱状に形成されてもよい。
図3及び図4に示すように、荷重受けフレーム28は、後述する台座29及び支持フレーム30を介してロードセル13を支持する。荷重受けフレーム28は、可動柱フレーム27間に掛け渡して設けられる一対の可動梁フレーム31と、一対の可動梁フレーム31を連結する可動連結フレーム32とを備える。
可動梁フレーム31は、前後方向に隣り合う可動柱フレーム27間に掛け渡して設けられる。すなわち、可動梁フレーム31は、リフト部17の左右両側に配置される。可動梁フレーム31は、それぞれ前後方向に延びて平行に配置される。可動連結フレーム32は、可動梁フレーム31間に左右方向に延びて配置される。可動連結フレーム32の左端は、左側の可動梁フレーム31の前後方向の中央部に接続される。可動連結フレーム32の右端は、右側の可動梁フレーム31の前後方向の中央部に接続される。すなわち、荷重受けフレーム28は、平面視H字状に形成される。なお、荷重受けフレーム28は、これに限られない。荷重受けフレーム28は、後述するロードセル13を同一平面上で支持できるものであればよく、他の形状に形成されてもよい。例えば荷重受けフレーム28は平面視X字状に形成されてもよい。
また、それぞれの可動梁フレーム31の両端部には、ブロック状の台座29が設けられる。台座29の上面は、水平かつ平坦に形成される。また、それぞれの台座29には、棒状の支持フレーム30が設けられる。支持フレーム30は、台座29の上面に一端部を固定される。支持フレーム30の他端部は、後述するワーク載せ部14の隅部の方向に向けて突出される。
ロードセル13は、各支持フレーム30の他端部上に設けられる。これにより、ロードセル13はワーク載せ部14の四隅を支持するように配置される。なお、本実施の形態においてロードセル13は4つの支持フレーム30上に2個ずつ(計8個)設けられるが、これに限られない。複数のロードセル13の定格容量の和が想定される最大荷重より大きくなるようにロードセル13の総数は決定されるとよい。例えば想定される最大荷重が1000Nであり、各ロードセル13の定格容量が250Nである場合、ロードセル13の総数は計4個であってもよい。
ワーク載せ部14は、下板部33と、下板部33上に設けられるローラコンベア34とを備える。下板部33は、前後方向及び左右方向に延びる矩形板状に形成される。下板部33の隅部は、それぞれロードセル13上に固定される。ローラコンベア34は、ワーク2を前後方向に走行自在に載置させる。ローラコンベア34の各ローラ35はフリーローラで構成される。これにより、ローラコンベア34は、ローラ35上のワーク2が前後方向の外力を受けたとき、その外力に応じてワーク2を自由に走行させる。
図5に示すように、全方向車輪11a、11b、11cは、オムニホイール(登録商標)で構成される。全方向車輪11a、11b、11cは、底部フレーム18の外周部に3つ設けられる。また、3つの全方向車輪11a、11b、11cは、底部フレーム18の中心Oと同軸の円上に周方向に等間隔に配置される。また、3つの全方向車輪11a、11b、11cは、底部フレーム18の中心Oから水平方向かつ半径方向に延びる軸回りに回転自在に設けられる。具体的には、第1全方向車輪11aは、底部フレーム18の右端部に配置される。第2全方向車輪11bは、底部フレーム18の左前端部に配置される。第3全方向車輪11cは、底部フレーム18の左後端部に配置される。なお、全方向車輪11a、11b、11cはオムニホイールに限られない。例えば、全方向車輪11a、11b、11cはメカナムホイール(登録商標)で構成されてもよい。
図3及び図5に示すように、走行駆動装置12は、底部フレーム18に全方向車輪11a、11b、11cの数と同数の複数(本実施の形態では3つ)設けられる。走行駆動装置12は、モータ36と、モータ36からの駆動力を全方向車輪11a、11b、11cに伝達する伝動部37とを備える。モータ36は、エンコーダ付きDCモータで構成される。伝動部37は、互いに噛合された複数の歯車(図示せず)で構成される。台車1が運転されているとき、モータ36には常にバッテリ(図示せず)から電源が供給される。これにより、台車1が停車されているとき、モータ36は全方向車輪11a、11b、11cの回転をロックする。なお、伝動部37は複数のスプロケット(図示せず)と、これらスプロケットに掛け回されるチェーン(図示せず)とを備えるものであってもよい。
昇降駆動装置38は、エアシリンダで構成される。昇降駆動装置38のシリンダ部38aは、第2下部梁フレーム20b及び上部梁フレーム22に結合フレーム39を介して固定される。また、昇降駆動装置38のピストンロッド38bは、可動連結フレーム32に固定される。昇降駆動装置38は制御装置15に電気的に接続されており、制御装置15からの電気信号に基づいて作動される。なお、昇降駆動装置38は、これに限られない。例えば昇降駆動装置38は、ボールネジで構成されてもよく、ジップリフターで構成されてもよい。
制御装置15は、供給位置8及び組立位置9間で自動走行する自動走行モードのプログラムと、組立位置9にて製品4に対するワーク2の位置決めをアシストするアシストモードのプログラムとを備える。図9は自動走行モードのプログラムのフローチャートを示し、図10、図11はアシストモードのプログラムのフローチャートを示す。また、制御装置15には、図示しないモード切替スイッチが電気的に接続されている。モード切替スイッチは。製品4へのワーク2の組み付け作業が終わったとき、その組み付け作業を行った作業員によって押される。これにより、制御装置15は、アシストモードから自動走行モードに切り替わる。これにより、台車1を組立位置9から供給位置8に戻すことができる。
自動走行モードの制御装置15は、供給位置用近接センサ、組立位置用近接センサ及び磁気センサからの電気信号に基づいて台車1を走行させる。具体的には、制御装置15は、モード切替スイッチで自動走行モードにされた場合、図9に示すフローチャートのプログラムを開始する。
ステップS01にて制御装置15は、台車1が供給位置8にあるか否かを判別する。この判別処理は、供給位置用近接センサがターゲットを検出しているか否かで行う。台車1が供給位置8にない場合(NO)、すなわち、供給位置用近接センサがターゲットを検出していない場合、処理はステップS10に進む。ステップS10にて制御装置15は、台車1を供給位置8に向けて走行させる。このとき、制御装置15は、磁気センサからの信号に基づいて磁気テープ25に沿って台車1を走行させるように走行駆動装置12を制御する。また、制御装置15は、ステップS01にて台車1が供給位置8に到達するまで、ステップS01とステップS10を繰り返し実行する。ステップS01にて台車1が供給位置8に到達した場合(YES)、すなわち、供給位置用近接センサがターゲットを検出した場合、処理はステップS02に進む。
ステップS02にて制御装置15は、台車1を停止させる。この後、処理はステップS03に進む。
ステップS03にて制御装置15は、ワーク載せ部14上にワーク2が載ったか否かを判別する。この判別処理は、ロードセル13の測定値の合計が予め設定された所定値より大きいか否かで行う。この所定値とは、ワーク載せ部14上にワーク2が載っていないときの各ロードセル測定値の総和にほぼ等しい値である。ワーク載せ部14上にワーク2が載っていない場合(NO)、制御装置15はステップS03の判別処理を繰り返して待機状態となる。この後、供給ライン3上のワーク2は、供給ライン3に設けられたプッシャによって台車1上に受け渡される。ワーク載せ部14上にワーク2が載った場合(YES)、処理はステップS04に進む。
ステップS04にて制御装置15は、ロードセル13の測定値の合計を基準荷重L0として記憶する。基準荷重L0は、後述するアシストモードで使用する。この後、処理はステップS05に進む。
ステップS05にて制御装置15は、ロードセル13の測定値に基づいてワーク2の重心位置を算出し、この重心位置を基準重心位置G0として記憶する。例えば、重さ40kgのワーク2がワーク載せ部14上の中心に置かれ、ワーク載せ部14の四隅に2個ずつ配置されるロードセル13に1個当たり5kgずつの重さがかかった場合、基準重心位置G0はワーク載せ部14の中心となる。基準重心位置G0は、後述するアシストモードで使用する。この後、処理はステップS06に進む。
ステップS06にて制御装置15は、台車1を組立位置9に向けて走行させる。このとき、制御装置15は、磁気センサからの信号に基づいて磁気テープ25に沿って台車1を走行させるように走行駆動装置12を制御する。また、制御装置15は、ステップS07にて台車1が組立位置9に到達するまで、すなわち、組立位置用近接センサがターゲットを検出するまで、ステップS06とステップS07を繰り返し実行する。ステップS07にて台車1が組立位置9に到達した場合、処理はステップS08に進む。
ステップS08にて制御装置15は、台車1を停止させる。この後、処理はステップS09に進む。
ステップS09にて制御装置15は、自動走行モードを終了し、アシストモードを開始する。具体的には、制御装置15は、実行するプログラムを図9に示すフローチャートのものから図10及び図11に示すフローチャートのものに切り替える。
アシストモードとなった制御装置15は、図10に係るプログラムと図11に係るプログラムとを並行して進める。図10に係るプログラムは、ワーク2を水平方向に動かす力をアシストする機能(水平アシスト機能)を実現する。図11に係るプログラムは、ワーク2を上下方向に動かす力をアシストする機能(昇降アシスト機能)を実現する。
まず、水平アシスト機能について説明する。
図10に示すように、ステップS11にて制御装置15は、複数のロードセル13で検出される荷重に基づいてワーク2の重心位置Gを算出する。この後、ステップS12にて制御装置15は、ワーク2が水平方向成分を含む外力(作業員の手による力)を受けているか否かを判別する。この判別処理は、ロードセル13の測定値から算出される重心位置Gが基準重心位置G0から移動されているか否かで行う。
図6に示すように、例えばワーク2の左面が右方向に押された場合、全方向車輪11a、11b、11cは回転をロックされているのでワーク2には、矢印A方向のモーメントが発生する。これにより、ワーク2の重心位置Gは、見かけ上右方向に移動される。これにより重心位置Gより右方向にあるロードセル13が受ける荷重は増加し、重心位置Gより左方向にあるロードセル13が受ける荷重は減少する。図10に示すステップS12では、かかる原理を利用してワーク2が水平方向成分を含む外力を受けているか否かを判別する。
ワーク2が水平方向成分を含む外力を受けている、すなわち、ロードセル13の測定値から算出される見かけ上の重心位置Gが基準重心位置G0とは異なる場合(G≠G0:YES)、処理はステップS13に進む。
ステップS13にて制御装置15は、基準重心位置G0に対する重心位置Gの移動方向に台車1を走行させるように走行駆動装置12を制御する。このとき制御装置15は、重心位置Gの移動量に応じた速度、すなわち、重心位置Gの移動量が、小さければ低い速度、大きければ高い速度で台車1を走行させる。具体的には、制御装置15は、以下の式(1)を用いて各全方向車輪11a、11b、11cの走行速度を決定する。
ここで、変数Vxは、台車1を任意の速度Vで任意の方向に走行させる場合のx方向(前方向)の速度成分である。変数Vyは、この場合のy方向(左方向)の速度成分である。また、V1は、台車1をVx、Vyで走行させる場合に必要となる第1全方向車輪11aの走行速度である。V2は、台車1をVx、Vyで走行させる場合に必要となる第2全方向車輪11bの走行速度である。V3は、台車1をVx、Vyで走行させる場合に必要となる第3全方向車輪11cの走行速度である。この後、処理は終了となり、制御装置15は図10に係るプログラムを繰り返し実行する。
また、ステップS12にて、ワーク2が水平方向成分を含む外力を受けていない、すなわち、ロードセル13の測定値から算出される見かけ上の重心位置Gが基準重心位置G0と同じ場合(G=G0:NO)、処理は終了となり、制御装置15は図10に係るプログラムを繰り返し実行する。
第1全方向車輪11a、第2全方向車輪11b及び第3全方向車輪11cの回転がこのように制御されることにより、例えば、ワーク2が作業者によって左方に押された場合、台車1を左方に走行させて作業者によるワーク2の位置決めをアシストすることができる。
次に昇降アシスト機能について説明する。
図11に示すように、ステップS21にて制御装置15は、複数のロードセル13で検出される荷重の総和Lを算出する。この後、ステップS22にて制御装置15は、ワーク2が下方向の成分を含む外力(作業員の手による力)を受けているか否かを判別する。この判別処理は、ロードセルで測定される荷重の総和Lが基準荷重L0より大きいか否かで行う。
図7に示すように、例えばワーク2の上面が下方向に押された場合、ロードセルで測定される荷重の総和Lは、増加して基準荷重L0より大きくなる。図11に示すステップS22では、かかる原理を利用してワーク2が下方向の成分を含む外力を受けているか否かを判別する。
ステップS22にて、ワーク2が下方向の成分を含む外力を受けている場合、すなわち、ロードセルで測定される荷重の総和Lが基準荷重L0より大きい場合(L>L0:YES)、処理はステップS23に進む。
ステップS23にて制御装置15は、リフト部17を下降させるように昇降駆動装置38を制御する。このとき、制御装置15は、荷重の総和Lと基準荷重L0との差(L−L0)に応じた速度でリフト部17を下降させる。すなわち、荷重の総和Lと基準荷重L0との差が小さければ遅い速度、大きければ高い速度で昇降駆動装置38たるエアシリンダを縮退させる。
昇降駆動装置38がこのように制御されることにより、例えば、ワーク2が作業者によって押し下げられた場合、リフト部17を下降させることができ、作業者によるワーク2の位置決めをアシストすることができる。この後、処理は終了となり、制御装置15は図11に係るプログラムを繰り返し実行する。
また、ステップS22にて、荷重の総和Lが基準荷重L0より大きくない場合(L≦L0:NO)、処理はステップS24に進む。
ステップS24にて制御装置15は、ワーク2が上方向の成分を含む外力(作業員の手による力)を受けているか否かを判別する。この判別処理は、ロードセルで測定される荷重の総和Lが基準荷重L0より小さいか否かで行う。
図8に示すように、例えばワーク2が上方向に引き上げられた場合、ロードセルで測定される荷重の総和Lは、減少して基準荷重L0より小さくなる。図11に示すステップS24では、かかる原理を利用してワーク2が上方向の成分を含む外力を受けているか否かを判別する。
ワーク2が上方向の成分を含む外力を受けている場合、すなわち、ロードセルで測定される荷重の総和Lが基準荷重L0より小さい場合(L<L0:YES)、処理はステップS25に進む。
ステップS25にて制御装置15は、リフト部17を上昇させるように昇降駆動装置38を制御する。このとき、制御装置15は、基準荷重L0と荷重の総和Lとの差(L0−L)に応じた速度でリフト部17を上昇させる。すなわち、基準荷重L0と荷重の総和Lとの差が小さければ遅い速度、大きければ高い速度で昇降駆動装置38たるエアシリンダを伸張させる。
昇降駆動装置38がこのように制御されることにより、例えば、ワーク2が作業者によって引き上げられた場合、リフト部17を上昇させることができ、作業者によるワーク2の位置決めをアシストすることができる。この後、処理は終了となり、制御装置15は図11に係るプログラムを繰り返し実行する。
また、ステップS24にて、ワーク2が上方向の成分を含む外力を受けていない場合、すなわち、ロードセルで測定される荷重の総和Lが基準荷重L0より大きくもなく(ステップS22)小さくもない(ステップS24)場合(L=L0:NO)、処理は終了となり、制御装置15は図11に係るプログラムを繰り返し実行する。
このようにしてワーク2が製品4に取り付けられたら、モード切替スイッチを押す。これにより、制御装置15は、アシストモードから自動走行モードに切り替わり、実行するプログラムを図10及び図11に示すフローチャートのものから図9に示すフローチャートのものに切り替える。これにより、台車1は自動的に供給位置8に戻される。
このように、制御装置15は、複数のロードセル13で検出される荷重に基づいてワーク2の重心位置Gを算出し、この重心位置Gが移動したときその移動方向に台車1を走行させるように走行駆動装置12を制御する。このため、重量があるワーク2であっても、ワーク2を水平方向に押すことにより、その方向に台車1を走行駆動装置12で走行させることができ、ワーク2の水平移動をアシストできる。そして、製品4に対するワーク2の組み付け作業を安定して迅速に行うことができる。
また、制御装置15は、複数のロードセル13で検出される荷重の総和Lが減少したときリフト部17を上昇させるように昇降駆動装置38を制御し、荷重の総和Lが増加したときリフト部17を下降させるように昇降駆動装置38を制御する。このため、重量があるワーク2であっても、ワーク2に引き上げる方向の力を加えることによりリフト部17を上昇させることができ、ワーク2の上昇をアシストできる。また、ワーク2に押し下げる方向の力を加えることによりリフト部17を下降させることができ、ワーク2の下降をアシストできる。そして、製品4に対するワーク2の組み付け作業を安定して迅速に行うことができる。
また特に、混流生産方式のように組立ライン5に複数種類の製品4が流れ、供給ライン3に複数種類のワーク2が流れる場合、ホイストでワーク2を吊り下げて製品4に位置決めする作業方法を採用すると、ワーク2の重さによって作業時間が大きく異なることがある。具体的には、重さが10kg程度のワーク2はホイストを用いなくても製品4に組み付けることができ、極めて短い時間で作業を終えられるのに対し、重さが50kgもあるワーク2はホイストを用いて位置決めしなくてはならず、ホイストへのワーク2の着脱やホイストの操作に時間がかかる。 しかし、本実施の形態に係る台車1によれば、ワーク2の重量によらず一定の時間で組立位置9にワーク2を移動させることができる。また、台車1は全方向に走行できるため、操舵がなく、コンパクトに走行させることができる。そして、製品4に対してワーク2を位置合わせするとき、ワーク2に水平方向の力を加えることでその力をアシストするように台車1が走行する。また、ワーク2に上下方向の力を加えることでその力をアシストするようにワーク載せ部14が昇降する。このため、ワーク2をあたかも重量がなくなったかのように取り扱うことができ、ワーク2の重さが100kgでも10kgでも重量によらず一定の時間で効率よくワーク2の位置合わせができる。そして、混在生産方式であってもワーク2の組み付けに要する時間を短く、かつ、一定にでき、生産ライン全体の効率を高めることができる。
以上、本開示の実施形態を詳細に述べたが、本開示は以下のような他の実施形態も可能である。
(1)台車1は3つの全方向車輪11a、11b、11cを備えるものとしたが、これに限られない。全方向車輪の数は4つ以上の複数であってもよい。
(2)台車1は、ワーク2に上下方向の外力が加えられたときリフト部17を昇降させるものとしたが、これに限られない。例えば、供給ライン3の高さとワーク2の組み付け位置の高さとが常に一定である場合、ワーク2を昇降させる機能は省略されてもよく、ボタン操作などでワーク2を昇降させるものとしてもよい。
(3)ワーク載せ部14はローラコンベア34を備えるものとしたが、これに限られない。ローラコンベア34は省略されてもよい。
(4)ワーク載せ部14は平面視矩形状に形成されるものとしたが、これに限られない。例えばワーク載せ部14は平面視円形に形成されてもよい。この場合、ロードセルは、ワーク載せ部14の外周部を周方向に等間隔に支持するように配置されるとよい。
(5)台車1は、供給位置用近接センサ及び組立位置用近接センサを備え、これら供給位置用近接センサ及び組立位置用近接センサで供給位置及び組立位置に到達したことを検出するものとしたが、これに限られない。例えば、台車1が供給位置及び組立位置を検出するための磁気センサを別途備えるものとしてもよい。この場合、供給位置及び組立位置に設けられるターゲットは磁石で構成されるとよい。
(6)リフト部17は、固定部16に対して上下方向にスライド自在であるものについて説明したが、これに限られない。例えば、リフト部17は、上下方向に伸縮可能なパンタグラフ状の部材を介して固定部16に昇降自在に支持されてもよい。