JP2021016960A - ビード部材の圧着方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】巻き上げ途中状態にあるカーカスプライの中央部にビードフィラーを適切に圧着してエア入りの発生を抑制可能なビード部材の圧着方法を提供する。【解決手段】ビードコア1aとビードフィラー1bとを有するビード部材10に、円筒状に成形されたカーカスプライ40を挿入する第1の段階と、ビードコア1aを介して巻き上げられたカーカスプライ40の端部とビードフィラー1bとがV字状の隙間30を形成する状態を保持しながら、ビードフィラー1bをカーカスプライ40の中央部に圧着させる第2の段階とを含む。第2の段階では、径方向内側Riに向かって軸線51からの距離が大きくなる傾斜押圧面52を備えたロール50を隙間30に侵入させ、傾斜押圧面52によりビードフィラー1bを押圧してカーカスプライ40の中央部に圧着させる。【選択図】図4
Description
本発明は、グリーンタイヤの成形工程においてカーカスプライの中央部にビードフィラーを圧着する方法に関する。
通常、空気入りタイヤは、トレッド部からサイドウォール部を経てビード部に至る本体部に、ビードフィラーのタイヤ幅方向外側に配置された巻き上げ部を一連に設けたカーカスプライからなるカーカス層を備えている。かかる空気入りタイヤを得るためのグリーンタイヤの成形工程には、円筒状に成形したカーカスプライを環状のビード部材に挿入する段階と、そのビード部材のビードフィラーを、本体部となるカーカスプライの中央部に圧着させる段階とが含まれる。
ところが、巻き上げ部となるカーカスプライの端部を途中まで巻き上げ(図3参照)、そのカーカスプライの端部とビードフィラーとがV字状の隙間を形成する状態(以下、巻き上げ途中状態)を保持しながら、カーカスプライの中央部にビードフィラーを圧着させる場合においては、ビードフィラーの押圧不足に起因したエア入りが発生しやすいことが判明した。本発明者が原因を調査したところ、巻き上げ途中状態では、カーカスプライの端部にロールが干渉しやすく、それが影響してビードフィラーの根元をロールで押圧するのが難しくなることが見出された。
特許文献1及び2には、ビードフィラーをカーカスプライに密着させるためのロールが記載されているが、どちらも巻き上げ途中状態で用いられるものではない。また、ロールの形状として、径一定の円柱状や、円錐状、半球状などが開示されているものの、巻き上げ途中状態で使用した場合は、いずれもカーカスプライの端部との干渉によりビードフィラーの押圧に支障を来たすことが懸念される。巻き上げ途中状態では、カーカスプライの端部との干渉の影響を抑えて、ビードフィラーの根元をロールで押圧することが大変重要となるが、そのための手法は上記文献に開示されていない。
本発明は、巻き上げ途中状態にあるカーカスプライの中央部にビードフィラーを適切に圧着してエア入りの発生を抑制可能なビード部材の圧着方法を提供することを目的とする。
上記目的は、下記の如き本発明により達成できる。即ち、本発明に係るビード部材の圧着方法は、環状のビードコアと、前記ビードコアから径方向外側に延びるビードフィラーとを有するビード部材に、円筒状に成形されたカーカスプライを挿入する第1の段階と、前記ビードコアを介して巻き上げられた前記カーカスプライの端部と前記ビードフィラーとがV字状の隙間を形成する状態を保持しながら、前記ビードフィラーを前記カーカスプライの中央部に圧着させる第2の段階とを含み、前記第2の段階では、径方向内側に向かって軸線からの距離が大きくなる傾斜押圧面を備えたロールを前記V字状の隙間に侵入させ、前記傾斜押圧面により前記ビードフィラーを押圧して前記カーカスプライの中央部に圧着させるものである。
この方法によれば、上記の如き傾斜押圧面を備えたロールを用いることにより、巻き上げ途中状態にあるカーカスプライの端部との干渉を避けて、または干渉したとしてもその影響を抑えて、ビードフィラーの根元をロールで押圧することができる。その結果、カーカスプライの中央部にビードフィラーを適切に圧着して、エア入りの発生を抑制できる。
V字状の隙間に侵入させたロールとカーカスプライの端部との干渉を避け、または干渉したとしてもその影響を抑える観点から、前記ビードフィラーの根元に近い方の前記ロールの端面と前記傾斜押圧面とが鋭角をなすことが好ましい。
ビードフィラーまたはカーカスプライの端部をロールで損傷させないうえで、前記ビードフィラーの根元に近い方の前記ロールの角部が円弧状に形成されていることが好ましい。
前記第2の段階では、前記ビード部材及び前記カーカスプライを支持する回転支持体を回転させながら、前記ロールを径方向外側に向けて移動させて、前記傾斜押圧面により前記ビードフィラーを根元から先端に向かって押圧することが好ましい。これにより、カーカスプライの中央部とビードフィラーとの間のエア残留を防いで、エア入りの発生を効果的に抑制できる。
V字状の隙間に侵入させたロールとカーカスプライの端部との干渉を避け、または干渉したとしてもその影響を抑える観点から、前記ロールは、軸直角方向よりも軸線方向に長い形状を有することが好ましい。
本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。まずは、図1を参照して、空気入りタイヤの構成の一例について説明する。次いで、図2〜5を参照して、その空気入りタイヤを得るためのグリーンタイヤの成形工程について説明する。
図1に示す空気入りタイヤPTは、一対のビード部1と、一対のビード部1の各々から径方向外側Roに延びる一対のサイドウォール部2と、サイドウォール部2の各々の径方向外側端に連なるトレッド部3とを備える。タイヤPTは、タイヤ赤道面TEに関して左右対称に構成されている。ビード部1には、環状のビード部材10が埋設されている。ビード部材10は、環状のビードコア1aと、ビードコア1aから径方向外側Roに延びるビードフィラー1bとを有する。ビードコア1aは、鋼線などの収束体をゴム被覆して形成されている。ビードフィラー1bは、断面三角形状の硬質ゴムで形成されている。
タイヤPTは、更に、一対のビード部1の間に架け渡されたトロイド状のカーカス層4と、トレッド部3の外表面を形成するトレッドゴム5と、サイドウォール部2の外表面を形成するサイドウォールゴム6と、ビード部1の外表面を形成するリムストリップゴム7とを備える。トレッド部3には、カーカス層4の径方向外側Roに積層されたベルト層8と、そのベルト層8の径方向外側Roに積層されたベルト補強層9とが設けられ、それらがトレッドゴム5で覆われている。トレッドゴム5の表面には、要求されるタイヤ性能や使用条件に応じたトレッドパターンが形成されている。タイヤPTの内表面は、インナーライナーゴム11で形成されている。
カーカス層4は、タイヤ周方向に対して略直交する方向に配列した複数のカーカスコードをゴム被覆してなるカーカスプライ40を含む。カーカスコードの材料には、スチールなどの金属、または、ポリエステルやレーヨン、ナイロン、アラミドなどの有機繊維が好ましく用いられる。カーカスプライ40は、トレッド部3からサイドウォール部2を経てビード部1に至る本体部41に、ビードフィラー1bのタイヤ幅方向外側に配置された巻き上げ部42を一連に設けてある。カーカスプライ40の端部は、ビード部材10を挟み込むようにして径方向外側Roに巻き上げられて(即ち、ターンアップされて)いる。
ベルト層8は、タイヤ周方向に対して傾斜する方向に配列した複数のベルトコードをゴム被覆してなるベルトプライで形成されている。ベルト層8は、複数枚(本実施形態では二枚)のベルトプライにより構成され、そのプライ間でコードが互いに逆向きに交差するように積層されている。ベルトコードの材料には、スチールが好ましく用いられる。ベルト補強層9は、実質的にタイヤ周方向に延びるコードをゴム被覆してなる補強プライで形成されている。コードの材料には、有機繊維が好ましく用いられる。ベルト補強層9によってベルト層8を補強することにより、高速耐久性能を向上できる。
サイドウォールゴム6は、トレッドゴム5の側方部から径方向内側Riに延びてリムストリップゴム7に到達している。また、サイドウォールゴム6は、カーカス層4のタイヤ幅方向外側(図1の右側)に配置されている。このタイヤPTでは、サイドウォールゴム6の径方向外側Roの端部をトレッドゴム5の側方部に載せてなる、いわゆるサイドウォールオントレッド(SWOT:sidewall on tread)構造が採用されている。本実施形態では、ビード部1とサイドウォール部2との境界部にサイドプロテクタ12が設けられている例を示す。
この空気入りタイヤPTを得るためのグリーンタイヤの成形工程では、まず、図2に示すように、環状のビードコア1aと、そのビードコア1aから径方向外側Roに延びるビードフィラー1bとを有するビード部材10に、円筒状に成形されたカーカスプライ40を挿入する(第1の段階)。このカーカスプライ40は、第1成形ドラム21の外周に沿って巻き付けることにより円筒状に成形されている。カーカスプライ40は、第1成形ドラム21に予め巻き付けられた未加硫のインナーライナーゴム11及びリムストリップゴム7の外周に配置されている。
続いて、第1成形ドラム21を少し拡径し、ビード部材10の内周面にカーカスプライ40を密着させ、それによって得られた円筒状成形体を第1成形ドラム21から第2成形ドラム22(図3参照)に移す。第2成形ドラム22では、一対のビード部材10を互いに近接移動させるとともに、円筒状成形体の中央部の内面側にエアを供給することで、図3のように本体部41となるカーカスプライ40の中央部を径方向外側Roに膨張させる。その際、巻き上げ部42となるカーカスプライ40の端部が、張力の作用によって径方向外側Roに持ち上がる。
図3では、カーカスプライ40の端部が、途中まで巻き上げられ、完全には巻き上げられていない。カーカスプライ40は巻き上げ途中状態にあり、そのカーカスプライ40の端部とビードフィラー1bとがV字状の隙間30を形成している。隙間30は、径方向内側Riに向かって先細りになっており、ビードフィラー1bの根元に近付くにつれて幅狭になる。途中まで巻き上げられたカーカスプライ40の端部は、径方向外側Roに向かってビードフィラー1bから徐々に離れるように傾いている。本実施形態では、このような隙間30を形成する状態を保持しながら、ビードフィラー1bをカーカスプライ40の中央部に圧着させる(第2の段階)。
第2の段階では、図4に示したロール50が用いられる。ロール50は、径方向内側Riに向かって軸線51からの距離dが大きくなる傾斜押圧面52を備える。軸線方向に対する傾斜押圧面52の角度θ1は、例えば5〜15度である。このロール50をV字状の隙間30に侵入させ、傾斜押圧面52によりビードフィラー1bを押圧してカーカスプライ40の中央部に圧着させる。かかる形状のロール50を用いることにより、巻き上げ途中状態にあるカーカスプライ40の端部との干渉を避けて、または干渉してもその影響を抑えて、ビードフィラー1bの根元をロール50で押圧できる。その結果、カーカスプライ40の中央部にビードフィラー1bを適切に圧着し、エア入りの発生を抑制できる。
また、第2の段階では、カーカスプライ40を支持する第2成形ドラム22(回転支持体に相当)を回転させながら、ロール50を径方向外側Roに向けて移動させて、傾斜押圧面52によりビードフィラー1bを根元から先端に向かって押圧する。本実施形態において、ビードフィラー1bを押圧する際のロール50の移動経路は、図4に矢印Aで示すようにビードフィラー1bの根元から先端に向かう一方向である。ロール50は、軸線51周りに回転自在に軸支されており、第2成形ドラム22の回転に伴うビードフィラー1bの回転に追随して回転する。
ロール50は、軸線51を径方向内側Riに向かって幅方向外側(図4右側)に傾斜させた姿勢で、ロール軸53によって上方から支持されている。ロール軸53は、図示しないロール支持体に取り付けられている。ロール支持体は、径方向(図4の上下方向)及び幅方向(図4の左右方向)にロール50を移動可能に構成されている。ロール支持体は、ビードフィラー1bの側面に傾斜押圧面52を面接触させるようにしてロール50を移動させる。必要であれば、ロール50でビードフィラー1bを押圧する過程で、軸線51の傾斜角度を変化させてもよい。
ロール50は、径方向外側Roに上底を向け、径方向内側Riに下底を向けた円錐台形状に形成されている。したがって、ロール50は、軸線方向(軸線51の方向)と直交する軸直角方向から見て台形状をなす(図4参照)。傾斜押圧面52は、直線状に形成されているが、外向きに凸状をなす緩やかな湾曲形状でもよい。ビードフィラー1bの根元に近い方のロール50の端面54(下底)は、軸線方向に垂直な平面で形成されている。本実施形態では、この端面54と傾斜押圧面52とが鋭角をなしており(θ2<90度)、かかる形状は、V字状の隙間30に侵入させたロール50とカーカスプライ40の端部との干渉の影響を抑えるうえで有用である。
ビードフィラー1bやカーカスプライ40の端部をロール50で損傷させないよう、ビードフィラー1bの根元に近い方のロール50の角部55は円弧状に形成されている。これらのゴム部材の損傷を防ぐうえで、円弧状をなす角部55の曲率半径は3mm以上であることが好ましい。また、ビードフィラー1bの根元を適切に押圧するうえで、角部55の曲率半径は6mm以下であることが好ましい。本実施形態では、ロール50が樹脂で形成されているが、ロール50の材質は特に限定されない。
本実施形態において、ロール50は、軸直角方向よりも軸線方向に長い形状を有する。即ち、軸直角方向の寸法である最大径D50に比べて、軸線方向に沿った長さL50の方が大きい。かかる形状は、V字状の隙間30に侵入させたロール50とカーカスプライ40の端部との干渉の影響を抑えるうえで有用である。ビードフィラー1bを適切に押圧するうえで、軸線方向における傾斜押圧面52の長さは、長さL50の50%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましい。また、ビードフィラー1bを適切に押圧するうえで、軸線方向における傾斜押圧面52の長さは、径方向に沿ったビードフィラー1bの長さの50〜100%であることが好ましい。
第2の段階の後、隙間30からロール50を引き上げ、図5のようにカーカスプライ40の端部を更に巻き上げてビードフィラー1bに圧着させる(第3の段階)。これにより、V字状の隙間30が閉じ、カーカスプライ40の中央部(本体部41)と端部(巻き上げ部42)とでビード部材10が挟み込まれる。カーカスプライ40の端部の巻き上げは、図示しないターンアップブラダと呼ばれるゴムバッグを用いて行われる。その後、カーカスプライ40の中央部を径方向外側Roに更に膨張させて、その外周面を別途作成したトレッドリング13の内周面に密着させる。トレッドリング13は、トレッドゴム5、ベルト層8及びベルト補強層9を含む円筒状成形体である。
第3の段階の後、サイドウォール部2にサイドウォールゴム6を設け、グリーンタイヤを成形する。サイドウォールゴム6は、例えばリボン巻き工法によって設けることができる。リボン巻き工法は、帯状のゴムリボンをタイヤ周方向に沿って巻回することにより、所望の断面形状を有するゴム部材を成形する工法である。成形したグリーンタイヤをタイヤ加硫金型に供給し、常法に従って加硫処理を施すことにより、加硫成形品としての空気入りタイヤPTが得られる。
本実施形態では、カーカスプライ40の中央部を膨張させて拡径し、径方向外側Roに立ち上がったカーカスプライ40にビードフィラー1bを圧着する例を示したが、これに限られず、例えば、図6に示すように、径方向外側Roに膨張させていないカーカスプライ40の中央部に向けてビードフィラー1bを押し倒して圧着しても構わない。この場合は、軸線51の傾斜角度を変化させながらロール50を移動させればよい。その後、カーカスプライ40の端部を巻き上げてビードフィラー1bに圧着させるとともに、カーカスプライ40の中央部を径方向外側Roに膨出させることで、図5の状態となる。
本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能である。
1 ビード部
1a ビードコア
1b ビードフィラー
10 ビード部材
22 第2成形ドラム(回転支持体の一例)
30 V字状の隙間
40 カーカスプライ
41 本体部
42 巻き上げ部
50 ロール
51 軸線
52 傾斜押圧面
53 ロール軸
54 端面
55 角部
1a ビードコア
1b ビードフィラー
10 ビード部材
22 第2成形ドラム(回転支持体の一例)
30 V字状の隙間
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41 本体部
42 巻き上げ部
50 ロール
51 軸線
52 傾斜押圧面
53 ロール軸
54 端面
55 角部
Claims (5)
- 環状のビードコアと、前記ビードコアから径方向外側に延びるビードフィラーとを有するビード部材に、円筒状に成形されたカーカスプライを挿入する第1の段階と、
前記ビードコアを介して巻き上げられた前記カーカスプライの端部と前記ビードフィラーとがV字状の隙間を形成する状態を保持しながら、前記ビードフィラーを前記カーカスプライの中央部に圧着させる第2の段階とを含み、
前記第2の段階では、径方向内側に向かって軸線からの距離が大きくなる傾斜押圧面を備えたロールを前記V字状の隙間に侵入させ、前記傾斜押圧面により前記ビードフィラーを押圧して前記カーカスプライの中央部に圧着させる、ビード部材の圧着方法。 - 前記ビードフィラーの根元に近い方の前記ロールの端面と前記傾斜押圧面とが鋭角をなす請求項1に記載のビード部材の圧着方法。
- 前記ビードフィラーの根元に近い方の前記ロールの角部が円弧状に形成されている請求項1または2に記載のビード部材の圧着方法。
- 前記第2の段階では、前記ビード部材及び前記カーカスプライを支持する回転支持体を回転させながら、前記ロールを径方向外側に向けて移動させて、前記傾斜押圧面により前記ビードフィラーを根元から先端に向かって押圧する請求項1〜3いずれか1項に記載のビード部材の圧着方法。
- 前記ロールは、軸直角方向よりも軸線方向に長い形状を有する請求項1〜4いずれか1項に記載のビード部材の圧着方法。
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