JP2021009994A - 積層型電子部品および積層型電子部品の製造方法 - Google Patents

積層型電子部品および積層型電子部品の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】高い抗折強度を有する積層型電子部品を提供する。【解決手段】積層された複数の誘電体層と複数の内部電極層とを含む積層体を備え、複数の誘電体層は第1の相を含む複数の結晶粒を有し、内部電極層は第1の内部電極層および第2の内部電極層を有し、積層体は複数の内部電極層がそれぞれ誘電体層を介して相対している電極相対部と、電極相対部を囲む外周部とを有し、外周部は複数の結晶粒の粒界の少なくとも一部にSn、Cu、Fe、Ni、Cr、Mn、V、AlおよびPのうち少なくとも1つを含み、第1の相と異なる第2の相をさらに有する積層型電子部品が提供される。【選択図】図7

Description

この開示は、積層型電子部品および積層型電子部品の製造方法に関する。
車載機器に適用される積層セラミックコンデンサなどの積層型電子部品は、高い機械的強度が要求される。この明細書で言う機械的強度とは、後述する抗折強度試験における破壊に至るまでの荷重(以後、単に抗折強度と呼称することがある)を指すものとする。
積層型電子部品の一例として、特開2018−181940号公報(特許文献1)に記載された積層セラミックコンデンサが挙げられる。特許文献1には、内部電極層の強度を向上させることにより、積層セラミックコンデンサの抗折強度を向上させる技術が開示されている。
特開2018−181940号公報
積層セラミックコンデンサは、積層された複数の誘電体層と複数の内部電極層とを含む積層体を備える。積層体は、複数の内部電極層がそれぞれ誘電体層を介して相対している電極相対部と、電極相対部を囲む外周部とを有している。抗折強度には、外周部の強度が大きな影響を与えると考えられるが、特許文献1には、外周部の強度の向上については、何ら言及されていない。
この開示の目的は、高い抗折強度を有する積層型電子部品およびその製造方法を提供することである。
この開示に従う積層型電子部品は、積層された複数の誘電体層と複数の内部電極層とを含む積層体を備える。複数の誘電体層は、第1の相を含む複数の結晶粒を有する。内部電極層は、第1の内部電極層および第2の内部電極層を有する。積層体は、複数の内部電極層がそれぞれ誘電体層を介して相対している電極相対部と、電極相対部を囲む外周部とを有する。そして、外周部は、複数の結晶粒の粒界の少なくとも一部に、Sn、Cu、Fe、Ni、Cr、Mn、V、AlおよびPのうち少なくとも1つを含み、第1の相と異なる第2の相をさらに有する。
この開示に従う積層型電子部品の製造方法は、以下の工程を備える。1つの工程は、複数の焼結前誘電体層を得る工程である。別の工程は、焼結前誘電体層に、内部電極層用ペーストを用いて、焼結前内部電極層を形成する工程である。さらに別の工程は、焼結前内部電極層が形成された焼結前誘電体層を含む複数の焼結前誘電体層を積層し、焼結前積層体を得る工程である。そして、さらに別の工程は、焼結前積層体を焼結させ、積層された複数の誘電体層と、複数の内部電極層とを含む積層体を得る工程である。
積層体を得る工程は、焼結途中の焼結前積層体を、Sn、Cu、Fe、Ni、Cr、Mn、V、AlおよびPのうち少なくとも1つを含む化合物のゾルに浸漬する工程と、ゾルに浸漬後の焼結途中の焼結前積層体を焼結させる工程とを含む。
この開示に従う積層型電子部品によれば、抗折強度を向上させることができる。また、この開示に従う積層型電子部品の製造方法によれば、抗折強度を向上させた積層型電子部品を製造することができる。
この開示に従う積層型電子部品の第1の実施形態である積層セラミックコンデンサ100の、長さ方向中央部の断面図である。 積層セラミックコンデンサ100の、幅方向中央部の断面図である。 積層セラミックコンデンサ100の積層体10における外周部13bの微細構造の調査方法について説明するための、積層体10の長さ方向中央部の断面図である。 積層体10の幅方向中央部の断面図である。 積層体10の長さ方向中央部の領域R1における、走査型電子顕微鏡(以後、SEMと略称することがある)観察像の模式図である。 積層体10の長さ方向中央部の領域R4における、SEM観察像の模式図である。 積層体10の長さ方向中央部の領域R7における、SEM観察像の模式図である。 積層体10の長さ方向中央部の領域R4における、SEM観察像の拡大模式図である。 この開示に従う積層型電子部品の第2の実施形態である積層セラミックコンデンサ100Aの積層体10Aの長さ方向中央部の領域R4における、SEM観察像の模式図である。 この開示に従う積層型電子部品の第3の実施形態である積層セラミックコンデンサ100Bの積層体10Bの長さ方向中央部の領域R4における、SEM観察像の模式図である。 グリーン積層体10gを得る工程を示した断面図である。 グリーン積層体10gを加熱して、焼結前積層体10pとした後、Sn化合物ゾルに浸漬して、Sn化合物Sを外周部13bpおよび電極相対部13apの一部に含浸させた状態を示した断面図である。 焼結前積層体10pをさらに加熱して、第1の内部電極層12aおよび第2の内部電極層12bが焼結した半焼結積層体10pとする工程を示した断面図である。 半焼結積層体10pをさらに加熱して、焼結した積層体10を得る工程が示された断面図である。
この開示の特徴とするところを、図面を参照しながら説明する。なお、以下に示す積層型電子部品の実施形態では、同一のまたは共通する部分について図中同一の符号を付し、その説明は繰り返さないことがある。
−積層型電子部品の第1の実施形態−
この開示に従う積層型電子部品の第1の実施形態である積層セラミックコンデンサ100について、図1から図6を用いて説明する。
<積層セラミックコンデンサの構造>
図1および図2は、積層セラミックコンデンサ100の断面図である。すなわち、図1は、積層セラミックコンデンサ100の長さ方向中央部の断面図である。図2は、積層セラミックコンデンサ100の、幅方向中央部の断面図である。
積層セラミックコンデンサ100は、積層体10を備えている。積層体10は、積層された複数の誘電体層11と複数の内部電極層12とを含む。積層体10は、第1の主面14aおよび第2の主面14bと、第1の側面15aおよび第2の側面15bと、第1の端面16aおよび第2の端面16bとを有する。第1の主面14aおよび第2の主面14bは、積層方向において相対している。第1の側面15aおよび第2の側面15bは、積層方向と直交する幅方向において相対している。第1の端面16aおよび第2の端面16bは、積層方向および幅方向と直交する長さ方向において相対している。
複数の誘電体層11は誘電体で構成される層である。複数の誘電体層11は、それぞれ、例えばBaを含んで構成されるペロブスカイト型化合物を含む第1の相P1(図8参照、後述)を成分とする複数の結晶粒を有する。上記のペロブスカイト型化合物としては、例えばBaTiOを基本的な構造とするペロブスカイト型化合物が挙げられる。
内部電極層12は、導電性材料を含む。内部電極層12を構成する導電性材料としては、Ni、Ni合金、CuおよびCu合金のうち1つから選ばれる少なくとも一種の金属または当該金属を含む合金が挙げられる。内部電極層12は、後述するように共材と呼ばれる誘電体粒子をさらに含んでいてもよい。共材は、積層体10の焼成時において、内部電極層12の焼結収縮特性を誘電体層11の焼結収縮特性に近づけるために添加されるものであり、その効果が発現されるものである限り、その材質は特に制限されない。
複数の誘電体層11は、外層部と内層部とを備える。外層部は、積層体10の第1の主面14aと第1の主面14aに最も近い内部電極層12との間に設けられた第1の外層部D1と、第2の主面14bと第2の主面14bに最も近い内部電極層12との間に設けられた第2の外層部D2とを含む。内層部は、第1の外層部D1と第2の外層部D2とに挟まれた領域に配置されている。
複数の内部電極層12は、第1の内部電極層12aと第2の内部電極層12bとを有する。第1の内部電極層12aは、誘電体層11を介して第2の内部電極層12bと相対する領域と、積層体10の第1の端面16aに至る引き出し領域とを有している。第2の内部電極層12bは、誘電体層11を介して第1の内部電極層12aと相対する領域と、積層体10の第2の端面16bに至る引き出し領域とを有している。
積層体10において、第1の内部電極層12aと第2の内部電極層12bとが誘電体層11を介して相対している部分を、電極相対部13aとする(図1、図2において破線で囲まれた部分)。
1つの第1の内部電極層12aと1つの第2の内部電極層12bとが誘電体層11を介して相対することにより、1つのコンデンサが形成される。積層セラミックコンデンサ100は、電極相対部13aを含む複数個のコンデンサが、後述する第1の外部電極17aおよび第2の外部電極17bを介して並列接続されているものと言える。
積層体10は、電極相対部13aと第1の側面15aとの間に設けられた第1のマージン部M1と、電極相対部13aと第2の側面15bとの間に設けられた第2のマージン部M2とを備える。また、積層体10は、電極相対部13aと第1の端面16aとの間に設けられた第3のマージン部M3と、電極相対部13aと第2の端面16bとの間に設けられた第4のマージン部M4とを備える。第3のマージン部M3には、第1の内部電極層12aの引き出し領域が配置されている。また、第4のマージン部M4には、第2の内部電極層12bの引き出し領域が配置されている。
積層体10において、電極相対部13aを囲むように配置されている第1の外層部D1、第2の外層部D2、第1のマージン部M1、第2のマージン部M2、第3のマージン部M3および第4のマージン部を、外周部13bとする。
積層セラミックコンデンサ100は、第1の外部電極17aと第2の外部電極17bとをさらに備えている。第1の外部電極17aは、第1の内部電極層12aと電気的に接続されるように第1の端面16aに形成されている。第1の外部電極17aは、第1の端面16aから第1の主面14a、第2の主面14b、第1の側面15aおよび第2の側面15bに延びている。第2の外部電極17bは、第2の内部電極層12bと電気的に接続されるように第2の端面16bに形成されている。第2の外部電極17bは、第2の端面16bから第1の主面14a、第2の主面14b、第1の側面15aおよび第2の側面15bに延びている。
第1の外部電極17aおよび第2の外部電極17bは、例えば、下地電極層と下地電極層上に配置されためっき層とを有する。下地電極層は、例えば、焼結体層、導電性樹脂層および金属薄膜層から選ばれる少なくとも1つを含む。
焼結体層は、ガラス粉末および金属粉末を含むペーストが焼き付けられたものであり、ガラス部と金属部とを含む。ガラス部を構成するガラスとしては、B−SiO−BaO系のガラスなどが挙げられる。金属部を構成する金属としては、Ni、CuおよびAgなどから選ばれる少なくとも一種または当該金属を含む合金が挙げられる。焼結体層は、異なる成分で複数層形成されていてもよい。また、焼結体層は、後述する製造方法において、積層体10と同時焼成されてもよく、積層体10が焼成された後に焼き付けられてもよい。
導電性樹脂層は、例えば金属微粒子のような導電性粒子と樹脂部とを含む。金属微粒子を構成する金属としては、Ni、CuおよびAgなどから選ばれる少なくとも一種または当該金属を含む合金が挙げられる。樹脂部を構成する樹脂としては、エポキシ系の熱硬化性樹脂などが挙げられる。導電性樹脂層は、異なる成分で複数層形成されていてもよい。
金属薄膜層は、例えば、スパッタリングまたは蒸着などの薄膜形成法により形成され、金属微粒子が堆積された厚さ1μm以下の層である。金属薄膜層を構成する金属としては、Ni、Cu、AgおよびAuなどから選ばれる少なくとも一種または当該金属を含む合金が挙げられる。金属薄膜層は、異なる成分で複数層形成されていてもよい。
めっき層を構成する金属としては、Ni、Cu、Ag、AuおよびSnなどから選ばれる少なくとも一種または当該金属を含む合金が挙げられる。めっき層は、異なる成分で複数層形成されていてもよい。めっき層は、好ましくは、Niめっき層およびSnめっき層の2層からなる。Niめっき層は、積層型電子部品を実装する際に、下地電極層がはんだによって侵食されることを防止することができる。Snめっき層は、Snを含むはんだとの濡れ性がよく、積層型電子部品を実装する際に、実装性を向上させることができる。
なお、第1の外部電極17aおよび第2の外部電極17bは、それぞれ、積層体10上に直接設けられ、前述の対応する内部電極層と直接接続されるめっき層であってもよい。めっき層は、第1めっき層と、第1めっき層上に設けられた第2めっき層とを含むことが好ましい。
第1めっき層および第2めっき層を構成する金属としては、Cu、Ni、Sn、Au、Ag、PdおよびZnなどから選ばれる少なくとも一種または当該金属を含む合金が挙げられる。例えば、内部電極層12を構成する金属としてNiを用いた場合、第1めっき層としては、Niと接合性のよいCuを用いることが好ましい。内部電極層12を構成する金属としてSnやAuを用いた場合、第1めっき層を構成する金属としてはんだバリア性能を有する金属を用いることが好ましい。また、第2めっき層を構成する金属としてはんだ濡れ性のよいを有するNiを用いることが好ましい。
<外周部の微細構造>
積層セラミックコンデンサ100の外周部13bは、Baを含んで構成されるペロブスカイト型化合物を含む第1の相P1(図8参照、後述)を成分とする複数の結晶粒を基本的な構造として有する。また、外周部13bは、複数の結晶粒Gの粒界GBの少なくとも一部に、Sn、Cu、Fe、Ni、Cr、Mn、V、AlおよびPのうち少なくとも1つを含み、第1の相P1と異なる第2の相P2(図8参照、後述)をさらに有する。
外周部13bの微細構造を調べるため、SEM観察および波長分散型X線分析(以後、WDX分析と略称することがある)を行なった。この調査において、誘電体層11には、BaTiOをペロブスカイト型化合物の基本的な構造とし、種々の添加物が加えられた誘電体材料を用いた。
積層セラミックコンデンサ100の積層体10における外周部13bの微細構造の調査方法について、図3および図4を用いて説明する。図3は、SEM観察およびWDX分析のための試料について説明するための、積層体10の長さ方向中央部の断面図である。図4は、同じく積層体10の幅方向中央部の断面図である。
後述する製造方法により、積層セラミックコンデンサ100の積層体10を得た。図3に示されるように、積層体10を第2の端面16b側から研磨して、積層体10の長さ方向の中央部を露出させた。また、図4に示されるように、積層体10を第2の側面15b側から研磨して、積層体10の幅方向の中央部を露出させた。
積層体10の長さ方向の中央部の断面において、第1の外層部D1の幅方向の中央部の領域R1および第2の外層部D2の幅方向の中央部の領域R2を、観察領域として設定した。また、積層体10の長さ方向の中央部の断面において、第2のマージン部M2と電極相対部13aとを含む領域を想定し、その領域を積層方向に3等分し、図上で上部の領域R3、中央の領域R4および下部の領域R5を、観察領域として設定した。
そして、積層体10の長さ方向中央部の断面において、第4のマージン部M4と電極相対部13aとを含む領域を想定し、その領域を積層方向に3等分し、図上で上部の領域R6、中央の領域R7および下部の領域R8を、観察領域として設定した。以上のように設定した積層体10の各観察領域について、SEM観察およびSEMに付属しているWDXによる元素分析を行なった。
図5は、図3および図4に示した積層体10の長さ方向中央部の領域R1における、SEM観察像の模式図である。図6は、同じく領域R4における、SEM観察像の模式図である。図7は、同じく領域R7における、SEM観察像の模式図である。領域R1から領域R8の外周部13bにおけるSEM観察像およびWDX分析結果は、有意な差が見られなかった。したがって、以下で説明する領域R4から得られた結果(図6)を、この開示に係る積層セラミックコンデンサ100の積層体10における外周部13bの微細構造と見なす。
領域R4における外周部13bには、第2の側面15bから電極相対部13aに向かって、Sn、Cu、Fe、Ni、Cr、Mn、V、AlおよびPのうち少なくとも1つを含む化合物が存在する層DLが存在している。積層セラミックコンデンサ100においては、上記の化合物が存在する層DLは、電極相対部13aまで到達していない。なお、第1の内部電極層12aおよび第2の内部電極層12bの先端には、焼結収縮時に生成した空間Vが存在する場合がある。
この化合物が存在する層DLについて、図8を用いて説明する。図8は、積層体10の長さ方向中央部の領域R4における、SEM観察像の拡大模式図である。外周部13bに存在する複数の結晶粒Gの粒界GBの少なくとも一部には、Sn、Cu、Fe、Ni、Cr、Mn、V、AlおよびPのうち少なくとも1つを含む化合物で構成され、第1の相P1と異なる第2の相P2が存在している。ここで第2の相とは、Sn、Cu、Fe、Ni、Cr、Mn、V、AlおよびPのうち少なくとも1つを含む化合物が偏析している状態を指している。特に、Snが焼結助剤としての役割を示し、効果が高い。
以後の説明では、第2の相P2として、Sn酸化物が存在する場合について説明する。ただし、化合物の形態は、酸化物に限られない。Sn酸化物中には、誘電体層11を構成する成分の少なくとも一部が固溶していてもよい。なお、粒界GBには、三重点も含まれる。第2の相P2は、誘電体層11内の空孔Pを充填するように存在していてもよい。
この第2の相P2は、低融点の化合物であり、積層体10の焼成時において、焼結助剤の役割を果たす。すなわち、第2の相P2が複数の結晶粒Gの粒界GBの少なくとも一部に存在することは、外周部13bの焼結が進んでいることを示している。その結果、外周部13bの強度を向上させることができ、積層セラミックコンデンサ100の抗折強度を向上させることができる。
−積層型電子部品の第2の実施形態−
この開示に従う積層型電子部品の第2の実施形態である積層セラミックコンデンサ100Aについて、図9を用いて説明する。
図9は、積層セラミックコンデンサ100Aの積層体10Aの長さ方向中央部の領域R4における、SEM観察像の模式図である。積層セラミックコンデンサ100Aは、Sn酸化物が存在する層DLの状態、ならびに内部電極層12の縁部の状態が、積層セラミックコンデンサ100と異なっている。それ以外の構成は、積層セラミックコンデンサ100と同様であるため、詳細な説明は省略される。
積層セラミックコンデンサ100Aでは、Sn酸化物である第2の相P2が存在する層DLが、外周部13bおよび電極相対部13aの一部を含むように生成している。第2の相P2の形成過程において、Sn酸化物は、Ni、Ni合金、CuおよびCu合金のうち1つを含む内部電極層12の焼結収縮時に、その縁部に生成した空間Vに入り込む。そして、空間Vに入り込んだSn酸化物は、空間Vの少なくとも一部を充填するSn充填物Fとなる。
すなわち、積層セラミックコンデンサ100Aでは、内部電極層12の縁部の少なくとも一部に、Snが偏在している。内部電極層12の縁部に偏在する元素は、Sn、Cu、Fe、Ni、Cr、Mn、V、AlおよびPのうち少なくとも1つであればよい。
積層セラミックコンデンサ100Aにおいても、第2の相P2が積層体10の焼成時において焼結助剤の役割を果たしている。その結果、積層セラミックコンデンサ100と同様に、外周部13bの強度を向上させることができ、積層セラミックコンデンサ100Aの抗折強度を向上させることができる。
また、積層セラミックコンデンサ100Aでは、内部電極層12の縁部の、焼結収縮時に生成した空間Vの少なくとも一部が、充填物Fにより充填されている。すなわち、空間Vの体積が減少する。したがって、例えば焼成後のバレル研磨時および前述の外部電極に含まれるめっき層形成時の水分の浸入を抑制することができる。その結果、各内部電極層に含まれる金属のマイグレーションを抑制することができ、これにより、積層セラミックコンデンサ100Aの信頼性を向上させることができる。
なお、充填物Fは、内部電極層12を構成する金属(例えばNi)と上記の元素が合金化するなどして、導電性を有するようになったものでもよい。また、上記の元素の少なくとも一部が、還元雰囲気における焼成中に還元されることにより、導電性を有するようになったものでもよい。これらの場合、充填物Fは、内部電極層12の一部として機能することができる。その結果、各内部電極層の実効面積を向上させることができ、静電容量を向上させることができる。
−積層型電子部品の第3の実施形態−
この開示に従う積層型電子部品の第3の実施形態である積層セラミックコンデンサ100Bについて、図10を用いて説明する。
図10は、積層セラミックコンデンサ100Bの積層体10Bの長さ方向中央部の領域R4における、SEM観察像の模式図である。積層セラミックコンデンサ100Bは、Sn酸化物が存在する層DLの状態、ならびに内部電極層12の縁部の状態が、積層セラミックコンデンサ100と異なっている。それ以外の構成は、積層セラミックコンデンサ100と同様であるため、詳細な説明は省略される。
積層セラミックコンデンサ100Bでも、Sn酸化物である第2の相P2が存在する層DLが、外周部13bおよび電極相対部13aの一部を含むように生成している。第2の相P2の形成過程において、Sn酸化物が、Ni、Ni合金、CuおよびCu合金のうち1つを含む内部電極層12の焼結収縮時に、その縁部に生成した空間Vに入り込む。そして、空間Vに入り込んだSn酸化物は、空間Vの少なくとも一部を充填するSn充填物Fとなる。さらに、Sn酸化物は、被覆物Cとして誘電体層11と内部電極層12との界面の少なくとも一部を被覆する。
すなわち、積層セラミックコンデンサ100Bでは、内部電極層12の縁部および内部電極層12の縁部と誘電体層11との界面の少なくとも一部に、Snが偏在している。内部電極層12の縁部に偏在する元素は、Sn、Cu、Fe、Ni、Cr、Mn、V、AlおよびPのうち少なくとも1つであればよい。
積層セラミックコンデンサ100Bにおいても、第2の相P2が積層体10の焼成時において焼結助剤の役割を果たしている。その結果、積層セラミックコンデンサ100と同様に、外周部13bの強度を向上させることができ、積層セラミックコンデンサ100Bの抗折強度を向上させることができる。
また、積層セラミックコンデンサ100Bでは、内部電極層12の縁部の、焼結収縮時に生成した空間Vの少なくとも一部が、充填物Fにより充填されている。さらに、内部電極層12の縁部と誘電体層11との界面の少なくとも一部が、被覆物Cにより被覆されている。積層セラミックコンデンサ100Aと同様に、空間Vの体積は、充填物Fにより減少している。さらに、被覆物Cは、内部電極層12の縁部と誘電体層11との界面の少なくとも一部を強固に密着させることができる。
したがって、例えば焼成後のバレル研磨時および前述の外部電極に含まれるめっき層形成時の水分の浸入をさらに抑制することができる。その結果、各内部電極層に含まれる金属のマイグレーションをさらに抑制することができ、これにより、積層セラミックコンデンサ100Bの信頼性をさらに向上させることができる。
なお、充填物Fおよび被覆物Cは、内部電極層12を構成する金属(例えばNi)と上記の元素が合金化するなどして、導電性を有するようになったものでもよい。また、上記の元素の少なくとも一部が、還元雰囲気における焼成中に還元されることにより、導電性を有するようになったものでもよい。これらの場合、充填物Fおよび被覆物Cは、内部電極層12の一部として機能することができる。
特に、内部電極層12の縁部の、薄くなったり、または空孔が多く存在して内部電極層として十分に機能していない部分が被覆物Cによって被覆されている場合、その効果が顕著となる。その結果、各内部電極層の実効面積をさらに向上させることができ、もって、静電容量をさらに向上させることができる。
−積層型電子部品の製造方法−
この開示に従う積層型電子部品の第3の実施形態である積層セラミックコンデンサ100Bの製造方法について、製造工程順に説明する。なお、第1の実施形態である積層セラミックコンデンサ100および第2の実施形態である積層セラミックコンデンサ100Aは、後述するSn化合物の含浸度合いが異なるだけであり、同様の方法で製造することができる。そのため、詳細な説明は省略される。積層セラミックコンデンサ100Bの製造方法は、以下の各工程を備える。
この積層セラミックコンデンサ100Bの製造方法は、誘電体原料粉末を用いて、複数のセラミックグリーンシートを得る工程を備える。なお、「グリーン」という文言は、「焼結前」を表す表現であり、以後もその意味で用いられる。誘電体原料粉末は、例えば、BaTiO粉末の表面に種々の添加物が付与された粉末である。セラミックグリーンシート中には、誘電体原料粉末以外に、バインダー成分が含まれている。バインダー成分については、特に限定されない。
上記の誘電体原料粉末は、例えばBaTiO粉末の表面に添加物の有機化合物を付与し、仮焼して有機成分を燃焼させることにより、添加物が酸化物の状態でBaTiO粉末の表面に付与された状態となるようにして作製することができる。ただし、これに限らず、誘電体原料粉末は、有機化合物を含む状態でもよいし、または酸化物と有機化合物とを含む状態でもよい。また、誘電体原料粉末において上記BaTiO粉末は、BaTiO固溶体粉末であってもよい。
BaTiO粉末は、例えば、BaCO粉末とTiO粉末との混合物を仮焼することによって得ることができる。あるいは、既に蓚酸法または水熱合成法など既知の方法により作成されているBaTiO粉末が用いられてもよい。
この積層セラミックコンデンサ100Bの製造方法は、セラミックグリーンシートに、内部電極層パターンを印刷する工程を備える。内部電極層用ペーストは、例えば、Ni、Ni合金、CuおよびCu合金のうち1つを含む金属粉末と、BaTiO粉末の表面に種々の添加物が付与された粉末(共材)と、バインダー成分とを含む。なお、内部電極層において、共材は、必須ではない。バインダー成分については、特に限定されない。ここで、セラミックグリーンシートに、内部電極層パターンを印刷する工程は、焼結前誘電体層に、内部電極層用ペーストを用いて、焼結前内部電極層を形成する工程に相当する。
上記の共材は、例えばBaTiO粉末の表面に添加物の有機化合物を付与し、仮焼して有機成分を燃焼させることにより、添加物が酸化物の状態でBaTiO粉末の表面に付与された状態となるようにして作製することができる。ただし、これに限らず、共材は、有機化合物を含む状態でもよいし、または酸化物と有機化合物とを含む状態でもよい。また、共材において上記BaTiO粉末は、BaTiO固溶体粉末であってもよい。共材は、誘電体原料粉末と同じものであっても、異なるものであってもよい。
この積層セラミックコンデンサ100Bの製造方法は、内部電極パターンが形成されたセラミックグリーンシートを含む複数のセラミックグリーンシートを積層し、グリーン積層体を得る工程を備える。この工程は、焼結前内部電極層が形成された焼結前誘電体層を含む複数の焼結前誘電体層を積層し、焼結前積層体を得る工程に相当する。
この積層セラミックコンデンサ100Bの製造方法は、グリーン積層体を焼結させ、積層された複数の誘電体層と、複数の内部電極層とを含む積層体を得る工程とを備える。
この積層体を得る工程は、ゾル浸漬工程と、焼結工程とを含む。ゾル浸漬工程は、焼結途中で多孔質状態である上記焼結前積層体を一旦焼成炉から取り出し、Sn、Cu、Fe、Ni、Cr、Mn、V、AlおよびPのうち少なくとも1つを含む化合物のゾルに浸漬する工程である。焼結工程は、上記のゾルに浸漬後の、焼結途中の上記焼結前積層体を焼結させる工程である。
ゾル浸漬工程では、焼結途中で多孔質状態である上記焼結前積層体を、焼成炉中で例えば800℃まで昇温し、適宜保持した後、50℃以下まで冷却して焼成炉から取り出す。なお、温度条件は一例であって、これらに限定されるものではない。そして、取り出した上記焼結前積層体を上記の化合物のゾルに浸漬する。上記の化合物のゾルとしては、各元素の酸化物または水酸化物を水中に分散させたものを用いることができる。
焼結工程では、上記のゾル浸漬工程により外表面から上記の化合物が入り込んだ焼結前積層体を再び焼成炉に入れて、誘電体原料粉末が十分焼結する温度まで昇温し、適宜保持して積層体10を得る。この焼結工程により、外周部13bにおける第1の相P1を含む複数の結晶粒Gの粒界GBの少なくとも一部に、第1の相P1と異なる第2の相P2を形成することができる。
上記のグリーン積層体を得る工程から焼結した積層体を得る工程までを、図11から図14を用いて詳細に説明する。
図11から図14は、この開示に従う積層型電子部品の第3の実施形態である積層セラミックコンデンサ100Bが備える積層体10Bを製造する工程の要部を示す断面図である。
図11は、グリーン積層体10gを得る工程を示した断面図である。グリーン積層体10gは、セラミックグリーンシート11gと第1の内部電極層パターン12agと第2の内部電極層パターン12bgとを積層することにより得られる。セラミックグリーンシート11gは、誘電体原料粉末1と不図示のバインダーとを含む。第1の内部電極層パターン12agおよび第2の内部電極層パターン12bgは、例えばNiを含む金属粉末2と不図示のバインダーとを含む。
図12は、グリーン積層体10gを加熱して、焼結前積層体10pとした後、例えばSn化合物ゾルに浸漬して、Sn化合物Sを外周部13bpおよび電極相対部13apの一部に含浸させた状態を示した断面図である。グリーン積層体10gを加熱することにより、セラミックグリーンシート11g、第1の内部電極層パターン12agおよび第2の内部電極層パターン12bgのそれぞれに含まれるバインダーが除去される。
すなわち、焼結前積層体10pは、それぞれ多孔質状態の焼結前誘電体層11pと第1の焼結前内部電極層パターン12apと第2の焼結前内部電極層パターン12bpとを含む。焼結前積層体10pは、冷却された後、一旦焼成炉から取り出される。焼成炉から取り出された焼結前積層体10pは、Sn化合物ゾルに浸漬される。それにより、Sn化合物Sが、外周部13bpおよび電極相対部13apの一部に入り込む。
図13は、焼結前積層体10pをさらに加熱して、第1の内部電極層12aおよび第2の内部電極層12bが焼結した半焼結積層体10pとする工程を示した断面図である。焼結前積層体10pを、バインダーが除去された温度からさらに加熱することにより、第1の内部電極層12aおよび第2の内部電極層12bは焼結収縮し、縁部に空孔が生成する。また、焼結前誘電体層11pの焼結が進み、半焼結誘電体層11pとなる。
すなわち、半焼結積層体10pは、電極相対部13apと、電極相対部13apを囲むように配置されている外周部13bpとを備える。電極相対部13apは、第1の内部電極層12aと第2の内部電極層12bとが半焼結誘電体層11pを介して相対している部分である。また、Sn化合物Sは、焼結前積層体11pの焼結が進むことにより、残留している空孔などに偏在したSn化合物Sとなる。
図14は、半焼結積層体10pをさらに加熱して、焼結した積層体10Bを得る工程が示された断面図である。半焼結積層体10pをさらに加熱することにより、半焼結誘電体層11pは十分に焼結し、誘電体層11となる。その際、Sn化合物Sは、積層体10Bの焼成時において焼結助剤の役割を果たし、最終的には外周部13bに存在する複数の結晶粒Gの粒界GBの少なくとも一部に第2の相P2として存在するようになる(図8参照)。また、Sn化合物Sの一部は、内部電極層12の縁部に、充填物Fおよび被覆物Cとして偏在するようになる(図10参照)。
以上の製造方法により得られた積層セラミックコンデンサ100Bによれば、前述したように、外周部13bの強度を向上させることができ、延いては抗折強度を向上させることができる。また、各内部電極層に含まれる金属のマイグレーションを抑制することができ、もって積層セラミックコンデンサ100Bの信頼性を向上させることができる。さらに、充填物Fおよび被覆物Cが導電性を有する場合、内部電極層12の実効面積を向上させることができ、もって積層セラミックコンデンサ100Bの静電容量を向上させることができる。
なお、焼結途中で多孔質状態である焼結前積層体10pをSn化合物ゾルに浸漬する工程は、焼結前積層体10pをSn化合物ゾルに浸漬した後、Sn化合物ゾルの周囲雰囲気を減圧する工程をさらに含むことが好ましい。Sn化合物ゾルの周囲雰囲気を減圧することで、焼結助剤として機能するSn化合物を焼結前積層体10pの内部に効率良く入り込ませることができる。減圧は、例えば0.1MPaまでの真空度とすることができる。ただし、真空度はこれに限られない。
その結果、外周部13bの焼結性を高めて強度を向上させることができる。その結果、積層セラミックコンデンサ100Bの抗折強度を向上させることができる。また、内部電極層12の縁部に、充填物Fおよび被覆物Cを効率良く形成できる。その結果、充填物Fおよび被覆物Cが導電性を有する場合、内部電極層12の実効面積をさらに向上させることができ、もって積層セラミックコンデンサ100Bの静電容量をさらに向上させることができる。
なお、焼結前積層体10pを浸漬するゾルは、Sn化合物ゾルに限らず、Sn、Cu、Fe、Ni、Cr、Mn、V、AlおよびPのうち少なくとも1つを含む化合物のゾルであればよい。
−積層型電子部品の実験例−
この開示に従う積層型電子部品の第3の実施形態である積層セラミックコンデンサ100Bについて、製造過程においてSn添加しなかったものと比較した実験例を表1ないし表3に示す。
表1は、Sn添加の有無、すなわちSn化合物ゾルの含浸の有無による、積層体の焼結時の寸法の変化を示している。表1において「減圧あり」とは、焼結前積層体をSn化合物ゾルに浸漬した後、Sn化合物ゾルの周囲雰囲気を0.1MPaまで減圧したことを意味する。なお、積層体は、内部電極層の厚みが0.5μm、内部電極層の積層枚数が100枚、誘電体層の厚みが1.0μmであり、焼結後に厚みが0.3mmとなるように設計されている。Sn添加は、800℃まで昇温され、50℃まで冷却後に焼成炉から取り出された焼結前積層体を、Sn化合物濃度が所定の濃度であるSn化合物ゾルへの浸漬することにより行なった。Sn化合物ゾルとしては、Snの酸化物を水中に分散させたものを用いた。焼結温度は、1200℃とした。
Figure 2021009994
表1から分かるように、Sn添加により焼結収縮の度合いが大きくなっている。また、Sn化合物ゾルの周囲雰囲気を0.1MPaまで減圧することにより、焼結収縮の度合いはさらに大きくなっている。すなわち、Sn化合物を効率的に焼結前積層体中に入り込ませることにより、焼結性を高めることができる。
表2は、Sn添加の有無による抗折強度の変化を示している。積層体の端面に外部電極を付与し(図1および図2参照)、抗折強度測定試料として20個の積層セラミックコンデンサを準備した。抗折強度の測定は、準備した積層セラミックコンデンサを剛体板の上に置いた状態で、積層体の上面の中央部を治具で押圧して破壊に至った最大応力を測定し、20個の測定値の平均値を算出することにより行なった。試験に用いた積層体は、表1に示したものと同じである。ただし、Sn化合物ゾルへの浸漬時の減圧の効果の有無は評価していない。
Figure 2021009994
表2から分かるように、1175℃から1210℃までの焼結温度において、Sn添加により抗折強度が向上している。すなわち、表1に示した焼結性の向上に対応して、Sn化合物を効率的に焼結前積層体中に入り込ませることにより、抗折強度を向上させることができる。
表3は、Sn添加の有無による静電容量の変化を示している。表3において「減圧あり」とは、焼結前積層体をSn化合物ゾルに浸漬した後、Sn化合物ゾルの周囲雰囲気を0.1MPaまで減圧したことを意味する。前述のように積層体の端面に外部電極を付与し、静電容量測定試料として20個の積層セラミックコンデンサを準備した。静電容量の測定は、インピーダンスアナライザ(アジレント・テクノロジー社製:HP4194A)を用い、温度25±2℃で、電圧が1Vrms、周波数が1kHzの交流電圧を印加して測定し、20個の測定値の平均値を算出することにより行なった。
Figure 2021009994
表3から分かるように、Sn添加により静電容量が向上している。また、Sn化合物ゾルの周囲雰囲気を0.1MPaまで減圧することにより、静電容量の向上の度合いはさらに大きくなっている。すなわち、Sn化合物を効率的に焼結前積層体中に入り込ませることにより、内部電極層の実効面積を向上させることができ、これにより積層セラミックコンデンサの静電容量を向上させることができる。
<実験例1>
以下の手順で積層セラミックコンデンサを作製した。まず、誘電体シートおよび内部電極用の導電性ペーストを準備した。誘電体シートおよび内部電極用の導電性ペーストは、有機バインダーおよび溶剤を含む。誘電体シートは、誘電体原料粉末を用いて作製した。誘電体原料粉末は、BaTiO粉末を含む。
誘電体シート上に、所定のパターンで内部電極用の導電性ペーストを印刷することによって内部電極パターンを形成した。内部電極パターンが印刷されていない外層用の誘電体シートを所定枚数積層し、その上に内部電極パターンが印刷された誘電体シートを順次積層し、その上に外層用の誘電体シートを所定枚数積層し、積層シートを作製した。積層シートを静水圧プレスにより積層方向にプレスして積層ブロックを作製した。積層ブロックを所定のサイズにカットし、積層チップを切り出した。このとき、バレル研磨により積層チップの角部および稜線部に丸みをつけた。積層チップを焼結して積層体を作製した。焼結温度は、誘電体や内部電極の材料にもよるが、900〜1300℃であることが好ましい。本実験例でも焼結温度はこの範囲内とした。積層チップの両端面に外部電極用の導電性ペーストを塗布し、焼き付けることによって外部電極の焼き付け層を形成した。焼き付け温度は、700〜900℃であることが好ましい。本実験例でも焼き付け温度はこの範囲内とした。焼き付け層の表面にめっきを施した。
<実験例2>
焼結する工程の前に、800℃まで昇温され、50℃まで冷却後に焼成炉から取り出された焼結前積層体を、Sn化合物ゾルへ浸漬する工程を実施したこと以外は実験例1と同様にして積層セラミックコンデンサを作製した。Sn化合物ゾルとしては、Snの酸化物を水中に分散させたものを用いた。Snの酸化物の濃度は7重量%とした。
<実験例3〜5>
焼結前積層体をSn化合物ゾルに浸漬した後、Sn化合物ゾルの周囲雰囲気を0.1MPaまで減圧したこと以外は実験例2と同様にして積層セラミックコンデンサを作製した。減圧時間は、表4に示されるとおりとした。
[測定・評価]
(1)外周部の微細構造の測定
上述の手順で積層セラミックコンデンサから試料を作製し、領域R4について、SEM観察およびSEMに付属しているWDXによる元素分析を行なった。この結果に基づき、Snを含む化合物の含浸深さ(Snを含む化合物が存在する層の厚み)を求めた。試料の側面もしくは端面から上記化合物が存在しなくなる領域までの距離を積層方向で4等分した分割線で測定し、その平均値を含浸深さとした。含浸深さは、Sn化合物ゾルへの浸漬時間の調整により制御した。表4に示される平均濃度は、含浸深さの領域におけるTi 100モルに対する上記化合物のモル比を平均化したものである。表4に「含浸深さ/GAP量」の値を併せて示す。GAP量は、第2のマージン部M2の幅方向寸法であり、100μmである。
(2)抗折強度
抗折強度の測定は、準備した積層セラミックコンデンサを剛体板の上に置いた状態で、積層体の上面の中央部を治具で押圧して破壊に至った最大応力を測定し、20個の積層セラミックコンデンサについての測定値の平均値を算出することにより行なった。結果を表4に示す。
(3)信頼性の評価
150℃で積層セラミックコンデンサに6Vを印加する高温負荷加速試験(HALT)での平均故障時間(MTTF)を測定した。結果を表4に示す。IRが10以下となったときを故障と判定した。
Figure 2021009994
含浸深さ/GAP量が1である実験例5においては、抗折強度は良好であるが、MTTFが低下した。これは、焼結助剤として働くSnが多く含浸していることにより、電極相対部13aとマージン部M1、M2、M3、M4、外層部D1、D2との間で焼結時における収縮挙動に差が大きく、その結果、積層体にひびや割れなどが生じ、水分が積層体内に侵入するためであると考えられる。
<実験例6〜9>
Sn化合物ゾルにおけるSnの酸化物の濃度を表5に示されるとおりとしたこと以外は実験例3と同様にして積層セラミックコンデンサを作製した。なお、実験例8と実験例3とは同一である。得られた積層セラミックコンデンサについて、実験例1〜5と同様にして測定・評価を行なった。結果を表5に示す。
Figure 2021009994
表5に示されるとおり、Snの酸化物の濃度が高いほどSnの含浸が進んで抗折強度およびMTTFが改善する傾向にある。ただし、Snの酸化物の濃度があまりに高いと抗折強度およびMTTFが低下する傾向にある。したがって、Snの酸化物の濃度は、15重量%未満であることが好ましく、10重量%以下であることがより好ましい。
この明細書に開示された実施形態は、例示的なものであって、この開示に係る発明は、上記の実施形態に限定されるものではない。すなわち、この開示に係る発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。また、上記の範囲内において、種々の応用、変形を加えることができる。
例えば、積層体を構成する誘電体層および内部電極層の層数、誘電体層および内部電極層の材質などに関し、この発明の範囲内において種々の応用、変形を加えることができる。また、積層型電子部品として積層セラミックコンデンサを例示したが、この開示に係る発明はそれに限らず、多層基板の内部に形成されたコンデンサ要素などにも適用することができる。
100 積層セラミックコンデンサ、100A 積層セラミックコンデンサ、100B 積層セラミックコンデンサ、10 積層体、10A 積層体、10B 積層体、10g グリーン積層体、10p 焼結前積層体、10p 半焼結積層体、11 誘電体層、11g セラミックグリーンシート、11p 焼結前誘電体層、11p 半焼結誘電体層、1 誘電体原料粉末、2 金属粉末、12 内部電極層、12a 第1の内部電極層、12ag 第1の内部電極層パターン、12ap 第1の焼結前内部電極層パターン、12b 第2の内部電極層、12bg 第2の内部電極層パターン、12bp 第2の焼結前内部電極層パターン、13a 電極相対部、13b 外周部、13ap 電極相対部、13ap 電極相対部、13bp 外周部、13bp 外周部、14a 第1の主面、14b 第2の主面、15a 第1の側面、15b 第2の側面、16a 第1の端面、16b 第2の端面、17a 第1の外部電極、17b 第2の外部電極、G 結晶粒、GB 粒界、P 空孔、P1 第1の相、P2 第2の相、D1 第1の外層部、D2 第2の外層部、M1 第1のマージン部、M2 第2のマージン部、M3 第3のマージン部、M4 第4のマージン部。

Claims (5)

  1. 積層された複数の誘電体層と複数の内部電極層とを含む積層体を備え、
    前記複数の誘電体層は、第1の相を含む複数の結晶粒を有し、
    前記内部電極層は、第1の内部電極層および第2の内部電極層を有し、
    前記積層体は、前記複数の内部電極層がそれぞれ前記誘電体層を介して相対している電極相対部と、前記電極相対部を囲む外周部とを有し、
    前記外周部は、前記複数の結晶粒の粒界の少なくとも一部に、Sn、Cu、Fe、Ni、Cr、Mn、V、AlおよびPのうち少なくとも1つを含み、前記第1の相と異なる第2の相をさらに有する、積層型電子部品。
  2. 前記内部電極層は、Ni、Ni合金、CuおよびCu合金のうち1つを含み、
    前記内部電極層の縁部の少なくとも一部に、Sn、Cu、Fe、Ni、Cr、Mn、V、AlおよびPのうち少なくとも1つが偏在している、請求項1に記載の積層型電子部品。
  3. 前記内部電極層の縁部と前記誘電体層との界面の少なくとも一部に、Sn、Cu、Fe、Ni、Cr、Mn、V、AlおよびPのうち少なくとも1つが偏在している、請求項2に記載の積層型電子部品。
  4. 複数の焼結前誘電体層を得る工程と、
    前記焼結前誘電体層に、内部電極層用ペーストを用いて、焼結前内部電極層を形成する工程と、
    前記焼結前内部電極層が形成された焼結前誘電体層を含む前記複数の焼結前誘電体層を積層し、焼結前積層体を得る工程と、
    前記焼結前積層体を焼結させ、積層された複数の誘電体層と、複数の内部電極層とを含む積層体を得る工程とを備え、
    前記積層体を得る工程は、焼結途中の前記焼結前積層体を、Sn、Cu、Fe、Ni、Cr、Mn、V、AlおよびPのうち少なくとも1つを含む化合物のゾルに浸漬する工程と、前記ゾルに浸漬後の前記焼結途中の前記焼結前積層体を焼結させる工程とを含む、積層型電子部品の製造方法。
  5. 前記焼結途中の前記焼結前積層体をSn、Cu、Fe、Ni、Cr、Mn、V、AlおよびPのうち少なくとも1つを含む化合物のゾルに浸漬する工程は、前記焼結途中の前記焼結前積層体を前記ゾルに浸漬した後、前記ゾルの周囲雰囲気を減圧する工程をさらに含む、請求項4に記載の積層型電子部品の製造方法。
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