JP2021008649A - オーステナイト系ステンレス鋳鋼 - Google Patents

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Kenichiro Hara
顕一郎 原
成実 足立
Shigemi Adachi
成実 足立
井澤 裕
Yutaka Izawa
裕 井澤
泰 井塚
Yasushi Izuka
泰 井塚
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Abstract

【課題】従来よりも、例えば特許文献1に開示される耐熱鋳鋼(耐熱軸受材料)よりも、高温下での耐摩耗性に優れるオーステナイト系ステンレス鋳鋼を提供する。【解決手段】6質量%以上30質量%以下のNiと、15質量%以上32質量%以下のCrと、複数元素Mとを含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなるオーステナイト系ステンレス鋳鋼とし、複数元素Mは、0.6質量%以上1.5質量%以下のC、1.6質量%以上3.7質量%以下のSi、1.0質量%以上2.0質量%以下のMn、0.5質量%以上0.9質量%以下のS、WおよびMoを含むとともに、W+2Moが0.5質量%以上10質量%以下となるように構成する。【選択図】図1

Description

この発明はオーステナイト系ステンレス鋳鋼に関し、特に、高温下での耐摩耗性に優れるオーステナイト系ステンレス鋳鋼に関する。
近年、COの削減、省エネルギー化などへの対応が急がれており、例えば熱機関を構成する各種材料に対して、より高温の環境下においても必要特性を発揮することが求められている。具体的には、例えば、ガソリン車への搭載が増加しているターボチャージャーによる過給エンジンに組み込まれているウェイストゲートバルブ(WGV:Waste Gate Valve)が挙げられる。WGVは、ターボチャージャーに所定を越える排気圧力が加わると、排気ガスの一部をバイパスさせる。WGVには、高温の排気ガスに曝されながら頻繁に開閉動作する耐磨耗部品が組み込まれている。耐磨耗部品の使用環境は、排気ガスの温度がディーゼル車よりも高温(1000℃以上)になるガソリン車ではより過酷になる。そのため、耐磨耗部品の諸特性(耐摩耗性、高温強度、耐酸化性など)の向上が望まれている。WGVに組み込まれる耐磨耗部品は、例えば、アロイ713C、SCH22(JIS規格)などの耐熱鋳鋼により構成されている。Ni基合金の1種の713C合金はNiを多く含むため一般的に高価である。オーステナイト系ステンレス鋳鋼の1種のSCH22は一般的な耐熱使用温度が約1100℃とされているが、1000℃以上の高温に繰り返し曝されるガソリン車の使用環境であると耐摩耗性が不足する可能性がある。こうした事情により、上記した耐磨耗部品などに好適な、より安価で、より高い耐摩耗性を有する耐熱材料が求められている。
例えば、特許文献1には、比較的安価で、比較的耐摩耗性が高いと考えられる、耐熱鋳鋼が開示されている。この耐熱鋳鋼は、内燃機関における排気ガスの流れを規制するターボチャージャーまたは排気ガス循環装置に用いられる耐熱軸受材料である。この耐熱軸受材料は、軸受の表面における個体潤滑作用を得るのに十分な比率を有する硫黄と、軸受の表面に摩耗の低減を得られる比率を有する炭化物と、総比率が1質量%から6質量%までの1つまたは1つ以上の合金元素であるCo、Nb、Re、Ta、V、W、Hf、YおよびZrとを含む、オーステナイト系鉄マトリクス合金から構成されている。また、付加的合金元素として、質量%で、Cが0.8%から1.5%、Crが20%から32%、Mnが0%から1.0%、Siが1.5%から3.5%、Niが12%から25%、Moが0.5%から5.5%、Nbが0%から3.5%、Wが1.0%から6.5%、Sが0.15%から0.5%、Cuが0%から3.5%、Nが0%から0.8%を含む、とされている。しかし、特許文献1には、この耐熱軸受材料の具体的な実施例について、また、この耐熱軸受材料を製造するための具体的な製造条件など、一切記載されていない。
特表2015−514865号公報
特許文献1に開示される耐熱鋳鋼(耐熱軸受材料)は、比較的耐摩耗性が高いと考えられる耐熱鋳鋼である。しかしながら、特許文献1には、具体的な実施例およびその製造条件などが一切記載されていないし、ディーゼル車よりも排気ガスが高温になるガソリン車の使用環境に適用するためには、さらなる耐摩耗性の向上が必要になると考えられる。
この発明の目的は、従来のオーステナイト系ステンレス鋳鋼よりも、例えば特許文献1に開示される耐熱鋳鋼(耐熱軸受材料)よりも、高温下での耐摩耗性に優れるオーステナイト系ステンレス鋳鋼を提供することである。
本発明者は、高温強度および耐酸化性に優れるFe−Si−Ni−Cr−W−Mo系のステンレス鋳鋼に対して、C、Si、MnおよびSなどの元素を適切に添加することによって、上記した課題が解決できることを見出し、この発明に想到することができた。
この発明は、6質量%以上30質量%以下のNiと、15質量%以上32質量%以下のCrと、複数元素Mとを含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなるオーステナイト系ステンレス鋳鋼であって、前記複数元素Mは、0.6質量%以上1.5質量%以下のC、1.6質量%以上3.7質量%以下のSi、1.0質量%以上2.0質量%以下のMn、0.5質量%以上0.9質量%以下のS、WおよびMoを含むとともに、W+2Moが0.5質量%以上10質量%以下となるように構成されている、オーステナイト系ステンレス鋳鋼である。なお、Mnは、好ましくは1.0質量%を超えて2.0質量%以下、より好ましくは1.05質量%以上2.0質量%以下である。また、Sは、好ましくは0.5質量%を超えて0.9質量%以下、より好ましくは0.6質量%以上0.9質量%以下である。
この発明において、前記複数元素Mは、さらに、0質量%を超えて0.8質量%以下のNを含むことが好ましい。前記複数元素Mは、上記したC、Si、Mn、S、W、MoおよびNを同時に含むことができる。
この発明において、前記複数元素Mは、さらに、0質量%を超えて4.0質量%以下のNbを含むことが好ましい。前記複数元素Mは、上記したC、Si、Mn、S、W、Mo、NおよびNbを同時に含むことができる。
この発明において、前記複数元素Mは、さらに、0質量%を超えて3.5質量%以下のCuを含むことが好ましい。前記複数元素Mは、上記したC、Si、Mn、S、W、Mo、N、NbおよびCuを同時に含むことができる。
この発明によれば、従来のオーステナイト系ステンレス鋳鋼よりも、例えば特許文献1に開示される耐熱鋳鋼(耐熱軸受材料)よりも、高温下での耐摩耗性に優れるオーステナイト系ステンレス鋳鋼を提供することができる。
この発明の実施形態(発明例)の代表的な断面組織(写真)を示す。 この発明の比較形態(比較例)の代表的な断面組織(写真)を示す。
以下、この発明に係る耐熱鋳鋼(オーステナイト系ステンレス鋳鋼)の実施形態について説明する。
この発明に係る耐熱鋳鋼は、6質量%以上30質量%以下のNi(ニッケル)と、15質量%以上32質量%以下のCr(クロム)と、複数元素Mとを含み、残部がFe(鉄)および不可避的不純物からなるオーステナイト系ステンレス鋳鋼である。
複数元素Mは、0.6質量%以上1.5質量%以下のC(炭素)、1.6質量%以上3.7質量%以下のSi(珪素)、1.0質量%以上2.0質量%以下のMn(マンガン)、0.5質量%以上0.9質量%以下のS(硫黄)、W(タングステン)およびMo(モリブデン)を含み、W+2Moが0.5質量%以上10質量%以下となる。なお、Mnは、好ましくは1.0質量%を超えて2.0質量%以下、より好ましくは1.05質量%以上2.0質量%以下である。また、Sは、好ましくは0.5質量%を超えて0.9質量%以下、より好ましくは0.6質量%以上0.9質量%以下である。また、複数元素Mは、さらに、0質量%を超えて0.8質量%以下のN(窒素)を含むことが好ましい。複数元素Mは、さらに、0質量%を超えて4.0質量%以下のNb(ニオブ)を含むことが好ましい。複数元素Mは、さらに、0質量%を超えて3.5質量%以下のCu(銅)を含むことが好ましい。
以下、この発明に係るオーステナイト系ステンレス鋳鋼を構成する成分について、詳しく説明する。なお、特に断らない限り、元素の含有比は「質量%」で表す。
<Ni:6%以上30%以下>
この発明に係るオーステナイト系ステンレス鋳鋼は、6%以上30%以下のNiを含む。Niは、FeおよびCrとともにオーステナイト系ステンレス鋳鋼を構成する、基本元素である。Niは、オーステナイト組織を安定化させ、ステンレス鋳鋼の耐食性および高温強度を向上させる作用を奏する。なお、Ni含有比が過小(6%未満)であると、上記作用が効果的に発揮されないため、Ni含有比は6%以上とする。また、Ni含有比が過大(30%超)であると、上記作用が飽和し、ステンレス鋳鋼の製造コストが上昇するため、Ni含有比は30%以下とする。したがって、この発明に係るオーステナイト系ステンレス鋳鋼では、Ni含有比を6%以上30%以下とする。
<Cr:15%以上32%以下>
この発明に係るオーステナイト系ステンレス鋳鋼は、15%以上32%以下のCrを含む。Crは、FeおよびNiとともにオーステナイト系ステンレス鋳鋼を構成する、基本元素である。Crは、外表面に不動態膜を形成し、ステンレス鋳鋼の耐食性を向上させる作用を奏する。また、Crは、Cと結合して炭化物を形成し、ステンレス鋳鋼の高温強度を向上させる作用を奏する。なお、Cr含有比が過小(15%未満)であると、上記作用が効果的に発揮されないため、Cr含有比は15%以上とする。また、Cr含有比が過大(32%超)であると、炭化物が過剰に析出して脆くなりステンレス鋳鋼の延性が低下する他、σ相などの硬質の析出物が形成されてステンレス鋳鋼が脆化する。したがって、この発明に係るオーステナイト系ステンレス鋳鋼では、Cr含有比を15%以上32%以下とする。
この発明に係るオーステナイト系ステンレス鋳鋼は、複数元素Mを含む。複数元素Mは、C、Si、Mn、S、WおよびMoを含む。また、複数元素Mは、さらに、N、NbおよびCuのうちの1種または1種以上を含むことができる。
<C:0.6%以上1.5%以下>
Cは、ステンレス鋳鋼の耐摩耗性を向上させる作用を奏する、重要な元素である。また、Cは、Cr、Mo、WおよびNbなどと結合して炭化物を形成し、ステンレス鋳鋼の高温強度を向上させる作用を奏する。また、Cは、鋳造の際に溶融金属(溶湯)の流動性を高め、鋳造性を向上させる作用を奏する。なお、C含有比が過小(0.6%未満)であると、上記作用が効果的に発揮されないため、C含有比は0.6%以上とする。また、C含有比が過大(1.5%超)であると、炭化物が過剰に析出して脆くなりステンレス鋳鋼の延性が低下する他、ステンレス鋳鋼の加工性が劣化する。したがって、この発明に係るオーステナイト系ステンレス鋳鋼では、C含有比を0.6%以上1.5%以下とする。
<Si:1.6%以上3.7%以下>
Siは、ステンレス鋳鋼の耐摩耗性を向上させる作用を奏する、重要な元素である。また、Siは、鋳造時に溶湯の脱酸剤として機能する他、ステンレス鋳鋼の耐酸化性を向上させる有効な元素である。なお、Si含有比が過小(1.6%未満)であると、上記作用が効果的に発揮されないため、Si含有比は1.6%以上とする。また、Si含有比が過大(3.7%超)であると、鋳造の際に鋳物が割れる不具合(鋳造割れ)および鋳型に振動を加えて解体する際に鋳物が割れる不具合(ノックアウト割れ)が発生しやすくなる他、ステンレス鋳鋼の靭性および加工性が劣化する。したがって、この発明に係るオーステナイト系ステンレス鋳鋼では、Si含有比を1.6%以上3.7%以下とする。
<MnおよびS>
MnおよびSについて、本発明者は、溶湯中でMnとSとが結合して1次硫化物を晶出し、鋳造組織を構成する結晶粒を微細化させることを突き止めた。そして、この結晶粒の微細化が起こることによって、鋳造の際にステンレス鋳鋼の延性が向上され、上記した鋳造割れが抑制されることを突き止めた。この結晶粒の微細化はMn含有比およびS含有比を所定の関係に設定した場合に起こることを確認している。この結晶粒の微細化が起こる理由は明らかではないが、MnおよびSが適正な含有比で存在した場合に、溶湯中で結晶粒の核生成サイトになるような形態でMnSが析出し、核生成サイトとなったMnSが結晶の生成を促進したことなどが考えられる。この発明に係るオーステナイト系ステンレス鋳鋼の微細な鋳造組織については断面写真の一例を挙げて後述する。
また、MnSは、磨耗の際に潤滑剤として機能し、ステンレス鋳鋼の凝着摩耗および/またはアブレシブ摩耗を抑制する作用を奏する。なお、一般に、表面突起の接触部分が互いにくっ付いて千切り取られる磨耗現象を凝着磨耗と呼び、表面突起によって相手表面が削り取られる磨耗現象をアブレシブ摩擦と呼ぶ。例えば、ステンレス鋳鋼が粗大な結晶粒で構成されていると、凝着磨耗などの発生によって表面から粗大な結晶粒が脱離するため、その際の磨耗量はかなり大きいと考えられる。一方、MnおよびSの含有比に起因すると考えられる上記した結晶粒の微細化が起こったステンレス鋳鋼であると、凝着磨耗などの発生によって表面から微細な結晶粒が脱離するため、その際の磨耗量は上記した粗大な結晶粒が脱離する場合に比べてかなり小さいと考えられる。
また、Cuを含有するステンレス鋳鋼では、MnSが結晶粒内にCuを固定し、1000℃以上の高温環境下においてCuに起因して起こる赤熱脆化(熱間脆化)を抑制する作用を奏する。
<Mn:1.0%以上2.0%以下>
また、Mnは、鋳造時に溶湯の脱酸剤として機能する他、オーステナイト組織を安定化させる作用を奏する。なお、S含有比との関係において、Mn含有比が過小(1.0未満)であると、上記した結晶粒の微細化などの諸作用が効果的に発揮されないため、Mn含有比は1.0%以上とする。また、S含有比との関係において、Mn含有比が過大(2.0%超)であると、ステンレス鋳鋼の耐酸化性が劣化する。したがって、この発明に係るオーステナイト系ステンレス鋳鋼では、S含有比との関係において、Mn含有比を1.0%以上2.0%以下とする。なお、Mnは、上記したMnSの効果を高める観点から、好ましくは1.0質量%を超えて2.0質量%以下、より好ましくは1.05質量%以上2.0質量%以下である。
<S:0.5%以上0.9%以下>
また、Mn含有比との関係において、S含有比が過小(0.5%未満)であると、上記した結晶粒の微細化などの諸作用が効果的に発揮されないため、S含有比は0.5%以上とする。また、Mn含有比との関係において、S含有比が過大(0.9%超)であると、ステンレス鋳鋼の高温強度および熱間加工性が劣化する。したがって、この発明に係るオーステナイト系ステンレス鋳鋼では、Mn含有比との関係において、S含有比を0.5%以上0.9%以下とする。なお、Sは、上記したMnSの効果を高める観点から、好ましくは0.5質量%を超えて0.9質量%以下、より好ましくは0.6質量%以上0.9質量%以下である。
<W+2Mo:0.5%以上10%以下>
WおよびMoは、共に、オーステナイト組織に固溶することによって、また、炭化物を形成することによって、ステンレス鋳鋼の高温強度を向上させる作用を奏する。なお、MoがWと同等の効果を発揮するにはWの2倍の量が必要である。そこで、WおよびMoについては、WおよびMoの合計の含有比をW+2Moによって規定する。なお、W+2Moが過小(0.5%未満)であると、上記作用が効果的に発揮されないため、W+2Moは0.5%以上とする。また、W+2Moが過大(10%超)であると、ステンレス鋳鋼の耐酸化性が劣化するため、W+2Moは10%以下とする。したがって、この発明に係るオーステナイト系ステンレス鋳鋼では、WおよびMoの合計の含有比として規定する、W+2Moを0.5%以上10%以下とする。
<N:0%を超えて0.8%以下>
この発明に係るオーステナイト系ステンレス鋳鋼では、複数元素Mは、さらに、0%を超えて0.8%以下のNを含むことが好ましい。なお、この発明に係るオーステナイト系ステンレス鋳鋼では、複数元素Mとして、上記したC、Si、Mn、S、W、MoおよびNを同時に含むことができるし、Nは含まれなくてもよい。しかし、Nは、オーステナイト組織を安定化させる作用を奏する。また、Nは、オーステナイト組織に固溶することによって、ステンレス鋳鋼の高温強度および靭性を向上させる作用を奏する。また、Nは、Cr、W、MoおよびNbなどと窒化物を形成することによって、ステンレス鋳鋼の高温強度を向上させる作用を奏する。こうした有益な作用を得るために、この発明に係るオーステナイト系ステンレス鋳鋼へのNの適切な含有は有効である。なお、N含有比が過大(0.8%超)であると、窒化物の形成が過剰になって脆くなるため、ステンレス鋳鋼の延性が低下し、ステンレス鋳鋼の加工性が劣化する。したがって、この発明に係るオーステナイト系ステンレス鋳鋼では、Nを含有させる場合は、N含有比を0.8%以下とする。
<Nb:0%を超えて4.0%以下>
この発明に係るオーステナイト系ステンレス鋳鋼では、複数元素Mは、さらに、0%を超えて4.0%以下のNbを含むことが好ましい。なお、この発明に係るオーステナイト系ステンレス鋳鋼では、複数元素Mとして、上記したC、Si、Mn、S、W、Mo、NおよびNbを同時に含むことができるし、Nbは含まれなくてもよい。しかし、Nbは、Cと結合して微細な炭化物を形成するし、Nが存在する場合はNと結合して微細な窒化物も形成する。こうした微細な炭化物および窒化物は、ステンレス鋳鋼の高温強度を向上させる作用を奏する。なお、Nb含有比が過大(4.0%超)であると、炭化物の形成が過剰になるし、Nが存在する場合は窒化物の形成も過剰になるため脆くなり、ステンレス鋳鋼の延性が低下し、ステンレス鋳鋼の加工性が劣化する。したがって、この発明に係るオーステナイト系ステンレス鋳鋼では、Nbを含有させる場合は、Nb含有比を4.0%以下とする。
<Cu:0%を超えて3.5%以下>
この発明に係るオーステナイト系ステンレス鋳鋼では、複数元素Mは、さらに、0%を超えて3.5%以下のCuを含むことが好ましい。なお、この発明に係るオーステナイト系ステンレス鋳鋼では、複数元素Mとして、上記したC、Si、Mn、S、W、Mo、N、NbおよびCuを同時に含むことができるし、Cuは含まれなくてもよい。しかし、Cuは、潤滑剤となってステンレス鋳鋼の耐摩耗性を向上させる作用を奏し、オーステナイト組織に固溶することによってステンレス鋳鋼の硬さを向上させる作用を奏する。一般に、硬さの増大は耐摩耗性の向上に寄与すると考えられる。なお、上記したように、Cuは、1000℃以上の高温環境下において赤熱脆化を引き起こす。そのため、Cu含有比が過大(3.5%超)であると、硬さの向上効果が飽和するだけでなく赤熱脆化が発生しやすくなる。したがって、この発明に係るオーステナイト系ステンレス鋳鋼では、Cuを含有させる場合は、Cu含有比を3.5%以下とする。
<残部Feおよび不可避的不純物>
この発明に係るオーステナイト系ステンレス鋳鋼は、上記したNi、Crおよび複数元素M以外の残部は、Feおよび不可避的不純物からなる。Feは、NiおよびCrとともに、オーステナイト系ステンレス鋳鋼を構成するための基本元素である。
なお、意図せず含有した元素を不純物元素と呼び、現時点の技術で除去し切れない不純物元素を不可避的不純物と呼ぶ。代表的な不可避的不純物としては、例えばP(リン)が挙げられる。Pは、原材料から不可避的に混入しやすく、ステンレス鋳鋼の靭性を著しく劣化させる。したがって、この発明に係るオーステナイト系ステンレス鋳鋼では、P含有比は、望ましくは0.1%以下であり、より望ましくは0.05%以下である。なお、P以外の不純物元素の記載は略すが、この発明では上記したFe、Ni、Crおよび複数元素Mに属すもの以外は、不純物元素と見做す。
本発明者は、オーステナイト系ステンレス鋳鋼を構成する基本元素であるFe、CrおよびNiの含有比と、諸特性を向上させる複数元素M(C、Si、Mn、S、WおよびMo)の含有比と、諸特性の向上に寄与するため添加するのが好ましいと考えられるN、NbおよびCuの含有比とを適切に管理することにより、従来のオーステナイト系ステンレス鋳鋼よりも高い耐摩耗性が得られると考えている。そこで、これを確かめるための高温磨耗試験を実施した結果、従来のオーステナイト系ステンレス鋳鋼よりも、例えば特許文献1に開示される耐熱鋳鋼(耐熱軸受材料)よりも、高い耐磨耗性が得られることを確認したので、以下、高温磨耗試験以外の結果とともに、具体的に説明する。
<試験体の作製>
高温磨耗試験などの評価に用いる試験体(鋳物)はロストワックス精密鋳造法を用いて作製した。以下、高温磨耗試験に用いる試験体を例に挙げて説明する。
高温磨耗試験に用いた試験体は、ロストワックス精密鋳造法を用いて作製した鋳物を機械加工し、外径が50mm、内径が10mm、高さが8mmの円盤形状に形成したものである。具体的には、まず、上記した鋳物の形状に対応する消失性模型を作製し、鋳造に必要な湯道などを構成する部分に対応する消失性模型を作製し、これらの消失性模型を用いてツリー模型を作製した。なお、ツリー模型の形状は、鋳型の内部空間の形状に対応する。続いて、ツリー模型の表面をスラリーで被覆し、さらにスタッコで被覆した。スラリー被覆およびスタッコ被覆を交互に複数回行って、ツリー模型が内包された耐火物殻を作製した。続いて、オートクレーブ処理を行って耐火物殻内からツリー模型を除去した後に耐火物殻を焼成することによって、鋳型を作製した。上記したプロセスにより、複数の鋳型を作製した。
続いて、作製した複数の鋳型を用いて、それぞれ、注入する溶融金属(溶湯)を替えて、鋳造を行った。鋳造は、鋳型に溶湯を注入し、鋳型内で溶湯を凝固させ、そのまま空冷した。続いて、ノックアウト処理を行って、鋳型から鋳物を取り出した。なお、ノックアウト処理は、所定の振動を加えて鋳型を解砕し、鋳物から鋳型(耐火物殻)を除去する処理を意図する。続いて、作製した鋳物を機械加工し、上記した円盤形状の試験体を作製した。こうしたプロセスにより、表1に示す化学成分からなる複数の試験体(発明例1〜発明例3、比較例1〜比較例4)を作製した。なお、表1に示す二重線による囲みは、この発明の範囲外であることを意図する。
<鋳物の割れ>
上記したプロセスにおいて、鋳物が割れる不具合が発生することがあった。こうした鋳物の割れは、鋳型加えた振動によって割れる場合(ノックアウト割れ)や鋳型内で冷却中に割れる場合(鋳造割れ)などが考えられるが、鋳物の割れが発生したプロセスを明確にすることはできなかった。しかし、鋳物の割れは、比較例1、比較例2および比較例4では発明例1〜発明例3よりも多く発生していた。その原因は不明であるが、実施例1〜実施例3に比べて、比較例1および比較例2ではMnおよびSの含有比が小さく、比較例4ではS含有比が小さい。この観点から、MnおよびSの適正な添加により、具体的には、Mnは、1.0質量%以上、好ましくは1.0質量%超、より好ましくは1.05質量%以上とし、Sは、0.5質量%以上、好ましくは0.5質量%超、より好ましく0.6質量%以上とすることにより、上記したMnSによる結晶粒微細化の効果が発揮されると考えられる。なお、結晶粒微細化については後述する。
<試験体の断面組織>
表1に示す発明例1〜発明例3および比較例1〜比較例4の試験体において、代表的な断面組織(写真)を示す。図1は発明例1の試験体の断面組織(写真)の一例である。また、図2は比較例4の試験体の断面組織(写真)の一例である。図1と図2の対比により、発明例1の結晶粒がより小さく、比較例4の結晶粒がより大きいことが確認される。MnおよびSに注目すると、発明例1のMn含有比と比較例4のMn含有比とは同等であるが、発明例1のS含有比は比較例4のS含有比の約4倍になっている。したがって、Sによる作用は、比較例4よりも発明例1に強く発現すると考えられる。この観点から、発明例1の結晶粒が比較例4の結晶粒よりも微細化したのは、Mn含有比との関係において発明例1のS含有比が比較例4のS含有比の約4倍であることに起因し、適切に生成されたMnSによる作用が発揮されたためであると考えられる。
<最大磨耗量、平均摩擦係数>
上記した試験体を用いた高温磨耗試験により、試験体の最大磨耗量を測定し、その際の平均摩擦係数を算定した。高温磨耗試験は、神鋼造機株式会社製の高温摩擦磨耗試験機SFWTにより行った。具体的には、円盤形状の試験体の内径部分に回転軸を設けた試験体を電気炉内に設置し、その試験体の平らな表面(試験面)に20kgを負荷した相手体が接触した状態で保持した。続いて、電気炉内の温度を約800℃に保持した状態で試験体を30rpmで回転し、そのまま約10分間保持した。なお、いずれの高温磨耗試験においても、試験体に接触させる相手体の材質および形状は同等のものとした。相手体の材質は、質量%で、Niが20%、Crが24%、Cが0.30%C、Siが0.85%、Mnが0.70%、Nbが1.3%、残部Feおよび不可避的不純物からなる、JIS規格のSCH21相当(ASTM規格のHK30相当)の耐熱鋳鋼により構成した。相手体の形状は、外径が25.6mm、内径が20mm(厚さが2.8mm)のリング形状にした。それぞれの試験体について、高温磨耗試験後の試験面のプロファイルを測定し、試験体の厚さ方向の最大磨耗量(最大深さ)を求めた。なお、高温磨耗試験後の試験体において相手体が接触していない試験面を最大磨耗量0μmの基準位置とした。
高温磨耗試験中、高温摩擦磨耗試験機SFWTの計測機能により、それぞれの試験体と相手体との平均摩擦係数を求めた。また、高温磨耗試験後、それぞれの試験体の試験面のプロファイルを測定し、試験体の厚さ方向の最大磨耗量(最大深さ)を求めた。なお、最大磨耗量0μmの基準位置は、高温磨耗試験後の試験体において相手体が接触していない試験面である。表2に、発明例1〜発明例3および比較例1〜比較例4の試験体の最大磨耗量および平均摩擦係数を示す。
高温磨耗試験の結果、発明例1〜発明例3の最大磨耗量は小さく、20μm以下であった。特に、発明例1および発明例2の最大磨耗量は小さく、5μm以下であった。また、比較例1〜比較例4の最大磨耗量は大きく、20μmを超えた。特に、比較例3および比較例4の最大磨耗量は大きく、200μm前後であった。また、発明例1〜発明例3と、比較例1および比較例2との対比により、MnおよびSの含有比を適切に大きくすると、最大磨耗量が小さくなることが分かる。これは、MnおよびSの適正な添加により、上記したMnSによる諸作用が効果的に発揮されたためと考えられる。また、発明例1〜発明例3、比較例1および比較例2と、比較例3および比較例4との対比により、CおよびSiの含有比を適切に大きくすると、最大磨耗量が小さくなることが分かる。また、発明例1〜発明例3の対比により、Cu含有比を適切に大きくすると、最大磨耗量が小さくなることが分かる。この結果、Mn、S、CおよびSiの含有比が適切に制御されることにより、比較例1〜比較例4よりも最大磨耗量が小さくなった発明例1〜発明例3は、好ましい耐磨耗性を有することが確認された。また、Cuの含有比が適切に制御されることにより、最大磨耗量がより小さくなった発明例1および2は、より好ましい耐磨耗性を有することが確認された。なお、平均摩擦係数が最小であった比較例1の最大磨耗量は、発明例1〜発明例3よりも大きくなった。この結果、平均摩擦係数が小さくても最大磨耗量が小さなるとは限らないことが判明した。
<ロックウェル硬さ>
表3に示す硬さは、ロックウェル硬さであり、高温磨耗試験前の試験体の表面(機械加工面)をJIS−Z2245:2016に準拠して測定した結果である。なお、表3には表2に示す最大磨耗量を併記している。
表3に示すように、発明例1〜発明例3のロックウェル硬さは大きく、25HRC以上であった。また、比較例1のロックウェル硬さ発明例2と同程度に大きく、25HRC以上であった。なお、比較例2および比較例3のロックウェル硬さは比較的小さく、20HRC未満であった。また、発明例1〜発明例3および比較例1と、比較例2および比較例3との対比により、CおよびSiの含有比を適切に大きくすると、硬さが大きくなることが分かる。また、発明例1〜発明例3および比較例1と、比較例2および比較例4との対比により、硬さが小さくなると最大磨耗量が大きくなる傾向があることが分かる。しかし、発明例1〜発明例3の対比により、硬さが同等程度でも最大磨耗量が小さくなることが判明した。この傾向は、おそらく、Cu含有比が関与すると考えられる。例えば、Cu含有比を適切に大きくすると、硬さに影響を与えずに最大磨耗量を小さくすることができることが分かる。この結果、CおよびSiの含有比が適切に制御されることにより、好ましい硬さおよび耐磨耗性を有することが確認された。また、Cuの含有比が適切に制御されることにより、より好ましい耐磨耗性を有することが確認された。
<高温強度>
表4に示す高温強度(引張強さ、伸び)は、ASTM/E21に準拠して測定した結果である。具体的には、上記した高温磨耗試験用の試験体と同様な鋳造法により作製した形状が異なる鋳物から切り出した試験片を加熱し、約1000℃に保持した状態で行った高温引張試験の結果である。なお、表4には表2に示す最大磨耗量を併記している。
表4に示すように、発明例1〜発明例3および比較例1の高温(1000℃)引張強さは、同等程度(最大差分7MPa)であり、いずれも140MPa以上であった。しかし、比較例1の最大磨耗量は大きいが、発明例1〜発明例3の最大磨耗量は小さい。この傾向は、明らかに、MnおよびSの含有比に起因する。例えば、MnおよびSの含有比を適切に大きくすると、高温引張強さに影響を与えずに最大磨耗量を小さくすることができることが分かる。この結果、MnおよびSの含有比が適切に制御されることにより、好ましい高温引張強さおよび耐磨耗性を有することが確認された。
また、表4に示すように、発明例1および比較例1の高温(1000℃)伸びは8%前後で比較的小さく、発明例2および発明例3の高温伸びは14%程度で比較的大きくなった。この傾向は、おそらく、Cu含有比が関与し、上記したようにMnSが結晶粒内にCuを固定して赤熱脆化(熱間脆化)を抑制する作用を奏したと考えられる。なお、高温伸びが同程度であっても、発明例1の最大磨耗量は小さく、比較例1の最大磨耗量は大きいし、発明例2よりも発明例3の最大磨耗量の方が大きい。これは、MnおよびSの含有比に起因して最大磨耗量が変化するとともに、Cu含有比が関与して最大磨耗量を変化させることによると考えられる。
<常温強度>
表5に示す常温強度(引張強さ)は、ASTM/E8に準拠して測定した結果である。具体的には、上記した高温磨耗試験用の試験体と同様な鋳造法により作製した形状が異なる鋳物から切り出した試験片を、常温(20℃±5℃に制御)に保持した状態で行った常温引張試験の結果である。なお、表5には表2に示す最大磨耗量を併記している。
表5に示すように、発明例1〜発明例3および比較例2の常温引張強さは、いずれも、500MPa以上であった。特に、発明例2および発明例3の常温引張強さは大きく、540MPa以上であった。この傾向、つまり、発明例2および発明例3の常温引張強さが比較的大きくなり、発明例1および比較例2の常温引張強さが比較的小さくなる傾向は、おそらくCu含有比が関与すると考えられる。この点を踏まえた発明例1〜発明例3および比較例2のCu含有比(表1参照)の対比により、例えば、2.0質量%以下であると、常温引張強さを高めつつ最大磨耗量を小さくすることができることが分かる。なお、この場合のCu含有比は、2.0質量%以下でよいと考えられるが、好ましくは1.8質量%以下、より好ましくは1.5質量%以下、より一層好ましくは1.2質量以下であると考えられる。しかし、発明例1〜発明例3の最大磨耗量は20μm以下で小さく、比較例2の最大磨耗量は50μm以上で大きい。この傾向は明らかにMnおよびSの含有比に起因し、MnおよびSの含有比を適切に大きくすると、常温引張強さに影響を与えずに最大磨耗量を小さくすることができることが分かる。この結果、MnおよびSの含有比が適切に制御されることにより、好ましい常温引張強さおよび耐磨耗性を有することが確認された。また、Cu含有比が適切に制御されることにより、より好ましい常温引張強さおよび耐磨耗性を有することが確認された。
<ラプチャー寿命、ラプチャー伸び>
表6に示すラプチャー寿命およびラプチャー伸びは、ASTM/E139に準拠して測定した結果である。具体的には、上記した高温磨耗試験用の試験体と同様な鋳造法により作製した形状が異なる鋳物から切り出した試験片に約80MPaの負荷を加えた状態で約900℃に保持したラプチャー試験の結果である。なお、表6には表2に示す最大磨耗量を併記している。
表6に示すように、発明例1および比較例2のラプチャー寿命は8h以下で比較的短く、発明例2および発明例3のラプチャー寿命は10h以上で比較的長くなった。特に、比較例2のラプチャー寿命は4h以下でより短く、発明例2のラプチャー寿命は20h以上でより長くなった。この傾向は、おそらく、MnおよびSの含有比と、Cu含有比とが関与すると考えられる。例えば、発明例1と比較例2との対比により、Cu含有比が同等(表1参照)であっても、MnおよびSの含有比が大きい発明例1のラプチャー寿命は、MnおよびSの含有比が小さい比較例2のラプチャー寿命よりも長い。また、発明例2と発明例3との対比により、MnおよびSの含有比が同等(表1参照)であっても、Cu含有比が大きい発明例2(1.0質量%)のラプチャー寿命は、Cu含有比が小さい発明例3(0質量%)のラプチャー寿命よりも長い。しかし、発明例1〜発明例3の最大磨耗量は20μm以下で小さく、比較例2の最大磨耗量は50μm以上で大きい。この傾向は、上記したように、明らかに、MnおよびSの含有比に起因する。この結果、MnおよびSの含有比が適切に制御されることにより、好ましい常温引張強さおよび耐磨耗性を有することが確認された。
また、表6に示すように、発明例1〜発明例3のラプチャー伸びは10%以下で比較的小さく、比較例2のラプチャー伸びは30%以上で比較的大きくなった。また、Cu含有比が同等(2.25質量%)の発明例1と比較例2との対比により、MnおよびSの含有比が小さい比較例2のラプチャー伸びが発明例1よりも大きいことが分かる。これより、発明例1〜発明例3のラプチャー伸びの低下は、おそらく、MnおよびSの含有比が関与すると考えられる。しかし、発明例1〜発明例3の最大磨耗量は20μm以下で小さく、比較例2の最大磨耗量は50μm以上で大きい。この傾向は、上記したように、明らかに、MnおよびSの含有比が適切に制御されたことに起因する。この結果、MnおよびSの含有比が適切に制御されることにより、好ましい常温引張強さおよび耐磨耗性を有することが確認された。
この発明は、高温下での耐摩耗性に優れるオーステナイト系ステンレス鋳鋼を提供することができる点において、具体的には、例えばガソリン車に搭載される過給エンジン用WGVに組み込まれる耐磨耗部品などに好適と考えられる、高温下での耐摩耗性に優れるオーステナイト系ステンレス鋳鋼を提供することができる点において、産業上の利用可能性を有する。

Claims (4)

  1. 6質量%以上30質量%以下のNiと、15質量%以上32質量%以下のCrと、複数元素Mとを含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなるオーステナイト系ステンレス鋳鋼であって、
    前記複数元素Mは、0.6質量%以上1.5質量%以下のC、1.6質量%以上3.7質量%以下のSi、1.0質量%以上2.0質量%以下のMn、0.5質量%以上0.9質量%以下のS、WおよびMoを含むとともに、W+2Moが0.5質量%以上10質量%以下となるように構成されている、オーステナイト系ステンレス鋳鋼。
  2. 前記複数元素Mは、さらに、0質量%を超えて0.8質量%以下のNを含む、請求項1に記載のオーステナイト系ステンレス鋳鋼。
  3. 前記複数元素Mは、さらに、0質量%を超えて4.0質量%以下のNbを含む、請求項1または2に記載のオーステナイト系ステンレス鋳鋼。
  4. 前記複数元素Mは、さらに、0質量%を超えて3.5質量%以下のCuを含む、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のオーステナイト系ステンレス鋳鋼。
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