JP2021007110A - 互いに接触する金属製部品と樹脂製部品を備えた物品 - Google Patents
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Abstract
【課題】LEDランプ等のように、互いに接触する金属製部品と樹脂製部品とを少なくとも備えた物品であって、樹脂製部品の耐衝撃性に優れるため破損が生じにくく、さらには、温度変化に起因する軋み音等の異音の発生が抑制されたものを提供する。【解決手段】互いに接触する金属製部品と樹脂製部品とを少なくとも備えた物品であって、金属製部品及び樹脂製部品の少なくとも一方は、他方の部品と接触する部分の少なくとも表面の一部が、ゴム強化芳香族ビニル系樹脂(A)を含む熱可塑性樹脂組成物(X)で形成されている物品が提供される。樹脂製部品は、全体又は金属製部品と接触する部分が、熱可塑性樹脂組成物(X)で形成されてよい。金属製部品又は樹脂製部品の他方の部品と接触する部分の表面の一部又は全部が、熱可塑性樹脂組成物(X)で形成された層から形成されてよい。樹脂製部品は、熱可塑性樹脂組成物(X)で形成されたスペーサーであってよい。【選択図】図2
Description
本発明は、互いに接触する金属製部品と樹脂製部品とを少なくとも備えた物品であって、樹脂製部分の耐衝撃性に優れ、好ましくは異音の発生が抑制され、さらに好ましくは耐候性、耐熱性、難燃性等にも優れた物品に関する。
近年、環境意識の高まりから、エネルギー効率に優れているとともに長寿命であり、高輝度化が進んでいるLED(Light Emitting Diode)素子は、様々な照明光源として利用されている。例えば、従来の蛍光灯や白熱電球の代わりとして、直管型LEDランプや電球型LEDランプ等の利用が進みつつある。
このように、蛍光灯や白熱電球の代わりにLEDを利用する場合、複数のLEDを基板上に搭載し、その基板に光を透過、拡散させる照明カバーを装着することが多い。その際、LEDを搭載する基板には、LEDから発生した熱を効率的に放熱できるように、熱伝導率に優れたアルミニウム等の金属が主に用いられている。また、透明性、耐衝撃性、軽量といった特性が求められる照明カバーには、ポリカーボネート等の樹脂が主に用いられている(特許文献1〜3参照)。
しかし、製造時に樹脂製の照明カバーを金属製の基板に嵌め込む際や、使用時に乱雑な扱いを受けた際などに、照明カバーの耐衝撃性が低いと、照明カバーが金属製基板との接触部分で破損することがあった。また、使用時には、金属と樹脂の熱膨張率が大きく異なるため、LEDの点灯、消灯による温度変化で、基板と照明カバーが擦れ合い、両者の接触部分で軋み音等の異音が発生するという問題があった。
本発明の目的は、LEDランプ等の照明器具のように、互いに接触する金属製部品と樹脂製部品とを少なくとも備えた物品であって、樹脂製部品の耐衝撃性に優れるため破損が生じにくく、さらには、軋み音等の異音の発生が抑制されたものを提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、上記物品の金属製部品と樹脂製部品との互いに接触する箇所の材質としてゴム強化芳香族ビニル系樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物を採用することで、上記破損が抑制でき、さらに、上記異音の発生も抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。当該材料として特定の温度範囲の融点を有する結晶性の熱可塑性樹脂組成物を使用した場合には、上記異音の発生が特に抑制できることもわかった。
かくして、本発明の一局面によれば、互いに接触する金属製部品と樹脂製部品とを少なくとも備えた物品であって、前記金属製部品及び樹脂製部品の少なくとも一方は、他方の部品と接触する部分の少なくとも表面の一部が、ゴム強化芳香族ビニル系樹脂(A)を含む熱可塑性樹脂組成物(X)で形成されている物品が提供される。
本発明の上記局面では、上記2つの部品の接触する箇所の材質が、耐衝撃性に優れたゴム強化芳香族ビニル系樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物(X)から構成されているので、物品の上記破損が抑制されるという利点が得られる。
本発明の好ましい実施形態によれば、上記熱可塑性樹脂組成物(X)として、結晶性を有するもの、具体的には、JIS K 7121−1987に準じて測定した融点が0〜120℃の範囲にあるものが使用される。この態様では、物品の上記破損が抑制されるだけでなく、上記異音の発生の抑制が更に良好なものとなる。
本発明の上記局面では、上記2つの部品の接触する箇所の材質が、耐衝撃性に優れたゴム強化芳香族ビニル系樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物(X)から構成されているので、物品の上記破損が抑制されるという利点が得られる。
本発明の好ましい実施形態によれば、上記熱可塑性樹脂組成物(X)として、結晶性を有するもの、具体的には、JIS K 7121−1987に準じて測定した融点が0〜120℃の範囲にあるものが使用される。この態様では、物品の上記破損が抑制されるだけでなく、上記異音の発生の抑制が更に良好なものとなる。
本発明によれば、互いに接触する金属製部品と樹脂製部品とを少なくとも備えた物品において、金属製部品と樹脂製部品との互いに接触する箇所の材質としてゴム強化芳香族ビニル系樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物を採用することとしたので、接触箇所の耐衝撃性が改善され、使用時や製造時等における樹脂製部品の破損が抑制される。また、上記熱可塑性樹脂組成物が結晶性を有する場合、すなわち、JIS K 7121−1987に準じて測定した融点が0〜120℃の範囲にある場合は、上記破損防止効果に加えて、上記異音の発生の抑制効果が更に良好なものとなる。
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明において、「(共)重合」とは、単独重合及び/又は共重合を意味し、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及び/又はメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及び/又はメタクリレートを意味する。
また、JIS K 7121−1987に準じて測定した融点(本明細書において、「Tm」と表記することもある)は、DSC(示差走査熱量計)を用い、1分間に20℃の一定昇温速度で吸熱変化を測定し、得られた吸熱パターンのピーク温度を読みとった値である。
本発明において、「(共)重合」とは、単独重合及び/又は共重合を意味し、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及び/又はメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及び/又はメタクリレートを意味する。
また、JIS K 7121−1987に準じて測定した融点(本明細書において、「Tm」と表記することもある)は、DSC(示差走査熱量計)を用い、1分間に20℃の一定昇温速度で吸熱変化を測定し、得られた吸熱パターンのピーク温度を読みとった値である。
1.本発明の物品
本発明の物品は、互いに接触する金属製部品と樹脂製部品とを少なくとも備えたものであればよい。とりわけ、本発明の構成は、金属製部品と樹脂製部品とがスナップフィット、螺合等により凹凸部を介して接触する物品における上記破損を抑制するのに好適であり、また、加熱と冷却に繰り返し曝されるため、金属製部品と樹脂製部品との間の膨張率の差により相互にずれを生じることのある物品における上記異音の発生を抑制するのに好適である。本発明の物品の具体例としては、例えば、直管型LEDランプ、電球型LEDランプの他、電球型蛍光灯、などの照明器具、携帯電話、タブレット端末、炊飯器、冷蔵庫、電子レンジ、ガスコンロ、掃除機、食器洗浄機、空気清浄機、エアコン、ヒーター、TV、レコーダーなどの家電器具、プリンター、FAX、コピー機、パソコン、プロジェクター等のOA機器、オーディオ器具、オルガン、電子ピアノ等の音響機器、車両内外装部品などが挙げられる。
本発明の構成は、長尺の物品、特に、金属製部品と樹脂製部品とが長尺であって、その長手方向に沿って接触する物品の場合、両部品間の熱膨張や収縮による寸法変化の差が大きいので、特に効果的である。
が挙げられる。
本発明の物品は、互いに接触する金属製部品と樹脂製部品とを少なくとも備えたものであればよい。とりわけ、本発明の構成は、金属製部品と樹脂製部品とがスナップフィット、螺合等により凹凸部を介して接触する物品における上記破損を抑制するのに好適であり、また、加熱と冷却に繰り返し曝されるため、金属製部品と樹脂製部品との間の膨張率の差により相互にずれを生じることのある物品における上記異音の発生を抑制するのに好適である。本発明の物品の具体例としては、例えば、直管型LEDランプ、電球型LEDランプの他、電球型蛍光灯、などの照明器具、携帯電話、タブレット端末、炊飯器、冷蔵庫、電子レンジ、ガスコンロ、掃除機、食器洗浄機、空気清浄機、エアコン、ヒーター、TV、レコーダーなどの家電器具、プリンター、FAX、コピー機、パソコン、プロジェクター等のOA機器、オーディオ器具、オルガン、電子ピアノ等の音響機器、車両内外装部品などが挙げられる。
本発明の構成は、長尺の物品、特に、金属製部品と樹脂製部品とが長尺であって、その長手方向に沿って接触する物品の場合、両部品間の熱膨張や収縮による寸法変化の差が大きいので、特に効果的である。
が挙げられる。
例えば、直管型LEDランプは、図1に示されるように、LED11が取り付けられ基板12を保持するアルミニウム製の断面略D型のケーシング10と、このアルミ製ケーシング10に嵌合する断面略D型の光透過性樹脂製のケーシング20とから構成され、これら両ケーシング10,20で円筒形状のLEDランプの外形が形成される。アルミニウム製のケーシング10は、使用時にLEDから出る熱を放散させるため、ヒートシンクの機能を果たす。樹脂製のケーシング20は、LEDの光を透過させるための照明カバーとして機能し、通常、透明、乳白色等の樹脂から作られ、また、照明器具としての耐熱性及び耐衝撃性も要求されることから、ポリカーボネート樹脂等から作製されることが多い。しかしながら、ケーシング10はアルミニウム以外の金属でできていてもよく、ケーシング20は上記樹脂以外の樹脂からできていてもよい。
両ケーシング10,20は、相互に対向する縁部に設けられた凹部と凸部とが嵌合することによって組み立てられることが多い。図1の例では、アルミ製ケーシング10は、その両縁部に沿って外方に向けて開口した凹部15a,15bを備え、樹脂製のケーシング20はその両縁に沿って内方に張り出した凸部25a,25bを備えている。そして、図1に示されるように、相互に対向する凹部15a,15bに凸部25a,25bがそれぞれ嵌り込むことにより、組み立てられる。
両ケーシング10,20は、ケーシング10の一方の端部から、ケーシング10の凹部15a,15bにケーシング20の他方の端部の凸部25a,25bを挿入させてスライド移動させたり、ケーシング20をケーシング10に向けて押しつけて、ケーシング20の凹部15a,15bにケーシング20の凸部25a,25bをスナップフィットさせることにより組み立てることができるが、その際、大きな衝撃がケーシング10,20に加えられると、アルミ製ケーシング10に比べて強度の弱い樹脂製ケーシング20に破損が生じる可能性がある。同様に、使用時にLEDランプに強い衝撃が加わった場合にも、樹脂製ケーシング20のアルミ製ケーシング10との接触部に破損が生じる可能性がある。
本発明の物品は、上記のような場合でも、樹脂製部品に破損が生じるのを抑制するために、上記金属製部品と樹脂製部品の少なくとも互いに接触する部分を上記熱可塑性樹脂組成物(X)で形成している。例えば、図2に示されるように、図1に示されるような照明器具の嵌合部(図1の丸で囲んだ部分)において、樹脂製ケーシング20の凸部25bのような、アルミ製ケーシング10と接触する部分のみを上記熱可塑性樹脂組成物(X)で形成することができる。また、図3に示されるように、樹脂製ケーシング20の凸部25b及びその周辺又は樹脂製ケーシング20全体を上記熱可塑性樹脂組成物(X)で形成してもよい。さらに、図4に示されるように、樹脂製ケーシング20の凸部25bの部分のみ、本発明の上記熱可塑性樹脂組成物(X)を表層として備える積層体とすることもできる。また、図5に示されるように、金属製ケーシング10の凹部の表面の部分のみ、本発明の上記熱可塑性樹脂組成物(X)を表層として備える積層体とすることもできる。図2〜図5に示されるような、ケーシング10,20の一部分を本発明の上記熱可塑性樹脂組成物(X)で形成した成形品は、例えば、共押出成形、ラミネート、溶着等の公知の成形方法により成形することができる。
また、本発明の別の態様によれば、図6に示されるように、アルミ製ケーシング10の凹部15bと樹脂製ケーシング20の凸部25bとの間に、本発明の上記熱可塑性樹脂組成物(X)で形成したスペーサ―30を配置し、両ケーシング10,20がスペーサ―30を介して嵌合するようにしてもよい。スペーサ―30は、既存の照明器具にも取り付けることができるので、既存の照明器具の耐衝撃性の向上のために使用することもできる。なお、本発明において、スペーサー30は、金属製部品と接触する樹脂製部品の一形態と考えることができる。
なお、図示の態様は直管型LEDランプの例であるが、本発明の技術的効果は、同様の嵌合部を備えるその他の照明器具及びその他の物品でも同様に発揮される。
なお、図示の態様は直管型LEDランプの例であるが、本発明の技術的効果は、同様の嵌合部を備えるその他の照明器具及びその他の物品でも同様に発揮される。
2.熱可塑性樹脂組成物(X)
本発明の物品に用いられる熱可塑性樹脂組成物(X)(本明細書では「成分(X)」ともいう)は、ゴム強化芳香族ビニル系樹脂(A)(本明細書では「成分(A)」ともいう)を必須成分として含む。
本発明の物品に用いられる熱可塑性樹脂組成物(X)(本明細書では「成分(X)」ともいう)は、ゴム強化芳香族ビニル系樹脂(A)(本明細書では「成分(A)」ともいう)を必須成分として含む。
本発明の物品に用いられる熱可塑性樹脂組成物(X)は、耐衝撃性の観点から、熱可塑性樹脂組成物(X)全体を100質量%とした場合に、ゴム含量が5〜60質量%であることが好ましい。また、熱可塑性樹脂組成物(X)が結晶性を有すると、使用時に金属製部品と樹脂製部品との熱膨張率の相違に起因して発生する軋み音等の異音の発生を抑制する効果がさらに優れて好ましい。具体的には、JIS K 7121−1987に準じて測定した融点が0〜120℃の範囲にあることが好ましく、10〜90℃の範囲がより好ましく、20〜80℃の範囲がさらにより好ましい。尚、上記のように、融点(Tm)は、JIS K 7121−1987に準じて得られるが、0〜120℃の範囲における吸熱パターンのピークの数は、一つに限定されず、二つ以上でもよい。また、0〜120℃の範囲に見られるTm(融点)は、下記ゴム強化芳香族ビニル系樹脂(A)、特にゴム部分(a1)に由来するものであってよく、または、ゴム強化芳香族ビニル系樹脂(A)に関連して下記する添加剤、例えば、数平均分子量が10,000以下といった低分子量のポリオレフィンワックス等の摺動性付与剤に由来するものであってもよい。なお、該摺動性付与剤は、ゴム強化芳香族ビニル系樹脂(A)に添加されたものであっても、熱可塑性樹脂組成物(X)に直接添加されたものであってもよい。
本発明の物品に用いられる熱可塑性樹脂組成物(X)は、必要に応じてさらにポリカーボネート樹脂(B)(本明細書では「成分(B)」ともいう)を含んでもよい。本発明の熱可塑性樹脂組成物(X)におけるポリカーボネート樹脂(B)の含有量は、必要とする耐衝撃性及び耐熱性に応じて決められるが、ポリカーボネート樹脂(B)の含有量は、上記成分(A)及び上記成分(B)の合計100質量%に対して5〜40質量%であることが好ましく、10〜30質量%であることがより好ましい。ゴム強化芳香族ビニル系樹脂(A)の含有量は、成分(A)及び成分(B)の合計100質量%に対して95〜60質量%であることが好ましく、70〜90質量%であることがより好ましい。この範囲であれば、耐衝撃性及び耐熱性に優れた樹脂組成物が得られる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物(X)を照明器具の部品の成形材料として使用する場合、熱可塑性樹脂組成物(X)の成形品は照明器具に要求される難燃性及び耐熱性を備えることが必要である。この場合、熱可塑性樹脂組成物(X)は、JIS C 8159に従い、グローワイヤ温度が650℃以上であることが好ましく、ボールプレッシャー温度が80℃以上であることが好ましい。
以下、本発明の物品に用いられる熱可塑性樹脂組成物(X)について詳述する。
2−1.ゴム強化芳香族ビニル系樹脂(A)
ゴム強化芳香族ビニル系樹脂(A)は、上記熱可塑性樹脂組成物(X)に耐衝撃性を付与するのに好適に使用され、ゴム含量は、上記熱可塑性樹脂組成物(X)全体を100質量%とした場合に、ゴム含量が5〜60質量%であることが好ましい。また、ゴム強化芳香族ビニル系樹脂(A)は、上記熱可塑性樹脂組成物(X)が有する上記の軋み音等の異音の発生を抑制する機能をさらに優れたものとするため、結晶性を有することが好ましい。具体的には、JIS K 7121−1987に準じて測定した上記熱可塑性樹脂組成物(X)の融点が0〜120℃の範囲にあることが好ましく、10〜90℃の範囲がより好ましく、20〜80℃の範囲がさらにより好ましい。
2−1.ゴム強化芳香族ビニル系樹脂(A)
ゴム強化芳香族ビニル系樹脂(A)は、上記熱可塑性樹脂組成物(X)に耐衝撃性を付与するのに好適に使用され、ゴム含量は、上記熱可塑性樹脂組成物(X)全体を100質量%とした場合に、ゴム含量が5〜60質量%であることが好ましい。また、ゴム強化芳香族ビニル系樹脂(A)は、上記熱可塑性樹脂組成物(X)が有する上記の軋み音等の異音の発生を抑制する機能をさらに優れたものとするため、結晶性を有することが好ましい。具体的には、JIS K 7121−1987に準じて測定した上記熱可塑性樹脂組成物(X)の融点が0〜120℃の範囲にあることが好ましく、10〜90℃の範囲がより好ましく、20〜80℃の範囲がさらにより好ましい。
ゴム強化芳香族ビニル系樹脂(A)は、ゴム質重合体に由来するゴム部分(a1)とビニル系単量体に由来する構成単位を有する樹脂部分(a2)とからなり、ゴム部分(a1)は樹脂部分(a2)がグラフト重合したグラフト共重合体を形成していることが好ましい。したがって、ゴム強化芳香族ビニル系樹脂(A)は、上記グラフト共重合体と、ゴム部分(a1)にグラフト重合していない樹脂部分(a2)とから少なくとも構成されることが好ましく、さらに、樹脂部分(a2)がグラフトしていないゴム部分(a1)、又は、添加剤等のその他の成分を含んでもよい
上記ゴム部分(a1)は、25℃でゴム質(ゴム弾性を有する)であれば、単独重合体であってもよいし、共重合体であってもよい。また、上記ゴム部分(a1)は、ジエン系重合体(以下、「ジエン系ゴム」という)及び非ジエン系重合体(以下、「非ジエン系ゴム」という)のいずれから構成されてもよい。また、これらの重合体は、架橋重合体であってもよいし、非架橋重合体であってもよい。このうち、本発明においては、耐衝撃性向上の点から、上記ゴム部分(a1)の少なくとも一部がジエン系ゴムから構成されることが好ましい。また、軋み音等の異音の抑制効果の点から、上記ゴム部分(a1)の少なくとも一部が非ジエン系ゴムから構成されることが好ましく、上記ゴム部分(a1)の全部が非ジエン系ゴムから構成されることが特に好ましい。
非ジエン系ゴムとしては、エチレン・α―オレフィン系ゴム;ウレタン系ゴム;アクリル系ゴム;シリコーンゴム;シリコーン・アクリル系IPNゴム;共役ジエン系化合物に由来する構造単位を含む(共)重合体を水素添加してなる水素添加重合体(但し、水素添加率は50%以上)等が挙げられる。この水素添加重合体は、ブロック共重合体であってもよいし、ランダム共重合体であってもよい。
本発明においては、軋み音等の異音の抑制効果の点から、上記非ジエン系ゴムとして、エチレン・α−オレフィン系ゴムを使用することが好ましい。エチレン・α−オレフィン系ゴムは、エチレンに由来する構造単位と、α−オレフィンに由来する構造単位とを含む共重合体ゴムである。α−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−ヘキサデセン、1−エイコセン等が挙げられる。これらのα−オレフィンは、単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。α−オレフィンの炭素原子数は、耐衝撃性の観点から、好ましくは3〜20、より好ましくは3〜12、更に好ましくは3〜8である。エチレン・α−オレフィン系ゴムにおけるエチレン:α−オレフィンの質量比は、通常5〜95:95〜5、好ましくは50〜95:50〜5、より好ましくは60〜95:40〜5である。エチレン:α−オレフィンの質量比が上記範囲にあると、得られる成形品の耐衝撃性がさらに優れて、好ましい。エチレン・α−オレフィン系ゴムは、必要に応じて、非共役ジエンに由来する構造単位を含んでもよい。非共役ジエンとしては、アルケニルノルボルネン類、環状ジエン類、脂肪族ジエン類が挙げられ、好ましくは5−エチリデン−2−ノルボルネンおよびジシクロペンタジエンである。これらの非共役ジエンは、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。非共役ジエンの、ゴム質重合体全量に対する割合は、通常0〜10質量%、好ましくは0〜5質量%、より好ましくは0〜3質量%である。
本発明においては、エチレン・α−オレフィン系ゴムとして、融点(Tm)が0〜120℃のものを使用することが好ましい。エチレン・α−オレフィン系ゴムのTm(融点)は、より好ましくは10〜90℃、さらにより好ましくは20〜80℃である。エチレン・α−オレフィン系ゴムが融点(Tm)を有するということは、該ゴムが結晶性を有することを意味する。したがって、かかる融点(Tm)を備えるエチレン・α−オレフィン系ゴムを使用することで、上記熱可塑性樹脂組成物(X)に0〜120℃の範囲で融点を発現させ、金属製部品と樹脂製部品との接触部分に耐衝撃性だけでなく、軋み音等の異音抑制効果をさらに優れたものとすることができる。ゴム強化芳香族ビニル系樹脂(A)がかかる結晶性を有すると、スティックスリップ現象の発生が抑制されるため、金属製部品と樹脂製部品との接触部分とが動的に接触した場合、軋み音等の異音の発生が抑制されると考えられる。尚、スティックスリップ現象と軋み音の関係は、特開2011−174029公報等に開示されている。
エチレン・α−オレフィン系ゴムのムーニー粘度(ML1+4、100℃;JIS K 6300に準拠)は、通常5〜80、好ましくは10〜65、より好ましくは10〜45である。ムーニー粘度が上記範囲にあると、成形性が優れる他、成形品の衝撃強度及び外観がさらに優れて、好ましい。
エチレン・α−オレフィン系ゴムは、軋み音等の異音発生の低減の観点から、非共役ジエン成分を含有しないエチレン・α−オレフィン共重合体が好ましく、これらのうち、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体がさらに好ましく、エチレン・プロピレン共重合体が特に好ましい。
上記成分(A)のゴム部分は、軋み音低減効果の観点から、その全部が非ジエン系ゴム、特にエチレン・α−オレフィン系ゴムから構成されることが好ましいが、上記非ジエン系ゴムに加えて、上記ジエン系ゴムから構成されても良い。上記成分(A)のゴム部分が、非ジエン系ゴムに加えて、上記ジエン系ゴムから構成されていると、熱可塑性樹脂組成物(X)の成形性及び耐衝撃性、並びに、得られる成形品の外観がさらに十分なものとなる。
ジエン系ゴムとしては、ポリブタジエン、ポリイソプレン等の単独重合体;スチレン・ブタジエン共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレン共重合体、アクリロニトリル・スチレン・ブタジエン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体等のブタジエン系共重合体;スチレン・イソプレン共重合体、スチレン・イソプレン・スチレン共重合体、アクリロニトリル・スチレン・イソプレン共重合体等のイソプレン系共重合体等が挙げられる。これらは、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもよい。これらは、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。該ジエン系ゴム質重合体は、架橋重合体であってよいし、未架橋重合体であってもよい。
本発明において、ゴム強化芳香族ビニル系樹脂(A)中のゴム部分(a1)の含有量は、ゴム強化芳香族ビニル系樹脂(A)全体100質量%に対して、好ましくは3〜80質量%、より好ましくは3〜65質量%、さらに好ましくは4〜55質量%、さらに好ましくは5〜50質量%、特に好ましくは7〜45質量%である。ゴム部分(a1)の含有量が前記範囲にあると、熱可塑性樹脂組成物(X)の耐衝撃性、異音の低減効果、寸法安定性、及び成形性等がさらに優れて好ましい。
ゴム強化芳香族ビニル系樹脂(A)の樹脂部分(a2)は、ビニル系単量体に由来する構造単位からなり、該ビニル系単量体は芳香族ビニル化合物を必須成分として含有し、所望により該芳香族ビニル化合物と共重合可能な化合物を含有してもよい。上記芳香族ビニル化合物の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、β−メチルスチレン、エチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、ビニルナフタレン等が挙げられる。これらの化合物は、単独でまたは2つ以上を組み合わせて用いることができる。これらのうち、スチレン及びα−メチルスチレンが好ましく、スチレンが特に好ましい。
芳香族ビニル化合物と共重合可能な化合物としては、好ましくは、シアン化ビニル化合物及び(メタ)アクリル酸エステル化合物から選ばれた少なくとも1種が使用でき、さらに必要に応じて、これらの化合物と共重合可能な他のビニル系単量体も使用することができる。かかる他のビニル系単量体としては、マレイミド系化合物、不飽和酸無水物、カルボキシル基含有不飽和化合物、ヒドロキシル基含有不飽和化合物、オキサゾリン基含有不飽和化合物、エポキシ基含有不飽和化合物等が挙げられ、これらは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記シアン化ビニル化合物の具体例としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル、α−エチルアクリロニトリル、α−イソプロピルアクリロニトリル等が挙げられる。これらの化合物は、単独でまたは2つ以上を組み合わせて用いることができる。これらのうち、アクリロニトリルが好ましい。
上記(メタ)アクリル酸エステル化合物の具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec−ブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル等が挙げられる。これらの化合物は、単独でまたは2つ以上を組み合わせて用いることができる。これらのうち、メタクリル酸メチルが好ましい。
上記マレイミド系化合物の具体例としては、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等が挙げられる。これらの化合物は、単独でまたは2つ以上を組み合わせて用いることができる。
上記不飽和酸無水物の具体例としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等が挙げられる。これらの化合物は、単独でまたは2つ以上を組み合わせて用いることができる。
上記カルボキシル基含有不飽和化合物の具体例としては、(メタ)アクリル酸、エタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、桂皮酸等が挙げられる。これらの化合物は、単独でまたは2つ以上を組み合わせて用いることができる。
上記ヒドロキシル基含有不飽和化合物の具体例としては、3−ヒドロキシ−1−プロペン、4−ヒドロキシ−1−ブテン、シス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、トランス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、3−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロペン、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル等が挙げられる。これらの化合物は、単独でまたは2つ以上を組み合わせて用いることができる。
ゴム強化芳香族ビニル系樹脂(A)中の上記芳香族ビニル化合物に由来する構造単位の含有量の下限値は、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位と、芳香族ビニル化合物と共重合可能な化合物に由来する構造単位の合計を100質量%とした場合に、好ましくは40質量%、より好ましくは50質量%、更に好ましくは60質量%である。尚、上限値は、通常、100質量%である。
ゴム強化芳香族ビニル系樹脂(A)の樹脂部分(a2)が構造単位として、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物に由来する構造単位を含む場合、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位の含有量は、両者の合計を100質量%とした場合に、通常40〜90質量%であり、好ましくは55〜85質量%であり、シアン化ビニル化合物に由来する構造単位の含有量は、両者の合計を100質量%とした場合に、10〜60質量%であり、好ましくは15〜45質量%である。
ゴム強化芳香族ビニル系樹脂(A)は、例えば、融点(Tm)が0〜120℃である結晶性ゴム成分を含むゴム質重合体(a)の存在下に、芳香族ビニル化合物及び所望により該芳香族ビニル化合物と共重合可能な他のビニル系化合物からなるビニル系単量体(b)をグラフト重合して製造することができる。この製造方法における重合方法は、上記グラフト共重合体が得られる限り特に限定されず、公知の方法を適用することができる。重合方法としては、乳化重合、懸濁重合、溶液重合、塊状重合、又は、これらを組み合わせた重合方法とすることができる。これらの重合方法では、公知の重合開始剤、連鎖移動剤(分子量調節剤)、乳化剤等を適宜使用することができる。
上記製造方法では、通常、ビニル系単量体同士の(共)重合体がゴム質重合体にグラフト重合したグラフト共重合体と、ゴム質重合体にグラフト重合していないビニル系単量体同士の(共)重合体との混合生成物が得られる。場合により、上記混合生成物は、該(共)重合体がグラフト重合していないゴム質重合体を含むこともある。本発明のゴム強化芳香族ビニル系樹脂(A)は、ゴム質重合体に由来するゴム部分(a1)と芳香族ビニル系単量体に由来する構成単位を有する樹脂部分(a2)とからなり、ゴム部分(a1)は樹脂部分(a2)がグラフト重合したグラフト共重合体を形成していることが好ましいので、上記のようにして製造されたグラフト共重合体と(共)重合体との混合生成物を、ゴム強化芳香族ビニル系樹脂(A)としてそのまま使用することができる。
ゴム強化芳香族ビニル系樹脂(A)は、ゴム質重合体(a)の不存在下に、芳香族ビニル化合物及び所望により該芳香族ビニル化合物と共重合可能な他のビニル系化合物からなるビニル系単量体を重合することにより製造した(共)重合体(A´)を添加されたものであってもよい。この(共)重合体(A´)は、ゴム強化芳香族ビニル系樹脂(A)に添加されると、ゴム部分(a1)にグラフト重合していない樹脂部分(a2)を構成することになる。
上記のとおり、本発明のゴム強化芳香族ビニル系樹脂(A)は、ゴム部分が非ジエン系ゴムとジエン系ゴムの混合物であってもよい。このような複数のゴムを含有するゴム強化芳香族ビニル系樹脂(A)の製造方法としては、例えば、非ジエン系ゴム質重合体及びジエン系ゴム質重合体を含有するゴム質重合体(a)の存在下にビニル系単量体(b)をグラフト重合して製造する方法の他、非ジエン系ゴム質重合体の存在下にビニル系単量体(b)をグラフト重合して製造したゴム強化芳香族ビニル系樹脂と、ジエン系ゴム質重合体の存在下にビニル系単量体(b)をグラフト重合して製造したゴム強化芳香族ビニル系樹脂とを混合する方法などによって得ることができる。
ゴム強化芳香族ビニル系樹脂(A)のグラフト率は、通常10〜150%、好ましくは15〜120%、より好ましくは20〜100%、特に好ましくは20〜80%である。ゴム強化芳香族ビニル系樹脂(A)のグラフト率が前記範囲にあると、本発明の積層フィルムの耐衝撃性、真空成形性がさらに良好となる。
グラフト率は、下記数式(1)により求めることができる。
グラフト率(質量%)=((S−T)/T)×100 …(1)
上記式中、Sはゴム強化芳香族ビニル系樹脂(A)1グラムをアセトン20mlに投入し、25℃の温度条件下で、振とう機により2時間振とうした後、5℃の温度条件下で、遠心分離機(回転数;23,000rpm)で60分間遠心分離し、不溶分と可溶分とを分離して得られる不溶分の質量(g)であり、Tはゴム強化芳香族ビニル系樹脂(A)1グラムに含まれるゴム部分(a1)の質量(g)である。このゴム部分(a1)の質量は、重合処方及び重合転化率から算出する方法により求めることができる。
グラフト率(質量%)=((S−T)/T)×100 …(1)
上記式中、Sはゴム強化芳香族ビニル系樹脂(A)1グラムをアセトン20mlに投入し、25℃の温度条件下で、振とう機により2時間振とうした後、5℃の温度条件下で、遠心分離機(回転数;23,000rpm)で60分間遠心分離し、不溶分と可溶分とを分離して得られる不溶分の質量(g)であり、Tはゴム強化芳香族ビニル系樹脂(A)1グラムに含まれるゴム部分(a1)の質量(g)である。このゴム部分(a1)の質量は、重合処方及び重合転化率から算出する方法により求めることができる。
グラフト率は、例えばゴム強化芳香族ビニル系樹脂(A)を製造する際のグラフト重合で用いる連鎖移動剤の種類及び使用量、重合開始剤の種類及び使用量、重合時の単量体成分の添加方法及び添加時間、重合温度等を適宜選択することにより調整することができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物におけるゴム強化芳香族ビニル系樹脂(A)のアセトンに可溶な成分(以下、「アセトン可溶分」ともいう)の極限粘度(メチルエチルケトン中、30℃)は、通常0.05〜0.9dl/g、好ましくは0.07〜0.8dl/g、より好ましくは0.1〜0.7dl/gである。極限粘度が前記範囲にあると、樹脂組成物の耐衝撃性、成形性がより良好となる。
極限粘度[η]の測定は下記方法で行うことができる。まず、ゴム強化芳香族ビニル系樹脂(A)のアセトン可溶分をメチルエチルケトンに溶解させ、濃度の異なるものを5点作った。ウベローデ粘度管を用い、30℃で各濃度の還元粘度を測定した結果から、極限粘度[η]を求めた。単位は、dl/gである。
極限粘度[η]は、例えば、ゴム強化芳香族ビニル系樹脂(A)をグラフト重合する際に用いる連鎖移動剤の種類及び使用量、重合開始剤の種類及び使用量、重合時の単量体成分の添加方法及び添加時間、重合温度、重合時間等を適宜選択することにより調整することができる。また、ゴム強化芳香族ビニル系樹脂(A)に、このアセトン可溶分の極限粘度[η]と異なる極限粘度[η]を備える(共)重合体(A´)を混合して調整することができる。
ゴム強化芳香族ビニル系樹脂(A)は、摺動性付与剤及びその他の添加剤を含んでもよい。摺動性付与剤は、熱可塑性樹脂組成物(X)に摺動性を付与して本発明の物品の組み立てを容易にするだけなく、使用時に本発明の物品から軋み音等の異音が発生するのを抑制する効果を付与することができる。摺動性付与剤の代表例としては、特開2011−137066号公報に記載されるような低分子量酸化ポリエチレン(c1)、超高分子量ポリエチレン(c2)、ポリテトラフルオロエチレン(c3)や、低分子量(例えば、数平均分子量10,000以下)ポリオレフィンワックス、シリコーンオイルなどが挙げられる。
ポリオレフィンワックスとしては、融点が0〜120℃に存在するポリエチレンワックス等が好ましい。また、このような融点を有するポリオレフィンワックスや、融点が0〜120℃に存在するその他の添加剤をゴム強化芳香族ビニル系樹脂(A)に添加した場合、ゴム強化芳香族ビニル系樹脂(A)のゴム部分が融点(Tm)を備えていなくても、軋み音等の異音の発生抑制効果を得ることができる。これらの摺動性付与剤は、一種単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。これらの摺動性付与剤の配合量は、ゴム強化芳香族ビニル系樹脂(A)100質量部に対して、通常0.1〜10質量部である。
また、他の添加剤としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐候剤、老化防止剤、充填剤、帯電防止剤、難燃性付与剤、防曇剤、滑剤、抗菌剤、防かび剤、粘着付与剤、可塑剤、着色剤、黒鉛、カーボブラック、カーボンナノチューブ、顔料(たとえば、赤外線吸収、反射能力を有する、機能性を付与した顔料も含む。)等が挙げられる。これらは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの添加剤の配合量は、ゴム強化芳香族ビニル系樹脂(A)100質量部に対して、通常0.1〜30質量部である。
上記ゴム強化芳香族ビニル系樹脂(A)は、本発明の目的を損なわない範囲で、他の樹脂を含むものであってもよい。
2−2.ポリカーボネート樹脂(B)
本発明で用いる熱可塑性樹脂組成物(X)は、上記のとおり、ポリカーボネート樹脂(B)を含有することができる。ポリカーボネート樹脂(B)を含有する場合、耐熱性が向上するので好ましい。本発明において、ポリカーボネート樹脂(B)は、主鎖にカーボネート結合を有するものであれば特に限定されず、芳香族ポリカーボネート、脂肪族ポリカーボネート、脂肪族−芳香族ポリカーボネートなどが挙げられる。これらは、単独でまたは2種以上組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、耐衝撃性、耐熱性等の観点から、芳香族ポリカーボネートが好ましい。尚、これらのポリカーボネート樹脂は、末端がR−CO−基、R’−O−CO−基(R及びR’は、いずれも有機基を示す。)に変性されたものであってもよい。
本発明で用いる熱可塑性樹脂組成物(X)は、上記のとおり、ポリカーボネート樹脂(B)を含有することができる。ポリカーボネート樹脂(B)を含有する場合、耐熱性が向上するので好ましい。本発明において、ポリカーボネート樹脂(B)は、主鎖にカーボネート結合を有するものであれば特に限定されず、芳香族ポリカーボネート、脂肪族ポリカーボネート、脂肪族−芳香族ポリカーボネートなどが挙げられる。これらは、単独でまたは2種以上組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、耐衝撃性、耐熱性等の観点から、芳香族ポリカーボネートが好ましい。尚、これらのポリカーボネート樹脂は、末端がR−CO−基、R’−O−CO−基(R及びR’は、いずれも有機基を示す。)に変性されたものであってもよい。
上記芳香族ポリカーボネートとしては、芳香族ジヒドロキシ化合物及び炭酸ジエステルをエステル交換(エステル交換反応)して得られたもの、ホスゲンを用いた界面重縮合法により得られたもの、ピリジンとホスゲンとの反応生成物を用いたピリジン法により得られたもの等を用いることができる。
芳香族ジヒドロキシ化合物としては、分子内にヒドロキシル基を2つ有する化合物であればよい。
上記芳香族ジヒドロキシ化合物のうち、2つのベンゼン環の間に炭化水素基を有する化合物が好ましい。尚、この化合物において、炭化水素基は、ハロゲン置換された炭化水素基であってもよい。また、ベンゼン環は、そのベンゼン環に含まれる水素原子がハロゲン原子に置換されたものであってもよい。従って、上記化合物としては、ビスフェノールA、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3、5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)ブタン等が挙げられる。これらは、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのうち、特に、ビスフェノールAが好ましい。
芳香族ポリカーボネートをエステル交換反応により得るために用いる炭酸ジエステルとしては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−tert−ブチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート等が挙げられる。これらは、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記ポリカーボネート樹脂(B)の粘度平均分子量は、好ましくは15,000〜40,000、より好ましくは17,000〜30,000、特に好ましくは18,000〜28,000である。この粘度平均分子量が高いほど、耐衝撃性が高くなる一方、流動性が十分でなく、成形加工性が不十分になる可能性がある。尚、全体としての粘度平均分子量が上記範囲に入るものであれば、異なる粘度平均分子量を有するポリカーボネート樹脂の2種以上を混合して用いてもよい。
3.難燃性付与剤
本発明の熱可塑性樹脂組成物(X)は、照明器具等の難燃性が要求される物品の部品の成形材料として用いられる場合、高い難燃性を備えていることが好ましい。したがって、熱可塑性樹脂組成物(X)には、難燃性付与剤を添加することもできる。
難燃性付与剤としては、樹脂組成物に添加した際に充分な難燃性を付与できる化合物であればよく、例えば、有機ハロゲン系難燃剤、有機リン系難燃剤の他、窒素含有化合物、赤リン、ホウ酸カルシウム、水酸化マグネシウム、アルミナ等の公知の難燃性付与剤を用いることができる。これらは、単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。これらのうち、環境面から、有機リン系難燃剤が好ましく使用される。
本発明の熱可塑性樹脂組成物(X)は、照明器具等の難燃性が要求される物品の部品の成形材料として用いられる場合、高い難燃性を備えていることが好ましい。したがって、熱可塑性樹脂組成物(X)には、難燃性付与剤を添加することもできる。
難燃性付与剤としては、樹脂組成物に添加した際に充分な難燃性を付与できる化合物であればよく、例えば、有機ハロゲン系難燃剤、有機リン系難燃剤の他、窒素含有化合物、赤リン、ホウ酸カルシウム、水酸化マグネシウム、アルミナ等の公知の難燃性付与剤を用いることができる。これらは、単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。これらのうち、環境面から、有機リン系難燃剤が好ましく使用される。
上記有機ハロゲン系難燃剤としては、まず、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA−ビス(2−ヒドロキシエチルエーテル)、テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)などのテトラブロモジフェニルエーテル誘導体、ヘキサブロモジフェニルエーテル、デカブロモジフェニルエーテル、ビス(トリブロモフェノキシ)エタン、ヘキサブロモシクロドデカンなどが挙げられる。また、モノブロモフェノール、トリブロモフェノール、ペンタブロモフェノール、トリブロモクレゾール、ジブロモプロピルフェノール、テトラブロモビスフェノールS、塩化シアヌルなどを重合することにより、あるいは、これらと上記ハロゲン含有化合物の群から選ばれた少なくとも1種のハロゲン含有化合物とを共重合することにより得られる、オリゴマー型ハロゲン含有化合物が挙げられる。さらに、テトラブロモビスフェノールAのポリカーボネートオリゴマー、テトラブロモビスフェノールAとビスフェノールAとのポリカーボネートオリゴマー、テトラブロモビスフェノールSのポリカーボネートオリゴマー、テトラブロモビスフェノールSとビスフェノールAとのポリカーボネートオリゴマーなども挙げられる。さらに、ハロゲン化エポキシオリゴマーなども挙げられる。
上記有機リン系難燃剤としては、リン酸エステル系化合物が用いられ、その具体例としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジイソプロピルフェニルホスフェート、トリス(クロロエチル)ホスフェート、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(クロロプロピル)ホスフェート、ビス(2,3-ジブロモプロピル)-2,3- ジクロロプロピルホスフェート、トリス(2,3-ジブロモプロピル)ホスフェート、ビス(クロロプロピル)モノオクチルホスフェート、ビスフェノールAテトラクレジルジホスフェート、ビスフェノールAテトラキシリルジホスフェート、ヒドロキノンテトラフェニルジホスフェート、ヒドロキノンテトラクレジルジホスフェート、ヒドロキノンテトラキシリルジホスフェート、ビスフェノールAビスホスフェート、ヒドロキノンビスホスフェート、レゾルシンビスホスフェート、トリオキシベンゼントリホスフェート、その他のポリホスフェート類、特開平7−11119号公報に記載の芳香族ホスフェート類などが挙げられる。
上記窒素含有化合物としては、トリアジン、トリアゾリシン、尿素、グアニジン、アミノ酸、メラミンおよびその誘導体などが挙げられる。
なお、上記難燃剤の難燃効果を向上させるために、難燃助剤を用いることができる。この難燃助剤としては、三酸化二アンチモン、四酸化二アンチモン、五酸化二アンチモン、アンチモン酸ナトリウム、酒石酸アンチモン等のアンチモン化合物や、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、水和アルミナ、酸化ジルコニウム、ポリリン酸アンモニウム、酸化スズ、ポリテトラフルオロエチレン等が挙げられる。これらは、単独で用いてよいし、2つ以上を組み合わせて用いてもよい。
以下、実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。実施例中、部および%は特に断らない限り質量基準である。
1.原料〔P〕
ゴム強化芳香族ビニル系樹脂として、下記の合成例1〜2で得られたエチレン・α−オレフィン系ゴム強化芳香族ビニル系樹脂(原料P1〜P2)と、下記の合成例3で得られたジエン系ゴム強化芳香族ビニル系樹脂(原料P3)とを用いた。
ゴム強化芳香族ビニル系樹脂として、下記の合成例1〜2で得られたエチレン・α−オレフィン系ゴム強化芳香族ビニル系樹脂(原料P1〜P2)と、下記の合成例3で得られたジエン系ゴム強化芳香族ビニル系樹脂(原料P3)とを用いた。
1−1.合成例1(原料P1(AES樹脂)の合成)
リボン型攪拌機翼、助剤連続添加装置、温度計等を装着したステンレス製オートクレーブに、エチレン・プロピレン共重合体ゴム(エチレン/プロピレン=78/22(%)、Tm:40℃、ガラス転移温度:−50℃、ムーニー粘度(ML1+4,100℃):20)25部、スチレン11部、アクリロニトリル4部、tert−ドデシルメルカプタン0.5部及びトルエン110部を仕込み、昇温した。内温が75℃に達したところで、オートクレーブ内容物を1時間攪拌して均一溶液とした。その後、tert−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート0.09部を添加し、更に昇温した。内温を100℃に保持しながら、攪拌回転数100rpmとして重合を開始した。60分間重合した後、スチレン44部、アクリロニトリル16部及びtert−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート0.86部を3時間かけて連続的に添加した。重合を開始して4時間経過した後、内温を120℃に昇温し、この温度を保持しながら更に2時間反応を行って重合を終了した。重合転化率は98%であった。その後、内温を100℃まで冷却し、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)−プロピオネート0.2部を添加した。次いで、反応液をオートクレーブより抜き出し、水蒸気蒸留により未反応物と溶媒を留去した。その後、40mmφベント付き押出機(シリンダー温度220℃、真空度760mmHg)を用いて揮発分を実質的に脱気させ、ペレット化し、エチレン・プロピレン共重合体ゴムからなる部分と、シアン化ビニル化合物(アクリロニトリル)に由来する構造単位及び芳香族ビニル化合物(スチレン)に由来する構造単位を含むビニル系共重合体からなる部分とを含むエチレン・α−オレフィン系ゴムグラフト共重合体(グラフト樹脂)、及び、未グラフトのビニル系共重合体(アクリロニトリル・スチレン共重合体)からなる樹脂混合物であるゴム強化芳香族ビニル系樹脂(原料P1)を得た。この原料P1に含まれる上記グラフト樹脂(アセトン不溶分)のグラフト率は48%であった。グラフト率の計算に用いた原料P1に含まれるゴム含量は、重合処方及び重合転化率より求めた。原料P1に含まれる未グラフトのビニル系共重合体(以下、「アセトン可溶分」ともいう。)の含有率は、原料P1全体を100%とした場合に、63%であり、このアセトン可溶分の極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃)は、0.42dl/gであった。その後、このペレットを用いて原料P1のTmを測定したところ、40℃であった。
リボン型攪拌機翼、助剤連続添加装置、温度計等を装着したステンレス製オートクレーブに、エチレン・プロピレン共重合体ゴム(エチレン/プロピレン=78/22(%)、Tm:40℃、ガラス転移温度:−50℃、ムーニー粘度(ML1+4,100℃):20)25部、スチレン11部、アクリロニトリル4部、tert−ドデシルメルカプタン0.5部及びトルエン110部を仕込み、昇温した。内温が75℃に達したところで、オートクレーブ内容物を1時間攪拌して均一溶液とした。その後、tert−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート0.09部を添加し、更に昇温した。内温を100℃に保持しながら、攪拌回転数100rpmとして重合を開始した。60分間重合した後、スチレン44部、アクリロニトリル16部及びtert−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート0.86部を3時間かけて連続的に添加した。重合を開始して4時間経過した後、内温を120℃に昇温し、この温度を保持しながら更に2時間反応を行って重合を終了した。重合転化率は98%であった。その後、内温を100℃まで冷却し、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)−プロピオネート0.2部を添加した。次いで、反応液をオートクレーブより抜き出し、水蒸気蒸留により未反応物と溶媒を留去した。その後、40mmφベント付き押出機(シリンダー温度220℃、真空度760mmHg)を用いて揮発分を実質的に脱気させ、ペレット化し、エチレン・プロピレン共重合体ゴムからなる部分と、シアン化ビニル化合物(アクリロニトリル)に由来する構造単位及び芳香族ビニル化合物(スチレン)に由来する構造単位を含むビニル系共重合体からなる部分とを含むエチレン・α−オレフィン系ゴムグラフト共重合体(グラフト樹脂)、及び、未グラフトのビニル系共重合体(アクリロニトリル・スチレン共重合体)からなる樹脂混合物であるゴム強化芳香族ビニル系樹脂(原料P1)を得た。この原料P1に含まれる上記グラフト樹脂(アセトン不溶分)のグラフト率は48%であった。グラフト率の計算に用いた原料P1に含まれるゴム含量は、重合処方及び重合転化率より求めた。原料P1に含まれる未グラフトのビニル系共重合体(以下、「アセトン可溶分」ともいう。)の含有率は、原料P1全体を100%とした場合に、63%であり、このアセトン可溶分の極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃)は、0.42dl/gであった。その後、このペレットを用いて原料P1のTmを測定したところ、40℃であった。
1−2.合成例2(原料P2(AES樹脂)の合成)
リボン型攪拌機翼、助剤連続添加装置、温度計などを装備した容積20リットルのステンレス製オートクレーブに、エチレン・プロピレン・ジシクロペンタジエン共重合体(エチレン/プロピレン/ジシクロペンタジエン=63/32/5(%)、ムーニー粘度(ML1+4,100℃)33、融点(Tm)なし、ガラス転移温度(Tg)は−52℃)30部、スチレン45部、アクリロニトリル25部、tert−ドデシルメルカプタン0.5部、トルエン140部を仕込み、内温を75℃に昇温して、オートクレーブ内容物を1時間攪拌して均一溶液とした。その後、tert−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート0.45部を添加し、内温を更に昇温して、100℃に達した後は、この温度を保持しながら、攪拌回転数100rpmとして重合反応を行った。重合反応開始後4時間目から、内温を120℃に昇温し、この温度を保持しながら更に2時間反応を行って重合反応を終了した。その後、内温を100℃まで冷却し、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)−プロピオネート0.2部を添加した。次いで、反応液をオートクレーブより抜き出し、水蒸気蒸留により未反応物と溶媒を留去した。その後、40mmφベント付き押出機(シリンダー温度220℃、真空度760mmHg)を用いて揮発分を実質的に脱気させ、ペレット化し、エチレン・プロピレン・ジシクロペンタジエン共重合体ゴムからなる部分と、シアン化ビニル化合物(アクリロニトリル)に由来する構造単位及び芳香族ビニル化合物(スチレン)に由来する構造単位を含むビニル系共重合体からなる部分とを含むエチレン・α−オレフィン系ゴムグラフト共重合体(グラフト樹脂)、及び、未グラフトのビニル系共重合体(アクリロニトリル・スチレン共重合体)からなる樹脂混合物であるゴム強化芳香族ビニル系樹脂(原料P4)を得た。この原料P4に含まれる上記グラフト樹脂(アセトン不溶分)のグラフト率は60%であった。グラフト率の計算に用いた原料P4に含まれるゴム含量は、重合処方及び重合転化率より求めた。原料P4に含まれるアセトン可溶分の含有率は、原料P4全体を100%とした場合に、52%であり、このアセトン可溶分の極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃)は、0.45dl/gであった。その後、このペレットを用いて原料P4のTmを測定したところ、0〜120℃の範囲に融点は存在しなかった。
リボン型攪拌機翼、助剤連続添加装置、温度計などを装備した容積20リットルのステンレス製オートクレーブに、エチレン・プロピレン・ジシクロペンタジエン共重合体(エチレン/プロピレン/ジシクロペンタジエン=63/32/5(%)、ムーニー粘度(ML1+4,100℃)33、融点(Tm)なし、ガラス転移温度(Tg)は−52℃)30部、スチレン45部、アクリロニトリル25部、tert−ドデシルメルカプタン0.5部、トルエン140部を仕込み、内温を75℃に昇温して、オートクレーブ内容物を1時間攪拌して均一溶液とした。その後、tert−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート0.45部を添加し、内温を更に昇温して、100℃に達した後は、この温度を保持しながら、攪拌回転数100rpmとして重合反応を行った。重合反応開始後4時間目から、内温を120℃に昇温し、この温度を保持しながら更に2時間反応を行って重合反応を終了した。その後、内温を100℃まで冷却し、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)−プロピオネート0.2部を添加した。次いで、反応液をオートクレーブより抜き出し、水蒸気蒸留により未反応物と溶媒を留去した。その後、40mmφベント付き押出機(シリンダー温度220℃、真空度760mmHg)を用いて揮発分を実質的に脱気させ、ペレット化し、エチレン・プロピレン・ジシクロペンタジエン共重合体ゴムからなる部分と、シアン化ビニル化合物(アクリロニトリル)に由来する構造単位及び芳香族ビニル化合物(スチレン)に由来する構造単位を含むビニル系共重合体からなる部分とを含むエチレン・α−オレフィン系ゴムグラフト共重合体(グラフト樹脂)、及び、未グラフトのビニル系共重合体(アクリロニトリル・スチレン共重合体)からなる樹脂混合物であるゴム強化芳香族ビニル系樹脂(原料P4)を得た。この原料P4に含まれる上記グラフト樹脂(アセトン不溶分)のグラフト率は60%であった。グラフト率の計算に用いた原料P4に含まれるゴム含量は、重合処方及び重合転化率より求めた。原料P4に含まれるアセトン可溶分の含有率は、原料P4全体を100%とした場合に、52%であり、このアセトン可溶分の極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃)は、0.45dl/gであった。その後、このペレットを用いて原料P4のTmを測定したところ、0〜120℃の範囲に融点は存在しなかった。
1−3.合成例3(原料P3(ABS樹脂)の合成)
攪拌機を備えたガラス製フラスコに、窒素気流中で、イオン交換水42部、ロジン酸カリウム0.35部、tert−ドデシルメルカプタン0.2部、平均粒子径300nmのポリブタジエンゴム(ゲル含有率80%)32部を含むラテックス80部、平均粒子径600nmのスチレン・ブタジエン共重合体ゴム(スチレン単位量30%)8部を含むラテックス19部、スチレン14部及びアクリロニトリル6部を収容し、攪拌しながら昇温した。内温が40℃に達したところで、ピロリン酸ナトリウム0.2部、硫酸第一鉄7水和物0.01部及びブドウ糖0.3部を、イオン交換水8部に溶解した溶液を加えた。その後、クメンハイドロパーオキサイド0.07部を加えて重合を開始した。30分間重合させた後、イオン交換水45部、ロジン酸カリウム0.7部、スチレン30部、アクリロニトリル10部、tert−ドデシルメルカプタン0.13部及びクメンハイドロパーオキサイド0.1部を、3時間かけて連続的に添加した。その後、更に1時間重合を継続し、反応系に、2,2′−メチレン−ビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)0.2部を添加して重合を完結させた。次いで、反応生成物を含むラテックスに、硫酸水溶液を添加して、樹脂成分を凝固し、水洗した。その後、水酸化カリウム水溶液を用いて、洗浄・中和し、更に、水洗した後、乾燥し、スチレン・ブタジエン共重合体ゴムからなる部分と、シアン化ビニル化合物(アクリロニトリル)に由来する構造単位及び芳香族ビニル化合物(スチレン)に由来する構造単位を含むビニル系共重合体からなる部分とを含むジエン系ゴムグラフト共重合体(グラフト樹脂)、及び、未グラフトのビニル系共重合体(アクリロニトリル・スチレン共重合体)からなる樹脂混合物であるゴム強化芳香族ビニル系樹脂(原料P5)を得た。この原料P5に含まれるジエン系ゴム質重合体強化芳香族ビニル系樹脂(グラフト樹脂、アセトン不溶分)のグラフト率は55%であった。グラフト率の計算に用いた原料P5に含まれるゴム含量は、重合処方及び重合転化率より求めた。原料P5に含まれる未グラフトの(共)重合体(アセトン可溶分)の含有率は、原料P5全体を100%とした場合に、38%であり、このアセトン可溶分の極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃)は、0.45dl/gであった。尚、この原料P5のTmは観測されなかった。
攪拌機を備えたガラス製フラスコに、窒素気流中で、イオン交換水42部、ロジン酸カリウム0.35部、tert−ドデシルメルカプタン0.2部、平均粒子径300nmのポリブタジエンゴム(ゲル含有率80%)32部を含むラテックス80部、平均粒子径600nmのスチレン・ブタジエン共重合体ゴム(スチレン単位量30%)8部を含むラテックス19部、スチレン14部及びアクリロニトリル6部を収容し、攪拌しながら昇温した。内温が40℃に達したところで、ピロリン酸ナトリウム0.2部、硫酸第一鉄7水和物0.01部及びブドウ糖0.3部を、イオン交換水8部に溶解した溶液を加えた。その後、クメンハイドロパーオキサイド0.07部を加えて重合を開始した。30分間重合させた後、イオン交換水45部、ロジン酸カリウム0.7部、スチレン30部、アクリロニトリル10部、tert−ドデシルメルカプタン0.13部及びクメンハイドロパーオキサイド0.1部を、3時間かけて連続的に添加した。その後、更に1時間重合を継続し、反応系に、2,2′−メチレン−ビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)0.2部を添加して重合を完結させた。次いで、反応生成物を含むラテックスに、硫酸水溶液を添加して、樹脂成分を凝固し、水洗した。その後、水酸化カリウム水溶液を用いて、洗浄・中和し、更に、水洗した後、乾燥し、スチレン・ブタジエン共重合体ゴムからなる部分と、シアン化ビニル化合物(アクリロニトリル)に由来する構造単位及び芳香族ビニル化合物(スチレン)に由来する構造単位を含むビニル系共重合体からなる部分とを含むジエン系ゴムグラフト共重合体(グラフト樹脂)、及び、未グラフトのビニル系共重合体(アクリロニトリル・スチレン共重合体)からなる樹脂混合物であるゴム強化芳香族ビニル系樹脂(原料P5)を得た。この原料P5に含まれるジエン系ゴム質重合体強化芳香族ビニル系樹脂(グラフト樹脂、アセトン不溶分)のグラフト率は55%であった。グラフト率の計算に用いた原料P5に含まれるゴム含量は、重合処方及び重合転化率より求めた。原料P5に含まれる未グラフトの(共)重合体(アセトン可溶分)の含有率は、原料P5全体を100%とした場合に、38%であり、このアセトン可溶分の極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃)は、0.45dl/gであった。尚、この原料P5のTmは観測されなかった。
2.原料〔Q〕
ゴム質重合体に由来する部分を含まない熱可塑性樹脂として、下記の原料Q1を用いた。
ゴム質重合体に由来する部分を含まない熱可塑性樹脂として、下記の原料Q1を用いた。
2−1.原料Q1(AS樹脂)
アクリロニトリル単位及びスチレン単位の割合が、それぞれ、27%及び73%であり、極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃)が、0.30dl/gであるアクリロニトリル・スチレン共重合体。ガラス転移温度(Tg)は、103℃であった。
アクリロニトリル単位及びスチレン単位の割合が、それぞれ、27%及び73%であり、極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃)が、0.30dl/gであるアクリロニトリル・スチレン共重合体。ガラス転移温度(Tg)は、103℃であった。
3.原料〔R〕
3−1.原料R1(PC樹脂)
出光興産社製ポリカーボネート樹脂「タフロンA2200(商品名)」を使用した。粘度平均分子量(Mv)は、22,000、ガラス転移温度(Tg)は、153℃であった。
3−1.原料R1(PC樹脂)
出光興産社製ポリカーボネート樹脂「タフロンA2200(商品名)」を使用した。粘度平均分子量(Mv)は、22,000、ガラス転移温度(Tg)は、153℃であった。
4.原料〔S〕
4−1.原料S1(ポリオレフィン系ワックス)
三洋化成工業株式会社製ポリエチレンワックス「サンワックス171−P(商品名)」を使用した。数平均分子量(Mn)は1500、DSCを用いて測定した融点は101℃であった。
4−1.原料S1(ポリオレフィン系ワックス)
三洋化成工業株式会社製ポリエチレンワックス「サンワックス171−P(商品名)」を使用した。数平均分子量(Mn)は1500、DSCを用いて測定した融点は101℃であった。
4−2.原料S2(シリコーンオイル)
信越シリコーン株式会社製シリコーンオイル「KF−54(商品名)」を使用した。25℃の動粘度は400cStであった。
信越シリコーン株式会社製シリコーンオイル「KF−54(商品名)」を使用した。25℃の動粘度は400cStであった。
5.原料〔T〕
5−1.原料T1(難燃性付与剤)
大八化学工業株式会社製の芳香族縮合リン酸エステル系難燃剤「PX−200」(商品名)を用いた。
5−1.原料T1(難燃性付与剤)
大八化学工業株式会社製の芳香族縮合リン酸エステル系難燃剤「PX−200」(商品名)を用いた。
実施例1〜9及び比較例1
1.熱可塑性樹脂組成物〔X〕の作製
表1に示す原料〔P〕、〔Q〕、〔R〕、〔S〕及び〔T〕を表1に示す配合割合でヘンシェルミキサーにより混合した。その後、二軸押出機(型式名「TEX44、日本製鋼所」)を用いて、バレル温度270℃で溶融混練してペレット化した。
1.熱可塑性樹脂組成物〔X〕の作製
表1に示す原料〔P〕、〔Q〕、〔R〕、〔S〕及び〔T〕を表1に示す配合割合でヘンシェルミキサーにより混合した。その後、二軸押出機(型式名「TEX44、日本製鋼所」)を用いて、バレル温度270℃で溶融混練してペレット化した。
2.耐衝撃性の評価
2台の株式会社プラスチック工学研究所製の短軸押出機「PLABORGT−50−A型」(フルフライトスクリュー、L/D=30)を準備した。上記1で得られた熱可塑性樹脂組成物〔X〕を1台の短軸押出機に供給し、バレル温度230℃、スクリュー回転数10rpmで溶融させ押し出した。もう1台の短軸押出機に、帝人化成株式会社製の光拡散性ポリカーボネート樹脂「パンライトML−6100」(商品名)供給し、バレル温度260℃、スクリュー回転数10rpm溶融させ押し出した。フィードブロックにより、前記溶融押し出しを行った2種の材料を合流させ、図8の斜線部分が上記熱可塑性樹脂組成物〔X〕で形成され、それ以外の部分が上記ポリカーボネート樹脂で形成された図7の樹脂カバー20を得た。樹脂カバー20を、アルミニウム製の金属シャーシ10の上方から押し込み、両者を接合させた。その際に、樹脂カバー20の熱可塑性樹脂組成物〔X〕からなる部分に破壊が生じるかを評価した。評価は、下記評価基準に基づき判定を行った。
<耐衝撃性の評価>
○:破壊は生じなかった。
×:破壊が生じた。
2台の株式会社プラスチック工学研究所製の短軸押出機「PLABORGT−50−A型」(フルフライトスクリュー、L/D=30)を準備した。上記1で得られた熱可塑性樹脂組成物〔X〕を1台の短軸押出機に供給し、バレル温度230℃、スクリュー回転数10rpmで溶融させ押し出した。もう1台の短軸押出機に、帝人化成株式会社製の光拡散性ポリカーボネート樹脂「パンライトML−6100」(商品名)供給し、バレル温度260℃、スクリュー回転数10rpm溶融させ押し出した。フィードブロックにより、前記溶融押し出しを行った2種の材料を合流させ、図8の斜線部分が上記熱可塑性樹脂組成物〔X〕で形成され、それ以外の部分が上記ポリカーボネート樹脂で形成された図7の樹脂カバー20を得た。樹脂カバー20を、アルミニウム製の金属シャーシ10の上方から押し込み、両者を接合させた。その際に、樹脂カバー20の熱可塑性樹脂組成物〔X〕からなる部分に破壊が生じるかを評価した。評価は、下記評価基準に基づき判定を行った。
<耐衝撃性の評価>
○:破壊は生じなかった。
×:破壊が生じた。
3.異音抑制効果の評価
3−1.軋み音評価I:
株式会社日本製鋼所製の射出成形機「J―100E」(形式名)を用い、上記1で得られた熱可塑性樹脂組成物〔X〕からなるフラットバー試験片(幅9mm、長さ125mm、厚さ2mm)を射出成形し、その後、試験片を80±5℃に調整したオーブンで300時間加熱エージングした。次に、上記原料R1からなるポリカーボネート製のフラットバー(幅9mm、長さ125mm、厚さ2mm)を射出成形し、その後、試験片を80±5℃に調整したオーブンで300時間加熱エージングした。さらに、熱可塑性樹脂組成物〔X〕と同寸法であり、且つ80±5℃に調整したオーブンで300時間加熱エージングしたアルミ角棒(フラットバータイプ、押出し成形品、材質6063)を準備した。その後、ポリカーボネート製のフラットバー、熱可塑性樹脂組成物〔X〕製のフラットバー試験片、アルミ角棒の順に重ね合わせ、この両端を金属製の冶具で固定し、手でひねって軋み音の発生の状況を評価した。評価は5回行い、下記評価基準に基づき判定を行った。
<軋み音低減効果の評価>
○:5回の評価全てにおいて、軋み音の発生は僅かであった。
△:5回の評価において、軋み音の発生が顕著な場合が含まれていた。
×:5回の評価全てにおいて、軋み音の発生が顕著であった。
3−1.軋み音評価I:
株式会社日本製鋼所製の射出成形機「J―100E」(形式名)を用い、上記1で得られた熱可塑性樹脂組成物〔X〕からなるフラットバー試験片(幅9mm、長さ125mm、厚さ2mm)を射出成形し、その後、試験片を80±5℃に調整したオーブンで300時間加熱エージングした。次に、上記原料R1からなるポリカーボネート製のフラットバー(幅9mm、長さ125mm、厚さ2mm)を射出成形し、その後、試験片を80±5℃に調整したオーブンで300時間加熱エージングした。さらに、熱可塑性樹脂組成物〔X〕と同寸法であり、且つ80±5℃に調整したオーブンで300時間加熱エージングしたアルミ角棒(フラットバータイプ、押出し成形品、材質6063)を準備した。その後、ポリカーボネート製のフラットバー、熱可塑性樹脂組成物〔X〕製のフラットバー試験片、アルミ角棒の順に重ね合わせ、この両端を金属製の冶具で固定し、手でひねって軋み音の発生の状況を評価した。評価は5回行い、下記評価基準に基づき判定を行った。
<軋み音低減効果の評価>
○:5回の評価全てにおいて、軋み音の発生は僅かであった。
△:5回の評価において、軋み音の発生が顕著な場合が含まれていた。
×:5回の評価全てにおいて、軋み音の発生が顕著であった。
3−2.軋み音評価II:
2台の株式会社プラスチック工学研究所製の短軸押出機「PLABORGT−50−A型」(フルフライトスクリュー、L/D=30)を準備した。上記1で得られた熱可塑性樹脂組成物〔X〕を1台の短軸押出機に供給し、バレル温度230℃、スクリュー回転数10rpmで溶融させ押し出した。もう1台の短軸押出機に、帝人化成株式会社製の光拡散性ポリカーボネート樹脂「パンライトML−6100」(商品名)供給し、バレル温度260℃、スクリュー回転数10rpm溶融させ押し出した。フィードブロックにより、前記溶融押し出しを行った2種の材料を合流させ、図8の斜線部分が上記熱可塑性樹脂組成物〔X〕で形成され、それ以外の部分が上記ポリカーボネート樹脂で形成された図7の樹脂カバー20を得た。樹脂カバー20と、アルミニウム製の金属シャーシ10を組合せ、樹脂カバー20を長手方向に水平に金属シャーシ10に対してずらしたときに、軋み音が発生するかを評価した。評価は5回行い、下記評価基準に基づき判定を行った。
<軋み音低減効果の評価>
○:5回の評価全てにおいて、軋み音の発生は僅かであった。
△:5回の評価において、軋み音の発生が顕著な場合が含まれていた。
×:5回の評価全てにおいて、軋み音の発生が顕著であった。
2台の株式会社プラスチック工学研究所製の短軸押出機「PLABORGT−50−A型」(フルフライトスクリュー、L/D=30)を準備した。上記1で得られた熱可塑性樹脂組成物〔X〕を1台の短軸押出機に供給し、バレル温度230℃、スクリュー回転数10rpmで溶融させ押し出した。もう1台の短軸押出機に、帝人化成株式会社製の光拡散性ポリカーボネート樹脂「パンライトML−6100」(商品名)供給し、バレル温度260℃、スクリュー回転数10rpm溶融させ押し出した。フィードブロックにより、前記溶融押し出しを行った2種の材料を合流させ、図8の斜線部分が上記熱可塑性樹脂組成物〔X〕で形成され、それ以外の部分が上記ポリカーボネート樹脂で形成された図7の樹脂カバー20を得た。樹脂カバー20と、アルミニウム製の金属シャーシ10を組合せ、樹脂カバー20を長手方向に水平に金属シャーシ10に対してずらしたときに、軋み音が発生するかを評価した。評価は5回行い、下記評価基準に基づき判定を行った。
<軋み音低減効果の評価>
○:5回の評価全てにおいて、軋み音の発生は僅かであった。
△:5回の評価において、軋み音の発生が顕著な場合が含まれていた。
×:5回の評価全てにおいて、軋み音の発生が顕著であった。
4.難燃性の評価
米国アンダーライターラボラトリーズ発行のUL94規格に定められた方法により、長さ127mm、幅12.7mm、厚み1.5mmの試験片について垂直燃焼試験を行った。本発明においては、評価結果を、UL94規格V−2ランクを「V2」と記載した。試験片は、株式会社日本製鋼所製の射出成形機「J―100E」(形式名)を用いて準備した。
米国アンダーライターラボラトリーズ発行のUL94規格に定められた方法により、長さ127mm、幅12.7mm、厚み1.5mmの試験片について垂直燃焼試験を行った。本発明においては、評価結果を、UL94規格V−2ランクを「V2」と記載した。試験片は、株式会社日本製鋼所製の射出成形機「J―100E」(形式名)を用いて準備した。
表1から以下のことがわかる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物〔X〕を用いた実施例1〜9は、スナップフィットにおける耐衝撃性に優れ、アルミニウムとの接触による異音の発生も抑制されており、さらに、難燃性にも優れることが判った。
これに対し、ゴム強化芳香族ビニル系樹脂を含まない比較例1では、耐衝撃性が低く、異音の発生を抑制する効果も得られなかった。
本発明の熱可塑性樹脂組成物〔X〕を用いた実施例1〜9は、スナップフィットにおける耐衝撃性に優れ、アルミニウムとの接触による異音の発生も抑制されており、さらに、難燃性にも優れることが判った。
これに対し、ゴム強化芳香族ビニル系樹脂を含まない比較例1では、耐衝撃性が低く、異音の発生を抑制する効果も得られなかった。
本発明は、互いに接触する金属製部品と樹脂製部品とを少なくとも備えた物品、特に、両部品がスナップフィット、螺合等の嵌合方式により接続する物品や、繰り返し加熱冷却に曝される物品に好適に応用でき、例えば、LEDランプ等の照明器具を製造するのに好適に用いることができる。
10 ケーシング
11 LED
12 基板
15a,15b 凹部
20 ケーシング
25a,25b 凸部
X 熱可塑性樹脂組成物
11 LED
12 基板
15a,15b 凹部
20 ケーシング
25a,25b 凸部
X 熱可塑性樹脂組成物
Claims (15)
- 互いに接触する金属製部品と樹脂製部品とを少なくとも備えた物品であって、前記金属製部品及び樹脂製部品の少なくとも一方は、他方の部品と接触する部分の少なくとも表面の一部が、ゴム強化芳香族ビニル系樹脂(A)を含む熱可塑性樹脂組成物(X)で形成されている物品。
- 前記樹脂製部品は、その全体又は前記金属製部品と接触する部分の一部又は全部が、前記熱可塑性樹脂組成物(X)で形成されている、請求項1に記載の物品。
- 前記金属製部品又は樹脂製部品の他方の部品と接触する部分の表面の一部又は全部が、前記熱可塑性樹脂組成物(X)で形成された層からなる、請求項1に記載の物品。
- 前記樹脂製部品が、前記金属製部品と接触する部分に、前記熱可塑性樹脂組成物(X)から形成されたスペーサーを備えている、請求項1に記載の物品。
- 前記熱可塑性樹脂組成物(X)のゴム含量が5〜60質量%である、請求項1乃至4の何れか1項に記載の物品。
- 前記熱可塑性樹脂組成物(X)が、ポリカーボネート系樹脂(B)を含む、請求項1乃至5の何れか1項に記載の物品。
- 前記熱可塑性樹脂組成物(X)のJIS K 7121−1987に準じて測定した融点が0〜120℃の範囲にある、請求項1乃至6の何れか1項に記載の物品。
- 前記ゴム強化芳香族ビニル系樹脂(A)のゴム部分が、エチレン・α―オレフィン系ゴムである、請求項7に記載の物品。
- 前記エチレン・α―オレフィン系ゴムの融点(JIS K 7121−1987に準じて測定)が、0〜120℃の範囲にある、請求項8に記載の物品。
- 前記熱可塑性樹脂組成物(X)が、摺動性付与剤を含む、請求項1乃至9の何れか1項に記載の物品。
- 前記摺動性付与剤が、低分子量ポリオレフィンワックス及びシリコーンオイルからなる群より選ばれた少なくとも1つである、請求項10に記載の物品。
- 前記熱可塑性樹脂組成物(X)が、難燃剤を含有する、請求項1乃至11の何れか1項に記載の物品。
- 前記金属製部品と前記樹脂製部品とが互いにスナップフィットにより嵌合することにより接触する請求項1乃至12の何れか1項に記載の物品。
- 照明器具である、請求項1乃至13の何れか1項に記載の物品。
- 前記照明器具は、直管型LEDランプである、請求項14に記載の物品。
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2020
- 2020-10-21 JP JP2020176913A patent/JP2021007110A/ja active Pending
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