JP2021000794A - 光触媒塗装体 - Google Patents

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道久 平島
哲也 志知
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哲也 志知
裕明 下村
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裕明 下村
章太 渋谷
shota Shibuya
章太 渋谷
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Abstract

【課題】 水溶性アルカリ金属ケイ酸塩を含む水系シーラー層を備えながらも、とりわけ塗装直後の耐水性の低下が抑制された光触媒塗装体の提供。【解決手段】 基材と、当該基材上に形成された水系シーラー層と、当該水系シーラー層上に形成された、樹脂を含有する保護層と、当該保護層上に形成された光触媒層とを備えてなる光触媒塗装体であって、前記水系シーラー層は、水溶性アルカリ金属ケイ酸塩を含有し、前記樹脂は、カルボキシ基を有し、前記保護層は、前記水溶性アルカリ金属ケイ酸塩由来のアルカリ金属成分を捕捉する機能を有する物質をさらに含有する、光触媒塗装体。【選択図】 図3

Description

本発明は、光触媒塗装体、とりわけ建築用外装材として使用される光触媒塗装体に関する。
近年、酸化チタン等の光触媒を利用した塗装を建築物に施すことが増えてきている。光励起された光触媒は種々の有害物質を分解でき、この性質を利用して光触媒が塗布された基材表面を清浄化することが可能となる。また、光励起された光触媒はこれが塗布された基材表面を親水化し、この親水性により表面に付着した汚れを容易に水で洗い流すことが可能となる。
光触媒を利用した塗装の例として、基材上に光触媒を直接塗布し、上述したようなセルフクリーニング機能を有する光触媒層を形成して得られる塗装体が知られているが、これ以外にも、所定の目的・用途に応じ、基材と光触媒層との間にこれらとは別の層を設け、この別の層を介して基材上に間接的に光触媒層を設けた積層塗装体が知られている。例えば、WO97/00134号公報(特許文献1)には、基材と光触媒層の間に特定の樹脂を含有する接着層を設けた光触媒塗装体が開示され、この光触媒塗装体によれば、光触媒が基材上に接着層を介して担持された状態であっても光触媒の活性が維持されるとともに、担持された光触媒の作用によって基材および接着層が劣化することもなく(強度・耐久性が維持され)、さらに接着層の存在により、基材と光触媒層との接着性を向上させることができるとされている。
特開2003−206417号公報(特許文献2)には、基材上に接着層として水ガラス層を備えた光触媒塗装体が開示され、この光触媒塗装体によれば、水ガラス層の存在により、特許文献1と同様、光触媒層と基体との密着性を高めることができるとされている。
基材上に水ガラス層を備えた積層塗装体に関し、特開2003−205572号公報(特許文献3)は、基材上に水系シーラー層、下塗層および上塗層がこの順に積層された塗装体を開示し、水系シーラー層を備える積層塗装体によれば、VOC(揮発性有機化合物)等によるシックハウスの問題や環境汚染の恐れがないとされている。
建築用外装材として使用される積層塗装体のシーラー層には、基材がコンクリート等の場合、溶剤系塗料が用いられることが多いが、近年VOC削減の観点から水系塗料を使うケースが増えてきている。このような水系シーラーには、コンクリート等の基材との密着性を高めるために水ガラスが配合されていることが多い。
一方、建築用外装材として使用される積層塗装体全体の機能として、雨や結露等の水分により濡れても膨れたり変色したりしない耐水性能が求められる。耐水性が要求される塗膜にあっては、塗装完了後直ぐに水分に晒される使用環境が想定されるため、塗膜が乾燥硬化した直後から耐水性能が発揮される必要がある。
WO97/00134号公報 特開2003−206417号公報 特開2003−205572号公報
光触媒塗装体を製造後、直ちにプラスチックフィルム等のシートで光触媒塗装体を覆い包み、保護または保管ことがしばしば行われている。光触媒塗装体がシートにより実質的に密封されて放置されたとき、外気温の変化によりシート内側に結露が発生したりする。この結露水が光触媒塗装体に接触すると、従来の光触媒塗装体ではその表面が白くなる現象が観察され、耐水性が低下することがあった。また、製造直後の光触媒塗装体が水に晒されることにより起こるこのような白化の現象は、表面が乾燥しても解消せず、一度このような白化現象が生じた箇所では、耐水性の低下を回復することは困難であることが観察された。
本発明者らは、今般、この表面の白化現象が光触媒塗装体を構成する複数の層中に含まれる特定成分の相互作用により生じる現象であるとの知見を得た。
具体的には、基材と、水溶性アルカリ金属ケイ酸塩を含む水系シーラー層と、カルボキシル基を有する樹脂を含む保護層を少なくとも備える中間層と、光触媒層とをこの順に積層してなる塗装体にあっては、塗装直後に水または湿気に晒された場合、シーラー層上に設けられた中間層に膨れや破れ等の造膜不良が発生することがあることを実験により確認し、このような造膜不良により光触媒塗装体の表面が白く見える現象が発生するとの知見を得た。さらに、水溶性アルカリ金属ケイ酸塩を含む水系シーラー層を必須に備える光触媒塗装体が製造直後に水または湿気に晒された場合に特異的に発生する造膜不良の原因が、シーラー層に含まれるアルカリ金属ケイ酸塩由来のアルカリ金属成分(遊離ナトリウム等)が中間層へ移行することで、カルボキシル基の硬化反応が遅延し、見かけ上は乾燥硬化していても、実際は耐水性が低下していることにあるとの知見を得た。そして、このような塗装直後の耐水性の低下を、シーラー層より上層の中間層にアルカリ金属ケイ酸塩由来のアルカリ金属成分を捕捉する機能を有する物質を含有させて、カルボキシ基の硬化反応を促すことにより抑制することができることを見出した。本発明は以上の知見に基づくものである。
従って、本発明は、水溶性アルカリ金属ケイ酸塩を含む水系シーラー層を備えながらも、とりわけ塗装直後の耐水性の低下が抑制された光触媒塗装体を提供することを目的とする。
すなわち、本発明の光触媒塗装体は、
基材と、当該基材上に形成された水系シーラー層と、当該水系シーラー層上に形成された、樹脂を含有する保護層と、当該保護層上に形成された光触媒層とを備えてなる光触媒塗装体であって、
前記水系シーラー層は、水溶性アルカリ金属ケイ酸塩を含有し、
前記樹脂は、カルボキシ基を有し、
前記保護層は、前記水溶性アルカリ金属ケイ酸塩由来のアルカリ金属成分を捕捉する機能を有する物質をさらに含有することを特徴とする。
また、本発明の光触媒塗装体は、
基材と、当該基材上に形成された水系シーラー層と、当該水系シーラー層上に形成された、顔料を含有する着色層と、当該着色層上に形成された、樹脂を含有する保護層と、当該保護層上に形成された光触媒層とを備えてなる光触媒塗装体であって、
前記水系シーラー層は、水溶性アルカリ金属ケイ酸塩を含有し、
前記樹脂は、カルボキシ基を有し、
前記着色層または前記保護層のいずれか一層、あるいは前記着色層および前記保護層の双方は、前記水溶性アルカリ金属ケイ酸塩由来のアルカリ金属成分を捕捉する機能を有する物質をさらに含有することを特徴とする。
本発明による光触媒塗装体は、水溶性アルカリ金属ケイ酸塩を含む水系シーラー層を備えながらも、とりわけ塗装直後における耐水性の低下を抑制することができる。水系シーラー層と光触媒層との間に設けられた中間層の耐水性の低下が抑制されているため、光触媒塗装体が製造直後に水または湿気に晒された場合において、中間層に膨れや破れ等の造膜不良が発生するのを抑制することができる。造膜不良の発生が抑制されるため、水に晒されることにより光触媒塗装体の表面の白化現象の発生を抑制することができる。より具体的な場面として、光触媒塗装体を製造後、直ちにプラスチックフィルム等のシートで光触媒塗装体を覆う包み、保護または保管することがしばしば行われている。光触媒塗装体がシートにより実質的に密封されて放置されたとき、外気温の変化によりシート内側に結露が発生したりする。この結露水が光触媒塗装体に接触すると、従来の光触媒塗装体ではその表面が白くなる現象が観察されることがあったが、本発明によれば、この白化現象あるいはこの現象を引き起こす原因である光触媒塗装体の中間層における造膜不良の発生を効率よく抑制することが可能となる。
本発明による光触媒塗装体の模式図である。 本発明による光触媒塗装体の模式図である。 (a)本発明による光触媒塗装体1の耐水性試験の結果を示す拡大写真である。(b)本発明の範囲に属さない光触媒塗装体9の耐水性試験の結果を示す拡大写真である。
本発明による光触媒塗装体の基本構造
図1を参照しつつ、本発明による光触媒塗装体の基本構造について説明する。第1の態様によれば、本発明の光触媒塗装体10は、基材1と、基材1上に形成された水系シーラー層2と、水系シーラー層2上に形成された保護層3と、保護層3上に形成された光触媒層4とを備えてなる。この光触媒塗装体10は、最下層としての基材1および最上層としての光触媒層4を備え、基材1上に設けられた水系シーラー層2と光触媒層4との間に、保護層3を中間層として備える。
第2の態様によれば、本発明の光触媒塗装体20は、光触媒塗装体10において、シーラー層2と保護層3との間に、着色層5をさらに備えていてもよい。この光触媒塗装体20は、基材1と、基材1上に形成された水系シーラー層2と、水系シーラー層2上に形成された着色層5と、着色層5上に形成された保護層3と、保護層3上に形成された光触媒層4とを備えてなる。また、光触媒塗装体20は、水系シーラー層2と光触媒層4との間に、着色層5および保護層3を中間層として備える。なお、本発明は、中間層が着色層5および保護層3以外に別の層をさらに備えてなる態様を何ら除外するものではない。
基材
本発明において、基材は、その表面に、水系シーラー層、中間層および光触媒層を形成可能な材料であれば特に制限されないが、建築用外装材に好適に使用可能な建築基材であることが好ましい。基材は、無機材料、有機材料を問わず種々の材料であってよい。基材の具体例としては、スレート板、繊維強化セメント板、石膏ボード、コンクリート部材、壁紙、繊維、金属、セラミック、ガラスやタイル等の窯業系無機材料、PMMA、ポリカーボネート等樹脂材料等の一般的な部材からなる単一基材、並びに上述の部材の2種以上からなる複合基材が挙げられる。また、その表面に有機塗装などを施した基材を用いてもよい。
水系シーラー層
本発明において、水系シーラー層は水溶性アルカリ金属ケイ酸塩を含有する。水溶性アルカリ金属ケイ酸塩を含有することにより、基材と水系シーラー層との密着性が得られる。水溶性アルカリ金属ケイ酸塩は、一般式MO・nSiO(式中、Mは、アルカリ金属またはアンモニウム(NH)、好ましくはNa、K、Li、Cs、NH、より好ましくはNa、K、Li、NHを示し、これらアルカリ金属等は1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。n(モル比)は、通常2.0〜4.1である。)で表される化合物である。
アルカリ金属ケイ酸塩として、具体的には、ケイ酸カリウム(カリウムシリケート)、ケイ酸ナトリウム(ケイ酸ソーダ、ナトリウムシリケート)、ケイ酸リチウム(リチウムシリケート)、ケイ酸セシウム、ケイ酸アンモニウム(アンモニウムシリケート)などが挙げられ、中でも、ケイ酸カリウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸リチウムおよびケイ酸アンモニウムが好ましい。これらアルカリケイ酸塩は1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明において、水系シーラー層または水系シーラー層形成用水系塗料は、任意成分として、下記のような成分を含んでいてもよい:
・ 石英粉、天然石粉、ケイ砂、粘土、アスベスト、パーライト、活性化シラス、カーボンファイバー、ガラスファイバー等の骨材や無機充填材;
・ 酸化チタン、シリカ、亜鉛華等の無機顔料;
・ 水系シーラー層の耐クラック性に寄与するフェノール樹脂の初期縮合物であるレゾール樹脂、酢酸ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アクリル酸エステル−スチレン共重合体、エポキシ樹脂等の樹脂(好ましくはこれらの樹脂エマルジョン);
・ 水系シーラー層の耐クラック性に寄与するSBR、NBR、クロロプレンゴム、天然ゴム等のゴム(好ましくはこれらのゴムラテックス);
・ 必要に応じて、水溶性アルカリ金属ケイ酸塩の硬化剤(公知の水ガラス用硬化剤);
・ 粘度調整用の界面活性剤;
・ 粘度調整用の増粘剤、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等の有機系増粘剤、あるいはベントナイト、アエロジル等の無機系増粘剤;
・ その他、必要に応じて、酸化防止剤、安定剤、レベリング剤、消泡剤、帯電防止剤、防曇剤、密着改良剤、分散剤。
保護層
カルボキシル基を有する樹脂
本発明において、保護層は、1分子内にカルボキシル基を1以上有する水溶性樹脂又は水分散性樹脂を含有する。これら樹脂が有するカルボキシル基と後述する硬化剤との硬化反応により、保護層内に架橋構造が形成され、保護層に耐水性、耐久性、密着性が付与される。その結果、保護層は、自身の下側に設けられた基材、シーラー層、および場合により着色層を保護することができる。
カルボキシル基を有する水溶性樹脂として、具体的には、スチレンアクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。また、これらの樹脂骨格に、アミド基及びポリオキシアルキレン基等のノニオン性官能基をさらに有する樹脂;アミノ基、イミノ基及びヒドラジノ基等のカチオン性官能基をさらに有する樹脂;カルボン酸基、スルホン酸基及びリン酸基等のアニオン性官能基をさらに有する樹脂等が挙げられる。なお、これら水溶性樹脂の保護層形成用塗料中での存在形態については、特に限定されないが、水などの水性媒体に溶解された形態であってよい。
カルボキシル基を有する水分散性樹脂として、具体的には、スチレンアクリル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、アクリルシリコン樹脂、アクリルウレタン樹脂、フッ素樹脂、アクリルフッ素樹脂等が挙げられる。これら水分散性樹脂の具体的な製品名としては、住化バイエルウレタン(株)製のバイヒドロールA145、バイヒドロールA2290、バイヒドロールA2427、バイヒドロールA2542、バイヒドロールA2546、バイヒドロールA2601、バイヒドロールA242、DIC(株)製のバーノックWE−303、バーノックWE−304、バーノックWE−306、バーノックWE−308、バーノックWE−313、旭硝子社製のルミフロンFE−4200、ルミフロンFE−4300、ルミフロンFE−4400、ルミフロンFE−4500などが挙げられる。なお、これら水分散性樹脂の保護層形成用塗料中での存在形態については、特に限定されないが、強制乳化や自己乳化、懸濁重合、乳化重合、ミニエマルション重合等で得られる、乳化剤や親水性基で水などの水性媒体中に分散された形態であってよい。
上記の水溶性樹脂及び水分散性樹脂は、好ましくは、その水酸基価が20〜200mgKOH/g、より好ましくは30〜150mgKOH/gである。水酸基価が20mgKOH/g未満であると、保護層の架橋密度が低くなるため、耐久性が低くなる傾向があり、また水酸基価が200mgKOH/g超過であると、耐水性が劣り、粘度が高くなる傾向があるからである。
上記の水溶性樹脂及び水分散性樹脂は、塗膜性能の観点から、その重量平均分子量Mwが1,000〜500,000であることが好ましく、より好ましくは、2,000〜300,000である。
上記の水溶性樹脂及び水分散性樹脂は、それぞれ単独で用いてもよく、また、互いに反応性を有しないものであれば、2種以上を混合して用いることもできる。2種以上を混合して用いる場合には、1分子の分子鎖(繰り返し単位)の異なる複数の水溶性樹脂又は水分散性樹脂をそれぞれ混合してもよく、或いは、前記複数の水溶性樹脂及び水分散性樹脂を任意に混合することもできる。
上記の水溶性樹脂及び水分散性樹脂が有するカルボキシル基と反応して架橋構造を形成する硬化剤としては、例えばカルボジイミド基を有する樹脂、ポリカルボジイミド樹脂に親水性セグメントを付与した水性架橋剤など公知の水性樹脂用架橋剤を用いることができる。
水系シーラー層に含まれる水溶性アルカリ金属ケイ酸塩由来のアルカリ金属成分を捕捉する機能を有する物質
本発明において、中間層としての保護層は、水系シーラー層に含まれる水溶性アルカリ金属ケイ酸塩由来のアルカリ金属成分を捕捉する機能を有する物質(以下、単に「捕捉剤」ともいう。)を含有する。捕捉剤は、保護層の硬化遅延の原因となるアルカリ金属成分を保護層で捕捉し、保護層に含有される樹脂が有するカルボキシ基の硬化反応を促進可能とするため、塗装直後の光触媒塗装体における耐水性低下を抑制することができる。
なお、本発明の光触媒塗装体は、製造された後、パレット積載され、その後すぐにシートに覆われて屋外等に保管されることがある。本明細書において、塗装「直後」との用語は、例えば、光触媒塗装体が製造されてから屋外に保管されるまでの期間を含む意味で用いられる。
本発明において、捕捉剤として、例えば、スメクタイトと総称される粘土鉱物:例えばモンモリロナイト、ベントナイト、ノントロナイト、サポナイト、バイデライト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチーブンサイト;スメクタイト以外の粘土鉱物:例えばカオリナイト、セリサイト、グローコナイト、クロライト、タルク、ゼオライト;クラウンエーテル;イオン交換樹脂;酸:例えば塩酸、硝酸、硫酸、酢酸、クエン酸、リン酸;縮合リン酸アルミを用いることができる。ただし、本発明にあっては、後述するように、保護層を形成する塗料の液性が塩基性であることが好ましいため、酸を用いる場合は、塗料の液性が塩基性となる範囲で添加されることが必要である。
本発明の好ましい態様によれば、捕捉剤は、ヘクトライトおよびサポナイト等の層状ケイ酸塩、トリポリリン酸アルミニウム、メタリン酸アルミニウムからなる群より選択される少なくとも1種である。
塗装直後の耐水性低下を抑制するメカニズム
シーラー層に含まれるアルカリ金属ケイ酸塩由来のアルカリ金属成分が保護層へ移行する。アルカリ金属成分の保護層への移行は、シーラー層が乾燥した後に、上層である保護層が連続塗装され乾燥する過程において、水を媒体にして発生する。保護層へ移行したアルカリ金属成分は、保護層に含有される樹脂が有するカルボキシ基に配位し、カルボン酸塩を形成することにより、保護層の硬化遅延が発生する。
本発明にあっては、保護層を形成する過程において、保護層に含まれる捕捉剤がアルカリ金属成分を捕捉するため、カルボキシ基へのアルカリ金属成分の配位が阻害され、カルボキシル基と硬化剤(例えば、カルボジイミド基)との硬化反応が促進される。その結果、塗装直後の光触媒塗装体における耐水性低下が抑制される。また、塗装直後の耐水性低下が抑制されることで、製造後の光触媒塗装体において、保護層に膨れや破れ等の造膜不良が発生することを抑制することができる。保護層における造膜不良の発生が抑制されるため、水に晒されることにより光触媒塗装体の表面が白く見える現象の発生を抑制することができる。
本発明者らは、塗装直後の光触媒塗装体における耐水性を、水に晒されることにより光触媒塗装体の表面が白く見える現象の発生の有無を介して評価する手法を確立した。具体的には、作製直後の光触媒塗装体の表面の所定の領域に、所定量の水を含ませ、この水が揮発するのを防ぐ状態を作り出し、塗装体を静置する。その後、塗装体を水に晒された状態から解放し、半日程度常温乾燥させ、塗装体の表面に白化現象が発生しているか否かを目視で評価する。
また、保護層が後述する増粘剤をさらに含み、この増粘剤が、本発明に用いられる樹脂と同様にカルボキシル基を有する化合物である場合、増粘剤のカルボキシル基にもアルカリ金属成分が配位する可能性がある。ある種のアクリル系アルカリ膨潤型増粘剤のカルボキシル基にアルカリ金属成分が配位した場合、吸水機能を獲得することが本発明者らの実験により確認されている。つまり、カルボキシル基を有する増粘剤の中には、カルボキシル基がアルカリ金属成分と塩を形成することにより、塗装完了後に光触媒塗装体が水に晒された場合において、保護層への水の浸入を誘発するおそれを有するものがあり、これにより塗装直後の光触媒塗装体における耐水性低下が助長される。この場合、保護層に捕捉剤が含まれていると、増粘剤のカルボキシル基へのアルカリ金属成分の配位は阻害され、増粘剤が吸水機能を獲得することはなく、保護層への水の誘発を抑制することが可能となる。その結果、塗装直後の光触媒塗装体における耐水性低下が抑制される。
増粘剤
本発明において、保護層は増粘剤をさらに含むことが好ましい。増粘剤は、塗料のレオロジーを変化させ、保護層の塗膜が形成される際、その増粘効果により、保護層の施工性の容易化や透明化に寄与する。このような増粘剤として、例えばアルカリ膨潤性エマルジョンなど公知の粘性調整剤を用いることができる。
本発明において、増粘剤として、層状ケイ酸塩を用いることがより好ましい。層状ケイ酸塩として、具体的には、(合成)ヘクトライトおよび(合成)サポナイト等を好適に用いることができる。層状ケイ酸塩は、増粘剤としての機能と、アルカリ金属成分の捕捉剤としの機能の双方を合わせ持つため有益である。つまり、層状ケイ酸塩に増粘剤の機能と捕捉剤の機能を兼任させることにより、例えば、増粘機能しか有していない(捕捉機能は有していない)増粘剤、捕捉機能しか有していない(増粘機能は有していない)捕捉剤、および層状ケイ酸塩の含有量を、それぞれの機能が効果的に発揮されるように制御する自由度を高めることができ、塗装直後の耐水性低下をさらに抑制することができる。
また、増粘機能しか有していない(捕捉機能は有していない)増粘剤が、本発明に用いられる樹脂と同様にカルボキシル基を有する化合物である場合、保護層を形成する過程において、硬化剤が、樹脂とではなく、増粘剤と反応してしまい、これにより保護層の硬化遅延または硬化不足が発生することが懸念される。この場合、増粘剤の代わりに、あるいは増粘剤の一部に代えて層状ケイ酸塩を用いることにより、層状ケイ酸塩は硬化剤と反応しないため、保護層の硬化遅延が改善されるとともに、保護層におけるアルカリ金属成分の捕捉を向上することが可能となる。
さらに、増粘機能しか有していない(捕捉機能は有していない)増粘剤が、本発明に用いられる樹脂と同様にカルボキシル基を有する化合物である場合、増粘剤のカルボキシル基にもアルカリ金属成分が配位する可能性がある。ある種のアクリル系アルカリ膨潤型増粘剤のカルボキシル基にアルカリ金属成分が配位した場合、吸水機能を獲得することが本発明者らの実験により確認されている。つまり、カルボキシル基を有する増粘剤の中には、カルボキシル基がアルカリ金属成分と塩を形成することにより、塗装完了後に光触媒塗装体が水に晒された場合において、保護層への水の浸入を誘発するおそれを有するものがあり、これにより塗装直後の光触媒塗装体における耐水性低下が助長される。この場合、増粘剤の代わりに、あるいは増粘剤の一部に代えて層状ケイ酸塩を用いることにより、増粘剤の含有量を減らすことができた分だけ保護層への水の浸入が阻害され、これにより塗装直後の光触媒塗装体における耐水性低下を抑制することが可能となる。
保護層を形成するための塗料
液性
本発明において、保護層を形成するための塗料の液性が塩基性であることが好ましい。これにより、塗料の分散安定性および粘度安定性が得られ、保護層の施工性が向上する。本発明の好ましい態様によれば、塗料は8.0以上12.0以下のpHを有する。塗料の液性を塩基性に調節するための成分は特に限定されず、公知のpH調整剤を用いることができるが、アルカノールアミンを用いるのが好ましい。
アルカノールアミン
本発明において、アルカノールアミンは、保護層形成用塗料中で増粘剤を安定化させる効果を奏する。すなわち、増粘剤がネットワークを形成し、塗料が増粘するのを阻害しない目的で添加される。これにより、塗料の保管安定性が得られる。
保護層形成用塗料の液性が塩基性の場合、塗料の中で粒子成分はいずれも負電荷を帯びて分散または溶解している。施工性を改善するため増粘剤を添加すると塗料の電荷のバランスが崩れ、塗料の粘度が不安定になる可能性がある。粒子成分と増粘剤とを塗料中で安定させるためには、塗料の電荷を安定させること、および塗料への増粘剤の溶解性を安定させることが必要となると考えられる。アルカノールアミンの添加は、その双方を安定化させる効果を有する。すなわち、アルカノールアミンは、電荷を安定させ、かつ、増粘剤と配位しやすいアミン態窒素を持ち、同時にアルカノール基を持つため、増粘剤の溶解性を保つことができるものと考えられる。
アルカノールアミンの好ましい具体例としては、ジメチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、ジブチルエタノールアミン、β−アミノエチルエタノールアミン、メチルエタノールアミン、エチルエタノールアミン、エチルジエタノールアミン、n−ブチルエタノールアミン、n−ブチルジエタノールアミン、t−ブチルエタノールアミン、t−ブチルジエタノールアミン、β−アミノエチルイソプロパノールアミン、およびジエチルイソプロパノールアミン等が挙げられる。これらの中でも、ジメチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、エタノールアミンがより好ましい。
光触媒層
最表層を構成する光触媒層に含有される光触媒は、光触媒として使用可能なものであれば限定されないが、酸化チタンが好ましく用いられる。本発明において、酸化チタンは粉末状、ゾル状、溶液状など様々な形態で入手可能であるが、光触媒活性を示すものであれば、いずれの形態でも使用可能である。本発明の好ましい態様によれば、光触媒粒子が10nm以上100nm以下の平均粒径を有するのが好ましく、より好ましくは10nm以上60nm以下である。この範囲内であると、耐候性、有害ガス分解性、および所望の各種被膜特性(紫外線吸収性、透明性、膜強度等)が効率良く発揮される。また、ゾル状で市販されている光触媒を用い、粒子径を30nm以下、好ましくは20nm以下にすることによって、透明性が良好な光触媒層を得ることが可能である。
本発明において、光触媒の粒径は、走査型電子顕微鏡により20万倍の視野に入る任意の100個の粒子の長さを測定した個数平均値として算出される。粒子の形状としては真球が最も好ましいが、略円形や楕円形でも好ましく、その場合の粒子の長さは((長径+短径)/2)として略算出される。
本発明において、光触媒層における光触媒の含有量は、1質量%を超え20質量%未満の範囲が好ましい。この範囲で光触媒を含むことにより、光触媒活性と親水化性能が十分に発揮できるとともに、光触媒層が厚くなりすぎることを防ぐことができるが、光触媒活性や外観、耐久性等の性能を考慮して適宜選択することができる。
本発明において、光触媒層は無機粒子を含んでいてもよい。無機粒子としては、シリカ、アルミナ、ジルコニア、セリア、イットリア、ボロニア、マグネシア、カルシア、フェライト、無定型チタニア、ハフニア等の単一酸化物に加え、チタン酸バリウム、ケイ酸カルシウム等の複合酸化物が使用可能であり、シリカ粒子が好適に利用できる。これら無機酸化物は、水を分散媒とした水性コロイド、またはエチルアルコール、イソプロピルアルコールまたはエチレングリコールなどの親水性溶媒にコロイド状に分散させたオルガノゾルの形態が好ましく、特に、コロイダルシリカの利用が好ましい。無機粒子の粒径は、水性コロイドまたはオルガノゾルの形態とされたときの平均粒径が10nm以上40nm未満であれば好ましく、より好ましくは10nm以上30nm以下である。
ここで、平均粒径は、走査型電子顕微鏡により20万倍の視野に入る任意の100個の粒子の長さを測定した個数平均値として算出される。粒子の形状としては真球が最も好ましいが、略円形や楕円形でも好ましく、その場合の粒子の長さは((長径+短径)/2)として略算出される。
本発明において、光触媒層における無機粒子の含有量は、70質量%を超え99質量%未満の範囲が好ましい。光触媒活性や外観、耐久性等の性能を考慮して適宜選択することができる。
また、本発明において、光触媒層は水溶性無機非晶質物質を含むことができ、その例としては、アルカリ珪酸塩、アルカリホウ珪酸塩、アルカリジルコン酸塩、およびアルカリリン酸塩等のリン酸金属塩からなる群から選択される一種以上を含んでなるものが挙げられる。これらの物質は水の存在により容易に化学吸着水層を形成し、高度かつ長期的にわたって親水性を呈すことができる。これらの中でもアルカリ珪酸塩が好ましく、より好ましくは、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、珪酸リチウム、珪酸アンモニウムの少なくとも1つ以上が挙げられる。一般に接着性は珪酸ナトリウム、珪酸カリウムの順に強く、耐水性は珪酸アンモニウム、珪酸リチウムの順に強いと考えられるが、被膜性、膜硬度、耐水性等を考慮すると珪酸リチウムを含むのがより好ましい。なお、光触媒層の形成過程においては、保護層はすでに乾燥・硬化が進行しているため、光触媒層形成用塗料がアルカリ珪酸塩を含んでいても、これが下側の保護層に移行するための伝達媒体となる水は存在しない。そのため、アルカリ珪酸塩が下側の保護層に移行することはなく、それ故例えば、保護層でカルボキシル基と塩を形成する等のおそれもない。
また、本発明において、光触媒層はその他の無機バインダーを含んでいてもよく、例えば、加水分解性シリコーン等が挙げられる。加水分解性シリコーンとは、アルコキシ基を有するオルガノシロキサンおよび/またはその部分加水分解縮合物の総称である。加水分解性シリコーンとしては、4官能シリコーン化合物がよく使用され、例えば、エチルシリケート40(オリゴマー、Rがエチル基)、エチルシリケート48(オリゴマー、Rがエチル基)メチルシリケート51(オリゴマー、Rがメチル基)(いずれもコルコート社製)の形で市販されている。
本発明において、光触媒層における無機バインダーの含有量は、0質量%以上10質量%未満の範囲が好ましい。
着色層
本発明において、光触媒塗装体は、水系シーラー層の上に、つまり水系シーラー層と保護層との間に、着色層を備えていてもよい。着色層を備えることにより、光触媒塗装体を着色し、意匠性を付与することができる。
着色層は、例えば、アクリル樹脂系の塗料(以下、着色層形成用塗料という)から形成される。特に、着色層形成用塗料は、下地の隠蔽力が高く、耐久性に優れ、種類豊富な色揃えを有し、外観意匠性向上に寄与可能なアクリル樹脂系のエナメル塗料であることが好ましい。具体的には、例えば、アクリルエマルション樹脂やアクリルシリコン系エマルション樹脂に、有機顔料もしくは無機顔料またはこれら双方、有機溶媒、消泡剤、増粘剤等の添加剤、水等を加えて撹拌分散して調製されたエナメル塗料を用いることができる。
着色層形成用塗料は、エナメル塗料である場合、顔料を含有してもよい。顔料は、有機顔料もしくは無機顔料またはこれら双方であってもよい。有機顔料は、例えば、ローダミンレーキ、メチルバイオレットレーキ、キノリンエローレーキ、マラカイトグリーンレーキ、アリザリンレーキ、カーミン6B、レーキレットC、ジスアゾエロー、レーキレット4R、クロモフタルエロー3G、クロモフタルスカーレットRN、ニッケルアゾエロー、パーマネントオレンジHL、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、フラバンスロンエロー、チオインジゴボルドー、ペリノンレッド、ジオキサドンバイオレット、キナクリドンレッド、ナフトールエローS、ピグロントグリーンB、ルモゲンエロー、シグナルレッド、アルカリブルー及びアニリンブラックからなる群から選択される一種以上の材料を含有することができる。また、無機顔料は、例えば、炭酸カルシウム、酸化チタン(チタンホワイト)、紺青、群青、酸化鉄、アルミペースト、ブロンズ粉及びカーボンブラックからなる群から選択される一種以上の材料を含有することができる。
本発明において、中間層としての着色層が、シーラー層に含まれる水溶性アルカリ金属ケイ酸塩由来のアルカリ金属成分を捕捉する機能を有する物質を含んでいてもよい。すなわち、本発明の光触媒塗装体が中間層として着色層および保護層を備える場合、着色層または保護層のいずれか一層、あるいは着色層および保護層の双方が、捕捉剤を含んでいてよい。捕捉剤は、上述したように、保護層の硬化遅延の原因となるアルカリ金属成分を捕捉し、保護層に含有される樹脂が有するカルボキシ基の硬化反応を促進可能とし、これにより塗装直後の光触媒塗装体における耐水性低下を抑制することを可能とするものであるため、中間層が着色層および保護層の2層からなる場合、保護層でアルカリ金属成分を捕捉してもよいし、アルカリ金属成分が保護層へ到達する前に、つまり保護層の下層である着色層で予めアルカリ金属成分を捕捉してもよい。無論、保護層および着色層の双方に捕捉剤を含有させて、アルカリ金属成分をより確実に捕捉することが可能となる。
なお、光触媒塗装体が中間層として着色層および保護層を備える場合における塗装直後の耐水性低下を抑制するメカニズムについては、既に保護層を例にして説明した同メカニズムに関する記載において、着色層のみが捕捉剤を含む態様、着色層および保護層の双方が捕捉剤を含む態様に応じて、「保護層」との用語を、それぞれ「着色層」、「着色層および保護層」と読み替えることにより説明される。
光触媒塗装体の製造方法
本発明の光触媒塗装体は例えば以下のように製造される。先ず、基材を用意する。次いで、水溶性アルカリ金属ケイ酸塩を含む水系塗料を基材上に適用し、基材表面に濡れ広がった水系塗料からなる塗膜を乾燥させて水系シーラー層を形成する。塗膜は常温乾燥させればよい。必要に応じて加熱乾燥させてもよい。本発明の光触媒塗装体は、水系塗料を用いて形成された水系シーラー層を備えているため、VOCが削減され、安全性が高く、また環境にも優しい。水系シーラー層形成用塗料の塗布量は90〜130g/mの範囲内であることが好ましい。適用した水系シーラー層形成用塗料の乾燥は、例えば、50〜200℃で1〜20分間の範囲内で行うことが好ましい。
次いで、必要に応じて、着色層形成用塗料を水系シーラー層上に適用し、水系シーラー層表面に濡れ広がった塗料からなる塗膜を乾燥させて着色層を形成する。塗膜は常温乾燥させればよい。必要に応じて加熱乾燥させてもよい。着色層形成用塗料の塗布量は90〜400g/mの範囲内であることが好ましい。適用した着色層形成用塗料の乾燥は、例えば、50〜150℃で1〜20分間の範囲内で行うことが好ましい。このようにして形成された着色層の膜厚は特に限定されるものではないが、好ましくは5μm〜100μm、より好ましくは12μm〜60μmである。
次いで、樹脂、捕捉剤、増粘剤等を含む保護層形成用塗料をシーラー層または着色層上に適用し、シーラー層または着色層の表面に濡れ広がった塗料からなる塗膜を乾燥させて保護層を形成する。塗膜は常温乾燥させればよい。必要に応じて加熱乾燥させてもよい。保護層形成用塗料の塗布量は60〜200g/mの範囲内であることが好ましい。適用した保護層形成用塗料の乾燥は、例えば、50〜150℃で1〜20分間の範囲内で行うことが好ましい。このようにして形成された保護層の膜厚は特に限定されるものではないが、好ましくは3μm〜50μm、より好ましくは9μm〜30μmである。
次いで、光触媒層形成用塗料を保護層上に適用し、保護層表面に濡れ広がった塗料からなる塗膜を乾燥させて光触媒層を形成する。塗膜は常温乾燥させればよい。必要に応じて加熱乾燥させてもよい。光触媒層形成用塗料の塗布量は10〜17g/mの範囲内であることが好ましい。適用した光触媒層形成用塗料の乾燥は、例えば、5〜50℃で1〜5分間の範囲内で行うことが好ましい。このようにして形成された光触媒層の膜厚は特に限定されるものではないが、好ましくは0.1μm〜3μm、より好ましくは0.5μm〜1.5μmである。
上記のように、光触媒塗装体は、基材、シーラー層、必要に応じて着色層、保護層および光触媒層それぞれを、塗装と(加熱)乾燥をくり返す連続塗装により製造される。各層を形成するための(水系)塗料の適用方法は、適宜選択されてよく、例えば、ローラー、スプレー、ロールコーター、フローコーター、カーテンコーター、ディップコート、流し塗り、スクリーン印刷、電着、蒸着、インクジェット等の方法を利用できる。塗料をインクジェットで適用する場合、必要に応じて塗料受容層を形成してもよい。
本発明を以下の実施例によりさらに説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
光触媒塗装体の作製
以下の手順により光触媒塗装体1〜9を作製した。なお、後述するとおり、塗装体1〜9は、同一の基材、同一の水系シーラー層、同一の着色層、異なる保護層1〜9、および同一の光触媒層をこの順に積層して作製したものである。
基材の用意
15cm×6.5cm×3mmのスレート板を用意した。
水系シーラー層の形成
前記スレート板上に、ケイ酸ナトリウムを含有するシーラー塗料を、エアスプレーにて110±10g/mの塗布量で塗装し、90℃で5分間乾燥させて、水ガラスを含有するシーラー層を形成した。
着色層の形成
前記シーラー層上に、着色剤を含有する水系アクリル塗料を、エアスプレーにて300±10g/mの塗布量で塗装し、90℃で3分間乾燥させて、着色層を形成した。
保護層の形成
保護層形成用塗料の調製
以下の材料を用意した。
(1)カルボキシ基含有樹脂
樹脂1:カルボキシ基含有フッ素樹脂、または
樹脂2:カルボキシ基含有アクリルシリコン樹脂
(2)硬化剤:水性樹脂用架橋剤(日清紡社製、商品名:カルボジライト)
(3)増粘剤:アルカリ膨潤型粘性調整剤(Elementis社製、商品名:レオレート125)
(4)pH調整剤:エタノールアミン(日本乳化剤社製、商品名:2Mabs)
(5)捕捉剤
捕捉剤1:トリポリリン酸(テイカ社製、K−BOND ♯80)、または
捕捉材2:メタリン酸(テイカ社製、K−BOND ♯90)、または
捕捉剤3:ヘクトライト(Elementis社製、商品名:ベントンHD)、または
捕捉剤4:ヘクトライト(BYK−Chemie社製、商品名:ラポナイトRD)
下記表1に記載の組成となるよう、上記材料(1)〜(5)を混合し、保護層形成用塗料1〜9を調製した。
なお、表1に記載の濃度(%)は、各材料の塗料中での固形分濃度を意味する。固形分濃度とは、塗料を105〜110℃で乾燥し恒量となったときの質量%を意味する。増粘剤は、塗料の粘度を500〜700mPa・sに調整するための必要量を、塗料調製工程の最後に添加した。粘度は、塗料温度25℃、B型粘度計M3ローター60rpmにて測定した。
保護層の形成
前記着色層上に、調製した保護層形成用塗料1〜9を、エアスプレーにて80±10g/mの塗布量で塗装し、90℃で3分間乾燥させて、保護層1〜9を形成した。
光触媒層の形成
光触媒層形成用塗料の調製
以下の材料を用意した。
(1)光触媒:酸化チタン粒子(アナターゼ型、粒径:レーザ回折・散乱法(JIS Z8825:2013)により測定したX90(分布の端)の値が72.5nm)の水分散体(塩基性)
(2)バインダー:水分散型コロイダルシリカ(日産化学工業社製、商品名:スノーテックスS、固形分含有率:30%)
(3)分散媒:イオン交換水
(4)添加剤:ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤
下記表2に記載の組成となるよう、上記材料(1)〜(4)を混合し、光触媒層形成用塗料を調製した。なお、塗料中の光触媒およびバインダーの合計の固形分濃度は5.5質量%とした。固形分濃度とは、塗料を105〜110℃で乾燥し恒量となったときの質量%を意味する。
前記保護層1〜9それぞれの上に、調製した光触媒層形成用塗料を、エアスプレーにて12.5±2.5g/mの塗布量で塗装し、室温で乾燥させて、光触媒層を形成した。
このようにして、光触媒塗装体1〜9を作製した。
評価
耐水性試験
光触媒塗装体1〜9について、作製直後の耐水性を以下のとおり評価した。具体的には、塗装体1〜9の表面に、6.7cm×20cmに切り取り、20±1gの水を含ませたキムタオルを置き、水の揮発を防ぐためラップで養生し、塗装体の表面温度45℃以下で、16時間静置した。その後、ラップおよび水を含ませたキムタオルを取り外し、塗装体1〜9を3時間常温乾燥させ、塗装体の表面外観を目視で評価した。
評価基準
耐水性試験の評価基準を次のように設定した。各塗装体の表面において、水を含ませたキムタオルを置き、さらにラッピングした部分(試験部)が、試験部以外の部分(未試験部)と同等の外観を保持していた場合を「○」(合格)とし、一方、試験部が耐水性不良により、未試験部と比較して白く見えた場合、又は試験部にクラックが観察された場合を「×」(不合格)とした。
評価結果
各塗装体の評価結果は、表3に示されるとおりであった。
また、代表例として、図3に、塗装体1と塗装体9の耐水性試験の結果を示す。塗装体1では、試験部は、未試験部と同等の外観を保持していたのに対し、塗装体9では、試験部が白く見えることが確認された。
表3および図3の結果は、水系シーラー層を備える積層塗装体において、当該シーラー層より上層(中間層)に捕捉剤を含有させることにより、塗装直後における塗装体表面の耐水性を向上させることが可能であることを明確に示している。
1:基材、2:シーラー層、3:保護層、4:光触媒層、5:着色層、10、20:光触媒塗装体

Claims (8)

  1. 基材と、当該基材上に形成された水系シーラー層と、当該水系シーラー層上に形成された、樹脂を含有する保護層と、当該保護層上に形成された光触媒層とを備えてなる光触媒塗装体であって、
    前記水系シーラー層は、水溶性アルカリ金属ケイ酸塩を含有し、
    前記樹脂は、カルボキシ基を有し、
    前記保護層は、前記水溶性アルカリ金属ケイ酸塩由来のアルカリ金属成分を捕捉する機能を有する物質をさらに含有する、光触媒塗装体。
  2. 基材と、当該基材上に形成された水系シーラー層と、当該水系シーラー層上に形成された、顔料を含有する着色層と、当該着色層上に形成された、樹脂を含有する保護層と、当該保護層上に形成された光触媒層とを備えてなる光触媒塗装体であって、
    前記水系シーラー層は、水溶性アルカリ金属ケイ酸塩を含有し、
    前記樹脂は、カルボキシ基を有し、
    前記着色層または前記保護層のいずれか一層、あるいは前記着色層および前記保護層の双方は、前記水溶性アルカリ金属ケイ酸塩由来のアルカリ金属成分を捕捉する機能を有する物質をさらに含有する、光触媒塗装体。
  3. 前記アルカリ金属成分を捕捉する機能を有する材料は、層状ケイ酸塩、トリポリリン酸アルミニウム、メタリン酸アルミニウムからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1または2に記載の光触媒塗装体。
  4. 前記樹脂は、水分散性樹脂であり、前記水分散性樹脂が、フッ素樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の光触媒塗装体。
  5. 前記保護層は、増粘剤をさらに含有し、当該増粘剤が層状ケイ酸塩である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の光触媒塗装体。
  6. 前記光触媒層が、1質量%を超え20質量%未満の光触媒粒子と、70質量%を超え99質量%未満の無機粒子と、0質量%以上10質量%未満の無機バインダーとを含有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の光触媒塗装体。
  7. 前記無機粒子が、走査型電子顕微鏡により20万倍の視野に入る任意の100個の粒子の長さを測定することにより算出される、10nm以上40nm未満の個数平均粒径を有する、請求項6に記載の光触媒塗装体。
  8. 外装材として使用される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の光触媒塗装体。

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