JP2021000771A - インクジェット記録材のインク受理層を形成するためのコーティング組成物、およびそれを用いたインクジェット記録材 - Google Patents

インクジェット記録材のインク受理層を形成するためのコーティング組成物、およびそれを用いたインクジェット記録材 Download PDF

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由貴 清水
祐貴 立花
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祐貴 立花
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雄介 天野
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一彦 前川
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Abstract

【課題】インク受理層の形成にあたり水溶液の調製が容易であり、かつ得られたインク受理層が優れた皮膜強度および耐水性を有するインクジェット記録材のインク受理層を形成するためのコーティング組成物、およびそれを用いたインクジェット記録材を提供する。【解決手段】側鎖にエチレン性不飽和基を有する変性ポリビニルアルコール樹脂を含有するコーティング組成物を使用して、インクジェット記録材のインク受理層を形成する。【選択図】なし

Description

本発明は、インクジェット記録材のインク受理層を形成するためのコーティング組成物、およびそれを用いたインクジェット記録材に関する。
ポリビニルアルコール樹脂(以下、「PVOH」と略記することがある。)は、水溶性の合成高分子として知られており、合成繊維であるビニロンの原料、紙加工剤、繊維加工剤、接着剤、乳化重合及び懸濁重合用の安定剤、無機物のバインダー、フィルムなどの用途に広く用いられている。特に、PVOHは他の水溶性合成高分子と比べて強度特性および造膜性に優れており、この特性を活かして、インクジェット記録材におけるインク受理層を形成するための材料として重用されている。
このようなPVOHの特性をさらに高めるために、各種変性がなされたPVOHが開発されている。変性PVOHの1つとしてシリル基含有PVOHが知られている。このようなシリル基含有PVOHは、耐水性および無機物に対するバインダー力が高い。しかし、シリル基含有PVOHには、水溶液を調製する際に水酸化ナトリウム等のアルカリや酸を添加しなければ、十分に溶解しにくいこと、調製された水溶液の粘度安定性が低下すること、無機物を含有する皮膜を形成させた場合、得られる皮膜の耐水性と無機物に対するバインダー力とを同時に満足させることが困難であること等の新たな課題が指摘されている。このようなPVOHをインク受理層に用いてインクジェット記録材を製造した場合、皮膜強度や耐水性が十分では無く、印刷の際に斑(印刷斑)も生じ易くなることがある。
十分な皮膜強度と耐水性を備えかつ印刷斑が少ないインクジェット記録材として、例えば特許文献1では、特定の粘度平均重合度および変性部位の含有率の条件を満たすシリル基変性PVOHが提案されている。インクジェット記録材のインク受理層に当該PVOHを含むコーティング剤を用いる際、コーティング剤に含まれるPVOHのシリル基の変性量を高めても、PVOHの中性領域における水溶性が高いためコーティング剤の取扱性がよく、粘度安定性の低下も抑えられる。したがって、当該インクジェット記録材によれば、含まれるPVOHのシリル基変性量を高めることができ、皮膜強度及び耐水性を高め、印刷斑の発生を低減することができる。
特開2013−240975号公報
しかし、特許文献1で用いられる変性ポリビニルアルコール樹脂は、反応性を高めるためにシリル基の含有率を増やすことと水溶性との間に依然としてトレードオフの関係があり、ポリマー設計の自由度は必ずしも高いとは言い難い。また、特許文献1に記載の変性ポリビニルアルコール樹脂は、PVOH水溶液の調製のために、アルカリや酸の添加が必要となる場合がある。さらにこうしたPVOH水溶液は、低温下での粘度安定性が低く、作業性の点で改善が所望されている。
本発明は、上記問題の解決を課題とするものであり、その目的とするところは、インク受理層の形成にあたり水溶液の調製が容易であり、かつ得られたインク受理層が優れた皮膜強度および耐水性を有するインクジェット記録材のインク受理層を形成するためのコーティング組成物、およびそれを用いたインクジェット記録材を提供することにある。
本発明は、以下の発明を包含する。
[1]側鎖にエチレン性不飽和基を有する変性ポリビニルアルコール樹脂(A)を含有する、インクジェット記録材のインク受理層を形成するためのコーティング組成物。
[2]前記エチレン性不飽和基が以下の式(I)で表される部分構造を含む、[1]に記載のコーティング組成物。
Figure 2021000771
(式(I)中、R、RおよびRは、それぞれ独立して水素原子、メチル基、カルボキシル基、またはカルボキシメチル基であり、Xは酸素原子または−N(R)−であり、Rは水素原子または炭素数1〜3の炭化水素基であり、*は該エチレン性不飽和基の結合手である)
[3]前記変性ポリビニルアルコール樹脂(A)が、以下の式(II)または(III)で表される構造単位を含む、[1]または[2]に記載のコーティング組成物。
Figure 2021000771
(式(II)中、R、RおよびRは、それぞれ独立して水素原子、メチル基、カルボキシル基、またはカルボキシメチル基であり、Xは酸素原子または−N(R)−であり、Rは水素原子または炭素数1〜3の炭化水素基であり、Yは置換基を有していてもよい炭素数1〜10の2価の炭化水素基を表し、*は該変性ポリビニルアルコール樹脂(A)における構造単位の結合手である)
Figure 2021000771
(式(III)中、R、RおよびRは、それぞれ独立して水素原子、メチル基、カルボキシル基、またはカルボキシメチル基であり、*は該変性ポリビニルアルコール樹脂(A)における構造単位の結合手である)
[4]前記変性ポリビニルアルコール樹脂(A)が、式(I)で表される前記部分構造を0.2〜5モル%含有する、[2]または[3]に記載のコーティング組成物。
[5]基材とインク受理層とを含む、インクジェット記録材であって、
該インク受理層が、[1]〜[4]のいずれかに記載のコーティング組成物の硬化物を含有する、インクジェット記録材。
[6]前記コーティング組成物が充填剤粒子(B)を含み、前記充填剤粒子(B)の粒子間に前記変性ポリビニルアルコール樹脂(A)の硬化物が配置されている、[5]に記載のインクジェット記録材。
[7]インクジェット記録材の製造方法であって、
充填剤粒子(B)と[1]〜[4]のいずれかに記載のコーティング組成物とを混合してコーティング剤を得る工程、
基材上に該コーティング剤を塗工する工程、および
該基材上に塗工されたコーティング剤の層を硬化してインク受理層を形成する工程、 を含む、方法。
[8]上記[5]または[6]に記載のインクジェット記録材のインク受理層に、文字情報、図形情報および画像情報からなる群から選択される少なくとも1種の情報をインクにより視覚化した形態で表示する、印刷物。
本発明によれば、インク受理層に優れた耐水性が付与されたインクジェット記録材を提供できる。このインク受理層の形成にあたり、使用するコーティング組成物は水溶液の形態に調製しても優れた粘度安定性を有する。これにより、インクジェット記録材の製造における作業性を向上できる。本発明のインクジェット記録材によれば、印刷斑の発生が低減されており、耐水性に優れた印刷物を得ることができる。
(1)コーティング組成物
(変性ポリビニルアルコール樹脂(A))
本発明のコーティング組成物は、側鎖にエチレン性不飽和基を有する変性ポリビニルアルコール樹脂(A)を含有する。
本明細書中に用いられる用語「コーティング組成物」とは、主要成分である変性ポリビニルアルコール樹脂(A)の硬化を通じて、インクジェット記録材のインク受理層を構成することができる樹脂組成物であって、当該変性ポリビニルアルコール樹脂(A)が硬化する前の状態にある組成物を指していう。例えば、すでに硬化してインク受理層を形成した状態にあるものはこの「コーティング組成物」から除外される。
本発明のコーティング組成物において、変性ポリビニルアルコール樹脂(A)の側鎖に導入されるエチレン性不飽和基の構造は特に限定されず、例えばラジカル重合性を有する不飽和基が挙げられる。特に、このようなエチレン性不飽和基は、以下の式(I)で表される部分構造を含むことが好ましい。
Figure 2021000771
(式(I)中、R、RおよびRは、それぞれ独立して水素原子、メチル基、カルボキシル基、またはカルボキシメチル基であり、Xは酸素原子または−N(R)−であり、Rは水素原子または炭素数1〜3の炭化水素基であり、*はエチレン性不飽和基の結合手である)
上記式(I)において、重合安定性が良好であるとの理由から、RおよびRは水素原子であることが好ましく、Rはメチル基であることが好ましい。また、上記式(I)において、Xが−N(R)−である場合、Rを構成し得る炭素数1〜3の炭化水素基としては、例えば炭素数1〜3の飽和炭化水素基が挙げられる。具体的には、Rは炭素数1〜3のアルキル基であることが好ましい。炭素数1〜3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、およびイソプロピル基が挙げられる。なお、反応性に優れるとの理由から、上記式(I)において、Xは酸素原子であることが好ましい。
さらに、本発明において、変性ポリビニルアルコール樹脂(A)は、以下の式(II)または(III)で表される構造単位を含むことが好ましい。
Figure 2021000771
(式(II)中、R、RおよびRは、それぞれ独立して水素原子、メチル基、カルボキシル基、またはカルボキシメチル基であり、Xは酸素原子または−N(R)−であり、Rは水素原子または炭素数1〜3の炭化水素基であり、Yは置換基を有していてもよい炭素数1〜10の2価の炭化水素基を表し、*は変性ポリビニルアルコール樹脂(A)における構造単位の結合手である)
Figure 2021000771
(式(III)中、R、RおよびRは、それぞれ独立して水素原子、メチル基、カルボキシル基、またはカルボキシメチル基であり、*は変性ポリビニルアルコール樹脂(A)における構造単位の結合手である)
上記式(II)および(III)において、重合安定性が良好であるとの理由から、RおよびRは水素原子であることが好ましく、Rはメチル基であることが好ましい。
また、上記式(II)において、Xが−N(R)−である場合、Rを構成し得る炭素数1〜3の炭化水素基としては、例えば炭素数1〜3の飽和炭化水素基が挙げられる。具体的には、Rは炭素数1〜3のアルキル基であることが好ましい。炭素数1〜3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、およびイソプロピル基が挙げられる。なお、反応性に優れるとの理由から、上記式(II)において、Xは酸素原子であることが好ましい。
さらに、上記式(II)において、Yを構成し得る炭素数1〜10の2価の炭化水素基としては、炭素数1〜10のアルキレン基および炭素数1〜10のシクロアルキレン基が挙げられる。炭素数1〜10のアルキレン基としては、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基等が挙げられる。炭素数1〜10のシクロアルキレン基としては、例えばシクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基等が挙げられる。これらのアルキレン基およびシクロアルキレン基は、メチル基、エチル基等のアルキル基を分岐構造として有していてもよい。またYを構成し得る炭素数1〜10の2価の炭化水素基は、所定の置換基で置換されていてもよい。このような置換基としては、例えば水酸基;アミノ基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基;アセチル基、プロピオニル基等のアシル基等が挙げられ、さらに当該置換基の構造中に、カルボニル結合、エーテル結合、エステル結合、アミド結合等を含んでいてもよい。Yはまた、変性ポリビニルアルコール樹脂(A)の主鎖の一部と一緒になってアセタール構造を形成していてもよい。
本発明において、変性ポリにビルアルコール樹脂(A)は、上記式(II)または(III)で表される構造単位を含む変性ポリビニルアルコール樹脂(A)のうち、特に式(III)で表される構造単位を有する変性ポリビニルアルコール樹脂(A)であることが好ましい。
なお、上記式(I)〜(III)のいずれかで表される構造単位のより具体的な例としては、以下の示される構造単位のものが挙げられる:
Figure 2021000771
(式中、*は変性ポリビニルアルコール樹脂(A)における構造単位の結合手である)。
本発明において、変性ポリビニルアルコール樹脂(A)の全構造単位に対する、エチレン性不飽和基を有する構造単位(例えば式(I)で表される部分構造を含む構造単位)の含有量の下限は特に限定されないが、変性ポリビニルアルコール樹脂(A)の全構造単位を100モル%として、好ましくは0.05モル%以上であり、より好ましくは0.1モル%以上であり、さらに好ましくは0.2モル%以上であり、特に好ましくは0.5モル%以上である。また、エチレン性不飽和基を有する構造単位(例えば式(I)で表される部分構造を含む構造単位)の含有量の上限は特に限定されないが、変性ポリビニルアルコール樹脂(A)の全構造単位を100モル%として、好ましくは8モル%以下であり、さらに好ましくは5モル%以下であり、特に好ましくは3モル%以下である。上記エチレン性不飽和基を有する構造単位の含有量がこのような下限および上限から構成される範囲内にあることにより、本発明のコーティング組成物は、高エネルギー線や電磁波の照射、または加熱を通じて、変性ポリビニルアルコール樹脂(A)が有する側鎖のエチレン性不飽和基同士が反応し易くなり、適切な反応時間で変性ポリビニルアルコール樹脂(A)を硬化させることができる。さらに、変性ポリビニルアルコール樹脂(A)は、その全構造単位内に2種以上のエチレン性不飽和基を有する構造単位を有していてもよい。例えば、2種以上のエチレン性不飽和基を有する場合、これら2種以上のエチレン性不飽和基を有する構造単位の含有量が上記下限および上限から構成される範囲内にあることが好ましい。なお、本明細書における用語「構造単位」は、重合体を構成する繰り返し単位を指していう。例えば、後述の「ビニルアルコール単位」および「ビニルエステル単位」もまた「構造単位」の例として包含される。
本発明において、変性ポリビニルアルコール樹脂(A)の全構造単位に対する、ビニルアルコール単位の下限は特に限定されないが、変性ポリビニルアルコール樹脂(A)の全構造単位を100モル%として、好ましくは60モル%以上であり、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上であり、特に好ましくは85モル%以上である。また、上記ビニルアルコール単位の含有量の上限は特に限定されないが、変性ポリビニルアルコール樹脂(A)の全構造単位を100モル%として、好ましくは99.95モル%以下であり、より好ましくは99.9モル%以下であり、さらに好ましくは99.5モル%以下であり、特に好ましくは99.0モル%である。ビニルアルコール単位の含有量がこのような下限および上限から構成される範囲内にあることにより、本発明のコーティング組成物は、高エネルギー線や電磁波の照射、または加熱を通じて、変性ポリビニルアルコール樹脂(A)が硬化した後に得られる硬化物に対して適度な親水性、高度な耐久性を付与でき、さらにこれと後述の水とを混合して調製され得る塗工液に対して高度な粘度安定性を付与できる。
ビニルアルコール単位は、加水分解や加アルコール分解などによってビニルエステル単位から誘導できる。そのため、ビニルエステル単位からビニルアルコール単位に変換する際の条件等によっては、変性ポリビニルアルコール樹脂(A)中にビニルエステル単位が残存することがある。よって、変性ポリビニルアルコール樹脂(A)は、上記エチレン性不飽和基を有する構造単位以外のビニルエステル単位を含んでいてもよい。
上記ビニルエステル単位のビニルエステルの例としては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、ラウリル酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、オレイン酸ビニル、安息香酸ビニルなどを挙げられ、これらの中でも酢酸ビニルが工業的観点から好ましい。
変性ポリビニルアルコール樹脂(A)は、本発明の効果が得られる限り、エチレン性不飽和基を有する構造単位、ビニルアルコール単位およびビニルエステル単位以外の他の構造単位をさらに含んでいてもよい。当該他の構造単位は、例えば、ビニルエステルと共重合可能な他の単量体に由来する構造単位である。他の単量体としては、エチレン性不飽和単量体が挙げられる。他の単量体に由来する構造単位は、エチレン性不飽和基を有する構造単位に変換可能な構造単位であってもよい。エチレン性不飽和単量体としては、例えばエチレン、プロピレン、n−ブテン、イソブチレン、1−ヘキセンなどのα−オレフィン類;アクリル酸およびその塩;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクタデシルなどのアクリル酸エステル類;メタクリル酸およびその塩;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸オクタデシルなどのメタクリル酸エステル類;アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミドプロパンスルホン酸およびその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミンおよびその塩(例えば4級塩);メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、メタクリルアミドプロパンスルホン酸およびその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミンおよびその塩(例えば4級塩);メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル、2,3−ジアセトキシ−1−ビニルオキシプロパンなどのビニルエーテル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアン化ビニル類;塩化ビニル、フッ化ビニルなどのハロゲン化ビニル類;塩化ビニリデン、フッ化ビニリデンなどのハロゲン化ビニリデン類;酢酸アリル、2,3−ジアセトキシ−1−アリルオキシプロパン、塩化アリルなどのアリル化合物;マレイン酸、イタコン酸、フマル酸などの不飽和ジカルボン酸およびその塩またはそのエステル;ビニルトリメトキシシランなどのビニルシリル化合物;酢酸イソプロペニル;ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
変性ポリビニルアルコール樹脂(A)におけるエチレン性不飽和基を有する構造単位、ビニルアルコール単位、およびその他の任意の構造単位の配列順序には特に制限はなく、変性ポリビニルアルコール樹脂(A)は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体などのいずれであってもよい。
変性ポリビニルアルコール樹脂(A)の分子量は特に限定されないが、数平均分子量(Mn)が5000〜200000であることが好ましい。Mnが5000未満であると、そのような変性ポリビニルアルコール樹脂を硬化して得られる硬化物に十分な耐久性を付与できない場合がある。Mnは、より好ましくは7000以上、さらに好ましくは8000以上、特に好ましくは9000以上である、一方、Mnが200000を越えると、それを用いて調製され得る水溶液に十分な粘度安定性を付与できない場合がある。Mnは、より好ましくは180000以下、さらに好ましくは150000以下、特に好ましくは100000以下である。Mnは、例えばゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、標準物質にポリメチルメタクリレートを用い、HFIP系カラムで測定した値として算出することができる。
本発明のコーティング組成物における変性ポリビニルアルコール樹脂(A)のJIS K6726(1994年)に準拠して測定した粘度平均重合度は特に限定されないが、好ましくは100〜5,000であり、より好ましくは200〜4,000である。粘度平均重合度が100を下回ると、後述のインクジェット記録材を得るために、基材上に、変性ポリビニルアルコール樹脂(A)を用いてインク受理層を形成する際に、当該インク受理層の機械的強度が低下する場合がある。粘度平均重合度が5,000を上回ると、そのような変性ポリビニルアルコール樹脂(A)の製造にあたりより高度な技術が必要となるおそれがあり、工業的生産性を保持することが困難となる場合がある。
本発明のコーティング組成物における変性ポリビニルアルコール樹脂(A)のけん化度は特に限定されないが、好ましくは80〜99.9モル%、より好ましくは90〜99モル%である。変性ポリビニルアルコール樹脂(A)のけん化度が80モル%を下回ると、そのような変性ポリビニルアルコール樹脂を硬化して得られる硬化物に十分な耐久性を付与できない場合がある。変性ポリビニルアルコール樹脂(A)のけん化度が99モル%を上回ると、それを用いて調製され得る水溶液に十分な粘度安定性を付与できない場合がある。
変性ポリビニルアルコール樹脂(A)の製造方法は特に限定されない。例えば、ポリビニルアルコールに対して、構造内にエチレン性不飽和基を有する化合物(例えばカルボン酸を有する化合物)を反応させることにより、上記式(I)で表される部分構造を側鎖に有する変性ポリビニルアルコール樹脂(A)を製造することができる。当該反応の具体的な例としては、ポリビニルアルコールとアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルとのエステル交換反応;ポリビニルアルコールとアクリル酸、メタクリル酸、4−ペンテン酸、または10−ウンデセン酸との反応;ポリビニルアルコールと無水アクリル酸または無水メタクリル酸との反応;ポリビニルアルコールと塩化アクリロイルまたは塩化メタクリロイルとの反応;が挙げられる。
(架橋剤)
本発明のコーティング組成物は、当該分野において公知の架橋剤を含有していてもよい。架橋剤としては、好ましくは1分子内に2つまたはそれ以上のチオール基を有する化合物、1分子内に2つまたはそれ以上のアミノ基を有する化合物等が挙げられる。1分子内に2つまたはそれ以上のチオール基を有する化合物としては、例えば1,2−エタンジチオール、1,3−プロパンジチオール、1,4−ブタンジチオール、2,3−ブタンジチオール、1,5−ペンタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、1,10−デカンジチオール、2,3−ジヒドロキシ−1,4−ブタンジチオール、エチレンビス(チオグリコラート)、エチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオナート)、1,4−ブタンジオールビス(チオグリコラート)、2,2’−チオジエタンチオール、3,6−ジオキサ−1,8−オクタンジチオール(DODT)、3,7−ジチア−1,9−ノナンジチオール、1,4−ベンゼンジチオール、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオナート)、トリメチロールプロパントリス(チオグリコラート)、ペンタエリトリトールテトラキス(メルカプトアセタート)、ジペンタエリトリトールヘキサキス(3−メルカプトプロピオナート)、チオコール(東レ・ファインケミカル(株)製)等が挙げられる。1分子内に2つまたはそれ以上のアミノ基を有する化合物としては、例えばエチレンジアミン、1,2−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノプロパン、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、1,2−ジアミノ−2−メチルプロパン、2−メチル−1,3−プロパンジアミン、1,2−ジアミノブタン、1,4−ジアミノブタン、1,3−ジアミノペンタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、2−メチル−1,5−ジアミノペンタン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1−メチル−1,8−ジアミノオクタン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカン、ビス(3−アミノプロピル)エーテル、1,2−ビス(3−アミノプロポキシ)エタン、1,3−ビス(3−アミノプロポキシ)−2,2−ジメチルプロパン、2,2’−オキシビス(エチルアミン)、1,3−ジアミノ−2−プロパノール、α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリエチレングリコールエーテル、1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、4−(2−アミノエチル)シクロヘキシルアミン、イソホロンジアミン、1,4−フェニレンジアミン等が挙げられる。
架橋剤の含有量は、特に限定されないが、例えば、変性ポリビニルアルコール樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは0.1質量部〜20質量部、より好ましくは0.5質量部〜10質量部である。架橋剤の含有量が0.1質量部未満であると、変性ポリビニルアルコール樹脂(A)による架橋構造が十分に形成されず、得られる硬化物について満足すべき耐水化が達成されないおそれがある。架橋剤の含有量が20質量部を上回ると、得られる硬化物内の架橋がそれ以上進まず、むしろ生産性を欠くおそれがある。
(光重合開始剤)
あるいは、本発明のコーティング組成物は、上記架橋剤の代わりにまたは上記架橋剤に加えて、当該分野において公知の光重合開始剤を含有していてもよい。光重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば2−ヒドロキシ−4'−(2−ヒドロキシエトキシ)−2−メチルプロピオフェノンなどのプロピオフェノン系化合物;4’−フェノキシ−2,2−ジクロロアセトフェノン、4’−t−ブチル−2,2,2−トリクロロアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4’−ドデシルフェニル)−1−プロパノン、1−[4’−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−4’−メチルチオ−2−モルホリノプロピオフェノンなどのアセトフェノン系化合物;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、ベンジルジメチルケタールなどのベンゾイン系化合物;ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、2,2’−ジクロロベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルスルフィド、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、ミヒラーケトン[4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン]、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系化合物;2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントンなどのチオキサントン系化合物;9,10−フェナントレンキノン、カンファーキノン(2,3−ボルナンジオン)、2−エチルアントラキノンなどのキノン系化合物;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド;ベンジルなどが挙げられる。
光重合開始剤は、特に限定されないが、例えば、変性ポリビニルアルコール樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは0.1質量部〜10質量部、より好ましくは0.2質量部〜5質量部である。光重合開始剤の含有量が0.1質量部未満であると、例えば変性ポリビニルアルコール樹脂(A)にUV光が適切に照射されたとしても、当該樹脂(A)による架橋構造が十分に形成されず、得られる硬化物について満足すべき耐水化が達成されないおそれがある。光重合開始剤の含有量が10質量部を上回ると、得られる硬化物内の架橋がそれ以上進まず、むしろ生産性を欠くおそれがある。
(他の添加剤)
本発明のコーティング組成物はまた、本発明の効果を阻害しない範囲において、上記変性ポリビニルアルコール樹脂(A)、上記架橋剤および上記光重合開始剤以外に他の添加剤を含有していてもよい。他の添加剤としては、例えば水溶性樹脂、水分散性樹脂、顔料、染料、充填材、加工安定剤、耐候性安定剤、着色剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、可塑剤、他の熱可塑性樹脂、潤滑剤、香料、消泡剤、消臭剤、増量剤、剥離剤、離型剤、補強剤、防かび剤、防腐剤、ラジカル発生剤および結晶化速度遅延剤、情報記録関連薬剤ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。例えば、水溶性樹脂としては、アルブミン、ゼラチン、カゼイン、澱粉、カチオン化澱粉、アラビアゴム、ポリアミド樹脂、メラミン樹脂、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリ(メタ)アクリル酸ナトリウム、アニオン変性PVA、アルギン酸ナトリウム、水溶性ポリエステル、ならびにセルロース誘導体(例えばメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロース(CMC))等が挙げられる。水分散体としては、SBR、NBR、エチレン−酢酸ビニル共重合体等の酢酸ビニル系樹脂、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂、塩化ビニル系樹脂等が挙げられる。情報記録関連薬剤としては、カチオン性樹脂が挙げられる。情報記録関連薬剤の含有量は、特に限定されないが、例えば、変性ポリビニルアルコール樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは1質量部〜120質量部、より好ましくは10質量部〜80質量部である。
(希釈剤)
本発明のコーティング組成物はまた、上記変性ポリビニルアルコール樹脂(A)が希釈剤で希釈された形態を有していてもよい。希釈剤の例としては、水;メタノール、エタノールなどのアルコール;アセトンなどのケトン;ジエチルエーテル等のエーテル;ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。希釈剤の使用量は特に限定されず、適切な量が当業者によって適宜選択され得る。ここで、例えば、希釈剤として水が使用される場合、本発明のコーティング組成物は、上記変性ポリビニルアルコール樹脂(A)の水溶液の形態を有していてもよい。あるいは、当該水は、後述のように本発明のコーティング組成物から所定のインクジェット記録材を作製する際に、本発明のコーティング組成物を溶解させて水溶液の形態に調製するための溶媒としても使用できる。
(充填剤粒子(B))
さらに、本発明のコーティング組成物は、充填剤粒子(B)を含有していることが好ましい。本明細書中に用いられる用語「充填剤粒子」とは、無機材料で構成されておりかつ個々が独立した形態で存在する物質の集合体を指していい、例えば、球状、真球状、針状、繊維状、板状、または無定形のいずれの形状を有していてもよく、一般に無機フィラーとして使用可能な材料が包含される。この充填剤粒子(B)には、例えば平均粒子径10nm以上100nm未満のナノフィラー、平均粒子径100nm以上10μm未満のミクロフィラー、および平均粒子径10μm以上100μm以下のマクロフィラーが包含される。
このような充填剤粒子(B)の具体的な例としては、必ずしも限定されないが、例えば、沈降シリカ、ゲル状シリカ、気相法シリカ、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ、水酸化アルミニウム、擬ベーマイト、クレー、タルク、ケイソウ土、ゼオライト、炭酸カルシウム、アルミナ、酸化亜鉛、サチンホワイト、有機顔料等を挙げることができる。本発明のコーティング組成物に含まれる上記変性ポリビニルアルコール樹脂(A)と充填剤粒子(B)との比率については、特に制限はないが、例えば、コーティング組成物が硬化前の状態である場合、変性ポリビニルアルコール樹脂(A)と充填剤粒子(B)との質量比(Aの質量/Bの質量)が3/100以上100/100以下の範囲内であることが好ましく、5/100以上80/100以下の範囲内であることがより好ましく、6/100以上30/100以下の範囲内であることがさらに好ましく、7/100以上20/100以下の範囲内であることが特に好ましい。本発明では、充填剤粒子(B)に対して変性ポリビニルアルコール樹脂(A)の使用量が少ないものであったとしても、例えばコーティング組成物を硬化して得られるインクジェット記録材内のインク受理層の皮膜強度および耐水性は良好であり、印刷斑の発生も抑制できる。なお、上記変性ポリビニルアルコール樹脂(A)と充填剤粒子(B)との比率について上記範囲外となる場合は、そのようなコーティング組成物を用いて得られるインクジェット記録材内のインク受理層には所望でない印刷斑が発生し易くなることがある。
本発明のコーティング組成物では、高エネルギー線や電磁波の照射、または加熱を通じて、構成成分である変性ポリビニルアルコール樹脂(A)の架橋を促進させ、変性ポリビニルアルコール樹脂(A)の硬化物(架橋体)を得ることができる。このようにして得られる変性ポリビニルアルコール樹脂(A)の硬化物がインクジェット記録材のインク受理層を構成する。
(2)インクジェット記録材
本発明のインクジェット記録材は基材とインク受理層とを含む。
(基材)
基材は、少なくとも1つの平面を有し、かつそれ自体が無色または有色のいずれであってもよい。このような基材の例としては、インクジェット用のインクを吸収する性質を有する吸収性基材、当該インクを吸収することができない非吸収性基材、およびこれらの積層体が挙げられる。吸収性基材としては、例えば、印刷・情報用紙(例えば75%以上の白色度を有する上級印刷紙、55%以上75%未満の白色度を有する中級印刷紙、55%未満の白色度を有する下級印刷紙、インディアペーパー、中質ベース紙、アート紙、コート紙、キャストコート紙、エンボス紙、特殊印刷用紙、クラフト紙、未ざらし包装紙、さらし包装紙、建築用原紙、積層板原紙、接着紙原紙、コンデンサペーパー、プレスボード、段ボール原紙、マニラボール、白ボール、黄板紙、チップボール、色板紙、防水原紙、石膏ボード原紙、紙管原紙、ワンプなどの紙製基材;植物繊維(例えば綿、麻、リンネルなど)、動物性繊維(例えばウール、カシミヤ、シルクなど)、および/または合成繊維(例えばナイロン、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ポリオレフィン、ポリウレタンなど)の織布、網布、不織布から構成される布製基材;ならびにそれらの組み合わせ;が挙げられる。非吸収性基材としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ジアセテート樹脂、トリアセテート樹脂、セロファン、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどの樹脂から構成される樹脂製フィルムまたはシート;上記紙製基材を、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂でコートした被覆紙;金属板;ブナ、キリ、ケヤキ、カエデ、クワ、クルミ、カツラ、クス、ナラ、ニレ、ムクノキ、エゾマツ、カラマツ、スギ、ヒバ、ヒノキ、イチョウなどの広葉樹または針葉樹、あるいはこれらの合板材から構成される板またはシート;ならびにそれらの組み合わせ;が挙げられる。本発明のコーティング組成物との密着性に優れ、かつ耐水性等の所望の性質に優れているとの理由から、基材としては、紙製基材、樹脂製シートまたはフィルムが好ましい。
基材は、インク受理層との密着性をさらに向上させるための目的で当業者に公知の方法を用いて、インク受理層を設ける面について、コロナ放電処理、火炎処理などの表面処理が施されていてもよい。
基材の厚みは、後述のインク受理層が設けられた段階で、例えば家庭用または業務用のインクジェットプリンター内を通過可能な厚みを有するものであれば、特に限定されない。このような基材の厚みは、例えば50〜300μmである。
(インク受理層)
本発明のインクジェット記録材において、インク受理層は上記本発明のコーティング組成物の硬化物を含有し、例えば上記基材の一方の面上に設けられている。
インク受理層は、例えば基材の全体において略均一な厚みで設けられている。インク受理層の膜厚は、好ましくは0.1〜50μm、より好ましくは0.2〜20μmである。インク受理層の膜厚が0.1μmを下回ると、インクジェットプリンターから吐出されるインクを当該インク受理層で十分に受容することができず、印刷面やインクジェットプリンターの汚れを引き起こすことがある。インク受理層の膜厚が50μmを上回ると、塗布液が高粘度となり、高速塗工が困難になる等の作業性の低下を引き起こすことある。
本発明のインクジェット記録材では、上記インク受理層中(すなわち、インク受理層を構成するコーティング組成物の硬化物の中)に上記充填剤粒子(B)が含有されていることが好ましい。インク受理層に充填剤粒子(B)が含有されている場合、当該充填剤粒子(B)の粒子の間には上記コーティング組成物に含まれる変性ポリビニルアルコール樹脂の硬化物が配置されている。
本発明のインクジェット記録材はまた、基材とインク受理層との間に、接着性を高めるための他の層(例えば当業者に公知の成分で構成される接着層)が設けられていてもよい。他の層の膜厚は特に限定されず、当業者によって適切な厚みが選択され得る。
(3)インクジェット記録材の製造方法
本発明のインクジェット記録材は、例えば以下のようにして作製できる。
まず、充填剤粒子(B)と、本発明のコーティング組成物とが混合されコーティング剤が作製される。
このコーティング剤では、内部に含まれる変性ポリビニルアルコール樹脂(A)は未硬化の状態にある。充填剤粒子(B)と、本発明のコーティング組成物との混合には公知の混合手段が使用できる。
ここで、使用するコーティング組成物に予め水が含まれていない場合は、水を添加してコーティング組成物を溶解させることにより均一な水溶液でなるコーティング剤を調製することが好ましい。コーティング組成物が予め水溶液の形態に調製されている場合は、必要に応じて水が追加して濃度を調節してコーティング剤が作製されてもよい。さらに、コーティング組成物に架橋剤または光重合開始剤が含まれていない場合は、この水溶液を調製する段階でこれらのうちのいずれかを一緒に添加してもよい。
コーティング剤(コーティング組成物の水溶液)を得るために使用される水の含有量は特に限定されないが、例えば変性ポリビニルアルコール樹脂(A)100質量部に対し、好ましくは250〜9900質量部、より好ましくは400〜3000質量部である。コーティング剤がこのような範囲内の水を含有することにより、当該水溶液に対して適切な粘度安定性を提供でき、かつポリビニルアルコール樹脂(A)を架橋して得られる硬化物は充填剤粒子(B)に対して良好なバインダー性能を付与できる。
次いで、基材上にコーティング剤が塗工される。
基材上のコーティング剤の付与には、例えばスプレー塗布、ロール塗布、スピンコーティング、エアーナイフコーティング、ブレードコーティング、ハケ塗り、浸漬等の当該分野において公知の方法を用いることができる。上記コーティング剤の塗工量としては、特に限定されないが、固形分換算で、3g/m以上30g/m以下が好ましく、5g/m以上20g/m以下がより好ましい。このような範囲内の塗工量を選択することにより、耐水性および皮膜強度に優れるインク受理層を基材上に形成することができる。なお、コーティング剤の付与後、必要に応じて基材上のコーティング剤が付与された層に任意の乾燥が施されてもよい。
その後、基材上に塗工されたコーティング剤の層を硬化してインク受理層が形成される。
この硬化には、例えば塗工層の未硬化バインダー(変性ポリビニルアルコール樹脂(A))に対して高エネルギーまたは電磁波が照射されるか、あるいは当該変性ポリビニルアルコール樹脂(A)が所定の温度で加熱されることにより行われる。高エネルギー線としては、例えば電子線などが挙げられる。電磁波としては、マイクロ波、紫外線(UV光)、可視光、赤外線などが挙げられる。加熱に供される際の温度としては、例えば50〜200℃が挙げられる。中でも、複雑な設備等が必須とすることなく、塗工層に含まれる変性ポリビニルアルコール樹脂(A)をより均質な状態で硬化することができることから、UV光を用いることが好ましい。UV光については、紫外線ランプなどの光源から発せられるものが照射されるだけでなく、屋外に曝すことにより太陽光を通じて照射されてもよい。
これにより、基材上に塗工されたコーティング剤の層内の変性ポリビニルアルコール樹脂(A)の架橋が促され、変性ポリビニルアルコール樹脂(A)の硬化物を有するインク受理層が形成される。
このようにして本発明のインクジェット記録材を製造することできる。
(4)印刷物
上記の本発明のインクジェット記録材では、インクジェットプリンターによる印刷の際に印刷斑の発生が低減され、耐水性にも優れた印刷物を得ることができる。具体的には、インクジェット記録材のインク受理層に、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、その他電子機器からの信号に基づいて得られた文字情報、図形情報および画像情報の少なくとも1つの情報が、インクによって視覚化するように印刷される。このようにして印刷物が形成される。
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「%」および「部」は特に断りのない限り、それぞれ「質量%」および「質量部」を表す。
(変性ポリビニルアルコール樹脂における変性率の算出)
日本電子株式会社製核磁気共鳴装置「LAMBDA 500」を用い、実施例1〜6および比較例2で得られた変性ポリビニルアルコール樹脂のH−NMRを、重水素化ジメチルスルホキシド中で室温にて測定した。ビニルアルコール単位の主鎖メチンプロトン由来のピーク(3.1〜4.0ppm)からビニルアルコール単位の含有量を算出した。実施例1〜3および6ではさらに、オレフィンプロトン由来のピーク(5.0〜7.5ppm)の積分値から側鎖に導入された変性部位の構造単位の含有量を算出した。実施例5ではさらに、1,2−ジオールの一級アルコールに隣接するメチレン由来のピーク(3.3ppm)の積分値から側鎖に導入された変性部位の構造単位の含有量を算出した。
(数平均分子量(Mn)の測定)
東ソー株式会社製サイズ排除高速液体クロマトグラフィー装置「HLC−8320GPC」を用い、実施例1〜6および比較例1〜2で得られた変性ポリビニルアルコール樹脂または未変性ポリビニルアルコール樹脂の数平均分子量(Mn)を以下の測定条件で測定した。なお、表1に記載する数値は、測定値の百の位の値を四捨五入した値である。
カラム:東ソー株式会社製HFIP系カラム「GMHHR−H(S)」2本直列接続
標準試料:ポリメチルメタクリレート
溶媒および移動相:トリフルオロ酢酸ナトリウム−HFIP溶液(濃度20mM)
流量:0.2mL/分
温度:40℃
試料溶液濃度:0.1重量%(開口径0.45μmフィルターでろ過)
注入量:10μL
検出器:RI
(コーティング剤の粘度安定性)
実施例7〜16または比較例3〜4で得られたコーティング剤を、試験開始日から20℃で1日間放置した後、エム・テクニック株式会社製精密分散乳化機「クレアミックス」を用いて、回転数6400rpmで10分間、ジェット流による剪断をかけながら再混合した後、再び20℃で1日間放置した。その後、放置1日ごとに上記再混合をして1日間放置する操作を繰り返し、試験開始日から7日後の粘度(η7日)と20℃の初期粘度(η初期)との比(増粘倍率=η7日/η初期)を求め以下の基準で評価した。なお、コーティング剤は、放置期間中はアルミホイルで容器全体を覆い遮光した。粘度の測定は、JIS K 6726(1994年)の回転粘度計法に準じてB型粘度計(回転数12rpm)を用い20℃で行った。
A:η7日/η初期が1以上5未満であった。
B:η7日/η初期が5以上10未満であった。
C:η7日/η初期が10以上または、コーティング剤が流動性を失いゲル化した。
(インク受理層の皮膜強度)
実施例7〜16または比較例3〜4で得られたインクジェット記録紙について、IGT印刷適性試験機(熊谷理機工業株式会社製)を用い、JIS−P8129に準拠して皮膜強度の測定を行った。すなわち、印圧50kg/cmにて測定を行い、インクジェット記録紙の表面の紙むけが起こった時点の印刷速度(cm/秒)を以って皮膜強度とし、以下の基準にしたがってインク受理層の皮膜強度を評価した。なお、IGT印刷適性試験機を用いて測定を行うにあたり、IGTピックオイルM(DIC株式会社製)を用い、スプリング駆動Bの機構を採用した。
A:260cm/秒以上
B:220cm/秒以上260cm/秒未満
C:180cm/秒以上220cm/秒未満
D:180cm/秒未満
(印刷斑)
実施例7〜16または比較例3〜4で得られたインクジェット記録紙に、インクジェットプリンター(セイコーエプソン株式会社製:PM−3300C)を用いてブラックインクのハーフトーンベタ印刷を行い、得られた印刷物における印刷斑を以下の基準にしたがって目視判定した。
A:印刷斑が全く観察されず、良好な画像が得られた。
B:印刷斑がごく僅かに観察されたが、画像に大きな影響はなかった。
C:印刷斑が部分的に発生し、画像の品質が損なわれた。
D:印刷斑が全体に発生し、著しく画像の品質が損なわれた。
(耐水性)
実施例7〜16または比較例3〜4で得られたインクジェット記録紙に、インクジェットプリンター(セイコーエプソン株式会社製:PM−3300C)を用いてブラックインクのベタ印刷を行い、印刷物を得た。該ベタ印刷の境界部分にシリンジを用いて水を1mL滴下し、24時間放置した後、印刷の滲みの程度を以下の基準にしたがって目視判定した。
S:滲みが全く観察されず、擦っても滲まない。
A:滲みは全く観察されないが、擦ると少し滲む。
B:滲みがごく僅かに観察された。
C:滲みが部分的に観察された。
D:滲みが全体的に観察された。
(実施例1:コーティング組成物(E1)の作製)
撹拌機、還流管および添加口を備えた反応器に、ジメチルスルホキシド450質量部、メチルメタクリレート450質量部を仕込み、室温で撹拌しながらポリビニルアルコール樹脂(株式会社クラレ製PVA28−98、けん化度98.5モル%)100質量部、酢酸ナトリウム1.8質量部、フェノチアジン2質量部を加え80℃で撹拌しスラリー溶液を得た。1時間後に100℃に昇温して反応を開始し、3.5時間反応させた後室温まで冷却し、ポリエチレンテレフタレートメッシュ(目開き56μm)で濾別した。濾別した未乾燥の樹脂10部とメタノール50部をスクリュー管に入れ、撹拌機で10分間撹拌して洗浄した。使用したメタノールを新たなものに入れ替えて同様の作業を繰り返した後、ろ過し、40℃かつ1.3Paの真空乾燥機で終夜乾燥させて、側鎖にメタクリロイル基を有する変性ポリビニルアルコール樹脂「PVOH−A」を得た。得られた「PVOH−A」の評価結果を表1に示す。この「PVOH−A」をコーティング組成物(E1)として後述の実施例に使用した。
(実施例2:コーティング組成物(E2)の作製)
実施例1と同様にてスラリー溶液を調製し、1時間後に100℃に昇温して反応を開始し、7時間反応させた後室温まで冷却したこと以外は実施例1と同様にして、側鎖にメタクリロイル基を有する変性ポリビニルアルコール樹脂[PVOH−B]を得た。得られた「PVOH−B」の評価結果を表1に示す。この「PVOH−B」をコーティング組成物(E2)として後述の実施例に使用した。
(実施例3:コーティング組成物(E3)の作製)
ポリビニルアルコール樹脂(株式会社クラレ製PVA60−98、けん化度98.5モル%)100質量部を用いたこと以外は実施例1と同様にしてスラリー溶液を調製した。次いで、スラリー溶液を調製して1時間後に100℃に昇温して反応を開始し、1.5時間反応させた後室温まで冷却したこと以外は実施例1と同様にして、側鎖にメタクリロイル基を有する変性ポリビニルアルコール樹脂「PVOH−C」を得た。得られた「PVOH−C」の評価結果を表1に示す。この「PVOH−C」をコーティング組成物(E3)として後述の実施例に使用した。
(実施例4:コーティング組成物(E4)の作製)
ポリビニルアルコール樹脂(株式会社クラレ製PVA5−98、けん化度98.5モル%)100質量部を用いたこと以外は実施例1と同様にしてスラリー溶液を調製した。次いで、スラリー溶液を調製して1時間後に100℃に昇温して反応を開始し、7時間反応させた後室温まで冷却したこと以外は実施例1と同様にして、側鎖にメタクリロイル基を有する変性ポリビニルアルコール樹脂「PVOH−D」を得た。得られた「PVOH−D」の評価結果を表1に示す。この「PVOH−D」をコーティング組成物(E4)として後述の実施例に使用した。
(実施例5:コーティング組成物(E5)の作製)
メチルメタクリレートの代わりにメチルアクリレート450質量部を用いかつポリビニルアルコール樹脂(株式会社クラレ製PVA28−98、けん化度98.5モル%)100質量部を用いたこと以外は実施例1と同様にしてスラリー溶液を調製した。次いで、スラリー溶液を調製して1時間後に80℃に昇温して反応を開始し、2時間反応させた後室温まで冷却したこと以外は実施例1と同様にして、側鎖にアクリロイル基を有する変性ポリビニルアルコール樹脂「PVOH−E」を得た。得られた「PVOH−E」の評価結果を表1に示す。この「PVOH−E」をコーティング組成物(E5)として後述の実施例に使用した。
(実施例6:コーティング組成物(E6)の作製)
メチルメタクリレートの代わりに3,3−ジメチル−4−ペンテン酸メチル450質量部を用いかつポリビニルアルコール樹脂(株式会社クラレ製PVA28−98、けん化度98.5モル%)100質量部を用いたこと以外は実施例1と同様にしてスラリー溶液を調製した。次いで、スラリー溶液を調製して1時間後に100℃に昇温して反応を開始し、5時間反応させた後室温まで冷却したこと以外は実施例1と同様にして、側鎖に3,3−ジメチル−4−ペンテン酸由来のアシル基を有する変性ポリビニルアルコール樹脂「PVOH−F」を得た。得られた「PVOH−F」の評価結果を表1に示す。この「PVOH−F」をコーティング組成物(E6)として後述の実施例に使用した。
(比較例1:コーティング組成物(C1)の作製)
変性されていないポリビニルアルコール樹脂として、ポリビニルアルコール樹脂(株式会社クラレ製PVA28−98、けん化度98.5モル%)をそのまま「PVOH−G」として用いた。この「PVOH−G」をコーティング組成物(C1)として後述の比較例に使用した。
(比較例2:コーティング組成物(C2)の作製)
撹拌機、還流冷却管、アルゴン導入管、および開始剤の添加口を備えた反応器に、酢酸ビニル640質量部、メタノール136.5質量部、3−メタクリルアミドプロピルトリメトキシシラン4.9質量部を仕込み、アルゴンガスのバブリングをしながら30分間系内をアルゴン置換した。また、ディレー溶液として3−メタクリルアミドプロピルトリメトキシシランをメタノールに溶解して濃度40%としたコモノマー溶液を調製し、アルゴンガスのバブリングによりアルゴン置換した。反応器の昇温を開始し、内温が60℃となった時点で、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.34質量部を添加して重合を開始した。ディレー溶液を滴下して重合溶液中のモノマー組成(酢酸ビニルと3−メタクリルアミドプロピルトリメトキシシランとの比率)が一定となるようにモニターしながら、60℃で150分重合した後、冷却して重合を停止した。重合を停止するまで加えたコモノマー溶液(逐次添加液)の総量は43.5質量部であった。次いで、30℃にて減圧下でメタノールを時々添加しながら未反応のモノマーの除去を行い、ポリ酢酸ビニルのメタノール溶液(濃度25.6%)を得た。その後、このメタノール溶液75.5質量部にメタノール21.4質量部を加え、さらに3.1質量部の水酸化ナトリウムメタノール溶液(濃度10%)を添加して、40℃でけん化を行った。反応中に生成したゲル状物を粉砕機にて粉砕し、粉砕物を反応器に戻して40℃のまま計60分間放置してけん化を進行させた後、酢酸メチル100質量部と水10質量部を加えて残存するアルカリを中和した。フェノールフタレイン指示薬を用いて中和が終了したことを確認した後、濾別して白色固体を得、これにメタノールを加えて室温で3時間放置洗浄した。上記の洗浄操作を3回繰り返した後、遠心脱液して得られた白色固体を40℃かつ1.3Paの真空乾燥機内で終夜乾燥して、側鎖にシラノール基を有する変性ポリビニルアルコール樹脂「PVOH−H」を得た。得られた「PVOH−H」の評価結果を表1に示す。この「PVOH−H」をコーティング組成物(C2)として後述の実施例に使用した。
Figure 2021000771
(実施例7:インクジェット記録紙の作製)
実施例1で得られたコーティング組成物(E1)の10質量%水溶液を調製した。また、充填剤粒子(B)としてのシリカ(グレース製:サイロイドP409)をホモミキサーにて水に分散し、20質量%のシリカ水分散液を調製した。このシリカ水分散液に、変性ポリビニルアルコール「PVOH−A」/シリカ/カチオン性樹脂の固形分基準の質量比が5/100/3となるように、上記で調製した10質量%の上記(E1)水溶液およびカチオン性樹脂(住友化学株式会社製:スミレーズレジン1001;情報記録関連薬剤)を添加し、必要量の水を添加した。さらに、コーティング組成物(E1)を構成する「PVOH−A」100質量部に対し、光重合開始剤として1質量部の光ラジカル発生剤(2−ヒドロキシ−4’−(2−ヒドロキシメトキシ)−2−メチルプロピオフェノン)を添加した。このようにして、シリカ、PVOH、カチオンポリマーおよび光ラジカル発生剤の合計固形分濃度が14質量%のインク受理層形成用塗工液(コーティング剤)を得た。
次いで、基材としての紙(坪量:60g/mの上質紙)の表面に、このコーティング剤をワイヤバーコーターで固形分換算で11g/mの割合にて塗工した。その後、100℃の熱風乾燥機で3分間乾燥したのち、3000mJ/cmの強度でUV光を照射してインクジェット記録紙を得た。上記で作製したコーティング剤およびインクジェット記録紙の評価結果を表2に示す。
(実施例8〜16:インクジェット記録紙の作製)
実施例1で作製したコーティング組成物(E1)の代わりに、実施例2〜6で作製したコーティング組成物(E2)〜(E6)を用い、かつ使用したコーティング組成物(変性ポリビニルアルコール)とシリカとの配合比を表2に示すような値に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録紙を作製した。上記で作製したコーティング剤およびインクジェット記録紙の評価結果を表2に示す。
(比較例3および4:インクジェット記録紙の作製)
実施例1で作製したコーティング組成物(E1)の代わりに、比較例1および2で作製したコーティング組成物(C1)〜(C2)を用い、かつ使用したコーティング組成物(変性ポリビニルアルコール)とシリカとの配合比を表2に示すような値に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録紙を作製した。上記で作製したコーティング剤およびインクジェット記録紙の評価結果を表2に示す。
Figure 2021000771
表2に示すように、実施例7〜16で調製されたコーティング剤はいずれも、比較例4で調製されたコーティング剤と比較して粘度安定性が優れていた。この比較例4で調製されたコーティング剤には、比較例2で作製したコーティング組成物(側鎖にシラノール基を有する変性ポリビニルアルコール樹脂(PVOH−H)を含有)が用いられていた。これに対し、実施例7〜16で調製されたコーティング剤では、実施例1〜6で作製されたコーティング組成物(側鎖にメタクリロイル基、アクリロイル基、または3,3−ジメチル−4−ペンテン酸メチル由来のアシル基を有する変性ポリビニルアルコール樹脂(PVOH−A〜PVOH−F)を含有)が用いられており、当該側鎖に導入された置換基の相違によって、このような粘度安定性が得られていた。このことから、実施例7〜16で調製されえたコーティング剤は、例えば塗工液調液後に倉庫保管し、塗工の際にせん断をかけて再分散させるような状況においても長期に亘って優れた粘度安定性を示すことがわかる。
また、実施例7〜16で作製されたインクジェット記録紙は、未変性のポリビニルアルコール(PVOH−G)を用いた比較例3のインクジェット記録紙と比較して、インク受理層の皮膜強度、印刷斑、および耐水性の3項目のうち2項目以上でBまたはそれを上回る評価結果を得ており良好なものであったことがわかる。さらに、実施例11および13のインクジェット記録紙は、耐水性の評価において特に優れていた。これは、使用した変性ポリビニルアルコール樹脂「PVOH−B」および「PVOH−C」の変性量や重合度が高く(表1参照)、インクジェット記録材作製の際にこれら変性ポリビニルアルコール樹脂がより強固に架橋したためと考えられる。
これに対し、比較例3のように側鎖にエチレン性不飽和基を有さない「PVOH−G」を用いた場合、このようなPVOHはUV光に対する反応性を有していないため、UV光による架橋が促されず、結果として皮膜強度および耐水性の両方において劣っていた。また、比較例4のように、シラノール基を有する変性ポリビニルアルコール樹脂「PVOH−H」を用いた場合は、上記の通りコーティング剤の粘度安定性が欠け、取り扱い性に劣るとともに、得られたインクジェット記録紙の耐水性が低く、印刷斑も観察することができた。これは使用した変性ポリビニルアルコール樹脂「PVOH−H」がコーティング液を調製する際に完全に溶解することが難しいためだと考えられる。
本発明によれば、インクジェットプリンターに使用する記録材として、例えば樹脂成形、印刷等に関連する種々の技術分野において有用である。

Claims (8)

  1. 側鎖にエチレン性不飽和基を有する変性ポリビニルアルコール樹脂(A)を含有する、インクジェット記録材のインク受理層を形成するためのコーティング組成物。
  2. 前記エチレン性不飽和基が以下の式(I)で表される部分構造を含む、請求項1に記載のコーティング組成物。
    Figure 2021000771
    (式(I)中、R、RおよびRは、それぞれ独立して水素原子、メチル基、カルボキシル基、またはカルボキシメチル基であり、Xは酸素原子または−N(R)−であり、Rは水素原子または炭素数1〜3の炭化水素基であり、*は該エチレン性不飽和基の結合手である)
  3. 前記変性ポリビニルアルコール樹脂(A)が、以下の式(II)または(III)で表される構造単位を含む、請求項1または2に記載のコーティング組成物。
    Figure 2021000771
    (式(II)中、R、RおよびRは、それぞれ独立して水素原子、メチル基、カルボキシル基、またはカルボキシメチル基であり、Xは酸素原子または−N(R)−であり、Rは水素原子または炭素数1〜3の炭化水素基であり、Yは置換基を有していてもよい炭素数1〜10の2価の炭化水素基を表し、*は該変性ポリビニルアルコール樹脂(A)における構造単位の結合手である)
    Figure 2021000771
    (式(III)中、R、RおよびRは、それぞれ独立して水素原子、メチル基、カルボキシル基、またはカルボキシメチル基であり、*は該変性ポリビニルアルコール樹脂(A)における構造単位の結合手である)
  4. 前記変性ポリビニルアルコール樹脂(A)が、式(I)で表される前記部分構造を0.2〜5モル%含有する、請求項2または3に記載のコーティング組成物。
  5. 基材とインク受理層とを含む、インクジェット記録材であって、
    該インク受理層が、請求項1〜4のいずれかに記載のコーティング組成物の硬化物を含有する、インクジェット記録材。
  6. 前記コーティング組成物が充填剤粒子(B)を含み、前記充填剤粒子(B)の粒子間に前記変性ポリビニルアルコール樹脂(A)の硬化物が配置されている、請求項5に記載のインクジェット記録材。
  7. インクジェット記録材の製造方法であって、
    充填剤粒子(B)と請求項1〜4のいずれかに記載のコーティング組成物とを混合してコーティング剤を得る工程、
    基材上に該コーティング剤を塗工する工程、および
    該基材上に塗工されたコーティング剤の層を硬化してインク受理層を形成する工程、
    を含む、方法。
  8. 請求項5または6に記載のインクジェット記録材のインク受理層に、文字情報、図形情報および画像情報からなる群から選択される少なくとも1種の情報をインクにより視覚化した形態で表示する、印刷物。
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