本開示の目的は、その失速挙動に関して改善された薬物送達デバイスを提供することに見ることができる。特に、本開示の一目的は、失速に関するその状態を使用者に示す薬物送達デバイスを提供することであることが理解されよう。
この目的は、請求項1に記載の薬物送達デバイスによって解決される。
概して、液体製剤の所定の量または事前設定可能な量を自動的に排出する薬物送達デバイスが提供され、
このデバイスは、
ハウジングに取り付けられた薬剤リザーバと、
薬剤リザーバ(たとえば、その栓)に線形に作用して薬剤リザーバから液体製剤の一部分を排出するように構成された排出機構とを含み、排出機構は、
− ハウジングに対して固定の軸方向関係にあるねじ付ナットおよびねじ付ナットにねじ係合している親ねじの配置であって、ねじ付ナットおよび親ねじは、回転入力インターフェースによって互いに対して回転可能である、配置と、
− エネルギーを貯蔵する機械エネルギーリザーバ(mechanical energy reservoir)であって、貯蔵されたエネルギーは、たとえばハウジングに対する回転および軸方向運動のための駆動トルクを提供し、その駆動トルクを親ねじへ伝達するように、回転インターフェースによってエネルギーリザーバから解放可能である、機械エネルギーリザーバと、
− 一実施形態では駆動スリーブを含む駆動系であって、エネルギーリザーバの回転インターフェースに連結され、駆動系内へ回転エネルギーを供給する上流インターフェース、およびねじ付ナットおよび親ねじの配置の回転入力インターフェースに連結され、回転入力インターフェースへ回転エネルギーを出力し、それによって親ねじおよびねじ付ナットを互いに対して回転させる下流インターフェースを有し、駆動系は、作動されると上流インターフェースから下流インターフェースへの回転エネルギーの伝達を防止し(すなわち、初期位置にある)、解放されると上流インターフェースから下流インターフェースへの回転エネルギーの伝達を可能にする解放可能掛止部(releasable latch)をさらに備える、駆動系と、
− 使用者によってハウジングに対して第1の位置から第2の位置へ可動のトリガ、たとえばボタンであって、トリガの操作(たとえば解放可能掛止部を解放するために、たとえば押下すること)によって、解放可能掛止部を動作させるように、解放可能掛止部に連結され、解放可能掛止部の解放に対応する第2の位置とは反対側の第1の位置の方へさらに付勢される(たとえば、圧縮ばねによる)、トリガとを含み;
ここで、駆動系は、回転ひずみを軸方向の力またはインターロッキングに変換するように構成された回転ひずみ感知配置(rotational strain sensing arrangement)をさらに含み、軸方向の力またはインターロッキングは、機械的リンク機構によってトリガに加えられ、それによって、駆動系の回転ひずみ感知配置に作用する回転ひずみが所定の閾値未満に低下するまで、トリガが第1の位置へ戻るのを防止する。
上述した概略的な開示によれば、薬物送達デバイスは、解放可能掛止部が使用者によって解放されるときにトリガの位置によって失速に関するその状態を使用者に示す排出機構を実施することができる。排出機構により、トリガがたとえば薬物送達デバイスの長手方向軸に対して第2の位置とは異なるその初期静止位置(第1の位置)へ完全に戻ることが可能になった場合、使用者は、駆動機構内に残留ねじれがないことが分かる。この挙動は、駆動系内の残留回転ひずみの程度を検出することによって実現することができ、トリガは、回転ひずみが所定の閾値未満であるまたは所定の閾値未満に低下した場合、その初期静止位置へ戻る。対照的に、トリガがその第1の位置へ戻らないまたは完全には戻らない状況は、失速条件に同等の相当量の残留回転ひずみ(またはトルク)が駆動機構内にあることを使用者に示すために使用される。
いくつかの例では、トリガの第1の位置は、ハウジングに対する伸長位置とすることができ、第2の位置は、ハウジングに対する後退位置とすることができる。別の実施形態では、ハウジングに対して第1の位置が後退位置であり、第2の位置が伸長位置である。それによって、後退とは、ハウジング、たとえばハウジングの近位端に対して完全または部分的に後退した状態を意味する。一実施形態では、ハウジングの近位端は、用量選択部の近位端、たとえば用量ノブによって形成することができる。
一実施形態では、トリガと回転ひずみ感知配置との間の機械的リンク機構は、トリガがトルクひずみ条件下で第2の位置を出て、第2の位置から離れて中間位置の方へ動き、それによって解放可能掛止部の再係合を引き起こすことを可能にするように構成される。中間位置は、第1の(初期)位置と第2の位置との間に位置する。
一実施形態では、トリガは、選択された用量の投薬を開始するために軸方向で遠位方向に押下されるボタンである。別法として、トリガは、選択された用量の投薬を開始するために軸方向で近位方向に引っ張られるボタンである。
さらなる実施形態では、トリガは、薬剤用量の投薬中は第2の位置で保持され、使用者が用量投与を終了すると解放され、または使用者によって手動で戻される。場合により使用者は、ダイヤル設定された用量の一部のみが投与されたとき、トリガを解放し、または手動で戻す。一実施形態では、排出機構は、残留ねじれが所定の値未満になったことを条件として、使用者が駆動スリーブを介してトリガを解放した後、トリガを第2の位置から第1の位置へ駆動するように適用されたクラッチばねを含む。
別の実施形態では、機械エネルギーリザーバから親ねじへの動力の伝送に関して、解放可能掛止部は、上流インターフェースと回転ひずみ感知配置との間に位置し、または別法として、掛止部は、下流インターフェースと回転ひずみ感知配置との間に位置する。第1の事例では、すべての所定の用量またはダイヤル設定された用量が排出される前に投薬工程が中断した場合、トリガは第1の位置に戻り、したがってシステム内の残留回転ひずみが使用者に示される。第2の事例では、すべての所定の用量またはダイヤル設定された用量が排出される前に投薬工程が中断した場合、失速がなくてもトリガは第2の位置に留まり(第1の位置へ戻らなかった)、所定の用量またはダイヤル設定された用量が完全に排出されていないことを使用者に示す。
一実施形態では、駆動系は、上流インターフェースから下流インターフェースへの回転エネルギーの伝達を可能にし、薬剤の選択された用量を薬剤リザーバから投薬するために、第1の位置から第2の位置へのトリガの動きによって解放または係合解除される解放可能掛止部(またはクラッチ機構)を含む。トリガが第2の位置から第1の位置へ少なくとも部分的に戻った(すなわち、経路の少なくとも一部を戻った)場合、掛止部を再係合することができる。それに応じて、トリガが第2の位置から第1の位置へ、すなわち中間位置へ少なくとも部分的に戻った(すなわち、経路の少なくとも一部を戻った)場合、掛止部を解放または係合解除することができる。
一実施形態では、駆動系は、解放可能掛止部を解放したときに駆動系によって伝達される回転の量を、使用者が決定した角度に、使用者が制限することを有効にするように構成された使用者が設定可能なエンドストップリミッタ(user−settable end stop limiter)、たとえば用量ノブをさらに含むことができる。この事例では、トリガによって開始される用量投薬工程中に排出される液体製剤の量を、使用者が選択することができる。たとえば、機械エネルギーリザーバ(たとえば、ねじりばね)は、エンドストップリミッタに連結されて、エンドストップリミッタの設定を、使用者によって選択された回転角に対応する程度、エネルギーリザーバを直ちに付勢するように変換する。この実施形態は、たとえば用量設定中に使用される巻き上げ機構を実現し、巻き上げ機構は、設定用量を投薬するのに十分かつ必要なエネルギーをエネルギーリザーバにかける。別法として、解放可能掛止部を解放したときに駆動系へ伝達される回転の量は、たとえばねじりばねの予圧によって事前に決定される。
実現の費用効果が高い一実施形態では、駆動系は駆動スリーブを含み、駆動系の下流インターフェースは、駆動スリーブにスプラインを含み、第1のスプライン連結が、スプラインによって形成され、回転入力インターフェースは、ねじ付ナットに対して軸方向距離をあけて位置し、回転ひずみ感知配置は、第1のスプライン連結とねじ付ナットとの間の位置で第2のスプライン連結によって親ねじに対して回転固定の関係で維持されるロッキングリングを含み、ロッキングリングおよび駆動スリーブは、角度に依存する軸方向キー締めを実行し、それによって、ねじれ変形によるロッキングナットに対する駆動スリーブの前進角度が所定の閾値角度を超過したとき、これらの部材間の相対的な軸方向移動を制限する。
一実施形態では、親ねじは可撓性を有する。残留回転ひずみがある事例では、この回転ひずみは、親ねじをその可撓性によってねじる/ゆがめる。それに応じて、親ねじに回転不能に拘束されたロッキングリングは、駆動スリーブに対して同じ量だけ回転する。ロッキングリングは、親ねじにスプライン連結され、ハウジングに軸方向に拘束される。駆動スリーブに対するロッキングリングの相対的な回転を使用して、軸方向における駆動スリーブの動きを防止し、それによって第1の位置へのトリガの動きを防止する。
さらなる実施形態では、トリガと回転ひずみ感知配置との間の機械的リンク機構は、駆動スリーブとロッキングナットとの間の角度に依存する軸方向キー締めで生じる制限に応じてトリガの移動を少なくとも部分的に制限する機械的連結を含む。一実施形態では、トリガは、駆動スリーブおよび/またはロッキングナットの軸方向運動に機械的に連結される。これは、トリガと駆動スリーブおよび/またはロッキングナットとの間の連結が、駆動スリーブおよび/またはロッキングナットの軸方向運動によりトリガを軸方向に駆動するようになっていることを意味する。1つの事例では、ロッキングナットをハウジングに軸方向に固定することができるが、別法として、ロッキングナットをハウジングに対して軸方向に可動とすることができる。
一実施形態では、角度に依存する軸方向キー締めは、L字形トラック内でロッキングナットおよび駆動スリーブに回転固定された径方向ピンのスロット係合を含み、それによってロッキングナットと駆動スリーブとの間の相対的な角度位置に応じた相対的な軸方向移動を制限する。
代替実施形態では、親ねじが(十分な)可撓性を有していない場合、駆動スリーブは、親ねじの軸方向スプライン内で案内されるスプライン機能を有する可撓アームを含み、回転インターフェースによって提供されるエネルギーリザーバの回転ひずみにより、可撓アームは、軸方向に直交する方向、すなわち接線方向にたわむ。それに応じて、この事例では、可撓アームにねじれ変形が生じる。上記の実施形態と同様に、第1の要素は親ねじに回転不能に拘束されたロッキングリングであり、第2の要素は駆動スリーブである。この実施形態では、親ねじおよび駆動スリーブの相対的な回転を引き起こす親ねじの可撓性は、親ねじの軸方向スプライン内で案内される駆動スリーブのアームの可撓性に置き換えられている。可撓アームは、デバイスおよび駆動スリーブの長手方向に沿って細長く、長手方向(接線方向)に直交する方向に、たとえば駆動スリーブの円周でねじることができる。一実施形態では、可撓アームは、駆動スリーブ内のそれぞれの切り取りによって形成することができる。可撓アームは、駆動スリーブ本体の平面内に収容され、スプライン機能は、可撓アームの内面から延びる。
上記の両実施形態に関して、たとえば回転ひずみ感知配置は、ロッキングリングと、ロッキングリングの外面に設けられた径方向ピンとを含み、径方向ピンは、ハウジングに対するトリガの動きによって、駆動スリーブのL字形トラックの第1の軸方向セクション内を動かされ、駆動スリーブは、選択された用量の投薬を開始する間にトリガに軸方向に連結される。加えて、ロッキングリングの径方向ピンは、エネルギーリザーバの回転ひずみによって引き起こされるたわみによって、第1のセクションに直交するL字形経路(たとえば、スロット)の第2の円周方向(接線)セクション内を動かされる。投薬工程の終了時に回転ひずみが解放されない場合、ロッキングリングの径方向ピンは第2の円周方向セクション内にとどまる。それによって、駆動スリーブが戻る動きが防止され、したがってトリガは初期位置へ動かされない。この実施形態では、下流インターフェースおよび回転入力インターフェースによって形成される駆動系と親ねじとの間の連結、たとえばスプライン連結は、ロッキングリングの径方向ピンから相当の距離をあけて位置する。
別の実施形態では、駆動スリーブのL字形経路の第2のセクションは、たとえばL字形経路の第2のセクションを軸方向に広げることによって、軸方向における径方向ピンの動きを可能にする。これにより、径方向ピンがL字形トラックの第2のセクション内にある場合、駆動スリーブの近位方向への動きが可能になり、したがって解放可能掛止部が再係合され、それによって上流インターフェースから下流インターフェースへの回転エネルギーの伝達を防止する。それによって、使用者は、投薬の途中に、自身がトリガに加えていた力を除去することによって、デバイスの投薬動作を中断することが可能になるが、トリガは、その初期位置へ、好ましくは中間位置へ完全には戻らない。
一実施形態では、駆動系のひずみ感知配置は、回転ひずみを軸ひずみに変換する螺旋状インターフェースを含む。たとえば、螺旋状インターフェースは、外側スプラインを有するクラッチ板と、内側スプラインを有する数字スリーブの近位セクションとを含むことができ、外側スプラインおよび内側スプラインのうちの少なくとも1つは、傾斜面または縁部を有し、クラッチ板は、トリガに軸方向に連結される。
一実施形態では、ひずみ感知配置とトリガとの間の機械的リンク機構は、ひずみ感知配置によってもたらされる軸方向の力をトリガに供給し、それによって、駆動系のひずみ感知配置に作用する回転ひずみが所定の閾値未満に低下するまで、付勢力を補償するように構成される。たとえば、その結果、螺旋状インターフェースによってもたらされる軸方向の負荷により、クラッチ板は遠位位置で保持され、それによって、トリガが使用者によって解放された場合でも、回転ひずみが所定の閾値未満に低下しない限り、クラッチばねがトリガを第1の位置に戻すのを防止する。
この実施形態では、数字スリーブの近位セクションは、数字スリーブの遠位セクションに固定して取り付けられた別個の要素を形成することができる。別法として、数字スリーブの近位および遠位部材は一体形成される。スプライン縁部および長手方向軸が薬物送達デバイスの長手方向軸の周りで円周面内へ突出する場合、数字スリーブの内側スプラインおよびクラッチ板の外側スプラインは、薬物送達デバイスの長手方向軸に平行に延び、スプラインのうちの1つは、少なくとも部分的に長手方向軸に対して小さい角度(たとえば、30°以下)で延びる。たとえば、数字スリーブの内側スプラインおよびクラッチ板の外側スプラインは、上述した残留トルクがある限り、クラッチ板が数字スリーブの内側スプラインによって締め付けられるように、互いに噛み合う。クラッチ板および数字スリーブは、互いに噛み合っているとき、互いに対して回転する。クラッチ板は、たとえばスリーブ状またはリング状の構成要素であり、好ましくはラチェットインターフェースを介して、駆動スリーブにクラッチ連結される。さらに、クラッチ板は、トリガのラチェット機能との相互作用のためのクリッカアームを提供することができる。
別の実施形態では、内側スプラインの傾斜面または縁部は、数字スリーブの近位セクションによって形成された第1の内側スプラインセクションと、数字スリーブの遠位セクションによって形成された第2の内側スプラインセクションとを有する傾斜面を含む。この実施形態は、使用者がたとえばトリガを解放した場合、駆動スリーブが解放可能掛止部を再係合するのに十分に遠くまで動いて、用量投薬を中断することを可能にする。スプライン縁部および長手方向軸が薬物送達デバイスの長手方向軸の周りで円周面内へ突出する場合、第2の内側スプラインセクションは、薬物送達デバイスの長手方向軸に平行に延びることができ、第1の内側スプラインセクションは、長手方向軸に対して小さい角度(たとえば、30°以下)を有する。
一実施形態では、機械エネルギーリザーバは、クラッチばねを含むことができ、クラッチばねは、圧縮ばねとして形成することができる。好ましくは、クラッチばねは、軸方向に、静止ハウジング構成要素と軸方向に可動の駆動スリーブとの間に介在する。スリーブは、解放可能掛止部の対応する掛止機能に係合するように適用された掛止機能を含むことができる。好ましくは、掛止部は、スリーブおよびねじ付ナットを連結およびデカップリングするのに好適な解放可能なラチェットクラッチを形成する。別の実施形態では、掛止機能は各々、一連の歯を形成する。好ましい実施形態では、クラッチばねは、掛止機能を付勢(作動)して係合させる。たとえば、掛止機能は、係合されると回転不能に拘束することができ、解放されると互いに対して自由に回転することができる。掛止機能の解放状態は、掛止機能が互いに接触しているが、互いに緩めることが可能であり、すなわち掛止機能が滑る条件を含むことができる。駆動スリーブ、クラッチ板、およびトリガの軸方向位置は、駆動スリーブに近位方向の力を加えるクラッチばねの作用によって画成される。
掛止機能は、解放可能に係合することができ、スリーブが近位位置にあるときは、少なくとも1つの回転方向に、クラッチばねの付勢に逆らって掛止機能を緩めることが可能であり、掛止機能は、スリーブが遠位位置にあるときは回転不能に拘束される。たとえば、掛止機能は各々、一連の歯、好ましくはのこぎり歯を含むことができ、互いにきつく押圧されすぎていない場合、互いの上を滑ることが可能である。言い換えれば、スリーブおよび/または他の掛止要素がクラッチばねの力に逆らって軸方向に並進運動することを可能にすることによって、クラッチばねの付勢に逆らって掛止機能を緩めることができる。この結果、係合解除を継続するため、スリーブおよび/または掛止要素の軸方向の振動運動をもたらすことができ、それに続いて次の戻り止め位置に再係合することができる。この再係合によって、可聴クリックを生成することができ、必要とされるトルク入力の変化によって、触覚フィードバックを与えることができる。
加えて、掛止機能は、ランプ角を有する歯を含むことができ、薬物送達デバイス内で使用されるとき、たとえば用量補正のためにラチェットを緩めることが可能になる。言い換えれば、ばね配置が、クラッチ機能および対応するクラッチ機能が回転固定されていない状態または条件にあるとき、スリーブおよびクラッチ要素の相対的な回転が両方向に可能になる。
好ましくは、掛止機能および対応するクラッチ機能は、薬物送達デバイス内で使用されるとき、スリーブと掛止要素との間に各用量単位に対応する戻り止め位置を提供し、時計回りおよび反時計回りの相対的な回転中に異なるランプ歯角に係合する。これは、ばね配置が、掛止機能および対応する掛止機能を介してクラッチ要素およびスリーブからハウジング構成要素へ反応される回転力またはトルクを有する駆動ばねをさらに含む場合に特に有用である。
スリーブは、好ましくは、トリガ(ボタン)に(直接または間接的に)連結され、したがってトリガを作動したとき、スリーブは、スリーブがハウジング構成要素に回転不能にロックされる第1の近位位置から、スリーブがハウジング構成要素から回転可能にロック解除される第2の遠位位置へ、クラッチばねの付勢に逆らって並進運動する。言い換えれば、スリーブには2つの状態があり、すなわちスリーブがハウジング構成要素に回転不能にロックされる状態と、スリーブがハウジング構成要素に対して回転することが可能になる状態とがあり、これら2つの状態は、ハウジング構成要素に対するスリーブの軸方向位置によって画成される。スリーブは、トリガがばね力に逆らってスリーブを変位させるように作動されない限り、クラッチばねの作用によって、これらの状態のうちの1つで保持される。好ましくは、トリガを解放したとき、クラッチばねはスリーブおよびトリガを近位位置へ並進運動させる。
クラッチばねは、圧縮ばね、好ましくは軸方向に作用する圧縮ばねとすることができる。代替として、クラッチばねは、引っ張りばねとすることができる。いくつかの例では、クラッチばねは、コイルばねとすることができる。代替として、クラッチばねは、ばね座金、またはゴムのような弾性変形可能な材料から作られたブロックもしくはスリーブとすることができる。本明細書では、クラッチばねを単一のばねとして参照するが、本開示は、2つ以上の単一のばね要素を有するクラッチばねの実施形態も同様に包含すると理解されたい。ばね要素は、いくつかの例では、並列または直列で配置することができる。
掛止要素は、掛止機能を含み、板または円板の形態を有することができる。代替として、掛止要素は、スリーブの形態を有することができる。掛止要素は、スリーブとトリガとの間に軸方向に介在し、したがって第1の方向、好ましくは遠位方向におけるトリガの軸方向運動は、クラッチ要素を介してスリーブへ伝達され、反対の方向、好ましくは近位方向における軸方向運動は、クラッチ要素を介してトリガへ伝達される。代替として、掛止要素は、トリガの単体部材とすることができる。好ましい実施形態では、クラッチ要素は、薬物送達デバイスのさらなる構成要素部材、たとえば数字スリーブおよび/または用量設定部材に恒久的または解放可能に連結される。掛止要素は、スリーブとのインターフェースおよびトリガとのインターフェースに加えて、たとえばクリッカ機能および/または少なくとも1つのさらなるインターフェースを有する多機能要素とすることができる。
トリガは、好ましくは使用者が動作可能な要素であり、スリーブおよびクラッチ要素より近位に位置する。薬物送達デバイス内で使用されるとき、トリガは、デバイスの近位端から延びることができ、好ましくは用量設定中にその軸方向位置を変化させない。トリガは、好ましくは使用者が動作可能な用量設定部材に連結され、数字スリーブ構成要素および/または静止ハウジング構成要素に解放可能に連結することができる。代替実施形態では、トリガは、用量設定配置の一部とすることができ、または用量設定部材とすることができる。トリガは、上記の機能に加えて、たとえばクリッカ機能を有する多機能要素とすることができる。別の実施形態では、トリガおよび/または用量選択部は、トリガの重量に耐えるのに十分であったが、クラッチばねの力(駆動スリーブおよびクラッチ板を介してトリガによって加えられる)に耐えるには十分でない戻り止め機能を含むことができる。この機能によって、トリガは、重力の作用を受けずに針が阻止されていない条件で、駆動スリーブによって(たとえば、クラッチ板を介して)駆動されたときのみ、その第1の位置に戻るはずである。
静止ハウジングは、軸方向に可動の駆動スリーブ、クラッチ要素、ゲージ要素、およびトリガの相対的な運動、ならびにたとえば数字スリーブ、駆動スリーブ、および親ねじの相対的な回転運動のための固定の土台である。静止ハウジングは、複数の構成要素からなるハウジングの一部とすることができ、または薬物送達デバイスの唯一のハウジング構成要素とすることができる。好ましい実施形態では、ハウジングは、クラッチばねに対する軸方向の支持体または支承部と、スリーブに解放可能に係合する手段とを含む。好ましくは、ハウジングは、1つまたはそれ以上の歯、たとえば歯のリングを含み、これらの歯は、ハウジングに対するスリーブの相対的な軸方向位置に応じて、スリーブの1つまたはそれ以上の対応する歯、好ましくは同じく歯のリングに係合する。言い換えれば、係合手段または歯は、ハウジングに対するスリーブの第1の位置、たとえば近位位置で噛み合って連動し、ハウジングに対するスリーブの第2の位置、たとえば遠位位置で係合解除され、したがって相対的な回転を可能にする。スリーブに解放可能に係合する手段、たとえば歯のリングは、ハウジングに固定して取り付けられたハウジング構成要素である本体インサートに取り付けることができる。ハウジングは、上記の機能に加えて、たとえばクリッカ機能および/または親ねじへのインターフェースを有する多機能要素とすることができる。
一実施形態では、駆動系は、軸方向に可動の駆動スリーブを含むことができ、駆動スリーブは管状の要素であり、好ましくはその遠位端に、ハウジング構成要素との解放可能な係合のためのインターフェースを有し、好ましくはその近位端に、解放可能掛止部、すなわち掛止機能、たとえば径方向に延びる外側の歯のリングとの解放可能な係合のためのインターフェースを有する。加えて、スリーブは、クラッチばねに対する軸方向の支持体または支承部を含む。クラッチばねは、ハウジング構成要素と駆動スリーブとの間に軸方向に介在することができる。代替実施形態では、スリーブが、クラッチばねを少なくとも部分的に取り囲み、またはクラッチばねが、スリーブを少なくとも部分的に取り囲む。好ましくは、スリーブは、たとえばスプラインによって親ねじに回転不能に拘束された駆動スリーブであり、親ねじは、静止ハウジング部材、たとえばねじ付ナットにねじ係合している。言い換えれば、ハウジング構成要素に対する駆動スリーブの回転が親ねじの回転を引き起こし、したがってハウジング構成要素に対する親ねじの軸方向変位を引き起こす。これを薬物送達デバイス内で用量投薬中に使用して、カートリッジ内でピストンを前進させて医薬品をカートリッジから排出することができる。スリーブは、上記の機能に加えて、たとえばクリッカ機能および/またはクリッカに対する起動インターフェースを有する多機能要素とすることができる。
さらなる態様は、軸方向に可動の駆動スリーブ上のいくつかのインターフェースの提供に見ることができる。好ましくは、駆動スリーブは、駆動スリーブおよび親ねじを恒久的に回転不能に拘束する上流インターフェースを有する。駆動スリーブの軸方向位置および/またはクラッチばねの付勢に応じて、駆動スリーブおよびハウジングを回転不能に拘束するために、駆動スリーブとハウジング(またはハウジング構成要素)との間に掛止部の形態のインターフェースを設けることができる。駆動スリーブの軸方向位置に応じて、駆動スリーブおよび数字スリーブを回転不能に拘束するために、駆動スリーブと数字スリーブ(または用量設定構成要素)との間に別のインターフェース(たとえば、スプライン連結歯インターフェースおよび/またはクラッチ板を介した連結)を設けることもできる。好ましくは用量投薬の終了時にのみ、駆動スリーブの軸方向位置に応じて、残留回転ひずみの量に関するフィードバックを生成するために、駆動スリーブと回転ひずみ感知配置との間に第5のインターフェースを設けることができる。
好ましい実施形態では、機械リザーバは、数字スリーブに回転可能に連結されたねじりばねを含む。ねじりばね(駆動ばね)は、事前にひずませることができ、かつ/または数字スリーブとハウジングとの間の相対的な回転によってひずませる(付勢する)ことができる。ねじりばねは、一方の端部をハウジング構成要素および/または追加のハウジング構成要素に取り付けることができ、他方の端部を掛止機能に連結された構成要素部材に取り付けることができる。ねじりばねは、薬物送達デバイスを組み立てたときに事前に巻いておくことができ、したがって機構がゼロ単位にダイヤル設定されているとき、ねじりばねは数字スリーブにトルクを加える。
用量投薬に必要とされる力またはトルクを生成するためにねじりばねなどの弾性駆動部材を提供することで、用量投薬のために使用者によって印加される力を低減させることができる。これは、器用さに障害のある使用者にとって特に有用となることができる。加えて、必要とされる投薬行程の結果である周知の手動駆動デバイスのダイヤル延長部は、弾性部材を提供することによって、弾性部材を解放するために小さいトリガ行程だけが必要になることから、省略することができる。
薬物送達デバイス内に、用量を設定するために動作させることができる少なくとも1つの用量設定部材を設けることができ、トリガの作動が設定用量の投薬を引き起こす。好ましくは、少なくとも1つの用量設定部材の動作によって駆動ばねがひずみ、トリガの作動によって駆動ばねが弛緩し、それによって数字スリーブ、駆動スリーブ、および親ねじをハウジング構成要素に対して回転させることが可能になり、それにより親ねじは、ハウジング構成要素に対して遠位方向に前進する。
薬物送達デバイスは、第1のアパーチャを有するハウジングと、ハウジング内に位置し、用量設定中および用量投薬中にハウジングに対して回転可能である数字スリーブと、ハウジングと数字スリーブとの間に介在するゲージ要素とをさらに含むことができる。好ましくは、ゲージ要素は第2のアパーチャを有し、第2のアパーチャは、数字スリーブの少なくとも一部が第1および第2のアパーチャを通して見えるように、ハウジングの第1のアパーチャに対して位置する。ゲージ要素は、ハウジング内で軸方向に案内することができ、数字スリーブの回転がゲージ要素の軸方向変位を引き起こすように数字スリーブにねじ係合することができる。
したがって、ゲージ要素の位置を使用して、実際に設定および/または投薬された用量を識別することができる。ゲージ部材のセクションの異なる色により、ディスプレイ上の数字、記号などを読まなくても、設定および/または投薬された用量を識別することを容易にすることができる。ゲージ要素が数字スリーブにねじ係合しているため、数字スリーブの回転は、数字スリーブおよびハウジングに対するゲージ要素の軸方向変位を引き起こす。ゲージ要素は、デバイスの長手方向に延びるシールドまたはストリップの形態を有することができる。代替として、ゲージ要素は、スリーブとすることができる。一実施形態では、数字スリーブは一続きの数字または記号で印付けられ、ゲージ要素はアパーチャを含む。数字スリーブがゲージ要素の径方向内方に位置すると、これにより数字スリーブ上の数字または記号のうちの少なくとも1つをアパーチャまたは窓を通して見ることが可能になる。言い換えれば、ゲージ要素を使用して、数字スリーブの一部分を遮蔽しまたは覆い、数字スリーブの制限された部分のみを見ることを可能にすることができる。この機能は、ゲージ要素自体に加えて、実際に設定および/または投薬された用量を識別または提示するのに好適となることができる。
好ましい実施形態では、数字スリーブは、用量設定中、ハウジング内でハウジングに対して回転運動だけを受けるように適用される。言い換えれば、数字スリーブは、用量設定中に並進運動を実行しない。これにより、数字スリーブをハウジングから繰り出す必要またはハウジングを延ばしてハウジング内に数字スリーブを覆う必要を防ぐ。
デバイスは、使用者が選択可能な可変用量の薬剤を投薬するのに好適であることが好ましい。デバイスは、使い捨てデバイス、すなわち空のカートリッジの交換を提供しないデバイスとすることができる。
好ましい実施形態によれば、薬物送達デバイスは、最大設定可能用量および最小設定可能用量を画成するリミッタ機構を含む。典型的に、最小設定可能用量はゼロ(インスリン製剤の0IU)であり、したがってリミッタは用量投薬の終了時にデバイスを止める。最大設定可能用量、たとえばインスリン製剤の60、80、または120IUは、過剰投与のリスクを低減させ、非常に大きい用量を投薬するために追加のばねトルクが必要とされることを回避しながら、それでもなお異なる用量サイズを必要とする広範囲の患者にとって好適になるように制限することができる。好ましくは、最小用量および最大用量の制限は、ハードストップ機能によって提供される。リミッタ機構は、数字スリーブ上の第1の回転止め具、および最小用量(ゼロ)位置で当接するゲージ要素上の第1の対向止め具、ならびに数字スリーブ上の第2の回転止め具、および最大用量位置で当接するゲージ要素上の第2の対向止め具を含むことができる。用量設定中および用量投薬中に数字スリーブがゲージ要素に対して回転するため、これら2つの構成要素は、信頼性が高い頑健なリミッタ機構を形成するのに好適である。
薬物送達デバイスは、カートリッジ内に残っている液体の量を超過する用量の設定を防止する最終用量保護機構(last dose protection mechanism)をさらに含むことができる。これには、用量送達を開始する前に、使用者はどれだけが送達されることになるかが分かるという利点がある。またこれにより、直径がより小さく過少用量を招きうるカートリッジのネック部分に栓が入ることなく、制御された形で用量送達が止まることが確実になる。好ましい実施形態では、この最終用量保護機構は、カートリッジが最大用量(たとえば、120IU)未満を収容しているときだけ、カートリッジ内に残っている薬剤を検出する。たとえば、最終用量保護機構は、駆動部材と用量設定および用量投薬中に回転する構成要素との間に介在するナット部材を含む。用量設定および用量投薬中に回転する構成要素は、数字スリーブまたは数字スリーブに回転不能に拘束されたダイヤルスリーブとすることができる。好ましい実施形態では、数字スリーブおよび/またはダイヤルスリーブは、用量設定中および用量投薬中に回転するのに対して、駆動部材は、用量投薬中にのみ、数字スリーブおよび/またはダイヤルスリーブとともに回転する。したがって、この実施形態では、ナット部材は、用量設定中にのみ軸方向に動き、用量投薬中はこれらの構成要素に対して静止したままである。好ましくは、ナット部材は、駆動部材に螺着され、数字スリーブおよび/またはダイヤルスリーブにスプライン連結される。代替として、ナット部材は、数字スリーブおよび/またはダイヤルスリーブに螺着することができ、駆動部材にスプライン連結することができる。ナット部材は、全ナットまたはその一部、たとえば半割りナットとすることができる。
注射デバイスは、触覚および/または可聴フィードバックを生成する2つ以上のクリッカ機構を含むことができる。用量設定中、(駆動)スリーブのクラッチ機能およびクラッチ要素の対応するクラッチ機能の再係合により、可聴および/または触覚フィードバックを生成することができる。たとえば、トリガ上に位置し、少なくとも用量投薬中にクラッチ要素上に位置するクリッカアームと相互作用するラチェット機能によって、用量投薬中の触覚フィードバックを提供することができる。クラッチ要素が投薬中にトリガに対して回転するため、この相対的な回転を使用して、フィードバック信号を生成することができる。好ましくは、トリガは、用量投薬中にハウジングまたはハウジング構成要素に回転不能にロックされる。
好ましくは、ピストンロッド(親ねじ)は、可動(駆動)スリーブの回転ごとに固定の変位量だけ前進する。他の実施形態では、変位速度は変動することがある。たとえば、親ねじは、1回転当たり大きい変位量だけ前進して、第1の量の薬剤をカートリッジから投薬し、次いで1回転当たりより小さい変位量だけ前進して、カートリッジの残りを投薬することができる。これは、機構の所与の変位に対して、カートリッジから投薬される第1の用量の体積が他の用量より小さいことを補償することができるために有利である。ハウジングおよび親ねじのねじ山のピッチが等しい場合、親ねじは、可動スリーブの回転ごとに固定量だけ前進する。しかし、代替実施形態では、親ねじ上のねじ山の第1のターンのピッチが大きく、他のターンのピッチが小さい場合、第1の回転中、親ねじの変位は、親ねじ上のねじ山の第1のターンの大きいピッチに依存し、したがって親ねじは1回転当たり大きい量だけ変位する。後の回転では、親ねじの変位は、親ねじのねじ山のより小さいピッチに依存し、したがって親ねじはより小さい量だけ変位する。さらなる実施形態では、ハウジングのねじ山のピッチが親ねじより大きい場合、第1の回転中、親ねじの変位は、ハウジングのねじ山のピッチに依存し、したがって親ねじは1回転当たり大きい量だけ変位する。後の回転では、親ねじの変位は、親ねじのねじ山のピッチに依存し、したがって親ねじはより小さい量だけ変位する。
ハウジング内のアパーチャおよび/またはゲージ要素内のアパーチャは、簡単な開口部とすることができる。しかし、少なくとも1つのアパーチャが窓またはレンズによって閉鎖されることが好ましく、それにより汚れの侵入を防止し、かつ/またはたとえば拡大によって数字スリーブ上のたとえば数字の明瞭性を増大させることができる。
一実施形態によれば、数字スリーブは、ハウジングに遠位端でクリップ留めされる。これにより、ゲージ位置に対する幾何学的公差が低減する。言い換えれば、数字スリーブは、好ましくは、ハウジングに対して軸方向に固定されるが、ハウジングに対して回転することは可能である。
好ましくは、駆動スリーブは、後の組み立て工程中に駆動スリーブを保持するように数字スリーブ内でクリップ留めされる。代替実施形態では、駆動スリーブは、代わりに後の組み立て工程中に駆動スリーブを保持するために、ハウジングにクリップ留めされる。どちらの実施形態でも、駆動スリーブは、トリガが押下されたとき、その組み立て位置を越えて自由に動くことができる。クリップは、解体方向の動きを防止するが、たとえば投薬のためのさらなる動きは防止しない。
ゲージ内のレンズおよび窓は、「ツインショット」成形技術を使用して、ハウジングに組み込むことができる。たとえば、「第1のショット」中に、レンズおよび窓が半透明材料で成形され、「第2のショット」中に、ハウジングの外側カバーが不透明材料で成形される。
ゲージ要素上に1つのねじ付部分だけがある場合、これによりこの構成要素の長さが低減する。
好ましくは、クラッチ板および駆動スリーブ上の歯の幾何形状は、ダイヤル設定トルクが小さくなるように選択される。さらに、クラッチ板は、トリガ上のクリッカ歯に干渉する投薬クリッカを含むことができる。
薬物送達デバイスは、液体製剤を収容するカートリッジを含むことができる。本明細書で使用する用語「薬物」または「薬剤」は、少なくとも1つの薬学的に活性な化合物を含む医薬製剤を意味し、
ここで、一実施形態において、薬学的に活性な化合物は、最大1500Daまでの分子量を有し、および/または、ペプチド、タンパク質、多糖類、ワクチン、DNA、RNA、酵素、抗体もしくはそのフラグメント、ホルモンもしくはオリゴヌクレオチド、または上述の薬学的に活性な化合物の混合物であり、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病、または糖尿病性網膜症などの糖尿病関連の合併症、深部静脈血栓塞栓症または肺血栓塞栓症などの血栓塞栓症、急性冠症候群(ACS)、狭心症、心筋梗塞、がん、黄斑変性症、炎症、枯草熱、アテローム性動脈硬化症および/または関節リウマチの処置および/または予防に有用であり、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病または糖尿病性網膜症などの糖尿病に関連する合併症の処置および/または予防のための少なくとも1つのペプチドを含み、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、少なくとも1つのヒトインスリンもしくはヒトインスリン類似体もしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP−1)もしくはその類似体もしくは誘導体、またはエキセンジン−3もしくはエキセンジン−4もしくはエキセンジン−3もしくはエキセンジン−4の類似体もしくは誘導体を含む。
インスリン類似体は、たとえば、Gly(A21),Arg(B31),Arg(B32)ヒトインスリン;Lys(B3),Glu(B29)ヒトインスリン;Lys(B28),Pro(B29)ヒトインスリン;Asp(B28)ヒトインスリン;B28位におけるプロリンがAsp、Lys、Leu、Val、またはAlaで置き換えられており、B29位において、LysがProで置き換えられていてもよいヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28−B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリン、およびDes(B30)ヒトインスリンである。
インスリン誘導体は、たとえば、B29−N−ミリストイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−パルミトイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−ミリストイルヒトインスリン;B29−N−パルミトイルヒトインスリン;B28−N−ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28−N−パルミトイル−LysB28ProB29ヒトインスリン;B30−N−ミリストイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30−N−パルミトイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29−N−(N−パルミトイル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(N−リトコリル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)−des(B30)ヒトインスリン、およびB29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。
エキセンジン−4は、たとえば、H−His−Gly−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Leu−Ser−Lys−Gln−Met−Glu−Glu−Glu−Ala−Val−Arg−Leu−Phe−Ile−Glu−Trp−Leu−Lys−Asn−Gly−Gly−Pro−Ser−Ser−Gly−Ala−Pro−Pro−Pro−Ser−NH2配列のペプチドであるエキセンジン−4(1−39)を意味する。
エキセンジン−4誘導体は、たとえば、以下のリストの化合物:
H−(Lys)4−desPro36,desPro37エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)5−desPro36,desPro37エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39);または
desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
(ここで、基−Lys6−NH2が、エキセンジン−4誘導体のC−末端に結合していてもよい);
または、以下の配列のエキセンジン−4誘導体:
desPro36エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2(AVE0010)、
H−(Lys)6−desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
desAsp28Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
H−desAsp28Pro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
desMet(O)14,Asp28Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2;
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Lys6−desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
H−desAsp28,Pro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(S1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2;
または前述のいずれか1つのエキセンジン−4誘導体の薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物
から選択される。
ホルモンは、たとえば、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(ソマトロピン)、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、ロイプロレリン、ブセレリン、ナファレリン、ゴセレリンなどの、Rote Liste、2008年版、50章に列挙されている脳下垂体ホルモンまたは視床下部ホルモンまたは調節性活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニストである。
多糖類としては、たとえば、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリン、もしくは超低分子量ヘパリン、またはそれらの誘導体、または上述の多糖類の硫酸化形態、たとえば、ポリ硫酸化形態、および/または、薬学的に許容されるそれらの塩がある。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容される塩の例としては、エノキサパリンナトリウムがある。
抗体は、基本構造を共有する免疫グロブリンとしても知られている球状血漿タンパク質(約150kDa)である。これらは、アミノ酸残基に付加された糖鎖を有するので、糖タンパク質である。各抗体の基本的な機能単位は免疫グロブリン(Ig)単量体(1つのIg単位のみを含む)であり、分泌型抗体はまた、IgAなどの2つのIg単位を有する二量体、硬骨魚のIgMのような4つのIg単位を有する四量体、または哺乳動物のIgMのように5つのIg単位を有する五量体でもあり得る。
Ig単量体は、4つのポリペプチド鎖、すなわち、システイン残基間のジスルフィド結合によって結合された2つの同一の重鎖および2本の同一の軽鎖から構成される「Y」字型の分子である。それぞれの重鎖は約440アミノ酸長であり、それぞれの軽鎖は約220アミノ酸長である。重鎖および軽鎖はそれぞれ、これらの折り畳み構造を安定化させる鎖内ジスルフィド結合を含む。それぞれの鎖は、Igドメインと呼ばれる構造ドメインから構成される。これらのドメインは約70〜110個のアミノ酸を含み、そのサイズおよび機能に基づいて異なるカテゴリー(たとえば、可変すなわちV、および定常すなわちC)に分類される。これらは、2つのβシートが、保存されたシステインと他の荷電アミノ酸との間の相互作用によって一緒に保持される「サンドイッチ」形状を作り出す特徴的な免疫グロブリン折り畳み構造を有する。
α、δ、ε、γおよびμで表される5種類の哺乳類Ig重鎖が存在する。存在する重鎖の種類により抗体のアイソタイプが定義され、これらの鎖はそれぞれ、IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgM抗体中に見出される。
異なる重鎖はサイズおよび組成が異なり、αおよびγは約450個のアミノ酸を含み、δは約500個のアミノ酸を含み、μおよびεは約550個のアミノ酸を有する。各重鎖は、2つの領域、すなわち定常領域(CH)と可変領域(VH)を有する。1つの種において、定常領域は、同じアイソタイプのすべての抗体で本質的に同一であるが、異なるアイソタイプの抗体では異なる。重鎖γ、α、およびδは、3つのタンデム型のIgドメインと、可撓性を加えるためのヒンジ領域とから構成される定常領域を有し、重鎖μおよびεは、4つの免疫グロブリン・ドメインから構成される定常領域を有する。重鎖の可変領域は、異なるB細胞によって産生された抗体では異なるが、単一B細胞またはB細胞クローンによって産生された抗体すべてについては同じである。各重鎖の可変領域は、約110アミノ酸長であり、単一のIgドメインから構成される。
哺乳類では、λおよびкで表される2種類の免疫グロブリン軽鎖がある。軽鎖は2つの連続するドメイン、すなわち1つの定常ドメイン(CL)および1つの可変ドメイン(VL)を有する。軽鎖のおおよその長さは、211〜217個のアミノ酸である。各抗体は、常に同一である2本の軽鎖を有し、哺乳類の各抗体につき、軽鎖кまたはλの1つのタイプのみが存在する。
すべての抗体の一般的な構造は非常に類似しているが、所与の抗体の固有の特性は、上記で詳述したように、可変(V)領域によって決定される。より具体的には、各軽鎖(VL)について3つおよび重鎖(HV)に3つの可変ループが、抗原との結合、すなわちその抗原特異性に関与する。これらのループは、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる。VHドメインおよびVLドメインの両方からのCDRが抗原結合部位に寄与するので、最終的な抗原特異性を決定するのは重鎖と軽鎖の組合せであり、どちらか単独ではない。
「抗体フラグメント」は、上記で定義した少なくとも1つの抗原結合フラグメントを含み、そのフラグメントが由来する完全抗体と本質的に同じ機能および特異性を示す。パパインによる限定的なタンパク質消化は、Igプロトタイプを3つのフラグメントに切断する。1つの完全なL鎖および約半分のH鎖をそれぞれが含む2つの同一のアミノ末端フラグメントが、抗原結合フラグメント(Fab)である。サイズが同等であるが、鎖間ジスルフィド結合を有する両方の重鎖の半分の位置でカルボキシル末端を含む第3のフラグメントは、結晶可能なフラグメント(Fc)である。Fcは、炭水化物、相補結合部位、およびFcR結合部位を含む。限定的なペプシン消化により、Fab片とH−H鎖間ジスルフィド結合を含むヒンジ領域の両方を含む単一のF(ab’)2フラグメントが得られる。F(ab’)2は、抗原結合に対して二価である。F(ab’)2のジスルフィド結合は、Fab’を得るために切断することができる。さらに、重鎖および軽鎖の可変領域は、縮合して単鎖可変フラグメント(scFv)を形成することもできる。
薬学的に許容される塩は、たとえば、酸付加塩および塩基性塩である。酸付加塩としては、たとえば、HClまたはHBr塩がある。塩基性塩は、たとえば、アルカリまたはアルカリ土類、たとえば、Na+、またはK+、またはCa2+から選択されるカチオン、または、アンモニウムイオンN+(R1)(R2)(R3)(R4)(式中、R1〜R4は互いに独立に:水素、場合により置換されたC1〜C6アルキル基、場合により置換されたC2〜C6アルケニル基、場合により置換されたC6〜C10アリール基、または場合により置換されたC6〜C10ヘテロアリール基を意味する)を有する塩である。薬学的に許容される塩のさらなる例は、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」17版、Alfonso R.Gennaro(編)、Mark Publishing Company、Easton、Pa.、U.S.A.、1985およびEncyclopedia of Pharmaceutical Technologyに記載されている。
薬学的に許容される溶媒和物は、たとえば、水和物である。
非限定的で例示的な実施形態について、添付の図面を参照して次に説明する。
図1は、注射ペンの形態の薬物送達デバイスを示す。デバイスは、遠位端(図1の左端)および近位端(図1の右端)を有する。薬物送達デバイスの構成要素部材は、図2に示されている。薬物送達デバイスは、本体またはハウジング10、カートリッジホルダ20、親ねじ(ピストンロッド)30、駆動スリーブ40、ナット50、用量インジケータ(数字スリーブ)60、ボタン70の形態のトリガ、ダイヤル把持部または用量選択部80、ねじりばね90、カートリッジ100、ゲージ要素110、クラッチ板120、クラッチばね130、および支承部140を含む。上記で説明したように交換することができる追加の構成要素として、ニードルハブおよびニードルカバーを有するニードル配置(図示せず)を設けることができる。すべての構成要素は、図3に示されている機構の共通の主軸Iの周りに同心円状に位置する。
ハウジング10または本体は、略管状の要素であり、近位端の直径が拡大されている。ハウジング10は、液体製剤を含むカートリッジ100およびカートリッジホルダ20、数字スリーブ60およびゲージ要素110上の用量数を見るための窓11a、11b、ならびにエンドストップリミッタを形成する用量選択部80を軸方向に保持するためのその外面上の機能、たとえば円周溝のための場所を提供する。ハウジング10のフランジ状または円筒形の内壁12は、親ねじ30に係合する内側ねじ山を含む。ハウジング10は、ゲージ要素110を軸方向に案内するための少なくとも1つの軸方向向き内部スロットなどをさらに有する。これらの図に示されている実施形態では、軸方向に延びるストリップ13が遠位端に設けられており、カートリッジホルダ20に部分的に重複している。これらの図は、ハウジング10を単一のハウジング構成要素として示す。しかし、ハウジング10は、2つまたはそれ以上のハウジング構成要素を含むこともでき、そのような構成要素はデバイスの組み立て中に互いに恒久的に取り付けることができる。
カートリッジホルダ20は、ハウジング10の遠位側に位置し、ハウジング10に恒久的に取り付けられている。カートリッジホルダは、カートリッジ100を受け入れるように管状の透明または半透明の構成要素とすることができる。カートリッジホルダ20の遠位端には、ニードル配置を取り付けるための手段を設けることができる。カートリッジホルダ20の上に嵌るように、取り外し可能なキャップ(図示せず)を設けることができ、クリップ機能を介してハウジング10上に保持することができる。
親ねじ30は、スプライン連結インターフェースを介して駆動スリーブ40に回転不能に拘束される。回転するとき、親ねじ30は、ねじ付ナットを形成するハウジング10の内壁12とのそのねじ付インターフェースを介して、駆動スリーブ40に対して軸方向に動かされる。親ねじ30は、外側ねじ山31(図4a)を有する細長い部材であり、外側ねじ山31は、ハウジング10の内壁12の対応するねじ山に係合する。ねじ山31は、大きいリードイン、たとえばくさび形の形状をその遠位端に有することができ、第1の回転で対応するハウジングねじ山の形状に係合する。親ねじ30には、その遠位端に(図8参照)、支承部140のクリップ取り付けのためのインターフェースが設けられる。本実施形態では、このインターフェースは、遠位方向に延びる2つのクリップアーム32を含み、クリップアーム32間には、支承部140のインターフェースの挿入のための挿入空間を画成する。代替として、インターフェースは、長手方向軸の周りに180°より大きく延びる1つの単一のクリップアームのみを含むことができ、または1つもしくはいくつかのクリップアーム32を含むことができる。クリップアーム32は、図8に示すように、凹んだクリップ部分を有する曲がった形状を有することができる。好ましくは、クリップアームは円筒形の外面を形成し、その直径は、外側ねじ山31の溝のベース(縦溝のベース)で親ねじ30の外径以下である。クリップアーム32間には、支承部140の対応する部分(凸形接触面143)に当接するための凹形接触面33が設けられる。
注射デバイスは、駆動スリーブ40を含む駆動系を提供し、駆動スリーブ40は、親ねじ30を取り囲む中空の部材であり、数字スリーブ60内に配置される。駆動スリーブ40は、クラッチ板120とのインターフェースからクラッチばね130との接点まで延びる。駆動スリーブ40は、クラッチばね130の付勢に逆らってハウジング10、親ねじ30、および数字スリーブ60に対して軸方向で遠位方向に可動であり、かつクラッチばね130の付勢を受けて反対の近位方向に可動である。
親ねじ30は、駆動スリーブ40の長手方向(軸方向)スプライン49とのスプライン連結を形成する長手方向(軸方向)溝35を含み、親ねじ30を駆動スリーブ40に回転不能に締め付けるが駆動スリーブ40に対する親ねじ30の軸方向運動は可能にする。溝35は、回転入力インターフェースとも呼ばれ、スプライン49は、駆動スリーブの下流インターフェースを形成する。
ハウジング10とのスプライン連結歯インターフェース(解放可能掛止部とも呼ばれる)は、用量設定中の駆動スリーブ40の回転を防止する。図18に詳細に示されているこのインターフェースは、駆動スリーブ40の遠位端で径方向に延びる外側歯41のリングと、ハウジング構成要素10の対応する径方向に延びる内側歯14とを含む。ボタン(トリガ)70が押下されると、ハウジング10のスプライン歯14、41に対するこれらの駆動スリーブ40が係合解除され、駆動スリーブ40がハウジング10に対して回転することが可能になる(たとえば、用量投薬のため)。
数字スリーブ60とのさらなるスプライン連結歯インターフェースは、ダイヤル設定中は係合されないが、ボタン70が押下されると係合し、投薬中の駆動スリーブ40と数字スリーブ60との間の相対的な回転を防止する。図7aおよび図7bに示す好ましい実施形態では、このインターフェースは、数字スリーブ60の内面のフランジ62上の内向きスプライン61と、駆動スリーブ40の径方向に延びる外側スプライン42のリングとを含む(スプライン42は上流インターフェースとも呼ばれ、スプライン61は回転インターフェースとも呼ばれる)。対応するスプライン61、42は、それぞれ数字スリーブ60および駆動スリーブ40上に位置し、したがって(軸方向に固定された)数字スリーブ60に対する駆動スリーブ40の軸方向運動は、スプラインを係合または係合解除して、駆動スリーブ40および数字スリーブ60を回転可能に連結またはデカップリングする。
好ましくは、スプライン61、42は、駆動スリーブ40の歯41およびハウジング構成要素10の内側歯14が噛み合ったときはデカップリングされ、歯41および内側歯14が係合解除されたときは係合するように配置される。好ましい実施形態では、スプライン61、42は、歯41、14と比べて軸方向により長い。これにより、歯41、14の係合解除直前にスプライン61、42の係合が可能になる。言い換えれば、スプライン61、42および歯41、14は、ボタン70の作動により駆動スリーブ40を数字スリーブ60に回転不能に拘束してから、駆動スリーブ40がハウジング10に対して回転することが可能になるように設計および配置される。同様に、用量投薬後にボタン70が解放されると、駆動スリーブ40の軸方向運動により、まず駆動スリーブ40をハウジングに回転不能に拘束し、その後スプライン61、42をデカップリングする。対応するスプライン61、42に対する代替として、歯を設けることもできる。スプライン61、42に対するさらなる代替または追加として、用量投薬中、クラッチ板120を介して駆動スリーブ40および数字スリーブ60を互いに回転可能に連結することができる。
図19に示されている駆動スリーブ40のインターフェースは、駆動スリーブ40の近位端面に位置するラチェット歯43のリングと、クラッチ板120の対応するラチェット歯121のリングとを含む。
駆動スリーブ40は、ナット50に対する螺旋状トラックを提供するねじ付セクション44を有する(図20)。加えて、最終用量当接部または止め具46が設けられ、最終用量止め具46は、ねじ山44のトラックの端部とすることができ、または好ましくは、ナット50の対応する最終用量止め具51との相互作用のための回転ハードストップとすることができ、したがってねじ山44でのナット50の動きを制限することができる。少なくとも1つの長手方向スプライン49が、親ねじ30の対応するトラック35に係合する(図10)。さらに、駆動スリーブ40には、駆動スリーブ40が用量投薬中にその遠位位置にあるとき、すなわちボタン70が押し下げられているときに、クリッカアーム67(図10)と相互作用するランプ47(図20)が設けられる。
最終用量ナット50は、数字スリーブ60と駆動スリーブ40との間に位置する。最終用量ナット50は、スプライン連結インターフェース(ナット50上のスプライン52)を介して、数字スリーブ60に回転不能に拘束される。最終用量ナット50は、ダイヤル設定中にのみ起こる数字スリーブ60と駆動スリーブ40との間の相対的な回転が生じたとき、ねじ付インターフェース(ねじ山44)を介して、駆動スリーブ40に対して螺旋状経路に沿って動く。これは図20に示されている。代替として、ナット50を駆動スリーブ40にスプライン連結し、数字スリーブ60に螺着することができる。これらの図に示す実施形態では、ナット50は全ナットであるが、代替実施形態では、半割りナット、すなわちデバイスの中心軸の周りに約180°延びる構成要素とすることもできる。カートリッジ100内の液体製剤の残りの投薬可能量に対応する用量が設定されたときに、駆動スリーブ40の止め具46に係合する最終用量止め具51が設けられる。
用量インジケータまたは数字スリーブ60は、図2および図3に示すように、管状の要素である。数字スリーブ60は、用量設定(用量選択部80を介する)および用量補正中ならびに用量投薬中、ねじりばね90によって回転する。数字スリーブ60は、ゲージ要素110とともに、ゼロ位置(「静止」)および最大用量位置を画成する。したがって、数字スリーブ60を用量設定部材と見ることができる。
製造上の理由のため、これらの図に示されている実施形態の数字スリーブ60は、数字スリーブ下部60aを含み、数字スリーブ下部60aは、組み立て中、数字スリーブ上部60bに堅く固定されて数字スリーブ60を形成する。数字スリーブ下部60aおよび数字スリーブ上部60bは、数字スリーブ60の成形工具およびアセンブリを簡略化するためだけに、別個の構成要素である。代替として、数字スリーブ60を単体の構成要素とすることもできる。数字スリーブ60は、回転を可能にするが並進運動は可能にしないように、機能によって遠位端の方へハウジング10に拘束される。数字スリーブ下部60aは一続きの数字で印付けられており、これらの数字は、ダイヤル設定された薬剤用量を示すために、ゲージ要素110およびハウジング10内の開口部11bを通して見える。
さらに、数字スリーブ下部60aは、ゲージ要素110に係合する外側ねじ山63(図14参照)を含む部分を有する。ねじ山63の両端に、ゲージ要素110に対する相対的な動きを制限するためのエンドストップ64、65が設けられる。
図5に示す実施形態でスプライン66のリングの形態を有するクラッチ機能が、用量設定および用量補正中にボタン70のスプライン73に係合するように、数字スリーブ下部60a上に内向きに設けられる。数字スリーブ60の外面にクリッカアーム67が設けられ、クリッカアーム67は、駆動スリーブ40およびゲージ部材110と相互作用して、フィードバック信号を生成する。加えて、数字スリーブ下部60aは、少なくとも1つの長手方向スプラインをその内面に含むスプライン連結インターフェースを介して、ナット50およびクラッチ板120に回転不能に拘束される。
ねじりばね90を数字スリーブ下部60aに取り付けるためのインターフェースは、ばねの第1のコイルまたはフック部分を受け入れるためのポケットまたはアンカ点を有する大きいリードインおよび溝機能を含む。この溝は、ばねのフック部分91に干渉するランプの形態の端部機能を有する。この溝の設計は、ゲージ要素110に干渉することなくばね90をポケット内に受け入れることができるようになっている。用量投薬中に親ねじ30を駆動するための機械エネルギーリザーバは、数字スリーブ60およびねじりばね90を含む。
デバイスの近位端を形成するボタン(トリガ)70は、用量選択部80に恒久的にスプライン連結される。中心心棒71(図4b参照)が、ボタン70の近位作動面から遠位へ延びる。心棒71には、数字スリーブ上部60bのスプライン66に係合するためのスプライン73を保持するフランジ72が設けられる(図5)。したがって、心棒71はまた、ボタン70が押下されていないときは、スプライン66、73(図5)を介して数字スリーブ上部60bにスプライン連結されるが、ボタン70が押下されると、このスプラインインターフェースは切断される。ボタン70は、スプライン74を有する不連続な環状のスカートを有する。ボタン70が押下されると、ボタン70上のスプライン74がハウジング10上のスプラインに係合し(図6)、投薬中のボタン70(したがって、用量選択部80)の回転を防止する。これらのスプライン74、15は、ボタン70が解放されると係合解除され、用量をダイヤル設定することが可能になる。さらに、フランジ72の内側には、クラッチ板120との相互作用のためにラチェット歯75のリングが設けられる(図9)。
用量選択部80は、ハウジング10に軸方向に拘束される。用量選択部80は、スプライン連結インターフェースを介してボタン70に回転不能に拘束される。ボタン70の環状スカートによって形成されるスプライン機能と相互作用する溝を含むこのスプライン連結インターフェースは、用量ボタン70の軸方向位置にかかわらず係合されたままである。用量選択部80または用量ダイヤル把持部は、のこぎり歯状の外側スカートを有するスリーブ状の構成要素である。
ねじりばね90は、その遠位端がハウジング10に取り付けられ、他方の端部が数字スリーブ60に取り付けられる。ねじりばね90は、数字スリーブ60内に位置し、駆動スリーブ40の遠位部分を取り囲む。図21に示すように、ばねは、数字スリーブ60に取り付けるためのフック91を一方の端部に有する。反対の端部にも、ハウジング10に取り付けるための類似のフック端92が設けられる。ねじりばね90は、組み立てたときに事前に巻かれており、したがって機構がゼロ単位にダイヤル設定されているとき、ねじりばね90は数字スリーブ60にトルクを加える。用量選択部80を回転させて用量を設定する作用により、数字スリーブ60をハウジング10に対して回転させ、ねじりばね90をさらに付勢する。
ねじりばね90は、螺旋状のワイアから形成され、少なくとも2つの異なるピッチを有する。図21では、両端が「閉」コイル93から形成され、すなわちピッチはワイアの直径に等しく、各コイルは隣接するコイルに接触する。中心部分は、「開」コイル94を有し、すなわちコイルは互いに接触しない。
カートリッジ100は、カートリッジホルダ20内に受け入れられる(図3)。カートリッジ100は、可動のゴム栓101をその近位端に有するガラスアンプルとすることができる。カートリッジ100の遠位端には、穿孔可能なゴム封止が設けられ、ゴム封止は、圧着された環状の金属バンドによって定位置に保持される。これらの図に示されている実施形態では、カートリッジ100は、たとえば標準的な1.5mlのカートリッジである。デバイスは、使用者または医療従事者によってカートリッジ100を交換することができないことから、使い捨てとして設計されている。しかし、カートリッジホルダ20を取り外し可能にし、親ねじ30の巻き戻しおよびナット50のリセットを可能にすることによって、デバイスの再利用可能な変形形態を提供することもできる。
ゲージ要素110(図13)は、スプライン連結インターフェースを介して、ハウジング10に対する回転を防止するが並進運動は可能にするように拘束される。ゲージ要素110は、螺旋状機能111をその内面に有し、螺旋状機能111は、数字スリーブ60内に切り込まれた螺旋状のねじ山63に係合し、したがって数字スリーブ60の回転がゲージ要素110の軸方向並進運動を引き起こす。ゲージ要素110上のこの螺旋状機能はまた、設定することができる最小および最大用量を制限するために、数字スリーブ60内の螺旋状の切り込みのエンドストップ64、65に対する止め具当接部112、113を作成する。
ゲージ要素110は、略板状またはバンド状の構成要素を有し、この構成要素は、中心アパーチャ114または窓と、アパーチャの両側に延びる2つのフランジ115、116とを有する。フランジ115、116は、好ましくは不透明であり、したがって数字スリーブ60を遮蔽しまたは覆うのに対して、アパーチャ114または窓は、数字スリーブ下部60aの一部分を見ることを可能にする。さらに、ゲージ要素110は、用量投薬の終了時に数字スリーブ60のクリッカアーム67と相互作用するカム117および凹部118(図11a〜図12c)を有する。
図9および図19に見ることができるように、クラッチ板120はスリーブ状またはリング状の構成要素である。クラッチ板120は、外側スプライン125を介して数字スリーブ60にスプライン連結される。クラッチ板120はまた、ラチェットインターフェース(ラチェット歯43、121)を介して駆動スリーブ40に連結される。ラチェットは、数字スリーブ60と駆動スリーブ40との間に、各用量単位に対応する戻り止め位置を提供し、時計回りおよび反時計回りの相対的な回転中に異なるランプ歯角に係合する。クラッチ板120上には、ボタン70のラチェット機能75との相互作用のためのクリッカアーム123が設けられる。
クラッチばね130は圧縮ばねである。駆動スリーブ40、クラッチ板120、およびボタン70の軸方向位置は、駆動スリーブ40に近位方向の力を加えるクラッチばね130の作用によって画成される。このばね力は、駆動スリーブ40、クラッチ板120、およびボタン70を介して反応され、「静止」しているときは、用量選択部80を介してハウジング10へさらに反応される。ばね力は、ラチェットインターフェース(ラチェット歯43、121)が常に係合していることを確実にする。「静止」位置で、ばね力はまた、ボタンのスプライン73が数字スリーブのスプライン66に係合し、駆動スリーブの歯41がハウジング10の歯14に係合することを確実にする。
支承部140(図8参照)は、親ねじ30に軸方向に拘束されており、液体薬剤カートリッジ内の栓101に作用する。支承部140は、親ねじ30に軸方向にクリップ留めされるが、自由に回転することができる。支承部140は円板141を含み、円板141は、近位方向に延びる心棒142を有する。心棒142は、その近位端に凸形接触面143を有する。加えて、心棒142に凹状部分144が設けられる。凸形接触面143および親ねじ30の凹形接触面33の曲率は、支承部140と親ねじ30との間の接点直径が、このインターフェースにおける摩擦損失を最小にするほど小さくなるように選択される。支承部140と親ねじ30との間のクリップインターフェースの設計により、親ねじ30を近位端からねじ係合を介してハウジング10へ軸方向に組み立てることが可能になり、組み立てが簡略化される。加えて、この設計により、両方の構成要素にとって簡単で「単純明快」な成形工具が可能になる。
図4aおよび図17aに示すように、デバイスが「静止」条件にあるとき、数字スリーブ60は、そのゼロ用量当接部64、113に位置し、ゲージ要素110およびボタン70は押し下げられていない。数字スリーブ60上の用量マーキング「0」が、それぞれハウジング10およびゲージ要素110の窓11bおよび114を通して見える。
デバイスのその組み立て中に加えられた複数の事前巻きターンを有するねじりばね90が、数字スリーブ60にトルクを加え、ゼロ用量当接部64、113によって回転が防止される。ねじりばね90は、ゼロ用量止め具64、113間のオフセットおよび駆動スリーブ40のスプライン歯の角度オフセットのため、機構をわずかに「巻き戻す」ことも可能である。これには、用量がダイヤル設定されてゼロ用量当接部が係合解除されたときに起こりうる浸出を防止する作用がある。
数字スリーブ60へのねじりばね90の自動化された組み立ては、大きいリードインおよび溝機能を数字スリーブ60に組み込むことによって実現することができる。ねじりばね90が組み立て中に回転するとき、フック端の形状91は、数字スリーブ60内のアンカ点に係合するまで、溝機能内に位置する。後の組み立て工程中にねじりばね90がアンカ点を係合解除することを防止するのを助けるために、ねじりばね90と数字スリーブ60との間の干渉、または一方向クリップ構成を生み出すことが可能である。
使用者は、用量選択部80を時計回りに回転させることによって液体薬剤の可変用量を選択し、それにより数字スリーブ60内に同一の回転を生成する。数字スリーブ60の回転は、ねじりばね90の付勢を引き起こし、ねじりばね90に貯蔵されているエネルギーを増大させる。数字スリーブ60が回転するにつれて、ゲージ要素110はそのねじ係合によって軸方向に並進運動し、それによってダイヤル設定された用量の値を示す。ゲージ要素110は、窓領域114の両側にフランジ115、116を有し、フランジ115、116は、ダイヤル設定された用量に隣接して数字スリーブ60上に印刷された数字を覆い、設定された用量数のみが使用者に見えることを確実にする(図17aおよび図17b参照)。
本開示の特有の構成は、このタイプのデバイスで典型的な個別の用量数ディスプレイに加えて、視覚フィードバック機能を含むことである。ゲージ要素110の遠位端、すなわちフランジ115は、ハウジング10内の小窓11aを介して摺動スケールを作成する(図17aおよび図17b参照)。代替として、摺動スケールは、異なる螺旋状トラック上の数字スリーブ60に係合する別個の構成要素を使用して形成することもできる。
使用者によって用量が設定されると、ゲージ要素110は軸方向に並進運動し、その移動距離は、設定された用量の大きさに比例する。この機能は、設定された用量の近似サイズに関する明確なフィードバックを使用者に与える。自動注射器機構の投薬速度は、手動注射デバイスの場合より速いことがあり、したがって投薬中に数値用量ディスプレイを読み取ることができない可能性がある。ゲージ機能は、用量数自体を読み取る必要なく、投薬中に投薬の進行に関するフィードバックを使用者に提供する。たとえば、ゲージディスプレイは、ゲージ要素110の不透明要素がその下に対照的な色の構成要素を露出することによって形成することができる。別法として、露出可能な要素に粗い用量数または他の指標を印刷して、より精密な分解能を提供することもできる。加えて、ゲージディスプレイは、用量設定および投薬中にシリンジ動作をシミュレートする。
図17aおよび図17bに示すように、ハウジング10内の開口部11a、11bにより、使用者がゲージ機能および数字ディスプレイを見ることが可能になる。ほこりの侵入を低減させ、使用者が可動部材に触れることを防止するために、これらの開口部11a、11bは半透明の窓によって覆われている。これらの窓は、別個の構成要素とすることもできるが、この実施形態では、「ツインショット」成形技術を使用してハウジング10に組み込まれている。半透明材料の第1のショットにより、内部機能および窓11a、11bを形成し、次いで不透明材料の「第2のショット」により、ハウジング10の外側カバーを形成する。
この機構は、ハウジング10に比べて直径の大きい用量選択部80を利用し、ダイヤル設定を支援しているが、これはこの機構の要件ではない。この機能は、用量設定中に電源が充電され、用量選択部80を回すために必要とされるトルクが非自動注射デバイスの場合より大きいことがある自動注射器機構にとって、特に有用である(が必須ではない)。
駆動スリーブ40は、そのスプライン連結歯41とハウジング10の歯14との係合により、用量が設定されて数字スリーブ60が回転するとともに回転することが防止される。したがって、ラチェットインターフェース43、121を介して、クラッチ板120と駆動スリーブ40との間に相対的な回転が生じるはずである。
用量選択部80を回転させるために必要とされる使用者トルクは、ねじりばね90を巻き上げるために必要とされるトルクと、ラチェットインターフェース43、121を緩めるために必要とされるトルクとの和である。クラッチばね130は、ラチェットインターフェース43、121に軸方向の力を提供し、クラッチ板120を駆動スリーブ40へ付勢するように設計される。この軸方向の負荷は、クラッチ板120および駆動スリーブ40のラチェット歯係合を維持するように作用する。ラチェット43、121を用量設定方向に緩めるために必要とされるトルクは、クラッチばね130によって加えられる軸方向の負荷、ラチェット歯43、121の時計回りのランプ角、嵌合面間の摩擦係数、およびラチェットインターフェース43、121の平均半径に応じる。
使用者が機構を1増分だけ増分させるのに十分に用量選択部80を回転させると、数字スリーブ60は、1ラチェット歯分だけ駆動スリーブ40に対して回転する。この時点で、ラチェット歯43、121は次の戻り止め位置に再係合する。このラチェット再係合によって可聴クリックが生成され、必要とされるトルク入力の変化によって触覚フィードバックが与えられる。
用量設定中にスプライン42、61が係合解除されると、数字スリーブ60および駆動スリーブ40の相対的な回転が可能になる。またこの相対的な回転により、最終用量ナット50が、そのねじ経路に沿って、駆動スリーブ40上の最終用量止め具46に位置するその最終用量当接部の方へ移動する。
用量選択部80に使用者トルクが加えられていないとき、クラッチ板120と駆動スリーブ40との間のラチェットインターフェース43、121のみによって、数字スリーブ60がねじりばね90によって加えられるトルクを受けて逆方向に回転することが防止される。ラチェットを反時計回り方向に緩めるために必要なトルクは、クラッチばね130によって加えられる軸方向の負荷、ラチェットの反時計回りのランプ角、嵌合面間の摩擦係数、およびラチェット機能の平均半径に応じる。ラチェットを緩めるために必要なトルクは、ねじりばね90によって数字スリーブ60(したがって、クラッチ板120)に加えられるトルクより大きいはずである。したがって、ラチェットランプ角は反時計回り方向に増大して、これが当てはまることを確実にしながら、ダイヤルアップトルクが可能な限り小さいことを確実にする。
使用者は次に、用量選択部80を時計回り方向に引き続き回転させることによって、選択用量を増大させることを選ぶことができる。数字スリーブ60と駆動スリーブ40との間のラチェットインターフェース43、121を緩めるプロセスは、用量増分ごとに繰り返される。用量増分ごとにねじりばね90内に追加のエネルギーが貯蔵され、ラチェット歯の再係合によって増分がダイヤル設定されるたびに可聴および触覚フィードバックが提供される。用量選択部80を回転させるために必要とされるトルクは、ねじりばね90を巻き上げるために必要とされるトルクが増大するにつれて増大する。したがって、ラチェットを反時計回り方向に緩めるために必要とされるトルクは、最大用量に到達したときにねじりばね90によって数字スリーブ60に加えられるトルクより大きいはずである。
最大用量限界に到達するまで、使用者が選択用量を引き続き増大させた場合、数字スリーブ60は、その最大用量当接部65によって、ゲージ要素110の最大用量当接部112に係合する。これにより、数字スリーブ60、クラッチ板120、および用量選択部80のさらなる回転を防止する。
用量の選択中、どれだけの増分が機構によってすでに送達されたかに応じて、最終用量ナット50は、その最終用量当接部51を駆動スリーブ40の止め面46に接触させることができる。この当接は、数字スリーブ60と駆動スリーブ40との間のさらなる相対的な回転を防止し、したがって選択することができる用量を制限する。最終用量ナット50の位置は、使用者が用量を設定するたびに生じた数字スリーブ60と駆動スリーブ40との間の相対的な総回転数によって決定される。
この機構が、用量が選択された状態にあるとき、使用者は、任意の数の増分をこの用量から選択解除することが可能である。用量の選択解除は、使用者が用量選択部80を反時計回りに回転させることによって実現される。使用者によって用量選択部80に加えられるトルクは、ねじりばね90によって加えられるトルクと組み合わせたとき、クラッチ板120と駆動スリーブ40との間のラチェットインターフェース43、121を反時計回り方向に緩めるのに十分である。ラチェットが緩められると、数字スリーブ60内に(クラッチ板120を介して)反時計回りの回転が生じ、それにより数字スリーブ60がゼロ用量位置の方へ回り、ねじりばね90が緩められる。数字スリーブ60と駆動スリーブ40との間の相対的な回転により、最終用量ナット50は、最終用量当接部から離れて、その螺旋状経路に沿って戻る。
機構が、用量が選択された状態にあるとき、使用者は、用量の送達を開始するように機構を起動することが可能である。用量の送達は、使用者がボタン70を軸方向で遠位方向に押し下げることによって開始される。
ボタン70が押し下げられると、ボタン70と数字スリーブ60との間のスプラインが係合解除され、ボタン70および用量選択部80を送達機構から、すなわち数字スリーブ60、ゲージ要素110、およびねじりばね90から回転可能に切断する。ボタン70上のスプライン74は、ハウジング10上のスプライン15に係合し、投薬中のボタン70(したがって、用量選択部80)の回転を防止する。ボタン70は投薬中に静止しているため、図9に示すように、投薬クリッカ機構内で使用することができる。ハウジング10内の止め機能は、ボタン70の軸方向の移動を制限し、使用者によって加えられるあらゆる軸方向の乱用負荷に反応して、内部構成要素を損傷するリスクを低減させる。
クラッチ板120および駆動スリーブ40は、ボタン70とともに軸方向に移動する。これにより、図4bおよび図7bに示すように、駆動スリーブ40と数字スリーブ60との間のスプライン連結歯インターフェース42、61が係合し(スプライン42、61が係合する)、投薬中の駆動スリーブ40と数字スリーブ60との間の相対的な回転を防止する(対照的に、図4aおよび図7aでは、スプライン42、61が係合していない)。駆動スリーブ40とハウジング10との間のスプライン連結歯インターフェース41、14は係合解除され(図4b参照)、したがって駆動スリーブ40は回転することができ、数字スリーブ60およびクラッチ板120を介して、ねじりばね90によって駆動される。
駆動スリーブ40の回転により、親ねじ30はそのスプライン係合によって回転し、次いで親ねじ30は、ハウジング10に対するそのねじ係合によって前進する。また数字スリーブ60の回転により、ゲージ要素110がそのゼロ位置へ軸方向に戻り、それによってゼロ用量当接部64、113が機構を止める。
支承部140は、親ねじ30に軸方向にクリップ留めされるが、自由に回転することができる。支承部140は、栓101に直接接触しているため、用量投薬中に親ねじ30が回転および前進するとともに回転しない。上述したように、支承部140と親ねじ30との間の接点直径は、このインターフェースにおける摩擦損失を最小にするほど小さい。親ねじ30および支承部140の設計は、従来の概念に存在する精密なクリップ機能または大きい接点直径をなくす。またこの実施形態により、親ねじ30を近位端からねじ係合を介してハウジング10へ軸方向に組み立てることが可能になり、組み立てが簡略化される。
クラッチ板120に一体化された柔軟な片持ちクリッカアーム123を介して、用量投薬中の触覚フィードバックが提供される。このアーム123は、ボタン70の内面のラチェット機能75に径方向にインターフェース連結され、それによってラチェット歯の間隔が、単一の増分投薬に必要とされる数字スリーブ60の回転に対応する。投薬中、数字スリーブ60が回転し、ボタン70がハウジング10に回転可能に連結されると、ラチェット機能75はクリッカアーム123に係合して、用量増分が送達されるたびに可聴クリックをもたらす。
用量の送達は、使用者がボタン70を引き続き押し下げている間、上述した機械的相互作用を介して継続する。使用者がボタン70を解放した場合、クラッチばね130は駆動スリーブ40をその「静止」位置へ(クラッチ板120およびボタン70とともに)戻し、駆動スリーブ40とハウジング10との間のスプライン14、41を係合させて、さらなる回転を防止し、用量送達を止める。
用量の送達中、駆動スリーブ40および数字スリーブ60はともに回転し、したがって最終用量ナット50内の相対的な運動は生じない。したがって、最終用量ナット50は、ダイヤル設定中のみ、駆動スリーブ40に対して軸方向に移動する。
数字スリーブ60がゼロ用量当接部に戻ることによって、用量の送達が止められた後、使用者はボタン70を解放することができ、それにより駆動スリーブ40とハウジング10との間のスプライン歯14、41を再係合する。次にこの機構は、「静止」条件へ戻る。
駆動スリーブ40またはハウジング10でスプライン歯14、41を傾斜させることが可能であり、したがってボタン70が解放されると、スプライン歯14、41の再係合により、駆動スリーブ40をわずかに「巻き戻し」、それによってゲージ要素110上のゼロ用量止め具当接部に対する数字スリーブ60の係合を外す。これは、機構内の隙間(たとえば、公差による)の影響を補償する。機構内の隙間が存在すると、デバイスが次の用量のためにダイヤル設定されるとき、数字スリーブ60のゼロ用量止め具が機構を拘束するのではなく、代わりに拘束が駆動スリーブ40とハウジング10との間のスプラインへ戻るため、普通なら親ねじ30のわずかな前進および薬剤投薬を招くはずである。
用量投薬の終了時に、投薬中提供される「クリック」とは異なる「クリック」の形態の追加の可聴フィードバックが提供され、数字スリーブ60上のクリッカアーム67と、駆動スリーブ40上のランプ47ならびにゲージ要素110上のカム117および凹部118との相互作用を介して、デバイスがそのゼロ位置へ戻ったことを使用者に通知する。この実施形態では、用量送達の終了時にのみフィードバックを生み出すことを可能にし、デバイスがゼロ位置へ再びダイヤル設定された場合、またはゼロ位置から離れる方へダイヤル設定された場合は、フィードバックを生み出さない。
図11aは、デバイスが「静止」条件にあるときのクリック機能の位置を示し、ゼロ単位がダイヤル設定されており、ボタン70は押し下げられていない。ボタン70が「静止」条件にあるとき、ゲージ要素110上のカム機能117は数字スリーブ60上のクリッカアーム67に接触しておらず、したがって収納またはダイヤル設定中、クリッカアーム67はたわまないことを見ることができる。
ダイヤル設定中、ゲージ要素110は近位方向に並進運動し、したがってカム117は、軸方向にクリッカアーム67と位置合わせされなくなる。用量送達の開始時、駆動スリーブ40が遠位方向に並進運動すると、駆動スリーブ40上のランプ47がクリッカアーム67を径方向外方に押す。用量送達中、ゲージ要素110は再び遠位方向に並進運動し、用量送達の終了に近づくと、クリッカアーム67はゲージ要素110上のカム117に接触する。用量が小さい場合、カム117およびクリッカアーム67は用量の開始時に接触している。図11b〜図12cは、構成要素の相互作用を示す。用量送達後、ボタン70が解放され、用量終了機構はその「静止」位置へ戻る。
図11bで、用量がダイヤル設定され、ほぼ1周のダイヤルターンが数字スリーブ60に加えられる。ゲージ要素110は、ゼロ単位位置から離れる方へ軸方向に並進運動し、したがってカム117は軸方向にクリッカアーム67と位置合わせされなくなる。図11cは、投薬の開始を示し、ボタン70が押し下げられて用量投薬を開始し、駆動スリーブ40が軸方向に並進運動する。駆動スリーブ40上のランプ47は、クリッカアーム67を径方向に押して、ゲージ要素110上のカム117との径方向の位置合わせを解除および係合する。
図12aは、用量投薬の終了時の機構を示し、約4単位が残っている。ゲージ要素110は、そのゼロ単位位置の方へ軸方向に戻り、したがってカム117は、軸方向にクリッカアーム67と位置合わせされる。数字スリーブ60の回転により、クリッカアーム67はカム117に接触し、したがってクリッカアーム67は径方向内方へ押される。約2単位が残っているとき、数字スリーブ60はさらに回転し、クリッカアーム67はカム117のプロファイルをたどる(図12b)。この径方向のたわみが、クリッカアーム67を「付勢」し、弾性エネルギーを貯蔵する。図12cで、数字スリーブ60がそのゼロ単位回転位置に到達すると、投薬は完了する。クリッカアーム67は、カム117の鋭い縁部から落ちて凹部118に入る。弾性エネルギーが解放され、クリッカアーム67は径方向外方にはね返ってカム117に接触し、別個の「クリック」を生み出す。
主な実施形態では、親ねじ30は、駆動スリーブ40の回転ごとに固定の変位量だけ前進する。他の実施形態では、変位速度は変動することがある。たとえば、親ねじ30は、1回転当たり大きい変位量だけ前進して、第1の量の薬剤をカートリッジ100から投薬し、次いで1回転当たりより小さい変位量だけ前進して、カートリッジ100の残りを投薬することができる。これは、機構の所与の変位に対して、カートリッジ100から投薬される第1の用量の体積が他の用量より小さいことを補償することができるために有利である。
図22〜図24を使用して、針が阻止されたことを使用者に伝える実施形態について、上記の機能を含む薬物送達デバイスに関してより詳細に説明する。したがって、本実施形態では、上記の図および説明、ならびに参照番号を参照する。薬物送達デバイスは、ここではハウジングが2つの構成要素、すなわちハウジング10および本体インサート150を含むことのみが異なる。本体インサート150は、図1〜図21に示すハウジング10の歯14のリングに対応する歯151のリングを含む。リング状またはスリーブ状の本体インサート150は、ハウジング10に固定して取り付けられる。同様に、以下に記載する実施形態は、図22〜図27に記載および図示されている2つの部材からなるハウジング10、150によって、または図1〜図21に記載されている1つの部材からなる(一体の)ハウジング10によって実現することができる。
上述したように、薬物送達デバイスは、ロッキングリング160を含む回転ひずみ感知配置を含み、ロッキングリング160は、ハウジング10のフランジ状の内壁12内に軸方向に拘束されるがハウジング10に対して自由に回転することができる。そのため、ロッキングリング160は、ロッキングリング160の外面に溝161を含む。溝161は、内壁12の近位端に設けられた径方向突出部16と協働する(図24参照)。ロッキングリング160は、その遠位端で駆動スリーブ40内に収容される。親ねじ30は、スプライン連結によってロッキングリング160内で軸方向に可動であり、駆動スリーブ40は、用量投薬中にロッキングリング160とともに回転する。ロッキングリング160は、その遠位端に、その外面から突出する径方向ピン163をさらに含み、径方向ピン163は、駆動スリーブ40内のL字形トラック(たとえば、スロット)48内に収容される。L字形トラック48は、第1の軸方向セクションと、薬物送達デバイスの長手方向軸Iに直交する第2のセクション(水平セクション)とを含む。L字形トラック48は、駆動スリーブ40を貫通する。
スプライン49および溝35を含む駆動スリーブ40と親ねじ30との間のスプライン連結は、ロッキングリング160から相当の距離をあけて位置する。
ボタン70を押し下げてボタン70を第1の伸長位置から第2の後退位置へ動かすことによって薬剤用量の送達を開始した後、駆動スリーブ40を遠位に動かして、その歯41を本体インサート150のクラッチ歯151から係合解除する。これにより、ロッキングリング160のロッキングピン163をL字形トラック48内で第1のセクションに沿って動かし、したがってロッキングピン163は、L字形トラック48の「肘部」内に位置する。これは図23に示されている。
ハウジングが一体形成される代替実施形態では、上述したように、ボタン70の後退位置で、駆動スリーブ40はクラッチ歯14から係合解除される。
駆動スリーブ40が本体インサート150またはハウジング10から解放された後、ねじりばね90の投薬トルクが親ねじ30へ伝達される。次いで、親ねじ30は、本体のねじ山と駆動スリーブのスプラインとの間のセクションに沿ってねじてたわみ、このセクションにわたってトルクが加えられる。このねじれ運動により、駆動スリーブ40およびそれとともにL字形トラック48が回転し、その後ロッキングリング160のロッキングピン163が第2の水平セクションの端部に達する(図24参照)。
この状態で、ボタン70が解放された場合でも、駆動スリーブ40がクラッチばね130の作用を受けてその近位開始位置に戻ることが防止される。これらの構成要素は、ねじれ(駆動)ばね90からのトルクの伝達が0単位止め機能の係合によって止められるまで、この状態のままである。
したがって、薬物送達デバイスが0単位止め具に到達したが、針が阻止され、機構内にねじれが残っている場合、ボタン70は、その押し下げ位置のままであり、針が阻止されているというフィードバックを使用者に提供する。針が阻止された結果、デバイスが0単位に到達しない場合、ボタン70もまたその押し下げ位置にとどまるが、用量ディスプレイも0に戻らず、用量が完了していないという追加のフィードバックを提供する。
ボタン位置によって提供されるフィードバックの明瞭性を助けるために、たとえば図31に示すように、フラグまたは他の機能、たとえば色付マーキング(フラグ)78を、ボタン70の外面に設けることができる。機構内にねじれが残っている場合、図30に示すように、ボタン70はその後退した第2の位置を維持し、フラグ78は用量選択部80によって隠される。使用者は、そこからデバイスの状態を容易に導出する。フラグ78が見える場合、用量送達が正確に終了にしたことが、使用者に分かる(図31参照)。
針が阻止された条件では、駆動スリーブ40はボタン70をその第1の伸長(近位)位置へ能動的に押し戻さないが、デバイスが上下逆さに保持された場合、ボタン70がその第2の位置に落ちる可能性がある。これを防止するために、ボタン70の重量に耐えるのに十分であったが、クラッチばね130の力(駆動スリーブ40およびクラッチ板120を介してボタン70に加えられる)に耐えるには十分でない戻り止め機能を、ボタン70と用量選択部80との間に追加することができる。この機能によって、ボタン70は、針が阻止されていない条件で、駆動スリーブ40によって(クラッチ板120を介して)駆動されたときのみ、その第1の位置に戻るはずである。
図25に示されている別の実施形態では、使用者は、投薬の途中に、自身がボタン70に加えている遠位に作用する軸方向の力を除去することによって、薬物送達デバイスの投薬動作を中断することが可能になることが望ましい。
この実施形態では、使用者がボタン70から力を除去した場合、駆動スリーブは、本体インサート150のクラッチ歯151(または、ハウジング10の歯14)に再係合し、本体インサート150の回転を止め、薬物送達デバイスの投薬を止める。図22〜図24に関して上述した実施形態では、駆動スリーブ40は、ボタン70が解放された場合でも、(L字形トラック48によって)遠位位置で保持される。この遠位位置で、駆動スリーブ40は、本体インサート150のクラッチ歯151に再係合することができず、投薬が継続する可能性が高い。
対照的に、図25に示す実施形態では、L字形トラック48の第2の水平セクションは広がっており(図25の破線48a参照)、すなわち薬物送達デバイスの軸方向により大きい幅を有し、ボタン70への圧力が低減された瞬間に、駆動スリーブ40が近位に動くことを可能にし、その後、本体インサート150のクラッチ歯151に係合し始め、投薬を止めるが、その開始位置へ完全に戻ることを防止し、したがって針が阻止された条件に関する使用者フィードバックが維持される。
図26〜図27に示されている別の実施形態の動作原理は、図22〜図25に関して説明した実施形態のものに非常に類似している。主な違いは、ロッキングリング160と駆動スリーブ40との間の相対的な回転を実現するために必要とされる親ねじ30の可撓性、およびそれによって引き起こされるL字形トラック48の水平セクションの係合が、駆動スリーブ40上の少なくとも1つの可撓アーム49aの可撓性によって置き換えられたことである。アーム49aは、駆動スリーブ40の平面内で長手方向Iに沿って延び、軸方向溝35を介して親ねじ30に係合するスプライン機能49bを含む。スプライン機能49bは、可撓アーム49aおよび駆動スリーブ40の内面から延びる。可撓アーム49aは、駆動スリーブ40内の切り取りによって形成することができる。
図27に示されているように、可撓アーム49aは、ねじりばね90のトルクによって、接線方向(長手方向Iに直交する)にねじれている。それによって、機構はより信頼性が高くなる。この実施形態の動作に関して、図22〜図24に関して説明した実施形態が参照され、親ねじのねじれは、可撓アーム49aのねじれによって置き換えられる。ボタン70は、可撓アーム49aをねじる残留トルクがシステム内にある限り、その第1の伸長位置に戻ることができない。
別の実施形態が、図28に示されている。この実施形態では、駆動スリーブ40内に本体インサートおよびL字形トラックが存在しない。対照的に、この実施形態では、投薬中に存在する(阻止された針が嵌っている場合、用量の終了時も負荷がかかったままである)ねじれ負荷経路が、数字スリーブ下部60aからクラッチ板120へ進む。用量が投薬されたとき、クラッチ板120は数字スリーブ下部60aに対して遠位へ動かされるが、構成要素はスプライン係合されたままである。この実施形態では、数字スリーブのスプライン面68のうちクラッチ板120へねじれを伝達する側が、数字スリーブ上部60b(数字スリーブ下部60aに堅く連結され、したがって単一の構成要素をともに機能的に形成する)によって形成され、傾斜面を有する。
この数字スリーブの傾斜スプライン面68を介して、数字スリーブ上部60bとクラッチ板120との間に十分なねじれが加えられる限り、その結果生じる軸方向の負荷は、クラッチばね130からの軸方向の力に反応するのに十分である。これにより、クラッチ板120は遠位位置で保持され、それによってボタン70が使用者によって解放された場合でも、ねじれが機構内に残っている限り、クラッチばね130がボタン70を第1の位置に戻すことを防止する。ボタン70のフラグ78は、用量選択部80によって隠れたままであり、薬物送達デバイスに何らかの問題があり、用量投薬が正確に終了しなかったことを示す。このボタン保持機構は、前述した実施形態と同様に針が阻止されていることを使用者に警告する。ボタン70は、システム内のトルクが解放された場合のみ、クラッチばね130によってその第1の伸長位置へ戻される。
別法として、第5の実施形態では、使用者は、自身がボタン70に加えている力を除去することによって、用量投薬を中断することが可能になる。この実施形態では、投薬中にクラッチ板120へトルクを伝達する数字スリーブ60内のスプラインは、数字スリーブ上部60b上の傾斜面としてのみ純粋に形成されなくなる。代わりに、このスプラインは、部分的には数字スリーブ上部60b上の傾斜スプライン面68によって形成され、部分的には薬物送達デバイスの長手方向軸に少なくとも平行に延びる数字スリーブ下部60a上のスプライン面68bによって形成される。別法として、数字スリーブ下部60aのスプライン面68bは、長手方向軸に対して数字スリーブ上部60bのスプライン面68とは逆の角度で形成することができる。したがって(表面68bがデバイスの軸に平行であるか、それとも反対に傾斜しているかにかかわらず)、デバイスが投薬しており、このインターフェースに負荷がかかっているとき、使用者がボタン70から力を解放した場合、クラッチ板120は、数字スリーブ上部60bの傾斜面に接触するまで、近位に動くことが可能になる。この動きは、駆動スリーブ40が本体インサート150に係合して投薬を止めることを可能にするのに十分であるが、ボタン70をその完全近位位置、すなわち第1の位置に戻すには十分でなく、したがって使用者はなお、たとえばフラグ78を見ることによって、針が阻止されていることを認識するはずである。