本明細書には、カバノキ花粉、例えば、天然Bet v 1、Betula pendulaのカバノキ花粉抽出物(BPE)、Betula nigraのBPE、またはBetula populifoliaのBPEに結合する完全ヒトモノクローナル抗体およびその抗原結合性断片が提供される。抗体は、カバノキアレルゲンへと感作患者を曝露した後のin vivoにおけるBet v 1アレルゲンへの結合に有用であり得、そのため、天然Bet v 1、Betula pendulaのカバノキ花粉抽出物(BPE)、Betula nigraのBPE、もしくはBetula populifoliaのBPEのクリアランスを促進するか、またはマスト細胞もしくは好塩基球の表面における予め形成されたIgEへのアレルゲンの結合を遮断するよう作用することができる。そうすることにより、本明細書に記載の抗体は、マスト細胞または好塩基球からのヒスタミンまたは他の炎症性メディエーターの放出を防止し、それによって、カバノキアレルゲンに対し感作された患者において観察される有害な効果を防止するか、または減弱化することができる。ある特定の実施形態では、抗体は、くしゃみ、うっ血、鼻詰まり、咳嗽、喘鳴、気管支収縮、鼻炎、または結膜炎などの、カバノキアレルゲンまたはカバノキに関連するアレルゲンに対して感受性の患者における少なくとも1つの症状を低下、最小化、または防止することができる場合がある。一部の実施形態では、抗体は、喘息応答、アナフィラキシー、さらには死亡などの感作個体におけるカバノキ花粉アレルゲンへの曝露に関連するさらにより重篤なin vivo合併症を防止することができる場合がある。
本明細書において提供される抗体は、全長、例えば、IgG1もしくは、およびIgG4抗体であってもよく、または抗原結合ポーション、例えば、Fab、F(ab’)2またはscFv断片のみを含む場合もあり、機能性に影響を及ぼすよう、例えば、残存エフェクター機能を排除するよう修飾されていてもよい(Reddyら、2000年、J. Immunol. 164巻:1925〜1933頁)。
本発明の第1の態様は、天然Bet v 1、Betula pendulaのカバノキ花粉抽出物(BPE)、Betula nigraのBPE、および/またはBetula populifoliaのBPEに結合する単離されたヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
一実施形態では、単離されたヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片は、天然Bet v 1、Betula pendulaのBPE、Betula nigraのBPE、またはBetula populifoliaのBPEのアレルゲン特異的IgEへの結合を阻害する。
一実施形態では、単離されたヒト抗体またはその抗原結合性断片は、10−8Mに等しいかまたはそれより低いKDでBet v 1に結合する。一実施形態では、ヒト抗体またはその抗原結合性断片は、約10−8から約10−11Mの範囲のKDでBet v 1に結合する。一実施形態では、単離されたヒト抗体またはその抗原結合性断片は、27.9nMに等しいかまたはそれより低いKDでBet v 1に結合する。一実施形態では、単離されたヒト抗体またはその抗原結合性断片は、約0.66nMから約27.9nMの範囲の等しいKDでBet v 1に結合する。
一実施形態では、単離されたヒト抗体は、完全ヒトモノクローナル抗体である。
一実施形態では、単離されたヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片は、Aln g 1、Cor a 1、Car b、Que a 1、Api g 2、Api g 1、Dau c 1、Mal d 1、Ost c 1、Fag s 1、およびCas s 1からなる群から選択される1つまたは複数のアレルゲンと交差反応する。このようなアレルゲンは、PR−10タンパク質、またはいわゆる感染特異的(PR)タンパク質(pathogenesis−related protein)とも称され得る。さらなるPR−10タンパク質(Bet v 1ファミリーのメンバー)として、Act c 8およびAct d 8(キウイ)、Ara h 8(落花生)、Pru ar 1(アンズ)、Pru av 1(サクランボ)、Pru p 1(モモ)、Pyr c 1(セイヨウナシ)、Gly m 4(ダイズ)、Vig r 1(リョクトウ)、Sola I 4(トマト)、Cuc m 3(メロン)、Rub i 1(ラズベリー)、およびFra a 1(イチゴ)も挙げられる。これらのアレルゲンは、ブナ目に関連するアレルゲンとみなすこともできる。
一実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、Aln g 1、Mal d 1、Api g 1、Car b 1、およびCor a 1からなる群から選択される1つまたは複数のアレルゲンと交差反応する。
一実施形態では、単離されたヒト抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号2、18、34、50、66、82、98、114、130、146、162、178、194、210、226、242、258、274、282、および290からなる群から選択される重鎖可変領域(HCVR)配列のうちのいずれか1つに含有される3つの重鎖CDR(HCDR1、HCDR2およびHCDR3)、ならびに配列番号10、26、42、58、74、90、106、122、138、154、170、186、202、218、234、250、266、および298からなる群から選択される軽鎖可変領域(LCVR)配列のうちのいずれか1つに含有される3つの軽鎖CDR(LCDR1、LCDR2およびLCDR3)を含む。HCVRおよびLCVRアミノ酸配列内のCDRを特定するための方法および技法は当技術分野で周知であり、本明細書に開示される、指定したHCVRおよび/またはLCVRアミノ酸配列内のCDRを特定するために使用することができる。CDRの境界を特定するために使用することができる例示的な慣例として、例えば、Kabat定義、Chothia定義およびAbM定義が挙げられる。一般用語では、Kabat定義は、配列可変性に基づき、Chothia定義は、構造的ループ領域の位置に基づき、AbM定義は、KabatアプローチとChothiaアプローチの折衷である。例えば、Kabat、「Sequences of Proteins ofImmunological Interest」、National Institutes of Health,Bethesda, Md.(1991年);Al-Lazikaniら、(1997年)、J. Mol. Biol. 273巻:927〜948頁;およびMartinら、(1989年)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86巻:9268〜9272頁を参照のこと。抗体内のCDR配列を特定するために、公開データベースを利用することもできる。
一実施形態では、単離されたヒト抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号114、146、98、および290からなる群から選択される重鎖可変領域(HCVR)配列のうちのいずれか1つに含有される3つの重鎖CDR(HCDR1、HCDR2およびHCDR3)、ならびに配列番号122、154、106、および298からなる群から選択される軽鎖可変領域(LCVR)配列のうちのいずれか1つに含有される3つの軽鎖CDR(LCDR1、LCDR2およびLCDR3)を含む。
一実施形態では、単離されたヒト抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号2、18、34、50、66、82、98、114、130、146、162、178、194、210、226、242、258、274、282、および290からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するHCVRを含む。
一実施形態では、単離されたヒト抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号114、146、98、および290からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するHCVRを含む。
一実施形態では、単離されたヒト抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号10、26、42、58、74、90、106、122、138、154、170、186、202、218、234、250、266、および298からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するLCVRを含む。
一実施形態では、単離されたヒト抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号122、154、106、および298からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するLCVRを含む。
一実施形態では、単離されたヒト抗体またはその抗原結合性断片は、(a)配列番号2、18、34、50、66、82、98、114、130、146、162、178、194、210、226、242、258、274、282、および290からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するHCVR、ならびに(b)配列番号10、26、42、58、74、90、106、122、138、154、170、186、202、218、234、250、266、および298からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するLCVRを含む。
一実施形態では、単離されたヒト抗体またはその抗原結合性断片は、(a)配列番号114、146、98、および290からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するHCVR、ならびに(b)配列番号122、154、106、および298からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するLCVRを含む。
一実施形態では、単離されたヒト抗体またはその抗原結合性断片は、
(a)配列番号4、20、36、52、68、84、100、116、132、148、164、180、196、212、228、244、260、276、284、および292からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するHCDR1ドメイン、
(b)配列番号6、22、38、54、70、86、102、118、134、150、166、182、198、214、230、246、262、278、286、および294からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するHCDR2ドメイン、
(c)配列番号8、24、40、56、72、88、104、120、136、152、168、184、200、216、232、248、264、280、288、および296からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するHCDR3ドメイン、
(d)配列番号12、28、44、60、76、92、108、124、140、156、172、188、204、220、236、252、268、および300からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するLCDR1ドメイン、
(e)配列番号14、30、46、62、78、94、110、126、142、158、174、190、206、222、238、254、270、および302からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するLCDR2ドメイン、ならびに
(f)配列番号16、32、48、64、80、96、112、128、144、160、176、192、208、224、240、256、272、および304からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するLCDR3ドメイン
を含む。
一実施形態では、単離されたヒト抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号2/10、18/26、34/42、50/58、66/74、82/90、98/106、114/122、130/138、146/154、162/170、178/186、194/202、210/218、226/234、242/250、258/266、274/266、282/266、および290/298からなる群から選択されるHCVR/LCVRアミノ酸配列ペアを含む。
一実施形態では、単離されたヒト抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号114/122、146/154、98/106、および290/298からなる群から選択されるHCVR/LCVRアミノ酸配列ペアを含む。
一実施形態では、Bet v 1に結合する単離されたヒト抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号146/154および290/298からなる群から選択されるHCVR/LCVRアミノ酸配列ペアを含む。
一実施形態では、Bet v 1に結合する単離されたヒト抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号306の約23位から約44位に及ぶアミノ酸残基、配列番号306の約44位から約70位に及ぶアミノ酸残基、配列番号306の約2位から約19位に及ぶアミノ酸残基、配列番号306の約57位から約70位に及ぶアミノ酸残基、および配列番号306の約81位から約96位に及ぶアミノ酸残基からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸配列と相互作用する。
一実施形態では、Bet v 1に結合する単離されたヒト抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号306の約23位から約44位に及ぶアミノ酸残基と相互作用する。
一実施形態では、Bet v 1に結合する単離されたヒト抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号306の約23位から約43位に及ぶアミノ酸残基と相互作用する。
一実施形態では、Bet v 1に結合する単離されたヒト抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号306の約44位から約70位に及ぶアミノ酸残基と相互作用する。
一実施形態では、Bet v 1に結合する単離されたヒト抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号306の約44位から約56位に及ぶアミノ酸残基と相互作用する。
一実施形態では、Bet v 1に結合する単離されたヒト抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号306の約2位から約19位に及ぶアミノ酸残基と相互作用する。
一実施形態では、Bet v 1に結合する単離されたヒト抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号306の約57位から約70位に及ぶアミノ酸残基と相互作用する。
一実施形態では、Bet v 1に結合する単離されたヒト抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号306の約57位から約66位に及ぶアミノ酸残基と相互作用する。
一実施形態では、Bet v 1に結合する単離されたヒト抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号306の約81位から約96位に及ぶアミノ酸残基と相互作用する。
一実施形態では、Bet v 1に結合する単離されたヒト抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号306の約81位から約89位に及ぶアミノ酸残基と相互作用する。
一実施形態では、Bet v 1に結合する単離されたヒト抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号307、308、309、310、および311からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸配列と相互作用する。配列番号307、308、309、310、または311を含むエピトープは、C末端またはN末端のいずれかにおいて、1から5個のアミノ酸、または5から10個のアミノ酸によって伸長され得る。例えば、配列番号311のエピトープは、5から10個のアミノ酸によって伸長される場合、配列番号115のエピトープを包含する。言い換えると、配列番号311を含むエピトープは、例えば、配列番号315のエピトープを含む。
一実施形態では、Bet v 1に結合する単離されたヒト抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号307と相互作用する。
一実施形態では、Bet v 1に結合する単離されたヒト抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号308と相互作用する。
一実施形態では、Bet v 1に結合する単離されたヒト抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号309と相互作用する。
一実施形態では、Bet v 1に結合する単離されたヒト抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号310と相互作用する。
一実施形態では、Bet v 1に結合する単離されたヒト抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号311と相互作用する。
一実施形態では、Bet v 1に結合する単離されたヒト抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号315と相互作用する。
一実施形態では、Bet v 1に結合する単離されたヒト抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号307、308、309、310、311、および315からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸配列と相互作用し、配列番号114/122、146/154、98/106、および290/298からなる群から選択されるHCVR/LCVR配列ペアを含む。
一実施形態では、配列番号307と相互作用する単離されたヒト抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号146の重鎖可変領域に含有される3つのHCDRおよび配列番号154の軽鎖可変領域に含有される3つのLCDRを含む。
一実施形態では、配列番号310と相互作用する単離されたヒト抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号290の重鎖可変領域に含有される3つのHCDRおよび配列番号298の軽鎖可変領域に含有される3つのLCDRを含む。
一実施形態では、Bet v 1と結合するヒト抗体またはその抗原結合性断片は、それぞれ、配列番号148、150、および152のHCDR1、HCDR2およびHCDR3アミノ酸配列、ならびに、それぞれ、配列番号156、158、および160のLCDR1、LCDR2およびLCDR3アミノ酸配列を含む。
一実施形態では、Bet v 1に結合するヒト抗体またはその抗原結合性断片は、それぞれ、配列番号292、294、および296のHCDR1、HCDR2およびHCDR3アミノ酸配列、ならびに、それぞれ、配列番号300、302、および304のLCDR1、LCDR2およびLCDR3アミノ酸配列を含む。
一実施形態では、Bet v 1に結合するヒト抗体またはその抗原結合性断片は、それぞれ、配列番号4、6、および8のHCDR1、HCDR2およびHCDR3アミノ酸配列、ならびに、それぞれ、配列番号12、14、および16のLCDR1、LCDR2およびLCDR3アミノ酸配列を含む。
一実施形態では、Bet v 1に結合するヒト抗体またはその抗原結合性断片は、それぞれ、配列番号20、22、および24のHCDR1、HCDR2およびHCDR3アミノ酸配列、ならびに、それぞれ、配列番号28、30、および32のLCDR1、LCDR2およびLCDR3アミノ酸配列を含む。
一実施形態では、Bet v 1に結合するヒト抗体またはその抗原結合性断片は、それぞれ、配列番号36、38、および40のHCDR1、HCDR2およびHCDR3アミノ酸配列、ならびに、それぞれ、配列番号44、46、および48のLCDR1、LCDR2およびLCDR3アミノ酸配列を含む。
一実施形態では、Bet v 1に結合するヒト抗体またはその抗原結合性断片は、それぞれ、配列番号52、54、および56のHCDR1、HCDR2およびHCDR3アミノ酸配列、ならびに、それぞれ、配列番号60、62、および64のLCDR1、LCDR2およびLCDR3アミノ酸配列を含む。
一実施形態では、Bet v 1に結合するヒト抗体またはその抗原結合性断片は、それぞれ、配列番号68、70、および72のHCDR1、HCDR2およびHCDR3アミノ酸配列、ならびに、それぞれ、配列番号76、78、および80のLCDR1、LCDR2およびLCDR3アミノ酸配列を含む。
一実施形態では、Bet v 1に結合するヒト抗体またはその抗原結合性断片は、それぞれ、配列番号84、86、および88のHCDR1、HCDR2およびHCDR3アミノ酸配列、ならびに、それぞれ、配列番号92、94、および96のLCDR1、LCDR2およびLCDR3アミノ酸配列を含む。
一実施形態では、Bet v 1に結合するヒト抗体またはその抗原結合性断片は、それぞれ、配列番号100、102、および104のHCDR1、HCDR2およびHCDR3アミノ酸配列、ならびに、それぞれ、配列番号108、110、および112のLCDR1、LCDR2およびLCDR3アミノ酸配列を含む。
一実施形態では、Bet v 1に結合するヒト抗体またはその抗原結合性断片は、それぞれ、配列番号116、118、および120のHCDR1、HCDR2およびHCDR3アミノ酸配列、ならびに、それぞれ、配列番号124、126、および128のLCDR1、LCDR2およびLCDR3アミノ酸配列を含む。
一実施形態では、Bet v 1に結合するヒト抗体またはその抗原結合性断片は、それぞれ、配列番号132、134、および136のHCDR1、HCDR2およびHCDR3アミノ酸配列、ならびに、それぞれ、配列番号140、142、および144のLCDR1、LCDR2およびLCDR3アミノ酸配列を含む。
一実施形態では、Bet v 1に結合するヒト抗体またはその抗原結合性断片は、それぞれ、配列番号164、166、および168のHCDR1、HCDR2およびHCDR3アミノ酸配列、ならびに、それぞれ、配列番号172、174、および176のLCDR1、LCDR2およびLCDR3アミノ酸配列を含む。
一実施形態では、Bet v 1に結合するヒト抗体またはその抗原結合性断片は、それぞれ、配列番号180、182、および184のHCDR1、HCDR2およびHCDR3アミノ酸配列、ならびに、それぞれ、配列番号188、190、および192のLCDR1、LCDR2およびLCDR3アミノ酸配列を含む。
一実施形態では、Bet v 1に結合するヒト抗体またはその抗原結合性断片は、それぞれ、配列番号196、198、および200のHCDR1、HCDR2およびHCDR3アミノ酸配列、ならびに、それぞれ、配列番号204、206、および208のLCDR1、LCDR2およびLCDR3アミノ酸配列を含む。
一実施形態では、Bet v 1に結合するヒト抗体またはその抗原結合性断片は、それぞれ、配列番号212、214、および216のHCDR1、HCDR2およびHCDR3アミノ酸配列、ならびに、それぞれ、配列番号220、222、および224のLCDR1、LCDR2およびLCDR3アミノ酸配列を含む。
一実施形態では、Bet v 1に結合するヒト抗体またはその抗原結合性断片は、それぞれ、配列番号228、230、および232のHCDR1、HCDR2およびHCDR3アミノ酸配列、ならびに、それぞれ、配列番号236、238、および234のLCDR1、LCDR2およびLCDR3アミノ酸配列を含む。
一実施形態では、Bet v 1に結合するヒト抗体またはその抗原結合性断片は、それぞれ、配列番号244、246、および248のHCDR1、HCDR2およびHCDR3アミノ酸配列、ならびに、それぞれ、配列番号252、254、および256のLCDR1、LCDR2およびLCDR3アミノ酸配列を含む。
一実施形態では、Bet v 1に結合するヒト抗体またはその抗原結合性断片は、それぞれ、配列番号260、262、および264のHCDR1、HCDR2およびHCDR3アミノ酸配列、ならびに、それぞれ、配列番号268、270、および272のLCDR1、LCDR2およびLCDR3アミノ酸配列を含む。
一実施形態では、Bet v 1に結合するヒト抗体またはその抗原結合性断片は、それぞれ、配列番号276、278、および280のHCDR1、HCDR2およびHCDR3アミノ酸配列、ならびに、それぞれ、配列番号268、270、および272のLCDR1、LCDR2およびLCDR3アミノ酸配列を含む。
一実施形態では、Bet v 1に結合するヒト抗体またはその抗原結合性断片は、それぞれ、配列番号284、286、および288のHCDR1、HCDR2およびHCDR3アミノ酸配列、ならびに、それぞれ、配列番号268、270、および272のLCDR1、LCDR2およびLCDR3アミノ酸配列を含む。
一実施形態では、本発明は、天然Bet v 1、Betula pendulaのカバノキのBPE、Betula nigraのBPE、またはBetula populifoliaのBPEに結合する完全ヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片を提供し、抗体またはその断片は、以下の特徴のうちの1つまたは複数を呈する:(i)配列番号2、18、34、50、66、82、98、114、130、146、162、178、194、210、226、242、258、274、282、および290からなる群から選択されるアミノ酸配列、もしくは少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する、その実質的に類似する配列を有するHCVRを含む、(ii)配列番号10、26、42、58、74、90、106、122、138、154、170、186、202、218、234、250、266、および298からなる群から選択されるアミノ酸配列、もしくは少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する、その実質的に類似する配列を有するLCVRを含む、(iii)配列番号8、24、40、56、72、88、104、120、136、152、168、184、200、216、232、248、264、280、288、および296からなる群から選択されるアミノ酸配列、もしくは少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する、その実質的に類似する配列を有するHCDR3ドメイン、ならびに配列番号16、32、48、64、80、96、112、128、144、160、176、192、208、224、240、256、272、および304からなる群から選択されるアミノ酸配列、もしくは少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する、その実質的に類似する配列を有するLCDR3ドメインを含む、(iv)配列番号4、20、36、52、68、84、100、116、132、148、164、180、196、212、228、244、260、276、284、および292からなる群から選択されるアミノ酸配列、もしくは少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する、その実質的に類似する配列を有するHCDR1ドメイン、配列番号6、22、38、54、70、86、102、118、134、150、166、182、198、214、230、246、262、278、286、および294からなる群から選択されるアミノ酸配列、もしくは少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する、その実質的に類似する配列を有するHCDR2ドメイン、配列番号12、28、44、60、76、92、108、124、140、156、172、188、204、220、236、252、268、および300からなる群から選択されるアミノ酸配列、もしくは少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する、その実質的に類似する配列を有するLCDR1ドメイン、ならびに配列番号14、30、46、62、78、94、110、126、142、158、174、190、206、222、238、254、270、および302からなる群から選択されるアミノ酸配列、もしくは少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する、その実質的に類似する配列を有するLCDR2ドメインを含む、(v)10−8と等しいかもしくはそれより低く、約10−8から約10−11の範囲のKDでBet v 1に結合する、(vi)アナフィラキシーもしくは炎症の少なくとも1つの動物モデルで有効性を示す、または(vii)天然Bet v 1、Betula pendulaのカバノキのBPE、Betula nigraのBPE、またはBetula populifoliaのBPEへの結合に関して、参照抗体と競合する。
一実施形態では、「参照抗体」として、例えば、2/10、18/26、34/42、50/58、66/74、82/90、98/106、114/122、130/138、146/154、162/170、178/186、194/202、210/218、226/234、242/250、258/266、274/266、282/266、および290/298からなる群から選択される重鎖および軽鎖アミノ酸配列ペアの組合せを有する抗体が挙げられ得る。
本発明は、修飾されたグリコシル化パターンを有する抗体を包含する。一部の適用では、望ましくないグリコシル化部位を除去するための修飾、または例えば、抗体依存性細胞性細胞傷害(ADCC)機能を増加させるためのフコース部分の除去が有用であり得る(Shieldら、2002年、JBC 277巻:26733頁を参照のこと)。他の適用では、補体依存性細胞傷害(CDC)を修飾するために、ガラクトシル化の修飾がなされ得る。
第2の態様は、天然Bet v 1、Betula pendulaのカバノキのBPE、Betula nigraのBPE、またはBetula populifoliaのBPEへの特異的結合に関して、配列番号2、18、34、50、66、82、98、114、130、146、162、178、194、210、226、242、258、274、282、および290からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(HCVR)の相補性決定領域(CDR)、ならびに配列番号10、26、42、58、74、90、106、122、138、154、170、186、202、218、234、250、266、および298からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(LCVR)のCDRを含む抗体または抗原結合性断片と競合する、単離された抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
一実施形態は、天然Bet v 1、Betula pendulaのカバノキのBPE、Betula nigraのBPE、またはBetula populifoliaのBPEへの特異的結合に関して、配列番号114、146、98、および290からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(HCVR)の相補性決定領域(CDR)、ならびに配列番号122、154、106、および298からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(LCVR)のCDRを含む抗体または抗原結合性断片と競合する、単離された抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
関連する実施形態では、本発明は、天然Bet v 1、Betula pendulaのカバノキのBPE、Betula nigraのBPE、またはBetula populifoliaのBPEへの特異的結合に関して、配列番号2/10、18/26、34/42、50/58、66/74、82/90、98/106、114/122、130/138、146/154、162/170、178/186、194/202、210/218、226/234、242/250、258/266、274/266、282/266、および290/298からなる群から選択される重鎖および軽鎖配列ペア内に含有される重鎖および軽鎖CDRを含む抗体または抗原結合性断片と競合する、単離された抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
第3の態様は、配列番号2、18、34、50、66、82、98、114、130、146、162、178、194、210、226、242、258、274、282、および290からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(HCVR)の相補性決定領域(CDR)、ならびに配列番号10、26、42、58、74、90、106、122、138、154、170、186、202、218、234、250、266、および298からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(LCVR)のCDRを含む抗体または抗原結合性断片と同一のBet v 1上のエピトープに結合する、単離された抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
一実施形態は、配列番号114、146、98、および290からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(HCVR)の相補性決定領域(CDR)、ならびに配列番号122、154、106、および298からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(LCVR)のCDRを含む抗体または抗原結合性断片と同一のBet v 1上のエピトープに結合する、単離された抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
関連する実施形態では、本明細書には、配列番号2/10、18/26、34/42、50/58、66/74、82/90、98/106、114/122、130/138、146/154、162/170、178/186、194/202、210/218、226/234、242/250、258/266、274/266、282/266、および290/298からなる群から選択される重鎖および軽鎖配列ペア内に含有される重鎖および軽鎖CDRを含む抗体または抗原結合性断片と同一のBet v 1上のエピトープに結合する、単離された抗体またはその抗原結合性断片が提供される。
第4の態様では、本発明は、Bet v 1抗体またはその断片をコードする核酸分子が提供される。このような核酸を保有する組換え発現ベクター、およびこのようなベクターが導入された宿主細胞も、抗体の産生を可能にする条件下で宿主細胞を培養し、産生された抗体を回収することによる、抗体を産生する方法として、本明細書において企図される。
一実施形態では、本明細書には、天然Bet v 1、Betula pendulaのBPE、Betula nigraのBPE、またはBetula populifoliaのBPEに結合するヒトモノクローナル抗体またはその断片をコードする核酸分子が提供される。
一実施形態では、本明細書には、配列番号1、17、33、49、65、81、97、113、129、145、161、177、193、209、225、241、257、273、281、および289からなる群から選択される核酸配列、またはその少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%の相同性を有する実質的に同一な配列によってコードされるHCVRを含む抗体またはその断片が提供される。
一実施形態では、HCVRは、配列番号113、145、257、および289からなる群から選択される核酸配列によってコードされる。
一実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号9、25、41、57、73、89、105、121、137、153、169、185、201、217、233、249、265、および297からなる群から選択される核酸配列、またはその少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%の相同性を有する実質的に同一な配列によってコードされるLCVRをさらに含む。
一実施形態では、LCVRは、配列番号121、153、265、および297からなる群から選択される核酸配列によってコードされる。
一実施形態では、本明細書には、配列番号7、23、39、55、71、87、103、119、135、151、167、183、199、215、231、247、263、279、287、および295からなる群から選択されるヌクレオチド配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有する、その実質的に類似する配列によってコードされるHCDR3ドメイン、ならびに配列番号15、31、47、63、79、95、111、127、143、159、175、191、207、223、239、255、271、および303からなる群から選択されるヌクレオチド配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有する、その実質的に類似する配列によってコードされるLCDR3ドメインを含む抗体または抗体の抗原結合性断片が提供される。
一実施形態では、本明細書には、配列番号3、19、35、51、67、83、99、115、131、147、163、179、195、211、227、243、259、275、283、および291からなる群から選択されるヌクレオチド配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有する、その実質的に類似する配列によってコードされるHCDR1ドメイン;配列番号5、21、37、53、69、85、101、117、133、149、165、181、197、213、229、245、261、277、285、および293からなる群から選択されるヌクレオチド配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有する、その実質的に類似する配列によってコードされるHCDR2ドメイン;配列番号11、27、43、59、75、91、107、123、139、155、171、187、203、219、235、251、267、および299からなる群から選択されるヌクレオチド配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有する、その実質的に類似する配列によってコードされるLCDR1ドメイン;ならびに配列番号13、29、45、61、77、93、109、125、141、157、173、189、205、221、237、253、269、および301からなる群から選択されるヌクレオチド配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有する、その実質的に類似する配列によってコードされるLCDR2ドメインをさらに含む抗体またはその断片が提供される。
第5の態様は、治療有効量の、天然Bet v 1、Betula pendulaのカバノキのBPE、Betula nigraのBPE、またはBetula populifoliaのBPEに結合する1つまたは複数の単離されたヒト抗体またはその抗原結合性断片を、1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤と共に含む医薬組成物を提供する。
一実施形態では、医薬組成物は、治療有効量の、Bet v 1に結合する2つまたはそれより多い単離されたヒト抗体またはその抗原結合性断片を、1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤と共に含む。
一実施形態では、医薬組成物は、
a)配列番号146に示すアミノ酸配列を有するHCVR、および配列番号154に示すアミノ酸配列を有するLCVRを含む、Bet v 1に結合する第1の単離されたヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片、
b)配列番号114、98、および290からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するHCVR、および配列番号122、106、および298からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するLCVRを含む、Bet v 1に結合する第2の単離されたヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片、ならびに
c)1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤
を含む。
一実施形態では、医薬組成物は、
a)配列番号290に示すアミノ酸配列を有するHCVR、および配列番号298に示すアミノ酸配列を有するLCVRを含む、Bet v 1に結合する第1の単離されたヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片、
b)配列番号114、146、および98からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するHCVR、および配列番号122、154、および106からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するLCVRを含む、Bet v 1に結合する第2の単離されたヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片、ならびに
c)1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤
を含む。
一実施形態では、医薬組成物は、
a)配列番号146に示されるアミノ酸配列を有するHCVR、および配列番号154に示されるアミノ酸配列を有するLCVRを含む、Bet v 1に結合する第1の単離されたヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片、
b)配列番号290に示すアミノ酸配列を有するHCVR、および配列番号298に示すアミノ酸配列を有するLCVRを含む、Bet v 1に結合する第2の単離されたヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片、ならびに
c)1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤
を含む。
一実施形態では、医薬組成物は、
a)配列番号146のアミノ酸配列を有するHCVRおよび配列番号154のアミノ酸配列を有するLCVRを含む第1の単離されたヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片、
b)配列番号290のアミノ酸配列を有するHCVRおよび配列番号298のアミノ酸配列を有するLCVRを含む第2の単離されたヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片、
c)配列番号114および98からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するHCVRならびに配列番号122および106からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するLCVRを含む1つまたは複数のさらなる単離されたヒトモノクローナル抗体または抗原結合性断片、ならびに
d)1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤
を含む。
一実施形態では、医薬組成物は、
配列番号146/154からなるHCVR/LCVRアミノ酸配列ペアを含む、Bet v 1に結合する第1の単離されたヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片、
配列番号114/122、98/106、および290/298からなる群から選択されるHCVR/LCVRアミノ酸配列ペアを含む、Bet v 1に結合する第2の単離されたヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片、ならびに
1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤
を含む。
一実施形態では、医薬組成物は、
配列番号146/154からなるHCVR/LCVRアミノ酸配列ペアを含む、Bet v 1に結合する第1の単離されたヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片、
配列番号290/298からなるHCVR/LCVRアミノ酸配列ペアを含む、Bet v 1に結合する第2の単離されたヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片、および
1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤
を含む。
一実施形態では、医薬組成物は、配列番号2/10、18/26、34/42、50/58、66/74、82/90、98/106、114/122、130/138、146/154、162/170、178/186、194/202、210/218、226/234、242/250、258/266、274/266、282/266、および290/298からなる群から選択されるHCVR/LCVRアミノ酸配列ペアを含む、Bet v 1に結合する2つまたはそれより多い単離されたヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片、ならびに1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤を含む。
一実施形態では、医薬組成物は、配列番号2/10、18/26、34/42、50/58、66/74、82/90、98/106、114/122、130/138、146/154、162/170、178/186、194/202、210/218、226/234、242/250、258/266、274/266、282/266、および290/298からなる群から選択されるHCVR/LCVRアミノ酸配列ペアを含む、Bet v 1に結合する3つまたはそれより多い単離されたヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片、ならびに1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤を含む。
一実施形態では、医薬組成物は、配列番号114/122、146/154、98/106、および290/298のHCVR/LCVRアミノ酸配列ペアを含む、Bet v 1に結合する4つの単離されたヒトモノクローナル抗体、またはその抗原結合性断片、ならびに1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤を含む。
一実施形態では、医薬組成物は、配列番号146/154のHCVR/LCVRアミノ酸配列ペアを有するH4H16992Pと称される抗体、配列番号290/298のHCVR/LCVRアミノ酸配列ペアを有するH4H17082P2と称される抗体、および配列番号98/106のHCVR/LCVRアミノ酸配列ペアを有するH4H17038P2と称される抗体を含む。
一実施形態では、医薬組成物は、配列番号146/154のHCVR/LCVRアミノ酸配列ペアを有するH4H16992Pと称される抗体、配列番号290/298のHCVR/LCVRアミノ酸配列ペアを有するH4H17082P2と称される抗体、配列番号98/106のHCVR/LCVRアミノ酸配列ペアを有するH4H17038P2と称される抗体、および配列番号114/122のHCVR/LCVRアミノ酸配列ペアを有するH4H16987Pと称される抗体を含む。
一実施形態では、医薬組成物は、治療有効量の、Bet v 1に結合する第1の単離されたヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片であって、配列番号306の約23位から約44位に及ぶアミノ酸残基と相互作用する、第1の抗体またはその断片、およびBet v 1に結合する第2の単離されたヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片であって、配列番号306の約44位から約70位に及ぶアミノ酸残基と相互作用する、第2の抗体またはその断片を、1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤と共に含む。
一実施形態では、医薬組成物は、治療有効量の、Bet v 1に結合する第1の単離されたヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片であって、配列番号306の約23位から約43位に及ぶアミノ酸残基と相互作用する、第1の抗体またはその断片、およびBet v 1に結合する第2の単離されたヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片であって、配列番号306の約44位から約56位に及ぶアミノ酸残基と相互作用する、第2の抗体またはその断片を、1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤と共に含む。
一実施形態では、医薬組成物は、治療有効量の、Bet v 1に結合する第1の単離されたヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片であって、配列番号307のアミノ酸配列と相互作用する、第1の抗体またはその断片、およびBet v 1に結合する第2の単離されたヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片であって、配列番号308、309、310、311または315のアミノ酸配列と相互作用する、第2の抗体またはその断片を、1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤と共に含む。
一実施形態では、医薬組成物は、治療有効量の、Bet v 1に結合する第1の単離されたヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片、およびBet v 1に結合する1つまたは複数のさらなる単離されたヒトモノクローナル抗体、またはその抗原結合性断片を、1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤と共に含み、第1の抗体またはその断片は、配列番号306の約23位から約43位に及ぶアミノ酸残基、配列番号306の約44位から約56位に及ぶアミノ酸残基、配列番号306の約2位から約19位に及ぶアミノ酸残基、配列番号306の約57位から約70位に及ぶアミノ酸残基、および配列番号306の約81位から89位または約81位から約96位に及ぶアミノ酸残基からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸配列と相互作用する。
一実施形態では、1つまたは複数のさらなる単離されたヒトモノクローナル抗体またはその断片は、配列番号306の約23位から約43位に及ぶアミノ酸残基、配列番号306の約44位から約56位に及ぶアミノ酸残基、配列番号306の約2位から約19位に及ぶアミノ酸残基、配列番号306の約57位から約70位に及ぶアミノ酸残基、および配列番号306の約81位から89位または約81位から約96位に及ぶアミノ酸残基からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸配列と相互作用し、1つまたは複数のさらなる単離されたヒトモノクローナル抗体のうちの少なくとも1つは、第1の単離されたヒトモノクローナル抗体と異なるアミノ酸配列と相互作用する。
一実施形態では、医薬組成物は、治療有効量の、Bet v 1に結合する第1の単離されたヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片、およびBet v 1に結合する1つまたは複数のさらなる単離されたヒトモノクローナル抗体、またはその抗原結合性断片を、1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤と共に含み、第1の抗体またはその断片は、配列番号307のアミノ酸配列と相互作用し、1つまたは複数のさらなる抗体またはその断片は、配列番号308、309、310、311、および315からなる群から選択されるアミノ酸配列と相互作用する。
一実施形態では、医薬組成物は、治療有効量の、天然Bet v 1またはBPEに結合する少なくとも2つの単離されたヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片を、1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤と共に含み、少なくとも2つの抗体は、天然Bet v 1またはBPEへの結合に関して競合しない。一部の態様では、抗体またはその抗原結合性断片は、それぞれ、配列番号146/154および290/298のHCVR/LCVRアミノ酸配列ペアを含む、Bet v 1抗体であるH4H16992PおよびH4H17082P2である。
一実施形態では、医薬組成物は、治療有効量の、天然Bet v 1またはBPEに結合する少なくとも3つの単離されたヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片を、1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤と共に含み、少なくとも3つの抗体は、天然Bet v 1またはBPEへの結合に関して競合しない。一部の態様では、抗体またはその抗原結合性断片は、それぞれ、配列番号146/154、290/298、および98/106のHCVR/LCVRアミノ酸配列ペアを含む、Bet v 1抗体であるH4H16992P、H4H17082P2、およびH4H17038P2である。
一実施形態では、医薬組成物は、治療有効量の、天然Bet v 1またはBPEに結合する少なくとも4つの単離されたヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片を、1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤と共に含み、少なくとも4つの抗体は、天然Bet v 1またはBPEへの結合に関して競合しない。一部の態様では、抗体またはその抗原結合性断片は、それぞれ、配列番号146/154、290/298、98/106、および114/122のHCVR/LCVRアミノ酸配列ペアを含むBet v 1抗体であるH4H16992P、H4H17082P2、H4H17038P2、およびH4H16987Pである。
一実施形態では、医薬組成物は、治療有効量の、Bet v 1に結合する単離されたヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片を、1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤と共に含み、抗体またはその抗原結合性断片は、Aln g 1、Cor a 1、Car b 1、Que a 1、Api g 2、Api g 1、Dau c 1、Mal d 1、Ost c 1、Fag s 1、およびCas s 1からなる群から選択される1つまたは複数のアレルゲンと交差反応する。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、Aln g 1、Mal d 1、Api g 1、Car b 1、およびCor a 1からなる群から選択される1つまたは複数のアレルゲンと交差反応する。
一実施形態では、本発明は、治療有効量の、本発明の1つまたは複数の抗Bet v 1抗体またはその抗原結合性断片、および治療有効量の第2の治療剤の、1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤と併せた組合せである組成物を特色とする。
第2の治療剤は、小分子薬、タンパク質/ポリペプチド、抗体、核酸分子、例えば、アンチセンス分子、またはsiRNAであってもよい。第2の治療剤は、合成由来であっても天然由来であってもよい。
第2の治療剤は、本発明の抗体またはその断片と有利に組み合わされる任意の薬剤であってもよく、例えば、マスト細胞または好塩基球上に存在するIgEへのBet v 1の結合を遮断することができる、本明細書に記載の抗体以外の第2の抗体であってもよい。第2の治療剤はまた、任意のアレルゲンに対するアレルギー応答の処置において標準治療として使用される任意の薬剤であってもよい。このような第2の治療剤は、抗ヒスタミン薬、エピネフリン、うっ血除去薬、コルチコステロイド、またはペプチドワクチンであってもよい。
ある特定の実施形態では、第2の治療剤は、本発明の抗体または抗体の抗原結合性断片に伴う何らかの起こり得る副作用(複数可)が生じた場合、そのような副作用(複数可)の相殺または低下に役立つ薬剤であってもよい。
本発明の抗体および薬学的に許容される組成物は併用療法において用いることができ、すなわち、抗体および薬学的に許容される組成物は、1つまたは複数の他の所望の治療薬または医学的手順(例えば、抗体がアレルゲン特異的免疫療法(SIT)の前またはその間に投与されるSITレジメンとの組合せを含む)と同時に、その前に、またはその次に投与することができることも十分に理解される。併用レジメンにおいて用いるための療法(治療薬または手順)の特定の組合せは、所望の治療薬および/または手順の適合性ならびに達成されるべき所望の治療効果を考慮に入れる。用いられる療法が、同じ障害に対する所望の効果を達成することができるか(例えば、抗体は、同じ障害の処置に使用される別の薬剤と同時に投与することができる)、または異なる効果を達成することができる(例えば、あらゆる有害作用の制御)ことも十分に理解される。本明細書で使用する場合、特定の疾患、または状態を処置または防止するために通常投与される追加の治療剤は、処置される疾患、または状態に適切である。
関連技術分野において認識される通り、複数の治療薬が共投与される場合、それと相応に投薬量を調整することができる。
第6の態様は、ブナ目のタンパク質、ブナ目に関連するアレルゲン、カバノキ花粉もしくはその抽出物、もしくはBet v 1タンパク質への感受性、またはそれに対するアレルギー反応を示す患者を処置するための、あるいはブナ目のタンパク質、ブナ目に関連するアレルゲン、カバノキ花粉もしくはその抽出物、もしくはBet v 1タンパク質への感受性、またはそれに対するアレルギー反応に関連する少なくとも1つの症状または合併症を処置するための方法であって、有効量の、天然Bet v 1、Betula pendulaのBPE、Betula nigraのBPE、もしくはBetula populifoliaのBPEに結合する1つもしくは複数の単離されたヒトモノクローナル抗体もしくはその抗原結合性断片、または有効量の、天然Bet v 1、Betula pendulaのBPE、Betula nigraのBPE、もしくはBetula populifoliaのBPEに結合する1つもしくは複数の単離されたヒトモノクローナル抗体もしくはその断片を含む医薬組成物を、それを必要とする患者に投与することを含み、天然Bet v 1、Betula pendulaのBPE、Betula nigraのBPE、もしくはBetula populifoliaのBPEに結合する単離されたヒトモノクローナル抗体もしくはその断片のうちの1つもしくは複数の投与後に、または前記の抗体のうちのいずれか1つもしくは複数を含む組成物の投与後に、ブナ目のタンパク質、ブナ目に関連するアレルゲン、カバノキ花粉もしくはその抽出物、もしくはBet v 1タンパク質への感受性、またはそれに対するアレルギー反応が、防止されるか、または重症度および/もしくは持続時間が、低減される、あるいはブナ目のタンパク質、ブナ目に関連するアレルゲン、カバノキ花粉もしくはその抽出物、もしくはBet v 1タンパク質への感受性、またはそれに対するアレルギー反応に関連する少なくとも1つの症状または合併症が、防止されるか、または改善される、あるいはブナ目のタンパク質、ブナ目に関連するタンパク質、カバノキ花粉もしくはその抽出物、もしくはBet v 1タンパク質への感受性、またはそれに対するアレルギー反応の頻度および/もしくは持続時間、またはその重症度が低下する、方法を提供する。
一部の実施形態では、カバノキ花粉抽出物は、天然Bet v 1、Betula pendulaのBPE、Betula nigraのBPE、およびBetula populifoliaのBPEからなる群から選択される。
一部の実施形態では、処置は、患者をブナ目のタンパク質、ブナ目に関連するアレルゲン、カバノキ花粉もしくはその抽出物、またはBet v 1タンパク質に曝露した後に、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、アレルギー性喘息、またはアナフィラキシー応答の低下をもたらす。
一部の実施形態では、方法は、有効量の、ブナ目のタンパク質、ブナ目に関連するアレルゲン、カバノキ花粉もしくはその抽出物、またはBet v 1タンパク質に対するアレルギー反応の減弱化に有用な第2の治療剤を投与することをさらに含む。第2の治療剤は、コルチコステロイド、気管支拡張物質、抗ヒスタミン薬、エピネフリン、うっ血除去薬、Bet v 1に対する別の異なる抗体およびペプチドワクチンからなる群から選択され得る。
一部の実施形態では、方法は、抗体もしくはその断片または抗体を含む医薬組成物の直後またはそれと同時に、アレルゲン特異的免疫療法(SIT)レジメンで患者を処置することをさらに含む。
一実施形態では、本発明は、1つもしくは複数のブナ目のアレルゲン、もしくはブナ目に関連するアレルゲンへの感受性、またはそれに対するアレルギー反応を示すブナ目アレルギー患者を処置するための、あるいは1つもしくは複数のブナ目のアレルゲン、もしくはブナ目に関連するアレルゲンへの感受性、またはそれに対するアレルギー反応に関連する少なくとも1つの症状または合併症を処置するための方法であって、有効量の、Bet v 1に結合する1つもしくは複数の単離されたヒトモノクローナル抗体もしくはその抗原結合性断片、または有効量の、Bet v 1に結合する1つもしくは複数の単離されたヒトモノクローナル抗体もしくはその断片を含む医薬組成物を、それを必要とする患者に投与することを含み、Bet v 1に結合する単離されたヒトモノクローナル抗体もしくはその断片のうちの1つもしくは複数の投与後に、または前記の抗体のうちのいずれか1つもしくは複数を含む組成物の投与後に、ブナ目のアレルゲン、もしくはブナ目に関連するアレルゲンへの感受性、またはそれに対するアレルギー反応が、防止されるか、または重症度および/もしくは持続時間が、低減される、あるいはブナ目のアレルゲン、もしくはブナ目に関連するアレルゲンへの感受性、またはそれに対するアレルギー反応に関連する少なくとも1つの症状または合併症が、防止されるか、または改善される、あるいはブナ目のアレルゲン、もしくはブナ目に関連するアレルゲンへの感受性、またはそれに対するアレルギー反応の頻度および/もしくは持続時間、またはその重症度が低下する、方法を提供する。
一部の実施形態では、1つまたは複数のブナ目のアレルゲンは、Bet v 1、Aln g 1、Cor a 1、Car b 1、およびQue a 1からなる群から選択される。
一実施形態では、本発明は、ブナ目のタンパク質、カバノキ花粉もしくはその抽出物、またはBet v 1タンパク質への感受性、またはそれに対するアレルギー反応を示す患者の処置における使用のための、あるいはブナ目のタンパク質、カバノキ花粉もしくはその抽出物、もしくはBet v 1タンパク質への感受性、またはそれに対するアレルギー反応に関連する少なくとも1つの症状または合併症の処置のための、天然Bet v 1、Betula pendulaのBPE、Betula nigraのBPE、およびBetula populifoliaのBPEに結合する本明細書に記載の抗体のうちの1つまたは複数を含む医薬組成物であって、ブナ目のタンパク質、カバノキ花粉もしくはその抽出物、もしくはBet v 1タンパク質への感受性、またはそれに対するアレルギー反応が、防止されるか、または重症度および/もしくは持続時間が、低減される、あるいはブナ目のタンパク質、カバノキ花粉もしくはその抽出物、もしくはBet v 1タンパク質への感受性、またはそれに対するアレルギー反応に関連する少なくとも1つの症状または合併症が、防止されるか、または改善される、あるいはブナ目のタンパク質、カバノキ花粉もしくはその抽出物、もしくはBet v 1タンパク質への感受性、またはそれに対するアレルギー反応の頻度および/もしくは持続時間、またはその重症度が低下する、医薬組成物を提供する。
一実施形態では、本発明は、カバノキ花粉もしくはその抽出物、もしくはBet v 1タンパク質への感受性、またはそれに対するアレルギー反応を示す患者の処置における使用のための、あるいはカバノキ花粉もしくはその抽出物、もしくはBet v 1タンパク質への感受性、またはそれに対するアレルギー反応に関連する少なくとも1つの症状または合併症の処置のための医薬の製造における、Bet v 1に結合する本発明の抗体のうちの1つまたは複数を含む医薬組成物の使用であって、カバノキ花粉もしくはその抽出物、もしくはBet v 1タンパク質への感受性、またはそれに対するアレルギー反応が、防止されるか、または重症度および/もしくは持続時間が、低減される、あるいはカバノキ花粉もしくはその抽出物、もしくはBet v 1タンパク質への感受性、またはそれに対するアレルギー反応に関連する少なくとも1つの症状または合併症が、防止されるか、または改善される、あるいはカバノキ花粉もしくはその抽出物、もしくはBet v 1タンパク質への感受性、またはそれに対するアレルギー反応の頻度および/もしくは持続時間、またはその重症度が低下する、使用を提供する。
一実施形態では、本発明は、上記の医薬組成物の使用であって、組成物が、ブナ目のタンパク質、カバノキ花粉もしくはその抽出物、またはBet v 1タンパク質に対するアレルギー反応を減弱化するのに有用な第2の治療剤と組み合わせて投与される、使用を提供する。一実施形態では、本発明は、上記の医薬組成物の使用であって、第2の治療剤が、コルチコステロイド、気管支拡張物質、抗ヒスタミン薬、エピネフリン、うっ血除去薬、Bet v 1に対する別の異なる抗体およびペプチドワクチンから選択される、使用を提供する。
ある特定の実施形態では、Bet v 1に結合する本発明の抗体は、くしゃみ、うっ血、鼻詰まり、咳嗽、喘鳴、気管支収縮、鼻炎、または結膜炎などの、カバノキ花粉またはBet v 1に対して感受性の患者における少なくとも1つの症状を低下、最小化、または防止することができる場合がある。
一実施形態では、Bet v 1に結合する本発明の抗体、または本発明の1つまたは複数の抗体を含む組成物は、喘息応答、アナフィラキシーショック、さらにはアナフィラキシーに起因する死亡を含む、Bet v 1に対するアレルギーに関連する、より重篤なin vivo合併症を防止するために使用されてもよい。
一実施形態では、医薬組成物は、第2の治療剤と組み合わせて患者に投与される。
別の実施形態では、第2の治療剤は、抗ヒスタミン薬、エピネフリン、うっ血除去薬、コルチコステロイド、Bet v 1に対する別の異なる抗体、ペプチドワクチンおよびアレルギー反応の重症度の低下またはアレルギー反応に関連する少なくとも1つの症状の改善に有用な任意の他の対症療法からなる群から選択される。
さらに別の実施形態では、医薬組成物は、例えば、アレルゲン特異的免疫療法(SIT)レジメンの前またはそれと同時に投与されることを含め、1つまたは複数の他の所望の治療薬または医学的手順と同時に、その前に、またはその次に投与される。一部の態様では、本明細書において提供される抗体と併せたSITレジメンの使用は、相乗効果をもたらす。
一実施形態では、アレルゲン特異的免疫療法(SIT)レジメンの有効性および/または安全性を増強するための方法であって、有効量の、本明細書において提供される1つもしくは複数の単離されたヒトモノクローナル抗体もしくはその抗原結合性断片、または有効量の、1つもしくは複数の単離されたヒトモノクローナル抗体もしくはその断片を含む医薬組成物を、SITレジメンの直前またはそれと同時に、それを必要とする患者に投与することを含み、SITレジメンに対するアレルギー反応の重症度が軽減される、方法が提供される。一部の実施形態では、SITレジメンは、増量投与期とその後の維持期を含む。一部の実施形態では、SITレジメンは、急速SITレジメンである。
追加の態様では、ブナ目のタンパク質、ブナ目に関連するアレルゲン、カバノキ花粉もしくはカバノキ花粉抽出物、またはBet v 1感作に関連するマスト細胞脱顆粒を防止するもしくは低下させる方法であって、本明細書に記載の医薬組成物を、それを必要とする患者に投与することを含む、方法が提供される。
一部の実施形態では、BPEは、天然Bet v 1、Betula pendulaのBPE、Betula nigraのBPE、およびBetula populifoliaのBPEからなる群から選択される。
他の実施形態は、次の詳細な説明の概説から明らかになる。
本発明の組成物および方法について説明する前に、記載される特定の組成物および方法、ならびに実験条件は変動し得るため、本発明が、このような方法、組成物、および条件に限定されないことを理解されたい。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることから、本明細書で使用される用語が、単に特定の実施形態を説明するためのものであり、限定を意図しないことも理解されたい。
別段規定されていなければ、本明細書で使用されるすべての技術および科学用語は、この発明が属する技術分野における当業者によって通常理解されているものと同じ意味を有する。本明細書で使用する場合、用語「約」は、特定の列挙された数値に関連して使用されている場合、値が、列挙された値から1%以下で変動し得ることを意味する。例えば、本明細書で使用する場合、表現「約100」は、99および101ならびにその間のすべての値(例えば、99.1、99.2、99.3、99.4など)を含む。
本発明の実践または検査において、本明細書に記載の方法および材料と類似または同等のいかなる方法および材料を使用してもよいが、好ましい方法および材料をここで説明する。
定義
用語「Bet v 1」は、本明細書で使用する場合、天然/ネイティブ形態の、または組換えにより産生されたかのいずれかの少なくとも1つのBet v 1タンパク質を指す。Bet v 1タンパク質は、配列番号306のアミノ酸配列および配列番号305の核酸配列を含む。天然Bet v 1タンパク質は、およそ17kDであり、7本鎖アンチパラレルβシート(β1〜β7)、β1とβ2に接続する2つの短いαヘリックス(α1およびα2)、長いC末端αヘリックス(α3)、およびβ2とβ3の間のグリシンリッチループモチーフとして存在する(Koflerら(2012年) J. Mol. Biol. 422巻(1号):109〜123頁)。組換えにより産生された変異体Bet v 1である配列番号312は、S85A置換を有するUniprot P15494のG2−N160を含み、Myc−Myc−ヘキサヒスチジンタグを含有する。Uniprot:P15494由来のBet v 1アミノ酸配列、すなわち、配列番号314は、Bet v 1とも称され得る。
「Bet v 1」は、配列番号306もしくは配列番号314のアミノ酸配列、またはその相同配列を含むか、あるいはそれからなるポリペプチドである。語句「配列番号306または配列番号314の相同配列」は、本明細書で使用する場合、配列番号306または配列番号314に対して、70%よりも高い、好ましくは80%よりも高い、より好ましくは90%よりも高い、さらにより好ましくは95%よりも高い同一性を有するポリペプチドを指す。
用語「Bet v 1断片」は、本明細書で使用する場合、Bet v 1の少なくとも1つの抗原性部位を含む、あるいはこれからなるポリペプチドを指す。一実施形態では、用語「Bet v 1断片」は、本明細書で使用する場合、Bet v 1の少なくとも2つの抗原性部位を含む、あるいはこれらからなるポリペプチドを指す。一実施形態では、抗原性部位は、共有結合されている。一実施形態では、抗原性部位は、少なくとも1つのペプチド結合によって連結されている。一実施形態では、2つの抗原性部位は、少なくとも1つのペプチド結合および抗原性部位間のスペーサーによって連結されている。一実施形態では、少なくとも2つの抗原性部位は、Uniprot P15494のアミノ酸配列23〜44および44〜56を含む。一実施形態では、少なくとも2つの抗原性部位は、配列番号306、307、308、309、310、311、および315のいずれかにおけるアミノ酸配列を含む。一実施形態では、Bet v 1断片のいずれも、天然に存在するBet v 1、または組換えにより産生されたBet v 1に特異的に結合する抗体のin vivoでの産生を誘導することができる。
用語「抗体」は、本明細書で使用する場合、特定の抗原(例えば、Bet v 1)に特異的に結合するかまたはそれと相互作用する少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含む、任意の抗原結合分子または分子複合体を意味する。用語「抗体」は、本明細書で使用する場合、ジスルフィド結合によって相互接続された2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖である、4本のポリペプチド鎖からなる免疫グロブリン分子(すなわち、「完全抗体分子」)と共に、その多量体(例えば、IgM)またはその抗原結合性断片を指すことが意図される。各重鎖は、重鎖可変領域(「HCVR」または「VH」)および重鎖定常領域(ドメインCH1、CH2およびCH3からなる)からなる。各軽鎖は、軽鎖可変領域(「LCVR」または「VL」)および軽鎖定常領域(CL)からなる。VHおよびVL領域は、フレームワーク領域(FR)と称されるより保存された領域が散在する、相補性決定領域(CDR)と称される超可変性の領域へとさらに細分することができる。各VHおよびVLは、3つのCDRおよび4つのFRで構成されており、これらはアミノ末端からカルボキシ末端へと以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で配置される。本発明のある特定の実施形態では、抗体(またはその抗原結合性断片)のFRは、ヒト生殖系列配列と同一であってもよく、または天然にもしくは人為的に修飾されていてもよい。アミノ酸コンセンサス配列は、2つまたはそれより多いCDRの並行(side−by−side)解析に基づき定義することができる。
1つもしくは複数のCDR残基の置換または1つもしくは複数のCDRの省略も可能である。1つまたは2つのCDRを結合のために分配することができる抗体が、科学文献に記載されている。Padlanら(1995年、FASEB J. 9巻:133〜139頁)は、公開された結晶構造に基づき、抗体とそれらの抗原との間の接触領域を解析し、CDR残基のほんの約5分の1から3分の1が、抗原と実際に接触すると結論付けた。Padlanは、1つまたは2つのCDRが抗原と接触するアミノ酸を有さない、多くの抗体も発見した(Vajdosら、2002年、J Mol Biol 320巻:415〜428頁も参照のこと)。
抗原と接触していないCDR残基は、分子モデリングによっておよび/または経験的に、Chothia CDRの外部に位置するKabat CDRの領域から、以前の研究に基づき同定することができる(例えば、CDRH2における残基H60〜H65は、多くの場合必要とされない)。CDRまたはその残基(複数可)が省略される場合、これは、通常、別のヒト抗体配列またはこのような配列のコンセンサスにおける対応する位置を占めるアミノ酸で置換される。CDR内の置換のための位置および置換するためのアミノ酸は、経験的に選択することもできる。経験的な置換は、保存的置換であっても非保存的置換であってもよい。
本明細書に開示されている、Bet v 1に特異的に結合する完全ヒトモノクローナル抗体は、対応する生殖系列配列と比較して、重鎖および軽鎖可変ドメインのフレームワークおよび/またはCDR領域に1つまたは複数のアミノ酸置換、挿入および/または欠失を含むことができる。このような変異は、本明細書に開示されているアミノ酸配列を、例えば、公開抗体配列データベースから入手できる生殖系列配列と比較することによって容易に確認することができる。本発明は、本明細書に開示されているアミノ酸配列のいずれかに由来する抗体、およびその抗原結合性断片を含み、1つまたは複数のフレームワークおよび/またはCDR領域内の1つまたは複数のアミノ酸は、抗体が由来する生殖系列配列の対応する残基(複数可)へと、または別のヒト生殖系列配列の対応する残基(複数可)へと、または対応する生殖系列残基(複数可)の保存的アミノ酸置換へと変異される(このような配列変化は、本明細書において、「生殖系列変異」と総称される)。当業者は、本明細書に開示されている重鎖および軽鎖可変領域配列から始めて、1つまたは複数の個々の生殖系列変異またはその組合せを含む多数の抗体および抗原結合性断片を容易に産生することができる。ある特定の実施形態では、VHおよび/またはVLドメイン内のフレームワークおよび/またはCDR残基のすべてが、抗体が由来する元の生殖系列配列に見出される残基へと戻り変異する。他の実施形態では、ある特定の残基のみが、例えば、FR1の最初の8アミノ酸内もしくはFR4の最後の8アミノ酸内に見出される変異された残基のみ、またはCDR1、CDR2もしくはCDR3内に見出される変異された残基のみが、元の生殖系列配列へと戻り変異する。他の実施形態では、フレームワークおよび/またはCDR残基(複数可)のうち1つまたは複数が、異なる生殖系列配列(すなわち、抗体が元々由来する生殖系列配列とは異なる生殖系列配列)の対応する残基(複数可)へと変異される。
さらに、本発明の抗体は、フレームワークおよび/またはCDR領域内の2つまたはそれより多い生殖系列変異の任意の組合せを含有してもよく、例えば、ある特定の個々の残基は、特定の生殖系列配列の対応する残基へと変異されるが、一方、元の生殖系列配列とは異なるある特定の他の残基は、維持されるか、または異なる生殖系列配列の対応する残基へと変異される。1つまたは複数の生殖系列変異を含有する抗体および抗原結合性断片を得たら、結合特異性の向上、結合親和性の増加、アンタゴニストまたはアゴニスト性の生物学的特性の向上または増強(場合次第で)、免疫原性の低下など、1つまたは複数の所望の特性に関して容易に検査することができる。このような一般的な様式で得られる抗体および抗原結合性断片は、本発明の範囲内に包含される。
本発明はまた、1つまたは複数の保存的置換を有する、本明細書に開示されているHCVR、LCVR、および/またはCDRアミノ酸配列のいずれかのバリアントを含む完全ヒトモノクローナル抗体を含む。例えば、本発明は、本明細書に開示されているHCVR、LCVR、および/またはCDRアミノ酸配列のいずれかに対して、例えば、10個またはそれより少ないか、8個またはそれより少ないか、6個またはそれより少ないか、4個またはそれより少ない、などの保存的アミノ酸置換を有するHCVR、LCVR、および/またはCDRアミノ酸配列を有する抗体を含む。
用語「ヒト抗体」は、本明細書で使用する場合、天然に存在しないヒト抗体を含むことが意図される。この用語は、非ヒト哺乳動物、または非ヒト哺乳動物の細胞において、組換えにより産生される抗体を含む。この用語は、ヒト対象から単離された、またはヒト対象において生じた抗体を含むことを意図しない。
本発明の抗体は、一部の実施形態では、組換えヒト抗体および/または天然に存在しないヒト抗体であってもよい。用語「組換えヒト抗体」は、本明細書で使用する場合、組換え手段によって調製されたか、発現されたか、作製されたかまたは単離されたすべてのヒト抗体、例えば、宿主細胞へとトランスフェクトされた組換え発現ベクターを使用して発現された抗体(以下にさらに記載される)、組換え、コンビナトリアルヒト抗体ライブラリーから単離された抗体(以下にさらに記載される)、ヒト免疫グロブリン遺伝子についてトランスジェニックである動物(例えば、マウス)から単離された抗体(例えば、Taylorら、1992年、Nucl. Acids Res. 20巻:6287〜6295頁を参照のこと)、またはヒト免疫グロブリン遺伝子配列の他のDNA配列へのスプライシングを伴う任意の他の手段によって調製されたか、発現されたか、作製されたかもしくは単離された抗体を含むことを意図する。ある特定の実施形態では、このような組換えヒト抗体をin vitro変異誘発(または、ヒトIg配列に関する動物トランスジェニックを使用する場合は、in vivo体細胞変異誘発)に供し、よって、組換え抗体のVHおよびVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖系列VHおよびVL配列に関するが、in vivoのヒト抗体生殖系列レパートリー内に天然に存在しない可能性のある配列である。
ヒト抗体は、ヒンジ不均一性(hinge heterogeneity)に関連する2つの形態で存在することができる。1つの形態では、免疫グロブリン分子は、二量体が鎖間重鎖ジスルフィド結合によって共に保持されている、およそ150〜160kDaの安定な4つの鎖の構築物を含む。第2の形態では、二量体が鎖間ジスルフィド結合を介して連結されておらず、共有結合した軽鎖および重鎖で構成された約75〜80kDaの分子(半分の抗体)が形成される。これらの形態は、アフィニティー精製の後でさえ、分離するのが極めて困難であった。
様々なインタクトIgGアイソタイプにおける第2の形態の出現頻度は、これらに限定されないが、抗体のヒンジ領域アイソタイプに関連する構造の違いによる。ヒトIgG4ヒンジのヒンジ領域における単一アミノ酸置換は、第2の形態の出現(Angalら、1993年、Molecular Immunology 30巻:105頁)を、ヒトIgG1ヒンジを使用して、典型的に観察されるレベルに有意に低下させることができる。本発明は、例えば、産生において、所望の抗体形態の収量を改善するため、望ましい場合のある、ヒンジ、CH2またはCH3領域中に1つまたは複数の変異を有する抗体を包含する。
本明細書で使用する場合、表現「抗原結合分子」は、単独で、または1つもしくは複数の追加のCDRおよび/もしくはフレームワーク領域(FR)と組み合わせて、特定の抗原に特異的に結合する少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含むか、またはこれからなるタンパク質、ポリペプチドまたは分子複合体を意味する。ある特定の実施形態では、抗原結合分子は、抗体または抗体の断片であり、これらの用語は、本明細書の他の箇所で定義されている通りである。
語句「特異的に結合する」または「〜に特異的に結合する」などは、抗体またはその抗原結合性断片が、生理的条件下で比較的安定である抗原と複合体を形成することを意味する。特異的な結合は、少なくとも約1×10−6Mまたはそれより低い(例えば、より小さいKDはより密接な結合を示す)の平衡解離定数によって特徴付けることができる。2つの分子が特異的に結合するかどうかを決定するための方法は、当技術分野において周知であり、例えば、平衡透析、表面プラズモン共鳴などが挙げられる。本明細書に記載されるように、Bet v 1に特異的に結合する抗体は、表面プラズモン共鳴、例えば、BIACORE(商標)によって同定されている。
語句「高親和性」抗体は、表面プラズモン共鳴、例えば、BIACORE(商標)または溶液親和性ELISAによって測定される、少なくとも10−8M、好ましくは10−9M、より好ましくは10−10M、さらにより好ましくは10−11M、さらにより好ましくは10−12Mの、KDとして表現される、Bet v 1に対する結合親和性を有するこれらのモノクローナル抗体を指す。
用語「遅いオフレート」、「Koff」または「kd」とは、表面プラズモン共鳴、例えば、BIACORE(商標)によって決定される、1秒当たり1×10−3またはそれより遅い、好ましくは1秒当たり1×10−4またはそれより遅い速度定数で、Bet v 1から解離する抗体を意味する。
用語、抗体の「抗原結合ポーション」、抗体の「抗原結合性断片」などは、本明細書で使用する場合、抗原に特異的に結合して複合体を形成する、任意の天然に存在する、酵素により得ることができる、合成の、または遺伝子操作されたポリペプチドまたは糖タンパク質を含む。用語、抗体の「抗原結合ポーション」、または「抗体断片」は、本明細書で使用する場合、Bet v 1に結合する能力を保持する抗体の1つまたは複数の断片を指す。
具体的な実施形態として、本発明の抗体または抗体断片は、コルチコステロイド、第2の抗Bet v 1抗体、またはエピネフリン、ワクチン、またはBet v 1に対するアレルギー応答の処置に有用な任意の他の治療部分などの治療部分にコンジュゲートすることができる(「イムノコンジュゲート」)。
本発明の抗体は、単離された抗体であってもよい。「単離された抗体」は、本明細書で使用する場合、その天然環境の少なくとも1つの成分から同定され、ならびに分離および/または回収された抗体を意味する。例えば、生物の少なくとも1つの成分から、または抗体が天然に存在するかもしくは自然に産生される組織もしくは細胞から分離または除去された抗体は、本発明の目的の「単離された抗体」である。また、単離された抗体は、組換え細胞内のin situの抗体を含む。単離された抗体は、少なくとも1つの精製または単離ステップに供された抗体である。ある特定の実施形態によれば、単離された抗体は、他の細胞物質および/または化学物質を実質的に含まない場合がある。
ある特定の実施形態によれば、単離された抗体は、異なる抗原特異性を有する他の抗体(Ab)を実質的に含まない場合がある(例えば、Bet v 1に特異的に結合する単離された抗体、またはその断片は、ブナ目の抗原以外の抗原、または一部の態様では、Bet v 1以外の抗原に特異的に結合するAbを実質的に含まない)。
「遮断抗体」または「中和抗体」(または「Bet v 1活性を中和する抗体」)は、本明細書で使用する場合、それとBet v 1との結合が、Bet v 1の少なくとも1種の生体活性の阻害をもたらす抗体、またはその抗原結合ポーションを指すことを意図する。例えば、本発明の抗体は、Bet v 1に対する一次アレルギー応答の防止に役立つことができる。あるいは、本発明の抗体は、Bet v 1に対する二次アレルギー応答、またはくしゃみ、咳嗽、喘息状態、またはBet v 1が原因のアナフィラキシー応答を含む、Bet v 1に対するアレルギー応答の少なくとも1つの症状を防止する能力を示すことができる。Bet v 1の生体活性のこのような阻害は、いくつかの標準in vitroもしくはin vivoアッセイ(本明細書に記載される受身皮膚アナフィラキシーアッセイなど)または当技術分野において公知の他のin vivoアッセイ(例えば、本明細書に記載の抗体のうちの1つまたは複数の投与後に、Bet v 1による負荷からの保護を調べるための他の動物モデル)のうち1つまたは複数により、Bet v 1生体活性の1つまたは複数の指標を測定することによって評価することができる。
用語「表面プラズモン共鳴」は、本明細書で使用する場合、例えば、BIACORE(商標)システム(Pharmacia Biosensor AB、Uppsala、SwedenおよびPiscataway、N.J.)を使用する、バイオセンサーマトリックス内のタンパク質濃度の変化の検出による、リアルタイム生体分子相互作用の解析を可能にする光学的現象を指す。
用語「KD」は、本明細書で使用する場合、特定の抗体−抗原相互作用の平衡解離定数を指すことを意図する。
用語「エピトープ」は、パラトープとして公知の抗体分子の可変領域における特異的抗原結合部位と相互作用する抗原決定基を指す。単一の抗原は、2つ以上のエピトープを有してもよい。よって、異なる抗体は、抗原における異なる区域に結合することができ、異なる生物学的効果を有することができる。用語「エピトープ」はまた、Bおよび/またはT細胞が応答する、抗原における部位を指す。これはまた、抗体が結合する抗原の領域を指す。エピトープは、直鎖状であっても立体構造状(conformational)であってもよい。直鎖状エピトープは、ポリペプチド鎖における隣接するアミノ酸残基によって産生されるエピトープである。立体構造エピトープは、直鎖状ポリペプチド鎖の異なるセグメント由来の空間的に並置されたアミノ酸によって産生される。ある特定の実施形態では、エピトープは、アミノ酸、糖側鎖、ホスホリル基、またはスルホニル基などの分子の化学的に活性な表面の基(surface grouping)である決定基を含むことができ、ある特定の実施形態では、特異的な三次元構造特徴、および/または特異的な電荷特徴を有することができる。エピトープは、構造的または機能的エピトープとして定義することもできる。機能的エピトープは、一般的に、構造的エピトープのサブセットであり、相互作用の親和性に直接寄与する残基を有する。近接アミノ酸から形成されるエピトープは、典型的には、変性溶媒への曝露において保持されるが、一方、三次フォールディングによって形成されるエピトープは、典型的には、変性溶媒による処理において失われる。エピトープは、典型的には、特有の空間的コンフォメーションにおいて少なくとも3つ、より一般的には、少なくとも5つまたは8〜10個のアミノ酸を含む。
用語「実質的同一性」または「実質的に同一」は、核酸またはその断片について言及する場合、以下で議論するFASTA、BLASTまたはGAPなどの配列同一性の任意の周知のアルゴリズムによって測定して、適切なヌクレオチド挿入または欠失を用いて別の核酸(またはその相補ストランド)と最適にアライメントされた場合に、ヌクレオチド塩基の少なくとも約90%、より好ましくは少なくとも約95%、96%、97%、98%または99%においてヌクレオチド配列同一性が存在することを示す。参照核酸分子に対し実質的同一性を有する核酸分子は、ある特定の事例において、参照核酸分子にコードされるポリペプチドと同じまたは実質的に類似するアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードすることができる。
ポリペプチドに適用する場合、用語「実質的類似性」または「実質的に類似する」は、2つのペプチド配列が、デフォルトギャップ重量を使用するプログラムGAPまたはBESTFITによるなど、最適にアライメントされた場合に、少なくとも90%の配列同一性、さらにより好ましくは少なくとも95%、98%または99%の配列同一性を共有することを意味する。好ましくは、同一ではない残基の位置は、保存的アミノ酸置換により異なる。「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が、類似の化学的特性(例えば、電荷または疎水性)を有する側鎖(R基)を有する別のアミノ酸残基により置換される置換である。一般的に、保存的アミノ酸置換は、タンパク質の機能特性を実質的に変化させない。2つまたはそれより多いアミノ酸配列が、保存的置換により互いに異なる場合、類似性のパーセントまたは度合は、置換の保存的性質を補正するために上向きに調整することができる。この調整を行うための手段は、当業者に周知である。(例えば、Pearson、1994年、Methods Mol. Biol. 24巻:307〜331頁を参照のこと)。類似の化学的特性を有する側鎖を有するアミノ酸の群の例として、1)脂肪族側鎖:グリシン、アラニン、バリン、ロイシンおよびイソロイシン;2)脂肪族−ヒドロキシル側鎖:セリンおよびスレオニン;3)アミド含有側鎖:アスパラギンおよびグルタミン;4)芳香族側鎖:フェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファン;5)塩基性側鎖:リシン、アルギニン、およびヒスチジン;6)酸性側鎖:アスパラギン酸およびグルタミン酸、ならびに7)硫黄含有側鎖:システインおよびメチオニンが挙げられる。好ましい保存的アミノ酸置換群は、バリン−ロイシン−イソロイシン、フェニルアラニン−チロシン、リシン−アルギニン、アラニン−バリン、グルタミン酸−アスパラギン酸、およびアスパラギン−グルタミンである。あるいは、保存的置き換えは、Gonnetら、(1992年 Science 256巻:1443〜45頁)に開示されているPAM250対数尤度マトリックスにおいて正の値を有する任意の変化である。「中程度に保存的」置き換えは、PAM250対数尤度マトリックスにおいて負ではない値を有する任意の変化である。
ポリペプチドの配列類似性は、典型的には、配列解析ソフトウェアを使用して測定される。タンパク質解析ソフトウェアは、保存的アミノ酸置換を含む種々の置換、欠失および他の修飾に割り当てられた類似性の尺度を使用して類似の配列を一致させる。例えば、GCGソフトウェアは、デフォルトパラメータとともに使用して、異なる生物種由来の相同ポリペプチドなどの密接に関係したポリペプチド間、または野生型タンパク質とその変異タンパク質との間の配列相同性または配列同一性を決定することができるGAPおよびBESTFITなどのプログラムを含有する。例えば、GCGバージョン6.1を参照のこと。ポリペプチド配列は、デフォルトまたは推奨されるパラメータを用いてFASTAを使用して比較することもできる。GCGバージョン6.1におけるプログラムFASTA(例えば、FASTA2およびFASTA3)は、クエリおよび検索配列間の最良の重複の領域のアライメントならびにパーセント配列同一性を提供する(Pearson、2000年 上記)。本発明の配列を、異なる生物由来の多数の配列を含有するデータベースと比較する際の別の好ましいアルゴリズムは、デフォルトパラメータを使用するコンピュータプログラムBLAST、特に、BLASTPまたはTBLASTNである(例えば、Altschulら、1990年 J. Mol. Biol. 215巻:403〜410頁および1997年 Nucleic Acids Res. 25巻:3389〜3402頁を参照のこと)。
語句「治療有効量」は、これを投与した目的である所望の効果を生じる量を意味する。正確な量は、処置の目的に依存し、当業者によって、公知の技法を使用して確認することができる(例えば、Lloyd(1999年)The Art, Science and Technologyof Pharmaceutical Compoundingを参照のこと)。
本発明の抗体を使用して、ブナ目アレルギー個体を「脱感作する」ことができる。用語「脱感作する」は、ブナ目のアレルゲン、例えば、カバノキ花粉、例えば、Bet v 1、Aln g 1、Cor a 1、Car b 1、Que a 1、Api g 2、Api g 1、Dau c 1、Mal d 1、Ost c 1、Fag s 1、および/またはCas s 1、またはブナ目に関連するアレルゲンへの曝露に対するブナ目アレルギー個体のアレルギー反応性を減少(ブナ目アレルギーの個体がこれを行わなければ経験するレベルよりも低いレベルまで)させることとして、本明細書で定義される。用語「脱感作する」は、Act c 8およびAct d 8(キウイ)、Ara h 8(落花生)、Pru ar 1(アンズ)、Pru av 1(サクランボ)、Pru p 1(モモ)、Pyr c 1(セイヨウナシ)、Gly m 4(ダイズ)、Vig r 1(リョクトウ)、Sola I 4(トマト)、Cuc m 3(メロン)、Rub i 1(ラズベリー)、およびFra a 1(イチゴ)を含むPR−10タンパク質に対する個体のアレルギー反応性を減少させることとして、本明細書でさらに定義される。
一般的説明
ブナ目に属する樹木は、春のアレルギー症状の供給源であり、主要なカバノキアレルゲンであるBet v 1は、95%を上回るカバノキ花粉アレルギー患者でIgE結合の原因となっている(Breiteneder、EMBO J. 1989年、8巻(7号):1935〜8頁)。カバノキは、米国のアレルギー患者の23%および欧州のアレルギー患者の14%において有力なトリガーである。(DataMonitor report on Allergic Rhinitis、2010年7月)。カバノキ花粉に感受性を示す個体における症状の重症度は、比較的軽度の鼻炎および結膜炎から潜在的に生命を脅かす喘息状態に及ぶ。60%を上回るカバノキ花粉に対するアレルギーである患者が、このBet v 1に対するIgE抗体を有することが示されている(Jarolimら、Int Arch Allergy Appl Immunol. 1989年、88巻(1〜2号):180〜2頁)。
ブナ目の樹木は異なる地理的分布を示し、カバノキおよびハンノキは欧州の北部および北アメリカに特有であり、一方、ハシバミ、シデおよびオークはより温暖な気候を好み、したがって、むしろこれらの大陸の南部に生息する。5つの種のすべての共生個体群は、温暖気候帯に見出されることが多い5。(Spieksma FTM. Regional European pollen calendars. D'Amato G、Spieksma FTM、Bonini S編 Allergenic pollen and pollinosis in Europe. Hoboken, NJ:Wiley-Blackwell;1991年 49〜65頁)ハンノキ、ハシバミおよびシデを含むいくつかのカバノキ科の樹木は、高い交差反応性のIgE抗体の産生をもたらす感受性の個体において、Bet v 1様抗原に対する感作を開始する可能性を有する。(Hauserら、2011年、Clin Exp Allergy. 41巻:1804〜14頁)
ブナ目のアレルゲン(Fagales order allergen)、またはブナ目のアレルゲン(Fagales allergen)として、本明細書で定義されるように、カバノキ花粉(Bet v 1)、ハンノキ花粉(Aln g 1およびAln g 4)、ハシバミ花粉(Cor a 1、Cor a 2、Cor a 8、Cor a 9、Cor a 10、Cor a 11、Cor a 12、Cor a 13、およびCor a 14)、シデ花粉(Car b 1)、アサダ花粉(Ost c 1)、セイヨウトチノキ花粉(Cas s 1、Cas s 5、Cas s 8、およびCas s 9)、ブナ花粉(Fag s 1)およびホワイトオーク花粉(Que a 1およびQue a 2)が挙げられる。非カバノキ花粉である、Aln g 1、Cor a 1、Car b 1、Ost c 1、Cas s 1、Fag s 1、およびQue a 1は、Bet v 1に類似するかまたはそれに関連する、すなわち、ブナ目に関連するアレルゲンである。これらのアレルゲンは、ブナ目の樹木の木の実、およびバラ目に属する無関連の樹木の果実においても発現される。これらのアレルゲンの交差反応性は、花粉アレルギー患者の食物アレルギーの症状を促す場合がある。例示的交差反応性の食物アレルギーとして、リンゴ、サクランボ、アンズ、セイヨウナシ、ウマゴヤシ、エンドウ、ダイズ、トマト、セロリ、ニンジン、およびアスパラガスが挙げられる。(Allergens and Allergen Immunotherapy: Subcutaneous, Sublingual, andOral、第5版 Richard F. Lockey、DennisK. Ledford編 CRC Press, Taylor & Francis Group、London、NY、2014年 114、118〜119頁)。
本明細書で使用する場合、語句「ブナ目のアレルゲン」は、ブナ目に関連するアレルゲンを含む。一部の実施形態では、「ブナ目に関連するアレルゲン」は、Bet v 1と少なくとも約35%の全体的な配列相同性、またはBet v 1のエピトープ1と少なくとも約50%の配列相同性、またはBet v 1のエピトープ2と少なくとも約40%の配列相同性、またはBet v 1のエピトープ3と少なくとも約25%の配列相同性、またはBet v 1のエピトープ4と少なくとも約15%の配列相同性を有するタンパク質として定義される。一部の実施形態では、「ブナ目に関連するアレルゲン」は、バラ目由来のアレルゲンを含む、それに抗Bet v 1抗体が交差反応するタンパク質として定義される。
免疫グロブリンE(IgE)は、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、枯草熱、アレルギー性喘息、ハチ毒アレルギー、および食物アレルギーとして顕在化する1型過敏症の原因である。IgEは、血液中を循環し、好塩基球およびマスト細胞におけるIgEに対する高親和性Fc受容体に結合する。大部分のアレルギー応答において、アレルゲンは、吸入、摂取によって、または皮膚を介して体内に侵入する。次いで、アレルゲンは、マスト細胞および好塩基球の表面上の高親和性受容体に既に結合した、予め形成されたIgEに結合し、いくつかのIgE分子の架橋を生じ、種々のアレルギー症状を引き起こすヒスタミンおよび他の炎症性メディエーターの放出を誘発する。
カバノキ花粉アレルギーの処置は、カバノキ花粉の粗抽出物またはBet v 1に由来する短いペプチドのいずれかの漸増投薬量の反復的な注射を含む脱感作療法を含む。アレルゲン特異的免疫療法の不十分さは、患者のコンプライアンスの問題をもたらす長期の処置持続期間、および注射したタンパク質に対する頻度の高いアレルギー反応(最大30%)を含む。脱感作療法は、処置が有効であるとみなされる前に数年かかる場合がある。処置の成功は、抽出物の組成および品質に依存し、処置は、重篤な喘息/食物アレルギーを有する患者では、IgEにより媒介される重篤な有害事象のリスクによって禁忌である。したがって、カバノキ花粉アレルギー処置の分野では、ブナ目のアレルゲン、特に、Bet v 1に対して感受性の患者を処置するための代替戦略に対する必要性が存在する。
抗体は、粘膜組織へのアレルゲン分子の侵入を遮断することができる可能性があるため、またはマスト細胞もしくは好塩基球上の高親和性受容体に結合したIgEにアレルゲンが結合する機会を得る前にアレルゲンに結合し、これにより、これらの細胞からのヒスタミンおよび他の炎症性メディエーターの放出を防止することができるため、アレルギーに対する一般的処置戦略として提案されてきた。米国特許第5,670,626号は、粘膜組織へのアレルゲンの結合を遮断することによる、アレルギー性鼻炎、アレルギー性喘息、およびアレルギー性結膜炎などのIgE媒介性アレルギー疾患の処置のためのモノクローナル抗体の使用について記載する。米国特許第6,849,259号は、アレルギーのin vivoマウスモデルにおけるアレルギー性炎症を阻害するためのアレルゲン特異的抗体の使用について記載する。ミルクに基づくおよび卵に基づく抗体系が記載されている。例えば、US20030003133A1は、カバノキ花粉および他のアレルゲンに対する経口寛容を誘導するための、アレルゲンの担体としてのミルクの使用を開示する。マスト細胞に結合するアレルゲンの能力を阻害する分子の使用による、環境中のアレルゲンに対する動物におけるアレルギー応答を低下させるための組成物および方法が、WO1994/024164A2に記載された。Bet v 1に対する他の抗体が、U.S.2010/0034812で言及された。
本明細書に記載の完全ヒト抗体は、Bet v 1に対する特異的な結合を示し、カバノキ花粉アレルギーを患う患者、特に、Bet v 1アレルゲンに対する感受性を示す患者の処置に有用となり得る。このような抗体の使用は、ブナ目の樹木の花粉に対するアレルギーを患う患者を処置する有効な手段となり得るか、または抗体は、二次曝露によるBet v 1に対する応答の増大化の防止、もしくはアレルギーに関連する随伴症状の防止に使用することができるか、またはカバノキ花粉アレルゲンへの一次曝露もしくは二次曝露による症状の再発に関連するアレルギー応答の重症度および/もしくは持続時間の低減に使用することができる。抗体は、単独で、またはこれらに限定されないが、コルチコステロイドもしくはエピネフリンによる処置などの、このようなアレルギーを処置するための当技術分野において公知の他の治療部分もしくはモダリティーにとっての補助療法として使用することができる。抗体は、Bet v 1に特異的な第2または第3の異なる抗体と併せて使用することができる。抗体は、アレルゲン特異的免疫療法(SIT)と共に使用することができる。一部の実施形態では、SITとの組合せは相乗的に有効である。
脱感作療法と異なり、本明細書に記載の抗体による処置は、処置開始の約2週間以内に、または処置開始の約10日もしくは約8日以内に有効な緩和をもたらすことができる。Bet v 1タンパク質もしくはペプチド、または1つもしくは複数の追加のブナ目のアレルゲンへの曝露と併せて、本明細書に記載の完全ヒト抗体による処置は、アレルギー反応を遮断することができるだけでなく、ブナ目の樹木由来の花粉に対するアレルギーを患う患者を、より有効にまたは相乗的に脱感作することができる。
ある特定の実施形態では、本発明の抗体は、商業的に購入し得るか(例えば、Indoor Biotechnologies製、VA、番号NA−BV1−1)、または組換えにより産生してもよい天然Bet v 1などの一次免疫原で免疫されたマウスから得られる。Bet v 1の全長アミノ酸配列は、配列番号306として示される。全長Bet v 1アミノ酸配列は、Uniprot:P15494由来の配列番号314にも見出し得る。
免疫原は、天然の、ネイティブの、もしくは組換えにより産生されたBet v 1の生物学的に活性なおよび/もしくは免疫原性の断片、またはその活性な断片をコードするDNAであってもよい。断片は、Bet v 1のN末端もしくはC末端のいずれか、またはBet v 1アミノ酸配列内の任意の部位に由来してもよい。
抗体の抗原結合性断片
別段具体的に示されていなければ、用語「抗体」は、本明細書で使用する場合、2本の免疫グロブリン重鎖および2本の免疫グロブリン軽鎖を含む抗体分子(すなわち、「完全抗体分子」)ならびにその抗原結合性断片を包含すると理解されたい。用語、抗体の「抗原結合ポーション」、抗体の「抗原結合性断片」などは、本明細書で使用する場合、抗原に特異的に結合して複合体を形成する、任意の天然に存在する、酵素により得ることができる、合成の、または遺伝子操作されたポリペプチドまたは糖タンパク質を含む。用語、抗体の「抗原結合ポーション」、または「抗体断片」は、本明細書で使用する場合、Bet v 1に特異的に結合する能力を保持する抗体の1つまたは複数の断片を指す。抗体断片として、Fab断片、F(ab’)2断片、Fv断片、dAb断片、CDRを含有する断片、または単離されたCDRを挙げることができる。抗体の抗原結合性断片は、例えば、完全抗体分子に由来し得、タンパク質分解による消化、または抗体可変および(必要に応じて)定常ドメインをコードするDNAの操作および発現を含む組換え遺伝子操作技法などの任意の好適な標準技法を使用する。このようなDNAは、公知であるおよび/もしくは、例えば、商業的供給源、DNAライブラリー(例えば、ファージ抗体ライブラリーを含む)から容易に入手することができる、または合成することができる。DNAを配列決定し、化学的にまたは分子生物学的技法を使用することにより操作して、例えば、1つまたは複数の可変および/または定常ドメインを好適な構造(configuration)へと配置するか、またはコドンを導入する、システイン残基を作製する、アミノ酸を修飾、付加もしくは欠失させることなどができる。
抗原結合性断片の非限定例として、(i)Fab断片;(ii)F(ab’)2断片;(iii)Fd断片;(iv)Fv断片;(v)単鎖Fv(scFv)分子;(vi)dAb断片;および(vii)抗体の超可変領域を模倣するアミノ酸残基からなる最小認識単位(例えば、CDR3ペプチドなどの単離された相補性決定領域(CDR))、または拘束されたFR3−CDR3−FR4ペプチドが挙げられる。ドメイン特異的抗体、単一ドメイン抗体、ドメイン欠失抗体、キメラ抗体、CDR移植抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、ナノボディ(例えば、一価ナノボディ、二価ナノボディなど)、小モジュラー免疫医薬(small modular immunopharmaceutical)(SMIP)、およびサメ可変IgNARドメインなどの他の操作された分子も、本明細書で使用する場合、表現「抗原結合性断片」内に包含される。
抗体の抗原結合性断片は、典型的には、少なくとも1つの可変ドメインを含む。可変ドメインは、任意のサイズまたはアミノ酸組成であってもよく、一般的に、1つまたは複数のフレームワーク配列に隣接した、またはこれとインフレームの少なくとも1つのCDRを含む。VLドメインと会合したVHドメインを有する抗原結合性断片において、VHおよびVLドメインは、任意の好適な配置で互いに対して位置することができる。例えば、可変領域は二量体となり、VH−VH、VH−VLまたはVL−VL二量体を含有することができる。あるいは、抗体の抗原結合性断片は、単量体VHまたはVLドメインを含有することができる。
ある特定の実施形態では、抗体の抗原結合性断片は、少なくとも1つの定常ドメインに共有結合された少なくとも1つの可変ドメインを含有してもよい。本発明の抗体の抗原結合性断片内に見出すことができる可変および定常ドメインの非限定的な例示的構造として、(i)VH−CH1;(ii)VH−CH2;(iii)VH−CH3;(iv)VH−CH1−CH2;(v)VH−CH1−CH2−CH3;(vi)VH−CH2−CH3;(vii)VH−CL;(viii)VL−CH1;(ix)VL−CH2;(x)VL−CH3;(xi)VL−CH1−CH2;(xii)VL−CH1−CH2−CH3;(xiii)VL−CH2−CH3;および(xiv)VL−CLが挙げられる。上に列挙する例示的構造のいずれかを含む、可変および定常ドメインのいずれの構造においても、可変および定常ドメインは、互いに直接連結されていても、完全または部分的ヒンジまたはリンカー領域により連結されていてもよい。ヒンジ領域は、少なくとも2つの(例えば、5、10、15、20、40、60個のまたはそれより多い)アミノ酸からなることができ、これにより、単一ポリペプチド分子における隣接する可変および/または定常ドメインの間に可撓性または半可撓性連結がもたらされる。さらに、本発明の抗体の抗原結合性断片は、互いにおよび/または1つまたは複数の単量体VHまたはVLドメインと非共有結合的に会合した(例えば、ジスルフィド結合(複数可)により)、上に列挙する可変および定常ドメイン構造のうちいずれかのホモ二量体またはヘテロ二量体(または他の多量体)を含むことができる。
ヒト抗体の調製
トランスジェニックマウスにおいてヒト抗体を生成するための方法は、当技術分野において公知である。本発明の文脈において、任意のこのような公知の方法を使用して、Bet v 1に特異的に結合するヒト抗体を作製することができる。
VELOCIMMUNE(商標)技術(例えば、US6,596,541、Regeneron Pharmaceuticals、VELOCIMMUNE(登録商標)を参照のこと)またはモノクローナル抗体を生成するための任意の他の公知の方法を使用して、ヒト可変領域およびマウス定常領域を有する、Bet v 1に対する高親和性キメラ抗体が最初に単離される。VELOCIMMUNE(登録商標)技術は、マウスが抗原刺激に応答してヒト可変領域およびマウス定常領域を含む抗体を産生するように、内在性マウス定常領域遺伝子座に作動可能に連結したヒト重鎖および軽鎖可変領域を含むゲノムを有するトランスジェニックマウスの生成を伴う。抗体の重鎖および軽鎖の可変領域をコードするDNAが単離され、ヒト重鎖および軽鎖定常領域をコードするDNAに作動可能に連結される。次いで、DNAは、完全ヒト抗体を発現することができる細胞において発現される。
一般的に、VELOCIMMUNE(登録商標)マウスに、目的の抗原を負荷し、抗体を発現するリンパ性細胞(B細胞など)をマウスから回収する。リンパ性細胞を骨髄腫細胞株と融合して、不死ハイブリドーマ細胞株を調製し、このようなハイブリドーマ細胞株をスクリーニングおよび選択して、目的の抗原に特異的な抗体を産生するハイブリドーマ細胞株を同定することができる。重鎖および軽鎖の可変領域をコードするDNAを単離し、重鎖および軽鎖の望ましいアイソタイプ型定常領域に連結することができる。このような抗体タンパク質は、CHO細胞などの細胞において産生することができる。あるいは、抗原特異的キメラ抗体または軽および重鎖の可変ドメインをコードするDNAは、抗原特異的リンパ球から直接単離することができる。
最初に、ヒト可変領域およびマウス定常領域を有する高親和性キメラ抗体が単離される。以下の実験セクションにおける通り、抗体は、親和性、選択性、エピトープなどを含む望ましい特徴に対して特徴付けされ、選択される。マウス定常領域を所望のヒト定常領域で置き換えて、本発明の完全ヒト抗体、例えば、野生型または修飾型IgG1またはIgG4を生成する。選択される定常領域は、特定の用途に応じて変動し得るが、高親和性抗原結合および標的特異性の特徴は、可変領域に属する。
一般的に、本発明の抗体は、非常に高い親和性を保有し、典型的には、固相に固定されたかまたは溶液相における抗原への結合により測定された場合、約10−12から約10−9MのKDを保有する。マウス定常領域を所望のヒト定常領域で置き換えて、本発明の完全ヒト抗体を生成する。選択される定常領域は、特定の用途に応じて変動し得るが、高親和性抗原結合および標的特異性の特徴は、可変領域に属する。
生物学的同等物
本発明の抗Bet v 1抗体および抗体断片は、記載された抗体のアミノ酸配列から変動するが、Bet v 1に結合する能力を保持するアミノ酸配列を有するタンパク質を包含する。このようなバリアント抗体および抗体断片は、親配列と比較してアミノ酸の1つまたは複数の付加、欠失、または置換を含むが、記載された抗体の生体活性と本質的に同等な生体活性を示す。同様に、本発明の抗体コードDNA配列は、開示された配列と比較してヌクレオチドの1つまたは複数の付加、欠失、または置換を含むが、本発明の抗体または抗体断片と本質的に、生物学的に同等である抗体または抗体断片をコードする配列を包含する。
2つの抗原結合タンパク質、または抗体が、例えば、同じモル用量(the samemolar dose)にて類似の実験条件下で、単回用量または複数回用量のいずれかで投与された場合に、その吸収の速度および程度が有意差を示さない薬学的同等物または薬学的代替物である場合、両者は生物学的に同等であるとみなされる。いくつかの抗体が、その吸収の程度において同等であるが、その吸収の速度においては同等ではない場合に、これらの抗体は、同等物または薬学的代替物であるとみなされ、そしてこのような吸収の速度における差が意図的であり、標識において反映され、例えば慢性使用における有効な体内薬物濃度の到達に必須ではなく、試験される特定の薬物製品にとって医学的に無意味であるとみなされるため、これらが生物学的に同等であると依然としてみなされ得る。
一実施形態では、2つの抗原結合タンパク質は、その安全性、純度、および効力において臨床的に有意義な差がない場合、生物学的に同等である。
一実施形態では、切り替えを行わない継続的療法と比較して、免疫原性の臨床的に有意な変化、または有効性の減弱化を含む有害作用のリスクの増加が予想されることなく、患者に対して、参照産物および生体産物の間で切り替えを1回または複数回行うことができる場合、2つの抗原結合タンパク質は、生物学的に同等である。
一実施形態では、2つの抗原結合タンパク質が両者共に、使用条件(単数または複数)に対し共通の作用機序(単数または複数)によって、このような機序が公知の程度まで作用する場合、2つの抗原結合タンパク質は、生物学的に同等である。
生物学的同等性は、in vivoおよび/またはin vitro方法によって示すことができる。生物学的同等性の尺度は、例えば、(a)時間の関数として血液、血漿、血清、または他の生体液における抗体またはその代謝物の濃度を測定する、ヒトまたは他の哺乳動物におけるin vivo検査;(b)ヒトin vivoバイオアベイラビリティデータと相関され、これを合理的に予測するin vitro検査;(c)時間の関数として抗体(またはその標的)の適切な急性薬理学的効果を測定する、ヒトまたは他の哺乳動物におけるin vivo検査;および(d)抗体の安全性、有効性、またはバイオアベイラビリティまたは生物学的同等性を確立する十分に制御された治験における検査を含む。
本発明の抗体の生物学的に同等なバリアントは、例えば、残基もしくは配列の種々の置換を行うことによりまたは生体活性に必要とされない末端もしくは内部残基もしくは配列を欠失させることにより、構築することができる。例えば、生体活性に必須ではないシステイン残基を欠失させるかまたは他のアミノ酸で置き換えて、復元における不要なまたは不正確な分子内ジスルフィド架橋の形成を防止することができる。他の文脈では、生物学的に同等な抗体は、抗体のグリコシル化特徴を修飾するアミノ酸変化、例えば、グリコシル化を排除または除去する変異を含む抗体バリアントを含んでもよい。
抗体の生物学的特徴
一般的に、本発明の抗体は、Bet v 1、Bet v 1の断片への、またはBet v 1および1つまたは複数のブナ目のアレルゲンもしくはブナ目に関連するアレルゲンへの結合により機能することができる。
ある特定の実施形態では、本発明の抗体は、Bet v 1タンパク質内に位置するエピトープもしくは断片、例えば、配列番号306の約23位から約43位に及ぶアミノ酸残基を包含するエピトープもしくは断片、配列番号306の約44位から約56位に及ぶアミノ酸残基を包含するエピトープもしくは断片、配列番号306の約2位から約19位に及ぶアミノ酸残基を包含するエピトープもしくは断片、配列番号306の約57位から約70位に及ぶアミノ酸残基を包含するエピトープもしくは断片、または配列番号306の約81位から約89位もしくは約81位から約96位に及ぶアミノ酸残基を包含するエピトープもしくは断片に結合してもよい。ある特定の実施形態では、本発明の抗体は、配列番号307、308、309、310、311、および315からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸配列に結合してもよく、エピトープ配列は、C末端またはN末端のいずれかにおいて、1から5個のアミノ酸、または約5から約10個のアミノ酸によって伸長され得る。
ある特定の実施形態では、本発明の抗体は、Bet v 1アレルゲンに対して感受性の患者における、マスト細胞または好塩基球へのIgEの結合を遮断または阻害することにより機能することができる。ある特定の実施形態では、本発明において提供される抗体は、アイソタイプ対照抗体と比較した場合、例えば、少なくとも約70%まで、好塩基球活性化を阻害または遮断する。ある特定の実施形態では、抗体は、アイソタイプ対照抗体と比較した場合、例えば、少なくとも約70%、または少なくとも約75%、または少なくとも約80%、または少なくとも約85%、または少なくとも約90%、または少なくとも約95%まで、マスト細胞脱顆粒を阻害または遮断する。
一実施形態では、本発明は、Bet v 1に結合する完全ヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片を提供し、抗体またはその断片は、以下の特徴のうちの1つまたは複数を呈する:(i)配列番号2、18、34、50、66、82、98、114、130、146、162、178、194、210、226、242、258、274、282、および290からなる群から選択されるアミノ酸配列、もしくは少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する、その実質的に類似する配列を有するHCVRを含む、(ii)配列番号10、26、42、58、74、90、106、122、138、154、170、186、202、218、234、250、266、および298からなる群から選択されるアミノ酸配列、もしくは少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する、その実質的に類似する配列を有するLCVRを含む、(iii)配列番号8、24、40、56、72、88、104、120、136、152、168、184、200、216、232、248、264、280、288、および296からなる群から選択されるアミノ酸配列、もしくは少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する、その実質的に類似する配列を有するHCDR3ドメイン、ならびに配列番号16、32、48、64、80、96、112、128、144、160、176、192、208、224、240、256、272、および304からなる群から選択されるアミノ酸配列、もしくは少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する、その実質的に類似する配列を有するLCDR3ドメインを含む、(iv)配列番号4、20、36、52、68、84、100、116、132、148、164、180、196、212、228、244、260、276、284、および292からなる群から選択されるアミノ酸配列、もしくは少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する、その実質的に類似する配列を有するHCDR1ドメイン、配列番号6、22、38、54、70、86、102、118、134、150、166、182、198、214、230、246、262、278、286、および294からなる群から選択されるアミノ酸配列、もしくは少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する、その実質的に類似する配列を有するHCDR2ドメイン、配列番号12、28、44、60、76、92、108、124、140、156、172、188、204、220、236、252、268、および300からなる群から選択されるアミノ酸配列、もしくは少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する、その実質的に類似する配列を有するLCDR1ドメイン、ならびに配列番号14、30、46、62、78、94、110、126、142、158、174、190、206、222、238、254、270、および302からなる群から選択されるアミノ酸配列、もしくは少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する、その実質的に類似する配列を有するLCDR2ドメインを含む、(v)10−8と等しいかもしくはそれより低いかまたは約10−8から約10−11の範囲のKDでBet v 1に結合する、(vi)アナフィラキシーもしくは炎症の少なくとも1つの動物モデルで有効性を示す、または(vii)Bet v 1への結合に関して、参照抗体と競合する。
一実施形態では、本発明は、組成物の調製のための、本発明の2つまたはそれより多い完全ヒト抗体、またはその断片の組合せの使用を提供し、抗体は、Bet v 1に結合し、組成物内に含有される各抗体またはその断片は、以下の特徴のうちの1つまたは複数を呈する:(i)配列番号2、18、34、50、66、82、98、114、130、146、162、178、194、210、226、242、258、274、282、および290からなる群から選択されるアミノ酸配列、もしくは少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する、その実質的に類似する配列を有するHCVRを含む、(ii)配列番号10、26、42、58、74、90、106、122、138、154、170、186、202、218、234、250、266、および298からなる群から選択されるアミノ酸配列、もしくは少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する、その実質的に類似する配列を有するLCVRを含む、(iii)配列番号8、24、40、56、72、88、104、120、136、152、168、184、200、216、232、248、264、280、288、および296からなる群から選択されるアミノ酸配列、もしくは少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する、その実質的に類似する配列を有するHCDR3ドメイン、ならびに配列番号16、32、48、64、80、96、112、128、144、160、176、192、208、224、240、256、272、および304からなる群から選択されるアミノ酸配列、もしくは少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する、その実質的に類似する配列を有するLCDR3ドメインを含む、(iv)配列番号4、20、36、52、68、84、100、116、132、148、164、180、196、212、228、244、260、276、284、および292からなる群から選択されるアミノ酸配列、もしくは少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する、その実質的に類似する配列を有するHCDR1ドメイン、配列番号6、22、38、54、70、86、102、118、134、150、166、182、198、214、230、246、262、278、286、および294からなる群から選択されるアミノ酸配列、もしくは少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する、その実質的に類似する配列を有するHCDR2ドメイン、配列番号12、28、44、60、76、92、108、124、140、156、172、188、204、220、236、252、268、および300からなる群から選択されるアミノ酸配列、もしくは少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する、その実質的に類似する配列を有するLCDR1ドメイン、ならびに配列番号14、30、46、62、78、94、110、126、142、158、174、190、206、222、238、254、270、および302からなる群から選択されるアミノ酸配列、もしくは少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する、その実質的に類似する配列を有するLCDR2ドメインを含む、(v)10−8と等しいかもしくはそれより低いかまたは約10−8から約10−11の範囲のKDでBet v 1に結合する、(vi)アナフィラキシーもしくは炎症の少なくとも1つの動物モデルで有効性を示す、または(vii)Bet v 1への結合に関して、参照抗体と競合する。
ある特定の本発明のBet v 1抗体は、単独で、または組み合わせて使用する場合、in vitroまたはin vivoアッセイによって決定されるように、Bet v 1に結合し、その少なくとも1つの生物学的効果を中和することができる。Bet v 1に結合し、その活性を中和する本発明の抗体の能力は、本明細書に記載されるように、結合アッセイ、または活性の中和(例えば、アナフィラキシーからの保護)アッセイを含む、当業者に公知の任意の標準的方法を使用して測定することができる。
結合活性を測定するための、非限定的な、例示的in vitroアッセイは、本明細書の実施例3に例証される。実施例3では、ヒト抗Bet v 1抗体の結合親和性および動力学的定数は、表面プラズモン共鳴によって決定した。
Bet v 1タンパク質またはペプチドは、タグ付けするためのまたはKLHなどの担体分子へのコンジュゲーションを目的とした、ある特定の残基の付加または置換を含むよう改変されてもよい。例えば、システインは、ペプチドのN末端もしくはC末端のいずれかに付加されてもよく、またはリンカー配列が、例えば、免疫のために、KLHへのコンジュゲーションのためのペプチドを調製するために付加されてもよい。Bet v 1に特異的な抗体は、追加の標識も部分も含有しなくてもよく、またはこれらは、N末端もしくはC末端の標識または部分を含有してもよい。一実施形態では、標識または部分はビオチンである。結合アッセイでは、標識の位置は(存在する場合)、ペプチドが結合する表面に対してペプチドの配向を決定し得る。例えば、表面がアビジンでコーティングされている場合、N末端にビオチンを含有するペプチドは、ペプチドのC末端ポーションが表面と遠位になるように配向される。
エピトープマッピングおよび関連する技術
用語「エピトープ」は、本明細書で使用する場合、パラトープとして公知の抗体分子の可変領域における特異的抗原結合部位と相互作用する抗原決定基を指す。単一の抗原は、2つ以上のエピトープを有し得る。よって、異なる抗体は、抗原における異なる区域に結合することができ、異なる生物学的効果を有することができる。エピトープは、立体構造状であっても直鎖状であってもよい。立体構造エピトープは、直鎖状ポリペプチド鎖の異なるセグメント由来の空間的に並置されたアミノ酸によって産生される。直鎖状エピトープは、ポリペプチド鎖における隣接するアミノ酸残基によって産生されるエピトープである。ある特定の状況では、エピトープは、抗原上の糖類、ホスホリル基、またはスルホニル基の部分を含み得る。
本明細書では、例えば、配列番号306に示すBet v 1の任意の断片を含むBet v 1分子内に、または組換えにより産生されたBet v 1タンパク質の匹敵する領域内に見出される1つまたは複数のアミノ酸と相互作用する抗Bet v 1抗体が提供される。抗体が結合するエピトープは、Bet v 1分子内に位置する3つまたはそれより多い(例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20個またはそれより多い)アミノ酸の単一の連続配列からなってもよい。例示的な連続配列として、配列番号306の約23位から約44位に及ぶアミノ酸残基;配列番号306の約23位から約43位に及ぶアミノ酸残基;配列番号306の約23位から約38位に及ぶアミノ酸残基;配列番号306の約23位から約41位に及ぶアミノ酸残基;配列番号306の約26位から約43位に及ぶアミノ酸残基;配列番号306の約29位から約43位に及ぶアミノ酸残基;配列番号306の約44位から約70位に及ぶアミノ酸残基;配列番号306の約44位から約56位に及ぶアミノ酸残基;配列番号306の約45位から約56位に及ぶアミノ酸残基;配列番号306の約2位から約19位に及ぶアミノ酸残基;配列番号306の約5位から約10位に及ぶアミノ酸残基;配列番号306の約5位から約19位に及ぶアミノ酸残基;配列番号306の約8位から約19位に及ぶアミノ酸残基;配列番号306の約11位から約19位に及ぶアミノ酸残基;配列番号306の約57位から約70位に及ぶアミノ酸残基;配列番号306の約57位から約66位に及ぶアミノ酸残基;配列番号306の約81位から約96位に及ぶアミノ酸残基;配列番号306の約84位から約96位に及ぶアミノ酸残基;配列番号306の約85位から約96位に及ぶアミノ酸残基;および配列番号306の約81位から約89位に及ぶアミノ酸残基が挙げられる。さらなる例示的な連続配列として、配列番号307、308、309、310、311、および315からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸配列が挙げられ、このような配列は、C末端またはN末端のいずれかにおいて、約1から約5個のアミノ酸、または約5から約10個のアミノ酸によって伸長され得る。あるいは、エピトープは、Bet v 1分子内に位置する複数の非連続アミノ酸(またはアミノ酸配列)からなってもよい(例えば、立体構造エピトープ)。
当業者に公知の種々の技法を使用して、抗体が、ポリペプチドまたはタンパク質内の「1つまたは複数のアミノ酸と相互作用する」かどうかを決定することができる。例示的な技法として、例えば、Antibodies、HarlowおよびLane(Cold Spring Harbor Press、Cold Spring Harb.、NY)に記載されるような慣用の交差遮断アッセイが挙げられる。他の方法として、アラニンスキャニング変異解析、ペプチドブロット分析(Reineke(2004年) Methods Mol Biol 248巻:443〜63頁)、ペプチド切断分析、結晶学的研究およびNMR解析が挙げられる。さらに、抗原のエピトープ切除、エピトープ抽出および化学的修飾などの方法を用いることができる(Tomer(2000年) Protein Science 9巻:487〜496頁)。抗体が相互作用するポリペプチド内のアミノ酸を同定するために使用することができる別の方法は、質量分析法により検出される水素/重水素交換である。大まかに述べれば、水素/重水素交換法は、目的のタンパク質を重水素で標識し、続いて、抗体を重水素標識タンパク質に結合させることを伴う。次に、タンパク質/抗体複合体を水に移すと、抗体複合体によって保護されるアミノ酸内の交換可能なプロトンは、界面の一部ではないアミノ酸内の交換可能なプロトンよりも遅い速度で、重水素から水素への、戻り交換を受ける。結果として、タンパク質/抗体の界面の一部を形成するアミノ酸は重水素を保持することができ、したがって、界面に含まれないアミノ酸と比較して比較的高い質量を呈する。抗体の解離後、標的タンパク質をプロテアーゼ切断および質量分析に供し、それにより、抗体が相互作用する特定のアミノ酸に対応する重水素標識された残基を明らかにする。例えば、Ehring(1999年) Analytical Biochemistry 267巻(2号):252〜259頁;EngenおよびSmith(2001年) Anal.Chem. 73巻:256A〜265A頁を参照のこと。抗原/抗体複合体のX線結晶学もまた、エピトープマッピングの目的のために使用してもよい。
抗原構造に基づく抗体プロファイリング(Antigen Structure−based Antibody Profiling)(ASAP)としても公知の修飾支援プロファイリング(Modification−Assisted Profiling)(MAP)は、化学的または酵素的に修飾された抗原表面に対する各抗体の結合プロファイルの類似性によって、同一抗原に対して向けられた多数のモノクローナル抗体(モノクローナル抗体)を分類する方法である(US2004/0101920)。各カテゴリーは、別のカテゴリーによって表されるエピトープと明確に異なるかまたは部分的に重複するかのいずれかで特有のエピトープを反映し得る。この技術は、遺伝学的に同一の抗体の迅速なフィルタリングを可能にするため、遺伝学的に別個の抗体に焦点を当てて特徴付けを行うことができる。ハイブリドーマスクリーニングに適用された場合、MAPは所望の特徴を有するモノクローナル抗体を産生する稀少なハイブリドーマクローンの同定を容易にし得る。MAPを使用して、本発明の抗体を、異なるエピトープに結合する抗体の群へと選別することができる。
ある特定の実施形態では、抗Bet v 1抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号306または配列番号314(Uniprot:P15494由来のBet v 1アミノ酸配列)に例示される天然またはネイティブ形態の、もしくは組換えにより産生されるBet v 1内のエピトープまたはその断片に結合する。ある特定の実施形態では、表1に示す本発明の抗体は、配列番号306の約23位から約44位に及ぶアミノ酸残基;配列番号306の約23位から約43位に及ぶアミノ酸残基;配列番号306の約23位から約38位に及ぶアミノ酸残基;配列番号306の約23位から約41位に及ぶアミノ酸残基;配列番号306の約26位から約43位に及ぶアミノ酸残基;配列番号306の約29位から約43位に及ぶアミノ酸残基;配列番号306の約44位から約70位に及ぶアミノ酸残基;配列番号306の約44位から約56位に及ぶアミノ酸残基;配列番号306の約45位から約56位に及ぶアミノ酸残基;配列番号306の約2位から約19位に及ぶアミノ酸残基;配列番号306の約5位から約10位に及ぶアミノ酸残基;配列番号306の約5位から約19位に及ぶアミノ酸残基;配列番号306の約8位から約19位に及ぶアミノ酸残基;配列番号306の約11位から約19位に及ぶアミノ酸残基;配列番号306の約57位から約70位に及ぶアミノ酸残基;配列番号306の約57位から約66位に及ぶアミノ酸残基;配列番号306の約81位から約96位に及ぶアミノ酸残基;配列番号306の約84位から約96位に及ぶアミノ酸残基;配列番号306の約85位から約96位に及ぶアミノ酸残基;および配列番号306の約81位から約89位に及ぶアミノ酸残基からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸配列と相互作用する。これらの領域は、配列番号307、308、309、310、311および315においてさらに例示される。
本発明は、本明細書の表1に記載されている具体的な例示的抗体のいずれか、または表1に記載されている例示的抗体のいずれかのCDR配列を有する抗体と同じエピトープ、またはこのエピトープの一部(portion)に結合する抗Bet v 1抗体も含む。同様に、本発明は、本明細書の表1に記載されている具体的な例示的抗体のいずれかと、または表1に記載の例示的抗体のいずれかのCDR配列を有する抗体と、Bet v 1またはBet v 1断片への結合に関して競合する抗Bet v 1抗体も含む。
当技術分野において公知の慣用的な方法を使用することにより、抗体が、参照抗Bet v 1抗体と同じエピトープに結合するか、またはこれと結合に関して競合するかどうかを容易に決定することができる。例えば、検査抗体が、本発明の参照抗Bet v 1抗体と同じエピトープに結合するかどうかを決定するために、飽和条件下で、参照抗体をBet v 1タンパク質またはペプチドに結合させる。次に、Bet v 1分子に結合する検査抗体の能力を評価する。検査抗体が、参照抗Bet v 1抗体による飽和結合後のBet v 1に結合することができる場合、検査抗体が、参照抗Bet v 1抗体とは異なるエピトープに結合すると結論付けることができる。他方では、検査抗体が、参照抗Bet v 1抗体による飽和結合後のBet v 1分子に結合することができない場合、検査抗体は、本発明の参照抗Bet v 1抗体が結合するエピトープと同じエピトープに結合することができる。
抗体が、結合に関して参照抗Bet v 1抗体と競合するかどうかを決定するために、上記の結合方法論を2つの方向(orientation)で実施する。第1の方向において、参照抗体を飽和条件下でBet v 1分子に結合させ、続いて、Bet v 1分子への検査抗体の結合を評価する。第2の方向において、検査抗体を飽和条件下でBet v 1分子に結合させ、続いて、Bet v 1分子への参照抗体の結合を評価する。両方の方向において、第1の(飽和)抗体のみが、Bet v 1分子に結合することができる場合、検査抗体および参照抗体が、Bet v 1への結合に関して競合すると結論付けられる。当業者に十分に理解されるように、結合に関して参照抗体と競合する抗体は、参照抗体と同一エピトープに必ずしも結合しないが、重複または隣接するエピトープに結合することにより参照抗体の結合を立体的に遮断し得る。
2つの抗体は、それぞれが抗原への他方の結合を競合的に阻害(遮断)する場合、同じまたは重複するエピトープに結合する。すなわち、1倍、5倍、10倍、20倍または100倍過剰な一方の抗体は、競合的結合アッセイで測定した場合、他方の結合を少なくとも50%だが、好ましくは75%、90%またはさらには99%阻害する(例えば、Junghansら、Cancer Res. 1990年 50巻:1495〜1502頁を参照のこと)。あるいは、一方の抗体の結合を低下または排除する抗原における本質的にすべてのアミノ酸変異が、他方の結合を低下または排除する場合、2つの抗体は、同じエピトープを有する。一方の抗体の結合を低下または排除するいくつかのアミノ酸変異が、他方の結合を低下または排除する場合、2つの抗体は、重複するエピトープを有する。
次いで、追加の慣用的な実験(例えば、ペプチド変異および結合解析)を実行して、観察された検査抗体の結合の欠如が、実際に、参照抗体と同じエピトープへの結合によるものであるか、または立体的遮断(または別の現象)が、観察される結合の欠如の原因であるかを確認することができる。このような選別の実験は、ELISA、RIA、表面プラズモン共鳴、フローサイトメトリーまたは当技術分野において利用できる任意の他の定量的もしくは定性的抗体結合アッセイを使用して実施することができる。
イムノコンジュゲート
本発明は、Bet v 1アレルゲンに対する、またはブナ目の樹木が存在する環境におけるBet v 1アレルゲンに対するアレルギー応答の重症度を低下させることができる、あるいは鼻炎、結膜炎、もしくは呼吸困難を含む、カバノキ花粉もしくはBet v 1アレルゲンへの曝露に関連する少なくとも1つの症状、またはその重症度を改善するための薬剤などの、治療部分にコンジュゲートされたヒト抗Bet v 1モノクローナル抗体(「イムノコンジュゲート」)を包含する。このような薬剤は、コルチコステロイド、Bet v 1に対する第2の異なる抗体、またはワクチンであってもよい。Bet v 1抗体にコンジュゲートすることができる治療部分の種類は、処置される状態および達成されるべき所望の治療効果を考慮に入れる。あるいは、所望の治療効果が、Bet v 1アレルゲンへの曝露に関連する続発症もしくは症状、またはこのような曝露に起因する他のいずれかの状態、例えば、これらに限定されないが、鼻炎または結膜炎を処置することである場合、状態の続発症もしくは症状を処置するのに、または本発明の抗体の任意の副作用を緩和するのに適切な薬剤をコンジュゲートすることが有利となり得る。イムノコンジュゲートの形成に好適な薬剤の例は、当技術分野において公知であり、例えば、WO05/103081を参照のこと。
治療的投与および製剤
本発明は、本発明の抗Bet v 1抗体またはその抗原結合性断片を含む治療用組成物を提供する。本発明に従った治療用組成物の投与は、これらに限定されないが、静脈内、皮下、筋肉内、鼻腔内を含む好適な経路により、製剤に取り込まれて移入、送達、耐容性などの向上をもたらす好適な担体、賦形剤、および他の剤と共に投与される。多数の適切な製剤は、すべての薬剤師に公知の処方集に見出すことができる:Remington's Pharmaceutical Sciences、MackPublishing Company、Easton, PA。これらの製剤は、例えば、粉剤・散剤(powder)、ペースト剤、軟膏剤、ゼリー剤、ワックス剤、油剤、脂質剤、脂質(カチオン性またはアニオン性)含有小胞剤(LIPOFECTIN(商標)など)、DNAコンジュゲート剤、無水吸収ペースト剤、水中油型および油中水型乳剤、エマルジョンカーボワックス剤(種々の分子量のポリエチレングリコール)、半固体ゲル剤、ならびにカーボワックスを含有する半固体混合物を含む。Powellら、「Compendium of excipients forparenteral formulations」 PDA(1998年)J Pharm Sci Technol 52巻:238〜311頁も参照のこと。
抗体の用量は、投与される患者の年齢およびサイズ、標的疾患、状態、投与経路などに応じて変動し得る。本発明の抗体が、Bet v 1に対する感受性を有する個体におけるブナ目の樹木由来の花粉、もしくはカバノキ花粉、もしくはBet v 1への曝露に関連する鼻炎もしくは結膜炎を処置するために、またはブナ目のアレルゲンに対するアナフィラキシー応答を防止するために、またはアレルギー応答の重症度を低減させるために使用される場合、通常、体重1kg当たり約0.01から約30mg、より好ましくは体重1kg当たり約0.02から約7、約0.03から約5、または約0.05から約3mgの単回用量で、本発明の抗体を静脈内投与することが有利である。状態の重症度に応じて、処置の頻度および持続時間を調整することができる。ある特定の実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合性断片は、少なくとも約0.1mgから約800mg、約1から約500mg、約5から約300mgまたは約10から約200mg、約100mgまでまたは約50mgまでの初回用量として投与することができる。ある特定の実施形態では、初回用量に続いて、抗体またはその抗原結合性断片の第2のまたは複数のその後の用量を、初回用量とおよそ同じかまたはこれに満たないものであってよい量で投与することができ、その後の用量は、少なくとも1日から3日間;少なくとも1週間、少なくとも2週間;少なくとも3週間;少なくとも4週間;少なくとも5週間;少なくとも6週間;少なくとも7週間;少なくとも8週間;少なくとも9週間;少なくとも10週間;少なくとも12週間;または少なくとも14週間離される。
種々の送達系が公知であり、本発明の医薬組成物の投与に使用することができ、例えば、リポソームへの封入、マイクロパーティクル、マイクロカプセル、変異体ウイルスを発現することができる組換え細胞、受容体媒介性エンドサイトーシスが挙げられる(例えば、Wuら、1987年 J. Biol. Chem. 262巻:4429〜4432頁を参照のこと)。導入の方法として、これらに限定されないが、皮内、経皮、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外および経口経路が挙げられる。組成物は、任意の使いやすい経路により、例えば、注入またはボーラス注射により、上皮または粘膜皮膚内層(例えば、口腔粘膜、直腸および腸管粘膜など)を介した吸収により投与することができ、他の生物学的に活性な薬剤と共に投与してもよい。投与は、全身性であっても局所性であってもよい。
医薬組成物は、小胞、特に、リポソームにおいて送達することもできる(例えば、Langer、1990年、Science 249巻:1527〜1533頁を参照のこと)。
ある特定の状況において、医薬組成物は、放出制御系において送達することができる。一実施形態では、ポンプを使用することができる。別の実施形態では、ポリマー材料を使用することができる。さらに別の実施形態では、放出制御系は、組成物の標的に近接して置くことができ、よって、全身性用量の一部分のみを必要とする。
注射用調製物は、静脈内、皮下、皮内および筋肉内注射、点滴注入などのための剤形を含むことができる。これらの注射用調製物は、公的に知られた方法によって調製することができる。例えば、注射用調製物は、例えば、注射のために従来から使用される無菌水性媒体または油性媒体において、上記の抗体またはその塩を溶解、懸濁または乳化することにより調製することができる。注射用の水性媒体として生理食塩水、グルコースを含有する等張性溶液および他の助剤などが存在し、それらは、例えば、アルコール(例えば、エタノール)、ポリアルコール(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤[例えば、ポリソルベート80、HCO−50(水素化ヒマシ油のポリオキシエチレン(50mol)付加物)]などの適切な可溶化剤と組み合わせて使用することができる。油性媒体として、例えば、安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどの可溶化剤と組み合わせて使用することができる、ゴマ油、ダイズ油などが用いられる。このように調製された注射液は、好ましくは、適切なアンプル内に充填される。
本発明の医薬組成物は、標準的な針およびシリンジにより皮下にまたは静脈内に送達することができる。さらに、皮下送達に関して、ペン型送達デバイスは、本発明の医薬組成物の送達において容易に適用される。このようなペン型送達デバイスは、再使用可能または使い捨てであってよい。再使用可能なペン型送達デバイスは、一般的に、医薬組成物を含有する交換可能なカートリッジを利用する。カートリッジ内の医薬組成物のすべてが投与され、カートリッジが空となったら、空のカートリッジを容易に廃棄し、医薬組成物を含有する新しいカートリッジと交換することができる。次いで、ペン型送達デバイスを再使用することができる。使い捨てペン型送達デバイスにおいて、交換可能なカートリッジは存在しない。むしろ、使い捨てペン型送達デバイスは、デバイス内のリザーバーに保持された医薬組成物を予め充填した状態で届けられる。リザーバーから医薬組成物が空になったら、デバイス全体が廃棄される。
多数の再使用可能なペン型および自動注入送達デバイスが、本発明の医薬組成物の皮下送達において適用される。例として、ほんの数例ではあるが、確かにこれらに限定されないが確かに、AUTOPEN(商標)(Owen Mumford,Inc.、Woodstock、UK)、DISETRONIC(商標)ペン(Disetronic Medical Systems、Burghdorf、Switzerland)、HUMALOG MIX 75/25(商標)ペン、HUMALOG(商標)ペン、HUMALIN 70/30(商標)ペン(Eli Lilly and Co.、Indianapolis、IN)、NOVOPEN(商標)I、IIおよびIII(Novo Nordisk、Copenhagen、Denmark)、NOVOPEN JUNIOR(商標)(Novo Nordisk、Copenhagen、Denmark)、BD(商標)ペン(Becton Dickinson、Franklin Lakes、NJ)、OPTIPEN(商標)、OPTIPEN PRO(商標)、OPTIPEN STARLET(商標)、およびOPTICLIK(商標)(sanofi−aventis、Frankfurt、Germany)が挙げられる。本発明の医薬組成物の皮下送達において適用される使い捨てペン型送達デバイスの例として、ほんの数例ではあるが、これらに限定されないが確かに、SOLOSTAR(商標)ペン(sanofi−aventis)、FLEXPEN(商標)(Novo Nordisk)、およびKWIKPEN(商標)(Eli Lilly)、SURECLICK(商標)自動注入装置(Amgen、Thousand Oaks、CA)、PENLET(商標)(Haselmeier、Stuttgart、Germany)、EPIPEN(Dey、L.P.)およびHUMIRA(商標)ペン(Abbott Labs、Abbott Park、IL)が挙げられる。
有利には、上記の経口または非経口的使用のための医薬組成物は、有効成分の用量を適合させるのに適した単位用量の剤形へと調製される。単位用量のこのような剤形として、例えば、錠剤、丸剤、カプセル剤、注射(アンプル)剤、坐剤などが挙げられる。含有される上記の抗体の量は、一般的に、単位用量の剤形当たり約5から約500mgである;特に、注射形態において、上記の抗体は、約5〜約100mgで、他の剤形では約10から約250mgで含有されることが好ましい。
抗体の治療的使用
本発明の抗体は、それ自体とBet v 1との相互作用により、ブナ目のアレルゲン、カバノキ花粉への、もしくはBet v 1タンパク質を含有する環境への個体の曝露後の一次応答、または眼のかゆみ、結膜炎、鼻炎、喘鳴、呼吸困難などのアレルギー応答に関連する少なくとも1種の症状の処置に、あるいはより重篤なアナフィラキシー応答を含むBet v 1アレルゲンに対する二次応答の防止に、あるいはブナ目のアレルゲンへの再曝露後の症状の重症度、持続時間、および/または頻度の低減に有用である。したがって、本発明の抗体を予防的にまたは治療的に使用できることが想定される。
本発明のまたさらなる実施形態では、本発明の抗体は、カバノキ花粉もしくはその抽出物および/またはBet v 1タンパク質に敏感な患者を処置するための医薬組成物の調製に使用される。本発明のさらに別の実施形態では、本発明の抗体は、Bet v 1への一次曝露の重症度を低下させるための、またはBet v 1に対するアレルギー応答の重症度、持続時間および/もしくは回数を低下させるための医薬組成物の調製に使用される。本発明のさらなる実施形態では、本発明の抗体は、コルチコステロイド、ワクチン、アレルゲン特異的免疫療法(SIT)、または当業者に公知の任意の他の対症療法を含む、ブナ目のアレルゲンの処置に有用な任意の他の薬剤にとっての補助療法として使用される。
併用療法
併用療法は、本発明の抗Bet v 1抗体および本発明の抗体、または本発明の抗体の生物学的に活性な断片と有利に組み合わせることができる任意の追加の治療剤を含むことができる。
例えば、コルチコステロイドなどの第2の治療剤は、ブナ目のアレルゲン、カバノキ花粉もしくはその抽出物、またはBet v 1への曝露、あるいはブナ目の樹木が存在し、開花する環境への曝露後のアレルギー症状の低下に役立つよう用いることができる。抗体は、Bet v 1アレルゲンに特異的なワクチンなど、他の療法と併せて使用することもできる。治療的に活性な追加の成分(複数可)は、本発明の抗Bet v 1抗体の投与の前に、これと同時に、またはその後に投与することができる。本開示の目的のために、このような投与レジメンは、第2の治療的に活性な成分「と組み合わせた」抗Bet v 1抗体の投与とみなされる。
アレルゲン特異的免疫療法(SIT)
本明細書で使用する場合、表現「アレルゲン特異的免疫療法」、「特異的免疫療法」、「SIT」、「SITレジメン」などは、アレルギーおよびアレルギー反応を処置もしくは防止するための手段としての、またはアレルギー応答を低下または排除するための、経時的な患者へのアレルゲンの繰り返し投与を指す。典型的なSITレジメンでは、少量のアレルゲンをアレルギー患者に最初に投与し、続いて、増加した量のアレルゲンを投与する。ある特定の事例では、SITレジメンは、少なくとも2つの連続する期を含む:(1)増量投与期、および(2)維持期。増量投与期には、有効かつ安全な投与が確立されるまで、漸増用量のアレルゲンを投与する。次いで、増量投与期の終わりに達成される用量が、維持期の経過中にわたって、患者に投与される。増量投与期の持続期間は、数週間または数カ月であり得る。しかしながら、ある特定の実施形態では、増量投与期は、実質的により短い持続期間(例えば、1週間未満、6日未満、5日未満、4日未満、3日未満、または2日未満)である。5日未満の増量投与期を含むSITレジメンは、「急速」免疫療法または「急速SIT」と称されることもある。SITレジメンの維持期は、数週間、数カ月、数年、または無期限に持続し得る。
投与レジメン
本発明のある特定の実施形態によると、1つまたは複数の抗Bet v 1抗体(抗体の組合せ)の複数回用量は、定義された時間経過にわたって患者に投与することができる。本発明のこの態様による方法は、抗体、抗体の組合せの複数回用量を患者に逐次的に投与することを含む。本明細書で使用する場合、「逐次的に投与する」は、抗体または抗体の組合せの各用量が、異なる時点において、例えば、所定の間隔(例えば、数時間、数日間、数週間または数カ月間)によって隔てられた異なる日に、患者に投与されることを意味する。本発明は、抗体または抗体の組合せの単一の初回用量と、それに続く、抗体の1または複数の二次用量と、必要に応じてそれに続く、抗体の1または複数の三次用量を患者に逐次的に投与することを含む方法を含む。
用語「初回用量」、「二次用量」、および「三次用量」は、本発明において提供される抗体または抗体の組合せの投与の時間的順序を指す。よって、「初回用量」は、処置レジメンの初めに投与される用量であり(「ベースライン用量」とも称される);「二次用量」は、初回用量の後に投与される用量であり;「三次用量」は、二次用量の後に投与される用量である。初回、二次、および三次用量はすべて、同じ量の抗体または抗体の組合せを含有することができるが、一般的に、投与頻度の観点から互いに異なっていてもよい。しかしながら、ある特定の実施形態では、初回、二次および/または三次用量に含有されている抗体または抗体の組合せの量は、処置の過程において互いに変動する(例えば、適宜、上方または下方に調整される)。ある特定の実施形態では、処置レジメンの初めに「負荷用量」として2またはそれより多い(例えば、2、3、4、または5)用量が投与され、それに続いて、より少ない頻度で投与されるその後の用量(例えば、「維持用量」)が投与される。
本発明の例示的な一実施形態では、各二次および/または三次用量は、直前の用量から1から26(例えば、1、1 1/2、2、2 1/2、3、3 1/2、4、4 1/2、5、5 1/2、6、6 1/2、7、7 1/2、8、8 1/2、9、9 1/2、10、10 1/2、11、11 1/2、12、12 1/2、13、13 1/2、14、14 1/2、15、15 1/2、16、16 1/2、17、17 1/2、18、18 1/2、19、19 1/2、20、20 1/2、21、21 1/2、22、22 1/2、23、23 1/2、24、24 1/2、25、25 1/2、26、26 1/2またはそれより長い)週間後に投与される。語句「直前の用量」は、本明細書で使用する場合、一連の複数の投与において、介在する用量が存在しない順番において丁度次の用量の投与の前に患者に投与される抗体または抗体の組合せの用量を意味する。
本発明のこの態様による方法は、抗体または抗体の組合せの任意の数の二次および/または三次用量を患者に投与することを含むことができる。例えば、ある特定の実施形態では、単一の二次用量のみが、患者に投与される。他の実施形態では、2またはそれより多い(例えば、2、3、4、5、6、7、8、またはそれより多い)二次用量が、患者に投与される。同様に、ある特定の実施形態では、単一の三次用量のみが、患者に投与される。他の実施形態では、2またはそれより多い(例えば、2、3、4、5、6、7、8、またはそれより多い)三次用量が、患者に投与される。
複数の二次用量を伴う実施形態では、各二次用量は、他の二次用量と同じ頻度で投与することができる。例えば、各二次用量は、直前の用量の1から2週間後に患者に投与することができる。同様に、複数の三次用量を伴う実施形態では、各三次用量は、他の三次用量と同じ頻度で投与することができる。例えば、各三次用量は、直前の用量の2から4週間後に患者に投与することができる。あるいは、二次および/または三次用量が患者に投与される頻度は、処置レジメンの過程にわたって変動し得る。投与頻度は、医師によって、臨床検査後に個々の患者の必要に応じて処置の過程の間に調整することもできる。
抗体の診断的使用
本発明の抗Bet v 1抗体を使用して、例えば、診断目的で、試料におけるBet v 1を検出および/または測定することもできる。Bet v 1が原因であると考えられるアレルギー応答の確認が、本発明の抗体のうちの任意の1つまたは複数の使用により、いずれかのBet v 1の存在を測定することによってなされ得ることが想定される。Bet v 1の例示的な診断アッセイは、例えば、患者から得られた試料を本発明の抗Bet v 1抗体と接触させることを含むことができ、ここで、抗Bet v 1抗体は、検出可能な標識もしくはレポーター分子で標識されているか、または患者試料からBet v 1タンパク質を選択的に単離するための捕捉リガンドとして使用される。あるいは、未標識の抗Bet v 1抗体は、それ自体が検出可能に標識されている二次抗体と組み合わせて診断適用において使用することができる。検出可能な標識またはレポーター分子は、3H、14C、32P、35Sもしくは125Iなどの放射性同位元素;フルオレセインイソチオシアネート、もしくはローダミンなどの蛍光もしくは化学発光部分;またはアルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、もしくはルシフェラーゼなどの酵素であってもよい。試料におけるBet v 1を検出または測定するのに使用することができる具体的な例示的アッセイとして、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、および蛍光標識細胞分取(FACS)が挙げられる。
本発明によるBet v 1診断アッセイで使用することができる試料は、正常または病態における、検出可能な量のBet v 1タンパク質、またはその断片を含有する、患者から得ることができる任意の組織または流体試料を含む。一般的に、健康/非アレルギー患者(例えば、Bet v 1の存在に関連する感受性に苦しんでいない患者)から得られる特定の試料におけるBet v 1のレベルを測定して、Bet v 1のベースライン、または標準レベルを最初に確立する。次いで、Bet v 1のこのベースラインレベルは、カバノキ花粉におけるBet v 1に対する感受性またはこのような状態に関連する症状を有すると疑われる個体から得られる試料において測定されたBet v 1のレベルに対して比較することができる。
本発明は、特に、いくつかの実施形態を参照して示され、説明されてきたが、形態および詳細における変更が、本発明の趣旨および範囲を逸脱することなく、本明細書に開示された種々の実施形態に対してなされる場合があり、本明細書に開示された種々の実施形態は特許請求の範囲の範囲を限定するものとして働くことを意図するものではないことが、当業者に理解されよう。
次の実施例は、本発明の方法および組成物を作製および使用する方法の完全な開示および説明を当業者に提供できるように示されており、本発明者らが自身の発明としてみなすものの範囲を制限することを意図しない。使用された数(例えば、量、温度など)に対する正確度を確保するよう努力したが、一部の実験誤差および偏差が考慮されるべきである。別段示されていなければ、部は、重量部であり、分子量は、平均分子量であり、温度はセ氏温度であり、圧力は大気圧またはその近辺である。
(実施例1)
Bet v 1に対するヒト抗体の生成
次のうちいずれか1つを含む免疫原を使用して、Bet v 1に対する抗体を生成することができる。ある特定の実施形態では、本発明の抗体は、市販のものを購入しても(例えば、Stallergenes Greer、Lenoir、NCから、番号XP527D3A25)、もしくはカバノキ花粉(例えば、Butersら(2012年)、Atomospheric Environment 55巻:496〜505頁を参照のこと)から単離してもよく、または組換えにより産生してもよい(Bet v 1の全長アミノ酸配列についてのGenBank受託番号P15494を参照のこと)全長の天然Bet v 1(nBet v 1)などの一次免疫原、またはBet v 1タンパク質の断片で免疫し、続いて二次免疫原で、または天然タンパク質の免疫原的に活性な断片で免疫したマウスから得られる。種々の構築物は、当業者に公知のBet v 1タンパク質のポーションを使用して調製することができる。これらの構築物を単独で、または種々の組合せで使用して、in vivoで抗体応答を誘発することができる。例えば、配列番号307、308、309、310、311、および315に例示される構築物などの組換えBet v 1構築物、またはこれらの断片を免疫原として使用してもよい。
ある特定の実施形態では、本発明の抗体は、天然Bet v 1の生物学的に活性なおよび/もしくは免疫原性の断片、またはその活性な断片をコードするDNAなどの一次免疫原で免疫されたマウスから得られる。断片は、Bet v 1のN末端またはC末端ポーションに由来してもよい。
ある特定の実施形態では、本明細書に記載の試験で使用する組換えBet v 1タンパク質構築物は、以下に示すようなC末端タグ(myc−myc−ヘキサヒスチジンタグ)を含んでもよい。他の実施形態では、組換えBet v 1タンパク質構築物は、Uniprot P15494のアミノ酸G2からN160を含む。一部の実施形態では、構築物は、S85A置換を含む。タンパク質は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞において発現した。CHO細胞における発現を促進するために使用した外因性シグナル配列は、配列表に含まれない。
ある特定の実施形態では、免疫原は、以下のうちのいずれか1つまたは複数を含むBet v 1断片または融合タンパク質であってもよい:i)Bet v 1のアミノ酸残基23〜43(Uniprot P15494および配列番号307も参照のこと);ii)Bet v 1のアミノ酸残基44〜56(Uniprot P15494および配列番号308も参照のこと);iii)Bet v 1のアミノ酸残基2〜19(Uniprot P15494および配列番号309も参照のこと);iv)Bet v 1のアミノ酸残基57〜70(Uniprot P15494および配列番号310も参照のこと);v)Bet v 1のアミノ酸残基81〜89(Uniprot P15494および配列番号311も参照のこと)およびvi)Bet v 1のアミノ酸残基81〜96(Uniprot P15494および配列番号315も参照のこと)。
ある特定の実施形態では、Bet v 1に特異的に結合する抗体は、上述の領域の断片、または本明細書に記載の領域のN末端もしくはC末端のいずれか一方もしくは両方から指定の領域を約5から約20アミノ酸残基を超えて延長するペプチドを使用して調製することができる。ある特定の実施形態では、Bet v 1特異的抗体の調製において、上述の領域またはその断片の任意の組合せを使用してもよい。ある特定の実施形態では、単一特異的、二重特異的、または多重特異的抗体を調製するために、Bet v 1の上述の領域のうちのいずれか1つもしくは複数、またはその断片を使用することができる。
上に記す通り、免疫原として使用された全長タンパク質、またはその断片を、ヒト免疫グロブリン重およびカッパ軽鎖可変領域をコードするDNAを含むVELOCIMMUNE(登録商標)マウスに、免疫応答を刺激するためのアジュバントと共に直接投与した。
抗Bet v 1抗体は、米国特許第7,582,298号に記載されるように、骨髄腫細胞への融合なしに、抗原陽性B細胞から直接単離した。この方法を使用して、いくつかの完全ヒト抗Bet v 1抗体(すなわち、ヒト可変ドメインおよびヒト定常ドメインを保有する抗体)を得た;この様式で生成した例示的抗体を以下に示した:H4H16943P、H4H16946P、H4H16950P、H4H16960P、H4H16967P、H4H16971P、H4H16979P、H4H16987P、H4H16991P、H4H16992P、H4H17001P、H4H17015P、H4H17027P、H4H17028P、H4H17031P、H4H17033P、H4H17038P2、H4H17045P2、H4H17067P2、およびH4H17082P2。
この実施例の方法に従って生成した例示的抗体の生物学的特性を、以下に示す実施例で詳細に説明する。
(実施例2)
重鎖および軽鎖アミノ酸配列
表1aは、選択した抗Bet v 1抗体の重鎖および軽鎖可変領域およびCDRのアミノ酸配列識別子を与える。表1bは、選択した抗Bet v 1抗体の重鎖および軽鎖可変領域およびCDRの核酸配列識別子を与える。
抗体は、典型的には、本明細書において次の命名法に従って参照される:Fc接頭語(例えば、「H4H」、「H2M」など)、続いて数的識別子(例えば、表1に示す通り「16943」、「17001」など)、続いて「P」または「P2」接尾語。本明細書で使用される抗体の名称におけるH4HおよびH2M接頭語は、抗体の特定のFc領域アイソタイプを示す。よって、この命名法に従って、「H4H」は、抗体がヒトIgG4 Fcを有することを示すので(すべての可変領域は、抗体の名称における最初の「H」で示すように完全ヒトである)、抗体は、本明細書において、例えば、「H4H16943P」などとして参照され得る。当業者が十分に理解するように、特定のFcアイソタイプを有する抗体は、異なるFcアイソタイプを有する抗体に変換することができ(例えば、ヒトIgG1 Fcを有する抗体は、ヒトIgG4を有する抗体に変換することができる、など)、いずれの場合においても、表1に示す数的識別子によって示される可変ドメイン(CDRを含む)は、同じままであり、抗原に対する結合特性は、Fcドメインの性質に関わらず、同一であるかまたは実質的に類似することが予測される。
表1cは、選択した抗Bet v 1抗体の全長重鎖および軽鎖のアミノ酸配列識別子を与える。
(実施例3)
表面プラズモン共鳴により決定されるBet v 1への抗体結合
Biacore 4000機器においてリアルタイム表面プラズモン共鳴バイオセンサー(SPR−Biacore)を使用して、精製した抗Bet v 1モノクローナル抗体への天然Bet v 1の結合に関する平衡解離定数(KD)を決定した。すべての結合試験は、25℃および37℃で、10mMのHEPES、150mMのNaCl、3mMのEDTA、および0.05%v/vの界面活性剤Tween−20、pH7.4の(HBS−ET)ランニング緩衝液中で実施した。Biacore CM5センサー表面を、最初に、モノクローナルマウス抗ヒトFc抗体(GE、番号BR−1008−39)でアミンカップリングすることによって誘導体化して、次に、抗Bet v 1モノクローナル抗体を捕捉した。異なる濃度の、天然Bet v 1(Indoor、カタログ番号NA−BV1−1)またはCHOで産生された、C末端myc−myc−ヘキサヒスチジンタグを有しS85A変異を含有する組換えBet v 1((変異体Bet v 1−MMH;配列番号312)試薬)を、HBS−ETランニング緩衝液中(100nM〜1.23nM;3倍連続希釈)で最初に調製し、抗ヒトFc捕捉された抗Bet v 1モノクローナル抗体表面の上に、30μL/分の流速で4分間注入し、一方、Bet v 1試薬に結合したモノクローナル抗体の解離を、HBS−ETランニング緩衝液中で10分間モニタリングした。Scrubber 2.0cカーブフィッティングソフトウェアを使用して、マストランスポートリミテーションを有する1:1結合モデルへとリアルタイム結合センサーグラムを適合させることにより、会合(ka)および解離(kd)速度定数を決定した。次の通り、動力学的速度定数から結合解離平衡定数(KD)および解離半減期(t1/2)を計算した:
25℃および37℃での本発明の異なる抗Bet v 1モノクローナル抗体に対する天然Bet v 1および変異体Bet v 1−MMHの結合キネティクスパラメータを表2から表5に示す。
25℃では、本発明の抗Bet v 1モノクローナル抗体のすべてが、表2に示すように、0.66nMから13.5nMの範囲のKD値で、天然Bet v 1に結合した。37℃では、本発明の抗Bet v 1モノクローナル抗体のすべてが、表3に示すように、1.59nMから27.9nMの範囲のKD値で、天然Bet v 1に結合した。25℃と37℃の両方で、アイソタイプ対照抗体は、天然Bet v 1に対するいずれの測定可能な結合も示さなかった。
25℃と37℃の両方で、本発明の20個の抗Bet v 1モノクローナル抗体のうちの3つは、変異体Bet v 1−MMHに結合しなかった。25℃では、20個の抗Bet v 1モノクローナル抗体のうちの17個が、表4に示すように、348pMから43.8nMの範囲のK
D値で、変異体Bet v 1−MMHに結合した。37℃では、本発明の20個の抗Bet v 1モノクローナル抗体のうちの17個が、表5に示すように、655pMから106nMの範囲のK
D値で、変異体Bet v 1−MMHに結合した。25℃と37℃の両方で、アイソタイプ対照抗体は、変異体Bet v 1−MMHに対するいずれの測定可能な結合も示さなかった。
(実施例4)
表面プラズモン共鳴により決定される関連するアレルゲンへの抗体結合
Biacore 4000機器においてリアルタイム表面プラズモン共鳴バイオセンサー(SPR−Biacore)を使用して、精製した抗Bet v 1モノクローナル抗体への異なる関連するアレルゲンの結合に関する平衡解離定数(KD)を決定した。すべての結合試験は、25℃で、10mMのHEPES、150mMのNaCl、3mMのEDTA、および0.05%v/vの界面活性剤Tween−20、pH7.4の(HBS−ET)ランニング緩衝液中で実施した。Biacore CM5センサー表面を、最初に、モノクローナルマウス抗ヒトFc抗体(GE、番号BR−1008−39)でアミンカップリングすることによって誘導体化して、抗Bet v 1モノクローナル抗体を捕捉した。結合試験を以下の関連するアレルゲンに関して実施した:ハンノキ(Aln g 1、MyBiosource、カタログ番号MBS1041484)、リンゴ(Mal d 1、MyBiosource、カタログ番号MBS1224919)、ニンジン(Dau c 1.2、MyBiosource、カタログ番号MBS1212920)、セロリ(Api g 1、MyBiosource、カタログ番号MBS1171376)、セロリ(Api g 2、MyBiosource、カタログ番号MBS1047880)、セイヨウシデ(Car b 1アイソフォーム1Aおよび1B、MyBiosource、カタログ番号MBS1200018)、セイヨウシデ(Car b 1アイソフォーム2、MyBiosource、カタログ番号MBS1043940)、ハシバミ(Cor A 1、MyBiosource、カタログ番号MBS5304600)、およびホワイトオーク(Que a 1、MyBiosource、カタログ番号MBS1258822)。異なる濃度の関連するアレルゲンを、HBS−ETランニング緩衝液中(100nM〜6.25nM;4倍連続希釈)で調製し、次いで、抗ヒトFc捕捉された抗Bet v 1モノクローナル抗体表面の上に、30μL/分の流速で3分間注入し、一方、アレルゲンに結合したモノクローナル抗体の解離を、HBS−ETランニング緩衝液中で8分間モニタリングした。Scrubber 2.0cカーブフィッティングソフトウェアを使用して、マストランスポートリミテーションを有する1:1結合モデルへとリアルタイム結合センサーグラムを適合させることにより、会合(ka)および解離(kd)速度定数を決定した。次の通り、動力学的速度定数から結合解離平衡定数(KD)および解離半減期(t1/2)を計算した:
25℃での本発明の異なる抗Bet v 1モノクローナル抗体に対する関連するアレルゲンの結合キネティクスパラメータを表6から表11に示す。
表6に示すように、25℃では、本発明の20個の抗Bet v 1抗体のうちの9つが、1.03nMから175nMの範囲のKD値で、Aln g 1への測定可能な結合を示した。他の11個の抗体は、試験した条件下で、Aln g 1へのいずれの測定可能な結合も示さなかった。
表7に示すように、25℃では、本発明の20個の抗Bet v 1抗体のうちの2つが、29.8nMおよび494nMの範囲のKD値で、Mal d 1への測定可能な結合を示した。他の18個の抗体は、試験した条件下で、Mal d 1へのいずれの測定可能な結合も示さなかった。
表8に示すように、25℃では、本発明の抗Bet v 1抗体のうちの1つが、167nMのKD値で、Api g 1への測定可能な結合を示した。他の19個の抗体は、試験した条件下で、Api g 1へのいずれの測定可能な結合も示さなかった。
表9に示すように、25℃では、本発明の20個の抗Bet v 1抗体のうちの8つが、1.2nMから380nMの範囲のKD値で、Car b 1アイソフォーム1Aおよび1Bへの測定可能な結合を示した。他の12個の抗体は、試験した条件下で、Car b 1アイソフォーム1Aおよび1Bへのいずれの測定可能な結合も示さなかった。
表10に示すように、25℃では、本発明の20個の抗Bet v 1抗体のうちの14個が、335pMから564nMの範囲のKD値で、Car b 1アイソフォーム2への測定可能な結合を示した。他の6個の抗体は、試験した条件下で、Car b 1アイソフォーム2へのいずれの測定可能な結合も示さなかった。
表11に示すように、25℃では、本発明の抗Bet v 1抗体の1つが、396nMのKD値で、Cor A 1への測定可能な結合を示した。他の19個の抗体は、試験した条件下で、Cor A 1へのいずれの測定可能な結合も示さなかった。
本発明の抗体はいずれも、試験した条件下で、Dau c 1.2、Api g 2、またはQue a 1への測定可能な結合を示さなかった(データは示さず)。アイソタイプ対照抗体は、試験したアレルゲンのいずれに対してもいずれの測定可能な結合も示さなかった。
(実施例5)
抗Bet v 1 IgG抗体によるアレルゲン特異的IgEへのBet v 1の結合の遮断
本発明の単一の抗Bet v 1抗体または本発明の抗Bet v 1抗体の組合せの、アレルギーのヒトドナーの血漿/血清由来のプレートに捕捉させたIgEへのBet v 1の結合を遮断する能力を、ELISAを使用して決定した。抗体は、単独またはポリクローナルミックスにおいて検査した。アッセイのために、マイクロタイタープレートを、4℃にて、C末端マウスFcタグを有するように産生したヒトFcεR1α(IgEに対する高親和性受容体)細胞外ドメインタンパク質(hFcεR1α−mFc;配列番号313)で終夜コーティングした。次いで、プレートを、室温(RT)で1時間、0.5%のBSA(w/v)でブロッキングした。アレルギードナー由来の血漿を希釈し、次いで、総IgEを、受容体をコーティングした表面に対して捕捉した。一定量の0.1nMのビオチン標識した天然Bet v 1(Indoor Biotechnologies、番号NA−BV1−1)を、1μg/mLの単一濃度の、または10μg/mLまたは1μg/mLの各抗体から出発する連続希釈の、抗Bet v 1抗体と予備混合し、RTで1時間インキュベートして、Bet v 1抗体と相互作用させて平衡に到達させた。次いで、抗体−Bet v 1混合物を、IgEをコーティングしたプレートに1時間添加した。次に、プレートを洗浄し、プレートに結合した天然Bet v 1の量を、1:10,000希釈の西洋ワサビペルオキシダーゼにコンジュゲートさせたストレプトアビジン(Thermo Scientific、番号N200/QJ223091)を使用して検出し、RTで1時間インキュベートした。次いで、プレートを、上記のELISAプロトコールの各ステップ間に、PBS−Tで洗浄した。比色反応を生じるために、TMB/H2O2基質(BD Pharmingen Reagent A 番号51−2602KC+試薬B、番号51−2607KC)をプレートに添加し、RTで20分間インキュベートした。反応を、2Nの硫酸(H2SO4;VWR、番号BDH3500−1)を使用して停止した。次に、吸光度を、450nmの分光光度計(Victor、Perkin Elmer)で測定した。パーセント遮断を、以下に記載した各アッセイで使用した最も高い抗体濃度を使用して計算した。
20個の抗Bet v 1抗体を、記載したELISAを使用して、アレルギーのヒトドナーの血漿由来のプレートに捕捉させたIgEに対するBet v 1の結合を遮断する抗体の能力に関して、単一の抗体として検査した。個々のモノクローナル抗体は、8.5〜64%まで、Bet v 1に対するIgE結合を部分的に遮断することができた(IgEのポリクローナル性に下線を付す)。7つの抗体は、表12に示すように、検査した最も高い抗体濃度(10μg/mL)で36〜64%の範囲の遮断を示した。
4つの抗Bet v 1抗体、H4H17082P2、H4H17038P2、H4H16987P、およびH4H16992Pを、シングルポイント遮断アッセイで検査した。H4H17082P2およびH4H16992Pの組合せは、10名のIgEドナーのうちの7名で、90%を上回る遮断を示した。3つおよび4つのモノクローナル抗体の組合せは同様の結果を示し、表13に示すように、H4H17082P2およびH4H16992Pの2つの抗体の組合せと比較して、さらなる遮断効果を少しも追加していないようであった。
次に、4つのモノクローナル抗体、H4H17082P2、H4H17038P2、H4H16987P、およびH4H16992Pを、3名のドナーのIgE試料を用いる用量応答遮断アッセイにおいて、単一ならびに2、3、および4つのモノクローナル抗体の組合せとして検査した。結果は、H4H17082P2およびH4H16992Pの2つの抗Bet v 1モノクローナル抗体の組合せが、表14に示すように、90%を上回って、アレルゲン特異的IgEに対するBet v 1の結合を遮断し、3名のドナーのベースラインに近いことを示した。試験した3および4つの抗体の組合せは、遮断活性について同様の大きさと効力を示した。陽性対照として、精製したマウス抗Bet v 1ポリクローナルIgGは、>90%の遮断を示した。
(実施例6)
水素重水素(H/D)交換によるBet v 1に対する抗Bet v 1抗体結合のエピトープマッピング
H4H16992P2、H4H17082P2、H4H17038P2、およびH4H16987Pが相互作用するBet v 1のアミノ酸残基(Uniprot P15494のアミノ酸M1−N160)を決定するために、質量分析試験によるH/D交換エピトープマッピングを実施した。H/D交換法の一般的説明は、例えば、Ehring(1999年) Analytical Biochemistry 267巻(2号):252〜259頁;ならびにEngenおよびSmith(2001年) Anal. Chem. 73巻:256A〜265A頁に示される。
HDX−MS実験を、重水素標識のためのLeaptec HDX PALシステム、試料の消化およびローディングのためのWaters Acquity M−Class(Auxiliary solvent manager)、分析カラム勾配のためのWaters Acquity M−Class(μBinary solvent manager)、および消化ペプチド質量測定のためのSynapt G2−Si質量分析計からなる、統合Waters HDX/MSプラットフォームで実施した。
標識溶液を、pD7.0(pH6.6と等しい)のD2O中10mMのPBS緩衝液中で調製した。重水素標識のために、3.8μLの天然Bet v 1(Indoor Biotech、カタログ番号NA−BV1−1、28pmol/μL)、各抗体と予備混合したBet v 1、または4つの抗Bet v 1抗体すべての混合物を1:1のモル比で、56.2μLのD2O標識溶液と、種々の時点(例えば、重水素化されていない対照=0秒、1分、5分、10分および20分間標識)にわたりインキュベートした。重水素化を、50μLの試料を予冷した100mMのリン酸緩衝液中の0.2MのTCEP、6Mの塩化グアニジン(guanidine chloride)、pH2.5(クエンチ緩衝液)50μLに移すことによってクエンチし、混合した試料を1.0℃で2分間インキュベートした。次いで、クエンチした試料をオンラインペプシン/プロテアーゼXIII消化のためにWaters HDX Manager中に注入した。消化したペプチドを、0℃で、ACQUITY UPLC BEH C18 1.7μm、2.1×5mm VanGuardプレカラム上にトラップし、分析カラムACQUITY UPLC BEH C18 1.7μm、1.0×50mmに5%〜40%Bの9分の勾配分離で溶出した(移動相A:水中0.1%のギ酸、移動相B:アセトニトリル中0.1%のギ酸)。質量分析計を、コーン電圧37V、走査時間0.5秒、および質量/電荷範囲50〜1700Thに設定した。
Bet v 1由来のペプチドの同定のために、重水素化されていない試料由来のLC−MSEデータを処理し、Waters ProteinLynx Global Server(PLGS)ソフトウェアにより、Bet v 1とその無作為化された配列を含むデータベースに対して検索した。同定したペプチドをDynamXソフトウェアにインポートし、2つの基準:1)アミノ酸当たりの最小産物:0.3、および2)反復ファイル閾値:3によってフィルタリングした。次いで、DynamXソフトウェアによって、各時間の3つの反復に関する複数時点にわたる保持時間と高い質量精度(<10ppm)に基づき、各ペプチドの重水素取り込みを自動で決定した。
MSEデータ取得とカップリングしたオンラインペプシン/プロテアーゼXIIIカラムを使用して、Bet v 1由来の全36個のペプチドを、抗体の非存在下または存在下で、再現可能に同定し、91.2%の配列カバー率を表した。H4H16992P2、H4H17082P2、H4H17038P2、H4H16987Pおよび4つの抗体の組合せに結合させた場合に、重水素取り込みが有意に低下したペプチドを、図1から4および5にそれぞれ示す。記録したペプチドの質量は、抗Bet v 1抗体(複数可)との複合体におけるBet v 1の3つの反復に由来する質量中心MH+の質量の平均値に対応する。
図1に示すように、アミノ酸23〜43(FILDGDNLFPKVAPQAISSVE、配列番号307)に対応するペプチドは、H4H16992Pの存在下で、より遅い重水素化速度を有した。
図2に示すように、アミノ酸44〜56(NIEGNGGPGTIKK、配列番号308)に対応するペプチドは、H4H17082Pの存在下で、より遅い重水素化速度を有した。
図3に示すように、アミノ酸2〜19(GVFNYETETTSVIPAARL、配列番号309)に対応するペプチドは、H4H17038P2の存在下で、より遅い重水素化速度を有した。
図4に示すように、アミノ酸57〜70(ISFPEGFPFKYVKD、配列番号310)および81〜96(KYNYSVIEGGPIGDTL、配列番号315)に対応するペプチドは、H4H16987Pの存在下で、より遅い重水素化速度を有した。
図5に示すように、アミノ酸23〜43(FILDGDNLFPKVAPQAISSVE、配列番号307)、アミノ酸44〜56(NIEGNGGPGTIKK、配列番号308)、2〜19(GVFNYETETTSVIPAARL、配列番号309)、アミノ酸57〜70(ISFPEGFPFKYVKD、配列番号310)および81〜96(KYNYSVIEGGPIGDTL、配列番号315)に対応するペプチドは、4つの抗Bet v 1抗体の組合せ(H4H16992P、H4H17082P、H4H17038P2およびH4H16987P)の存在下で、より遅い重水素化速度を有した。
さらに、中程度のレベルの保護を、H4H17082P、H4H17038P2およびH4H16987Pの存在下で、ペプチド23〜43に関して観察し、この領域がこれらのモノクローナル抗体に対する第2のエピトープを表し得ることを確認した。
(実施例7)
受身皮膚アナフィラキシー(PCA)のin vivoモデルにおける抗Bet v 1抗体の効果
アレルゲンに誘導されるマスト細胞脱顆粒を遮断するための本発明の抗Bet v 1抗体の有効性を決定するために、受身皮膚アナフィラキシー(PCA)のin vivoモデルを使用した。このモデルは、アレルゲン特異的抗血清の皮膚の局所区域への皮内注射と、それに続く、色素と共に抗原の静脈内注射を伴う。アレルギー反応は毛細血管拡張を引き起こし、感作部位の血管透過性を増加させ、この部位における色素の優先的蓄積をもたらす。色素を組織から抽出し、分光測定で定量することができる。次いで、検査抗血清で感作された組織への色素の血管外漏出を、関連しない抗血清で感作された組織への血管外漏出と比較することができる。
抗血清を、このアッセイで使用するために、0日目に、1倍リン酸緩衝食塩水(PBS)中の1mg/mLミョウバン溶液における、5μgの天然Bet v 1タンパク質(Indoor Biotechnologies、番号NA−BV1−1)でBalb/cマウスを免疫することによって生成した。1週間後(7日目)に、感作されたマウスを、1倍PBS中の1mg/mLミョウバン溶液における、5μgの天然Bet v 1タンパク質で追加免疫した。追加免疫の2週間後の、21、24および28日目に、マウスを、20μLのPBS中、0.5μgの天然Bet v 1タンパク質による鼻腔内気道負荷に供した。次いで、31日目にマウスを屠殺し、血清を採取した。単離された抗血清における総IgE濃度を、OptEIA(商標)ELISAキット(BD Biosciences、番号555248)を使用し、製造業者の指示に従って決定した。Bet v 1抗血清の最終濃度は、PBS中のIgEが2600ng/mLとなるまで希釈した。
このアッセイにおいて陰性対照として使用した抗血清を、0日目に、PBS中の1mg/mLミョウバン溶液における、ネコの毛抽出物から精製された5μgの天然Fel d 1タンパク質(Indoor Biotechnologies、番号LTN−FD1−1)でBalb/cマウスを免疫することによって生成した。14日および21日目に、マウスを、PBS中の1mg/mLミョウバン溶液における、5μgのFel d 1タンパク質で追加免疫した。最後の追加免疫の1週間後(28日目)に、マウスを屠殺し、血清を採取した。単離された抗血清における総IgE濃度を、OptEIA(商標)ELISAキット(BD Biosciences、番号555248)を使用し、製造業者の指示に従って決定した。抗血清の最終濃度は、PBS中のIgEが2500ng/mLとなるまで希釈した。
PCAアッセイでは、Balb/cマウスの群(実験ごとにn≧5)に、最初に、アイソタイプ対照抗体、抗Bet v 1抗体、または抗Bet v 1抗体の組合せのいずれかを、1mg/kgの用量(総抗体用量)で皮下注射した。抗体投与の3日後に、1.5ngのBet v 1抗血清または3ngの陰性対照抗血清のいずれかを10μL、各群のマウスの右および左耳に、それぞれ注射した。アレルゲン特異的抗血清の局所投与の24時間後に、0.5%(w/v)のEvan’s blue dye(Sigma Aldrich、番号E2129)を含有するPBSに溶解した、天然Bet v 1溶液1μg/mLを、静脈内注射(マウス当たり100μL)によってマウスに負荷した。抗原負荷の1時間後に、マウスを屠殺し、それらの耳を切除し、1mLのホルムアミド中に置き、次に、50〜56℃で3日間インキュベートして、Evan’s blue dyeを抽出した。次いで、耳組織をホルムアミドから取り出し、ぬぐいとって過剰な液体を除去し、秤量した。各ホルムアミド抽出物の200マイクロリットルのアリコートを、二連で96ウェルプレートに移し、それらの吸光度を620nmで測定した。測定した光学密度を、標準曲線を使用してEvan’s blue dye濃度に変換し、組織1mg当たりのEvan’s blue dye(ng)として表した。平均値(mean value)±標準偏差を、各群に関して表15に示す。アイソタイプ対照と比較した平均差を、GraphPad PrismのBonferroniの多重比較検定を使用して計算した。
表15に示すように、第1の試験では、単一の抗Bet v 1抗体、H4H17082P2は、アイソタイプ対照と比較して、色素の血管外漏出の有意な低下を示さなかった。対照的に試験2では、本発明の2つの抗Bet v 1抗体の組合せ(H4H16992PおよびH4H17082P2)ならびに本発明の4つの抗Bet v 1抗体の組合せ(H4H16992P、H4H17082P2、H4H17038P2、およびH4H16987P)が、アイソタイプ対照処置と比較して、色素の血管外漏出の有意な低下を示し、それぞれ、35.26および36.49ng/mg低下した。同様に、試験3では、本発明の2つの抗Bet v 1抗体の組合せ(H4H16992PおよびH4H17082P2)は、再度、アイソタイプ対照処置と比較して、色素の血管外漏出の有意な低下を示し、41.09ng/mg低下した。試験1で以前に示したように、試験3では、単一の抗Bet v 1抗体、H4H17082P2は、アイソタイプ対照と比較して、色素の血管外漏出の有意な低下を示さなかった。しかしながら、別の単一の抗体、H4H16992Pは、アイソタイプ対照と比較して、色素の血管外漏出の有意な低下を示し、25.86ng/mg低下した。行った試験から、単一の抗体H4H16992P、H4H17082P2+H4H16992Pの2つの抗体の組合せ、およびH4H17082P2+H4H16992P+H4H17038P2+H4H16987Pの4つの抗体の組合せは、Bonferroniの事後検定による二元配置ANOVAによって決定された場合、受身皮膚アナフィラキシーのin vivoモデルにおいて、アイソタイプ対照と比較して、色素の血管外漏出の有意な低下によって示されるように、マスト細胞脱顆粒を遮断することができた。H4H17082P2抗体単独では、行った試験のうちの2つにおいて、アイソタイプと比較して、色素の血管外漏出の増加によって示されるように、マスト細胞脱顆粒を遮断することができなかった。1群当たりに使用したマウスの数(n)は、表の括弧内に示す。
(実施例8)
受身皮膚アナフィラキシー(PCA)のin vivoモデルにおける3つの異なるカバノキ花粉抽出物に対する抗Bet v 1抗体の効果
本発明において提供される抗Bet v 1抗体を、受身皮膚アナフィラキシー(PCA)のin vivoモデルにおいて、アレルゲンに誘導されるマスト細胞脱顆粒を遮断する有効性について検査した。アレルゲン特異的抗血清を皮膚の局所区域へと経皮的に注射し、その後、色素と共に抗原を静脈内注射する。アレルギー反応は毛細血管拡張を引き起こし、感作部位の血管透過性を増加させ、この部位における色素の優先的蓄積をもたらす。色素を組織から抽出し、分光測定で定量することができる。次いで、検査抗血清で感作された組織への色素の血管外漏出を、関連しない抗血清で感作された組織への血管外漏出と比較することができる。
天然Bet v 1、Betula pendula(Betula verrucosaとしても公知)のカバノキ花粉抽出物(BPE)、Betula nigraのBPE、およびBetula populifoliaのBPEに対する抗血清を、このアッセイで使用するために、0日目に、1倍リン酸緩衝食塩水(PBS)中の1mg/mlミョウバン溶液における、5μgの天然Bet v 1タンパク質(Indoor Biotechnologies、カタログ番号NA−BV1−1 ロット36164)または5μgのBPE;pendula(Stallargenes Greer、カタログ番号XP527D3A25、ロット番号277329)、nigra(Stallargenes Greer カタログ番号XP79D3A25、ロット番号285077)またはpopulifolia(Stallargenes Greer カタログ番号XP80D3A2.5、ロット番号273622)でBalb/cマウスを免疫することによって生成した。1週間後(7日目)に、感作されたマウスを、1倍PBS中の1mg/mLミョウバン溶液における、5μgの天然Bet v 1タンパク質または5μgの各BPE(pendula、nigra、またはpopulifolia)で追加免疫した。追加免疫の2週間後の、21、24および28日目に、マウスを、20μLの1倍PBS中、0.5μgの天然Bet v 1タンパク質または0.5μgの各カバノキ花粉抽出物による鼻腔内気道負荷に供した。次いで、31日目にマウスを屠殺し、血清を採取した。単離された抗血清ロットにおける総IgE濃度を、OptEIA(商標)ELISAキット(BD Biosciences、番号555248)を使用し、製造業者の指示に従って決定した。Bet v 1抗血清の最終濃度は、1倍PBS中のIgEが2500ng/mLとなるまで希釈し、カバノキ花粉抽出物の抗血清ロットの最終濃度は、pendulaでは3000ng/mL、nigraでは1900ng/mLおよびpopulifoliaでは3700ng/mLとなるまで希釈した。
このアッセイにおいて陰性対照として使用した抗血清を、1倍PBS中の1mg/mLミョウバン溶液における、ネコの毛抽出物から精製された5μgの天然Fel d 1タンパク質(Indoor Biotechnologies、カタログ番号LTN−FD1−1、ロット番号36099)でBalb/cマウスを免疫することによって生成した。14日および21日目に、マウスを、1倍PBS中の1mg/mLミョウバン溶液における、5μgのFel d 1タンパク質で追加免疫した。最後の追加免疫の1週間後(28日目)に、マウスを屠殺し、血清を採取した。単離された抗血清における総IgE濃度を、OptEIA(商標)ELISAキット(BD Biosciences、番号555248)を使用し、製造業者の指示に従って決定した。抗血清の最終濃度は、PBS中のIgEが4800ng/mLとなるまで希釈した。
PCAアッセイでは、Balb/cマウスの群(実験ごとにn≧4、3回繰り返し)に、最初に、アイソタイプ対照抗体または2つの抗Bet v 1抗体の組合せのいずれかを、1mg/kgの用量(総抗体用量)で皮下注射した。抗体投与の3日後に、1ngのBet v 1抗血清、25ngのBetula pendulaの抗血清、25ngのBetula nigraの抗血清、または25ngのBetula populifoliaの抗血清のいずれかを10μL、割り当てた群のマウスの右耳に注射した。左耳には、1ngまたは25ngのFel d 1(陰性対照)を投与し、対応する右耳の血清濃度に一致させた。アレルゲン特異的抗血清の局所投与の24時間後に、0.5%(w/v)のEvan’s blue dye(Sigma Aldrich、番号E2129)を含有する1倍PBSに溶解した、天然Bet v 1(カタログ番号NA−BV1−1、ロット36164)溶液を1μg/mLまたは各BPE(Stallargenes Greer、カタログ番号XP527D3A25、ロット番号277329、カタログ番号XP79D3A25、ロット番号285077、およびカタログ番号XP80D3A2.5、ロット番号273622)溶液を1μg/mL、静脈内注射(マウス当たり100μL)によってマウスに負荷した。抗原負荷の1時間後に、マウスを屠殺し、耳を切除し、1mLのホルムアミド中に置き、次に、50℃で3日間インキュベートして、Evan’s blue dyeを抽出した。次いで、耳組織をホルムアミドから取り出し、ぬぐいとって過剰な液体を除去し、秤量した。各ホルムアミド抽出物の200マイクロリットルのアリコートを、二連で96ウェルプレートに移した。得られた上清の吸光度を620nmで測定した。測定した光学密度を、標準曲線を使用してEvan’s blue dye濃度に変換した、そして、耳組織1mg当たりのEvan’s blue dye(ng)として表す。平均値±標準偏差を、各群に関して表1に示す。アイソタイプ対照と比較した平均差を、GraphPad PrismのBonferroniの多重比較検定を使用して計算した。
表16は、検査したすべての群のアイソタイプ対照と比較した場合に、色素の血管外漏出の有意な低下によって示される、2つの抗Bet v 1抗体H4H16992PおよびH4H17082P2の組合せの有効性を示す。示されるように、2つの抗Bet v 1モノクローナル抗体の組合せH4H17082P2/H4H16992Pは、アイソタイプ対照と比較して、感作とその次の天然Bet v 1による負荷に対する受身皮膚in vivoモデルにおけるマスト細胞脱顆粒を遮断し、88.34の色素の血管外漏出の有意な低下を示す。同様に、色素の血管外漏出の低下は、各アイソタイプ対照群と比較した場合、3つのカバノキ花粉抽出物すべてに関するH4H17082P2/H4H16992P処置群でも観察され、Betula pendulaでは62.52、Betula nigraでは71.19、およびBetula populifoliaでは91.47の統計的に有意な低下を有する。アイソタイプ対照と比較した平均差を、Bonferroniの事後検定による二元配置ANOVAによって計算した。1群当たりに使用したマウスの数(n)は、表の括弧内に示す。
(実施例9)
抗Bet v 1モノクローナル抗体間の交差競合
抗Bet v 1モノクローナル抗体のパネル内の結合競合を、Octet HTXバイオセンサープラットフォーム(Pall ForteBio Corp.)のリアルタイム無標識バイオレイヤー干渉アッセイを使用して決定した。実験全体は、25℃で、1000rpmの速度でプレートを振とうさせながら、10mMのHEPES、150mMのNaCl、3mMのEDTA、および0.05%v/vの界面活性剤Tween−20、1mg/mLのBSA、pH7.4の(HBS−EBT)緩衝液中で実施した。2つの抗体が、C末端myc−myc−ヘキサヒスチジンタグを有して発現した組換え変異体Bet v 1(変異体Bet v 1−MMH;配列番号312)上のそれらの各エピトープへの結合について、互いに競合することができるかどうかを評価するために、最初に、変異体Bet v 1−MMHの5μg/mL溶液を含有するウェル中、抗Penta−His抗体をコーティングしたOctetバイオセンサーチップ(Fortebio Inc、番号18−5122)を90秒間浸すことによって、該バイオセンサーチップ上でおよそ約0.21nmの変異体Bet v 1−MMHを捕捉した。次いで、抗原を捕捉したバイオセンサーチップを、第1の抗Bet v 1モノクローナル抗体(mAb−1と称する)の50μg/mL溶液を含有するウェル中に4分間浸漬することによって、mAb−1で飽和させた。次いで、このバイオセンサーチップを、第2の抗Bet v 1モノクローナル抗体(mAb−2と称する)の50μg/mL溶液を含有するウェル中に3分間浸漬した。バイオセンサーチップを実験のすべてのステップ間にHBS−EBT緩衝液中で洗浄した。リアルタイム結合応答を、実験の全過程中モニタリングし、全てのステップの終わりにおける結合応答を記録した。mAb−1と予め複合体形成した変異体Bet v 1−MMHへのmAb−2結合の応答を比較し、異なる抗Bet v 1モノクローナル抗体の競合的/非競合的挙動を、表17に示すように決定した。
20個の抗Bet v 1モノクローナル抗体のうちの3つは、変異体Bet v 1−MMHに結合せず、交差競合データが決定的でないことが判明した。
(実施例10)
ヒト化マウスPCAモデルにおけるBet v 1によって誘導されたマスト細胞脱顆粒を遮断する抗Bet v 1抗体の組合せの能力
ヒトカバノキアレルギー個体にわたるアレルゲン特異的IgE応答のポリクローナル性を調査するために、ヒト化FcεR1αマウスモデルを利用し、ヒトIgEのマウスマスト細胞の表面上のFcεR1αへの結合を促進させた。ヒトIgEはマウスFcεR1αに結合することができないため、内因性マウスFcεR1αを対応するヒトFcεR1α配列で置き換えた、遺伝子修飾したマウスを作製し、FcεR1αhu/huとして表した。ヒトFcεR1αの表面発現および野生型マウスに匹敵する様式で受身皮膚アナフィラキシー(PCA)モデルにおけるアレルゲン:IgE活性化に応答する能力を実証することによって、FcεR1αhu/huマウスをこのモデルにおける使用に関して検証した。このPCAモデルは、アレルギーのヒト血清の皮膚の局部区域への皮内注射、それに続く、色素と共に関連する抗原の静脈内注射を伴う。アレルギー反応は毛細血管拡張を引き起こし、感作部位の血管透過性を増加させ、この部位における色素の優先的蓄積をもたらす。色素を組織から抽出し、分光測定で定量することができる。検査抗血清で感作された組織への色素の血管外漏出を、アレルギーではないヒト血清で感作された組織への血管外漏出と比較する。
方法
このモデルにおけるマスト細胞脱顆粒に関する抗Bet v 1抗体の効果を決定するために、ヒト化FcεR1αマウスは、1日目にアイソタイプ対照抗体または抗Bet v 1抗体の組合せの皮下注射を受けた。各ヒトドナーについて、2つの独立した実験を実施し、1群当たりn=5のマウスのデータを組み合わせた。群は、モノクローナル抗体なしの陰性対照、アイソタイプ陰性対照、REGN5713+REGN5715二重抗Bet v 1抗体処置群およびREGN5713+REGN5714+REGN5715三重抗Bet v 1抗体処置群からなる。総抗体濃度または組み合わせた抗体濃度は、1mg/kgまたはIgG4アイソタイプ対照抗体(陰性アイソタイプ対照としての抗IL6Rα)であった。3日後に、カバノキアレルギー患者由来の血清またはカバノキアレルギーではない患者由来の血清(陰性対照)を、それぞれ、右および左耳へと皮内(ID)注射し、アレルゲン特異的IgEをマスト細胞上のFcεRIに結合させた。各ドナー由来の同量のアレルゲン特異的IgEがこの実験で使用されたことを確認するために、各抗血清注射を10KUa/LのBet v 1特異的IgE ImmunoCAP(登録商標)に対して正規化した。
アレルゲン特異的抗体の局所投与の24時間後に、0.5%のEvan’s blue dyeを含有するPBS中に希釈した1μgのBet v 1のIV注射によってマウスに負荷した。アレルゲン負荷の1時間後に、マウスを屠殺した。Evan’s blue dyeを耳組織から抽出し、標準曲線を使用して、分光測定で定量した(使用したプロトコールの図に関する図6を参照のこと)。Evan’s blue dyeの血管外漏出の低下は、アイソタイプ対照抗体で処置した群、B(アイソタイプ、avg)から、抗体処置群のカバノキアレルギーの血清を投与した耳に関するEvan’s blue dyeの濃度、B(mAb、i)(耳組織重量で正規化したもの)を減算することによる平均に関して計算した。次いで、この数をB(アイソタイプ、avg)と抗体処置群の非アレルギーの血清を投与した耳に関する色素濃度[N(mAb、i)]の間の差で除し、100を乗じて、色素の血管外漏出の全体的な平均パーセント低下(%低下)を得た。等式を以下に示す:
%低下(平均)=100×[B(アイソタイプ、avg)−B(mAb、i)]/[B(アイソタイプ、avg)−N(mAb、i)]
陰性アイソタイプ対照群と比較した抗Bet v 1抗体処置群の色素漏出のパーセント低下の増加は、マスト細胞脱顆粒の遮断におけるBet v 1抗体または抗体の組合せの有効性の尺度である。
結果
このモデルでは、H4H16992P(REGN5713とも称される)、H4H17038P2(REGN5714とも称される)およびH4H17082P2(REGN5715とも称される)と呼ばれる抗Bet v 1抗体を組み合わせた使用によって、3名のカバノキアレルギードナーのうち3名に由来するIgE含有血清を使用する場合に、IgEによって媒介される応答の最大の遮断が実証された(図7を参照のこと)。カバノキアレルギードナー25609由来の血清を使用した場合、H4H16992P、H4H17038P2およびH4H17082P2は、組み合わせた場合、アイソタイプ対照と比較して、マスト細胞脱顆粒の95%の遮断を示し(平均差−42.04+/−6.9(p<0.0001))、H4H16992PおよびH4H17082P2を組み合わせた使用は、アイソタイプ対照と比較して、マスト細胞脱顆粒の93%の遮断を示した(平均差−41.74+/−3.7(p<0.0001))。カバノキアレルギードナー23658由来の血清を使用した場合、H4H16992P、H4H17038P2およびH4H17082P2は、組み合わせた場合、アイソタイプ対照と比較して、マスト細胞脱顆粒の90%の遮断を示し(平均差−53.67+/−7.1(p<0.0001))、H4H17082P2と組み合わせたH4H16992Pは、アイソタイプ対照と比較して、マスト細胞脱顆粒の74%の遮断を示した(平均差−44.58+/−11.4(p<0.0001))。最後に、カバノキアレルギードナー25414由来の血清を使用した場合、H4H16992P、H4H17038P2およびH4H17082P2は、組み合わせた場合、アイソタイプ対照と比較して、マスト細胞脱顆粒の92%の遮断を示し(平均差−39.72+/−7.5(p<0.0001))、H4H17082P2と組み合わせたH4H16992Pは、アイソタイプ対照と比較して、マスト細胞脱顆粒の80%の遮断を示した(平均差−34.27+/−7.8(p<0.0001))。
(実施例11)
ホスホErkホスホフローアッセイにおいて好塩基球活性化を遮断する抗Bet v 1抗体の組合せの能力
8名のカバノキアレルギー個体由来の試料を使用して、好塩基球活性化を阻害することに関する抗Bet v 1抗体H4H16992P(REGN5713とも称される)、H4H17038P2(REGN5714とも称される)およびH4H17082P2(REGN5715とも称される)の種々の組合せの効果を検査することによって、ヒトIgE応答を調査した。より詳細には、FcεRの関与と活性化を評価するために、キナーゼERKのリン酸化、好塩基球活性化と脱顆粒の近位の読出し(proximal readout)を測定する機能的ホスホフローに基づくアッセイにおいて好塩基球を検査した(Liu, Y.ら(2007年)、J Exp Med 204巻、93〜103頁)。
方法
カバノキアレルギー患者(n=8)から採血し、Ficoll層の密度遠心分離によってPBMCを単離し、洗浄し、再懸濁して、96ウェルフォーマットにおけるシングルポイントとしてプレーティングした。並行して、精製したBet v 1の用量応答ならびに抗Bet v 1抗体および一定用量(最終濃度100pM)の精製した天然Bet v 1と混合した抗体の組合せ(2.56pM〜200nM)の用量応答を含んだ2倍の刺激プレートを調製した。細胞を刺激し、次に、pErk−Alexa 488、CD123−BUV395およびHLA−DR−APC抗体を含有する抗体カクテルで染色した。染色後、LSR−Fortessa機器を使用してデータを得て、好塩基球ゲート内のリン酸化Erk染色のMFIを計算することによって解析した。パーセント最大阻害を:100−((100×最大抗体応答)/アイソタイプ応答)として計算した。最大抗体応答は、用量応答曲線(曲線のプラトー)の上位3つの抗体用量におけるリン酸化Erkの蛍光強度中央値(MFI)の平均からベースラインMFI(反復の非刺激試料の平均)を減算したものであり、アイソタイプ応答は、Regeneronにより産生されたアイソタイプ対照抗体(REGN1945 抗Fel d 1 IgG4P)の用量応答におけるMFI値すべての平均からベースラインMFIを減算したものである。
結果
カバノキ花粉アレルギー個体の8名全員に由来する好塩基球が様々な強度でBet v 1刺激に応答した。図8を参照のこと。H4H16992P、H4H17038P2およびH4H17082P2は、8名のドナーのうち8名において、好塩基球活性化の少なくとも70%を阻害したが、H4H16992PのH4H17082P2との組合せでは、8名のドナーのうち6名において、同程度の阻害を達成した。注目すべきことに、別々に検査した際に、個々の抗体は、IgEへのアレルゲンの結合に影響を及ぼす能力において高い程度の変動性を示した。H4H16992Pは、8名のドナーのうち3名において≧70%の遮断を達成し、H4H17082P2は、8名のドナーのうち4名において好塩基球活性化の70%の遮断を達成した。H4H17038P2は、試験した8名のドナーのうち1名のみで、70%の遮断を実証した。
(実施例12)
3つの抗Bet v 1モノクローナル抗体の天然Bet v 1への同時結合の決定
この実験を実施し、3つの選択したBet v 1モノクローナル抗体の結合エピトープが特有であり、モノクローナル抗体結合の順序に関わらず、3つの抗体の同時結合の際に立体的障害が示されていないことを確認した。3つのBet v 1モノクローナル抗体間の順序に依存する競合についても評価した。
3つの抗Bet v 1モノクローナル抗体の同一のBet v 1への同時結合を、リアルタイム無標識表面プラズモン共鳴に基づくBiacore 3000バイオセンサープラットフォーム(GE Healthcare.)を使用して決定した。実験全体は、25℃で、10mMのHEPES、150mMのNaCl、3mMのEDTA、および0.05%v/vの界面活性剤Tween−20、pH7.4を含有するランニング緩衝液(HBS−ET)中で実施した。EDC/NHS化学を使用してCM5センサーの異なる表面に抗体を固定し、5000〜13,000RUの固定レベルを達成した。REGN1945(Fel d 1モノクローナル抗体)も陰性対照として固定した。天然Bet v 1(nBet v 1)、10nMまたは20nMを、異なるBet v 1モノクローナル抗体を固定したセンサー表面に10〜12秒間かけて注入し、続いて、異なるBet v 1モノクローナル抗体を、15μL/分で6分間順次注入した。
異なるBet v 1モノクローナル抗体の、モノクローナル抗体を固定したセンサー表面に結合したnBet v 1への結合を、Scrubber 2.0cを使用して測定した。結果を表18に示す。1RU(レゾナンスユニット)未満の結合シグナルは、Bet v 1モノクローナル抗体が注入された場合に結合が観察されなかったことを示すが、一方、より高い結合シグナル(2RUを上回る)は、競合がないことを表す。この実施例に含まれる3つのBet v 1モノクローナル抗体のすべては、nBet v 1に同時に結合することができ、結合応答は、抗体が添加された順序によって影響を受けなかった。
まとめ
Bet v 1への抗体結合の順序に関わらず、3つの抗体すべての同時結合を妨げる競合は存在せず、このことは、REGN5713、REGN5714、およびREGN5715が、重複しない、別個のエピトープに結合することを示唆していた。