JP2020203916A - トランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの製造方法 - Google Patents

トランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】反応性の低い中間生成物から効率的にトランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを製造する方法を提供する。【解決手段】240fa、1230za、1230zd、241fa、241fb、1231zd、1231zb、1231ze、1231za、242fa、242fb、1,1,1−トリクロロ−3,3−ジフルオロプロパン、1232zd、1232ze、1232zc、1232zb、1232za、1233zd(Z)、1233zc、1233ze、1233zb、243fa、243fb、243fc、244fbおよび244faからなる群から選ばれる少なくとも一つから選択される炭素数3のハロゲン化炭化水素化合物を、固体触媒および塩素の存在下で、フッ化水素と気相で反応させる。【選択図】なし

Description

本発明は、炭素数3のハロゲン化炭化水素化合物からトランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを製造する方法に関する。
トランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(略称:1233zd(E))は温暖化係数(GWP)の低い次世代のポリウレタン発泡剤、作動流体、冷媒等として有用な化合物である。
通常、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(略称:1233zd)はフッ素化触媒を用い、1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン(略称:240fa)をフッ化水素にてフッ素化して、又は1,1,3,3−テトラクロロ−2−プロペン(略称:1230za)をフッ化水素にてフッ素化して生成する。当該フッ素化は気相もしくは液相反応で実施され、通常、液相反応の場合は加圧条件下で実施される。
例えば、特許文献1には、気相中、フッ素化固体触媒の存在下で、1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン(240fa)をフッ化水素と反応させて1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(1233zd)を得る方法が記載されている。また、特許文献2には、1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン(240fa)を無触媒でフッ化水素と反応させて1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(1233zd)を得る方法が記載されている。特許文献3には、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(1233zd)の製造方法として、1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン(240fa)を反応容器中、ルイス酸触媒またはルイス酸触媒の混合物の存在下、150℃より低い温度で、液相で反応させること、反応容器中で生成した塩化水素および1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(1233zd)を連続的に取り出すこと、及び該1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(1233zd)を単離する方法が記載されている。
特開平9−183740号公報 特開平11−180908号公報 特表2007−501843号公報
特許文献1の方法で、1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン(240fa)をフッ化水素と反応させて1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(1233zd)を得る場合、フッ化水素と塩化水素の分圧に影響される平衡反応となり、反応生成物中には1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(1233zd)以外にも、よりフッ素化された1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(略称:245fa)などの生成物や、フッ素化度の低い1,1,3,3−テトラクロロ−1−フルオロプロパン(略称:241fa)、1,3,3−トリクロロ−1,1−ジフルオロプロパン(略称:242fa)などの生成物が含まれる。特に1,3,3−トリクロロ−1,1−ジフルオロプロパン(242fa)は、240faから1233zdを製造する際の無触媒での液相フッ素化反応において、中間生成物として存在するものの、フッ素化反応の反応速度が著しく低いために反応器内に蓄積してしまい、生産性低下の原因となっていた。
特許文献2では、240faから1233zd及び/又は1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(略称:1234ze)を無触媒で気相フッ素化反応により製造しているが、高温で長時間、加熱する必要がある。
本発明は、係る問題を解決し、反応性の低い中間生成物から効率的にトランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを製造する方法を提供する。
本発明者らは、鋭意検討した結果、1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンの液相中での無触媒フッ素化反応において生成する、著しく反応性が低い1,3,3−トリクロロ−1,1−ジフルオロプロパン等のハロゲン化炭化水素化合物を固体触媒存在下、塩素、フッ化水素と共に気相で加熱することにより、効率的にトランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンに変換できることを見いだし、本発明のトランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの製造方法を完成させるに至った。
なお、本出願人は、(1)で表される炭素数3のハロゲン化炭化水素化合物を、塩素の存在下で、フッ化水素と気相で反応させることによって、トランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンが製造できることを見出し、既に出願した(PCT/JP2015/069784)。

Cl (1)

(式中、Xは2または3であり、X=2のとき、Yは1〜4の整数であり、Zは0〜3の整数であり、Y+Z=4を満たす。X=3のとき、Yは1〜5の整数であり、Zは0〜4の整数であり、Y+Z=5を満たす。ただし、前記一般式(1)は、トランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンは除く炭素数3のハロゲン化炭化水素化合物を示す。)
該PCT/JP2015/069784における各実施例においては、固体触媒を用いない「無触媒での反応」が開示されている。今般、本発明者らは、当該反応が、固体触媒の存在下でも好ましく進行することを見出し、本出願を行うこととした。
即ち、本発明の方法において、反応器内に蓄積する中間生成物を抜き出し、塩素存在下での気相固体触媒フッ素化反応により、効率的にトランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンに変換し、生産性を向上させることが可能である。
本発明は、以下の発明1〜17を含む。
「発明1」
下記一般式(1)で表される炭素数3のハロゲン化炭化水素化合物を、固体触媒および塩素の存在下で、フッ化水素と気相で反応させることを特徴とする、トランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの製造方法。

Cl (1)

(式中、Xは2または3であり、X=2のとき、Yは1〜4の整数であり、Zは0〜3の整数であり、Y+Z=4を満たす。X=3のとき、Yは1〜5の整数であり、Zは0〜4の整数であり、Y+Z=5を満たす。ただし、前記一般式(1)は、トランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンは除く炭素数3のハロゲン化炭化水素化合物を示す。)
「発明2」
前記固体触媒が、アルミニウム、クロム、チタン、マンガン、鉄、ニッケル、コバルト、銅、マグネシウム、ジルコニウム、モリブデン、亜鉛、スズ、ランタン、ニオブ、タンタルおよびアンチモンからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属を含む金属フッ素化物である、発明1に記載の製造方法。
「発明3」
下記一般式(2)で表される炭素数3の炭化水素化合物をさらに添加し、塩素の存在下で、フッ化水素と気相で反応させることを特徴とする、発明1〜2の何れかに記載の製造方法。

(2)

(式中、V+W=8を満たすとき、Vは0〜8の整数であり、V+W=6を満たすとき、Vは0〜6の整数であり、V+W=4を満たすとき、Vは0〜4の整数である。)
「発明4」
前記炭素数3のハロゲン化炭化水素化合物が、1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン(240fa)、1,1,3,3−テトラクロロプロペン(1230za)、1,3,3,3−テトラクロロプロパン(1230zd)、1,1,3,3−テトラクロロ−1−フルオロプロパン(241fa)、1,1,1,3−テトラクロロ−3−フルオロプロパン(241fb)、1,3,3−トリクロロ−3−フルオロプロペン(1231zd)、1,3,3−トリクロロ−1−フルオロプロペン(1231zb)、3,3,3−トリクロロ−1−フルオロプロペン(1231ze)、1,1,3−トリクロロ−3−フルオロプロペン(1231za)、1,3,3−トリクロロ−1,1−ジフルオロプロパン(242fa)、1,1,3−トリクロロ−1,3−ジフルオロプロパン(242fb)、1,1,1−トリクロロ−3,3−ジフルオロプロパン、1,3−ジクロロ−3,3−ジフルオロプロペン(1232zd)、3,3−ジクロロ−1,3−ジフルオロプロペン(1232ze)、3,3−ジクロロ−1,1−ジフルオロプロペン(1232zc)、1,3−ジクロロ−1,3−ジフルオロプロペン(1232zb)、1,1−ジクロロ−3,3−ジフルオロプロパン(1232za)、シス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(1233zd(Z))、3−クロロ−1,1,3−トリフルオロプロペン(1233zc)、3−クロロ−1,3,3−トリフルオロプロペン(1233ze)、1−クロロ−1,3,3−トリフルオロプロペン(1233zb)、3,3−ジクロロ−1,1,1−トリフルオロプロパン(243fa)、1,3−ジクロロ−1,1,3−トリフルオロプロパン(243fb)、1,1−ジクロロ−1,3,3−トリフルオロプロパン(243fc)、1−クロロ−1,1,3,3−テトラフルオロプロパン(244fb)および3−クロロ−1,1,1,3−テトラフルオロプロパン(244fa)からなる群から選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする、発明1〜2の何れかに記載の製造方法。
「発明5」
反応温度が100℃以上400℃以下であることを特徴とする、発明1〜2の何れかに記載の製造方法。
「発明6」
1,1,3,3−テトラクロロ−1−フルオロプロパン(241fa)、1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン(240fa)、1,3,3−トリクロロ−1,1−ジフルオロプロパン(242fa)からなる群から選ばれる少なくとも一つのハロゲン化炭化水素化合物を、固体触媒および塩素の存在下、100℃以上400℃以下でフッ化水素と気相で反応させる、ことを特徴とする、トランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの製造方法。
「発明7」
下記一般式(2)で表される炭素数3の炭化水素化合物をさらに添加し、反応させることを特徴とする、発明6に記載の製造方法。

(2)

(式中、V+W=8を満たすとき、Vは0〜8の整数であり、V+W=6を満たすとき、Vは0〜6の整数であり、V+W=4を満たすとき、Vは0〜4の整数である。)
「発明8」
1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン(240fa)とフッ化水素を反応させて中間生成物を得る工程(A)と、
前記工程(A)で得た中間生成物を、固体触媒および塩素の存在下で、100℃以上400℃以下でフッ化水素と気相で反応させて、トランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを得る工程(B)と、
を含むことを特徴とする、トランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの製造方法。
「発明9」
下記一般式(2)で表される炭素数3の炭化水素化合物のさらなる存在下、前記工程(B)の反応を行うことを特徴とする、発明8に記載の製造方法。

(2)

(式中、V+W=8を満たすとき、Vは0〜8の整数であり、V+W=6を満たすとき、Vは0〜6の整数であり、V+W=4を満たすとき、Vは0〜4の整数である。)
「発明10」
前記工程(A)を液相中、無触媒条件下で行い、トランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを含む反応生成ガスを回収し、
前記工程(A)の反応液を回収して、該反応液に含まれる前記中間生成物を前記工程(B)に用いることを特徴とする、請求項8に記載の製造方法。
「発明11」
連続的又は断続的に前記1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンと前記フッ化水素とを前記工程(A)に導入し、
前記反応生成ガス及び前記反応液を連続的又は断続的に回収することを特徴とする、発明10に記載の製造方法。
「発明12」
前記中間生成物が、1,1,3,3−テトラクロロ−1−フルオロプロパン(241fa)、1,1,1,3−テトラクロロ−3−フルオロプロパン(241fb)、1,3,3−トリクロロ−3−フルオロプロペン(1231zd)、1,3,3−トリクロロ−1−フルオロプロペン(1231zb)、3,3,3−トリクロロ−1−フルオロプロペン(1231ze)、1,1,3−トリクロロ−3−フルオロプロペン(1231za)、1,3,3−トリクロロ−1,1−ジフルオロプロパン(242fa)、1,1,3−トリクロロ−1,3−ジフルオロプロパン(242fb)、1,3−ジクロロ−3,3−ジフルオロプロペン(1232zd)、3,3−ジクロロ−1,3−ジフルオロプロペン(1232ze)、3,3−ジクロロ−1,1−ジフルオロプロペン(1232zc)、1,3−ジクロロ−1,3−ジフルオロプロペン(1232zb)、シス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(1233zd(Z))、3,3−ジクロロ−1,1,1−トリフルオロプロパン(243fa)、1,3−ジクロロ−1,1,3−トリフルオロプロパン(243fb)、1,1−ジクロロ−1,3,3−トリフルオロプロパン(243fc)、1−クロロ−1,1,3,3−テトラフルオロプロパン(244fb)および3−クロロ−1,1,1,3−テトラフルオロプロパン(244fa)からなる群から選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする、発明8に記載の製造方法。
「発明13」
前記中間生成物が、1,3,3−トリクロロ−1,1−ジフルオロプロパン(242fa)を少なくとも含むことを特徴とする、発明8に記載の製造方法。
「発明14」
前記工程(B)の反応温度が150℃以上300℃以下であることを特徴とする、発明8に記載の製造方法。
「発明15」
未反応の中間生成物を回収して、前記工程(B)に用いることを特徴とする、発明8に記載の製造方法。
「発明16」
前記工程(B)において、トランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンとともに、シス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを得ることを特徴とする、発明8に記載の製造方法。
「発明17」
得られたシス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを、前記工程(B)に供することを特徴とする、発明16に記載の製造方法。
「発明18」
得られたシス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを100℃以上400℃以下で加熱して、トランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを得ることを特徴とする、発明16に記載の製造方法。
本発明のトランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの製造方法において、1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンの液相下での無触媒フッ素化反応における著しく反応性の低い1,3,3−トリクロロ−1,1−ジフルオロプロパン等の中間生成物を固体触媒存在下、塩素、フッ化水素と共に気相で加熱することにより、触媒活性低下を防止し、効率的にトランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを製造することができる。
通常、沸点の高いハロゲン化炭化水素、特に塩素化度の高いハロゲン化炭化水素を気相中、かつ固体触媒存在下でフッ素化反応を実施すると、タール化などにより、触媒活性が低下し、トランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン収率の低下が起こることがあった(後述の比較例1を参照)。しかし塩素存在下で触媒フッ素化反応を実施することにより、触媒活性の低下を有意に抑制でき、安定的にトランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを製造ができることを見いだした。
図1は、本発明の一実施形態に係る製造装置100の模式図である。 図2は、実施例5において、捕集した反応生成物をガスクロマトグラフで分析した反応経時変化測定結果である。なお図2において、「1233E収率(%)」は反応生成物中の1233E濃度(GC面積%)を示す。 図3は、実施例6において、捕集した反応生成物をガスクロマトグラフで分析した反応経時変化測定結果である。なお図3において、「1233E収率(%)」は反応生成物中の1233E濃度(GC面積%)を示す。
本発明は、1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン(240fa)の液相中での無触媒フッ素化反応において著しく反応性が低い1,3,3−トリクロロ−1,1−ジフルオロプロパン(242fa)等の中間生成物から、効率的にトランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(1233zd(E))を製造する方法であるが、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、炭素数3のハロゲン化炭化水素化合物を原料として用い、固体触媒および、塩素の存在下でフッ化水素と反応させて、トランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを製造する方法である。
本発明に用いる原料の炭素数3のハロゲン化炭化水素化合物は、下記一般式(1)で表される炭素数3のハロゲン化炭化水素化合物である。

Cl (1)

ここで、式中、Xは2または3であり、X=2のとき、Yは1〜4の整数であり、Zは0〜3の整数であり、Y+Z=4を満たす。X=3のとき、Yは1〜5の整数であり、Zは0〜4の整数であり、Y+Z=5を満たす。ただし、一般式(1)は、トランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンは除く炭素数3のハロゲン化炭化水素化合物を示すものとする。
一般式(1)で表される炭素数3のハロゲン化炭化水素化合物は、X=2のとき、CCl、CCl、CCl、CClであり、X=3のとき、CCl、CCl、CCl、CCl、CClである。
本発明に用いる原料の炭素数3のハロゲン化炭化水素化合物は、具体的には、1,1,3,3−テトラクロロ−1−フルオロプロパン(略称:241fa)、1,1,1,3−テトラクロロ−3−フルオロプロパン(略称:241fb)、1,3,3−トリクロロ−3−フルオロプロペン(略称:1231zd)、1,3,3−トリクロロ−1−フルオロプロペン(略称:1231zb)、3,3,3−トリクロロ−1−フルオロプロペン(略称:1231ze)、1,1,3−トリクロロ−3−フルオロプロペン(略称:1231za)、1,3,3−トリクロロ−1,1−ジフルオロプロパン(242fa)、1,1,3−トリクロロ−1,3−ジフルオロプロパン(略称:242fb)、1,3−ジクロロ−3,3−ジフルオロプロペン(略称:1232zd)、3,3−ジクロロ−1,3−ジフルオロプロペン(略称:1232ze)、3,3−ジクロロ−1,1−ジフルオロプロペン(略称:1232zc)、1,3−ジクロロ−1,3−ジフルオロプロペン(略称:1232zb)、シス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(1233zd(Z))、3,3−ジクロロ−1,1,1−トリフルオロプロパン(略称:243fa)、1,3−ジクロロ−1,1,3−トリフルオロプロパン(略称:243fb)、1,1−ジクロロ−1,3,3−トリフルオロプロパン(略称:243fc)、1−クロロ−1,1,3,3−テトラフルオロプロパン(略称:244fb)および3−クロロ−1,1,1,3−テトラフルオロプロパン(略称:244fa)からなる群から選ばれる少なくとも一つである。
1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンの液相中での無触媒フッ素化反応を行った場合、反応液には微量のトランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンが存在するが、トランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンからトランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン自身を合成する反応は製造方法として寄与しないため、本明細書においては除外するものとする。
本発明に用いる反応原料である炭素数3のハロゲン化炭化水素化合物とともに、炭素数3の炭化水素化合物も用いることができる。本発明の製造過程で生成する、ハロゲン化炭化水素化合物由来の塩化水素、塩素ラジカルなどの塩素源が作用することで、炭素数3の炭化水素化合物についてもトランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンに変換することができる。炭素数3の炭化水素化合物は、下記一般式(2)で表される。

(2)

(式中、V+W=8を満たすとき、Vは0〜8の整数であり、V+W=6を満たすとき、Vは0〜6の整数であり、V+W=4を満たすとき、Vは0〜4の整数である。)
一般式(2)で表される炭素数3の炭化水素化合物は、V+W=8を満たすとき、C、C、C、C、C、C、C、C、Cであり、V+W=6を満たすとき、C、C、C、C、C、C、Cであり、V+W=4を満たすとき、C、C、C、C、Cである。
炭素数3の炭化水素化合物としては、具体的には、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(略称:245fa)、トランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(略称:1234ze(E))、シス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(略称:1234ze(Z))、1,1,3,3−テトラフルオロプロペン(略称:1234zc)、3,3,3−トリフルオロプロピンなどが例示できる。
原料の炭素数3のハロゲン化炭化水素化合物は、1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン(240fa)の液相中での無触媒フッ素化反応による反応生成物に限定されず、どのような方法で製造したものであってもよい。例えば、1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンとフッ化水素を250℃、フッ素化した酸化クロム触媒に通じてフッ素化する方法(特開平9−183740号公報参照)、1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンとフッ化水素を液相、100kg/cm(約10MPa)、200℃で5時間反応させる方法(特開平11−180908号公報参照)などを挙げることができる。
[固体触媒]
本出願人が、PCT/JP2015/069784に開示したように、本発明の反応(一般式(1)で表される炭素数3のハロゲン化炭化水素化合物をトランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンに変換する反応)は、気相中、塩素の存在下であれば、無触媒でも進行する。しかし、今般本発明者らが見出したところによると、固体触媒を用いることによって、同一温度における1233E収率 は増大する傾向が見られ、この結果、無触媒よりも低い温度であっても、無触媒のより高温の場合と同等の1233E収率が得られやすい。本発明のフッ素化反応は、塩素ガスの共存を必須とするため、反応器への負荷がかかることがある。すなわち、固体触媒の使用により、反応温度を低減できることには、技術的な意義が大きい。以下、本発明で使用する「固体触媒」について詳しく説明する。
本発明において使用する固体触媒は、気相中、塩素、フッ化水素と共に炭素数3のハロゲン化炭化水素化合物をその触媒と接触させることでトランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを生成することができるものであればよく、一般に固体触媒(不均一系触媒)として知られているものを幅広く使用することができる。
具体的には、金属化合物(金属酸化物、金属フッ素化物、部分フッ素化金属酸化物、金属錯体など)、活性炭 などが、本発明において使用可能な固体触媒である。
この中では金属化合物が好ましく、中でも金属酸化物、金属フッ素化物、ならびに「部分フッ素化金属酸化物(たんに「フッ素化金属酸化物」と呼ぶこともある)」が特に好ましい。
なお、本発明の気相フッ素化反応を、固体触媒として金属酸化物の存在下行うと、金属酸化物は、HFと接触することによって次第にフッ素置換されていく。具体的に、アルミナやクロミアなどの金属酸化物を固体触媒として反応器に充填し、HFを流通させると、これらの金属酸化物を構成する酸素原子は徐々にフッ素原子に置き換えられ、いわゆる「部分フッ素化金属酸化物(「フッ素化アルミナ」、「フッ素化クロミア」がその好適な例である。)」を形成していく。さらにフッ素化が進行すれば、酸素が全てフッ素で置換された「金属フッ素化物」に近づいていく。本発明でいう「固体触媒」は、そのような「金属酸化物」「金属フッ素化物」「部分フッ素化金属酸化物(フッ素化金属酸化物)」の何れであっても良い。
尤も、「金属酸化物」を充填して、直ちに本発明の反応を実施するよりも、一旦所定温度で、所定量のHFを流通させてから、本発明の反応を実施した方が、触媒活性は安定することが多い。このことから、系内で(HFとの接触によって)生成する「部分フッ素化金属酸化物(フッ素化金属酸化物)」は、本発明の固体触媒として特に好ましいものの1つと考えられる。
これらの金属化合物に含まれる金属の種類は特に限定されないが、アルミニウム、クロム、マンガン、ジルコニウム、チタンおよびマグネシウムからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属が特に好ましい。金属は単独であってもよく、二種以上の金属を併用してもよい。
二種類以上の金属を併用する触媒としては、アルミニウム、クロム、マンガン、ジルコニウム、チタンおよびマグネシウムからなる群より選ばれる一種の金属を主成分とし、さらにアルミニウム、クロム、チタン、マンガン、鉄、ニッケル、銅、コバルト、マグネシウム、ジルコニウム、モリブデン、ニオブ、タンタルおよびアンチモンからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属を副成分として含むもの(但し、主成分と副成分の金属は異なる)が特に好ましい。
これら、二種類以上の金属を併用する触媒の形態としては、
(a)複数の金属種から成る金属材料を反応器に充填し、全体として「固体触媒」として使用する形態、
(b)第1の金属を含む金属材料に、第2(さらには第3以降)の金属を含む溶液(水溶液など)を含浸させ、これら第2(さらには第3以降)の金属を、第1の金属を含む金属材料に担持させ、それを反応器に充填する形態、
(c)活性炭のような「金属を含まない固体触媒」を担体とし、これに複数の金属を含む
水溶液を含浸させる、という形態、があり、これらのいずれも適用可能である。
以下では、これらのうち(a)(b)について説明する。
(a)の形態としては、金属そのものを合金化して、それを一括して酸化処理、あるいはさらにフッ素化処理することで実施できる。しかし、そのような合金化処理をするまでもなく、例えば、アルミナとクロミア、アルミナとジルコニア、アルミナとチタニア、アルミナとマグネシアがそれぞれ混合されたもの(その混合体をさらにフッ素化したものも含む)も、(a)の形態として適用可能である。
一方、(b)は、第1の金属の酸化物やフッ化物を主成分とし、それに第2(さらには場合によって第3、第4)の金属を副成分として添加するための簡易な方法であり、「第2(さらには第3、第4)の金属」が「第1の金属」に担持している触媒、という意味合いで「担持触媒」とも呼ぶ。(b)の形態としては、後述の実施例に示すように「クロムが担持されたアルミナ触媒」「クロムが担持された部分フッ素化アルミナ触媒」は、触媒活性がとりわけ安定しており、式(1)で表される炭素数3のハロゲン化炭化水素化合物を、円滑に目的物トランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンに変換できるので、特に好ましい。
固体触媒として複数の金属を用いる場合、上記(a)(b)のいずれも、アルミニウムが主成分であることが好ましい。具体的には、アルミニウムを金属成分中、50原子%以上含むものが、フッ素化反応を良好な転化速度で進行させることができるため、特に好ましい。アルミニウムを80原子%以上含むものがさらに好ましい。なお、金属成分としては単一成分(例えばアルミニウム)であっても良いが、副成分として0.1〜20原子%の金属を併用すると、触媒活性が一層向上することがある(後述の実施例を参照)。アルミニウム90〜99原子%:クロム1〜10原子%からなる金属の併用は特に好ましい例である。
本発明の固体触媒として用いられ、又は「部分フッ素化金属酸化物」や「金属フッ素化物」の原料ともなる「金属酸化物」は、一種以上の結晶形を取ることがある。例えば、アルミナにはγ−アルミナとα−アルミナがあり、チタニアにはアナターゼとルチルの結晶形のものがある。金属酸化物の結晶形はいずれであってもよいが、アルミナではγ−アルミナは表面積が大きく好ましい。
前述した通り、本発明の固体触媒としては、「部分フッ素化金属酸化物(フッ素化金属酸化物)」が、特に好ましい。そうした「部分フッ素化金属酸化物(フッ素化金属酸化物)」や、それがさらにフッ素化されて生成する「金属フッ素化物」の調製方法は、特に限定されない。例えば、フッ化水素、フッ素化炭化水素、フッ素化塩素化炭化水素などのフッ素化剤と、前述した「金属の酸化物(複数金属の酸化物を含む)」とを接触させることにより→行うことができる。このフッ素化処理は、通常、段階的に行うのが好ましい。すなわち、金属酸化物等の固体触媒を、フッ化水素を用いてフッ素化処理する場合、大きな発熱を伴うので、最初は希釈されたフッ酸水溶液やフッ化水素ガスにより比較的低温度で行い、徐々に濃度および/または温度を高くしながら行うのが好ましい。最終段階は、「式(1)で表される炭素数3のハロゲン化炭化水素化合物のフッ素化反応」の温度以上で行うことが好ましい)。この条件に加えて、より安定的に反応を進行させるために、触媒のフッ素化処理は100℃以上で行い、200℃以上、さらに好ましくは300℃以上においてフッ化水素でフッ素化処理するのが好ましい。温度の上限は特にないが、900℃を超えると、フッ素化処理装置の耐熱性の点から困難であり、実用的には600℃以下で行うのが好ましい。
本発明に用いる金属酸化物や金属フッ素化物などの触媒は、使用の直前に、HFなどのフッ素化剤でフッ素化処理を施すことが特に好ましい。このフッ素化処理は、上述の金属フッ素化物や部分フッ素化金属酸化物の調製方法の例に準じて施すことができる。上述の方法で、金属フッ素化物や部分フッ素化金属酸化物の調製を予め行った場合であっても、使用の前に所定の温度以上であらためてフッ素化処理を行うことは、目的とする炭素数3のハロゲン化炭化水素化合物のフッ素化反応を安定的に進行させる上では、特に好ましい。このフッ素化処理は、本発明のフッ素化反応の反応器に固体触媒を充填した後、目的とする反応を始めるまでの間に、同一の反応器内で行うことが、簡便で効果が高いことから、特に好ましい。
[担持触媒について]
本発明に係る固体触媒としては、金属化合物が担体に担持された担持触媒がとりわけ好ましい(前記(b)および(c)に該当)。以下では、この「担持触媒」について、これまでの説明と重複する箇所はあるが、詳述する。
担持触媒の担体としては、炭素(活性炭など)の他、上述した金属(複合金属を含む。)化合物を使用してもよい。担体として金属化合物を用いる場合、上述した金属酸化物、さらには、それがフッ素化処理されて得られる「金属フッ素化物」或いは「部分フッ素化金属酸化物」を好適に使用できる。具体的には、アルミニウム、クロム、マンガン、ジルコニウム、チタンおよびマグネシウムからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属の酸化物、フッ素化物、あるいは部分フッ素化金属酸化物が、担体として好適に使用できる。
担体としては、複数の金属の酸化物を用いることもできる。例えば、アルミニウム、クロム、マンガン、ジルコニウム、チタンおよびマグネシウムからなる群より選ばれる一種の金属を主とし、アルミニウム、クロム、チタン、マンガン、鉄、ニッケル、銅、コバルト、マグネシウム、ジルコニウム、モリブデン、ニオブ、タンタルおよびアンチモンからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属を副成分として含む酸化物が好ましい。
尤も、「担持触媒」とはそもそも、担体に対して「金属の溶液」を含浸させて得る触媒である。すなわち、「担体」として金属化合物を用い、「担持させる金属化合物(本明細書において「担持物」とも呼ぶ)」としてこれと異なる金属化合物が用いられている「担持触媒」の場合、それ自体で「複数金属の併用」が果たされていることになる。このような場合は、わざわざ「担体」に複数金属を併用する必要性は必ずしも高くない。但し、当業者の所望により、そのような形態を選択することも、排除されない。
一方、「担持させる金属化合物(担持物)」に含まれる金属としては、アルミニウム、クロム、チタン、マンガン、鉄、ニッケル、コバルト、銅、マグネシウム、ジルコニウム、モリブデン、亜鉛、スズ、ランタン、ニオブ、タンタル、アンチモンなどが挙げられる。これらのうち、アルミニウム、クロム、チタン、鉄、ニッケル、コバルト、銅、ジルコニウム、亜鉛、スズ、ランタン、ニオブ、タンタル、アンチモンが好ましい。これらの金属はフッ化物、塩化物、フッ化塩化物、オキシフッ化物、オキシ塩化物、オキシフッ化塩化物等として担持される。金属化合物は単独で担持させてもよいし、2種以上を併せて担持させてもよい。なお、「担持触媒」は、担体に対して、担持金属の溶液を含浸させ、それによって、金属の複合化を果たしている触媒であるから、原則として、「担持させる金属化合物(担持物)」としては、「担体」とは異なる化合物を用いる。
担持物としては、具体的には、硝酸クロム、三塩化クロム、重クロム酸カリウム、四塩化チタン、硝酸マンガン、塩化マンガン、塩化第二鉄、硝酸ニッケル、塩化ニッケル、硝酸コバルト、塩化コバルト、五塩化アンチモン、塩化マグネシウム、硝酸マグネシウム、塩化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、塩化銅(II)、塩化亜鉛(II)、硝酸ランタ・BR>刀A四塩化スズなどを用いることができるが、これらに限定されない。これらは、溶液(通常、水溶液)として上記担体に接触させ、金属化合物を担体に含浸させ、かかる後に加熱して水を蒸発させ、担体上に固定することが好ましい(後述の調整例1を参照)なお、四塩化チタン、五塩化アンチモン、四塩化スズなどの常温で液体である金属塩化物は溶液ではなく、原液での直接担持が好ましい。
担体に前述の金属化合物を担持して調製した触媒は、安定的に反応を進行させるために、使用の前にフッ素化処理を施してもよく、そうすることが好ましい。すなわち、他の固体触媒と同様に、使用の前に所定の反応温度以上の温度で予めフッ化水素、フッ素化炭化水素、フッ素化塩素化炭化水素などのフッ素化剤で処理しておくことが好ましい。
本発明のフッ素化反応の触媒としては、フッ素化クロム担持アルミナ、フッ素化アルミナ、クロム担持活性炭が好ましい具体例として挙げられ、フッ素化クロム担持アルミナ、フッ素化アルミナが特に好ましい。これらの触媒は反応の前に予めHFなどのフッ素化剤によってフッ素化処理をしておくことが好ましい。
担体及び担持物を含めた触媒の全質量に対する金属の質量の割合は、0.1〜80質量%、好ましくは1〜50質量%である。0.1質量%以上であれば良好な触媒効果が得られ、80質量%以下であれば安定に担持させることができる。なお、担持物が固体金属塩である場合、触媒の全質量に対する金属の質量の割合は、0.1〜40質量%、好ましくは1〜30質量%である。
[トランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの製造工程]
本反応工程の、反応領域へ供給する炭素数3のハロゲン化炭化水素化合物/フッ化水素のモル比は反応温度により変わりうるが、1/1〜1/20、好ましくは1/1〜1/10である。フッ化水素が炭素数3のハロゲン化炭化水素化合物の20モル倍を超えると同一反応器における有機物処理量の減少ならびに反応系から排出された未反応フッ化水素と生成物との混合物の分離に支障をきたすことがある。一方、フッ化水素が1モル倍よりも少ないと反応率が低下し、選択率が低下するので好ましくない。
反応領域へ供給する炭素数3のハロゲン化炭化水素化合物/塩素のモル比は反応温度により変わりうるが、1/0.001〜1/0.5、好ましくは1/0.01〜1/0.1であり、最も好ましくは1/0.01〜1/0.05 である。塩素が炭素数3のハロゲン化炭化水素化合物の0.5モル倍を超えると過塩素化物の生成が増えるため好ましくない。一方、塩素が0.001モル倍よりも少ないと反応率が低下し、転化率が低下するので好ましくない。
未反応のフッ化水素は未反応有機物及び反応生成物から分離し、反応系へリサイクルすることができる。フッ化水素と有機物の分離は、公知の手段で行うことができる。
本発明に係る反応を行う温度は特に限定されないが、100℃以上500℃以下であり、150℃以上400℃以下が好ましく、150℃以上300℃以下がさらに好ましい。反応温度が100℃よりも低いと反応が遅く実用的ではない。一方、反応温度が500℃を超えると、タール化、分解生成物の生成が多くなるので好ましくない。なお、前記したように、本発明においては、固体触媒を用いるために、無触媒の場合に比べると、より低い温度(具体的には300℃を下回る温度)であっても、「300℃より高温の場合」に比べて遜色ない程に1233E収率が高い。この結果、反応器への負荷もそれだけ少なく、エネルギー消費も少なく済むことも多く、本発明の大きなメリットということができる。
本発明に係る反応において、反応領域へ供給する炭素数3のハロゲン化炭化水素化合物は、反応に関与しない窒素、ヘリウム、アルゴンなどの希釈ガスと共に供給してもよい。このようなガスは、炭素数3のハロゲン化炭化水素化合物1モル当たり100モル以下の比率とし、10モル以下が好ましい。但し、本発明に係る反応は気相中で行うため、反応に関与しないガスを供給すると、原料が希釈されてしまい、その分、生産性が低下する。また本発明に係る反応を、このような希釈ガスの不存在下で行っても、選択率に悪影響は出にくいことが判っている。このため、通常希釈ガスは使用しない方がよい。
本発明に係る反応は、圧力については特に限定されない。常圧、すなわち、特に加圧または減圧などの圧力調節をすることなく行うことができる。装置の面から0.01〜1MPa(本明細書においては絶対圧として示し、以下同様である。)で行うのが好ましい。加圧すると望まれない付加反応が進行する方向に平衡が傾くことがあるため、注意を要する。一方、本発明の反応は減圧で行うこともできる。圧力を決定する場合、系内に存在する原料などの有機物が、反応系内で液化しないような条件を選ぶことが望ましい。
本発明に係る反応の接触時間(反応時間)は標準状態(0℃、1気圧)において、通常1〜500秒間、好ましくは10〜300秒間である。接触時間が短いと反応率が低下し、接触時間が長すぎると副反応が起こることがあるので好ましくない。
本発明に係る反応は、温度が調節され、炭素数3のハロゲン化炭化水素化合物、フッ化水素及び塩素を実質的に同時に反応器に導入することでおこなわれる。反応器は通常、管状であってステンレス鋼、ハステロイ(TM)、モネル(TM)、白金、炭素、フッ素樹脂又はこれらをライニングした材質で製作されたものが用いられる。
なお、本発明においては、炭素数3のハロゲン化炭化水素化合物としては、1,1,3,3−テトラクロロ−1−フルオロプロパン(241fa)、1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン(240fa)、1,3,3−トリクロロ−1,1−ジフルオロプロパン(242fa)からなる群から選ばれる少なくとも一つが好ましい。これらの炭素数3のハロゲン化炭化水素化合物を原料有機物として用いる場合は、固体触媒の存在下、かつ塩素の存在下、所定の反応温度でフッ化水素と気相で反応させることにより、トランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを製造することができる。
[1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンを出発物質とするトランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの製造方法]
1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン(240fa)を原料有機物として、トランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを製造する方法について説明する。本発明の一実施形態に係る製造方法は、1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン(240fa)とフッ化水素を反応させる工程(A)と、工程(A)で得た中間生成物を、固体触媒および塩素の存在下で、フッ化水素と気相で反応させて、トランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを得る工程(B)とを含む。
図1は、一実施形態に係る製造装置100の模式図である。製造装置100は、例えば、液相反応槽10、凝縮器30、タンク50、タンク70及び気相反応塔90を備えるが、これに限定されるものではない。液相反応槽10は、例えばステンレス鋼製オートクレーブであり、パイプ11からバルブ1を介して原料有機物が供給される。また、液相反応槽10には、パイプ13からバルブ2を介してフッ化水素が供給される。図1においては、原料有機物とフッ化水素をそれぞれ別のパイプから供給する例を示したが、1つのパイプから別々に又は混合物として液相反応槽10に供給するようにしてもよい。
液相反応槽10の上部にはパイプ15が接続し、凝縮器30に接続する。凝縮器30にはパイプ31が接続し、バルブ3を介してタンク50に接続する。タンク50は凝縮器30で液化したトランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを貯蔵する。また、液相反応槽10の底部にはパイプ17が接続し、バルブ4を介してタンク70に接続する。タンク70は、液相反応槽10で生成した中間生成物を含む反応液を貯蔵する。
タンク70に接続するパイプ71は、バルブ5を介して気相反応塔90に接続する。気相反応塔90にはバルブ6を介してパイプ91が接続し、気相反応塔90に塩素を供給する。また、気相反応塔90にはバルブ7を介してパイプ93が接続し、気相反応塔90にフッ化水素を供給する。この気相反応塔90には、「固体触媒」が充填されている。なお、図1においては、塩素とフッ化水素をそれぞれ別のパイプから供給する例を示したが、1つのパイプから別々に又は混合物として気相反応塔90に供給するようにしてもよい。
気相反応塔90の上部に接続するパイプ95はバルブ8を介して凝縮器35に接続する。凝縮器35はパイプ36を介してタンク50に接続する。タンク50は凝縮器35で液化したトランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを貯蔵する。なお、図1においては、共通するタンク50に2つの系で生成したトランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを貯蔵するように示したが、別々のタンクに貯蔵するようにしてもよい。
本発明の一実施形態に係る製造方法は、1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン(240fa)とフッ化水素を液相反応槽10で反応させる工程(A)と、工程(A)で得た中間生成物を気相反応塔90に導入して、固体触媒および塩素の存在下で、フッ化水素と気相で反応させて、トランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを得る工程(B)とを含んでもよい。液相反応槽10で生成したトランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを含む反応生成ガスは、パイプ15を介して液相反応槽10から抜き出され、凝縮器30で液化して、タンク50に回収される。なお、1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン(240fa)とフッ化水素の導入は連続的に行ってもよく、バルブ3を開閉して断続的に行ってもよい。また、トランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの回収は連続的に行ってもよく、バルブ3を開閉して断続的に行ってもよい。
一方、液相反応槽10で生成した中間生成物を含む反応液は、パイプ17を介してタンク70に回収される。タンク70に貯蔵された反応液は、パイプ71を介して気相反応塔90に供給される。気相反応塔90では固体触媒および塩素の存在下で、反応液に含まれる中間生成物(前述の炭素数3のハロゲン化炭化水素化合物)と、フッ化水素が気相で反応し、トランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンが生成される。このとき、タンク70に貯蔵された反応液に前述の炭素数3の炭化水素化合物をさらに添加して反応原料として、気相反応塔90でフッ化水素と反応させてもよい。気相反応塔90で生成したトランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを含む反応生成ガスは、パイプ95を介して気相反応塔90から抜き出され、凝縮器35で液化して、パイプ36を介してタンク50に回収される。
1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンをフッ化水素と反応させる方法は上述の一実施態様に限定されず、従来公知の方法を採用してもよい。例えば、気相中で反応させる方法(例えば、特開平9−18374号公報参照)や、液相中で反応させる方法(例えば、特開平11−180908号公報参照)などが例示できるが、これらに限定されない。1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンをフッ化水素と反応させて得られた中間生成物は、気相中、塩素存在下でフッ化水素と反応させることで、トランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロパンを製造することができる。ここで、中間生成物を、気相中、固体触媒および塩素の存在下で、フッ化水素と反応させる方法は、前述の炭素数3のハロゲン化炭化水素化合物を、気相中、固体触媒および塩素の存在下で、フッ化水素と反応させる方法に準じて説明することができる。すなわち、「炭素数3のハロゲン化炭化水素化合物」を「中間生成物」に置き換えることで、説明することができる。
工程(B)の反応により得られる反応混合物には、目的物のトランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの他に、未反応の前記中間生成物や反応副生成物が含まれることがある。これらを取り出して工程(B)の反応系に供給して、さらに反応させてもよい。これにより、目的物のトランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを効率良く製造することができる。
この反応混合物からトランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを分離する方法は、特に限定されない。この分離は、例えば、蒸留により行ってもよい。また、分離を容易にするために必要に応じて、水洗などの方法により、反応混合物に含まれ得る酸分の除去を行ってもよい。
工程(B)の反応により、目的物のトランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンが得られるが、シス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンが併産されることもある。この場合、シス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを反応混合物から取り出して、前述のとおり、工程(B)の反応系に供給して、さらに反応させてもよいし、別途150℃以上600℃以下で加熱して異性化させてトランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを製造してもよい。
本発明に係る方法においては、通常、沸点の高いハロゲン化炭化水素、特に塩素化度の高いハロゲン化炭化水素を気相、固体触媒存在下でフッ素化反応を実施するとタール化などにより、触媒活性が低下し、トランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン収率の低下が生じることがある(後述の比較例1を参照)。しかし塩素存在下で本反応を実施することで、触媒活性低下を有意に抑制することが可能となり、工業的製造法として確立された。
本発明によって、反応性の低い中間生成物までも効率よく消費され、1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン(240fa)を出発材料として、効率よくトランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを合成することができるようになった。
本発明のトランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの製造方法を以下の実施例により説明するが、本発明は以下の実施例により、限定されるものではない。
[調製例1]
100℃の冷却液を循環させた凝縮器を備えた2000mlのステンレス鋼製オートクレーブに1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン(240fa)4.1g/minとフッ化水素3.8g/min(モル比:240fa/フッ化水素=1/10)を導入し、オートクレーブを150℃に加熱した。圧力が4MPaを超えたところで4MPaを維持するように凝縮器出口のニードルバルブから1233Eを主成分とする反応生成ガスを抜き出した。抜き出したガスは、氷水浴中で冷却した氷水入りのフッ素樹脂製ガス洗浄瓶に通して酸を吸収し、その後、ドライアイスアセトン浴のガラストラップで反応生成有機物として回収した。
オートクレーブ内の液量が1000mlに達したところで1000mlを維持するようにデップ管からニードルバルブを通して反応液を抜き出した。抜き出した反応液は氷水浴中で冷却した氷水入りのフッ素樹脂製ガス洗浄瓶に回収した。反応を24時間継続後、オートクレーブ内の反応液をすべて氷水入りのフッ素樹脂製ガス洗浄瓶に回収した。凝縮器出口から回収した反応生成有機物は、合計2952gであり、デップ管から抜き出した反応液は、合計1879gであった。同様の反応をさらに9回実施し、反応液を合計19.1kg回収した。反応液をガラス製蒸留塔で蒸留し、100℃から145℃の留分を10.9kg回収し、ガスクロマトグラフィーによって分析した結果を表1に示した。
表1中、1233Eはトランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(1233zd(E))を表し、1233Zはシス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(1233zd(Z))を表す。
この調整例1で得た「留分」を、後述の実施例1〜6および比較例1において、原料(炭素数3のハロゲン化炭化水素化合物を含む液体組成物)として用いた。
Figure 2020203916
[調製例2]フッ素化アルミナ触媒の調製
電気炉を備えた直径2.7cm長さ40cmの円筒形ステンレス鋼(SUS316L)製反応管に粒状γ−アルミナ(住化アルケム社製、KHS−46)130mlを充填し、窒素ガスを流しながら200℃まで昇温し、水の流出が見られなくなった時点で、窒素ガスにフッ化水素(HF)を同伴させその濃度を徐々に高めた。充填されたアルミナのフッ素化によるホットスポットが反応管出口端に達したところで反応器温度を段階的に100℃刻みで昇温、各段階温度で1時間ずつ保持し、最終的に400℃に上げ、その状態を1時間保ち触媒のフッ素化処理を行うことにより、フッ素化アルミナ触媒の調製を行った。
[調製例3]クロム担持フッ素化アルミナ触媒の調製
三角フラスコに20質量%塩化クロム水溶液を調製し、調製例2で調製したフッ素化アルミナ130mlを浸漬させ、3時間保持した。フッ素化アルミナを濾過し、ロータリーエバポレーターを用いて、減圧下、70℃で乾燥させ、クロム担持フッ素化アルミナ触媒を得た。
電気炉を備えた直径2.7cm長さ40cmの円筒形ステンレス鋼(SUS316L)製反応管に前記クロム担持フッ素化アルミナ触媒130mlを充填し、窒素ガスを流しながら200℃まで昇温し、水の流出が見られなくなった時点で、窒素ガスにフッ化水素(HF)を同伴させその濃度を徐々に高めた。充填物のフッ素化によるホットスポットが反応管出口端に達したところで反応器温度を段階的に100℃刻みで昇温、1時間保持させ、最終的に400℃で1時間保ち担持触媒のフッ素化処理を行うことにより、クロム担持フッ素化アルミナ触媒の活性を高める処理)を行った。
[実施例1]
電気炉を備えた内径2.7cm、長さ40cmの円筒形ステンレス鋼(SUS316L)製反応管に調製例3で調製したクロム担持フッ素化アルミナ触媒を130ml充填し、窒素を10ml/minの速度で流しながら、昇温した。反応管の温度が150℃に達したところで、反応原料として、気化させた調製例1の留分(炭素数3のハロゲン化炭化水素化合物を含む液体組成物):0.30g/min、フッ化水素:0.10g/min、塩素:1.0ml/minの流量でそれぞれ供給し(モル比:炭素数3のハロゲン化炭化水素化合物/フッ化水素/塩素=1/3.28/0.028、接触時間:51秒間)、流量が安定したところで窒素の供給を停止した。
なお、「炭素数3のハロゲン化炭化水素化合物」のモル数は、ガスクロ分析結果のGC% からそのモル量を算出し、それらを合算した値とした。
反応器から流出する生成ガスを氷水浴中で冷却した氷水入りのフッ素樹脂製ガス洗浄瓶に通し、未反応のフッ化水素および塩化水素を吸収し、反応生成物を捕集した。捕集した反応生成物をガスクロマトグラフで分析した結果を表3に示す。表3中、1234Eはトランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(1234ze(E))を表し、1234Zはシス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(1234ze(Z))を表し、1233Eはトランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(1233zd(E))を表し、1233Zはシス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(1233zd(Z))を表す。
[実施例2]
反応管の温度が200℃に達したところで、反応原料として、気化させた調製例1の留分(炭素数3のハロゲン化炭化水素化合物を含む液体組成物):0.39g/min、フッ化水素:0.09g/min、塩素:1.0ml/minの流量でそれぞれ供給し(モル比:炭素数3のハロゲン化炭化水素化合物/フッ化水素/塩素=1/2.23/0.022、接触時間:52秒間)とした以外は実施例1と同様に反応を実施した。その結果を表3に示す。
[実施例3]
反応管の温度が250℃に達したところで、反応原料として、気化させた調製例1の留分(炭素数3のハロゲン化炭化水素化合物):0.25g/min、フッ化水素:0.06g/min、塩素:1.0ml/minの流量でそれぞれ供給し(モル比:炭素数3のハロゲン化炭化水素化合物/フッ化水素/塩素=1/2.26/0.033、接触時間:80秒間)とした以外は実施例1と同様に反応を実施した。その結果を表3に示す。
[実施例4]
反応管の温度が300℃に達したところで、反応原料として、気化させた調製例1の留分(炭素数3のハロゲン化炭化水素化合物):0.26g/min、フッ化水素:0.07g/min、塩素:1.0ml/minの流量でそれぞれ供給し(モル比:炭素数3のハロゲン化炭化水素化合物/フッ化水素/塩素=1/2.37/0.032、接触時間:74秒間)とした以外は実施例1と同様に反応を実施した。その結果を表3に示す。
実施例1〜4における反応温度、接触時間および反応原料の供給量についてまとめたものを表2に示す。
Figure 2020203916
Figure 2020203916
このように実施例1〜4ともに、目的物である1233Eの生成が認められ、特に反応温度が200℃以上である実施例2〜4において、1233EのGC%は高くなっていることが分かる。
[比較例1]
反応原料の供給量を、気化させた調製例1の留分(炭素数3のハロゲン化炭化水素化合物を含む液体組成物):0.41g/min、フッ化水素:0.11g/min、塩素:約1.0ml/minの流量でそれぞれ供給し(モル比:炭素数3のハロゲン化炭化水素化合物/フッ化水素/塩素=1/2.36/0.020、接触時間:47秒間)とした以外は実施例1と同様に1時間反応を実施した。その後、塩素のみ導入を停止して、反応を継続し、8時間および13時間後に分析を実施した。その結果を表4に示した。
Figure 2020203916
比較例1により、反応原料として塩素を供給しない場合には、時間の経過と共に、有機物原料の転化率および1233E収率が次第に低下することが分かる。
[実施例5]
電気炉を備えた内径2.7cm、長さ40cmの円筒形ステンレス鋼(SUS316L)製反応管に調製例3で調製したクロム担持フッ素化アルミナを130ml充填し、窒素を10ml/minの速度で流しながら、昇温した。反応管の温度が250℃に達したところで、反応原料として、気化させた調製例1の留分(炭素数3のハロゲン化炭化水素化合物を含む液体組成物):0.51g/min、フッ化水素:0.08g/min、塩素:1.0ml/minの流量でそれぞれ供給し(モル比:炭素数3のハロゲン化炭化水素化合物/フッ化水素/塩素=1/1.54/0.017、接触時間:50秒間)、流量が安定したところで窒素の供給を停止した。反応器から流出する生成ガスを氷水浴中で冷却した氷水入りのフッ素樹脂製ガス洗浄瓶に通し、未反応のフッ化水素および塩化水素を吸収し、反応生成物を捕集した。捕集した反応生成物をガスクロマトグラフで分析した反応経時変化測定結果を図2に示す。なお図2において、1233E収率は反応生成物中の1233E濃度(GC%)を示す。
図2から、本発明においては、クロム担持フッ素化アルミナ触媒の活性が60時間に渡って、良好に保たれていることが分かる。
[実施例6]
電気炉を備えた内径2.7cm、長さ40cmの円筒形ステンレス鋼(SUS316L)製反応管に調製例2で調製したフッ素化アルミナを130ml充填し、窒素を10ml/minの速度で流しながら、昇温した。反応管の温度が280℃に達したところで、反応原料として、気化させた調製例1の留分(炭素数3のハロゲン化炭化水素化合物):0.64g/min、フッ化水素:0.12g/min、塩素:1.0ml/minの流量でそれぞれ供給し(モル比:炭素数3のハロゲン化炭化水素化合物/フッ化水素/塩素=1/1.75/0.013、接触時間:37秒間)、流量が安定したところで窒素の供給を停止した。反応器から流出する生成ガスを氷水浴中で冷却した氷水入りのフッ素樹脂製ガス洗浄瓶に通し、未反応のフッ化水素および塩化水素を吸収し、反応生成物を捕集した。捕集した反応生成物をガスクロマトグラフィーで分析した反応経時変化測定結果を図3に示す。
図3から、本発明においては、フッ素化アルミナ触媒の活性が45時間という長時間に渡って、良好に保たれていることが分かる。
1:バルブ、2:バルブ、3:バルブ、4:バルブ、5:バルブ、6:バルブ、7:バルブ、8:バルブ、10:液相反応槽、11:パイプ、13:パイプ、15:パイプ、17:パイプ、30:凝縮器、31:パイプ、35:凝縮器、36:パイプ、50:タンク、70:タンク、71:パイプ、90:気相反応塔、91:パイプ、93:パイプ、95:パイプ、100:製造装置

Claims (4)

  1. 1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン(240fa)、1,1,3,3−テトラクロロプロペン(1230za)、1,3,3,3−テトラクロロプロパン(1230zd)、1,1,3,3−テトラクロロ−1−フルオロプロパン(241fa)、1,1,1,3−テトラクロロ−3−フルオロプロパン(241fb)、1,3,3−トリクロロ−3−フルオロプロペン(1231zd)、1,3,3−トリクロロ−1−フルオロプロペン(1231zb)、3,3,3−トリクロロ−1−フルオロプロペン(1231ze)、1,1,3−トリクロロ−3−フルオロプロペン(1231za)、1,3,3−トリクロロ−1,1−ジフルオロプロパン(242fa)、1,1,3−トリクロロ−1,3−ジフルオロプロパン(242fb)、1,1,1−トリクロロ−3,3−ジフルオロプロパン、1,3−ジクロロ−3,3−ジフルオロプロペン(1232zd)、3,3−ジクロロ−1,3−ジフルオロプロペン(1232ze)、3,3−ジクロロ−1,1−ジフルオロプロペン(1232zc)、1,3−ジクロロ−1,3−ジフルオロプロペン(1232zb)、1,1−ジクロロ−3,3−ジフルオロプロパン(1232za)、シス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(1233zd(Z))、3−クロロ−1,1,3−トリフルオロプロペン(1233zc)、3−クロロ−1,3,3−トリフルオロプロペン(1233ze)、1−クロロ−1,3,3−トリフルオロプロペン(1233zb)、3,3−ジクロロ−1,1,1−トリフルオロプロパン(243fa)、1,3−ジクロロ−1,1,3−トリフルオロプロパン(243fb)、1,1−ジクロロ−1,3,3−トリフルオロプロパン(243fc)、1−クロロ−1,1,3,3−テトラフルオロプロパン(244fb)および3−クロロ−1,1,1,3−テトラフルオロプロパン(244fa)からなる群から選ばれる少なくとも一つから選択される炭素数3のハロゲン化炭化水素化合物を、固体触媒および塩素の存在下で、フッ化水素と気相で反応させることを特徴とする、トランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの製造方法。
  2. 前記炭素数3のハロゲン化炭化水素化合物から選択される2つ以上の炭素数3のハロゲン化炭化水素化合物を、固体触媒および塩素の存在下で、フッ化水素と気相で反応させる、請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記固体触媒が、アルミニウム、クロム、チタン、マンガン、鉄、ニッケル、コバルト、銅、マグネシウム、ジルコニウム、モリブデン、亜鉛、スズ、ランタン、ニオブ、タンタルおよびアンチモンからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属を含む金属フッ素化物である、請求項1または2に記載の製造方法。
  4. 反応温度が100℃以上400℃以下であることを特徴とする、請求項1〜3の何れか一に記載の製造方法。
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