JP2020198305A - 電池用包装材料 - Google Patents

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Abstract

【課題】成形時にピンホールやクラックが生じ難く、優れた成形性を備えた電池用包装材料を提供する。【解決手段】少なくとも、ナイロンを含む基材層1、金属層3、及びシーラント層4が順次積層された積層体からなり、前記基材層の厚みBに対する、前記基材層のJIS Z1707:1997の規定に準拠した方法により測定される突き刺し強さAの比(A/B)が、0.92N/μm以上である、電池用包装材料。【選択図】図1

Description

本発明は、成形時にピンホールやクラックが生じ難く、優れた成形性を備えている電池用包装材料に関する。
従来、様々なタイプの電池が開発されているが、あらゆる電池において、電極や電解質等の電池素子を封止するために包装材料が不可欠な部材になっている。従来、電池用包装として金属製の包装材料が多用されていた。
一方、近年、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、パソコン、カメラ、携帯電話等の高性能化に伴い、電池には、多様な形状が要求されると共に、薄型化や軽量化が求められている。しかしながら、従来多用されていた金属製の電池用包装材料では、形状の多様化に追従することが困難であり、しかも軽量化にも限界があるという欠点がある。
そこで、近年、多様な形状に加工が容易で、薄型化や軽量化を実現し得る電池用包装材料として、基材/金属層/シーラント層が順次積層されたフィルム状の積層体が提案されている。
また、このような電池用包装材料においては、一般的に、冷間成形により凹部が形成され、当該凹部によって形成された空間に電極や電解液などの電池素子を配し、シーラント層同士を熱融着させることにより、電池用包装材料の内部に電池素子が収容された電池が得られる。しかしながら、このようなフィルム状の包装材料は、金属製の包装材料に比べて薄く、成形時にピンホールやクラックが生じ易いという欠点がある。電池用包装材料にピンホールやクラックが生じた場合には、電解液が金属層にまで浸透して金属析出物を形成し、その結果、短絡を生じさせることになりかねないため、フィルム状の電池用包装材料には、成形時にピンホールが生じ難い特性、即ち優れた成形性を備えさせることは不可欠となっている。
例えば、特許文献1には、樹脂フィルムからなる内層、第1接着剤層、金属層、第2接着剤層、及び樹脂フィルムからなる外層を備えた積層型包装材料において、前記第1接着剤層及び第2接着剤層の少なくとも一方を、側鎖に活性水素基を有する樹脂、多官能イソシアネート類、及び多官能アミン化合物を含む接着剤組成物で形成することにより、より深い成形に対して信頼性の高い包装材料が得られることが開示されている。
特開2008−287971号公報
近年、電池の小型化、薄型化の要求に伴い、電池用包装材料に対しても、より一層の薄膜化が求められている。しかしながら、電池用包装材料の厚みが薄くなると、成形時に金属層にピンホールやクラックが生じやすくなるという問題がある。
特に、本発明者らが検討したところ、ナイロンを含む基材層を金属層と積層した電池用包装材料においては、厚みが薄くなることによるピンホール等の発生が顕著になることが明らかとなった。
このような状況下、本発明の主な目的は、少なくとも、ナイロンを含む基材層、接着層、金属層、及びシーラント層が順次積層された積層体からなる電池用包装材料において、成形時にピンホールやクラックが生じ難く、優れた成形性を備えた電池用包装材料を提供することにある。
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、少なくとも、ナイロンを含む基材層、金属層、及びシーラント層が順次積層された積層体らなる電池用包装材料において、前記基材層の厚みBに対する、前記基材層のJIS Z1707:1997の規定に準拠した方法により測定される突き刺し強さAの比(A/B)を、0.92N/μm以上に設定することにより、成形時にピンホールやクラックが生じ難く、優れた成形性を備えた電池用包装材料となることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の電池用包装材料及び電池を提供する。
項1. 少なくとも、ナイロンを含む基材層、金属層、及びシーラント層が順次積層された積層体からなり、
前記基材層は、前記基材層の厚みBに対する、前記基材層のJIS Z1707:1997の規定に準拠した方法により測定される突き刺し強さAの比(A/B)が、0.92N/μm以上である、電池用包装材料。
項2. 前記基材層は、ナイロンにより形成された層を含む、項1に記載の電池用包装材料。
項3. 前記基材層は、ポリエステルを含む層とナイロンを含む層との積層体により構成されている、項1または2に記載の電池用包装材料。
項4. 前記金属層の少なくとも一方の面に化成処理が施されている、項1〜3のいずれかに記載の電池用包装材料。
項5. 前記金属層が、アルミニウム箔により形成されている、項1〜4のいずれかに記載の電池用包装材料。
項6. 前記金属層の厚みが10〜50μmの範囲にある、項1〜5のいずれかに記載の電池用包装材料。
項7. 前記積層体の厚みが、160μm以下である項1〜6のいずれかに記載の電池用包装材料。
項8. 少なくとも正極、負極、及び電解質を備えた電池素子が、項1〜7のいずれかに記載の電池用包装材料内に収容されている、電池。
項9. 少なくとも、ナイロンを含む基材層、金属層、及びシーラント層が順次積層された積層体を得る工程を備えており、
前記基材層として、前記基材層の厚みBに対する、前記基材層のJIS Z1707:1997の規定に準拠した方法により測定される突き刺し強さAの比(A/B)が、0.92N/μm以上であるものを用いる、電池用包装材料の製造方法。
本発明によれば、少なくとも、ナイロンを含む基材層、金属層、及びシーラント層が順次積層された積層体からなる電池用包装材料において、前記基材層の厚みBに対する、前記基材層のJIS Z1707:1997の規定に準拠した方法により測定される突き刺し強さAの比(A/B)を、0.92N/μm以上に設定することにより、成形時にピンホールやクラックが生じ難く、優れた成形性を備えた電池用包装材料を提供することができる。
本発明の電池用包装材料の断面構造の一例を示す図である。 本発明の電池用包装材料の断面構造の一例を示す図である。
本発明の電池用包装材料は、少なくとも、ナイロンを含む基材層、金属層、及びシーラント層が順次積層された積層体からなり、基材層は、前記基材層の厚みBに対する、前記基材層のJIS Z1707:1997の規定に準拠した方法により測定される突き刺し強さAの比(A/B)が、0.92N/μm以上であることを特徴とする。以下、本発明の電池用包装材料について詳述する。
1.電池用包装材料の積層構造
電池用包装材料は、図1に示すように、少なくとも、基材層1、金属層3、及びシーラント層4が順次積層された積層体からなる。本発明の電池用包装材料において、基材層1が最外層になり、シーラント層4は最内層になる。即ち、電池の組み立て時に、電池素子の周縁に位置するシーラント層4同士が熱溶着して電池素子を密封することにより、電池素子が封止される。
本発明の電池用包装材料は、図1に示すように、基材層1と金属層3との間に、これらの接着性を高める目的で、必要に応じて接着層2が設けられていてもよい。また、本発明の電池用包装材料は、図2に示すように、金属層3とシーラント層4との間に、これらの接着性を高める目的で、必要に応じて接着層5が設けられていてもよい。
本発明の電池用包装材料を構成する積層体の厚みとしては、特に制限されないが、厚みを薄くしつつ、成形性を高める観点からは、好ましくは160μm以下、より好ましくは50〜90μm程度が挙げられる。本発明の電池用包装材料を構成する積層体の厚みが、例えば80μm以下と非常に薄い場合にも、本発明によれば、成形によるピンホール等の発生を効果的に抑制し得る。このため、本発明の電池用包装材料は、電池のエネルギー密度の向上に寄与することができる。
2.電池用包装材料を形成する各層
[基材層1]
本発明の電池用包装材料において、基材層1は最外層を形成する層である。基材層1は、ナイロンを含んでいる。前述の通り、近年、電池の小型化、薄型化の要求に伴い、電池用包装材料に対しても、より一層の薄膜化が求められている。しかしながら、電池用包装材料の厚みが薄くなると、成形時に金属層にピンホールやクラックが生じやすくなるという問題がある。特に、本発明者らが検討したところ、ナイロンを含む基材層を金属層と積層した電池用包装材料においては、厚みが薄くなることによるピンホールの発生が顕著になることが明らかとなった。
これに対して、本発明においては、基材層1の厚みBに対する、基材層1のJIS Z1707:1997の規定に準拠した方法により測定される突き刺し強さAの比(A/B)が、0.92N/μm以上であることにより、金属層3におけるピンホールやクラックの発生が効果的に抑制される。基材層1の厚みBに対する突き刺し強さAの比(すなわち、単位厚み当たりの突き刺し強さの大きさ)が所定値以上であることによって、金属層3におけるピンホール等の発生が抑制される機序の詳細の詳細は明らかではないが、例えば次のように考えることができる。すなわち、本発明においては、従来使用されているナイロン製の基材層に比して、単位厚み当たりの突き刺し強さの大きさが大きい基材層を使用することにより、成形時における金属層3の急激な伸びが基材層1によって適切に制御され、結果として、金属層3のピンホール等の発生が抑制されているものと考えられる。
基材層1の厚みBに対する、基材層1のJIS Z1707:1997の規定に準拠した方法により測定される突き刺し強さAの比(A/B)としては、0.92N/μm以上であればよいが、より一層成形性を高める観点からは、好ましくは0.94〜0.98N/μm程度が挙げられる。
基材層1を形成する素材については、ナイロンを含んでおり、上記の突き刺し強さを備えていることを限度として特に制限されるものではない。基材層1は、ナイロンにより形成された層を含むことが好ましい。ナイロンの具体例としては、好ましくは、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6とナイロン6,6との共重合体、ナイロン6,10などが挙げられる。基材層1を形成する素材としては、ナイロン以外の他の樹脂を含んでいてもよい。他の樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂(ナイロンを除く)、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリウレタン樹脂、珪素樹脂、フェノール樹脂、及びこれらの混合物や共重合物等が挙げられる。基材層1を形成する素材は、1種類単独であってもよいし、2種類以上の組み合わせであってもよい。
また、基材層1は、ポリエステルを含む層と、ナイロンを含む層との積層体により構成されていてもよい。ポリエステルの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレートなどを挙げることができ、2軸延伸からなるポリエステルが好ましい。また、ナイロンを含む層は、ナイロンにより形成されていることが好ましい。当該積層体において、ポリエステルを含む層が最外層側(金属層3とは反対側)に位置し、ナイロンを含む層が内層側(金属層3側)に位置していることが好ましい。
基材層1は、上記のような素材により形成された樹脂フィルムであることが好ましい。また、例えば、基材層1を2層の樹脂フィルムから形成する場合、ポリエステルを含む層/ナイロンを含む層の構成にすることが好ましい。
基材層1を多層の樹脂フィルムで形成する場合、2以上の樹脂フィルムは、接着剤または接着性樹脂などの接着成分を介して積層させればよく、使用される接着成分の種類や量等については、後述する接着層2の場合と同様である。なお、2層以上の樹脂フィルムを積層させる方法としては、特に制限されず、公知方法が採用でき、例えばドライラミネーション法、サンドラミネーション法などが挙げられ、好ましくはドライラミネーション法が挙げられる。ドライラミネーション法により積層させる場合には、接着層としてウレタン系接着剤を用いることが好ましい。このとき、接着層の厚みとしては、例えば2〜5μm程度が挙げられる。
本発明において、電池用包装材料の成形性を高める観点からは、基材層1の表面には、滑剤が付着していることが好ましい。滑剤としては、特に制限されないが、好ましくはアミド系滑剤が挙げられる。アミド系滑剤の具体例としては、例えば、飽和脂肪酸アミド、不飽和脂肪酸アミド、置換アミド、メチロールアミド、飽和脂肪酸ビスアミド、不飽和脂肪酸ビスアミドなどが挙げられる。飽和脂肪酸アミドの具体例としては、ラウリン酸アミド、パルチミン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミドなどが挙げられる。不飽和脂肪酸アミドの具体例としては、オレイン酸アミド、エルカ酸アミドなどが挙げられる。置換アミドの具体例としては、N−オレイルパルチミン酸アミド、N−ステアリルステアリン酸アミド、N−ステアリルオレイン酸アミド、N−オレイルステアリン酸アミド、N−ステアリルエルカ酸アミドなどが挙げられる。また、メチロールアミドの具体例としては、メチロールステアリン酸アミドなどが挙げられる。飽和脂肪酸ビスアミドの具体例としては、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンヒドロキシステアリン酸アミド、N,N’−ジステアリルアジピン酸アミド、N,N’−ジステアリルセバシン酸アミドなどが挙げられる。不飽和脂肪酸ビスアミドの具体例としては、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’−ジオレイルセバシン酸アミドなどが挙げられる。脂肪酸エステルアミドの具体例としては、ステアロアミドエチルステアレートなどが挙げられる。また、芳香族系ビスアミドの具体例としては、m−キシリレンビスステアリン酸アミド、m−キシリレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、N,N’−システアリルイソフタル酸アミドなどが挙げられる。滑剤は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
基材層1の厚みについては、基材層としての機能を発揮しつつ、電池用包装材料が上記の突き刺し強さを満たせば特に制限されないが、例えば、10〜50μm程度、好ましくは10〜35μm程度が挙げられる。
[接着層2]
本発明の電池用包装材料において、接着層2は、基材層1と金属層3を強固に接着させるために、これらの間に設けられる層である。
接着層2は、基材層1と金属層3とを接着可能である接着剤によって形成される。接着層2の形成に使用される接着剤は、2液硬化型接着剤であってもよく、また1液硬化型接着剤であってもよい。更に、接着層2の形成に使用される接着剤の接着機構についても、特に制限されず、化学反応型、溶剤揮発型、熱溶融型、熱圧型等のいずれであってもよい。
接着層2の形成に使用できる接着成分としては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリカーボネート、共重合ポリエステル等のポリエステル系樹脂;ポリエーテル系接着剤;ポリウレタン系接着剤;エポキシ系樹脂;フェノール樹脂系樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、共重合ポリアミド等のポリアミド系樹脂;ポリオレフィン、カルボン酸変性ポリオレフィン、金属変性ポリオレフィン等のポリオレフィン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂;セルロース系接着剤;(メタ)アクリル系樹脂;ポリイミド系樹脂;尿素樹脂、メラミン樹脂等のアミノ樹脂;クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム等のゴム;シリコーン系樹脂等が挙げられる。これらの接着成分は1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの接着成分の中でも、好ましくはポリウレタン系接着剤が挙げられる。
接着層2の厚みについては、接着層としての機能を発揮すれば特に制限されないが、例えば、1〜10μm程度、好ましくは2〜5μm程度が挙げられる。
[金属層3]
電池用包装材料において、金属層3は、電池用包装材料の強度向上の他、電池内部に水蒸気、酸素、光などが侵入することを防止するためのバリア層として機能する層である。金属層3を構成する金属としては、具体的には、アルミニウム、ステンレス、チタンなどが挙げられ、好ましくはアルミニウムが挙げられる。金属層3は、金属箔や金属蒸着などにより形成することができ、金属箔により形成することが好ましく、アルミニウム箔により形成することがさらに好ましい。電池用包装材料の製造時に、金属層3にしわやピンホールが発生することを防止する観点からは、例えば、焼きなまし処理済みのアルミニウム(JIS A8021P−O、JIS A8079P−O)など軟質アルミニウム箔により形成することがより好ましい。
金属層3の厚みは、水蒸気などのバリア層としての機能を発揮すれば特に制限されないが、例えば、10μm〜50μm程度、好ましくは10μm〜40μm程度とすることができる。
また、金属層3は、接着の安定化、溶解や腐食の防止などのために、少なくとも一方の面、好ましくは両面が化成処理されていることが好ましい。ここで、化成処理とは、金属層の表面に耐酸性皮膜を形成する処理をいう。化成処理としては、例えば、硝酸クロム、フッ化クロム、硫酸クロム、酢酸クロム、蓚酸クロム、重リン酸クロム、クロム酸アセチルアセテート、塩化クロム、硫酸カリウムクロムなどのクロム酸化合物を用いたクロム酸クロメート処理;リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸アンモニウム、ポリリン酸などのリン酸化合物を用いたリン酸クロメート処理;下記一般式(1)〜(4)で表される繰り返し単位を有するアミノ化フェノール重合体を用いたクロメート処理などが挙げられる。なお、当該アミノ化フェノール重合体において、下記一般式(1)〜(4)で表される繰り返し単位は、1種類単独で含まれていてもよいし、2種類以上の任意の組み合わせであってもよい。
一般式(1)〜(4)中、Xは、水素原子、ヒドロキシル基、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、アリル基またはベンジル基を示す。また、R1及びR2は、それぞれ同一または異なって、ヒドロキシル基、アルキル基、またはヒドロキシアルキル基を示す。一般式(1)〜(4)において、X、R1及びR2で示されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基などの炭素数1〜4の直鎖または分枝鎖状アルキル基が挙げられる。また、X、R1及びR2で示されるヒドロキシアルキル基としては、例えば、ヒドロキシメチル基、1−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシエチル基、1−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基、1−ヒドロキシブチル基、2−ヒドロキシブチル基、3−ヒドロキシブチル基、4−ヒドロキシブチル基などのヒドロキシ基が1個置換された炭素数1〜4の直鎖または分枝鎖状アルキル基が挙げられる。一般式(1)〜(4)において、X、R1及びR2で示されるアルキル基及びヒドロキシアルキル基は、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。一般式(1)〜(4)において、Xは、水素原子、ヒドロキシル基またはヒドロキシアルキル基であることが好ましい。一般式(1)〜(4)で表される繰り返し単位を有するアミノ化フェノール重合体の数平均分子量は、例えば、500〜100万であることが好ましく、1000〜2万程度であることがより好ましい。
また、金属層3に耐食性を付与する化成処理方法として、リン酸中に、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化セリウム、酸化スズなどの金属酸化物や硫酸バリウムの微粒子を分散させたものをコーティングし、150℃以上で焼付け処理を行うことにより、金属層3の表面に耐食処理層を形成する方法が挙げられる。また、耐食処理層の上には、カチオン性ポリマーを架橋剤で架橋させた樹脂層をさらに形成してもよい。ここで、カチオン性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンイミン、ポリエチレンイミンとカルボン酸を有するポリマーからなるイオン高分子錯体、アクリル主骨格に1級アミンをグラフト重合させた1級アミングラフトアクリル樹脂、ポリアリルアミンまたはその誘導体、アミノフェノールなどが挙げられる。これらのカチオン性ポリマーとしては、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。また、架橋剤としては、例えば、イソシアネート基、グリシジル基、カルボキシル基、及びオキサゾリン基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の官能基を有する化合物、シランカップリング剤などが挙げられる。これらの架橋剤としては、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
化成処理は、1種類の化成処理のみを行ってもよいし、2種類以上の化成処理を組み合わせて行ってもよい。さらに、これらの化成処理は、1種の化合物を単独で使用して行ってもよく、また2種以上の化合物を組み合わせて使用して行ってもよい。化成処理の中でも、クロム酸クロメート処理や、クロム酸化合物、リン酸化合物、及びアミノ化フェノール重合体を組み合わせたクロメート処理などが好ましい。
化成処理において金属層3の表面に形成させる耐酸性皮膜の量については、特に制限されないが、例えば、上記のクロメート処理を行う場合であれば、金属層3の表面1m2
たり、クロム酸化合物がクロム換算で約0.5mg〜約50mg、好ましくは約1.0mg〜約40mg、リン化合物がリン換算で約0.5mg〜約50mg、好ましくは約1.0mg〜約40mg、及びアミノ化フェノール重合体が約1mg〜約200mg、好ましくは約5.0mg〜150mgの割合で含有されていることが望ましい。
化成処理は、耐酸性皮膜の形成に使用する化合物を含む溶液を、バーコート法、ロールコート法、グラビアコート法、浸漬法などによって、金属層の表面に塗布した後に、金属層の温度が70℃〜200℃程度になるように加熱することにより行われる。また、金属層に化成処理を施す前に、予め金属層を、アルカリ浸漬法、電解洗浄法、酸洗浄法、電解酸洗浄法などによる脱脂処理に供してもよい。このように脱脂処理を行うことにより、金属層の表面の化成処理をより効率的に行うことが可能となる。
[シーラント層4]
本発明の電池用包装材料において、シーラント層4は、最内層に該当し、電池の組み立て時にシーラント層同士が熱溶着して電池素子を密封する層である。
シーラント層4に使用される樹脂成分については、熱溶着可能であることを限度として特に制限されないが、例えば、ポリオレフィン、環状ポリオレフィン、カルボン酸変性ポリオレフィン、カルボン酸変性環状ポリオレフィンが挙げられる。
前記ポリオレフィンとしては、具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン等のポリエチレン;ホモポリプロピレン、ポリプロピレンのブロックコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのブロックコポリマー)、ポリプロピレンのランダムコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのランダムコポリマー)等のポリプロピレン;エチレン−ブテン−プロピレンのターポリマー;等が挙げられる。これらのポリオレフィンの中でも、好ましくはポリエチレン及びポリプロピレンが挙げられる。
前記環状ポリオレフィンは、オレフィンと環状モノマーとの共重合体であり、前記環状ポリオレフィンの構成モノマーであるオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、4−メチル−1−ペンテン、スチレン、ブタジエン、イソプレン、等が挙げられる。また、前記環状ポリオレフィンの構成モノマーである環状モノマーとしては、例えば、ノルボルネン等の環状アルケン;具体的には、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ノルボルナジエン等の環状ジエン等が挙げられる。これらのポリオレフィンの中でも、好ましくは環状アルケン、更に好ましくはノルボルネンが挙げられる。
前記カルボン酸変性ポリオレフィンとは、前記ポリオレフィンをカルボン酸でブロック重合又はグラフト重合することにより変性したポリマーである。変性に使用されるカルボン酸としては、例えば、マレイン酸、アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等が挙げられる。
前記カルボン酸変性環状ポリオレフィンとは、環状ポリオレフィンを構成するモノマーの一部を、α,β―不飽和カルボン酸又はその無水物に代えて共重合することにより、或いは環状ポリオレフィンに対してα,β―不飽和カルボン酸又はその無水物をブロック重合又はグラフト重合することにより得られるポリマーである。カルボン酸変性される環状ポリオレフィンについては、前記と同様である。また、変性に使用されるカルボン酸としては、前記酸変性シクロオレフィンコポリマーの変性に使用されるものと同様である。
これらの樹脂成分の中でも、好ましくはカルボン酸変性ポリオレフィン;更に好ましくはカルボン酸変性ポリプロピレンが挙げられる。
シーラント層4は、1種の樹脂成分単独で形成してもよく、また2種以上の樹脂成分を組み合わせたブレンドポリマーにより形成してもよい。更に、シーラント層4は、1層のみで成されていてもよいが、同一又は異なる樹脂成分によって2層以上で形成されていてもよい。
シーラント層4は、分散相サイズが1nm以上1μm未満で分散する相溶系エラストマーを含んでいることが好ましい。より具体的には、シーラント層4においては、シーラント層4を形成している樹脂組成物中において、当該相溶系エラストマーが、分散相サイズ1nm以上1μm未満で分散していることが好ましい。シーラント層4においては、酸変性ポリオレフィン及び酸変性環状ポリオレフィンの少なくとも一方の中で、当該相溶系エラストマーが、分散相サイズ1nm以上1μm未満で分散していることが好ましい。
このような相溶系エラストマーは、特開2013−258162号公報に開示されたような、所謂ミクロ相分離構造を有する。ミクロ相分離構造とは、具体的には、(1)相溶系エラストマーにおける分散相(柔軟性成分または拘束成分のいずれか)を楕円として近似した際の最大径(d1)が1〜200nmであるか、(2)分散相(柔軟性成分または拘束成分のいずれか)ドメインの最大径(d1)と、この最大径と直交する径の最大値(d2)との比(d1/d2)が20以上の棒状となっており、かつ前記最大値(d2)が1〜200nmであるか、または(3)柔軟性成分と拘束成分のいずれが分散相であるか判別できない層状のラメラ構造となっており、少なくとも一方の層の厚みが1〜200nmである構造である。
相溶系エラストマーにおけるミクロ相分離構造の確認は、特開2013−258162号公報に開示されたような公知の方法により行うことができ、具体的には以下のように行われる。相溶系エラストマーを含む樹脂組成物のプレスシート成形し、0.5mm角の小片とし、ルテニウム酸(RuO4)により染色する。これを、ダイヤモンドナイフを備え
たウルトラミクロトーム(REICHERT S、REICHERT TCSなど)を用いて、膜厚が約100nmの超薄切片を作製する。次いで、この超薄切片にカーボンを蒸着させて、透過型電子顕微鏡で観察する。観察箇所は、少なくとも5箇所をランダムに選択し、1万倍、5万倍、15万倍の倍率で観察する。その際、前記(1)の楕円としての近似を行う場合は、透過型電子顕微鏡にて1万倍ないし15万倍で観察される視野の中で、Image−Pro Plusのソフトを用い、Axis−majorを選択することにより、分散相(柔軟性成分または拘束成分のいずれか)を同面積で、かつ一次および二次モーメントが等しい楕円に近似し、その長軸を最大径(d1)とする。
相溶系エラストマーは、酸変性ポリオレフィン樹脂や酸変性環状ポリオレフィン中に存在させると、好適に分散相サイズ1nm以上1μm未満で分散する。相溶系エラストマーの分散相サイズは、絶縁性をより一層高める観点からは、1nm以上200nm以下が好ましい。なお、本発明におけるシーラント層4中のエラストマーの分散相サイズは、分散相が円形と見なせる場合はその直径、楕円として近似できる場合はその最大径、棒状の場合はアスペクト比の長軸の最大径、層状のラメラ構造の場合はその層の厚みである。
相溶系エラストマーとしては、シーラント層4中において、分散相サイズ1nm以上1μm未満で分散するものであれば特に制限されないが、好ましくはプロピレン−αオレフィン共重合体エラストマーが挙げられる。相溶系エラストマーは、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。プロピレン−αオレフィン共重合体エラストマーとしては、プロピレンに由来する構造単位と、炭素数2〜20のαオレフィン(プロピレンを除く)から選ばれる1種以上に由来する構造単位とを有し、前記プロピレンに由来する構造単位の割合が51モル%以上の共重合体エラストマーが好ましい。プロピレン−αオレフィン共重合体エラストマーの市販品としては、三井化学製ノティオ(商品名)、住友化学製タフセレン(商品名)、JSR製ダイナロン(商品名)などが挙げられる。また、例えば、特開2003−321582号公報に開示されているプロピレン−αオレフィン共重合体エラストマー以外のエラストマーを使用してもよい。
シーラント層4が相溶系エラストマーを含む場合、シーラント層4における相溶系エラストマーの含有量としては、好ましくは1〜60質量%程度、より好ましくは10〜50質量%程度、さらに好ましくは15〜45質量%程度が挙げられる。
また、シーラント層4の厚さとしては、適宜選定することができるが、10〜100μm程度、好ましくは15〜50μm程度が挙げられる。
また、シーラント層4は、必要に応じて滑剤などを含んでいてもよい。シーラント層4が滑剤を含む場合、電池用包装材料の成形性を高め得る。滑剤としては、特に制限されず、公知の滑剤を用いることができ、例えば、上記の基材層1で例示したものなどが挙げられる。滑剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。シーラント層4における滑剤の含有量としては、特に制限されず、電子包装用材料の成形性及び絶縁性を高める観点からは、好ましくは0.01〜0.2質量%程度、より好ましくは0.05〜0.15質量%程度が挙げられる。
[接着層5]
本発明の電池用包装材料において、接着層5は、金属層3とシーラント層4を強固に接着させために、これらの間に必要に応じて設けられる層である。
接着層5は、金属層3とシーラント層4とを接着可能である接着剤によって形成される。接着層5の形成に使用される接着剤について、その接着機構、接着剤成分の種類等は、前記接着層2の場合と同様である。接着層5に使用される接着剤成分として、好ましくはポリオレフィン系樹脂、更に好ましくはカルボン酸変性ポリオレフィン、特に好ましくはカルボン酸変性ポリプロピレンが挙げられる。
接着層5の厚みについては、接着層としての機能を発揮すれば特に制限されないが、例えば、2〜50μm程度、好ましくは10〜40μm程度が挙げられる。
[コーティング層]
本発明の電池用包装材料においては、意匠性、耐電解液性、耐擦過性、成形性の向上などを目的として、必要に応じて、基材層1の上(基材層1の金属層3とは反対側)に、必要に応じて、コーティング層(図示しない)を設けてもよい。コーティング層は、電池を組み立てた時に、最外層に位置する層である。
コーティング層は、例えば、ポリ塩化ビニリデン、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂などにより形成することができる。コーティング層は、これらの中でも、2液硬化型樹脂により形成することが好ましい。コーティング層を形成する2液硬化型樹脂としては、例えば、2液硬化型ウレタン樹脂、2液硬化型ポリエステル樹脂、2液硬化型エポキシ樹脂などが挙げられる。また、コーティング層には、マット化剤を配合してもよい。
マット化剤としては、例えば、粒径が0.5nm〜5μm程度の微粒子が挙げられる。マット化剤の材質については、特に制限されないが、例えば、金属、金属酸化物、無機物、有機物等が挙げられる。また、マット化剤の形状についても、特に制限されないが、例えば、球状、繊維状、板状、不定形、バルーン状等が挙げられる。マット化剤として、具体的には、タルク,シリカ,グラファイト、カオリン、モンモリロイド、モンモリロナイト、合成マイカ、ハイドロタルサイト、シリカゲル、ゼオライト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化亜鉛,酸化マグネシウム,酸化アルミニウム,酸化ネオジウム,酸化アンチモン、酸化チタン、酸化セリウム、硫酸カルシウム,硫酸バリウム、炭酸カルシウム,ケイ酸カルシウム、炭酸リチウム、安息香酸カルシウム,シュウ酸カルシウム,ステアリン酸マグネシウム、アルミナ、カーボンブラック、カーボンナノチューブ類、高融点ナイロン、架橋アクリル、架橋スチレン、架橋ポリエチレン、ベンゾグアナミン、金、アルミニウム、銅、ニッケル等が挙げられる。これらのマット化剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらのマット化剤の中でも、分散安定性やコスト等の観点から、好ましくはりシリカ、硫酸バリウム、酸化チタンが挙げられる。また、マット化剤には、表面に絶縁処理、高分散性処理等の各種表面処理を施しておいてもよい。
コーティング層を形成する方法としては、特に制限されないが、例えば、コーティング層を形成する2液硬化型樹脂を基材層1の一方の表面上に塗布する方法が挙げられる。マット化剤を配合する場合には、2液硬化型樹脂にマット化剤を添加して混合した後、塗布すればよい。
コーティング層の厚みとしては、コーティング層としての上記の機能を発揮すれば特に制限されないが、例えば、0.5〜10μm程度、好ましくは1〜5μm程度が挙げられる。
3.電池用包装材料の製造方法
本発明の電池用包装材料の製造方法については、所定の組成の各層を積層させた積層体が得られる限り、特に制限されず、少なくとも、ナイロンを含む基材層、金属層、及びシーラント層が順次積層された積層体を得る工程を備えており、
前記基材層として、基材層の厚みBに対する、前記基材層のJIS Z1707:1997の規定に準拠した方法により測定される突き刺し強さAの比(A/B)が、0.92N/μm以上であるものを用いる。
すなわち、基材層1として、「2.電池用包装材料を形成する各層」の欄で説明した基材層1を用いて、各層を積層することにより、本発明の電池用包装材料を製造することができる。
本発明の電池用包装材料の製造方法の一例としては、以下の通りである。まず、基材層1、接着層2、金属層3が順に積層された積層体(以下、「積層体A」と表記することもある)を形成する。積層体Aの形成は、具体的には、基材層1上又は必要に応じて表面が化成処理された金属層3に接着層2の形成に使用される接着剤を、グラビアコート法、ロールコート法等の塗布方法で塗布・乾燥した後に、当該金属層3又は基材層1を積層させて接着層2を硬化させるドライラミネーション法によって行うことができる。
次いで、積層体Aの金属層3上に、シーラント層4を積層させる。金属層3上にシーラント層4を直接積層させる場合には、積層体Aの金属層3上に、シーラント層4を構成する樹脂成分をグラビアコート法、ロールコート法等の方法により塗布すればよい。また、金属層3とシーラント層4の間に接着層5を設ける場合には、例えば、(1)積層体Aの金
属層3上に、接着層5及びシーラント層4を共押出しすることにより積層する方法(共押出しラミネーション法)、(2)別途、接着層5とシーラント層4が積層した積層体を形成
し、これを積層体Aの金属層3上に熱ラミネーション法により積層する方法、(3)積層体
Aの金属層3上に、接着層5を形成させるための接着剤を押出し法や溶液コーティングした高温で乾燥さらには焼き付ける方法等により積層させ、この接着層5上に予めシート状に製膜したシーラント層4をサーマルラミネーション法により積層する方法、(4)積層体
Aの金属層3と、予めシート状に製膜したシーラント層4との間に、溶融させた接着層5を流し込みながら、接着層5を介して積層体Aとシーラント層4を貼り合せる方法(サンドラミネーション法)等が挙げられる。
コーティング層を設ける場合には、基材層1の金属層3とは反対側の表面に、コーティング層を積層する。コーティング層は、例えばコーティング層を形成する上記の樹脂を基材層1の表面に塗布することに形成することができる。なお、基材層1の表面に金属層3を積層する工程と、基材層1の表面にコーティング層を積層する工程の順番は、特に制限されない。例えば、基材層1の表面にコーティング層を形成した後、基材層1のコーティング層とは反対側の表面に金属層3を形成してもよい。
上記のようにして、必要に応じて設けられるコーティング層/基材層1/接着層2/必要に応じて表面が化成処理された金属層3/必要に応じて設けられる接着層5/シーラント層4からなる積層体が形成されるが、接着層2及び必要に応じて設けられる接着層5の接着性を強固にするために、更に、熱ロール接触式、熱風式、近又は遠赤外線式等の加熱処理に供してもよい。このような加熱処理の条件としては、例えば150〜250℃で1〜5分間が挙げられる。
本発明の電池用包装材料において、積層体を構成する各層は、必要に応じて、製膜性、積層化加工、最終製品2次加工(パウチ化、エンボス成形)適性等を向上又は安定化するために、コロナ処理、ブラスト処理、酸化処理、オゾン処理等の表面活性化処理を施していてもよい。
4.電池用包装材料の用途
本発明の電池用包装材料は、正極、負極、電解質等の電池素子を密封して収容するための包装材料として使用される。
具体的には、少なくとも正極、負極、及び電解質を備えた電池素子を、本発明の電池用包装材料で、前記正極及び負極の各々に接続された金属端子が外側に突出させた状態で、電池素子の周縁にフランジ部(シーラント層同士が接触する領域)が形成できるようにして被覆し、前記フランジ部のシーラント層同士をヒートシールして密封させることによって、電池用包装材料を使用した電池が提供される。なお、本発明の電池用包装材料を用いて電池素子を収容する場合、本発明の電池用包装材料のシーラント部分が内側(電池素子と接する面)になるようにして用いられる。
本発明の電池用包装材料は、一次電池、二次電池のいずれに使用してもよいが、好ましくは二次電池である。本発明の電池用包装材料が適用される二次電池の種類については、特に制限されず、例えば、リチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池、鉛畜電池、ニッケル・水素畜電池、ニッケル・カドミウム畜電池、ニッケル・鉄畜電池、ニッケル・亜鉛畜電池、酸化銀・亜鉛畜電池、金属空気電池、多価カチオン電池、コンデンサー、キャパシター等が挙げられる。これらの二次電池の中でも、本発明の電池用包装材料の好適な適用対象として、リチウムイオン電池及びリチウムイオンポリマー電池が挙げられる。
以下に実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。但し本発明は実施例に限定されるものではない。なお、基材層として使用した各ナイロンフィルムの突き刺し強さは、イマダ社製のZP-50N(フォースゲージ)とMX-2-500N(測定スタンド)を用い、JIS Z1707:1997の規定に準拠した方法により測定した。
実施例1−3及び比較例1−3
<電池用包装材料の製造>
それぞれ、表1に記載の突き刺し強さを有するナイロンフィルム1〜6(Ny1〜Ny6)からなる基材層(厚み15μmまたは25μm)の上に、両面に化成処理を施したアルミニウム箔(厚さ35μmまたは40μm)からなる金属層をドライラミネーション法により積層させた。具体的には、アルミニウム箔の一方面に、2液型ウレタン接着剤(ポリオール化合物と芳香族イソシアネート系化合物)を塗布し、金属層上に接着層(厚さ3μm)を形成した。次いで、金属層上の接着層と基材層を積層した後、40℃で24時間のエージング処理を実施することにより、基材層/接着層/金属層の積層体を作製した。なお、金属層として使用したアルミニウム箔の化成処理は、フェノール樹脂、フッ化クロム化合物、及びリン酸からなる処理液をクロムの塗布量が10mg/m2(乾燥重量)と
なるように、ロールコート法によりアルミニウム箔の両面に塗布し、皮膜温度が180℃以上となる条件で20秒間焼付けすることにより行った。次に積層体の金属層の上に、カルボン酸変性ポリプロピレン(金属層側に配置)20μmとランダムポリプロピレン(最内層)20μmを共押し出しすることにより、金属層上に接着層/シーラント層を積層させて、各電池用包装材料を得た。なお、実施例1、2及び比較例1、2の電池用包装材料の層構成は、基材層(15μm)/接着層(3μm)/金属層(35μm)/接着層(25μm)/シーラント層(20μm)である。また、実施例3及び比較例3の電池用包装材料の層構成は、基材層(25μm)/接着層(3μm)/金属層(40μm)/接着層(23μm)/シーラント層(23μm)である。
なお、表1において、基材層1の引張破断強度及び引張破断伸度は、それぞれ、JIS K7127に準拠した方法により測定して得られた値である。
(成形性の評価)
上記で得られた各電池用包装材料を80mm×120mmの長方形に断裁してサンプルを作製した。このサンプルを30×50mmの口径を有する成形金型(雌型)と、これに対応した成形金型(雄型)を用いて、押さえ圧0.4MPaで0.5mmの成形深さから0.5mm単位で成形深さを変えて、それぞれ10個のサンプルについて冷間成形を行った。冷間成形後のサンプルについて、アルミニウム箔にピンホール、クラックが10個のサンプル全てにおいて発生しない最も深い成形深さをAmm、アルミニウム箔にピンホール等が発生した最も浅い成形深さにおいてピンホール等が発生したサンプルの数をB個とし、以下の式により算出される値を電池用包装材料の成形深さとした。結果を表2に示す。
成形深さ=Amm+(0.5mm/10個)×(10個−B個)
表2に示される結果から明らかな通り、基材層の厚みが15μmの実施例1,2と比較例1,2とを比較すると、基材層の厚みBに対する突き刺し強さAの比(A/B)が、0.92N/μm以上である実施例1,2では、0.92N/μm未満である比較例1,2に比して、成形深さが深く、成形性に優れていた。また、基材層の厚みが25μmの実施例3と比較例3とを比較しても、基材層の厚みBに対する突き刺し強さAの比(A/B)が、0.92N/μm以上である実施例3では、0.92N/μm未満である比較例3に比して、成形深さが深く、成形性に優れていた。
1 基材層
2 接着層
3 金属層
4 シーラント層
5 接着層

Claims (9)

  1. 少なくとも、ナイロンを含む基材層、金属層、及びシーラント層が順次積層された積層体からなり、
    前記基材層は、前記基材層の厚みBに対する、前記基材層のJIS Z1707:1997の規定に準拠した方法により測定される突き刺し強さAの比(A/B)が、0.92N/μm以上である、電池用包装材料。
  2. 前記基材層は、ナイロンにより形成された層を含む、請求項1に記載の電池用包装材料。
  3. 前記基材層は、ポリエステルを含む層とナイロンを含む層との積層体により構成されている、請求項1または2に記載の電池用包装材料。
  4. 前記金属層の少なくとも一方の面に化成処理が施されている、請求項1〜3のいずれかに記載の電池用包装材料。
  5. 前記金属層が、アルミニウム箔により形成されている、請求項1〜4のいずれかに記載の電池用包装材料。
  6. 前記金属層の厚みが10〜50μmの範囲にある、請求項1〜5のいずれかに記載の電池用包装材料。
  7. 前記積層体の厚みが、160μm以下である請求項1〜6のいずれかに記載の電池用包装材料。
  8. 少なくとも正極、負極、及び電解質を備えた電池素子が、請求項1〜7のいずれかに記載の電池用包装材料内に収容されている、電池。
  9. 少なくとも、ナイロンを含む基材層、金属層、及びシーラント層が順次積層された積層体を得る工程を備えており、
    前記基材層として、前記基材層の厚みBに対する、前記基材層のJIS Z1707:1997の規定に準拠した方法により測定される突き刺し強さAの比(A/B)が、0.92N/μm以上であるものを用いる、電池用包装材料の製造方法。
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