はじめに、本願の開示する技術の一実施形態を説明する。
図1〜図3には、本実施形態に係る点検装置1が示されている。この点検装置1は、一例として、橋梁の下部工を点検するために使用される。矢印FRは、点検装置1の前後方向前側を示し、矢印RHは、点検装置1の左右方向右側を示し、矢印UPは、点検装置1の上下方向上側を示している。点検装置1は、台車10と、点検機構30を備える。
台車10は、ベースフレーム12と、複数のキャスター14と、前側ラック16と、後側ラック18と、支柱20を有する。ベースフレーム12は、平面視で点検装置1の前後方向を長手方向とする長方形状に形成されている。複数のキャスター14は、ベースフレーム12の各角部に配置されている。各キャスター14は、車輪22を有している。この各キャスター14は、鉛直方向周りに旋回可能にベースフレーム12に支持されている。各キャスター14は、ベースフレーム12に対する旋回と車輪22の回転をそれぞれロックするロック機構24を有する。
前側ラック16は、ベースフレーム12の前側に設置されており、後側ラック18は、ベースフレーム12の後側に設置されている。前側ラック16及び後側ラック18には、例えば計測機器等が置かれる。支柱20は、前側ラック16及び後側ラック18の間に配置されており、鉛直方向に延びている。支柱20の下端部は、ベースフレーム12に対して固定されている。
点検機構30は、支柱20の上端部に固定されている。この点検機構30は、前側ラック16及び後側ラック18の上方に位置する。図4には、点検機構30が示されている。点検機構30は、アーム32と、ポール34と、スライド支持機構36と、ヒンジ38と、ロック部材40と、ウィンチ42と、ロッドダンパ44と、つっかえ棒45と、アーム支持機構46と、回転支持機構48を有する。
アーム32は、上述の支柱20等を介して台車10に支持されている。このアーム32は、水平方向に延びている。アーム32の長さ方向の一端32Aは、アーム32の先端であり、アーム32の長さ方向の他端32Bは、アーム32の後端である。通常、アーム32は、台車10の前後方向に沿って延びる位置にある。この状態では、アーム32の先端が台車10の前側に位置し、アーム32の後端が台車10の後側に位置する。
ポール34は、複数のポール部材50を有する伸縮式である。図1〜図4では、ポール34が収縮された状態で示されている。ポール34の軸方向の一端32Aは、ポール34の先端であり、ポール34の軸方向の他端32Bは、ポール34の後端である。ポール34の先端には、後述する点検機器116(図6参照)が取り付けられる取付部52が設けられている。図1〜図4では、点検機器116の図示が省略されている。
スライド支持機構36は、スライドベース54と、一対の支持部材56を有する。スライドベース54は、ポール34の軸方向に沿って延びており、一対の支持部材56は、ポール34の軸方向に離間して配置され、スライドベース54に固定されている。各支持部材56には、ポール34の軸方向に沿って貫通する支持孔58が形成されており、この支持孔58には、ポール34が挿入されている。
このように支持孔58にポール34が挿入されることにより、ポール34は、ポール34の軸方向にスライド可能に支持されている。つまり、ポール34は、ポール34の先端側に一対の支持部材56が位置するようにスライドされた状態と、ポール34の後端側に一対の支持部材56が位置するようにスライドされた状態とにスライド可能となっている。図1〜図4には、ポール34の先端側に一対の支持部材56が位置するようにポール34がスライドされた状態が示されている。
各支持部材56には、蝶ネジ60が設けられている。この蝶ネジ60を締めると、蝶ネジ60の先端がポール34に当接し、ポール34が固定される。また、この蝶ネジ60を緩めると、蝶ネジ60の先端がポール34から離間し、ポール34がスライド可能になる。
ヒンジ38は、アーム32の先端とスライド支持機構36とを連結している。具体的には、ヒンジ38は、ヒンジベース62と、ヒンジ軸64を有する。ヒンジベース62は、アーム32の先端に固定されている。ヒンジ軸64は、アーム32の幅方向に延びており、ヒンジベース62に固定されている。ヒンジ軸64には、スライド支持機構36のスライドベース54が回転可能に固定されている。
このヒンジ38により、ポール34は、アーム32に沿って倒伏した倒伏姿勢と、鉛直方向に沿って起立した起立姿勢とに回転可能に支持されている。図1〜図4には、ポール34が倒伏姿勢である状態が示されている。アーム32に沿って倒伏した倒伏姿勢とは、ポール34が倒伏姿勢となったときに、ポール34がアーム32に沿って配置されることに相当する。ポール34の起立姿勢は、後述する図12、図13に示されている。
ロック部材40は、アーム32に設けられている。このロック部材40は、アーム32の長さ方向にスライド可能にアーム32に支持されている。ロック部材40は、フック66を有している。フック66は、アーム32に対して上側に突出している。上述の一対の支持部材56のうちロック部材40と対向する位置に配置された支持部材56には、ロッド68が設けられている。
ポール34が倒伏姿勢にある状態でフック66がロッド68に引っ掛けられることにより、スライド支持機構36は、アーム32に固定される。アーム32にスライド支持機構36が固定された状態では、ポール34が倒伏姿勢に保持される。図1〜図4には、フック66がロッド68に引っ掛けられることにより、スライド支持機構36がアーム32に固定され、ポール34が倒伏姿勢に保持された状態が示されている。
アーム32の先端と後端との間の中間部の上側には、第一滑車70が設けられている。また、ポール34の後端、すなわち、複数のポール部材50のうちポール34の後端側に位置するポール部材50の後端には、第二滑車72が設けられている。
ウィンチ42は、アーム32の後端の上側に設けられている。このウィンチ42は、ワイヤ74と、ドラム76と、ハンドル78と、ラチェット機構80を有する。ドラム76は、アーム32の幅方向と平行な回転軸82によって回転可能に支持されており、ワイヤ74は、ドラム76に巻き回されている。
ドラム76から延びるワイヤ74は、第一滑車70及び第二滑車72に順に巻き掛けられてからポール34の内側に挿入されている。また、ポール34の内側に挿入されたワイヤ74の先端は、ポール34の先端、すなわち、複数のポール部材50のうち先端側に位置するポール部材50の先端に固定されている。
ハンドル78は、ドラム76に一体回転可能に固定されている。ハンドル78を正方向に回転させると、ドラム76が巻取方向に回転してワイヤ74がドラム76に巻き取られ、ハンドル78を逆方向に回転させると、ドラム76が反巻取方向に回転してワイヤ74がドラム76から送り出される。
ラチェット機構80は、ハンドル78の双方向の回転を一定の回転角度毎に規制するように構成されている。つまり、ハンドル78に回転方向の力を加えると、ハンドル78が一定の回転角度だけ回転した段階でハンドル78の回転がラチェット機構80によって規制される。この状態からハンドル78に回転方向の力を加えると、再度、ハンドル78が一定の回転角度だけ回転した段階でハンドル78の回転がラチェット機構80によって規制される。このように、ラチェット機構80は、ハンドル78の回転を一定の回転角度毎に規制する。このラチェット機構80は、ハンドル78の双方向の回転に対して機能する。
ロッドダンパ44は、アーム32とスライド支持機構36との間に設けられている。ロッドダンパ44の軸方向の一端44Aは、ロッドダンパ44の第一端であり、ロッドダンパ44の軸方向の他端44Bは、ロッドダンパ44の第二端である。
ロッドダンパ44の第一端は、ヒンジベース62を介してアーム32に連結されており、ロッドダンパ44の第二端は、スライド支持機構36のスライドベース54に連結されている。具体的には、ヒンジベース62には、第一回転軸84が設けられており、スライドベース54には、第二回転軸86が設けられている。ロッドダンパ44の第一端は、第一回転軸84に回転可能に固定されており、ロッドダンパ44の第二端は、第二回転軸86に回転可能に固定されている。
このロッドダンパ44は、ロッド88と、ダンパ本体90を有する。ダンパ本体90には、圧縮流体が封入されており、ロッド88は、圧縮流体によってダンパ本体90から突出する方向に付勢されている。ポール34が倒伏姿勢にある状態では、ロッドダンパ44が収縮され、ポール34が起立姿勢にある状態では、ロッド88が伸長されるように、ロッドダンパ44は、ヒンジベース62及びスライドベース54に連結されている。このロッドダンパ44は、ポール34を起立姿勢に保持する保持機構として機能すると共に、ポール34を倒伏姿勢から起立姿勢に回転させる方向に付勢する付勢機構として機能する。
つっかえ棒45は、アーム32とスライド支持機構36との間に設けられている。つっかえ棒45の軸方向の一端45Aは、つっかえ棒45の第一端であり、つっかえ棒45の軸方向の他端45Bは、つっかえ棒45の第二端である。
つっかえ棒45の第一端は、アーム32の長さ方向にスライド可能かつ回転可能にアーム32に連結されており、つっかえ棒45の第二端は、スライド支持機構36のスライドベース54に回転可能に連結されている。このつっかえ棒45は、ポール34を起立姿勢に保持する保持機構として機能する。ロッドダンパ44及びつっかえ棒45は、「保持機構」の一例であり、ロッドダンパ44は、「付勢機構」の一例である。
アーム支持機構46は、アーム32の先端と後端との間の中間部の下側に設けられている。このアーム支持機構46は、支持板92と、第一回転軸94と、第二回転軸96を有する。支持板92は、例えば、欄干の上に載置され、欄干に対してアーム32を支持する。第一回転軸94は、鉛直方向に延びており、第二回転軸96は、アーム32の幅方向に延びている。支持板92は、第一回転軸94により、鉛直方向周りに回転可能に支持されており、第二回転軸96により、アーム32の幅方向周りに回転可能に支持されている。
回転支持機構48は、アーム32の後端の下側に設けられている。この回転支持機構48は、アーム32の後端を台車10に対して回転可能に支持している。具体的には、回転支持機構48は、第一支持軸98と第二支持軸100を有する。第一支持軸98は、鉛直方向に延びており、第二支持軸100は、アーム32の幅方向に延びている。アーム32の後端は、第一支持軸98により、鉛直方向周りに回転可能に支持されている。これにより、アーム32は、台車10の前後方向に沿って延びる位置と、台車10の側方に向けて延びる位置とに旋回可能になっている。また、アーム32は、第二支持軸100により、アーム32の幅方向周りに回転可能に支持されている。
図5には、支柱20の上部が示されている。支柱20の上部には、筒状の可動部材102が設けられている。図5では、理解の容易のために、可動部材102の一部が切り欠かれて示されている。この可動部材102には、上述のアーム32の後端が固定されている。つまり、可動部材102には、ブラケット104を介して上述の回転支持機構48が固定されており、この回転支持機構48には、アーム32の後端が固定されている。可動部材102の内側には、支柱20が挿入されており、可動部材102は、固定機構106によって支柱20に固定されている。
固定機構106は、複数の固定孔108と、複数の溝110と、ナット112と、蝶ネジ114を有する。複数の固定孔108は、可動部材102の上下方向に並んで形成されている。複数の溝110は、支柱20に形成されており、鉛直方向に延びている。ナット112は、溝110に収容されている。蝶ネジ114のネジ部は、固定孔108に挿入され、ナット112に螺合されている。この固定機構106では、蝶ネジ114を緩めると、可動部材102の鉛直方向の位置が変更可能となり、蝶ネジ114を締めると、可動部材102の鉛直方向の位置が固定される。
図6には、点検機器116が示されている。点検機器116は、ポール34の先端に設けられた取付部52に取り付けられる。この点検機器116は、バッテリ118と、遠隔操作用受信機120と、ヨー軸モータ(不図示)と、ピッチ軸モータ124と、ロール軸モータ126と、カメラ128を有する。
バッテリ118は、遠隔操作用受信機120と、ヨー軸モータと、ピッチ軸モータ124と、ロール軸モータ126と、カメラ128に電力を供給する。遠隔操作用受信機120は、作業者が操作するコントローラから送信された信号を受信する。ヨー軸モータと、ピッチ軸モータ124と、ロール軸モータ126は、カメラ128をヨー軸周り、ピッチ軸周り、ロール軸周りにそれぞれ回転させる。
図7、図8には、走行機構130が示されている。この走行機構130は、上述のアーム支持機構46(図4参照)の代わりにアーム32に取り付けられる。この走行機構130は、アーム支持機構46の支持板92の代わりに、走行部材132を有する。走行部材132は、例えば、欄干に装着され、欄干上を走行する。
この走行部材132は、天板134と、一対の側板136と、複数の第一ローラ138と、複数の第二ローラ140を有する。各側板136は、上板142と、下板144を有する。複数の第一ローラ138は、天板134に固定されており、複数の第二ローラ140は、下板144に固定されている。
天板134には、走行部材132の幅方向に延びる長孔146が形成されており、各上板142は、長孔146に挿入された蝶ネジ148によって天板134に固定されている。蝶ネジ148を緩めることにより、一対の側板136の幅を変更可能である。また、上板142には、走行部材132の上下方向に延びる長孔150が形成されており、下板144は、長孔150に挿入された蝶ネジ152によって上板142に固定されている。蝶ネジ152を緩めることにより、下板144の上下方向の位置を変更可能である。
なお、図1〜図4に示されるように、アーム32には、ストッパ部材154が設けられている。ストッパ部材154は、アーム32から上側に向けて延びている。ポール34が倒伏姿勢にある状態で、ポール34の後端に下側への荷重を加えると、ポール34がストッパ部材154に当接する。この状態で、ポール34の後端にさらに下側への荷重を加えると、梃の原理を利用して台車10の前側を浮かせることができる。
また、複数のポール部材50には、リング状のガイド部材156がそれぞれ設けられている。このガイド部材156には、点検機器116から延びるケーブル(不図示)が挿入される。
次に、点検装置1を用いて橋梁の下部工を点検する方法について説明する。
先ず、図9の(A)から(B)に示されるように、アーム32が台車10の前後方向に沿う位置に配置され、ポール34が倒伏姿勢とされた状態で、点検装置1を橋梁200の上に搬送し、欄干202の傍らに横付けする。本実施形態の点検装置1では、ポール34がヒンジ38を介してアーム32に予め固定されているので、現場で作業員が工具等を用いて点検装置1の組み立て作業を行わなくて済む。
そして、点検装置1を欄干202の傍らに横付けした状態で、アーム32が台車10の側方に向けて延びるように、回転支持機構48を中心にアーム32を旋回させる。アーム32が台車10の側方に向けて延びた状態では、アーム32が台車10から側方に延出し、このアーム32の先端が欄干202の外に位置される。また、このとき、可動部材102(図5参照)の鉛直方向の位置を変更して、アーム32の高さを調節し、アーム支持機構46を欄干202の上に載せる。なお、アーム支持機構46の代わりに走行機構130(図7、図8)をアーム32に取り付け、走行機構130を欄干202に装着してもよい。
続いて、図10の(A)から(B)に示されるように、ロック部材40をアーム32の先端側に向けてスライドさせ、ロック部材40のフック66をスライド支持機構36のロッド68に引っ掛ける。これにより、スライド支持機構36がアーム32に固定され、ポール34が倒伏姿勢に保持される。なお、ロック部材40のフック66がロッド68に初めから引っ掛けられている場合には、このロック部材40のフック66をロッド68に引っ掛ける動作を省略する。
次いで、図11の(A)から(B)に示されるように、蝶ネジ60を緩め、ポール34を欄干202の外側に向けてスライドさせる。このとき、ポール34の重心が欄干202の外側に移動するが、ロック部材40によってポール34が倒伏姿勢に保持されているので、ポール34が回転することが抑制される。そして、ポール34をスライドさせた後に、蝶ネジ60を締めて、ポール34をスライド支持機構36に固定する。また、このとき、ポール34の後端とウィンチ42との間においてワイヤ74に弛みが生じるので、ハンドル78を正回転させてウィンチ42のドラム76にワイヤ74を巻き取った状態にする。
続いて、図12の(A)から(B)に示されるように、ロック部材40をアーム32の後端側に向けてスライドさせ、フック66をロッド68から離間させる。これにより、ロック部材40のロックが解除される。そして、ハンドル78を逆回転させ、ワイヤ74をドラム76から送り出す。このようにしてワイヤ74がドラム76から送り出されると、ポール34が自重により徐々に回転し、やがてポール34が起立姿勢になる。ポール34が起立姿勢になると、ポール34が欄干202の外に配置される。
このように、本実施形態の点検装置1では、ポール34を欄干202の外に配置する際に、アーム32の旋回操作、ロック部材40のロック操作、ポール34のスライド操作、ロック部材40のロック解除操作、ウィンチ42のハンドル操作を順に行えばよい。これらの作業は一人の作業員で行うことが可能である。しかも、アーム32の旋回操作、ロック部材40のロック操作、ポール34のスライド操作、ロック部材40のロック解除操作、ウィンチ42のハンドル操作は、作業員が欄干202の内側で行うことが可能である。したがって、作業員が欄干202の外に身を乗り出さなくて済む。
そして、図13の(A)から(B)に示されるように、ポール34が起立姿勢になった状態から、ハンドル78をさらに逆回転させて、ワイヤ74をドラム76から送り出すと、ポール34が自重により徐々に伸長する。このとき、ハンドル78の回転量、すなわち、ワイヤ74の送り出し量を調節することによって、ポール34の長さを調整する。これにより、点検現場への点検装置1の設置が完了する。
ここで、本実施形態の点検装置1では、ウィンチ42がアーム32の後端に設けられている。したがって、ウィンチ42のハンドル78を操作することにより、ポール34の伸縮も作業員が手元で行える。したがって、ポール34を伸縮させて点検機器116を鉛直方向に移動させる際に、作業員が欄干202の外に身を乗り出さなくて済む。
また、ポール34が起立姿勢になったときには、ロッドダンパ44が伸長した状態になると共に、つっかえ棒45がアーム32に対してポール34の後端を支持した状態になる。この状態では、ロッドダンパ44及びつっかえ棒45が保持機構として機能するので、ポール34を収縮させる際に、ワイヤ74の巻き取りに伴ってポール34の後端に回転モーメントMが作用しても、ポール34の回転が抑止される。
そして、上述のようにポール34を起立姿勢とすると共にポール34を伸長させた後に、ポール34の先端に設けられた点検機器116を用いて橋梁200の下部工204の点検を実施する。このとき、台車10を橋梁200の長さ方向に移動させると共にポール34の長さを適宜調節することで、点検機器116を橋梁200の長さ方向及び上下方向に移動させ、下部工204の複数個所を点検する。
一方、点検装置1を撤収するときには、上述の設置時の動作とほぼ逆の動作を行えばよい。すなわち、図13の(B)から(A)に示されるように、先ず、ハンドル78を正回転させて、ワイヤ74をドラム76に巻き取る。このときにも、ロッドダンパ44及びつっかえ棒45が保持機構として機能するので、ワイヤ74の巻き取りに伴ってポール34の後端に回転モーメントMが作用しても、ポール34の回転が抑止される。そして、ハンドル78を正回転させて、ワイヤ74をドラム76に巻き取ることにより、ポール34が収縮する。
続いて、図12の(B)から(A)に示されるように、ポール34が収縮した状態から、ハンドル78をさらに正回転させると、ポール34が起立姿勢から倒伏姿勢に向けて回転する。そして、ポール34が倒伏姿勢になった段階で、ロック部材40をアーム32の先端側に向けてスライドさせ、ロック部材40のフック66をスライド支持機構36のロッド68に引っ掛ける。これにより、スライド支持機構36がアーム32に固定され、ポール34が倒伏姿勢に保持される。
そして、図11の(B)から(A)に示されるように、蝶ネジ60を緩め、ポール34を欄干202の内側に向けてスライドさせて元の位置に戻す。このとき、必要に応じてハンドル78を回転させてワイヤ74の長さを調節する。また、ポール34を元の位置に戻した後、蝶ネジ60を締めてポール34をスライド支持機構36に固定する。
なお、このとき、図10の(B)から(A)に示されるように、ロック部材40をアーム32の後端側に向けてスライドさせて、ロック部材40のロックを解除し、さらにワイヤ74を巻き取ることで、ポール34をさらに寝かせてもよい。
続いて、図9の(B)から(A)に示されるように、アーム32を台車10の前後方向に沿う位置にまで旋回させる。これにより、点検装置1が設置前の状態に戻る。そして、この状態で点検装置1を橋梁200から搬出する。
このように、本実施形態の点検装置1では、ポール34を欄干202の内側に収容する場合も、ウィンチ42のハンドル操作、ロック部材40のロック操作、ポール34のスライド操作、ロック部材40のロック解除操作、アーム32の旋回操作を順に行えばよい。これらの作業は一人の作業員で行うことが可能である。しかも、ウィンチ42のハンドル操作、ロック部材40のロック操作、ポール34のスライド操作、ロック部材40のロック解除操作、アーム32の旋回操作は、作業員が欄干202の内側で行うことが可能である。したがって、作業員が欄干202の外に身を乗り出さなくて済む。
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
以上詳述したように、本実施形態に係る点検装置1によれば、ポール34は、スライド支持機構36によってポール34の軸方向にスライド可能に支持されており、このスライド支持機構36とアーム32の先端とは、ヒンジ38によって連結されている。また、このヒンジ38により、ポール34は、アーム32に沿って倒伏した倒伏姿勢と鉛直方向に沿って起立した起立姿勢とに回転可能に支持されている。さらに、アーム32には、ポール34が倒伏姿勢にある状態でスライド支持機構36をアーム32に固定するロック部材40が設けられており、アーム32の後端には、ポール34の先端に固定されたワイヤ74を有するウィンチ42が設けられている。
そして、ポール34を欄干202の外に配置するときには、アーム32を欄干202に向けた状態で、ロック部材40をロックしてポール34を倒伏姿勢に保持した状態とし、この状態でポール34を欄干202の外側へ向けてスライドさせる。続いて、ロック部材40のロック解除後にアーム32の後端に設けられたウィンチ42のハンドル78を操作してワイヤ74を緩める。これにより、ポール34が自重で起立姿勢にまで回転し、ポール34が欄干202の外に配置される。
したがって、ポール34を欄干202の外に配置する際には、アーム32の旋回操作、ロック部材40のロック操作、ポール34のスライド操作、ロック部材40のロック解除操作、ウィンチ42のハンドル操作を順に行えばよい。これらの作業は一人の作業員でできる。しかも、アーム32の旋回操作、ロック部材40のロック操作、ポール34のスライド操作、ロック部材40のロック解除操作、ウィンチ42のハンドル操作を、作業員が欄干202の内側で行えるので、作業員が欄干202の外に身を乗り出さなくて済む。以上より、点検装置1の設置時の作業性を向上させることができる。
さらに、ポール34は、ヒンジ38を介してアーム32に予め固定されている。したがって、現場で作業員が工具等を用いて点検装置1の組み立て作業を行わなくて済むので、点検装置1の設置時の作業性をより向上させることができる。
また、点検装置1の撤収時には、設置時とほぼ逆の動作を行えばよい。つまり、ウィンチ42のハンドル操作、ロック部材40のロック操作、ポール34のスライド操作、ロック部材40のロック解除操作、アーム32の旋回操作を順に行えばよい。したがって、これらの作業を一人の作業員でできると共に、作業員が欄干202の外に身を乗り出さなくて済むので、点検装置1の撤収時の作業性も向上させることができる。
また、アーム32の後端に設けられたウィンチ42のハンドル78を操作することにより、ポール34の伸縮も作業者が手元で行える。したがって、ポール34を伸縮させて点検機器116を鉛直方向に移動させる際に、作業員が欄干202の外に身を乗り出さなくて済むので、点検時の作業性も向上させることができる。
また、点検装置1は、台車10を有している。したがって、台車10を移動させることにより、点検機器116を橋梁200の長さ方向に移動させることができる。これにより、本点検する個所を絞り込むための事前調査を簡単に行える。
また、アーム32には、ロッドダンパ44及びつっかえ棒45が設けられている。ロッドダンパ44の第一端は、アーム32に連結され、ロッドダンパ44の第二端は、スライド支持機構36に連結されている。また、つっかえ棒45の第一端は、アーム32に連結され、つっかえ棒45の第二端は、スライド支持機構36に連結されている。したがって、ポール34を収縮させる際に、ワイヤ74の巻き取りに伴ってポール34の後端に回転モーメントMが作用しても、ロッドダンパ44及びつっかえ棒45が保持機構として機能するので、ポール34の回転を抑止できる。これにより、ポール34を収縮させる際の作業性を向上させることができる。
また、アーム32の後端には、回転支持機構48が設けられており、この回転支持機構48により、アーム32の後端は、台車10に対して鉛直方向周りに回転可能に支持されている。そして、これにより、アーム32は、台車10の前後方向に沿って延びる位置と、台車10の側方に向けて延びる位置とに旋回可能になっている。したがって、点検時には、アーム32が台車10から側方に延出するようにアーム32を展開させつつ、運搬時や撤収時には、アーム32が台車10の前後方向に沿って配置されるようにアーム32を格納できる。これにより、点検装置1の搬入時及び搬出時の作業性を向上させることができる。
また、台車10は、可動部材102と、鉛直方向に延びる支柱20と、可動部材102の鉛直方向の位置を変更可能に可動部材102を支柱20に固定する固定機構106を有しており、アーム32は、可動部材102に固定されている。したがって、可動部材102の鉛直方向の位置を変更することにより、アーム32の高さを調節することができるので、点検装置1を欄干202の傍らに横付けした状態からアーム32を旋回させる際にアーム32が欄干202と干渉することを防止できる。
また、ウィンチ42は、アーム32の後端の上側に設けられており、アーム32の先端と後端との間の中間部の上側には、第一滑車70が設けられ、ポール34の後端には、第二滑車72が設けられている。そして、ウィンチ42から延びるワイヤ74は、第一滑車70及び第二滑車72に順に巻き掛けられてからポール34の先端に固定されている。したがって、ワイヤ74がアーム32よりも上側に配置されるので、ワイヤ74が欄干202と干渉することを防止できる。
また、ウィンチ42は、ハンドル78の双方向の回転を一定の回転角度毎に規制するラチェット機構80を有する。したがって、ハンドル78に力を加えていない状態でも、ワイヤ74が緩むことが防止される。これにより、ポール34が不意に伸びたり回転したりすることを防止できる。
また、アーム32の下側には、支持板92を有するアーム支持機構46が設けられている。したがって、支持板92を欄干202の上に置くことで、アーム32を欄干202に支持させることができる。これにより、アーム32及びポール34の安定性を確保できるので、点検機器116の振動を抑制できる。
なお、アーム支持機構46の代わりに走行機構130を用いれば、台車10を欄干202に沿って移動させる際に、欄干202の上を走行機構130が走行できる。これにより、アーム32及びポール34の安定性を確保できるので、点検機器116の振動を抑制できる。
次に、本実施形態の変形例について説明する。
上記実施形態では、ポール34を倒伏姿勢から起立姿勢に回転させる方向に付勢する付勢機構の一例として、ロッドダンパ44が用いられている。しかしながら、図14に示されるように、第一端がアーム32(ヒンジ38)に回転可能に連結され、第二端がスライド支持機構36に回転可能に連結された圧縮バネ160が用いられてもよい。付勢機構は、ロッドダンパ44及び圧縮バネ160の両方を有していてもよく、ロッドダンパ44及び圧縮バネ160のいずれか一方のみを有していてもよい。
また、上記実施形態では、ポール34を起立姿勢に保持する保持機構の一例として、ロッドダンパ44及びつっかえ棒45が用いられている。しかしながら、ロッドダンパ44及びつっかえ棒45のどちらか一方は省かれてもよい。また、保持機構は、ロッドダンパ44、つっかえ棒45及び圧縮バネ160の少なくともいずれかを有していてもよい。
また、上記実施形態では、ベースフレーム12に鉛直方向周りに旋回可能に支持されたキャスター14が用いられている。しかしながら、このキャスター14の代わりに、オムニホイールが用いられてもよい。
また、上記実施形態において、点検装置1は、一例として、橋梁200の下部工204を点検するために使用されている。しかしながら、点検装置1は、橋梁200の下部工204以外の点検に使用されてもよい。
以上、本願の開示する技術の一実施形態について説明したが、本願の開示する技術は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
なお、上述の本願の開示する技術の一実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記1)
台車と、
台車に支持され、水平方向に延びるアームと、
点検機器が取り付けられる取付部を先端に有するポールと、
前記ポールを前記ポールの軸方向にスライド可能に支持するスライド支持機構と、
前記アームの先端と前記スライド支持機構とを連結し、前記ポールを前記アームに沿って倒伏した倒伏姿勢と鉛直方向に沿って起立した起立姿勢とに回転可能に支持するヒンジと、
前記アームに設けられ、前記ポールが前記倒伏姿勢にある状態で前記スライド支持機構を前記アームに固定するロック部材と、
前記ポールの先端に固定されたワイヤを有し、前記アームの後端に設けられたウィンチと、
を備える点検装置。
(付記2)
前記ポールは、複数のポール部材を有する伸縮式であり、
前記アームと前記スライド支持機構との間には、前記ポールを前記起立姿勢に保持する保持機構が設けられている、
付記1に記載の点検装置。
(付記3)
前記保持機構は、前記ポールを前記倒伏姿勢から前記起立姿勢に回転させる方向に付勢する付勢機構を有する、
付記2に記載の点検装置。
(付記4)
前記付勢機構は、第一端が前記アームに連結され第二端が前記スライド支持機構に連結されたロッドダンパを有する、
付記3に記載の点検装置。
(付記5)
前記アームの後端を前記台車に対して鉛直方向周りに回転可能に支持する回転支持機構を備える、
付記1〜付記4のいずれか一項に記載の点検装置。
(付記6)
前記台車は、可動部材と、鉛直方向に延びる支柱と、前記可動部材の鉛直方向の位置を変更可能に前記可動部材を前記支柱に固定する固定機構とを有し、
前記アームは、前記可動部材に固定されている、
付記1〜付記5のいずれか一項に記載の点検装置。
(付記7)
前記ウィンチは、
前記ワイヤが巻き回されたドラムと、
前記ドラムに固定されたハンドルと、
前記ハンドルの双方向の回転を一定の回転角度毎に規制するラチェット機構と、
を有する、
付記1〜付記6のいずれか一項に記載の点検装置。
(付記8)
前記ウィンチは、前記アームの後端の上側に設けられ、
前記アームの先端と後端との間の中間部の上側には、第一滑車が設けられ、
前記ポールの後端には、第二滑車が設けられ、
前記ドラムから延びる前記ワイヤは、前記第一滑車及び前記第二滑車に順に巻き掛けられてから前記ポールの先端に固定されている、
付記7に記載の点検装置。
(付記9)
前記アームの下側に設けられ、支持板を有するアーム支持機構を備える、
付記1〜付記8のいずれか一項に記載の点検装置。
(付記10)
前記アームの下側に設けられ、ローラを有する走行機構を備える、
付記1〜付記8のいずれか一項に記載の点検装置。