JP2020196645A - 珪石の溶融炉および溶融方法 - Google Patents
珪石の溶融炉および溶融方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2020196645A JP2020196645A JP2019103489A JP2019103489A JP2020196645A JP 2020196645 A JP2020196645 A JP 2020196645A JP 2019103489 A JP2019103489 A JP 2019103489A JP 2019103489 A JP2019103489 A JP 2019103489A JP 2020196645 A JP2020196645 A JP 2020196645A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- melting
- silica stone
- silica
- container
- posture
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Ceased
Links
Images
Landscapes
- Silicon Compounds (AREA)
Abstract
【課題】簡便な手段で石英ガラスの純度を高めるとともに気泡の発生を防止して、溶融シリカを安価で効率良く製造するための珪石の溶融炉、および、それを用いた溶融方法を提供する。【解決手段】筒状の側面部材と内部に冷却水の流路を設けた円形の底面部材とを備えて円筒状の形態を呈する溶融容器1と、溶融容器を回動させて直立姿勢あるいは傾転姿勢に保持するために側面部材の外側面に配設される回動装置3と、溶融容器の中心に設置される黒鉛電極と、黒鉛電極と側面部材との間に挿入される内管と外管からなる2重管構造の内筒部材を昇降するための内筒昇降装置と、溶融容器の開放された上面に被せるために側面部材の外径よりも大きい直径を有する円形であり内部に冷却水の流路を設けた上面蓋部材6と、底面部材と上面蓋部材に冷却水を供給する冷却配管7と、を有する珪石の溶融炉を使用して溶融シリカを製造する。【選択図】図1
Description
本発明は、珪石を溶融するための溶融炉、および、それを用いた溶融方法に関するものである。
珪石を溶融し、さらに冷却して得られる非晶質の石英(SiO2)は、石英ガラスと呼ばれ、優れた耐食性ならびに耐熱性を有し、かつ透明度が高いので、様々な用途で使用されている。なかでも、SiO2濃度の高い(すなわち高純度の)石英ガラスは、溶融シリカ(あるいはシリカガラス)と呼ばれ、理化学分野(たとえば半導体、光ファバー等)で幅広く用いられている。また溶融シリカは、熱伝導率が小さく、しかも熱膨張率が非常に小さいという特性を備えていることから、近年では耐火材や断熱材として使用する技術が開発されている。
石英ガラスの製造方法として、容器に収納した珪石の粉末を2000℃以上に加熱して溶融し、引き続き冷却してガラス化する技術が普及している。しかし従来の技術では、不純物が多く混入するだけでなく、加熱によって生じる様々なガス(たとえば水蒸気等)に起因して気泡が発生し易いので、高純度の石英ガラス(いわゆる溶融シリカ)を効率良く製造することは困難である。
そこで溶融シリカを効率良く製造するために、石英ガラスの純度を高めるとともに気泡の発生を防止する技術が検討されている。
たとえば特許文献1には、真空電気溶融法を用いてシリカインゴットを作製した後、シリカインゴットを電解処理し、さらに分割して小型のインゴットとして、その小型のインゴットを加熱して、溶融した状態で棒引きしてシリカガラスを製造する技術が開示されている。ところがこの技術は、工程が複雑であるから、シリカガラスの製造コストの上昇を招く。
本発明は、従来の技術の問題点を解消し、簡便な手段で石英ガラスの純度を高めるとともに気泡の発生を防止して、溶融シリカを安価で効率良く製造するための珪石の溶融炉、および、それを用いた溶融方法を提供することを目的とする。
本発明者は、石英ガラスの純度を高める技術を確立するために、珪石を溶融する工程にて不純物が混入する原因を調査した。そして、不純物の発生源が、珪石を収納する容器であることを見出した。つまり、高温に加熱された容器の外殻をなす金属や、容器に内張りされる断熱材料から漏出した様々な成分が、溶融した珪石(以下、珪石溶湯という)の中に不純物として進入することによって、純度の低下が生じる。
そこで、容器から珪石溶湯に不純物が混入するのを防止する技術について検討した。その結果、溶融シリカの原料として容器内に収納された粒子状あるいは粉末状の珪石(以下、原料用珪石という)と容器の外殻との間に、同成分の珪石を断熱材料として充填することによって、不純物の混入を防止し、ひいては高純度の溶融シリカを得ることができることを見出した。
つまり、珪石の主成分であるSiO2は優れた耐食性と断熱性を有するので、断熱材料として粉末状の珪石(以下、断熱用珪石という)を用い、かつ原料用珪石と同一成分の断熱用珪石を充填すれば、断熱材料である断熱用珪石から不純物が発生しなくなり、不純物の発生源は容器の外殻のみとなる。そして不純物が容器の外殻から珪石溶湯に到達する前に、断熱用珪石の粉末の隙間を通過する途中で、断熱用珪石に接触して付着することによって、珪石溶湯に不純物が混入するのを防止する。
次に本発明者は、溶融シリカに気泡が残留するのを防止する技術について検討した。その結果、原料用珪石を溶融する過程で定期的に珪石溶湯を撹拌することによって、気泡を珪石溶湯から強制的に排出することができ、その珪石溶湯を冷却して凝固させれば、気泡のない溶融シリカ(すなわち高純度の石英ガラス)を製造できる。
本発明は、このような知見に基づいてなされたものである。
すなわち本発明は、珪石を溶融する溶融炉であって、筒状の側面部材と内部に冷却水の流路を設けた円形の底面部材とを備えて円筒状の形態を呈する溶融容器と、溶融容器を回動させて直立姿勢あるいは傾転姿勢に保持するために側面部材の外側面に配設される回動装置と、溶融容器の中心に設置される黒鉛電極と、黒鉛電極と側面部材との間に挿入される内管と外管からなる2重管構造の内筒部材を昇降するための内筒昇降装置と、溶融容器の開放された上面に被せるために側面部材の外径よりも大きい直径を有する円形であり内部に冷却水の流路を設けた上面蓋部材と、底面部材と上面蓋部材に冷却水を供給する冷却配管と、を有する珪石の溶融炉である。
本発明の溶融炉においては、冷却配管の一部または全部がゴムホースからなることが好ましい。
すなわち本発明は、珪石を溶融する溶融炉であって、筒状の側面部材と内部に冷却水の流路を設けた円形の底面部材とを備えて円筒状の形態を呈する溶融容器と、溶融容器を回動させて直立姿勢あるいは傾転姿勢に保持するために側面部材の外側面に配設される回動装置と、溶融容器の中心に設置される黒鉛電極と、黒鉛電極と側面部材との間に挿入される内管と外管からなる2重管構造の内筒部材を昇降するための内筒昇降装置と、溶融容器の開放された上面に被せるために側面部材の外径よりも大きい直径を有する円形であり内部に冷却水の流路を設けた上面蓋部材と、底面部材と上面蓋部材に冷却水を供給する冷却配管と、を有する珪石の溶融炉である。
本発明の溶融炉においては、冷却配管の一部または全部がゴムホースからなることが好ましい。
また本発明は、珪石を溶融する溶融方法において、筒状の側面部材と内部に冷却水の流路を設けた円形の底面部材とを備えて円筒状の形態を呈する溶融容器を直立姿勢に保持し、黒鉛電極を溶融容器の中心に設置し、内筒昇降装置を用いて内管と外管からなる2重管構造の内筒部材を黒鉛電極と側面部材との間に挿入し、次いで、内筒部材を構成する内管の内側の底面部材上に粒径5mm未満の原料用珪石の粉末を敷き詰めて、内筒部材の内管と黒鉛電極との間に充填された原料用珪石の粉末上に粒径5〜50mmの原料用珪石の粒子を充填し、引き続き、内筒部材の外管と側面部材との間に粒径5mm未満の断熱用珪石の粉末を充填した後、粒径5mm未満の原料用珪石の粉末を前記原料用珪石の粒子上に堆積させ、その後、内筒昇降装置を用いて内筒部材を上方へ吊り上げることによって溶融容器から抜き出し、次に、側面部材の外径よりも大きい直径を有する円形であり内部に冷却水の流路を設けた上面蓋部材を溶融容器に被せて、溶融容器を直立姿勢から回動させて傾転姿勢に移行してから、底面部材および上面蓋部材に冷却水を供給しつつ黒鉛電極に通電して発熱させながら時間t(分)が経過するまで保持することによって原料用珪石の粒子および原料用珪石の粉末を溶融させ、時間tが経過した後、溶融容器を傾転姿勢から逆方向に回動させて直立姿勢を経て傾転姿勢で時間tが経過するまで保持し、その後、再び傾転姿勢から回動させて直立姿勢を経て傾転姿勢で保持する珪石の溶融方法である。
本発明の溶融方法においては、傾転姿勢で保持する時間tが25〜35分であることが好ましい。
本発明によれば、簡便な手段で石英ガラスの純度を高めるとともに気泡の発生を防止して、溶融シリカを安価で効率良く製造することが可能となり、産業上格段の効果を奏する。
図1は本発明の溶融炉の例を模式的に示す側面図(一部は断面図)であり、図2はその溶融炉に珪石を充填した例を模式的に示す断面図である。
珪石を溶融するために収納する溶融容器1は、筒状の側面部材1aと円形の底面部材1bを備え、上面が開放された円筒状の形態を呈する。溶融容器1を構成する底面部材1bには、冷却水の流路2が設けられる。側面部材1aの外側面には回動装置3が配設される。
回動装置3は、図1中に矢印Aとして示すように、回動軸3aを中心として溶融容器1を時計回りおよび反時計回りの方向に回動させるためのものである。つまり回動装置3を用いることによって、側面部材1aの中心軸が鉛直方向に直立した姿勢(以下、直立姿勢という)から中心軸が傾斜するように回転した姿勢(以下、傾転姿勢という)へ溶融容器1を回動させ、再び直立姿勢へ復帰させることができる。また、直立姿勢(図1参照)から傾転姿勢を経て再び直立姿勢に復帰する動作を2回以上繰り返すことも可能である。
そして、溶融容器1の中心には黒鉛電極4が設置される。黒鉛電極4は溶融容器1の開放された上面から挿入されて、側面部材1aの中心軸と黒鉛電極4の中心軸が一致するように設置される。
次に、内管5aと外管5bからなる2重構造の内筒部材が、溶融容器1の開放された上面から挿入されて、側面部材1aの中心軸と内管5aならびに外管5bの中心軸が一致するように設置される。珪石を溶融する手順については後述するが、内筒部材は珪石を溶融するに先立って溶融容器1の上面から引き抜かれるので、内筒部材を昇降するための内筒昇降装置(図示せず)を併せて設置する。内筒昇降装置の構成は特に限定せず、従来から知られている昇降用機械(たとえばクレーン、ホイスト等)を使用する。
溶融容器1の開放された上面には、円形の上面蓋部材6が着脱可能に被せられる。珪石を溶融する手順については後述するが、珪石を溶融しながら溶融容器1を適宜回動させるので、傾転姿勢の溶融容器1から珪石溶湯や未溶融の珪石が溢れ出るのを防止する必要があることから、上面蓋部材6の直径は側面部材1aの外径よりも大きく設定され、かつ傾転姿勢において脱落しないように取り付けられる。また、上面蓋部材6には、冷却水の流路2が設けられる。
さらに、底面部材1bと上面蓋部材6の内部に設けられる流路2に冷却水を供給する配管7が配設される。図1中の矢印Bは、冷却水の進行方向を示す。溶融容器1が回動装置3によって回動すると、配管7に捻じれが生じるので、損傷を防止するために、可撓性を有する材料(たとえばゴムホース等)を配管7として使用することが好ましい。可撓性を有する材料は、捻じれが生じる部位のみに使用しても良いし、配管7全てに使用しても良い。
上記したような溶融炉を用いて珪石を溶融するにあたって、まず、回動装置3を操作して、溶融容器1を直立姿勢(図1参照)に保持する。そして黒鉛電極4を、溶融容器1の中心(すなわち側面部材1aの中心軸と黒鉛電極4の中心軸が一致する位置)に設置する。黒鉛電極4を設置する際に、内筒昇降装置を使用して、溶融容器1の開放された上面から黒鉛電極4を挿入する。
さらに、内筒昇降装置を用いて、内管5aと外管5bからなる2重管構造の内筒部材を、溶融容器1の開放された上面から挿入し、内管5aならびに外管5bの中心軸が側面部材1aの中心軸に一致する位置に設置する。
そして、内筒部材を構成する内管5aの内側(すなわち黒鉛電極4側)の底面部材1b上に粒径5mm未満の原料用珪石の粉末8を敷き詰め、次に、内筒部材の外管5bと側面部材1aとの間に粒径5mm未満の断熱用珪石の粉末10を充填する。さらに、原料用珪石の粒子9上に粒径5mm未満の原料用珪石の粉末8を堆積させ、それを手作業で平らにならしながら、内管5aと外管5bとの間の空間および原料用珪石の粒子9上の空間に原料用珪石の粉末8を充填する。
こうして原料用珪石の粉末8、原料用珪石の粒子9、断熱用珪石の粉末10を夫々充填(図2参照)した後、内管5aと外管5bからなる2重構造の内筒部材を上方へ吊り上げて溶融容器1から抜き出す。次に、溶融容器1の開放された上面に円形の上面蓋部材6を被せる(図3参照)。上面蓋部材6の直径は溶融容器1の側面部材1aの外径よりも大きく、しかも上面蓋部材6は溶融容器1内に落下せず、溶融容器1の上面を閉塞する。
引き続き、底面部材1bの内部と上面蓋部材6の内部に設けられる流路2に冷却水を供給しながら、黒鉛電極4に通電(すなわち直流電流を供給)して、原料用珪石の粒子9および粉末8を加熱し溶融する。こうして、図3に示すように、原料用珪石の粉末8で囲まれた領域に珪石溶湯11を形成する。
断熱用珪石の粉末10の粒径が5mm以上では、充填された層内の隙間が大きくなるので、溶融容器1の側面部材1aから発生した不純物が隙間を通り抜けて珪石溶湯11に到達し易くなる。したがって、不純物を断熱用珪石の粉末10の充填層内に留まらせるために、断熱用珪石の粉末10の粒径は5mm未満とする。
原料用珪石の粉末8の粒径が5mm以上では、充填された層内の隙間が大きくなるので、珪石を溶融する際に珪石溶湯11が隙間を通り抜けて断熱用珪石の粉末10まで染み出し易くなり、その結果、珪石溶湯11に不純物が混入し易くなる。したがって、珪石溶湯11の純度を高めるために、原料用珪石の粉末8の粒径は5mm未満とする。
原料用珪石の粒子9の粒径が5mm未満では、粒子同士の隙間が小さくなるので、珪石溶湯11を形成する過程で生じたガスが、珪石溶湯11内に滞留し易くなり、その結果、珪石溶湯11を冷却して得られる溶融シリコンに気泡が残留し易くなる。一方で、原料用珪石の粒子9の粒径が50mmを超えると、粒子同士の隙間が大きくなるので、珪石溶湯11の体積が減少し、その結果、溶融シリコンの製造効率が低下する。したがって、原料用珪石の粒子9の粒径は5〜50mmの範囲内とする。
溶融容器1の側面部材1aの内径をRVESSEL(mm)として、内筒部材の内管5aの内径rIN(mm)は、0.64×RVESSEL≦rIN≦0.68×RVESSELの範囲内が好ましい。rINが0.64×RVESSEL未満では、内管5aの内側に充填される原料用珪石の粒子9が減少するので、珪石溶湯11の体積が減少し、その結果、溶融シリコンの製造効率が低下する。rINが0.68×RVESSELを超えると、充填される原料用珪石の粒子9が増加するので、珪石溶湯11を形成するのに長時間を要し、その結果、溶融シリコンの製造効率が低下する。
内筒部材の外管5bの内径rout(mm)は、0.70×RVESSEL≦rout≦0.75×RVESSELの範囲内が好ましい。rOUTが0.70×RVESSEL未満では、内管5aと外管5bの間に充填される原料用珪石の粉末8が減少するので、珪石溶湯11が耐熱用珪石の粉末10まで染み出し易くなり、その結果、珪石溶湯11に不純物が混入し易くなる。rOUTが0.75×RVESSELを超えると、外管5bと側面部材1aの間に充填される断熱用珪石の粉末10が減少するので、側面部材1aから発生した不純物が珪石溶湯11に到達し易くなり、その結果、珪石溶湯11に不純物が混入し易くなる。
珪石溶湯11を形成する過程では、黒鉛電極4に通電しながら珪石溶湯11から気泡を排出するために、溶融容器1を直立姿勢(図1参照)から回動して傾転姿勢へ移行させて、その傾転姿勢で所定の時間t(分)保持する。ここで溶融容器1を回動する方向は、右回転または左回転のどちらでも良い。ただし、溶融容器1の回動について以下で詳しく説明するために、便宜的に右回転とする。
こうして溶融容器1を右回転で回動させて傾転姿勢に保持しても、溶融容器1の上面は上面蓋部材6で閉塞されているので、珪石溶湯11や未溶融の珪石が溢れ出ることなく、黒鉛電極4からの発熱によって継続的に加熱される。
その傾転姿勢で溶融容器1を保持しつつ時間tが経過した後、黒鉛電極4に通電しながら、溶融容器1を傾転姿勢から左回転で回動させて再び直立姿勢に復帰させ、さらに左回転の回動を続けて傾転姿勢とする。そして時間tが経過するまでの間、この傾転姿勢で保持する。
このようにして、直立姿勢→右回転の回動→傾転姿勢(保持時間t)→左回転の回動→直立姿勢→左回転の回動→傾転姿勢(保持時間t)→右回転の回動→直立姿勢→右回転の回動→傾転姿勢(保持時間t)の順に姿勢の移行を複数回繰り返すことによって、珪石溶湯11が撹拌され、気泡が珪石溶湯11から強制的に排出される。
溶融容器1を傾転姿勢で保持する時間tが25分未満では、珪石溶湯11から気泡を十分に排出できないので、溶融シリカ内に気泡が残留する。傾転姿勢で保持する時間tが35分を超えると、珪石溶湯11や未溶融の珪石が溢れ出る惧れがある。また、断熱用珪石の粉末10が溶融して珪石溶湯11に混入するので、溶融シリカ(すなわち高純度の石英ガラス)の純度が低下するという問題も生じる。したがって、溶融容器1を傾転姿勢で保持する時間tは25〜35分が好ましい。
傾転姿勢における溶融容器1の傾斜角が小さすぎると、珪石溶湯11から気泡を十分に排出できない。一方で傾斜角が大きすぎると、珪石溶湯11や未溶融の珪石が溢れ出る惧れがある。したがって、傾転姿勢における溶融容器1の傾斜角は87°〜93°の範囲内が好ましい。より好ましくは90°である。なお、傾斜角は、傾転姿勢において側面部材1aの中心軸が鉛直線(すなわち直立姿勢における側面部材1aの中心軸)に対してなす角度を意味しており、直立姿勢の傾斜角は0°である。
また溶融容器1を回動させることによって、冷却水の配管7に捻じれが生じるが、可撓性を有する材料からなる配管7を使用することによって、配管7の損傷を防止できる。
こうして所定の量の珪石溶湯11が形成されると、黒鉛電極4の通電を停止して、珪石溶湯11を凝固させる。その凝固体が溶融シリカである。
その後、上面蓋部材6を取り外し、さらに溶融容器1を回動させて、未溶融の珪石および溶融シリカを取り出した後、溶融シリカから黒鉛電極を抜き取る。なお、溶融容器1から回収した未溶融の珪石は、断熱用珪石として再利用できる。あるいは、回収した未溶融の珪石を洗浄すれば、原料用珪石として利用することも可能である。
本発明の溶融炉は、溶融容器1の内部を減圧(たとえば真空等)する必要はなく、大気圧で操業できる。
以上に説明した通り、本発明を適用することによって、簡便な手段で、気泡のない溶融シリカ(すなわち高純度の石英ガラス)を安価で効率良く製造できる。
図1に示す溶融炉を用いて溶融シリカの製造実験を行なった。溶融容器1の寸法は、内径2350mm(RVESSEL=1175mm)、高さ3300mmであった。また、使用した内筒部材の内管5aの内径rINは780mm(rIN=0.664×RVESSEL)、外管5bの内径rOUTは850mm(rOUT=0.723×RVESSEL)であった。
この溶融容器1の所定の位置に、原料用珪石の粉末8、原料用珪石の粒子9、断熱用珪石の粉末10を夫々充填した後、内筒部材を上方へ吊り上げて溶融容器1から抜き出し、さらに、溶融容器1の上面蓋部材6を被せて、黒鉛電極4に直流電流を供給した。ここで充填した原料用珪石の粉末8、原料用珪石の粒子9、断熱用珪石の粉末10の合計量は10トンであり、通電時間は12時間、消費した電力は11000kwhであった。
こうして通電しながら、溶融容器1を直立姿勢→右回転→傾転姿勢→左回転→直立姿勢→左回転→傾転姿勢→右回転→直立姿勢→右回転→傾転姿勢→左回転→直立姿勢→左回転→傾転姿勢→右回転→直立姿勢の順に回動させて、この一連の動作を繰り返し行ない、傾転姿勢に合計24回保持した。傾転姿勢における傾斜角は90°、保持する時間tは平均30分/回であった。
通電を停止した後、珪石溶湯11を冷却して凝固させ、溶融容器1から取り出した。
得られた溶融シリカを砕いて、各小片の石英(SiO2)の純度を測定し、さらに気泡の有無を調査した。その結果、純度が99.9%以上で、しかも気泡のない溶融シリカの小片が合計7トン得られた。なお、純度が99.9%未満の小片、あるいは気泡が残留する小片は合計1トンであり、未溶融の珪石は2トンであった。
得られた溶融シリカを砕いて、各小片の石英(SiO2)の純度を測定し、さらに気泡の有無を調査した。その結果、純度が99.9%以上で、しかも気泡のない溶融シリカの小片が合計7トン得られた。なお、純度が99.9%未満の小片、あるいは気泡が残留する小片は合計1トンであり、未溶融の珪石は2トンであった。
1 溶融容器
1a 側面部材
1b 底面部材
2 冷却水の流路
3 回動装置
3a 回動軸
4 黒鉛電極
5a 内管
5b 外管
6 上面蓋部材
7 冷却水の配管
8 原料用珪石の粉末
9 原料用珪石の粒子
10 断熱用珪石の粉末
11 珪石溶湯
1a 側面部材
1b 底面部材
2 冷却水の流路
3 回動装置
3a 回動軸
4 黒鉛電極
5a 内管
5b 外管
6 上面蓋部材
7 冷却水の配管
8 原料用珪石の粉末
9 原料用珪石の粒子
10 断熱用珪石の粉末
11 珪石溶湯
Claims (4)
- 珪石を溶融する溶融炉であって、
筒状の側面部材と内部に冷却水の流路を設けた円形の底面部材とを備えて円筒状の形態を呈する溶融容器と、
該溶融容器を回動させて直立姿勢あるいは傾転姿勢に保持するために前記側面部材の外側面に配設される回動装置と、
前記溶融容器の中心に設置される黒鉛電極と、
該黒鉛電極と前記側面部材との間に挿入される内管と外管からなる2重管構造の内筒部材を昇降するための内筒昇降装置と、
前記溶融容器の開放された上面に被せるために前記側面部材の外径よりも大きい直径を有する円形であり内部に前記冷却水の流路を設けた上面蓋部材と、
前記底面部材と前記上面蓋部材に前記冷却水を供給する冷却配管と、
を有することを特徴とする珪石の溶融炉。 - 前記冷却配管の一部または全部がゴムホースからなることを特徴とする請求項1に記載の珪石の溶融炉。
- 珪石を溶融する溶融方法において、筒状の側面部材と内部に冷却水の流路を設けた円形の底面部材とを備えて円筒状の形態を呈する溶融容器を直立姿勢に保持し、黒鉛電極を前記溶融容器の中心に設置し、内筒昇降装置を用いて内管と外管からなる2重管構造の内筒部材を前記黒鉛電極と前記側面部材との間に挿入し、次いで、前記内筒部材を構成する前記内管の内側の前記底面部材上に粒径5mm未満の原料用珪石の粉末を敷き詰めて、前記内筒部材の前記内管と前記黒鉛電極との間に充填された原料用珪石の粉末上に粒径5〜50mmの原料用珪石の粒子を充填し、引き続き、前記内筒部材の前記外管と前記側面部材との間に粒径5mm未満の断熱用珪石の粉末を充填した後、粒径5mm未満の原料用珪石の粉末を前記原料用珪石の粒子上に堆積させ、その後、内筒昇降装置を用いて前記内筒部材を上方へ吊り上げることによって前記溶融容器から抜き出し、次に、前記側面部材の外径よりも大きい直径を有する円形であり内部に前記冷却水の流路を設けた上面蓋部材を前記溶融容器に被せて、前記溶融容器を前記直立姿勢から回動させて傾転姿勢に移行してから、前記底面部材および前記上面蓋部材に前記冷却水を供給しつつ前記黒鉛電極に通電して発熱させながら時間t(分)が経過するまで保持することによって前記原料用珪石の粒子および前記原料用珪石の粉末を溶融させ、前記時間tが経過した後、前記溶融容器を前記傾転姿勢から逆方向に回動させて前記直立姿勢を経て前記傾転姿勢で前記時間tが経過するまで保持し、その後、再び前記傾転姿勢から回動させて前記直立姿勢を経て前記傾転姿勢で保持することを特徴とする珪石の溶融方法。
- 前記傾転姿勢で保持する時間tが25〜35分であることを特徴とする請求項3に記載の珪石の溶融方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2019103489A JP2020196645A (ja) | 2019-06-03 | 2019-06-03 | 珪石の溶融炉および溶融方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2019103489A JP2020196645A (ja) | 2019-06-03 | 2019-06-03 | 珪石の溶融炉および溶融方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2020196645A true JP2020196645A (ja) | 2020-12-10 |
Family
ID=73648804
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2019103489A Ceased JP2020196645A (ja) | 2019-06-03 | 2019-06-03 | 珪石の溶融炉および溶融方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2020196645A (ja) |
Citations (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPS5296613A (en) * | 1976-02-10 | 1977-08-13 | Toshiba Ceramics Co | Vacuum melting furnace for silica glass |
JP2018172270A (ja) * | 2017-03-30 | 2018-11-08 | ヘレーウス クヴァルツグラース ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフトHeraeus Quarzglas GmbH & Co. KG | 希土類金属ドープされた石英ガラスの構成部品の製造方法 |
-
2019
- 2019-06-03 JP JP2019103489A patent/JP2020196645A/ja not_active Ceased
Patent Citations (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPS5296613A (en) * | 1976-02-10 | 1977-08-13 | Toshiba Ceramics Co | Vacuum melting furnace for silica glass |
JP2018172270A (ja) * | 2017-03-30 | 2018-11-08 | ヘレーウス クヴァルツグラース ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフトHeraeus Quarzglas GmbH & Co. KG | 希土類金属ドープされた石英ガラスの構成部品の製造方法 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
TWI230696B (en) | A method of producing silica glass crucible | |
TWI403461B (zh) | Method and apparatus for improving yield and yield of metallurgical silicon | |
WO2016041242A1 (zh) | 一种重复多次拉制单晶硅用石英坩埚及其制造方法 | |
JP4103593B2 (ja) | 固形状多結晶原料のリチャージ管及びそれを用いた単結晶の製造方法 | |
WO2022199286A1 (zh) | 一种可以控制单晶硅氧含量的连续直拉单晶炉及方法 | |
WO2022199287A1 (zh) | 一种用于连续直拉单晶的熔融硅加料器 | |
JP4815003B2 (ja) | シリコン結晶成長用ルツボ、シリコン結晶成長用ルツボ製造方法、及びシリコン結晶成長方法 | |
TWI422716B (zh) | 長晶方法 | |
WO2024016879A1 (zh) | 一种坩埚熔制机以及坩埚熔制方法 | |
WO2012020462A1 (ja) | シリコンの電磁鋳造装置 | |
JP5272247B2 (ja) | Cz法における多結晶シリコン原料の溶解方法 | |
JP4548682B2 (ja) | 石英ガラスるつぼの製造方法 | |
JP2020196645A (ja) | 珪石の溶融炉および溶融方法 | |
JP2010070404A (ja) | シリコン融液形成装置 | |
JP2008297154A (ja) | シリコン単結晶引上用石英ガラスルツボおよびその製造方法 | |
JP2005529050A (ja) | 厚肉シリカ管の製造 | |
JP2009274928A (ja) | 分割式ヒーターならびにこれを用いた単結晶引上げ装置および引上げ方法 | |
JP5377692B2 (ja) | シリコン加工装置およびその使用方法 | |
CN110396719A (zh) | 一种提高硅锭少子寿命的方法 | |
JP4986471B2 (ja) | シリコンのスラグ精錬方法 | |
KR200446667Y1 (ko) | 솔라셀용 실리콘 잉곳 제조장치 | |
JP5228899B2 (ja) | シリコンの溶解方法、シリコン溶解装置及びシリコン単結晶製造装置 | |
JP4484208B2 (ja) | フッ化金属単結晶体の製造方法 | |
JP2007191323A (ja) | シリコンのスラグ精錬方法及び高純度シリコンの製造装置 | |
KR101659340B1 (ko) | 고 순도 실린더형 석영 유리의 제조 장치 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20220525 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20221121 |
|
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20221129 |
|
A045 | Written measure of dismissal of application [lapsed due to lack of payment] |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A045 Effective date: 20230328 |