JP2020195940A - 積層体の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】平滑な表面を有する積層体を製造できる製造方法を提供する。【解決手段】ガラス転移温度Tgを有する重合体を含む樹脂で形成された基材の表面に、42mN/m以下の表面張力を有する塗工液を塗工して、前記塗工液の層を形成する第一工程と、前記塗工液の層を乾燥させる第二工程と、を含み、前記基材に、Tg−4℃〜Tg−3℃の温度で30秒加熱する加熱処理を施した後で、前記基材にTOF−SIMS分析を行った場合に、前記表面から深さ2nm及び深さ15nmの部分で検出される全二次イオンに対する酸素含有イオンの割合Ia(2nm)及びIa(15nm)が、下記式(1)及び(2):Ia(2nm)≧3% (1)Ia(2nm)>Ia(15nm)(2)を満たす、積層体の製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、積層体の製造方法に関する。
従来、基材の表面に塗工液を塗工し、塗工された塗工液を乾燥させて、積層体を製造する技術が知られている。このような技術によれば、一般に、塗工液に含まれていた成分又は当該成分の反応生成物を含むコート層を基材上に形成することができる。基材としては、例えば、樹脂フィルムを用いることがある(特許文献1及び2)。
国際公開第2018/079627号 特許第6434186号公報
本発明者は、従来の積層体の製造に用いられていなかった新たな基材を用いて、積層体を製造することを試みた。ところが、特定の基材を用いた場合、表面の平滑な積層体の製造が行えないことが判明した。
具体的には、それらの基材を用いた場合、当該基材に塗工液を均一に塗工することは可能であった。しかし、その塗工液を乾燥させる工程において、基材上に塗工された塗工液の層が斑状となり、得られるコート層も斑状となったために、表面が平滑な積層体を得ることができなかった。このように、塗工液の均一な塗工が可能でありながら、その後の乾燥によって塗工液の層が斑状となって、平滑な表面を有する積層体が得られなくなることは、従来知られていなかった新規な課題である。
本発明は、前記の新規な課題を有する基材フィルムを用いて、平滑な表面を有する積層体を製造できる製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は、前記の課題を解決するべく鋭意検討した。その結果、本発明者は、前記の新たな基材は、塗工液の乾燥時に当該基材に含まれる一部の成分のブリードアウトを生じ、このブリードアウトを生じた成分が塗工液の層を斑状にする要因となっていることを見い出した。
積層体の工業的な製造過程では、乾燥は、加熱環境において行われることが一般的である。この加熱環境において、基材に含まれる成分の一部は、ブリードアウトを生じることがある。ブリードアウトが生じると、その成分は基材の表面に移動し、表面の性状を変化させる。そうすると、その表面に均一に塗布されていた塗工液の層の一部又は全体が、当該表面ではじかれることにより、斑状となる。そのため、従来は、平滑な表面を有する積層体を得ることが困難となっていた。
これに対し、本発明者は、前記のブリードアウトによる表面の性状の変化が生じた後であっても、当該表面に均一に定着可能な塗工液を採用することにより、塗工液の層が斑状となることを抑制して、平滑な表面を有する積層体の製造を可能にできることを見い出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、下記のものを含む。
〔1〕 ガラス転移温度Tgを有する重合体を含む樹脂で形成された基材の表面に、42mN/m以下の表面張力を有する塗工液を塗工して、前記塗工液の層を形成する第一工程と、
前記塗工液の層を乾燥させる第二工程と、を含み、
前記基材に、Tg−4℃〜Tg−3℃の温度で30秒加熱する加熱処理を施した後で、前記基材にTOF−SIMS分析を行った場合に、前記表面から深さ2nm及び深さ15nmの部分で検出される全二次イオンに対する酸素含有イオンの割合Ia(2nm)及びIa(15nm)が、下記式(1)及び(2):
Ia(2nm)≧3% (1)
Ia(2nm)>Ia(15nm) (2)
を満たす、積層体の製造方法。
〔2〕 前記塗工液が、ポリウレタンを含む、〔1〕に記載の積層体の製造方法。
〔3〕 第二工程における乾燥温度が、Tg−10℃以上、Tg+10℃以下である、〔1〕又は〔2〕に記載の積層体の製造方法。
〔4〕 前記重合体が、脂環式構造を含有し結晶性を有する重合体である、〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載の積層体の製造方法。
〔5〕 前記Ia(15nm)が、下記式(3):
Ia(15nm)≦1% (3)
を満たす、〔1〕〜〔4〕のいずれか一項に記載の積層体の製造方法。
〔6〕 前記基材に前記加熱処理を施す前に、前記基材にTOF−SIMS分析を行った場合に、前記表面から深さ2nmの部分で検出される全二次イオンに対する酸素含有イオンの割合Ib(2nm)、及び、前記Ia(2nm)が、下記式(4):
Ia(2nm)>Ib(2nm) (4)
を満たす、〔1〕〜〔5〕のいずれか一項に記載の積層体の製造方法。
本発明によれば、前記の新規な課題を有する基材フィルムを用いて、平滑な表面を有する積層体を製造できる製造方法を提供できる。
図1は、懸滴法による塗工液の表面張力の測定を説明する概略図である。
以下、本発明について実施形態及び例示物を示して詳細に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施形態及び例示物に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
以下の説明において、「長尺」のフィルムとは、幅に対して、5倍以上の長さを有するフィルムをいい、好ましくは10倍若しくはそれ以上の長さを有し、具体的にはロール状に巻き取られて保管又は運搬される程度の長さを有するフィルムをいう。長さの上限に特段の制限は無いが、通常、幅に対して10万倍以下である。
[1.積層体の製造方法の概要]
本発明の一実施形態に係る積層体の製造方法は、基材の表面に塗工液を塗工して、塗工液の層を形成する第一工程と;前記塗工液の層を乾燥させる第二工程と;を含む。通常、塗工液は、乾燥によって除去されうる溶媒と、乾燥によって除去されない固形分とを含む。よって、前記の乾燥によれば、基材の表面に、塗工液の固形分又はその反応生成物を含むコート層を形成できる。したがって、前記の製造方法によれば、基材及びコート層を備える積層体を製造できる。
本実施形態では、基材として、特定の条件を満たすものを用いる。そして、このような基材に対して適応可能な特定の範囲の塗工液を採用している。このような基材及び塗工液の組み合わせによれば、乾燥時に塗工液の層が斑状となることを抑制できるので、基材の表面に均一なコート層を形成でき、その結果、平滑な表面を有する積層体を製造できる。
[2.基材]
基材は、ガラス転移温度Tgを有する重合体を含む樹脂で形成されている。この基材は、塗工液を塗工可能な表面を有する任意の形状を有しうる。基材の形状の具体例としては、フィルム状、シート状等が挙げられる。通常は、前記の樹脂で形成された樹脂フィルムとしての基材フィルムを、基材として用いる。以下の説明では、塗工液を塗工される基材の表面を「塗工面」ということがある。基材が有する塗工面の数は、1でもよく、2以上でもよい。例えば、基材フィルムは、その一方の表面のみが塗工面であってもよく、その両方の表面が塗工面であってもよい。
基材は、下記の式(1)及び(2)を満たすIa(2nm)及びIa(15nm)を有する。
Ia(2nm)≧3% (1)
Ia(2nm)>Ia(15nm) (2)
前記のIa(2nm)は、基材に特定の加熱処理を施した後で、その基材にTOF−SIMS分析(飛行時間型二次イオン質量分析)を行った場合に、塗工面から深さ2nmの部分で検出される全二次イオンに対する酸素含有イオンの割合を表す。
また、前記のIa(15nm)は、基材に前記特定の加熱処理を施した後で、その基材にTOF−SIMS分析を行った場合に、塗工面から深さ15nmの部分で検出される全二次イオンに対する酸素含有イオンの割合を表す。
以下の説明において、TOF−SIMS分析で検出される二次イオンの割合は、別に断らない限り、いずれも個数基準である。
また、Ia(2nm)、Ia(15nm)、後述するIb(2nm)、及び後述するIb(15nm)のような、酸素含有イオンの割合は、その酸素含有イオンが検出された部分で発生する二次イオン全体の量を100%とした値を表す。
前記の特定の加熱試験とは、Tg−4℃〜Tg−3℃の温度で30秒、基材を加熱する試験を表す。Tgは、基材を形成する樹脂が含む重合体のガラス転移温度を表す。重合体のガラス転移温度Tgは、示差走査熱量計(DSC)を用いて、10℃/分の昇温速度(昇温モード)で測定しうる。
TOF−SIMS分析では、高真空中で高速のイオンビ−ム(一次イオン)を固体試料の表面にぶつけ、スパッタリング現象により表面の構成成分をはじき飛ばさせ、正または負の電荷を帯びたイオン(二次イオン)を発生させる。この二次イオンを、電場により一方向に飛ばし、検出器にて検出されるまでの時間から、二次イオンの質量計算を行うことができる。また、TOF−SIMS分析では、固体試料の表面のエッチングを行いながら分析を行うことが可能であるので、深さ方向(即ち、厚み方向)の所望の部分で前記の二次イオンの発生及び検出を行うことができる。
よって、前記Ia(2nm)、及び、後述するIb(2nm)のような、塗工面から深さ2nmの部分で検出される酸素含有イオンの割合は、基材の塗工面に極近い部分(具体的には、塗工面から厚み方向に2nmだけ離れた部分)に含まれる成分のうち、酸素原子を含有する化合物の割合を表す。したがって、式(1)は、加熱処理後の基材が、その特定面に極近い部分に、酸素原子を含有する化合物を特定の濃度以上で含むことを表す。そして、このように特定面の極近い部分に酸素原子を含有する化合物が含まれることは、通常、その酸素原子を含有する化合物が特定面に多く存在することを示す。
他方、前記Ia(15nm)、及び、後述するIb(15nm)のような、塗工面から深さ15nmの部分で検出される酸素含有イオンの割合は、基材の塗工面から少し離れた部分(具体的には、塗工面から厚み方向に15nmだけ離れた部分)に含まれる成分のうち、酸素原子を含有する化合物の割合を表す。したがって、式(2)は、加熱処理後の基材が、その特定面から少し離れた部分に酸素原子を含有する化合物を含まないか、又は、特定面から少し離れた部分に含まれる酸素原子を含有する化合物の量が塗工面に極近い部分に含まれる酸素原子を含有する化合物の量よりも少ないことを表す。
よって、前記の式(1)及び(2)を満たす基材では、加熱処理後における特定面の近傍部分に、酸素原子を含有する化合物が偏って含まれるという特異的な状態が生じうる。
式(1)についてより詳細に説明すると、Ia(2nm)は、通常3%以上であり、4%以上又は5%以上であってもよい。上限は、コート層が斑状になることを効果的に抑制する観点で、好ましくは20%以下、より好ましくは18%以下、特に好ましくは15%以下である。
式(2)についてより詳細に説明すると、Ia(2nm)−Ia(15nm)は、通常0%より大きく、好ましくは1%より大きく、特に好ましくは2%より大きい。上限に制限はないが、コート層が斑状になることを効果的に抑制する観点では、好ましくは20%以下、より好ましくは18%以下、特に好ましくは15%以下である。
基材において、Ia(15nm)は、下記式(3)を満たすことが好ましい。
Ia(15nm)≦1% (3)
より詳細には、Ia(15nm)は、好ましくは0%〜1%、より好ましくは0%〜0.8%、特に好ましくは0%〜0.5%である。このようにIa(15nm)が小さい従来の基材は、表面の平滑な積層体の製造が可能な場合が多かった。しかし、Ia(15nm)が小さい基材であっても、前記式(1)及び(2)が満たされる場合、表面の平滑な積層体の製造が困難になるという上述した特異的な課題が生じていた。この特異的な課題を解決できるという本実施形態の利点を有効に活用する観点で、Ia(15nm)は、式(3)を満たす前記の範囲にあることが望ましい。
基材に前記の加熱処理を施す前に、基材にTOF−SIMS分析を行った場合に、塗工面から深さ2nmの部分で検出される全二次イオンに対する酸素含有イオンの割合を、Ib(2nm)で表す。この場合、Ib(2nm)及びIa(2nm)が、下記式(4)を満たすことが好ましい。
Ia(2nm)>Ib(2nm) (4)
より詳細には、Ia(2nm)−Ib(2nm)は、好ましくは0%より大きく、1%より大きく又は2%より大きくてもよい。式(4)は、基材の塗工面に極近い部分に含まれる酸素原子を含有する化合物の量が、加熱処理によって増えることを表す。このような量の増加は、酸素原子を含有する化合物が、加熱処理によってブリードアウトを生じ、基材の塗工面へと移動することにより生じうる。このような現象を生じる基材において上述した特異的な課題が顕著に生じえた。この課題を解決できるという本実施形態の利点を有効に活用する観点で、Ib(2nm)及びIa(2nm)が式(4)を満たすことが好ましい。Ia(2nm)−Ib(2nm)の上限に制限はないが、コート層が斑状になることを効果的に抑制する観点では、好ましくは20%以下、より好ましくは18%以下、特に好ましくは15%以下である。
基材に前記の加熱処理を施す前に、基材にTOF−SIMS分析を行った場合に、塗工面から深さ15nmの部分で検出される全二次イオンに対する酸素含有イオンの割合を、Ib(15nm)で表す。この場合、Ib(2nm)及びIb(15nm)が、下記式(5)を満たすことが好ましい。
|Ib(2nm)−Ib(15nm)|<5% (5)
より詳細には、|Ib(2nm)−Ib(15nm)|は、好ましくは5%未満、より好ましくは3%未満、特に好ましくは1%未満である。式(5)は、基材に加熱処理を施す前において、基材の塗工面に極近い部分に含まれる酸素原子を含有する化合物の量と、基材の塗工面から少し離れた部分に含まれる酸素原子を含有する化合物の量とが、近いか又は同じであることを表す。このように加熱処理前の基材のIb(2nm)及びIb(15nm)が同程度である場合、上述した特異的な課題を解決できるという本実施形態の利点を有効に活用できる。
TOF−SIMS分析は、TOF−SIMS(例えば、アルバック・ファイ社製「PHInanoTOF II」)を用いて行うことができる。この際、測定条件は、下記の条件を採用しうる。
一次イオン源:Bi ++
二次イオン極性:正のみ
加速電圧 :30kV
測定範囲 :300μm×300μm
分解能 :256×256
スキャン回数 :16回
基材を形成する樹脂に含まれる重合体としては、ガラス転移温度Tgを有する重合体を用いる。重合体の具体的なガラス転移温度Tgは、特に限定されないが、通常85℃以上、好ましくは88℃以上、特に好ましくは90℃以上であり、通常190℃以下、好ましくは180℃以下、特に好ましくは170℃以下である。
重合体のガラス転移温度Tgは、以下の方法によって測定できる。まず、重合体を、不活性雰囲気化での加熱によって融解させる。その後、融解した重合体を、液体窒素で急冷する。続いて、この重合体を試験体として用いて、示差走査熱量計(DSC)を用いて、10℃/分の昇温速度(昇温モード)で、重合体のガラス転移温度Tgを測定しうる。
基材を形成する樹脂に含まれる重合体としては、その分子に含まれる酸素原子が少ないか、又はその分子が酸素原子を含まない重合体が好ましい。中でも、基材を形成する樹脂に含まれる重合体としては、その分子が酸素原子を含まない重合体が特に好ましい。
特に好ましい重合体としては、機械的強度及び耐熱性に優れることから、脂環式構造を含有する重合体が挙げられる。脂環式構造を含有する重合体とは、分子内に脂環式構造を有する重合体を表す。このような脂環式構造を含有する重合体は、例えば、環状オレフィンを単量体として用いた重合反応によって得られうる重合体又はその水素化物でありうる。
前記の重合体が有する脂環式構造としては、例えば、シクロアルカン構造及びシクロアルケン構造が挙げられる。これらの中でも、熱安定性などの特性に優れる基材が得られ易いことから、シクロアルカン構造が好ましい。1つの脂環式構造に含まれる炭素原子の数は、好ましくは4個以上、より好ましくは5個以上であり、好ましくは30個以下、より好ましくは20個以下、特に好ましくは15個以下である。1つの脂環式構造に含まれる炭素原子の数が上記範囲内にあることで、機械的強度、耐熱性、及び成形性が高度にバランスされる。
脂環式構造を含有する重合体において、全ての構造単位に対する脂環式構造を有する構造単位の割合は、好ましくは30重量%以上、より好ましくは50重量%以上、特に好ましくは70重量%以上である。脂環式構造を含有する重合体における脂環式構造を有する構造単位の割合を前記のように多くすることにより、耐熱性を高めることができる。全ての構造単位に対する脂環式構造を有する構造単位の割合は、100重量%以下としうる。
脂環式構造を含有する重合体が水素化物である場合、水素化反応における水素化率(水素化された主鎖二重結合の割合)は、好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上である。水素化率が高いほど、脂環式構造を含有する重合体の可撓性を良好にできる。
重合体の水素化率は、オルトジクロロベンゼン−dを溶媒として、145℃で、H−NMR測定により測定しうる。
また、基材を形成する樹脂に含まれる重合体は、本実施形態の利点を有効に活用する観点から、結晶性を有することが好ましい。「結晶性を有する重合体」とは、融点Tmを有する〔すなわち、示差走査熱量計(DSC)で融点を観測することができる〕重合体を表す。
よって、基材を形成する樹脂に含まれる重合体としては、脂環式構造を含有し結晶性を有する重合体が特に好ましい。以下の説明において、脂環式構造を含有し結晶性を有する重合体を「脂環式結晶性重合体」ということがある。また、脂環式結晶性重合体を含む前記の樹脂を「結晶性樹脂」ということがある。脂環式結晶性重合体を含む結晶性樹脂は、当該結晶性樹脂が含む成分のブリードアウトが生じ易く、よって上述した特異的な課題が顕著に生じえた。したがって、この課題を解決できるという本実施形態の利点を有効に活用する観点で、重合体としては脂環式結晶性重合体が好ましい。
脂環式結晶性重合体としては、例えば、下記の重合体(α)〜重合体(δ)が挙げられる。これらの中でも、耐熱性に優れる基材が得られ易いことから、脂環式結晶性重合体としては、重合体(β)が好ましい。
重合体(α):環状オレフィン単量体の開環重合体であって、結晶性を有するもの。
重合体(β):重合体(α)の水素化物であって、結晶性を有するもの。
重合体(γ):環状オレフィン単量体の付加重合体であって、結晶性を有するもの。
重合体(δ):重合体(γ)の水素化物であって、結晶性を有するもの。
具体的には、脂環式結晶性重合体としては、ジシクロペンタジエンの開環重合体であって結晶性を有するもの、及び、ジシクロペンタジエンの開環重合体の水素化物であって結晶性を有するものがより好ましい。脂環式結晶性重合体としては、ジシクロペンタジエンの開環重合体の水素化物であって結晶性を有するものが特に好ましい。ここで、ジシクロペンタジエンの開環重合体とは、全構造単位に対するジシクロペンタジエン由来の構造単位の割合が、通常50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%以上、さらに好ましくは100重量%の重合体をいう。
また、前記の重合体(α)及び重合体(β)は、通常、そのシンジオタクチック立体規則性の度合い(ラセモ・ダイアッドの割合)を高めることで、結晶性を高くすることができる。重合体(α)及び重合体(β)の立体規則性の程度を高くする観点から、重合体(α)及び重合体(β)の構造単位についてのラセモ・ダイアッドの割合は、好ましくは51%以上、より好ましくは60%以上、特に好ましくは70%以上であり、理想的には100%である。ラセモ・ダイアッドの割合は、実施例で説明する方法によって測定しうる。
上記重合体(α)〜重合体(δ)としては、WO2018/062067号公報に開示されている製造方法により得られる重合体を用いうる。
基材に含まれる重合体が結晶性を有する場合、その重合体の融点Tmは、好ましくは200℃以上、より好ましくは230℃以上であり、好ましくは290℃以下である。このような融点Tmを有する重合体を用いることによって、成形性と耐熱性とのバランスに更に優れた基材を得ることができる。
基材に含まれる重合体が結晶性を有する場合、その重合体は、通常、結晶化温度Tpcを有する。重合体の具体的な結晶化温度Tpcは、特に限定されないが、好ましくは120℃以上であり、好ましくは220℃以下である。
重合体の融点Tm及び結晶化温度Tpcは、以下の方法によって測定できる。まず、重合体を、不活性雰囲気化での加熱によって融解させる。その後、融解した重合体を、液体窒素で急冷する。続いて、この重合体を試験体として用いて、示差走査熱量計(DSC)を用いて、10℃/分の昇温速度(昇温モード)で、重合体の融点Tm及び結晶化温度Tpcを測定しうる。
基材に含まれる重合体の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1,000以上、より好ましくは2,000以上であり、好ましくは1,000,000以下、より好ましくは500,000以下である。このような重量平均分子量を有する重合体は、成形加工性と耐熱性とのバランスに優れる。
基材に含まれる重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは1.0以上、より好ましくは1.5以上であり、好ましくは4.0以下、より好ましくは3.5以下である。ここで、Mnは数平均分子量を表す。このような分子量分布を有する重合体は、成形加工性に優れる。
重合体の重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)は、テトラヒドロフランを展開溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン換算値として測定しうる。
重合体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
基材を形成する樹脂において、前記の重合体の割合は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上であり、通常100重量%未満、好ましくは99.8重量%以下、より好ましくは99.5重量%以下である。重合体の割合が前記範囲の下限値以上である場合、基材の耐熱性を高めることができる。また、重合体の割合が前記範囲の上限未満である場合、上述した特異的な課題が顕著に生じえた。よって、この課題を解決できるという本実施形態の利点を有効に活用する観点から、重合体の割合は、前記範囲の上限未満であることが好ましい。
基材を形成する樹脂は、上述した重合体に組み合わせて、酸素原子を含む配合剤を含んでいてもよい。基材を形成する樹脂がこのような配合剤を含む場合に、上述した特異的な課題を生じえた。よって、この課題を解決できるという本実施形態の利点を有効に活用する観点から、樹脂は、前記の配合剤を含むことが好ましい。
配合剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤{例えば、(テトラキス〔メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン}、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤等の酸化防止剤;ヒンダードアミン系光安定剤などの光安定剤;石油系ワックス、フィッシャートロプシュワックス、ポリアルキレンワックスなどのワックス;ソルビトール系化合物、有機リン酸の金属塩、有機カルボン酸の金属塩、カオリン及びタルクなどの核剤;ジアミノスチルベン誘導体、クマリン誘導体、アゾール系誘導体(例えば、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、及びベンゾチアソール誘導体)、カルバゾール誘導体、ピリジン誘導体、ナフタル酸誘導体、及びイミダゾロン誘導体などの蛍光増白剤;ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤などの紫外線吸収剤;ガラス繊維;着色剤;難燃剤;難燃助剤;帯電防止剤;可塑剤;近赤外線吸収剤;滑剤、及び、軟質重合体などの環状オレフィン開環重合体水素添加物以外の高分子材料;などが挙げられる。配合剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
配合剤の量は、式(1)及び(2)を満たすIa(2nm)及びIa(15nm)が得られる範囲で、任意である。具体的な範囲の例を示すと、配合剤の量は、重合体100重量部に対して、好ましくは0.01重量部以上、より好ましくは0.05重量部以上、特に好ましくは0.1重量部以上であり、好ましくは10重量部以下、より好ましくは8重量部以下、特に好ましくは5重量部以下である。
さらに、基材を形成する樹脂は、重合体及び配合剤に組み合わせて、更に任意の成分を含んでいてもよい。
基材を形成する樹脂が含む重合体が結晶性を有する場合、その重合体は、第一工程に供給する時点においては、結晶化が進行していないことが好ましい。第一工程に供給する時点での樹脂の結晶化度は、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下、特に好ましくは1%以下である。この結晶化度は、JIS K0131に準じて、X線回折法によって測定しうる。
基材の寸法には、特段の制限は無い。例えば、基材として基材フィルムを用いる場合、その厚みは、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上、特に好ましくは15μm以上であり、好ましく1mm以下、より好ましくは500μm以下、更に好ましくは100μm以下、特に好ましくは50μm以下である。
基材の製造方法には、特段の制限は無い。例えば、基材として基材フィルムを用いる場合、当該基材フィルムは、射出成形法、押出成形法、プレス成形法、インフレーション成形法、ブロー成形法、カレンダー成形法、注型成形法、圧縮成形法等の樹脂成型法によって製造できる。これらの中でも、厚みの制御が容易であることから、押出成形法が好ましい。
[3.塗工液]
塗工液としては、特定の範囲の表面張力を有する液体を用いる。具体的には、塗工液の表面張力は、通常42mN/m以下、好ましくは40mN/m以下、特に好ましくは38mN/m以下である。このように表面張力が小さい塗工液を採用することにより、乾燥時に塗工液の層が斑状となることを抑制できるので、平滑な表面を有する積層体を製造できる。塗工液の表面張力の下限は、所望の厚みのコート層を得る観点から、好ましくは30mN/m以上、より好ましくは32mN/m以上、特に好ましくは34mN/m以上である。
塗工液の表面張力は、温度23℃、湿度65%の環境において、懸滴法により測定できる。図1は、懸滴法による塗工液の表面張力の測定を説明する概略図である。図1に示すように、この懸滴法では、細管11から液滴12を懸滴し、その液滴12の寸法を計測することにより、表面張力を求めることができる。具体的には、下記式(X)を用いて、塗工液の表面張力を求めることができる。
γ=g・ρ・(de)−1 (X)
(γ:塗工液の表面張力。
g:重力加速度。
ρ:液密度。
de:最大液滴径。
−1:ds/deから求められる補正項。
ds:液下端から距離de上がった位置での液滴の径。)
塗工液の表面張力を前記のように小さくする方法としては、例えば、塗工液の溶媒の種類及び量を調整する方法、適切な種類及び量の界面活性剤を含む塗工液を採用する方法、などが挙げられる。
塗工液は、通常、固形分及び溶媒を含む。固形分としては、積層体に設けるコート層の組成に応じて適切なものを採用しうる。通常、コート層は、前記の固形分か、又は、前記固形分が反応して得られる反応生成物を含む。固形分は、溶媒に溶解していてもよく、溶媒に分散していてもよい。また、固形分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
好ましい固形分としては、例えば、ポリウレタン又はその前駆体が挙げられる。このようにポリウレタン又はその前駆体を固形分として含む塗工液を用いる場合、コート層として、接着性に優れる易接着層を形成できる。ポリウレタン及びその前駆体は、その一方を用いてもよく、両方を用いてもよい。特に、塗工液は、ポリウレタンを含むことが好ましい。
ポリウレタンとしては、各種のポリオール及びポリイソシアネートから誘導されるポリウレタンを挙げることができる。ポリオールの例としては、ポリオール化合物(エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン等)と、多塩基酸(多価カルボン酸(例、アジピン酸、コハク酸、セバシン酸、グルタル酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等のジカルボン酸、およびトリメリット酸等のトリカルボン酸を含む多価カルボン酸またはその無水物等))との反応により得られる脂肪族ポリエステル系ポリオール;ポリエーテルポリオール(例、ポリ(オキシプロピレンエーテル)ポリオール;ポリ(オキシエチレン−プロピレンエーテル)ポリオール);ポリカーボネート系ポリオール;及び、ポリエチレンテレフタレートポリオール;並びに、これらの混合物;が挙げられる。前記ポリウレタンでは、例えば、ポリオールとポリイソシアネートとの反応後、未反応として残った水酸基を、架橋剤における官能基との架橋反応が可能な極性基として利用することができる。中でも、ポリウレタンとしては、コート層の耐湿熱性を高める観点から、その骨格にカーボネート構造を含むポリカーボネート系のポリウレタンが好ましい。
ポリウレタンとしては、水系ウレタン樹脂として市販されている水系エマルションに含まれるものを用いてもよい。水系ウレタン樹脂とは、ポリウレタンと水とを含む組成物である。水系ウレタン樹脂では、通常、ポリウレタンおよび必要に応じて含まれる任意成分が、水の中に分散している。水系ウレタン樹脂の例としては、ADEKA社製の「アデカボンタイター」シリーズ、三井化学社製の「オレスター」シリーズ、DIC社製の「ボンディック」シリーズ、「ハイドラン(WLS201,WLS202など)」シリーズ、バイエル社製の「インプラニール」シリーズ、花王社製の「ポイズ」シリーズ、三洋化成工業社製の「サンプレン」シリーズ、第一工業製薬社製の「スーパーフレックス」シリーズ、楠本化成社製の「NEOREZ(ネオレッズ)」シリーズ、ルーブリゾール社製の「Sancure」シリーズなどが挙げられる。
ポリウレタンの前駆体としては、例えば、上述した各種のポリウレタンを与えうる前駆体が挙げられ、具体例としては、前記のポリオール、ポリイソシアネート等が挙げられる。これらの前駆体を含む塗工液を採用した場合、塗工前、塗工中及び塗工後などの適切な時期に前記の前駆体を反応させることにより、ポリウレタンを含むコート層を得ることができる。
ポリウレタンのガラス転移温度は、基材を形成する樹脂に含まれる重合体のガラス転移温度Tgよりも低いことが好ましい。ポリウレタンの具体的なガラス転移温度の範囲は、好ましくは−20℃以上、より好ましくは−15℃以上、特に好ましくは−10℃以上であり、好ましくは50℃以下、より好ましくは40℃以下、特に好ましくは30℃以下である。ポリウレタンのガラス転移温度は、実施例で説明する方法によって測定しうる。
ポリウレタンの量は、塗工液に含まれる固形分の全量100重量%に対して、好ましくは60重量%〜100重量%、さらに好ましくは70重量%〜100重量%でありうる。
塗工液は、固形分として、架橋剤を含んでいてもよい。架橋剤を用いることにより、ポリウレタンを架橋させることができるので、機械的強度に優れるコート層を得ることができる。
架橋剤は、上に述べた各種のポリウレタンにおける極性基等の官能基と反応して結合を形成できる官能基を分子内に2個以上有する化合物でありうる。架橋剤の例としては、エポキシ化合物、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物、イソシアネート化合物等を挙げることができ、エポキシ化合物が好ましい。
エポキシ化合物としては、機械的強度に特に優れるコート層を得る観点から、分子内に2個以上のエポキシ基を有する多官能のエポキシ化合物が好ましい。また、エポキシ化合物としては、使用の容易性の観点から、水に溶解性があるか、または水に分散してエマルション化しうるものが好ましい。
エポキシ化合物の例を挙げると、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサングリコール、ネオペンチルグリコール等のグリコール類1モルと、エピクロルヒドリン2モルとのエーテル化によって得られるジエポキシ化合物;グリセリン、ポリグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の多価アルコール類1モルと、エピクロルヒドリン2モル以上とのエーテル化によって得られるポリエポキシ化合物;フタル酸、テレフタル酸、シュウ酸、アジピン酸等のジカルボン酸1モルと、エピクロルヒドリン2モルとのエステル化によって得られるジエポキシ化合物;などが挙げられる。
より具体的には、エポキシ化合物としては、1,4−ビス(2’,3’−エポキシプロピルオキシ)ブタン、1,3,5−トリグリシジルイソシアヌレート、1,3−ジクリシジル−5−(γ−アセトキシ−β−オキシプロピル)イソシヌレート、ソルビトールポリグリシジルエーテル類、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル類、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル類、ジグリセロ−ルポリグルシジルエーテル、1,3,5−トリグリシジル(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、グリセロールポリグリセロールエーテル類およびトリメチロ−ルプロパンポリグリシジルエーテル類等のエポキシ化合物が好ましい。その具体的な市販品の例としては、ナガセケムテックス社製の「デナコール(デナコールEX−521,EX−614Bなど)」シリーズ等を挙げることができる。
架橋剤の量は、ポリウレタンの量100重量部に対し、好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは1重量部以上、特に好ましくは2重量部以上であり、好ましくは20重量部以下、より好ましくは15重量部以下、特に好ましくは10重量部以下である。架橋剤の量が前記範囲の下限値以上である場合、架橋剤とポリウレタンとの反応が十分に進行するので、コート層の機械的強度を適切に向上させることができる。また、架橋剤の量が前記範囲の上限値以下である場合、未反応の架橋剤の残留を少なくでき、コート層の機械的強度を適切に向上できる。
塗工液は、固形分として、上述した成分以外の成分を含んでいてもよい。そのような成分としては、例えば、硬化促進剤、硬化助剤、微粒子、耐熱安定剤、耐候安定剤、レベリング剤、界面活性剤、酸化防止剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、染料、顔料、天然油、合成油、ワックス等が挙げられる。
塗工液の溶媒としては、上述した範囲の表面張力を達成できる任意の溶媒を用いうる。溶媒の例としては、水及び水溶性有機溶媒が挙げられる。水溶性有機溶媒の例としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、テトラヒドロフラン、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、メチルエチルケトン、トリエチルアミンなどが挙げられる。溶媒は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。溶媒の量は、塗工液の粘度が、塗工に適した範囲になるように設定することが好ましい。
[4.第三工程(塗工面の表面改質処理)]
本実施形態に係る積層体の製造方法は、第一工程を行うのに先立って、基材の塗工面に表面改質処理を施す第三工程を含むことが好ましい。この表面改質処理を行うことにより、基材とコート層との密着性を向上させることができる。
表面改質処理としては、コロナ放電処理、プラズマ処理、ケン化処理、紫外線照射処理などが挙げられる。中でも、処理効率の観点から、コロナ放電処理及びプラズマ処理が好ましく、コロナ放電処理がより好ましい。
[5.第一工程(塗工面への塗工液の塗工)]
本実施形態に係る積層体の製造方法は、必要に応じて第三工程を行った後で、基材の塗工面に塗工液を塗工する第一工程を含む。この第一工程により、基材の塗工面に、塗工液の層が形成される。
塗工方法としては、例えば、ワイヤーバーコート法、ディップ法、スプレー法、スピンコート法、ロールコート法、グラビアコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、スライドコート法、エクストルージョンコート法などが挙げられる。
単位面積当たりの塗工量は、コート層の厚みに応じて適切に設定しうる。具体的な範囲を示すと、基材の塗工面1m当たりの塗工液の塗工量は、好ましくは0.5mL以上、好ましくは1mL以上、特に好ましくは1.5mL以上であり、好ましくは20mL以下、より好ましくは15mL以下、特に好ましくは10mL以下である。また、このような塗工量で塗工液を塗工する場合に、本発明の効果を有効に活用できる。
[6.第二工程(塗工液の層の乾燥)]
本実施形態に係る積層体の製造方法は、第一工程の後で、基材の塗工面に形成された塗工液の層を乾燥させる第二工程を含む。この第二工程により、塗工液の層から溶媒が除去されて、塗工液の固形分又はその反応生成物を含むコート層を形成できる。よって、基材及びコート層を備える積層体を得ることができる。乾燥の際、基材に含まれる成分が塗工面にブリードアウトすることがあり得るが、そのようなブリードアウトを生じても、塗工液の層は基材の塗工面に均一に定着できる。よって、コート層が斑状になることを抑制できるので、積層体の表面を平滑にできる。
乾燥方法は任意であり、例えば、減圧乾燥、加熱乾燥などの任意の方法としうる。中でも、乾燥と共に、固形分の架橋反応等の反応を速やかに進行させる観点から、加熱乾燥を行うことが好ましい。
第二工程における具体的な乾燥温度は、好ましくはTg−10℃以上、より好ましくはTg−8℃以上、特に好ましくはTg−5℃以上であり、好ましくはTg+10℃以下、より好ましくはTg+5℃以下、特に好ましくはTg+2℃以下である。Tgは、基材を形成する樹脂が含む重合体のガラス転移温度を表す。乾燥温度が前記の範囲にある場合、乾燥を速やかに行うことができる。また、架橋剤を含む塗工液を用いた場合には、架橋反応を円滑に進行させることができる。さらに、乾燥温度が前記の範囲にある場合には、上述した特異的な課題が顕著に生じえた。よって、この課題を解決できるという本実施形態の利点を有効に活用する観点から、乾燥温度が前記範囲であることが好ましい。
第二工程における乾燥時間は、特段の制限はなく、例えば5秒〜5分でありうる。
形成されるコート層の厚みは、特に制限はなく、当該コート層に求められる特性に応じて任意である。具体的な範囲を示すと、コート層の厚みは、好ましくは100nm以上、より好ましくは150nm以上、特に好ましくは180nm以上であり、好ましくは5μm以下、より好ましくは2μm以下、特に好ましくは1μm以下である。
[7.第四工程(延伸)]
本実施形態に係る積層体の製造方法は、第二工程の後で、得られた積層体を延伸する第四工程を含んでいてもよい。延伸により、積層体の厚みを薄くしたり、積層体の光学特性(レターデーション等)を調整したりすることができる。
延伸温度は、好ましくはTg−30℃以上、より好ましくはTg−10℃以上であり、好ましくはTg+60℃以下、より好ましくはTg+50℃以下である。このような温度範囲で延伸を行うことにより、基材中に含まれる重合体の分子を適切に配向させることができる。Tgは、基材を形成する樹脂が含む重合体のガラス転移温度を表す。
延伸倍率は、所望の光学特性、厚み、強度などの要素により適宜選択しうるが、通常は1倍より大きく、好ましくは1.01倍以上であり、通常は10倍以下、好ましくは5倍以下である。ここで、例えば二軸延伸法のように異なる複数の方向に延伸を行う場合、延伸倍率は各延伸方向における延伸倍率の積で表される総延伸倍率を表す。
[8.第五工程(結晶化)]
基材に含まれる重合体が結晶性を有する場合、本実施形態に係る積層体の製造方法は、第二工程の後で、重合体の結晶化を進行させる結晶化処理を行う第五工程を行ってもよい。積層体の製造方法が第四工程を含む場合には、第五工程は、通常、第四工程の後に行われる。
結晶化処理は、通常、積層体を特定の温度範囲に加熱することによって行われる。ここで、前記の温度範囲は、通常、重合体のガラス転移温度Tg以上、重合体の融点Tm以下である。より詳細には、結晶化処理の温度範囲は、好ましくはTg+20℃以上、より好ましくはTg+30℃以上であり、好ましくはTm−20℃以下、より好ましくはTm−40℃以下である。前記の温度範囲では、結晶化の進行による基材の白濁を抑制しながら、速やかに重合体の結晶化を進行させることができる。
結晶化処理の際、積層体を前記の温度範囲に維持する処理時間は、好ましくは1秒以上、より好ましくは5秒以上であり、好ましくは30分以下、より好ましくは10分以下である。
結晶化処理は、熱収縮によって積層体が変形しないように、積層体の少なくとも二辺を保持した状態で行うことが好ましい。「積層体の少なくとも二辺を保持した状態」とは、積層体にたわみが認められない程度に、保持具で積層体を保持した状態をいう。このような状態では、通常、積層体は、適切な張力がかかった緊張状態となっている。ただし、この状態には、積層体が実質的に延伸されるような保持状態は含まれない。また、実質的に延伸されるとは、積層体のいずれかの方向への延伸倍率が通常1.03倍以上になることをいう。
結晶化は、基材を形成する樹脂の結晶化度が所望の値に達する程度に行うことが好ましい。結晶化した後での樹脂の結晶化度は、好ましくは30%以上、より好ましくは50%以上、特に好ましくは60%以上である。結晶化度の上限は、例えば、100%以下、90%以下、又は80%以下でありうる。前記のように結晶化度が大きい場合、積層体の耐屈曲性及び耐薬品性を向上させることができる。
[9.その他の工程]
本実施形態に係る積層体の製造方法は、上述した工程に組み合わせて、その他の工程を含んでいてもよい。例えば、積層体の製造方法は、第二工程でコート層を形成した後で、そのコート層の表面に表面改質処理を施す工程を含んでいてもよい。また、積層体の製造方法は、第五工程の後で、基材を熱収縮させて基材中の残留応力を除去する工程を含んでいてもよい。さらに、積層体に、更に別の層を形成する工程を含んでいてもよい。
[10.製造される積層体]
上述した製造方法によれば、基材と、この基材上に形成されたコート層とを備える積層体を製造できる。コート層は、通常、基材に直接に接する。ここで、基材とコート層とが接する態様が「直接」とは、基材とコート層との間に他の層が無いことを表す。また、基材が基材フィルムである場合、上述した製造方法によれば、基材フィルムの一方の塗工面にコート層を備える積層体だけでなく、基材フィルムの両方の塗工面にコート層を備える積層体を得ることもできる。
上述した製造方法によれば、基材の塗工面に、コート層を均一に形成できる。よって、コート層が部分的に欠けて斑状となったり、コート層の厚みが不均一となったりすることを抑制できる。したがって、積層体の表面を、平滑にすることができる。
積層体は、当該積層体の用途に応じた特性を有することが好ましい。例えば、基材として基材フィルムを用いれば、フィルム状の積層体を得ることができる。このフィルム状の積層体を光学フィルムとして用いる場合、当該積層体は、高い透明性を有することが好ましい。具体的には、積層体の全光線透過率は、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、特に好ましくは88%以上である。全光線透過率は、紫外・可視分光計を用いて、波長400nm〜700nmの範囲で測定しうる。
積層体は、任意の用途に用いうる。例えば、フィルム状の積層体は、光学等方性フィルム及び位相差フィルム等の光学フィルム;電気電子用フィルム;バリアフィルム用の支持フィルム;並びに、導電性フィルム用の支持フィルム;として好適である。前記の光学フィルムとしては、例えば、液晶表示装置用の位相差フィルム、偏光板保護フィルム、有機EL表示装置の円偏光板用の位相差フィルム、等が挙げられる。電気電子用フィルムとしては、例えば、フレキシブル配線基板、フィルムコンデンサー用絶縁材料、などが挙げられる。バリアフィルムとしては、例えば、有機EL素子用の基板、封止フィルム、太陽電池の封止フィルム、などが挙げられる。導電性フィルムとしては、例えば、有機EL素子及び太陽電池のフレキシブル電極、タッチパネル部材、などが挙げられる。
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、別に断らない限り重量基準である。また、以下に説明する操作は、別に断らない限り、常温及び常圧の条件において行った。
[評価方法]
(重合体の重量平均分子量及び数平均分子量の測定方法)
重合体の重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnは、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)システム(東ソー社製「HLC−8320」)を用いて、ポリスチレン換算値として測定した。測定の際、カラムとしてはHタイプカラム(東ソー社製)を用い、溶媒としてはテトラヒドロフランを用いた。また、測定時の温度は、40℃であった。
(重合体の水素化率の測定方法)
重合体の水素化率は、オルトジクロロベンゼン−dを溶媒として、145℃で、H−NMR測定により測定した。
(重合体のガラス転移温度Tg、融点Tm及び結晶化温度Tpcの測定方法)
窒素雰囲気下で300℃に加熱した試料を、液体窒素で急冷した。その後、示差走査熱量計(DSC)を用いて、10℃/分で昇温して、試料のガラス転移温度Tg、融点Tm及び結晶化温度Tpcをそれぞれ求めた。
(重合体のラセモ・ダイアッドの割合の測定方法)
オルトジクロロベンゼン−dを溶媒として、200℃で、inverse−gated decoupling法を適用して、重合体の13C−NMR測定を行った。この13C−NMR測定の結果において、オルトジクロロベンゼン−dの127.5ppmのピークを基準シフトとして、メソ・ダイアッド由来の43.35ppmのシグナルと、ラセモ・ダイアッド由来の43.43ppmのシグナルとを同定した。これらのシグナルの強度比に基づいて、重合体のラセモ・ダイアッドの割合を求めた。
(樹脂の結晶化度の測定方法)
樹脂の結晶化度は、JIS K0131に準じて、X線回折により確認した。具体的には、広角X線回折装置(リガク社製「RINT 2000」)を用いて、結晶化部分からの回析X線強度を求め、全体の回析X線強度との比から、下記式(I)によって結晶化度を求めた。
Xc=K・Ic/It (I)
上記式(I)において、Xcは試料の結晶化度、Icは結晶化部分からの回析X線強度、Itは全体の回析X線強度、Kは補正項を、それぞれ表す。
(TOF−SIMS分析の方法)
基材フィルムの表面について、TOF−SIMS(アルバック・ファイ社製「PHInanoTOF II」)により、分析を行った。分析の条件は、上述した測定条件を採用した。この分析では、基材フィルムの表面のエッチングを行いながら解析を進めることで、深さ方向の元素組成分布の情報を得た。また、前記の分析によれば、基材フィルムの深さ方向の各部分において、基材フィルムから放出される二次イオンの情報が得られた。
後述する実施例、比較例及び参考例では、酸素含有イオンに相当する二次イオンとして、C1523が検出された。これは、酸化防止剤(BASFジャパン社製「イルガノックス(登録商標)1010」)に由来するイオンである。
また、後述する実施例、比較例及び参考例では、酸素を含有しないイオンに相当する二次イオンとして、炭化水素イオンが検出された。これは、基材フィルムに含まれる酸化防止剤以外の重合体(ベースポリマー)に由来するイオンである。
酸素含有イオンの検出強度を、炭化水素イオンの検出強度の総計に対する百分率として規格化した。規格化して得られた情報に基づいて、基材フィルムから放出された全二次イオン(即ち、酸素含有イオン及び炭化水素イオンの合計)を100%とした場合の、酸素含有イオンの割合を、個数基準で計算した。
(ウレタン樹脂のガラス転移温度の測定方法)
ウレタン樹脂を含む塗工液を、テフロン(登録商標)加工を施された容器に流し入れ、常温で24時間乾燥させた。その後、120℃のオーブンで更に1時間乾燥し、厚み150μmのウレタン樹脂の層状物を用意した。この層状物のガラス転移温度を、動的粘弾性測定装置(ユービーエム社製「Rheogel−E4000」)を用いて、tanδのピークから測定した。この際、ピークが2つ出る場合は、温度が低い方のピークをガラス転移温度として採用した。
(液体の表面張力の測定方法)
塗工液等の液体の表面張力は、温度23℃、湿度65%の環境において、表面張力計(協和界面科学社製「Drop Master DM500」)を用いて懸滴法により測定した。具体的には、各実施例及び比較例で調製した塗工液を表面張力測定用液として、前記の表面張力計を使用した懸滴法により、上述した式(X)を用いて、塗工液の表面張力を求めた。
(フィルムに含まれる各層の厚みの測定方法)
フィルムを構成する各層の厚みは、次のようにして測定した。サンプルとなるフィルムの各層の屈折率を、エリプソメトリー(ウーラム社製「M−2000」)を用いて測定した。その後、測定した屈折率を用いて、厚みを、光干渉式膜厚計(大塚電子社製「MCPD−9800」)で測定した。
〔製造例1.ジシクロペンタジエンの開環重合体の水素化物の製造〕
金属製の耐圧反応器を、充分に乾燥した後、窒素置換した。この耐圧反応器に、シクロヘキサン154.5部、ジシクロペンタジエン(エンド体含有率99%以上)の濃度70%シクロヘキサン溶液42.8部(ジシクロペンタジエンの量として30部)、及び、1−ヘキセン1.9部を加え、53℃に加温した。
テトラクロロタングステンフェニルイミド(テトラヒドロフラン)錯体0.014部を0.70部のトルエンに溶解した溶液に、濃度19%のジエチルアルミニウムエトキシド/n−ヘキサン溶液0.061部を加えて10分間攪拌して、触媒溶液を調製した。
この触媒溶液を耐圧反応器に加えて、開環重合反応を開始した。その後、53℃を保ちながら4時間反応させて、ジシクロペンタジエンの開環重合体の溶液を得た。
得られたジシクロペンタジエンの開環重合体の数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、それぞれ、8750および28,100であり、これらから求められる分子量分布(Mw/Mn)は3.21であった。
得られたジシクロペンタジエンの開環重合体の溶液200部に、停止剤として1,2−エタンジオール0.037部を加えて、60℃に加温し、1時間攪拌して重合反応を停止させた。ここに、ハイドロタルサイト様化合物(協和化学工業社製「キョーワード(登録商標)2000」)を1部加えて、60℃に加温し、1時間攪拌した。その後、濾過助剤(昭和化学工業社製「ラヂオライト(登録商標)#1500」)を0.4部加え、PPプリーツカートリッジフィルター(ADVANTEC東洋社製「TCP−HX」)を用いて吸着剤と溶液とを濾別した。
濾過後のジシクロペンタジエンの開環重合体の溶液200部(重合体量30部)に、シクロヘキサン100部を加え、更にクロロヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム0.0043部を添加して、水素圧6MPa、180℃で4時間、水素化反応を行った。これにより、ジシクロペンタジエンの開環重合体の水素化物を含む反応液が得られた。この反応液は、水素化物が析出してスラリー溶液となっていた。
前記の反応液に含まれる水素化物と溶液とを、遠心分離器を用いて分離し、60℃で24時間減圧乾燥して、結晶性を有するジシクロペンタジエンの開環重合体の水素化物28.5部を得た。この水素化物の水素化率は99%以上、ガラス転移温度Tgは94℃、融点(Tm)は262℃、結晶化温度Tpcは170℃、ラセモ・ダイアッドの割合は89%であった。
[実施例1]
(1−1.基材フィルムの製造)
製造例1で得たジシクロペンタジエンの開環重合体の水素化物100部に、酸化防止剤(テトラキス〔メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン;BASFジャパン社製「イルガノックス(登録商標)1010」)0.5部を混合して、基材フィルムの材料となる結晶性樹脂Aを得た。
結晶性樹脂Aを、内径3mmΦのダイ穴を4つ備えた二軸押出機(東芝機械社製「TEM−37B」)に投入した。前記の二軸押出機による熱溶融押出成形によって、結晶性樹脂Aを、ストランド状の成形体に成形した。この成形体をストランドカッターにて細断して、結晶性樹脂Aのペレットを得た。
引き続き、得られたペレットを、Tダイを備える熱溶融押出フィルム成形機に供給した。このフィルム成形機のダイを通して結晶性樹脂Aをキャストロール上に押し出し、27m/分の速度でロールに巻き取る方法にて、長尺のフィルム(幅120mm)を製造した。前記のフィルム成形機の運転条件を、以下に示す。
・バレル温度設定:280℃〜290℃
・ダイ温度:270℃
・スクリュー回転数:30rpm
・キャストロール温度:70℃
これにより、長尺の結晶性樹脂Aのフィルムとして基材フィルムを得た。得られた基材フィルムの厚みは20μmであった。また、この基材フィルムに含まれる結晶性樹脂Aの結晶化度は、0.7%であった。
得られた基材フィルムに対してTOF−SIMS分析を行って、基材フィルムの表面から深さ2nm及び15nmの部分で検出される酸素含有イオンの割合Ib(2nm)及びIb(15nm)を測定した。測定の結果、深さ2nmの部分で検出された酸素含有イオンの割合Ib(2nm)は1%、深さ15nmの部分で検出された酸素含有イオンの割合Ib(15nm)は0.5%であった。
その後、基材フィルムに、温度90℃で30秒加熱する加熱処理を施した。
その後、加熱処理を施された基材フィルムに対してTOF−SIMS分析を行って、基材フィルムの表面から深さ2nm及び15nmの部分で検出される酸素含有イオンの割合Ia(2nm)及びIa(15nm)を測定した。測定の結果、深さ2nmの部分で検出された酸素含有イオンの割合Ia(2nm)は10%、深さ15nmの部分で検出された酸素含有イオンの割合Ia(15nm)は0.5%であった。
(1−2.塗工液の調製)
主成分としてのカーボネート系ポリウレタンの水分散体(ADEKA社製「アデカボンタイター SPX0672」、ガラス転移温度−16℃)をポリウレタンの量で100部と、架橋剤としての多官能性エポキシ化合物(ナガセケムテックス社製「デナコールEX521」)2.7部と、溶媒としてエタノール及びイオン交換水と、を配合して、ウレタン樹脂を含む塗工液を得た。エタノールの量は、塗工液の総量100重量%に対して、エタノールの量が10重量%となるように設定した。また、イオン交換水の量は、塗工液に含まれる固形分としてのポリウレタン及び架橋剤の合計濃度が10%となるように設定した。得られた塗工液の表面張力は、42mN/mであった。
(1−3.基材フィルムへの塗工液の塗工及び乾燥)
コロナ処理装置(春日電機社製)を用いて、出力500W、電極長1.35m、搬送速度15m/minの条件で、加熱処理を施される前の基材フィルムの表面に放電処理を施した。
このような放電処理を施された基材フィルムの表面に、塗工液を、ロールコーターを用いて塗工した。塗工厚みは、乾燥後の厚みが所望の値となるよう調整した。これにより、基材フィルム上に、塗工液の層が形成された(第一工程)。
続いて、基材フィルム上の塗工液の層を、乾燥させた(第二工程)。乾燥は、乾燥温度90℃、乾燥時間120秒の乾燥条件で行った。この乾燥により、基材フィルム上に易接着層としてのウレタン樹脂の層が形成されて、基材フィルム及び易接着層を備える長尺の中間フィルムを得た。得られた中間フィルムにおける易接着層の厚みは、200nmであった。
(1−4.基材フィルムが含む樹脂の結晶化)
前記の長尺の中間フィルムを切り出し、350mm×350mmの正方形のフィルム片を得た。この切り出しは、切り出されたフィルム片の正方形の各端辺が長尺の中間フィルムの長手方向又は幅方向に平行になるように行った。そして、切り出されたフィルム片を、その両面がいずれも水平となるように、小型延伸機(東洋精機製作所社製「EX10―Bタイプ」)に設置した。この小型延伸機は、フィルム片の四つの端辺を把持しうる複数のクリップを備え、このクリップでフィルム片を把持することによってフィルム片が収縮しないように保持できる構造を有している。
小型延伸機に設置したフィルム片を加熱して結晶化を進行させる結晶化処理を施した。この処理は、フィルム片の四つの端辺を保持した状態で、小型延伸機に付属する二次加熱板をフィルム片の上側の面及び下側の面に近接させ、30秒間保持することによって行った。このとき、二次加熱板の温度は170℃とし、フィルム片と二次加熱板との距離は上下各々8mmとした。これにより、ジシクロペンタジエンの開環重合体の水素化物の結晶化が進行して、フィルム片の基材フィルムに含まれる結晶性樹脂の結晶化度が上昇した。この結晶性樹脂の結晶化度を測定したところ、71%であった。
以上のようにして、高い結晶化度を有する結晶性樹脂で形成された基材フィルムと、この基材フィルム上に形成された易接着層とを備える積層体としての光学フィルムを得た。
得られた光学フィルムの易接着層側の表面を目視で観察したところ、面状に欠陥は見られず、表面は平滑であったので、易接着層は基材フィルム上に均一に形成できたことが確認された。
[実施例2]
前記の工程(1−2)において、エタノールの量を、塗工液の総量100重量%に対して40重量%に変更した。
以上の事項以外は、実施例1と同じ方法により、積層体としての光学フィルムの製造を行った。実施例2で用いた塗工液の表面張力は37mN/mであった。また、得られた光学フィルムの易接着層側の表面を目視で観察したところ、面状に欠陥は見られず、表面は平滑であったので、易接着層は基材フィルム上に均一に形成できたことが確認された。
[実施例3]
主成分としてのカーボネート系ポリウレタンの水分散体(ADEKA社製「アデカボンタイター SPX0672」、ガラス転移温度−16℃)をポリウレタンの量で100部と、架橋剤としての多官能性エポキシ化合物(ナガセケムテックス社製「デナコールEX521」)2.7部と、界面活性剤としてのアセチレングリコール(日信化学工業社製「サーフィノール440」)と、溶媒としてイオン交換水とを配合して、ウレタン樹脂を含む塗工液を得た。界面活性剤の量は、塗工液の水分合計量100重量%に対して、界面活性剤の量が0.3重量%となるように設定した。この操作において「水分合計量」とは、ポリウレタンの水分散体中に含まれていた水と、添加したイオン交換水との合計量である。また、イオン交換水の量は、塗工液に含まれる固形分としてのポリウレタン、架橋剤及び界面活性剤の合計濃度が10%となるように設定した。得られた塗工液の表面張力は、34mN/mであった。
実施例1で調製した塗工液の代わりに、実施例3で調製した前記の塗工液を用いたこと以外は、実施例1と同じ方法により、積層体としての光学フィルムの製造を行った。得られた光学フィルムの易接着層側の表面を目視で観察したところ、面状に欠陥は見られず、表面は平滑であったので、易接着層は基材フィルム上に均一に形成できたことが確認された。
[実施例4]
界面活性剤としてのアセチレングリコール(日信化学工業社製「サーフィノール440」)の量を、水分合計量100重量%に対して0.5重量%に変更した。以上の事項以外は、実施例3と同じ方法により、積層体としての光学フィルムの製造を行った。実施例4で用いた塗工液の表面張力は31mN/mであった。また、得られた光学フィルムの易接着層側の表面を目視で観察したところ、面状に欠陥は見られず、表面は平滑であったので、易接着層は基材フィルム上に均一に形成できたことが確認された。
[比較例1]
界面活性剤としてのアセチレングリコール(日信化学工業社製「サーフィノール440」)の量を、水分合計量100重量%に対して0.18重量%に変更した。以上の事項以外は、実施例3と同じ方法により、積層体としての光学フィルムの製造を行った。比較例1で用いた塗工液の表面張力は43mN/mであった。また、光学フィルムの易接着層側の表面を目視で観察したところ、斑状の欠陥が発生しており、表面が平滑でなかったので、易接着層を均一に形成できなかったことが確認された。
[比較例2]
界面活性剤としてのアセチレングリコール(日信化学工業社製「サーフィノール440」)を使用しなかった。以上の事項以外は、実施例3と同じ方法により、積層体としての光学フィルムの製造を行った。比較例2で用いた塗工液の表面張力は48mN/mであった。また、光学フィルムの易接着層側の表面を目視で観察したところ、斑状の欠陥が発生しており、表面が平滑でなかったので、易接着層を均一に形成できなかったことが確認された。
[参考例1]
非晶性のシクロオレフィン樹脂フィルム(日本ゼオン社製「ZF16」、ガラス転移温度Tg=163℃)を用意した。
このシクロオレフィン樹脂フィルムに、温度160℃で30秒加熱する加熱処理を施した。加熱処理を施されたシクロオレフィン樹脂フィルムに対してTOF−SIMS分析を行って、フィルムの表面から深さ2nm及び15nmの部分で検出される酸素含有イオンの割合Ia(2nm)及びIa(15nm)を測定した。測定の結果、深さ2nmの部分で検出された酸素含有イオンの割合Ia(2nm)は1%、深さ15nmの部分で検出された酸素含有イオンの割合Ia(15nm)は0.5%であった。
加熱処理を施される前の前記シクロオレフィン樹脂フィルムを基材フィルムの代わりに用いたこと以外は、比較例1と同じ方法により、積層体としての光学フィルムの製造を行った。得られた光学フィルムの易接着層側の表面を目視で観察したところ、面状に欠陥は見られず、表面は平滑であったので、易接着層は基材フィルム上に均一に形成できたことが確認された。
[結果]
前記の実施例、比較例及び参考例の結果を、下記の表に示す。以下の説明において、略称の意味は、下記の通りである。
A:結晶性樹脂Aのフィルム。
ZF:非晶性のシクロオレフィン樹脂フィルム。
Figure 2020195940
11 細管
22 液滴

Claims (6)

  1. ガラス転移温度Tgを有する重合体を含む樹脂で形成された基材の表面に、42mN/m以下の表面張力を有する塗工液を塗工して、前記塗工液の層を形成する第一工程と、
    前記塗工液の層を乾燥させる第二工程と、を含み、
    前記基材に、Tg−4℃〜Tg−3℃の温度で30秒加熱する加熱処理を施した後で、前記基材にTOF−SIMS分析を行った場合に、前記表面から深さ2nm及び深さ15nmの部分で検出される全二次イオンに対する酸素含有イオンの割合Ia(2nm)及びIa(15nm)が、下記式(1)及び(2):
    Ia(2nm)≧3% (1)
    Ia(2nm)>Ia(15nm) (2)
    を満たす、積層体の製造方法。
  2. 前記塗工液が、ポリウレタンを含む、請求項1に記載の積層体の製造方法。
  3. 第二工程における乾燥温度が、Tg−10℃以上、Tg+10℃以下である、請求項1又は2に記載の積層体の製造方法。
  4. 前記重合体が、脂環式構造を含有し結晶性を有する重合体である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の積層体の製造方法。
  5. 前記Ia(15nm)が、下記式(3):
    Ia(15nm)≦1% (3)
    を満たす、請求項1〜4のいずれか一項に記載の積層体の製造方法。
  6. 前記基材に前記加熱処理を施す前に、前記基材にTOF−SIMS分析を行った場合に、前記表面から深さ2nmの部分で検出される全二次イオンに対する酸素含有イオンの割合Ib(2nm)、及び、前記Ia(2nm)が、下記式(4):
    Ia(2nm)>Ib(2nm) (4)
    を満たす、請求項1〜5のいずれか一項に記載の積層体の製造方法。
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