JP2020194820A - 半導体装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】耐久性に優れた半導体装置の提供。【解決手段】半導体装置100は、素子形成面8に配線パターン4が形成された2以上の半導体基板(2a、2b)を含んでいる。各半導体基板(2a、2b)は、それぞれ、素子形成面8を同一方向にむけて積層されている。この半導体装置100は、各素子形成面8が、ビアホール10に形成された貫通電極12により信号伝達可能に構成されている。各半導体基板(2a、2b)の間には接着剤層8が形成されている。接着剤層8は、少なくとも1層の熱硬化性樹脂層を含んで形成されている。熱硬化性樹脂層は、熱硬化性樹脂と熱硬化剤とを含む。熱硬化性樹脂は、少なくとも1種のエポキシ化合物を含む。直径100mm、厚さ2.5μmに形成した前記熱硬化性樹脂層を、110℃の熱水20mlに24時間浸漬したときに溶出する硫黄溶出量は1ppm未満である【選択図】図1

Description

本発明は、半導体装置に関する。詳細には、本発明は、複数の半導体基板を含む積層構造を有する半導体装置に関する。
電子機器の小型軽量化、大容量化が進行するに伴い、半導体チップを高集積することが求められている。しかし、回路の微細化ではその要求に十分に応えることは困難となった。そこで、近年、複数枚の半導体チップを縦に積層することにより高集積化することが行われている。そのような技術の一つとして、いわゆるWOW(Wafer on Wafer)プロセスが知られている。
WOWプロセスでは、ウエハを他のウエハに対して接着剤層を介して接合して積層する工程と、この積層ウエハに対する各種加工工程と、を含む一連の工程が、所定の回数、繰り返される。所定回数繰り返して得られるウエハ積層体を、厚さ方向に一括に切断することにより、複数の半導体チップが積層された構造を有する半導体デバイスに個片化される。
詳細には、WOWプロセスにおいて、複数の半導体基板(ウエハとも称する)の素子形成面に、それぞれ、半導体集積回路を有する複数の半導体チップを形成した後、これら複数の半導体基板の全てを、素子形成面が同一方向を向くように積層し、次いで、各半導体基板に含まれる半導体チップ同士を、信号伝達可能に接続し、最後に半導体チップ毎に切断することにより、個片化された半導体デバイスが得られる。
このように縦(厚み方向)に積層することにより高集積化する場合、小型軽量化の観点から、各ウエハの半導体チップが形成されていない面が研磨され、ウエハが薄化される。薄化されたウエハは、厚いベースウェハ、或いは、すでにベースウェハ上に積層された他の薄化されたウエハに、接着剤層を介して積層される。
複数の薄化ウエハが積層されてなるウエハ積層体において、異なるウエハ上に形成された半導体チップ間を電気的に接続するために、各ウエハを貫通する貫通電極(ビア)が形成される。ウエハ積層体に貫通電極を形成する方法として、ビアファースト、ビアミドル、ビアラスト法等が挙げられる。工程数の少ないビアラスト法において、各ウエハを貫通する貫通孔(ビアホール)と、ウエハ上の配線に、銅を一度に埋め込んで配線層を形成する方法(デュアルダマシン法)が知られている。
一方で、銅は化学安定性が低いため、硫化物によって半導体チップ上の銅配線の腐食が進み易いという問題がある。配線の腐食は、製品としての信頼性に悪影響を及ぼす。例えば、熱硬化性エポキシ樹脂組成物を用いて樹脂封止された半導体装置では、熱硬化性エポキシ樹脂組成物に熱安定性を付与する目的で添加される、酸化防止剤のチオール化合物が、樹脂中の酸化還元反応を受けて硫黄化合物、例えば二酸化硫黄や硫化水素等の硫化物に変化し、この硫化物が半導体装置の信頼性に悪影響を及ぼすことが知られている。
特許文献1には、高温高湿信頼性の不良原因となる硫化物を捕捉するために、ハイドロタルサイト類化合物、又はビスマス水酸化物、ビスマス酸化物、アルミニウム水酸化物及びアルミニウム酸化物を配合したエポキシ樹脂組成物を用いて、半導体素子を封止してなる半導体装置が提案されている。特許文献2及び3には、エポキシ樹脂組成物に無機イオン捕捉剤(合成ハイドロタルサイト)を配合する技術が開示されている。
特開平11−240937号公報 特開平9−157497号公報 特開平9−169830号公報
前述したWOWプロセスにおいて、熱硬化性樹脂組成物は接着剤層の形成にも用いられている。高温高湿下で、熱硬化性樹脂組成物に含まれる硫化物が拡散すると、銅配線を腐食する可能性がある。しかしながら、特許文献1−3に開示された硫化物捕捉剤は、サブミクロンから数十μmの粒子であるため、数μm程度の厚みの接着剤層の形成に用いることは好ましくない。さらに、通常、直径数十μm以下の貫通孔が形成される接着剤層の形成に用いることは、好ましくない。
従来、数μm程度の厚みの接着剤層をなす熱硬化性樹脂組成物に起因する銅配線の腐食の問題は着目されておらず、その解決方法も未だ提案されていない。さらに、熱硬化性樹脂組成物中の硫化物による影響については、未だ検討の余地がある。本発明の目的は、耐久性に優れた半導体装置の提供にある。
本発明者らは鋭意検討した結果、熱硬化性樹脂組成物を用いて得られる接着剤層を含む半導体装置において、所定の溶出試験で得られる、この熱硬化性樹脂組成物の硬化物の硫黄溶出量低減が、銅配線の腐食抑制に寄与しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明に係る半導体装置は、素子形成面に配線パターンが形成された2以上の半導体基板が、それぞれ、素子形成面を同一方向に向けて積層されており、各素子形成面が、ビアホールを介して形成された貫通電極によって信号伝達可能に構成されている。各半導体基板の間には接着剤層が形成されている。この接着剤層は、少なくとも1層の熱硬化性樹脂層を含んで形成されている。熱硬化性樹脂層は、熱硬化性樹脂と熱硬化剤とを含む。この熱硬化性樹脂層は、少なくとも1種のエポキシ化合物を含んでいる。この熱硬化性樹脂層を、直径100mm、厚さ2.5μmに形成し、110℃の熱水20mlに24時間浸漬したとき、溶出する硫黄溶出量は、熱硬化性樹脂層の質量の1ppm未満である。
好ましくは、エポキシ化合物は、下記式(1a)

[式(1a)中、R1aは、直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基を示す。]で表される基、下記式(1b)

[式(1b)中、R1bは、直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基を示す。]で表される基、下記式(1c)

[式(1c)中、R1cは、直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基を示す。]で表される基、及び、下記式(1d)

[式(1d)中、R1dは、直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基を示す。]で表される基からなる群から選択される1種以上の基を含む。
好ましくは、各接着剤層の厚さは0.5μm以上4.5μm以下である。
好ましくは、p型シリコンウエハ上に、厚さ0.2μmの熱硬化性樹脂層を形成した後、電圧0.5MV/cmをかけたときに測定される電流値は、1×10−7A/cm以下である。
好ましくは、各半導体基板の厚さは1μm以上20μm以下である。好ましくは、貫通電極の直径は1μm以上20μm以下である。
本発明に係る半導体装置では、接着剤層をなす熱硬化性樹脂組成物に起因する銅配線の腐食が抑制される。この半導体装置は、耐久性に優れる。
図1は、本発明の一実施形態に係る半導体装置の断面が示された模式図である。 図2は、実施例のウエハ積層膜(I’)の抵抗値測定結果を示すグラフである。
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。なお、本願明細書において、「半導体装置」は、WOWプロセスにおいて、個片化前のウエハ積層体及び個片化後のウエハ積層体を含む概念である。特に言及されない限り、「ppm」は「質量ppm」であり、「X〜Y」は「X以上Y以下」の意味である。
図1に示された半導体装置100は、その厚み方向に積層された2以上の半導体基板2と、2以上の貫通電極6と、2以上の接着剤層8と、を備えている。各半導体基板2の一方の面は、素子形成面4である。素子形成面4には、配線パターン(図示されず)が形成されている。この半導体装置100では、2以上の半導体基板2が、それぞれ、素子形成面4を、同一方向に向けて積層されている。なお、素子形成面4とは、半導体素子が作り込まれ、かつこの素子上に所謂再配線層(配線パターン)が形成された面を意味する。本願明細書では、素子形成面4を「主面」と称し、半導体基板2において、主面とは反対の面を「裏面」と称する場合がある。
貫通電極6は、異なる素子形成面4に形成された半導体素子間を電気的に接続するためのものであり、後述する製造方法にて説明する通り、ビアホールを介して形成される。図示される通り、この実施形態では、複数の貫通電極6が、それぞれ、半導体装置100における積層方向の一端に位置する半導体基板2の素子形成面4から、他端に位置する半導体基板2の素子形成面4に至るまで、この半導体装置100の内部を貫通して延びている。即ち、この半導体装置100では、各素子形成面4が、ビアホールを介して形成された複数の貫通電極6により、信号伝達可能に構成されている。
一の半導体基板2と、これに対向する他の半導体基板2の間には、それぞれ、接着剤層8が形成されている。詳細には、各接着剤層8は、一の半導体基板2の素子形成面4と、これに対向する他の半導体基板2の裏面とを接合している。
接着剤層8は、少なくとも1層の熱硬化性樹脂層を含んで形成されたものである。接着剤層8は、1層の熱硬化性樹脂層から形成されてもよく、2以上の熱硬化性樹脂層から形成されてもよい。2以上の熱硬化性樹脂層が、同じ種類の熱硬化性樹脂層であってもよく、異なる種類の熱硬化性樹脂層であってもよい。本発明の効果が阻害されない限り、接着剤層8は、熱硬化性樹脂層以外の他の層を含みうる。
熱硬化性樹脂層は、後述する製造方法にて説明する通り、熱硬化性樹脂組成物を半導体基板2に塗布した熱硬化性樹脂組成物層を熱硬化することにより得られる。熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂と熱硬化剤とを含んでいる。
本発明に係る半導体装置100では、熱硬化性樹脂層を直径100mm、厚さ2.5μmに形成して、110℃の熱水20mlに24時間浸漬したときに溶出する硫黄溶出量が、熱硬化性樹脂層の質量の1ppm未満である。本発明者等は、鋭意検討の結果、接着剤層8を形成する熱硬化性樹脂層に含まれ、かつ系外に移動可能な硫黄が、得られる半導体装置100における銅配線の腐食の原因となることを見出した。そして、前述の溶出試験で得られる硫黄溶出量が、銅配線の腐食原因である移動可能な硫黄量の指標となりうることを見出した。なお、上述の系外に移動可能な硫黄としては、原料由来で混入したものであってもよく、また、製造工程において混入したものであってもよい。本発明に係る半導体装置100では、前述の溶出試験で得られる硫黄溶出量が1ppm未満である熱硬化性樹脂層を含んで形成された接着剤層8を備えることにより、保管時及び/又は使用時の銅配線の腐食抑制という効果が得られる。この半導体装置100は、耐久性に優れている。
接着剤層8をなす熱硬化性樹脂は、少なくとも1種のエポキシ化合物を含む。エポキシ化合物は、分子内に少なくとも1つのエポキシ基を含有する。本発明における熱硬化性樹脂は、分子内にエポキシ基を少なくとも有するカチオン硬化性化合物(カチオン重合性化合物)である。
好ましくは、このエポキシ化合物は、下記式(1a)−式(1d)で示される基からなる群から選択される1種以上の基を含む。下記式(1a)−式(1d)で示される基は、いずれもエポキシ基含有基である。硬化性組成物の硬化性、硬化物の耐熱性の観点で、下記式(1a)及び/又は下記式(1c)で表される基がより好ましく、下記式(1a)で表される基がさらに好ましい。

式(1a)中、R1aは、直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基であり、好ましくは、炭素数1〜10の直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基であり、より好ましくは、炭素数1〜4の直鎖状のアルキレン基並びに炭素数3又は4の分岐鎖状のアルキレン基であり、さらに好ましくはエチレン基、トリメチレン基及びプロピレン基であり、特に好ましくは、エチレン基及びトリメチレン基である。

式(1b)中、R1bは、直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基であり、好ましくは、炭素数1〜10の直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基であり、より好ましくは、炭素数1〜4の直鎖状のアルキレン基並びに炭素数3又は4の分岐鎖状のアルキレン基であり、さらに好ましくはエチレン基、トリメチレン基及びプロピレン基であり、特に好ましくは、エチレン基及びトリメチレン基である。

式(1c)中、R1cは、直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基であり、好ましくは、炭素数1〜4の直鎖状のアルキレン基並びに炭素数3又は4の分岐鎖状のアルキレン基であり、より好ましくはエチレン基、トリメチレン基及びプロピレン基であり、さらに好ましくは、エチレン基及びトリメチレン基である。

式(1d)中、R1dは、直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基であり、好ましくは、炭素数1〜4の直鎖状のアルキレン基並びに炭素数3又は4の分岐鎖状のアルキレン基であり、より好ましくは、エチレン基、トリメチレン基及びプロピレン基であり、さらに好ましくはエチレン基及びトリメチレン基である。
最も好ましいエポキシ化合物は、式(1a)で示される基であって、R1aがエチレン基である基[中でも、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基]を含む。
式(1a)−式(1d)で示される基からなる群から選択される1種以上の基を含むエポキシ化合物の例として、下記式(1)及び式(2)で示される構成単位を有する化合物が挙げられる。
[RSiO3/2] (1)
[RSiO2/2(OR2)] (2)
式(1)及び式(2)中、R1が、式(1a)−(1d)で示される群から選択されるエポキシ含有基である。式(2)中、R2は、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基である。
式(1)及び式(2)は、所謂シロキサン構成単位におけるT単位に属する。これら構成単位を有する化合物の例として、ポリオルガノシルセスキオキサンが挙げられる。ポリオルガノシルセスキオキサンは、重合性官能基としてエポキシ基を含む。ポリオルガノシルセスキオキサンが、式(1)で示される構成単位を2種以上含んでもよく、式(2)で示される構成単位を2種以上含んでもよい。ポリオルガノシルセスキオキサンは、カゴ型、不完全カゴ型、ラダー型、ランダム型のいずれのシルセスキオキサン構造を有していてもよく、これらシルセスキオキサン構造の2以上が組み合わせられた構造を有していてもよい。
式(1a)−(1d)で示される群から選択されるエポキシ含有基を重合性官能基として含むポリオルガノシルセスキオキサンは、形成される接着剤層8において高い耐熱性を実現するとともに、接着剤層8の形成のための硬化温度の低下を図って被着体たる半導体基板2内の素子へのダメージを抑制する。この観点から、熱硬化性樹脂組成物におけるポリオルガノシルセスキオキサンの含有割合は、例えば70質量%以上であり、好ましくは80〜99.8質量%、より好ましくは90〜99.5質量%である。
本発明の効果が阻害されない限り、エポキシ化合物が、下記式(3)で示される構成単位を有してもよい。
[R3SiO3/2] (3)
式(3)中、R3は、(メタ)アクリロイルオキシ基である。
また、エポキシ化合物が、式(1)で示される構成単位に加えて、下記式(4)で示される構成単位をさらに含んでもよい。
[R4SiO3/2] (4)
式(4)中、R4は、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、又は、置換もしくは無置換のアラルキル基を表す。R4は、好ましくは、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルケニル基、又は置換もしくは無置換のアリール基である。
4のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、イソプロピル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、及びイソペンチル基が挙げられる。R4のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、及びイソプロペニル基が挙げられる。R4のシクロアルキル基としては、例えば、シクロブチル基、シクロペンチル基、及びシクロヘキシル基が挙げられる。R4のアリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、及びナフチル基が挙げられる。R4のアラルキル基としては、例えば、ベンジル基及びフェネチル基が挙げられる。特に好ましいR4は、フェニル基である。
4のアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基及びアラルキル基の置換基としては、例えば、エーテル基、エステル基、カルボニル基、シロキサン基、フッ素原子などハロゲン原子、アクリル基、メタクリル基、メルカプト基、アミノ基、及び水酸基が挙げられる。
エポキシ化合物が、式(2)で示される構成単位に加えて、下記式(5)で示される構成単位をさらに含んでもよい。
[R4SiO2/2(OR2)] (5)
式(5)中、R4は、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、又は、置換もしくは無置換のアラルキル基を表す。具体的には式(4)におけるR4と同様である。式(5)におけるR2は、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。具体的には上記式(2)におけるR2と同様である。
エポキシ化合物が、式(1)及び式(2)で示されるT単位である構成単位に加えて、M単位である構成単位[R6SiO1/2]、D単位である構成単位[R7SiO2/2]、及びQ単位である構成単位[SiO4/2]からなる群から選択される少なくとも1種を含んでもよい。
ここで、式(1)で表される構成単位をより詳細に記載すると、下記式(I)で表される。式(I)で表される構造中に示されるケイ素原子に結合した3つの酸素原子は、それぞれ、他のケイ素原子(式(I)に示されていないケイ素原子)と結合している。
また、式(2)で表される構成単位をより詳細に記載すると、下記式(II)で表される。式(II)で表される構造中に示されるケイ素原子の上と下に位置する2つの酸素原子は、それぞれ、他のケイ素原子(式(II)に示されていないケイ素原子)に結合している。
なお、式(I)中のRa及び式(II)中のRbは、それぞれ、式(1)及び式(2)におけるR1と同様であり、式(II)中のRcは、式(2)におけるR2と同様である。
熱硬化性樹脂に含まれるエポキシ化合物が、前述したポリオルガノシルセスキオキサンである場合、その数平均分子量(Mn)は、好ましくは1000〜50000であり、より好ましくは1500〜10000、より好ましくは2000〜8000、より好ましくは2000〜7000である。数平均分子量を1000以上とすることにより、得られる接着剤層8の絶縁性、塗布性、接着性等が向上する。一方、数平均分子量を50000以下とすることにより、接着剤中の重合性基含有ポリオルガノシルセスキオキサンと他成分との相溶性が向上し、接着剤層8の絶縁性、耐熱性、耐クラック性等が向上する。
熱硬化性樹脂に含まれるエポキシ化合物が、前述したポリオルガノシルセスキオキサンである場合、その分子量分散度(Mw/Mn)は、好ましくは1.0〜4.0であり、より好ましくは1.1〜3.0、より好ましくは1.2〜2.7である。分子量分散度を4.0以下とすることにより、接着剤層8の耐熱性、耐クラック性、接着性等がより向上する。一方、分子量分散度を1.0以上とすることにより、ポリオルガノシルセスキオキサンを含む熱硬化性樹脂組成物が液状となりやすく、その取り扱い性が向上する。
ポリオルガノシルセスキオキサンの数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン換算として得られる。ポリオルガノシルセスキオキサンの数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、例えば、HPLC装置(商品名「LC-20AD」、株式会社島津製作所製)を使用して下記の条件により測定することができる。
カラム:2本のShodex KF−801(上流側、昭和電工株式会社製)、1本のShodex KF−802(昭和電工株式会社製)及び1本のShodex KF−803(下流側、昭和電工株式会社製)を、直列に接続
測定温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
試料濃度:0.1〜0.2質量%
流量:1mL/分
標準物質:ポリスチレン
検出器:UV−VIS検出器(商品名「SPD-20A」、株式会社島津製作所製)
前述した溶出試験における硫黄溶出量が1ppm未満の熱硬化性樹脂層の形成が可能であれば、この熱硬化性樹脂に含まれるエポキシ化合物の製造方法は、特に限定されない。例えば、エポキシ化合物が前述したポリオルガノシルセスキオキサンである場合、このエポキシ化合物は、加水分解性の三つの官能基を有するシラン化合物の加水分解と、これに続く縮合反応によって製造することができる。
ポリオルガノシルセスキオキサンの製造に用いられる原料は、下記式(a)で表される加水分解性シラン化合物を少なくとも含み、下記式(b)で表される加水分解性シラン化合物を必要に応じて含む。式(a)で表される化合物は、式(1)で表される構成単位と式(2)で表される構成単位と、を形成するためのものである。式(b)で表される化合物は、式(4)で表される構成単位と式(5)で表される構成単位と、を形成するためのものである。
1SiX1 3 (a)
4SiX2 3 (b)
式(a)におけるR1は、重合性基(エポキシ基)を含有する基を表し、具体的には上記式(1)及び式(2)におけるR1と同様である。式(a)におけるX1は、アルコキシ基又はハロゲン原子を表す。そのアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基、イソブチルオキシ基など炭素数1〜4のアルコキシ基が挙げられる。X1としてのハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられる。X1は、好ましくはアルコキシ基であり、より好ましくはメトキシ基又はエトキシ基である。式(a)において、三つのX1は互いに同じであってもよいし異なってもよい。
式(b)におけるR4は、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のアラルキル基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基、置換もしくは無置換のアルキル基、又は、置換もしくは無置換のアルケニル基を表し、具体的には上記式(4)及び式(5)におけるR4と同様である。式(b)におけるX2は、アルコキシ基又はハロゲン原子を表し、具体的には上記式(a)におけるX1と同様である。
ポリオルガノシルセスキオキサンの製造に用いられる原料は、さらに他の加水分解性シラン化合物を含んでもよい。そのような化合物としては、例えば、上記式(a)又は(b)で表される化合物以外の、加水分解性三官能シラン化合物、M単位を形成することとなる加水分解性単官能シラン化合物、D単位を形成することとなる加水分解性二官能シラン化合物、及び、Q単位を形成する加水分解性四官能シラン化合物が挙げられる。
各種加水分解性シラン化合物の使用量や組成は、得られるポリオルガノシルセスキオキサンの構造に応じて適宜に調整される。例えば、上記式(a)で表される化合物の使用量は、使用する加水分解性シラン化合物全量に対して、例えば55〜100モル%、好ましくは65〜100モル%である。上記式(b)で表される化合物の使用量は、使用する加水分解性シラン化合物全量に対して、例えば0〜70モル%である。使用する加水分解性シラン化合物全量に対する、式(a)で表される化合物と式(b)で表される化合物との総使用量は、例えば60〜100モル%、好ましくは70〜100モル%、より好ましくは80〜100モル%である。
前述した各種シラン化合物の加水分解及び縮合反応は、好ましくは、1種又は2種以上の溶媒の存在下で行われる。好ましい溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、及び、アセトンや、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類が挙げられる。溶媒の使用量は、加水分解性シラン化合物100質量部あたり、例えば2000質量部以下の範囲内で反応時間等に応じて適宜に調整される。
各種シラン化合物の加水分解及び縮合反応は、好ましくは、一種類の又は二種類以上の触媒及び水の存在下で進行される。触媒は、酸触媒であってもよいし、アルカリ触媒であってもよい。触媒の使用量は、加水分解性シラン化合物1モルあたり例えば0.002〜0.2モルの範囲内で適宜に調整される。水の使用量は、加水分解性シラン化合物1モルあたり例えば0.5〜20モルの範囲内で適宜に調整される。
各種シラン化合物の加水分解及び縮合反応は、1段階で行ってもよいし、2段階以上に分けて行ってもよい。例えば、第1段目の加水分解及び縮合反応の反応温度は、40〜100℃が好ましく、45〜80℃がより好ましい。第1段目の加水分解及び縮合反応の反応時間は、例えば0.1〜10時間が好ましく、1.5〜8時間がより好ましい。第2段目の加水分解及び縮合反応の反応温度は、5〜200℃が好ましく、30〜100℃がより好ましい。第2段目の加水分解及び縮合反応の反応時間は、特に限定されないが、0.5〜1000時間が好ましく、1〜500時間がより好ましい。第1段目及び第2段目で反応温度を所定範囲内とすることにより、得られるポリオルガノシルセスキオキサンの数平均分子量をより効率的に所望の範囲に制御できる。シラン化合物の加水分解及び縮合反応は、常圧下、加圧下又は減圧下で行うことができる。好ましくは、シラン化合物の加水分解及び縮合反応は、窒素やアルゴン等不活性ガスの雰囲気下で行われる。
以上のような加水分解性シラン化合物の加水分解及び縮合反応により、エポキシ基含有ポリオルガノシルセスキオキサンが得られる。反応終了後には、好ましくは、重合性基の開環を抑制するための触媒の中和を行う。好ましくは、エポキシ基含有ポリオルガノシルセスキオキサンは、水洗浄、酸洗浄、アルカリ洗浄、濾過、濃縮、蒸留、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィー等の分離手段や、これらを組み合わせた分離手段により分離精製される。不純物の混入を回避する観点から、好ましい分離精製方法、塩を含まない水洗浄である。
接着剤層8を形成するための熱硬化性樹脂組成物が、前述したエポキシ化合物(例えば、エポキシ基含有ポリオルガノシルセスキオキサン)に加えて、1種又は2種以上の他のエポキシ化合物を含んでもよい。
エポキシ基含有ポリオルガノシルセスキオキサン以外のエポキシ化合物としては、例えば、脂環式エポキシ化合物(脂環式エポキシ樹脂)、芳香族エポキシ化合物(芳香族エポキシ樹脂)、脂肪族エポキシ化合物(脂肪族エポキシ樹脂)等が挙げられる。
脂環式エポキシ化合物としては、分子内に1個以上の脂環と1個以上のエポキシ基とを有する既知の化合物が挙げられ、特に限定されないが、例えば、(1)分子内に脂環を構成する隣接する2つの炭素原子と酸素原子とで構成されるエポキシ基(「脂環エポキシ基」と称する)を有する化合物;(2)脂環にエポキシ基が直接単結合で結合している化合物;(3)分子内に脂環及びグリシジルエーテル基を有する化合物(グリシジルエーテル型エポキシ化合物)等が挙げられる。
分子内に脂環エポキシ基を有する化合物(1)としては、下記式(i)で表される化合物が挙げられる。

式(i)中、Yは単結合又は連結基(1以上の原子を有する二価の基)を示す。この連結基としては、例えば、二価の炭化水素基、炭素−炭素二重結合の一部又は全部がエポキシ化されたアルケニレン基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、カーボネート基、アミド基、これらが複数個連結した基等が挙げられる。
式(i)で表される脂環式エポキシ化合物の代表的な例としては、3,4,3’,4’−ジエポキシビシクロヘキサン、下記式(i−1)〜(i−10)で表される化合物等が挙げられる。なお、下記式(i−5)及び(i−7)中のl、mは、それぞれ1〜30の整数を表す。下記式(i−5)中のR’は炭素数1〜8のアルキレン基であり、好ましくは、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基等の炭素数1〜3の直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基である。下記式(i−9)及び(i−10)中のn1〜n6は、それぞれ1〜30の整数を示す。また、式(i)で表される脂環式エポキシ化合物の具体例として、2,2−ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロパン、1,2−ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)エタン、2,3−ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)オキシラン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル等が挙げられる。

脂環にエポキシ基が直接単結合で結合している化合物(2)としては、例えば、下記式(ii)で表される化合物等が挙げられる。

式(ii)中、R"は、p価のアルコールの構造式からp個の水酸基(−OH)を除いた基(p価の有機基)であり、p、nはそれぞれ自然数を表す。p価のアルコール[R"(OH)p]としては、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノール等の多価アルコール(炭素数1〜15のアルコール等)等が挙げられる。pは1〜6が好ましく、nは1〜30が好ましい。pが2以上の場合、それぞれの括弧内(外側の括弧内)の基におけるnは同一でもよく異なっていてもよい。式(ii)で表される化合物の具体例としては、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロヘキサン付加物等が挙げられる。
芳香族エポキシ化合物としては、例えば、エピビスタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ノボラック・アルキルタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂等が挙げられる。脂肪族エポキシ化合物としては、例えば、環状構造を有しないq価のアルコール(qは自然数である)のグリシジルエーテル、一価カルボン酸又は多価カルボン酸のグリシジルエステル、二重結合を有する油脂のエポキシ化物等が挙げられる。二重結合を有する油脂のエポキシ化物としては、例えば、エポキシ化亜麻仁油、エポキシ化大豆油、及びエポキシ化ひまし油が挙げられる。
接着剤層8を形成するための熱硬化性樹脂組成物が、さらに、1種又は2種以上の他の硬化性化合物を含んでもよい。この硬化性化合物としては、例えば、(メタ)アクリロイルオキシ基含有化合物、ビニル基含有化合物、オキセタン化合物、及びビニルエーテル化合物が挙げられる。
(メタ)アクリロイルオキシ基含有化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)ア
クリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、不飽和ポリエステル、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ビニルアクリレート、シリコーンアクリレート、及びポリスチリルエチルメタクリレートが挙げられる。
ビニル基含有化合物としては、例えば、スチレン及びジビニルベンゼンが挙げられる。オキセタン化合物としては、例えば、3,3-ビス(ビニルオキシメチル)オキセタン、3-エチル-3-(ヒドロキシメチル)オキセタン、3-エチル-3-(2-エチルヘキシルオキシメチル)オキセタン、3-エチル-3-(ヒドロキシメチル)オキセタン、3-エチル-3-[ (フェノキシ)メチル]オキセタン、3-エチル-3-(ヘキシルオキシメチル)オキセタン、3-エチル-3-(クロロメチル)オキセタン及び3,3-ビス(クロロメチル)オキセタンが挙げられる。
ビニルエーテル化合物としては、例えば、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、3-ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2-ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2-ヒドロキシイソプロピルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、3-ヒドロキシブチルビニルエーテル、2-ヒドロキシブチルビニルエーテル、3-ヒドロキシイソブチルビニルエーテル、2-ヒドロキシイソブチルビニルエーテル、1-メチル-3-ヒドロキシプロピルビニルエーテル、1-メチル-2-ヒドロキシプロピルビニルエーテル、1-ヒドロキシメチルプロピルビニルエーテル、4-ヒドロキシシクロヘキシルビニルエーテル、1,6-ヘキサンジオールモノビニルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジビニルエーテル、1,8-オクタンジオールジビニルエーテル、p-キシレングリコールモノビニルエーテル、p-キシレングリコールジビニルエーテル、m-キシレングリコールモノビニルエーテル、m-キシレングリコールジビニルエーテル、o-キシレングリコールモノビニルエーテル、o-キシレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールモノビニルエーテル及びトリエチレングリコールジビニルエーテルが挙げられる。
接着剤層8を形成するための熱硬化性樹脂組成物に含まれる熱硬化剤は、前述したエポキシ化合物の硬化触媒として作用する。熱硬化性樹脂が、前述のエポキシ基含有ポリオルガノシルセスキオキサンを含む場合の熱硬化剤としては、例えば熱カチオン重合開始剤が挙げられる。この熱硬化性樹脂組成物における熱硬化剤の含有量は、ポリオルガノシルセスキオキサン100質量部に対し、0.1〜3.0質量部が好ましい。
熱硬化剤である熱カチオン重合開始剤としては、例えば、アリールスルホニウム塩、アルミニウムキレート、三フッ化ホウ素アミン錯体等が挙げられる。アリールスルホニウム塩としては、例えばヘキサフルオロアンチモネート塩が挙げられる。アルミニウムキレートとしては、例えば、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート及びアルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)が挙げられる。三フッ化ホウ素アミン錯体としては、例えば、三フッ化ホウ素モノエチルアミン錯体、三フッ化ホウ素イミダゾール錯体及び三フッ化ホウ素ピペリジン錯体が挙げられる。
接着剤層8を形成するための熱硬化性樹脂組成物は、その塗工性等を調整する観点から、溶剤を含むことが好ましい。この溶剤としては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、3-メトキシブチルアセテート、メトキシプロピルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、1-ブタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、3-メトキシブタノール、エトキシエタノール、ジイソプロピルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル及びテトラヒドロフランが挙げられる。
接着剤層8を形成するための熱硬化性樹脂組成物が、さらに、重合安定剤、シランカップリング剤、消泡剤、酸化防止剤、ブロッキング防止剤、レベリング剤、界面活性剤、増量剤、防錆剤、帯電防止剤、可塑剤等各種の添加剤を含んでもよい。
接着剤層8を形成するための熱硬化性樹脂組成物の熱分解温度は、好ましくは200℃以上、より好ましくは260℃以上、より好ましくは300℃以上である。熱分解温度は、示熱熱重合同時測定装置を用いた熱重量分析により測定される。
本発明に係る半導体装置100は、例えば、以下の製造方法(1)又は(2)により得られる。以下の製造方法において、半導体基板2をウエハと称し、複数の半導体基板2が扱われる場合、それぞれを第1ウエハ、第2ウエハ等と称する場合がある。また、複数のウエハを積層したものをウエハ積層体と称する。また、ウエハ積層体に含まれる各素子形成面4に配線パターンが形成され、各ウエハの配線パターンが貫通電極6により電気的に接続され、信号伝達可能に形成されたものを、半導体装置100と称する。
製造方法(1)は、
配線パターンを含む素子形成面4を有する第1ウエハと、素子形成面4及びこれとは反対の裏面を有する第2ウエハとを準備する準備工程、
第2ウエハをその裏面側から研削して第2ウエハを薄化する薄化工程、
第1ウエハの素子形成面4側と、薄化工程を経た第2ウエハの裏面側とを、接着剤層8を介して接合して、ウエハ積層体(1)を得る接合工程、
ウエハ積層体(1)における第2ウエハの主面側の一部をマスクするマスクパターンを介した第2ウエハ側からのエッチング処理により、ウエハ積層体(1)内を延びて第1ウエハの配線パターンに至るビアホールを形成する、ビアホール形成工程
及び
ビアホール内への導電材料の充填により貫通電極6を形成する、電極形成工程
を含む。
また、製造方法(2)は、
素子形成面4及びこれとは反対の裏面を有する第3ウエハ、支持基板、並びに、第3ウエハの素子形成面4側と支持基板とのを、仮接着剤層を介して接合することにより、積層構造を有する補強ウエハを形成する、補強ウエハ形成工程、
補強ウエハにおける第3ウエハをその裏面側から研削して第3ウエハを薄化する薄化工程、
配線パターンを含む素子形成面4を有する第4ウエハを用意し、この第4ウエハの素子形成面4側と、薄化工程を経た補強ウエハの第3ウエハの裏面側とを、接着剤層8を介して接合する接合工程、
接合工程を経た補強ウエハにおける支持基板と第3ウエハとの間の仮接着剤層による仮接着状態を解除して、支持基板の取り外すことにより、ウエハ積層体(2)を得る取外し工程、
ウエハ積層体(2)における第3ウエハの主面側の一部をマスクするマスクパターンを介した第3ウエハ側からのエッチング処理により、ウエハ積層体(2)内を延びて第4ウエハの配線パターンに至るビアホールを形成する、ビアホール形成工程
及び
ビアホール内への導電材料の充填によって貫通電極6を形成する、電極形成工程
を含む。
製造方法(1)及び(2)において、貫通電極6が形成されたウエハ積層体を、ダイシングにより個片化する工程をさらに含んでもよい。本願明細書において、半導体装置100は、個片化前のウエハ積層体及び個片化後のウエハ積層体を含む概念である。
製造方法(1)及び(2)においてウエハと称される半導体基板2の素子形成面4(主面)には、トランジスタ形成工程等を経て複数の半導体素子(図示略)が形成されている。各半導体素子は、露出する電極パッドを含む多層配線構造部を表面に有する。或いは、ウエハは、素子形成面4の側に各種の半導体素子が既に作り込まれたものであって、この半導体素子に必要な配線パターンを含む配線構造が、素子形成面4上に、後に形成されたものであってもよい。
ウエハ本体をなすための構成材料としては、例えば、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、炭化ケイ素(SiC)、ガリウムヒ素(GaAs)、窒化ガリウム(GaN)及びインジウムリン(InP)が挙げられる。
補強ウエハにおける支持基板は、薄化工程を経て薄くなる第3ウエハを補強するためのものである。支持基板としては、例えば、シリコンウエハやガラスウエハが挙げられる。
仮接着剤層は、第3ウエハと支持基板との間の、事後的に解除可能な仮接着状態を実現するためのものである。このような仮接着剤層を形成するための仮接着剤は、多価ビニルエーテル化合物と、そのビニルエーテル基と反応してアセタール結合を形成可能なヒドロキシ基又はカルボキシ基を二つ以上有して多価ビニルエーテル化合物と重合体を形成しうる化合物と、熱可塑性樹脂とを少なくとも含有する。
貫通電極6の形状は特に限定されないが、平面視円形状又は楕円形状が例示される。平面視円形状の貫通電極6の場合、好ましくは、その直径は、1μm以上20μm以下である。貫通電極6の形状及び直径は、ウエハ積層体に形成されるビアホールの直径及び形状により制御される。
半導体基板2(薄化工程後のウエハ)の厚さは、1μm以上20μm以下が好ましく、
18μm以下がより好ましく、15μm以下が特に好ましい。半導体基板2の厚さをこの範囲とすることにより、貫通電極6を介して電気的に接続される半導体素子間の導電経路全体ないし配線全体の抵抗を小さくし、かつ抵抗値のばらつきを抑制することができる。
前述した通り、接着剤層8をなす熱硬化性樹脂層は、エポキシ化合物を含む熱硬化性樹脂と熱硬化剤とを含む熱硬化性樹脂組成物を熱硬化することにより得られる。例えば、エポキシ基含有ポリオルガノシルセスキオキサンは、30〜200℃程度の比較的に低い重合温度ないし硬化温度を実現するのに適するとともに、硬化後において高い耐熱性を実現するのに適する。従って、エポキシ基含有ポリオルガノシルセスキオキサンをエポキシ化合物として含む熱硬化性樹脂組成物によるウエハ間の接着剤接合は、ウエハ間に形成される接着剤層8において高い耐熱性を実現するとともに、接着剤層8形成のための硬化温度の低下を図って被着体たるウエハ内の素子へのダメージを抑制するのに適する。
さらに、この熱硬化性樹脂組成物から形成された熱硬化性樹脂層は、所定の溶出試験における硫黄溶出量が1ppm未満であることから、銅により形成される配線パターンの腐食が抑制される。好ましくは、p型シリコンウエハ上に、厚さ0.2μmの熱硬化性樹脂層を形成した後、電圧0.5MV/cmをかけたときに測定される電流値が、1×10−7A/cm以下である。この電流値は、十分に低い。この熱硬化性樹脂層を接着剤層8として含む半導体装置100において、1×10−7A/cm以下の電流値は、銅配線の腐食に起因する抵抗電流(リーク)の発生が無いことを示すものである。
製造方法(1)及び(2)において、この接着剤層8をなす熱硬化性樹脂層は、詳細には、以下の方法により形成される。始めに、接合対象面(第1ウエハの主面及び薄化工程後の第2ウエハの裏面、又は、第4ウエハの主面及び薄化工程後の第3ウエハの裏面)の一方又は両方に、熱硬化性樹脂組成物をスピンコーティングによって塗布して、熱硬化性樹脂組成物層を形成する。熱硬化性樹脂組成物の塗布前に、接合対象面の一方又は両方にシランカップリング剤処理を施してもよい。
次に、加熱によって熱硬化性樹脂組成物層を乾燥させて固化させる。このときの加熱温度は例えば50〜150℃であり、加熱時間は例えば5〜120分間である。加熱温度は、一定であってもよいし、段階的に変化させてもよい。
続いて、接着剤層8を形成するための熱硬化性樹脂組成物層を介して接合対象面を貼り合わせる。この貼り合わせにおいて、加圧力は例えば300〜5000g/cm2であり、温度は、例えば30〜200℃であり、好ましくは室温以上かつ80℃以下の範囲である。その後、接合対象面間において加熱によって、熱硬化性樹脂組成物層を硬化させる。硬化のための加熱温度は、例えば30〜200℃であり、好ましくは50〜190℃である。硬化のための加熱時間は例えば5〜120分間である。加熱温度は、一定であってもよいし、段階的に変化させてもよい。
硬化後における接着剤層8の厚さは、0.5μm以上4.5μm以下が好ましい。
接着剤層8の厚さをこの範囲とすることにより、得られる半導体装置100に形成される導電部ないし貫通電極6の短縮化を図るのに適する。この半導体装置100では、貫通電極6を介して電気的に接続される半導体素子間の導電経路全体ないし配線全体の抵抗を小さくすることができる。この観点から、接着剤層8の厚さは、4.0μm以下がより好ましく、3.5μm以下がさらに好ましく、3.0μm以下が特に好ましい。また、接着剤層8は、この程度に薄い場合においても十分なウエハ接合強度を発揮する。この観点から、接着剤層8の厚さは、1.0μm以上がより好ましく、1.5μm以上がさらに好ましく、2.0μm以上が特に好ましい。
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
[製造例1]
<エポキシ基含有ポリオルガノシルセスキオキサン(A)の合成>
還流冷却器と、窒素ガス導入管と、撹拌装置と、温度計とを備えた300mLのフラスコ内で、窒素ガスを導入しながら、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン161.5mmol(39.79g)と、フェニルトリメトキシシラン9mmol(1.69g)と、溶媒としてのアセトン165.9gとを混合して50℃に昇温した。次に、当該混合物に、5%炭酸カリウム水溶液4.7g(炭酸カリウムとして1.7mmol)を5分かけて滴下し、続いて水1700mmol(30.6g)を20分かけて滴下した。滴下操作の間、混合物に著しい温度上昇は生じなかった。当該滴下操作の後、フラスコ内に窒素ガスを導入しながら、50℃で4時間、重縮合反応を行った。重縮合反応後の反応溶液中の生成物を分析したところ、数平均分子量は1900であり、分子量分散度は1.5であった。そして、静置されて冷却された反応溶液について、相分離によって生じる下層液(水相)が中性になるまで水洗を繰り返した後、上層液を分取し、1mmHg及び40℃の条件で溶媒量が25質量%になるまで上層液から溶媒を留去し、無色透明の液状の生成物(エポキシ基含有ポリオルガノシルセスキオキサン(A))を得た。
<熱硬化性樹脂組成物(A)の作製>
得られたエポキシ基含有ポリオルガノシルセスキオキサン(A)100質量部と、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート115質量部と、アンチモン系スルホニウム塩(商品名「SI−150L」、三新化学工業株式会社製)0.09質量部(固形分として)と、(4-ヒドロキシフェニル)ジメチルスルホニウムメチルサルファイト(商品名「サンエイドSI助剤」、三新化学工業株式会社製)0.01質量部とを混合し、熱硬化性樹脂組成物(A)を得た。
[試験1]
[実施例1]
以下のようにしてウエハ積層体(1)において総数71の貫通電極を形成した。
<ウエハ積層体(1)の作製>
まず、素子形成面に再配線層を伴う第1シリコンウエハ(直径300mm)と、第2シリコンウエハ(直径300mm)とを用意した。第1シリコンウエハの再配線層は、再配線層外に露出する領域を有するCu配線パターンを含む。次に、第1シリコンウエハの再配線側と第2シリコンウエハとを、熱硬化性樹脂組成物(A)を使用して接合した。具体的には、まず、第1シリコンウエハと第2シリコンウエハとの貼り合わせ面に、シランカップリング剤処理を施した。シランカップリング剤処理は、第1シリコンウエハと第2シリコンウエハとの貼り合わせ面に対するシランカップリング剤(商品名「KBE403」、信越化学工業株式会社製)のスピンコーティングによる塗布後、120℃で5分間加熱することにより行った。次に、一方のウエハ上に形成された熱硬化性樹脂層を介して二つのウエハを加圧しつつ貼り合せた後、熱硬化性樹脂層を加熱して硬化させ、接着剤層を形成した。貼り合わせ時の、加圧力は1000g/cmであり、温度は50℃であった。硬化の際、まず150℃で30分間の加熱を行い、続いて170℃で30分間の加熱を行った。ウエハ間を接合する接着剤層の厚さは2.5μmである。以上のようにして、第1及び第2シリコンウエハとこれらを接合している接着剤層(厚さ2.5μm)とを含む積層構造を有するウエハ積層体(1)を作製した。
<ウエハ積層体(1)に対するプロセス>
ウエハ積層体(1)における第2シリコンウエハに対してグラインド装置(商品名「DGP8761HC」、株式会社ディスコ製)を使用して研削加工を行い、第2シリコンウエハを厚さ10μmまで薄化した。次に、第2シリコンウエハの被研削面上にCVD法によりシリコン酸化膜(絶縁膜)を形成した。次に、この絶縁膜において所定のパターン形状の凹部を形成した。凹部は、リソグラフィ技術によって絶縁膜上に所定のレジストパターンを形成した後、このレジストパターンをエッチングマスクとして利用して行う、絶縁材料膜に対するエッチング処理により形成した。
次に、絶縁膜上からレジストパターンを除去した後、ビアホールを形成した。具体的には、まず、絶縁膜上に、エッチングマスクとしてのレジストパターンを形成した。このレジストパターンは、ビアホール形成箇所に対応する箇所にビアホール形成用の開口部を有するものとした。次に、エッチングマスクであるレジストパターンを介しての第2シリコンウエハ側からのエッチング処理により、第2シリコンウエハ(厚さ10μm)及び接着剤層(厚さ2.5μm)を貫通して第1シリコンウエハにおける配線パターンに至るビアホールを形成した。このエッチング処理では、まず、第2シリコンウエハに対する第1エッチング処理を行い、その後、接着剤層に対する第2エッチング処理を行った。第1エッチング処理では、エッチング装置(商品名「Silivia」、アプライドマテリアルズ社製)を使用し、ボッシュプロセスによる反応性イオンエッチングを行い、SiFとArとの混合ガスをエッチングガスとして使用した。第2エッチング処理では、エッチング装置(商品名「e−MAX」、アプライドマテリアルズ社製)を使用し、反応性イオンエッチングを行い、CHFとCFとOとArとの混合ガスをエッチングガスとして使用した。
次に、ビアホールの内面にCVD法によってシリコン酸化膜をコンフォーマルに形成した。次に、このシリコン酸化膜におけるビアホール底面上の部分をエッチング除去した。そのためのエッチング処理では、エッチング装置(商品名「e−MAX」、アプライドマテリアルズ社製)を使用し、反応性イオンエッチングを行い、CHFとCFとArとの混合ガスをエッチングガスとして使用した。
次に、酸素プラズマ洗浄処理を行い、その後、硫酸洗浄処理の後にアルゴンスパッタリング洗浄処理を行った。酸素プラズマ洗浄処理では、プラズマ装置(商品名「e−MAX」、アプライドマテリアルズ社製)を使用し、酸素ガスを用い、温度条件を120℃とし、プラズマアッシング(洗浄処理)時間を15秒とした。硫酸洗浄処理では、洗浄装置(商品名「GPTC−1」)を使用し、2質量%硫酸を用い、洗浄処理時間を43秒とした。アルゴンスパッタリング洗浄処理では、スパッタリング装置(商品名「Producer」、アプライドマテリアルズ社製)を使用し、Arスパッタリング(洗浄処理)時間を3分とした。
次に、洗浄処理を経たビアホールの壁面に、CVD法によってTaバリア層(厚さ80nm)をコンフォーマルに形成し、続いて、スパッタリング成膜法によって電気めっき用のCuシード層(厚さ1μm)をコンフォーマルに形成した。次に、ビアホール内と第2シリコンウエハ上の絶縁膜の有する凹部内とにわたり、電気めっき法によってCuを堆積させた。次に、第2シリコンウエハ上のCuの過剰堆積部分をCMP法によって除去した。
以上のプロセスにより、ウエハ積層体(1)に貫通電極を形成し、且つ、ウエハ積層体(1)の第2シリコンウエハ上の絶縁膜の凹部内に配線パターンを形成した。SEM観察により測定した貫通電極の直径は、10μmであった。
[実施例2]
以下のようにしてウエハ積層体(2)において総数71の貫通電極を形成した。
<ウエハ積層体(2)の作製>
まず、素子形成面に再配線層を伴う第1シリコンウエハ(直径300mm)と、補強第2シリコンウエハ(直径300mm)とを用意した。第1シリコンウエハの再配線層は、再配線層外に露出する領域を有するCu配線パターンを含む。
補強第2シリコンウエハは、次のようにして作製した。まず、支持基板たるシリコン基板(直径300mm,厚さ775μm)上に、仮接着剤層形成用の接着剤組成物をスピンコーティングによって塗布して仮接着剤組成物層を形成し、200℃での2分間の加熱とその後の230℃での4分間の加熱とを行って、仮接着剤組成物層を乾燥させ且つ仮接着剤組成物中の硬化成分を半硬化させて、仮接着剤層を形成した。仮接着剤層形成用の接着剤組成物は、ジエチレングリコールジビニルエーテル0.24質量部と、p-ヒドロキシスチレン/スチレン共重合体(商品名「マルカリンカーCST−50」、p-ヒドロキシスチレンとスチレンとのモル比50:50、重量平均分子量4400、軟化点150℃、丸善石油化学株式会社製)5.4質量部と、ポリビニルブチラール樹脂(商品名「エスレックKS−1」、分子量2.7×104,軟化点200℃の熱可塑性樹脂、積水化学工業株式会社製)1.8質量部と、ポリカプロラクトン(商品名「プラクセルH1P」、重量平均分子量10000,軟化点100℃の熱可塑性樹脂、株式会社ダイセル製)1.8質量部と、重合促進剤であるトランス桂皮酸(pKa4.44、和光純薬工業株式会社製)0.18質量部と、界面活性剤であるフッ素系オリゴマー(商品名「F−554」、DIC株式会社製)0.045質量部と、溶剤であるシクロヘキサノン22質量部と、を混合して調製した。
次に、シリコン基板と第2シリコンウエハ(直径300mm、厚さ775μm)とを仮接着剤層を介して接合した。具体的には、シリコン基板と第2シリコンウエハとを温度150℃及び加圧力3000g/cm2の条件で加圧しつつ、仮接着剤層を介して貼り合わせた。その後、230℃で5分間加熱して仮接着剤層を本硬化させ、シリコン基板と第2シリコンウエハとを仮接着剤層を介して接合した。次に、シリコン基板に支持された状態にある第2シリコンウエハに対して、グラインド装置(株式会社ディスコ製)を使用して研削加工を行うことによって、第2シリコンウエハを厚さ10μmまで薄化した。次に、薄化された第2シリコンウエハの表面(研削加工面)に、シランカップリング剤(商品名「KBE403」、信越化学工業株式会社製)をスピンコーティングによって塗布した後、120℃で5分間加熱して、シランカップリング剤処理することにより、補強第2シリコンウエハを作製した。
次に、第1シリコンウエハの再配線層を含む面と補強第2シリコンウエハとを、熱硬化性樹脂組成物(A)を使用して接合した。具体的には、まず、第1シリコンウエハと補強第2シリコンウエハとの貼り合わせ面に、シランカップリング剤処理を施した。シランカップリング剤処理においては、第1シリコンウエハと補強第2シリコンウエハとの貼り合わせ面に対するシランカップリング剤(商品名「KBE403」、信越化学工業株式会社製)のスピンコーティングによる塗布後、120℃で5分間加熱することにより行った。次に、第1シリコンウエハのシランカップリング剤処理面に熱硬化性樹脂組成物(A)をスピンコーティングによって塗布して熱硬化性樹脂組成物層を形成した。その後、この熱硬化性樹脂組成物層を伴う第1シリコンウエハについて、80℃で4分間の加熱を行い、続いて100℃で2分間の加熱を行った。これにより、熱硬化性樹脂組成物層を硬化させ、第1シリコンウエハの再配線層を含む面に、厚さ2.5μmの接着剤層を形成した。
次に、接着剤層が形成された第1シリコンウエハに、補強第2シリコンウエハのシランカップリング剤処理した面を、接着剤層を介して加圧しつつ貼り合わせた後、150℃で30分間の加熱を行い、続いて170℃で30分間の加熱を行った。この加熱により接着剤層を硬化させて、第1シリコンウエハと補強第2シリコンウエハとを接合した。貼り合わせは、温度50℃及び加圧力3000g/cm2の条件で行った。
次に、支持基板たるシリコン基板と薄化された第2シリコンウエハとの間における仮接着剤層による仮接着状態を解除して、第2シリコンウエハから支持基板たるシリコン基板を取り外した。具体的には、235℃での5分間の加熱処理を経た後、第2シリコンウエハに対してシリコン基板を1mm/秒の相対速度でスライドさせて、第2シリコンウエハないしこれを含むウエハ積層体からシリコン基板を取り外した。
以上のようにして、第1及び第2シリコンウエハとこれらを接合している接着剤層(厚さ2.5μm)とを含む積層構造を有するウエハ積層体(2)を作製した。
<ウエハ積層体(2)に対するプロセス>
ウエハ積層体(2)の第2シリコンウエハが厚さ10μmに薄化されていることから、さらなる薄化を行わなかった。これ以外は、実施例1と同様にして、ウエハ積層体(2)に貫通電極を形成し、且つ、ウエハ積層体(2)の第2シリコンウエハ上の絶縁膜の凹部内に配線パターンを形成した。SEM観察により測定した貫通電極の直径は、10μmであった。
<膜厚評価>
実施例1及び2において、熱硬化性樹脂組成物(A)を用いて作製した接着剤層の膜厚は、以下のようにして測定した。
まず、熱硬化性樹脂組成物(A)を、シリコンウエハ(直径300mm、厚さ775μm)上にスピンコーティングによって塗布して熱硬化性樹脂組成物層を形成した。1回のスピンコーティングに供して使用した熱硬化性樹脂組成物(A)は20gであり、スピンコーティングに係る回転速度は1200rpmとした。そして、基材上の熱硬化性樹脂組成物層に対し、150℃で30分間の加熱を行い、続いて170℃で30分間の加熱を行い、これにより、硬化した塗膜(接着剤層)を基材上に形成した。形成された塗膜について、微細形状測定機(商品名「サーフコーダ ET4000A」、株式会社小坂研究所製)を使用した結果、その厚さが2.5μmであることを確認した。実施例1及び2のウエハ積層体は、このようにして計測された厚さ2.5μmの塗膜を、第1及び第2シリコンウエハを接合する接着剤層として含む。
<ウエハ積層体の抵抗値測定>
実施例1のウエハ積層体(1)及び実施例2のウエハ積層体(2)について、形成された総数71の貫通電極のチェーン抵抗(デイジーチェーン抵抗)の値を測定した。その結果、実施例1及び実施例2の方法により形成された貫通電極の99%の測定点のコンタクト抵抗が150Ω以下であり、リークが見られないことを確認した。
[試験2]
[ウエハ積層膜の作製]
熱硬化性樹脂組成物(A)の使用量20gを2gに、シリコンウエハ(直径300mm、厚さ775μm)をシリコンウエハ(直径100mm、厚さ500μm)に代えた以外は、試験1の膜厚評価において前述した方法と同様にして作製した塗膜(厚さ2.5μm)を、実施例のウエハ積層膜(I)とした。
<硫黄含有量の測定>
燃焼イオンクロマトグラフィーにより、下記条件にて、実施例のウエハ積層膜(I)の硫黄含有量を測定した。その結果、硫黄含有量は、熱硬化性樹脂層の質量に対して460ppmであった。
燃焼条件
使用機器:ダイアインスツルメンツ社製の「AQF−100」
サンプル:約20mg
吸収液:H(300ppm)
内部標準:酒石酸(5ppm)
吸収液量:10ml
イオンクロマトグラフィー測定条件
使用機器:日本ダイオネクス社製の「ICS−2000」
測定モード:低濃度分析モード
カラム:本カラム(AS−12)、プレカラム(AG−12)
溶離液:2.7mM KCO+0.3mM EPM
サプレッサー:ASRS(リサイクルモード)
流速:1.2ml/min
検出器:導電率検出器
カラム温度:35℃
注入量:100μl
<溶出試験>
以下の方法により、ウエハ積層膜(I)からの硫黄溶出量を評価した。
実施例のウエハ積層膜(I)(厚さ2.5μm)を、純水(20ml)とともにテフロン(登録商標)製の密封容器に入れ、110℃で24時間加熱した。得られた抽出液をイオンクロマトグラフィーにより測定した結果、ウエハ積層膜(I)の熱硬化性樹脂層からの硫黄溶出量が、熱硬化性樹脂層の質量に対して、1ppm未満であることを確認した。
<抵抗値測定>
使用するプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの量を115質量部から775質量部に代えた以外は熱硬化性樹脂組成物(A)と同様にして、熱硬化性樹脂組成物(A’)を作製した。
熱硬化性樹脂組成物(A)20gを熱硬化性樹脂組成物(A’)2gに変更し、シリコンウエハ(直径300mm、厚さ775μm)をシリコンウエハ(直径100mm、厚さ500μm)に代えた以外は、試験1の膜厚評価において前述した方法と同様にして、ウエハ積層膜(I’)を作製した。得られたウエハ積層膜(I’)の塗膜の厚さは、約0.2μmであった。
実施例のウエハ積層膜(I’)について抵抗値を3回測定してその平均値を算出した。その結果、電圧0.5MV/cmをかけたときの電流値が1×10−7A/cm以下であり、リークが見られないことを確認した(図2参照)。
(まとめ)
試験1及び2に示されるように、所定の溶出試験による硫黄溶出量が1ppm未満の接着剤層を含む実施例の半導体装置では、リーク電流の発生が見られなかった。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
以上説明された半導体装置は、高集積化されたマイクロプロセッサ、半導体メモリ、電源用IC、通信用IC、半導体センサー、MEMS等として、サーバー、ワークステーション、車載用コンピュータ、パーソナルコンピュータ、通信機器、撮影機器、画像表示装置等への適用が可能である。
100・・・半導体装置(ウエハ積層体)
2・・・半導体基板(シリコンウエハ)
4・・・素子形成面
6・・・貫通電極(ビアホール)
8・・・接着剤層

Claims (6)

  1. 素子形成面に配線パターンが形成された2以上の半導体基板が、それぞれ、素子形成面を同一方向に向けて積層されており、各素子形成面が、ビアホールを介して形成された貫通電極によって信号伝達可能に構成されており、
    前記各半導体基板の間には接着剤層が形成されており、
    前記接着剤層が、少なくとも1層の熱硬化性樹脂層を含んで形成されており、この熱硬化性樹脂層が熱硬化性樹脂と熱硬化剤とを含み、この熱硬化性樹脂が、少なくとも1種のエポキシ化合物を含んでおり、
    直径100mm、厚さ2.5μmに形成した前記熱硬化性樹脂層を、110℃の熱水20mlに24時間浸漬したときに溶出する硫黄溶出量が1ppm未満である、半導体装置。
  2. 前記エポキシ化合物が、下記式(1a)

    [式(1a)中、R1aは、直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基を示す。]で表される基、下記式(1b)

    [式(1b)中、R1bは、直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基を示す。]で表される基、下記式(1c)

    [式(1c)中、R1cは、直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基を示す。]で表される基、及び、下記式(1d)

    [式(1d)中、R1dは、直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基を示す。]で表される基からなる群から選択される1種以上の基を含む、請求項1に記載の半導体装置。
  3. 前記各接着剤層の厚さが0.5μm以上4.5μm以下である、請求項1又は2に記載の半導体装置。
  4. p型シリコンウエハ上に、厚さ0.2μmの前記熱硬化性樹脂層を形成した後、電圧0.5MV/cmをかけたときに測定される電流値が、1×10−7A/cm以下である、請求項1から3のいずれかに記載の半導体装置。
  5. 前記各半導体基板の厚さが1μm以上20μm以下である、請求項1から4のいずれかに記載の半導体装置。
  6. 前記貫通電極の直径が1μm以上20μm以下である、請求項1から5のいずれかに記載の半導体装置。
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