JP2020193263A - 樹脂成形体及び複合部材 - Google Patents

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Jiro Hiroishi
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俊宏 鈴木
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Masami Tazuke
雅巳 太附
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Jae-Kyung Kim
宰慶 金
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Masato Ikeuchi
正人 池内
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Jiro Sakado
二郎 坂戸
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Abstract

【課題】樹脂中にセルロース繊維を分散してなり、引張強度、曲げ強度等の機械的物性に優れた樹脂複合材、この複合材を用いた成形体、及びこの成形体を用いた複合部材の提供。【解決手段】樹脂中にセルロース繊維を分散してなるセルロース繊維分散樹脂複合材からなり、かつ肉厚が0.1mm以上である樹脂成形体であり、前記セルロース繊維の含有量が1質量%以上70質量%未満、下記測定条件により測定される前記セルロース繊維の長さ加重平均繊維長をLL、数平均繊維長をLNとしたとき、LLとLNが下記[式1]を満たす、樹脂成形体、及びこの樹脂成形体を用いた複合部材。<測定条件>前記セルロース繊維分散樹脂複合材を、該複合材中の樹脂を可溶な溶媒中に浸漬して得られる溶解残さについて、ISO16065 2001規定のパルプ−光学的自動分析法による繊維長測定方法によりLLとLNを求める。[式1]1.10<(LL/LN)<1.50【選択図】なし

Description

本発明は、セルロース繊維分散樹脂複合材からなる樹脂成形体、及び複合部材に関する。
樹脂製品の機械的物性を高めるために、樹脂にガラス繊維、炭素繊維、セルロース繊維等の強化繊維を配合した繊維強化樹脂が知られている。
ガラス繊維を強化繊維として用いた場合、不燃性の無機物であるガラス繊維は、サーマルリサイクル等により燃焼させても灰分として多く残留し、リサイクルにおけるエネルギー回収率に課題がある。また、ガラス繊維の比重は樹脂より大きく、繊維強化樹脂の重量が増大する問題もある。さらに、ガラス繊維は樹脂より熱容量が大きく、したがって成形後の冷却固化に時間を要し、樹脂製品の製造効率の向上にも制約がある。
また、強化繊維としてガラス繊維に代えて炭素繊維を用いることにより、上記の問題は解決できる。しかし、炭素繊維は高価であり、これを強化繊維として用いると樹脂製品のコストが上昇する問題がある。
他方、セルロース繊維は軽量であり、サーマルリサイクル等における燃焼残渣も少なく、また比較的安価であるため、軽量化、リサイクル性、コスト面等において有利である。セルロース繊維を用いた繊維強化樹脂に関する技術が報告されている。
例えば、特許文献1には、解繊処理を施した乾燥状態の古紙パルプ繊維にワックスを付着させた複合材料をマトリックス樹脂と混練することにより複合材を得ること、また、解繊された古紙パルプ繊維の長さ加重平均繊維長が0.1〜5.0mmであることが記載されている。
また、特許文献2には、針葉樹漂白化学パルプを50質量%以上含有する紙の粉砕物及び樹脂を含有し、メルトマスフローレイトが2.0〜7.0g/10minである紙含有樹脂組成物が開示されている。特許文献2には、上記パルプの平均繊維長を0.3〜2mmとすることが記載されている。
また、特許文献3には、解砕された古紙とポリオレフィンエラストマーとを混合して得られた古紙ペレットに熱可塑性樹脂ペレットを特定量混合して加熱混練し、造粒してペレットを得ること、また、上記古紙が、平均太さ0.01〜0.1mm、平均長さ0.1〜2.5mmに解砕されていることが記載されている。
さらに特許文献4には、熱可塑性樹脂とセルロース繊維と水溶性樹脂と変性オレフィン樹脂とを各特定量含有する樹脂組成物が開示され、アスペクト比が5以上のセルロース繊維を用いることも記載されている。
国際公開第2012/070616号 特開2007−45863 特許第3007880号公報 特開2012−236906号公報
セルロース繊維強化樹脂は、疎水性の樹脂と親水性のセルロース繊維との界面の親和性が十分でなく、セルロース繊維による強化作用を十分に享受できない場合がある。この問題を解決するために、酸変性樹脂等を配合して樹脂とセルロース繊維との親和性を高めることが知られている。
他方、樹脂の強化作用に影響するセルロース繊維の特徴については、上記特許文献1〜4に記載されるように、使用するセルロース繊維のサイズないし形状が検討されている。しかし、上記の各特許文献においてセルロース繊維のサイズないし形状は、樹脂と混合する前の状態について言及しているに過ぎず、樹脂中に混練分散した後におけるセルロース繊維のサイズないし形状、さらには繊維長さの分布の状態を正確には捉えていない。
本発明は、樹脂中にセルロース繊維を分散してなるセルロース繊維分散樹脂複合材からなる樹脂成形体であって、肉厚が0.1mm以上であり、引張強度等の機械的物性に優れる樹脂成形体、及びこの樹脂成形体を用いた複合部材を提供することを課題とする。
本発明者らは、セルロース繊維を分散してなる樹脂複合材の機械的物性の向上と、セルロース繊維の繊維長との関係について検討を進めた。具体的には、樹脂と混合する前におけるセルロース繊維と、樹脂と混合して混練された状態のセルロース繊維との間には、繊維長さの分布に違いがあること、また、この繊維長さの分布が混練条件により変化し、混練後の繊維長さの分布の状態が、得られる複合材の機械的物性に影響するとの予測のもとで検討を進めた。
すなわち本発明者らは、樹脂とセルロース繊維を混練して得られる複合材を、当該樹脂の可溶性溶媒に浸漬して樹脂を溶解し、セルロース繊維を取り出し、その繊維長分布について詳しく解析したところ、混練前と混練後において繊維長の分布が異なり、複合材中におけるセルロース繊維の繊維長分布を特定の分布状態へと調整することにより、これを成形して得られる樹脂成形体の機械的物性を高めることができること、さらにこの樹脂成形体に薄肉部(肉厚が1mm以下の部位)を設けた場合にも優れた機械的物性を実現できることを見い出すに至った。
本発明はこれらの知見に基づきさらに検討を重ね、完成されるに至ったものである。
本発明の上記課題は下記の手段により解決された。
〔1〕
樹脂中にセルロース繊維を分散してなるセルロース繊維分散樹脂複合材からなり、かつ肉厚が0.1mm以上である樹脂成形体であって、
前記セルロース繊維の含有量が1質量%以上70質量%未満であり、
下記測定条件により測定される前記セルロース繊維の長さ加重平均繊維長をLL、数平均繊維長をLNとしたとき、LLとLNが下記[式1]を満たす、樹脂成形体。
<測定条件>
前記セルロース繊維分散樹脂複合材を、該複合材中の樹脂を可溶な溶媒中に浸漬して得られる溶解残さについて、ISO 16065 2001で規定されたパルプ−光学的自動分析法による繊維長測定方法によりLLとLNを求める。
[式1] 1.10<(LL/LN)<1.50
〔2〕
前記LLと前記LNが下記[式1−2]を満たす、〔1〕に記載の樹脂成形体。
[式1−2] 1.10<(LL/LN)<1.40
〔3〕
下記測定条件で測定される前記セルロース繊維の重さ加重平均繊維長をLWとしたとき、LWと前記LNが下記[式2]を満たす、〔1〕又は〔2〕に記載の樹脂成形体。
<測定条件>
前記樹脂成形体を、該複合材中の樹脂を可溶な溶媒中に浸漬して得られる溶解残さについて、ISO 16065 2001で規定されたパルプ−光学的自動分析法による繊維長測定方法によりLWを求める。
[式2] 1.10<(LW/LN)<3.00
〔4〕
前記LLと前記LNが下記[式3]を満たす、〔1〕〜〔3〕のいずれか1つに記載の樹脂成形体。ここで[式3]においてLL及びLNの単位は、μmである。
[式3] (LL/LN)<(LL×0.0005+1.05)
〔5〕
前記LLと前記LNが下記[式3−2]を満たす、〔1〕〜〔4〕のいずれか1つに記載の樹脂成形体。ここで[式3−2]においてLL及びLNの単位は、μmである。
[式3−2] (LL/LN)<(LL×0.0005+1.00)
〔6〕
前記セルロース繊維の長さ加重平均繊維長が0.3mm以上である、〔1〕〜〔5〕のいずれか1つに記載の樹脂成形体。
〔7〕
肉厚1mm以下の部位を少なくとも有する、〔1〕〜〔6〕のいずれか1つに記載の樹脂成形体。
〔8〕
前記樹脂成形体中の前記セルロース繊維の含有量が下記測定方法により決定されるものであり、前記樹脂成形体中の前記セルロース繊維の含有量が5質量%以上50質量%未満である、〔1〕〜〔7〕のいずれか1つに記載の樹脂成形体。
<測定方法>
樹脂成形体の試料を、窒素雰囲気下において+10℃/分の昇温速度で熱重量分析(TGA)に付し、下記[式I]によりセルロース繊維の含有量を算出する。
[式I] (セルロース繊維の含有量[質量%])=(200〜380℃の間における複合材試料の質量減少量[mg])×100/(熱重量分析に付す前の複合材試料の質量[mg])
〔9〕
前記樹脂が、ポリオレフィン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリスチレン樹脂、3−ヒドロキシブチレート−co−3−ヒドロキシヘキサノエート重合体樹脂、ポリブチレンサクシネート樹脂、及びポリ乳酸樹脂の1種又は2種以上を含む、〔1〕〜〔8〕のいずれか1つに記載の樹脂成形体。
〔10〕
前記樹脂がポリオレフィン樹脂を含み、前記LL、LN及びLWの測定条件において複合材中の樹脂を可溶な溶媒中に浸漬して得られる溶解残さが、熱キシレン溶解残渣である、〔1〕〜〔9〕のいずれか1つに記載の樹脂成形体。
〔11〕
前記樹脂成形体が前記樹脂中にアルミニウムを分散してなる、〔1〕〜〔10〕のいずれか1つに記載の樹脂成形体。
〔12〕
前記複合材が、カーボンブラック、光安定剤、屈折率が2以上の無機質粉体のいずれか1つ以上を含むポリオレフィン樹脂組成物である〔1〕〜〔11〕のいずれか1つに記載の樹脂成形体。
〔13〕
前記樹脂成形体が、環状構造を有するもの、又は環状構造を有するものの多分割体である、〔1〕〜〔12〕のいずれか1つに記載の樹脂成形体。
〔14〕
前記樹脂成形体が、長手方向に波形状が付与された波付管用の、接手部材又は端部材である、〔1〕〜〔13〕のいずれか1つに記載の樹脂成形体。
〔15〕
前記樹脂の少なくとも一部及び/又は前記セルロース繊維の少なくとも一部がリサイクル材に由来する、〔1〕〜〔14〕のいずれか1つに記載の樹脂成形体。
〔16〕
土木用、建材用、又は自動車用の部材用である、〔1〕〜〔15〕のいずれか1つに記載の樹脂成形体。
〔17〕
〔1〕〜〔16〕のいずれか1つに記載の樹脂成形体と他の材料とを組合せてなる複合部材。
〔18〕
土木用、建材用、又は自動車用の部材用である、〔17〕に記載の複合部材。
本発明において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本発明の樹脂成形体及びこれを用いた複合部材は、樹脂成形体が樹脂中に特定の繊維長分布のセルロース繊維を分散してなり、樹脂成形体が薄肉部を有しながらも優れた機械的物性を実現することができる。
図1は、複合材の一実施形態において、複合材に含まれるセルロース繊維の繊維長分布を示すグラフである。 図2は、ワイヤーハーネスプロテクタ用模擬部品の模式図である。図2(a)は右側面図、図2(b)は正面図、図2(c)は、平面図である。 図3は、波付け管端部部材の模式図である。図3(a)は正面図、図3(b)は右側面図である。
本発明の好ましい実施の形態について説明する。
本発明の樹脂成形体(以下、単に「本発明の成形体」とも称す。)は、樹脂中にセルロース繊維を分散してなるセルロース繊維分散樹脂複合材からなり(すなわちセルロース繊維分散樹脂複合材を成形してなり)かつ肉厚が0.1mm以上である。本発明の成形体は、セルロース繊維の含有量が1質量%以上70質量%未満であり、下記測定条件により測定されるセルロース繊維の長さ加重平均繊維長をLL、数平均繊維長をLNとしたとき、LLとLNが下記[式1]を満たす。
<測定条件>
前記セルロース繊維分散樹脂複合材を、該複合材中の樹脂を可溶な溶媒中に浸漬して得られる溶解残さについて、ISO 16065 2001で規定されたパルプ−光学的自動分析法による繊維長測定方法によりLLとLNを求める。

[式1] 1.10<(LL/LN)<1.50

このような構成により、本発明の成形体は、優れた機械的物性を発現する。また、薄肉部を有する場合においても優れた機械的物性を発現する。
まず、樹脂成形体を構成するセルロース繊維分散樹脂複合材について説明する。なお、下記において、複合材を構成するセルロース繊維の繊維長分布の説明は、成形体を構成するセルロース繊維の繊維長分布にそのまま適用される。つまり、複合体を成形して得られる成形体(射出成形体、プレス成形体等)において、そのセルロース繊維の状態は、複合材のセルロース繊維の状態と事実上同じである。
[セルロース繊維分散樹脂複合材]
セルロース繊維分散樹脂複合材(以下、単に「複合材」とも称す。)は、樹脂中にセルロース繊維が分散しており、複合材(100質量%)中のセルロース繊維の含有量は1質量%以上70質量%未満である。セルロース繊維の含有量をこの範囲内とすることにより、セルロース繊維が均一に分散した複合材が得られやすく、また、その機械的物性も効果的に高めることができる。複合材は、使用する原料の種類に応じてアルミニウム等の無機物、各種添加剤等を含有する形態とすることができる。
複合材中に含まれるセルロース繊維の含有量(質量%)は、下記のようにして熱重量分析により求められる値を採用して決定する。
<セルロース繊維の含有量(セルロース有効質量比)の決定方法>
事前に大気雰囲気にて80℃で1時間乾燥した複合材試料(10mg)を、窒素雰囲気下において+10℃/分の昇温速度で、23℃から400℃までの熱重量分析(TGA)に付し、下記[式I]によりセルロース繊維の含有量(質量%、セルロース有効質量比とも称す。)を算出する。

[式I](セルロース繊維の含有量[質量%])=(200〜380℃の間における複合材試料の質量減少量[mg])×100/(熱重量分析に付す前の乾燥状態の複合材試料の質量[mg])

なお、窒素雰囲気下において+10℃/minの昇温速度で200〜380℃まで昇温させた場合、セルロース繊維はほぼ熱分解して消失する。本発明では、上記[式I]により算出される質量%を、複合材中に含まれるセルロース繊維の含有量とみなす。ただし、セルロース繊維の一部はこの温度範囲内で消失せずに残る(場合がある)が、この温度範囲を超えると例えば樹脂成分の消失や、高温分解性の化合物が共存する場合にその加熱分解減量や残存成分と区別することができず、セルロース繊維量の測定が困難になる。そのため、本発明においては、[式I]により算出される質量%を、セルロース繊維量の把握に用いるが、このようにして求めたセルロース繊維量と複合材の機械的特性の関係は、関連性が高いものである。
複合材は、下記測定条件で測定される前記セルロース繊維の長さ加重平均繊維長をLL、数平均繊維長をLNとしたとき、LLとLNが下記式[式1]を満たす。

[式1] 1.10<(LL/LN)<1.50

上記LLとLNは、セルロース繊維分散樹脂複合材を、該複合材中の樹脂を可溶な溶媒中に浸漬して得られる溶解残さ(不溶分)について、ISO 16065 2001(JIS P8226 2006)で規定されたパルプ−光学的自動分析法による繊維長測定方法により決定される。
より詳細には、上記LL及びLNは下記式により導出される。LLは繊維の長さにより重み付けられた平均繊維長である。
LL=(Σn )/(Σn
LN=(Σn)/(Σn
ここで、nは、i番目の長さ範囲にある繊維の本数であり、lは、i番目の長さ範囲の中心値である。
LL/LNは、繊維長の分布の広がりを示す指標となる。LL/LNが大きければ繊維長の分布の広がりが大きく、逆にLL/LNが小さければ繊維長の分布が狭いことを示す。
複合材は、1.10<(LL/LN)<1.50を満たすことにより、複合材の機械強度を十分に高めることができる。LL/LNが大きすぎると、繊維長の分布が広がり過ぎて、平均繊維長に対して短繊維である繊維の割合が増加する。また、LL/LNが小さすぎると、繊維長の分布が狭すぎ、長繊維の割合が相対的に低下する。いずれの場合も機械強度の向上において不利に働く傾向にある。複合材はLLとLNの関係が上記[式1]を満たす構成とする。
なお、複合材中の樹脂を可溶な溶媒は、複合材中の樹脂の種類により適宜選択され、例えば、樹脂がポリオレフィンであれば熱キシレン等が挙げられるが、これに限らず、複合材中の樹脂を可溶でありセルロース繊維を不可溶であるものであればよい。
複合材は、LLとLNが下記[式1−2]を満たすことが好ましく、下記[式1−3]を満たすことがより好ましい。

[式1−2] 1.20<(LL/LN)<1.40

[式1−3] 1.20<(LL/LN)<1.30

[式1]、式[1−2]及び[式1−3]においてLL及びLNの単位は、μmである。
複合材中のセルロース繊維の繊維長等は、複合材の表面やそれをスライスやプレス等で薄膜としたものを観察することによりある程度は測定できる。しかしこのような2次元的な観察面からの測定方法では、観察面が特定の面に限られるため、樹脂中に分散する個々の繊維の繊維長の全てを正確に測定することはできない。なぜなら、複合材中においてセルロース繊維は、繊維が薄膜の厚さ方向において重なりをもって存在していたり、繊維が観察面から傾いて配されていたりするものが少なからず存在するからである。X線CT等の透過断層画像の解析により繊維長を測定することも考えられるが、実際には複合材中のセルロース繊維のコントラストが必ずしも明瞭でなく、やはり繊維長の正確な測定は困難である。本発明者らは、複合材中のセルロース繊維の繊維長分布を正確に測定し、当該測定値と複合材の機械的物性との間に、従来知られていなかった技術的関係を見い出し、かかる知見に基づき本発明を完成させるに至った。
複合材は、セルロース繊維の重さ加重(長さ長さ加重)平均繊維長をLWとしたとき、LWと上記LNが下記式[式2]を満たすことが好ましい。

[式2] 1.10<(LW/LN)<3.00

上記LWもまた、LLやLNと同様に、セルロース繊維分散樹脂複合材を、該複合材中の樹脂を可溶な溶媒中に浸漬して得られる溶解残さ(不溶分)について、ISO 16065 2001(JIS P8226 2006)で規定されたパルプ−光学的自動分析法による繊維長測定方法により決定される。
より詳細には、上記LWは下記式により導出される。LWは繊維の長さの2乗により重み付けられた平均繊維長である。
LW=(Σn )/(Σn
ここで、nは、i番目の長さ範囲にある繊維の本数であり、lは、i番目の長さ範囲の中心値である。
LW/LNは、繊維長の分布の広がりを示す指標となる。LW/LNが大きければ繊維長の分布の広がりが大きく、逆にLW/LNが小さければ繊維長の分布が狭いことを示す。LW/LNが大きくなり過ぎると、機械特性のばらつきが大きくなる傾向にある。LW/LNは、LL/LNと比較すると、LW/LNの定義式からわかるように、LW/LNは繊維長が長いものが多いと、急激に大きくなることから、繊維長の長い側の分布の広がりの程度を示す指標となる。
複合材は、1.10<(LW/LN)<3.00を満たすことにより、複合材の機械強度をより高めることができる。複合材は、機械強度をより高める観点から、LWとLNの関係が下記[式2−2]を満たすことがより好ましく、下記式[2−3]を満たすことがさらに好ましい。

[式2−2] 1.50<(LW/LN)<2.30

[式2−3] 1.50<(LW/LN)<2.00

[式2]、式[2−2]及び[式2−3]においてLL及びLNの単位は、μmである。
複合材は、上記LLとLNとの関係が下記式[式3]を満たすことが好ましい。ここで[式3]においてLL及びLNの単位は、μmである。

[式3] (LL/LN)<(LL×0.0005+1.05)

上記[式3]を満たすことにより、複合材の機械強度をより高めることができる。この観点から、複合材は、上記LLとLNとの関係が下記[式3−2]を満たすことがより好ましく、[式3−3]を満たすことがさらに好ましく、[式3−4]を満たすことがさらに好ましい。上記の[式3]から[式3−4]までの式を全て満足することで、引張強度、曲げ強度などとともに曲げ弾性率のいずれも向上させることができる。ここで[式3−2]、[式3−3]、[式3−4]においてLL及びLNの単位は、μmである。

[式3−2] (LL/LN)<(LL×0.0005+1.00)

[式3−3] (LL/LN)<(LL×0.0005+0.95)

[式3−4] (LL×0.0005+0.85)<(LL/LN)
なお、複合材を構成する樹脂がポリオレフィン樹脂を含む場合などは、前記LL、LN及びLWの測定条件において、複合材中の樹脂を可溶な溶媒として、熱キシレン(130〜150℃)を用いることができる。
複合材は、複合材(100質量%)中のセルロース繊維の含有量が1質量%以上70質量%未満である。機械特性の向上の観点から、複合材中のセルロース繊維の含有量は3質量%以上であることが好ましく、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上である。また、曲げ強度をより向上させる点も考慮すれば、複合材中のセルロース繊維の含有量は25質量%以上であることが好ましい。
複合材は、吸水性をより抑える観点から、複合材中のセルロース繊維の含有量を50質量%未満とすることが好ましく、40質量%未満とすることも好ましい。
複合材は、セルロース繊維の含有量が5質量%以上50質量%未満であることが好ましく、15質量%以上40質量%未満であることも好ましい。
複合材は、一定以上の機械強度が必要とされる成形品(樹脂製品)の構成材料として好適である。複合材は、複合材中のセルロース繊維が上記[式1]の関係を満たし、この複合材ないしこれを用いた成形体は機械強度に優れる。この理由は定かではないが、例えば、緩やかな変形と、高速の変形に対するセルロース繊維による補強作用が、それぞれセルロース繊維の特定の長さに依存しており、セルロース繊維の繊維長分布を特定範囲として繊維長に適度なばらつきをもたせることにより、機械強度の向上が実現されるものと推定される。
複合材中に分散しているセルロース繊維は繊維長が0.3mm以上のセルロース繊維を含むことが好ましい。繊維長0.3mm以上のセルロース繊維を含むことにより、曲げ強度等の機械強度をより向上させることができる。この観点から、繊維長1mm以上のセルロース繊維を含むことがさらに好ましい。
また、複合材は、複合材中のセルロース繊維の長さ加重平均繊維長が0.3mm以上であることが好ましい。長さ加重平均繊維長が0.3mm以上であることにより曲げ強度等の機械強度をより向上させることができる。この観点から、セルロース繊維の長さ加重平均繊維長は0.5mm以上であることがより好ましく、さらに好ましくは0.7mm以上である。複合材中のセルロース繊維の長さ加重平均繊維長は、通常は1.3mm以下である。ここで長さ加重平均繊維長は、複合材をその樹脂分の可溶な溶媒へ浸漬したときの複合材の溶解残さ(不溶分)についてISO 16065 2001(JIS P8226 2006)で規定されたパルプ−光学的自動分析法による繊維長測定方法により決定される。例えば、複合材を構成する樹脂がポリオレフィン樹脂である場合は、熱キシレン(130〜150℃)への溶解残さ(不溶分)について、同測定法により、長さ加重平均繊維長を決定することができる。
また、複合材中のセルロース繊維の平均繊維径は、5〜40μmであることが好ましい。セルロース繊維が上記の繊維長を有し、かつ上記の繊維径を有することにより、得られる成形体の機械強度をより高めることができる。また、セルロース繊維の平均繊維径を5μm以上とすることにより、セルロース材の前処理が不要となり、また後述の複合材の調製における処理の負荷も軽減することができる。また、セルロース繊維の平均繊維径を40μ以下とすることにより、薄肉部を有する成形体であっても良好な成形性で得ることができる。複合材中のセルロース繊維の平均繊維径は好ましくは10〜30μmである。
複合材を構成する樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂の他、ポリ塩化ビニル樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体樹脂(ABS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂(AS樹脂)、ポリアミド樹脂(ナイロン)、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリスチレン樹脂等の熱可塑性樹脂、3−ヒドロキシブチレート−co−3−ヒドロキシヘキサノエート重合体樹脂(PHBH)、ポリブチレンサクシネート樹脂、ポリ乳酸樹脂等の熱可塑性の生分解性の樹脂等が挙げられる。複合材には、これらの樹脂の1種又は2種以上を用いることができる。なかでも複合材の樹脂がポリオレフィン樹脂を含むことが好ましく、複合材を構成する樹脂の50質量%以上(好ましくは70質量%以上)がポリオレフィン樹脂であることが好ましい。
ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂が好ましく、あるいはポリエチレン樹脂とポリプロピレン樹脂との混合物(ブレンド樹脂)も好ましい。また、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン−プロピレン共重合体等のエチレン系共重合体(エチレンを構成成分として含む共重合体)や、ポリブテン等の樹脂も、複合材に用いるポリオレフィン樹脂として好ましい。ポリオレフィン樹脂は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。複合材を構成するポリオレフィン樹脂はポリエチレン樹脂及び/又はポリプロピレン樹脂であることが好ましく、ポリエチレン樹脂であることがより好ましい。
上記ポリエチレンとしては、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)が挙げられる。
上記低密度ポリエチレンは、密度が880kg/m以上940kg/m未満のポリエチレンを意味する。上記高密度ポリエチレンは、上記低密度ポリエチレンの密度より密度が大きいポリエチレンを意味する。
低密度ポリエチレンは、長鎖分岐を有する、いわゆる「低密度ポリエチレン」及び「超低密度ポリエチレン」といわれるものでもよく、エチレンと少量のα−オレフィンモノマーを共重合させた直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)でもよく、さらには上記密度範囲に包含される「エチレン−α−オレフィン共重合体エラストマー」であってもよい。
複合材を構成する樹脂はポリオレフィン樹脂であることが好ましく、このポリオレフィンはポリエチレンであることが好ましく、特に低密度ポリエチレン及び高密度ポリエチレンであることが好ましい。
上記樹脂は、通常用いられる不飽和カルボン酸又はその誘導体等で酸変性されていてもよい。
複合材は、上記のとおり複数種の樹脂を含有してもよい。例えば、ポリオレフィン樹脂と、エチレン−アクリル酸共重合体樹脂とを併用してもよい。また、ポリオレフィン樹脂と、ポリエチレンテレフタレート及び/又はナイロンとを併用してもよい。この場合、ポリオレフィン樹脂100質量部に対し、ポリエチレンテレフタレート及び/又はナイロンの総量が10質量部以下であることが好ましい。
複合材中の樹脂の含有量は、30質量%以上が好ましく、40質量%以上がより好ましく、50質量%以上がさらに好ましい。また、複合材中の樹脂の含有量は通常は99質量%未満であり、95質量%未満が好ましく、90質量%未満がさらに好ましく、85質量%未満であることも好ましい。
なお、複合材中のセルロース繊維と樹脂の各含有量の合計が100質量%に満たない場合、残部には、例えば、後述する成分を目的に応じて、また使用する原料に応じて適宜に含むことができる。
複合材は、樹脂中に、セルロース繊維に加え、アルミニウムが分散してなる形態であることも好ましい。アルミニウムが分散されている場合、アルミニウム(以下、アルミニウム分散質ともいう。)の含有量は、1質量%以上40質量%以下であることが好ましい。アルミニウムを含有することにより、複合材の熱伝導性や目視認識性、光遮蔽性が向上し、また、アルミニウムの含有量をこの範囲内とすることにより、複合材の加工性をより高めることができ、複合材の加工時にアルミニウムの塊まりがより生じにくくなる。このアルミニウムは、原料とするポリエチレンラミネート加工紙のアルミニウム薄膜層に由来し得る。ポリエチレンラミネート加工紙のアルミニウム薄膜層は溶融混練時に、アルミニウムが溶融することはないが、混練時の剪断力により、徐々に剪断され微細化する。
上記加工性の観点に加え、熱伝導性、難燃性等をも考慮した場合、複合材中の、アルミニウムの含有量は、好ましくは5質量%以上30質量%以下であり、さらに好ましくは5質量%以上20質量%以下である。
複合材は、X−Y最大長が0.005mm以上のアルミニウム分散質を含むことが好ましい。X−Y最大長が0.005mm以上のアルミニウム分散質の数に占めるX−Y最大長が3mm以上のアルミニウム分散質の数の割合が10%未満であることが好ましい。この割合を10%未満とすることにより、複合材の加工性をより高めることができ、また、複合材の加工時にアルミニウムの塊まりがより生じにくくなる。
X−Y最大長は、複合材の表面を観察して決定されるものである。この観察面において、アルミニウム分散質に対し、無作為に特定の一方向(X軸方向)に直線を引き、当該直線とアルミニウム分散質の外周とが交わる2つの交点間を結ぶ距離が最大となる当該距離(X軸最大長)を測定し、また、上記X軸方向に対して垂直方向(Y軸方向)に直線を引き、この直線とアルミニウム分散質の外周とが交わる2つの交点間を結ぶ距離が最大となる当該距離(Y軸最大長)を測定し、X軸最大長とY軸最大長のうち長い方の長さをX−Y最大長とする。X−Y最大長は、後述する実施例に記載されるように画像解析ソフトを用いて決定することができる。
複合材中に分散しているアルミニウム分散質は、個々のアルミニウム分散質のX−Y最大長の平均が0.02〜2mmであることが好ましく、0.04〜1mmであることがより好ましい。X−Y最大長の平均は、後述するように、画像解析ソフトを用いて測定されるX−Y最大長の平均とする。
アルミニウム分散質は、鱗片状、フレーク状等の薄膜構造であることも、視認性、加工性から好ましい。また、薄膜構造の不規則な折り畳み構造を有するものであることも加工性から好ましい。
複合材を構成する上記の樹脂とセルロース繊維は、これらの少なくとも一部をリサイクル材に由来するものとすることができる。また、複合材に含まれ得るアルミニウム、及び樹脂(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート及びナイロン)も、これらの少なくとも一部がリサイクル材に由来することができる。リサイクル材を利用することにより、複合材の製造コストを抑えることができる。
リサイクル材としては、例えば、紙とポリエチレン薄膜層とを有するポリエチレンラミネート加工紙、紙とポリエチレン薄膜層とアルミニウム薄膜層とを有するポリエチレンラミネート加工紙、これらの加工紙からなる飲料パック及び/又は食品パック、あるいは、古紙、再生樹脂等が挙げられる。これらの複数種の使用であってもよい。より好ましくは、上記のラミネート加工紙及び/又は飲料・食品パックをパルパーで処理して紙部分を剥ぎ取り除去して得られた、セルロース繊維が付着してなるポリエチレン薄膜片(以下、「セルロース繊維付着ポリエチレン薄膜片」とも称す。)をリサイクル材として用いることが好ましい。ラミネート加工紙や飲料・食品パックがアルミニウム薄膜層を有する場合には、上記のセルロース繊維付着ポリエチレン薄膜片にはアルミニウムも付着した状態にある。
このようなリサイクル材を原料とした場合にも、例えば、後述の溶融混練により複合材を得ることができる。
複合材は、含水率が1質量%未満であることが好ましい。上記含水率は、複合材の製造後6時間以内に窒素雰囲気下において、23℃から120℃まで、+10℃/minの昇温速度で熱重量分析(TGA)を行った際の質量減少率(質量%)から求める。
複合材は、無機質材を含有してもよい。無機質材を含有することにより曲げ弾性、耐衝撃特性、難燃性が向上し得る。無機質材としては、炭酸カルシウム、タルク、クレー、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化チタン等が挙げられる。無機質材は、屈折率が2以上のものが好ましい。屈折率が2以上の無機質材としては、酸化チタン等があげられる。無機質剤は、無機質紛体の形態で含有されることが好ましい。
複合材は、目的に応じて、難燃剤、酸化防止剤、安定剤(光安定剤を含む)、耐候剤、相溶化剤衝撃改良剤、改質剤等を含んでもよい。光安定剤としては、ポリメチルプロピル3−オキシ−[4(2,2,6,6テトラメチル)ピペリジニル]シロキサン、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールとコハク酸とのポリエステル、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]等のヒンダードアミン系化合物等があげられる。また、加工性向上のため、オイル成分や各種の添加剤を含むことができる。パラフィン、変性ポリエチレンワックス、ステアリン酸塩、ヒドロキシステアリン酸塩、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体等のフッ化ビニリデン系共重合体、有機変性シロキサン等が挙げられる。
複合材は、カーボンブラック、各種の顔料、染料を含有することができる。複合材は、金属光沢系の着色材を含有することもできる。また、導電性カーボンブラック等の、アルミニウム以外の導電性付与成分を含むことができる。さらに、複合材はアルミニウム以外の熱伝導性付与成分を含むことができる。
複合材は、カーボンブラック、光安定剤、及び屈折率が2以上の無機質粉体のいずれか1つ以上を含み、ポリオレフィン樹脂を含む組成物であることが好ましい。
複合材は、架橋されていてもよい。架橋剤としては、有機過酸化物等が挙げられ、具体例としてジクミルパーオキサイドが挙げられる。複合材はシラン架橋法により架橋された形態であってもよい。
複合材の形状に特に制限はない。例えば、複合材をペレット状とすることもできるし、複合材は所望の形状に成形されたものでもよい。複合材がペレット状の場合、このペレットは、成形品(樹脂製品)の構成材料として好適である。
[セルロース繊維分散樹脂複合材の調製]
続いて複合材の製造方法について、好ましい実施形態を以下に説明する。複合材は、本発明の規定を満たす限り、下記方法により得られたものに限定されるものではない。
本発明に用いる複合材は、樹脂とセルロース繊維とを混練することにより得ることができる。
樹脂と、セルロース繊維又はその供給源(以下、これらをまとめて「セルロース材」とも称す。詳細は後述する。)とを混練する。
複合材は、混練する際の混練条件の調整や添加剤の添加、あるいは使用するセルロース材の選定や配合を調整することにより、所望のセルロース繊維を含有する形態とすることができる。例えば、混練時間、混練速度、混練温度、水等の添加剤の添加量、添加のタイミング等により、得られる複合材中のセルロース繊維の繊維長分布を調整することができる。この際、混練によりセルロース繊維の各平均繊維長も変動する傾向があるのでこれを踏まえて調整することが重要である。
例えば、混錬時間を長くしたり混練速度を高めたりして混錬時のエネルギー投入量を高めると、セルロース繊維の分散性がある程度高まるが、繊維長は短くなる傾向にある。この短繊維化は複合材の機械強度の向上において不利に働く。つまり、混錬時のエネルギー投入量の増大は繊維長の低下と狭い繊維長分布を同時にもたらすことが多いので、これらを所望の範囲へとコントロールする必要がある。
樹脂とセルロース材とを混練するに当たり、セルロース繊維との親和性の高い極性溶媒を添加して混練することにより、複合材を得ることもできる。極性溶媒は、複合材を構成する樹脂との親和性がある程度低いものが好ましい。混練時に添加する極性溶媒として、水が好適である。
混錬条件にもよるが水の添加は、セルロース繊維の平均繊維長に対して、相対的にセルロース繊維の繊維長分布を小さくすることがある。その理由は定かでないが、水とセルロース繊維との極性相互作用、混練時のせん断力の水による緩和作用等が効いているものと推定される。特にセルロース材として、ラミネート紙を使用する場合や、ラミネート紙から紙分をある程度取り除いた残部であるセルロース付着樹脂片を使用する場合は、混錬条件等により得られる複合材中の繊維長分布が変動しやすい傾向にある。
混練において、極性溶媒の添加を複数回に分けて行うことが好ましい。例えば、まず、熱可塑性樹脂とセルロース繊維とを、使用する極性溶媒の全量のうち一部の存在下で混練し、その後、極性溶媒の残りを加えて、さらに混練することが好ましい。
上記溶融混練を、水の存在下で行う場合には、溶融混練の最中に、水を蒸気として除去し、複合材の含水率を1質量%未満とすることが好ましい。
複合材は、樹脂とセルロース材とを、上記を踏まえて条件を調整して、溶融混練することにより得ることが好ましい。
上記の溶融混練には、ニーダや二軸押出機等、通常の混練装置を適用することができる。
ここで「溶融混練」とは、原料中の樹脂(熱可塑性樹脂)が溶融する温度(例えば融点以上の温度)で混練することを意味する。好ましくは、セルロース繊維が変質しない温度と処理時間で溶融混練する。「セルロース繊維が変質しない」とは、セルロース繊維が著しい変色や燃焼、炭化を生じないことを意味する。
上記溶融混練における温度(溶融混練物の温度)は、例えばポリエチレン樹脂を用いる場合を例にとると、110〜280℃とすることが好ましく、130〜220℃とすることがより好ましい。
また、複合材の樹脂がポリオレフィン樹脂を主体とし、さらにポリエチレンテレフタレート及び/又はナイロンとを含む場合も、例えばポリオレフィン樹脂100質量部に対し、ポリエチレンテレフタレート及び/又はナイロンの総量が10質量部以下である場合は、溶融混練は上記と同様の温度とすることができる。
上記溶融混練に当たり、セルロース材の使用量は、得られる複合材において、複合材中のセルロース繊維の含有量が上述した好ましい範囲となるように調整することが好ましい。
セルロース材としては、セルロースを主体とするものが挙げられ、より具体的には、パルプ、紙、古紙、紙粉、再生パルプ、ペーパースラッジ、ラミネート加工紙、ラミネート加工紙の損紙等が挙げられる。
紙、古紙には、セルロース繊維、紙の白色度を高めるために一般的に含まれる填料(例えばカオリン、タルク)、サイズ剤などが含まれていてもよい。ここで、サイズ剤とは、紙に対してインクなど液体の浸透性を抑え、裏移りや滲みを防ぎ、ある程度の耐水性を与える目的で加えられるものである。主なものとして、ロジン石鹸、アルキルケテンダイマー、アルケニル無水コハク酸、ポリビニルアルコールなどが用いられる。表面サイズ剤には酸化でんぷん、スチレン・アクリル共重合体、スチレン・メタクリル共重合体などを用いる。例えば、紙、古紙に含まれる各種添加剤、インク成分、リグニン等が含まれていても良い。
ラミネート加工紙には、ポリエチレン樹脂、セルロース繊維、紙の白色度を高めるために一般的に含まれる填料(例えばカオリン、タルク)、サイズ剤などが含まれていてもよい。例えば、原料のラミネート加工紙に含まれる各種添加剤、インク成分、等が含まれていても良い。
パルプには、機械パルプと化学パルプがあり、機械パルプにはリグニンと夾雑物が含まれる。一方、化学パルプには、リグニンは殆ど含まれないが、リグニン以外の夾雑物が含まれることがある。上記の本発明に使用しうる、パルプ、紙、古紙、紙粉、再生パルプ、ペーパースラッジ、ラミネート加工紙、ラミネート加工紙の損紙等のセルロース原料(セルロース材)におけるセルロース量は、それぞれの材料中の夾雑物や添加剤などの影響、あるいはセルロール量の熱重量分析における測定温度範囲を外れたセルロースの未分解成分等の影響等により、見かけ上セルロース量に差異が存在するが、本発明においては、熱重量分析にて、[式I]により求めたセルロース繊維量をセルロース繊維量として用いた。
[樹脂成形体]
本発明の成形体は、上記樹脂複合材を所望の形状に成形してなる成形体である。すなわち、樹脂中にセルロース繊維を分散してなるセルロース繊維分散樹脂複合材からなり、かつ肉厚が0.1mm以上である樹脂成形体であって、前記セルロース繊維の含有量が1質量%以上70質量%未満であり、セルロース繊維を上記の特定の繊維長分布で含有する樹脂成形体である。
本発明の成形体の構成は、特定形状に成形されていること以外は、上述の複合材の構成と同じである。
本発明の成形体は、肉厚が0.1mm以上であることが必要である。本発明の成形体は、肉厚が0.1mm以上であることとセルロース繊維の繊維長の分布の広がりを示す指標である平均繊維長比が所定の範囲にあることにより、十分な機械強度を有することが可能となる。
本発明の成形体は、肉厚1mm以下の部位(薄肉部)を有することも好ましい。薄肉部は、成形体の全体にわたって形成されていてもよく、成形体の一部に形成されていてもよい。薄肉部は、成形体の端部に形成されていてもよく、端部ではない部位に形成されていてもよい。また薄肉部の長さ及び幅としては、それぞれ、好ましくは0.5mm以上、より好ましくは1mm以上、さらに好ましくは10mm以上とすることができる。本発明の成形体は、肉厚0.5mm以下の部位を有してもよい。さらに肉厚0.3mm以下の部位を有してもよい。肉厚が薄いほど強度の信頼性が必要となる。このような薄肉部も肉厚が0.1mm以上であることが必要である。
本発明の成形体の構造としては、肉厚が0.1mm以上である以外は、特に限定されず、各種の構造とすることができる。本発明の成形体として、シート状、板状、環状(管状)、箱状等各種構造の成形体、また、これらの成形体の多分割体が挙げられる。環状構造を有する成形体としては、断面略円形、四角形状の直管、曲がり管、波付け(凹部と凸部とが交互に配置された部位)が付与された波付管等が挙げられる。また、環状構造を有する成形体の多分割体としては、断面略円形、四角形状の直管、曲がり管、波付けが付与された波付管等の環状成形体を半割れ等により分割した多分割体が挙げられる。好ましくは、長手方向に波付けが付与された部位を有する環状構造を有する成形体、又は長手方向に波付けが付与された部位を有する環状構造を有する成形体の多分割体が挙げられる。また、管の接手部材又は端部材の他、土木用、建材用、自動車用又は電線保護用の部材として本発明の成形体を用いることができる。
本発明の成形体は、射出成形体、押出成形体、プレス成形体、ブロー成形体のいずれであってもよい。セルロース繊維の含有による外観への影響をおさえる点と製造性からは射出成形体であることが好ましい。
本発明の成形体は、薄肉部及び薄肉部以外の部分の機械的物性に優れる。したがって、薄肉部においても引張強度が要求される成形品(樹脂製品)又はその構成材料として好適である。
[樹脂成形体の製造方法]
樹脂成形体の製造方法について、好ましい実施形態を以下に説明する。樹脂成形体は、本発明の規定を満たす限り、下記方法により得られたものに限定されるものではない。
本発明の成形体は、本発明に用いるセルロース繊維分散樹脂複合材を通常の成形手段に付して得ることができる。
複合材の成形方法は、特に限定されず、射出成形、押出成形、プレス成形、ブロー成形等の通常の成形方法を採用することができる。肉厚1mm以下の部位を形成できる方法であることが好ましい。複雑な形状の付与性の観点からは、プレス成形又は射出成形が好ましい。
上述のようにすることで、本発明の樹脂成形体を、セルロース繊維分散樹脂複合材の有する機械的物性を損なわずに成形することができる。
また、本発明の好ましい態様によれば、本発明の薄肉部を有する成形体を、形状不良を抑制して、成形性良く製造できる。例えば、射出成形の場合、形状不良が生じにくく、成形性に優れる。
[複合部材]
本発明の成形体を他の材料(部材)と組合せて複合部材を得ることができる。本発明の成形体を一部に用いていれば、この複合部材の形態に特に制限はない。例えば、本発明の成形体からなる層と、他の材料からなる層とを組み合わせた積層構造の複合部材とすることができる。この複合部材は管状構造とすることも好ましい。また、本発明の成形体と組合せて複合部材を構成する上記の他の材料として、例えば、熱可塑性樹脂材料、金属材料等を挙げることができる。
本発明を実施例に基づきさらに説明するが、本発明はこれらの形態に限定されるものではない。本発明における各指標の測定方法、評価方法は次のとおりである。
[複合材中のセルロース含有量]
事前に大気雰囲気にて80℃×1時間乾燥した複合材試料(10mg)を、窒素雰囲気下において+10℃/minの昇温速度で、23℃から400℃まで熱重量分析(TGA)を行い、下記[式I]によりセルロース繊維の含有量(質量%)を算出した。同一の複合材試料を5つ調製し、各複合材試料について上記と同様にして熱重量分析を行い、算出されたセルロース繊維の含有量(質量%)の5つの値の平均値を求めて、その平均値をセルロース繊維の含有量(質量%)とした。

[式I](セルロース繊維の含有量[質量%])=(200〜380℃の間における複合材試料の質量減少量[mg])×100/(熱重量分析に付す前の乾燥状態の複合材試料の質量[mg])
[長さ加重平均繊維長、数平均繊維長、重さ加重平均繊維長]
長さ加重平均繊維長、数平均繊維長は、複合材の熱キシレン溶解残渣(不溶分)についてISO 16065 2001(JIS P8226 2006)で規定されるパルプ−光学的自動分析法による繊維長測定方法により測定した。具体的には、複合材の成形シートから0.1〜1gを切だし試料とし、この試料を400メッシュのステンレスメッシュで包み、138℃のキシレン100mlに24時間浸漬した。次いで試料を引き上げ、その後試料を80℃の真空中で24時間乾燥させた。こうして得られた複合材の熱キシレン溶解残渣(不溶分)を用いて、パルプ−光学的自動分析法による繊維長測定方法により長さ加重平均繊維長、数平均繊維長、重さ加重平均繊維長を決定した。この測定にはTECHPAP社製MORFI COMPACTを使用した。
[引張強度1]
複合材を用い、JIS K7113 1995に準拠して、2号試験片について引張強度を測定した。ただし、試験片は、プレス成形により得られた0.3mm厚のシート状の成形体から、これを打ち抜き作製した。即ち試験片の厚さは0.3mmである。単位は「MPa」である。
[引張強度2]
複合材を用い、射出成形により試験片を作製し、JIS K7113 1995に準拠して、2号試験片について引張強度を測定した。試験片の厚さは2mmである。単位は「MPa」である。
引張強度2の変動係数は、試験片10個について引張強度2を求めた際の変動係数である。
[曲げ強度、曲げ弾性率]
複合材を用い、JIS K7171 2016に準拠し、サンプル厚さ4mm、曲げ速度2mm/minにて、曲げ強度と曲げ弾性率を測定した。詳細には、射出成形で試験片(厚さ4mm、幅10mm、長さ80mm)を作製し、支点間距離64mm、支点及び作用点の曲率半径5mm、試験速度2mm/minにて荷重の負荷を行い、JIS−K7171 2016に準拠して曲げ試験を行ない、曲げ強度(MPa)と曲げ弾性率(MPa)を測定した。
ここで、曲げ弾性率 Efは、
歪み0.0005(εf1)におけるたわみ量において測定した曲げ応力σf1
歪み0.0025(εf2)におけるたわみ量において測定した曲げ応力σf2
を求めて、これらの差を、それぞれの対応する歪み量の差で割ること、
すなわち、下記の式
Ef=(σf2―σf1)/(εf2―εf1)
で求める。
このときの曲げ応力を求めるための、たわみ量Sは、
下記の式により求めることができる。
S=(ε・L)/(6・h)
S:たわみ
ε:曲げ歪み
L:支点間距離
h:厚さ
[調製例1]
調製例1では、樹脂として低密度ポリエチレンとエチレン−アクリル酸共重合体を用い、またセルロース材としてパルプを用いて複合材を調製した。詳細を下記実施例1〜2、比較例1〜2として説明する。
<実施例1>
実施例1では、低密度ポリエチレン1(ノバテックLC600A、日本ポリエチレン(株)製)とパルプ1(ARBOCEL BC200、レッテンマイヤー社製)とエチレン−アクリル酸共重合体1(ニュークレル、三井・デュポンポリケミカル社製)とを、表1の上段に示す配合比(単位:質量部)で混合し、ニーダを用いて溶融混練して複合材を得た。上記溶融混練においては、混練途中で水1.5質量部を添加した。こうして得られた複合材についてプレス成形を行うことにより0.3mm厚のシート状の実施例1の成形体を得た。
なお、本実施例1、ならびに、以降の各実施例及び比較例において、得られた複合材の含水率はいずれも1質量%未満であった。
また、以降の各実施例及び比較例においても、得られた複合材についてプレス成形を行うことにより0.3mm厚のシート状の成形体を得た。
<実施例2>
実施例2では、低密度ポリエチレン1(ノバテックLC600A、日本ポリエチレン(株)製)とパルプ2(ARBOCEL FIF400、レッテンマイヤー社製)と、エチレン−アクリル酸共重合体1(ニュークレル、三井・デュポンポリケミカル社製)とを、表1の上段に示す配合比(単位:質量部)で混合し、ニーダを用いて溶融混練して複合材を得た。混練途中で水40質量部を添加した。こうして実施例2のセルロース繊維分散樹脂複合材を得た。
<比較例1>
低密度ポリエチレン1(ノバテックLC600A、日本ポリエチレン(株)製)と、パルプ1(ARBOCEL BC200、レッテンマイヤー社製)と、エチレン−アクリル酸共重合体1(ニュークレル、三井・デュポンポリケミカル社製)とを、表1の上段に示す配合比(単位:質量部)で混合し、ニーダを用いて溶融混練して複合材を得た。混練に際しては最初から水を40質量部添加した。こうして比較例1のセルロース繊維分散樹脂複合材を得た。
<比較例2>
低密度ポリエチレン1(ノバテックLC600A、日本ポリエチレン(株)製)を比較例2とした。
各実施例ないし比較例のセルロース繊維の含有量を表1中段に、評価結果等を表1下段に示す。
Figure 2020193263
上記表1に示されるように、同じパルプを用いて、同じ原料配合量とした場合でも、LL/LNが1.10よりも大きい複合材を用いた本発明の薄肉の成形体は、引張強度1及び2、曲げ強度、曲げ弾性率のいずれにおいても高い値を示した(実施例1と比較例1との比較)。
また、LL/LNが本発明で規定する範囲内になる実施例2も、引張強度1及び2、曲げ強度、曲げ弾性率のいずれにおいても高い値を示し、機械強度に優れることがわかる。
なお、引張強度1が引張強度2より低いのは、試験片の成形法に起因して、複合材中の繊維の配向の程度が射出成形による引張強度2の試験片の方が、プレスによる引張強度1の試験片より高いためとみられる。
[調製例2]
調製例2では、樹脂として高密度ポリエチレンを用い、またセルロース材としてラミネート紙の損紙を使用して複合材を調製した。また、一部の例において酸変性ポリエチレン樹脂を配合した。詳細を下記実施例3〜9、比較例3及び4として説明する。
<実施例3>
実施例3では、ポリエチレンラミネート加工紙(紙、ポリエチレン薄膜層及びアルミニウム薄膜層を有する)の損紙を、回転刃式の粉砕機(ホーライ社製)を使用して粉砕したものと、高密度ポリエチレン1(ノバテックHJ490、日本ポリエチレン(株)製)とを、表2の上段に示す配合比で混合し、ニーダを用いて溶融混練して複合材を得た。この混練途中では水30質量部を添加した。こうして実施例3のセルロース繊維分散樹脂複合材を得た。
<実施例4、5>
実施例4、5では、ポリエチレンラミネート加工紙(紙、ポリエチレン薄膜層及びアルミニウム薄膜層を有する)の損紙を、回転刃式の粉砕機(ホーライ社製)を使用して粉砕したものと、高密度ポリエチレン1(ノバテックHJ490、日本ポリエチレン(株)製)と、酸変性ポリエチレン1(マレイン酸変性ポリエチレン、FUSABOND、デュポン)とを、表2の上段に示す配合比で混合し、ニーダを用いて溶融混練して複合材を得た。混練途中で、実施例4については水60質量部、実施例5については水100質量部を添加した。こうして実施例4、5のセルロース繊維分散樹脂複合材を得た。
<実施例6>
実施例6では、ポリエチレンラミネート加工紙(紙、ポリエチレン薄膜層及びアルミニウム薄膜層を有する)の損紙を、回転刃式の粉砕機(ホーライ社製)を使用して粉砕したものと、高密度ポリエチレン1(ノバテックHJ490、日本ポリエチレン(株)製)と、酸変性ポリエチレン1(マレイン酸変性ポリエチレン、FUSABOND、デュポン)とを、表2の上段に示す配合比で混合し、二軸押出機を用いて溶融混練して複合材を得た。実施例6では、溶融混練の最初から水60質量部を添加した。こうして、実施例6のセルロース繊維分散樹脂複合材を得た。
<比較例3>
実施例3において、混練途中で水を添加しなかったこと以外は、実施例3と同様にして、比較例3のセルロース繊維分散樹脂複合材を得た。
<比較例4>
高密度ポリエチレン1(ノバテックHJ490、日本ポリエチレン(株)製)を比較例4とした。
各実施例ないし比較例のセルロース繊維の含有量を表2中段に、評価結果等を表2下段に示す。
Figure 2020193263
上記表2に示されるように、同じセルロース材を用いて、同じ原料配合量とした場合でも、LL/LNが1.5よりも小さい複合材を用いた成形体において、引張強度1及び2、曲げ強度、曲げ弾性率のいずれにおいても高い値を示した(実施例3と比較例3との比較)。
また、ポリエチレン樹脂の一部を酸変性樹脂に置き換えることにより、LL/LNをより好ましい範囲へと調整でき、引張強度や曲げ強度がさらに高められることもわかる(実施例4〜6)。
[調製例3]
調製例3では、調製例2の実施例4〜6と同様にして酸変性ポリエチレン樹脂を少量配合して複合材を調製した。詳細を下記実施例7〜10、比較例5として説明する。
<実施例7〜8>
実施例7〜8では、ポリエチレンラミネート加工紙(紙、ポリエチレン薄膜層及びアルミニウム薄膜層を有する)の損紙を、回転刃式の粉砕機(ホーライ社製)を使用して粉砕したものと、高密度ポリエチレン1(ノバテックHJ490、日本ポリエチレン(株)製)と、酸変性ポリエチレン1(マレイン酸変性ポリエチレン、FUSABOND、デュポン社製)とを、表3の上段に示す配合比で混合し、ニーダを用いて溶融混練して複合材を得た。実施例7では、最初に水50質量部を添加し、さらに、混練途中で水50質量部を添加した。また、実施例8では混練途中で水100質量部を添加した。こうして実施例7〜8のセルロース繊維分散樹脂複合材を得た。
<実施例9>
実施例9では、ポリエチレンラミネート加工紙(紙、ポリエチレン薄膜層及びアルミニウム薄膜層を有する)の損紙を、回転刃式の粉砕機(ホーライ社製)を使用して粉砕したものと、高密度ポリエチレン1(ノバテックHJ490、日本ポリエチレン(株)製)と、酸変性ポリエチレン1(マレイン酸変性ポリエチレン、FUSABOND、デュポン社製)とを、表3の上段に示す配合比で混合し、二軸押出機を用いて溶融混練して複合材を得た。実施例9では、溶融混練の最初から水100質量部を添加した。こうして、実施例9のセルロース繊維分散樹脂複合材を得た。
<実施例10>
実施例10では、ポリエチレンラミネート加工紙(紙、ポリエチレン薄膜層及びアルミニウム薄膜層を有する)の損紙を、回転刃式の粉砕機(ホーライ社製)を使用して粉砕したものと、高密度ポリエチレン1(ノバテックHJ490、日本ポリエチレン(株)製)と、酸変性ポリエチレン1(マレイン酸変性ポリエチレン、FUSABOND、デュポン社製)とを、表3の上段に示す配合比で混合し、ニーダを用いて溶融混練して複合材を得た。実施例10では混練途中で水100質量部を添加した。こうして得られた複合材をさらに、粉砕機による粉砕処理とニーダによる混錬処理に2回ずつ交互に繰り返し付した。こうして実施例10のセルロース繊維分散樹脂複合材を得た。
<比較例5>
比較例5では、ポリエチレンラミネート加工紙(紙、ポリエチレン薄膜層及びアルミニウム薄膜層を有する)の損紙を、回転刃式の粉砕機(ホーライ社製)を使用して粉砕したものと、高密度ポリエチレン1(ノバテックHJ490、日本ポリエチレン(株)製)と、酸変性ポリエチレン1(マレイン酸変性ポリエチレン、FUSABOND、デュポン社製)とを、表3の上段に示す配合比で混合し、ニーダを用いて溶融混練して複合材を得た。比較例5では混練の最初から水100質量部を添加した。こうして得られた複合材をさらに、粉砕機による粉砕処理とニーダによる混錬処理に2回ずつ交互に繰り返し付した。こうして比較例5のセルロース繊維分散樹脂複合材を得た。
各実施例ないし比較例のセルロース繊維の含有量を表3中段に、評価結果等を表3下段に示す。なお、下表中の各式の充足の欄において、○は充足(対応する式を満たす)、×は非充足(対応する式を満たさない)を意味する。
Figure 2020193263
上記表3に示されるように、同じセルロース材を用いて、同じ原料配合量とした場合でも、LL/LNが1.1よりも大きい複合材を用いた樹脂成形体において、引張強度1及び2と曲げ強度が向上していることがわかる(実施例10と比較例5との比較)。
また、本発明の規定を満たす複合材を用いた樹脂成形体はいずれも機械強度に優れ、なかでも[式3]〜[式3−4]を満たす場合に機械強度がより高められることもわかる(実施例7〜10)。
実施例7に係る複合材について、肉厚1mm、肉厚0.7mm、及び肉厚0.5mmの3箇所の薄肉部を有するワイヤーハーネスプロテクタ用模擬部品(図2)を射出成形により成形し、成形体の成形性を評価した。引張強度の試験は、上記引張強度1に準じて行った。
具体的には、成形条件は、以下のとおりとした。
成形条件は、シリンダー温度200℃、金型温度40℃、射出速度150mm/secとした。
模擬部品の形状は、全体的な形状は、内部が直方形状の空洞となっている直方体の一面を取って開口部を設けた箱状で、1つの底面と4つの側面を有している。この箱の側面の外側には突起部が複数設けられる。箱状部11の外寸は、高さ30mm×幅80mm×奥行25mmであり、壁厚は2mmである。
上記複数の突起部のうち突起部12は、突起部12を有する側面(80mm×25mm、面A)を平面視したときにコの字状の屋根と、面Aから垂直方向に延びる3つの壁を有し、3つの壁の肉厚は1mmの薄肉である(図(c)参照)。また、この突起部12の、面Aから垂直方向の高さは5mmである。
上記複数の突起部のうち突起部13は、高さ5mm×幅10mm×長さ10mmの中空の直方体で(この中空部は箱状部の空洞と繋がっている)、突起部12が設けられた側面Aと隣接する側面(30mm×80mm、面B)に設けられる。突起部13は、薄肉の壁及び屋根(面Bから垂直方向に延びる4面の壁の肉厚1mm、屋根の肉厚0.5mm)を有する。
上記複数の突起部のうち突起部14は、突起部12が設けられた側面と対向する側面(80mm×25mm、面A’)に設けられる。この側面の平面視において短辺方向に平行に長さ7mmで厚さ1mm、かつ、この側面から垂直方向に高さ4mmの形状の突起を、10mmの間隔で離間して設け、これらを2つの壁として、この2つ壁の端部同士を屋根状に繋いだ厚さ0.7mmの薄肉の面(屋根)を有する角筒状の構造である。
上記模擬部品形成用の金型のゲートは、面A’の、面Bと接合するのと反対側にあり、ゲート出口は6mm×1.5mmm、金型のランナーとスプールはT字状のランナー両端にゲートを配して2個の成形体部を配し、ランナーのサイズは直径4mm、長さ35mmであり、スプールのサイズは、長さ130mmで下流側に向かって拡径形状のもので、下流側(ランナー側)が直径7mmであり、上流側が直径3mmである。
実施例7に係る成形体は、厚みを記載した薄肉の箇所を含め成形体の形状が問題なく成形できるとともに、スプール、及びランナーでの材料破断の無く成形することができた。
[調製例4]
調製例4では、樹脂として高密度ポリエチレンを用い、また、少量の酸変性ポリエチレン樹脂を配合し、セルロース材として古紙を用いて複合材を調製した。詳細を下記実施例11〜13として説明する。
<実施例11〜13>
高密度ポリエチレン1(ノバテックHJ490、日本ポリエチレン(株)製)と、酸変性ポリエチレン1(マレイン酸変性ポリエチレン、FUSABOND、デュポン)と、古紙とを、表4の上段に示す配合比で混合し、ニーダを用いて溶融混練して複合材を得た。混練途中で水1.7質量部を添加した。
ここで、古紙として実施例11ではオフィスペーパのシュレッター細断物を、実施例12では、新聞紙の粉砕物(回転刃式の粉砕機(ホーライ社製)を使用)を、実施例13ではポリエチレンラミネート加工紙(紙、ポリエチレン薄膜層及びアルミニウム薄膜層を有する)の損紙の粉砕物(回転刃式の粉砕機(ホーライ社製)を使用)を使用した。
各実施例のセルロース繊維の含有量を表4中段に、評価結果等を表4下段に示す。
Figure 2020193263
上記表4の結果から、複合材のなかでも、[式3]〜[式3−4]を満たす場合に機械強度がより高められることがわかる(実施例11と実施例12〜13との比較)。
[調製例5]
調製例5では、樹脂として低密度ポリエチレンを用い、また、セルロース材としてラミネート紙の損紙を用いて複合材を調製した。詳細を下記実施例14〜17、比較例6として説明する。
<実施例14>
実施例14では、ポリエチレンラミネート加工紙(紙、ポリエチレン薄膜層及びアルミニウム薄膜層を有する)の損紙を、回転刃式の粉砕機(ホーライ社製)を使用して粉砕したものと、低密度ポリエチレン1(ノバテックLC600A、日本ポリエチレン(株)製)とを、表5の上段に示す配合比で混合できるように準備した。まず、ポリエチレンラミネート加工紙の損紙を粉砕したものを、ニーダに投入し運転し、その後、低密度ポリエチレン1をニーダに投入し溶融混練して実施例14の複合材を得た。
<実施例15>
実施例15では、ポリエチレンラミネート加工紙(紙、ポリエチレン薄膜層及びアルミニウム薄膜層を有する)の損紙を、回転刃式の粉砕機(ホーライ社製)を使用して粉砕したものと、低密度ポリエチレン1(ノバテックLC600A、日本ポリエチレン(株)製)とを、表5の上段に示す配合比で混合し、ニーダを用いて溶融混練して複合材を得た。混練途中では水40質量部を添加した。こうして実施例15のセルロース繊維分散樹脂複合材を得た。
<実施例16>
実施例16では、ポリエチレンラミネート加工紙(紙、ポリエチレン薄膜層及びアルミニウム薄膜層を有する)の損紙を、回転刃式の粉砕機(ホーライ社製)を使用して粉砕したものと、低密度ポリエチレン1(ノバテックLC600A、日本ポリエチレン(株)製)とを、表5の上段に示す配合比で混合し、ニーダを用いて溶融混練して複合材を得た。混練途中で水10質量部を添加して混合する操作を4回行った(水の総配合量は40質量部)。こうして実施例16のセルロース繊維分散樹脂複合材を得た。
<実施例17>
実施例17では、ポリエチレンラミネート加工紙(紙、ポリエチレン薄膜層及びアルミニウム薄膜層を有する)の損紙を、回転刃式の粉砕機(ホーライ社製)を使用して粉砕したものと、低密度ポリエチレン1(ノバテックLC600A、日本ポリエチレン(株)製)とを、表5の上段に示す配合比で混合し、ニーダを用いて溶融混練した。混練途中では水40質量部を添加した。得られた複合材をさらに、粉砕機による粉砕処理とニーダによる混錬処理に2回ずつ交互に繰り返し付した。こうして実施例17のセルロース繊維分散樹脂複合材を得た。
<比較例6>
比較例6では、ポリエチレンラミネート加工紙(紙、ポリエチレン薄膜層及びアルミニウム薄膜層を有する)の損紙を、回転刃式の粉砕機(ホーライ社製)を使用して粉砕したものと、低密度ポリエチレン1(ノバテックLC600A、日本ポリエチレン(株)製)とを、表5の上段に示す配合比で混合し、ニーダを用いて溶融混練した。混練の際には最初から水40質量部を添加した。得られた複合材をさらに、粉砕機による粉砕処理とニーダによる混錬処理に2回ずつ交互に繰り返し付した。こうして比較例6のセルロース繊維分散樹脂複合材を得た。
各実施例ないし比較例のセルロース繊維の含有量を表5中段に、評価結果等を表5下段に示す。
Figure 2020193263
上記表5に示されるように、同じセルロース材を用いて、同じ原料配合量とした場合でも、LL/LNが1.1よりも大きい複合材において、引張強度1及び2、曲げ強度及び曲げ弾性率のすべてが向上していることがわかる(実施例17と比較例6との比較)。
実施例16に係る複合材について、環状構造を有するとともに肉厚0.9mm、肉厚0.4mm及び肉厚0.2mm厚の薄肉の箇所を有する波付管用の端部部材(図3)を射出成形により成形し成形性を評価した。実施例16に係るの成形体は、薄肉部での穴空き等の成形不良もなく成形体の形状が問題なく成形できるとともに引張強度も十分なものであった。引張強度の試験は、上記引張強度1に準じて行った。
成形条件は、シリンダー温度200℃、金型温度40℃、射出速度150mm/secとした。
上記波付管用の端部部材は、具体的には、中空の円柱部21と、円柱部21の長さ方向の片側の端部に連なる、小径部が円柱部21と同径で端部に向かってラッパ状に広がった中空の円柱状の拡径部22とを有する。円柱部21は、内径が25.5mm、厚さが1.5mmであり、拡径部22は、端部(最大径部)の外径が50mm、厚さが1.2mmである。円柱部21と拡径部22を合わせた全長は40mmである。さらに円柱部21と拡径部22との境となる内側に、円柱部21の中空を塞ぐ形で円盤状の蓋部23を有し、この蓋部23は、円柱部21と繋がる箇所に幅1mmで全周に渡り、厚さ0.4mmと特に薄肉の部位24を有しており、蓋部23のこの箇所を除く中央部の厚さは0.9mmと薄肉である。蓋部23は、さらに蓋部23の拡径部22側面の円周よりに直径3mm、蓋部23からの高さ14mmの円柱状の突起25を有し、かつこの突起25の立ち上がりの外周部となる蓋部23の部分に幅1mmで厚さ0.2mmとなった極端に薄肉の部位26を有する。さらに、蓋部23は、蓋部23の拡径部22側面の中央部に長さ10mm、幅1mm、蓋部23からの高さ10mmの突起27を有する。さらに、円柱部21の側面の外周には螺旋状の山の突起部、即ち、波付管(螺旋波付け管)の内面にねじ込むことにより勘合可能とする部位を有する。
上記端部部材形成用の金型のゲートは、拡径部22の端部にあり、ゲート出口は6mm×1.5mmm、金型のランナーとスプールはT字状のランナー両端にゲートを配して2個の成形体部を配し、ランナーのサイズは直径4mm、長さ35mmであり、スプールのサイズは、長さ130mmで下流側に向かって拡径形状のもので、下流側(ランナー側)が直径7mmであり、上流側が直径3mmである。
さらに、実施例16に係る複合材について、実施例7と同様の、肉厚1mm、肉厚0.7mm、及び肉厚0.5mmの薄肉の箇所を有するワイヤーハーネスプロテクタ用模擬部品を射出成形により成形し、成形体の成形性を評価した。実施例16の成形体は、薄肉部での穴空き等の成形不良もなく成形体の形状が問題なく成形できるとともに引張強度も十分なものであった。
[調製例6]
調製例6では、樹脂として高密度ポリエチレンを用い、また、少量の酸変性ポリエチレン樹脂を配合し、セルロース材としてラミネート紙の損紙を用いて複合材を調製した。詳細を下記実施例18〜20として説明する。
<実施例18>
実施例18では、ポリエチレンラミネート加工紙(紙、ポリエチレン薄膜層及びアルミニウム薄膜層を有する)の損紙を、回転刃式の粉砕機(ホーライ社製)を使用して粉砕したものと、高密度ポリエチレン1(ノバテックHJ490、日本ポリエチレン(株)製)と、酸変性ポリエチレン1(マレイン酸変性ポリエチレン、FUSABOND、デュポン社製)とを、表6の上段に示す配合比で混合し、ニーダを用いて溶融混練して複合材を得た。この混練途中には水100質量部を添加した。こうして実施例18のセルロース繊維分散樹脂複合材を得た。
<実施例19>
実施例19では、ポリエチレンラミネート加工紙(紙、ポリエチレン薄膜層及びアルミニウム薄膜層を有する)の損紙を、回転刃式の粉砕機(ホーライ社製)を使用して粉砕したものと、高密度ポリエチレン1(ノバテックHJ490、日本ポリエチレン(株)製)と、酸変性ポリエチレン1(マレイン酸変性ポリエチレン、FUSABOND、デュポン社製)とを、表6の上段に示す配合比で混合し、ニーダを用いて溶融混練して複合材を得た。この混練途中には水5質量部を添加した。こうして実施例19のセルロース繊維分散樹脂複合材を得た。
各実施例のセルロース繊維の含有量を表6中段に、評価結果等を表6下段に示す。また、実施例8及び実施例5の結果も参考のため併記する。
Figure 2020193263
上記表6に示されるように、LW/LNが大きくなると、引張強度2の変動係数が大きくなる傾向にある(実施例19)。
[調製例7]
調製例7では、樹脂として高密度ポリエチレンを用い、また、少量の酸変性ポリエチレン樹脂を配合し、セルロース材として古紙を用いて複合材を調製した。詳細を下記実施例20〜21として説明する。
<実施例20〜21>
高密度ポリエチレン1(ノバテックHJ490、日本ポリエチレン(株)製)と、酸変性ポリエチレン1(マレイン酸変性ポリエチレン、FUSABOND、デュポン)と、古紙とを、表7の上段に示す配合比で混合し、ニーダを用いて溶融混練して複合材を得た。混練途中で水3.3質量部を添加した。
ここで、古紙として実施例20ではオフィスペーパのシュレッター細断物を、実施例21では、新聞紙の粉砕物(回転刃式の粉砕機(ホーライ社製)を使用)を使用した。
各実施例のセルロース繊維の含有量を表7中段に、評価結果等を表7下段に示す。さらに、各実施例の繊維長分布を示すグラフを図1に示す。図1中、Aが実施例20、Bが実施例21の複合材である。
Figure 2020193263
表7に示されるように、実施例20と実施例21を比較すると、長さ加重平均繊維長は実施例20の方が小さい。しかし、引張強度1及び2や曲げ強度は実施例20の方が高められている。これまで、セルロース繊維の繊維長が長い方が、一般に機械的物性が高められるとされてきた。しかし上記表7の結果は、LL/LNを一定のレベルに抑えることにより(例えばLL/LNを1.3より小さくすることにより、あるいは[式3−2]を充足する構成とすることにより)、セルロース繊維の繊維長が短くても、複合材の機械的物性を効果的に高めることができることを示している。
[調製例8]
調製例8では、樹脂としてポリプロピレンを用い、セルロース材としてラミネート紙の損紙を用いて複合材を調製した。詳細を下記実施例22〜25、比較例7として説明する。
Figure 2020193263
表8に示されるように、LL/LNが1.1よりも小さい比較例7の複合材を用いた成形体は、機械的物性に劣る結果となった。また、実施例22と実施例23とを比較すると、長さ加重平均繊維長は実施例22の方が小さい。しかし、引張強度2や曲げ強度は実施例22の方が高められている。上記の結果は、LL/LNを一定のレベルに抑えることにより(例えばLL/LNを1.3より小さくすることにより、あるいは[式3−3]を充足する構成とすることにより)、セルロース繊維の繊維長が短くても、複合材の機械的物性を効果的に高めることができることを示している。
また、表8の結果から、[式3−3]を充足する実施例22及び24の複合材を用いた成形体はいずれも、これを充足しない実施例23及び25の複合材に比べて優れた機械強度を示すこともわかる。

Claims (18)

  1. 樹脂中にセルロース繊維を分散してなるセルロース繊維分散樹脂複合材からなり、かつ肉厚が0.1mm以上である樹脂成形体であって、
    前記セルロース繊維の含有量が1質量%以上70質量%未満であり、
    下記測定条件により測定される前記セルロース繊維の長さ加重平均繊維長をLL、数平均繊維長をLNとしたとき、LLとLNが下記[式1]を満たす、樹脂成形体。
    <測定条件>
    前記セルロース繊維分散樹脂複合材を、該複合材中の樹脂を可溶な溶媒中に浸漬して得られる溶解残さについて、ISO 16065 2001で規定されたパルプ−光学的自動分析法による繊維長測定方法によりLLとLNを求める。
    [式1] 1.10<(LL/LN)<1.50
  2. 前記LLと前記LNが下記[式1−2]を満たす、請求項1に記載の樹脂成形体。
    [式1−2] 1.10<(LL/LN)<1.40
  3. 下記測定条件で測定される前記セルロース繊維の重さ加重平均繊維長をLWとしたとき、LWと前記LNが下記[式2]を満たす、請求項1又は2に記載の樹脂成形体。
    <測定条件>
    前記樹脂成形体を、該複合材中の樹脂を可溶な溶媒中に浸漬して得られる溶解残さについて、ISO 16065 2001で規定されたパルプ−光学的自動分析法による繊維長測定方法によりLWを求める。
    [式2] 1.10<(LW/LN)<3.00
  4. 前記LLと前記LNが下記[式3]を満たす、請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂成形体。ここで[式3]においてLL及びLNの単位は、μmである。
    [式3] (LL/LN)<(LL×0.0005+1.05)
  5. 前記LLと前記LNが下記[式3−2]を満たす、請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂成形体。ここで[式3−2]においてLL及びLNの単位は、μmである。
    [式3−2] (LL/LN)<(LL×0.0005+1.00)
  6. 前記セルロース繊維の長さ加重平均繊維長が0.3mm以上である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の樹脂成形体。
  7. 肉厚1mm以下の部位を少なくとも有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の樹脂成形体。
  8. 前記樹脂成形体中の前記セルロース繊維の含有量が下記測定方法により決定されるものであり、前記樹脂成形体中の前記セルロース繊維の含有量が5質量%以上50質量%未満である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の樹脂成形体。
    <測定方法>
    樹脂成形体の試料を、窒素雰囲気下において+10℃/分の昇温速度で熱重量分析(TGA)に付し、下記[式I]によりセルロース繊維の含有量を算出する。
    [式I] (セルロース繊維の含有量[質量%])=(200〜380℃の間における複合材試料の質量減少量[mg])×100/(熱重量分析に付す前の複合材試料の質量[mg])
  9. 前記樹脂が、ポリオレフィン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリスチレン樹脂、3−ヒドロキシブチレート−co−3−ヒドロキシヘキサノエート重合体樹脂、ポリブチレンサクシネート樹脂、及びポリ乳酸樹脂の1種又は2種以上を含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の樹脂成形体。
  10. 前記樹脂がポリオレフィン樹脂を含み、前記LL、LN及びLWの測定条件において複合材中の樹脂を可溶な溶媒中に浸漬して得られる溶解残さが、熱キシレン溶解残渣である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の樹脂成形体。
  11. 前記樹脂成形体が前記樹脂中にアルミニウムを分散してなる、請求項1〜10のいずれか1項に記載の樹脂成形体。
  12. 前記複合材が、カーボンブラック、光安定剤、屈折率が2以上の無機質粉体のいずれか1つ以上を含むポリオレフィン樹脂組成物である請求項1〜11のいずれか1項に記載の樹脂成形体。
  13. 前記樹脂成形体が、環状構造を有するもの、又は環状構造を有するものの多分割体である、請求項1〜12のいずれか1項に記載の樹脂成形体。
  14. 前記樹脂成形体が、長手方向に波形状が付与された波付管用の、接手部材又は端部材である、請求項1〜13のいずれか1項に記載の樹脂成形体。
  15. 前記樹脂の少なくとも一部及び/又は前記セルロース繊維の少なくとも一部がリサイクル材に由来する、請求項1〜14のいずれか1項に記載の樹脂成形体。
  16. 土木用、建材用、又は自動車用の部材用である、請求項1〜15のいずれか1項に記載の樹脂成形体。
  17. 請求項1〜16のいずれか1項に記載の樹脂成形体と他の材料とを組合せてなる複合部材。
  18. 土木用、建材用、又は自動車用の部材用である、請求項17に記載の複合部材。
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