JP2020186333A - 水性樹脂組成物、表面処理剤、及び、物品 - Google Patents

水性樹脂組成物、表面処理剤、及び、物品 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明が解決しようとする課題は、水を含有する水性樹脂組成物において、防汚性、耐屈曲性、及び、耐摩耗性に優れ、ヌメリ感のない皮膜が得られる水性樹脂組成物を提供することである。【解決手段】本発明は、イソシアネート基と反応する官能基を有する反応性シリコーン(s)を原料とするウレタン樹脂(A)、フッ素樹脂(B)、シリコーン化合物(C)、及び、水(D)を含有することを特徴とする水性樹脂組成物を提供するものである。前記シリコーン化合物(C)の含有量は、水性樹脂組成物の固形分中29質量%未満であることが好ましい。前記ウレタン樹脂(A)は、ポリカーボネートポリオールを原料とするものであることが好ましい。【選択図】なし

Description

本発明は、水性樹脂組成物、表面処理剤、及び、表面処理剤により形成された層を有する物品に関する。
自動車内装レザー用シートの製造工程においては、その表面に耐薬品性および意匠性付与の観点から、表面処理剤により仕上げがなされている。従来の表面処理剤に用いられる材料は、有機溶剤を含んだ溶剤系樹脂組成物が主流であったが、近年の環境規制の高まりを受け、有機溶剤を実質的に含まない水性表面処理剤の開発が進められている。
前記自動車内装レザー用シートとしては、近年淡色系のシートが好まれる傾向にあり、その需要が増加すると同時に、水性でかつ防汚機能を有する表面処理剤の需要が増加しつつある。しかしながら、従来の水性表面処理剤では、高い防汚性と、耐摩耗性等の従来からの要求特性とを両立することが困難であった。
これに対し、ポリウレタン樹脂、フッ素樹脂、及びシリコーン樹脂を含有する材料により、防汚層を形成する方法が提案されている(例えば、特許文献1を参照。)。しかしながら、係る方法ではヌメリ感があるとの指摘や、耐摩耗性、耐屈曲性(柔軟性)に劣るとの指摘があった。また、近年、防汚性の要求性能が高水準化しつつあり、更に汚染源も多様化しており、水性表面処理剤に従来から求められる要求特性と各種汚染源に対する防汚性とを両立することは非常に困難であった。
特開2015−214773号公報
本発明が解決しようとする課題は、水を含有する水性樹脂組成物において、防汚性、耐屈曲性、及び、耐摩耗性に優れ、ヌメリ感のない皮膜が得られる水性樹脂組成物を提供することである。
本発明は、イソシアネート基と反応する官能基を有する反応性シリコーン(s)を原料とするウレタン樹脂(A)、フッ素樹脂(B)、シリコーン化合物(C)、及び、水(D)を含有することを特徴とする水性樹脂組成物を提供するものである。
また、本発明は、前記水性樹脂組成物を含有することを特徴とする表面処理剤、及び、その表面処理剤により形成された層を有することを特徴とする物品を提供するものである。
本発明の水性樹脂組成物は、防汚性、耐屈曲性、及び、耐摩耗性に優れ、ヌメリ感のない皮膜を得ることができる。よって、本発明の水性樹脂組成物は、各種物品の表面処理剤として好適に用いることができる。
本発明の水性樹脂組成物は、イソシアネート基と反応する官能基を有する反応性シリコーン(s)を原料とするウレタン樹脂(A)、フッ素樹脂(B)、シリコーン化合物(C)、及び、水(D)を含有するものである。
前記ウレタン樹脂(A)は、優れた耐屈曲性、耐摩耗性を得られ、かつ、ヌメリ感のない(以下、「耐ヌメリ性」と略記する。)皮膜を得るうえで、イソシアネート基と反応する官能基を有する反応性シリコーン(s)を原料とするものを用いることが必須である。
前記ウレタン樹脂(A)は、後述する水(D)中に分散し得るものであり、例えば、アニオン性基、カチオン性基、ノニオン性基等の親水性基を有するウレタン樹脂;乳化剤で強制的に水(F)中に分散したウレタン樹脂などを用いることができる。これらのウレタン樹脂(A)は単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、製造安定性の点から、親水性基を有するウレタン樹脂を用いることが好ましく、より一層優れた耐ヌメリ性が図れる点から、アニオン性基を有するウレタン樹脂を用いることがより好ましい。
前記アニオン性基を有するウレタン樹脂を得る方法としては、例えば、カルボキシル基を有するグリコール化合物及びスルホニル基を有する化合物からなる群より選ばれる1種以上の化合物を原料として用いる方法が挙げられる。
前記カルボキシル基を有するグリコール化合物としては、例えば、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、2,2−ジメチロール酪酸、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−吉草酸等を用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
前記スルホニル基を有する化合物としては、例えば、3,4−ジアミノブタンスルホン酸、3,6−ジアミノ−2−トルエンスルホン酸、2,6−ジアミノベンゼンスルホン酸、N−(2−アミノエチル)−2−アミノエチルスルホン酸等を用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
前記カルボキシル基及びスルホニル基は、水性樹脂組成物中で、一部又は全部が塩基性化合物に中和されていてもよい。前記塩基性化合物としては、例えば、アンモニア、トリエチルアミン、ピリジン、モルホリン等の有機アミン;モノエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン等のアルカノールアミン;ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム等を含む金属塩基化合物などを用いることができる。
前記ウレタン樹脂(A)として、アニオン性基を有するウレタン樹脂(以下「アニオン性ウレタン樹脂」と略記する。)を用いる場合、前記アニオン性ウレタン樹脂の酸価としては、より一層優れた耐加水分解性、及び、耐摩耗性が得られる点から、20mgKOH/g以下であることが好ましく、3〜17mgKOH/gの範囲であることがより好ましく、5〜14mgKOH/gの範囲が更に好ましく、5〜13mgKOH/gの範囲が特に好ましい。前記アニオン性ウレタン樹脂の酸価の測定方法は、後述する実施例にて記載する。なお、前記アニオン性ウレタン樹脂の酸価を調整する方法としては、アニオン性基を付与する前述のカルボキシル基を有するグリコール化合物及びスルホニル基を有する化合物の使用量を調整する方法が挙げられる。
前記カルボキシル基を有するグリコール化合物及びスルホニル基を有する化合物の使用量としては、より一層優れた耐加水分解性が得られる点から、ウレタン樹脂(A)を構成する原料の合計質量中0.1〜5質量%の範囲であることが好ましく、0.3〜4質量%の範囲がより好ましく、0.5〜3.5質量%の範囲が更に好ましい。
前記カチオン性基を有するウレタン樹脂を得る方法としては、例えば、アミノ基を有する化合物の1種又は2種以上を原料として用いる方法が挙げられる。
前記アミノ基を有する化合物としては、例えば、トリエチレンテトラミン、ジエチレントリアミン等の1級及び2級アミノ基を有する化合物;N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン等のN−アルキルジアルカノールアミン、N−メチルジアミノエチルアミン、N−エチルジアミノエチルアミン等のN−アルキルジアミノアルキルアミンなどの3級アミノ基を有する化合物などを用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
前記ノニオン性基を有するウレタン樹脂を得る方法としては、例えば、オキシエチレン構造を有する化合物の1種又は2種以上を原料として用いる方法が挙げられる。
前記オキシエチレン構造を有する化合物としては、例えば、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシテトラメチレングリコール等のオキシエチレン構造を有するポリエーテルポリオールを用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
前記強制的に水(D)中に分散するウレタン樹脂を得る際に用いることができる乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビトールテトラオレエート、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン共重合体等のノニオン性乳化剤;オレイン酸ナトリウム等の脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、ナフタレンスルフォン酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、アルカンスルフォネートナトリウム塩、アルキルジフェニルエーテルスルフォン酸ナトリウム塩等のアニオン性乳化剤;アルキルアミン塩、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩等のカチオン性乳化剤などを用いることができる。これらの乳化剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
前記ウレタン樹脂(A)としては、具体的には、ポリオール(a1)、鎖伸長剤(a2)、前記した親水性基を有するウレタン樹脂を製造するために用いる原料、前記イソシアネート基と反応する官能基を有する反応性シリコーン(s)、及びポリイソシアネート(a3)の反応物を用いることができる。
前記ポリオール(a1)としては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリアクリルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリブタジエンポリオール等を用いることができる。これらのポリオールは単独で用いても2種以上を併用してもよい。前記ポリオール(a1)としては、より一層優れた耐摩耗性、耐薬品性、及び、耐候性が得られる点から、ポリカーボネートポリオールを用いることが好ましい。
前記ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、炭酸エステル及び/又はホスゲンと、水酸基を2個以上有する化合物との反応物を用いることができる。
前記炭酸エステルとしては、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等を用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
前記水酸基を2個以上有する化合物としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,8−ノナンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、トリメチロールプロパン、3−メチルペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、グリセリン等を用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、より一層優れた耐摩耗性、耐薬品性、及び、耐候性が得られる点から、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、3−メチルペンタンジオール、及び、1,10−デカンジオールからなる群から選ばれる1種以上の化合物を用いることが好ましく、1,6−ヘキサンジオールがより好ましい。
前記ポリカーボネートポリオールの使用量としては、より一層優れた耐薬品性、機械的強度、耐摩耗性、及び、耐候性が得られる点から、ポリオール(a1)中85質量%以上であることが好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上が更に好ましい。
前記ポリカーボネートポリオールの数平均分子量としては、より一層優れた耐薬品性、機械的強度、耐摩耗性、及び、耐候性が得られる点から、100〜100,000の範囲であることが好ましく、150〜10,000の範囲より好ましく、500〜5,000の範囲が更に好ましい。なお、前記ポリカーボネートポリオールの数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・カラムクロマトグラフィー(GPC)法により測定した値を示す。
前記ポリカーボネートポリオール以外の前記ポリオール(a1)の数平均分子量としては、より一層優れた耐候性が得られる点から、500〜100,000の範囲であることが好ましく、700〜50,000の範囲より好ましく、800〜10,000の範囲が更に好ましい。なお、前記ポリオール(a1)の数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・カラムクロマトグラフィー(GPC)法により測定した値を示す。
前記ポリオール(a1)の使用量としては、より一層優れた耐薬品性、機械的強度、耐摩耗性、耐候性、及び、機械的強度の点から、ウレタン樹脂(A)を構成する原料の合計質量中40〜90質量%の範囲であることが好ましく、45〜88質量%の範囲がより好ましく、50〜85質量%の範囲が更に好ましい。
前記鎖伸長剤(a2)は、としては、例えば、数平均分子量が50〜450の範囲のもの(前記ポリカーボネートポリオールを除く。)であり、具体的には、エチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、イソホロンジアミン、1,2−シクロヘキサンジアミン、1,3−シクロヘキサンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン、ヒドラジン等のアミノ基を有する鎖伸長剤;エチレングリコール、ジエチレンリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、サッカロース、メチレングリコール、グリセリン、ソルビトール、ビスフェノールA、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、トリメチロールプロパン等の水酸基を有する鎖伸長剤などを用いることができる。これらの鎖伸長剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
前記鎖伸長剤(a3)としては、前記した中でも、より一層優れた耐薬品性、機械的強度、耐摩耗性、及び、耐候性が得られる点から、アミノ基を有する鎖伸長剤を用いることが好ましく、ピペラジン及び/又はヒドラジンがより好ましく、ピペラジン及びヒドラジンの合計量としては、前記鎖伸長剤(a2)中30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上がより好ましく、60質量%以上が更に好ましい。また、前記鎖伸長剤(a2)としては、平均官能基数が3未満であること好ましく、2.5未満がより好ましい。
前記鎖伸長剤(a2)の使用量としては、耐加水分解性や耐熱性等の耐久性の点から、ウレタン樹脂(A)を構成する原料の合計質量中0.1〜10質量%の範囲であることが好ましく、0.5〜7質量%の範囲がより好ましく、0.8〜5質量%の範囲が更に好ましい。
前記前記イソシアネート基と反応する官能基を有する反応性シリコーン(s)としては、ウレタン樹脂(A)中に組み込まれ、より一層優れた耐摩耗性、及び、耐ヌメリ性が得られる点から、数平均分子量が500以上のものを用いることが好ましく、2,000以上のものがより好ましく、4,000以上のものがより好ましく、4,500〜50,000の範囲が更に好ましく、4,700〜30,000の範囲が更に好ましく、5,000〜20,000の範囲が特に好ましい。なお、前記反応性シリコーン(s)の数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・カラムクロマトグラフィー(GPC)法により測定した値を示す。
前記反応性シリコーン(s)としては、例えば、下記式(1)で示される片末端ジオール型反応性シリコーン、片末端モノオール型反応性シリコーン、片末端ジアミン型反応性シリコーン、及び片末端モノアミン型反応性シリコーン、下記式(2)で示される両末端ジオール型反応性シリコーン、両末端ジアミン型反応性シリコーン、両末端ジメルカプト型反応性シリコーン、及び両末端ジシラノール型反応性シリコーン、並びに、下記式(3)で示される側鎖モノアミン型反応性シリコーン等を用いることができる。これらの反応性シリコーンは単独で用いても2種以上を併用してもよい。
Figure 2020186333
(式(1)中、R及びRはそれぞれ独立して炭素原子数1〜10の範囲のアルキル基を示し、Xは下記式(X−1)〜(X−12)に示される構造を示し、nは50〜670の範囲の整数を示す。)
Figure 2020186333
(式(X−1)及び(X−2)中、R及びRはそれぞれ独立して炭素原子数1〜10の範囲のアルキレン基を示し、Rは水素原子又は炭素原子数1〜8の範囲のアルキル基を示す。)
Figure 2020186333
(式(X−3)及び(X−4)中、Rは炭素原子数1〜10の範囲のアルキレン基を示し、Rは水素原子又は炭素原子数1〜8の範囲のアルキル基を示す。)
Figure 2020186333
(式(X−5)及び(X−6)中、Rは炭素原子数1〜10の範囲のアルキレン基を示し、Rは水素原子又は炭素原子数1〜8の範囲のアルキル基を示す。)
Figure 2020186333
(式(X−7)及び(X−8)中、R及びRはそれぞれ独立して炭素原子数1〜10の範囲のアルキレン基を示し、Rは水素原子又は炭素原子数1〜8の範囲のアルキル基を示す。)
Figure 2020186333
(式(X−9)及び(X−10)中、R及びRはそれぞれ独立して炭素原子数1〜10の範囲のアルキレン基を示す。)
Figure 2020186333
(式(X−11)及び(X−12)中、Rは炭素原子数1〜10の範囲のアルキレン基を示す。)
Figure 2020186333
(式(2)中、Rは炭素原子数1〜10の範囲のアルキル基を示し、Yは下記式(Y−1)〜(Y−5)に示される構造を示し、nは50〜670の範囲の整数を示す。)
Figure 2020186333
Figure 2020186333
(式(Y−2)〜(Y−4)中、Rは炭素原子数1〜10の範囲のアルキレン基を示す。)
Figure 2020186333
(式(Y−5)中、R及びRはそれぞれ独立して炭素原子数1〜10の範囲のアルキレン基を示す。)
Figure 2020186333
(式(3)中、R及びRはそれぞれ炭素原子数1〜8の範囲のアルキル基を示し、Zは下記式(Z−1)〜(Z−2)に示される構造を示し、mは50〜670の範囲の整数を示し、nは1〜10の範囲の整数を示す。)
Figure 2020186333
(式(Z−1)中、Rは炭素原子数1〜10の範囲のアルキレン基を示す。)
Figure 2020186333
(式(Z−2)中、R及びRはそれぞれ独立して炭素原子数1〜10の範囲のアルキレン基を示す。)
前記反応性シリコーン(s)としては、ウレタン樹脂(A)の側鎖にシリコーン鎖が導入されるため、より一層優れた耐摩耗性、耐加水分解性、及び、耐ヌメリ性が得られる点から、前記式(1)で示される反応性シリコーンを用いることが好ましく、前記式(1)で示される反応性シリコーンの内、Xが前記式(X−1)、(X−7)、及び(X−9)からなる群より選ばれる1種以上である反応性シリコーンを用いることがより好ましく、Xが前記式(X−1)及び/又は(X−7)を示す反応性シリコーンを用いることが更に好ましい。また、前記式(1)中のR及びRがそれぞれ炭素原子数1〜3の範囲のアルキル基であり、nが50〜270の範囲の整数であり、前記式(X−1)及び(X−7)中のR及びRがそれぞれ炭素原子数1〜3の範囲のアルキレン基であり、Rが炭素原子数1〜3の範囲のアルキル基を示すものを用いることが好ましい。
前記好ましい反応性シリコーン(s)としては、例えば、JNC株式会社製「サイラプレーン FM−3321」、「サイラプレーン FM−3325」、「サイラプレーン FM−4421」、「サイラプレーン FM−4425」、「サイラプレーン FM−0421」、「サイラプレーン FM−0425」、「サイラプレーン FM−DA21」、「サイラプレーン FM−DA26」、信越化学工業株式会社製「X−22−176GX−A」、「X−22−176F」等を市販品として入手することができる。
前記反応性シリコーン(s)の使用量としては、より一層優れた耐摩耗性、耐加水分解性、及び、耐ヌメリ性が得られる点から、ウレタン樹脂(A)を構成する原料の合計質量中1〜25質量%の範囲であることが好ましく、3〜20質量%の範囲がより好ましく、3.8〜19質量%の範囲が更に好ましい。
前記ポリイソシアネート(a3)としては、例えば、フェニレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、カルボジイミド化ジフェニルメタンポリイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート及び/又は脂環式ポリイソシアネートなどを用いることができる。これらのポリイソシアネートは単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、耐光変色の点から、脂肪族ポリイソシアネート及び/又は脂環式ポリイソシアネートを用いることが好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、及びジシクロヘキシルメタンジイソシアネートからなる群より選ばれる1種以上のポリイソシアネートがより好ましく、脂環式ポリイソシアネートが更に好ましい。
前記ポリイソシアネート(a3)の使用量としては、製造安定性、及び得られる皮膜の機械物性の点から、ウレタン樹脂(A)を構成する原料の合計質量中5〜40質量%の範囲であることが好ましく、7〜30質量%の範囲がより好ましく、10〜25質量%の範囲が更に好ましい。
前記ウレタン樹脂(A)の製造方法としては、例えば、前記ポリオール(a1)、鎖伸長剤(a2)、前記親水性基を有するウレタン樹脂を製造するために用いる原料、前記反応性シリコーン(s)、及び、前記ポリイソシアネート(a3)を一括に仕込み反応させる方法が挙げられる。これらの反応は、例えば50〜100℃で3〜10時間行うことが挙げられる。
前記ウレタン樹脂(A)を製造する際の、前記ポリオール(a1)が有する水酸基、鎖伸長剤(a2)が有する水酸基及びアミノ基、前記親水性基を有するウレタン樹脂を製造するために用いる原料が有するイソシアネート基と反応する官能基、並びに前記反応性シリコーン(s)が有するイソシアネート基と反応する官能基の合計と、前記ポリイソシアネート(a3)が有するイソシアネート基とのモル比[イソシアネート基/イソシアネート基と反応する官能基の合計]としては、0.8〜1.2の範囲であることが好ましく、0.9〜1.1の範囲であることがより好ましい。
前記ウレタン樹脂(A)を製造する際には、前記ウレタン樹脂(A)に残存するイソシアネート基を失活させることが好ましい。前記イソシアネート基を失活させる場合には、メタノール等の水酸基を1個有するアルコールを用いることが好ましい。前記アルコールの使用量としては、ウレタン樹脂(A)100質量部に対し、0.001〜10質量部の範囲が好ましい。
また、前記ウレタン樹脂(A)を製造する際には、有機溶剤を用いてもよい。前記有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン化合物;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル化合物;酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル化合物;アセトニトリル等のニトリル化合物;ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド化合物などを用いることができる。これらの有機溶媒は単独で用いても2種以上を併用してもよい。なお、前記有機溶剤は、水性ウレタン樹脂組成物を得る際には蒸留法等によって除去されることが好ましい。
前記ウレタン樹脂(A)(固形分)の水性樹脂組成物中の含有量としてはより一層優れた耐薬品性、耐摩耗性、柔軟性、及び、耐候性が得られる点から、0.5〜40質量%の範囲であることが好ましく、1〜30質量%の範囲がより好ましい。
また、前記ウレタン樹脂(A)(固形分)の水性樹脂組成物の固形分中の含有量としては、より一層優れた耐薬品性、耐摩耗性、柔軟性、及び、耐候性が得られる点から、5〜35質量%の範囲であることが好ましく、8〜25質量%の範囲がより好ましい。
前記フッ素樹脂(B)は、その撥水性や撥油性に起因し、優れた防汚性を得るうえで必須の成分である。前記フッ素樹脂(B)としては、例えば、四フッ化エチレン樹脂(PTFE)、四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂(PFA)、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合樹脂(FEP)、四フッ化エチレン・エチレン共重合樹脂(ETFE)、フッ化ビニリデン樹脂(PVDF)、三フッ化塩化エチレン樹脂(PCTFE)、フッ化塩化エチレン・エチレン共重合樹脂(ECTFE);これらの樹脂と(メタ)アクリル樹脂との共重合体等を用いることができる。これらの樹脂は単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、より一層優れた防汚性が得られる点から、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合樹脂(FEP)、フッ化ビニリデン樹脂(PVDF)及び、フッ化ビニリデン樹脂(PVDF)と(メタ)アクリル樹脂との共重合体からなる群より選ばれる1種以上を用いることが好ましい。
前記フッ素樹脂(B)の最低造膜温度としては、より一層優れた防汚性が得られる点から、10〜60℃の範囲であることが好ましく、15〜40℃の範囲がより好ましい。なお、前記フッ素樹脂(B)の最低造膜温度は、JISK6828−2:2003に準拠し、測定した値を示す。
前記フッ素樹脂(B)(固形分)の水性樹脂組成物中の含有量としてはより一層優れた防汚性、耐屈曲性、及び耐モミ性が得られる点から、0.5〜40質量%の範囲であることが好ましく、3〜30質量%の範囲がより好ましい。
また、前記フッ素樹脂(B)(固形分)の水性樹脂組成物の固形分中の含有量としては、より一層優れた防汚性、耐屈曲性、及び耐モミ性が得られる点から、5〜45質量%の範囲であることが好ましく、10〜40質量%の範囲がより好ましく、15質量%以上25質量%未満の範囲が更に好ましい。
前記シリコーン化合物(C)は、ウレタン結合を有するものではなく、滑り性を付与し、優れた防汚性、及び、耐摩耗性を得るうえで必須の成分である。前記シリコーン化合物(C)としては、例えば、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ポリメチルハイドロジェンシロキサン、ポリメチルフェニルハイドロジェンシロキサン;これらの変性物;これらのシリコーン化合物とアクリルとの共重合体などを用いることができる。これらのシリコーン化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、より一層優れた防汚性、及び、耐摩耗性が得られる点から、ポリジメチルシロキサンを用いることが好ましい。
前記シリコーン化合物(C)の数平均分子量としては、より一層優れた防汚性、及び、耐摩耗性が得られる点から、15万〜70万の範囲であることが好ましく、20万〜30万の範囲がより好ましく、22万〜27万の範囲がより好ましい。なお、前記シリコーン化合物(C)の数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定した値を示し、具体的には実施例にてその測定方法を示す。
前記シリコーン化合物(C)(固形分)の水性樹脂組成物中の含有量としてはより一層優れた防汚性、耐摩耗性、及び、耐ヌメリ性が得られる点から、0.01〜15質量%の範囲であることが好ましく、0.5〜8質量%の範囲がより好ましい。
また、前記シリコーン化合物(C)(固形分)の水性樹脂組成物の固形分中の含有量としては、より一層優れた防汚性、耐摩耗性、及び、耐ヌメリ性が得られる点から、29質量%未満であることが好ましく、3〜18質量%の範囲がより好ましい。
前記水(D)としては、例えば、イオン交換水、蒸留水等を用いることができる。前記水(B)の含有量としては、塗工性、作業性および保存安定性の点から、水性樹脂組成物中30〜95質量%の範囲であることが好ましく、40〜90質量%の範囲がより好ましい。
本発明の水性樹脂組成物は、前記ウレタン樹脂(A)、前記フッ素樹脂(B)、前記シリコーン化合物(C)、及び、前記水(D)を必須成分として含有するが、必要に応じてその他の添加剤を用いてもよい。
前記その他の添加剤としては、例えば、シランカップリング剤(E)、フィラー(F)、有機ビーズ(G)、架橋剤(H)、増粘剤、沈降防止剤、ワックス、乳化剤、消泡剤、レベリング剤、粘弾性調整剤、湿潤剤、分散剤、防腐剤、可塑剤、浸透剤、香料、殺菌剤、殺ダニ剤、防かび剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、染料、顔料(例えば、チタン白、ベンガラ、フタロシアニン、カーボンブラック、パーマネントイエロー等)等を用いることができる。これらの添加剤は単独で用いても2種以上を併用しても良い。
前記その他の添加剤としては、より一層優れた防汚性、耐もみ性、及び、耐摩耗性が得られる点から、シランカップリング剤(E)を用いることが好ましい。また、前記その他の添加剤としては、より一層優れた艶消し効果が求められる場合には、前記フィラー(F)、及び、前記有機ビーズ(G)を用いることが好ましい。また、前記その他の添加剤としては、より一層優れた塗膜の機械的強度が求められる場合には、架橋剤(H)を含有することが好ましい。
前記シランカップリング剤(E)としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニル基を有するシランカップリング剤;2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシ基を有するシランカップリング剤;p−スチリルトリメトキシシラン等のスチリル基を有するシランカップリング剤;3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等のメタクリロイル基を有するシランカップリング剤;3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のアクリロイル基を有するシランカップリング剤;N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩等のアミノ基を有するシランカップリング剤;3−ウイレドプロピルトリアルコキシシラン等のウイレド基を有するシランカップリング剤;3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト基を有するシランカップリング剤;ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド等のスルフィド基を有するシランカップリング剤;トリス−(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート等のイソシアヌレート骨格を有するシランカップリング剤;3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート基を有するシランカップリング剤などを用いることができる。これらのシランカップリング剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、より一層優れた防汚性、耐もみ性、及び、耐摩耗性が得られる点から、アミノ基を有するシランカップリング剤を用いることが好ましい。
前記シランカップリング剤(E)を用いる場合における前記シランカップリング剤(G)(固形分)の水性樹脂組成物中の含有量としては、より一層優れた防汚性、耐もみ性、及び、耐摩耗性が得られる点から、0.1〜10質量%の範囲であることが好ましく、0.3〜5質量%の範囲がより好ましい。
また、前記シランカップリング剤(E)を用いる場合における前記シランカップリング剤(E)(固形分)の水性樹脂組成物の固形分中の含有量としては、より一層優れた防汚性、耐もみ性、及び、耐摩耗性が得られる点から、0.5〜20質量%の範囲であることが好ましく、1〜15質量%の範囲がより好ましい。
前記フィラー(F)としては、例えば、シリカ粒子、有機ビーズ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、タルク、水酸化アルミニウム、硫酸カルシウム、カオリン、雲母、アスベスト、マイカ、ケイ酸カルシウム、アルミナシリケイト等を用いることができる。これらのフィラーは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、より一層優れた艶消し効果が得られる点から、シリカ粒子を用いることが好ましい。
前記シリカ粒子としては、例えば、乾式シリカ、湿式シリカ等を用いることができる。これらの中でも、散乱効果が高く光沢値の調整範囲が広くなることから、乾式シリカが好ましい。これらシリカ粒子の平均粒子径としては、2〜14μmの範囲であることが好ましく、3〜12μmの範囲がより好ましい。なお、前記シリカ粒子の平均粒子径は、粒度分布測定結果の積算粒子量曲線において、その積算量が50%を占めるときの粒子径(粒度分布におけるD50での粒子径)を示す。
前記フィラー(F)を用いる場合の前記フィラー(F)(固形分)の水性樹脂組成物中の含有量としては、より一層優れた艶消し効果と防汚性とのバランスが得られる点から、0.01〜10質量%の範囲であることが好ましく、0.3〜5質量%の範囲がより好ましい。
また、前記フィラー(F)を用いる場合の前記フィラー(F)(固形分)の水性樹脂組成物の固形分中の含有量としては、より一層優れた艶消し効果と防汚性とのバランスが得られる点から、0.1〜7質量%の範囲であることが好ましく、0.5〜5質量%の範囲がより好ましい。
前記有機ビーズ(G)としては、例えば、アクリルビーズ、ウレタンビーズ、アクリルウレタンビーズ、シリコンビーズ、オレフィンビーズ等を用いることができる。これらの有機ビーズは単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、より一層優れた艶消し効果、及び、防汚性が得られる点から、アクリルビーズ、ウレタンビーズ、及び、アクリルウレタンビーズからなる群より選ばれる1種以上を用いることが好ましい。
前記有機ビーズ(E)の平均粒子径としては、より一層優れた艶消し効果、及び、防汚性が得られる点から、1〜10μmの範囲であることが好ましい。なお、前記有機ビーズ(E)の平均粒子径は、走査型電子顕微鏡にて有機ビーズ(E)を観察し、一定面積内に存在する100個の粒子各々の投影面積に等しい円の直径を粒子径として求め、更にこれを平均し求める方法により算出したものを示す。
前記有機ビーズ(G)を用いる場合の前記有機ビーズ(G)(固形分)の水性樹脂組成物中の含有量としては、より一層優れた艶消し効果、及び、防汚性が得られる点から、3〜30質量%の範囲であることが好ましく、5〜25質量%の範囲がより好ましい。
また、前記有機ビーズ(G)を用いる場合の前記有機ビーズ(G)(固形分)の水性樹脂組成物の固形分中の含有量としては、より一層優れた艶消し効果、及び、防汚性が得られる点から、10〜60質量%の範囲であることが好ましく、15〜50質量%の範囲がより好ましい。
前記フィラー(F)と、前記有機ビーズ(G)との質量比(固形分比)[(F)/(G)]としては、より一層優れた艶消し効果、及び、防汚性が得られる点から、1/99〜50/50の範囲であることが好ましく、3/97〜20/80の範囲がより好ましく、5/95〜15/85の範囲が更に好ましい。
前記架橋剤(H)としては、例えば、イソシアネート架橋剤、エポキシ架橋剤、カルボジイミド架橋剤、オキサゾリジン架橋剤、オキサゾリン架橋剤、メラミン架橋剤等を用いることができる。これらの架橋剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、塗膜の機械的強度をより向上し、より一層優れた防汚性が得られる点から、カルボジイミド架橋剤を用いることが好ましい。
前記架橋剤(E)を用いる場合における前記架橋剤(E)(固形分)の水性樹脂組成物中の含有量としては、より一層優れた防汚性、耐もみ性、及び、耐摩耗性が得られる点から、0.1〜10質量%の範囲であることが好ましく、0.3〜5質量%の範囲がより好ましい。
また、前記架橋剤(E)を用いる場合における前記架橋剤(E)(固形分)の水性樹脂組成物の固形分中の含有量としては、より一層優れた防汚性、耐もみ性、及び、耐摩耗性が得られる点から、0.5〜20質量%の範囲であることが好ましく、1〜15質量%の範囲がより好ましい。
以上、本発明の水性樹脂組成物は、防汚性、耐屈曲性、及び、耐摩耗性に優れ、ヌメリ感のない皮膜を得ることができる。よって、本発明の水性樹脂組成物は、合成皮革、ポリ塩化ビニル(PVC)レザー、熱可塑性オレフィン樹脂(TPO)レザー、ダッシュボード、インスツルメントパネル等の各種物品の表面処理剤として好適に用いることができる。
本発明の物品は、前記表面処理剤により形成された層を有する。
前記物品の具体的としては、例えば、合成皮革、人工皮革、天然皮革、ポリ塩化ビニル(PVC)レザーを用いた自動車内装シート、スポーツ靴、衣料、家具、熱可塑性オレフィン(TPO)レザー、ダッシュボード、インスツルメントパネル等が挙げられる。
前記表面処理剤による層の厚さとしては、例えば、0.1〜100μmの範囲である。
以下、実施例を用いて、本発明をより詳細に説明する。
[合成例1]ウレタン樹脂(A−1)水分散体の調製
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素還流管を備えた4ツ口フラスコに、窒素気流下、ポリカーボネートジオール(旭化成ケミカルズ株式会社製「DURANOL T5652」、数平均分子量:2,000)500質量部、片末端ジオール型反応性シリコーン(信越化学工業株式会社製「X−22−176GX−A」、数平均分子量:14,000、以下「片末端ジオール型Si−1」と略記する。)26質量部、2,2−ジメチロールプロピオン酸8質量部、メチルエチルケトン269質量部を加え、均一に混合した後、イソホロンジイソシアネート86質量部を加え、次いでジブチル錫ジラウレート0.1質量部を加え、70℃で約4時間反応させることによって、分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。次いで、得られたウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液にトリエチルアミン6質量部を加え、前記ウレタンプレポリマー中にカルボキシル基を中和した後、イオン交換水を加え、次いで、ピペラジン7質量部を加え反応させた。反応終了後、メチルエチルケトンを減圧下留去することによって、ウレタン樹脂(A−1)水分散体(不揮発分;32質量%、酸価;5KOHmg/g)を得た。
[合成例2]ウレタン樹脂(A−2)水分散体の調製
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素還流管を備えた4ツ口フラスコに、窒素気流下、ポリカーボネートジオール(旭化成ケミカルズ株式会社製「DURANOL T5652」、数平均分子量:2,000)500質量部、片末端ジオール型反応性シリコーン(信越化学工業株式会社製「X−22−176GX−A」、数平均分子量:14,000、以下「片末端ジオール型Si−1」と略記する。)26質量部、2,2−ジメチロールプロピオン酸8質量部、メチルエチルケトン269質量部を加え、均一に混合した後、イソホロンジイソシアネート86質量部を加え、次いでジブチル錫ジラウレート0.1質量部を加え、70℃で約4時間反応させることによって、分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。次いで、得られたウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液にトリエチルアミン6質量部を加え、前記ウレタンプレポリマー中にカルボキシル基を中和した後、イオン交換水を加え、次いで、ヒドラジン2.6質量部を加え反応させた。反応終了後、メチルエチルケトンを減圧下留去することによって、ウレタン樹脂(A−2)水分散体(不揮発分;32質量%、酸価;5KOHmg/g)を得た。
[比較合成例1]ウレタン樹脂(AR−1)水分散体の調整
攪拌機、温度計、および窒素還流管を備えた四つ口フラスコに、メチルエチルケトン250質量部、及びオクチル酸第一錫0.001質量部を入れ、次いで、ポリカーボネートポリオール−1(1,4−ブタンジオール及び1,6−ヘキサンジオールを原料とするもの、数平均分子量:1,000)200質量部、2,2−ジメチロールプロピオン酸15質量部、イソホロンジイソシアネート49質量部、ヘキサメチレンジイソシアネート34質量部を入れ、70℃で1時間反応させ、ウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。
次いで、このウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液に、ヒドラジン6.8質量部、トリエチルアミン15質量部を混合させた後に、イオン交換水820質量部を加えてウレタン樹脂(AR−1)が水に分散した乳化液を得た。
次いで、前記乳化液からメチルエチルケトンを留去し、更にイオン交換水を加えることで、固形分32質量%のウレタン樹脂(AR−1)水分散体を得た。
[実施例1]
合成例1で得られたウレタン樹脂(A−1)水分散体24質量部、フッ化ビニリデン樹脂の水分散体(最低造膜温度;31℃、固形分:40質量%、以下、「PVDF」と略記する。)20質量部、ポリジメチルシロキサンの水分散体(ポリジメチルシロキサンの含有率;65質量%、数平均分子量;25.5万、以下「PSMSi」と略記する。)4質量部、フィラー(エボニックデグサ社製「ACEMATT TS 100」、乾式法で製造されたシリカ粒子、平均粒子径:10μm、以下「シリカ」と略記する。)1質量部、有機ビーズ(軟質アクリルウレタンビーズ、平均粒子径:4μm、以下「AUビーズ」と略記する。)9質量部、水27質量部、カルボジイミド架橋剤(日清紡ケミカル株式会社製「カルボジライトV−02−L2」、固形分:40質量%、以下「NCN」と略記する。)3質量部、水分散ポリエチレンワックス(固形分:35質量%、以下「PEワックス」と略記する。)6質量部、増粘剤(株式会社ADEKA製「アデカノールUH−420」、固形分:30質量%、以下「増粘剤」と略記する。)6質量部を混合することで、水性樹脂組成物を得た。
[実施例2]
実施例1において、ウレタン樹脂(A−1)水分散体に代えて、合成例2で得られたウレタン樹脂(A−2)水分散体に変更した以外は、実施例1と同様にして水性樹脂組成物を得た。
[実施例3]
合成例1で得られたウレタン樹脂(A−1)水分散体28質量部、PVDF21質量部、PSMSi2質量部、シリカ1質量部、AUビーズ9質量部、水24質量部、NCN3質量部、PEワックス6質量部、増粘剤6質量部を混合することで、水性樹脂組成物を得た。
[実施例4]
合成例1で得られたウレタン樹脂(A−1)水分散体25質量部、PVDF14質量部、PSMSi12質量部、シリカ1質量部、AUビーズ9質量部、水25質量部、NCN3質量部、PEワックス6質量部、増粘剤5質量部を混合することで、水性樹脂組成物を得た。
[実施例5]
実施例1において、更にアミノ基を有するシランカップリング剤(N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、以下「シラン(1)」と略記する。)1質量部を配合することで、水性樹脂組成物を得た。
[実施例6]
実施例1において、シラン(1)3質量部を配合することで、水性樹脂組成物を得た。
[実施例7]
実施例6において、シラン(1)を、アミノ基を有するシランカップリング剤(3−アミノプロピルトリメトキシシラン、以下「シラン(2)」と略記する。)に変更した以外は、実施例6と同様にして水性樹脂組成物を得た。
[比較例1]
実施例1において、ウレタン樹脂(A−1)水分散体に代え、ウレタン樹脂(AR−1)水分散体を用いた以外は、実施例1と同様にして水性樹脂組成物を得た。
[数平均分子量の測定方法(1)]
合成例で用いたポリオールの数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・カラムクロマトグラフィー(GPC)法により、下記の条件で測定し得られた値を示す。
測定装置:高速GPC装置(東ソー株式会社製「HLC−8220GPC」)
カラム:東ソー株式会社製の下記のカラムを直列に接続して使用した。
「TSKgel G5000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G4000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G3000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G2000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
検出器:RI(示差屈折計)
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0mL/分
注入量:100μL(試料濃度0.4質量%のテトラヒドロフラン溶液)
標準試料:下記の標準ポリスチレンを用いて検量線を作成した。
(標準ポリスチレン)
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−1000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−2500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−5000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−1」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−2」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−4」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−10」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−20」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−40」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−80」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−128」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−288」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−550」
[数平均分子量の測定方法(2)]
シリコーン化合物(C)の数平均分子量は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)法により、下記の条件で測定し得られた値を示す。
測定装置:高速GPC装置(東ソー株式会社製「HLC−8220GPC」)
カラム:東ソー株式会社製の下記のカラムを直列に接続して使用した。
「TSKgel GMHXL」(7.8mmI.D.×30cm)×4本
検出器:RI(示差屈折計)
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0mL/分
注入量:100μL
濃度:分析試料:4mg/mLのテトラヒドロフラン溶液
標準物質:1mg/mLのテトラヒドロフラン溶液
標準物質:下記のポリエチレンオキシド/ポリエチレングリコールを用いて検量線を作成した。
標準物質
〈ポリエチレンオキシド〉
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリエチレンオキシド SE−70」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリエチレンオキシド SE−30」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリエチレンオキシド SE−15」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリエチレンオキシド SE−8」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリエチレンオキシド SE−5」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリエチレンオキシド SE−2」
〈ポリエチレングリコール〉
ポリエチレングリコール6,000
ポリエチレングリコール3,000
ポリエチレングリコール1,000
ポリエチレングリコール600
[ウレタン樹脂(A)の酸価の測定方法]
合成例で得られたウレタン樹脂(A)水分散体を乾燥し、乾燥固化した樹脂粒子の0.05g〜0.5gを、300mL三角フラスコに秤量し、次いで、テトラヒドロフランとイオン交換水との質量割合[テトラヒドロフラン/イオン交換水]が80/20の混合溶媒約80mLを加えそれらの混合液を得た。
次いで、前記混合液にフェノールフタレイン指示薬を混合した後、あらかじめ標定された0.1mol/Lの水酸化カリウム水溶液で滴定し、滴定に用いた水酸化カリウム水溶液の量から下記計算式(1−1−1)に従い、ウレタン樹脂(A)の酸価(mgKOH/g)を求めた。
計算式 A=(B×f×5.611)/S (1−1−1)
式中、Aは樹脂の固形分酸価(mgKOH/g)、Bは滴定に用いた0.1mol/L水酸化カリウム水溶液の量(mL)、fは0.1mol/L水酸化カリウム水溶液のファクター、Sは樹脂粒子の質量(g)、5.611は水酸化カリウムの式量(56.11/10)である。
[評価用サンプルの作製方法]
淡色合成皮革レザーの表面上に、30μmバーコーターを使用して、実施例及び比較例で得られた水性樹脂組成物を塗工し、120℃で2分間ギアオーブンにて乾燥させ、評価用サンプルを得た。
[防汚性(1):耐デニム汚れの評価方法]
大栄科学精機製作所製学振摩耗試験機「RT−200」のヘッドに、カットして濡らした青デニム片(Testfabrics社製「2550Y」)を取り付け、評価用サンプルを1kgの荷重で200往復摩耗した。その後、湿らせたウエスで汚れが取れなくなるまで評価用サンプルを拭き取り、拭き取り前後の色差(ΔE)を確認し、以下のように評価した。
「A」:1未満
「B」:1以上2.5未満
「C」:2.5以上4未満
「D」:4以上
[防汚性(2):耐黒染み汚れの評価方法]
大栄科学精機製作所製学振摩耗試験機「RT−200」のヘッドに、カットしたカーボンブラック片(Testfabrics社製「EMPA104」)を取り付け、評価用サンプルを1kgの荷重で100往復摩耗した。その後、湿らせたウエスで汚れが取れなくなるまで評価用サンプルを拭き取り、拭き取り前後の色差(ΔE)を確認し、以下のように評価した。
「A」:1未満
「B」:1以上2未満
「C」:2以上4未満
「D」:4以上
[耐屈曲性の評価方法]
評価用サンプルを、株式会社安田精機製作所製フレキシオメーターに取り付け、室温で10万回の試験を行い、試験後の評価用サンプルの外観変化を目視で確認し、以下のように評価した。
「T」:外観変化なし。
「F」:亀裂・破れ・剥がれの少なくとも1つが確認される。
[耐摩耗性の評価方法]
評価用サンプルを、平面摩耗試験機(インテック株式会社製「AR−4S」)を使用して、1kg荷重、6号帆布を使用して、摩耗状態を観察し、以下のように評価した。
「T」:10,000回の試験後に生地が露出していない。
「F」:10,000回の試験後に塗膜が破れて生地が露出している。
[耐ヌメリ性の評価方法]
評価用サンプルを、指触し、以下のように評価した。
「T」:ヌメリを感じない。
「F」:ヌメリを感じる。
[耐モミ性の評価方法]
評価用サンプルを、スコット揉み試験機(インテック社製「IT−SCA−W」)を使用して1kg荷重、1,000回の条件で試験を行い、試験後の評価サンプルの外観変化の有無を目視で確認し、以下のように評価した。
「T」:外観変化なし。
「F」:亀裂・破れ・剥がれの少なくとも1つが確認される。
Figure 2020186333
Figure 2020186333
本発明の水性樹脂組成物は、防汚性、耐屈曲性、及び、耐摩耗性に優れ、ヌメリ感のない皮膜が得られることがわかった。
一方、比較例1は、ウレタン樹脂(A)に代えて、反応性シリコーン(s)を原料としないウレタン樹脂を用いた態様であるが、皮膜にヌメリがあった。

Claims (8)

  1. イソシアネート基と反応する官能基を有する反応性シリコーン(s)を原料とするウレタン樹脂(A)、フッ素樹脂(B)、シリコーン化合物(C)、及び、水(D)を含有することを特徴とする水性樹脂組成物。
  2. 前記シリコーン化合物(C)の含有量が、水性樹脂組成物の固形分中29質量%未満である請求項1記載の水性樹脂組成物。
  3. 前記ウレタン樹脂(A)が、ポリカーボネートポリオールを原料とするものである請求項1又は2記載の水性樹脂組成物。
  4. 前記ウレタン樹脂(A)が、脂環式ポリイソシアネートを原料とするものである請求項1〜3のいずれか1項記載の水性樹脂組成物。
  5. 更に、シランカップリング剤(E)を含有する請求項1〜4のいずれか1項記載の水性樹脂組成物。
  6. 前記シランカップリング剤(E)が、アミノ基を有するものである請求項5記載の水性樹脂組成物。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項記載の水性樹脂組成物を含有することを特徴とする表面処理剤。
  8. 請求7記載の表面処理剤により形成された層を有することを特徴とする物品。
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