JP2020186282A - ポリプロピレン樹脂組成物、ポリプロピレン樹脂成形品 - Google Patents
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Abstract
【課題】耐熱試験および耐候試験前後において、優れた異音防止性と成形外観を有するポリプロピレン樹脂成形品が得られるポリプロピレン樹脂を提供すること。【解決手段】ポリプロピレン樹脂と、表面物性改良剤組成物を含有し、前記表面物性改良剤組成物は、エチレン−ビニル共重合体(A)と、エチレン・α−オレフィン共重合体ゴムおよび/またはエチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴム(B)と、脂肪酸アミド(C)と、グラフト重合体(D)を含有し、前記グラフト重合体(D)は、エチレンセグメント(D1)と、ビニル系共重合体セグメント(D2)を有し、前記セグメント(D2)は、芳香族ビニル単量体、およびシアン化ビニル単量体からなる群より選ばれる1種以上のビニル系単量体に由来する構成単位を有し、前記グラフト共重合体(D)中、前記セグメント(D1)の割合が、40〜80質量%であり、前記表面物性改良剤組成物中、前記グラフト重合体(D)の割合は1〜25質量%であり、前記ポリプロピレン樹脂100質量部に対して、前記表面物性改良剤組成物が0.1〜20質量部であるポリプロピレン樹脂組成物。【選択図】なし
Description
本発明は、ポリプロピレン樹脂組成物、ポリプロピレン樹脂成形品に関する。
ポリプロピレン樹脂は、安価で軽く、さらに、電気的性質、化学的性質、成形性などに優れているため、機構部品、容器類、各種フィルム、シート、テープ類、絶縁部品、被覆材料などとして様々な分野で広く使用されている。
ポリプロピレン樹脂(成形品)は、傷つき、摩耗が発生し易く、また、ポリプロピレン樹脂の部材同士、あるいは、ポリプロピレン樹脂の部材と他の素材からなる部材が擦れ合うと、軋み音が発生し易い。よって、これら問題を解決すべく、ポリプロピレン樹脂成形品の耐擦傷性、耐摩耗性、または異音防止性を向上させ得る表面物性改良剤組成物が知られている(特許文献1〜3)。これら特許文献で開示された表面物性改良剤組成物は、エチレン・α−オレフィン共重合体ゴム、またはエチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴムと、エチレン・ビニル共重合体と、脂肪酸モノアミドと、特定のグラフト共重合体を含有する。
一方、ポリプロピレン樹脂成形品は、その用途が拡大するにつれて、様々な環境下で使用されるようになってきており、経年後でも性能や外観が維持できる材料が求められている。しかしながら、特許文献1〜3で具体的に開示された表面物性改良剤組成物を用いたポリプロピレン樹脂成形品は、上記のような経年後でも性能が維持できることを想定した耐熱試験および耐候試験後には、異音防止性または外観に改善の余地があることが判明した。
以上のような事情に鑑み、本発明は、耐熱試験および耐候試験前後において、優れた異音防止性と成形外観を有するポリプロピレン樹脂成形品が得られるポリプロピレン樹脂を提供することを目的とする。
すなわち、本発明は、ポリプロピレン樹脂と、表面物性改良剤組成物を含有するポリプロピレン樹脂組成物であって、前記表面物性改良剤組成物は、エチレン−ビニル共重合体(A)と、エチレン・α−オレフィン共重合体ゴムおよび/またはエチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴム(B)と、脂肪酸アミド(C)と、グラフト重合体(D)を含有し、前記グラフト重合体(D)は、エチレンセグメント(D1)と、ビニル系共重合体セグメント(D2)を有し、前記ビニル系共重合体セグメント(D2)は、芳香族ビニル単量体、およびシアン化ビニル単量体からなる群より選ばれる1種以上のビニル系単量体に由来する構成単位を有し、前記グラフト共重合体(D)中、前記エチレンセグメント(D1)の割合が、40質量%以上80質量%以下であり、前記表面物性改良剤組成物中、前記グラフト重合体(D)の割合は1質量%以上25質量%以下であり、前記ポリプロピレン樹脂100質量部に対して、前記表面物性改良剤組成物が0.1質量部以上20質量部以下であることを特徴とするポリプロピレン樹脂組成物、に関する。
また、本発明は、前記ポリプロピレン樹脂組成物から得られるポリプロピレン樹脂成形品に関する。
本発明のポリプロピレン樹脂組成物における効果の作用メカニズムの詳細は不明な部分があるが、以下のように推定される。ただし、本発明は、この作用メカニズムに限定して解釈されなくてもよい。
本発明のポリプロピレン樹脂組成物は、ポリプロピレン樹脂と、表面物性改良剤組成物を含有し、前記表面物性改良剤組成物は、特定量の、エチレン−ビニル共重合体(A)と、エチレン・α−オレフィン共重合体ゴムおよび/またはエチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴム(B)と、脂肪酸アミド(C)と、グラフト重合体(D)を含有する。また、前記グラフト重合体(D)は、エチレンセグメント(D1)と、ビニル系共重合体セグメント(D2)を有し、前記ビニル系共重合体セグメント(D2)は、芳香族ビニル単量体、およびシアン化ビニル単量体からなる群より選ばれる1種以上のビニル系単量体に由来する構成単位を有する。前記グラフト共重合体(D)は、上記の2つのセグメントを有するため、前記エチレン−ビニル共重合体(A)かつエチレン・α−オレフィン共重合体ゴムおよび/またはエチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴム(B)と前記脂肪酸アミド(C)の相容化剤として機能すると推定されるため、前記エチレン−ビニル共重合体(A)かつエチレン・α−オレフィン共重合体ゴムおよび/またはエチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴム(B)と前記脂肪酸アミド(C)が良好に混合できることから、表面物性改良剤組成物のペレタイズ化を容易にでき、更にポリプロピレン樹脂中に前記脂肪酸アミド(C)が良分散することから、耐熱試験前後においても、優れた異音防止性と耐候試験前後においても優れた外観を発現する。
本発明のポリプロピレン樹脂組成物は、ポリプロピレン樹脂と、表面物性改良剤組成物を含有する。
<ポリプロピレン樹脂>
本発明のポリプロピレン樹脂は、主成分としてプロピレンに由来する構成単位を有するポリマーであり、例えば、プロピレンを単独で重合したホモポリプロピレン、プロピレンとエチレンなどのα−オレフィンを共重合したランダムポリプロピレン、ホモポリプロピレンを重合し、引き続きホモポリプロピレンの存在下にプロピレンとエチレンなどのα−オレフィンを共重合したブロックポリプロピレンなどが挙げられる。これらの中でも、剛性とフィルムにした際の透明性が優れる観点から、ホモポリプロピレンもしくはランダムポリプロピレンが好ましい。前記ポリプロピレン樹脂は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
本発明のポリプロピレン樹脂は、主成分としてプロピレンに由来する構成単位を有するポリマーであり、例えば、プロピレンを単独で重合したホモポリプロピレン、プロピレンとエチレンなどのα−オレフィンを共重合したランダムポリプロピレン、ホモポリプロピレンを重合し、引き続きホモポリプロピレンの存在下にプロピレンとエチレンなどのα−オレフィンを共重合したブロックポリプロピレンなどが挙げられる。これらの中でも、剛性とフィルムにした際の透明性が優れる観点から、ホモポリプロピレンもしくはランダムポリプロピレンが好ましい。前記ポリプロピレン樹脂は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
前記ホモポリプロピレンとしては、例えば、「プライムポリプロ J105G」、「プライムポリプロ J108M」(以上、(株)プライムポリマー製)、ランダムポリプロピレンとしては、「プライムポリプロ F227D」、「プライムポリプロ F219DA」、「プライムポリプロ F329RA」(以上、(株)プライムポリマー製)、ブロックポリマーとしては、「プライムポリプロ J704UG」、「プライムポリプロ J708UG」(以上、(株)プライムポリマー製)などが挙げられる。なお、ポリプロピレン樹脂の重合度(分子量)は特に限定されない。
<表面物性改良剤組成物>
本発明の表面物性改良剤組成物は、エチレン−ビニル共重合体(A)と、エチレン・α−オレフィン共重合体ゴムおよび/またはエチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴム(B)と、脂肪酸アミド(C)と、グラフト重合体(D)とを含有する。
本発明の表面物性改良剤組成物は、エチレン−ビニル共重合体(A)と、エチレン・α−オレフィン共重合体ゴムおよび/またはエチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴム(B)と、脂肪酸アミド(C)と、グラフト重合体(D)とを含有する。
<エチレン−ビニル共重合体(A)>
前記エチレン−ビニル共重合体(A)は、主成分のエチレンと、ビニル系単量体から合成される共重合体であり、ポリプロピレン樹脂成形品中で脂肪酸アミド(C)と相容し、脂肪酸アミド(C)のブリードアウトを抑制し、耐熱試験後においても機能を有すると推定される。前記エチレン−ビニル共重合体(A)は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。前記ビニル系単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸2エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなどのα,β−不飽和カルボン酸エステル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニルなどの飽和カルボン酸ビニルエステル;グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、イタコン酸グリシジルエステルなどの不飽和カルボン酸グリシジルエステル;無水マレイン酸、無水イタコン酸などのα,β−不飽和ジカルボン酸のイミド化合物類などが挙げられる。
前記エチレン−ビニル共重合体(A)は、主成分のエチレンと、ビニル系単量体から合成される共重合体であり、ポリプロピレン樹脂成形品中で脂肪酸アミド(C)と相容し、脂肪酸アミド(C)のブリードアウトを抑制し、耐熱試験後においても機能を有すると推定される。前記エチレン−ビニル共重合体(A)は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。前記ビニル系単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸2エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなどのα,β−不飽和カルボン酸エステル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニルなどの飽和カルボン酸ビニルエステル;グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、イタコン酸グリシジルエステルなどの不飽和カルボン酸グリシジルエステル;無水マレイン酸、無水イタコン酸などのα,β−不飽和ジカルボン酸のイミド化合物類などが挙げられる。
前記エチレン−ビニル共重合体(A)としては、例えば、エチレン−アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン−アクリル酸n−ブチル共重合体、エチレン−アクリル酸イソブチル共重合体、エチレン−アクリル酸2−エチルヘキシル共重合体、エチレン−メタクリル酸グリシジル共重合体(EGMA)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−アクリル酸エチル−メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル−無水マレイン酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル−メタクリル酸グリシジル共重合体などが挙げられる。これらの中でも、エチレン−アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン−アクリル酸n−ブチル共重合体、エチレン−メタクリル酸グリシジル共重合体(EGMA)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)が好ましい。なお、前記酢酸ビニルは、末端がケン化されていてもよい。
<エチレン・α−オレフィン共重合体ゴムおよび/またはエチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴム(B)>
前記エチレン・α−オレフィン共重合体ゴムおよび/またはエチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴム(B)は、表面物性改良剤組成物中で脂肪酸アミド(C)と相容し、脂肪酸アミド(C)のブリードアウトを抑制する機能を有する。前記エチレン・α−オレフィン共重合体ゴムおよび/またはエチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴム(B)は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
前記エチレン・α−オレフィン共重合体ゴムおよび/またはエチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴム(B)は、表面物性改良剤組成物中で脂肪酸アミド(C)と相容し、脂肪酸アミド(C)のブリードアウトを抑制する機能を有する。前記エチレン・α−オレフィン共重合体ゴムおよび/またはエチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴム(B)は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
前記α−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、2−メチル−1−プロペン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、5−メチル−1−ヘキセンなどが挙げられる。前記α−オレフィンは、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。また、非共役ジエンとしては、ジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、シクロオクタジエン、メチレンノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、ビニルノルボルネンなどが挙げられる。前記非共役ジエンは、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
前記エチレン・α−オレフィン共重合体ゴムの具体例としては、例えば、エチレン・プロピレン共重合体ゴム(EPR)、エチレン・1−ブテン共重合体ゴム、エチレン・1−ヘキセン共重合体ゴム、エチレン・1−オクテン共重合体ゴム(EOR)、プロピレン・1−ブテン共重合体ゴム、エチレン・プロピレン・1−ブテン共重合体ゴムなどが挙げられる。これら中でも、エチレン・プロピレン共重合体ゴム(EPR)、エチレン・1−オクテン共重合体ゴム(EOR)が好ましい。また、エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴムの具体例としては、例えば、エチレン・プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体ゴム(EPDM)、エチレン・プロピレン・ジシクロペンタジエン共重合体ゴムなどが挙げられる。
<脂肪酸アミド(C)>
前記脂肪酸アミド(C)は、ポリプロピレン樹脂成形品に耐擦傷性および異音防止性を付与する滑剤としての機能を有すると推定される。前記脂肪酸アミド(C)としては、公知のものが制限なく使用できる。成分(C)の脂肪酸部位の炭素原子数は特に限定されないが、当該部位の炭素原子数が12〜24であることが望ましい。脂肪酸部位の炭素原子数が12以上であることにより、良好な滑性が得られ、ポリプロピレン樹脂成形体に十分な耐擦傷性及び耐摩耗性を付与することができる。また、入手性の観点から、脂肪酸部位の炭素原子数が24以下の脂肪酸アミドが好ましい。前記脂肪酸アミド(C)は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
前記脂肪酸アミド(C)は、ポリプロピレン樹脂成形品に耐擦傷性および異音防止性を付与する滑剤としての機能を有すると推定される。前記脂肪酸アミド(C)としては、公知のものが制限なく使用できる。成分(C)の脂肪酸部位の炭素原子数は特に限定されないが、当該部位の炭素原子数が12〜24であることが望ましい。脂肪酸部位の炭素原子数が12以上であることにより、良好な滑性が得られ、ポリプロピレン樹脂成形体に十分な耐擦傷性及び耐摩耗性を付与することができる。また、入手性の観点から、脂肪酸部位の炭素原子数が24以下の脂肪酸アミドが好ましい。前記脂肪酸アミド(C)は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
成分(C)の具体例としては、例えば、ラウリン酸アミド、ミリスチン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミドなどの脂肪酸モノアミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミドなどの脂肪酸ビスアミドなどが挙げられる。これらの中でも、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミドが好ましい。
<グラフト重合体(D)>
前記グラフト重合体(D)は、エチレンセグメント(D1)と、ビニル系共重合体セグメント(D2)を有する。前記グラフト共重合体(D)は、上記の2つのセグメントを有するため、前記エチレン−ビニル共重合体(A)、エチレン・α−オレフィン共重合体ゴムおよび/またはエチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴム(B)と前記脂肪酸アミド(C)の相容化剤として機能すると推定される。よって、前記エチレン−ビニル共重合体(A)、エチレン・α−オレフィン共重合体ゴムおよび/またはエチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴム(B)、と前記脂肪酸アミド(C)が良好に混合できるため、表面物性改良剤組成物のペレタイズ化を容易にでき、かつ耐熱試験前後においても、優れた異音防止性と耐候試験前後において優れた外観を有するポリプロピレン樹脂成形品が得られる。前記グラフト重合体(D)は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
前記グラフト重合体(D)は、エチレンセグメント(D1)と、ビニル系共重合体セグメント(D2)を有する。前記グラフト共重合体(D)は、上記の2つのセグメントを有するため、前記エチレン−ビニル共重合体(A)、エチレン・α−オレフィン共重合体ゴムおよび/またはエチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴム(B)と前記脂肪酸アミド(C)の相容化剤として機能すると推定される。よって、前記エチレン−ビニル共重合体(A)、エチレン・α−オレフィン共重合体ゴムおよび/またはエチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴム(B)、と前記脂肪酸アミド(C)が良好に混合できるため、表面物性改良剤組成物のペレタイズ化を容易にでき、かつ耐熱試験前後においても、優れた異音防止性と耐候試験前後において優れた外観を有するポリプロピレン樹脂成形品が得られる。前記グラフト重合体(D)は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
前記エチレンセグメント(D1)は、グラフト共重合体(D)の主鎖部分に相当するポリエチレンである。前記エチレンセグメントとしては、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、および直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)などのポリエチレンに由来する構成単位であることが好ましい。これらポリエチレンは2種以上含んでいてもよい。これらの中でも、エチレンセグメント(D1)にビニル系共重合体セグメント(D2)を含浸させる観点から、低密度ポリエチレンおよび直鎖状低密度ポリエチレンが好ましい。なお、通常、密度が0.87g/cm3以上、0.93g/cm3以下のエチレンを低密度ポリエチレン、密度が0.93g/cm3超、0.96g/cm3以下のエチレンを中密度ポリエチレン、密度が0.96g/cm3超のエチレンを高密度ポリエチレンという。
上記したような密度や分岐の違うポリエチレンは、重合方法を適宜選択することによって得ることができる。重合方法としては、例えば、重合触媒として、チーグラー・ナッタ触媒などのマルチサイト触媒や、メタロセン系触媒などのシングルサイト触媒を用いて、気相重合、スラリー重合、溶液重合、および高圧イオン重合などの方法により、1段または2段以上の多段で行えばよい。
前記ビニル系共重合体セグメント(D2)は、芳香族ビニル単量体、およびシアン化ビニル単量体からなる群より選ばれる1種以上のビニル系単量体に由来する構成単位を有する(当該ビニル系単量体から合成される)共重合体である。
前記芳香族ビニル単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o−エチルスチレン、p−エチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、ビニルナフタレンなどが挙げられる。前記芳香族ビニル単量体は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
前記シアン化ビニル単量体としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが挙げられる。前記シアン化ビニル単量体は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
前記ビニル系共重合体セグメント(D2)は、上記の単量体以外のその他の単量体に由来する構成単位を含むことができる。前記その他の単量体としては、炭素数1以上18以下の直鎖または分岐鎖のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体;メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2,3−ジヒドロキシプロピル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、メタクリル酸ヒドロキシベンジルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル単量体;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミドなどのアミド基含有単量体;(メタ)アクリル酸などのカルボキシル基含有単量体;グリシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基含有単量体;ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートなどのグリコール系単量体などが挙げられる。前記その他の単量体は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
前記ビニル系共重合体セグメント(D2)中、前記芳香族ビニル単量体、および前記シアン化ビニル単量体からなる群より選ばれる1種以上のビニル系単量体に由来する構成単位の割合は、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましく、90質量%以上であることがよりさらに好ましく、95質量%以上であることがよりさらに好ましい。
前記グラフト共重合体(D)中、前記エチレンセグメント(D1)の割合が、40質量%以上80質量%以下である。前記グラフト共重合体(D)中、前記エチレンセグメント(D1)の割合は、50質量%以上、そして、70質量%以下であることが好ましい。
<グラフト共重合体(D)の製造方法>
前記グラフト共重合体(D)の製造方法は、特に制限はなく、懸濁重合法、乳化重合法、溶液重合法、塊状重合法などの公知の重合法を使用することができる。これらの中でも、懸濁重合法が好ましい。また、グラフト化する方法としては、特に制限はなく、ラジカル重合法、カチオン重合法、アニオンリビング重合法、カチオンリビング重合法などの公知のグラフト化方法を採用することができる。これらの中でも、ラジカル重合法が好ましく、とくに、グラフト共重合体を工業的に大量かつ効率的に製造できる観点から、過酸化結合を有するビニル系単量体(ラジカル重合性有機過酸化物)を用いたラジカル重合法がより好ましい。
前記グラフト共重合体(D)の製造方法は、特に制限はなく、懸濁重合法、乳化重合法、溶液重合法、塊状重合法などの公知の重合法を使用することができる。これらの中でも、懸濁重合法が好ましい。また、グラフト化する方法としては、特に制限はなく、ラジカル重合法、カチオン重合法、アニオンリビング重合法、カチオンリビング重合法などの公知のグラフト化方法を採用することができる。これらの中でも、ラジカル重合法が好ましく、とくに、グラフト共重合体を工業的に大量かつ効率的に製造できる観点から、過酸化結合を有するビニル系単量体(ラジカル重合性有機過酸化物)を用いたラジカル重合法がより好ましい。
前記過酸化結合を有するビニル系単量体(ラジカル重合性有機過酸化物)は、分子内にペルオキシ基およびエチレン性不飽和基を有する単量体であれば、その種類に特に制限はなく使用でき、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。前記過酸化結合を有するビニル系単量体としては、例えば、以下の一般式(1)または一般式(2)で表される化合物が挙げられる。
(式(1)中、R1は水素原子、またはメチル基を表し、R2は水素原子、メチル基、またはエチル基を表し、R3およびR4はそれぞれ炭素原子数1〜4のアルキル基を表し、R5は炭素原子数1〜12のアルキル基、フェニル基、アルキル置換フェニル基、または炭素原子数3〜12のシクロアルキル基を表す。mの値は、1または2である。)
(式(2)中、R6は水素原子、またはメチル基を表し、R7は水素原子、または炭素原子数1〜4のアルキル基を表し、R8およびR9はそれぞれ炭素原子数1〜4のアルキル基を表し、R10は炭素原子数1〜12のアルキル基、フェニル基、アルキル置換フェニル基、または炭素原子数3〜12のシクロアルキル基を表す。nの値は、0、1または2である。)
前記一般式(1)で表される単量体としては、例えば、t−ブチルペルオキシ(メタ)アクリロイロキシエチルカーボネート、t−アミルペルオキシ(メタ)アクリロイロキシエチルカーボネート、t−ヘキシルペルオキシ(メタ)アクリロイロキシエチルカーボネート、t−ブチルペルオキシ(メタ)アクリロイロキシエトキシエチルカーボネート、t−ヘキシルペルオキシ(メタ)アクリロイロキシエトキシエチルカーボネートなどが挙げられる。
前記一般式(2)で表される単量体としては、例えば、t−ブチルペルオキシ(メタ)アリルカーボネート、t−アミルペルオキシ(メタ)アリルカーボネート、t−ヘキシルペルオキシ(メタ)アリルカーボネートなどが挙げられる。
前記過酸化結合を有するビニル系単量体を用いたラジカル重合法は、例えば、前記ポリエチレンを、水を主成分とする媒体に懸濁した溶液(ポリエチレンの濃度:10〜30質量%)に、前記ビニル系単量体を含むモノマー成分と、前記過酸化結合を有するビニル系単量体と、重合開始剤を加え、前記ポリエチレン(ポリエチレンの粒子)中に、前記ビニル系単量体を含むモノマー成分と前記過酸化結合を有するビニル系単量体と前記重合開始剤を含浸させて、前記モノマー成分を重合してグラフト化前駆体を得る工程と、当該前駆体を溶融して混練(溶融混練)して、グラフト共重合体(D)を製造する工程を含む方法が挙げられる。なお、前記ポリエチレンを懸濁する際、必要に応じ、懸濁剤(例えば、ポリビニルアルコール)を前記エチレン−(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体100質量部に対して、0.1〜2質量部程度使用してもよく、また、分散剤(例えば、リン酸カルシウム)を前記ポリエチレン100質量部に対して、1〜20質量部程度使用してもよい。また、上記の含浸の際、前記ポリエチレン中にモノマー成分などを十分に含浸させるため、加温(例えば、60〜80℃程度)しながら、攪拌してもよい。
前記重合開始剤は、熱によりラジカルを発生するものであれば、特に限定されず、例えば、アゾ系重合開始剤、有機過酸化物、過硫酸塩、過酸化水素水、レドックス重合開始剤(酸化剤及び還元剤を組み合わせた重合開始剤)などの公知の重合開始剤が挙げられる。特に、懸濁重合法で使用する場合は、油溶性の有機過酸化物が好ましい。重合開始剤は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
前記重合開始剤は、重合開始剤の急激な分解を抑制し、重合開始剤や前記モノマー成分の残存を抑制する観点から、10時間半減期温度が、40℃以上であることが好ましく、50℃以上であることがより好ましく、そして、130℃以下であることが好ましく、100℃以下であることがより好ましく、80℃以下であることがさらに好ましい。
前記グラフト化前駆体を製造する工程において、前記過酸化結合を有するビニル系単量体は、前記ビニル系単量体を含むモノマー成分100質量部に対し、0.5〜10質量部であることが好ましく、1〜5質量部以上であることがより好ましい。
前記グラフト化前駆体を製造する工程において、前記重合開始剤は、前記ビニル系単量体を含むモノマー成分100質量部に対し、0.1〜10質量部以上であることが好ましく、0.5〜5質量部以上であることがより好ましい。
前記前駆体を製造する工程において、重合温度は、原料(特に、前記重合開始剤の10時間半減期温度)などによって異なるので一概には決定できないが、通常、65℃以上であることが好ましく、70℃以上であることがより好ましく、そして、90℃以下であることが好ましく、85℃以下であることがより好ましい。また、重合時間は、原料や反応温度などによって異なるので一概には決定できないが、通常、目的物の収率性を高める観点から、1.5時間以上であることが好ましく、2時間以上であることがより好ましく、そして、6時間以下であることが好ましく、5時間以下であることがより好ましい。
前記溶融混練としては、例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、混練押出機、一軸押出機、二軸押出機、ロールなどの混練機を用いて、前記前駆体を溶融して混練りする方法が挙げられる。混練りする回数は、1回または複数回であってもよい。混練りする時間は、使用する混練機の大きさなどによって異なるが、通常、3〜10分程度とすればよい。また、混練機の排出温度は、130〜350℃とすることが好ましく、150〜250℃とすることがより好ましい。
以下、本発明の表面物性改良剤組成物の配合量について説明する。
前記表面物性改良剤組成物中、前記エチレン−ビニル共重合体(A)の割合は50質量%以上70質量%以下であることが好ましい。前記表面物性改良剤組成物中、前記エチレン−ビニル共重合体(A)の割合は、耐ブリードアウト性を向上させる観点から、55質量%以上であることがより好ましく、そして、異音防止性を向上させる観点から、65質量%以下であることがより好ましい。
前記表面物性改良剤組成物中、前記エチレン・α−オレフィン共重合体ゴムおよび/またはエチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴム(B)の割合は10質量%以上30質量%以下であることが好ましい。前記表面物性改良剤組成物中、前記エチレン・α−オレフィン共重合体ゴムおよび/またはエチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴム(B)の割合は、耐ブリードアウト性を向上させる観点から15質量%以上であることがより好ましく、表面物性改良剤組成物のペレタイズ化を容易にする観点から、25質量%以下であることがより好ましい。
前記表面物性改良剤組成物中、前記脂肪酸アミド(C)の割合は5質量%以上、40質量%以下であることが好ましい。前記表面物性改良剤組成物中、前記脂肪酸アミド(C)の割合は、異音防止性を向上させる観点から、10質量%以上であることがより好ましく、15質量%以上であることがさらに好ましく、そして、表面物性改良剤組成物のペレタイズ化を容易にする観点から、35質量%以下であることがより好ましい。
前記表面物性改良剤組成物中、前記グラフト重合体(D)の割合は1質量%以上25質量%以下である。前記表面物性改良剤組成物中、前記グラフト重合体(D)の割合は、異音防止性を向上させる観点から、2質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましく、そして、耐候試験前後の外観を向上させる観点から、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましい。
前記表面物性改良剤組成物中、前記エチレン−ビニル共重合体(A)と前記エチレン・α−オレフィン共重合体ゴムおよび/またはエチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴム(B)と前記脂肪酸アミド(C)と前記グラフト重合体(D)の合計の割合は、80質量%以上であることが好ましく、85質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましく、95質量%以上であることがよりさらに好ましい。
本発明のポリプロピレン樹脂組成物は、前記ポリプロピレン樹脂と、前記表面物性改良剤組成物を含有する。前記表面物性改良剤組成物は、前記ポリプロピレン樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上20質量部以下である。前記表面物性改良剤組成物は、耐擦傷性、異音防止性をバランスよく向上させる観点から、前記ポリプロピレン樹脂100質量部に対して、2質量部以上10質量部以下であることが好ましく、3質量部以上7質量部以下であることがより好ましい。
なお、本発明のポリプロピレン樹脂組成物は、各種配合剤を用いることができる。配合剤としては、例えば、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリエステル、ポリアミド、アイオノマーなどの樹脂組成物、耐熱安定剤、老化防止剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、着色剤、滑剤、分散剤、発泡剤、可塑剤、耐衝撃改良剤などの添加剤が挙げられる。
<ポリプロピレン樹脂組成物の製造方法>
本発明のポリプロピレン樹脂組成物は、前記ポリプロピレン樹脂、表面物性改良剤組成物、任意の前記各種配合剤を混合することによって得られる。混合の方法は、とくに制限はなく、例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、混練押出機、一軸押出機、二軸押出機、ロールなどの混練機を用いて、溶融して混練りする方法などが挙げられる。また、上記の各成分を、任意の順序で添加し混練りしてもよく、同時に添加して混練りしてもよい。混練りする回数は、1回または複数回であってもよい。混練りする時間は、使用する混練機の大きさなどによって異なるが、通常、3〜10分程度とすればよい。また、混練機の排出(押出)温度は、150〜300℃程度とすることが好ましい。
本発明のポリプロピレン樹脂組成物は、前記ポリプロピレン樹脂、表面物性改良剤組成物、任意の前記各種配合剤を混合することによって得られる。混合の方法は、とくに制限はなく、例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、混練押出機、一軸押出機、二軸押出機、ロールなどの混練機を用いて、溶融して混練りする方法などが挙げられる。また、上記の各成分を、任意の順序で添加し混練りしてもよく、同時に添加して混練りしてもよい。混練りする回数は、1回または複数回であってもよい。混練りする時間は、使用する混練機の大きさなどによって異なるが、通常、3〜10分程度とすればよい。また、混練機の排出(押出)温度は、150〜300℃程度とすることが好ましい。
<ポリプロピレン樹脂成形品>
本発明のポリプロピレン樹脂成形品は、前記ポリプロピレン樹脂組成物を所定の形状に成形することにより得られる。成形方法としては、何ら限定されるものではないが、例えば、射出成形、押出成形、発泡成形などが挙げられ、成形の各種条件は適宜設定できる。発泡成形としては、例えば、特開2001−347522号公報、特開2009−299056号公報、特開2017−66197号公報などに記載されているような成形法が適用できる。
本発明のポリプロピレン樹脂成形品は、前記ポリプロピレン樹脂組成物を所定の形状に成形することにより得られる。成形方法としては、何ら限定されるものではないが、例えば、射出成形、押出成形、発泡成形などが挙げられ、成形の各種条件は適宜設定できる。発泡成形としては、例えば、特開2001−347522号公報、特開2009−299056号公報、特開2017−66197号公報などに記載されているような成形法が適用できる。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。
<実施例>
<グラフト重合体(D)の製造>
<製造例1−1>
内容積5Lの反応槽に、水2000gを入れ、懸濁剤としてポリビニルアルコール2.0gを溶解させ、さらに分散剤として第三リン酸カルシウム20gを分散させた。この中に、ポリエチレンとして、ポリエチレン(商品名「スミカセンG401」、住友化学(株)製)700gと、ビニル系単量体として、スチレン300gと、過酸化結合を有するビニル系単量体として、t−ブチルペルオキシメタクリロイロキシエチルカーボネート9gとを加え、攪拌しながら70℃に昇温した。続いて、反応槽内の温度が70℃に到達してから、さらに1時間攪拌を継続した後、ラジカル重合開始剤として、ジ−3,5,5−トリメチルヘキサノイルペルオキシド4.5gを投入し、70℃で5時間重合反応を行った。その後、室温まで冷却し、水洗、濾過、乾燥工程を経てグラフト化前駆体を得た。得られたグラフト化前駆体を、ラボプラストミル単軸押出機((株)東洋精機製作所製)を使用し、180℃にて押し出しを行い、グラフト化反応させることにより、製造例1−1のグラフト共重合体(D)を製造した。
<グラフト重合体(D)の製造>
<製造例1−1>
内容積5Lの反応槽に、水2000gを入れ、懸濁剤としてポリビニルアルコール2.0gを溶解させ、さらに分散剤として第三リン酸カルシウム20gを分散させた。この中に、ポリエチレンとして、ポリエチレン(商品名「スミカセンG401」、住友化学(株)製)700gと、ビニル系単量体として、スチレン300gと、過酸化結合を有するビニル系単量体として、t−ブチルペルオキシメタクリロイロキシエチルカーボネート9gとを加え、攪拌しながら70℃に昇温した。続いて、反応槽内の温度が70℃に到達してから、さらに1時間攪拌を継続した後、ラジカル重合開始剤として、ジ−3,5,5−トリメチルヘキサノイルペルオキシド4.5gを投入し、70℃で5時間重合反応を行った。その後、室温まで冷却し、水洗、濾過、乾燥工程を経てグラフト化前駆体を得た。得られたグラフト化前駆体を、ラボプラストミル単軸押出機((株)東洋精機製作所製)を使用し、180℃にて押し出しを行い、グラフト化反応させることにより、製造例1−1のグラフト共重合体(D)を製造した。
<製造例1−2〜1−3、比較製造例1−1〜1−3>
各製造例および比較製造例において、各原料の種類とその配合量を表1に示すように変えたこと以外は、実施例1−1と同様の方法により、グラフト共重合体(D)を製造した。
各製造例および比較製造例において、各原料の種類とその配合量を表1に示すように変えたこと以外は、実施例1−1と同様の方法により、グラフト共重合体(D)を製造した。
表1中、
LDPEは、低密度ポリエチレン(住友化学(株)製、商品名「スミカセンG401」);
LLDPEは、直鎖状低密度ポリエチレン((株)プライムポリマー製、商品名「(ウルトゼックス4570」;
EEAは、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(日本ポリエチレン(株)製、商品名「レクスパールEEA A4200」、アクリル酸エチルに由来する構成単位の割合が20質量%);
Stは、スチレン;
EAは、エチルアクリレート;
ANは、アクリロニトリル;を示す。
LDPEは、低密度ポリエチレン(住友化学(株)製、商品名「スミカセンG401」);
LLDPEは、直鎖状低密度ポリエチレン((株)プライムポリマー製、商品名「(ウルトゼックス4570」;
EEAは、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(日本ポリエチレン(株)製、商品名「レクスパールEEA A4200」、アクリル酸エチルに由来する構成単位の割合が20質量%);
Stは、スチレン;
EAは、エチルアクリレート;
ANは、アクリロニトリル;を示す。
<表面物性改良剤組成物の製造>
<製造例2−1>
エチレン−ビニル共重合体(A)として、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(商品名「レクスパールEEA A4200」、日本ポリエチレン(株)製)550gと、エチレン・α−オレフィン共重合体ゴムおよび/またはエチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴム(B)として、エチレン・オクテン共重合体ゴム(商品名「エンゲージ8100」、ダウケミカル(株)製)200gと、脂肪酸アミド(C)として、エルカ酸アミド(商品名「ニュートロンS」、日本精化(株)製)200gと、製造例1−1のグラフト共重合体(C)50gをドライブレンドした。その後、スクリュー径30mmの同軸方向二軸押出機((株)池貝製)を用いて、溶融混練(押出温度:180℃)した後、ペレタイズすることにより、製造例2−1の表面物性改良剤組成物を製造した。
<製造例2−1>
エチレン−ビニル共重合体(A)として、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(商品名「レクスパールEEA A4200」、日本ポリエチレン(株)製)550gと、エチレン・α−オレフィン共重合体ゴムおよび/またはエチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴム(B)として、エチレン・オクテン共重合体ゴム(商品名「エンゲージ8100」、ダウケミカル(株)製)200gと、脂肪酸アミド(C)として、エルカ酸アミド(商品名「ニュートロンS」、日本精化(株)製)200gと、製造例1−1のグラフト共重合体(C)50gをドライブレンドした。その後、スクリュー径30mmの同軸方向二軸押出機((株)池貝製)を用いて、溶融混練(押出温度:180℃)した後、ペレタイズすることにより、製造例2−1の表面物性改良剤組成物を製造した。
<製造例2−2〜2−6、比較製造例2−1〜2−5>
各製造例および比較製造例において、各原料の種類とその配合量を表2に示すように変えたこと以外は、製造例2−1と同様の方法により、表面物性改良剤組成物を製造した。
各製造例および比較製造例において、各原料の種類とその配合量を表2に示すように変えたこと以外は、製造例2−1と同様の方法により、表面物性改良剤組成物を製造した。
表2中、
EEAは、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(日本ポリエチレン(株)製、商品名「レクスパールEEA A4200」、アクリル酸エチルに由来する構成単位の割合が20質量%);
EVAは、エチレン−酢酸ビニル共重合体(東ソー(株)製、商品名「ウルトラセン751」、酢酸ビニルに由来する構成単位の割合が28質量%);
EORは、エチレン・オクテン共重合体ゴム(ダウケミカル(株)製、商品名「エンゲージ8100」;
EPRは、エチレン・プロピレン共重合体ゴム(住友化学(株)製、商品名「エスプレンSPOV0131」;
EAは、エルカ酸アミド(日本精化(株)製、商品名「ニュートロンS」;
OAは、オレイン酸アミド(日本精化(株)製、商品名「ニュートロン」;
EBSAは、エチレンビスステアリン酸アミド(三菱ケミカル(株)製、商品名「スリパックスE」);
EBOAは、エチレンビスオレイン酸アミド(三菱ケミカル(株)製、商品名「スリパックスO」);を示す。
EEAは、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(日本ポリエチレン(株)製、商品名「レクスパールEEA A4200」、アクリル酸エチルに由来する構成単位の割合が20質量%);
EVAは、エチレン−酢酸ビニル共重合体(東ソー(株)製、商品名「ウルトラセン751」、酢酸ビニルに由来する構成単位の割合が28質量%);
EORは、エチレン・オクテン共重合体ゴム(ダウケミカル(株)製、商品名「エンゲージ8100」;
EPRは、エチレン・プロピレン共重合体ゴム(住友化学(株)製、商品名「エスプレンSPOV0131」;
EAは、エルカ酸アミド(日本精化(株)製、商品名「ニュートロンS」;
OAは、オレイン酸アミド(日本精化(株)製、商品名「ニュートロン」;
EBSAは、エチレンビスステアリン酸アミド(三菱ケミカル(株)製、商品名「スリパックスE」);
EBOAは、エチレンビスオレイン酸アミド(三菱ケミカル(株)製、商品名「スリパックスO」);を示す。
<ポリプロピレン樹脂組成物、およびポリプロピレン樹脂成形品の製造>
<実施例1−1>
ポリプロピレン樹脂(商品名「プライムポリプロ J708G」、(株)プライムポリマー製)1000gと、製造例2−1の表面物性改良剤組成物20gをドライブレンドした。その後、シリンダ温度200℃に設定されたスクリュー径30mmの同軸方向二軸押出機((株)池貝製)を用いて、溶融混練(押出温度:200℃)した後、ペレタイズすることにより、ポリプロピレン樹脂組成物を製造した。得られたポリプロピレン樹脂組成物を、このペレットを射出成形(バレル温度:200〜210℃、金型温度:50℃)し、評価用試験片(長さ:60mm×幅:100mm×厚み:2mm)を作製した。あるいは、上記の溶融混練(押出温度:230〜250℃)した後、押出成形にてシート状の評価用試験片(長さ:100mm×幅:150mm×厚み:2mm)を作製した。また、発泡成形については、特開2001-347522号公報および特開2009-299056号公報を参考にして、評価用試験片(長さ:100mm×幅:150mm×厚み:4mm)を作製した。
<実施例1−1>
ポリプロピレン樹脂(商品名「プライムポリプロ J708G」、(株)プライムポリマー製)1000gと、製造例2−1の表面物性改良剤組成物20gをドライブレンドした。その後、シリンダ温度200℃に設定されたスクリュー径30mmの同軸方向二軸押出機((株)池貝製)を用いて、溶融混練(押出温度:200℃)した後、ペレタイズすることにより、ポリプロピレン樹脂組成物を製造した。得られたポリプロピレン樹脂組成物を、このペレットを射出成形(バレル温度:200〜210℃、金型温度:50℃)し、評価用試験片(長さ:60mm×幅:100mm×厚み:2mm)を作製した。あるいは、上記の溶融混練(押出温度:230〜250℃)した後、押出成形にてシート状の評価用試験片(長さ:100mm×幅:150mm×厚み:2mm)を作製した。また、発泡成形については、特開2001-347522号公報および特開2009-299056号公報を参考にして、評価用試験片(長さ:100mm×幅:150mm×厚み:4mm)を作製した。
<実施例1−2〜1−12、比較例1−1〜1−8>
各実施例および比較例において、各原料の種類とその配合量を表3に示すように変えたこと以外は、実施例1−1と同様の方法により、ポリプロピレン樹脂組成物、ポリプロピレン樹脂成形品(射出、押出、および発泡成形品)を製造した。
各実施例および比較例において、各原料の種類とその配合量を表3に示すように変えたこと以外は、実施例1−1と同様の方法により、ポリプロピレン樹脂組成物、ポリプロピレン樹脂成形品(射出、押出、および発泡成形品)を製造した。
上記で得られた成形品を用いて、異音防止性、外観を以下の方法にて評価した。結果を表3に示す。
<異音防止性の評価>
上記で得られた試験片(評価材)を、異音防止性の試験用のプレート(55mm×80mm×2mm)および相手材用のプレート(50mm×25mm×2mm)に切り出してバリ取りを行った後、温度25℃、湿度50%RHで12時間放置した。また、相手材としては、炭素鋼(S45C)のプレート(50mm×25mm×2mm))のプレートも使用した。
上記で得られた試験片(評価材)を、異音防止性の試験用のプレート(55mm×80mm×2mm)および相手材用のプレート(50mm×25mm×2mm)に切り出してバリ取りを行った後、温度25℃、湿度50%RHで12時間放置した。また、相手材としては、炭素鋼(S45C)のプレート(50mm×25mm×2mm))のプレートも使用した。
異音防止性は、上記の異音防止性の試験用のプレートと、相手材用のプレートをZiegler社のスティックスリップ測定装置SSP−04に固定し、荷重=40N、速度=1mm/sの条件でそれぞれ擦り合わせた時の軋み音リスク値を測定して、評価した。なお、軋み音リスク値は、値が小さいほど軋み音発生のリスクが低いことを示す。軋み音リスク値の判断基準は以下に示す通りである。
軋み音リスク値1〜3:軋み音発生のリスクが低い
軋み音リスク値4〜5:軋み音発生のリスクがやや高い
軋み音リスク値6〜10:軋み音発生のリスクが高い
軋み音リスク値4〜5:軋み音発生のリスクがやや高い
軋み音リスク値6〜10:軋み音発生のリスクが高い
本発明の樹脂成形体は、上記の異音防止性の評価において、軋み音リスク値が3以下を良好とした。
<外観の評価>
外観に関しては、上記で得られた成形品を目視により、以下の基準により評価した。
○:良好(ブリードアウト、フローマーク、ベタツキなどがない。)
×:不良(ブリードアウト、フローマーク、ベタツキなどが存在する。)
なお、ブリードアウトとは成形品の表面に、低分子量成分が析出し、成形品表面で粉化する現象をいう。フローマークとは、成形体のゲート付近に円形波紋ができる外観不良である。ベタツキとは、成形品表面を指で触った際にタック性が感じられるものを指す。
外観に関しては、上記で得られた成形品を目視により、以下の基準により評価した。
○:良好(ブリードアウト、フローマーク、ベタツキなどがない。)
×:不良(ブリードアウト、フローマーク、ベタツキなどが存在する。)
なお、ブリードアウトとは成形品の表面に、低分子量成分が析出し、成形品表面で粉化する現象をいう。フローマークとは、成形体のゲート付近に円形波紋ができる外観不良である。ベタツキとは、成形品表面を指で触った際にタック性が感じられるものを指す。
<耐熱試験後の異音防止性の評価>
樹脂成形体の経年変化を想定した試験として、上記の異音防止性の試験用のプレートを80℃の送風機能付き恒温槽に300時間静置した。続いて、25℃、50%RHの恒温槽に24時間放置した後、上記の相手材用のプレートを用いて、上記同様に、軋み音リスク値を測定した。なお、軋み音リスク値判断基準は、上記と同様である。
樹脂成形体の経年変化を想定した試験として、上記の異音防止性の試験用のプレートを80℃の送風機能付き恒温槽に300時間静置した。続いて、25℃、50%RHの恒温槽に24時間放置した後、上記の相手材用のプレートを用いて、上記同様に、軋み音リスク値を測定した。なお、軋み音リスク値判断基準は、上記と同様である。
<耐候試験後の外観評価>
スガ試験機社製サンシャインウェザメーターに1水準あたり3枚セットし、槽内温度63℃、水滴飛散なしの条件で200時間照射処理し、それぞれ3枚の試験片について外観評価を行った。なお、外観評価の判断基準は、上記の外観評価と同様であり、試験片3枚中1枚でも外観不良があった場合は、×とした。
スガ試験機社製サンシャインウェザメーターに1水準あたり3枚セットし、槽内温度63℃、水滴飛散なしの条件で200時間照射処理し、それぞれ3枚の試験片について外観評価を行った。なお、外観評価の判断基準は、上記の外観評価と同様であり、試験片3枚中1枚でも外観不良があった場合は、×とした。
<総合評価の基準>
総合評価の基準は、耐熱試験前後において軋み音リスク値が3以下、耐候試験前後の外観評価が〇であるものを合格基準とした。
総合評価の基準は、耐熱試験前後において軋み音リスク値が3以下、耐候試験前後の外観評価が〇であるものを合格基準とした。
表3中、
J708UGは、ポリプロピレン樹脂((株)プライムポリマー製、商品名「プライムポリプロ J708UG」);
J704UGは、ポリプロピレン樹脂((株)プライムポリマー製、商品名「プライムポリプロ J704UG」);
J105Gは、ポリプロピレン樹脂((株)プライムポリマー製、商品名「プライムポリプロ J105G」);
J226Tは、ポリプロピレン樹脂((株)プライムポリマー製、商品名「プライムポリプロJ226T」);
EAは、エルカ酸アミド(日本精化(株)製、商品名「ニュートロンS」);を示す。
J708UGは、ポリプロピレン樹脂((株)プライムポリマー製、商品名「プライムポリプロ J708UG」);
J704UGは、ポリプロピレン樹脂((株)プライムポリマー製、商品名「プライムポリプロ J704UG」);
J105Gは、ポリプロピレン樹脂((株)プライムポリマー製、商品名「プライムポリプロ J105G」);
J226Tは、ポリプロピレン樹脂((株)プライムポリマー製、商品名「プライムポリプロJ226T」);
EAは、エルカ酸アミド(日本精化(株)製、商品名「ニュートロンS」);を示す。
Claims (6)
- ポリプロピレン樹脂と、表面物性改良剤組成物を含有するポリプロピレン樹脂組成物であって、
前記表面物性改良剤組成物は、エチレン−ビニル共重合体(A)と、エチレン・α−オレフィン共重合体ゴムおよび/またはエチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴム(B)と、脂肪酸アミド(C)と、グラフト重合体(D)を含有し、
前記グラフト重合体(D)は、エチレンセグメント(D1)と、ビニル系共重合体セグメント(D2)を有し、
前記ビニル系共重合体セグメント(D2)は、芳香族ビニル単量体およびシアン化ビニル単量体からなる群より選ばれる1種以上のビニル系単量体に由来する構成単位を有し、
前記グラフト共重合体(D)中、前記エチレンセグメント(D1)の割合が、40質量%以上80質量%以下であり、
前記表面物性改良剤組成物中、前記グラフト重合体(D)の割合は1質量%以上25質量%以下であり、
前記ポリプロピレン樹脂100質量部に対して、前記表面物性改良剤組成物が0.1質量部以上20質量部以下であることを特徴とするポリプロピレン樹脂組成物。 - 前記エチレンセグメント(D1)は、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、および直鎖状低密度ポリエチレンからなる群より選ばれる1種以上のポリエチレンに由来する構成単位であることを特徴とする請求項1記載のポリプロピレン樹脂組成物。
- 前記ビニル系共重合体セグメント(D2)中、芳香族ビニル単量体、およびシアン化ビニル単量体からなる群より選ばれる1種以上のビニル系単量体に由来する構成単位の割合が、70質量%以上であることを特徴とする請求項1または2記載のポリプロピレン樹脂組成物。
- 前記表面物性改良剤組成物中、前記エチレン・α−オレフィン共重合体ゴムおよび/またはエチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴム(B)の割合は10質量%以上30質量%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリプロピレン樹脂組成物。
- 前記表面物性改良剤組成物中、前記脂肪酸アミド(C)の割合は5質量%以上40質量%以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリプロピレン樹脂組成物。
- 請求項1〜5のいずれかに記載のポリプロピレン樹脂組成物から得られることを特徴とするポリプロピレン樹脂成形品。
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