JP2006143945A - 熱可塑性エラストマー組成物、及びその成型体 - Google Patents
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Abstract
【課題】 滑剤である脂肪酸アミドのブリードを抑制して外観を維持でき、耐擦傷性及び耐摩耗性が長期にわたり良好で、かつ成形性に優れた熱可塑性エラストマー組成物、及びその成型体を提案する。
【解決手段】 熱可塑性エラストマー組成物、及びその成型体は、スチレン系熱可塑性エラストマーを主成分とし、下記の(A)と(B)の各成分、又は(A)と(B)と(C)の各成分から構成されるグラフト共重合体組成物を含有することを特徴とする。(A)オレフィン系重合体セグメント(a)を幹成分とし、少なくとも1種のビニル系単量体から形成されるビニル系重合体セグメント(b)を枝成分とし、一方のセグメントが他方のセグメント中に粒子径0.001〜10μmの微細な粒子として分散相を形成している多相構造型のグラフト共重合体(B)炭素数10〜25の脂肪酸から形成される脂肪酸アミド(C)エチレンと少なくとも1種のビニル単量体から形成される共重合体。
【選択図】 なし
【解決手段】 熱可塑性エラストマー組成物、及びその成型体は、スチレン系熱可塑性エラストマーを主成分とし、下記の(A)と(B)の各成分、又は(A)と(B)と(C)の各成分から構成されるグラフト共重合体組成物を含有することを特徴とする。(A)オレフィン系重合体セグメント(a)を幹成分とし、少なくとも1種のビニル系単量体から形成されるビニル系重合体セグメント(b)を枝成分とし、一方のセグメントが他方のセグメント中に粒子径0.001〜10μmの微細な粒子として分散相を形成している多相構造型のグラフト共重合体(B)炭素数10〜25の脂肪酸から形成される脂肪酸アミド(C)エチレンと少なくとも1種のビニル単量体から形成される共重合体。
【選択図】 なし
Description
本発明は、滑剤である脂肪酸アミドのブリードを抑制して外観を維持でき、耐擦傷性及び耐摩耗性が長期にわたり良好で、かつ成形性に優れた熱可塑性エラストマー組成物、及びその成型体に関するものである。
熱可塑性エラストマーは、近年の環境問題、リサイクル問題、省エネルギー化等から軟質塩ビ代替、ゴム代替として大きくその需要を伸びている。その中でもスチレン系エラストマーは、オレフィン系エラストマーと比較して、透明性、柔軟性、耐擦傷性に優れるため、自動車部品、家電部品、雑貨等の様々な用途で使用されている。しかしながら、スチレン系エラストマーは、軟質塩ビと比較して耐擦傷性で劣るため、更なる向上が求められていた。
このような状況下で、高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミドといった有機滑剤や、低粘度のシリコーンオイルを添加し、成形品の表面滑り性を大きくすることで改良する試みがなされている。
しかしながら、これらのものは経時あるいは熱などにより表面へ著しく移行するために、成形品の外観が損なわれたり、耐擦傷性が低下してしまう問題がある。
しかしながら、これらのものは経時あるいは熱などにより表面へ著しく移行するために、成形品の外観が損なわれたり、耐擦傷性が低下してしまう問題がある。
そこで、特許文献1では粘度が50000cst以上の高粘度のシリコーンオイルを導入することによって耐傷つき性、べたつき性、射出成形時の離形性等の改善検討がされているが、耐擦傷性について更なる向上が求められていた。
本発明は上記従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、滑剤である脂肪酸アミドのブリードを抑制して外観を維持でき、耐擦傷性及び耐摩耗性が長期にわたり良好で、かつ成形性に優れた熱可塑性エラストマー組成物、及びその成型体に関するものである。
前記の課題を達成するために、本発明の第1の発明の熱可塑性エラストマー組成物は、スチレン系熱可塑性エラストマーを主成分とし、下記の(A)と(B)の各成分から構成されるグラフト共重合体組成物を含有することを特徴とするものである。
(A)オレフィン系重合体セグメント(a)を幹成分とし、少なくとも1種のビニル系単量体から形成されるビニル系重合体セグメント(b)を枝成分とし、一方のセグメントが他方のセグメント中に粒子径0.001〜10μmの微細な粒子として分散相を形成している多相構造型のグラフト共重合体
(B)炭素数10〜25の脂肪酸から形成される脂肪酸アミド
(A)オレフィン系重合体セグメント(a)を幹成分とし、少なくとも1種のビニル系単量体から形成されるビニル系重合体セグメント(b)を枝成分とし、一方のセグメントが他方のセグメント中に粒子径0.001〜10μmの微細な粒子として分散相を形成している多相構造型のグラフト共重合体
(B)炭素数10〜25の脂肪酸から形成される脂肪酸アミド
第2の発明の熱可塑性エラストマー組成物は、スチレン系熱可塑性エラストマーを主成分とし、下記の(A)と(B)と(C)の各成分から構成されるグラフト共重合体組成物を含有することを特徴とするものである。
(A)オレフィン系重合体セグメント(a)を幹成分とし、少なくとも1種のビニル系単量体から形成されるビニル系重合体セグメント(b)を枝成分とし、一方のセグメントが他方のセグメント中に粒子径0.001〜10μmの微細な粒子として分散相を形成している多相構造型のグラフト共重合体
(B)炭素数10〜25の脂肪酸から形成される脂肪酸アミド
(C)エチレンと少なくとも1種のビニル単量体から形成される共重合体
(A)オレフィン系重合体セグメント(a)を幹成分とし、少なくとも1種のビニル系単量体から形成されるビニル系重合体セグメント(b)を枝成分とし、一方のセグメントが他方のセグメント中に粒子径0.001〜10μmの微細な粒子として分散相を形成している多相構造型のグラフト共重合体
(B)炭素数10〜25の脂肪酸から形成される脂肪酸アミド
(C)エチレンと少なくとも1種のビニル単量体から形成される共重合体
第3の発明の成型体は請求項1〜2に記載の熱可塑性エラストマー組成物を所定形状に成形して得られるものである。
本発明の第1の発明の熱可塑性エラストマー組成物は、スチレン系熱可塑性エラストマーを主成分とし、オレフィン系重合体セグメント(a)とビニル系重合体セグメント(b)とからなる特定の多相構造型のグラフト共重合体(A)と、特定の脂肪酸アミド(B)から構成されるグラフト共重合体組成物を含有するものであって、脂肪酸アミド(B)との親和性に優れるオレフィン系重合体セグメント(a)と、親和性に劣るビニル系重合体セグメント(b)からなるグラフト共重合体(A)を調整することにより、滑剤として作用する脂肪酸アミド(B)の表面移行性を調整し、スチレン系熱可塑性エラストマーに対して単純に脂肪酸アミドをブレンドするだけでは得られなかった滑性効果を最大限に発揮できると共に、脂肪酸アミド(B)のブリードも防止することが可能となり、良好な外観を持たせることができる。したがって、得られる熱可塑性エラストマー組成物は、高い耐ブリード性、耐擦傷性、耐摩耗性を発現することができる。
第2の発明の熱可塑性エラストマー組成物は、スチレン系熱可塑性エラストマーを主成分とし、オレフィン系重合体セグメント(a)とビニル系重合体セグメント(b)とからなる特定の多相構造型のグラフト共重合体(A)と、特定の脂肪酸アミド(B)と、エチレン系共重合体(C)から構成されるグラフト共重合体組成物を含有するものであって、前記第1の発明の効果に加え、グラフト共重合体組成物を容易に製造でき、さらには熱可塑性エラストマー組成物の成形性を向上させることができる。また、エチレン系共重合体(C)と脂肪酸アミド(B)の親和性が劣るため、脂肪酸アミド(B)の表面移行性を促進させることができ、その滑性効果を最大限に発揮させる役割も付与できる。
第3の発明の成型体は、前記第1,2の発明の熱可塑性エラストマー組成物を所定形状に成形して得られるものであり、高い耐ブリード性、耐擦傷性、耐摩耗性、成形性を発現するものとなり、自動車部品、家電部品、雑貨等の幅広い分野における多種の製品、半製品に利用することができる。
以下に、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、スチレン系熱可塑性エラストマーとグラフト共重合体組成物から構成されるものである。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、スチレン系熱可塑性エラストマーとグラフト共重合体組成物から構成されるものである。
本発明におけるスチレン系熱可塑性エラストマーとしては、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)又はその水素添加品(H−SBR)、スチレン・ブタジエンブロック共重合体ゴム(SBS)又はその水素添加品(SEBS)、スチレン・イソプレンブロック共重合体ゴム(SIS)又はその水素添加品(SEPS、HV−SIS)等が挙げられる。
上記スチレン系熱可塑性エラストマーは市販されており、旭化成(株)製、商品名タフテック、アロン化成(株)製、商品名エラストマーAR、(株)クラレ製、商品名セプトン、クレイトンポリマージャパン(株)製、商品名クレイトン、JSR(株)製、商品名JSR TRなどが挙げられる。
本発明におけるグラフト共重合体組成物は、第1の発明では、特定のグラフト共重合体(A)と特定の脂肪酸アミド(B)とから構成され、第2の発明では、グラフト共重合体(A)と脂肪酸アミド(B)とエチレン系共重合体(C)とから構成される。
まず、グラフト共重合体(A)は、オレフィン系重合体セグメント(a)と、少なくとも1種のビニル単量体から形成されるビニル系重合体セグメント(b)とから構成され、一方のセグメントが他方のセグメント中に粒子径0.001〜10μmの微細な粒子として分散相を形成している多相構造型のグラフト共重合体である。
上記オレフィン系重合体セグメント(a)を構成するオレフィン系重合体とは、オレフィン系単独重合体又は共重合体からなるセグメントである。このオレフィン系重合体セグメント(a)を構成する原料としてのオレフィン系重合体は、α−オレフィン重合体、エチレンと炭素数が3以上のα−オレフィンとの共重合体、エチレンと少なくとも1種のビニル単量体から形成される共重合体、エチレン系共重合ゴム等が挙げられ、これらの1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。
α−オレフィンの具体例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、1−デセン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、或いはこれらの混合物等が挙げられる。
α−オレフィン重合体の具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレンが挙げられる。
エチレンと炭素数が3以上のα−オレフィンとの共重合体の具体例としては、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・1−ヘキセン共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体等が挙げられる。
エチレンと少なくとも1種のビニル単量体から形成される共重合体の具体例としては、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸メチル共重合体、エチレン・メタクリル酸メチル共重合体、エチレン・アクリル酸エチル共重合体、エチレン・アクリル酸イソブチル共重合体、エチレン・アクリル酸n−ブチル共重合体、エチレン・アクリル酸2−エチルヘキシル共重合体、エチレン・アクリル酸エチル・無水マレイン酸共重合体、エチレン・アクリル酸エチル・メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン・メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン・酢酸ビニル・メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体又はそのケン化物等が挙げられる。
また、エチレン系共重合ゴムの具体例としては、エチレン・プロピレン共重合ゴム、エチレン・プロピレン・非共役ポリエン共重合ゴム、エチレン・ブテン共重合体ゴム、エチレン・ブテン・非共役ポリエン共重合体ゴム、エチレン・ヘキセン共重合体ゴム、エチレン・オクテン共重合ゴム等が挙げられる。
これらのオレフィン系重合体の中で、脂肪酸アミド(B)との親和性が優れている点、並びに弾性回復性が高い点で、エチレン−プロピレン共重合ゴム、エチレン−プロピレン−非共役ポリエン共重合ゴム、エチレン・1−オクテン共重合ゴムが好ましい。
次に、ビニル系重合体セグメント(b)を形成するビニル単量体とは、前述のように少なくとも1種のビニル単量体から形成されるものであって、アルキル鎖長の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、酸基を有するビニル単量体、ヒドロキシル基を有するビニル単量体、エポキシ基を有するビニル単量体、シアノ基を有するビニル単量体、スチレンより選択される少なくとも1種の単量体である。
なお、本明細書ではアクリルとメタクリルを(メタ)アクリルと総称する。
なお、本明細書ではアクリルとメタクリルを(メタ)アクリルと総称する。
さらに具体的にこのビニル単量体としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリロニトリル、スチレン等が挙げられる。これらの中でも、脂肪酸アミド(B)との相互作用が大きく、その表面移行性を調整しやすい点から、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリロニトリル、スチレン等が特に好ましい。
ビニル系重合体セグメント(b)を構成するビニル系重合体の質量平均分子量〔テトラヒドロフラン(THF)中、スチレン換算によるゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)による測定値〕は、通常1,000〜2,000,000、好ましくは5,000〜1,200,000の範囲である。この質量平均分子量が1,000未満であると、グラフト共重合体(A)の耐熱性が低下する傾向があり、質量平均分子量が2,000,000を超えると、グラフト共重合体(A)の溶融粘度が高くなり、成形性が低下する傾向にある。
グラフト共重合体(A)を構成するオレフィン系重合体セグメント(a)は、脂肪酸アミド(B)との親和性に優れる性質を有し、ビニル系重合体セグメント(b)は、脂肪酸アミド(B)との親和性に劣る性質を有する。さらに、オレフィン系重合体セグメント(a)は、スチレン系熱可塑性エラストマーとの相溶性に優れる性質を有する。そのため、これらを調整することにより、界面剥離が防止され、滑剤として作用する脂肪酸アミド(B)の表面移行性を調整(制御)でき、脂肪酸アミド(B)のブリードも防止でき、良好な外観を持たせることができる。
また、グラフト共重合体(A)のメルトフローレート(MFR)又はメルトインデクス(MI)は、好ましくは0.01〜500g/10分、さらに好ましくは0.1〜300g/10分、最も好ましくは1〜200g/10分である。このMFRはJIS 7210に規定された方法に準拠して、樹脂温度230℃、測定荷重21N(2.16kg・f)の条件で測定したものである。MFRが0.01g/10分未満又は500g/10分を超えると、グラフト共重合体(A)とスチレン系熱可塑性エラストマーとの相溶性が悪く、最終的に成型体の外観が悪化する傾向にあるため好ましくない。
前述のように、グラフト共重合体(A)は多相構造型であって、オレフィン系重合体セグメント(a)とビニル系重合体セグメント(b)の一方のセグメントが他方のセグメント中に粒子径0.001〜10μmの微細な粒子として分散相を形成している。分散相を形成するセグメントの粒子径が0.001μm未満の場合及び10μmを超える場合のいずれも、スチレン系熱可塑性エラストマーへグラフト共重合体(A)を混合したときの分散性が悪く、最終的に成型体の外観が悪化したり、機械的物性を損ねてしまう。
グラフト共重合体(A)は、オレフィン系重合体セグメント(a)が通常5〜99質量%、好ましくは20〜95質量%からなり、ビニル系重合体セグメント(b)は通常1〜95質量%、好ましくは5〜80質量%である。オレフィン系重合体セグメント(a)が5質量%未満の場合、即ちビニル系重合体セグメント(b)が95質量%を超える場合、スチレン系熱可塑性エラストマーへのグラフト共重合体(A)の分散性が低下し、得られる成型体の外観が低下する傾向にある。逆に、オレフィン系重合体セグメント(a)が99質量%を超える場合、即ちビニル系重合体セグメント(b)が1質量%未満の場合、スチレン系熱可塑性エラストマーに対する改良効果が不十分となる傾向にある。このような傾向などに基づいて、グラフト共重合体(A)を構成するオレフィン系重合体セグメント(a)とビニル系重合体セグメント(b)の割合を調整して、グラフト共重合体(A)の極性を変更することにより、滑剤である脂肪酸アミド(B)とグラフト共重合体(A)との相互作用を調整することができる。
グラフト共重合体(A)を製造する際のグラフト化法は、一般に知られている連鎖移動法、電離性放射線照射法等いずれの方法でも良いが、以降に示す方法が最も好ましい。なぜならば、製造方法が簡便で、グラフト効率が高く、熱によるビニル系重合体セグメント(b)の二次的凝集が起こらず、グラフト共重合体(A)を脂肪酸酸アミド(B)と混合しやすくなり、両者の相互作用に優れているためである。
例えばビニル系重合体セグメント(b)がオレフィン系重合体セグメント(a)に微細粒子として分散相を形成している態様のグラフト共重合体(A)を製造する具体的な一例を以下に示す。
まずオレフィン系重合体の粒子100質量部を水中に懸濁させる。そこへビニル系単量体1〜400質量部、ラジカル重合性有機過酸化物をビニル系単量体100質量部に対し0.01〜20質量部、及び10時間半減期を得るための分解温度40〜90℃のラジカル重合開始剤をビニル系単量体とラジカル重合性有機過酸化物との合計100質量部に対し0.01〜8質量部からなる混合溶液を加える。ここで、ラジカル重合性有機過酸化物とは、過酸化物結合とラジカル重合性の官能基を一分子中に有する化合物をいう。このラジカル重合性有機過酸化物として、例えば後述する一般式(1)又は一般式(2)で表される化合物の1種又は2種以上の混合物が使用される。ラジカル重合性有機過酸化物の使用量は、ビニル系単量体100質量部に対して0.01〜15質量部であることが好ましい。
まずオレフィン系重合体の粒子100質量部を水中に懸濁させる。そこへビニル系単量体1〜400質量部、ラジカル重合性有機過酸化物をビニル系単量体100質量部に対し0.01〜20質量部、及び10時間半減期を得るための分解温度40〜90℃のラジカル重合開始剤をビニル系単量体とラジカル重合性有機過酸化物との合計100質量部に対し0.01〜8質量部からなる混合溶液を加える。ここで、ラジカル重合性有機過酸化物とは、過酸化物結合とラジカル重合性の官能基を一分子中に有する化合物をいう。このラジカル重合性有機過酸化物として、例えば後述する一般式(1)又は一般式(2)で表される化合物の1種又は2種以上の混合物が使用される。ラジカル重合性有機過酸化物の使用量は、ビニル系単量体100質量部に対して0.01〜15質量部であることが好ましい。
次に、ラジカル重合開始剤の分解が実質的に起こらない条件で加熱することにより、前述の配合組成のビニル系単量体、ラジカル重合性有機過酸化物及びラジカル重合開始剤からなる混合溶液を、水中に懸濁したオレフィン系重合体の粒子中に含浸させる。その含浸率が添加量の20質量%以上、好ましくは30質量%以上に達した時点で、この水性懸濁液の温度を上昇させ、ビニル系単量体とラジカル重合性有機過酸化物とをオレフィン系重合体粒子中で共重合させることによりグラフト化前駆体を得る。このグラフト化前駆体を100〜300℃で溶融、混合することにより、オレフィン系重合体セグメント(a)とビニル系重合体セグメント(b)とからなるグラフト共重合体(A)が得られる。
前記一般式(1)又は一般式(2)で表されるラジカル重合性有機過酸化物としては、具体的には、例えばt−ブチルペルオキシアクリロイロキシエチルカーボネート、t−ブチルペルオキシメタクリロイロキシエチルカーボネート、t−ブチルペルオキシアリルカーボネート、t−ブチルペルオキシメタクリルカーボネートが好ましい。
次に、脂肪酸アミド(B)は、炭素数10〜25の脂肪酸を原料として形成され、滑剤として作用する。この脂肪酸アミド(B)前記グラフト共重合体(A)とからなるグラフト共重合体組成物をスチレン系熱可塑性エラストマーに配合すると、得られる熱可塑性エラストマー組成物は、高い耐ブリード性、耐擦傷性、耐摩耗性を発現することができる。炭素数10未満の脂肪酸を原料として形成した脂肪酸アミド(B)では、上述の効果が不十分であり、炭素数25を超える脂肪酸ではそれ自体が入手が困難で実用的ではない。
この脂肪酸アミド(B)としては、具体的には、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘミン酸アミド等の飽和脂肪族アミド系、エルカ酸アミド、オレイン酸アミド、ブラシジン酸アミド、エライジン酸アミド等の不飽和脂肪酸アミド系、メチレンビスステアリン酸アミド、メチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド等のビス脂肪酸アミド系等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でエルカ酸アミド、オレイン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミドが好ましく用いられる。特に滑性に優れているエルカ酸アミド、オレイン酸アミドが最も好ましい。
また、本発明の目的を損なわない範囲で脂肪酸アミド(B)以外の滑剤を配合しても良い。このような滑剤としては、ラウリン酸メチル、ミリスチン酸メチル、パルミチン酸メチル、ステアリン酸メチル、オレイン酸メチル、エルカ酸メチル、ベヘニン酸メチル、ラウリン酸ブチル、ステアリン酸ブチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸オクチル、ヤシ油脂肪酸オクチル、ステアリン酸オクチル、ラウリン酸ラウリル、ステアリン酸ステアリル、ベヘニン酸ベヘニル、ミリスチン酸セチル、ネオペンチルポリオール長鎖脂肪酸エステル、ネオペンチルポリオール脂肪酸エステル、ネオペンチルポリオール脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールテトラパルミネート等の脂肪酸エステル系、流動パラフィン、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等の炭化水素系、ステアリン酸、1,2−ヒドロキシステアリン酸等の脂肪酸系、ステアリルアルコール等の高級アルコール系、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム等の金属石鹸系、シリコーンオイル等のシリコン系、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル等のアルキレングリコール系等が挙げられる。
前述のグラフト共重合体(A)と脂肪酸アミド(B)から構成される第1の発明におけるグラフト共重合体組成物を製造する際の加熱温度は70〜250℃が好ましい。この加熱温度が70℃未満の場合、グラフト共重合体(A)と脂肪酸アミド(B)との混練が不完全であったり、溶融粘度が高いため混合が不十分になり、相分離や層状剥離が現れる傾向にあるため好ましくない。250℃を超える場合、グラフト共重合体(A)と脂肪酸アミド(B)の分解が激しくなる傾向にあるため好ましくない。
第1の発明におけるグラフト共重合体組成物中でのグラフト共重合体(A)の含有量は、50〜99質量%が好ましく、より好ましくは60〜90質量%である。即ち脂肪酸アミド(B)の含有量は、1〜50質量%が好ましく、10〜40質量%が更に好ましい。グラフト共重合体(A)が50質量%未満の場合、即ち脂肪酸アミド(B)が50質量%を越える場合、脂肪酸アミド(B)の表面移行を調整できない傾向にあり、グラフト共重合体(A)が990質量%を越える場合、即ち脂肪酸アミド(B)が1質量%未満の場合、脂肪酸アミド(B)による滑性が発揮されない。
第2の発明におけるグラフト共重合体組成物は、前述のようにグラフト共重合体(A)と脂肪酸アミド(B)とエチレン系共重合体(C)とから構成される。
エチレン系共重合体(C)は、エチレンと少なくとも1種のビニル単量体から形成される共重合体であり、このエチレン系共重合体(C)を含有することにより、グラフト共重合体組成物を容易に製造できると共に、このグラフト共重合体組成物を添加した熱可塑性エラストマー組成物の成形性を向上させることができる。さらに、エチレン系共重合体(C)と脂肪酸アミド(B)の親和性が劣ることから、脂肪酸アミド(B)の表面移行性を促進させることが可能となり、その滑性効果を最大限に発揮させる役割ももたせることができる。
エチレン系共重合体(C)は、エチレンと少なくとも1種のビニル単量体から形成される共重合体であり、このエチレン系共重合体(C)を含有することにより、グラフト共重合体組成物を容易に製造できると共に、このグラフト共重合体組成物を添加した熱可塑性エラストマー組成物の成形性を向上させることができる。さらに、エチレン系共重合体(C)と脂肪酸アミド(B)の親和性が劣ることから、脂肪酸アミド(B)の表面移行性を促進させることが可能となり、その滑性効果を最大限に発揮させる役割ももたせることができる。
このエチレン系共重合体(C)としては、具体的にはエチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸メチル共重合体、エチレン・メタクリル酸メチル共重合体、エチレン・アクリル酸エチル共重合体、エチレン・アクリル酸イソブチル共重合体、エチレン・アクリル酸n−ブチル共重合体、エチレン・アクリル酸2−エチルヘキシル共重合体、エチレン・アクリル酸エチル・無水マレイン酸共重合体、エチレン・アクリル酸エチル・メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン・メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体又はそのケン化物等が挙げられる。これらの中で、エチレン・アクリル酸メチル共重合体、エチレン・メタクリル酸メチル共重合体、エチレン・アクリル酸エチル共重合体、エチレン・アクリル酸n−ブチル共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体又はそのケン化物が、極性を大きく変化できる点、及び脂肪酸アミド(B)との反親和性に優れる点で特に好ましい。これらのエチレン系共重合体(C)は単独で用いてもよく、また2種以上組み合せて用いてもよい。
第2の発明におけるグラフト共重合体組成物中でのエチレン系共重合体(C)の含有量は、前述のグラフト共重合体(A)と脂肪酸アミド(B)の合計量に対して1000質量%以下であることが好ましい。エチレン系共重合体(C)の含有量が1000質量%を超えると、熱可塑性エラストマー組成物又はその成型体の機械的物性と耐熱性が低下する傾向にあり、さらには脂肪酸アミド(B)との親和性が劣るため、脂肪酸アミドのブリードを防止することが困難となって外観が悪化する傾向がある。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、第1の発明も、第2の発明も、前述のスチレン系熱可塑性エラストマーと前述のグラフト共重合体組成物を120〜250℃で溶融、混合することによって製造される。上記温度が120℃未満の場合、溶融が不完全であったり、溶融粘度が高いため、混合が不十分になり、相分離や層状剥離が現れる傾向にあるため好ましくない。一方、250℃を超える場合、スチレン系熱可塑性エラストマーやグラフト共重合体組成物を構成する各成分の分解が起こる傾向にあるため好ましくない。溶融、混合する方法としては、押出混練、ロール混練、バンバリー混練、ニーダー混練など公知の方法が採用される。
また、グラフト共重合体組成物は、必ずしもグラフト共重合体組成物として調製した後にスチレン系熱可塑性エラストマーに混合しなくてもよく、各成分をスチレン系熱可塑性エラストマーと混合してもよい。即ち第1の発明では、グラフト共重合体(A)と脂肪酸アミド(B)とスチレン系熱可塑性エラストマーを同時に混合してもよく、第2の発明では、グラフト共重合体(A)と脂肪酸アミド(B)とエチレン系共重合体(C)とスチレン系熱可塑性エラストマーを同時に混合してもよい。このように熱可塑性エラストマー組成物の中に、前記グラフト共重合体組成物を構成する各成分が含有されていればよく、特にその配合手順を限定するものではない。
また、グラフト共重合体(A)は、必ずしもグラフト共重合体として混合しなくてもよく、グラフト化前駆体の状態で混合してもよい。これは、前述のようにグラフト化前駆体を溶融、混合することにより、グラフト共重合体(A)に変換されるからである。なお、グラフト化前駆体で溶融、混合した場合、一部が脂肪酸アミド(B)、エチレン系共重合体(C)、スチレン系熱可塑性エラストマーと共重合してグラフト共重合体となる可能性があるが、差し支えない。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物中におけるグラフト共重合体組成物の占める割合は0.1〜50質量%が好ましく、より好ましくは1〜30質量%とする。即ちスチレン系熱可塑性エラストマーの占める割合は50〜99.9質量%が好ましく、より好ましくは70〜99質量%とする。グラフト共重合体組成物が0.1質量%未満であると、グラフト共重合体による特性の発現が不十分となる傾向にあり、また50質量%を超えると、成型体の剛性及び耐熱性が低下する傾向にあって好ましくない。
また、本発明の熱可塑性エラストマー組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で他の樹脂やゴム、或いは無機充填剤を配合してもよい。この樹脂やゴムとしては、例えばポリプロピレン、ポリエチレン、オレフィン系エラストマー、ブチルゴム、ポリイソブチレンゴム、ニトリルゴム(NBR)、天然ゴム(NR)、及びシリコンゴムなどが挙げられる。また、無機充填剤としては、例えば炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、クレー、カオリン、タルク、シリカ、ケイソウ土、雲母粉、アスベスト、アルミナ、硫酸バリウム、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、塩基性炭酸マグネシウム、二硫化モリブデン、グラファイト、ガラス繊維、ガラス球、シラスバルーン、塩基性硫酸マグネシウムウィスカー、チタン酸カルシウムウィスカー、ほう酸アルミニウムウィスカーなどが挙げられる。
さらに、本発明の熱可塑性エラストマー組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で公知の耐熱安定剤、難燃剤、老化防止剤、耐候安定剤、帯電防止剤、分散剤、発泡剤、紫外線防止剤、着色剤、可塑剤、鉱物油系軟化剤等を配合することも可能である。
本発明の第3の発明である成型体は、上記の熱可塑性エラストマー組成物を所定形状に成形することにより得られる。成型体としては、シート、フィルム、熱成型体、中空成型体、発泡体、射出成形品などを挙げることができる。成形方法としては、一般に使用される熱可塑性エラストマーの成形機で成形することが可能であって、具体的にはカレンダー加工法、圧空加工法、熱成形法、ブロー成形法、発泡成形法、押出成形法、射出成形加工法、真空成形法、粉末スラッシュ成形法などを挙げることができる。
本発明の成型体は、上記の優れた特徴を利用して、自動車部品、家電部品、雑貨等の幅広い分野における多種の製品、半製品に利用することができる。
以下に、参考例、実施例及び比較例を挙げて前記実施形態を更に具体的に説明する。本発明はこれらの例に限定されるものではない。また、各例中の部、%は特に断らない限り質量部及び質量%を示す。なお、これらの参考例、実施例及び比較例における物性測定に用いた試験方法は以下の通りである。
(1)耐ブリード性:熱可塑性エラストマー組成物のペレットから射出成形機(田端機械工業(株)製)を用いて厚さ3mm、一辺90mmの正方形プレートを成形し、このプレートを70℃オーブン中に72時間放置し、プレート表面にブリードする脂肪酸アミドを目視にて観察し、下記評価基準で評価した。
○:ブリードは全くなし。 △:ブリードが僅かにあり。 ×:ブリードがあり。
○:ブリードは全くなし。 △:ブリードが僅かにあり。 ×:ブリードがあり。
(2)耐擦傷性:前記耐ブリード性試験で用いた試験片と同じ正方形プレート試験片に、テーパースクラッチテスター((株)東洋精機製作所製)を用い、回転中心から3.5cmの所に刃先がくるように刃を取り付けて、ターンテーブルを0.5rpmの速度で回転させた状態で、刃に0.5Nの荷重を掛けて試験片に傷をつけた。その傷を下記評価基準で評価した。
○:傷跡がほとんど見られない。 △:傷跡がやや目立つ。 ×:傷跡が大きく目立つ。
○:傷跡がほとんど見られない。 △:傷跡がやや目立つ。 ×:傷跡が大きく目立つ。
(3)耐摩耗性:前記耐ブリード性試験で用いた試験片と同じ正方形プレート試験片に、学振式堅牢度摩擦摩耗試験機((株)安田精機製作所製)を用い、重さ700gの荷重を載せ、カナキン3号布により100回往復摩耗させた後の試験片表面を目視にて観察し、下記評価基準で評価した。
○:傷跡がほとんど見られない。 △:傷跡がやや目立つ。 ×:傷跡が大きく目立つ。××:傷跡が大きく目立ち、かつ粉状の摩耗粉が多量に発生する。
○:傷跡がほとんど見られない。 △:傷跡がやや目立つ。 ×:傷跡が大きく目立つ。××:傷跡が大きく目立ち、かつ粉状の摩耗粉が多量に発生する。
(4)メルトフローレート(MFR):メルトインデクサー((株)東洋精機製作所製)を用い、JIS K 7210に準拠した方法により、測定温度230℃、荷重2.16kgで測定した。
以下の参考例及び表中の略記号は次の物質を表す。
SEBS−1:スチレン系熱可塑性エラストマー(商品名:タフテックH1062、旭化成(株)製)
SEBS−2:スチレン系熱可塑性エラストマー(商品名:タフテックH1041、旭化成(株)製)
SEPS:スチレン系熱可塑性エラストマー(商品名:セプトン2007、(株)クラレ製)
EPR: エチレン−プロピレン共重合体ゴム(商品名:EP07P、JSR(株)製)
EOR:エチレン−オクテン共重合ゴム(商品名:エンゲージ8100、(株)デュポン・ダウ・エラストマー製)
EPDM:エチレン−プロピレン−ジエン共重合体ゴム(商品名:EP57P、JSR(株)製)
EEA: エチレン−アクリル酸エチル共重合体(商品名:NUCコポリマーDPD-J6169、日本ユニカー(株)製)
EMMA:エチレン−メタクリル酸メチル共重合体(商品名:アクリフトWH401、住友化学工業(株)製)
EVA:エチレン−酢酸ビニル共重合体(商品名:NUCコポリマーNUC−3461、日本ユニカー(株)製)
MMA:メタクリル酸メチル
MAA:メタクリル酸
HPMA:メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル
BA:アクリル酸ブチル
St:スチレン
AN:アクリロニトリル
GMA:メタクリル酸グリシジル
OA:オレイン酸アミド(商品名:アルフローE−10、日本油脂(株)製)
EA:エルカ酸アミド(商品名:アルフローP−10、日本油脂(株)製)
SEBS−2:スチレン系熱可塑性エラストマー(商品名:タフテックH1041、旭化成(株)製)
SEPS:スチレン系熱可塑性エラストマー(商品名:セプトン2007、(株)クラレ製)
EPR: エチレン−プロピレン共重合体ゴム(商品名:EP07P、JSR(株)製)
EOR:エチレン−オクテン共重合ゴム(商品名:エンゲージ8100、(株)デュポン・ダウ・エラストマー製)
EPDM:エチレン−プロピレン−ジエン共重合体ゴム(商品名:EP57P、JSR(株)製)
EEA: エチレン−アクリル酸エチル共重合体(商品名:NUCコポリマーDPD-J6169、日本ユニカー(株)製)
EMMA:エチレン−メタクリル酸メチル共重合体(商品名:アクリフトWH401、住友化学工業(株)製)
EVA:エチレン−酢酸ビニル共重合体(商品名:NUCコポリマーNUC−3461、日本ユニカー(株)製)
MMA:メタクリル酸メチル
MAA:メタクリル酸
HPMA:メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル
BA:アクリル酸ブチル
St:スチレン
AN:アクリロニトリル
GMA:メタクリル酸グリシジル
OA:オレイン酸アミド(商品名:アルフローE−10、日本油脂(株)製)
EA:エルカ酸アミド(商品名:アルフローP−10、日本油脂(株)製)
〔参考例1、グラフト共重合体の製造〕
容積5リットルのステンレス製オートクレーブに、純水2500gを入れ、さらに懸濁剤としてポリビニルアルコール2.5gを溶解させた。この中にEPRを700g入れ、撹拌、分散した。別にラジカル重合開始剤としてジ−3,5,5−トリメチルヘキサノイルペルオキシド1.5g、ラジカル重合性有機過酸化物としてt−ブチルペルオキシメタクリロイロキシエチルカーボネート9gを、ビニル系単量体としてのSt100g、BA100g及びHPMA100gの混合液に溶解させた。この混合溶液を前記オートクレーブ中に投入して撹拌した。
容積5リットルのステンレス製オートクレーブに、純水2500gを入れ、さらに懸濁剤としてポリビニルアルコール2.5gを溶解させた。この中にEPRを700g入れ、撹拌、分散した。別にラジカル重合開始剤としてジ−3,5,5−トリメチルヘキサノイルペルオキシド1.5g、ラジカル重合性有機過酸化物としてt−ブチルペルオキシメタクリロイロキシエチルカーボネート9gを、ビニル系単量体としてのSt100g、BA100g及びHPMA100gの混合液に溶解させた。この混合溶液を前記オートクレーブ中に投入して撹拌した。
次いで、オートクレーブを60〜65℃に昇温し、3時間撹拌することによりラジカル重合開始剤、ラジカル重合性有機過酸化物及びビニル系単量体をEPR中に含浸させた。続いて、含浸されたビニル系単量体、ラジカル重合性有機過酸化物及びラジカル重合開始剤の合計量が添加量の30質量%以上になっていることを確認した。その後、温度を70〜75℃に上げ、その温度で6時間維持して重合を完結させ、水洗及び乾燥してグラフト化前駆体を得た。
このグラフト化前駆体からテトラヒドロフラン(THF)でSt/BA/HPMA共重合体を抽出し、GPCで重量平均分子量(THF中、スチレン換算による)を測定したところ、600,000であった。
次に、このグラフト化前駆体をラボプラストミル一軸押出機((株)東洋精機製作所製)で180℃にて押し出し、グラフト化反応させることによりグラフト共重合体(A)を得た。
このグラフト共重合体(A)を走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製)により観察したところ、粒子径0.3〜0.4μmの真球状樹脂が均一に分散した多相構造型の熱可塑性樹脂であって、ビニル系重合体セグメント(b)であるSt/BA/HPMA共重合体がオレフィン系重合体セグメント(a)であるEPRに微細粒子として分散相を形成している態様であった。なお、このときSt/BA/HPMA共重合体のグラフト効率は80%であった。
〔参考例2〕
容積5リットルのステンレス製オートクレーブに、純水2500gを入れ、さらに懸濁剤としてポリビニルアルコール2.5gを溶解させた。この中にEORを500g入れ、撹拌、分散した。
容積5リットルのステンレス製オートクレーブに、純水2500gを入れ、さらに懸濁剤としてポリビニルアルコール2.5gを溶解させた。この中にEORを500g入れ、撹拌、分散した。
別にラジカル重合開始剤としてのベンゾイルペルオキシド0.5g、ラジカル重合性有機過酸化物としてt−ブチルペルオキシメタクリロイロキシエチルカーボネート3gを、ビニル系単量体としてのMMA200g、BA200g及びMAA100gの混合液に溶解させた。この混合液を前記オートクレーブ中に投入して撹拌した。
次いで、オートクレーブを60〜65℃に昇温し、2時間撹拌することによりラジカル重合開始剤、ラジカル重合性有機過酸化物及びビニル系単量体をEOR中に含浸させた。続いて、含浸されたビニル系単量体、ラジカル重合性有機過酸化物及びラジカル重合開始剤の合計量が添加量の30質量%以上になっていることを確認した後、温度を80〜85℃に上げた。そして、その温度で5時間維持して重合を完結させた後、水洗及び乾燥してグラフト化前駆体を得た。
このグラフト化前駆体からTHFでMMA/BA/MAA共重合体を抽出し、GPCで重量平均分子量(THF中、スチレン換算による測定)を測定したところ、800,000であった。
次いで、このグラフト化前駆体をラボプラストミル一軸押出機((株)東洋精機製作所製)で200℃にて押し出し、グラフト化反応させることによりグラフト共重合体(A)を得た。
このグラフト共重合体(A)を走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製)により観察したところ、粒子径0.2〜0.3μmの真球状樹脂が均一に分散した多相構造型の熱可塑性樹脂であって、ビニル系重合体セグメント(b)であるMMA/BA/MAA酸共重合体がオレフィン系重合体セグメント(a)であるEORに微細粒子として分散相を形成している態様であった。このとき、MMA/BA/MAA酸共重合体のグラフト効率は70%であった。
〔参考例3〕
表1に示した成分及び配合割合に変更して、前記参考例1と同様の操作でグラフト共重合体(A)を得た。
なお、表1には前記参考例1,2についても同様に成分及び配合割合、並びにグラフト効率及び分散粒径を記載した。
表1に示した成分及び配合割合に変更して、前記参考例1と同様の操作でグラフト共重合体(A)を得た。
なお、表1には前記参考例1,2についても同様に成分及び配合割合、並びにグラフト効率及び分散粒径を記載した。
〔参考例4〜11;グラフト共重合体組成物の製造〕
表2に示す成分及び配合割合で、前記参考例1〜3のグラフト共重合体(A)やグラフト化前駆体、脂肪酸アミド(B)、エチレン系共重合体(C)をドライブレンドした後、シリンダー温度180℃に設定されたスクリュー径30mmの同軸方向二軸押出機で溶融、混合して、グラフト共重合体組成物のペレットを得た。なお、参考例10は脂肪酸アミド(B)のみ、参考例11は脂肪酸アミド(B)とエチレン系共重合体(C)で構成されるものであって、何れもグラフト共重合体組成物ではないが、比較のために同列に記載した。
表2に示す成分及び配合割合で、前記参考例1〜3のグラフト共重合体(A)やグラフト化前駆体、脂肪酸アミド(B)、エチレン系共重合体(C)をドライブレンドした後、シリンダー温度180℃に設定されたスクリュー径30mmの同軸方向二軸押出機で溶融、混合して、グラフト共重合体組成物のペレットを得た。なお、参考例10は脂肪酸アミド(B)のみ、参考例11は脂肪酸アミド(B)とエチレン系共重合体(C)で構成されるものであって、何れもグラフト共重合体組成物ではないが、比較のために同列に記載した。
〔実施例1〜6、比較例1〜4〕
表3に示す配合で、スチレン系熱可塑性エラストマーと前記グラフト共重合体組成物をドライブレンドした後、シリンダー温度200℃に設定されたスクリュー径30mmの同軸方向二軸押出機で溶融、混合して、熱可塑性エラストマー組成物のペレットを得た。
表3に示す配合で、スチレン系熱可塑性エラストマーと前記グラフト共重合体組成物をドライブレンドした後、シリンダー温度200℃に設定されたスクリュー径30mmの同軸方向二軸押出機で溶融、混合して、熱可塑性エラストマー組成物のペレットを得た。
〔実施例及び比較例のまとめ〕
表3に示したように、本発明の熱可塑性エラストマー組成物、及びその成型体は、実施例1〜6の結果に見られる通り、良好な耐ブリード性、耐擦傷性、耐摩耗性、及び加工性を得ることができた。
それに対し、比較例1は、スチレン系熱可塑性エラストマー単体であって、グラフト共重合体(A)も脂肪酸アミド(B)も含まないため、耐ブリード性は良好であるが、耐擦傷性、耐摩耗性、及び加工性で劣るものであった。
比較例2は、ブレンドした参考例1がグラフト共重合体(A)のみであって、脂肪酸アミド(B)を含まないため、比較例1よりは耐擦傷性と加工性で良好となるが、耐擦傷性と耐摩耗性で劣るものであった。
また、比較例3は、ブレンドした参考例10が脂肪酸アミド(B)のみであって、グラフト共重合体(A)を含まない、即ち単純にスチレン系熱可塑性エラストマーに脂肪酸アミド(B)をブレンドしただけであるため、脂肪酸アミド(B)の表面移行性をコントロールできず、結果として耐ブリード性、耐擦傷性、耐摩耗性で劣るものであった。
さらに、比較例4は、ブレンドした参考例11が脂肪酸アミド(B)とエチレン系共重合体(C)を配合したものであって、グラフト共重合体(A)を含まないため、脂肪酸アミド(B)の表面移行性が激しく、加工性は向上するものの、耐ブリード性、耐擦傷性、耐摩耗性で劣るものであった。
表3に示したように、本発明の熱可塑性エラストマー組成物、及びその成型体は、実施例1〜6の結果に見られる通り、良好な耐ブリード性、耐擦傷性、耐摩耗性、及び加工性を得ることができた。
それに対し、比較例1は、スチレン系熱可塑性エラストマー単体であって、グラフト共重合体(A)も脂肪酸アミド(B)も含まないため、耐ブリード性は良好であるが、耐擦傷性、耐摩耗性、及び加工性で劣るものであった。
比較例2は、ブレンドした参考例1がグラフト共重合体(A)のみであって、脂肪酸アミド(B)を含まないため、比較例1よりは耐擦傷性と加工性で良好となるが、耐擦傷性と耐摩耗性で劣るものであった。
また、比較例3は、ブレンドした参考例10が脂肪酸アミド(B)のみであって、グラフト共重合体(A)を含まない、即ち単純にスチレン系熱可塑性エラストマーに脂肪酸アミド(B)をブレンドしただけであるため、脂肪酸アミド(B)の表面移行性をコントロールできず、結果として耐ブリード性、耐擦傷性、耐摩耗性で劣るものであった。
さらに、比較例4は、ブレンドした参考例11が脂肪酸アミド(B)とエチレン系共重合体(C)を配合したものであって、グラフト共重合体(A)を含まないため、脂肪酸アミド(B)の表面移行性が激しく、加工性は向上するものの、耐ブリード性、耐擦傷性、耐摩耗性で劣るものであった。
本発明は、自動車部品、家電部品、雑貨等の幅広い分野における多種の製品、半製品に利用することができる。
Claims (3)
- スチレン系熱可塑性エラストマーを主成分とし、下記の(A)と(B)の各成分から構成されるグラフト共重合体組成物を含有することを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物。
(A)オレフィン系重合体セグメント(a)を幹成分とし、少なくとも1種のビニル系単量体から形成されるビニル系重合体セグメント(b)を枝成分とし、一方のセグメントが他方のセグメント中に粒子径0.001〜10μmの微細な粒子として分散相を形成している多相構造型のグラフト共重合体
(B)炭素数10〜25の脂肪酸から形成される脂肪酸アミド - スチレン系熱可塑性エラストマーを主成分とし、下記の(A)と(B)と(C)の各成分から構成されるグラフト共重合体組成物を含有することを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物。
(A)オレフィン系重合体セグメント(a)を幹成分とし、少なくとも1種のビニル系単量体から形成されるビニル系重合体セグメント(b)を枝成分とし、一方のセグメントが他方のセグメント中に粒子径0.001〜10μmの微細な粒子として分散相を形成している多相構造型のグラフト共重合体
(B)炭素数10〜25の脂肪酸から形成される脂肪酸アミド
(C)エチレンと少なくとも1種のビニル単量体から形成される共重合体 - 請求項1〜2に記載の熱可塑性エラストマー組成物を所定形状に成形して得られることを特徴とする成型体。
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